昭和46(行ウ)100 訴訟資料携行不許可処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和50年11月4日 東京地方裁判所 公物・公企業など
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【DRY-RUN】○ 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実 第一 当事者の求めた裁判 一 原告 1 被告は原告に対し金一〇万円及びこれに対する昭和四六年三月六日から支払ず みまで年五分の

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判決文本文6,627 文字)

○ 主文原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一原告 1 被告は原告に対し金一〇万円及びこれに対する昭和四六年三月六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 との判決及び第一項につき仮執行の宣言二被告主文と同旨の判決(仮執行の宣言が付される場合に担保を条件とする仮執行免脱の宣言)第二原告の請求の原因一原告の地位原告は、昭和四五年六月のいわゆる反安保闘争に参加し、兇器準備集合罪等の容疑で逮捕、勾留され、同年七月兇器準備集合、公務執行妨害、傷害の罪名で東京地方裁判所に身柄勾留のまま起訴され、いわゆる第七グループとして刑事第九部に事件係属した刑事被告人である。 原告は、後記本件処分当時、東京拘置所に拘置されていたが、昭和四六年五月一四日保釈により同所を出所した。 二本件処分原告は公判準備資料No.1ないしNo.11(以下「本件文書」という。)の差入れを受けていたのであるが、昭和四六年三月四日、東京拘置所長に対し、翌五日の第三回公判への出廷に際し本件文書を携行したい旨の願い出をしたところ、同所長は同月四日これを不許可とし原告にその旨告知した(以下、同所長の本件文書の携行を不許可とした処分を「本件処分」という。)。 三本件処分の違法性 1 憲法及び刑事訴訟法は、被告人が刑事裁判においてその防禦権を十分に行使できるよう保障しているのであるから、たとえ被告人が勾留されていても、保釈中のあるいは在宅起訴された被告人と全く同様に公判廷においてその防禦権が行使できなければならない。 したがつて、拘置所長は、罪証隠滅、逃亡の虞及び公判廷における治安維持についての支障のない限り、公判に必要な文書の携行を許すべきは当然である。もし、これを不当に制限す が行使できなければならない。 したがつて、拘置所長は、罪証隠滅、逃亡の虞及び公判廷における治安維持についての支障のない限り、公判に必要な文書の携行を許すべきは当然である。もし、これを不当に制限するならば、防禦権の行使は困難となり被告人の基本的人権が侵害されることは明らかである。このことは弁護人が選任されていても同様である。 2 反安保闘争において起訴された一〇〇余名は、七のグループに分けられて、審理が進められていたが、原告ら被告人は強く統一公判を要求しており、本件文書は、審理の併合、起訴状の釈明要求等公判廷における訴訟活動に不可欠の文書である。しかも、本件文書は東京拘置所長の許可を得て差入れられたものであるから、これを公判廷に携行しても罪証隠滅、逃亡の虞のないことは明らかである。昭和四六年四月二一日東京拘置所長が本件文書のうちNo.11(甲第一一号証)の携行を許可したことは右文書の携行の必要性を認めたものというべきである。 したがつて、本件処分は憲法で保障された被告人の防禦権を侵害する違法な処分である。 四損害原告は、本件処分により起訴状の釈明要求等積極的な訴訟活動を行うことができず、統一公判も実現せず、刑事裁判における防禦権の行使上重大な不利益を受け、これによつて甚大な精神的苦痛を受けた。その慰謝料としては一〇万円が相当である。 右一〇万円に、被告の機関である東京拘置所長の違法な公権力の行使たる本件処分に起因して東告か被つた損害であるから、被告は、国家賠償法第一条の規定により右損害を原告に賠償すベき義務がある。 五よつて、原告は、被告に対し、一〇万円及びこれに対する前記違法行為の後である昭和四六年三月六日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。 第三被告の答弁及び主張一請求の原因一及び二は認める。同三のう し、一〇万円及びこれに対する前記違法行為の後である昭和四六年三月六日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。 第三被告の答弁及び主張一請求の原因一及び二は認める。同三のうち東京拘置所長が昭和四六年四月二一日本件文書のうちNo.11の携行を許可したことは認めるが、その余は争う。同四は争う。 二本件処分の適法性 1 在監者は、監獄拘禁によつて一応全面的に外部との交通を禁止され、ただ監獄法(以下「法」という。)の認める接見(法四五条)、信書の発受(法四六条)、差入れ(法五三条)等の方法によつてのみ、それが許されている。在監者の臨時外出、外部通勤、休暇等による外部との交通は、法上認められていない。そのため、法は、在監者が監獄外に一時出ている場合の所持品の取扱いについて別段の規定を持たない。