平成29年1月12日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成27年(ワ)第7288号営業差止等請求事件口頭弁論終結日平成28年11月1日判決原告有限会社日本薬局同訴訟代理人弁護士鈴木敬一被告株式会社M&Sコーポレーション被告 P1被告 P2被告 P3上記4名訴訟代理人弁護士岡本慎一同大濵良輔 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは,別紙利用者目録記載の者に対し,面会を求め,電話をし,又は郵便物を送付する等して,介護サービスに関する契約の締結,締結方の勧誘をしてはならない。 2 被告らは,原告に対し,連帯して,1201万6214円及びこれに対する被告M&Sコーポレーション,被告P1及び被告P3については平成27年9月4日から,被告P2については同月8日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は,原告が,原告に勤務していた被告P1,被告P2及び被告P3(以下前記被告らと併せて「被告3名」という。)において,原告の営業秘密である利用者の情報を持ち出し,原告を退職後,不正の利益を得る目的,あるいは,原告に損害を加える目的で,同情報を使用して原告の利用者を勧誘し,被告 併せて「被告3名」という。)において,原告の営業秘密である利用者の情報を持ち出し,原告を退職後,不正の利益を得る目的,あるいは,原告に損害を加える目的で,同情報を使用して原告の利用者を勧誘し,被告P1が設立した被告株式会社M&Sコーポレーション(以下「被告会社」という。)との契約に切り替えさせるなどの行為をしたとして,当該行為が不正競争(不正競争防止法2条1項7号),あるいは一般不法行為(民法709条)に該当すると主張し,また,被告ら全員において,被告3名の不正開示行為であることを知って,上記情報を取得し,使用する不正競争を行ったと主張し(不正競争防止法2条1項8号),被告ら全員に対し,同法3条1項に基づき,上記情報にある利用者に対し,面会を求め,電話をし,又は郵便物を送付する等して,介護サービスに関する契約の締結,締結方の勧誘の差止めを求めるとともに,同法4条による不法行為(被告3名については選択的に一般不法行為)に基づく損害賠償として,1201万6214円及びこれに対する不法行為日後である各被告の訴状送達の日の翌日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。 1 争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定し得る事実(1) 当事者ア原告は,薬局経営と介護保険法による介護サービス事業を目的として平成8年2月20日に設立された有限会社であり,大阪市〈以下略〉において「P4」の事業所名で,介護保険法における訪問介護事業者及び居宅介護支援事業者としての指定を受け,介護サービス事業を営んでいる(以下,上記所在地の事業所を「原告事業所」という。)。 イ被告P1は,平成16年7月から原告の従業員として雇用され,平成27年3月31日に退職するまで,原告事業所にお サービス事業を営んでいる(以下,上記所在地の事業所を「原告事業所」という。)。 イ被告P1は,平成16年7月から原告の従業員として雇用され,平成27年3月31日に退職するまで,原告事業所における居宅介護支援事業の介護支援専門員(ケアマネージャー)として勤務していた者で,被告会社の代表取締役であ る。 ウ被告P2は,原告の従業員として雇用され,平成27年4月15日に退職するまで,原告事業所における居宅介護支援事業のケアマネージャーとして勤務していた者である。 エ被告P3は,平成24年2月1日から原告の従業員として雇用され,平成27年3月31日に退職するまで,原告事業所における訪問介護事業のサービス提供責任者として勤務していた者である。 オ被告会社は,居宅介護サービス事業等を目的として平成26年12月25日に被告P1によって設立された株式会社であり,「P5」の事業所名で開設する事業所において,介護保険法による訪問介護事業者及び居宅介護支援事業者の指定を受け,介護サービス事業を営んでいる(以下「P5」の名称の事業所を「被告事業所」という。)。 (2) 原告の事業等ア介護保険のサービス介護保険のサービスとしては,①「居宅サービス」,②「居宅介護支援」等があるところ,①「居宅サービス」には,介護福祉士や訪問介護員によって提供される入浴,排泄,食事等の介護,そのほかの日常生活を送る上で必要となるサービスである「訪問介護」や,「訪問入浴介護」,「訪問看護」等が用意されている。 要支援あるいは要介護の認定を受けた介護保険の被保険者(以下「利用者」という。)が,これらの介護保険のサービスの利用を希望する場合には,次のような流れで介護サービスが提供される。 要介護者については,指定居宅介護支援事業者との間の契約に 険の被保険者(以下「利用者」という。)が,これらの介護保険のサービスの利用を希望する場合には,次のような流れで介護サービスが提供される。 要介護者については,指定居宅介護支援事業者との間の契約に基づき,同事業者に属するケアマネージャーが,利用者や家族の状況や意向を踏まえて「居宅サービス計画書」(以下「ケアプラン」という。)を作成し,これに基づき,さらに,利用者が指定居宅サービス事業者(以下「サービス事業者」という。)