平成20(ワ)33536 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成24年2月7日 東京地方裁判所
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判決文本文137,681 文字)

- 1 - 平成24年2月7日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成20年(ワ)第33536号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成23年9月1日判決当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主文 1 被告らは,別紙物件目録記載の医療器具を製造し,譲渡し,輸出し,又は譲渡の申出をしてはならない。 2 被告らは,原告に対し,連帯して1億1668万7911円及びうち1億0994万9362円に対する平成22年9月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,これを10分し,その3を被告らの連帯負担とし,その余を原告の負担とする。 5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。 6 原告のために,この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求 1 主文第1項と同旨 2 被告らは,原告に対し,連帯して8億1708万円及びこれに対する平成20年11月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 - 2 - 第2 事案の概要本件は,医療器具であるカニューレ挿入装置等の安全装置に関する発明につき,特許権を有し,あるいは存続期間の満了した特許権につき,これに基づく権利を譲り受けた原告が,被告らの製造,販売等していた製品が上記各特許権を侵害するとして,被告らに対し,特許法100条1項に基づき,上記製品の製造,譲渡等の差止めを求めるとともに,民法719条1項,特許法102条3項に基づき,実施料相当額の損害賠償を求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当 ともに,民法719条1項,特許法102条3項に基づき,実施料相当額の損害賠償を求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者ア原告は,アメリカ合衆国カリフォルニア州の法律に基づいて設立された法人である(弁論の全趣旨)。 イ被告メディキット株式会社は,医療機器及び医薬品の国内及び海外への販売等を業とする株式会社である(弁論の全趣旨)。 ウ被告東郷メディキット株式会社は,医療機器の製造,輸出入及び販売等を業とする株式会社である(弁論の全趣旨)。 (2) 本件両特許権ア本件特許権1(ア) 原告は,平成20年8月30日,Aから,同年4月28日に存続期間の満了により消滅した別紙特許権目録記載1(1)の特許権(以下「本件特許権1」という。また,本件特許権1の発明に係る特許を「本件特許1」といい,本件特許1に係る明細書(別紙特許公報(特許番号第2- 3 - 647132号)参照)を「本件明細書1」という。)に基づく権利のすべてを譲り受けた(譲渡日,譲渡人,消滅日につき甲1,3)。 (イ) 被告らは,平成21年1月21日,本件特許1の請求項1につき,特許無効審判請求(無効2009-800013号)をしたところ,同年10月21日,上記請求は成り立たない旨の審決がされ,同年11月2日,その謄本の送達があったため,同月26日,上記審決の取消しを求める訴え(知的財産高等裁判所平成21年(行ケ)第10381号)を提起した(甲22,45,乙8)。これに対し,Aは,平成22年2月22日,本件特許1の請求項1につき,別紙特許権目録記載1(2)のとおり,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審判請求(訂正2010-390017号)をし ,乙8)。これに対し,Aは,平成22年2月22日,本件特許1の請求項1につき,別紙特許権目録記載1(2)のとおり,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審判請求(訂正2010-390017号)をしたところ,同年6月1日,請求を認める旨の審決がされ,確定した(以下,訂正審決確定後の請求項1の発明を「本件訂正発明1」という。甲29,30,45)イ本件特許権2(ア) 原告は,別紙特許権目録記載2の特許権(以下「本件特許権2」といい,その特許請求の範囲請求項1等の発明を「本件発明2-1」等といい,本件訂正発明1と併せて「本件各発明」という。また,本件発明2に係る特許を「本件特許2」といい,本件特許2に係る明細書(別紙特許公報(特許番号第2588375号)参照)を「本件明細書2」という。)を有する。 (イ) 被告らは,平成21年9月3日,本件特許2の請求項7・8につき,特許無効審判請求(無効2009-800190号)をした(乙15)。 - 4 - これに対し,原告は,平成21年12月24日,前記審判事件において,本件特許2の請求項8につき,別紙特許権目録記載2(5)イのとおり,特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)をした(以下,本件訂正請求後の請求項8の発明を「本件訂正発明2-8」という。甲26)。 (3) 構成要件の分説ア本件訂正発明1を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれ「構成要件1-A」等という。)。 1-A 近い端及び遠い端を有する中空のハンドルと,1-B 該ハンドル内に配置されたニードルハブと,1-C 鋭い自由端と,前記ニードルハブに連結された固着端とを有し, 」等という。)。 1-A 近い端及び遠い端を有する中空のハンドルと,1-B 該ハンドル内に配置されたニードルハブと,1-C 鋭い自由端と,前記ニードルハブに連結された固着端とを有し,カニューレを患者の定位置に案内し運ぶためのニードルと,1-D 前記ニードルハブを前記中空なハンドルの近い端に向かって付勢する付勢手段と,1-E 前記ニードルハブから独立して移動可能であり,前記ニードルハブを前記付勢手段の力に抗して一時的に前記中空のハンドルの遠い端に隣接して保持するラッチであって,前記ニードルの長さよりも短い振幅で手動により駆動され,前記ニードルの移動距離よりも短い距離のみ移動するラッチと,1-F から成ることを特徴とする,カニューレ挿入のための安全装置。 イ本件発明2-1を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれ「構成要件2-1-A」等という。)。 - 5 - 2-1-A カニューレの如き医療器具を患者の体内へ挿入し且つその後患者の体内にあった該装置の部分に人が接触しないように保護するための安全装置において,2-1-B 患者を穿刺し,前記医療器具を患者の体内の適所へ案内して搬送する中空針であって,少なくとも1つの鋭利な端部を有する軸を具備する中空針と,2-1-C 人の指が届かないように,少なくとも前記針の鋭利な端部を包囲するようになされた中空のハンドルと,2-1-D 前記鋭利な端部を前記ハンドルから突出させた状態で前記軸を前記ハンドルに固定する固定手段と,2-1-E 前記固定手段を解除し,前記針の鋭利な端部を人の指が届かないように前記ハンドルの中へ実質的に永続的に後退させる解除/後退手段であって,前記針の軸よりも実質的に短い距離だけ簡単且つ単一の動作によ E 前記固定手段を解除し,前記針の鋭利な端部を人の指が届かないように前記ハンドルの中へ実質的に永続的に後退させる解除/後退手段であって,前記針の軸よりも実質的に短い距離だけ簡単且つ単一の動作によって手操作で作動可能な解除/後退手段と,2-1-F 前記後退のエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段と2-1-G を備えることを特徴とする安全装置。 ウ本件発明2-3を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれ「構成要件2-3-A」等という。)。 2-3-A 請求項1の安全装置において,前記エネルギ吸収手段が,2-3-B 前記針と前記ハンドルの内部孔とのうちの一方に固定され- 6 - た表面と,2-3-C 前記針と前記内部孔とのうちの他方に担持されて前記表面に圧接し,前記後退の間に摩擦を生ずる要素と2-3-D を備えることを特徴とする安全装置。 エ本件発明2-5を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれ「構成要件2-5-A」等という。)。 2-5-A 請求項1の安全装置において,2-5-B 前記中空のハンドルは,前記針がそれに向かって後退する端部構造を有し,2-5-C 前記エネルギ吸収手段は,前記針と前記端部構造とうちの一方に固定されて前記端部構造に対する前記針の衝撃の一部を吸収する押し潰し可能な要素を有する2-5-D ことを特徴とする安全装置。 オ本件発明2-7を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれ「構成要件2-7-A」等という。)。 2-7-A 請求項1の安全装置において,2-7-B 前記中空針の中からの血液を収容する共に,前記後退によって生ずる力に抗 構成要件をそれぞれ「構成要件2-7-A」等という。)。 2-7-A 請求項1の安全装置において,2-7-B 前記中空針の中からの血液を収容する共に,前記後退によって生ずる力に抗して,前記針が後退する間に及び該後退の後に,前記血液を確実に保持するための収容/保持手段とを更に備える2-7-C ことを特徴とする安全装置。 カ本件発明2-8を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分- 7 - 説した構成要件をそれぞれ「構成要件2-8-A」等という。)。 2-8-A 請求項1の安全装置において,2-8-B 前記収容/保持手段が,前記後退によって生ずる力から前記室の内部を隔離するための隔離手段を更に備える2-8-C ことを特徴とする安全装置。 (4) 被告らによる医療器具の製造・販売被告らは,平成19年5月1日から平成22年9月23日までの間,共同して別紙物件目録記載の医療器具(以下「被告製品」という。)を製造し,販売し,輸出していた(鑑定の結果)。 (5) 被告製品の外観及び構成ア被告製品は,別紙物件説明書記載の外観及び構成を有する。 イ被告製品の構成を本件訂正発明1の構成要件に対比して分説すると,次の点は当事者間に争いがない。 1-a 手元に近い後端と手元から遠い先端を有する中空の外管及び内管と,1-b 内管内に配置された針基と,1-c 鋭利な端部と,針基に連結された固着端を有し,カニューレを患者の定位置に案内し運ぶための中空針と,1-d 針基を内管の後端に向かって付勢するばねと,1-f から成る,カニューレ挿入のための安全装置。 ウ被告製品の構成を本件発明2-1の構成要件に対比して の中空針と,1-d 針基を内管の後端に向かって付勢するばねと,1-f から成る,カニューレ挿入のための安全装置。 ウ被告製品の構成を本件発明2-1の構成要件に対比して分説すると,次の点は当事者間に争いがない。 - 8 - 2-1-a カテーテルを患者の体内へ挿入し,かつその後患者の体内にあった内針の部分に人が接触しないように内針が収納される安全装置において,2-1-b 患者を穿刺し,カテーテルを患者の体内の適所へ案内して搬送する中空針であって,鋭利な端部を有する軸を具備する中空針と,2-1-c 人の指が届かないように,中空針を包囲するようになされた内管と,2-1-d 中空針の鋭利な端部を外管から突出させた状態で中空針の軸が針基に連結され,さらに針基が移動レバーにより外管に固定されるという固定手段と,2-1-g を備える安全装置。 エ被告製品の構成を本件発明2-3の構成要件に対比して分説すると,次の点は当事者間に争いがない。 2-3-d 安全装置。 オ被告製品の構成を本件発明2-5の構成要件に対比して分説すると,次の点は当事者間に争いがない。 2-5-b 内管は,中空針がそれに向かって後退する後端に担持された栓を有し,2-5-d 安全装置。 カ被告製品の構成を本件発明2-7の構成要件に対比して分説すると,次の点は当事者間に争いがない。 - 9 - 2-7-c 安全装置。 キ被告製品の構成を本件発明2-8の構成要件に対比して分説すると,次の点は当事者間に争いがない。 2-8-c 安全装置。 (6) 被告製品の本件各発明に対する充足性被告製品は 被告製品の構成を本件発明2-8の構成要件に対比して分説すると,次の点は当事者間に争いがない。 2-8-c 安全装置。 (6) 被告製品の本件各発明に対する充足性被告製品は,構成要件1-A・C・D・F,2-1-A~D・G,2-3-D,2-5-B・D,2-7-C,2-8-Cをいずれも充足する。 (7) 先行技術本件各発明の先行技術として,別紙先行技術目録記載の技術がある(ただし,番号89~91を除く。以下,上記技術が記載された公報,明細書又は文献を上記別紙の略称欄記載のとおり略称する。)。 2 争点及び当事者の主張本件の争点は,①被告製品の構成,②被告製品は本件各発明の技術的範囲に属するか,③本件特許1の請求項1はいわゆるサポート要件違反により特許無効審判で無効とされるべきものか,④本件特許1の請求項1は拡大先願発明と同一であることにより特許無効審判で無効とされるべきものか,⑤本件特許2の請求項1・3・5は新規性の欠如により特許無効審判で無効とされるべきものか,⑥本件特許2の請求項8は特許請求の範囲の記載要件違反により特許無効審判で無効とされるべきものか,⑦本件特許1の請求項1及び本件特許2の請求項1・3・5・7・8は進歩性の欠如により特許無効審判で無効とされるべきものか,⑧被告らの責任及び損害である。 (1) 争点①(被告製品の構成)について- 10 - (原告の主張)ア構成要件1-Eに対比した構成(1-e)被告製品は,針基の移動方向と垂直方向に移動可能であり,針基をばねの力に抗して一時的に内管の先端に隣接して保持する移動レバーであって,中空針の長さに比べて短い距離のみ指で押し込まれると,内管の後端までの中空針の移動距離よりも短い距離のみ移 可能であり,針基をばねの力に抗して一時的に内管の先端に隣接して保持する移動レバーであって,中空針の長さに比べて短い距離のみ指で押し込まれると,内管の後端までの中空針の移動距離よりも短い距離のみ移動する移動レバーを有する。 イ構成要件2-1-Eに対比した構成(2-1-e)被告製品は,指で移動レバーの天井部にあるボタンを押し込むことによって中空針の固定手段が解除され,ばねにより中空針の鋭利な端部に人の指が届かないように中空針を内管の中へ実質的に永続的に後退させるという解除/後退手段であって,中空針の軸の長さに比べて短い距離のみ指で押し込むことによって手操作で作動可能な解除/後退手段を有する。 ウ構成要件2-1-Fに対比した構成(2-1-f)被告製品では,中空針に連結する針基の後端に,内管の後端の栓に対する中空針の衝撃の一部を吸収する押しつぶし可能なシリコンゴム製の弾性部品がはめ付けられるとともに,その弾性部品が約3~4㎝後退するまでは外管の内部孔に固定された内管の内周面に圧接し,中空針の後退の間に摩擦を生じる弾性部品がはめ付けられている。このため,被告製品は,中空針が後退するエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段を有する。 エ構成要件2-3-A~Cに対比した構成(2-3-a~c)- 11 - 被告製品は,2-1-a~gの構成を有する安全装置である(2-3-a)。また,被告製品は,前記ウのとおり,エネルギ吸収手段として,外管の内部孔に固定された内管の内周面と(2-3-b),中空針に連結する針基に担持されて上記内周面に圧接し,中空針の後退の間に摩擦を生ずる弾性部品を有する(2-3-c)。 オ構成要件2-5-A・Cに対比した構成(2-5-a・c) b),中空針に連結する針基に担持されて上記内周面に圧接し,中空針の後退の間に摩擦を生ずる弾性部品を有する(2-3-c)。 オ構成要件2-5-A・Cに対比した構成(2-5-a・c)被告製品は,2-1-a~gの構成を有する安全装置である(2-5-a)。また,被告製品は,前記ウのとおり,エネルギ吸収手段として,中空針に連結する針基に固定されて栓に対する中空針の衝撃の一部を吸収する押しつぶし可能な弾性部品を有する(2-5-c)。 カ構成要件2-7-A・Bに対比した構成(2-7-a・b)被告製品は,2-1-a~gの構成を有する安全装置である(2-7-a)。また,被告製品では,中空針の中からの血液が,相当の容積がある針基内に流入した後,針基の後部上面にある穴とこれに向かい合って密着した内管の穴を通って,内管と外管の間にあるフラッシュバック室に流入する。そして,被告製品は,中空針の中からの血液を収容するとともに,中空針の後退の際に生じる血液と中空針との相対的な運動による影響を受けることを阻止して,中空針が後退する間と中空針が後退した後に,血液を外管から外へ漏出させないようにするための針基及びフラッシュバック室を有する(2-7-b)。 キ構成要件2-8-A・Bに対比した構成(2-8-a・b)被告製品は,2-1-a~gの構成を有する安全装置である(2-8-- 12 - a)。また,被告製品の針基は,内部が壁で取り囲まれており,後部上面に穴はあるが,血液の表面張力により,中空針の後退の際に生じる力による影響を受けても,空気が穴から針基の内部へ急速には入らず,血液が針基の内部から排出されない。このため,被告製品は,針基が,中空針の後退の際に生じる力による影響を受けて血液を針基の内部から排出させ る影響を受けても,空気が穴から針基の内部へ急速には入らず,血液が針基の内部から排出されない。このため,被告製品は,針基が,中空針の後退の際に生じる力による影響を受けて血液を針基の内部から排出させない隔離手段を有する(2-8-b)。 (被告らの主張)ア構成要件1-Eに対比した構成(1-e)について否認する。 イ構成要件2-1-Eに対比した構成(2-1-e)について否認する。 ウ構成要件2-1-Fに対比した構成(2-1-f)について否認する。被告製品の弾性部品は,中空針の後退の間,内管の内周面に圧接しておらず,中空針の後退の間に摩擦を生じない。このため,被告製品は,中空針が後退するエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段を有しない。 エ構成要件2-3-A~Cに対比した構成(2-3-a~c)について被告製品は,2-1-e・fの構成を有しないから,2-3-aの構成も有しない。2-3-bの構成は否認する。また,前記ウのとおり,被告製品は,内管の内周面に圧接して中空針の後退の間に摩擦を生ずる弾性部品を有さず,2-3-cの構成を有しない。 オ構成要件2-5-A・Cに対比した構成(2-5-a・c)について- 13 - 被告製品は,2-1-e・fの構成を有しないから,2-5-aの構成も有しない。2-5-cの構成は否認する。 カ構成要件2-7-A・Bに対比した構成(2-7-a・b)について被告製品は,2-1-e・fの構成を有しないから,2-7-aの構成も有しない。 また,被告製品の針基は,約0.01mlの容積しかないため,血液の通り道にすぎず,中空針の中からの血液を収容しない。さらに,フラッシュバック室の奥には 有しないから,2-7-aの構成も有しない。 また,被告製品の針基は,約0.01mlの容積しかないため,血液の通り道にすぎず,中空針の中からの血液を収容しない。さらに,フラッシュバック室の奥には血液が流入するのを妨げないように空気を逃がすための内管への開口部がある上,移動レバーを押し込むと,針基と中空針が後退し,密着していた内管と針基が離れ,針基内やフラッシュバック室内の血液が内管の開口部や穴,針基の穴から流出して外管から外へも漏出し得るようになる。したがって,2-7-bの構成も有しない。 キ構成要件2-8-A・Bに対比した構成(2-8-a・b)について被告製品は,2-1-e・fの構成を有しないから,2-8-aの構成も有しない。 また,前記カのとおり,被告製品の移動レバーを押し込むと,針基内の血液が針基の穴から流出し得るようになる。したがって,2-8-bの構成も有しない。 (2) 争点②(被告製品は本件各発明の技術的範囲に属するか)について(原告の主張)ア構成要件1-Bの充足性被告製品の「針基」は,中空針に連結し,ばねによって内管の後端に向- 14 - かって付勢されるとともに,移動レバーによりばねの力に抗して一時的に内管の先端に隣接して保持されるから,構成要件1-Bのニードルに連結し,付勢手段によって中空なハンドルの近い端に向かって付勢されるとともに,ラッチにより付勢手段の力に抗して一時的に中空のハンドルの遠い端に隣接して保持される「ニードルハブ」に当たる。そして,被告製品の「内管内に配置された針基」は,内管の外側に上記構成要件の「中空のハンドル」に当たる外管があるから,上記構成要件の「該ハンドル内に配置されたニードルハブ」に当たる。 したが ,被告製品の「内管内に配置された針基」は,内管の外側に上記構成要件の「中空のハンドル」に当たる外管があるから,上記構成要件の「該ハンドル内に配置されたニードルハブ」に当たる。 したがって,被告製品は,構成要件1-Bを充足する。 イ構成要件1-Eの充足性被告製品の「移動レバー」は,構成要件1-Eの「ラッチ」に当たる。 そして,被告製品の移動レバーは,針基の移動方向と垂直方向に移動可能であるから,上記構成要件の「前記ニードルハブから独立して移動可能」といえる。また,被告製品の移動レバーは,針基をばねの力に抗して一時的に内管の先端に隣接して保持するから,上記構成要件の「前記ニードルハブを前記付勢手段の力に抗して一時的に前記中空のハンドルの遠い端に隣接して保持する」ものといえる。さらに,「前記ニードルの移動距離」とは,ラッチをニードルの移動距離よりも短い距離のみ移動させることにより,簡単な操作でニードルをハンドル内へ後退させるという本件訂正発明1の目的に照らせば,ニードルの後退が完了するまでの移動距離を意味するところ,被告製品の移動レバーは,中空針の長さに比べて短い距離のみ指で押し込まれると,内管の後端までの中空針の移動距離よりも短い距- 15 - 離のみ移動するから,上記構成要件の「前記ニードルの長さよりも短い振幅で手動により駆動され,前記ニードルの移動距離よりも短い距離のみ移動する」ものといえる。 したがって,被告製品は,構成要件1-Eを充足する。 ウ構成要件2-1-Eの充足性被告製品の「指で移動レバーの天井部にあるボタンを押し込むことによって中空針の固定手段が解除され,ばねにより中空針の鋭利な端部に人の指が届かないように中空針を内管の中へ実質的に永続的に後退さ 被告製品の「指で移動レバーの天井部にあるボタンを押し込むことによって中空針の固定手段が解除され,ばねにより中空針の鋭利な端部に人の指が届かないように中空針を内管の中へ実質的に永続的に後退させるという解除/後退手段」は,構成要件2-1-Eの「前記固定手段を解除し,前記針の鋭利な端部を人の指が届かないように前記ハンドルの中へ実質的に永続的に後退させる解除/後退手段」に当たる。また,被告製品の「中空針の軸の長さに比べて短い距離のみ指で押し込むことによって手操作で作動可能な解除/後退手段」は,上記構成要件の「前記針の軸よりも実質的に短い距離だけ簡単且つ単一の動作によって手操作で作動可能な解除/後退手段」に当たる。 したがって,被告製品は,構成要件2-1-Eを充足する。 エ構成要件2-1-Fの充足性被告製品の「中空針が後退するエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段」は,構成要件2-1-Fの「前記後退のエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段」に当たる。 したがって,被告製品は,構成要件2-1-Fを充足する。 オ構成要件2-3-A~Cの充足性- 16 - 被告製品の「2-1-a~gの構成を有する安全装置」は,構成要件2-3-Aの「請求項1の安全装置」に当たる。また,被告製品の「エネルギ吸収手段として,外管の内部孔に固定された内管の内周面」は,構成要件2-3-A・Bの「前記エネルギ吸収手段が,…前記ハンドルの内部孔…に固定された表面」に当たる。さらに,被告製品の「エネルギ吸収手段として,中空針に連結する針基に担持されて内管の内周面に圧接し,中空針の後退の間に摩擦を生ずる弾性部品」は,構成要件2-3-A・Cの「前記エネルギ吸収手段が,…前記針…に担持され 「エネルギ吸収手段として,中空針に連結する針基に担持されて内管の内周面に圧接し,中空針の後退の間に摩擦を生ずる弾性部品」は,構成要件2-3-A・Cの「前記エネルギ吸収手段が,…前記針…に担持されて前記表面に圧接し,前記後退の間に摩擦を生ずる要素」に当たる。 したがって,被告製品は,構成要件2-3-A~Cを充足する。 カ構成要件2-5-A・Cの充足性被告製品の「2-1-a~gの構成を有する安全装置」は,構成要件2-5-Aの「請求項1の安全装置」に当たる。また,被告製品の「エネルギ吸収手段として,中空針に連結する針基に固定されて栓に対する中空針の衝撃の一部を吸収する押しつぶし可能な弾性部品」は,構成要件2-5-Cの「前記エネルギ吸収手段は,前記針…に固定されて前記端部構造に対する前記針の衝撃の一部を吸収する押し潰し可能な要素」に当たる。 したがって,被告製品は,構成要件2-5-A・Cを充足する。 キ構成要件2-7-A・Bの充足性被告製品の「2-1-a~gの構成を有する安全装置」は,構成要件2-7-Aの「請求項1の安全装置」に当たる。 また,構成要件2-7-Bの「前記後退によって生ずる力に抗して,…- 17 - 前記血液を確実に保持する」とは,本件発明2-7が,使用後に中空針を後退させると,血液と中空針との相対的な運動により,血液が針の先端やハンドルの前方の開口部から漏出するといった課題を解決するものであったことから,「中空針の後退の際に生じる血液と中空針との相対的な運動による影響を受けることを阻止して,血液を中空のハンドルから外へ漏出させないようにする」ことを意味する。このため,被告製品の「中空針の中からの血液を収容するとともに,中空針の後退の際に生じる血液と中空針との相対的な運動に 阻止して,血液を中空のハンドルから外へ漏出させないようにする」ことを意味する。このため,被告製品の「中空針の中からの血液を収容するとともに,中空針の後退の際に生じる血液と中空針との相対的な運動による影響を受けることを阻止して,中空針が後退する間と中空針が後退した後に,血液を外管から外へ漏出させないようにするための」針基及びフラッシュバック室は,構成要件2-7-Bの「前記中空針の中からの血液を収容する共に,前記後退によって生ずる力に抗して,前記針が後退する間に及び該後退の後に,前記血液を確実に保持するための収容/保持手段」に当たる。 なお,前記構成要件と整合しない本件明細書2の【0038】「この問題に対する解決策は,運動可能な針に効果的に固定された点におけるフラッシュ血液を包囲あるいは阻害することとは別の方法に見い出すことができ」という記載(9欄38行~41行)は,対応する米国特許第5575777号明細書にも同旨の記載がなく,誤記である。 したがって,被告製品は,構成要件2-7-A・Bを充足する。 ク構成要件2-8-A・Bの充足性被告製品の「2-1-a~gの構成を有する安全装置」は,構成要件2-8-Aの「請求項1の安全装置」に当たる。また,構成要件2-8-B- 18 - の「前記室」とは,本件明細書2の【0069】「針と共に運動するように固定された室」という記載(14欄2行・3行)から,キャリアブロックを意味するところ,構成要件2-8-Bの「前記後退によって生ずる力から前記室の内部を隔離する」とは,本件発明2-8が,中空針とキャリアブロックを後退させると,空気がキャリアブロックの内部へ比較的急速に入ることにより,血液が針の先端から排出されるといった課題を解決するものであったことから,「中空針の 発明2-8が,中空針とキャリアブロックを後退させると,空気がキャリアブロックの内部へ比較的急速に入ることにより,血液が針の先端から排出されるといった課題を解決するものであったことから,「中空針の後退の際に生じる力による影響を受けて血液をキャリアブロックの内部から排出させないようにする」ことを意味する。このため,キャリアブロックに当たる被告製品の針基が中空針の後退の際に生じる力による影響を受けて血液を針基の内部から排出させない隔離手段を有するのは,構成要件2-8-Bの「前記収容/保持手段が,前記後退によって生ずる力から前記室の内部を隔離するための隔離手段を更に備える」ものといえる。 したがって,被告製品は,構成要件2-8-A・Bを充足する。 (被告らの主張)ア構成要件1-Bの充足性について構成要件1-Bの「ニードルハブ」の意義は,本件明細書1中の発明の詳細な説明に記載も示唆もなく,不明である。このため,被告製品の「針基」が上記構成要件の「ニードルハブ」に当たるかどうかも,不明である。 したがって,被告製品は,構成要件1-Bを充足しない。 イ構成要件1-Eの充足性についてラッチとは,「ドア・門等の掛けがね。留め金。」を意味し,内管と針基- 19 - の密着固定を解除する移動レバーと異なるから,被告製品の「移動レバー」は,構成要件1-Eの「ラッチ」に当たらない。 仮に「ラッチ」に当たるとしても,被告製品の移動レバーの穴の内側にある突起部分は,これとかみ合っている針基の溝と共に,移動レバーのボタンに向かって21度後方に傾いているから,移動レバーを約1.3㎜押し込むと,針基と中空針も約0.4㎜後方に移動する。このため,移動レバーは,前記構成要件の「ニー いる針基の溝と共に,移動レバーのボタンに向かって21度後方に傾いているから,移動レバーを約1.3㎜押し込むと,針基と中空針も約0.4㎜後方に移動する。このため,移動レバーは,前記構成要件の「ニードルハブから独立して移動可能」といえず,上記構成要件の「前記ニードルの移動距離よりも短い距離のみ移動する」ともいえない。 したがって,被告製品は,構成要件1-Eを充足しない。 ウ構成要件2-1-Eの充足性について否認する。 エ構成要件2-1-Fの充足性について前記(1)(被告らの主張)ウのとおり,被告製品は,2-1-fの構成を有しないから,構成要件2-1-Fを充足しない。 オ構成要件2-3-A~Cの充足性について前記(1)(被告らの主張)エのとおり,被告製品は,2-3-a~cの構成を有しないから,構成要件2-3-A~Cを充足しない。 カ構成要件2-5-A・Cの充足性について前記(1)(被告らの主張)オのとおり,被告製品は,2-5-a・cの構成を有しないから,構成要件2-5-A・Cを充足しない。 キ構成要件2-7-A・Bの充足性について- 20 - 前記(1)(被告らの主張)カのとおり,被告製品は,2-7-a・bの構成を有しない。また,次の理由からも,被告製品の針基及びフラッシュバック室は,構成要件2-7-Bを充足しない。 (ア) 被告製品の針基について構成要件2-7-Bの「収容/保持手段」は,本件明細書2の【0038】「この問題に対する解決策は,運動可能な針に効果的に固定された点におけるフラッシュ血液を包囲あるいは阻害することとは別の方法に見い出すことができ」という記載(9欄38行~41行)から, 【0038】「この問題に対する解決策は,運動可能な針に効果的に固定された点におけるフラッシュ血液を包囲あるいは阻害することとは別の方法に見い出すことができ」という記載(9欄38行~41行)から,中空針に連結した被告製品の針基を含まない。 また,構成要件2-7-Bの「収容/保持手段」は,本件明細書2の【0069】「例えば,収容/保持手段は,針と共に運動するように固定された室と,収容され且つ保持された血液を本装置のユーザが観察できるようにする何等かの手段とを備えるのが極めて好ましい。」(14欄2行~5行)等という記載から,カテーテルが実際に血管の中へ挿入されていることを確認する目的をも有するところ,そのようなフラッシュ室は1つあれば足り,本件明細書2もキャリアブロックとは別個のフラッシュ室を備える実施例(図8参照)について後者のみを「フラッシュ室」と記載しているから(23欄39行),前者のキャリアブロックに当たると思われる被告製品の針基を含まない。 (イ) 被告製品のフラッシュバック室について構成要件2-7-Bの「前記後退によって生ずる力に抗して,…前記血液を確実に保持する」とは,「中空針の後退によって生じる力を受け,- 21 - これに対抗して,…血液を確実に保持する」ことを意味する。しかるに,被告製品のフラッシュバック室は,中空針の後退によって生じる力を受けておらず,これに対抗してもいないから,構成要件2-7-Bの「前記後退によって生ずる力に抗して,…前記血液を確実に保持する」とはいえない。 また,構成要件2-7-Bの「収容/保持手段」は,本件明細書2の【0086】「本発明は,血液をハンドルの中に保持するのではなく,後退の間に血液を針と共に搬送し,従って,血液と針との間に相対的な運動を何等生じな 件2-7-Bの「収容/保持手段」は,本件明細書2の【0086】「本発明は,血液をハンドルの中に保持するのではなく,後退の間に血液を針と共に搬送し,従って,血液と針との間に相対的な運動を何等生じないようにすることにより,上述の問題を解消する。」という記載(16欄25行~28行)から,中空針との間で相対的な運動を行う被告製品のフラッシュバック室も含まない。 ク構成要件2-8-A・Bの充足性について前記(1)(被告らの主張)キのとおり,被告製品は,2-8-aの構成を有しない。