主文 被告人を懲役4年及び罰金100万円に処する。 未決勾留日数中160日をその懲役刑に算入する。 その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 別紙記載の金銭債権並びに札幌地方検察庁で保管中の向精神薬及び指定薬物を没収する。 被告人から金275万6617円を追徴する。 理由 (罪となるべき事実) 第1 被告人は,別表記載のとおり,氏名不詳者らと共謀の上,営利の目的で,みだりに,10回にわたり,平成30年3月上旬頃から同年8月9日頃までの間(現地時間),インド又はシンガポール共和国所在の郵便局において,向精神薬である4-(2-クロロフェニル)-2-エチル-9-メチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン(別名エチゾラム) を含有する錠剤合計6300錠(別表番号1,4ないし7,9,10の向精神薬につき,札幌地方検察庁令和元年領第515号符号1ないし3,7ないし9,同第1223号符号1ないし7,9ないし18はその鑑定残量)及び向精神薬である2-[(ジフェニルメチル)スルフィニル]アセタミド(別名モダフィニル)を含有する錠剤合計200錠(同第1223号符号8及び19はその鑑定残量)を 隠匿した各郵便物を,北海道上川郡(住所省略)A方ほか6か所宛てに発送し,同年3月9日から同年8月13日までの間,各郵便物を東京都大田区所在の東京国際空港に到着させた上,同空港関係作業員にこれらを航空機の外に搬出させて日本国内に持ち込み,もって向精神薬を本邦に輸入するとともに,同年3月11日から同年8月13日までの間,各郵便物を川崎市(住所省略)所在のB郵便局 に到着させ,同年3月14日から同年8月16日ま 本国内に持ち込み,もって向精神薬を本邦に輸入するとともに,同年3月11日から同年8月13日までの間,各郵便物を川崎市(住所省略)所在のB郵便局 に到着させ,同年3月14日から同年8月16日までの間,同郵便局5階税関検 査場において,横浜税関C出張所職員による検査を受けさせ,もって関税法上の輸入してはならない貨物である向精神薬を輸入しようとしたが,同出張所職員に発見されたため,その目的を遂げなかったほか,氏名不詳者らと共謀の上,薬物犯罪を犯す意思をもって,平成29年1月15日から平成30年8月20日までの間,多数回にわたり,向精神薬様のものを向精神薬として日本国内に持ち込ん で輸入し,もって向精神薬を輸入する行為と規制薬物として取得した薬物その他の物品を輸入する行為を併せてすることを業とした。 第2 被告人は,医療等の用途以外の用途に供するため, 1 平成30年8月7日,東京都杉並区(住所省略)D当時の被告人方において,指定薬物である亜硝酸イソプロピルを含有する液体約21.523グラム(同第 660号符号1及び2)を所持し, 2 令和元年5月28日,東京都北区(住所省略)E当時の被告人方において,指定薬物である亜硝酸イソブチルを含有する液体約8.459グラム(同号符号4)及び亜硝酸イソペンチルを含有する半固形物約4.935グラム(同号符号5)を所持した。 (法令の適用)罰条判示第1の行為営利目的向精神薬輸入及び向精神薬様物品輸入を併せて業とした点刑法60条,麻薬特例法5条(同条1号,麻薬及 び向精神薬取締法66条の3第2項,1項,麻薬特例法8条1項)輸入してはならない貨物の輸入未遂の点刑法60条,関税法109条3項,1項,69条の11第1項1号 判示第2の各行為 び向精神薬取締法66条の3第2項,1項,麻薬特例法8条1項)輸入してはならない貨物の輸入未遂の点刑法60条,関税法109条3項,1項,69条の11第1項1号 判示第2の各行為それぞれ医薬品医療機器法84条26号,76条 の4科刑上一罪の処理判示第1の行為について,刑法54条1項前段,10条(1罪として重い麻薬特例法違反の罪の刑で処断)刑種の選択判示第1の罪については有期懲役刑及び罰金刑 を,判示第2の各罪についてはそれぞれ懲役刑を選択併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(懲役刑については重い判示第1の罪の刑に47条ただし書の制限内で法定の加重) 酌量減軽懲役刑について,刑法66条,71条,68条3号未決勾留日数の算入刑法21条(懲役刑に算入)労役場留置刑法18条没収 別紙記載の向精神薬麻薬及び向精神薬取締法69条の3第1項本文並びに関税法118条1項本文(判示第1別表番号1及び4の麻薬及び向精神薬取締法違反の罪に係る向精神薬は犯人であるAの所有するもの,判示第1別表番号5ないし7,9,10の麻薬及 び向精神薬取締法違反の罪に係る向精神薬は犯人であるFの所有するものであり,かつ,これらは,いずれも判示の関税法違反の罪に係る貨物である。)