と契約を結び,各種居宅サービスが提供される。サービス事業者には,主としてケアマネージャーを 通じて居宅サービス利用の打診がされ,同事業者と利用者の双方が合意に達すれば,居宅サービスに関する契約を締結する。 要支援者については,介護予防事業のケアマネジメントを実施するなど地域住民の健康保持と生活安定のために必要な援助を行う「地域包括支援センター」により介護予防サービス計画を作成し(この計画については,居宅介護支援事業者に委託をする場合もある。),要介護者の場合と同様に居宅サービスをサービス事業者から受ける。 (乙1ないし乙3)イ原告における居宅サービスの提供利用者との居宅サービスに関する契約締結後,原告においては,サービス提供責任者が,ケアマネージャーから提供された情報及びケアプランを基に利用者から改めて事情を聴取し,課題分析を行った上で訪問介護計画書を作成し,事業所に登録している訪問介護員(以下「ヘルパー」という。)に介護サービスの内容を指示伝達してサービス提供を行っている。 (3) 原告における利用者の情報ア原告においては,利用者につき,ケアプラン,原告のサービス提供責任者の作成したアセスメントシート,訪問介護事業所契約書(利用者との契約書),重要事項説明書,秘密取扱いに対する同意書,介護保 報ア原告においては,利用者につき,ケアプラン,原告のサービス提供責任者の作成したアセスメントシート,訪問介護事業所契約書(利用者との契約書),重要事項説明書,秘密取扱いに対する同意書,介護保険被保険者証写し,ケアマネージャーの作成したサービス提供書,訪問介護計画書,サービス業務実績表,利用者に関する記録等の複数の文書をまとめた利用者名簿(以下「本件利用者名簿」という。)を作成している。 「居宅サービス計画書」(ケアプラン,甲15の3),介護保険被保険者証写し(甲15の2),利用者基本情報(甲15の1)には,利用者の住所,氏名,年齢,電話番号,介護認定状況,介護保険認定情報,利用者に対するサービスの内容等が記載されている(以下,これらを「本件利用者情報」という。)。 イ原告事業所 原告事業所は,平成16年7月に開設され,その際,被告P1が原告に雇い入れられた。原告事業所においては,居宅介護支援事業と訪問介護事業とを取り扱っており,被告3名は,原告事業所の同じ事務室内で勤務していたが,被告P1及び被告P2は,ケアマネージャーとして居宅介護支援事業に従事し,被告P3は,サービス提供責任者として訪問介護事業に従事しており,被告P1は,原告事業所の責任者としての立場にあった。 原告の利用者には,「居宅介護支援」を利用した上で,「居宅サービス」である訪問介護も利用する場合には,原告事業所内の訪問介護事業所において本件利用者名簿が書類として保管されるほか(当該保管冊子を「ケースファイル」という。),居宅介護支援事業所においてもケアプラン,介護保険被保険者証の写し,サービス提供票,訪問介護計画書,利用者に関する記録等が別途ファイルされて保管されていた。 また,本件利用者情報は,電磁的記録として,クラウドコンピューティング アプラン,介護保険被保険者証の写し,サービス提供票,訪問介護計画書,利用者に関する記録等が別途ファイルされて保管されていた。 また,本件利用者情報は,電磁的記録として,クラウドコンピューティングシステムである「楽にネット」を利用して,保存されていた。 2 争点及び争点についての当事者の主張(1) 本件利用者情報は不正競争防止法2条6項の「営業秘密」に該当するか【原告の主張】本件利用者情報は,以下のとおり,営業秘密に該当する。 ア有用性介護保険による居宅サービス等の利用者である顧客を獲得することは容易なことではないが,原告の地道な長年の運営活動による信用が基礎となって顧客を獲得してきたものである。一度獲得して契約した利用者は,継続してサービスを受け続け,特別な事情のない限り,契約は更新されてきたものであるから,本件利用者情報は,多大な財産的価値を有する有用な営業上の秘密情報である。 イ秘密管理性(ア) 本件利用者名簿の保管冊子であるケースファイルは,原告事業所内の 施錠できるキャビネット内に保管され,取り出すごとに解錠し,使用が終わったら戻して施錠するよう指導してきたもので,実際もこのように運用されていた。 電磁的記録としての本件利用者名簿の情報は,「楽にネット」というクラウドコンピューティングシステムを利用して管理されていた。管理されている情報にアクセスするためには,事務所内の机上に置かれたパソコン(4台)のUSB端子に「楽にネット」から配給されたUSB型セキュリティーキー(以下「セキュリティーキー」という。)を差し込んで,割り当てられているID,パスワードを入力してアクセスする必要があり,アクセス利用は,原告事業所に勤務する被告3名ともう1名の従業員の4名に限定されており,他の者がI キー」という。)を差し込んで,割り当てられているID,パスワードを入力してアクセスする必要があり,アクセス利用は,原告事業所に勤務する被告3名ともう1名の従業員の4名に限定されており,他の者がID,パスワードを知らずにアクセスすることは不可能であった。 ケースファイルには,マル秘や部外秘等の表示はされていなかったが,原告の指示により,秘密として管理されていたことは,被告3名に周知されていた。 (イ) また,原告においては,雇用契約書,身元保証及び誓約書,就業規則上に秘密保持条項が入れられており(甲16ないし21),プライバシー保護だけでなく,営業秘密の漏えい防止を目的としていた。 