また,構成要件2-8-Bの「前記室」は,本件特許2の特許請求の範囲請求項1~7に該当する記載がなく,発明の詳細な説明には【0072】「上記ハンドルに関連して設けられる室」(14欄23行・24行)等,複数の該当し得る記載があるから,キャリアブロックを意味しない。 したがって,被告製品は,構成要件2-8-A・Bを充足しない。 (3) 争点③(本件特許1の請求項1はいわゆるサポート要件違反により特許無効審判で無効とされるべきものか)について(被告らの主張)- 22 - 「ニードルハブ」は,構成要件1-B~Eに関わる本件訂正発明1の重要な構成要素であるにもかかわらず,前記(2)(被告らの主張)アのとおり,本件明細書1中の発明の詳細な説明に記載も示唆もなく,意味内容の確立した技術用語でもない。請求項で用いられる用語の意味は,出願ごとにまちまちであるから,他の出願で用いられたからといって,明らかではない上,他の特許公報では符号等の説明を付して用いられている。また,本件明細書1中の発明の詳細な説明には,「キャリヤブロック」という記載があるが,それが「ニードルハブ」や「針基」に対応する旨の記載もない。 このように,「ニ 号等の説明を付して用いられている。また,本件明細書1中の発明の詳細な説明には,「キャリヤブロック」という記載があるが,それが「ニードルハブ」や「針基」に対応する旨の記載もない。 このように,「ニードルハブ」は,本件明細書1中の発明の詳細な説明に記載がないから,本件特許1の特許請求の範囲請求項1の記載は,いわゆるサポート要件(平成2年法律第30号による改正前の特許法36条4項1号)違反により特許無効審判で無効とされるべきものである。 (原告の主張)「ニードルハブ」は,注射器やカテーテル等の医療機器の分野において,針の土台部分である針基を意味する確立した技術用語である。実際,他の特許公報では意味内容の説明なく用いられている。被告東郷メディキット株式会社も,自社の特許の明細書や被告製品の添付文書で「内針ハブ」と呼んでいる。そして,本件明細書1中の発明の詳細な説明には,針基に相当する用語として,「キャリヤブロック」や「針キャリヤブロック」という記載がある。 このように,「ニードルハブ」は,本件明細書1中の発明の詳細な説明に記載があるから,本件特許1の特許請求の範囲請求項1の記載は,いわゆる- 23 - サポート要件に違反せず,特許無効審判で無効とされるべきものではない。 (4) 争点④(本件特許1の請求項1は拡大先願発明と同一であることにより特許無効審判で無効とされるべきものか)について(被告らの主張)ア乙9-19公報記載の発明乙9-19公報記載の発明は,昭和63年4月20日に特許出願され,同年11月28日に出願公開されたものであり,同公報の発明の詳細な説明中に記載された「シリンダ」,「針支持および整列部材」,「針」,「ばね」,「ロッキングカップ」は,本件訂正発明1の「中空のハ れ,同年11月28日に出願公開されたものであり,同公報の発明の詳細な説明中に記載された「シリンダ」,「針支持および整列部材」,「針」,「ばね」,「ロッキングカップ」は,本件訂正発明1の「中空のハンドル」,「ニードルハブ」,「ニードル」,「付勢手段」,「ラッチ」にそれぞれ相当する。 そして,乙9-19公報記載の発明が他の適切な型の注射器にも応用可能であることは,同公報に記載されていた上(10頁右上欄14行~左下欄2行),カニューレの挿入のためのニードルを含む注射器は,乙9-30~40・49公報・明細書・文献に記載のとおり,周知・慣用のものにすぎなかった。 したがって,乙9-19公報には,次の発明が実質的に記載されている。 (ア) 近い端及び遠い端を有する中空のハンドルと,(イ) 該ハンドル内に配置されたニードルハブと,(ウ) 鋭い自由端と,前記ニードルハブに連結された固着端とを有し,カニューレを患者の定位置に案内し運ぶためのニードルと,(エ) 前記ニードルハブを前記中空なハンドルの近い端に向かって付勢- 24 - する付勢手段と,(オ) 前記ニードルハブから独立して移動可能であり,前記ニードルハブを前記付勢手段の力に抗して一時的に前記中空のハンドルの遠い端に隣接して保持するラッチであって,前記ニードルの長さよりも短い振幅で手動により駆動され,前記ニードルの移動距離よりも短い距離のみ移動するラッチと,(カ) から成る,カニューレ挿入のための安全装置。 イ小括以上のとおり,本件訂正発明1は,当該特許出願の日である昭和63年4月28日以前の特許出願であって,当該特許出願後に出願公開がされたものの願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された乙9-19公報記載の発明 ,本件訂正発明1は,当該特許出願の日である昭和63年4月28日以前の特許出願であって,当該特許出願後に出願公開がされたものの願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された乙9-19公報記載の発明と同一である。したがって,本件特許1の請求項1は,拡大先願発明と同一であること(特許法29条の2)により特許無効審判で無効とされるべきものである。 (原告の主張)本件訂正発明1は,カニューレの挿入に用いられるものであるのに対し,乙9-19公報記載の発明は,アンプルを構成要件とした歯科用注射器に関する発明であって,カニューレの挿入に用いられるものではなく,その旨の記載も示唆もない。 以上のとおり,乙9-19公報には,本件訂正発明1と同一の発明が記載されておらず,本件特許1の請求項1は,拡大先願発明と同一であることにより特許無効審判で無効とされるべきものではない。 - 25 - (5) 争点⑤(本件特許2の請求項1・3・5は新規性の欠如により特許無効審判で無効とされるべきものか)について(被告らの主張)ア乙11-1公報記載の発明乙11-1公報(平成3年1月23日発行)の記載(特許請求の範囲請求項1,10頁左下欄7行~9行,11頁左上欄12行~16行,同頁左下欄16行~右下欄11行,14頁左下欄9行~20行)によれば,乙11-1公報には,次の発明が記載されている。 a カニューレを患者の中に挿入しその後で患者内にあった装置部分との接触から人々を保護するに当たって使用される安全装置であって,b 前記患者に突き刺し前記カニューレを前記患者内の定位置に案内し運ぶための針であって,少なくとも1つの鋭い端を備えた軸を有する針と,c 前記人々の指が届かないように前記針の少なくとも b 前記患者に突き刺し前記カニューレを前記患者内の定位置に案内し運ぶための針であって,少なくとも1つの鋭い端を備えた軸を有する針と,c 前記人々の指が届かないように前記針の少なくとも鋭い端を封包するようになされた中空ハンドルと,d 前記鋭い端がハンドルから突出した状態で前記軸をハンドルに固着するための手段と,e 前記固着手段を解除し且つ前記人々の指が届かないように前記針の鋭い端をハンドル内へ実質的に永久的に後退させるための手段とから成り,前記解除および後退手段は針の軸よりも実質的に短い振幅の単純な一体運動により手動で作動可能であり,f 針を保持するキャリヤブロックの外面とハンドルの内面とは流体密封しており,針を保持するキャリヤブロックの後面はデルリン製であり,- 26 - 完全に後退したときにハンドルの内側ストッパ部分に着座するg 安全装置。 イ本件発明2-1との対比本件発明2-1と乙11-1公報記載の発明とを対比すると,本件発明2-1の構成要件A~E・Gは,乙11-1公報記載の発明の構成a~e・gにそれぞれ相当する。 また,乙11-1公報に記載された発明の構成fにおける流体密封とは,液体が漏れ出ない程度に密着していることを意味し,ばねの力によりキャリヤブロックが後退するときにキャリヤブロックの外面とハンドルの内面との間に摩擦が生じるものと解される。乙11-1公報には,「トリガーが作動されていない時に」流体密封を与える旨の記載や中空ハンドルの内径差に関する記載があるが,「この孔はごく一般的には真円筒形である」という記載(11頁左上欄7行・8行)やそれを示す図1の記載,内径差も0.0117㎝しかないこと等を考慮すれば,トリガーが作動されて 径差に関する記載があるが,「この孔はごく一般的には真円筒形である」という記載(11頁左上欄7行・8行)やそれを示す図1の記載,内径差も0.0117㎝しかないこと等を考慮すれば,トリガーが作動されている時にも流体密封を与えることが明らかである。なお,乙11-1公報に記載されたキャリヤブロックの外側に延びるラッチ耳も,ハンドルの内面との間に摩擦が生じるものと解される。さらに,乙11-1公報に記載された発明の構成fにおけるデルリン製のキャリヤブロックの後面は,「デルリン」がデュポン社の登録商標であり(乙11の4・5),ポリオキシメチレン材からなるその製品は弾性率が高く,柔軟性を有するものであり,衝撃吸収体としての機能を有することは周知であったから,着座の際の衝撃を緩衝するものである。一方,構成要件2-1-Fの「前記後退の- 27 - エネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段」とは,本件発明2-3・5の記載から,摩擦を生じる要素や衝撃の一部を吸収する要素を含む上位概念と解される。そうすると,本件発明2-1の構成要件2-1-Fは,乙11-1公報記載の発明の構成fに相当する。 したがって,本件発明2-1は,乙11-1公報記載の発明と同一の発明である。 ウ本件発明2-3との対比本件発明2-3は,本件発明2-1に対し,「前記エネルギ吸収手段が,前記針と前記ハンドルの内部孔とのうちの一方に固定された表面と,前記針と前記内部孔とのうちの他方に担持されて前記表面に圧接し,前記後退の間に摩擦を生ずる要素とを備える」と限定したものである。 乙11-1公報に記載されたハンドルの内面は,後端近くのストッパ表面を含めて,構成要件2-3-Bの「前記ハンドルの内部孔…に固定された表面」に相当する。乙11-1公報 定したものである。 乙11-1公報に記載されたハンドルの内面は,後端近くのストッパ表面を含めて,構成要件2-3-Bの「前記ハンドルの内部孔…に固定された表面」に相当する。乙11-1公報に記載された針を保持するキャリヤブロックの外面は,前記イのとおり,後退するときにハンドルの内面との間に摩擦力が生じると解されるから,構成要件2-3-Cの「前記針…に担持されて前記表面に圧接し,前記後退の間に摩擦を生ずる要素」に相当する。 したがって,本件発明2-3は,乙11-1公報記載の発明と同一の発明である。 エ本件発明2-5との対比本件発明2-5は,本件発明2-1に対し,「前記中空のハンドルは,- 28 - 前記針がそれに向かって後退する端部構造を有し,前記エネルギ吸収手段は,前記針と前記端部構造とうちの一方に固定されて前記端部構造に対する前記針の衝撃の一部を吸収する押し潰し可能な要素を有する」と限定したものである。 乙11-1公報に記載された針を保持するキャリヤブロックが完全に後退したときに着座するハンドルの内側ストッパ部分は,構成要件2-5-Bの「前記針がそれに向かって後退する端部構造」に相当する。乙11-1公報に記載された針を保持して内側ストッパ部分に着座する後面がデルリン製のキャリヤブロックは,前記イのとおり,デルリンが着座の際の衝撃を緩衝することから,構成要件2-5-Cの「前記針…に固定されて前記端部構造に対する前記針の衝撃の一部を吸収する押し潰し可能な要素」に相当する。 したがって,本件発明2-5は,乙11-1公報記載の発明と同一の発明である。 オ小括以上のとおり,本件発明2-1・3・5は,いずれも特許出願前に日本国内において頒布された刊 したがって,本件発明2-5は,乙11-1公報記載の発明と同一の発明である。 オ小括以上のとおり,本件発明2-1・3・5は,いずれも特許出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明(特許法29条1項3号)である。したがって,本件特許2の請求項1・3・5は,新規性の欠如により特許無効審判で無効とされるべきものである。 (原告の主張)ア本件発明2-1との対比について乙11-1公報には,「トリガーが作動されていない時に」(14頁左- 29 - 下欄11行)キャリヤブロックの後端にある円錐台状ストッパ部分の前端の直径を中空ハンドルの内側孔の表面に対して流体密封を与えるようわずかに増大させる旨の記載があるだけである。これは,そうすることにより,円錐台状ストッパ部分の前方にあるばねや内部空洞等の衛生の維持を最小限に抑えることができ,中空針を介しての効果的な流体連通が容易になるからである。乙11-1公報には,トリガーが作動されて中空針が後退する間も円錐台状ストッパ部分が中空ハンドルの内側孔の表面に圧接して摩擦を生じる旨の記載はなく,むしろ「この孔はごく一般的には真円筒形であるが,好ましくは型からのハンドルの除去を容易にするためにハンドルの後端に向けて広がるごく僅かなテーパもしくはドラフトを有する。」(11頁左上欄7行~11行),「第1図の好ましい実施例の他の寸法は大略以下の通りである(㎝)。…トリガー近傍でのハンドル孔の内径0.4201 後端近傍でのハンドル孔の内径0.4318」(13頁左下欄8行~18行)と逆の記載がある。中空ハンドルの後端近くのストッパ表面は,後退中の円錐台状ストッパ部分との間で摩擦を生じるものではなく,そこに円錐台状ストッパ部分がはまるだけである。なお 3頁左下欄8行~18行)と逆の記載がある。中空ハンドルの後端近くのストッパ表面は,後退中の円錐台状ストッパ部分との間で摩擦を生じるものではなく,そこに円錐台状ストッパ部分がはまるだけである。なお,乙11-1公報に記載されたキャリヤブロックのラッチ耳が中空ハンドルの内側孔の表面に圧接し,中空針の後退の間に摩擦を生じる旨の記載もない。 また,デルリンは,ギア等に用いられる剛性を有するプラスチックである上,製品の弾性率にも幅があり,弾性率が高くて柔軟性を有する物質や衝撃吸収材として用いられる物質とは限らない。乙11-1公報に円錐台状ストッパ部分の材料としてデルリンが記載されているのは,中空針を通- 30 - す鼻部片の材料にデルリンが記載されている理由と同様,精密に成形しやすいからである。 したがって,乙11-1公報記載の発明の構成fは,構成要件2-1-Fに相当せず,本件発明2-1は,乙11-1公報記載の発明と同一の発明ではない。 イ本件発明2-3との対比について乙11-1公報に記載されたキャリヤブロックの後端にある円錐台状ストッパ部分は,前記アのとおり,中空針が後退する間,中空ハンドルの内側孔の表面に圧接しておらず,摩擦も生じないから,構成要件2-3-Cの「前記針…に担持されて前記表面に圧接し,前記後退の間に摩擦を生ずる要素」に相当しない。 したがって,本件発明2-3は,乙11-1公報記載の発明と同一の発明ではない。 ウ本件発明2-5との対比について乙11-1公報に記載されたキャリヤブロック後面のデルリンは,前記アのとおり,衝撃吸収剤として用いられる物質とは限らないから,構成要件2-5-Cの「前記針…に固定されて前記端部構造に対する前記針の衝撃の一部 公報に記載されたキャリヤブロック後面のデルリンは,前記アのとおり,衝撃吸収剤として用いられる物質とは限らないから,構成要件2-5-Cの「前記針…に固定されて前記端部構造に対する前記針の衝撃の一部を吸収する押し潰し可能な要素」に相当しない。 したがって,本件発明2-5は,乙11-1公報記載の発明と同一の発明ではない。 エ小括以上のとおり,本件発明2-1・3・5は,いずれも特許出願前に日本- 31 - 国内において頒布された刊行物に記載された発明ではなく,新規性を有する。したがって,本件特許2の請求項1・3・5は,特許無効審判で無効とされるべきものではない。 (6) 争点⑥(本件特許2の請求項8は特許請求の範囲の記載要件違反により特許無効審判で無効とされるべきものか)について(被告らの主張)ア特許請求の範囲の記載要件違反本件発明2-8の特許出願が行われた当時の平成6年法律第116号による改正前の特許法36条5項2号は,「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した項(以下「請求項」という。)に区分してあること。」と規定しており,かつ,平成7年通商産業省令第57号による改正前の特許法施行規則24条の2第3号は,「請求項の記載における他の請求項の引用は,その請求項に付した番号によりしなければならない。」と規定していたから,各請求項は独立しており,他の請求項の引用はその請求項に付した番号を特定して行う必要がある。このため,本件発明2-8の特許請求の範囲に記載された「前記収容/保持手段」や「前記室」は,これらの前にある「請求項1」にその内容が記載されていなければならないにもかかわらず,請求項1には,その記載がないため,内容が不明である。「前記収容/保持 れた「前記収容/保持手段」や「前記室」は,これらの前にある「請求項1」にその内容が記載されていなければならないにもかかわらず,請求項1には,その記載がないため,内容が不明である。「前記収容/保持手段」は,本件特許2の請求項7に同じ記載があるから,その前に「請求項7の安全装置において」と記載されるべきであったが,そのような記載もない。「前記室」は,本件特許2の請求項1~7のいずれにも記載がない上,発明の詳細な説明には,【0- 32 - 072】「上記ハンドルに関連して設けられる室」等,複数の同じ記載があり,内容を特定することができない。 イ訂正の請求について明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正の請求は,当該記載が理解可能であることを要する。前記アのとおり,本件発明2-8の「前記収容/保持手段」や「前記室」は,理解不能であるから,本件訂正請求は,明りょうでない記載の釈明を目的とするものとはいえない。そして,本件訂正請求は,前記(2)(被告らの主張)クのとおり,本件発明2-8の技術的範囲に属しない被告製品を本件訂正発明2-8の技術的範囲に属させるものであるから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものである。このため,本件訂正請求は,適法な訂正の請求でない。 ウ進歩性の欠如本件訂正発明2-8は,後記(7)(被告らの主張)エ(ウ)のとおり,本件発明2-8と同様,進歩性の欠如により特許が受けられないものである。 エ小括以上のとおり,本件特許2の請求項8は,特許請求の範囲の記載要件(平成6年法律第116号による改正前の特許法36条5項2号)違反により特許無効審判で無効とされるべきものである。 (原告の主張)ア特許請求の範囲の記載要件違反について本件発 (平成6年法律第116号による改正前の特許法36条5項2号)違反により特許無効審判で無効とされるべきものである。 (原告の主張)ア特許請求の範囲の記載要件違反について本件発明2-8の「前記収容/保持手段」は,本件発明2-7の「収容/保持手段」を意味し,「前記室」は,本件明細書2の【0070】「上- 33 - 記室」が指し示す【0069】「針と共に運動するように固定された室」を意味することは明らかである。 イ訂正の請求本件訂正請求のうち,「請求項1の安全装置」から「請求項7の安全装置」への訂正は,請求項7が請求項1の従属項であるから,特許請求の範囲の減縮を目的とする。また,「前記針と共に運動するように固定された室を備え,」の付加も,「前記収容/保持手段」を限定するから,特許請求の範囲の減縮を目的とする。さらに,本件訂正請求は,明りょうでなかった「前記収容/保持手段」や「前記室」の内容を明りょうにするから,明りょうでない記載の釈明も目的とする。そして,本件訂正請求は,前記アのとおり,本件明細書2に記載した事項の範囲内においてするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。このため,本件訂正請求は,適法な訂正の請求である。 仮に本件特許2の請求項8が特許請求の範囲の記載要件違反により特許無効審判で無効とされるべきものであっても,本件訂正請求により,当該無効理由が解消する。 そして,被告製品は,本件訂正発明2-8の各構成要件も充足し,本件訂正発明2-8の技術的範囲に属する。 ウ進歩性の欠如について本件訂正発明2-8は,後記(7)(原告の主張)エ(ウ)のとおり,本件発明2-8と同様,進歩性を有する。 エ小括- 34 の技術的範囲に属する。 ウ進歩性の欠如について本件訂正発明2-8は,後記(7)(原告の主張)エ(ウ)のとおり,本件発明2-8と同様,進歩性を有する。 エ小括- 34 - 以上のとおり,本件特許2の請求項8は,特許請求の範囲の記載要件(平成6年法律第116号による改正前の特許法36条5項2号)違反により特許無効審判で無効とされるべきものではない。 (7) 争点⑦(本件特許1の請求項1及び本件特許2の請求項1・3・5・7・8は進歩性の欠如により特許無効審判で無効とされるべきものか)について(被告らの主張)ア乙9-1・2両公報記載の発明と周知技術に基づく本件訂正発明1の想到容易性(ア) 本件訂正発明1と乙9-1公報記載の発明との対比a 乙9-1公報記載の発明乙9-1公報の記載(特許請求の範囲(1),(3),(5),(6),2頁右上欄3行~15行,2頁左下欄7行~15行,3頁左上欄1行~7行,同頁右上欄13行~19行,同頁左下欄2行~13行)によれば,乙9-1公報記載の発明は,本件訂正発明1と同じく医療器具における安全装置に関するものであること,乙9-1公報に記載された「さや」は,本件訂正発明1の「中空のハンドル」に相当すること(本件訂正発明1の「中空のハンドル」とは,安全装置の1要素として,ニードルハブを安全な位置に移動させる操作のために手で握られる部分を意味するところ,乙9-1公報記載の発明は,注射器胴部がある皮下注射針だけでなく,注射器胴部がない静脈カニューレや連結器にも適用することができ(2頁左下欄7行~15行,3頁左上欄1行~4行),その場合は「さや」が手で握られる部分となり,「さや」は,ハウジン- 35 - グに 器胴部がない静脈カニューレや連結器にも適用することができ(2頁左下欄7行~15行,3頁左上欄1行~4行),その場合は「さや」が手で握られる部分となり,「さや」は,ハウジン- 35 - グに接着したりクリップで止めたりして固着すれば,安定するし,親指と人差し指で挟むように握るのが通常であり,少しの長さがあれば足りるから,握ることもできる。),乙9-1公報に記載された針を支持する「ハウジング」,「針」は,本件訂正発明1の「ニードルハブ」,「ニードル」にそれぞれ相当することが認められる。 したがって,乙9-1公報には,次の発明が記載されている。 (a) 近い端及び遠い端を有する中空のハンドルと,(b) 該ハンドル内に配置されたニードルハブと,(c) 鋭い自由端と,前記ニードルハブに連結された固着端とを有するニードルと,(d) 前記ニードルハブのニードル連結部が前記中空なハンドルの近い端に接近するように中空なハンドルを手動で移動させるための親指ガードと,(e) 前記ニードルハブのニードル連結部を一時的に前記中空のハンドルの遠い端に保持する固着手段と,(f) から成る,カニューレ挿入のための安全装置。 b 本件訂正発明1と乙9-1公報記載の発明との相違点本件訂正発明1と乙9-1公報記載の発明とを対比すると,両者は,構成要件1-A・B・Fにおいて一致し,次の3点で相違する。 (a) 本件訂正発明1では,カニューレを患者の定位置に案内し運ぶためのニードルがあるのに対し(構成要件1-C),乙9-1公報記載の発明では,これがない点- 36 - (b) 本件訂正発明1では,ニードルハブを ーレを患者の定位置に案内し運ぶためのニードルがあるのに対し(構成要件1-C),乙9-1公報記載の発明では,これがない点- 36 - (b) 本件訂正発明1では,ニードルハブを中空なハンドルの近い端に向かって付勢する付勢手段があるのに対し(構成要件1-D),乙9-1公報記載の発明では,ニードルハブのニードル連結部が中空なハンドルの近い端に向かって接近するように中空なハンドルを手動で移動させる親指ガードしかない点(c) 本件訂正発明1では,ニードルハブから独立して移動可能であり,ニードルハブを付勢手段の力に抗して一時的に中空のハンドルの遠い端に隣接して保持するラッチであって,ニードルの長さよりも短い振幅で手動により駆動され,ニードルの移動距離よりも短い距離のみ移動するラッチがあるのに対し(構成要件1-E),乙9-1公報記載の発明では,ニードルハブのニードル連結部を一時的に中空のハンドルの遠い端に保持する固着手段しかない点(イ) 相違点に係る構成の想到容易性a 乙9-2公報記載の発明乙9-2公報の記載(2頁左上欄9行~12行,同頁右上欄19行~左下欄4行,同頁左下欄17行~右下欄5行,同頁右下欄8行~16行,3頁左上欄1行~5行,同頁右上欄1行・2行,同頁右上欄9行・10行,同頁左下欄1行~13行)によれば,乙9-2公報記載の発明は,自動プランジャ復帰式の皮下バイオプシー用注射器に関し,針の挿入時とサンプルの吸引時のいずれにおいても一方の手のみで安全に操作することができるようにしたものであるから,医療器具の安全装置に関するものといえること,乙9-2公報に記載された針状で- 37 - 注射針の構成要素でもある「可動コア」,「プランジャ」,「外方の円筒素子」 るようにしたものであるから,医療器具の安全装置に関するものといえること,乙9-2公報に記載された針状で- 37 - 注射針の構成要素でもある「可動コア」,「プランジャ」,「外方の円筒素子」,「圧縮空気」又は「圧縮されていたスプリング」,「突起」及び「戻り止め」は,本件訂正発明1の「ニードル」,「ニードルハブ」,「中空なハンドル」,「付勢手段」,「ラッチ」にそれぞれ相当すること,突起及び戻り止めは,技術常識上,せいぜい数㎜程度移動するだけであるのに対し,可動コアは,針より長い上,臓器等から組織や体液を抽出するため,針より長く移動する必要があるところ,針はこれを臓器等に到達させるために2㎝以上の長さがあるから,可動コアの長さや移動距離も,2㎝以上に及ぶことが認められる。 したがって,乙9-2公報には,次の発明が記載されている。 (a) ニードルハブを中空なハンドルの近い端に向かって付勢する付勢手段と,(b) 前記ニードルハブから独立して移動可能であり,前記ニードルハブを前記付勢手段の力に抗して一時的に前記中空のハンドルの遠い端に隣接して保持するラッチであって,ニードルの長さよりも短い振幅で手動により駆動され,前記ニードルの移動距離よりも短い距離のみ移動するラッチと,(c) から成る安全装置。 b 乙9-3・4・13~18・20~25・29~40・43~49公報・明細書・文献記載の技術・課題乙9-43~48文献によれば,本件訂正発明1の特許出願当時,医療従事者の注射器使用業務における針刺し事故が大きな社会問題と- 38 - なっており,医療従事者がAIDSを含む様々な病気に感染することを防ぐための対策をとることは,周知の課題であった。 そ 使用業務における針刺し事故が大きな社会問題と- 38 - なっており,医療従事者がAIDSを含む様々な病気に感染することを防ぐための対策をとることは,周知の課題であった。 そして,乙9-3・4・16~18明細書によれば,カニューレ又はカテーテルの分野において,カニューレ又はカテーテルを挿入するための針を使用した後は,安全のため,針を中空なハンドルの近い端に向かって引っ込めて収納するという技術は,周知であった。また,乙9-13~15公報・明細書によれば,注射器の分野において,注射針を使用した後は,注射針を覆うため,注射針を付勢手段により中空なハンドルの近い端に向かって引っ込めて収納するという技術も,周知であった。また,乙9-20・22公報・明細書によれば,注射器の分野において,付勢手段及びラッチを備え,注射針を付勢手段の力に抗して突出させた状態に保持しているラッチを手動で操作することにより,注射針を付勢手段の力により安全位置又は不使用位置に収納するという技術も,周知であった。また,乙9-21・23~25・29明細書・文献によれば,先端部を筒や管から突出させ,ラッチを用いて付勢手段の力に抗して一時的に止めているものを,手動でボタン等をごく短い距離だけ押し込んでラッチを外すことにより,先端部を付勢手段の力により筒や管に収納するという技術も,周知であった。 さらに,前記(4)(被告らの主張)アのとおり,乙9-30~40・49公報・明細書・文献によれば,針を患者の定位置にカニューレを案内し運ぶためのものとする技術も,周知慣用であった。 c 想到容易性- 39 - (a) 相違点(a)について前記(ア)b(a)のとおり,乙9-1公報記載の発明には,カニューレを患者の定位置 った。 c 想到容易性- 39 - (a) 相違点(a)について前記(ア)b(a)のとおり,乙9-1公報記載の発明には,カニューレを患者の定位置に案内し運ぶためのニードルがない。しかし,前記bのとおり,針を患者の定位置にカニューレを案内し運ぶためのものとすることは,周知慣用技術であった。このため,乙9-1公報記載の発明に周知慣用技術に係る上記ニードルを有する構成を組み合わせることは,当業者が容易に想到し得た。 (b) 相違点(b)について前記(ア)b(b)のとおり,乙9-1公報記載の発明には,ニードルハブを中空なハンドルの近い端に向かって付勢する付勢手段がなく,中空なハンドルをニードルハブのニードル連結部が中空なハンドルの近い端に向かって接近するように手動で移動させる親指ガードしかない。しかし,前記bのとおり,カニューレ又はカテーテルの分野において,カニューレ又はカテーテルを挿入するための針を使用した後は,安全のため,針を中空なハンドルの近い端に向かって引っ込めて収納することは,周知の技術であったから,中空なハンドルに替えてニードルハブを移動させるのは,設計事項にすぎない。本件訂正発明1の出願当時,医療従事者の注射器使用業務における針刺し事故が大きな社会問題となっており,医療従事者がAIDSを含む様々な病気に感染することを防ぐための対策をとることは,周知の課題であった。その状況下で,前記a(a)のとおり,乙9-2公報記載の発明には,上記付勢手段が開示されており,上記- 40 - 両発明は,同一の技術分野に属する。また,乙9-1公報に記載された発明に乙9-2公報記載の発明の構成を組み合わせることは,実現可能であるから,組合せの阻害要因もない。 おり,上記- 40 - 両発明は,同一の技術分野に属する。また,乙9-1公報に記載された発明に乙9-2公報記載の発明の構成を組み合わせることは,実現可能であるから,組合せの阻害要因もない。このため,乙9-1公報記載の発明に乙9-2公報記載の発明の上記付勢手段を有する構成を組み合わせることは,前記bの各周知技術も併せれば,当業者が容易に想到し得た。 (c) 相違点(c)について前記(ア)b(c)のとおり,乙9-1公報記載の発明には,ニードルハブから独立して移動可能であり,ニードルハブを付勢手段の力に抗して一時的に中空のハンドルの遠い端に隣接して保持するラッチであって,ニードルの長さよりも短い振幅で手動により駆動され,ニードルの移動距離よりも短い距離のみ移動するラッチがない。しかし,前記a(b)のとおり,乙9-2公報記載の発明には,上記ラッチが開示されており,両発明は,同一の技術分野に属する。また,前記(b)のとおり,乙9-1公報記載の発明と乙9-2公報記載の発明の構成の組合せには,阻害要因もない。このため,乙9-1公報記載の発明に乙9-2公報記載の発明の上記ラッチを有する構成を組み合わせることは,前記bの各周知技術も併せれば,当業者が容易に想到し得た。 (d) さらに,本件訂正発明1は,乙9-1・2両公報記載の発明や前記bの周知慣用技術から予測困難で顕著な効果を有しない。 (ウ) 小括- 41 - 以上によれば,本件訂正発明1は,乙9-1公報記載の発明に乙9-2公報記載の発明で開示された構成や周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に想到し得たものである。したがって,本件訂正発明1は,進歩性の欠如により特許を受けることができないものであるから 2公報記載の発明で開示された構成や周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に想到し得たものである。したがって,本件訂正発明1は,進歩性の欠如により特許を受けることができないものであるから(特許法29条2項),本件特許1の請求項1は特許無効審判で無効とされるべきものである。 イ乙9-1公報記載の発明と周知技術に基づく本件訂正発明1の想到容易性(ア) 本件訂正発明1と乙9-1公報記載の発明との対比乙9-1公報記載の発明と本件訂正発明1との相違点は,前記ア(ア)bのとおりである。 (イ) 相違点に係る構成の想到容易性a 乙9-3・4・13~18・20~25・29~40・43~49公報・明細書・文献記載の技術・課題乙9-3・4・13~18・20~25・29~40・43~49公報・明細書・文献記載の技術・課題は,前記ア(イ)bのとおりである。 b 乙9-5・6・10公報・明細書・文献記載の技術乙9-5・6・10公報・明細書・文献によれば,ナイフの分野において,安全のために,刃元を中空なハンドルの近い端に向かって付勢する付勢手段と,刃元から独立して移動可能であり,刃を付勢手段の力に抗して一時的に中空のハンドルの遠い端に隣接して保持するラ- 42 - ッチであって,刃の長さよりも短い振幅で手動により駆動され,刃の移動距離よりも短い距離のみ移動するラッチに関する技術は,周知であった。 c 想到容易性(a) 相違点(a)について前記ア(ア)b(a)のとおり,乙9-1公報記載の発明には,カニューレを患者の定位置に案内し運ぶためのニードルがない。しかし,前記ア(イ)c(a)のとおり,乙9-1公報記載の発明に周知慣 前記ア(ア)b(a)のとおり,乙9-1公報記載の発明には,カニューレを患者の定位置に案内し運ぶためのニードルがない。しかし,前記ア(イ)c(a)のとおり,乙9-1公報記載の発明に周知慣用技術に係る上記ニードルを有する構成を組み合わせることは,当業者が容易に想到し得た。 (b) 相違点(b)・(c)について前記ア(ア)b(b)のとおり,乙9-1公報記載の発明には,ニードルハブを中空なハンドルの近い端に向かって付勢する付勢手段がなく,中空なハンドルをニードルハブのニードル連結部が中空なハンドルの近い端に向かって接近するように手動で移動させる親指ガードしかない(相違点(b))。また,前記ア(ア)b(c)のとおり,乙9-1公報記載の発明には,ニードルハブから独立して移動可能であり,ニードルハブを付勢手段の力に抗して一時的に中空のハンドルの遠い端に隣接して保持するラッチであって,ニードルの長さよりも短い振幅で手動により駆動され,ニードルの移動距離よりも短い距離のみ移動するラッチがない(相違点(c))。しかし,前記ア(イ)c(b)のとおり,中空なハンドルに替えてニードルハブを移動させ- 43 - るのは,周知技術に基づき当業者が適宜行い得る設計事項にすぎない。本件訂正発明1の出願当時,医療従事者の注射器使用業務における針刺し事故が大きな社会問題となっており,医療従事者がAIDSを含む様々な病気に感染することを防ぐための対策をとることは,周知の課題であった。また,前記bのとおり,ナイフの分野において,安全のために,刃元を中空なハンドル近い端に向かって付勢する付勢手段と,刃元から独立して移動可能であり,刃を付勢手段の力に抗して一時的に中空のハンドルの遠い端に隣接して保持するラッチであって,刃の 安全のために,刃元を中空なハンドル近い端に向かって付勢する付勢手段と,刃元から独立して移動可能であり,刃を付勢手段の力に抗して一時的に中空のハンドルの遠い端に隣接して保持するラッチであって,刃の長さよりも短い振幅で手動により駆動され,刃の移動距離よりも短い距離のみ移動するラッチに関する技術は,周知であった。ニードルも刃も,ハンドルから突出した状態では危険であり,安全のため,使用後はハンドル内に収納するという技術的課題においては共通する。また,乙9-1公報記載の発明にナイフに関する上記周知技術を組み合わせることは,実現可能であるから,組合せの阻害要因もない。このため,乙9-1公報記載の発明に上記周知技術である付勢手段を有する構成や上記ラッチを有する構成を組み合わせることは,当業者が容易に想到し得た。 (c) さらに,本件訂正発明1は,乙9-1公報記載の発明や前記a・bの周知技術から予測困難で顕著な効果を有しない。 (ウ) 小括以上によれば,本件訂正発明1は,乙9-1公報記載の発明に周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に想到し得たものである。 - 44 - したがって,本件訂正発明1は,進歩性の欠如により特許を受けることができないものであるから(特許法29条2項),本件特許1の請求項1は特許無効審判で無効とされるべきものである。 ウ乙11-1公報記載の発明と周知技術に基づく本件発明2-1・3・5の想到容易性(ア) 本件発明2-1についてa 本件発明2-1と乙11-1公報記載の発明との対比乙11-1公報記載の発明の構成は,前記(5)(被告らの主張)アのとおりである。本件発明2-1と乙11-1公報記載の発明とを対比すると,本件発明2-1の 1-1公報記載の発明との対比乙11-1公報記載の発明の構成は,前記(5)(被告らの主張)アのとおりである。本件発明2-1と乙11-1公報記載の発明とを対比すると,本件発明2-1の構成要件2-1-A~E・Gは,乙11-1公報記載の発明の構成a~e・gに相当することは明らかであり,次の点で相違する。 本件発明2-1では,中空針が後退するエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段があるのに対し(構成要件2-1-F),乙11-1公報記載の発明では,後退の際のエネルギ吸収手段を有しているとは明記されていない点b 相違点に係る構成の想到容易性本件発明2-1の特許出願当時,乙11-2・3公報によれば,注射後に注射針を付勢手段により急速に後退させると,患者の組織が傷ついたり,注射針に付着していた物質が使用者の手や目にかかったり,衝撃により注射器を取り落としたりするなど,様々な危険な状況が生じ,これを防ぐための対策をとることは,周知の課題であった。そし- 45 - て,乙11-2公報には,注射後に針ホルダに連結したプランジャを自動的に後退させると,患者の組織が傷ついたり,患者の血液が吸引されたりするため,注射器本体とプランジャとの一方に弾性制動手段を配置し,プランジャと針の後退速度を遅らせる技術が開示されている。乙11-2公報の弾性制動手段が針の後退のエネルギーの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段に相当することは明らかである。そうすると,乙11-1公報記載の発明において,上記周知の課題を解決するために,乙11-2公報記載の技術を適用して相違点に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得ることである。したがって,本件発明2-1は,乙11-1公報記載の発明と乙11-2公報記載 題を解決するために,乙11-2公報記載の技術を適用して相違点に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得ることである。したがって,本件発明2-1は,乙11-1公報記載の発明と乙11-2公報記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 また,乙11-4~11公報によれば,エネルギ吸収手段として,柔軟性や弾性,粘性を有する部材を用いて衝撃を吸収するという技術は,周知であった。また,乙11-12~14公報・明細書によれば,注射器の分野において,ばねとラッチを備え,使用後にはばねにより針と針ホルダーを注射器本体内に後退させるという技術は,周知であった。また,乙11-15~18公報・明細書によれば,注射器の分野において,ばねとラッチを備え,ばねにより針と針ホルダーを移動させるという技術も,周知であった。さらに,乙11-19~25公報・文献によれば,急速な移動による危険を防止するために緩衝器等のエネルギ吸収手段を用いるという技術は,周知であった。 - 46 - そうすると,本件発明2-1は,乙11-1公報記載の発明に前記周知のエネルギ吸収手段を適用して当業者が容易に想到し得たものである。 (イ) 本件発明2-3について本件発明2-3は,本件発明2-1に対して「前記エネルギ吸収手段が,前記針と前記ハンドルの内部孔とのうちの一方に固定された表面と,前記針と前記内部孔とのうちの他方に担持されて前記表面に圧接し,前記後退の間に摩擦を生ずる要素とを備える」と限定したものであり,乙11-1公報記載の発明では,それがない点が相違点となる。 そして,本件発明2-3は,本件発明2-1と同様に,乙11-1公報記載の発明に乙11-2公報記載の技術及び周知 たものであり,乙11-1公報記載の発明では,それがない点が相違点となる。 そして,本件発明2-3は,本件発明2-1と同様に,乙11-1公報記載の発明に乙11-2公報記載の技術及び周知技術を組み合わせることにより当業者が容易に想到し得たものである。 (ウ) 本件発明2-5について本件発明2-5は,本件発明2-1に対して「前記中空のハンドルは,前記針がそれに向かって後退する端部構造を有し,前記エネルギ吸収手段は,前記針と前記端部構造とうちの一方に固定されて前記端部構造に対する前記針の衝撃の一部を吸収する押し潰し可能な要素を有する」と限定したものであり,乙11-1公報記載の発明では,それがない点が相違点となる。 そして,本件発明2-5は,本件発明2-1と同様に,乙11-1公報記載の発明に乙11-2公報記載の技術及び周知技術を組み合わせることにより当業者が容易に想到し得たものである。 - 47 - (エ) 小括以上によれば,本件発明2-1・3・5は,乙11-1公報記載の発明に乙11-2公報記載の技術及び周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に想到し得たものであり,進歩性の欠如により特許を受けることができないものである。したがって,本件特許2の請求項1・3・5は,特許無効審判で無効とされるべきものである。 エ乙11-1公報記載の発明と周知技術に基づく本件発明2-7・8の想到容易性(ア) 本件発明2-7についてa 本件発明2-7と乙11-1公報記載の発明との対比乙11-1公報記載の発明は,前記(5)(被告らの主張)アのとおりである。本件発明2-7と乙11-1公報記載の発明とを対比すると,本件発明2-7では, 11-1公報記載の発明との対比乙11-1公報記載の発明は,前記(5)(被告らの主張)アのとおりである。本件発明2-7と乙11-1公報記載の発明とを対比すると,本件発明2-7では,中空針の中からの血液を収容するとともに,中空針の後退によって生じる力に抗して,中空針が後退する間と中空針の後退の後に,血液を確実に保持するための収容/保持手段があるのに対し(構成要件2-7-B),乙11-1公報記載の発明では,それがない点で相違する。仮にキャリヤブロックの外面や後面が構成要件2-7-Aの引用する本件発明2-1の構成要件2-1-Fに相当しなければ,乙11-1公報記載の発明と本件発明2-7とは,上記相違点に加え,本件発明2-7では,中空針が後退するエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段があるのに対し(構成要件2-7-A),乙11-1公報記載の発明では,それがない点においても相違- 48 - する。 b 相違点に係る構成の想到容易性乙16-6~9公報・明細書によれば,カテーテルを体内に挿入するための針を使用した後に後退させる方式のカテーテルの分野において,挿入針の中からの血液を収容保持するフラッシュバック室を針のハブ内に設けることは周知の技術であり,この周知の技術を構成するフラッシュバック室が構成要件2-7-Bの「前記中空針の中からの血液を収容する共に,前記後退によって生ずる力に抗して,前記針が後退する間に及び該後退の後に,前記血液を確実に保持するための収容/保持手段」に相当することは明らかである。乙11-1公報記載の発明においても,針が血管内に適正に穿刺されたことを確認するためにフラッシュバック室を設けることは,当然の課題であったから,乙11-1発明に乙16-6~9公報・明細書に記載 る。乙11-1公報記載の発明においても,針が血管内に適正に穿刺されたことを確認するためにフラッシュバック室を設けることは,当然の課題であったから,乙11-1発明に乙16-6~9公報・明細書に記載された周知技術を組み合わせることは,当業者が容易に想到し得た。 仮に本件発明2-7が中空針の後退するエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段を有する点も乙11-1公報記載の発明との相違点であるとしても,前記ウ(ア)bのとおり,周知のエネルギ吸収手段を適用して当業者が容易に想到し得たものである。 (イ) 本件発明2-8についてa 本件発明2-8と乙11-1公報記載の発明との対比構成要件2-8-Bの「前記収容/保持手段」の意味が不明であるが,ここでは構成要件2-7-Bの「収容/保持手段」を指すものと- 49 - して対比することとする。そうすると,本件発明2-8では,収容/保持手段が中空針の後退によって生じる力から室の内部を隔離するための隔離手段を備えるのに対し(構成要件2-8-B),乙11-1公報記載の発明では,それがない点で相違する。仮にキャリヤブロックの外面や後面が構成要件2-8-Aの引用する本件発明2-1の構成要件2-1-Fに相当しなければ,乙11-1公報記載の発明と本件発明2-8とは,上記相違点に加え,本件発明2-8では,中空針が後退するエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段があるのに対し(構成要件2-8-A),乙11-1公報記載の発明では,それがない点においても相違する。 b 相違点に係る構成の想到容易性本件明細書2の記載によれば,構成要件2-8-Bの「収容/保持手段」とは,少なくとも針と共に運動するように固定することにより血液と る。 b 相違点に係る構成の想到容易性本件明細書2の記載によれば,構成要件2-8-Bの「収容/保持手段」とは,少なくとも針と共に運動するように固定することにより血液と針との間に相対的な運動を生じさせないようにして血液を保持するものであり,同構成要件の「隔離手段」は,空気を比較的ゆっくりと透過させるフィルタの形質,空気を通気するための細かい通路の形態を含むものと解される。乙11-6~9公報・明細書によれば,カテーテルを体内に挿入するための挿入針を使用後に後退させる方式のカテーテルにおいて,フラッシュバック室を針のハブ内部に設け,フラッシュバック室のプラグとして,空気は透過するが,血液は透過しない多孔質の材料とすることは周知の技術である。そして,多孔質のプラグは,空気を通気するための細かい通路の形態であり,空気を- 50 - 比較的ゆっくりと透過させるフィルタといえることは明らかである。 さらに,乙11-7~9公報によれば,これらの技術は,カテーテルからの血液の漏洩のために,医療従事者が患者の血液と接触することを防止するための技術であることは自明である。 そうすると,乙11-1公報記載の発明において,針が血管内に適正に穿刺されたことを確認するためのフラッシュバック室を設けようとする当然の課題を解決し,また,医療従事者が患者の血液と接触することを防止するために,乙11-6~9公報・明細書に記載された周知のフラッシュバック室を採用することは当業者が容易に想到し得るものである。そして,当該フラッシュバック室は,空気は透過するが,血液は透過しない多孔型のプラグを有するものであるから,隔離手段を有するものである。 仮に本件発明2-8が中空針の後退するエネルギの一部を吸収するための ック室は,空気は透過するが,血液は透過しない多孔型のプラグを有するものであるから,隔離手段を有するものである。 仮に本件発明2-8が中空針の後退するエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段を有する点も乙11-1公報記載の発明との相違点であるとしても,前記ウ(ア)bのとおり,周知のエネルギ吸収手段を適用して当業者が容易に想到し得たものである。 c なお,本件訂正発明2-8についても,当業者が容易に想到し得たものであることは,上に述べたところと同じである。 (ウ) 小括以上によれば,本件発明2-7・8は,乙11-1公報記載の発明に周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に想到し得たものであり,進歩性の欠如により特許を受けることができないものである。し- 51 - たがって,本件特許2の請求項7・8は,特許無効審判で無効とされるべきものである。 (原告の主張)ア乙9-1・2両公報記載の発明と周知技術に基づく本件訂正発明1の想到容易性について(ア) 本件訂正発明1と乙9-1公報記載の発明との対比についてa 乙9-1公報記載の発明について本件訂正発明1の「中空のハンドル」とは,カニューレ挿入や皮下注射等における一連の操作を行う際に手で握られる部分を意味し,移動しない。これに対し,乙9-1公報記載の発明は,これに対応する米国出願の継続出願に基づく米国再発行特許第36398号明細書のとおり,注射器胴部がある皮下注射針に適用され,注射器胴部又はこれに取り付けられたハウジングが手で握られる部分となり,「さや」は指で滑動させられる部分となる。「さや」は,これと合体した自動ばね栓がハウジングに当接して止まっているだけで,安定し 注射器胴部又はこれに取り付けられたハウジングが手で握られる部分となり,「さや」は指で滑動させられる部分となる。「さや」は,これと合体した自動ばね栓がハウジングに当接して止まっているだけで,安定しないし,手で握られるほどの長さもないから,握ることもできない。このため,乙9-1公報に記載された「さや」は,本件訂正発明1の「中空のハンドル」に相当しない。注射器胴部又は「ハウジング」が「中空のハンドル」及び「ニードルハブ」に相当する。 また,親指ガードや自動ばね栓も,「付勢手段」や「ラッチ」に相当しない。 したがって,乙9-1公報記載の発明は,次のとおりとなる。 - 52 - (a) 近い端及び遠い端を有するさやと,(b) 該さやが外側に取り付けられたハウジングと,(c) 鋭い自由端と,前記ハウジングに連結された固着端とを有する針と,(d) から成る,カニューレ挿入のための安全装置。 b 本件訂正発明1と乙9-1公報記載の発明との相違点について本件訂正発明1と乙9-1公報記載の発明とは,次の5点で相違する。なお,(e)につき,乙9-1公報記載の発明に,ハウジングの針連結部を一時的にさやの遠い端に保持する固着手段はない。 (a) 本件訂正発明1では,中空のハンドルがあるのに対し(構成要件1-A),乙9-1公報記載の発明では,さやである点(b) 本件訂正発明1では,中空のハンドル内に配置されたニードルハブがあるのに対し(構成要件1-B),乙9-1公報記載の発明では,中空のハンドルを兼ねたハウジングがあるだけで,中空のハンドル内に配置されたハウジングがない点(c) 本件訂正発明1では, あるのに対し(構成要件1-B),乙9-1公報記載の発明では,中空のハンドルを兼ねたハウジングがあるだけで,中空のハンドル内に配置されたハウジングがない点(c) 本件訂正発明1では,鋭い自由端と,ニードルハブに連結された固着端とを有し,カニューレを患者の定位置に案内し運ぶためのニードルがあるのに対し(構成要件1-C),乙9-1公報記載の発明では,鋭い自由端と,前記ハウジングに連結された固着端とを有する針しかない点(d) 本件訂正発明1では,ニードルハブを中空なハンドルの近い端に向かって付勢する付勢手段があるのに対し(構成要件1-D),乙- 53 - 9-1公報記載の発明では,それがない点(e) 本件訂正発明1では,ニードルハブから独立して移動可能であり,ニードルハブを付勢手段の力に抗して一時的に中空のハンドルの遠い端に隣接して保持するラッチであって,ニードルの長さよりも短い振幅で手動により駆動され,ニードルの移動距離よりも短い距離のみ移動するラッチがあるのに対し(構成要件1-E),乙9-1公報記載の発明では,それがない点(イ) 相違点に係る構成の想到容易性についてa 乙9-2公報記載の発明について乙9-2公報記載の発明は,一方の手のみで患者の組織のサンプルを吸引し得るよう,可動コアとプランジャが後退するだけであって,皮下注射針は後退しないから,安全装置に関するものとはいえない。 乙9-2公報記載の発明は,患者内にあった針との接触を防ぐという本件訂正発明1の課題を有しないから,乙9-2公報に記載された「可動コア」,「プランジャ」,「圧縮空気」又は「圧縮されていたスプリング」,「突起」及び「戻り止め」は,本件訂正発明1の「ニードル」,「ニードルハブ」,「付勢 しないから,乙9-2公報に記載された「可動コア」,「プランジャ」,「圧縮空気」又は「圧縮されていたスプリング」,「突起」及び「戻り止め」は,本件訂正発明1の「ニードル」,「ニードルハブ」,「付勢手段」,「ラッチ」にいずれも相当しない。仮に「可動コア」,「突起」及び「戻り止め」が「ニードル」,「ラッチ」にそれぞれ相当するとしても,可動コアは,組織のサンプルを抽出するのに必要な程度移動するだけであって,具体的な記載もないから,突起及び戻り止めが可動コアの移動距離よりも短い距離のみ移動するとはいえない。 - 54 - b 乙9-3・4・13~18・20~25・29~40・43~49公報・明細書・文献記載の技術・課題について乙9-3明細書は,カテーテルを傷つけないよう,後退させた針先を固定する技術を開示しているにすぎない。乙9-4明細書は,カテーテルに静脈注入セットを接続する際に血液が漏れないよう,カテーテルと静脈注入セットをあらかじめ接続し,静脈穿刺針はハウジング内に後退させる技術を開示しているにすぎない。乙9-13明細書は,針を損傷や汚染から保護するとともに,患者が針を見ることによる不安等を取り除くことを,乙9-14明細書と乙9-15公報は,糖尿病等の患者が自分で注射や採血を行えるようにすることを,それぞれ課題とした技術を開示しているにすぎない。いずれも本件訂正発明1や乙9-1公報記載の発明のような医療関係者による注射針への誤接触による感染からの保護を課題とした技術を開示するものではない。 特に,乙9-14明細書や乙9-15公報は,レバーを倒したり制御ラッチを動かしたりすると,一連の動作として,針が出て穿刺した後に針が戻る技術を開示するものであるから,独立した動作によって針を後退させるという本件訂正 細書や乙9-15公報は,レバーを倒したり制御ラッチを動かしたりすると,一連の動作として,針が出て穿刺した後に針が戻る技術を開示するものであるから,独立した動作によって針を後退させるという本件訂正発明1に対応した構成を有するものでもない。 乙9-16~18明細書は,カニューレや針を後退させる技術を開示しているにすぎず,カニューレ又はカテーテルを挿入するための針を後退させる技術を開示するものではない。乙9-20公報は,針の移動距離よりも針を後退させる翼の移動距離の方が長いから,翼が針- 55 - の移動距離よりも短い距離のみ移動するという本件訂正発明1に対応した構成を有するものではない。乙9-21明細書も,スライド部材を移動させるものであって,固定部材を移動させるという本件訂正発明1に対応した構成を有するものではない。 乙9-22~25・29明細書・文献は,ペレットを動物の皮下に埋め込む装置や筆記具に関するものであって,技術分野が異なる。 c 想到容易性について(a) 相違点(a)について前記(ア)b(a)のとおり,本件訂正発明1では中空のハンドルがあるのに対し,乙9-1公報記載の発明ではさやである。乙9-1公報記載の発明の「さや」は,針にかぶせるキャップの代わりにあらかじめ備え付けられたものであり,これを「①取っ手。把手。②手で機械を操作するための握り。特に,自動車・自転車等の方向操縦用のもの。」を意味する「ハンドル」に変更する動機付けとなり得るものはなかった。このため,乙9-1公報記載の発明のさやの構成を中空のハンドルの構成(構成要件1-A)に変更することは,当業者が容易に想到し得なかった。 (b) 相違点(b)について前記(ア)b 。このため,乙9-1公報記載の発明のさやの構成を中空のハンドルの構成(構成要件1-A)に変更することは,当業者が容易に想到し得なかった。 (b) 相違点(b)について前記(ア)b(b)のとおり,乙9-1公報記載の発明には,中空のハンドル内に配置されたハウジングがない。乙9-1公報記載の発明の「ハウジング」は,針基の機能を有するとともに,握りというハンドルの機能も有しているため,これをさや内に配置する動機付- 56 - けとなり得るものはなかった。このため,乙9-1公報記載の発明に中空のハンドル内に配置されたハウジングを有する構成(構成要件1-B)を組み合わせることは,当業者が容易に想到し得なかった。 (c) 相違点(c)について前記(ア)b(c)のとおり,乙9-1公報記載の発明には,カニューレを患者の定位置に案内し運ぶためのニードルがない。このため,乙9-1公報記載の発明に上記ニードルを有する構成(構成要件1-C)を組み合わせることは,当業者が容易に想到し得なかった。 (d) 相違点(d)について前記(ア)b(d)のとおり,乙9-1公報記載の発明には,ニードルハブを中空なハンドルの近い端に向かって付勢する付勢手段がない。そもそも乙9-1公報記載の発明は,さやを移動させるものであって,ハウジングを移動させるものでなく,移動対象の選択が設計事項とはいえない。前記aのとおり,乙9-2公報記載の発明は,安全装置に関するものとはいえず,技術分野が異なるから,「圧縮空気」又は「圧縮されていたスプリング」も本件訂正発明1の「付勢手段」に相当しない。また,注射器等に取り付けられる乙9-1公報記載の発明に注射器である乙9-2公報記載の発明の構成を組み合わせると 空気」又は「圧縮されていたスプリング」も本件訂正発明1の「付勢手段」に相当しない。また,注射器等に取り付けられる乙9-1公報記載の発明に注射器である乙9-2公報記載の発明の構成を組み合わせると,さやが注射器等に対して大きくなりすぎてしまう上,圧縮空気又は圧縮されていたスプリングがハウジングとこれに取り付けられた注射器胴部を付勢することになって,非現実的かつ危険- 57 - であり,組合せの阻害要因がある。乙9-13~15・20~25・29公報・明細書・文献記載の技術も,技術分野・課題・構成が異なる。このため,乙9-1公報記載の発明に上記付勢手段を有する構成(構成要件1-D)を組み合わせることは,当業者が容易に想到し得なかった。 (e) 相違点(e)について前記(ア)b(e)のとおり,乙9-1公報記載の発明には,ニードルハブから独立して移動可能であり,ニードルハブを付勢手段の力に抗して一時的に中空のハンドルの遠い端に隣接して保持するラッチであって,ニードルの長さよりも短い振幅で手動により駆動され,ニードルの移動距離よりも短い距離のみ移動するラッチがない。前記aのとおり,乙9-2公報記載の発明は,安全装置に関するものとはいえず,技術分野が異なる上,「突起」及び「戻り止め」も本件訂正発明1の「ラッチ」に相当しない。また,前記(d)のとおり,乙9-1公報記載の発明と乙9-2公報記載の発明の構成の組合せには,阻害要因がある。乙9-13~15・20~25・29公報・明細書・文献記載の技術も,技術分野・課題・構成が異なる。このため,乙9-1公報記載の発明に上記ラッチを有する構成(構成要件1-E)を組み合わせることは,当業者が容易に想到し得なかった。 (ウ) 小括以上によれば, 成が異なる。このため,乙9-1公報記載の発明に上記ラッチを有する構成(構成要件1-E)を組み合わせることは,当業者が容易に想到し得なかった。 (ウ) 小括以上によれば,本件訂正発明1は,当業者が乙9-1公報記載の発明,- 58 - 乙9-2公報記載の発明及び周知技術から容易に想到し得なかったものであり,進歩性を有する。したがって,本件特許1の請求項1は,特許無効審判で無効とされるべきものではない。 イ乙9-1公報記載の発明と周知技術に基づく本件訂正発明1の想到容易性について(ア) 本件訂正発明1と乙9-1公報記載の発明との対比について乙9-1公報記載の発明と本件訂正発明1との相違点は,前記ア(ア)bのとおりである。 (イ) 相違点に係る構成の想到容易性についてa 乙9-5・6・10公報・明細書・文献記載の技術について乙9-5・6・10公報・明細書・文献は,いずれも操作部の操作により刃等の出し入れを行う技術を開示するものであるから,技術分野が異なる上,刃等をケース等に収納した後はこれを再度出すことはせず,刃等との接触を防ぐという本件訂正発明1に対応した課題や構成を有するものではない。 b 想到容易性について前記ア(イ)c(a)・(b)のとおり,乙9-1公報記載の発明のさやの構成を中空のハンドルの構成(構成要件1-A)に,中空のハンドル内に配置されたハウジングがない構成をある構成(構成要件1-B)に,それぞれ変更することは,いずれも当業者が容易に想到し得なかった。 また,前記ア(ア)b(d)・(e)のとおり,乙9-1公報記載の発明- 59 - には,ニードルハブを中空なハンドルの近い端に向かって付 ずれも当業者が容易に想到し得なかった。 また,前記ア(ア)b(d)・(e)のとおり,乙9-1公報記載の発明- 59 - には,ニードルハブを中空なハンドルの近い端に向かって付勢する付勢手段や,ニードルハブから独立して移動可能であり,ニードルハブを付勢手段の力に抗して一時的に中空のハンドルの遠い端に隣接して保持するラッチであって,ニードルの長さよりも短い振幅で手動により駆動され,ニードルの移動距離よりも短い距離のみ移動するラッチがない。前記ア(イ)b・前記aのとおり,乙9-5・6・10・13~15・20~25・29公報・明細書・文献記載の技術は,技術分野・課題・構成が異なる。このため,乙9-1公報記載の発明に上記付勢手段を有する構成(構成要件1-D)や上記ラッチを有する構成(構成要件1-E)を組み合わせることは,当業者が容易に想到し得なかった。 (ウ) 小括以上によれば,本件訂正発明1は,当業者が乙9-1公報記載の発明及び周知技術から容易に想到し得なかったものであり,進歩性を有する。 したがって,本件特許1の請求項1は,特許無効審判で無効とされるべきものでない。 ウ乙11-1公報記載の発明と周知技術に基づく本件発明2-1・3・5の想到容易性について(ア) 本件発明2-1・3・5と乙11-1公報記載の発明との対比について本件発明2-1では,中空針の軸よりも実質的に短い距離だけ簡単かつ単一の動作による手操作で中空針の鋭利な端部を人の指が届かない- 60 - ように中空のハンドルの中へ実質的に永続的に後退させるエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段があるのに対し(構成要件2-1-F),乙11-1公報記載の発明では,それがない点で相違する。 乙11-1 中空のハンドルの中へ実質的に永続的に後退させるエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段があるのに対し(構成要件2-1-F),乙11-1公報記載の発明では,それがない点で相違する。 乙11-1公報記載の発明と本件発明2-3・5との相違点は,被告らが主張する前記(被告らの主張)ウ(イ)・(ウ)のとおりである。 (イ) 相違点に係る構成の想到容易性についてa 乙11-2~25公報・明細書・文献記載の技術・課題について乙11-2公報は,初期状態から針が本体内に入るまでの間にプランジャを2往復させるという複雑な複数の動作を要する技術を開示したものであり,簡単な単一の動作で中空針の鋭利な端部を後退させる本件発明2-1・3・5に対応した構成を有するものではない。 乙11-4~11公報は,技術分野が異なる。 乙11-12公報は,テーパー付き部材が中空針の後退するエネルギーの全部を吸収して停止させる技術を開示しているものであって,中空針の後退するエネルギーの一部を吸収して遅らせる本件発明2-1・3・5に対応した構成を有するものではない。 乙11-13明細書記載の技術では,保持フィンガーが搬送部の後退するエネルギーをほとんど吸収せず,搬送部の引込みバレルへの衝突によって望ましくない騒音が発生するから,中空針の後退するエネルギーの一部を吸収して遅らせる本件発明2-1・3・5に対応した構成を有するものではない。 乙11-15公報記載の技術は,針がない。 - 61 - 乙11-16・17公報・明細書は,針が伸張したりピストンが前方に移動したりする際のエネルギーを吸収する技術を開示するものであって,針の後退するエネルギーを吸収する本件発明2 - 乙11-16・17公報・明細書は,針が伸張したりピストンが前方に移動したりする際のエネルギーを吸収する技術を開示するものであって,針の後退するエネルギーを吸収する本件発明2-1・3・5に対応した構成を有するものではない。 乙11-18明細書は,ピストン又はプランジャに形成された溝にシリンダの内壁に圧接するリングを設ける技術を開示するものであって,針に人が接触しないように保護するための安全装置に関するものではない。 乙11-19~25公報・文献は,技術分野が異なる。 b 想到容易性について前記(ア)のとおり,乙11-1公報記載の発明には,中空針の軸よりも実質的に短い距離だけ簡単かつ単一の動作による手操作で中空針の鋭利な端部を人の指が届かないように中空のハンドルの中へ実質的に永続的に後退させるエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段がない。また,乙11-1公報記載の発明には,中空針と中空のハンドルの内部孔とのうちの一方に固定された表面と,中空針と上記内部孔とのうちの他方に担持されて上記表面に圧接し,中空針が後退する間に摩擦を生じる要素を有するエネルギ吸収手段がない。さらに,乙11-1公報記載の発明には,中空針と端部構造とのうちの一方に固定されて上記端部構造に対する中空針の衝撃の一部を吸収する押し潰し可能な要素を有するエネルギ吸収手段もない。前記aのとおり,乙11-2~25公報・明細書・文献記載の技術は,技術分野・課題・- 62 - 構成が異なる。このため,乙11-1発明に,上記各エネルギ吸収手段を有する構成(構成要件2-1-F,2-3-B・C,2-5-C)を組み合わせることは,当業者が容易に想到し得なかった。 加えて,本件発明 ため,乙11-1発明に,上記各エネルギ吸収手段を有する構成(構成要件2-1-F,2-3-B・C,2-5-C)を組み合わせることは,当業者が容易に想到し得なかった。 加えて,本件発明2-1の実施品としてエネルギ吸収手段に粘性物質のジェルを用いた「オートガード」は,ジェルを用いない比較品に比べて,針基の後退する速度や音,振動が著しく小さくなったところ,これは,乙11-1~25公報・明細書・文献から予測困難で顕著な効果である。 (ウ) 小括以上によれば,本件発明2-1・3・5は,当業者が乙11-1公報記載の発明,乙11-2公報記載の発明及び周知技術から容易に想到し得なかったものであり,進歩性を有する。したがって,本件特許2の請求項1・3・5は,特許無効審判で無効とされるべきものではない。 エ乙11-1公報記載の発明と周知技術に基づく本件発明2-7・8の想到容易性について(ア) 本件発明2-7・8と乙11-1公報記載の発明との対比について本件発明2-7・8と乙11-1公報記載の発明との相違点は,被告らが主張する前記(被告らの主張)エ(ア)a・(イ)aに加えて,前記ウ(ア)のとおり,本件発明2-7・8では,中空針の軸よりも実質的に短い距離だけ簡単かつ単一の動作による手操作で中空針の鋭利な端部を人の指が届かないように中空のハンドルの中へ実質的に永続的に後退させるエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段があるのに対し(構成- 63 - 要件2-7・8-各A),乙11-1公報記載の発明では,それがない点である。 (イ) 相違点に係る構成の想到容易性についてa 乙16-6~9公報・明細書記載の技術について乙16-6明細書は,血 公報記載の発明では,それがない点である。 (イ) 相違点に係る構成の想到容易性についてa 乙16-6~9公報・明細書記載の技術について乙16-6明細書は,血液がフラッシュ漏洩するという本件発明2-7・8に対応した課題を有するものでなく,仮にフラッシュ漏洩するとしても,上記課題を解決する構成を開示していない。 乙16-7・8公報は,針をハンドルの中へ後退させる技術を開示するものでない上,血液がフラッシュ漏洩するという本件発明2-7・8に対応した課題やこれを解決する構成を有するものではない。 乙16-9公報は,針先を人の指が届かないようにハウジングの中へ実質的に永続的に後退させるという本件発明2-7・8に対応した構成を有するものではない。 b 想到容易性について前記(ア)のとおり,乙11-1公報記載の発明には,中空針の中からの血液を収容するとともに,中空針の後退によって生じる力に抗して,中空針が後退する間と中空針の後退の後に,血液を確実に保持するための収容/保持手段がない。また,乙11-1公報記載の発明には,仮に収容/保持手段があったとしても,これが中空針の後退によって生じる力から室の内部を隔離するための隔離手段がない。前記aのとおり,乙16-6~9公報・明細書記載の技術は,課題・構成が異なる。このため,乙11-1公報記載の発明に,上記収容/保持手- 64 - 段や上記隔離手段を組み合わせることは,当業者が容易に想到し得なかった。 また,乙11-1公報記載の発明には,中空針の軸よりも実質的に短い距離だけ簡単かつ単一の動作による手操作で中空針の鋭利な端部を人の指が届かないように中空のハンドルの中へ実質的に永続的に後退さ また,乙11-1公報記載の発明には,中空針の軸よりも実質的に短い距離だけ簡単かつ単一の動作による手操作で中空針の鋭利な端部を人の指が届かないように中空のハンドルの中へ実質的に永続的に後退させるエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段がない。 しかし,前記ウ(イ)bのとおり,乙11-1公報記載の発明に,上記エネルギ吸収手段を有する構成を組み合わせることも,当業者が容易に想到し得なかった。 c なお,本件訂正発明2-8についても,当業者が容易に想到し得なかったものであることは,上に述べたところと同じである。 (ウ) 小括以上によれば,本件発明2-7・8は,当業者が乙11-1公報記載の発明及び周知技術から容易に想到し得なかったものであり,進歩性を有する。したがって,本件特許2の請求項7・8は,特許無効審判で無効とされるべきものではない。 (8) 争点⑧(被告らの責任及び損害)(原告の主張)被告らは,前記第2の1(4)のとおり,平成19年5月以降,共同して本件特許権1・2を侵害する被告製品を製造し,販売し,輸出してきたから,共同不法行為により,次の損害につき,原告に対する損害賠償責任を負う。 ア特許法102条3項による損害額 7億4280万円- 65 - 被告製品の売上高は,少なくとも49億5200万円を下らない。 本件各発明の実施料率は,本件各発明がいずれも針刺し事故を防止する安全装置の提供を目的とする発明群を構成しているため,一括して定められるべきである。そして,医療器具に関する実施料率の相場は高いこと,針刺し防止機構のある留置針の方が針刺し防止機構のない留置針よりも需要が著しく伸びていること,被告製品の利益率は約 ,一括して定められるべきである。そして,医療器具に関する実施料率の相場は高いこと,針刺し防止機構のある留置針の方が針刺し防止機構のない留置針よりも需要が著しく伸びていること,被告製品の利益率は約51.7%もあると推定されるところ,一般に実施料率は利益率の3分の1ないし4分の1を参考値として定められること等から,15%を下らない。 なお,被告製品には,止血弁が付いているが,被告らの製造・販売していた留置針に元から付いていたものであり,被告らは,被告製品の販売開始後,被告製品への切替えを急激に進めてきたことからすると,本件各発明の寄与度は少なくない。 したがって,特許法102条3項による損害額は,49億5200万円に0.15を乗じた7億4280万円を下らないというべきである。 イ弁護士費用 7428万円ウよって,原告は,被告らに対し,特許法100条1項に基づき,被告製品の製造,譲渡,輸出及び譲渡申出の差止めを求めるとともに,連帯して特許権侵害の共同不法行為に基づく損害賠償金として,上記ア・イの合計8億1708万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成20年11月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告らの主張)- 66 - 争う。なお,被告製品の売上高は,本件特許権1が消滅した平成20年4月28日までが「●(省略)●」,同月29日から平成22年7月29日までが「●(省略)●」の「●(省略)●」である。 本件各発明の実施料率は,発明ごとに定められるべきである。本件訂正発明1は,従来の静脈留置針にボールペン等に用いられる安全装置を付けただけであるから,2%を超えることはない。本件 である。 本件各発明の実施料率は,発明ごとに定められるべきである。本件訂正発明1は,従来の静脈留置針にボールペン等に用いられる安全装置を付けただけであるから,2%を超えることはない。本件発明2-1・3・5・7・8も,本件発明1の改良発明にすぎず,仮に進歩性があっても著しく低いから,0.5%を超えることはない。むしろ被告製品の売上げは,被告製品が手の平に収まるちょうど良い大きさであることやカテーテルに逆流防止弁が付いていることによるものである。 第3 当裁判所の判断 1 争点①(被告製品の構成)について(1) 構成要件1-Eに対比した構成(1-e)について別紙物件説明書記載2(2)エ・カ~クのとおり,被告製品は,針基の移動方向と垂直方向に移動可能であり,針基をばねの力に抗して一時的に内管の先端に隣接して保持する移動レバーであって,中空針の長さに比べて短い距離のみ指で押し込まれると,内管の後端までの中空針の移動距離よりも短い距離のみ移動する移動レバーを有する。 (2) 構成要件2-1-Eに対比した構成(2-1-e)について別紙物件説明書記載2(2)カ・キのとおり,被告製品は,指で移動レバーの天井部にあるボタンを押し込むことによって中空針の固定手段が解除され,ばねにより中空針の鋭利な端部に人の指が届かないように中空針を内管の中- 67 - へ実質的に永続的に後退させるという解除/後退手段であって,中空針の軸の長さに比べて短い距離のみ指で押し込むことによって手操作で作動可能な解除/後退手段を有する。 (3) 構成要件2-1-Fに対比した構成(2-1-f)について別紙物件説明書記載2(2)クのとおり,被告製品では,中空針に連結する針基の後端に,内管の後端の栓に対する中空針の衝 。 (3) 構成要件2-1-Fに対比した構成(2-1-f)について別紙物件説明書記載2(2)クのとおり,被告製品では,中空針に連結する針基の後端に,内管の後端の栓に対する中空針の衝撃の一部を吸収する弾性部品がはめ付けられるとともに,その弾性部品が内管の内部孔に固定された内周面に圧接する弾性部品がはめ付けられている。また,証拠(甲7)によれば,上記弾性部品は,押しつぶし可能なシリコンゴム製であるとともに,少なくとも3㎝後退するまでは内管の内周面に圧接し,中空針の後退の間に摩擦を生じることが認められる。 したがって,被告製品の内管の内周面及び弾性部品は,中空針が後退するエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段に当たるといえる。 (4) 構成要件2-3-A~Cに対比した構成(2-3-a~c)について被告製品は,前記第2の1(5)ウのとおり,2-1-a~d・gの構成を有する安全装置であるとともに,前記(2)・(3)のとおり,2-1-e・fの構成を有するから,2-1-a~gの構成を有する安全装置であり,2-3-aの構成を有する。 また,前記(3)のとおり,被告製品は,エネルギ吸収手段として,内管の内部孔に固定された内周面を有するから,2-3-bの構成を有するとともに,中空針に連結する針基に担持されて上記内周面に圧接し,中空針の後退の間に摩擦を生ずる弾性部品を有するから,2-3-cの構成も有する。 - 68 - (5) 構成要件2-5-A・Cに対比した構成(2-5-a・c)について被告製品は,前記(4)のとおり,2-1-a~gの構成を有する安全装置であり,2-5-aの構成を有する。 また,前記(3)のとおり,被告製品は,エネルギ吸収手段として,中空針に連結する針 被告製品は,前記(4)のとおり,2-1-a~gの構成を有する安全装置であり,2-5-aの構成を有する。 また,前記(3)のとおり,被告製品は,エネルギ吸収手段として,中空針に連結する針基に固定されて栓に対する中空針の衝撃の一部を吸収する押しつぶし可能な弾性部品を有するから,2-5-cの構成を有する。 (6) 構成要件2-7-A・Bに対比した構成(2-7-a・b)について被告製品は,前記(4)のとおり,2-1-a~gの構成を有する安全装置であり,2-7-aの構成を有する。 また,別紙物件説明書記載2(2)ア・エのとおり,被告製品では,中空針の中からの血液が,針基内に流入した後,針基にある穴とこれに向かい合って密着した内管の穴を通って,内管と外管の間にあるフラッシュバック室に流入する。そして,弁論の全趣旨によれば,針基は,相当の容積があり,フラッシュバック室と共に,中空針の中からの血液を収容し得ること,針基からフラッシュバック室に通じる穴が針基の後部上面の位置にあることが認められる。そして,証拠(甲16・25の各1・2)によれば,針基とフラッシュバック室は,中空針の後退の際に生じる血液と中空針との相対的な運動による影響を受けることを阻止して,中空針が後退する間と中空針が後退した後に,血液を外管から外へ漏出させないことが認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。このため,被告製品は,2-7-bの構成を有する。 (7) 構成要件2-8-A・Bに対比した構成(2-8-a・b)について被告製品は,前記(4)のとおり,2-1-a~gの構成を有する安全装置で- 69 - あり,2-8-aの構成を有する。 また,被告製品の針基は,別紙物件説明書記載2(2)ウのとおり,内部が壁で取り囲ま 4)のとおり,2-1-a~gの構成を有する安全装置で- 69 - あり,2-8-aの構成を有する。 また,被告製品の針基は,別紙物件説明書記載2(2)ウのとおり,内部が壁で取り囲まれているものの,前記(6)のとおり,後部上面に穴があるところ,同記載2(2)エ・カのとおり,内管が後端部に近づくほど内径が大きくなっているため,中空針と共に後退した後は内管に密着固定していない。また,同記載2(2)のとおり,被告製品の針基が移動する外管と内管で構成された空間は,針基が後退した後,先端が開放される。にもかかわらず,前記(6)のとおり,被告製品は,中空針の後退後も,血液を外管から外へ漏出させない。これらの事実を総合すれば,被告製品の針基は,中空針の後退の際に生じる力による影響を受けても,空気が穴から針基の内部へ急速には入らず,血液が針基の内部から排出されないことを推認することができる。このため,被告製品は,針基が,中空針の後退の際に生じる力による影響を受けても,血液を針基の内部から排出させない隔離手段を有するものといえるから,2-8-bの構成も有する。 2 争点②(被告製品は本件各発明の技術的範囲に属するか)について(1) 構成要件1-Bの充足性について「ハブ」とは,①(活動等の)中心,中枢,②車輪等の中心部の軸とスポークの間の部材を意味することは,当裁判所に顕著である。また,証拠(甲8~10,38,乙9の9,13)によれば,「ニードル」とは,針又は針状の部材を意味すること,複数の特許文献や穿刺針の添付文書において,「ニードルハブ」が針の土台を指す部材として特段の解説もなく用いられていることが認められる。これらのことに,前記第2の1(3)アのとおり,構成要件- 70 - 1-Cにおいても,ニードルハブが ニードルハブ」が針の土台を指す部材として特段の解説もなく用いられていることが認められる。これらのことに,前記第2の1(3)アのとおり,構成要件- 70 - 1-Cにおいても,ニードルハブがニードルを連結するものとされていることを考慮すれば,構成要件1-Bの「ニードルハブ」は,針の土台部を意味するものと解される。被告製品の針基は,別紙物件説明書記載2(2)イ・ウのとおり,中空針の土台部に当たるから,構成要件1-Cの「ニードルハブ」に当たるというべきである。 また,被告製品の内管内に配置された針基は(1-b),前記第2の1(6)のとおり,被告製品の内管が構成要件1-Aの「中空のハンドル」に当たるから,構成要件1-Bの「該ハンドル内に配置されたニードルハブ」に当たるというべきである。 したがって,被告製品は,構成要件1-Bを充足する。 (2) 構成要件1-Eの充足性についてア 「ラッチ」の充足性について証拠(甲2)及び弁論の全趣旨によれば,「ラッチ」とは,一般的に,ドア・門等の掛けがね,留めがねを意味すること,もっとも,本件明細書1には,「ラッチ」に対応するものとして,「鋭い端がハンドルから突出した状態で針の軸をハンドルに固着させるための幾つかの手段…(中略)…「固着手段」と称することにする。」(11欄8行~11行)及び「固着手段を解除し且つ針の鋭い端をハンドル内に後退させるための幾つかの手段…(中略)…「解除および後退手段」と呼ぶことにする。」(同欄12行~15行)と記載されていることが認められる。前者の事実に後者の事実を併せて考慮すれば,構成要件1-Eの「ラッチ」は,ニードルを中空のハンドルに固着させるとともに,これを解除し,かつ当該ハンドル- 71 - 内に後退させるための れる。前者の事実に後者の事実を併せて考慮すれば,構成要件1-Eの「ラッチ」は,ニードルを中空のハンドルに固着させるとともに,これを解除し,かつ当該ハンドル- 71 - 内に後退させるための部材を意味するものと解される。 被告製品の移動レバーは,別紙物件説明書記載2(2)エ・オのとおり,中空針を内管の先端付近で保持するとともに,押し込みによってこれを解除し,内管内に後退させる部材である。前記第2の1(6)のとおり,被告製品の中空針が構成要件1-Cの「ニードル」に,被告製品の内管が構成要件1-Aの「中空のハンドル」に,それぞれ当たるから,被告製品の移動レバーは,構成要件1-Eの「ラッチ」に当たるというべきである。 イ 「前記ニードルハブから独立して移動可能」の充足性について「独立」とは,①それだけの力で立っていること,②個人が一家を構え,生計を立て,私権行使の能力を有すること,③単独で存在すること,他に束縛又は支配されないこと,独り立ち,特に一国又は団体がその権限行使の能力を完全に有することを意味することは,当裁判所に顕著である。また,証拠(甲2)によれば,本件明細書1には,「独立」に対応するものとして,「かくして上述したジャガー発明の2つの形態は使用者がハンドルの穴を介して実際に針をずっと引戻すことを必要とすることになる。そして針がハンドル空洞内に完全に収まるまでこの運動を続けねばならない。」(8欄25行~28行)という本件訂正発明1の課題と「本発明の解除および後退手段は簡単な一体的運動により手動で作動可能である。 「簡単な一体的」運動により,本発明者は複合的でない運動,即ち,ただ1つの方向での単一段階の行程または移動を必然的に伴う運動を意味する。」(11欄17行~21行)という本件訂正発明1が解決 である。 「簡単な一体的」運動により,本発明者は複合的でない運動,即ち,ただ1つの方向での単一段階の行程または移動を必然的に伴う運動を意味する。」(11欄17行~21行)という本件訂正発明1が解決した手段が記載されていることが認められる。前者の事実に後者の事実を併せて考慮- 72 - すれば,構成要件1-Eの「前記ニードルハブから独立して移動可能」は,前記ニードルハブの移動とは別に移動可能なことを意味するものと解される。 被告製品の移動レバーは,別紙物件説明書記載2(2)カのとおり,針基の密着固定を解除した後は押し込み続ける必要がないから,針基の移動とは別に移動が可能であるといえる。前記(1)のとおり,被告製品の針基が構成要件1-Bの「ニードルハブ」に当たるから,被告製品の移動レバーは,構成要件1-Eの「前記ニードルハブから独立して移動可能」というべきである。 この点につき,被告らは,移動レバーを約1.3㎜押し込むと,針基も約0.4㎜後方に移動するから,「前記ニードルハブから独立して移動可能」といえない旨主張する。しかしながら,上記移動レバーの移動すら,針基の移動とは異なる動きである上,別紙物件説明書記載2(2)カのとおり,針基は,この後更に内管の後端部に向かって移動するから,移動レバーの移動が針基の移動と異なることは明らかであって,被告の主張する事実は,前示の判断を左右するものではない。したがって,被告らの上記主張は,採用することができない。 ウ 「前記ニードルの移動距離よりも短い距離のみ移動する」の充足性について証拠(甲2)によれば,本件明細書1には,「ニードルの移動距離」に対応するものとして,「大抵の場合,必要な手動操作は次々と幾つかの運動を含まねばならない。必要とされるのは 足性について証拠(甲2)によれば,本件明細書1には,「ニードルの移動距離」に対応するものとして,「大抵の場合,必要な手動操作は次々と幾つかの運動を含まねばならない。必要とされるのは複雑な運動であり,その各段階- 73 - は典型的には針の長さおよび使用者の手の大きさを比して比較的大きな振幅のものである。」(8欄34行~37行)という本件訂正発明1の解決すべき課題と「この運動の振幅は針の長さよりも実質的に短い。あるいは,それは一般に使用者の指または手の大きさに比較して小さいと言ってもよい。」(11欄22行~24行)という,上記課題の解決のために本件訂正発明1が採用した手段が記載されていることが認められる。これを考慮すれば,構成要件1-Eの「前記ニードルの移動距離よりも短い距離のみ移動する」は,ラッチを駆動した後の前記ニードルの全移動距離よりも短い距離のみ移動することを意味するものと解される。 被告製品の移動レバーは,前記1(1)のとおり,内管の後端までの中空針の移動距離よりも短い距離のみ移動するから,移動レバーを駆動した後の中空針の全移動距離よりも短い距離のみ移動するものといえる。前記アのとおり,被告製品の移動レバーが構成要件1-Eの「ラッチ」に,前記第2の1(6)のとおり,被告製品の中空針が構成要件1-Cの「ニードル」に,それぞれ当たるから,被告製品の移動レバーは,構成要件1-Eの「前記ニードルの移動距離よりも短い距離のみ移動する」ものということができる。 エその余の充足性について前記1(1)のとおり,被告製品の移動レバーは,針基をばねの力に抗して一時的に内管の先端に隣接して保持するとともに,中空針の長さに比べて短い距離のみ指で押し込まれる。前記(1)のとおり,被告製品の針基が 1(1)のとおり,被告製品の移動レバーは,針基をばねの力に抗して一時的に内管の先端に隣接して保持するとともに,中空針の長さに比べて短い距離のみ指で押し込まれる。前記(1)のとおり,被告製品の針基が構成要件1-Bの「ニードルハブ」に,前記第2の1(6)のとおり,被告製- 74 - 品のばねが構成要件1-Dの「付勢手段」に,被告製品の内管の先端が構成要件1-Aの「中空のハンドル」の「遠い端」に,被告製品の中空針が構成要件1-Cの「ニードル」に,それぞれ当たるから,被告製品の移動レバーは,構成要件1-Eの「前記ニードルハブを前記付勢手段の力に抗して一時的に前記中空のハンドルの遠い端に隣接して保持する」とともに,「前記ニードルの長さよりも短い振幅で手動により駆動され」るものということができる。 オ小括以上によれば,被告製品は,構成要件1-Eを充足する。 (3) 構成要件2-1-Eの充足性について前記1(2)のとおり,被告製品は,指で移動レバーの天井部にあるボタンを押し込むことによって中空針の固定手段が解除され,ばねにより中空針の鋭利な端部に人の指が届かないように中空針を内管の中へ実質的に永続的に後退させるという解除/後退手段であって,中空針の軸の長さに比べて短い距離のみ指で押し込むことによって手操作で作動可能な解除/後退手段を有する。前記第2の1(6)のとおり,被告製品の内管が構成要件2-1-Cの「中空のハンドル」に当たるから,被告製品は,構成要件2-1-Eの「前記固定手段を解除し,前記針の鋭利な端部を人の指が届かないように前記ハンドルの中へ実質的に永続的に後退させる解除/後退手段であって,前記針の軸よりも実質的に短い距離だけ簡単且つ単一の動作によって手操作で作動可能な解除/後退手段」を有するも の指が届かないように前記ハンドルの中へ実質的に永続的に後退させる解除/後退手段であって,前記針の軸よりも実質的に短い距離だけ簡単且つ単一の動作によって手操作で作動可能な解除/後退手段」を有するものというべきである。 したがって,被告製品は,構成要件2-1-Eを充足する。 - 75 - (4) 構成要件2-1-Fの充足性について前記1(3)のとおり,被告製品は,中空針が後退するエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段を有する。このため,被告製品は,構成要件2-1-Fの「前記後退のエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段」を有するものというべきである。 したがって,被告製品は,構成要件2-1-Fを充足する。 (5) 構成要件2-3-A~Cの充足性について前記1(4)のとおり,被告製品は,2-3-aの構成を有するとともに,エネルギ吸収手段として,内管の内部孔に固定された内周面と,中空針に連結する針基に担持されて上記内周面に圧接し,中空針の後退の間に摩擦を生ずる弾性部品を有する。前記第2の1(6)のとおり,被告製品の内管が構成要件2-1-Cの「中空のハンドル」に当たるから,被告製品は,構成要件2-3-A~Cの「請求項1の安全装置において,前記エネルギ吸収手段が,…前記ハンドルの内部孔…に固定された表面と,前記針…に担持されて前記表面に圧接し,前記後退の間に摩擦を生ずる要素」を有するものというべきである。 したがって,被告製品は,構成要件2-3-A~Cを充足する。 (6) 構成要件2-5-A・Cの充足性について前記1(5)のとおり,被告製品は,2-5-aの構成を有するとともに,エネルギ吸収手段として,中空針に連結する針基に固定されて栓に対する中空針の衝 構成要件2-5-A・Cの充足性について前記1(5)のとおり,被告製品は,2-5-aの構成を有するとともに,エネルギ吸収手段として,中空針に連結する針基に固定されて栓に対する中空針の衝撃の一部を吸収する押しつぶし可能な弾性部品を有する。前記第2の1(6)のとおり,被告製品の栓が構成要件2-5-Bの「端部構造」に当たる- 76 - から,被告製品は,構成要件2-5-A・Cの「請求項1の安全装置において,…前記エネルギ吸収手段は,前記針…に固定されて前記端部構造に対する前記針の衝撃の一部を吸収する押し潰し可能な要素」を有するものというべきである。 したがって,被告製品は,構成要件2-5-A・Cを充足する。 (7) 構成要件2-7-A・Bの充足性についてア前記1(6)のとおり,被告製品は,2-7-aの構成を有するから,構成要件2-7-Aの「請求項1の安全装置」を有し,構成要件2-7-Aを充足する。 イ 「前記血液を確実に保持するための収容/保持手段」の充足性について構成要件2-7-Bの「前記血液を確実に保持するための収容/保持手段」とは,文言どおり,前記血液を確実に保持するための収容/保持手段を意味し,血液は収容/保持手段の中に保持されるものと解される。 (ア) この点につき,原告は,本件発明2-7が,使用後に中空針を後退させると,血液が針の先端やハンドルの前方の開口部から漏出するといった課題を解決するものであったことから,血液は中空のハンドルの中に保持されれば足りる旨主張する。 確かに,証拠(甲5)によれば,本件明細書2には,「収容/保持手段」に対応するものとして,【0025】「フラッシュ漏洩:クーリー特許の開示に従って構成された装置を更に研究することによ 確かに,証拠(甲5)によれば,本件明細書2には,「収容/保持手段」に対応するものとして,【0025】「フラッシュ漏洩:クーリー特許の開示に従って構成された装置を更に研究することにより,例えば,患者からの血液が装置のハンドルから後方又は前方へ,あるいは,針から前方へ漏洩するように,上記装置が取り扱われることがあること- 77 - が判明した。」(7欄21行~25行)等という本件発明2-7の課題が記載されていることが認められ,この記載だけを考慮すれば,血液が中空のハンドルの中に保持されれば足りるようにもうかがわれる。 しかしながら,証拠(甲5)によれば,本件明細書2には,【0029】「クーリーの針,あるいは,針及びブロックを中空のハンドルの中へ後退させると,ある量のフラッシュ血液が押し出されてハンドルの中に溜まる傾向があるからである。この押し出しは,何等かの経路を介して血液をケーシングの外方へ急激に排除する傾向がある。」(8欄9行~14行),【0030】「1つの漏洩通路は,針及びそのキャリアブロックを通って前方へ向かう通路である。換言すれば,そのような装置においては,後退ボタンが作動されると,血液が,針の前方端から外方へ噴出する。」(8欄15行~18行),【0031】「針キャリアブロックが,極めて小さな半径方向の空隙を有するその最初の位置すなわち前方でロックされた休止位置から後退した後の他の通路は,針及びブロックの周囲で前方へ向かう通路である。この場合には,血液は,クーリーのハンドル又はハウジングの前方の開口を通って出ることにより,アセンブリから漏洩する。」(8欄25行~31行)と記載されていることが認められる。これらの記載も併せて考慮すれば,血液が,収容/保持手段の中に保持されなければ,中空のハン を通って出ることにより,アセンブリから漏洩する。」(8欄25行~31行)と記載されていることが認められる。これらの記載も併せて考慮すれば,血液が,収容/保持手段の中に保持されなければ,中空のハンドルの中にたまる結果,中空針とブロックを後退させると,ハンドルから漏出し,前記課題を解決することができないことは明らかである。 したがって,原告の前記主張は,採用することができない。 - 78 - もっとも,前記1(7)のとおり,被告製品の針基は,血液がその内部から排出されず,血液を確実に保持するための収容/保持手段ともいえるから,構成要件2-7-Bの「前記血液を確実に保持するための収容/保持手段」に当たるというべきである。 また,前記1(6)・(7)のとおり,被告製品のフラッシュバック室も,針基に通じる穴があり,針基が中空針と共に後退した後は,針基に密着固定しておらず,針基が移動する外管と内管で構成された空間の先端が開放されるにもかかわらず,血液を外管から外へ漏出させない。これらの事実を総合すれば,被告製品のフラッシュバック室は,血液がその内部から排出されないことを推認することができ,血液を確実に保持するための収容/保持手段ともいえるから,構成要件2-7-Bの「前記血液を確実に保持するための収容/保持手段」に当たるというべきである。 (イ) これに対し,被告らは,構成要件2-7-Bの「収容/保持手段」につき,本件明細書2の【0038】の記載から,中空針に連結した被告製品の針基を含まない旨主張する。 確かに,証拠(甲5)によれば,本件明細書2には,【0038】「この問題に対する解決策は,運動可能な針に効果的に固定された点におけるフラッシュ血液を包囲あるいは阻害することとは別 る。 確かに,証拠(甲5)によれば,本件明細書2には,【0038】「この問題に対する解決策は,運動可能な針に効果的に固定された点におけるフラッシュ血液を包囲あるいは阻害することとは別の方法に見い出すことができ」という血液を中空針と共に搬送しない旨の記載(9欄38行~41行)が認められる。 しかしながら,証拠(甲5)によれば,前記記載に続けて「これによ- 79 - り,血液と運動する針ブロックとの間の効果的な相対運動を排除することができる。」という血液を中空針と共に搬送する旨の相反する記載(9欄41行~43行)があること,他には,後者の記載と同旨の【0069】「例えば,収容/保持手段は,針と共に運動するように固定された室…を備えるのが極めて好ましい。」(14欄2行~5行),【0086】「…後退の間に血液を針と共に搬送し,従って,血液と針との間に相対的な運動を何等生じないようにすることにより,上述の問題を解消する。」(16欄26行~28行)等という記載しかないことが認められる。これらの事実を総合すれば,本件明細書2の【0038】の前段の記載は,誤記と認めることができる。 したがって,被告らの前記主張は,採用することができない。 (ウ) また,被告らは,構成要件2-7-Bの「収容/保持手段」につき,本件明細書2の【0069】等の記載から,フラッシュ確認の目的をも有するところ,フラッシュ室は1つあれば足り,本件明細書2もキャリアブロックとは別個のフラッシュ室を備える実施例について後者のみを「フラッシュ室」と記載しているから(23欄39行),前者のキャリアブロックに当たると思われる被告製品の針基を含まない旨主張する。 しかしながら,証拠(甲5)によれば,本件明細書2には,【 ラッシュ室」と記載しているから(23欄39行),前者のキャリアブロックに当たると思われる被告製品の針基を含まない旨主張する。 しかしながら,証拠(甲5)によれば,本件明細書2には,【0069】「例えば,収容/保持手段は,針と共に運動するように固定された室と,収容され且つ保持された血液を本装置のユーザが観察できるようにする何等かの手段とを備えるのが極めて好ましい。」(14欄2行~- 80 - 5行)と記載されていることが認められる。このため,収容/保持手段は,フラッシュ確認の機能も備えることが好ましいだけであって,フラッシュ室が1つあれば足りるからといって,収容/保持手段が1つに限られることにはならない。 したがって,被告らの前記主張は,採用することができない。 (エ) また,被告らは,構成要件2-7-Bの「収容/保持手段」につき,本件明細書2の【0086】の記載から,中空針との間で相対的な運動を行う被告製品のフラッシュバック室を含まない旨主張する。 証拠(甲5)によれば,本件明細書2には,【0086】「本発明は,血液をハンドルの中に保持するのではなく,後退の間に血液を針と共に搬送し,従って,血液と針との間に相対的な運動を何等生じないようにすることにより,上述の問題を解消する。」(16欄25行~28行)と記載されていることが認められる。 しかしながら,証拠(甲5)によれば,本件明細書2には,【0037】「非常に広範な実験,並びに,試行錯誤の後にのみ,この関心事が,ハンドルに対して固定された点におけるフラッシュ血液の包囲又は阻止を行うための明白な初期の選択であるということを実現される。一方,この選択は,ハンドルの中の血液と移動する針ブロックによって形成されるピストンと して固定された点におけるフラッシュ血液の包囲又は阻止を行うための明白な初期の選択であるということを実現される。一方,この選択は,ハンドルの中の血液と移動する針ブロックによって形成されるピストンとの間の相対的な運動を意味する。」(9欄28行~34行),【0072】「また,上記収容/保持手段は,上記ハンドルに関連して設けられる室と,後退の間に生ずる力を上記室の中へ実質的に伝達することなく,血液を上記中空針の中から上記室の中へ搬送する- 81 - ための何等かの手段とを備えるのが好ましい。」(14欄23行~27行)と記載されていることが認められる。これに前記(ア)~(ウ)のとおり,本件明細書2の【0025】・【0029】~【0031】・【0038】・【0069】の各記載を総合すれば,本件発明2-7は,使用後に中空針とキャリアブロックを血液の中で後退させると,血液が針の先端やハンドルの前後から漏出するといった本件発明1における課題を,血液を入れた室を中空針と共に後退させたり中空のハンドルに設けたりし,中空針とキャリアブロックを血液の中で後退させないことによって解決した発明であるといえる。このため,【0086】の「相対的な運動」とは,中空針とキャリアブロックを血液の中で後退させることを意味するものと解されるところ,血液の中で後退しない被告製品のフラッシュバック室は,中空針との間で「相対的な運動」を行うものではない。 したがって,被告らの前記主張は,採用することができない。 ウ 「前記後退によって生ずる力に抗して」の充足性について「抗する」とは,抗す,逆らう,抵抗する,争うことを意味することは,当裁判所に顕著である。もっとも,証拠(甲5)によれば,「前記後退によって生ずる力に抗して」に対応するものとして ついて「抗する」とは,抗す,逆らう,抵抗する,争うことを意味することは,当裁判所に顕著である。もっとも,証拠(甲5)によれば,「前記後退によって生ずる力に抗して」に対応するものとして,【0086】「従って,後退の間に生ずる圧縮力を処理し,そのような圧縮力が血液と共に搬送される針に与えられるのを阻止するだけで良く,そのような力の処理は,本明細書の随所に述べる種々の手段によって行うことができる。」(16欄28行~32行)と記載されていることが認められる。 - 82 - 前者の事実に後者の事実を併せて考慮すれば,構成要件2-7-Bの「前記後退によって生ずる力に抗して」とは,中空針の後退により生じる圧縮力を阻止して,ということを意味するものと解される。 被告製品の針基とフラッシュバック室は,前記1(6)のとおり,中空針の後退により生じる圧縮力を阻止して血液を収容・保持するから,いずれも構成要件2-7-Bの「前記後退によって生ずる力に抗して」血液を収容・保持するものというべきである。 