【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄し、本件を福岡高等裁判所に差し戻す。 理 由 上告代理人宮崎保興、同鎌田哲成の上告理由第一について 一 原審は、上告人が昭和四五年二月一
主 文 原判決を破棄し、本件を福岡高等裁判所に差し戻す。 理 由 上告代理人宮崎保興、同鎌田哲成の上告理由第一について 一 原審は、上告人が昭和四五年二月一八日頃被上告人に到達の書面をもつて被 上告人に対してした原判示の本件土地についての売買予約完結権の行使の効力を判 断するにあたり、昭和三八年一一月一一日に上告人と被上告人との間で本件土地に つき賃貸借契約のほかに売買予約(以下「本件売買予約」という。)が締結される に至つた事情、その後における上告人の本件土地使用の状況、昭和四四年一二月四 日に本件土地が国鉄山陽新幹線の用地となることに決定した前後の事情等を確定し たうえ、(1) 本件売買予約は、本件土地に隣接する原判示の代替地上に上告人が ほぼ二年内にaビル(以下「aビル」という。)を建築し、本件土地をaビルと一 体のものとして利用することが前提となつていた(原審は、このことをaビルの建 築完成及び右ビル経営上必要な駐車場等用地とすることが本件土地買受けの一種の 条件となつていた、とも判示している。)が、上告人は、aビルの建築についてB 市建築主事の建築確認を受け昭和三九年七月二〇日には業者との間で工事請負契約 を締結したにもかかわらず、代替地の売買契約と本件土地の賃貸借契約とが成立し たのちも数年間右建築に着工しないままで推移したこと、(2) その間、本件土地 が新幹線の用地として国鉄に買収されるという、当事者双方の全く予想せず、しか も、いずれの責にも帰することのできない事情が生じ、そのために本件土地をaビ ルの裏地として一体的に利用するという目的が実現不能となつたこと、(3) 本件 土地の取引価額は、本件売買予約が成立した当時からみると大幅に高騰しており、 昭和四八年九月二二日に福岡県収用委員会によつてされた本件土地の土 的に利用するという目的が実現不能となつたこと、(3) 本件 土地の取引価額は、本件売買予約が成立した当時からみると大幅に高騰しており、 昭和四八年九月二二日に福岡県収用委員会によつてされた本件土地の土地収用法に よる収用裁決における損失補償額の単価は一平方メートルあたり約一三万九三五七 - 1 - 円であつて、売買予約における約定代金額(坪当り八万円)と比較すると六倍弱に なるため、上告人による予約完結権の行使の効果を是認するときは、上告人は、当 初の目的のとおりに本件土地を現実に利用することもないまま一億二二四六万三二 〇〇円の損失補償金を取得することとなり、地方公共団体である被上告人の所有す る土地によつて前記約定代金額との差額である約一億〇一〇〇万円を利得する結果 となるのであるが、このような事態と本件売買予約が締結された原判示の覚書作成 当時にその基礎として認識された事情との間には大きなへだたりがあること、の諸 点を挙げて、本件売買の完結時点においてなお当初の合意の効力を認め、ひいて予 約の完結により成立する売買契約の拘束力を認めることは信義衡平の原則に照らし て相当でなく、予約完結権を行使することは許されない、との判断を示し、右予約 完結権の行使が有効であることを前提とする上告人の各請求を排斥した。 二 しかしながら、原審の右判断は民法一条二項の解釈、適用を誤るものであつ て、たやすくこれを是認することができない。その理由は次のとおりである。 1 原審は、(1) 上告人が代替地上に建築するaビルの完成後、本件土地はそ の裏地としてこれと一体的に利用され、ビルの経営に必要な駐車場等の用地として 使用することが本件土地買受けの一種の条件となつていたとして、そのような目的 に供することが不可能になつたことを重視するのであるが、本件土地を将来右のよ うな目的に用いるこ に必要な駐車場等の用地として 使用することが本件土地買受けの一種の条件となつていたとして、そのような目的 に供することが不可能になつたことを重視するのであるが、本件土地を将来右のよ うな目的に用いることが上告人と被上告人の双方に了解されていたからといつて、 そのことから直ちに、右利用目的をもつて本件売買予約が本件土地を右の用途に供 することが不可能になることを解除条件とする意味における条件としたものと解す ることはできず(原審もまた、右のような趣旨において条件の語を用いたものでは ないと解される。)、のちに判示するように、被上告人が本件土地につき上告人と の間で売買予約を締結するに至つた動機が、本件土地の所在位置からして本件土地 を被上告人において所有した場合の利用価値が将来低下することが予想されたため、 - 2 - これを回避するにあり、むしろ被上告人からの要望により上告人が買受けることを 承諾したものであるとの事情を考慮するならば、aビルのための用地として利用す ることができなくなつた点を過大視するのは相当でない、というべきである。