ウ非公知性本件利用者名簿は,従業員に対して秘密保持を徹底させた上で使用されてきたのであり,非公知である。 【被告らの主張】本件利用者情報は,以下のとおり,営業秘密に該当しない。 ア有用ではないこと介護保険制度の下においては,どの事業所を利用しても概ね介護保険により利用料の負担は一定であり,その介護サービスの内容が通常のサービスが提供される限りにおいては,利用者である高齢者を中心とする要介護者,要支援者やその保護者等は,日々のコミュニケーションを取るためにヘルパーやケアマネージャー等との信頼関係や安心感を重視し,その環境の変化を望まないものである。 したがって,このような信頼関係等がある以上,利用者の情報を同業他社が得たとしても,それまでの事業所との契約を継続するはずであるから,同業他社の「事業活動」にあっては,ほとんど利用価値がないし,他の事業においても有用な価値はない。 イ秘密として管理されていないこと(ア) 原告事業所の訪問介護事業所において保管されていたケースファイルは,キャビネットに入れ んど利用価値がないし,他の事業においても有用な価値はない。 イ秘密として管理されていないこと(ア) 原告事業所の訪問介護事業所において保管されていたケースファイルは,キャビネットに入れられていたが,出社時に鍵を開けて帰宅時に鍵を閉めることとしていた。これは,訪問介護事業においては,居宅サービスを提供するにあたり,利用者の自宅の鍵を預かってキャビネットに入れていたため,防犯の観点から,事業所に人がいなくなる時は鍵を閉めるようにしていたものである。 他方,居宅介護支援事業所おいて保管していた書類は,キャビネットを利用して保管していたが,入りきらない分はキャビネットの横の棚にも置かれ,キャビネット自体も常に鍵がかかっていなかった。 (イ) また,電磁的記録の管理も,各従業員にセキュリティーキーのIDとパスワードはあったものの,IDは●(省略)●などの単純なもので,パスワードは共通であり,セキュリティーキーの管理は具体的に定められておらず,ほとんど差しっ放しで,持ち出しについても明確に禁止されていなかった。 (ウ) 原告が指摘する秘密保持義務は,雇用契約書等から直ちに導かれるものではなく,雇用契約書等の記載は,利用者や顧客に対するプライバシー保護の観点からの一般的な義務にすぎず,対象の特定もないままに不正競争防止法の秘密管理性を肯定するものではないといえる。 (エ) したがって,原告が主張する本件利用者情報は,このようなケースファイル等の管理方法から,秘密として管理されていなかったものといえる。 (2) 被告らの不正競争の有無【原告の主張】ア不正競争防止法2条1項7号の不正競争 被告3名は,在職中に,少なくともケースファイルの中の,「利用者基本情報」,「介護保険被保険者証」及 不正競争の有無【原告の主張】ア不正競争防止法2条1項7号の不正競争 被告3名は,在職中に,少なくともケースファイルの中の,「利用者基本情報」,「介護保険被保険者証」及び「居宅サービス計画書」(甲15の1ないし3)をコピーして持ち出した。または,被告P1は,事業所内のパソコンのうち,被告P1の机の上に備え置いていたパソコンのUSB端子に差し込まれていた「楽にネット」のセキュリティーキーを勝手に外して自宅に持ち帰り,自宅のパソコンで「楽にネット」にアクセスして,本件利用者情報をダウンロードして取得した。 被告3名は,退職後において,本件利用者情報を利用して,別紙被害一覧表記載の原告と訪問介護契約を締結していた利用者に対し,挨拶という口実で面会したり電話をかけるなどして,被告3名が辞めることにより原告のサービスが低下するなどと不安をあおった上,被告会社との契約を勧誘し,原告から被告会社への契約の切替えを行った。被告P1は,退職してから本訴を提起するまでの3か月以内の短期間に,原告事業所における訪問介護事業の利用者のうち別紙被害一覧表記載の21名と,被告会社との契約を締結した。さらに,本訴を提起して以降も原告の利用者3名と被告会社との契約を締結し,結局,被告会社が,訪問介護について契約を締結した原告の利用者の利用額・粗利額は,原告に残った利用者の利用額・粗利額の3倍に上る。他方,原告代表者の知り合いには全く勧誘行為を行っていない。このような事実からすれば,被告3名が,原告代表者に知られないように,被告会社開業当初から,利用額の多い原告の利用者に的を絞って狙い撃ちにして奪う計画であったことは明らかである。 このように,被告3名は,不正の利益を得る目的で,あるいは,原告に損害を加える目的で,原告の営業秘密である 利用額の多い原告の利用者に的を絞って狙い撃ちにして奪う計画であったことは明らかである。 このように,被告3名は,不正の利益を得る目的で,あるいは,原告に損害を加える目的で,原告の営業秘密である本件利用者情報を使用したものである。 イ同項8号の不正競争被告らは,前記アのとおり,被告3名の不正開示行為を知って,原告の営業秘密を取得し,又は被告会社における営業に使用したことは明らかである。 【被告らの主張】ア不正競争防止法2条1項7号の不正競争 被告3名が,本件利用者情報等を取得した事実はないし,これを利用して利用者と契約したこともない。被告3名は,原告の利用者に対し,在職中,退職後にかかわらず勧誘行為をしたことはない。被告3名は,退職するまで,利用者に対して一部の者を除いて挨拶すらしていない。 被告P1は,平成27年2月頃から,体調を崩して有給休暇に入ったが,退職までに終わらせるべき仕事のために,セキュリティーキーを自宅に持ち帰り,クラウドの情報にアクセスしたことはある。