平成20(わ)2167 建築基準法違反,業務上過失致死傷被告事件

裁判年月日・裁判所
平成21年9月28日 大阪地方裁判所
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判決文本文38,519 文字)

主文 被告人A1及び同A2をそれぞれ禁錮2年及び罰金40万円に,同A3を罰金20万円に,被告会社を罰金40万円に処する。 被告人A1,同A2及び同A3において,その罰金を完納することができないときは,いずれも金5000円を1日に換算した期間,その被告人を労役場に留置する。 被告人A1及び同A2に対し,いずれもこの裁判が確定した日から4年間その禁錮刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)【被告人4名の地位及び業務内容】被告会社は,本件当時,大阪市浪速区(以下省略)に本店を置き,大阪府吹田市(以下省略)所在の遊園地「D」の経営等の事業を行い,同遊園地において,建築基準法及びその関係法令の定める定期検査(以下,「法定定期検査」という。)並びにその報告を要するものとして吹田市長が指定した遊戯施設である「風神雷神Ⅱ」と称するコースター(以下,「風神雷神Ⅱ」という。)を所有し,同遊戯施設を平成4年3月から運行して一般の乗客の利用に供していた。被告人A1は,被告会社の取締役総括施設営業部長として,同部の所管する「風神雷神Ⅱ」等遊戯施設の運行管理,点検及び保全修理等の業務全般につき総括的に掌理し,「風神雷神Ⅱ」等の遊戯施設の法定定期検査の決裁に関しては被告会社の他の取締役らから実質的に一任されていた。被告人A2は,被告会社の施設営業部長として,同部の所管する「風神雷神Ⅱ」等遊戯施設の運行管理,点検及び保全修理等の業務全般につき統轄していた。被告人A3は,同部技術課長として,「風神雷神Ⅱ」等遊戯施設の点検,保全修理等の業務とともに,「風神雷神Ⅱ」に関する法定定期検査の報告書(以下,「定期検査報告書」という。)の作成等の業務に従事していた。 第1【建築基準法違反】 被告人A1,同A2及び同A3は,共謀の上,被告会社の業務に関し,吹田市 」に関する法定定期検査の報告書(以下,「定期検査報告書」という。)の作成等の業務に従事していた。 第1【建築基準法違反】 被告人A1,同A2及び同A3は,共謀の上,被告会社の業務に関し,吹田市長に対し「風神雷神Ⅱ」に関して遅くとも平成18年12月18日から平成19年3月18日までの間に実施すべき法定定期検査(以下,「平成18年度の法定定期検査」などという。)の報告をするに当たり,「風神雷神Ⅱ」の車両等につき,所定の検査項目の一部につき検査をしたに止まり,その他の項目については全くしないか不十分な検査を実施したにすぎないにもかかわらず,平成19年1月30日に被告人A3が検査資格者として実施した検査において検査項目の全てにつき異常がなかった旨の記載をした内容虚偽の定期検査報告書1通を,同年2月16日に全日本遊園施設協会関西支部に提出した上,同支部の担当者らを介するなどして,同年3月16日ころ,大阪府吹田市(以下省略)所在の吹田市役所において前記定期検査報告書1通を提出し,もって,虚偽の報告をした。 第2【業務上過失致死傷】 被告人A1及び同A2の注意義務の前提事実「風神雷神Ⅱ」は,「風神」と称する青色の編成車両(以下,「風神号」という。)及び同型の「雷神」と称するピンク色の編成車両(以下,「雷神号」という。)が,それぞれ,全長約985メートル,地上からの高度約36.4メートルないし約1.1メートルの軌道上を,上昇,下降,左右への旋回等をしながら最高時速約75キロメートルの高速で走行する仕組みのコースターであった。風神号は,客車6両が連結されたもので,各客車は,囲いのない車体台上に,各乗客の左右脇から上半身を固定する器具等を備えた立位座席4席が装備され,各乗客の頭部,両肩等を露出させた状態で乗車させる構造であった。 風神号の車輪部分 れたもので,各客車は,囲いのない車体台上に,各乗客の左右脇から上半身を固定する器具等を備えた立位座席4席が装備され,各乗客の頭部,両肩等を露出させた状態で乗車させる構造であった。 風神号の車輪部分は,車輪取付フレームに車輪5個が装着された車輪装置となっており,軌道を片側につき上下外側の三方から合計5個の車輪で挟み込むようにして走行する構造であった。車輪装置は,ニッケルクロム鋼製のボギー先端軸によって同車体台枠部に連結しているボギーアームと結合されており,ボ ギー先端軸はボギーアームとともに,各車体台を支える機能を果たしていた。 なお,ボギー先端軸はボギーアームから取り外すことが可能な構造であった。 「風神雷神Ⅱ」は,建築基準法及びその関係法令により,1年に1回,その車両等につき,損傷,腐食その他の劣化の状況等について定期検査(法定定期検査)を実施することが義務づけられていた。平成18年度における法定定期検査の実施期間は,遅くとも平成18年12月18日以降平成19年3月18日までであった。また,風神号は,経年及び多数回の走行に起因する金属疲労により,平成15年ないし平成16年には客車数台の車体台枠部に亀裂が生じることが続き,平成17年3月には風神号全客車の車体台枠部を新規に交換するに至った。そして,平成18年11月末ころには,風神号の2両目客車に装着された左側ボギー先端軸のボギーアームとの取付部分付近に,外縁から約20ミリメートルの深さに達する目視可能な疲労亀裂が生じていた。もっとも,同ボギー先端軸をボギーアームと結合させたままの状態では,この疲労亀裂を確認することは不可能であった。 被告人A1及び同A2の注意義務及び過失行為(1)被告人A1は,風神号を一般の乗客の利用に供するに当たり,被告会社の取締役総括施設営業部長として,前記 労亀裂を確認することは不可能であった。 被告人A1及び同A2の注意義務及び過失行為(1)被告人A1は,風神号を一般の乗客の利用に供するに当たり,被告会社の取締役総括施設営業部長として,前記ボギー先端軸の機能及び構造並びに風神号の経年等による劣化の状況等にかんがみ,平成18年11月末ころ以降,後述する本件事故発生時までの間に,特に同年12月18日以降平成19年3月18日までの間においては法定定期検査の一内容として重畳的に,被告人A2ほか自身の部下職員に対して適切に指示するなどして,部下職員をして,ボギー先端軸をボギーアームから取り外させ,探傷検査を実施させて損傷の有無・程度を確認させ,その損傷部位を早期に発見し,必要な部品の交換等を行わせるなどして,風神号の運行時における乗客の死傷事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があった。しかし,被告人A1は,これを怠り,被告人A2ら部下職員をして必要な検査等を実施させず,その ため風神号の前記2両目客車左側のボギー先端軸に生じていた疲労亀裂を看過したまま,これを一般の乗客の利用に供した。 (2)被告人A2は,風神号等を一般の乗客の利用に供するに当たり,被告会社の施設営業部長として,前記ボギー先端軸の機能及び構造並びに風神号の経年等による劣化の状況等にかんがみ,平成18年11月末ころ以降本件事故発生時までの間に,特に同年12月18日以降平成19年3月18日までの間においては法定定期検査の一内容として重畳的に,被告人A1と同様に,自身の部下職員に対して適切に指示するなどして,部下職員をして,ボギー先端軸をボギーアームから取り外させ,探傷検査を実施させてその損傷の有無・程度を確認させてその損傷部位を早期に発見し,必要な部品の交換等を行わせるなどして,風神号の運行時における乗客の死傷 ,ボギー先端軸をボギーアームから取り外させ,探傷検査を実施させてその損傷の有無・程度を確認させてその損傷部位を早期に発見し,必要な部品の交換等を行わせるなどして,風神号の運行時における乗客の死傷事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があった。しかし,被告人A2は,これを怠り,部下職員をして必要な検査等を実施させず,そのため風神号の前記2両目客車左側のボギー先端軸に生じていた疲労亀裂を看過したまま,これを一般の乗客の利用に供した。 本件事故の発生被告人A1及び同A2の前記各過失の競合により,平成19年5月5日午後零時50分ころ,前記Dにおいて,乗客20名を乗車させた風神号が,「風神雷神Ⅱ」の軌道上を走行中,駅舎プラットホームからの軌道距離約758メートル付近において,前記2両目客車左側のボギー先端軸が破損したことにより,2両目客車の左側車輪装置を車体から脱落させて同客車を脱輪させ,同客車を左方に傾斜した状態で走行させたため,同客車左側座席に乗車していたV1(当時19歳)の頚部等を軌道左側の鉄柵に衝突させるとともに,同客車車体を同鉄柵等に接触させて,それらの衝撃等により風神号を急停車させ,よって,即時,同所において,同女を頭部離断により死亡させるとともに,前記衝撃及び風神号を急停車させたことにより,別表記載のとおり,乗客のV2(当時2 0歳)ほか11名に対し,それぞれ同表「傷害の内容」欄記載の傷害を負わせた。 (証拠の標目)省略(争点に対する判断)第1争点の概略等本件では,判示第1認定事実の関係につき,被告人A1,同A2及び同A3に共謀による建築基準法上の虚偽報告罪が成立すること,判示第2認定事実の関係につき,被告人A1及び同A2に業務上過失致死傷罪が成立すること自体は,各被告人も認めており,弁護人もこれを争っ 及び同A3に共謀による建築基準法上の虚偽報告罪が成立すること,判示第2認定事実の関係につき,被告人A1及び同A2に業務上過失致死傷罪が成立すること自体は,各被告人も認めており,弁護人もこれを争っていない。しかしながら,建築基準法上の虚偽報告罪に関しては,虚偽報告の内容ないし程度等について,また,業務上過失致死傷罪に関しては,被告人A1及び同A2が負っていた注意義務の内容及び過失行為の態様等について,それぞれ当事者間に争いが存する。 そこで,以下,これらの点について当裁判所の判断を示すとともに,判示の各罪となるべき事実を認定した理由について説明を加えることとする。なお,便宜上,判示第2(業務上過失致死傷罪),同第1(建築基準法上の虚偽報告罪)の順に検討する。 第2判示第2(業務上過失致死傷罪)の事実関係について1(1)判示第2の業務上過失致死傷事件に係る事故(以下,「本件事故」という。)について,被告人A1及び同A2は,風神号のボギー先端軸の機能及び構造並びに経年等による劣化の状況等にかんがみ,条理上,遅くとも本件事故発生時までに,各部下職員をして,ボギー先端軸をボギーアームから取り外させ,探傷検査を実施させる注意義務があり,これに違反したことは認めており,弁護人もこの点は争わない。そして,後述のとおり,関係各証拠上も,被告人両名が前記の注意義務を負っていたにもかかわらず,部下職員 に対する適切な指示等を怠ったため,風神号のボギー先端軸に生じていた亀裂が看過されて本件事故に至ったことは優に認められる。