20む11220.4.9大阪地裁棄却316条の20第1項 主文 本件証拠開示命令請求を棄却する。 理由 第1本件請求の趣旨及び理由 本件請求の趣旨及び理由は,被告人甲の主任弁護人又は主任弁護人ら作成の平成20年1月25日付け「証拠開示命令請求書」,同年2月27日付け「証拠開示命令請求書補充書」及び同年3月17日付け「証拠開示命令申立についての補充意見書」記載のとおりである。 その要旨は,被告人甲の弁護人らは,被告人甲の供述調書には任意性がなく,共同被告人A,同B及び同Cの各供述調書には特信性がないと主張することを予定しているほか,被告人甲と被告人A,同B及び同Cとの間の背任に関する共謀を争う旨の主張を予定していると具体的に明示し,その予定主張明示に関連するものとして,上記各供述者である被告人4名についての取調べ内容等に関する捜査報告書(以下「本件捜査報告書」という。)並びに取調べメモ(手控え),備忘録及び取調小票等(以下「本件取調べメモ等」という。)を,刑事訴訟法316条の20第1項に基づき開示するよう求めたところ,検察官は,本件取調べメモ等を開示しないなどと告知したが,これは上記規定の解釈を誤ったものであるから,これらの証拠の開示を命じるように請求するというものである。 これに対して,検察官の意見は,平成20年2月12日付け検察官ら作成の「意見書」及び同年3月7日付け「同(追加)」記載のとおりである。 その要旨は,本件捜査報告書については,既に存在するものを全て開示済みであるから,そもそも不開示という前提事実を欠いており,また,取調べ内容等に関する取調べメモ(手控え),備忘録及び取調小票等(以下,本件取調べメモ等とは別個にこれらを総称して「取調べメモ等」という。)は,専ら検察官が自ら使用するために作成した個人 おり,また,取調べ内容等に関する取調べメモ(手控え),備忘録及び取調小票等(以下,本件取調べメモ等とは別個にこれらを総称して「取調べメモ等」という。)は,専ら検察官が自ら使用するために作成した個人的なものであって,証拠開示命令の対象にはなり得ないというものである。 なお,検察官は,平成20年3月26日の第13回公判前整理手続期日において,当裁判所の求釈明に対し,本件取調べメモ等は,公判前整理手続期日に出頭している検察官のみならず捜査を担当した検察官の下にも存在しない旨を釈明した。 第2本件取調べメモ等及び本件捜査報告書について 当裁判所は,平成20年3月14日の第12回公判前整理手続期日において,検察官に対し,弁護人らの証拠開示命令請求において対象とされている本件取調べメモ等が存在するか否かについて釈明するよう求めるとともに,同月17日,検察官に対し,刑事訴訟法316条の27第2項に基づき,本件取調べメモ等の証拠の標目を記載した一覧表の提示を命じた。これに対し,検察官は,同月19日付けで,上記提示命令に対して,同法309条1項に基づく異議の申立てをした。その中で,検察官は,上記規定により提示を命ずることのできる一覧表とは,検察官手持ち証拠について作成されるものであることが明らかであるところ,本件取調べメモ等は公判前整理手続期日に出頭している検察官の手持ち証拠には含まれていないなどとして,上記提示命令は上記規定の解釈を誤ったものである旨を主張した。そこで,当裁判所は,弁護人らの意見を聴いた上,同月24日付けで,上記検察官の異議申立てを棄却する決定をした。これを受けて,検察官は,上記のとおり,同月26日の第13回公判前整理手続期日において,本件の捜査主任であったD検察官に確認したところ,本件取調べメモ等は現在,物理的に存在しないとのことで 定をした。これを受けて,検察官は,上記のとおり,同月26日の第13回公判前整理手続期日において,本件の捜査主任であったD検察官に確認したところ,本件取調べメモ等は現在,物理的に存在しないとのことであった旨を回答した。さらに,当裁判所は,同月27日付けで,検察官に対し,本件取調べメモ等を作成したことがあるか,作成したものの廃棄したのであれば,その時期はいつでその理由は何か等について釈明するよう求めたところ,検察官は,同年4月3日付けで,各取調べ担当検察官が,本件取調べメモ等を作成した事実はあるが,各取調べ担当検察官とも,本件起訴により捜査が終結し,供述調書作成等の要もなくなったため不要と判断し,起訴後1週間程度の間に廃棄したと釈明した。 