エその余の充足性について前記1(6)・2(7)イ(ア)のとおり,被告製品の針基とフラッシュバック室は,中空針が後退する間と中空針が後退した後に,血液を確実に保持するための収容/保持手段である。このため,被告製品の針基とフラッシュバック室は,構成要件2-7-Bの「前記針が後退する間に及び該後退の後に,」前記血液を確実に保持するための収容/保持手段に当たるというべきである。 したがって,被告製品の針基とフラッシュバック室は,いずれも構成要件2-7-Bに当たる。 オ小括以上より,被告製品は,構成要件2-7-A・Bを充足する。 (8) 構成要件2-8-A・Bの充足性について ュバック室は,いずれも構成要件2-7-Bに当たる。 オ小括以上より,被告製品は,構成要件2-7-A・Bを充足する。 (8) 構成要件2-8-A・Bの充足性についてア前記1(7)のとおり,被告製品は,2-8-aの構成を有するから,構成要件2-8-Aの「請求項1の安全装置」を有し,構成要件2-8-Aを充足する。 - 83 - イ 「前記室」の充足性について前記(7)イ(イ)のとおり,本件明細書2には,【0069】「例えば,収容/保持手段は,針と共に運動するように固定された室…を備えるのが極めて好ましい。」(14欄2行~5行)と記載されている。そして,証拠(甲5)によれば,本件明細書2には,「前記室」に対応するものとして,【0070】「また,上記収容/保持手段は更に,上記室を上記後退によって生ずる力から隔離するための何等かの手段を備えるのが好ましい。」(14欄8行~10行)と記載されていることが認められる。これを考慮すれば,構成要件2-8-Bの「前記室」は,中空針と共に運動するように固定された室を意味するものと解される。 この点につき,被告らは,本件明細書2の【0072】「上記ハンドルに関連して設けられる室」等,他にも「前記室」に対応する記載がある旨主張する。しかしながら,前記(7)イ(エ)のとおり,「上記ハンドルに関連して設けられる室」は,収容/保持手段の1例であるし,他の記載も「前記室」に対応するものではないことが明らかである。したがって,被告らの上記主張は,採用することができない。 被告製品の針基は,別紙物件説明書記載2(2)イのとおり,中空針と共に運動するように固定された室である。このため,被告製品の針基は,構成要件2-8-Bの「前記室」に当た ことができない。 被告製品の針基は,別紙物件説明書記載2(2)イのとおり,中空針と共に運動するように固定された室である。このため,被告製品の針基は,構成要件2-8-Bの「前記室」に当たるというべきである。 ウその余の充足性について前記1(7)のとおり,被告製品は,針基が,中空針の後退の際に生じる力による影響を受けて血液を針基の内部から排出させない隔離手段を有す- 84 - るから,構成要件2-8-Bの「前記収容/保持手段が,前記後退によって生ずる力から前記室の内部を隔離するための隔離手段を有する」ものというべきである。 エ小括以上より,被告製品は,構成要件2-8-A・Bを充足する。 (9) 結論以上によれば,被告製品は,本件各発明の技術的範囲に属する。 3 争点③(本件特許1の請求項1はいわゆるサポート要件違反により特許無効審判で無効とされるべきものか)について(1) 被告らは,本件特許1の特許請求の範囲請求項1に記載された「ニードルハブ」が本件明細書1中の発明の詳細な説明に記載がないから,いわゆるサポート要件(特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。平成2年法律第30号による改正前の特許法36条4項1号)に違反すると主張する。 (2) 証拠(甲2)によれば,次の事実が認められる。 ア本件明細書1には,「ニードルハブ」という語が特許請求の範囲においてのみ用いられ,発明の詳細な説明においては用いられていない。これに対し,本件明細書1には,「キャリヤブロック」又は「ブロック」という語が発明の詳細な説明においてのみ用いられ,特許請求の範囲においては用いられていない。 イ本件明細書1の発明の詳細な説明には し,本件明細書1には,「キャリヤブロック」又は「ブロック」という語が発明の詳細な説明においてのみ用いられ,特許請求の範囲においては用いられていない。 イ本件明細書1の発明の詳細な説明には,次の記載がある。 (ア) 「第1図および第2図に示すように,本発明の好ましい一実施例は- 85 - 成形された中空ハンドル10を含む。この実施例はまたハンドル10の前端にしっかり固定された鼻部片20と,ハンドル10内に摺動自在に配置されたキャリヤブロック30とを含む。 第1図および第2図の実施例はまた鼻部片20に近接してキャリヤブロック30をハンドルの前端近くに固着するラッチ40と,ブロック30により担持されたハンドル10から鼻部片20を貫通して延びる針50とを含む。」(12欄18行~26行)(イ) 「第11図および第12図は本発明のキャリヤブロックおよびばね実施例が一般的性格のいかなる機械的配置をも一般的に含みうることを概略的に示すために含まれているものである。これらの図面において,解除自在なラッチ要素544はキャリヤブロック530をハンドル・シリンダ511の前端に一時的に固着させる。 図示の一般的配置において,針の鋭い端552は前方穴523を貫通してハンドルの前端521から突起している。ばね561がキャリヤブロック530を後方に付勢している。」(20欄16行~24行)ウ前記イの事実によれば,前記2(1)のとおり,複数の特許文献や穿刺針の添付文書において「ニードルハブ」が針の土台を指す部材として特段の解説もなく用いられていることを併せ考慮するなら,前記アのとおり,本件明細書1の発明の詳細な説明には,「ニードルハブ」という語は用いられていないものの,これに対応するものとして,「キャリヤブロック」とい なく用いられていることを併せ考慮するなら,前記アのとおり,本件明細書1の発明の詳細な説明には,「ニードルハブ」という語は用いられていないものの,これに対応するものとして,「キャリヤブロック」という語が用いられていることは明らかである上,「ニードルハブ」という語は,針の土台部を意味する技術用語であるといえる。そうすると,本件明- 86 - 細書1の発明の詳細な説明に「ニードルハブ」の語の記載がなくても,本件特許1の請求項1に記載された発明は,発明の詳細な説明に記載された発明であるということができる。 したがって,本件特許1の請求項1は,いわゆるサポート要件違反により特許無効審判で無効とされるべきものではない。 4 争点④(本件特許1の請求項1は拡大先願発明と同一であることにより特許無効審判で無効とされるべきものか)について(1) 本件訂正発明1と乙9-19公報記載の発明との対比についてア乙9-19公報の記載等証拠(乙9の19)によれば,昭和63年4月20日に特許出願され,同年11月28日に出願公開された乙9-19公報には,次の記載(別紙乙9-19公報添付図面参照)があることが認められる。 (ア) 「開いた基部と実質的に閉じた末端部とを有する中空のシリンダ(24,62)と,その基部を介して前記シリンダ内に入れられる予め満たされたアンプル(14)とを含み,前記アンプルはその一方端部で封止キャップ(18)を有し,前記アンプルの前方に前記シリンダ内に位置決めされかつ前記アンプルと間隔を置かれた軸方向の整列で配置された両端皮下針(40)とを含む注射器(1,60)であって,前記注射器は前記針の基部が前記アンプルの端部キャップを貫通しかつ前記針の末端部は前記シリンダの末端を通って外方向に突出するよ 整列で配置された両端皮下針(40)とを含む注射器(1,60)であって,前記注射器は前記針の基部が前記アンプルの端部キャップを貫通しかつ前記針の末端部は前記シリンダの末端を通って外方向に突出するように前記シリンダを介して前記アンプルを軸方向にかつ末端方向に進めるための手段(8)と,前記シリンダ内の末端に進められた位置で前記アンプルを解- 87 - 放可能に保持してロックされた位置に可動であるかまたは末端部に進められた位置から前記アンプルを離してロックされていない位置に可動であるロッキング手段(32,67)とを含み,そのため前記アンプルは前記シリンダを介して基部方向に変位されかつ前記針の末端部は前記シリンダ内に引込められ得ることを特徴とする,注射器。」(特許請求の範囲請求項1)(イ) 「前記両端針(40)が保持される針カートリッジ(21)をさらに特徴とし,前記針カートリッジは前記針を取囲む中空のスリーブ(22,66)と,前記針を前記アンプル(14)と軸方向に整列するように支持するための両端の基部(36)および末端(38)壁とを有する,請求項1ないし6記載の注射器。」(特許請求の範囲請求項7)(ウ) 「前記針保持カートリッジ(21)はまた前記中空スリーブ(22,66)内に置かれかつ前記カートリッジの前記両端の壁(36,38)の間を延びる圧縮可能ばね手段(34)を含む,請求項7または8記載の注射器。」(特許請求の範囲請求項9)(エ) 「前記壁(38)の一方がその反対の壁(36)に関連して前記ばね手段(34)の偏倚力に対して前記針保持カートリッジ(21)の中空のスリーブ(22,66)を介して可動であり,その結果前記ばね手段が前記両端の壁の間で圧縮されるようになり,前記アンプル(14)は前記シリンダ(24,62)を介し 記針保持カートリッジ(21)の中空のスリーブ(22,66)を介して可動であり,その結果前記ばね手段が前記両端の壁の間で圧縮されるようになり,前記アンプル(14)は前記シリンダ(24,62)を介して軸方向にかつ末端方向に進められ,その結果前記可動壁が前記中空のスリーブを介して動かされかつ前記ばね手段が圧縮されるようにされ,それによって前記針(40)の末- 88 - 端部は前記スリーブから外方向に力が加えられ前記針シリンダの末端部を通過して注射が行なわれ,前記ばね手段は緩められた位置に戻って前記反対の壁から前記カートリッジの可動の壁を離して駆動し,それによって前記針の末端部は前記ロッキング手段が前記アンプルを末端方向に進められた位置から開放すると前記カートリッジスリーブ内に引込められる,請求項7ないし9記載の注射器。」(特許請求の範囲請求項10)(オ) 「[技術分野]この発明は液体の薬品の入った予め満たされたアンプルと,取外し可能針カートリッジ内に保持されかつ液体の薬品を目標とされる組織区域に注射する位置である末端方向に延ばされた位置から,針が注射器のシリンダ内に引き込まれかつそれによって保護される位置である基部方向に引込められた位置に,自動的に位置を代えるように適合される両端部皮下針とを有する歯科用注射器に関するものである。」(3頁左上欄18行~右上欄7行)(カ) 「注射が終わると針は典型的には注射器シリンダを介して形成された末端の孔から外方向に突出している軸方向に延びた位置にロックされている。 場合によっては,注射器は伝染病を保持している患者の処置をするために用いられるかもしれない。注射器を処分する前に皮下針は再利用を防ぐためにしばしば折られたりまたは破壊されたりする。歯医者で働いている人達 よっては,注射器は伝染病を保持している患者の処置をするために用いられるかもしれない。注射器を処分する前に皮下針は再利用を防ぐためにしばしば折られたりまたは破壊されたりする。歯医者で働いている人達は特に使用後の不注意な取扱いやまたは針を折ったり注射器を処分したりすることによって偶発的に感染の可能性を持った針に- 89 - 当たることが起こりやすい。たまたま針に当たっただけの小さな出来事が結果としてエイズや肝炎のような病気のための血液検査が典型的には必要とされるようになる。」(3頁右上欄16行~左下欄10行)(キ) 「図面の第9図では,注射器60は注射している状態である。特に歯科医が人差指と中指をフランジ28の耳状部分32に置きかつ親指を保持カラー8のフランジ10上に置いている。フランジ28の角度をつけられた耳状部分30のおかげで歯科医の人差指と中指は自動的に注射器シリンダ62のロッキングアーム67に対して同等でかつ反対の圧縮力(参照矢印80で示される方向)を与えるように位置決めされる。したがって,ロッキングアーム67はその通常のばねの偏倚力に対して回動が引き起こされ,その結果そのそれぞれのロッキングカップ68は注射器シリンダ62内に形成されるスロット70を介して回転される。」(8頁右下欄10行~9頁左上欄2行)(ク) 「歯科医は次に親指を使って保持カラー8の基部のフランジ10を押してシリンダ62を介して保持カラーを軸方向にかつ末端方向に進める。保持カラー8はそのロッキングスカート12がロッキングアーム67の内部に延びているロッキングカップ68の下にパチンと受取られるとシリンダ62内の軸方向に進められた位置にロックされる。」(9頁左上欄12行~18行)(ケ) 「フランジ28の角度をつけられた耳状部分30の下 いるロッキングカップ68の下にパチンと受取られるとシリンダ62内の軸方向に進められた位置にロックされる。」(9頁左上欄12行~18行)(ケ) 「フランジ28の角度をつけられた耳状部分30の下に指を残したままで,歯科医は親指を保持カラー8のフランジ10からピストンステム2の基部の指ループ4に動かす。保持カラー8のロッキングスカート- 90 - 12をロッキングアーム67の保持カップ68内にロックして(保持カラー8の基部方向の変位を防ぐために),歯科医はピストンステム2に対して保持カラー8を介して末端方向に力を加え,その結果軸方向の力が指ループ4からアンプル14の基部のプランジャ16に伝わる。プランジャ16はそれによってアンプル14を介して軸方向および末端方向に動かされ,その結果アンプルの中の液体が延在した針40によって患者の目標とされた組織区域内に注入され得る。 第10図は皮下針40がシリンダ62内に戻された注射器60を示す。特に,アンプル14の中身が患者の中へ放出された後に歯科医は指をフランジ28の角度をつけられた耳状部分30の下から取りかつ親指を指ループ4から取る。針40は即座にかつ自動的にシリンダ62内に完全に戻る。歯科医の指をフランジ28の耳状部分30の下でロッキングアーム67のロッキングカップ68と係合をはずすようにすれば,ロッキングカップ68は保持カラー8の円錐ロッキングスカート12から係合が外される。すなわち,ロッキングフィンガ67の通常のばねの偏倚力によってそのようなフィンガはロッキングスカート12より外にかつ離れて回動させられる。 ロッキングカップ68をロッキングスカート12から離してかつアンプル14のカップ18を針支持および整列部材38のレセプタクル内にロックしたままにすると 外にかつ離れて回動させられる。 ロッキングカップ68をロッキングスカート12から離してかつアンプル14のカップ18を針支持および整列部材38のレセプタクル内にロックしたままにすると,以前に圧縮されたばね34はその開放された状態に自由に戻る。しかしながら,ばね34内に蓄えられた位置エネルギは針40と,針支持部材38と,アンプル1と,ピストンステム2- 91 - と,指ループ4の相互接続を含むピストンアセンブリを針カートリッジ21のスリーブ66を介して軸方向にかつ基部方向に十分駆動し得る。 したがって,針40は針カートリッジスリーブ66内に完全に引込められるように注射器シリンダ62の末端部壁64を介して引張られる。こうして,注射器60が歯科用のトレイ内に置かれるときまでには針40は注射器シリンダ62に関した延ばされた末端位置から前記シリンダ内の引込められた基部の位置に位置が変えられており,注射器の安全な処分を可能とする。」(9頁左下欄7行~10頁左上欄12行)イ乙9-19公報記載の発明前記ア認定の事実によれば,乙9-19公報には,次の発明(以下「乙9-19発明」という。)が記載されているものといえる。 (ア) 基部及び末端部を有する中空のシリンダと,(イ) 該シリンダ内に配置された針支持部材と,(ウ) 鋭い末端部と,前記針支持部材に支持された固着端とを有し,アンプル内の薬液を患者の目標とされた組織区域内に注入するための針と,(エ) 前記針支持部材を前記中空なシリンダの基部方向に向かって付勢するばねと,(オ) 前記針支持部材から独立して移動可能であり,指で圧縮されることによって保持カラー及び前記アンプルを介し前記針支持部材を前記ばねの力に抗して一時的に前 向に向かって付勢するばねと,(オ) 前記針支持部材から独立して移動可能であり,指で圧縮されることによって保持カラー及び前記アンプルを介し前記針支持部材を前記ばねの力に抗して一時的に前記中空のシリンダの末端部に隣接して固定するロッキング手段であって,前記針の長さよりも短い振幅でばねの偏倚力により駆動され,前記針の移動距離よりも短い距離のみ移動するロッキ- 92 - ング手段と,(カ) から成る,薬液注射のための安全装置。 ウ本件訂正発明1と乙9-19発明との対比乙9-19発明の「シリンダ」は,操作者がつかむものであるから,本件訂正発明1の「ハンドル」に相当する(甲12)。また,乙9-19発明の「基部」,「末端部」,「針支持部材」,「鋭い自由端」,「ばね」は,本件訂正発明1の「近い端」,「遠い端」,「ニードルハブ」,「鋭い末端部」,「付勢手段」にそれぞれ相当する。さらに,乙9-19発明の「ロッキング手段」は,針を中空のシリンダに固着させるとともに,これを解除し,かつ当該シリンダ内に後退させるための部材であるから,前記2(2)アのとおり,ニードルを中空のハンドルに固着させるとともに,これを解除し,かつ当該ハンドル内に後退させるための部材を意味する本件訂正発明1の「ラッチ」に相当する。そして,乙9-19発明のロッキング手段が「指で圧縮されることによって保持カラー及び前記アンプルを介し前記針支持部材を固定する」こと及び「針」は,本件訂正発明1のラッチが「前記ニードルハブを保持する」こと及び「ニードル」に相当する。 そうすると,本件訂正発明1と乙9-19発明とは,次の点で相違する。 (ア) 本件訂正発明1では,ニードルがカニューレを患者の定位置に案内し運ぶためのものであるのに対し(構成要件 する。 そうすると,本件訂正発明1と乙9-19発明とは,次の点で相違する。 (ア) 本件訂正発明1では,ニードルがカニューレを患者の定位置に案内し運ぶためのものであるのに対し(構成要件1-C),乙9-19発明では,針がアンプル内の薬液を患者の目標とされた組織区域内に注入するためのものである点(イ) 本件訂正発明1では,ラッチが手動により駆動されるのに対し(構- 93 - 成要件1-E),乙9-19発明では,ロッキング手段がばねの偏倚力により駆動される点(ウ) 本件訂正発明1では,安全装置がカニューレ挿入のためのものであるのに対し(構成要件1-F),乙9-19発明では,安全装置が薬液注射のためのものである点(2) 本件訂正発明1と乙9-19発明との実質的同一性の有無前記(1)ウのとおり,本件訂正発明1と乙9-19発明は発明の構成において一致しないところ,ばねの偏倚力により駆動されるラッチにつき,手動により駆動されるものとすることや(相違点(イ)),薬液注射のための安全装置につき,カニューレ挿入のためのものとすることが(相違点(ウ)),本件訂正発明1の出願当時,カニューレ挿入装置の技術分野における当業者において,広く認識されていたことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,本件訂正発明1と乙9-19発明が同一であるとはいえない。 (3) 小括以上より,本件特許1の請求項1は拡大先願発明と同一であることにより特許無効審判で無効とされるべきものではない。 5 争点⑤(本件特許2の請求項1・3・5は新規性の欠如により特許無効審判で無効とされるべきものか)について(1) 本件発明2-1の新規性についてア本件発明2-1と乙11-1公報記載の発明 ⑤(本件特許2の請求項1・3・5は新規性の欠如により特許無効審判で無効とされるべきものか)について(1) 本件発明2-1の新規性についてア本件発明2-1と乙11-1公報記載の発明との対比について(ア) 乙11-1公報の記載証拠(乙11の1)によれば,乙11-1公報には,次の記載がある- 94 - ことが認められる(別紙乙11-1公報添付図面参照)。 a 「カニューレを患者の中に挿入しその後で患者内にあった装置部分との接触から人々を保護するに当たって使用される安全装置であって,前記患者に突き刺し前記カニューレを前記患者内の定位置に案内し運ぶための針であって,少なくとも1つの鋭い端を備えた軸を有する針と,前記人々の指が届かないように前記針の少なくとも鋭い端を封包するようになされた中空ハンドルと,前記鋭い端がハンドルから突出した状態で前記軸をハンドルに固着するための手段と,前記固着手段を解除し且つ前記人々の指が届かないように前記針の鋭い端をハンドル内へ実質的に永久的に後退させるための手段とから成り,前記解除および後退手段は針の軸よりも実質的に短い振幅の単純な一体運動により手動で作動可能であることを特徴とする安全装置。」(特許請求の範囲請求項1)b 「本発明は一般に医療器具に関し,更に詳細には静脈カニューレ等のカニューレを患者の身体に挿入するための装置に関する。」(3頁左下欄2行~4行)c 「ハンドル10は好ましくはポリカーボネート等のプラスチックから射出形成されたものだが,必ずしもそうでなくてもよい。」(10- 95 - 頁左下欄7行~9行)d 「 c 「ハンドル10は好ましくはポリカーボネート等のプラスチックから射出形成されたものだが,必ずしもそうでなくてもよい。」(10- 95 - 頁左下欄7行~9行)d 「ハンドル10内には,ラッチ案内スロット16,18の底面で露出して縦方向中心孔12が形成されている。この孔はごく一般的には真円筒形であるが,好ましくは型からのハンドルの除去を容易にするためにハンドルの後端に向けて広がるごく僅かなテーパもしくはドラフトを有する。 しかし,孔12の後端の近くには,内方に円錐台状のストッパ表面14が形成されて孔12を僅かに狭めている。孔12の極端には,ハンドル10の後端にて開口する短い端部13がある。」(11頁左上欄5行~16行)e 「鼻部片は商品名「デルリン」の下に市販されているプラスチックで作ることができる。その材料は主としてそれが形成し易いから選択されるものである。 キャリヤブロック30はきわめて狭い中心穴を有し,この穴の中に針50がきっちりと把持されている。同じくデルリン製のブロック30は針上に圧嵌,縮嵌および/または接合するか,あるいは定位置に成形してよい。 キャリヤブロック30の外側は円形的に対称である。それは真円筒形でもよい突出筒31を有する。この筒31の後端には前端が筒31に対して半径方向に拡大された円錐台状のストッパ部分32がある。 このストッパ部分はブロック30の後端に向けて内方にテーパしている。ストッパ部分の円錐台状の後面は針を完全に後退させた時にハン- 96 - ドル10の前述した内側円錐台状ストッパ部分13に対して着座するようになされている。」(11頁左下欄12行~右下欄11行)f 「第1図の好ましい実施例の他の 時にハン- 96 - ドル10の前述した内側円錐台状ストッパ部分13に対して着座するようになされている。」(11頁左下欄12行~右下欄11行)f 「第1図の好ましい実施例の他の寸法は大略以下の通りである(㎝)。 …トリガー近傍でのハンドル孔の内径 0.4201後端付近でのハンドル孔の内径 0.4318…キャリヤブロック・ストッパ部分の外径 0.4191」(13頁左下欄8行~21行)g 「多分明瞭には図示されていないこの好ましい実施例のもう1つの望ましい特徴を次に挙げておく。トリガーが作動されていない時にハンドル10の内側孔12に対して流体密封を与えるように,キャリヤブロックの円錐台状ストッパ部分32の大きな端の直径を僅かに増大させることが好ましい。 この配置は,ストッパ部分32の前方にあるばね,内部空洞等の多くの複雑な表面における衛生の維持への信頼を最小限に抑えることにより中空針を介しての効果的な流体連通を容易にする。」(14頁左下欄9行~20行)h 「第9図および第10図に更に他の実施例を示す。第1図ないし第6図の可動ラッチ要素は図示の装置のそれぞれのハンドルに装着され,そして第7図および第8図ではかくのごときラッチはないが,第9図および第10図の可動ラッチ要素はキャリヤブロックに装着され- 97 - ている。 更に詳細には,キャリヤブロックの外側の案内穴内には半径方向に延びるラッチ耳435(第10図)が係止されているが,ばね436により半径方向外方に付勢されている。これらのラッチ耳435はハンドル壁411,412の厚い部分412cと係合してキャリヤブロック431およ ラッチ耳435(第10図)が係止されているが,ばね436により半径方向外方に付勢されている。これらのラッチ耳435はハンドル壁411,412の厚い部分412cと係合してキャリヤブロック431および針の後方への運動を防止する。」(16頁左上欄20行~右上欄14行)(イ) 乙11-1公報記載の発明前記認定の事実によれば,乙11-1公報には,次の発明(以下「乙11-1発明①」という。)が記載されているものといえる。 a カニューレを患者の中に挿入しその後で患者内にあった装置部分との接触から人々を保護するに当たって使用される安全装置であって,b 前記患者に突き刺し前記カニューレを前記患者内の定位置に案内し運ぶための針であって,少なくとも1つの鋭い端を備えた軸を有する針と,c 前記人々の指が届かないように前記針の少なくとも鋭い端を封包するようにされた中空ハンドルと,d 前記鋭い端がハンドルから突出した状態で前記軸をハンドルに固着するための手段と,e 前記固着手段を解除し且つ前記人々の指が届かないように前記針の鋭い端をハンドル内へ実質的に永久的に後退させるための手段とから成り,前記解除および後退手段は針の軸よりも実質的に短い振幅の単- 98 - 純な一体運動により手動で作動可能であるf 針を把持するキャリヤブロックの大きな端とハンドルの内側孔とは流体密封しており,針を把持するキャリヤブロックの後面はデルリン製であり,完全に後退したときにハンドルの内側ストッパ部分に着座するg 安全装置。 (ウ) 本件発明2-1と乙11-1発明①との対比a 乙11-1発明①の「カニューレを患者の中に挿入しその後で患者内に 内側ストッパ部分に着座するg 安全装置。 (ウ) 本件発明2-1と乙11-1発明①との対比a 乙11-1発明①の「カニューレを患者の中に挿入しその後で患者内にあった装置部分との接触から人々を保護するに当たって使用される安全装置」,「前記患者に突き刺し前記カニューレを前記患者内の定位置に案内し運ぶための針であって,少なくとも1つの鋭い端を備えた軸を有する針」,「前記人々の指が届かないように前記針の少なくとも鋭い端を封包するようにされた中空ハンドル」,「前記鋭い端がハンドルから突出した状態で前記軸をハンドルに固着するための手段」,「前記固着手段を解除し且つ前記人々の指が届かないように前記針の鋭い端をハンドル内へ実質的に永久的に後退させるための手段とから成り,前記解除および後退手段は針の軸よりも実質的に短い振幅の単純な一体運動により手動で作動可能」は,本件発明2-1の「カニューレの如き医療器具を患者の体内へ挿入し且つその後患者の体内にあった該装置の部分に人が接触しないように保護するための安全装置」,「患者を穿刺し,前記医療器具を患者の体内の適所へ案内して搬送する中空針であって,少なくとも1つの鋭利な端部を有する軸を- 99 - 具備する中空針」,「人の指が届かないように,少なくとも前記針の鋭利な端部を包囲するようになされた中空のハンドル」,「前記鋭利な端部を前記ハンドルから突出させた状態で前記軸を前記ハンドルに固定する固定手段」,「前記固定手段を解除し,前記針の鋭利な端部を人の指が届かないように前記ハンドルの中へ実質的に永続的に後退させる解除/後退手段であって,前記針の軸よりも実質的に短い距離だけ簡単且つ単一の動作によって手操作で作動可能」にそれぞれ相当する。 そうすると,本 ンドルの中へ実質的に永続的に後退させる解除/後退手段であって,前記針の軸よりも実質的に短い距離だけ簡単且つ単一の動作によって手操作で作動可能」にそれぞれ相当する。 そうすると,本件発明2-1と乙11-1発明①とは,本件発明2-1では,中空針が後退するエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段があるのに対し(構成要件2-1-F),乙11-1発明①では,これがない点で相違する。 b 被告らは,乙11-1発明①の構成f「針を把持するキャリヤブロックの大きな端とハンドルの内側孔とは流体密封しており,針を把持するキャリヤブロックの後面はデルリン製であり,完全に後退したときにハンドルの内側ストッパ部分に着座する」は,構成要件2-1-Fの「前記後退のエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段」に相当する旨主張する。 (a) 流体密封についてキャリヤブロックとハンドルが流体密封していることについては,前記(ア)gのとおり,乙11-1公報に,キャリヤブロックのストッパ部分の前方にあるばねや内部空洞等,多くの複雑な表面に- 100 - おける衛生の維持への信頼を得るため,トリガーが作動されず中空針が後退していないときには,キャリヤブロックの円錐台状ストッパ部分の大きな端がハンドルの内側孔に対して流体密封を与えるのが好ましい旨記載されているにすぎず,中空針が後退するエネルギを吸収するために流体密封を与える旨の記載や中空針が後退しているときにも流体密封を与える旨の記載はない。かえって,前記(ア)d・fのとおり,乙11-1公報では,型からのハンドルの除去を容易にするため,ハンドルの内側孔の内径を後端に向けて広げていくことを勧めている。 したがって,乙11-1発明① (ア)d・fのとおり,乙11-1公報では,型からのハンドルの除去を容易にするため,ハンドルの内側孔の内径を後端に向けて広げていくことを勧めている。 したがって,乙11-1発明①の構成fのうち,キャリヤブロックの大きな端とハンドルの内側孔とが流体密封していることが構成要件2-1-Fの「エネルギ吸収手段」に相当する旨の被告らの主張は採用することができない。 なお,被告らは,「この孔はごく一般的には真円筒形である」という記載やそれを示す図1の記載,内径差も0.0117㎝しかないこと,キャリヤブロックの外側に延びるラッチ耳等を考慮すれば,トリガーが作動されている時にも流体密封を与えることが明らかである旨も主張する。しかしながら,前記(ア)fのとおり,乙11-1公報には,好ましい実施例として,トリガー近傍でのハンドル孔の内径を0.4201㎝とするのに対し,キャリヤブロックのストッパ部分の外径を0.4191㎝とすることが記載されており,狭い方のハンドル孔の内径ですらキャリヤブロックの外径よりも大き- 101 - くすることを勧めている。また,前記(ア)hのとおり,キャリヤブロックの外側に延びるラッチ耳は,ハンドルの内部孔との間で摩擦を生じ,中空針が後退するエネルギを吸収する可能性はあるものの,構成要件2-1-Fの「エネルギ吸収手段」とは,本件発明2-1の課題であったばね等によるキャリヤブロックの不当に速い後退や異常に強い後退,うるさいかちっという音等を解消する手段であるから(甲5,10欄43行~11欄8行),上記の課題を解消するに足りる程度に中空針の後退するエネルギを吸収する必要があるものと解されるところ,ラッチ耳が上記の程度に中空針が後退するエネルギを吸収することを認めるに足りる証拠はない。した ,上記の課題を解消するに足りる程度に中空針の後退するエネルギを吸収する必要があるものと解されるところ,ラッチ耳が上記の程度に中空針が後退するエネルギを吸収することを認めるに足りる証拠はない。したがって,被告らの上記主張も採用することができない。 (b) デルリンについて証拠(乙11の4・5)によれば,乙11-4公報には「この楔状部材(26)の内面は夫々突起部(20)と係合する楔状の形をしていて,例えばデルリン(DELRIN)という商品名で市販されているプラスチック物質のような適当な物質でモールドするのが好ましい。」(2頁左下欄11行~15行)や「装置が過度の衝撃を受けると,プラスチックの楔状部材(26)が衝撃吸収体として作用する。」(2頁右下欄15行・16行)との記載があること,乙11-5公報には「材料としてはいかなるプラスチック材料も使用できるが,…(中略)…弾性率が高いものであることが好ましい。好ましいプラスチック材料としてはポリオキシメチレン(PDM)…(中略)- 102 - …等がある。特に好ましい材料はポリオキシメチレンで,例えば,融点約175℃のデュポン社製の登録商標「デルリン」がある。この製品は,この発明に必要な温度安定性と柔軟性という非常に優れた特性を有しているものであって好ましい。」(2頁左下欄13行~右下欄6行)との記載があることが認められる。 しかしながら,キャリヤブロックの後面がデルリン製であることについては,前記(ア)eのとおり,乙11-1公報に,形成しやすいから選択された旨記載されているにとどまり,中空針が後退するエネルギを吸収するためにデルリンを選択した旨の記載はない。また,証拠(甲13)によれば,デルリンは,デュポン社の販売するアセタール樹 いから選択された旨記載されているにとどまり,中空針が後退するエネルギを吸収するためにデルリンを選択した旨の記載はない。また,証拠(甲13)によれば,デルリンは,デュポン社の販売するアセタール樹脂の製品群を指し,主な特性として,引っ張りや衝撃に対する強さ,剛性等を有し,高耐久ギヤ等に用いる高粘度タイプから家電部品等に用いる低粘度タイプまで複数のグレードのものが販売されていることが認められる。 したがって,乙11-1発明①の構成fのうち,キャリヤブロックの後面がデルリン製であることが構成要件2-1-Fの「エネルギ吸収手段」に相当する旨の被告らの主張は採用することができない。 (c) 内側ストッパ部分への着座についてキャリヤブロックの後面がハンドルの内側ストッパ部分に着座することについては,前記(a)のとおり,構成要件2-1-Fの「エネルギ吸収手段」は,不当に速い後退や異常に強い後退,うるさい- 103 - かちっという音等を解消するに足りる程度に中空針の後退するエネルギを吸収するものである必要があるところ,キャリヤブロックの後面がハンドルの内側ストッパ部分に着座することにより,上記の程度に中空針が後退するエネルギを吸収することを認めるに足りる証拠はない。 