そして,検察官は,本件起訴状公訴事実第2の1及び2で掲げた被告人A1及び同A2の過失には,弁護人が争っていない前記過失も訴因に包含されている趣旨である旨釈明しており,弁護人はこの釈明につき訴因の特定について疑問を提起しているもの 実第2の1及び2で掲げた被告人A1及び同A2の過失には,弁護人が争っていない前記過失も訴因に包含されている趣旨である旨釈明しており,弁護人はこの釈明につき訴因の特定について疑問を提起しているものの,前記訴因は検察官の前記釈明のように解することができるから,本件事故に関し,被告人A1及び同A2には前記の過失行為を内容とする限度において,それぞれ業務上過失致死傷罪が成立する。 (2)しかし,検察官は,さらに進んで,①「風神雷神Ⅱ」については,建築基準法令で年1回の定期検査(法定定期検査)を実施することが要求されており,その検査項目についてはJIS規格(遊戯施設の検査標準「JISA1701」を指す。以下同じ。)が適用されるものであるところ,風神号のボギー先端軸は,JIS規格上で1年に1回以上の「探傷試験」を行うこととされている「車輪軸」に該当するから,被告人A1及び同A2は,前記(1)の注意義務と重畳的に,法定定期検査に際して,部下職員をして,ボギー先端軸をボギーアームから取り外させ,探傷検査を実施させる注意義務があった,旨主張する。その上で,②被告人A1及び同A2の過失行為の態様及び犯情(以下,「過失行為の態様等」という。)として,両被告人は,「風神雷神Ⅱ」の法定定期検査に際して,ボギー先端軸をボギーアームから取り外させて探傷検査を実施させるべき義務があると認識していたにもかかわらず,風神号に対する平成18年度の法定定期検査を不当に延期させて探傷検査を実施させなかったため,ボギー先端軸に生じていた亀裂を看過したなどと主張する。 これに対し,被告人A1及び同A2は,風神号のボギー先端軸が車輪に直結する軸ではないことから,本件当時,ボギー先端軸がJIS規格上の「車輪軸」に当たるとは認識していなかった旨供述し,弁護人もこの供述を前提 に 告人A1及び同A2は,風神号のボギー先端軸が車輪に直結する軸ではないことから,本件当時,ボギー先端軸がJIS規格上の「車輪軸」に当たるとは認識していなかった旨供述し,弁護人もこの供述を前提 に,①そもそも,法定定期検査をJIS規格に従って実施しなければならないという法令上の根拠はないが,仮にJIS規格に従って実施しなければならないとしても,ボギー先端軸はJIS規格上の「車輪軸」に当たらないから,被告人A1及び同A2には法定定期検査の一内容としてボギー先端軸について探傷検査を実施させるべき注意義務があったものではない,②仮にボギー先端軸がJIS規格上の「車輪軸」に当たるとしても,本件事故前まで被告人A1及び同A2はボギー先端軸が前記の「車輪軸」に当たるとは認識しておらず,両被告人は,ボギー先端軸をボギーアームから取り外させて探傷検査を実施させるべきであると認識しながらあえてこれを怠ったものではない,と主張する。 そこで,以下,これらの点について検討する。 前提となる事実関係各証拠から以下の事実が認められ,これらについては検察官及び弁護人間においても概ね争いがない。 (1)被告会社(なお,同社は判示第2の事実についての被告人とはなっていないが,便宜上,以下このように称することとする。)は,昭和46年10月,遊園地及び娯楽場の経営等を目的として設立され,大阪府吹田市(以下省略)所在の遊園地「D」の経営等の事業を行っていた。 (2)被告会社は,平成4年3月,株式会社E1が製造し,同社及びE2株式会社の共同企業体が建設したコースターである「風神雷神Ⅱ」をDに設置し,その営業運行を開始した。「風神雷神Ⅱ」には,青色の編成車両から成る風神号及びピンク色の編成車両から成る雷神号があり,いずれも4席の立位座席が整備された6両の客車が連結され 神雷神Ⅱ」をDに設置し,その営業運行を開始した。「風神雷神Ⅱ」には,青色の編成車両から成る風神号及びピンク色の編成車両から成る雷神号があり,いずれも4席の立位座席が整備された6両の客車が連結されていた。各座席は,いわゆる「立席」で,乗客はサドルにまたがって立ったままの姿勢で乗車し,ハーネスと呼ばれる器具で左右脇から上半身を固定するほか,腰にベルトを巻き,足や腰を固定する装置を装着することになっており,乗客の頭部,両肩等は覆うもの がなく露出していた。「風神雷神Ⅱ」の軌道の全長は約985メートルであり,各車両は,駅舎から出発後,約97.5メートルの軌道を巻き上げチェーンで上昇して地上から約36.4メートルの最高地点に到達し,それ以降,急降下,急上昇等を繰り返しつつ軌道を一周するが,この間,最高速度は時速約75キロメートルにも達するものであった。 (3)「風神雷神Ⅱ」の各客車は,シャーシと呼ばれる土台の骨組部分の上にボディ(車体)が取り付けられ,シャーシを貫通するボルトでシートポスト(座席部分)が設置されていた。車輪は,軌道の2本のパイプレール上部を通る走行車輪(2個),パイプレールの外側を通る案内車輪(2個)及びパイプレール下側を通る浮き上がり防止車輪(1個)の合計5個が,車輪取り付けフレームに装着され,この車輪装置がボギーアームの両側にいずれもニッケルクロム鋼製のボギー先端軸で結合されており,ボギーアームはシャーシの前側に連結器で接続されていた。なお,ボギーアームとボギー先端軸のはめ合い部分には,部品を損傷しないでボギーアームとボギー先端軸との分解・組立てができる「中間ばめ」が採用されていた。 (4)「風神雷神Ⅱ」の最近における運行回数(試運転を除く。)は,平成16年度において,風神号が1万860回(月平均905回),雷神号が 端軸との分解・組立てができる「中間ばめ」が採用されていた。 (4)「風神雷神Ⅱ」の最近における運行回数(試運転を除く。)は,平成16年度において,風神号が1万860回(月平均905回),雷神号が1万1832回(月平均986回),平成17年度において,風神号が6835回(月平均569.6回),雷神号が1万594回(月平均882.8回),平成18年度において,風神号が1万3818回(月平均1151.5回),雷神号が1万1477回(月平均956.4回)であり,平成19年度に入ってからは,4月1日から5月5日の事故発生直前までの合計で風神号が1698回,雷神号が2061回であった。 (5)平成12年ころ,風神号及び雷神号の立席部分に亀裂が認められたため,被告会社において溶接等により応急処置を施した後,最終的にはシートポストやハーネスを含めた座席部分全体が,被告人A1の決裁を経て,すべて新 品と交換された。また,平成15年ころから,客車数台のシャーシやボディにも相次いで亀裂が確認されるようになり,被告会社の技術係員が溶接等を施すなどして対応していたが,このような亀裂の発生が続き,その個数や頻度も次第に増えているように思われたことから,平成16年ころ,被告人A3(同被告人についても判示第2の事実についての被告人とはなっていないが,便宜上,このように称することとする。以下同じ。)が被告人A2に対し,シャーシを新品に交換すべきであると提案したところ,被告人A2が被告人A1にその旨を報告してシャーシやボディの取替えが検討され,平成17年3月に風神号の,同年6月には雷神号のシャーシ及びボディがすべて新品に交換された。 一方,ボギーアーム及びボギー先端軸については,「風神雷神Ⅱ」の運行開始以来,約15年間,一度も交換されないまま使用されていた。そし 同年6月には雷神号のシャーシ及びボディがすべて新品に交換された。 一方,ボギーアーム及びボギー先端軸については,「風神雷神Ⅱ」の運行開始以来,約15年間,一度も交換されないまま使用されていた。そして,風神号の2両目客車左側のボギー先端軸の破断面の観察結果等によれば,平成18年11月下旬には,同先端軸のボギーアームとの取付箇所部分に金属疲労により深さ約20ミリメートルの亀裂が生じており,その後本件事故に至るまでさらに亀裂が深まったと推定されているところ,同亀裂はボギー先端軸をボギーアームから取り外して検査しなければ確認できないものであるのに,本件事故発生時までに被告会社においてこのような検査は実施されず,同亀裂の存在に気付いた者はいなかった。なお,本件事故後比較的間もない平成19年6月1日に雷神号のボギー先端軸を抜き取って検査したところ,4両目客車右側のボギー先端軸に,外縁から約15ミリメートルの深さに達する亀裂が存在し,その部分にわずかな力を加えただけで破断してしまった。 (6)ところで,昇降機等で特定行政庁が指定するものの所有者は,定期に一級建築士若しくは二級建築士又は国土交通大臣が定める資格を有する者に検査をさせて,その結果を特定行政庁に報告しなければならず(建築基準法〔平成18年法律第92号による改正前のものをいう。以下同じ。〕12条 3項),検査結果報告時期は,昇降機等の種類,用途,構造等に応じて,おおむね6月から1年までの間隔をおいて特定行政庁が定める時期とされ(建築基準法施行規則6条),これらは遊戯施設にも準用されていた(建築基準法88条1項)。 大阪府吹田市(以下,「吹田市」という。)には建築主事が置かれており(吹田市建築基準法施行細則2条),特定行政庁に該当するところ,同細則13条は,建築基準法12条3項の規定 築基準法88条1項)。 大阪府吹田市(以下,「吹田市」という。)には建築主事が置かれており(吹田市建築基準法施行細則2条),特定行政庁に該当するところ,同細則13条は,建築基準法12条3項の規定により市長が指定する昇降機及び工作物として,同法施行令138条2項2号及び3号の遊戯施設を規定し,これらに係る報告の時期については,毎年4月1日から12月25日までとしていた。しかし,実務上,報告の時期はこの期間に限定する趣旨と解されておらず,吹田市においても,12月26日から3月31日までの間の定期検査報告も適法なものとして受理し,建築基準法7条5項に基づく検査済証の作成年月日を基準として個々の遊戯施設の定期検査報告日の提出期限とする運用を行っており,「風神雷神Ⅱ」については,検査済証の作成年月日が平成4年3月18日とされていることから,報告書(定期検査報告書)の提出期限は毎年3月18日とされていた。そして,「風神雷神Ⅱ」についての平成18年度の法定定期検査の実施期間は,遅くとも平成18年12月18日から平成19年3月18日までの間であった。 遊戯施設の法定定期検査における標準となるべきものとしてはJIS規格が存在するところ,遊戯施設の検査標準を定めた「JISA1701」においては,「車輪軸は,き裂及び甚だしい摩耗がないこととする。」「車輪軸は,1年に1回以上の探傷試験を行うこととする。」と規定されており,取り外して検査することが可能な「車輪軸」に関しては,取り外した上で探傷検査を行うべきことを規定しているものと解される。 なお,被告会社においては,従前,「風神雷神Ⅱ」の法定定期検査に際して,ゆるみが出るなどの不具合が認められたものを除き,風神号等のボギー 先端軸をボギーアームから取り外したことはなく,もとよりこれらを分解した上で探 は,従前,「風神雷神Ⅱ」の法定定期検査に際して,ゆるみが出るなどの不具合が認められたものを除き,風神号等のボギー 先端軸をボギーアームから取り外したことはなく,もとよりこれらを分解した上で探傷検査を実施したことは一度もなかった。 (7)被告人A1は,昭和47年3月,被告会社に入社し,平成3年1月,管理営業部次長に,平成7年1月に組織改編に伴い営業部長兼技術施設管理部長に就任し,平成9年5月には担当取締役となった。その後,平成18年6月から取締役総括施設営業部長となり,本件当時もその地位にあって,被告人A2ら部下職員を指揮監督し,施設営業部の業務である「風神雷神Ⅱ」をはじめとする遊戯施設の運行管理や保守点検整備などについて総括的に掌理する業務に従事していた。 被告人A2は,昭和47年2月にE3株式会社から被告会社に出向し,平成4年4月に管理営業部技術課長となり,平成12年6月には施設管理部長となった。平成14年8月にE3株式会社を定年退職して出向を解かれたが,引き続き被告会社の施設管理部長を務め,その後施設営業部長となり,本件当時もその地位にあって,施設営業部の業務全体について,施設営業部営業課及び同部技術課の各課長を指揮し,それらの業務を統括していた。 被告人A3は,昭和47年3月に被告会社に入社し,当初から技術部技術課に配属され,それ以降一貫して遊戯施設の点検及び保全修理等の業務に携わっていた。そして,平成14年9月から本件当時まで施設営業部技術課長の地位にあり,平成12年ころから「風神雷神Ⅱ」に関する定期検査報告書の作成等の業務にも従事していた。 なお,被告人A1,同A2及び同A3はいずれも,本件当時,遊戯施設につき定期検査を実施する資格である昇降機検査資格を有していた。 (8)被告会社は,集客力向上の一環として,平成19年 従事していた。 なお,被告人A1,同A2及び同A3はいずれも,本件当時,遊戯施設につき定期検査を実施する資格である昇降機検査資格を有していた。 (8)被告会社は,集客力向上の一環として,平成19年3月に開業35周年を迎える記念イベントとして,D内に新たに迷路遊戯施設を建設することとし,平成18年11月ころには,その建設の発注をしたが,これに伴いD内の工作室を解体する必要が生じた。被告人A2は,被告人A1に対し,新し い工作室が建設されるまでの間,古い工作室内に保管されていた工作機械や予備部品等の仮置き場として風神号等の整備点検車庫を使用することを提案し,その了承を得た。そして,平成19年1月ころ,被告人A2は,前記車庫を部品等の仮置き場として使用している間は風神号等の定期検査をすることができなくなることから,被告人A1に対し,「風神雷神Ⅱ」の分解検査は先送りすることになる旨報告し,被告人A1は,それが少なくとも同年4月以降となるという意味であることを知りながらこれを了承した。他方,そのころ,被告人A2は被告人A3に対し,所定の報告書用紙を渡して「風神雷神Ⅱ」の定期検査報告書の作成を指示し,さらに,風神号の分解検査はゴールデンウィーク明けにすると指示した。被告人A3は,風神号等の分解検査は実際には実施していないのに,同年1月30日にすべての検査を行った結果「法不適合の指摘なし」(異常なしの意)であったなどと記載した内容虚偽の定期検査報告書を検査者として作成し,被告人A2が,被告人A1の決裁等を経た上,同年2月16日ころ,全日本遊園施設協会関西支部に同報告書を持参し提出した。 (9)同年5月5日午後零時50分ころ,風神号が,同日46回目の営業運行を開始したところ,駅舎プラットホームから軌道距離約223メートルの地点において,風神 関西支部に同報告書を持参し提出した。 (9)同年5月5日午後零時50分ころ,風神号が,同日46回目の営業運行を開始したところ,駅舎プラットホームから軌道距離約223メートルの地点において,風神号2両目客車の左側ボギー先端軸のボギーアームとの取付け部分が破損し,ピン付きボルトナットが落下した。風神号は,激しく左右に揺れながら走行を続けたが,駅舎プラットホームから軌道距離約758メートル地点付近で2両目客車の左側車輪装置が脱落し,同客車は左方に大きく傾斜して,その座席部分の一部が乗客もろとも軌道左側の鉄柵に衝突し,車体やシャーシがガイドレールにも衝突・破壊するなどして,最終的に急停車した。このとき,風神号には,1両目客車に3名,2両目客車に4名,3両目客車に4名,4両目客車に3名,5両目客車に4名,6両目客車に2名の合計20名の乗客が乗っていたが,この事故の結果,2両目客車1列目左 側座席の乗客が死亡し,2両目ないし6両目の乗客のうち合計12名が傷害を負った。 (10)本件事故でボギー先端軸が破断した原因について,独立行政法人Fの鑑定によれば,破断したボギー先端軸の断面をマクロ観察すると,①破断面は全体的に平坦,②破断面のほぼ全領域に渡ってビーチマーク(縞模様)が観察される,③軸下側にラチェットマーク(複数の起点から発生した亀裂が合体してできる段差)が観察される,④破断面左上部では破面が平坦ではなく,外側が盛り上がった形状になっており,ビーチマークが観察されない,といった特徴がみられ,これらから,ボギー先端軸に生じていた亀裂が,台車上での下側から上向きに進展し,④の特徴から,疲労破壊が延性破壊に移行して急速破壊したとみられ,その原因としては,ボギー先端軸の破断面において本件事故当日につながっていた部分が走行中の荷重によって急速 での下側から上向きに進展し,④の特徴から,疲労破壊が延性破壊に移行して急速破壊したとみられ,その原因としては,ボギー先端軸の破断面において本件事故当日につながっていた部分が走行中の荷重によって急速破壊に至ったと推定され,また,ミクロ観察の結果,疲労破面の特徴である縞模様(ストライエーション)が全領域で観察されたことから,本件当時までの亀裂の進展は金属疲労によるものであると結論づけられた。また,亀裂の形成過程については,亀裂発生から2ミリメートルの深さに達してからは,疲労亀裂の進展速度は場所に拠らずほぼ一定であり,本件当日の疲労亀裂の前縁位置は亀裂発生点から深さ方向に約32ミリメートル進展し,平成18年11月末時点では,12ミリメートル戻って,少なくとも深さ約20ミリメートルの疲労亀裂があったものと推定された。 前記のとおり,この亀裂はボギー先端軸をボギーアームに取り付けた状態では確認できないものであるが,遅くとも平成18年11月末ころ以降は,このような大きさの亀裂であれば,ボギー先端軸をボギーアームから取り外し,油等の汚れを除去していれば,目視でも発見が可能であったと考えられる(実際に,本件後に雷神号のボギー先端軸で確認された深さ約15ミリメートルの亀裂は目視可能であった。)。さらに,磁粉探傷検査(検査対象物 を磁石の磁極間に置き,磁化器を検査対象物に当て,スイッチを入れることで磁場を発生させ,その状態で溶液に混ぜた磁粉をかけ,そこに紫外線ライトを照射することにより,傷の有無を確認するという検査方法)や超音波探傷検査(特殊な音域の音波を検査対象物に送り込み,内部にある途中の傷から跳ね返ってくる音波によって,欠陥を検出するという検査方法)を実施した場合,この亀裂を見落とす可能性は非常に小さく,ことに検査対象物の表層面に出る金属疲 検査対象物に送り込み,内部にある途中の傷から跳ね返ってくる音波によって,欠陥を検出するという検査方法)を実施した場合,この亀裂を見落とす可能性は非常に小さく,ことに検査対象物の表層面に出る金属疲労による亀裂を検出するのに精度が高い磁粉探傷検査を実施していれば,確実に発見できたものと認められる。 以上の事実を踏まえ,被告人A1及び同A2の過失の内容について検討する。 (1)予見可能性本件事故の原因は,前述のとおり,風神号2両目客車左側の車輪装置と台車をつなぐボギー先端軸に亀裂が生じていたのに,これを看過して風神号を走行させたため,残った結合部分の面積では走行時の荷重に耐えられなくなり,走行中にボギー先端軸が破断して車輪装置が脱落したことにある。なお,関係各証拠によれば,風神号のボギー先端軸に構造上の欠陥はなく,前述の鑑定における推定のとおり,亀裂の発生と進展はもっぱら金属疲労によるものと認められる。 そして,前記認定のとおり,平成18年11月末時点で,風神号のボギー先端軸には深さ約20ミリメートルの亀裂が発生していたと推定され,また,その時点において「風神雷神Ⅱ」を設置してから既に14年が経過していたところ,①前記2(5)のとおり,平成12年ころから風神号のボディやシャーシに亀裂等が発生するようになり,溶接による補強のみならず新品への交換も行っていたのであるから,「風神雷神Ⅱ」の経年劣化が進行していたことは外部的にも明らかであったものであって,ボギー先端軸に限ってみても,平成14年ころ(本件事故の5年前ころ)には,定期検査時にボギー先端軸のナットがゆるんで抜けやすくなっているものが出てくるようになっており, 経年劣化の影響が生じている可能性が強く疑われる状況が現実に発生していたと認められること,②関係各証拠によれば,かかる経 のナットがゆるんで抜けやすくなっているものが出てくるようになっており, 経年劣化の影響が生じている可能性が強く疑われる状況が現実に発生していたと認められること,②関係各証拠によれば,かかる経年劣化の状況については被告人A1及び同A2にも報告されており,遅くとも平成16年ころからは被告人両名もかかる状況を認識していたと認められること,③そもそも「風神雷神Ⅱ」自体が前記2(2)のような起伏が大きく複雑な軌道上を日々多数回にわたり高速度で走行するコースターであり,走行中にかかる荷重は非常に大きかったといえる(「風神雷神Ⅱ」の利用上の注意事項にも,「走行中,体重の3倍以上の重力がかかります」との記載がみられる。)が,関係各証拠によれば,とりわけボギー先端軸は,風神号等の構造上,車体の荷重が最もかかる部品であって,金属疲労が生じやすい状況にあったこと,④被告人A1及び同A2の前記2(7)の被告会社における職務内容等を総合すれば,被告人A1及び同A2は,遅くとも平成18年11月末時点で,風神号のボギー先端軸に亀裂が生じている可能性を認識することができたものであり,かつ,これを放置した場合,亀裂が荷重により進展し,最終的にボギー先端軸が破断に至る可能性が高く,また,走行中にボギー先端軸が破断すれば,車体は支えを失い,車輪装置が外れるなどして,風神号の乗客や付近にいた来園者の生命身体に危険が及ぶことを容易に予見することができたといえる。 したがって,遅くとも平成18年11月末ころ以降,被告人A1及び同A2には,本件事故についての予見可能性があったと認められる。 (2)結果回避可能性本件事故の原因となった風神号のボギー先端軸の亀裂については,前記2(10)のとおり遅くとも平成18年11月末ころには目視可能な大きさになっていたと考えられるとこ められる。 (2)結果回避可能性本件事故の原因となった風神号のボギー先端軸の亀裂については,前記2(10)のとおり遅くとも平成18年11月末ころには目視可能な大きさになっていたと考えられるところ,ボギー先端軸とボギーアームの結合には「中間ばめ」という方法が採用されており,手間はかかるものの,ボギーアームからボギー先端軸を破壊せずに取り外すことは比較的容易で,また,Dにはボ ギー先端軸を取り外すための工具も存在していた。