しかし,被告P1は,原告代理人からの内容証明郵便が届くなどしたため,セキュリティーキーを直ちに返却し,その後,退職までの間,事業所に赴き,有給休暇中であるにもかかわらず,引継ぎ等のために利用票(平成27年3月分)など,紙にして数百枚分のデータを作成したもので,本件利用者情報を取得したといったことはない。被告3名は,原告勤務中,原告の業務のために本件利用者名簿を利用してきたが,「不正の利益を得る目的」,又は,「原告に損害を加える目的」で使用したことはない。 原告においては,①居宅介護支援(ケアプラン作成)はお金にならないこと,②ケアマネージャーの被告P1及び被告P2が退職するため十分に対応できるケアマネージャーがいなくなること 使用したことはない。 原告においては,①居宅介護支援(ケアプラン作成)はお金にならないこと,②ケアマネージャーの被告P1及び被告P2が退職するため十分に対応できるケアマネージャーがいなくなることから,居宅介護支援事業の縮小ないしは撤退を検討していた。そのためか,原告は,居宅介護支援事業において,原告代表者の知り合い以外の利用者については,順次,地域包括支援センターから委託を受けて作成したものについては地域包括支援センターにケアプランを返却し,また,その他のものについても,他の事業所のケアマネージャーにケアプランを引き取ってもらえないか打診し始めていた。 地域包括支援センターは,ケアプランを突如放棄されても困るとのことで,独立予定の被告P1に対し,受入先に困っているため,引き取ってもらえないかとの打診をした。被告P1は退職するまでの間は全て断ったが,平成27年4月1日以降,順次地域包括支援センター等から,原告において被告P1及び被告P2が担当していたケアプランの引取りの打診を受け,居宅介護支援を行っている。原告において, 訪問介護事業を利用せず,居宅介護支援を受けていた利用者は,被告会社に移転しているが,原告はこれについては特に本訴の対象とはしていない。 また,①居宅介護支援事業の利用者やその家族が,訪問介護についても被告会社と契約したいとの意思を示したり,②原告の対応に不満を募らせていたところ,他のヘルパーやケアマネージャー等から,被告P1が独立したことを知って被告会社に契約を切り替えた者等がいる。 このような結果は,原告が利用者に無断で,上記のとおり,居宅介護支援事業におけるケアプランを移転させていたことに利用者が不信感を持ったことにも起因しているようであり,利用者自らの意思で被告会社を選択したもので,不正な勧誘 が利用者に無断で,上記のとおり,居宅介護支援事業におけるケアプランを移転させていたことに利用者が不信感を持ったことにも起因しているようであり,利用者自らの意思で被告会社を選択したもので,不正な勧誘など全くなかった。 イ同項8号の不正競争前記アのとおりであり,同項8号の不正競争についても否認ないし争う。 (3) 被告3名の行為が一般不法行為に当たるか【原告の主張】被告3名は,在職中に知り得た利用者に関する秘密や情報を漏洩しない義務を負いながら,本件利用者情報を不正に利用して,在職中である平成27年2月から3月頃に,利用者に対し,被告会社を設立し,同年4月1日付けで被告会社に移籍することになっており,その結果原告においてサービスが低下するなどと不安感をあおり,動揺させた上,被告会社との介護サービス契約を締結するように不正に勧誘した。 【被告らの主張】否認ないし争う。 被告3名が本件利用者情報を利用した事実はない。 (4) 原告の損害【原告の主張】原告は,別紙被害一覧表のとおり,平成26年度の各利用者に関する利益(原告 の売上額から人件費を控除したもの。)相当額1201万6214円の損害を被った。 【被告らの主張】否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件利用者情報は不正競争防止法2条6項の「営業秘密」に該当するか)について(1) 後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア原告事業所における本件利用者情報の管理状況原告事業所の訪問介護事業所においては,本件利用者情報を含む本件利用者名簿が紙媒体の一つのファイル(ケースファイル)として,施錠できるキャビネットに保管されていた。利用者の居宅の鍵が預けられている場合 告事業所の訪問介護事業所においては,本件利用者情報を含む本件利用者名簿が紙媒体の一つのファイル(ケースファイル)として,施錠できるキャビネットに保管されていた。利用者の居宅の鍵が預けられている場合には,ケースファイルと一緒に保管され,原告事業所に人がいない場合にはキャビネットは施錠されることとなっており,鍵はキャビネットの裏に置かれていた。介護支援事業所においても,本件利用者情報を含む書類を保管しており,要介護の利用者のファイルは施錠できるキャビネットに保管されていたが,常には施錠されておらず,要支援の利用者についてはキャビネットではなく,施錠できない棚に入れられていたものもあった。 (甲5ないし甲8,被告P1・尋問調書4,5頁)また,本件利用者情報は,電磁的記録として,クラウドコンピューティングシステムである「楽にネット」に保存され,「楽にネット」にアクセスして本件利用者情報を閲覧するためには,原告事業所内のパソコンのUSB端子に「楽にネット」から配給されたセキュリティーキーを差し込んで,ID,パスワードを入力する必要があった。