したがって,乙11-1発明①の構成fのうち,キャリヤブロックの後面がハンドルの内側ストッパ部分に着座することが構成要件2-1-Fの「エネルギ吸収手段」に相当する旨の被告らの主張は採用することができない。 (d) 小括以上より,被告らの乙11-1発明①の構成fが構成要件2-1-Fに相当する旨の主張は,いずれも採用することができない。 イ以上のとおり,本件発明2-1と乙1 (d) 小括以上より,被告らの乙11-1発明①の構成fが構成要件2-1-Fに相当する旨の主張は,いずれも採用することができない。 イ以上のとおり,本件発明2-1と乙11-1発明①とが同一であるとはいえないから,本件特許2の請求項1は新規性を欠如せず,特許無効審判で無効とされるべきものではない。 (2) 本件発明2-3・5の新規性について本件発明2-3・5は,本件発明2-1に係る請求項の従属項であるから,前記(1)イのとおり,本件発明2-1と乙11-1発明①が同一でない以上,本件発明2-3・5が乙11-1発明①と同一でないことも明らかである。 したがって,本件特許2の請求項3・5は新規性を欠如せず,特許無効審判で無効とされるべきものではない。 6 争点⑥(本件特許2の請求項8は特許請求の範囲の記載要件違反により特許- 104 - 無効審判で無効とされるべきものか)について(1) 特許請求の範囲の記載要件違反について被告らは,本件発明2-8の特許請求の範囲は,そこに記載された「前記収容/保持手段」や「前記室」につき,これらの前にある請求項1にその内容が記載されていなければならないにもかかわらず,請求項1にはその記載がないため,内容が不明であるから,記載要件違反(平成6年法律第116号による改正前の特許法36条5項2号)により特許無効審判で無効とされるべきものであると主張する。 しかしながら,原告は,前記第2の1(2)イ(イ)のとおり,特許無効審判請求手続において,本件発明2-8の特許請求の範囲につき,前記の点を訂正する訂正請求を行っており,後記のとおり,同訂正請求は適法であり,被告製品は訂正後の本件訂正発明2-8の技術的範囲に属し,かつ,本件訂正発明2-8は,特許無 8の特許請求の範囲につき,前記の点を訂正する訂正請求を行っており,後記のとおり,同訂正請求は適法であり,被告製品は訂正後の本件訂正発明2-8の技術的範囲に属し,かつ,本件訂正発明2-8は,特許無効審判で無効とされるべきものとは認められない。したがって,仮に,本件発明2-8に記載要件違反の無効事由があったとしても,同無効事由は上記訂正により解消されるものであるから,被告らの前記無効の主張は理由がない。 (2) 訂正の請求について前記第2の1(2)イ(イ)のとおり,本件訂正請求のうち,「請求項1の安全装置」から「請求項7の安全装置」への訂正は,請求項7が請求項1の従属項であるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。また,「前記針と共に運動するように固定された室を備え,」の付加も,「前記収容/保持手段」を限定するから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ- 105 - る。また,これらの訂正は,願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。したがって,本件訂正請求は,適法な訂正の請求というべきである。 また,前記第2の1(6)・第3の2(7)オのとおり,被告製品は,構成要件2-7-A~Cを充足するから,本件訂正発明2-8の「請求項7の安全装置」を充足する。そして,前記2(8)イのとおり,被告製品の針基は,中空針と共に運動するように固定された室であるから,被告製品は,「前記針と共に運動するように固定された室を備え」る。したがって,被告製品は,本件訂正発明2-8の技術的範囲に属する。 したがって,仮に,本件発明2-8に記載要件違反の無効事由があったとしても,同無効事由は上記訂正により解消されたものといえる。 る。したがって,被告製品は,本件訂正発明2-8の技術的範囲に属する。 したがって,仮に,本件発明2-8に記載要件違反の無効事由があったとしても,同無効事由は上記訂正により解消されたものといえる。 (3) 進歩性について後記7(4)ウのとおり,本件発明2-7が当業者において容易に想到し得なかったものであり,進歩性を有するから,本件発明2-7の従属項である本件訂正発明2-8も,進歩性を有する。 7 争点⑦(本件特許1の請求項1及び本件特許2の請求項1・3・5・7・8は進歩性の欠如により特許無効審判で無効とされるべきものか)について(1) 乙9-1・2両公報記載の発明と周知技術に基づく本件訂正発明1の想到容易性ア本件訂正発明1と乙9-1公報記載の発明との対比について(ア) 乙9-1公報の記載- 106 - 証拠(乙9の1)によれば,乙9-1公報には,次の記載(別紙乙9-1公報添付図面参照)が認められる。 a 「皮下注射針またはその他の器具に関連した動きによるか,あるいはそのものの上に折り重ねることによって,前記の針またはその他の器具が正常に使用される第1の位置で,前記の針またはその他の器具,あるいはその支持体に接続させ,据えておくことができるようになっている1個のさやから成り,第2の位置では,さやが,針またはその他の器具を包み,かつその第2の位置に,さやを保持するようになっていることを特徴とする皮下注射針等の安全装置。」(特許請求の範囲請求項1)b 「さやが,針または針の支持体に接着されているか,あるいは針または支持体にクリップ止めされていることを特徴とする特許請求の範囲第(2)項に記載の皮下注射針等の安全装置。」(特許請求の範囲請求項3) または針の支持体に接着されているか,あるいは針または支持体にクリップ止めされていることを特徴とする特許請求の範囲第(2)項に記載の皮下注射針等の安全装置。」(特許請求の範囲請求項3)c 「針が,ハウジングによって支持されており,かつさやが,ハウジングに固着されていることを特徴とする特許請求の範囲第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の皮下注射針等の安全装置。」(特許請求の範囲請求項5)d 「さやが,針の長さ方向に平行に,ハウジングに対して動くことができ,それにより,さやが,針を包むように移動できることを特徴とする特許請求の範囲第(5)項に記載の皮下注射針等の安全装置。」(特許請求の範囲請求項6)- 107 - e 「本発明は,皮膚の臨床的穿刺に用いられる皮下注射針またはその類似器具の安全装置に関する。 (従来の技術)病院,健康センター,あるいはその他の臨床分野での人間の血液試料採取は,薬物製剤や生化学物質の注射と同じように,常習的な医療処理である。 しかし,臨床オペレータが,処理後,誤って,針で自分自身あるいは他の人を傷つけ,そのために病気が媒介されたり,あるいは化学的または生物学的中毒を引き起すという偶発事故が,新聞や医療雑誌に数多く報告されている。 (発明が解決しようとする問題点)臨床オペレータ,臨床処理の監視者,および一般の人々を含むその他すべての関係者が,誤って傷つくことのないような方法で,皮下注射針またはそうした器具を処理することのできる装置が明らかに必要である。 本発明の目的は,そうした装置を提供することにある。 (問題点を解決するための手段)皮下注射 うした器具を処理することのできる装置が明らかに必要である。 本発明の目的は,そうした装置を提供することにある。 (問題点を解決するための手段)皮下注射針または類似器具のための本発明による安全装置は,針またはその他の器具との相対的な動きによるか,あるいはそのものの上に折り重ねることによって,前記の針またはその他の器具が,正常に使用される第1の位置で前記針,またはその他の器具,あるいはその支持体に接続させ,据えておくことができるようにした1個のさやか- 108 - ら成り,第2の位置では,さやが,針またはその他の器具を包み,かつその第2の位置に,さやを保持するものである。 指摘した通り,本発明の安全装置は,皮下注射針に代表される穿刺器具の保護に,一般的に適用できるものであるが,そうした器具の中でも,皮下注射針は,最も広範に使用されている。 例えば,この装置は,生検針,傷針,すなわち,接着テープによるような皮膚表面に針を固定することのできる側面付属装置の付いた針の保護や,静脈カニューレや腰椎穿刺針の保護に適用することができる。」(2頁左上欄16行~左下欄15行)f 「一方,針を,注射器胴部または連結器に取り付けられるように設計したハウジング上に固定する場合,さやをハウジングに固定するのが有利である。その際,さやは,針の長さに平行な構成要素を有する方向に,ハウジングに対して動くことができる。それにより,さやは,針が十分に含まれるまで針の長さに沿って動くことができる。」(3頁左上欄1行~7行)g 「本発明を,添付図面について,さらに説明する。 第1A図および第1B図に示した本発明の実施態様は,針(5)を支持しているプラスチック成形物の針ハウジング( 頁左上欄1行~7行)g 「本発明を,添付図面について,さらに説明する。 第1A図および第1B図に示した本発明の実施態様は,針(5)を支持しているプラスチック成形物の針ハウジング(4)と,ハウジング(4)の上を滑ることができるように支持された,さやと共に要素を構成する親指ガード(7)と合体したプラスチックさや(6)から成っている。 溝(8)も,ハウジング(4)に合体して縦に伸びている。 さや(6)は,拡大図により詳細に示してあるように,溝(8)に沿って- 109 - 滑る自動ばね栓(9)と合体している。さやが溝(8)の端までいくと,自動ばね栓(9)が,小さな「くぼみ」(10)に落ちて,滑動するさやを所定の位置に固定する。 さやの長さは,第1B図に示すように,それが所定の位置に固定された際,針の鋭利な先端がさやに完全に含まれるような長さである。 ハウジング(4)は,どの標準的注射器胴部または連結器にも合うように設計されている。 使用後,保護さやを固定位置まで伸ばし,安全な方法で針を含む。」(3頁右上欄13行~左下欄13行)(イ) 乙9-1公報記載の発明前記(ア)認定の事実によれば,乙9-1公報には,次の発明(以下「乙9-1発明」という。)が記載されているものといえる。 a 近い端及び遠い端を有する中空のさやと,b 該さや内に配置されたハウジングと,c 鋭い自由端と,前記ハウジングに支持された固定端とを有し,静脈カニューレを運ぶための針と,d 前記ハウジングを一時的に前記中空のさやの遠い端に隣接して支持する固着手段と,e から成る,静脈カニューレ挿入のための安全装置。 (ウ) 本件訂正発明1と乙9-1発明との対比 グを一時的に前記中空のさやの遠い端に隣接して支持する固着手段と,e から成る,静脈カニューレ挿入のための安全装置。 (ウ) 本件訂正発明1と乙9-1発明との対比乙9-1発明の「さや」は,静脈カニューレ装置に適用される場合,操作者がつかむものであるから,本件訂正発明1の「ハンドル」に相当- 110 - する(甲12)。また,乙9-1発明の「針」,「固定端」,「静脈カニューレ」は,本件訂正発明1の「ニードル」,「固着端」,「カニューレ」にそれぞれ相当する。また,乙9-1発明の「ハウジング」は,さや内に配置されるとともに,針を支持するから,ハンドル内に配置されるとともに,ニードルを連結する本件訂正発明1の「ニードルハブ」に相当する。 この点につき,原告は,乙9-1発明が注射器胴部のある皮下注射針に適用され,注射器胴部又はハウジングが握られる上,さやはハウジングに当接しているだけであって,不安定で握ることができないから,乙9-1発明の「さや」は本件訂正発明1の「ハンドル」に相当しない旨主張する。しかしながら,前記(ア)b~eのとおり,乙9-1公報には乙9-1発明を静脈カニューレ挿入装置にも適用し得ることが記載され,その場合には,注射器胴部に取り付けられていないから,さやが握られることになる上,乙9-1公報にはさやがハウジングに接着されたりクリップ止めされたりすることも記載されているから,そうすることにより,さやを握ることができる。したがって,原告の上記主張は採用することができない。 また,被告らは,乙9-1発明がニードルハブのニードル連結部が中空なハンドルの近い端に接近するように中空なハンドルを手動で移動させるための親指ガードを有し,これは本件訂正発明1における付勢手段 また,被告らは,乙9-1発明がニードルハブのニードル連結部が中空なハンドルの近い端に接近するように中空なハンドルを手動で移動させるための親指ガードを有し,これは本件訂正発明1における付勢手段の機能に相当する旨主張する。しかしながら,親指ガードの移動対象は,さやであって,本件訂正発明1の「ニードルハブ」に相当するハウジン- 111 - グではない。このため,親指ガードの機能は,ニードルハブを移動対象とした付勢手段の機能にも相当せず,被告らの上記主張は採用することができない。 したがって,本件訂正発明1と乙9-1発明とは,「近い端及び遠い端を有する中空のハンドルと,該ハンドル内に配置されたニードルハブと,鋭い自由端と,前記ニードルハブに支持された固着端とを有し,カニューレを運ぶためのニードルと,前記ニードルハブを一時的に前記中空のハンドルの遠い端に隣接して支持する固着手段と,から成ることを特徴とする,カニューレ挿入のための安全装置。」である点で一致し,次の3点で相違する。 a 本件訂正発明1では,ニードルがカニューレを患者の定位置に案内し運ぶのに対し(構成要件1-C),乙9-1発明では,ニードルがカニューレを運ぶだけである点b 本件訂正発明1では,ニードルハブを中空なハンドルの近い端に向かって付勢する付勢手段があるのに対し(構成要件1-D),乙9-1発明では,これがない点c 本件訂正発明1では,ニードルハブから独立して移動可能であり,前記ニードルハブを付勢手段の力に抗して一時的に中空のハンドルの遠い端に隣接して保持するラッチであって,ニードルの長さよりも短い振幅で手動により駆動され,前記ニー ルハブから独立して移動可能であり,前記ニードルハブを付勢手段の力に抗して一時的に中空のハンドルの遠い端に隣接して保持するラッチであって,ニードルの長さよりも短い振幅で手動により駆動され,前記ニードルの移動距離よりも短い距- 112 - 離のみ移動するラッチがあるのに対し(構成要件1-E),乙9-1発明では,前記ニードルハブを一時的に前記中空のハンドルの遠い端に隣接して支持する固着手段しかない点イ相違点に係る本件訂正発明1の構成の想到容易性について証拠(乙9の2~4・13~18・20~25・29)によれば,次の記載が認められる。 (ア) 乙9-2公報の記載(別紙乙9-2公報添付図面参照)a 「可動コアを具えるか具えない皮下注射針を使用する,自動プランジャ復帰式の注射器にして,注射器本体(1)を,注射器前端(4)で一体化された2個の同軸的な円筒素子(2,3)で構成するとともに,該本体(1)を上記前端(4)から,上記円筒素子(2,3)の前方に同軸線に設けられた中空の円錐台状の座部(5)まで延設し,両円筒素子(2,3)間の環状室(8)の一端を前記前端(4)で閉鎖し他端は開放し,円筒素子(3)の中心部に,両端が開放され前端が前記座部(5)に連通する円錐台部分(10)を終端とする円筒状空洞(9)を形成し,前記注射器本体(1)の内部に,2個の同軸的な円筒(14,15)からなる軸線方向に移動可能なプランジャ(13)を収納し,これら円筒(14,15)のうちの外方円筒(14)を前端で開放し,後端で環状部(17)により閉鎖し,内方円筒(15)を前端で閉鎖し,後端で上記環状部(17)を経て円板部即ちボタン(18)まで延設し,これら外筒(14)と内筒(15)の間の第2環状室(16)の後端を前記環状部(17 )により閉鎖し,内方円筒(15)を前端で閉鎖し,後端で上記環状部(17)を経て円板部即ちボタン(18)まで延設し,これら外筒(14)と内筒(15)の間の第2環状室(16)の後端を前記環状部(17)で閉鎖し,更に,上記内筒(15)の前端で,皮下注射針(7)の可動コア(6)のための固定点を画定し,上記可動コア(6)の基部を,- 113 - 外側面がアンダカット状で,前記円筒状空間(9)内を,それと協働して気密,液密のシールを構成しつつ摺動するパッキン(20)内に収納したことを特徴とする注射器。」(特許請求の範囲請求項1)b 「プランジャ(13)の外方円筒(14)の前端の前方にスプリング(21)を配設し,プランジャ(13)が注射器本体(1)内に押込まれると,上記スプリングが環状室(8)内で圧縮されるように構成したことを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の注射器。」(特許請求の範囲請求項3)c 「本発明は,自動プランジャ復帰式のバイオプシー用の注射器,即ち,後の分析のために,患者の身体から組織や体液のサンプルを抽出する皮下注射器に関する。 従来,通常の皮下注射針を装着してバイオプシーに使用される通常の皮下注射器,或は移動コア等の装置を設けられた皮下注射器が知られている。 バイオプシーは,X線ビューアーが同時に使用されるか否かに拘らず,2段階で行なわれる。即ち,皮下注射器に適切に装着された針を,分析のためのサンプルを必要とする組織に刺す第1段階と,この組織から微細な粒子或は液滴を吸込む第2段階の2段階である。この操作には,一方の手で針及び注射器を確実に保持し,他方の手で注射器の可動部品,つまりプランジャを引出すことにより,分析用の前記組織または体液が針から吸込まれるための負圧を 2段階の2段階である。この操作には,一方の手で針及び注射器を確実に保持し,他方の手で注射器の可動部品,つまりプランジャを引出すことにより,分析用の前記組織または体液が針から吸込まれるための負圧を生じさせることが要求される。」(2頁左上欄9行~右上欄5行)d 「以上のことから理解されるように,針の挿入時のみならず,分析- 114 - 用の組織のサンプルを吸引する際にも一方の手のみで安全に操作でき,可動コアの存在の如何に拘らず,通常の皮下注射針を利用できるような皮下注射器に対する技術的な問題の解決が待たれている。 本発明は,上記した技術的問題を解決するために,可動コアの存在に拘らず,通常の皮下注射針を装着できる,適宜のプラスチック,ガラス,或は金属からなる注射器を採用し,この注射器の本体を,環状空洞部に包囲された円筒形の中心空洞部を設けられた円筒形とし,この中心空洞部にプランジャを気密,液密に設けて摺動可能とし,該プランジャを,2個の同軸的な円筒体で構成するとともに,プランジャの一端にシールを設け,これら両円筒体の内部に,針内に異物が侵入するのを防止する皮下注射針の可動コアを収納したものである。 本発明によれば,以下の利点が得られる。 ① 針の挿入時,及び分析用の組織のサンプルの吸入時のいずれにおいても,一方の手のみで注射器を操作できる。 ② 吸入段階では,注射器・プランジャが自動的に動作する。 ③ 針の挿入部近傍の組織を安定な姿勢に維持することを必要とするようなバイオプシーにおいても,他人の手を借りる必要がない。 以下,本発明の実施例を図面を参照して説明する。 図面において,1は注射器本体を示し,この注射器本体1は,2個の同軸的な円筒素子2,3で構成されている。これら円筒素子2,3 手を借りる必要がない。 以下,本発明の実施例を図面を参照して説明する。 図面において,1は注射器本体を示し,この注射器本体1は,2個の同軸的な円筒素子2,3で構成されている。これら円筒素子2,3は,注射器本体1の前端4で結合されて一体的な肩部となり,この肩部が前方に延ばされ,両素子2,3と同軸的な円錐台状の座部5とさ- 115 - れている。6は,この座部5内を摺動させられる皮下注射針の可動コアを示す。7は通常の皮下注射針で,上記座部5に装着される。」(2頁右上欄19行~右下欄16行)e 「外方の円筒素子2の前記前端4から最も遠い端部は,2個の弾性変形が可能な,つまり可撓性を有する突起11に接続し,これら各突起11には戻り止め12が設けられている。 13は,同軸的な外筒14と内筒15からなるプランジャで,上記外筒14は,前端を開放されるとともに後端を環状部17で閉鎖され,この環状部17により,内筒15の外壁と一体化されている。」(3頁左上欄1行~10行)f 「皮下注射針7の可動コア6は,プランジャ13の内筒15の前端に取付けられている。同コア6の基部は,外側面がアンダカット状のパッキン20に被覆されている。これは,注射器本体1の中心空洞9内で上記パッキン20を摺動させ,気密,液密のシールを構成させるためである。」(3頁右上欄1行~6行)g 「第4図は本発明の他の実施例を示し,本実施例では前記実施例の円錐台状リップシール19にかえて,プランジャ13の外筒14の前端にスプリング21を設けている。」(3頁右上欄7行~10行)h 「次に,本発明による皮下注射器の作用を説明すると,皮下注射針7をバイオプシーのための患者の部位に挿入する前に,まずプランジャ13のボタン18に親指を当て,突起11で構成さ 上欄7行~10行)h 「次に,本発明による皮下注射器の作用を説明すると,皮下注射針7をバイオプシーのための患者の部位に挿入する前に,まずプランジャ13のボタン18に親指を当て,突起11で構成された戻り止め12に環状部が係合して弾性的に位置決めされるまで前方に押込む。こ- 116 - の状態で,注射針7を,分析のために抽出すべき組織のサンプルの深さまで刺し込む。その後,上記突起11を横方向に押圧すると,環状部17が戻り止めから解放されてプランジャ13が戻される。この動作は,注射器本体1の環状室8内の圧縮空気により自動的に行なわれるか,或はその時点まで圧縮されていたスプリング21を介して行なわれる。 このようにプランジャ13が戻る間に,注射器本体1の中心空洞9及び円錐台部分10には適当な負圧が発生し,少量の組織または流体が針7から吸込まれる。」(3頁左下欄1行~17行)(イ) 乙9-3明細書の記載(別紙乙9-3明細書添付図面参照)a 「本発明は,輸液用カテーテル配置装置に関し,特にそのような装置であって,カテーテルが鋭利な針を内部的に通過し,使用の間,針はその装置に正常に残るものに関する。」(抄訳1頁24行~26行)b 「すべての先行技術の装置は,除去可能な部材を必要としており,保護がなお可能な場合には,針先が鋭い刃からカテーテルを保護するために何らかの種類の付加的な装置の使用を必須とする。事実,現在利用されているすべてのこのような装置は,使用のためにカテーテルを完全に挿入した後において,カテーテル上に針を露出させたままである。さらには,これらの装置の多くは,相当に複雑であって,操作が困難である。 私は,装置を包装するために使用されるものを除き,いかなる除去可能な部材も有 ル上に針を露出させたままである。さらには,これらの装置の多くは,相当に複雑であって,操作が困難である。 私は,装置を包装するために使用されるものを除き,いかなる除去可能な部材も有せず,針の完全な引込みと,針先の鋭い刃による損傷- 117 - からカテーテルを完全に保護することと並んで,挿入されたカテーテルを殺菌保護することを提供し,また,極めて簡素な2ないし3段階操作のために設計された輸液用カテーテル配置装置を発明したのである。」(抄訳2頁12行~22行)c 「図9は,前述の図面の輸液用カテーテル配置装置の透視の図であって,針制御手段から伸びたフラッグ様の指グリップによる制御の下,伸ばされた位置にあって針と共に皮膚を通して血管に挿入される針を示している。 図10は,図9と類似の透視の図であって,針の先が血管中に位置させられ,カテーテル制御手段がカテーテルを針を通って更に血管中に前進させるべくハウジング中に前進させられた後の装置を示している。 図11は,上述の図面と類似の透視の図であって,カテーテルが針を通って完全に前進させられ,針が引き込まれる前にカテーテルコネクタがハウジングの後端にロックされた時の装置を示している。 図12は,同装置の透視の図であって,ハウジング中に完全に引き込まれた針を,カテーテルの先端を正しい位置に保持するために血管上の皮膚に置かれた指と共に示している。」(抄訳3頁19行~4頁1行)d 「図11及び12に示すように,カテーテルコネクタ44がハウジングの後ろの正しい位置にロックされた後,図12に示すように,操作者は,患者の皮膚を通してカテーテル33の先端を押し下げ,図1- 118 - 2に示すように,フラッグないし指グリップ42を後方に グの後ろの正しい位置にロックされた後,図12に示すように,操作者は,患者の皮膚を通してカテーテル33の先端を押し下げ,図1- 118 - 2に示すように,フラッグないし指グリップ42を後方に移動させるだけで,針30はハウジング内に引き込まれる。」(抄訳5頁15行~18行)(ウ) 乙9-4明細書の記載(別紙乙9-4明細書添付図面参照)a 「本発明は,針外カテーテル型のカテーテル装置の分野にあり,静脈内に液体を供給するために利用される。」(抄訳2頁6行・7行)b 「本来の構成によれば,血管中へのカテーテルの配置の直後に静脈穿刺針をカテーテルないしカニューレから引き抜く際であって,カテーテルに静脈注入セットを接続する前には,針外カテーテル装置は汚染された血液の流出と汚染を被る。これは様々な理由により極めて望ましくないことである。非衛生的であることおよび不都合であることに加えて,このことは患者に恐怖を与えがちである。」(抄訳2頁13行~17行)c 「図1は,静脈注入セットの供給チューブに接続されて静脈穿刺の準備ができた装置を示す一実施形態の絵画的図であり;図2は,図1の2-2線から取られ,静脈注入チューブを立面で示す垂直軸断面であり;図3は,図2のそれと対応し,静脈穿刺の後に停止位置まで引き込まれたスタイレット針を示す図であり;」(抄訳2頁24行~29行)d 「接続チューブ14の把持端14bを一方の手でしっかりと保持しながら,更に血管中へとカテーテル10を針軸13aに対して相対的に前進させるよう,他方の手でハウジング11を前方へ押しやる。す- 119 - ると,ハウジング11が静止したままである一方で,図3に示すように,針ハブ13cがストッパとして爪リング11 対的に前進させるよう,他方の手でハウジング11を前方へ押しやる。す- 119 - ると,ハウジング11が静止したままである一方で,図3に示すように,針ハブ13cがストッパとして爪リング11bの後ろで壁11aにしっかりと着座するまで,部分14aが後方へ引かれる。好適な実施形態において,針軸13aと鋭利な端13bとは,カテーテル10から完全に引き抜かれてハウジング11により保護的に包まれる。」(抄訳3頁19行~25行)(エ) 乙9-13明細書の記載(別紙乙9-13明細書添付図面参照)a 「本発明は,歯科医師及び医師が薬剤及びその他の液体を体組織に注射するために利用する種類の皮下注射器ないしその種のものに関する。特に,本発明は,歯科専門職において,局所麻酔薬を注射するために利用される使い捨てカプールに関する。 皮下注射に現在利用されている皮下注射器は,体組織へと液体が通る細い管状針を携行したプランジャ動作装置を特徴としている。視界にさらされる管状針は,偶然の損傷や,滅菌の間ないしある場所からある場所への移動の間における汚染を被りやすく,さらに,患者が針を見ることによる不安の原因となる。 したがって,使用しないときに針を保護し,もって費用のかかる損傷した針の交換を省き,また,汚染を無くす,自動的に引き込まれる針を有する注射器,及び,露出した針を見ることによる予測と心配と興奮とを除くことにより,患者の改善された心理的傾向を提供することが目的である。 本発明の他の目的は,簡便で安価であり,実用的な構成であり,良- 120 - 好な動作と無菌の状態を容易に維持する,使い捨てカプールを使用した型の改良された歯科注射針を提供することである。 更に他の目 で安価であり,実用的な構成であり,良- 120 - 好な動作と無菌の状態を容易に維持する,使い捨てカプールを使用した型の改良された歯科注射針を提供することである。 更に他の目的は,歯科用途に便利であって,患者の組織への挿入の直前まで針を隠ぺいし保護することができ,もって針を患者の視界の外に置ける,新規で改良された皮下針注射器を提供することである。 本発明の更に他の目的は,非常に効果的で,特段に実用的で,低コストで容易に製造できる上述のごとき性質の新規で改良された注射器を提供することである。」(抄訳1頁10行~2頁1行)b 「図1は,我が改良された皮下注射器の典型的な好適な形態の断片的な立面図であり,図2は,針が引き込まれた位置を示している,図1の注射器の断片的な垂直断面図であり,図3は,図2と同様だが,針が突出した位置を示している,断片的な垂直断面図であり,」(抄訳2頁5行~10行)c 「いずれにせよ,圧を解放すると,伸びようとする前方に配置されたばねの偏倚により,自動的に針が引き込まれ,カプールが復帰する。 液体を注入するため,わずかな圧を親指掛けに与えて針をハブの外に完全に繰り出し,追加的な圧によって,カプールの後ピストン型ストッパがプランジャによりカプールの壁に対して前進し,その中の液体が針から追い出される。注射の場所から針を取り除き,親指掛けから圧を解放すると,ハブ中に針が自動的に引き込まれる。」(抄訳4頁7行~12行)- 121 - (オ) 乙9-14明細書の記載(別紙乙9-14明細書添付図面参照)a 「本発明は,皮下注射器ないし針に関し,特に人及び動物の体に自動的に注射を行うための自動作動装置に関係 (オ) 乙9-14明細書の記載(別紙乙9-14明細書添付図面参照)a 「本発明は,皮下注射器ないし針に関し,特に人及び動物の体に自動的に注射を行うための自動作動装置に関係する。」(抄訳1頁14行・15行)b 「本発明の目的の一つは,大きく増加した数からくる注射を行う医療問題を解決することである。一定の病気の罹患者が毎日ないし数日の間隔をおいて,また数年の間隔をおいて,恐らくは残りの半生の間ずっと,注射を受け続けねばならないような,いずれの場合においても,本発明は適用し得る。」(抄訳1頁20行~23行)c 「実務は,患者に自ら注射を行うことを教えることは可能であろうということを示しているものの,そうした患者への教唆の試みの多くは,心理的障害及び必要な技能の欠如のために,成功しているとは証明されていない。このような場合において,注射による継続的治療は,罹患者に,時間及び費用のロスを含め,多大な不便を引き起こしている。これらの不便は,本発明による完全に自動的に作動する皮下注射器により対処することができる。」(抄訳2頁4行~10行)d 「本発明の自動注射器の特徴の一つは,その中で可動なピストンがあり,その先端に皮下針を有した注射シリンダであって,そのシリンダが円筒バレル中に嵌入するように構成され,前記バレルの後部がこれを囲むケーシングを有し,このケーシングがばねに駆動されたときには,バレルに対して回転可能なものを含むことである。ピストンは,このピストンに装着されたプランジャによってケーシングに接続され- 122 - ており,もってケーシングの回転の間,シリンダ及びピストンに対して前後への往復運動を与える。」(抄訳2頁14行~20行)e 「そして,レバーハン ーシングに接続され- 122 - ており,もってケーシングの回転の間,シリンダ及びピストンに対して前後への往復運動を与える。」(抄訳2頁14行~20行)e 「そして,レバーハンドルを今一度操作することができて,ピストンを解除して巻きばねによりピストン及びシリンダを前方に駆動して針を皮膚に入って行かせ,液を注射し,液の注射の完了に応じて引き出すことができる。」(抄訳3頁6行~9行)f 「図3は,針が前進した位置にあり,ピストンが液を針に向けて押し出し終えた時の装置の横断面図である。 図4は,断面での不透性キャップと共に引き込まれた位置における針を示す立面図である。」(抄訳3頁22行~25行)(カ) 乙9-15公報の記載(別紙乙9-15公報添付図面参照)a 「本発明はランセツト注射器,いつそう詳しくは,検査の目的で血液サンプルを採取するための一回使用,すなわち使い捨てランセツトと共に用いるようになつている注射器に関する。」(3頁右上欄20行~左下欄3行)b 「たとえば,侵入深さ,切開部を作るのに用いられる力,挿入,抜き出し角度が操作している人によつて異なるのである。また,操作者あるいは患者がランセツトまたは行なわれている作業を見ることができ,これはある場合には望ましくない。 これらの問題,すなわち欠陥のうちの1つまたはそれ以上のものを解決するために,がね作動式のランセツト注射器が提案されているが,満足できるものがまつたくない。たとえば,あるものは構造が比較的- 123 - 複雑であり,高価である。また,ある構造では,ランセツトを駆動,錠止,引込めるという機能を果すために複数のばねと比較的数の多い要素を必要とする。また,ある場合には,ランセツトが見えるので,特 複雑であり,高価である。また,ある構造では,ランセツトを駆動,錠止,引込めるという機能を果すために複数のばねと比較的数の多い要素を必要とする。また,ある場合には,ランセツトが見えるので,特に糖尿病患者が自宅で血糖検査を行うときなどに切開を自分でする場合,患者に不安感を与える可能性がある。 したがつて,本発明の目的は,比較的安価であり,使用が簡単かつ効果的であり,前記問題の1つまたはそれ以上のものをほぼ解決する改良血液ランセツト注射器を提供することにある。」(3頁左下欄11行~右下欄12行)c 「ホルダ16,ランセツト60は迅速に直線状に中立位置に引込む。 すなわち,針64の先端が切開部から第5図に示すようにハウジング12内に引込められる。ばね34のハウジング12に対する寸法は,ホルダ16および制御部材48がこの中立位置にあるときに,ばね34がその自由長位置すなわち中立位置にある,すなわち,ばね34がほぼ引張り,圧縮のいずれの状態にもないように選ばれる。