したがって,ボギー先端軸をボギーアームから取り外して,目視による検査を実施することによっても亀裂を発見することは可能であったといえるが,もとより,検査対象物の表層面に出る金属疲労による亀裂を検出するのに精度が高い磁粉探傷検査を実施すれば,同亀裂が生じていることは容易に判明し,本件事故の発生を防止することができたといえる(なお,関係各証拠によれば,被告会社の従業員における磁粉探傷検査の技能等は必ずしも十分なものではなかったものの,平成18年11月末ころ以降の本件事故の原因となった亀裂の大きさからすれば,被告会社の従業員による磁粉探傷検査の実施によっても亀裂の発見は可能であったと考えられる。)。 (3)注意義務の内容ア風神号の経年劣化等による注意義務について前記のとおり,ボギー先端軸が,風神号の車体台をボギーアームとともに支える重要な機能を有していることやボギーアームから取り外すことが可能であるという構造等に加え,「風神雷神Ⅱ」について経年劣化が進行していたこと等に照らせば,被告人A1及び同A2には,遅くともボギー先端軸に前記のような大きさの亀裂が発生したと推定される平成18年11月末ころ以降本件事故発生時まで,法定定期検査の際であるか否かにかかわりなく,条理上,部下職員をして,風神号のボギー先端軸に亀裂等が 端軸に前記のような大きさの亀裂が発生したと推定される平成18年11月末ころ以降本件事故発生時まで,法定定期検査の際であるか否かにかかわりなく,条理上,部下職員をして,風神号のボギー先端軸に亀裂等が生じていないかを,ボギー先端軸をボギーアームから取り外させて探傷検査を実施させることによって確認し,その結果に基づき,ボギー先端軸の補修ないし交換等を行い,本件事故の発生を防ぐ注意義務があったと認めることができる。 イ法定定期検査の一内容としてボギー先端軸をボギーアームから取り外させ,探傷検査を実施させる注意義務について(検察官の主張①)(ア)次に,被告人A1及び同A2において,法定定期検査の一内容とし て,風神号のボギー先端軸をボギーアームから取り外させ,探傷検査を実施させる注意義務を負っていたかについて検討を進めていくが,これに関しては,まず,「車輪軸」について1年に1回以上の「探傷試験」の実施を要求するJIS規格が業務上過失致死傷罪における注意義務の発生根拠となるか,すなわち,JIS規格と建築基準法の定める遊戯施設の法定定期検査との関係が問題となる。 a建築基準法12条3項は,法定定期検査の内容として,「当該建築設備についての損傷,腐食その他の劣化の状況の点検」と定めるにとどまり,点検に際しての具体的な検査項目や検査方法等についてまで直接規定するものではない。そこで,これらについては他に基準を求めることになるが,本件事故当時における遊戯施設の検査標準としては,JIS規格以外に拠るべきものは見当たらない。 この点,JIS規格自体は,工業標準化法に基づき,所定の手続を経て定められた任意の標準ではあるが,建築基準法12条3項は,定期検査をさせる者として,「一級建築士若しくは二級建築士又は国土交通大臣が定める資格を有する者」とし, 業標準化法に基づき,所定の手続を経て定められた任意の標準ではあるが,建築基準法12条3項は,定期検査をさせる者として,「一級建築士若しくは二級建築士又は国土交通大臣が定める資格を有する者」とし,「国土交通大臣が定める資格を有する者」とは昇降機検査資格者を指すところ,国土交通大臣登録講習にかかる昇降機検査資格者の講習テキストにおいては,JIS規格について「建築基準法の規定に基づき,遊園地等に設置された遊戯施設の安全性を確保する目的で,各特定行政庁もしくは所有者の信頼を受けた検査資格者が義務づけられた検査のための検査項目,検査器具,検査方法及び判定基準を各機種別に規定し,検査判定の統一化を図ったものであ」り,「建築基準法の適用されない遊戯施設にも準用されることが望ましい」と記載されている(甲206)。 また,遊戯施設等の検査基準等を定めた昇降機遊戯施設定期検査実務要綱でも,定期検査は建築基準法令やJIS規格等に拠り検査資格 者が行うとされている(甲209)。 さらに,日本規格協会発行にかかるJIS規格の解説をみても,まえがきとして,「この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,財団法人Hから,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,国土交通大臣が改正した日本工業規格である。」との記載があり,遊戯施設の検査標準解説の「1.改正の趣旨」として,「2000年,建築基準法施行令の改正が行われたが,これを契機に機種別に制定して運用してきたこれらの規格(注:遊戯施設ごとの複数のJIS規格を指す。)を,同施行令改正に基づく改正と,機種の多様化に対応すべく統合を行う大幅な見直しを行った。」との記載がある(甲204)。 そして,建築基準法を所管する国土交通省住宅 ごとの複数のJIS規格を指す。)を,同施行令改正に基づく改正と,機種の多様化に対応すべく統合を行う大幅な見直しを行った。」との記載がある(甲204)。 そして,建築基準法を所管する国土交通省住宅局建築指導課課長補佐Gは,建築基準法令では,定期検査をJIS規格に従って行うことという規定はないが,同課は,財団法人H発行の「昇降機遊戯施設定期検査業務基準書2004年版」を監修し,JIS規格に従って定期検査を実施するよう周知,指導しており,建築基準法12条3項が昇降機等検査資格者に定期検査の報告を義務づけているところ,昇降機等検査資格者の講習において,講義の科目の内容としてJIS規格を位置づけていること,JIS規格の解説の「4.適用範囲」においても,「建築基準法第12条に基づく定期検査に適用される」と記述されていることから,国土交通省としては,実際上,建築基準法12条3項に規定する定期検査は,JIS規格に従って行われているものと考えていた旨供述しており(甲207),その供述の信用性に特段疑問を差し挟むべきところは見当たらない。 以上の諸点によれば,遊戯施設の法定定期検査とJIS規格とは極 めて密接な関係があり,法定定期検査においては,JIS規格に従ってこれを行うことが強く期待されていたものとみることができる。 b法定定期検査の実際の実施状況等をみても,被告会社から定期検査報告を受けていた吹田市建築指導課の職員は,全日本遊園施設協会が発行していた「遊戯施設安全管理マニュアル」に,コースターの維持管理などについてJIS規格を参照すると盛り込まれてあったことや,検査資格者になるための講習でJIS規格に沿って検査すべきものとされたテキストが使われていることなどから,「定期検査はJIS規格に従って行われるものである」旨認識していた(甲137 てあったことや,検査資格者になるための講習でJIS規格に沿って検査すべきものとされたテキストが使われていることなどから,「定期検査はJIS規格に従って行われるものである」旨認識していた(甲137)上,近畿2府4県の特定行政庁の了承を得て制定された定期検査報告の様式においても,JIS規格の定めに従って定期検査を実施することが前提とされていた。 加えて,D従業員,D以外の遊園地の従業員らがそろって,法定定期検査はJIS規格に従って行わなければならないと認識しており,それが当然である旨供述しており,また,被告人A1,同A2及び同A3においても,捜査段階及び公判段階において一貫して,法定定期検査はJIS規格に従って行うものである旨の供述をしているところである。 なお,本件事故後,国土交通省の通知により実施された全国の遊戯施設に対する緊急点検の結果,約4割の遊戯施設で「車輪軸」の探傷検査を1年以内に実施していないことが判明しており,弁護人はこれに依拠して,遊園地業界において法定定期検査をJIS規格に従って実施することは一般的ではなかった旨主張するが,前記緊急点検の結果によれば,むしろ,手間と費用のかかる「車輪軸」の探傷検査ですら過半数の遊戯施設で履行されているといえるのであるから,弁護人の主張は採用できない。 c以上によれば,本件事故当時,遊戯施設の法定定期検査において,JIS規格に従ってこれを実施することは遊戯施設業界内の共通認識であり,実務上,確立した慣行として定着していたものであったと認められる。 (イ)次に,ボギー先端軸がJIS規格で1年に1回以上の「探傷試験」の実施を要求されている「車輪軸」に当たるかについてみる。 a昇降機検査資格者の養成等を行う財団法人Hの常務理事で,平成18年のJIS規格改正作業に関与したIは, 規格で1年に1回以上の「探傷試験」の実施を要求されている「車輪軸」に当たるかについてみる。 a昇降機検査資格者の養成等を行う財団法人Hの常務理事で,平成18年のJIS規格改正作業に関与したIは,JIS規格上「車輪軸」について1年に1回以上の探傷検査を行うこととされているのは,車輪軸は高速で走行するコースターなどの台車を軌道上で支えている軸であり,これに亀裂や傷があった場合,走行中にいつ軸が破断して台車が軌道から脱線し大事故につながるか分からないことから,乗客の安全確保の観点により,1年に1回の定期検査の際には軸をフレームから外して,軸の表面全体について小さな傷や亀裂がないか探傷試験を行うこととしたものである,コースターの車輪の形態は多種多様で,それらに応じてどれが車輪軸に当たるか規定することができないので「車輪軸」という概念で規定したもので,車輪に直接つながっておらず車輪装置とつながっていても,軌道上で台車を支える役割をする軸についてはJIS規格で1年に1回以上探傷検査をすることとされている「車輪軸」に該当する,と供述している(甲210)。 これに関連し,J大学K学部教授で財団法人Hの遊戯施設性能評価委員も務めるLは,構造力学では,軸の両端に車輪が直接結合している軸であっても,軸の片側に車輪装置が付いているボギー先端軸であっても,走路上で台車を支える役割を果たしているのは同じであることなどから,ボギー先端軸も構造力学上の車軸概念に当たり,平成18年当時のJIS規格が「車輪軸」について1年に1回以上探傷試験 を行うこととするとしたのは,そのかかる荷重の大きさから,多数回高速走行を重ねることで金属疲労を起こし,傷や亀裂が生じ,走行中これが大きくなり軸が破断すれば,脱線するなど乗客が死傷する大事故につながりかねないため,1年に1 ,そのかかる荷重の大きさから,多数回高速走行を重ねることで金属疲労を起こし,傷や亀裂が生じ,走行中これが大きくなり軸が破断すれば,脱線するなど乗客が死傷する大事故につながりかねないため,1年に1回は,軸全体に目に見えない傷や亀裂がないか探傷試験を行って,傷や亀裂が無いことを確認することとされたものと思われるので,構造力学上の「車軸」概念とJIS規格の「車輪軸」概念とは同じと考えるのが合理的であり,その意味で,ボギー先端軸もJIS規格で1年に1回以上探傷試験をすることとされている「車輪軸」に当たると考えるのが合理的であるなどと供述している(甲211,212)。 また,国土交通省の見解として,同省の課長補佐であるGは,本件事故後,国土交通省建築指導課内で検討した結果,JIS規格で「車輪軸」が1年に1回以上探傷試験を行うこととされているのは,車輪軸がコースターの台車を支える軸であり,走行を重ねることで繰り返し荷重を受け,金属である以上,金属疲労によりやがて破断に至るおそれがあり,目に見えない傷や亀裂を探傷試験をして発見しないと大事故につながってしまうおそれがあるからであり,ボギー先端軸についても,車輪装置とつながっていて,コースターの台車を支える軸であることから,「車輪軸」に該当すると判断できるであろうとの結論を出したと供述している。 