(2) また、原審は、上告人が本件土地につき賃貸借契約と売買予約とを締結してのち も数年間aビルの建築に着手しなかつたことを予約完結権の行使が信義則違背とな るべき事情の一つに挙げている。しかしながら、原審の確定したところによれば、 上告人と被上告人とは、昭和四〇年一一月に、従来、覚書の形式にとどめていた本 件土地の賃貸借を正規の契約書に書き改めることとして、本件土地につき期間を昭 和四二年一二月三一日までとする賃貸借契約を締結したのち、本件土地が新幹線の 用地となることが公表される直前の同四四年一一月一日には期間を同四六年三月三 一日までとする賃貸借契約を重ねて締結したのであるが、その際、本件売買予約に ついて予約完結権の行使の期間に制限 地が新幹線の 用地となることが公表される直前の同四四年一一月一日には期間を同四六年三月三 一日までとする賃貸借契約を重ねて締結したのであるが、その際、本件売買予約に ついて予約完結権の行使の期間に制限を加えるなど予約の内容に変更を加え、又は 予約を失効させるなどの措置が講じられたことは、原審の認定しないところである。 したがつて、被上告人は、本件土地につき右の賃貸借契約を締結した昭和四四年一 一月ころも、特段の事情のない限り、上告人のaビルの建築着手の遅延を承認して おり、また、本件売買予約の効力を制限する意図はなかつたものといわざるをえな い。(3) 次に、原審は、本件土地の価額が売買予約の成立の時点と比較して高騰 したことを予約完結権の行使が信義則違背となるべき事情の一つに挙げている。し かしながら、本件売買予約の完結時における時価(もつとも、原審が比較の対象と して取り上げた本件土地の価額は前記のように土地収用法に基づく収用裁決に定め られた損失補償の額であるが、その価額は、上告人が予約完結権を行使した後三年 を経た昭和四八年二月九日の時点のものである。)が右予約締結時に定められた代 金額の六倍弱の程度になり、それが当事者双方の責に帰することができず、しかも その予想を超えた事情に起因するものであつたとしても、原審の確定した事実関係 - 3 - のもとにおいては、右の程度の金額の差異をもつてしてはいまだ予約自体の効力に 影響を及ぼすものと解することはできず、このことは、予約の目的である本件土地 が地方公共団体である被上告人の所有する土地であるか否かにかかわらない。(4) しかるところ、原審の確定するところによれば、被上告人は、本件土地の位置が 被上告人から上告人に売り渡された代替地と国鉄鹿児島本線の鉄道線路用地との間 にはさまれた場所にあり、代替地に上告人によつてa しかるところ、原審の確定するところによれば、被上告人は、本件土地の位置が 被上告人から上告人に売り渡された代替地と国鉄鹿児島本線の鉄道線路用地との間 にはさまれた場所にあり、代替地に上告人によつてaビルが建築されると、本件土 地はビルの裏地になつてしまい、その利用価値が低下するところから、本件土地が 効果的に利用されるためには上告人にこれを買取つてもらうのが最良の策であると 考え、上告人に買取り方を要望したところ、上告人においてこれを承諾し、本件売 買予約が締結されたという事情がある、というのである。 2 以上のような諸事情を彼此考較するときは、上告人が思わざる利益を得るこ とになるとしても、他に特段の事情のない限り、上告人のした本件売買予約の完結 権の行使が信義則に反して許されないと解することはできない、というべきであり、 これと反対の見解に出て、上告人の予約完結権行使の効力を認めなかつた原判決に は民法一条二項の解釈、適用を誤つた違法があるものといわざるをえない。 三 そして、右違法は上告人の主位的請求及び予備的請求を棄却すべきものとし た原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決は、その余の論旨 につき判断を加えるまでもなく、破棄を免れないところ、本訴請求の当否について はなお審理を尽くす必要があるので、本件を原審に差し戻すのが相当である。 よつて、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決す る。 最高裁判所第三小法廷 裁判長裁判官 寺 田 治 郎 裁判官 環 昌 一 - 4 - 裁判官 横 井 大 三 裁判官 伊 藤 正 己 - 5 - 環 昌 一 - 4 - 裁判官 横 井 大 三 裁判官 伊 藤 正 己 - 5 -
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