以上を前提として,本件取調べメモ等の存否について検討する。 取調べメモ等は,一般的に,取調べ対象者の供述内容や供述態度のほか,当該供述内容等に関する取調官の感想,当該供述等との関係において検討すべき別途収集された証拠の内容等概要,当該供述内容等を踏まえた上で今後必要と思われる捜査の内容等が記載されるものと推認される(検察官ら作成の平成20年2月12日付け意見書4~5頁)。このような取調べメモ等が,取調べの状況を推知させるものとして,被告人の供述調書の任意性や被告人以外の関係者の供述調書の特信性及び信用性を判断する上で重要な資料の一つとなることは明らかであり,刑事訴訟規則198条の4に照らしても,当該事件の公判が終了するまで保管しておくのが相当であると思われる。とりわけ,被告人甲の共犯者として起訴され,同時に公判前整理手続を行っている被告人Aの弁護人らは,平成19年4月25日の段階で,捜査担当検察官に対し,「本件について,被告人Aの取調べの全過程の可視化を履践しないままに作成された調書については,将来の公判 整理手続を行っている被告人Aの弁護人らは,平成19年4月25日の段階で,捜査担当検察官に対し,「本件について,被告人Aの取調べの全過程の可視化を履践しないままに作成された調書については,将来の公判で証拠請求されたとき,弁護人は,任意にされたものでない疑いがあると主張することになる。」旨を申し入れていたようにうかがわれるから,被告人Aの取調べ担当検察官はもとより,共犯関係にあるとされる被告人甲,同B及び同Cの各取調べ担当検察官としても,将来の公判段階における任意性等の立証に備えて,本件取調べメモ等を保管しておく必要性があったといえる。そうすると,各取調べ担当検察官が,本件取調べメモ等を一様に廃棄してしまったというのは,その必要性があったのか,相当な行為といえるのかについて,少なからず疑問があるといわざるを得ない。しかし,検察官の上記釈明ないし回答は,本件取調べメモ等を廃棄した時期や理由をそれなりに具体的に明らかにしたものといえるから,本件取調べメモ等を廃棄したという検察官の主張は一応理由があり,それが虚偽であることを疑わせる事情は見当たらない。 被告人Aの弁護人らは,被告人Aは取調べの際に検察官がメモを作成していたのを見た,取調べメモの重要性にかんがみれば,廃棄するはずがない旨を主張するが,これらの主張を踏まえても,上記の結論は変わらない。 次に,本件捜査報告書についてみると,検察官は,平成20年1月15日付け回答において,任意性がない旨の主張の具体的補充を待って回答するとした被告人甲を除く被告人A,同B及び同Cについては,取調べ内容等に関する捜査報告書(取調べ状況等報告書を含む。)を開示し,その後,同月24日には,被告人甲についても,弁護人らの主張補充を踏まえて,取調べ内容等に関する捜査報告書を開示する旨回答済みであり,その回答は,開示 査報告書(取調べ状況等報告書を含む。)を開示し,その後,同月24日には,被告人甲についても,弁護人らの主張補充を踏まえて,取調べ内容等に関する捜査報告書を開示する旨回答済みであり,その回答は,開示する旨回答したもの以外には該当する証拠が存在しないという趣旨であると認められる。そうすると,本件捜査報告書については,証拠開示命令請求の前提となる不開示という事実が存在しない。 したがって,本件証拠開示命令請求については,証拠が存在せず,又は,不開示という前提事実が存在しないことに帰結するから,いずれも理由がない。 第3結語よって,弁護人らの本件証拠開示命令請求は理由がないから,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官・西田眞基,裁判官・千賀卓郎,裁判官・馬場崇)
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