このように,I,L及びGは,それぞれの立場から,いずれもボギー先端軸はJIS規格上の「車輪軸」に当たると供述するところ,その供述内容は,いずれも具体的で不自然なところはなく,特にIの供述内容はJIS規格の改正に携わった担当者の見解であり,また,L及びGの見解もそれぞれの知見ないし職責を踏まえて述べられたものであって,いずれも合理的な根拠に基づくものであるといえるから, 互いにその信用性を高め合って 携わった担当者の見解であり,また,L及びGの見解もそれぞれの知見ないし職責を踏まえて述べられたものであって,いずれも合理的な根拠に基づくものであるといえるから, 互いにその信用性を高め合っており,したがって,ボギー先端軸が「車輪軸」に当たるという解釈は十分首肯できるものである。 bD以外の遊園地等における実際の検査状況についてみても,関係各証拠によれば,「風神雷神Ⅱ」と同様の構造を持つMの立席コースター「N」の定期検査を実施しているE4株式会社,Oの立席コースター「P」の定期検査を実施している株式会社E5,Qの立席コースターの定期検査を実施しているE6株式会社は,いずれもボギー先端軸を抜いた上,非破壊検査(検査対象物を壊すことなく,欠陥や劣化の状況を調べる検査)を専門とする会社に,ボギー先端軸の磁粉探傷検査等を外注して行っており,前記I,L及びGの見解は実務的にも相当程度理解されているものといえる。 cこれに対し,弁護人は,①I,L及びGの各供述は,「車輪軸」の概念について弁護人が平成20年8月26日付け意見書をもって反論した後に検察官が実施した取調べによるもので,前記反論を排斥すべく誘導的に得られたものであることが容易に推察できるし,JIS規格の改正に関与したIが,本件事故が発生した後の取調べで,ボギー先端軸は「車輪軸」には当たらないなどと,JIS規格自体の不備を認めるような供述をするわけがない上,Gについても,JIS規格の不備に対する国土交通省の指導監督責任を回避したいとの思いがあったはずである,②JIS規格は,IやLのように特殊専門的な高度な知識を有する者だけを対象としたものではなく,社会における通常の知識や経験しか持ち合わせていない一般国民が依拠する基準であるから,「車輪軸」が何を指すかは,日本語の常識的な用語法 特殊専門的な高度な知識を有する者だけを対象としたものではなく,社会における通常の知識や経験しか持ち合わせていない一般国民が依拠する基準であるから,「車輪軸」が何を指すかは,日本語の常識的な用語法から素直に解釈して特定すべきものである(すなわち,車輪に直結している軸を指すと解するべきである)のに,「車輪軸」に探傷検査を必要とした理由から,目的論的に「車輪軸」とは何であるかを特定していくとい う立論は,国民に対し不測の損害を与えかねない,③平成5年1月に実施された「風神雷神Ⅱ」の最初の法定定期検査に当たり,「風神雷神Ⅱ」を製造した株式会社E1が模範として分解検査等のやり方を実演した際,ボギー先端軸をボギーアームから取り外すことなく,探傷検査も実施しなかったこと,及び「風神雷神Ⅱ」の設置時,株式会社E1から被告会社に交付された検査記録用紙にはボギー先端軸の摩耗を記録する用紙がなかったこと(弁9)は,製造会社である株式会社E1自体,ボギー先端軸が「車輪軸」ではないと認識していたことを示すものである,④本件事故後に出された平成20年国土交通省告示第284号において,ボギー先端軸は,「車輪軸」ではなく,「走行台車先端軸」として別の検査項目に位置付けられている(甲214),などとして,ボギー先端軸はJIS規格上の「車輪軸」には当たらないと主張する。 しかしながら,Iらの供述の信用性について弁護人が論難するところは,いずれも一般的・抽象的な不適切な捜査の可能性ないし虚偽供述のおそれの指摘に止まり,Iらの供述の信用性にそれ自体で合理的な疑いを生じさせるものではないし(前記①),本件におけるJIS規格が名宛人としているのが社会の単なる一般通常人ではなく,一定の実務経験や講習,試験を経て相応の専門的知識を有している昇降機検査資格者であることか せるものではないし(前記①),本件におけるJIS規格が名宛人としているのが社会の単なる一般通常人ではなく,一定の実務経験や講習,試験を経て相応の専門的知識を有している昇降機検査資格者であることからすれば,ボギー先端軸が「車輪軸」に当たると解釈することが,直ちに一般人の予測可能性を逸脱するものとはいえない(前記②)。そして,関係各証拠によれば,平成5年1月の「風神雷神Ⅱ」の法定定期検査はあくまで被告会社が主体となって実施したものであり,その際は,株式会社E1から検査方法の全てについて教示を受けるのではなく,被告会社においてそれまで培ってきた検査方法をも活かして検査を実施したものと認められるから,株式会 社E1において,ボギー先端軸をボギーアームから取り外さなかったとしても,そのことが不自然とまではいえないし,本件における被告会社関係者のJIS規格に従うべき検査義務を左右するような性質の出来事とみることもできない。また,「風神雷神Ⅱ」の設置時に株式会社E1から被告会社に交付された検査記録用紙は,「風神雷神Ⅱ」の軸の摩耗を測定した結果を記載する用紙であるところ,その当時適用されていた昭和50年版のJIS規格には「車輪軸」の「摩耗」に関しては特段規定されていないことからすれば,前記の検査記録用紙にボギー先端軸についてのものがなかったことをもって,株式会社E1がボギー先端軸をJIS規格上の「車輪軸」に該当しないと考えていたことの証左にはならない(以上,前記③)。さらに,前記の国土交通省の告示については,当該告示の素案作りに関与したI及びGは,JIS規格で1年に1回以上探傷検査を行うこととされていた「車輪軸」の概念を,同告示で「走行台車先端軸」「車輪軸」などに細分化したにすぎないと供述しており,その供述内容自体に特段不自然不合理な点 JIS規格で1年に1回以上探傷検査を行うこととされていた「車輪軸」の概念を,同告示で「走行台車先端軸」「車輪軸」などに細分化したにすぎないと供述しており,その供述内容自体に特段不自然不合理な点は認められない(前記④)。 そうすると,弁護人の前記各主張をもって,前記a,bで説示したところが左右されるものではなく,したがって,ボギー先端軸はJIS規格上の「車輪軸」に当たると解することができる。 (ウ)以上で認定してきたところによれば,ボギー先端軸については,遊戯施設業界内で確立した実務慣行として法定定期検査の際に拠るべきとされるJIS規格において,法定定期検査の際に探傷検査を実施することが要求されているものであると認められる。そして,前述したボギー先端軸の重要な機能や,ボギー先端軸について適切な探傷検査を実施するためにはボギー先端軸をボギーアームから取り外す必要があるところ,それが可能な構造となっていたこと,被告人A1及び同A2の被告会社 における職務内容等からすれば,被告人A1及び同A2は,前記(3)アの注意義務と重畳的に,法定定期検査において,ボギー先端軸をボギーアームから取り外させて探傷検査を実施させるなどして,ボギー先端軸の破断等による事故の発生を未然に防止すべき注意義務があったと認めることができる。 (4)過失行為の態様等(検察官の主張②)アこれまでに述べてきたとおり,被告人A1及び同A2は,風神号の経年劣化の状況等にかんがみ,平成18年11月末ころ以降本件事故発生までの間に,特に同年12月18日以降平成19年3月18日までの間においては法定定期検査の一内容として重畳的に,自身の部下職員に適切に指示するなどして,ボギー先端軸をボギーアームから取り外させ,探傷検査を実施させるなどして本件事故の発生を未然に防止すべき での間においては法定定期検査の一内容として重畳的に,自身の部下職員に適切に指示するなどして,ボギー先端軸をボギーアームから取り外させ,探傷検査を実施させるなどして本件事故の発生を未然に防止すべき注意義務があったと認められる。したがって,本件の過失行為としては,被告人両名が,前記の適切な指示等を怠ったことを挙げることができる。しかし,検察官はさらに,過失行為の態様等として,被告人両名はボギー先端軸をボギーアームから取り外させて探傷検査を実施させるべきとの認識があったにもかかわらず,法定定期検査,ことにその一内容である分解検査をあえて延期したと主張する。 この点,ボギー先端軸について十分な探傷検査を実施するためには,ボギー先端軸をボギーアームから取り外す必要があることはこれまで述べてきたとおりであり,したがって,風神号の分解検査も法定定期検査の一内容として当然に含まれるところ,前記2(8)のとおり,被告人A1及び同A2は,風神号の分解検査を法定定期検査の実施期間以降に延期したものである。もっとも,弁護人は,被告人A1及び同A2の公判供述等に依拠し,被告人両名にはボギー先端軸をボギーアームから取り外した上で探傷検査を実施するべきとの認識はなく,ボギー先端軸を取り外した上での検 査をあえて延期したものではない旨主張するので,以下,被告人両名の主観面について検討する。 イ被告人A2について検察官は,被告人A2がボギー先端軸をボギーアームから取り外させて探傷検査を実施させるべきと認識していたことの根拠として,①同被告人が長年,被告会社において遊戯施設の定期検査等の職務に従事し,昇降機検査資格者の講習においてJIS規格などの講師を務めていたこと,②同被告人が,捜査段階において,「ボギー先端軸も走路上で車体を支える役割をしている軸であり 遊戯施設の定期検査等の職務に従事し,昇降機検査資格者の講習においてJIS規格などの講師を務めていたこと,②同被告人が,捜査段階において,「ボギー先端軸も走路上で車体を支える役割をしている軸であり,JIS規格の定めからして,車軸ともいえる部分として,ボギーアームから抜き取って探傷検査をすべき部分だと認識していた」(乙17)旨供述していること,③被告会社において「風神雷神Ⅱ」の運行開始以来,定期検査に際して,ボギーアームから抜かないまでもボギー先端軸の探傷検査を実施してきたこと,④同被告人が,ボギー先端軸がボギーアームから取り外すことが可能な構造になっていることを理解していたこと,を挙げる。 まず,被告人A2において,ボギー先端軸がJIS規格上の「車輪軸」に当たるとの認識を有していたかについてみると,検察官の指摘する諸点のうち,同被告人の被告会社における実務経験等(前記①)やボギー先端軸の機能及び構造等についての被告人A2の理解(前記②の供述の前半部分,④)からすれば,同被告人は,ボギー先端軸がJIS規格上の「車輪軸」に当たると解すべきことについて認識することが十分可能な状況であったとはいえる。しかしながら,他方,被告人A2は,公判段階では,「JIS規格上の『車輪軸』とは車輪が直結している回転の支点となる軸のことを指すと考えており,ボギー先端軸が『車輪軸』に当たるとの認識はなかった」旨供述しているところ(第8回公判速記録2頁),JIS規格が「ボギー先端軸」という一義的な文言をもって規定しているものでは ないことからすればかかる被告人A2の公判供述がそれ自体直ちに不自然・不合理とまではいい難い。