- 1 -主文一原告の請求を棄却する。 二訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第一請求被告が原告に対して平成16年5月10日付けでした行政文書不開示決定(東管総発第1077号)を取り消す。 第二事案の概要一事案の骨子本件は、原告が、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という)3条に基づいて、○拘置所において平成12。 年▲月▲日に撮影された原告の頭部のCT写真(以下「本件文書」という)の開示を請求したところ、被告が、本件文書の存否を答えるだけ。 で、情報公開法5条1号の規定により不開示とすべき個人を識別することができる情報が開示されるのと同様の結果が生じることを理由に、情報公開法8条に基づき、本件文書の存否を明らかにしないで不開示とする旨の決定をしたため、原告が同決定の取消しを求める事案である。 二関係法令の定め本件に関連する情報公開法の規定は、次のとおりである。 3条(開示請求権)、、(()何人もこの法律の定めるところにより行政機関の長…中略…)に対し、当該行政機関の保有する行政文書の開示を請求すること- 2 -ができる。 5条(行政文書の開示義務)行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という)のいずれ。 かが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない。 1号個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記。 述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む)又は特定の個人を識別することはできないが 生年月日その他の記。 述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む)又は特定の個人を識別することはできないが、公に。 することにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。 ただし、次に掲げる情報を除く。 イ(省略)ロ人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報(以下省略)8条(行政文書の存否に関する情報)開示請求に対し、当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるときは、行政機関の長は、当該行政文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる。 - 3 -9条(開示請求に対する措置)1項(省略)2項行政機関の長は、開示請求に係る行政文書の全部を開示しないとき(前条の規定により開示請求を拒否するとき及び開示請求に係る行政文書を保有していないときを含む)は、開示をしない旨の。 決定をし、開示請求者に対し、その旨を書面により通知しなければならない。 三前提事実本件の前提となる事実は、次のとおりである。なお、証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることのできる事実並びに当裁判所に顕著な事実は、その旨付記しており、それ以外の事実は、当事者間に争いのない事実である。 原告は、○、○、○の罪により○判決を受けて、これが確定し、○拘置所に在監中の者である(甲3、5の2、弁論の全趣旨。 ) 原告訴訟代理人堀井準は、平成15年11月13日、東京弁護士会を通じて、○拘置所長に対し、弁護士法23条の2に基づき「○拘、」。 置所で原告に対して行った頭部CT写真について照会請求を行ったしかし、○拘置所長は、平成15年12月3日付け回答 東京弁護士会を通じて、○拘置所長に対し、弁護士法23条の2に基づき「○拘、」。 置所で原告に対して行った頭部CT写真について照会請求を行ったしかし、○拘置所長は、平成15年12月3日付け回答により、理由を付さずに、照会に応ずることを拒否した(甲5の1から4まで)。 原告は、被告に対し、平成16年4月12日付けで、情報公開法3条に基づき、本件文書の開示請求(以下「本件開示請求」という)。 をした(甲1。 )- 4 - 被告は、原告に対し、平成16年5月10日付けで、本件開示請求について「開示請求に係る当該文書の存否を答えるだけで、法第5、条第1号の規定により不開示とすべき個人を識別することができる情報が開示されるのと同様の結果が生じるため」との理由を付して、。 不開示とする旨の決定以下本件不開示決定というをした甲(「」。)(2。 ) 原告は、平成16年7月3日、本件不開示決定の取消しを求める訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実。 )四当事者の主張の要旨別紙記載のとおり第三当裁判所の判断一争点の確定について 被告は、本件不開示決定は情報公開法8条に基づく処分であるところ、同条に基づく処分は、開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、情報公開法5条の不開示情報を開示することとなることが認められれば適法であって、それ以上に、仮に存在していれば、当該行政文書に係る情報自体が同条の不開示情報のいずれかに該当することまでは必要ない旨主張する。 確かに、情報公開法8条は「開示請求に対し、当該開示請求に係、る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるときは、行政機関の長は、当該行政文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することがで 対し、当該開示請求に係、る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるときは、行政機関の長は、当該行政文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる」と規定して。 - 5 -おり、この条文の規定の文言のみからすると、同条の処分を適法というためには、行政文書に記録されている情報自体が情報公開法5条の不開示情報のいずれかに該当することまでは必要でないかのようにも見える。 しかし、情報公開法5条柱書きは「行政機関の長は、開示請求が、あったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(…(中略)…)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない」と規定していて、。 同条においてすべての不開示情報を定めておく規定ぶりとなっており、他に不開示情報を定める規定を設けることを予定していない。また、情報公開法8条も、明文上、情報公開法5条の特則であるとは規定されていおらず、情報公開法の他の条項から見てみても、そのように解すべき根拠は存しないというべきである。 そうすると、情報公開法8条は、仮に存在するとすれば、開示請求に係る行政文書に情報公開法5条各号列記の不開示情報が記録されているはずであることを前提として、開示請求に対する特別な拒否の方法について定めた規定と解すべきである。 