刑事被告人が裁判所の公判期日に出廷する場合も、在監者であることに変わりはないから、その場合の所持品の取扱いについても、基本的には法(四九条、五一条、五三条、五四条)及び監獄法施行規則(以下「規則」という。一三五条、一四八条、一四九条)による所持品の取扱いに関する規定によつて律せられることになる。すなわち、文書は、所長が必要と認めた場合に限り、携行することができる。 右の文書の携行の制限が刑事被告人としての防禦権を不当に防げることのないよう配慮しなければならないが、反面公判出廷は、刑事被告人を監獄内にいるときに比べて、文書を利用しての不正行為が行われやすい状況に置いていることをも看過すべきでない。所長は、実質的に相反する右の二つの要請の均衡を考えて、刑事被告人が公判期日に出廷する際に文書の携行を認めるべきか否かを決める必要があり、この判断は、諸般の事情を勘案したうえでの所長の裁量によつてなされ得るものである。 2 昭和四五・四六年当 考えて、刑事被告人が公判期日に出廷する際に文書の携行を認めるべきか否かを決める必要があり、この判断は、諸般の事情を勘案したうえでの所長の裁量によつてなされ得るものである。 2 昭和四五・四六年当時東京拘置所には、常時一〇〇〇名を越える刑事被告人が在監していたが、このなかに多数のいわゆる公安関係被告人がいたため、在監者に差入れられた文書数はおびただしい数にのぼつた。そしてこれらの被告人のほとんど全員が公判期日の度毎に、収監以来何回にもわたつて差入れられた全ての文書について携行を申出たため、限られた数の担当者で、限られた時間内にこれらの文書の全てを検査することは不可能な状態であつた。そこで、東京拘置所長は、携行の許可、不許可の判断を迅速かつ合理的に行うため、文書の表題、様式等から明らかに当該刑事事件の公判に必要不可欠であると認められる文書については事前に検査のうえ携行を許可するが、他の文書については携行を許可しないという一応の基準を定め、これに従つて、右の問題を処理した。 本件文書は、右の基準に従つて明らかに当該刑事事件の公判に必要不可欠であるとは認められなかつたため携行を許可されなかつたものである。 3 ところで、本件文書は、その内容からして原告の刑事事件について防禦権行使に必要不可欠であるとは客観的に認められないばかりでなく、当時原告は、本件文書を監房内で閲読することを許可されており、しかも、右文書を要約したメモの公判廷への携行が事前に検査を受けた上で許可される建前となつていることは原告もこれを知悉しており、昭和四六年二月三日から同年三月五日までの間、同年二月一二日から翌一三日まで保護房に収容された期間を除いては、房内筆記が許可されていたから、本件文書の内容又は要旨をメモして公判廷に携行することができないわけではなかつた。のみならず、 での間、同年二月一二日から翌一三日まで保護房に収容された期間を除いては、房内筆記が許可されていたから、本件文書の内容又は要旨をメモして公判廷に携行することができないわけではなかつた。のみならず、原告は、弁護人の訴訟活動を通じて防禦権の行使を補う権利と機会を有していたのであるから、防禦権の行使が害される虞はなく、本件処分に違法はない。 三慰謝料請求権について原告は本件文書の携行を許されなかつたことによつて防禦権の行使に実質的に支障を来たさなかつたのであるから、仮に、本件処分が違法であり、原告が本件処分により主観的な不快感、不便感を味わつたとしても、それは社会生活上金銭で慰謝されるに値いしない、単なる感情的不利益にすぎないから、原告に慰謝料請求権を認めることはできない。 第四被告の主張に対する原告の答弁被告の主張のうち、原告が昭和四六年二月一二日から翌一三日まで保護房に収容されたこと、同年二月三日から同年三月五日までの間右保護房に収容された期間を除いては房内筆記ができないわけではなかつたことは認めるが、その余は争う。 第五証拠関係(省略)○ 理由一請求の原因一及び二の事実は当事者間に争いがない。 二そこで、本件処分が原告主張のように違法であるか否かについて判断する。 在監者が公判期日に出廷する場合の所持品の取扱いについて、法及び規則は特段の規定を有しないが、その場合においても在監者であることに変わりはなく、在監者は拘置所長が処遇上その他必要と認めた期間に限り文書の所持が許される(規則一三五条)にすぎないのであるから、拘置所長の許可なくして文書を携行することができないことは当然である。もとより、文書の携行の許否の判断に際しては、被告人の防禦権の行使を実質的に妨げることのないよう配慮すべきであるが、被告人が携行を求める文書について て文書を携行することができないことは当然である。もとより、文書の携行の許否の判断に際しては、被告人の防禦権の行使を実質的に妨げることのないよう配慮すべきであるが、被告人が携行を求める文書については、それがたとえ差入れの際に検査されているにせよ、公判出廷の際文書を利用し罪証隠滅等不正行為をすることのないよう再び厳重に検査をする必要があり、かつ、携行する文書の量が多くなれば、出廷、退廷の際の被告人の戒護に支障が生ずる虞もあるから、右許否の判断についても、文書の検査及びその携行に要する職員の数及び物的設備からの制約を受けることは否定しえないというべきである。したがつて、携行を求める文書が膨大である場合等特段の事由がある場合にまで、罪証隠滅等の虞のない限り、被告人が公判期日に必要であると主張する全ての文書の携行を認めなければならないものと解すべきではなく、拘置所長は、諸般の事情を勘案し、被告人の防禦権の行使が実質的に妨げられない限り、携行する文書を一定の範囲に制限することも許されると解すべきである。 