また,被告人A2の捜査段階の供述のうち,「ボギー先端軸がJIS規格の定めからして車軸ともいえる部分と認識し、、、、、、、、、ていた」との 公判供述がそれ自体直ちに不自然・不合理とまではいい難い。また,被告人A2の捜査段階の供述のうち,「ボギー先端軸がJIS規格の定めからして車軸ともいえる部分と認識し、、、、、、、、、ていた」との部分(前記②の供述の後半部分)については,それ自体微妙な言い回しであって,ボギー先端軸がJIS規格上の「車輪軸」に該当することを被告人A2が明確に認識していたことまでをも意味するものではないことはもとより,平成5年1月に株式会社E1の担当者立会いの下に実施した最初の法定定期検査において,被告会社が主体となって検査を行ったにもかかわらず,被告人A2が株式会社E1の担当者に対し,ボギー先端軸をボギーアームから取り外して探傷検査を実施する必要がないかについて何らの質問もせず,被告会社においてボギー先端軸をボギーアームから取り外して探傷検査を実施することもなく,その後もごく例外的な場合を除いてそのような検査を長期間にわたり実施してこなかったこと,さらに,同じ調書中で,被告人A2自身,「JIS規格の車軸が具体的に何を指しており,『風神』車両のボギー先端軸部分が,それに当たるかどうかなど,今回の事故前に,具体的に検討したことはなかった」旨供述していることと整合性を欠くといわざるを得ず,当該供述部分がそれ自体で信用性が高いとはいい難い。そして,検察官が指摘するその余の点(前記③)などについても,被告会社の検査担当者においてボギー先端軸をボギーアームから取り外して探傷検査を実施すべきとの認識を有していたことを一応推認させる根拠になるとはいえるとしても,被告人A2においてボギー先端軸がJIS規格上の「車輪軸」に当たるとの認識を有していたとまで直ちに推認させるものではないというべきである。 そうすると,被告人A2においてボギー先端軸がJIS規格上の「車輪軸」 おいてボギー先端軸がJIS規格上の「車輪軸」に当たるとの認識を有していたとまで直ちに推認させるものではないというべきである。 そうすると,被告人A2においてボギー先端軸がJIS規格上の「車輪軸」に当たるとの認識を有していたとまで認定するには合理的な疑いが残るというべきである。このように,被告人A2において法定定期検査でボ ギー先端軸の探傷検査を実施すべきとの認識を欠いていたと認めるべきこと,また,そもそも被告会社においては風神号等の法定定期検査に際し(不具合の認められたものを除き)ボギー先端軸をボギーアームから取り外して検査を行ったことはそれまでに一度もなかったことからすれば,法定定期検査を延期したこととボギー先端軸をボギーアームから取り外した上での探傷検査の実施がなされなかったこととの間の因果関係は認められないから,「法定定期検査を延期させたこと」それ自体は被告人A2の過失行為の内容とはならないというべきである。 なお,先にみたとおり,被告人A2らが,これまでボギー先端軸をボギーアームから取り外さない状態であったにせよ,探傷検査を実施してきたこと等によれば,同被告人において,「風神雷神Ⅱ」を安全に運行させるためにはボギー先端軸全体に対して探傷検査を実施することが望ましいと考えていたということは推認できるが,本件事故以前に風神号等のボギー先端軸に亀裂等が発見されたことがなかったことなどによれば,本件当時,被告人A2において,法定定期検査とは無関係に,ボギー先端軸をボギーアームから取り外した上で探傷試験を実施すべきとの認識を有していたとも認められないというべきである。 ウ被告人A1について検察官は,被告人A1がボギー先端軸をボギーアームから取り外させて探傷検査を実施させるべきと認識していたことの根拠として,①同被告人が長年被 も認められないというべきである。 ウ被告人A1について検察官は,被告人A1がボギー先端軸をボギーアームから取り外させて探傷検査を実施させるべきと認識していたことの根拠として,①同被告人が長年被告会社の検査部門を統括するなどの職責を担っており,昇降機検査資格を取得するなど,その知識・経験はそれなりのものがあったと認められること,②同被告人が,捜査段階において,「前年の定期検査から1年以内に,必ず,定期検査で,車両などを分解して,車軸や車輪に傷がないか検査しなければならないと思っていた」「ボギー先端軸というのは,たぶん,車軸のことで,車軸をフレームから抜いて,車軸を目で見て,手 で触って,亀裂があるかどうかを1年に1回は検査しないといけないと決められているんだと思った」などと供述していることを挙げ,被告人A1は,本件事故以前に,軸の名前はどうであれ,ボギー先端軸をボギーアームから抜いて検査すべきと認識していたと主張する。 しかしながら,被告人A1についても,被告会社における職務内容(前記①)や風神号の構造等に照らし,ボギー先端軸がJIS規格上の「車輪軸」に当たると認識することが可能であったとはいえるものの,これらの点に関する知識は被告人A2よりも相当低かったと認められることなどからすれば,同被告人において,ボギー先端軸が「車輪軸」に当たるとの認識まで有していたとは認められないし(もし被告人A1がボギー先端軸がJIS規格における「車輪軸」であると認識していたのであれば,捜査段階において,探傷検査が必要であったことを認識していた旨供述しているはずである。),検察官は,論告において,そこまで主張するものではない。 そして,被告人A1の捜査段階の供述をさらにみると,同被告人は,探傷検査の内容について,「本件事故以前探傷検査というのは,検 はずである。),検察官は,論告において,そこまで主張するものではない。 そして,被告人A1の捜査段階の供述をさらにみると,同被告人は,探傷検査の内容について,「本件事故以前探傷検査というのは,検査器具を使って,車軸の表面の状態の画像を拡大したりするようなものだろうというくらいの認識であり,磁粉探傷検査や超音波探傷検査がどのようなものかもよく分かっていなかった」旨供述するに止まっているのであって(乙5・25頁以下),被告人A1の認識がこのような抽象的なものにすぎない以上,検察官が指摘する同被告人の捜査段階の供述状況(前記②)を考慮しても,本件当時,同被告人がボギー先端軸をボギーアームから取り外して探傷検査を実施すべきであると認識していたと評価することは困難というほかない。 もとより,被告人A1において,(その名称はともかくとしても)ボギー先端軸をボギーアームから取り外して然るべき検査をすべきことを部下 に指示することは十分可能であり,かかる指示がなされていさえすれば,その後の目視での検査ないし探傷検査によって風神号のボギー先端軸に生じていた亀裂の発見に至っていたといえるが,前記でみたところによれば,被告人A2についてと同様,法定定期検査の延期と本件事故との間に因果関係は認められず,したがって,「法定定期検査を延期させたこと」は被告人A1についても過失行為の内容とはならないというべきである。 なお,探傷検査についての被告人A1の認識状況等によれば,被告人A1においても,本件当時,法定定期検査等とは無関係に,ボギー先端軸をボギーアームから取り外した上で探傷検査を実施すべきとの認識を有していたとも認められない。 以上で検討したところによれば,被告人A1及び同A2には,いずれも,ボギー先端軸の機能及び構造並びに風神号の経年等による劣 り外した上で探傷検査を実施すべきとの認識を有していたとも認められない。 以上で検討したところによれば,被告人A1及び同A2には,いずれも,ボギー先端軸の機能及び構造並びに風神号の経年等による劣化の状況等にかんがみ,平成18年11月末ころ以降本件事故発生時までの間に,特に同年12月18日以降平成19年3月18日までの間においては法定定期検査の一内容として重畳的に,自身の部下職員に対して適切に指示するなどして,部下職員をしてボギー先端軸をボギーアームから取り外させて探傷検査を実施させるなどして,本件事故を未然に防止すべき業務上の注意義務があったにもかかわらず,これを怠った過失があると認められる。 第3判示第1(建築基準法上の虚偽報告罪)の事実について 検察官は,被告人らは平成18年度の「風神雷神Ⅱ」の法定定期検査の検査項目の大半についてこれを行ったという実質はないと主張する。これに対し,弁護人は,被告人A3の公判供述等に基づき,被告人らは法定定期検査の検査項目のうち風神号及び雷神号の車輪に直結する軸の探傷検査及び連結器の検査を行っていないに止まり,それ以外のほぼ全ての検査項目については必要な検査を実施したと主張するので,以下,検討する。 「風神雷神Ⅱ」の定期検査報告書の添付書類である「遊戯施設検査表」には, 合計47個の検査項目が存するところ,このうち,「6.8台車・車輪装置」「6.9乗物引上金具・車両連結器等」については,風神号及び雷神号の車両を分解して検査を実施する必要があるところ,関係各証拠によれば,平成18年度の法定定期検査においてこうした検査がなされていないことは優に認められるから,これらについて,「遊戯施設検査表」上で,あたかも前記各検査を済ませたかのように装い,その判定結果をいずれも「A」(指摘なし等の 期検査においてこうした検査がなされていないことは優に認められるから,これらについて,「遊戯施設検査表」上で,あたかも前記各検査を済ませたかのように装い,その判定結果をいずれも「A」(指摘なし等の意)と記載して吹田市長に報告をしたことが虚偽報告に当たることは明らかである。 次に,本件当時,被告会社の施設営業部技術課において「風神雷神Ⅱ」の検査等を主に担当していたRは,平成18年度の法定定期検査においては,「遊戯施設検査表」上の検査項目のうち,「3.4伝動装置」「4.4緊張装置」「7.2空圧装置(コンプレッサ,安全弁等)」「7.5機器及び計器類」については十分な検査を実施したが,その余については,自身は「遊戯施設検査表」上で「A」(指摘なし等の意),「B」(指摘なし(要注意)等の意)又は「C」(法不適合の指摘あり等の意)が判定できるような検査をしていないと供述し(甲164(抄本)),この供述に不自然な点は存しない。 そして,被告人A3は,捜査段階において,「平成19年になると,自分は,被告会社の技術課課長になっており,『風神雷神Ⅱ』の全ての検査に自分が立ち会うということはなくなっており,『風神雷神Ⅱ』の点検の状況を知るためには,その担当者であるRからの報告を受けるか,Rが作成した作業日報などを確認する必要があった。平成19年1月ころ,Rに対し,法定定期検査としては不十分であるが,被告会社が1か月の定期検査(以下,『1か月検査』という。)として実施してきたくらいの検査はしておくようにと指示した。そのような検査では吹田市役所に提出する定期検査報告書を作成するための検査として不十分であることは分かっていた。自分は,技術課の課長として,書類の決裁などの仕事もしなければならず,『風神雷神Ⅱ』について自ら点検などを 行う余裕もほとんどな 報告書を作成するための検査として不十分であることは分かっていた。自分は,技術課の課長として,書類の決裁などの仕事もしなければならず,『風神雷神Ⅱ』について自ら点検などを 行う余裕もほとんどなかった。そのため,風神号の点検などについてはRに任せることにした。