また、情報公開法8条は、開示請求に係る行政文書に記録されている情報が情報公開法5条の不開示情報に当たるとき、又は開示請求に係る行政文書を保有していないときは、当該行政文書の存否を明らかにした上で拒否することが原則であるが、例えば、特定の個人の病歴の情報、犯罪の内偵捜査に関する情報等のように、開示請求に係る行- 6 -政文書の存否を明らかにするだけで、不開示情報につ 否を明らかにした上で拒否することが原則であるが、例えば、特定の個人の病歴の情報、犯罪の内偵捜査に関する情報等のように、開示請求に係る行- 6 -政文書の存否を明らかにするだけで、不開示情報についての規定により保護されるべき利益が害されることとなる場合があり、このような場合には、その開示請求に対し、当該行政文書は存在するが不開示と回答したり、又は行政文書は存在しないと回答するだけで、不開示情報に係る保護利益が害されることとなるので、このような事態に適切に対処するため規定されたものと解される。 そうすると、情報公開法8条に基づく不開示処分が適法であるというためには、①仮に存在するとすれば、開示請求に係る行政文書に情報公開法5条各号列記の不開示情報が記録されているはずであること、②当該行政文書が存在しているか否かを答えるだけで情報公開法5条各号列記の不開示情報を開示することとなることの両方が必要であるということになる。 したがって、被告の前記1の主張は、採用することができない。 以上によれば、本件の争点は、以下のとおりである。 (一)争点1(情報公開法5条1号本文前段該当性)仮に存在するとすれば本件文書に記録されているはずの情報以、(下「本件情報」という)は、情報公開法5条1号本文前段の不開。 示情報に当たるか。特に、開示請求の対象文書に記録されている情報が、個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名等により特定の個人を識別することができるものに当たる場合には、その「特定の個人」本人による開示請求であっても、当該情報は、情報公開法5条1号本文前段の不開示情報に当たるか。 - 7 -(二)争点2(情報公開法5条1号ただし書ロ該当性)本件情報は、情報公開法5条1号ただし書ロ所定の「人の生命、健康、生活又は財産を保護する 開法5条1号本文前段の不開示情報に当たるか。 - 7 -(二)争点2(情報公開法5条1号ただし書ロ該当性)本件情報は、情報公開法5条1号ただし書ロ所定の「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」に当たるか。 (三)争点3(文書の存否を答えることの要否)本件文書の存否を答えるだけで、情報公開法5条各号所定の不開示情報を開示することとなるか。 なお、被告は、本件情報が情報公開法5条1号本文前段以外の不開示事由に当たることを主張しておらず、原告も、本件情報が情報公開法5条1号ただし書ロ以外の不開示事由の例外に当たることを主張していない。 二争点1(情報公開法5条1号本文前段該当性)について 情報公開法5条1号本文前段は「個人に関する情報(…(中略)、…)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」については、不開示情報に当たる旨規定している。 本件開示請求は、原告という個人の氏名を具体的に特定して、その頭部のCT写真(本件文書)の開示請求をするものである。そうすると、本件文書は、その性質上、個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名等により特定の個人を識別することができるものが記録されている蓋然性があるということができる。 したがって、本件情報は、情報公開法5条1号本文前段の不開示情- 8 -報に当たるというべきである。 2(一)これに対し、原告は、本件情報は開示請求者個人に関する情報であるところ、開示請求の対象文書に記録されている情報が、個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名等により特定の個人を識別することができるものに当たる場合であっても、その「特定の個人」本人による開示請求であるときには、当該情報は、 ている情報が、個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名等により特定の個人を識別することができるものに当たる場合であっても、その「特定の個人」本人による開示請求であるときには、当該情報は、情報公開法5条1号本文前段の不開示情報に当たらない旨主張するので、本人による開示請求の場合でも、情報公開法5条1号本文前段所定の不開示情報に該当し得るかを検討する。 (二)憲法21条は、国民の表現の自由を保障しているが、その実効性を担保するためには、その基礎となるべき「知る権利」が保障されなくてはならないと考えられる。この権利は、憲法13条の定める幸福追求権や憲法19条の定める思想及び良心の自由を確保する上でも、重要なものであることは言をまたない。 しかしながら、憲法上の「知る権利」は、それ自体では抽象的な権利にすぎず、特定の情報ないし文書の開示を請求するためには、これに具体的権利性を付与する実定法上の根拠が必要であると考えられる。このように、具体的な情報開示請求権が実定法によって創設されると解する以上、その内容や範囲については、当該実定法の目的・趣旨を参考にした上で、その文言に即して判断される必要がある。不開示事由の解釈についても、基本的にはこのような見解が妥当するというべきである。 - 9 -(三)( )そこで、情報公開法の規定を検討してみると、情報公開法 3条は「何人も、この法律の定めるところにより、行政機関の、長(…(中略)…)に対し、当該行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができる」と規定し、情報公開法5条柱書。 きは「行政機関の長は、開示請求があったときは、…(中略)、…不開示情報…(中略)…のいずれかが記録されている場合を除、、。」き開示請求者に対し当該行政文書を開示しなければならないと規定して は「行政機関の長は、開示請求があったときは、…(中略)、…不開示情報…(中略)…のいずれかが記録されている場合を除、、。」き開示請求者に対し当該行政文書を開示しなければならないと規定している。 これらの規定からすると、情報公開法は、情報の性質や内容に着目して不開示とすべき情報を定めているものの、開示請求の請求主体については何らの制約を設けることをせず、開示請求の理由、目的又は利害関係の有無等を問うことなく、上記の不開示情報に該当しない限り、行政文書の開示を認める立場に立っていることが明らかである。 このことは、情報公開法1条が、行政機関の保有する情報の公開により、政府の国民に対する説明責任を全うし、国民の理解と批判の下に公正で民主的な行政の推進に資することを、情報公開法の目的と規定していることとも合致する。 ( )また、情報公開法5条1号本文前段は「個人に関する情報 、(…(中略)…)であって、…(中略)…特定の個人を識別することができるものを不開示情報としており同号本文後段の特」、「定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、な- 10 -お個人の権利利益を害するおそれがあるもの」とは異なった表現を採用している。このことに照らすと、同号本文前段は、不開示の根拠として、個人の権利利益を害するおそれの有無を判断基準とする立場に立たず、類型的に、特定の個人を識別することができる情報を一律に不開示とした上、その例外については、ただし書で定めるという立場を採用しているものというべきである。 ( )さらに、仮に、情報公開法が、当該情報から識別され得る者 本人による開示請求である場合には、個人識別情報であっても開示を認める趣旨であるのならば、対象となった文書に記載された情報と請求者との関係を明らかにする 情報公開法が、当該情報から識別され得る者 本人による開示請求である場合には、個人識別情報であっても開示を認める趣旨であるのならば、対象となった文書に記載された情報と請求者との関係を明らかにする手続が必要となるはずである。