これを本件についてみると、成立に争いのない乙第三号証の二、三、証人aの証言により真正に成立したと認められる乙第三号証の一、証人bの証言により真正に成立したと認められる乙第六号証から第八号証まで、第九号証の一から三までに証人a、同bの各証言、原告本人尋問の結果(一部)を合わせると、次の事実を認めることができる。 東京拘置所においては、昭和四五年四月から翌四六年三月にかけて常時一〇〇〇人以上の被告人が在監していたが、公安事件の続発により、公安事件の被告人の収容が増加し、公判準備資料と題する文書その他パンフレツト等印刷物の差入れが月平均六〇〇〇点以上あつたこと、これらの文書の閲読期間は一〇日間であつたが、大むね更新されており、被告人が出廷する際にはこれ が増加し、公判準備資料と題する文書その他パンフレツト等印刷物の差入れが月平均六〇〇〇点以上あつたこと、これらの文書の閲読期間は一〇日間であつたが、大むね更新されており、被告人が出廷する際にはこれらの文書の多くについて携行の許可が求められていたこと、文書の携行許可が願い出られると舎房担当職員、係長、区長の順で検査が行われるのであるが、昭和四五年末から同四六年にかけて公安事件の被告人の出廷が増加したため検査のための負担が増大するとともに、出廷係職員の不足を来たし、非番者から応援を求める有様であつたこと、携行許可があれば、法廷への往復に際しては、これを職員が携行するのであるが、このように携行許可を求める文書の増大に伴い、出廷時及び退廷後に遂一これを検査することは負担に耐えられなくなり、かつ、職員が膨大な文書を携行することは被告人の戒護に支障が生ずる虞があることから、東京拘置所長は、昭和四六年一月から被告人に対し、当該被告人の事件に直接関係がある文書で、裁判所、検察庁から被告人に送達され、又は弁護人から被告人に宛てられたことが一見して明らかなものについてのみ携行を認め、その他の文書については原則として携行を認めないが、その内容をメモにするならば分量が圧縮され、検査及び携行も円滑に行われ得るため、代替措置として被告人自身がメモした文書の携行を認めることとし、そのころこれを在監者に告知したこと、原告も右の取扱いを十分に知悉していたこと、本件文書は右の基準に該当しないとして携行が許されなかつたこと、原告については昭和四五年八月六日以降房内筆記が認められていたこと、昭和四六年二月三日から同年三月五日までの公判期日までの間同年二月一二日から翌一三日まで保護房に収容された期間を除き、原告は房内筆記ができないわけではなかつたこと(この点は、当事者間に争 いたこと、昭和四六年二月三日から同年三月五日までの公判期日までの間同年二月一二日から翌一三日まで保護房に収容された期間を除き、原告は房内筆記ができないわけではなかつたこと(この点は、当事者間に争いがない。)以上の事実が認められる。証人cの証言及び原告本人尋問の結果中右認定に反する部分は採用し難く、成立に争いのない甲第一三号証も前認定の事実と矛盾するものではなく、他に右認定を左右するに足る証拠はない。 そして、原本の存在及び成立について争いのない甲第三号証、証人dの証言及び原告本人尋問の結果により原本の存在及び成立の真正が認められる甲第二号証、第五号証から第一一号証まで、官署作成部分については原本の存在及び成立について争いがなく、証人dの証言及び原告本人尋問の結果によりその余の部分の原本の存在及び成立の真正が認められる甲第一号証及び第四号証によれば、本件文書は、いずれも東京拘置所長の定めた右の基準に合致しないことが認められる。昭和四六年四月二一日東京拘置所長が本件文書のうちNo.11(甲第一一号証)の携行を許可したこと(この点については、当事者間に争いがない。)も右の認定を覆すに足るものではない。 右認定の事実によれば、東京拘置所における限られた職員では、公安事件被告人の出廷の増加及び携行許可を求める文書の増大に対処することが困難となつたため、やむを得ず臨時の措置として携行を許可する文書を制限したものであつて、携行の認められない文書についてはその内容をメモした文書の携行が認められていたのであるから、これを合わせ活用するならば、被告人の防禦権の行使が実質的に妨げられる虞はないものといわなければならない。 しかして、前認定の事実に原告本人尋問の結果を合わせると、原告は、昭和四六年三月五日の公判期日までに本件文書を十分に閲読し、かつ、携行が必 使が実質的に妨げられる虞はないものといわなければならない。 しかして、前認定の事実に原告本人尋問の結果を合わせると、原告は、昭和四六年三月五日の公判期日までに本件文書を十分に閲読し、かつ、携行が必要な文書(前掲甲第一号証から第一一号証までによれば、本件文書の全てを携行しなければ原告の防禦権の行使を全うすることができないものとはとうてい認められない。右認定に反する証人d、同c及び原告本人尋問の結果は採用しない。)については、その内容をメモする時間的余裕があつたにもかかわらず、あえてこれを行おうとしなかつたことがうかがわれる。 してみれば、本件処分に違法の点はないといわなければならない。 三よつて、その余の点について判断するまでもなく、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。 (裁判官三好達時岡泰山崎敏充)

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