同月ころ,『風神雷神Ⅱ』の走路部分について,外部の業者に委託して修理を行った際,それに立ち会ったことがあるが,自分がそのころ,『風神雷神Ⅱ』についてやったことといえば,それくらいのことしかなかった。 Rらが行った作業の内容の詳細についてR本人から報告を受けていたわけではなく,『遊戯施設検査表』上の『A』から『C』までの判定をすることができるくらい詳細な検査をしていないかもしれないとの認識はあったが,Rから特に異常が発生したという報告を受けていなかったことと,それまで問題なく営業を続けてこれていたことから,『遊戯施設検査表』の検査項目の全てについて『A』と記入した。」(乙25ないし27)と供述しているところ,その供述内容は具体的かつ詳細であり,それ自体特段不自然な点は見受けられない。 もっとも,被告人A3は,公判廷においては,「平成19年1月15日,22日及び23日,自ら,風神号及び雷神号については分解しないまでも点検を実施し,軌道の検査も行うなど,分解検査以外の部分についての検査を行った。 捜査段階でも,分解検査以外の部分についての検査は行ったと言ったが,取調官からは,法定定期検査には分解検査が付きものであり,これを実施していない以上は法定検査を実施したとはいえないと言われ,受け付けてもらえなかった。」と供述する。しかしながら,「風神雷神Ⅱ」の検査態勢に関しては,R(甲160(抄本))や,本件当時,被告会社の技術課に所属していたS(甲159)の供述によれば,①被告人A3は,かつては なかった。」と供述する。しかしながら,「風神雷神Ⅱ」の検査態勢に関しては,R(甲160(抄本))や,本件当時,被告会社の技術課に所属していたS(甲159)の供述によれば,①被告人A3は,かつてはRらと一緒に現場に出て作業をすることもあったが,本件事故の3,4年ほど前からは,被告人A2からもっと管理職としての仕事をしろなどと言われたため,現場に出ることも少なくなったこと,②そのため,そのころ以降は,R,S及びTが中心となって『風神雷神Ⅱ』の検査のほとんどを行うようになり,被告人A3は,たまに,Rらの仕事をチェックしに来たり,Rらの手が足りずRらの方から声をかけたときなどに,手が空いていれば現場での作業を手伝う程度になっていたことが 認められるところ,平成18年度の法定定期検査に限って,被告人A3が,わずか数日という短期間で,Uの工事の立会いの合間に,Rらの実施していないその多くを自ら行ったというのは相当に不自然といわざるを得ないし,仮に,被告人A3がそのような検査を実施していたとすれば,重複検査を避けるために,その部位,検査の種類などがRらに連絡されていたはずであるが,被告人A3自身もそのような供述をしていない上,被告人A3の検査内容を記した作業日報すら作成されていない。また,被告人A3は,検察官の反対尋問においては,「風神雷神Ⅱ」の軌条について「A」ないし「C」の判定ができる程度の検査はしていない旨述べるなど(第8回公判速記録55頁),その公判供述自体必ずしも一貫したものでないし,さらに,被告人A3の捜査段階の供述調書(乙27)には,平成18年度の定期検査報告書や遊戯施設検査表の写し等が示された上,Rが行った点検作業内容の書き込みがなされていたことを前提として,これと前記検査表の検査基準とを対照しつつ,風神号等の分解検査に関 平成18年度の定期検査報告書や遊戯施設検査表の写し等が示された上,Rが行った点検作業内容の書き込みがなされていたことを前提として,これと前記検査表の検査基準とを対照しつつ,風神号等の分解検査に関するもの以外の検査項目の実施の有無についても具体的に録取されていることからすれば,捜査段階の取調状況に関する被告人A3の供述内容には疑義があるというべきである。加えて,被告人A3が公判で供述するような検査を自ら行ったことを積極的に裏付けるような他の証拠も見当たらない(なお,弁護人は,被告人A3の公判供述は,被告会社の鍵受付表(弁13)等によって十分裏付けられていると主張するが,これらの証拠は,被告人A3がその供述にかかる具体的な検査を行ったことの有意な裏付けとはいい難い。)。したがって,被告人A3の前記公判供述はにわかに信用できない。 以上によれば,被告会社における平成18年度の法定定期検査において実施された検査内容については,R及び被告人A3の捜査段階の供述に即して認定すべきである。なお,弁護人は,「遊戯施設検査表」における「A」から「C」の判定基準は,一民間団体である近畿ブロック昇降機等検査協議会が作成した「昇降機遊戯施設定期検査実務要綱」(以下,「実務要綱」という。) に拠っているところ,実務要綱は一標準的な記載様式を提示したものに過ぎず,この記載様式に従わなかったからといってこれが建築基準法上の虚偽報告となるものではない,虚偽報告であるか否かはあくまでもその実質で判断されるべきである,とも主張するが,関係各証拠によれば,実務要綱は,遊戯施設等の定期検査報告書について,検査資格者が行う業務の公正と能率の向上に資するため,定期検査報告書等の様式の基準に拠り,前記協議会が近畿管内の特定行政庁の指導のもとにとりまとめたものであり,吹田市に 等の定期検査報告書について,検査資格者が行う業務の公正と能率の向上に資するため,定期検査報告書等の様式の基準に拠り,前記協議会が近畿管内の特定行政庁の指導のもとにとりまとめたものであり,吹田市においても実務要綱の所定の基準等によって検査を行い,報告すべきとなっていた実態があり,また,吹田市の建築指導課としてもそのように理解していたことが認められるのであるから(甲137等),このような実務要綱の法定定期検査の報告に占める重要性等からすれば,弁護人の前記主張はおよそ採用できない。 以上によれば,被告人らによる本件検査は,「遊戯施設検査表」所定の検査項目の一部につき実施されたに止まり,その他については,全くされないか不十分なものであったにもかかわらず,これらの検査項目の全てにつき異常がない旨の虚偽の報告がなされたと認められる。よって,判示のとおり罪となるべき事実を認定した。 (法令の適用)省略(量刑の理由) 本件は,被告会社の取締役総括施設営業部長であった被告人A1,同社施設営業部長であった被告人A2及び同社施設営業部技術課長であった被告人A3が,共謀の上,遊戯施設であるコースター「風神雷神Ⅱ」に関する建築基準法及びその関係法令の定める定期検査報告書1通に虚偽の記載をして,平成19年3月16日ころ,吹田市長に対して提出し(判示第1),被告人A1及び同A2が,各部下職員に適切に指示をして,平成18年11月末ころ以降本件事故発生時までの間に,コースターの車両である風神号の車輪装置と車台枠とをつないでいた軸 (ボギー先端軸)につき必要な検査を適切に行わせ,同軸に生じていた疲労亀裂を発見し,必要な部品の交換等をさせるなどして乗客の死傷事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があったにも関わらず,これを怠って前記疲労亀裂を看過 検査を適切に行わせ,同軸に生じていた疲労亀裂を発見し,必要な部品の交換等をさせるなどして乗客の死傷事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があったにも関わらず,これを怠って前記疲労亀裂を看過したまま,風神号を乗客の利用に供したことにより,平成19年5月5日,前記ボギー先端軸の破損により,走行中の風神号客車を脱輪させ鉄柵に衝突させるなどし,乗客のうち当時19歳の女性1名を死亡させ,ほか12名に対しそれぞれ傷害を負わせた(判示第2)という建築基準法違反,業務上過失致死傷の各事案である。 まず,建築基準法違反(判示第1)についてみる。 「風神雷神Ⅱ」のようなコースターは,多数の乗客を乗せた状態で巻き上げ装置により高所に引き上げられた後,その位置エネルギーを運動エネルギーに転換して,急降下,急上昇,急旋回等を繰り返しながら高速走行する乗物であり,乗客に対しては身長制限が課せられ,シートベルトや安全バー等でその身体を固定しなければ乗車できないものであって,その安全性の確保は,もっぱらコースターを整備する側に依存せざるを得ないのであるから,必要な点検整備を怠って整備不良のまま走行させた場合,一歩誤れば,多数の乗客等の生命,身体に重大な危害を及ぼす可能性の高いものであることは明らかである。したがって,建築基準法の定める1年に1回の定期検査(法定定期検査)は,コースター等の遊戯施設を安全に運行させるための極めて重要な検査であるところ,被告人らが,平成18年度の法定定期検査において,要求されている検査項目の大半について十分な検査を実施していなかったことは前述したとおりであるが,特に台車及び車輪装置に関する検査項目については,車両等を分解して検査することが必要不可欠である上,「風神雷神Ⅱ」を安全に運行させるため重要度の高い検査であって,こうした は前述したとおりであるが,特に台車及び車輪装置に関する検査項目については,車両等を分解して検査することが必要不可欠である上,「風神雷神Ⅱ」を安全に運行させるため重要度の高い検査であって,こうした検査を実施してもいないのに,全ての検査項目につき一律に法不適合の指摘がない旨の記載をしたことは,法令軽視の態度が著しく,乗客の安全に対する意識を欠いたもので,態様悪質である。また,被告会社が,本来平成19年2 月に予定されていた定期検査を同年5月に延期したのは,記念イベントに向けてDに新しい遊戯施設を遅れずに設置するため,その敷地にあった工作室内の工具や機械を「風神雷神Ⅱ」の検査用倉庫に移動したことによるが,安全よりも営業上の都合を優先させた身勝手な動機であり,酌むべきものはない。 被告人A2は,被告会社の施設営業部長で,技術部門の実質的な最高責任者として総括施設営業部長である被告人A1の判断を助けるべき立場にありながら,同被告人に対し,定期検査はできるところ以外は先送りしても問題ない旨の意見を述べる一方,部下で検査担当者の被告人A3に対しては,検査はゴールデンウィーク明けにせよと自ら指示しているのであって,その果たした役割には大きなものがある。 被告人A1は,施設営業部門を統括する最高責任者でありながら,被告人A2の前記報告等を受け,それが年1回実施される定期検査の報告義務に反するものであることを認識しながら,さしたる検討も加えないままあえて被告人A2の意見を採用して検査の先送りを了承し,虚偽報告の決裁をしたのであって,その責任は被告人A2に劣るものではない。 被告人A3は,昇降機検査資格者として「風神雷神Ⅱ」を実際に検査し報告書を作成する責任者であり,その検査内容や重要性について熟知していながら,被告人A2の指示に疑問を呈することもなく ものではない。 被告人A3は,昇降機検査資格者として「風神雷神Ⅱ」を実際に検査し報告書を作成する責任者であり,その検査内容や重要性について熟知していながら,被告人A2の指示に疑問を呈することもなく,漫然とその指示に従って定期検査報告書の所定欄のすべてに「異常なし」を意味する虚偽の記載をし,すべての検査を実施したかのように装って提出したもので,その果たした役割は大きい。 