しかし、情報公開法及び行政機関の保有する情報の公開に関する法律施行令は、このような手続について何らの手当てをしておらず、それどころか、情報公開法は、前記のとおり、開示請求の主体、理由、目的及び利害関係の有無等を問わない制度を採用している。そうすると、情報公開法は、当該情報から識別され得る者本人による開示請求を特別なものとして取り扱うことを予定していないということができる。 ( )さらに、弁論の全趣旨によると、情報公開法が、行政改革委 員会の下に設置された行政情報公開部会による、平成8年12月16日の内閣総理大臣あての「情報公開法要綱案」及び「情報公開法要綱案の考え方」等の答申が基本となっていることが認められる。 - 11 -そして「情報公開法要綱案の考え方」八( )は「一般的に個、、 人情報を本人に開示することを認める制度が存しない状況の下で、情報公開法により個人情報を本人に開示することを認めるこ、。」、との意見・要望がありその趣旨は理解できるとしながらもその問題は、基本的には個人情報の保護に関する制度の中で解決すべきであり、その範囲についてもその中で専門的に検討されるべきものであるとして「本要綱案には個人情報の本人開示を認、める制度を盛り込まないこととした」と結論付けている。 。 そうすると、立法担当者においても、情報公開法が、本人による個人情報の開示請求を特別に扱わない趣旨のものであることで認識がほぼ一致していたものということができる。 ( )以上によると、情報公開法は、個人のプラ 立法担当者においても、情報公開法が、本人による個人情報の開示請求を特別に扱わない趣旨のものであることで認識がほぼ一致していたものということができる。 ( )以上によると、情報公開法は、個人のプライバシーを侵害す るおそれを想定し難い本人による個人情報の開示請求の場合であっても、当該情報が個人識別情報に該当する以上、原則として不開示とする立法態度を採っているものといわざるを得ない。 (四)したがって、当該情報から識別され得る個人本人による開示請求であるか否かは、情報公開法5条1号本文前段の不開示情報に当たるか否かの判断には関係しないというべきである。 3(一)これに対して、原告は、情報公開制度において個人情報が不開示情報とされるのは、個人の権利利益を保護するためであると解されるところ、請求者本人の情報については、開示されたとしても、請求者の権利利益が侵害されるおそれは存しないから、請求者本人- 12 -に関する情報が記録されている行政文書について不開示とすることは許されない旨主張する。 確かに、原告の主張するとおり、情報公開法5条1号本文前段が個人識別情報を不開示情報と定めたのは、当該個人の権利利益を保護するためであるということができる。 しかしながら、前記2(三)記載のとおり、情報公開法は、前記2(三)( )に判示したとおりの目的に立つ法律であって、同( )以下に 判示したように、個人識別情報については、個人のプライバシーに対する侵害のおそれの有無などといった実質的な判断基準を採らず、類型的に一律に不開示とする立法政策を採っているのである。 したがって、原告の上記主張は、採用することができない。 (二)また、原告は、本件開示請求がされた平成16年4月12日当時及び本件不開示決定がされた同年5月10日当時には、個人情報 いるのである。 したがって、原告の上記主張は、採用することができない。 (二)また、原告は、本件開示請求がされた平成16年4月12日当時及び本件不開示決定がされた同年5月10日当時には、個人情報保護法は、公布されていたものの、施行されておらず、自己の個人情報の開示を求める方法は情報公開法の開示請求に限られていた旨主張する。 しかし、前記2(二)記載のとおり、特定の情報ないし文書の開示を請求するためには、このような開示請求に具体的権利性を付与する実定法上の根拠が必要であると考えられるのであって、具体的な、、情報開示請求権が実定法によって創設される以上その内容や範囲不開示事由の解釈については、当該実定法の目的・趣旨を参考にし、。 た上でその文言に即して判断される必要があるというべきである- 13 -そして、この点については、前記2(三)記載のとおり、情報公開法は、目的・趣旨及びその文言からすると、情報の性質、内容を基準として、不開示とする場合を定めており、だれが開示請求をしているかによる区別はしていないのであるから、本人による個人情報の開示請求の場合であっても、当該情報が個人識別情報に該当する以上、原則として不開示とする立場を採っているものと考えざるを得ない。 そうすると、原告の上記主張も、採用することができない。 (三)( )さらに、原告は、兵庫県条例判決を援用し、本件不開示決 定がされた当時、個人情報保護法は施行されておらず、かつ、情報公開法には自己の個人情報の開示を請求することを許さない趣旨の規定が存在しない状況の下においては、本人からの個人情報の開示請求を拒否することは許されないものというべきであるなどと主張する。 ( )しかし兵庫県条例判決はその8条において個人の…中 、、「(略)…等に関す は、本人からの個人情報の開示請求を拒否することは許されないものというべきであるなどと主張する。 ( )しかし兵庫県条例判決はその8条において個人の…中 、、「(略)…等に関する情報(…(中略)…)であって、特定の個人が識別され得るもののうち、通常他人に知られたくないと認められるもの」を不開示情報と定める兵庫県条例についての判決である上、その法令制定の際にいかなる立法政策が採られたかが明らかでないことを前提として判示されたものと解すべきである。 これに対して、情報公開法においては、前記のとおりの規定ぶりとなっている上、立法担当者においては、自己情報を特別に扱- 14 -わない趣旨のものであることで認識がほぼ一致しており、規定の文言も、個人識別情報である限り、だれが開示請求者であるか否かにかかわらず原則として不開示とする立場と整合すると考えられる。したがって、兵庫県条例判決は、情報公開法の場合には妥当するものではないといわざるを得ない。 ( )そうすると、原告の前記( )の主張は、採用することができな い。 以上によると、本人による個人情報の開示請求であるか否かは、情報公開法5条1号本文前段の不開示情報の該当性には関係しないということができる。 そうすると、本件が、当該情報から識別され得る個人本人による開示請求の事案であるとしても、本件情報は、情報公開法5条1号本文前段の不開示情報に当たるというべきである。 三争点2(情報公開法5条1号ただし書ロ該当性)について 情報公開法5条1号ただし書ロは、いわゆる個人識別情報であっても「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすること、が必要であると認められる情報」を例外的に公開すべき旨規定している。これは、個人のプライバシーにかかわり得る場合であ 識別情報であっても「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすること、が必要であると認められる情報」を例外的に公開すべき旨規定している。これは、個人のプライバシーにかかわり得る場合であっても、国民の生命、健康、生活又は財産を保護するために一般に公開すべき理由があるときには、比較衡量の上で公開を認めることとした規定と解することができる。 したがって「必要であると認められる」とは、不開示とすること、- 15 -により保護され得る個人の利益と、開示されることにより保護される国民の利益とを比較衡量し、後者が優越する場合をいうと解すべきである。