第1図の引込位置から第5図に仮想線で示す皮膚穿刺位置まで移動するときに,ランセツトをホルダの中立位置すなわちばね34の遠位端の自由長位置(第5図に実線で示す位置)を通して遠位方向に移動させるのは,主としてホルダ16の慣性またはモーメントである。ばねの遠位端がこのばね34が主として移動中のホルダ16の慣性によりその中立,すなわち自由長状態にあるときにとる位置を越えて遠位方向に延びているので,ばねは引張状態になり,したがつて,針の先端を穿刺- 124 - 位置から中立位置まで迅速に引込める。」(5頁左下欄12行~右下欄12行)d 「第1図は本発明の好ましい実施例であるランセツト注射器の正面図,第2図は第1図の注射器の横断面図」(7頁右上欄13行 置まで迅速に引込める。」(5頁左下欄12行~右下欄12行)d 「第1図は本発明の好ましい実施例であるランセツト注射器の正面図,第2図は第1図の注射器の横断面図」(7頁右上欄13行~15行)e 「第5図は第1図の注射器の上部を示す断片正面図で,ランセツトをその皮膚穿刺位置で示し,ランセツト,ホルダを中立位置で示す図」(7頁右上欄19行~左下欄1行)(キ) 乙9-16明細書の記載(別紙乙9-16明細書添付図面参照)a 「本発明は,使用後に注射器のバレル部分の内部に引き込むことの可能なカニューレを有する,改善された引込み可能な注射器に関し,より具体的には,薬物及び他の医薬製剤を皮下注射投与するための注射器であって,使用後に破棄することの可能な注射器に関する。これにより,汚染された器具に人が触れてしまうという問題が回避される。」(抄訳1頁5行~8行)b 「後天性免疫不全症候群(AIDS)及び肝炎を管理する医療保険団体における従前からの問題の出現と共に,注射器技術の改善が求められている。従来技術は,引込み式のカニューレ構造を示しているものの,幾つかの技術的な問題は,まだ残されたままである。注射器を使用する医療関係者にとっては,引き込むことの可能な構成は,必然的に,単純で,操作しやすく,信頼性の高いものでなければならない。 さらに,現在の技術は,注射器における円筒形の本体内に引き込める- 125 - ように取り付けられたカニューレ及びハブアセンブリを開示していない。」(抄訳1頁10行~16行)c 「本発明の目的は,改善された使い捨ての注射器を提供することにある。この注射器は,注射物質が排出された後に,その汚染されている可能性のある部品を安全に保存するような装備を有してい )c 「本発明の目的は,改善された使い捨ての注射器を提供することにある。この注射器は,注射物質が排出された後に,その汚染されている可能性のある部品を安全に保存するような装備を有している。 本発明における別の目的は,内部的なハブ及びカニューレを有する上記のような注射器を提供すること,及び,注射器のバレル内にこれらの部品を引っ込めるための組込みツールを提供することにある。 本発明における更に別の目的は,引っ込められた部品を廃棄のための位置に固定するためのロックメカニズムを提供することにある。 本発明の特徴点は,注射後の汚染された注射器に対する医療従事者による接触を減少することにある。 本発明における別の特徴点は,単純かつ経済的な方法で,使用済みの注射器の廃棄を促進することにある。 概要本発明は,注射物質の流体を投与するための使い捨ての注射器を開示している。この注射器は,内部に取り付けられたハブ及びカニューレを有している。これらは,その内部に引き込まれた注射器の円筒形の本体から切り離して,廃棄のための位置に固定することの可能なものである。 この注射器は,ハブ及びカニューレを円筒形の本体から切り離すための連結器,及び,カニューレに隣接するピストン面に取り付けられ- 126 - ている引込みツールを有している。この引込みツールは,前記円筒形の本体内にハブ及びカニューレを引き込む際に,前記連結器に結合することの可能なものである。円筒体の後方には,引込み位置に対してカニューレを確実に固定するための引込みカニューレロックが設けられている。これにより,流体チャンバから注射物質の流体が排出された後,引込みツールがハブ手段及びカニ 筒体の後方には,引込み位置に対してカニューレを確実に固定するための引込みカニューレロックが設けられている。これにより,流体チャンバから注射物質の流体が排出された後,引込みツールがハブ手段及びカニューレに結合され,そして,これらが円筒形の本体内に引き込まれ,その内部において確実にロックされる。」(抄訳1頁24行~2頁19行)d 「図1は,本発明の注射器を示す断面図である。この図の注射器は,注射のための適切な位置にあるバレルから,プランジャーが引き出された状態にある。 図2は,図1に示した注射器の断面図である。この図の注射器は,注射物質を注射器から排出した後に,プランジャーがバレルに挿入されている状態にある。 図3は,図1に示したプランジャーの端部における詳細な断面図である。この図のプランジャーは,カニューレアセンブリにおける引込み可能なハブ内にロックされている。すなわち,この図は,バレル内に引き込まれるプロセスにあるハブを示すための部分的な断面図である。 図4は,図1に示した注射器の断面図である。この図の注射器は,カニューレアセンブリがバレル内に完全に引き込まれているとともに,プランジャーがバレルのグリップエンドにねじ込まれている状態- 127 - にある。」(抄訳2頁23行~3頁3行)(ク) 乙9-17明細書の記載(別紙乙9-17明細書添付図面参照)a 「この発明は,概略的にいえば,使い捨ての注射器に関する。具体的には,本発明は,使い捨ての皮下注射器に関する。この注射器は,血清,抗生物質等の投与において使用することの可能なものであり,さらに,汚染及び負傷を避けるために,その鋭利な先端を有するカニューレを注射の後で引き込むことが可能となっている 関する。この注射器は,血清,抗生物質等の投与において使用することの可能なものであり,さらに,汚染及び負傷を避けるために,その鋭利な先端を有するカニューレを注射の後で引き込むことが可能となっている。」(抄訳1頁6行~9行)b 「従来技術における多くの注射器が抱えている深刻な問題は,使用後に,とがっているカニューレがむき出しになっていることから生じている。注射を施す者は,うっかりして,汚染されたカニューレで皮膚を刺してしまう可能性がある。この少なくない汚染の発生は,様々な病気(肝炎及び後天性免疫不全症候群(AIDS)を含む)を引き起こす可能性がある。」(抄訳1頁19行~23行)c 「したがって,本発明の目的は,注射の後の負傷及び汚染を実質的に防ぐ,改善された皮下注射器を提供することにある。 本発明における他の目的は,流体を排出した後に注射器バレル内に完全に引き込むことの可能なカニューレを有する改善された皮下注射器を提供することにある。 本発明における更に他の目的は,ピストンにおける前側の端部をカニューレにおける後側の端部に係合することの可能な改善された皮下注射器を提供することにある。ピストンの係合手段は,グリップ手段- 128 - あるいはねじ手段のいずれかである。 本発明における更に他の目的は,改善された皮下注射器であって,そこからピストンが完全に引っ込んでしまうことを防止する皮下注射器を提供することにある。 本発明における更に他の目的は,注射器バレルにおける前側の端部と後側の端部との間の位置に配された変形可能な部分によって,ピストンが完全に引っ込んでしまうことを防止する改善された皮下注射器を提供することにある。これにより,引っ込めた後のカ ルにおける前側の端部と後側の端部との間の位置に配された変形可能な部分によって,ピストンが完全に引っ込んでしまうことを防止する改善された皮下注射器を提供することにある。これにより,引っ込めた後のカニューレの先端が突き出ることを防止するために,バレルを湾曲させることが可能となる。 本発明における更に別の目的は,負傷及び汚染を実質的に防止するための手段を有する採血のための装置を提供することにある。 本発明における他の目的は,注射器バレル内に完全に引き込むことの可能なカニューレを有する採血のための皮下注射器アセンブリを提供することにある。」(抄訳2頁15行~3頁1行)d 「本発明の一実施形態では,ほぼチューブ状の中空のバレルを有する改善された皮下注射器が提供される。このバレルは,前側の端部において実質的に閉じている一方,後側の端部において開放されている。 このバレルの内部には,往復可能なチューブ状のピストン手段が設けられている。このピストン手段は,前側の端部に,ほぼ環状の弾性的なゴム部材を有している。このピストンの前側の端部には,注射中に前記バレル構造から突き出ているカニューレを引き込むための手段が- 129 - 設けられている。この引込み手段は,カニューレのベースに対して接合することの可能な係合手段を,ピストンにおける前側の端部に有している。したがって,注射の後,カニューレを容易かつ安全にバレルの内部に回収することが可能となっている。」(抄訳3頁7行~15行)e 「図1Aは,内部に保持された流体を注射する前の本発明の注射器の正面断面図を示す図である。 図1Bは,流体の注射を完了した後であって,カニューレを引っ込めた後の本発明の注射器を示す図である。」(抄訳3頁 持された流体を注射する前の本発明の注射器の正面断面図を示す図である。 図1Bは,流体の注射を完了した後であって,カニューレを引っ込めた後の本発明の注射器を示す図である。」(抄訳3頁24行~27行)(ケ) 乙9-18明細書の記載(別紙乙9-18明細書添付図面参照)「針を適切に廃棄することによって,針刺し受傷を避けることが意図されている。 通常,使用済みの針は,廃棄する前に,使用前に元々針を覆っていたカバーと同じカバーか,類似のカバーないし管をかぶせている。この方法は,針に向かって手を動かすことが必要であり,かぶせる過程で針刺し受傷を促してしまう。 静脈投与システムは,引込み可能な安全針を有する。鋼針静脈投与装置は,汚染された静脈針を安全に再度覆って,健康管理従事者への不意の針刺し受傷の危険を減ずる方法を提供する。 使用の際には,ウイング50をつかみ,ニプル16から管状カバー38を取り除く。ウイング50をつかみ,針を所定の場所へスライドさせ- 130 - る。針を使用した後,ウイング50及びタブ52を図2に示すように別々につかみ,タブ52及び管20をウイング50から遠ざけるように軸方向に引っ張り,図3に示すように外管10から管20を繰り出し,針30及び鋭利な先端34を外管中へ引き込む。」(抄訳2頁3行~14行)(コ) 乙9-20公報の記載(別紙乙9-20公報添付図面参照)a 「本発明は,患者の静脈あるいは他の組織内に薬剤を注入するための注入装置に関する。 (従来の技術及び発明が解決しようとする問題点)病院において患者に静脈用溶液を投与する際,とりわけ長期にわたる投与の際に生じる大きな問題として,静 の注入装置に関する。 (従来の技術及び発明が解決しようとする問題点)病院において患者に静脈用溶液を投与する際,とりわけ長期にわたる投与の際に生じる大きな問題として,静脈用液を注入した静脈から静脈用液が漏洩することがある。一般にこの漏れは,先端が鋭利な留置カテーテルすなわちバタフライ針によって静脈が内部裂傷するために生じる。その結果,溶液が漏れたり,軟組織の損傷が生じるが,静脈内に導入された薬剤が,局所刺激を与えるもの或いは軟組織に糜爛を生じさせるものである場合は重大な問題となる。」(2頁左上欄7行~20行)b 「本発明は,患者の静脈あるいは他の組織内に挿入する時に限って針の鋭利な先が露出すなわち覆いが取られた状態とし,挿入が完了すると直ぐに自動的に覆いがなされるか引き込まれるアセンブリーを提供することによって,既知の静脈注入および皮下注入装置の欠点を解消するものである。 - 131 - 本発明の装置は,先が鋭利な針の中に入れ子式に収納された先が鈍いカテーテルを含み,カテーテルと針は,バネで互いに附勢するようになっている各々の関連するハブに接続されている。受動的な状態にある時は,ハブは互いに実質的に接続し,カテーテルの鈍い先が針の鋭利な先から突き出る。この装置を静脈あるいは他の組織に挿入する場合は,楔手段を操作して,ハブと,ハブに取りつけられたカテーテルならびに針を楔で留め,適切な間隔を開けることによって,針の鋭利な先がカテーテルの鈍い先よりも突き出すようにする。挿入後は,楔手段を解除すると,バネによってハブが受動的な状態に戻り,カテーテルの鈍い先が針の鋭利な先よりも突き出す。したがって,留置期間中は,針の鋭利な先は実質的に覆われて,針を挿入した静脈あるいは他の組織 手段を解除すると,バネによってハブが受動的な状態に戻り,カテーテルの鈍い先が針の鋭利な先よりも突き出す。したがって,留置期間中は,針の鋭利な先は実質的に覆われて,針を挿入した静脈あるいは他の組織を損傷することはない。」(2頁右上欄10行~左下欄14行)c 「第1図は,静脈内への挿入前あるいは挿入後の本発明の装置のの(判決注:「装置の」の誤記と認める。)受動的な状態を示す斜視図,第2図は,挿入に際して針の鋭利な先を露出させるために,装置の柔軟な翼を畳んだ状態あるいは挟んだ状態を示す第1図と同様の斜視図,…(中略)…第6図は,装置の部分を附勢するために別のバネを用いた第1図のものと同様な装置の斜視図である。 第1図に全体を10で示す本発明の望ましい一実施態様は,前部ハブすなわち針付ハブ11と,後部ハブすなわちカテーテル付ハブ12とから成り,これらのハブは,開いた一般に三角形のバネ13によっ- 132 - て相互に連結され,バネの開いた端部をハブ11と12に取りつけてハブを互いに近接した位置に附勢する。」(2頁右下欄1行~20行)d 「さらに,故意に針の鋭利な先を露出させようとしない限り,本装置には鋭利な先が存在しないので,装置の使用中あるいは装置を廃棄する際に,作業に携わっている要員が誤って怪我をしたり汚染されたりする可能性が低減する。」(3頁右下欄19行~4頁左上欄4行)(サ) 乙9-21明細書の記載(別紙乙9-21明細書添付図面参照)a 「この発明は,医学及び科学の分野に関する。具体的には,この発明は,汚染された注射針による不注意による刺し傷から,皮下注射針のユーザを保護するための安全装置である。」(抄訳1頁5行~7行)b 「汚染された注射針が露出さ 関する。具体的には,この発明は,汚染された注射針による不注意による刺し傷から,皮下注射針のユーザを保護するための安全装置である。」(抄訳1頁5行~7行)b 「汚染された注射針が露出されている期間では,ユーザは,この針によって,負傷及び可能性のある感染の危険にさらされている。したがって,注射が実行されるたび,あるいは血液が採取されるたびに,ユーザは,偶発的な刺し傷を介した,汚染された皮下注射針からの病原体の局所的な侵入の可能性にさらされている。この発明は,上記のような不注意による偶発事故の発生を防止するという目的を考慮して,設計されている。」(抄訳1頁16行~21行)c 「この固定メカニズムは,対象者から針が引き抜かれたときに,この針を完全に封入する位置に,安全シース(さや)を自動的に固定するものである。発明者は,皮下注射針が引き抜かれているときに,安全シースが同調して突き出されていることを主張する。このために,針が対象者の表面との接触を失うのとほぼ同時に,汚染された注射針- 133 - の先端が安全シースの内部に封入されることを確実にすることが可能となる。」(抄訳2頁5行~9行)d 「図2は,この発明のツールにおける観察に基づく斜視図である。 この図では,スライド部材16が針の先端をカバーするポイントまで完全に突き出されている。 図3aは,図2に示した本発明を,側面から臨む断面図である。この図では,針の端部を露出させるために,スライド部材(16)の本体がわずかに後寄りの位置にセットされている。図3bは,図2に示した本発明を,側面から臨む断面図である。この図では,スライド部材(16)の本体が固定部材(28)の本体の内部に完全に引っ込められている。 図3cは,図 されている。図3bは,図2に示した本発明を,側面から臨む断面図である。この図では,スライド部材(16)の本体が固定部材(28)の本体の内部に完全に引っ込められている。 図3cは,図2に示した本発明を,側面から臨む断面図である。この図では,スライド部材(16)の本体が,針の先端を越えて,完全に突き出されている。」(抄訳3頁3行~11行)e 「図2のツールは,2つのほぼ円筒形の形状を有する部材,すなわち,固定部材(28)及びスライド部材(16)を備えている。図2のツールを使用するために,ユーザは,まず,24左及び24右を同時に圧迫して,これによって24の幅を狭めることによって,36から16を解放する。次に,ユーザは,図6に示されているように,スプリング30に対抗して,チャネル26内に24を引っ込める。この動作は,図3aに示されているように,チューブ42の先端41を16分の3インチほど露出させるという目的を果たす。16をチャネル26内に保持するために,ユーザは,ばね板18を押し下げて,スプリング3- 134 - 0がばね板18を突き出すことを可能とする。これにより,ばね板18の傾斜している端部17がグルーブ19内に係合し,そして,24が26内に保持されて,図3aに示されているように,41を露出させる。先端41を露出させた状態で,ユーザは,対象者の表面層を介して41を突き刺すことに取り掛かることが可能である。ユーザは,針を更に深く進めたときに,スプリング30によって与えられているテンションに対抗して,16が28内に押し込まれることを見いだすはずである。さらに,ユーザは,図3bに示されているように,弾力性のあるばね板18がその自由位置に跳ね戻ることに気付くはずである。針を除去する際,ユーザは,彼あるいは彼 に押し込まれることを見いだすはずである。さらに,ユーザは,図3bに示されているように,弾力性のあるばね板18がその自由位置に跳ね戻ることに気付くはずである。針を除去する際,ユーザは,彼あるいは彼女が針を引き抜くときに,スプリング30によって16が前方に突き出されていることに気付くはずである。」(抄訳3頁24行~4頁9行)(シ) 乙9-22明細書の記載(別紙乙9-22明細書添付図面参照)a 「本発明は,生物学的に許容されるペレットを動物の皮下に埋め込むために有用である装置及び方法に関係する。より詳細には,本発明は,ペレットを格納する針が動物に皮下挿入され,次に,ペレットの周りから引き戻されることを可能にさせ,このようにしてペレットを埋め込む装置に関する。」(抄訳1頁4行~7行)b 「これまでは,ペレットは,ある種のプランジャーを使用してペレットが針から押し出される機器を使用して埋め込まれていた。…(中略)…かなり大きい圧力がペレットに加えられ,ペレットは,大きな注意が払われない限り,分解するか,ひびが入るか,または,- 135 - さもなければ,堆積時に破損し,デリバリー特性を変える。複数個のペレットが1本の針から埋め込まれる場合,すべてのペレットが1箇所に堆積しないということもあり得る。」(抄訳1頁11行~19行)c 「図5は,図1の装置の垂直断面の側面図である。」(抄訳3頁5行)d 「キャリッジは,キャリッジをトラックの前方部分から後方部分へ移動させる図1に示されていない手段によって,トラックに沿って推進される。推進の手段は,キャリッジを後方へ押すら旋状コイルばねでもよく,キャリッジを後方へ引き寄せるため一端がキャリッジ10の後方に取り付けられてい 示されていない手段によって,トラックに沿って推進される。推進の手段は,キャリッジを後方へ押すら旋状コイルばねでもよく,キャリッジを後方へ引き寄せるため一端がキャリッジ10の後方に取り付けられているコイル状の渦巻きばねでもよく,または,キャリッジを後ろに押すための圧縮ガスの円筒体でもよい。好ましい手段は,キャリッジを後方へ押すら旋状コイルばねである。」(抄訳4頁9行~14行)e 「本装置は,針50の鋭利な斜端を,少なくともロッド28の前方先端まで,動物の皮下に挿入し,引き金32の先端40を下向きに移動させる引き金32を引き,これによって,キャリッジを放出し,ばね22が伸び,キャリッジをトラック4の後背部24へ後方に押し付けることを可能にすることによって利用される。ペレット53は,針50がペレットの周りから回収される間に静止したままであり,ペレットは,次に動物の皮膚の下にとどまる。」(抄訳8頁6行~11行)- 136 - (ス) 乙9-23明細書の記載(別紙乙9-23明細書添付図面参照)a 「ポケットクリップ16を単純に中に押し込むことにより,ラッチが外され,また,ライティング・ポイントが引込みのために自由になる。これにより,プランジャと共に,ボール・カートリッジのピン19は,スプリング22により,後方に移動する。」(抄訳3行~6行)b 「ユニット6を引き込むためにラッチ留めを外すバー18に,例えばセパレイト・ボタンのような適した方法を採用することもできる。」(抄訳8行・9行)(セ) 乙9-24明細書の記載(別紙乙9-24明細書添付図面参照)「例えば,ガイド106を用いて組み立てると,作動部材110は,横の開放部111に対して配置されており (セ) 乙9-24明細書の記載(別紙乙9-24明細書添付図面参照)「例えば,ガイド106を用いて組み立てると,作動部材110は,横の開放部111に対して配置されており,それを通して内側のくぼみに接触できる,また,作動部材110は,できれば,横の胴の開放部111を通ってポケットクリップ部材112と一体化して,オペレイティング・ポジションの位置にある。ライティング・ユニットが引き込まれた場合が図1にある。ライティング・ユニット103が突出した場合が図2である。」(抄訳3行~8行)(ソ) 乙9-25明細書の記載(別紙乙9-25明細書添付図面参照)「万年筆の引込み機構の操作レバーは,クリップ44内部の43を支点としているヒンジレバー42から構成される。同部材のフィンガーピース47は,圧縮ばね46に押され,プッシュボタン37に差し込まれたチェックリング47に抗している(図2)。」(抄訳3行~6行)- 137 - (タ) 乙9-29文献の記載内容(別紙乙9-29文献写真参照)昭和51年にグッドデザイン賞を受賞した,クリップの横にあるボタンを押すことにより,ケースの内部にペン先が収納される,ボールペンである「ボクシーBX-100」の写真。 (チ) 想到容易性についてa 乙9-2公報記載の発明前記(ア)認定の事実によれば,乙9-2公報には,次の発明(以下「乙9-2発明」という。)が記載されているものといえる。 「バイオプシー用注射器において,プランジャを中空な注射器本体の後端に向かって付勢するスプリングと,プランジャから独立して移動可能であり,プランジャをスプリングの力に抗して一時的に注射器本体 「バイオプシー用注射器において,プランジャを中空な注射器本体の後端に向かって付勢するスプリングと,プランジャから独立して移動可能であり,プランジャをスプリングの力に抗して一時的に注射器本体の前端に隣接して保持する戻り止めが形成された可撓性を有する突起であって,手動により駆動され,可動コアを具えるプランジャの移動距離よりも短い距離のみ移動する突起とを設け,突起を手動で押圧して,戻り止めによるプランジャの保持を解除することで,組織のサンプルを吸引するためのプランジャの後退による負圧の発生を,片手のみで行えるようにした注射器。」b 想到容易性の検討(a) 乙9-2発明について乙9-2発明には,次の技術が開示されているものといえる。 ⅰ プランジャを中空な注射器本体の後端に向かって付勢するスプリングと,- 138 - ⅱ 前記プランジャから独立して移動可能であり,前記プランジャを前記スプリングの力に抗して一時的に前記中空の注射器本体の前端に隣接して保持する戻り止めが設けられた突起であって,可動コアの長さよりも短い振幅で手動により駆動され,前記可動コアの移動距離よりも短い距離のみ移動する突起。 乙9-2発明の「注射器」は,操作者がつかむものであるから,本件訂正発明1の「ハンドル」に相当する(甲12)。また,乙9-2発明の「後端」,「スプリング」は,本件訂正発明1の「近い端」,「付勢手段」にそれぞれ相当する。さらに,乙9-2発明の「突起」は,一体となった戻り止めにより,可動コアを中空の注射器本体に固着させるとともに,これを解除し,かつ当該注射器本体内に後退させるための部材であるといえるから,前記2(2)アのとおり,本件訂正 突起」は,一体となった戻り止めにより,可動コアを中空の注射器本体に固着させるとともに,これを解除し,かつ当該注射器本体内に後退させるための部材であるといえるから,前記2(2)アのとおり,本件訂正発明1の「ラッチ」に相当する。 この点につき,被告らは,乙9-2発明の可動コアが針状で針の構成要素でもあるから,本件訂正発明1のニードルに相当し,可動コアを連結する乙9-2発明のプランジャが本件訂正発明1のニードルハブに相当する旨主張する。しかしながら,前記(ア)a・d・fのとおり,乙9-2公報には,可動コアとは別に注射針が存在する旨の記載がある。また,本件訂正発明1の「ニードル」は,カニューレを患者の定位置に案内し運ぶためのものであって(構成要件1-C),医療従事者の針刺し事故を防ぐために後退させられるものであるのに対し(甲2。10欄45行~50行),- 139 - 乙9-2発明の「可動コア」は,針状の部材ではあるものの,前記(ア)c・dのとおり,針内に異物が侵入するのを防ぐためのものであって,組織や体液を針から吸い込むための負圧を生じさせるために後退させられるものであり,両者は目的・機能を全く異にする。したがって,被告らの上記主張は,採用することができない。 以上より,乙9-2発明には,相違点bに係る構成要件1-Dに対応した「ニードルハブを中空なハンドルの近い端に向かって付勢する付勢手段」という構成がないため,乙9-1発明に乙9-2発明を組み合わせても,本件訂正発明1の構成には到達しない。 (b) 周知技術の主張について前記(エ)~(カ),(コ)~(ソ)のとおり,乙9-13~15・20~25公報・明細書には,「付勢手段」に相当する技術が記載されている。しかしながら,乙 b) 周知技術の主張について前記(エ)~(カ),(コ)~(ソ)のとおり,乙9-13~15・20~25公報・明細書には,「付勢手段」に相当する技術が記載されている。しかしながら,乙9-20公報記載の技術には「中空なハンドル」がなく,同記載の付勢手段は「中空なハンドルの近い端に向かって付勢する」ものではない。また,乙9-21公報記載の付勢手段は,スライド部材(さや)を固定部材の遠い端に向かって付勢するだけで,「ニードルハブを中空なハンドルの近い端に向かって付勢する」ものではない。また,乙9-22明細書記載の付勢手段は,ニードルハブが後退する「中空なハンドル」がなく,同記載の付勢手段は「中空なハンドルの近い端に向かっ- 140 - て付勢する」ものではない。さらに,乙9-23~25明細書記載の技術は,筆記具の技術分野に属するものであって,「ニードルハブ」がなく,同記載の付勢手段は「中空なハンドルの近い端に向かって付勢する」ものではない。このため,乙9-1発明に乙9-20~25公報・明細書記載の各技術を組み合わせても,本件訂正発明1の構成には到達しない。 これに対し,乙9-13~15公報・明細書には,付勢手段が「ニードルハブを中空なハンドルの近い端に向かって付勢する」技術に相当する技術がうかがわれる。また,乙9-13~15公報・明細書記載の技術は,注射器の分野であって,針とハンドルを有する医療器具という意味においてカニューレ挿入装置の技術分野と類似する。しかしながら,証拠(甲2)によれば,本件明細書1には,「本発明者は明確と簡単のために注射を与えるために注射器と併用される針を「皮下針」と称することにする。血液を抜く場合に用いられる針を「刺胳針」と呼ぶことにする。この用語法により,本発明者はす は,「本発明者は明確と簡単のために注射を与えるために注射器と併用される針を「皮下針」と称することにする。血液を抜く場合に用いられる針を「刺胳針」と呼ぶことにする。この用語法により,本発明者はすべてのかかる針をカニューレ挿入,即ち,本発明の分野に用いられる針と明瞭に区別するつもりである。」(3欄34行~42行)と記載されていることが認められるから,本件訂正発明1は,注射器を意識的に除外したカニューレ挿入装置の技術分野について行われたものである。そして,乙9-13明細書記載の技術は,針を損傷や汚染から保護したり針を見た患者が抱く不安等を緩和したりすることを課題とするもので- 141 - ある。また,乙9-14明細書記載の技術は,患者でも行える自動注射を課題とするものである。さらに,乙9-15公報記載の技術は,比較的安価で使用方法が簡単な上に効果的なランセット注射器の提供を課題とするものである。これらの課題は,簡単な一体的運動で針をハンドル内に後退させることによってカニューレ挿入装置における医療従事者の針刺し事故を防ぐという本件訂正発明1の課題や(甲2。10欄45行~50行,11欄17行~21行),前記ア(ア)eのとおり,皮下注射針において操作者の針刺し事故を防ぐという乙9-1発明の課題とは全く異なる。特に,前記(オ)・(カ)のとおり,乙9-14明細書記載の技術は,巻きばねを注射器の後端部に配置し,乙9-15公報記載の技術も,ばねをホルダよりも後端側に配置するものであって,乙9-1発明と組み合わせることがいずれも困難である。このため,乙9-13~15公報・明細書記載の技術は,本件訂正発明1や乙9-1発明と課題を全く異にする上,特に乙9-14・15公報・明細書記載の技術については,乙9-1発明との組合せも困難であるから,乙 ,乙9-13~15公報・明細書記載の技術は,本件訂正発明1や乙9-1発明と課題を全く異にする上,特に乙9-14・15公報・明細書記載の技術については,乙9-1発明との組合せも困難であるから,乙9-1発明に乙9-13~15公報・明細書記載の各技術を組み合わせて本件訂正発明1を容易に想到する論理付けができるとはいえない。 他に相違点bに係る構成要件1-Dの「ニードルハブを中空なハンドルの近い端に向かって付勢する付勢手段」に相当する先行技術を認めるに足りる証拠はない。 - 142 - ウ小括以上によれば,その余の点について検討するまでもなく,本件訂正発明1は,当業者が乙9-1発明,乙9-2発明及び周知技術から容易に想到し得なかったものであり,進歩性を有する。したがって,本件特許1の請求項1は,特許無効審判で無効とされるべきものではない。 (2) 乙9-1公報記載の発明と周知技術に基づく本件訂正発明1の想到容易性ア本件訂正発明1と乙9-1発明との対比について本件訂正発明1と乙9-1発明との一致点及び相違点は,前記(1)ア(ウ)のとおりである。 イ相違点に係る本件訂正発明1の構成の容易想到性について証拠(乙9の5・6・10)によれば,次の事実が認められる。 (ア) 乙9-5公報の記載(別紙乙9-5公報添付図面参照)a 「本発明はナイフ,くし等のとび出し機構に係り,その目的はナイフの刀身部やくし等をそのケースよりワンタッチで出し入れし得るようにした機構を提供するにある。」(1頁右下欄3行~6行)b 「さて,第6図(a)は刀身部12がケース1からとび出した状態を示し,この状態において板バネ24は操作レバー10の軸支位置より うにした機構を提供するにある。」(1頁右下欄3行~6行)b 「さて,第6図(a)は刀身部12がケース1からとび出した状態を示し,この状態において板バネ24は操作レバー10の軸支位置より先端側を押圧しているので,同操作レバー10は支持軸6を中心としてP矢印方向へ回動されその先端は刀身部12の基端面に係合するとゝもに,第一係止爪20は同じく刀身部12の係合突起14に係合している。 - 143 - そこで,この状態から操作ボタン18を上部カバー25のガイド溝26に沿つて,反Q矢印方向(後方)へ移動させると,第一係止爪20は前記のように刀身部12の係合突起14に係合したままの状態を保持しながらバネホルダー15が同第一係止爪20より離間してコイルバネ16を引伸し蓄勢させながら同じく反Q矢印方向へ移動する。 この時,前記第一係止爪20はコイルバネ16の引張力により刀身部12を反Q矢印方向へ引張ろうとするが,前記のように操作レバー10先端が刀身部12の基端面に係合しているので同刀身部12はそのまゝの状態を維持する。(第6図(b)参照)しかし,操作レバー10の上面10aを摺接する板バネ24が操作レバー10の軸6支位置を後方へと過ぎてその基端側に至ると,操作レバー10は支持軸6を中心として反P矢印方向に回動され,操作レバー10先端の刀身部12基端面に対する係合が解除されて,刀身部12は一気にコイルバネ16の引張力により第一係止爪20に引張られて後動しケース1内に収納される。」(2頁右下欄11行~3頁右上欄7行)(イ) 乙9-6文献の記載(別紙乙9-6文献添付図面参照)a 「本考案はとび出しナイフに係り,特にナイフの刃先をスプリングの力によつてとび出し時及び収納 ~3頁右上欄7行)(イ) 乙9-6文献の記載(別紙乙9-6文献添付図面参照)a 「本考案はとび出しナイフに係り,特にナイフの刃先をスプリングの力によつてとび出し時及び収納時に於いて極めて急速に動作させることができるように構成したとび出しナイフに関するものである。 従来よりスプリングの力を利用して,ナイフの刃先をとび出させるように構成したとび出しナイフが知られているが,従来のこの種のと- 144 - び出しナイフは,刃先をとび出させる時においてのみ,スプリングの力を利用していたが,刃先の収納時においては直線的に収納する場合にはその自重を利用し,折り畳み式の場合には手を利用して強制的に折り畳むという構造が採用されていた。 従つて一方の手のみによつて刃先のとび出し及び収納を行うことは,自重を利用した場合以外には実現することができなかつた。 本考案の目的は刃先のとび出し及び収納をも片手のみによつて自由に行うことができるように構成したとび出しナイフを提供するにある。」(3頁8行~4頁7行)b 「この状態でナイフを使用し,刃先8を収納したい場合には,操作片5を後方に引けばよい。すると,作動板24が後退し,突起26は板ばね21の幅広部21cの下側から脱し,幅狭部21eの下側に入る。この結果板ばね21はその先端の折曲部23が開口部18中に嵌入し,枠体7の内側にその先端を臨ませる。 また,作動板24の後退に伴なつて突起30は板ばね22の幅広部22cの下側へ入ろうとするが最初の間は幅狭部22eの下側を移動する。