また,これら3名の役員ないし従業員が建築基準法に違反したことについては,被告会社に監督責任があったとみて同法上両罰規定によって処罰されるものであるが,関西でも有数の大規模遊戯施設を運営する会社として,前記のような危険を内在する本件コースターにつき,従業員らが乗客の安全確保のために法令上の重要な検査を実施せず,吹田市長に対し虚偽の報告書を提出するのを防げなかったことは,実質的にみても同社の安全管理態勢に少なからぬ問題があったことを 示すもので,法人としての刑事責任も大きいといえる。 次に,業務上過失致死傷(判示第2)についてみる。 (1)前記2のとおり,コースターは,その整備状況如何によっては多数の乗客等の生命,身体に重大な危害を及ぼす可能性の高い乗物であり,コースターを業務として継続的に運行に供し,利益を得ている者は,乗客等の生命,身体の安全を確保するため,適切な点検・検査を実施し,事故の発生による乗客等の死傷の結果を回避すべき高度の注意義務を負っているといえる。 (2)ボギー先端軸は,高速走行するコースターの台車を走路上で支える軸であり,台車や乗客の重量,台車の上下動及びカーブ走行の際の遠心力により大きな荷重がかかり,これが破断すれば,車輪装置が脱落して車体が脱線し,乗客が死亡する事故が起こりかねず,風神号の安全走行にとって重要な部位であった。そして,被告人A びカーブ走行の際の遠心力により大きな荷重がかかり,これが破断すれば,車輪装置が脱落して車体が脱線し,乗客が死亡する事故が起こりかねず,風神号の安全走行にとって重要な部位であった。そして,被告人A1及び同A2においては,ボギー先端軸のかかる重要性にかんがみ,法定定期検査の際には,その全体に傷や亀裂が生じていないかを点検するため,各部下職員をしてボギー先端軸をボギーアームから取り外させ,その全体に探傷検査を実施させるなどしなければならず,また,「風神雷神Ⅱ」は,(争点に対する判断)で詳述したとおり経年劣化が進んでおり,部品を新品に交換するなどの対応も必要とされていたほか,ボギー先端軸のはめ合いにゆるみも生じていたことから,ボギー先端軸の破損ないし破断が生起することを予見した上,その職責に基づく判示のとおりの業務上の注意義務を果たすべきであった。被告会社においては,これまでも一部の例外的場合を除いて,ボギー先端軸をボギーアームから取り外さず,露出した部分のみ目視や探傷検査をするという不十分な検査しか実施していなかったのに,被告人A1及び同A2は,これらの状況を十分に把握せず,自社の検査技術の高さを無批判に軽信するなどして,漫然とこれを看過したものであり,その過失の程度はいずれも大きいというべきである。 (3)本件事故により,当時19歳の女性1名が死亡し,12名の乗客が加療約 4日間ないし約4か月間の傷害をそれぞれ負ったもので,その生じた結果は誠に重大である。 傷害を負った被害者らはいずれも,ゴールデンウィーク後半の「こどもの日」に,家族や友人らと楽しい思い出を作るべく,有名遊園地であるDを選び,十分な安全対策が講じられているはずであるとの信頼の下,日ごろ経験することのできないスリルと興奮を味わおうと「風神雷神Ⅱ」に乗車したもので,も 人らと楽しい思い出を作るべく,有名遊園地であるDを選び,十分な安全対策が講じられているはずであるとの信頼の下,日ごろ経験することのできないスリルと興奮を味わおうと「風神雷神Ⅱ」に乗車したもので,もとより誰ひとり落ち度のある者は存在しない。そして,乗客はいずれも,よもやボギー先端軸が破断しナットが落下したことなど想像だにしないまま,激しい揺れによって異常が発生したことに気付きながらも,高速度で走行する風神号上で身動きすらできず,極度の恐怖感の中で,風神号の車体が脱輪して鉄柵に激突し急停車するなどした際の強い衝撃等によりそれぞれ傷害を負わされたもので,本件事故により蒙った肉体的・精神的苦痛にはいずれも大きなものがある。 死亡した被害者V1は,気の合った同僚らとDを訪れる計画を事前に立て,各種コースターを体験することを非常に楽しみにしており,本件当日も,開園直後からDで楽しく過ごし,たまたま「風神雷神Ⅱ」に乗ったところ,その乗車していた立席の真下のボギー先端軸が破断して突然車体が傾き,自身の身体をハーネス等で固定され逃げることもできないまま,鉄柵に激突させられ,頭部離断により即死したものであるが,本件事故の態様やその遺体の状況等からすれば,いかに即死とはいえ同女が死亡するまでに味わった恐怖と身体的苦痛は想像を絶するものがある。何よりも,わずか19歳という若さで,思いもよらぬ事故によりその生命を絶たれた結果は極めて重大であり,ネイルアートの仕事をしたいという夢や,結婚・出産といった将来への希望を一瞬にして奪われた同女の無念さは計り知れない。被害者V1の実母が公判における意見陳述等において,最愛の娘を失い今なお悲嘆に暮れている状況や,大切に育ててきた娘が成人する姿さえ見届けることができなかった悔しさを切々と語り,杜撰 な安全管理態勢から 1の実母が公判における意見陳述等において,最愛の娘を失い今なお悲嘆に暮れている状況や,大切に育ててきた娘が成人する姿さえ見届けることができなかった悔しさを切々と語り,杜撰 な安全管理態勢から本件のような大惨事を招いた被告人らに対する峻烈な処罰感情を表しているのは当裁判所としても十分に理解できるところである。 また,傷害を負った乗客の中には,被害者V1の友人もおり,自身の蒙った被害に加え,同行した友人をかかる悲惨な事故で亡くしたことによる悲しみや衝撃も大きいこと,コースターのみならず電車に乗ることすら恐怖を感じるようになったという者もいることなども見過ごせない。 加えて,本件事故を契機に国土交通省から通知が出され,国内の遊戯施設等において,コースターの一斉点検が行われたり,同省から定期検査報告に関する告示が出されたりしており,その社会的影響も大きい。 (4)被告人A1は,被告会社の取締役総括施設営業部長として,「風神雷神Ⅱ」等の遊戯施設の運行管理,点検及び保全修理等の業務全般につき統括する地位にあり,自身も昇降機検査資格者としてそれなりの知識を有していながら,実務経験豊富な被告人A2の意見を尊重する余り,「風神雷神Ⅱ」の経年劣化に応じた適切な検査の実施の必要性に思いを致さず,漫然と「風神雷神Ⅱ」を稼働させていたのであり,かかる態度は厳しい非難に値するもので,被告人A1の地位及び業務内容に鑑みれば,その責任は大きい。 被告人A2は,同社施設営業部長として,「風神雷神Ⅱ」等の遊戯施設の運行管理,点検及び保全修理等の業務全般につき掌理する地位にあり,創業当時から保守整備を一手に担ってきた前任者とともに長年被告会社の遊戯施設の保全整備に従事し,前任者が相談役に退いてからは自身が技術部門の実質的最高責任者ともいうべき存在となっており,十分な知 ,創業当時から保守整備を一手に担ってきた前任者とともに長年被告会社の遊戯施設の保全整備に従事し,前任者が相談役に退いてからは自身が技術部門の実質的最高責任者ともいうべき存在となっており,十分な知識と経験を有していたのに,被告人A3からボギー先端軸がゆるんでいるとの報告を受けていたにもかかわらず,何ら具体的な方策を講じなかったのであるから,その責任は決して上司である被告人A1に劣るものではない。 以上によれば,被告人A1及び同A2の犯情は芳しくなく,その刑事責任をいずれも軽視することはできない。 他方において,被告人らの刑の量定に当たっては,以下の事情も考慮すべきである。 まず,建築基準法違反の点に関しては,検察官は,被告会社による虚偽報告が常習的犯行であり,検査の不十分な点を隠ぺいし,行政指導を免れる意図さえ看取できると主張するが,例年法定定期検査期間内に実施を怠っていたのは,主として雷神号の分解検査のみであり(もとより,検査の重要性からすれば,このことだけでも厳しい非難に値するが),継続的に検査全体を実施していなかったものではない(なお,雷神号については,例年5月に被告会社において分解検査が実施されていた。)。そして,確かに被告会社における定期検査報告の態様は杜撰ではあるが,検察官が主張するような悪意までは認められない。 次に,業務上過失致死傷の点に関しては,検察官は,被告人A1及び同A2は,平成18年度の法定定期検査の際,遅くとも本件事故の発生時までには,各部下職員らをして,ボギー先端軸をボギーアームから取り外させて探傷検査を実施させるべきことを認識していたと主張するが,被告人両名において,こうした認識を有していたとまでは認められないことは前述したとおりであり,被告人両名が,このような作為義務の存在を認識しながら,あえて させるべきことを認識していたと主張するが,被告人両名において,こうした認識を有していたとまでは認められないことは前述したとおりであり,被告人両名が,このような作為義務の存在を認識しながら,あえてこれをないがしろにしたというものではない。 そして,被告人A1,同A2,同A3及び被告会社が,そろって建築基準法違反の成立自体は争わず,被告人A1及び同A2が,業務上過失致死傷につきいずれも自身に過失があることは認め,本件の結果の重大性を真摯に受け止めて反省の態度を示していること,被告会社からは,死亡した被害者の遺族及び傷害を負った各被害者に対し,相当額の損害賠償金等が支払われており,傷害を負った被害者のうち1名を除く11名との間では示談も成立するなど,その大半につき被害回復がなされていること,いずれも本件の責任から,被告人A1については被告会社の役員を辞した後退職し,被告人A2及び同A3については長年勤務していた被告会社を解雇され,被告会社については本件の影響等による業績悪化から 破産手続開始決定を受けるなど,社会的制裁も受けていること,被告人A1及び同A2には前科がなく,被告人A3には罰金前科が1犯ある以外に前科がないことなど,それぞれのために酌むべき事情も認められる。 以上の諸事情を総合考慮すれば,被告人らに対しては,主文の各刑をもって臨むのが相当であり,被告人A1及び同A2に対しては,その禁錮刑の執行を猶予し,社会内において自力更生の機会を与えるのが相当である。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑・被告人A1及び同A2につきそれぞれ禁錮2年及び罰金50万円,同A3につき罰金30万円,被告会社につき罰金50万円)平成21年10月13日大阪地方裁判所第3刑事部裁判長裁判官樋口裕晃裁判官小野寺明裁判官能宗 錮2年及び罰金50万円,同A3につき罰金30万円,被告会社につき罰金50万円) 平成21年10月13日大阪地方裁判所第3刑事部裁判長裁判官樋口裕晃裁判官小野寺明裁判官能宗美和 (別表) 番号 被害者氏名 年齢 傷害の内容(歳) 1 V2 加療約1か月間を要する前額部裂挫創及び右下腿裂挫創等 2 V3 加療約4か月間を要する肋骨骨折 3 V4 加療約23日間を要する胸骨不全骨折等 4 V5 全治約19日間を要する頚椎捻挫等 5 V6 全治約16日間を要する頚椎捻挫等 6 V7 加療約10日間を要する頚椎捻挫等 7 V8 加療約9日間を要する頚椎捻挫 8 V9 加療約9日間を要する頚椎捻挫等 9 V10 加療約9日間を要する頚椎捻挫 10 V11 加療約9日間を要する頚椎捻挫 11 V12 加療約7日間を要する頚椎捻挫 12 V13 加療約4日間を要する両下腿打撲傷等

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