セキュリティーキーは,原告事業所に勤務する被告3名を含む4名の従業員各自に対し配布され,各セキュリティーキーにID,パスワードが設定されていたが,各IDは,セキュリティーキーに記載してある●(省略)●などの記載に対応して●(省略)●などと定められ,パスワードは,●(省略)●であった。(甲 9ないし甲14,被告P1・尋問調書5,6頁)イ原告従業員の秘密保持義務等原告の就業規則は,従業員が在職中のみならず,退職後においても,職務上知り得た秘密を外部に漏らす行為を禁止している(第61条(3),甲16)。また,原告と被告3名との間の雇用契約書には,利用者のプライバシーを守る義務がある旨(第 中のみならず,退職後においても,職務上知り得た秘密を外部に漏らす行為を禁止している(第61条(3),甲16)。また,原告と被告3名との間の雇用契約書には,利用者のプライバシーを守る義務がある旨(第5条),業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を保持しなければならない旨(第9条)の記載があり(甲17,甲19,甲21),被告P1及び被告P3の身元保証及び誓約書には,利用者の機密に関する事項は,在職中のみならず,退職後においても職務上知り得た機密等を他に漏らさない旨の記載があった(甲18,甲20)。 (2) 判断ア不正競争防止法における営業秘密とは,秘密として管理されている事業活動に有用な営業上の情報であって,公然と知られていないものをいう(同法2条6項)。 イ非公知性・有用性本件利用者情報は,介護保険サービスを利用する利用者の住所,氏名,年齢,電話番号,介護認定状況,介護保険認定情報,利用者に対するサービスの内容等であるところ,これらの情報は,利用者のプライバシーに係る情報を含むものであるから,上記認定のとおり,従業員において秘密保持の対象となるもので,当然に非公知の情報である。 また,本件利用者情報は,介護保険サービスを提供する事業者にとって,通常知り得ない要介護者等の事業対象者や,その必要とするサービスの内容を知ることができるという意味で,その営業において有用な情報であるといえる。 この点,被告らは,利用者にとって重要なのは,ヘルパーやケアマネージャーとの信頼関係等であり,それがある以上,同業他社が利用者の情報を得ても,従前の事業所との契約を継続するはずであるから,本件利用者情報の有用性はない旨主張するが,本件利用者情報があれば,同業他社は,勧誘対象者の選定や勧誘内容の策 定を効率的に行う 報を得ても,従前の事業所との契約を継続するはずであるから,本件利用者情報の有用性はない旨主張するが,本件利用者情報があれば,同業他社は,勧誘対象者の選定や勧誘内容の策 定を効率的に行うことができる上,被告らの主張は利用者と介護サービス事業者との関係が良好な場合にのみ妥当するにすぎないから,これにより有用性が否定されるものではない。 ウ秘密管理性前記認定のとおり,被告3名の雇用契約書には,業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を保持しなければならないと定められており,本件利用者情報を含む電磁的記録は,アクセスにセキュリティーキーが必要なクラウドコンピューティングシステムを用い,原告事業所に勤務する各従業員にそれぞれ割り当てられたセキュリティーキーに設定されたIDとパスワードを入力しなければならないように管理されていた。また,原告事業所においては,本件利用者名簿を保管するための施錠できるキャビネットが設置されており,本件利用者名簿が利用者のプライバシーを含むものであることからすれば,当然キャビネットに保管することが予定されていたもので,被告P1自身も,介護事業者としての指定を受ける際に,キャビネットに施錠して保管するよう求められていることを認めている(被告P1・尋問調書30頁)。このような本件利用者情報の管理状況からすれば,原告従業員において,原告事業所に勤務する原告従業員のみが本件利用者情報を利用できるもので,他に漏らしてはならない営業上の情報であると認識できたものといえ,秘密として管理されていたものと認められる。 これに対し,被告らは,原告事業所の訪問介護事業所におけるキャビネットの施錠は,利用者の自宅の鍵を預かっていたためであり,居宅介護支援事業所における上記キャビネットの施錠状況や,ID及びパスワードが簡単 に対し,被告らは,原告事業所の訪問介護事業所におけるキャビネットの施錠は,利用者の自宅の鍵を預かっていたためであり,居宅介護支援事業所における上記キャビネットの施錠状況や,ID及びパスワードが簡単なものであったことを指摘して,秘密として管理されていなかった旨主張する。しかし,原告事業所における責任者であった被告P1は,本件利用者情報に係る書類が,本来施錠されたキャビネットに保管するべきものであることを認識しながら,前記認定のような管理を行っていたにすぎず,これをもって秘密として管理されていなかったということはできないはずであり,また,クラウドコンピューティングシステムのIDやパス ワードは,形式的に決められていたものの,原告事務所の従業員以外の者に明らかにされていたものではなく,仮に持ち出しがされたとしてもIDとパスワードにより保護されているのであるから,被告らの主張はいずれにしても理由がない。 また,被告らは,雇用契約書等での守秘義務の記載は,利用者等のプライバシー保護の観点からのものにすぎないと主張する。