この比較衡量に当たっては、個人の権利利益にも様々なものがあり、また、人の生命、健康、生活又は財産の保護にも、保護すべき権利利益の程度や保護の必要性に差があることから、個別の事案に応じた検討が必要と考えられる。 2(一)( )本件について見ると、本件情報は、個人の医療情報に関す るものであり、医療情報は、一般に個人識別情報の中でも特に秘匿性が要求される性質のものであるから、公に開示されないことの利益は大きいというべきである。 ( )これに対し、原告は、本件文書を不開示とすることにより保 。 、護される利益は存在しない旨主張する原告の主張するところは要するに、本件文書から識別され得る個人である原告自身がその開示を請求しているのであるから、原告にとってそれを不開示とする利益は存在しないとする趣旨であると解される。 しかし、前記二において検討したところからすると、情報公開法は、その1条所定の目的に即し、また、情報はいったん公開されれば広く公になりうるものであって、その公開目的や使途を限定するのは困難であることにもかんがみ、各情報の性質、内容を基準として、その開示、不開示を区別している 的に即し、また、情報はいったん公開されれば広く公になりうるものであって、その公開目的や使途を限定するのは困難であることにもかんがみ、各情報の性質、内容を基準として、その開示、不開示を区別しているのであって、開示請求者がだれであるかに着目して、当該情報を特別なものとして取り扱うことは予定していないと解すべきである。したがって、- 16 -本件文書を不開示とすることにより保護される利益を検討するに当たっても、それが当該情報から識別され得る個人本人が開示請求しているものであって、本人にしか当該情報が知られることはないという前提で、判断すべきではなく、通常の開示請求の場合と同様に判断されることになるのである。 よって、原告の上記主張は、採用することができない。 (二)( )また、本件の場合、上記のような開示されないことの利益 に対し、本件文書を開示することによる利益は、甲第3号証、甲第5号証の2及び弁論の全趣旨によると、原告の受けた確定した○判決に対する○地方裁判所○支部への再審請求事件(以下「別件再審請求事件」という)において、本件文書を、原告が各犯。 行の当時有機溶剤の吸引の影響により心神耗弱の状態にあったことの新規証拠として利用するというものである。 ( )しかし、このような確定判決に対する再審請求をするために 利用するという利益は、元々「人の生命、健康、生活又は財産、を保護する」利益にはなじみにくいものである上、原告の主張する利益は、当該情報を公に開示することの利益ではなく、開示請求者のみに限定された極めて個人的な主観的利益であるといわざるを得ない。したがって、本件において、原告の主張する本件文書の開示による利益は、情報公開法5条1号ただし書ロが本来予定している利益には中々当てはまりにくいものというべきである。しか あるといわざるを得ない。したがって、本件において、原告の主張する本件文書の開示による利益は、情報公開法5条1号ただし書ロが本来予定している利益には中々当てはまりにくいものというべきである。しかも、本件では、甲第3号証によると、確定判決において- 17 -認定された○行為等は、原告の頭部CT写真が撮影されたという平成12年▲月▲日より少なくとも9年以上前に行われたとして原告に対する確定判決の言渡しがされていることが認められる。 そうすると、同号証の内容を勘案しても、本件文書により把握することができるかもしれない平成12年▲月▲日当時の原告の頭部の状態と、上記○行為等の当時の原告の責任能力とは、直接的な関連性を認め難いというべきである。したがって、他の証拠との関係において本件文書の証拠価値が高いものと評価することはできないといわざるを得ない。 、、そうすると本件文書を開示することにより保護される利益がこれを不開示とすることにより保護される利益に比して、優越するということはできない。 ( )これに対し、原告は、原告の健康上の観点からも、本件文書 を確認する必要がある旨主張する。 、、、しかし仮に原告に対する医療行為が必要であったとすれば原告が拘置されている○拘置所において適切に行われるべきところ、○拘置所において原告に対する医療行為が適切に行われていなかったと認めるに足りる証拠はない。したがって、原告の健康上の観点から、原告の頭部が撮影されたCT写真を開示する必要性が高いということはできない。 そうすると、原告の主張する上記理由で、本件文書を開示することにより保護される利益が、これを不開示とすることにより保- 18 -護される利益に比して、優越するものということはできない。 ( )また、原告は、頭部CT写真の開示を得 で、本件文書を開示することにより保護される利益が、これを不開示とすることにより保- 18 -護される利益に比して、優越するものということはできない。 ( )また、原告は、頭部CT写真の開示を得て、これを別件再審 請求事件において利用することを考えており、別件再審請求事件において、確定判決において認定された○行為等が、有機溶剤による薬物中毒によって誘発されたことを明らかにすることが、ひいては薬物中毒の深刻さを社会に対して明らかにすることにもなるのであり、社会的利益に資する側面もある旨主張する。 しかし、仮に、薬物中毒の深刻さを社会に対して明らかにすることや、医学の発展という社会的目的のために利用することが、情報公開法5条1号ただし書ロにいう「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため」に当たるとしても、前記( )記載のとお り、平成12年▲月▲日当時の原告の頭部の状態と、前記各犯行の当時の原告の責任能力とは、直接的な関連性を認め難いというべきであるから、本件文書により、確定判決において認定された○行為等が有機溶剤による薬物中毒によって誘発されたことを明らかにすることは難しいというべきである。また、薬物乱用により犯罪行為に至った事件で、薬物乱用と犯罪行為との関係がより明確なものがほかにも多数あることは公知の事実であり、そうだとすると、本件文書が原告の主張するような社会的目的のために利用することに適する文書であるということはできない。 そうすると、本件文書を開示することにより保護されると原告が主張する社会的利益が、これを不開示とすることにより保護さ- 19 -れる利益に比して、優越するものということはできない。 さらに、原告は、本件文書である頭部CT写真は、原告本人の医療記録であり、診療記録であるところ、本件不開示決定がさ により保護さ- 19 -れる利益に比して、優越するものということはできない。 さらに、原告は、本件文書である頭部CT写真は、原告本人の医療記録であり、診療記録であるところ、本件不開示決定がされた平成16年5月10日当時、医療記録については原則開示の流れが定着していた旨主張する。 しかし、医療記録の原則開示の流れというのは、医療における医師と患者との関係の見直し、ないしは自己情報のコントロール等といった観点から、患者本人に対する開示について論じられているものである。これと異なり、情報公開制度は、開示請求者や当該文書の利用目的等を問うことなく、公に文書の開示をするものであり、上記のような医療記録の公開と関係する制度ではない。したがって、医療記録の患者本人への開示の問題は、情報公開法5条1号ただし書ロの解釈に何ら影響しないというべきである。 したがって、原告の上記主張は、採用することができない。 以上からすると、本件情報は、情報公開法5条1号ただし書ロに当たるということはできない。 