別紙記載の指定薬物刑法19条1項1号,2項本文 別紙記載の金銭債権麻薬特例法11条1項1号,2号,12条,組織 的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律14条,15条1項本文(判示第1の行為により犯人である被告人が得 紙記載の金銭債権麻薬特例法11条1項1号,2号,12条,組織 的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律14条,15条1項本文(判示第1の行為により犯人である被告人が得た薬物犯罪収益及び薬物犯罪収益に由来する財産とそれ以外の財産とが混和して生じた財産のうち薬物犯罪収益に 相当する部分及び薬物犯罪収益に由来する財産で,犯人である被告人以外の者に帰属しない。)追徴麻薬特例法13条1項前段,11条1項1号(判示第1の行為により犯人である被告人が得た薬物犯罪収益275万6859円のうち没収すべ き242円を除いた275万6617円は没収することができない。)訴訟費用の不負担刑訴法181条1項ただし書(量刑の理由)本件の量刑の中心となるのは,判示第1の麻薬特例法違反等である。被告人は,向 精神薬等の個人輸入を代行するインターネットサイトの運営をしていたものである。 まず,着目すべきは,輸入した向精神薬等の量の多さである。被告人が顧客から注文を受けて輸入した向精神薬の量は6500錠であり,向精神薬様のものも含めると合計10万7300錠に及ぶ。それぞれの顧客が受け取った向精神薬等の量が多いことからすると,これらが乱用される危険性は高いといえ,顧客の人数が150名以上と 多数であることも踏まえると,被告人の行為は,乱用のおそれのある向精神薬を社会に広げるものであった。 次に,被告人は,被告人が「G」と呼ぶ共犯者の手ほどきを受けて向精神薬等の輸入を始めたものであるが,Gに命令されたわけではなく,金欲しさから自分の判断で個人輸入の代行を始め,本件犯行に至ったものである。そして,被告人は,顧客から 向精神薬の注文を受け,その注文内容をGに連絡するとともに が,Gに命令されたわけではなく,金欲しさから自分の判断で個人輸入の代行を始め,本件犯行に至ったものである。そして,被告人は,顧客から 向精神薬の注文を受け,その注文内容をGに連絡するとともに,顧客から入金された 代金の一部をGに送金し,Gに国外の業者に対する向精神薬の発注を依頼するという,本件犯行の主な行為をしていたのであり,顧客から入金された合計約452万円のうち,薬物犯罪収益である約275万円を自己の収益としていたのである。したがって,被告人は従属的な立場で本件犯行に及んだものではない。 被告人は,平成28年頃には向精神薬の輸入規制が強化されたことを認識したのに, Gに輸入代行は違法ではないなどと言われたので処罰されないと思った旨述べるが,そもそも,このような商売をしていた者としては当然に違法性を認識すべきであったし,被告人の述べるところによると,向精神薬を購入した顧客が処罰されても自分が処罰されなければよいという無責任な考えに行きつくもので,酌むべき事情とはいえない。 そうすると,犯行期間に照らして被告人の犯罪収益額が多額とまではいえないことを踏まえても,被告人の刑事責任は重く,本件において執行猶予を付するのは相当とはいえない。 そして,覚せい剤や大麻等の薬物を業として不法に輸入した事案の量刑傾向等も参考に,前科のない被告人に対する刑を検討すると,被告人に対しては,酌量減軽をし て懲役5年を下回る刑とするのが相当である。 そこで,以上に述べた輸入した向精神薬等の量や被告人の果たした役割等に加えて,判示第2の2度にわたる指定薬物の所持の事実があることのほか,被告人が事実関係をいずれも認め,反省していること,被告人のかつてのアルバイト先の店長が社会復帰後に被告人を正社員として雇用し,所有するマンシ 第2の2度にわたる指定薬物の所持の事実があることのほか,被告人が事実関係をいずれも認め,反省していること,被告人のかつてのアルバイト先の店長が社会復帰後に被告人を正社員として雇用し,所有するマンションに被告人を住まわせる旨述 べていることも考慮し,被告人に対しては,主文の刑を科すのが相当であると判断した。 (求刑懲役5年及び罰金100万円,主文同旨の没収,追徴)令和2年1月17日札幌地方裁判所刑事第2部 裁判長裁判官中川正隆 裁判官向井志穂 裁判官岩竹 遼 (別紙及び別表省略)
▼ クリックして全文を表示