しかし,本件利用者情報が前記のとおり有用性を有する営業上の情報であることからすると,それを秘密とする趣旨が利用者等のプライバシー保護の観点のみにあるとは認められないから,上記の秘密としての管理をもって営業秘密の秘密管理というのに妨げはないというべきである。 エ以上から,本件利用者情報は,不正競争防止法における営業秘密であると認められる。 2 争点(2)(被告らの不正競争の有無)について(1) 後掲証拠によれば,次の事実が認められる(争いのない事実を含む)。 ア被告P1は,原告事業所立ち上げ当初から勤務しており,原告事業所における利用者の開拓等に努め,平成16年7月の開所から1年程度で,ケアプラン等を 次の事実が認められる(争いのない事実を含む)。 ア被告P1は,原告事業所立ち上げ当初から勤務しており,原告事業所における利用者の開拓等に努め,平成16年7月の開所から1年程度で,ケアプラン等を作成し居宅介護支援を行う利用者が50名程度,訪問介護事業の利用者が20名程度となるに至った(甲29,被告P1・尋問調書20頁)。 イケアマネージャーは,ケアプランの作成のみならず,サービスを提供する訪問介護事業者への紹介後も,少なくとも月に1回は利用者を訪問し,利用者の身体状況等の把握を行う必要があるもので,被告P1においては,訪問時に利用者からの相談等にも応じ,介護認定の手続の手伝いなどもしていた。訪問介護事業者も,ヘルパー等を通じて把握した利用者の状況を,毎月,ケアマネージャーに対して報告を行う必要があるとされているが,実際は,その連携が上手くいきやすいとして,居宅介護支援事業と訪問介護事業を同じ業者に頼む利用者が多く,原告事業所における訪問介護事業の利用者で,原告事業所における居宅介護支援を行っていない利用者は少なかった。(被告P1・尋問調書3,4,12,13頁)ウ原告事業所における居宅介護支援事業は,被告P1及び被告P2がケア マネージャーとしてケアプランを作成するなどの業務を担当しており,被告P1が有給休暇を取得し始めた平成27年2月9日頃以降の同年3月頃には別のケアマネージャーが雇用されるなどしたが,短期間で辞めた者もいた(原告代表者・尋問調書19,20頁,被告P1・尋問調書10,11,38,39頁)。 原告事業所における居宅介護支援事業のうち,介護予防支援については,大阪市の区が運営する地域包括支援センターからの委託を受けて,ケアプランを作成していたものもあった(争いのない事実)。 エ被告P1は, 業所における居宅介護支援事業のうち,介護予防支援については,大阪市の区が運営する地域包括支援センターからの委託を受けて,ケアプランを作成していたものもあった(争いのない事実)。 エ被告P1は,平成26年12月頃,原告代表者に対し,原告事業所を退職して独立し,介護サービスを提供する事業を始めたい旨を申し入れ,原告代表者はこれを了承した。そこで,被告P1は,独立のため,新会社設立の準備等を始め,同月25日に被告会社を設立し,その後,被告会社の事務所として使用する物件を賃借するなどした。(原告代表者・尋問調書13頁,被告P1・尋問調書22,33,34頁)オ原告代表者は,被告P1が独立を申し出たのに対し,原告事業所における事業を500万円で譲渡するという提案をし,被告P1もこれを了承し,契約書の締結を求めていたが,その後,平成27年2月9日頃,原告代表者は,上記のような額では営業を譲渡することは無理であるとして,譲渡金額として2000万円の提示をした。被告P1は,それまでの話と全く異なる話に驚き,原告代表者の提示を断ったが,パニック発作を起こして倒れたため,その頃から同年3月末日の退職まで有休休暇を取得した。(被告P1・尋問調書8,48ないし50頁)カ被告P1は,有給休暇中の同年2月,「楽にネット」のセキュリティーキーを自宅に持ち帰り,2度ほどアクセスした(被告P1・尋問調書7,15頁)。 原告は,同月26日,被告P1に対し,セキュリティーキーを不法に持ち出すことは犯罪行為である,などとして警告する文書を送付した。また,原告は,被告P3に対しても,原告の内部体制を漏洩して原告の業務を妨害しているとして,違法行為がないよう警告する文書を送付した。(甲25,甲26の各1及び2) これを受けた被告P1は,直 は,被告P3に対しても,原告の内部体制を漏洩して原告の業務を妨害しているとして,違法行為がないよう警告する文書を送付した。(甲25,甲26の各1及び2) これを受けた被告P1は,直ちに,原告に勤務していた被告P2にセキュリティーキーを原告に返還するよう,手渡した。その後,被告P1は,2度ほど,原告事業所に出社して仕事をするなどし,ケアマネージャーとして作成が必要な報告書や平成27年3月分の各利用者の利用票等を作成した(被告P1・尋問調書8,9,39,42頁)。 キ被告P1は,同年3月末日をもって原告を退職したが,同月末における原告事業所の居宅介護支援事業の利用者は,約80人であった。また,同時期の訪問介護事業の利用者は約50人であり,居宅介護支援事業の利用者のうち,被告P1の担当していた者は,三十数人いた(被告P1・尋問調書17,19,20頁)。 原告事業所においては,同年4月1日以降,被告P2と他のケアマネージャーが居宅介護支援事業を担当していたが,地域包括支援センターからの委託を受けて原告事業所においてケアプランを作成した者について,順次,地域包括支援センターにケアプランを返却し,他のケアプランについても,他の事業所のケアマネージャーにケアプランを引き取ってもらえないかと打診するなどしたため,地域包括支援センター等から被告会社に対し,被告P1及び被告P2が原告においてケアプランを担当してきた利用者についてケアプランを引き取るよう求められるなどした。