四争点3(文書の存否を答えることの要否) 本件では、原告は、原告という個人の氏名を具体的に特定して、平成12年▲月▲日に○拘置所において撮影された頭部のCT写真の開示請求をしている。そうすると、仮に、本件文書が存在していることが明らかにされれば、頭部のCT写真という性質上、原告という個人の頭部CT写真を撮影したという「個人に関する情報(情報公開法」- 20 -5条1号本文前段)を開示してしまうことになる。 そうすると、本件情報は、それが不開示情報に該当するので不開示であると答えるだけで、当該個人の診療歴の存在等が明らかになってしまうものということができるから、情報公開法8条が適用されるというべきである。 2(一)これに対して、原告は、原告の するので不開示であると答えるだけで、当該個人の診療歴の存在等が明らかになってしまうものということができるから、情報公開法8条が適用されるというべきである。 2(一)これに対して、原告は、原告の頭部のCT写真の撮影が行われたこと自体は、原告本人には自明の情報であり、また、○拘置所も原告の頭部のCT写真の撮影を行った事実を認めていることなどからすると、本件不開示決定は、極めて形式的に判断したものであって、不当である旨主張する。 しかし、情報公開法8条は、明文上、行政文書の開示請求をした者自身にとって、当該行政文書の存在が自明であるときや、行政庁が行政文書の存在を認めているときに、同条の処分をすることができないとは規定していないし、そのように解すべき条文上の根拠もないというべきである。 そうすると、原告の上記主張は、採用することができない。 (二)また、原告は、別件再審請求事件の再審事由の証明には、本件文書に基づく診断が不可欠であるし、原告の健康被害の訴えは深刻なものであり、健康上の観点からも、本件開示請求は急を要する旨主張する。 しかし、情報公開法には、明文上、開示請求について緊急性を要することにより別異に取り扱うべき規定は存しないし、そのように- 21 -解すべき条文上の根拠もないというべきである。 そうすると、原告の上記主張も、採用することができない。 五以上によると、被告が、情報公開法8条に基づき、本件文書の存否を明らかにしないでした本件文書を不開示とする旨の決定は、適法であるということができる。 六よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部裁判長裁判官菅野博之裁判官市原 から、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部裁判長裁判官菅野博之裁判官市原義孝裁判官近道暁郎- 22 -(別紙)当事者の主張の要旨 被告の主張(一)本件不開示決定の適法性について( )情報公開法8条は、特定個人の病歴に関する行政文書が開示請求 された場合のように、開示請求に係る行政文書の存否を明らかにするだけで、情報公開法5条各号の不開示情報を開示することになる場合があることから、行政文書の存否自体を明確にしないで拒否処分(いわゆる存否応答拒否)をすることができる旨を規定したものである。 ( )本件開示請求は、○拘置所が原告に対してした頭部CT写真の開 示を求めるものであるところ、このような行政文書の存否が明らかになると、原告が○拘置所において頭部CT写真を撮影されたか否かが開示されることになる。 そうすると、原告が○拘置所において頭部CT写真を撮影したか否かという情報は、個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるものであるから、情報公開法5条1号の不開示情報に該当することは明らかである。 したがって、被告が本件開示請求に対し、開示請求に係る行政文書の存否を答えることにより、情報公開法5条1号の不開示情報を開示することになるとして、情報公開法8条に基づく存否応答拒否をしたことは適法である。 (二)自己情報の本人開示について- 23 -( )原告は、本件開示請求に係る頭部CT写真(本件文書)は、原告 自身の自己情報であるから、これを開示したとしても請求者の権利利益が害されるおそれは全く存在しない旨主張する。 しかし、以下のとおり、情報公開法は、開示請求者本人に 部CT写真(本件文書)は、原告 自身の自己情報であるから、これを開示したとしても請求者の権利利益が害されるおそれは全く存在しない旨主張する。 しかし、以下のとおり、情報公開法は、開示請求者本人に対する自己情報の開示を認めていないことは明らかである。 ( )ア情報公開法は、国民主権の理念にのっとり、行政機関の保有す る情報の一層の公開を図ることにより、政府の諸活動について国民に対する説明責務が全うされるようにすること等を目的とし(情報公開法1条、何人も、情報公開法の定めるところにより、行政文)書の開示を請求することができると規定している(情報公開法3条。このように、情報公開法の定める開示請求制度は、政府の説)明責務という観点から、同一の行政情報を広く国民一般に公開されることを前提とし、何人に対しても、請求の目的のいかんを問わず等しく開示請求を認める制度である。 このような制度趣旨からすると、開示・不開示の判断に当たっては、本人からの自己情報についての開示請求である場合も含め、開示請求者がだれであるかは考慮されないものである。 、、イまた情報公開法により個人情報を本人に開示することの可否は行政改革委員会行政情報公開部会においても議論されたが、同部会は、本人開示は、個人の権利利益の保護のための制度であり、行政部門のみならず民間部門にも共通する問題であるとして、その保有機関による収集制限・適正管理等、本人の訂正請求の仕組み等も視- 24 -野に入れて制度を構築する必要があり、個人情報保護法制の下で自己情報開示の問題として処理するのが本筋であると考えられること、我が国で本人開示の希望が強い分野は、医療情報と教育情報であり、これらについては、国立・公立・私立を問わずに共通するシステムを考えるべきであり、また、本人に対してであ が本筋であると考えられること、我が国で本人開示の希望が強い分野は、医療情報と教育情報であり、これらについては、国立・公立・私立を問わずに共通するシステムを考えるべきであり、また、本人に対してであっても、どこまで、また、いかなる方法でかかる情報を開示すべきかについて、専門家の間でも意見の一致をみていないことにかんがみ、情報公開法は、個人情報の本人開示を認める制度を盛り込まないとの方針が採られたのである。 その後、本人に対する自己情報の開示の問題に関しては、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律が制定され、平成15年5月30日に、公布された。 このような立法経緯からすると、情報公開法は、本人情報の開示請求であるという理由によって、特別な取扱いをすることを認めていないということができる。 ウ前記ア及びイ記載のように、情報公開法5条1号該当性は、開示請求者がだれかを考慮せずに、個人に関する情報であるか否か、特定の個人を識別することができる情報であるか否か、同号ただし書イないしハの例外的事由があるか否かによって判断されるべきものである。 エまた、情報公開法8条の要件は、開示請求者に係る行政文書の存否を答えることによって明らかになる情報が情報公開法5条各号の- 25 -不開示事由に当たることにほかならないから、上記のことは、情報公開法8条に基づく存否応答拒否の場合でも同様である。 ( )ア原告は、最高裁平成9年(行ツ)第21号同13年12月18 日第三小法廷判決・民集55巻7号1603頁(以下「兵庫県条例判決」という)を引用し、本件開示請求において、原告の権利利。 益が侵害されるおそれが存しない以上、本件不開示決定が妥当でないことは明らかであるなどと主張する。 