その結果,原告において居宅介護支援のみを利用していた者は,被告会社が担当するようになり,訪問介護も併せて利用していた者についても,被告会社がその居宅介護支援を担当するようになった者がいた(原告代表者・尋問調書17頁,被告P1・尋問調書10,11頁,争いのない事 が担当するようになり,訪問介護も併せて利用していた者についても,被告会社がその居宅介護支援を担当するようになった者がいた(原告代表者・尋問調書17頁,被告P1・尋問調書10,11頁,争いのない事実)。 原告においては,ケアプランの作成等の居宅介護支援事業を仮に他の業者に依頼しても,訪問介護事業を継続することはできると考えていた(原告代表者・尋問調書17,18頁)。 ク被告会社は,平成27年4月1日以降,介護保険法による訪問介護事業者及び居宅介護支援事業者の指定を受け,被告事業所を開業した。被告P2は,同月15日に原告を退職し,翌日から被告会社で勤務を始めた。(争いがない) 原告事業所において訪問介護を利用していた利用者のうち,本訴が提起される平成27年7月頃までの間に20人の利用者が被告事業所に移り(被告P1は,乙4において,別紙被害一覧表記載16の利用者の被告会社との契約を否認しているところ,同人と被告会社との居宅サービスに関する契約が締結されたことを認めるに足る証拠はない。),本訴提起後もさらに3人の利用者が移った。これらの合計23人のうち,原告が居宅介護支援事業を担当し,被告P1又は被告P2がケアマネージャーとなっていたものは20人であり(甲27),これらの利用者の中には,原告がケアプランを地域包括支援センターに返却する等したことから,同センターから被告会社にケアプランの引取りを求めたものもあった。原告事業所には,本訴提起時には30人の訪問介護の利用者が残っていたが,平成28年1月の時点では22人となった。原告事業所に同月の段階で残った利用者22人の平成26年4月から平成27年3月までの利用額の合計は735万円余であり,被告事業所に移転した23名の同期間の利用額は,2162万5770円であった。(甲2 告事業所に同月の段階で残った利用者22人の平成26年4月から平成27年3月までの利用額の合計は735万円余であり,被告事業所に移転した23名の同期間の利用額は,2162万5770円であった。(甲27,乙4,被告P1・尋問調書44ないし46頁,弁論の全趣旨)(2) 判断ア原告は,被告3名が本件利用者情報をコピーする,あるいは,電磁的記録をダウンロードするなどして不正に取得し,これを使用して挨拶という口実で,面会する,電話をかけるなどして原告のサービスが低下するなど不安をあおり,利用額の高い原告の利用者を計画的に奪うために被告会社における勧誘活動を行った旨主張し,被告P1が本件利用者情報にアクセスできるセキュリティーキーを自宅に持ち帰ってアクセスしたこと,被告会社が被告事業所を開業して短期間に,平成27年3月末日当時約50人いた原告事業所の訪問介護事業の利用者のうち,利用額の高い約20人が被告事業所に移転したこと等を指摘する。 イ前記認定のとおり,被告P1は,有給休暇に入った平成27年2月頃に本件利用者情報にアクセス可能となるセキュリティーキーを自宅に持ち帰って2度ほどアクセスし,また,休暇中に2度ほど原告事務所に出社している。 しかし,前記認定の経緯からすれば,被告P1が平成27年2月9日頃以降退職するまで休暇を取得して出社しないことが事前に予定されていたものとは認められないから,被告P1の有給休暇中であったとしても,ケアマネージャーとして必要な書類につき未処理のものの作成等を行う必要があったといえ,実際,被告P1が各利用者の利用票等必要な書類を作成していたことからすれば,被告P1が有給休暇中に本件利用者情報にアクセスしたことや有給休暇中に出社していた事実をもって,本件利用者情報を不正に取得したと 被告P1が各利用者の利用票等必要な書類を作成していたことからすれば,被告P1が有給休暇中に本件利用者情報にアクセスしたことや有給休暇中に出社していた事実をもって,本件利用者情報を不正に取得したと推認することはできない(なお,原告は,被告P1が引継ぎをしていない旨主張するが,被告P1が退職した後のケアマネージャーの業務は問題なく継続されていたことからすれば(原告代表者・尋問調書21頁),必要な書類の作成はされていたものと認められる。)。 また,本件における一切の証拠によっても,他に被告3名において本件利用者情報を不正にコピーするなどして持ち出した事実を認めることはできない。なお,原告は,人証調べ後の平成28年9月14日付けで,「楽にネット」にアクセスしてデータをダウンロードした事実の有無と日時等についての調査嘱託を申し立てたが,原告には,同年4月11日の第5回弁論準備手続期日及び同年5月20日の第6回弁論準備手続期日の2期日にわたって,営業秘密の使用を裏付ける事実の主張立証について特に検討の機会が与えられており,原告は,その機会に上記の調査嘱託の申立てをせず,人証調べの申出をした上で人証調べが実施されたのであるから,原告の上記の調査嘱託の申立ては,重過失により時機に後れたものといわざるを得ず,また,訴訟の完結を遅延させることも明らかであるから,当裁判所は,民事訴訟法157条1項に基づきこれを却下したものである。 ウまた,原告においては,前記認定のとおり,被告P1の退職に当たり,居宅介護支援事業を行わずとも訪問介護事業の継続は可能であると考え,居宅介護支援事業において,地域包括支援センターから委託を受けた利用者についてはケアプランを地域包括支援センターへ返還し,他の利用者についても他の事業所への変更を打診するなどしており,そのために ,居宅介護支援事業において,地域包括支援センターから委託を受けた利用者についてはケアプランを地域包括支援センターへ返還し,他の利用者についても他の事業所への変更を打診するなどしており,そのために地域包括支援センターから被告会社にケア プランの引取りを求めた利用者が存する。また,同センターが被告会社に引取りを求めたものでない利用者であっても,上記のような理由等で居宅介護支援事業を変更することとなった場合には,被告P1又は被告P2が,従前,原告事業所のケアマネージャーとしてケアプランを作成し,利用者宅を定期的に訪問するなどして密接に関わっていたことから,これまでどおり被告P1や被告P2に居宅介護支援を担当してもらうことを希望することは十分に考えられる。 そして,ケアプランを行う訪問介護事業者が居宅介護支援事業者と同じである必要はないが,実際は,居宅サービスについての利用者の要望等をケアプランに反映させるため,訪問介護事業と居宅介護支援事業が同じ事業所の方がより連携が上手くいく場合が多いとして,同じ事業所の居宅サービスを希望する利用者は多く,原告事業所においても,訪問介護事業の利用者のうち,ほとんどが原告事業所の居宅介護支援事業のケアマネージャーを利用していたことからすれば,被告事業所において居宅介護支援を利用するようになった者が,居宅サービスを扱う訪問介護事業も同じ被告事業所に依頼することは,特に不自然なことではなかったといえる。そして,このことは,被告P1も,原告において,利用者に居宅介護支援を他の事業所等で行う旨の打診をしたことに,利用者が不信や不安を感じて原告との居宅介護支援の継続を止め,これまで担当であった被告P1や被告P2に依頼し,その際,訪問介護事業についても被告事業所に移った事例もある旨述べているところである( ,利用者が不信や不安を感じて原告との居宅介護支援の継続を止め,これまで担当であった被告P1や被告P2に依頼し,その際,訪問介護事業についても被告事業所に移った事例もある旨述べているところである(乙4)。 また,原告から被告会社に移った利用者の中には,原告において訪問介護事業のみを利用していた者もいるが,その数はわずかに3人であるから,これをもって,被告らによる本件利用者情報の開示・使用を推認することはできない。 なお,原告は,原告から被告会社に移った利用者は利用額の多い者に絞られていると主張し,甲27を指摘するが,利用額の多い利用者は,基本的に重度の要介護者であり(原告代表者・尋問調書28頁),ケアマネージャーとの繋がりが深いと考えられるから,そのような利用者が被告会社に移ることを希望したとしても不合理 ではなく,上記の点から被告らによる本件利用者情報の開示・使用を推認することはできない。 エさらに,利用者からの聞き取り(甲22ないし甲24の各2)によれば,被告P1が原告事業所を退職する旨を2人の利用者に伝えた事実が認められるが,それ以上に,原告が主張するような,被告3名が,原告の利用者に対して,電話をする,あるいは面会をするなどして被告3名の退職後,原告事業所のサービスが低下するなどと述べるなどした事実は,全証拠及び弁論の全趣旨をもってしてもこれを認めることはできない。 オ以上から,原告の指摘する各事実等を総合したとしても,被告3名が不正の利益を得る目的,あるいは原告に損害を加える目的で,本件利用者情報を開示使用する不正競争(不正競争防止法2条1項7号)を行ったと認めることはできず,そうすると,被告3名の同号の不正競争行為を前提とする,同項8号の不正競争も認められない。 3 争点(3)(被告3名の行為が る不正競争(不正競争防止法2条1項7号)を行ったと認めることはできず,そうすると,被告3名の同号の不正競争行為を前提とする,同項8号の不正競争も認められない。 3 争点(3)(被告3名の行為が一般不法行為に当たるか)について原告は,被告3名が,本件利用者情報を漏えいしない義務を負いながら,これを不正に利用して,被告3名が在職中である平成27年2月から3月頃に利用者に対し,同年4月から被告会社に移籍するため,原告事業所のサービスが低下するなどとして,不安感をあおり動揺させ,被告会社との介護サービス契約を締結させた行為が不法行為に該当する旨主張するが,前記2のとおり,被告P1が原告事業所において自身が担当していた2人の利用者に対し,原告事業所を辞めて被告事業所を始める旨の挨拶を行っていたことが認められるものの(甲22及び甲24の各2),それ以上に不安感をあおり動揺させるようなことを述べたといった事実を認めるに足る証拠はない。 したがって,被告3名につき一般不法行為に該当する行為があったとはいえない。 4 結論よって,原告の請求は,その余の点を判断するまでもなく,理由がないからこれ をいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 髙松宏之 裁判官 髙松宏之 裁判官 田原美奈子 裁判官 林啓治郎 別紙利用者目録 (省略) 別紙被害一覧表 (省略)
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