イしかし、兵庫県条例判決は、公文書の公開等に関する条例(昭和 示請求において、原告の権利利。 益が侵害されるおそれが存しない以上、本件不開示決定が妥当でないことは明らかであるなどと主張する。 イしかし、兵庫県条例判決は、公文書の公開等に関する条例(昭和61年兵庫県条例3号。以下「兵庫県条例」という)の解釈が争。 われた事案であり、同判決も「地方公共団体が公文書の公開に関する条例を制定するに当たり、どのような請求権を認め、その要件や手続をどのようなものとするかは、基本的には当該地方公共団体の立法政策にゆだねられているところである」と判示している。そ。 うすると、兵庫県条例判決の射程は、兵庫県条例が本人開示についてどのような立法政策を採っているかという点に限られるものであり、情報公開法の解釈に何ら影響を及ぼすものではない。 ウまた、兵庫県条例判決は、個人情報保護制度が採用されていない状況においては、情報公開制度に基づいてされた自己の個人情報の開示請求を拒否することができないと判示しているが、これは、兵庫県では、非公開決定がされた平成5年当時に個人情報保護条例は全く存在せず、公の情報の開示を実現するための制度としては情報公開条例しか存在しておらず、個人情報保護制度と情報公開制度と- 26 -が別個の法制度として分化していなかったという状態を前提とした判断である。 これに対し、国においては、昭和63年に制定された行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律(以下「電算機個人情報保護法」という)が存在しており、行政機関の。 保有する電子計算機処理に係る個人情報については、一部の不開示情報を除き、本人からの開示請求が認められていた(電算機個人情報保護法13条、14条。さらに、平成15年5月30日には、)本人情報の開示制度について規定した行政機関の保有する個人情報の保護に関 情報を除き、本人からの開示請求が認められていた(電算機個人情報保護法13条、14条。さらに、平成15年5月30日には、)本人情報の開示制度について規定した行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という)が公布さ。 れている。このように、国においては、個人の権利利益の保護を図ることを目的とする個人情報保護制度と、公正で民主的な行政運営を確保することを目的とする情報公開制度とが、別個の法制度として既に分化しているのであるから、情報公開制度を一時的に適宜利用して個人情報の本人への開示を認めることは、法体系の混乱を来すものであって、およそ制度の予定外のことであるというべきである。 エさらに、情報公開法の場合には、兵庫県条例判決が判示するような一時的な便宜利用が検討されながらも、早急に個人情報保護制度を完備することを前提に、情報公開制度を一時的に便宜利用して本人開示を行うことはしないという立法政策が採られたという経緯がある。 - 27 -すなわち、行政改革委員会情報公開部会の「情報公開法要綱案の考え方」八( )は「他方、個人情報の保護に関する制度が整備さ 、れるまでの措置として、情報公開法の中にも本人開示を認める制度を盛り込むという意見もある」としながらも、様々な観点からの検討の結果、本人開示は認めないこととし、その代わりとして「し、かしながら、国民からは医療、教育関係情報等を中心として本人開示を求める意見・要望等が強いことを踏まえ、関係省庁において、個人の権利利益の保護の観点から、本人開示の問題について早急に専門的な検討を進め、その解決を図る必要があると考える」との。 提言を行った。 上記「情報公開法要綱案の考え方」を受けて、政府は、個人情報保護制度の整備作業に速やかに着手し、総務省に置かれた 早急に専門的な検討を進め、その解決を図る必要があると考える」との。 提言を行った。 上記「情報公開法要綱案の考え方」を受けて、政府は、個人情報保護制度の整備作業に速やかに着手し、総務省に置かれた行政機関等個人情報法制研究会において、平成13年10月26日「行政、機関等の保有する個人情報の保護に関する法制の充実強化について-電子政府の個人情報保護-」の報告書を取りまとめた。さらに、平成14年3月15日には、電算機個人情報保護法を全部改正する「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」案が国会に提出され、平成15年3月には、同法案が再提出され、同年5月30日、個人情報保護法が公布されたものである。 このように、情報公開法については、早急に個人情報保護制度を完備することを前提に、情報公開法を本人開示に利用させることはしないとの立法政策が採られ、実際にも個人情報保護制度の完備が- 28 -進められているのであるから、兵庫県条例判決とは明らかに事案が異なる。 (三)本件文書の存否の情報が情報公開法5条1項ただし書ロに該当しないことについて、「()( )ア原告は本件文書に記録されている情報が人の生命…中略 …を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」(情報公開法5条1号ただし書ロ)に該当する旨主張する。 しかし、被告は、本件開示請求に対し、○拘置所が原告に対し頭部CT写真を撮影したか否かという情報が情報公開法5条1号に該当することを理由として、存否応答拒否処分をしたのであるから、「原告のCT写真の撮影の有無」という情報が情報公開法5条1号ただし書ロに該当するか否かが問題とされるべきであって、本件文書の記載内容は問題とならない。 イ情報公開法5条1号ただし書ロにいう「人の生命、健康、生活又は財産 無」という情報が情報公開法5条1号ただし書ロに該当するか否かが問題とされるべきであって、本件文書の記載内容は問題とならない。 イ情報公開法5条1号ただし書ロにいう「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」については、同号に該当することを理由としては不開示とすることができない旨定めているところ、その趣旨は、開示することの利益と開示されないことの利益の調和を図ることにあるから、個人情報については、公にすることにより害されるおそれがある当該情報に係る個人の権利利益よりも、人の生命、健康等の保護の必要性が上回るときに、当該情報を開示しなければならないとするものである。 - 29 -これを本件について見ると、情報公開法5条1項ただし書ロに該当するというためには、原告の再審請求の立証に用いるために、特定の個人の頭部CT写真保有の有無を一般に公にする必要が認めなければならないところ、そのような必要性があるとは到底考えられない。 ( )また、情報公開法5条1号ただし書ロにいう「公にすることが必 要であると認められる」とは、その文言からして、当該情報を一般に公開する必要性をいうものであって、請求者個人に開示する必要性を指すものではないと解すべきである。そうすると、通常、特定の個人が頭部CT写真撮影を受けたか否かという情報を一般に公開する必要はないと考えられる。 ( )原告は、頭部CT写真の開示を得て、これを原告に係る刑事事件 についての再審請求において利用することを考えており、そのことが薬物事案を解明するという意味で社会的利益に資する側面がある旨主張する。 しかし、原告の主張の実質は、原告の個人的必要性をいうものである上、本件で公にする必要性の有無を検討すべき情報は、原告の頭部CT写真の 解明するという意味で社会的利益に資する側面がある旨主張する。 しかし、原告の主張の実質は、原告の個人的必要性をいうものである上、本件で公にする必要性の有無を検討すべき情報は、原告の頭部CT写真の撮影の有無であるから、原告の主張を前提としても、このような事実の有無が薬物事案の解明に役立つとは到底考えられない。 ( )また、原告は、医療記録の開示等についてもるる主張するが、医 療記録の開示は患者本人に対するものであって、医療記録を公にする制度ではないから、この点は、情報公開法5条1号ただし書ロと何ら- 30 -関係しない。 (四)本件文書に記録されている情報自体も情報公開法5条1号本文前段の個人識別情報に該当する。また、本件文書に記録されている情報が情報公開法5条1号ただし書ロに該当することも争う。 原告の主張(一)本件文書に記録されている情報が情報公開法5条1号本文前段に該当しないことについて( )以下に述べるとおり、本件不開示決定当時、情報公開法による自 己情報の本人開示請求は認められるべきであり、本件文書に記録されている情報は情報公開法5条1号本文前段に該当しない。 ア情報公開制度において個人情報が不開示情報とされるのは、個人情報保護制度の保護の対象と同じ個人の権利利益を保護するためであると解されるところ、請求者の自己情報については、開示されたとしても、請求者の権利利益が侵害されるおそれが存しない。そうすると、情報公開制度において、本人情報の不開示決定は認められないというべきである。 イ自己情報の開示請求制度を定める法律として、個人情報保護法が制定されているが、個人情報保護法の施行は、平成17年4月1日である。本件不開示決定当時、自己の個人情報の開示を求める方法は、情報公開法に基づく開示請求に限られていたも 法律として、個人情報保護法が制定されているが、個人情報保護法の施行は、平成17年4月1日である。本件不開示決定当時、自己の個人情報の開示を求める方法は、情報公開法に基づく開示請求に限られていたものである。 ウ原告が、本件開示請求をした平成16年4月12日当時、原告が本件文書の開示を求めるためには、情報公開法に基づく請求しかで- 31 -きなかった。 、、、すなわちこの時点では個人情報保護法は成立していたものの施行はされていなかった。また、電算機個人情報保護法は存在していたが、開示される情報が電子計算機処理に係る個人情報に限られていたので、本件文書であるCT写真は開示対象に該当していなかったのである。このような状況は、兵庫県条例判決の指摘する、情報公開法制はあるが、個人情報保護法制が完備されていない、いわば「跛行状態」と全く同一である。 なお、別件再審請求事件の請求人弁護人でもある原告訴訟代理人らは、○拘置所長に対し、平成15年11月13日、弁護士法23、、条の2に基づき本件開示請求と同様の内容の照会請求を行ったが○拘置所長は、平成15年12月3日付け回答により、理由を付さずに、本件文書の開示を拒否している。 ( )ア兵庫県条例判決においても、個人情報保護制度の施行に先立っ てされた情報公開制度に基づく自己情報の公開請求に対し、行政機関は請求に答えて公開すべきこととされている。 イ兵庫県条例判決は、判断の前提として、①情報公開条例が先に制、、定されいまだ個人情報保護条例が制定されていない状態の下では公文書の開示を求める方法は情報公開条例において認められている請求を行う方法に限られていること、②情報公開制度と個人情報保護制度は異なる目的を有する別個の制度ではあるものの、共に公の情報の開示を実現するための制度であ 方法は情報公開条例において認められている請求を行う方法に限られていること、②情報公開制度と個人情報保護制度は異なる目的を有する別個の制度ではあるものの、共に公の情報の開示を実現するための制度であること、③情報公開制度にお- 32 -いて個人情報が非公開とすべき情報とされているのは、個人情報保護制度と共通の理由によるものであること、④情報公開制度は限定列挙された非公開情報に該当する場合にのみ例外的に公開請求を拒否することができるものであることを指摘しているところ、上記①ないし④の状況は本件の場合と全く同様である。 ウまた、兵庫県条例判決は、①自己の個人情報であること、②情報の本人による公開請求であることが公開請求それ自体により明らかであること、③兵庫県条例には自己情報の開示請求を許さない趣旨の規定等は存在しないこと、④個人情報保護制度が採用されていなかったことを理由として、本人からの分べんに関する診療報酬明細書を非公開とした兵庫県の処分を違法としたところ、この理由は本件にも妥当する。 エ兵庫県条例判決は、いわゆる個人識別型非公開事由を定めた兵庫県条例について「自己の個人情報を開示することが許されない趣、旨の規定」ではなく、本人請求を許すか否か明確でない旨判断している。情報公開法5条1号の規定も、いわゆる個人識別型の非公開事由を定めており、兵庫県条例と同様の規定方法である。 したがって、単なる個人識別型非公開規定を定めた情報公開法5条1号は、本人が請求する個人情報の公開を許容する余地があるものというべきである。 これに対し、東京都個人情報の保護に関する条例30条1項は、「個人情報に係る本人からの開示請求については、この条例による- 33 -ものとし、情報公開条例は適用しない」と規定しているから、東京都においては、情報公開条 情報の保護に関する条例30条1項は、「個人情報に係る本人からの開示請求については、この条例による- 33 -ものとし、情報公開条例は適用しない」と規定しているから、東京都においては、情報公開条例に基づく本人請求は認められないことは明らかである。本件の場合には、個人情報保護法はいまだ施行さ、。 れていなかったのであるから東京都の条例の場合とは全く異なる( )ア被告は、情報公開法の立法過程を挙げて「個人識別情報」は 、本人請求の場合を含めて非公開である旨主張する。 しかし、立法者の意思は、一律に本人開示を認める考え方を採らなかったというにとどまる。立法者の意思が、本件のように、弊害の全くない状況において、情報公開法による開示請求のほかに手段のない時期に、しかも極めて緊急性の高い状況下の本人による開示請求をも、個人識別情報であるからといって開示を認めないものであったということはできない。 イ被告は、個人情報保護制度と情報公開制度とは別個の法制度であるから、情報公開制度を一時的に便宜利用して本人開示を認めることは、法体系の混乱を来す旨主張する。 しかし、個人情報保護法の施行は平成17年4月1日であり、さらに、被告は、医療記録が原則開示されることになっているにもかかわらず、開示しなかったのであるから、原告としては、情報公開法による開示を求めるしかなかったのであって「混乱を来す」原、因を作ったのは、むしろ被告である。 ウ被告は、情報公開法5条1号の制度趣旨及び立法趣旨から、本人情報の開示請求に対する不開示決定が適法である旨主張する。 - 34 -しかし、そもそも同条は「開示義務」を定めた規定である。そして、情報公開法5条1号の「不開示情報」は、個人の権利利益を守るために規定されているものであることも明らかである。 (二)本件 34 -しかし、そもそも同条は「開示義務」を定めた規定である。そして、情報公開法5条1号の「不開示情報」は、個人の権利利益を守るために規定されているものであることも明らかである。 (二)本件文書に記録されている情報が情報公開法5条1項ただし書ロに該当することについて( )情報公開法5条1号ただし書ロは「人の生命、健康、生活又は 、財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」の開示を義務付けている。そこで、情報公開請求に係る文書が情報公開法5条1号の不開示事由に該当する場合であっても、個々の事例における特殊な事情によっては、不開示によって保護される利益よりも開示によって保護される利益の方が優越する場合が認められるのであり、開示・不開示の判断に際し、それぞれの利益の具体的性格を慎重に検討する必要性が求められている。 ( )ア原告は、2名に対する○罪及び1名に対する○罪につき○判決 が確定しており、現在、○の実行行為の有無及び態様並びに責任能力の有無等を理由に再審を請求中である(別件再審請求事件。原)告は少年期からシンナーを常習的に吸引しており、シンナーの影響により原告の大脳に不可逆的損傷を被っていることが容易に推察されるから、再審請求理由の証明には、専門家による頭部CT写真に基づく診断が不可欠である。 また、本件において「不開示により保護される利益」は存在せ、ず、一方、不開示による不利益は、原告の再審請求理由の証明が阻- 35 -、。 害され原告の生命という法益が侵害されるおそれに直結しているよって、本件開示請求の対象とする本件文書である原告の頭部CT写真に記録されている情報は「人の生命…(中略)…を保護す、るため、公に明らかにすることが必要であると認められる情報」に該当する。 イさらに 本件開示請求の対象とする本件文書である原告の頭部CT写真に記録されている情報は「人の生命…(中略)…を保護す、るため、公に明らかにすることが必要であると認められる情報」に該当する。 イさらに、別件再審請求において、前記確定判決の罪に問われている○行為等が有機溶剤による薬物中毒によって誘発されたことを明らかにすることが、ひいては薬物中毒の深刻さを社会に対して明らかにすることにもなるのであり、別件再審請求には、薬物事案を解明するという意味で社会的利益に資する側面もある。そのような意味で、原告の頭部CT写真は、自己情報でありながら「公」の意味合いを持つものである。 ウ原告の健康上の観点からも、本件文書を確認する必要がある。すなわち、原告の言うところによれば、長期にわたる有機溶剤中毒による精神病である可能性もあることから、原告の頭部CT写真の開示を得て、精神科の医師に意見、判断を求める必要がある。なお、原告訴訟代理人堀井準は、平成15年7月22日付けで、○拘置所長に対して、弁護士法23条の2に基づく照会をしたが、これに対する○拘置所長からの平成15年8月13日付け回答には「平成、12年▲月▲日、頭部CT施行し、異常所見は認められなかった」との記載がある。 エ加えて、医療情報は、医学の発展という社会的目的のために提供- 36 -する場合もある。 ( )ア以下で述べるとおり、本件文書である頭部CT写真は、原告本 人の医療記録であり、診療記録であるところ、本件不開示決定がされた平成16年5月10日当時、医療記録の原則開示の流れが定着していたということができる。 イすなわち、①厚生省の「カルテ等の診療情報の活用に関する検討」、、、、会は平成10年6月に報告書を作成したがその中で法律上開示請求権及び開示義務を定 ていたということができる。 イすなわち、①厚生省の「カルテ等の診療情報の活用に関する検討」、、、、会は平成10年6月に報告書を作成したがその中で法律上開示請求権及び開示義務を定めることには大きな意義があり、今後これを実現する方向で進むべきなどと記載していた。 ②日本医師会が平成11年4月に制定した「診療情報の提供に関する指針」においては、診療記録の閲覧・謄写請求に対しては、原則としてこれに応じるべきことが定められた。 ③日本医師会では、平成12年1月「診療情報の提供に関す、『る指針』に基づき、患者に対する適切な診療情報提供を実践するに、、」あたりこれからの望ましい診療録診療記録のあり方を検討するものとして、日本医師会医事法関係検討委員会が「診療録のあり方について-適切な診療情報の提供を促進するために」を答申した。 ④上記の動きと前後して、平成11年2月には「国立大学付属病院における診療情報の提供に関する指針」が、同年10月には「都立病院における診療情報の提供に関する指針」が、平成12年7月には「国立病院等における診療情報の提供に関する指針」が、それぞれ定められた。それらの中では、開示の対象として、診療録のみ- 37 -ならず、看護記録、検査記録、エックス線写真等が広く定められ、開示請求をし得るもの者として、患者本人、法定代理人等が掲げられ、医療側の判断により、又は請求者の求めにより、要約書を交付することができるとされており、また、紛争処理のための機関を設けたり、難しい事例の判断等のために委員会の設置を定めたりしている。 ⑤日本医師会が平成14年10月に制定した「診療情報の提供に関する指針(第2版」においては「医師および医療施設の管理)、者は、患者が自己の診療録、その他の診療記録等の閲覧、謄写を求め いる。 ⑤日本医師会が平成14年10月に制定した「診療情報の提供に関する指針(第2版」においては「医師および医療施設の管理)、者は、患者が自己の診療録、その他の診療記録等の閲覧、謄写を求めた場合には、原則としてこれに応ずるものとする」と定められていた。 ⑥厚生労働省が平成15年9月に策定した「診療情報の提供等に関する指針」においては「医療従事者等は、患者等が患者の診療、記録の開示を求めた場合には、原則としてこれに応じなければならない」と定められていた。 。 なお、これらの指針においては、医療側が開示を拒むことができる場合としては、①患者本人に対する悪影響が予測される場合、②第三者の利益が損なわれることが予測される場合が共通して定められている。 、、ウ原告訴訟代理人が○拘置所長に対し平成15年11月13日に弁護士法23条の2に基づき、本件開示請求と同様の内容の照会請求を行ったところ、○拘置所長から本件文書の開示を拒否された当- 38 -時、医療記録の原則開示の流れは定着しており、同年5月30日には、個人情報保護法も公布されていた。 すなわち、被告が主張するとおり、行政改革委員会情報公開部会は「情報公開法要綱案の考え方」八( )において「国民からは医、、 療、教育関係情報等を中心として本人開示を求める意見・要望等が強いことを踏まえ、関係省庁において、個人の権利利益の保護の観点から、本人開示の問題について早急に専門的な検討を進め、その解決を図る必要があると考える」との提言を行っていたが、その。 経過を受けて、関係省庁等において「専門的な検討」が進められた結果、様々な指針が策定され、医療記録について、原則開示の流れが定着したのである。 (三)事態の切迫性等について( )原告の頭部のCT写真の撮影が行われたこと自 いて「専門的な検討」が進められた結果、様々な指針が策定され、医療記録について、原則開示の流れが定着したのである。 (三)事態の切迫性等について( )原告の頭部のCT写真の撮影が行われたこと自体は、原告本人に は自明の情報であり、また、○拘置所も原告の頭部CT写真の撮影を行った事実を認めていること、前記のとおり、やむを得ず、被告に対し情報公開請求をするに至ったことに照らすと、被告の本件不開示決定は、極めて形式的に判断したもので、不当である。 ( )前記のとおり、原告は、再審を請求中であり、再審請求理由の証 明には、専門家による頭部CT写真に基づく診断が不可欠である。○拘置所における原告に対する頭部CT写真の撮影は、心身に異常を来しているとの原告からの度重なる訴えがあったことから行われたのである。原告は、平成14年3月に、原告訴訟代理人らに対し、自らの- 39 -心身の異常症状を記録し、異常症状を訴えてきたが、その後、頭部CT写真の撮影が行われた後も、原告訴訟代理人らに対して、心身の異常を訴えている。原告の健康被害の訴えは深刻なものであり、健康上の観点からも、実施されたことの明らかな頭部CT写真撮影の結果を早急に入手する必要があった。 以上の観点から、本件開示請求は急を要するものであった。
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