この間,板ばね22はたわまず,その折曲部23の先端は枠体7の内側に突出した状態にあり,刃先8の後端部を係止している為,刃先8の後退は生じない 入ろうとするが最初の間は幅狭部22eの下側を移動する。この間,板ばね22はたわまず,その折曲部23の先端は枠体7の内側に突出した状態にあり,刃先8の後端部を係止している為,刃先8の後退は生じない。ところが作動板24の後退に伴なつて,コイルばね32の後端に固定された係止板34は作動板24の後端の支持部25によつて押され,コイルばね32の先端側の係止板34は突起35によつて係止された状態にある為,コイルばね32は伸び弾性- 145 - エネルギーが蓄積される。 作動板24の後退が続くとその突起30は板ばね22の幅広部22cの内側に位置した状態となる。この結果,板ばね22はたわみ,その折曲部23は開口部19中に引き込まれる。従つて,刃先8の後端を係止しなくなり,コイルばね32の弾性エネルギーが開放され,係止板34が内側に引かれ,突起35を介して刃先8は勢いよくケース内に引き込まれる。」(16頁9行~17頁15行)(ウ) 乙9-10明細書の記載(別紙乙9-10明細書添付図面参照)a 「本発明は,通常的には,ブレード引込み式ペンシル形ナイフに関し,より具体的には,切削操作時の好まれざる左右及び上方へのぶれを防止するような手段を備えたナイフに関する。」(抄訳1頁6行~8行)b 「これら従来の装置では,バレル部材とブレードアセンブリとを十分細かな公差で形成して,バレル部材中でのブレードアセンブリの左右及び上下へのぶれをほぼすべてなくすようにすることは,経済的見地から現実味を欠いていたが,ユーザの立場からは,ブレードアセンブリのぶれを実質的になくすことがとても望まれていた。 本発明のナイフは,ブレードアセンブリをこのブレードアセンブリの切削操作時の左右及び上方へのぶれが実質 立場からは,ブレードアセンブリのぶれを実質的になくすことがとても望まれていた。 本発明のナイフは,ブレードアセンブリをこのブレードアセンブリの切削操作時の左右及び上方へのぶれが実質的になくなるように形成することにより,従来の装置における上記欠点を克服する。」(抄訳1頁17行~23行)c 「図1は,本発明のナイフのブレードアセンブリが引込み若しくは- 146 - 非作動位置にある状態での側面図;図2は,図1の2-2線に沿ったナイフの拡大軸方向断面図」(抄訳2頁12行~14行)d 「このボタン44を押圧し,前記膨大部45を移動させてサポート部材12との係合から離すと,前記ブレードアセンブリ21は,ばね36の作用により,その非作動位置への戻りが許容される。したがって,ブレードアセンブリ21の非作動位置からその作動位置への移動及び復帰が容易に達成される。」(抄訳4頁4行~7行)(エ) 想到容易性について前記(1)イ(チ)b(b)のとおり,乙9-3・4・13~18・20~25・29記載の技術から本件訂正発明1を容易に想到する論理付けができるとはいえない。 また,前記(ア)~(ウ)のとおり,乙9-5・6・10公報・明細書・文献には,「付勢手段」に相当する技術が記載されている。しかしながら,乙9-5・6・10公報・明細書・文献記載の技術は,ナイフの技術分野に属するものであって,「ニードルハブ」がない。このため,乙9-1発明に乙9-5・6・10公報・明細書・文献記載の各技術から,本件訂正発明1の構成を容易に想到する論理付けができるとはいえない。 ウ小括以上によれば,その余の点について検討するまでもなく,本件訂正発明1は, 細書・文献記載の各技術から,本件訂正発明1の構成を容易に想到する論理付けができるとはいえない。 ウ小括以上によれば,その余の点について検討するまでもなく,本件訂正発明1は,当業者が乙9-1発明及び周知技術から容易に想到し得なかったものであり,進歩性を有する。したがって,本件特許1の請求項1は,特許- 147 - 無効審判で無効とされるべきものではない。 (3) 乙11-1公報記載の発明と周知技術に基づく本件発明2-1・3・5の想到容易性ア本件発明2-1・3・5と乙11-1公報記載の発明との対比について(ア) 本件発明2-1について前記5(1)ア(ウ)aのとおり,本件発明2-1と乙11-1発明①とは,本件発明2-1では,中空針が後退するエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段があるのに対し(構成要件2-1-F),乙11-1発明①では,これがない点で相違する。 (イ) 本件発明2-3についてa 乙11-1公報記載の発明前記5(1)ア(ア)認定の事実によれば,乙11-1公報には,次の発明(以下「乙11-1発明②」という。)が記載されているものといえる。 (a) 乙11-1発明①において,(b) 中空ハンドルに固定された表面と,(c) 針に把持されて前記表面に流体密封を与えるキャリヤブロックと(d) を備える安全装置。 b 本件発明2-3と乙11-1発明②との一致点乙11-1発明②の「中空ハンドルに固定された表面」,「針に把持されて前記表面に流体密封を与えるキャリヤブロック」は,本件発明- 148 - 2-3の「前記ハンドルの内部孔…に固 乙11-1発明②の「中空ハンドルに固定された表面」,「針に把持されて前記表面に流体密封を与えるキャリヤブロック」は,本件発明- 148 - 2-3の「前記ハンドルの内部孔…に固定された表面」,「前記針…に担持されて前記表面に圧接(す)る要素」にそれぞれ相当する。 したがって,本件発明2-3と乙11-1発明②とは,「乙11-1発明①において,前記ハンドルに固定された表面と,前記針に担持されて前記表面に圧接する要素とを備える安全装置。」である点で一致する。 c 本件発明2-3と乙11-1発明②との相違点本件発明2-3と乙11-1発明②とは,前記(ア)の相違点に加え,本件発明2-3では,中空針に担持されてハンドルに固定された表面に圧接する要素が中空針の後退の間に摩擦を生じるのに対し(構成要件2-3-C),乙11-1発明②では,上記要素が中空針の後退の間に摩擦が生じているとは認められない点で相違する。 (ウ) 本件発明2-5についてa 乙11-1公報記載の発明前記5(1)ア(ア)認定の事実によれば,乙11-1公報には,次の発明(以下「乙11-1発明③」という。)が記載されているものといえる。 (a) 乙11-1発明①において,(b) 前記中空のハンドルは,前記針がそれに向かって後退する内側円錐台状ストッパ部分を有する- 149 - (c) 安全装置。 b 本件発明2-5と乙11-1発明③との一致点乙11-1発明③の「内側円錐台状ストッパ部分」は,本件発明2-5の「端部構造」に相当する。 ) 安全装置。 b 本件発明2-5と乙11-1発明③との一致点乙11-1発明③の「内側円錐台状ストッパ部分」は,本件発明2-5の「端部構造」に相当する。 したがって,本件発明2-5と乙11-1発明③とは,「乙11-1発明①において,前記中空のハンドルは,前記針がそれに向かって後退する端部構造を有する安全装置。」である点で一致する。 c 本件発明2-5と乙11-1発明③との相違点本件発明2-5と乙11-1発明③とは,前記(ア)の相違点に加え,本件発明2-5では,中空針と端部構造のうちの一方に固定されて端部構造に対する中空針の衝撃の一部を吸収する押し潰し可能な要素があるのに対し,乙11-1発明③では,これがない点で相違する。 イ相違点に係る本件発明2-1・3・5の構成の想到容易性について証拠(乙11の2・4~16,11の17の1・2,11の18~25)によれば,次の記載が認められる。 (ア) 乙11-2公報の記載(別紙乙11-2公報添付図面参照)a 「本体と,この本体内に取付けたプランジヤと,針ホルダと,前記プランジヤの注射ストロークの後の再後退によって針を前記本体内の遮蔽位置に引込むよう注射ストロークの終わりに前記針ホルダに前記- 150 - プランジヤを連結する手段と,注射ストロークの後に挿入ストロークによって付勢され前記プランジヤと前記針とを後退させるエネルギ貯蔵手段とを具え,前記本体と前記プランジヤとの間に画成した空間内に弾性制動手段を配置し,前記本体と前記プランジヤとの一方に前記弾性制動手段を配置し,注射ストローク後前記プランジヤと前記針との後退 蔵手段とを具え,前記本体と前記プランジヤとの間に画成した空間内に弾性制動手段を配置し,前記本体と前記プランジヤとの一方に前記弾性制動手段を配置し,注射ストローク後前記プランジヤと前記針との後退を遅らせるのに十分であるが停止させない程度に前記本体と前記プランジヤとの他方に前記弾性制動手段を圧着することを特徴とする注射器。」(特許請求の範囲請求項3)b 「本発明は注射器,また特に使用後の注射針による汚染又は汚染の恐れを防止し,使用後の注射針を刺して身体が損傷を受けるのを防止し,更に1度使用した注射器を誤って再び使用するのを防止するようにした安全な注射器に関するものである。」(2頁左下欄4行~7行)c 「注射器の使用後,注射針を注射器の本体内に後退させ,或る方法でそこに注射針を拘束する構造の注射器の設計が非常に多く試みられている。これ等の設計では,いずれも不注意により注射針を刺して損傷を受けること及びそれに伴う接触感染の危険を防止するため,更に1度使用した注射器を再度使用することがないよう防止するため,使用後の注射針を覆うことをその目的としている。」(2頁左下欄16行~右下欄1行)d 「プランジヤを自動的に後退させる上記の先行技術では,プランジヤを押込んだ状態に保持する手の圧力を除くと,ばねが伸長した状態になろうとして直ちにプランジヤの復帰を開始し,同時に注射針の注- 151 - 射器の本体内への後退が開始される欠点がある。このため,注射器が患者の身体から完全に去るまで,操作者が押込まれたプランジヤを意識して保持しない限り,患者の組織が傷つき,希望しないのに不随意に注射器内に患者の血液が吸引される恐れがある。本発明の第2の要旨では注射針の注射器本体内への後退の少なくとも最初の段階で,その を意識して保持しない限り,患者の組織が傷つき,希望しないのに不随意に注射器内に患者の血液が吸引される恐れがある。本発明の第2の要旨では注射針の注射器本体内への後退の少なくとも最初の段階で,その後退早さを遅らせる制動手段を設ける。」(2頁右下欄10行~19行)e 「第1図は右半分に使用前の状態を示し,左半分に注射ストロークの終わりの状態と,異なる位置にある注射針とを示す,本発明の好適な実施例の注射器の線図的縦断面図である。 第2a~2e図は本発明の他の好適な実施例の注射器の5個の縦断面図で,第2a図は使用のため輸送する時の注射器の状態を示し,第2b図は注射器内に注射液を吸上げる状態を示し,第2c図は注射器内に注射液を吸上げ,空気を追出してまさに注射できる状態を示し,第2d図は注射が終わった直後の状態を示し,第2e図は注射器の本体内に注射針を自動的に後退させた状態を示す。」(3頁左下欄7行~16行)f 「プランジヤ4に半径方向に伸びる制動フランジ20を設けて本体2の内面に摩擦掛合させ,真空室18内に生ずる真空の作用を受けて,プランジヤ4が不随意に後退するのを防止する。」(4頁左上欄4行~6行)(イ) 乙11-4公報の記載- 152 - a 「本発明は陰極線管(以下CRTという。)の目盛照明装置,特にフエースプレートの端部から目盛を照明するCRTの目盛照明装置に関する。」(1頁左下欄13行~15行)b 「この楔状部材(26)の内面は夫々突起部(20)と係合する楔状の形をしていて,例えばデルリン(DELRIN)という商品名で市販されているプラスチック物質のような適当な物質でモールドするのが好ましい。」(2頁左下欄11行~15行)c 「装置 楔状の形をしていて,例えばデルリン(DELRIN)という商品名で市販されているプラスチック物質のような適当な物質でモールドするのが好ましい。」(2頁左下欄11行~15行)c 「装置が過度の衝撃を受けると,プラスチツクの楔状部材(26)が衝撃吸収体として作用する。」(2頁右下欄15行・16行)(ウ) 乙11-5公報の記載a 「この発明はすりガラス連結部分の雌,雄部分を一体に保持するクリップに関するものである。」(1頁右下欄18行・19行)b 「特に好ましい材料はポリオキシメチレンで,例えば,融点約175℃のデュポン社製の登録商標「デルリン」がある。この製品は,この発明に必要な温度安定性と柔軟性という非常に優れた特性を有しているものであって好ましい。」(2頁右下欄2行~6行)(エ) 乙11-6公報の記載「本考案は粘性流体を用いた衝撃エネルギ吸収装置さらに詳しくいえばアキユムレータとして密封手段を兼ねた体積弾性体を用いた衝撃エネルギ吸収装置に関する。」(1頁左下欄25行~28行)(オ) 乙11-7公報の記載a 「内燃機関から自動車の縦方向に突出する付属機器をもつ内燃機関- 153 - において,特定値以上の縦方向衝撃荷重により付属機器の保持部の所で変形する際抵抗に抗する粘性物質の移動によつて衝撃エネルギーを吸収するように,付属機器が内燃機関に保持されていることを特徴とする,自動車に設けられて駆動される付属機器をもつ内燃機関。」(特許請求の範囲請求項11)b 「本発明は,内燃機関から自動車の縦方向に突出する付属機器,すなわち内燃機関を自動車の前部へ設ける際はこの内燃機関を越えて前方へ突出しまた内燃機関を後部へ設ける際はこの 請求項11)b 「本発明は,内燃機関から自動車の縦方向に突出する付属機器,すなわち内燃機関を自動車の前部へ設ける際はこの内燃機関を越えて前方へ突出しまた内燃機関を後部へ設ける際はこの内燃機関を越えて後方へ突出しかつ自動車に設けられて場合によつては駆動されたとえばベルト車により駆動される付属機器等をもつ内燃機関に関する。」(3欄21行~27行)(カ) 乙11-8公報の記載「本発明は,主体と支持体間において衝撃や振動エネルギーの伝達を低減する振動絶縁装置に関する。 従来このような絶縁装置としては,その挙動がもつぱらその固有の構造特性による受動絶縁装置例えば,ばね,及びばねとダツシユポツトの組合せの如きもの…(中略)…があつた。」(2欄11行~21行)(キ) 乙11-9公報の記載「本考案はプレス機械におけるダイクツシヨン装置のストローク上限停止装置に関するもので,特にダイクツシヨンストローク上限ストツパの衝突時のシヨツクを少なくできるようにしたダイクツシヨン装置のストローク上限停止装置に係るものである。 - 154 - 従来よりダイクツシヨンストローク上限ストツパ衝突時のシヨツク防止のための液圧ダツシユポツトを使用して上限衝突時の速度を遅くしてストツパに当てることにより衝突力を緩和している。」(1欄16行~25行)(ク) 乙11-10公報の記載a 「シリンダ内を往復する打撃子と該打撃子により打撃される先端工具を備え,被削材に衝撃力を与える電気ハンマー等の衝撃工具において,前記シリンダの先端部に配設され,前記打撃子を一時的に保持するマウスと,前記先端工具のシヤンク部と係合するシヤンクスリーブとの間に弾性体より成るダンパ 撃力を与える電気ハンマー等の衝撃工具において,前記シリンダの先端部に配設され,前記打撃子を一時的に保持するマウスと,前記先端工具のシヤンク部と係合するシヤンクスリーブとの間に弾性体より成るダンパーを配設し,該ダンパーの下面側は前記先端工具の戻り衝撃を前記シヤンクスリーブを介して吸収するよう構成すると共に,上面側は前記打撃子の空打ち動作による下降衝撃力を前記マウスと協働して吸収するよう配置して成り,前記ダンパーは前記先端工具の往復をガイドするフロントカバの固着により挾着固定して成る衝撃反力緩和装置。」(実用新案登録請求の範囲)b 「本案は電気ハンマー等の先端工具の駆動による本体への衝撃反力及び打撃子の空打ちによる衝撃力を緩和する装置に関する。」(1欄35行~37行)(ケ) 乙11-11公報の記載a 「本発明は,筆記具の前進後退機構に関する。」(1頁右下欄8行)b 「上記筆記具で,弾性体で筆記体を引き戻すときの衝撃を緩和させるために,適宜な停止部位に高弾性吸収材等の衝撃緩衝材を設けるこ- 155 - とができる。」(4頁左下欄17行~19行)c 「以上では,筆記具について説明したが,口紅やアイシャドウなどの化粧用具や容器,ナイフ等の刃物,治工具,その他の前進後退が必要な装置に転用できるものである。」(4頁右下欄9行~12行)(コ) 乙11-12公報の記載(別紙乙11-12公報添付図面参照)a 「本発明は使用済み皮下注射器や医療サンプラー等の針によって,不用意に針で皮膚が刺されるのを防止する装置に関する。そのような使用済み針は危険であり,使用後,針の先端を鞘で覆う等の廃棄手順管理により,その危険を低減するよう相当な注意が払われている。又,1度使 不用意に針で皮膚が刺されるのを防止する装置に関する。そのような使用済み針は危険であり,使用後,針の先端を鞘で覆う等の廃棄手順管理により,その危険を低減するよう相当な注意が払われている。又,1度使用した後,針を自動的に引き込ませる方法について数多くの提案が為されている。しかし,今日までのところ,信頼性があって,商業的に成り立つ実際的な提案は未だなされていない。又,針退却手段を持たない現存製品のコストにほぼ匹敵するような生産コストで作られるようなものは勿論存在しない。 本発明は実用性が高く製造コストの低い,信頼性の高い自動針退却装置を提供するものである。」(全訳3頁右上欄4行~14行)b 「本発明のさらに別の特徴として,一体に成形されたプランジャーの内部部材により,退却した針が簡単にしかも効果的で確実に保持される。プランジャーの内部に形成した補足部材は,例えばフィン,リブ,又は平坦面等,テーパーをつけた単純な部材として構成できる。 そのようなテーパー付部材は,退却針のハブ又はホルダーの動きをゆるめ,停止させ,そして効果的に把持するように,しかも両端を尖ら- 156 - せた針がプランジャーの外に突き出ないように配置形成することができる。」(全訳4頁右下欄20行~27行)c 「さらに図2~4にはプランジャー105の内部に内側に傾斜したテーパー部105Fが示されている。これはバネ133の力で,針ホルダー又はハブ117が強制的に退却させられる時に,針ホルダー又はハブ117を把持するためのフィン,又はリブ,あるいは平坦部で構成できる。」(全訳6頁左下欄21行~25行)(サ) 乙11-13明細書の記載(別紙乙11-13明細書添付図面参照)a 「この発明は,一般に,医療器具に関す あるいは平坦部で構成できる。」(全訳6頁左下欄21行~25行)(サ) 乙11-13明細書の記載(別紙乙11-13明細書添付図面参照)a 「この発明は,一般に,医療器具に関する。より具体的には,この発明は,患者の体内に対して液体を注入するため,および,患者の体内から液体を採取するための特別な注射器に関する。」(全訳3頁10行~12行)b 「周知のように,注射器には,数えきれないほどの非常に重要な医学的用途がある。また,医学界においては同様に知られていることであるが,このようなすべてのデバイスに関連して,重大な問題が発生してきている。 この問題は,恐ろしい病気,特に生命に関わる現時点においては不治の病(例えば,後天性免疫不全症候群(「AIDS」)及び肝炎等。 これらは,人々の間における体内物質の交換によって伝染する。)が継続的に存在していることに起因する。これらの病気のために,医療機関は,患者に液体を注入するため,及び,患者から液体を採取するために,専ら使い捨ての注射針を使用するようになってきている。 - 157 - しかしながら,医療関係者自身にとっては,感染している患者から引き抜かれた針の先端に不注意に接触してしまうところに,依然として危険な残存リスクが維持されている。医療用の針は,非常に鋭くなるように,かつ,ほんのわずかな圧力をかけるだけで,皮膚及び肉に突き刺さるように,特別に設計され,製造されている。 その結果,普通ならば取るに足らない引っかき傷あるいはピン刺しとなるものが多くの医療関係者や他の者に対して危険な病気を(あるいは死さえも)引き起こす可能性があるとともに,現に引き起こされている。」(全訳3頁14行~4頁1行)c 「図 はピン刺しとなるものが多くの医療関係者や他の者に対して危険な病気を(あるいは死さえも)引き起こす可能性があるとともに,現に引き起こされている。」(全訳3頁14行~4頁1行)c 「図1は,私の発明における好ましい実施形態(主に長手方向の部分)を示す側面図である。この図の状態は,針が伸長された位置において注射器バレルに対して直接的に固定されている。すなわち,この状態は,開放及び引込み手段が針をバレル内に引き込むために作動される前の状態である。」(全訳17頁5行~8行)d 「図13は,同じ実施形態における長手方向の正面図であり,完全に引き込まれている針を示している。」(全訳18頁6行・7行)e 「搬送構造が引込みバレルの後側の近傍において保持フィンガー97に到達すると,後側の部分44のテーパーの付けられた表面95がこれら複数の保持フィンガー97をばらすように押圧し,これにより,搬送部が通過できるようになる。そして,これらのフィンガーは,再び内側に跳ね戻り,図13に示すように,後側の部分44の前側のエッジを捕獲する。 - 158 - この捕獲は,余分なことのように思われるかもしれない。しかしながら,このことは,有用となる場合もある。それは,ユーザーあるいは恐らく他の個人(例えばごみ処理係の人等)が,その後に,注射器バレル10の前側の端部からハブアセンブリ40を取り外すことにより,注射器の開放されている前側の端部から針先42が突き出ることが可能となっているときである。」(全訳28頁5行~14行)(シ) 乙11-14明細書の記載(別紙乙11-14明細書添付図面参照)「他の困ったことは,本装置の使用後にバレル12の後方から残った液体が漏れ出す又は飛び散ることで 4行)(シ) 乙11-14明細書の記載(別紙乙11-14明細書添付図面参照)「他の困ったことは,本装置の使用後にバレル12の後方から残った液体が漏れ出す又は飛び散ることである。かかる漏出は,バレル12内に,テフロン<R>のような生物学的に不活性な材料よりなる殺菌された吸収繊維パッドないしスポンジ170(図4)を備えることによって最小化される。」(抄訳2頁25行~28行)(ス) 乙11-15公報の記載(別紙乙11-15公報添付図面参照)a 「この発明は無針皮下注射器,特にスプリング式無針注射器に関するものである。」(2頁右上欄10行・11行)b 「一方,この注射器は非常に小型に設計したから,その全重量は約200g以下であり,注射を行った際許容し難い跳ね返り又は反動があることが分かった。この跳ね返り又は反動問題の解決策の模索時,驚くべきことに,コイルスプリングの一端部に反動又は衝撃緩和部材を装着すれば,大部分の跳ね返り又は反動を除去出来ることが見出だされた。」(3頁右上欄3行~10行)c 「コイルスプリング部材は伸張位置で圧縮状態とされかつ緩衝部材- 159 - は伸張位置に急速に到達するピストンおよびブッシングにより発生される反動エネルギーを吸収可能とされる。」(3頁左下欄15行~18行)d 「第1図は本発明の引込み状態の注射器の縦断面図…(中略)…第3図は上記動力部包装アッセンブリの一部切欠断面図,第4図は第3図の動力部包装アッセンブリの平面図,第5図は上記注射器の部分断面図,第6図は第5図の注射器の平面図である。」(5頁右下欄10行~19行)(セ) 乙11-16 力部包装アッセンブリの平面図,第5図は上記注射器の部分断面図,第6図は第5図の注射器の平面図である。」(5頁右下欄10行~19行)(セ) 乙11-16公報の記載(別紙乙11-16公報添付図面参照)a 「本発明は心臓病にかかりやすい人を心筋梗塞の激痛のときに心筋の損傷を最小限に抑えるような処置に関し,ことにそのような処置を改良して,専門家が直接患者を介抱できるようになる前にでも,できるだけ早期に手当を開始できるようにすることに関するものである。」(4頁左上欄4行~8行)b 「この注射器組立体は公知の構成要素と少なくとも2個の医薬容器を含み,さらにこの容器の中には少なくとも2個の投薬を含む。そのうち第1の投薬はt-PAのような凝固に選択的な血栓溶解剤を含み,第2の投薬はリドカインのような心臓の抗不整脈剤を含んでいる。」(5頁右上欄6行~10行)c 「針が前方に移動するとその尖つた前端が弾性の鞘50を突き抜け,使用者のふくらはぎの筋肉組織内に貫入する。針48とそれと一しよ- 160 - に前方に移動する他の部材の前方への運動は弾性鞘50の圧縮によつて抵抗を受けて停止する。」(9頁左下欄19行~23行)(ソ) 乙11-17-1公報の記載(別紙乙11-17-1公報添付図面参照)a 「本発明は複式投薬注射器,特に自動式複式投薬注射器に関するものである。」(2頁右下欄6行・7行)b 「米国特許第3,882,863号に記載の原理によれば注射針62の残部の前方に延びる部分はゴム製のさや78中に包まれており,このさや78は注射器10が保存状態にあるときには針を殺菌状態に保つことと注射操作中は緩衝効果を果すことの2つの作用を行な れば注射針62の残部の前方に延びる部分はゴム製のさや78中に包まれており,このさや78は注射器10が保存状態にあるときには針を殺菌状態に保つことと注射操作中は緩衝効果を果すことの2つの作用を行なう。」(4頁左下欄17行~21行)c 「付勢スプリング48が解放されると全カートリツジ組立体16が収容部組立体12中を前方に移動し,その間注射針62の前部尖端がさや78及び開口28を通つて患者の筋肉組織内に移動する。この移動中ゴム製のさや78は圧縮され,この圧縮によりカートリツジの最後の前方への移動が止められ,緩衝効果をもたらす。」(5頁右上欄18行~24行)(タ) 乙11-17-2明細書の記載(別紙乙11-17-2明細書添付図面参照)「シース250の重要性及びその多くの特徴は,アンプルシリンダ(すなわち,例えば図示された装置のシリンダ136)の大部分がガラスよりなり,それゆえ一定の量及び種類の衝撃により破損しやすいという事- 161 - 実を考慮に入れるとき,より一層重要なものとなる。本発明のカニュレシースの利用により享受される衝撃吸収の特徴は,全体的な質及び信頼性に実質的に貢献する。」(抄訳10行~14行)(チ) 乙11-18明細書の記載(別紙乙11-18明細書添付図面参照)a 「本発明の主たる目的は,注射器の医薬内容物に不意に空気が混入すること及びかかる内容物が不意にこぼれ出ることを防止し,更にはシリンダからプランジャが意図せずに外れることを防止することである。」(抄訳8行~10行)b 「3は,プランジャないしピストンの周囲に少なくともその半分以上伸びることによって抜け落ちないようにそれに付着されたリングである。前記リングの一部,例えば部分4は,残りの ~10行)b 「3は,プランジャないしピストンの周囲に少なくともその半分以上伸びることによって抜け落ちないようにそれに付着されたリングである。前記リングの一部,例えば部分4は,残りの部分に対して,あるいは外方へ,曲げられていることにより,シリンダ5の内壁に圧接し,ピストンないしプランジャがシリンダの開放端6の方向へ,あるいはその外へ,不意に動いてしまうことを防止しているが,同時に,シリンダの中へのプランジャの動きは阻害しない。」(抄訳12行~18行)(ツ) 乙11-19公報の記載「本発明はコイル状の計測テープを利用する計測装置に係り,特に自己調整速度制御機構が組み込まれた新しい且改良された巻尺式計測装置に係る。」(2欄19行~21行)(テ) 乙11-20公報の記載「この考案は,公知の定出力スプリング(以下定荷重ばねという)の- 162 - 復元力で自閉する様にした引戸の後退付勢力を任意に自在調節し得る装置に関する。」(1欄17行~20行)」(ト) 乙11-21公報の記載a 「本発明は固定部材に対して自動的に相対移動する移動部材の移動スピードをコントロールする緩動装置に関する。」(1頁右下欄5行~7行)b 「従来,固定部材に対して相対移動する移動部材としては,例えば物品の格納容器,作業台の物品載置板,あるいは食卓のスライド天板等がある。」(1頁右下欄9行~11行)(ナ) 乙11-22公報の記載「本発明は建造物や自動車などのドアあるいは容器の蓋などに取り付けられ,これらを開くために操作される把手装置。」(1頁左下欄16行~18行)(ニ) 乙11-23公報の記載a 「本発明は, 物や自動車などのドアあるいは容器の蓋などに取り付けられ,これらを開くために操作される把手装置。」(1頁左下欄16行~18行)(ニ) 乙11-23公報の記載a 「本発明は,被作動部材の作動スピードを制御する緩動装置に関する。」(1頁右下欄1行・2行)b 「被作動部材は,容器などの本体に対して回動して開閉する蓋体のような回転運動体,あるいはレジスタなどの本体に対して進退して開閉する金銭収納箱のような直線運動体がある。」(1頁右下欄4行~7行)(ヌ) 乙11-24文献の記載「15.4.7 流体及びエラストマによる緩衝器の特性- 163 - 機械設計において,衝撃の効果を軽減するため,又は急速に動く物体を,それが所定の距離を動いた後に急速に減速するために,緩衝器がしばしば必要である。…(中略)…これら重要な作用をもたらすために利用可能な手段としては,金属のばね,流体ダッシュポット及びエラストマを使用することが含まれ,それぞれ長所及び限界がある。」(抄訳1頁5行~14行)(ネ) 乙11-25公報・文献の各記載a 乙11-25公報①の記載「本発明は給油装置のホースリールに係り,回転して給油ホースを巻回し収納するホースリールが該給油ホースを所定量巻き取つた時点で,該ホースリールの回転を緩衝的に停止せしめる停止手段を設けた構成とすることにより,簡単な構成でしかも耐久性の優れた給油装置のホースリールを提供することを目的とする。」(1欄33行~2欄2行)b 乙11-25公報②の記載「本発明は底部にパルセータを配した洗濯兼脱水槽を水槽に内装し,洗濯時にはパルセータを駆動し,脱水時には洗濯兼脱水槽を回 33行~2欄2行)b 乙11-25公報②の記載「本発明は底部にパルセータを配した洗濯兼脱水槽を水槽に内装し,洗濯時にはパルセータを駆動し,脱水時には洗濯兼脱水槽を回転させる一槽式脱水洗濯機の排水弁とブレーキの操作手段に好適な脱水洗濯機に関する。」(1欄29行~33行)c 乙11-25公報③の記載「この発明はシヤツター膜もしくはシヤツターひもを巻回保持し,シヤツターレリーズ時に回転されてこれら膜やひもの走行を可能とす- 164 - る先軸や後軸のような保持軸の回転を停止するフオーカルプレーンシヤツタのブレーキ機構に関する。」(1欄26行~2欄3行)d 乙11-25公報④の記載「本発明はロールブラインドのクラツチ装置に関するものである。」(2欄10行・11行)e 乙11-25公報⑤の記載「本発明はロールスクリーンの巻取り制動装置に係り,主としてロールスクリーンの巻取りパイプ内に取付けて使用するもので,スプリング等によつて行なうこの巻上げに際し,巻終り真近になるに従つて速くなるスクリーンの巻上げ速度を適宜制動制御することで該スクリーンをほぼ一定の速度で静粛且つ円滑に巻取ることを可能としたロールスクリーンの巻取り制動装置に関するものである。」(1欄29行~2欄8行)f 乙11-25公報⑥の記載「本発明は引出したスクリーンをロールパイプに内蔵したばねの力で巻取るロールブラインドのスクリーン巻上げ速度を減速させる装置に関するものである。」(1欄18行~21行)g 乙11-25公報⑦の記載「この発明は,たとえば,カーテン,ブラインド,軽量シヤツタ,映写用スクリ 速度を減速させる装置に関するものである。」(1欄18行~21行)g 乙11-25公報⑦の記載「この発明は,たとえば,カーテン,ブラインド,軽量シヤツタ,映写用スクリーン等の各種スクリーンを巻取り軸に巻取り,この巻取り軸からスクリーンを引出すことによつて,巻取り軸に内蔵されたバネに作用力を蓄積し,巻取り時には上述のバネに蓄積された作用力で- 165 - 巻取り軸を逆転させてスクリーンを巻取るようなスクリーン巻取り装置に関する。」(2欄20行~27行)h 乙11-25公報⑧の記載「この発明はブラインド等の巻きおろしを必要とする装置に装着し,装着した装置の降下速度を抑制する回転速度抑制装置に関する。」(1頁右下欄1行~3行)i 乙11-25公報⑨の記載「この発明は,電気機器のコード巻取装置に関するものである。」(1欄13行・14行)j 乙11-25公報⑩の記載「この発明は,例えば家庭用あるいは工業用の各種の電気器具におけるコードを巻出したり巻込むための装置に関するものである。」(1頁左下欄15行~右下欄1行)k 乙11-25公報⑪の記載「本発明は映写幕を映写幕捲取管筒に捲取終了直前に,其の捲取速度を自動的に制御できるようにした映写幕捲取制動装置に関するものである。」(1頁左下欄18行~右下欄2行)l 乙11-25公報⑫の記載「本発明は,従来より,スプリング巻上式映写幕を取り付けたボックス,天井面への衝撃が大きい事から要望されていたものである。」(1頁左下欄11行~14行)m 乙11-25公報⑬の記載- 166 - 映写幕を取り付けたボックス,天井面への衝撃が大きい事から要望されていたものである。」(1頁左下欄11行~14行)m 乙11-25公報⑬の記載- 166 - 「本発明は,ガラス障子等のサッシ内に内蔵したブラインドのスラットを昇降する装置に関する。」(1欄15行~17行)n 乙11-25公報⑭の記載「本発明は磁気テープ装置に関し,特に定回転数でリールを駆動しても,テープ巻終り近くにおいて,あまりテープ速度が上がらないようにした磁気テープ装置に関するものである。」(1頁左下欄18行~右下欄1行)o 乙11-25公報⑮の記載「本発明は,電気コード,ロープ,ひも,帯体,シート等のもの巻取り巻戻しするための巻取装置に関するものである。」(1頁右下欄16行~2頁左上欄1行)p 乙11-25公報⑯の記載「この発明は,ロールスクリーン装置に関するものである。さらに詳しくは,この発明は,ねじりコイルバネの弾発力を利用したロールスクリーン装置において,巻取収納時の巻取速度を緩和することのできる簡便な減速機構を内蔵した新しいロールスクリーン装置に関するものである。」(1頁右下欄7行~12行)q 乙11-25公報⑰の記載「この発明は,ロールスクリーンの制動装置に関するものである。 さらに詳しくは,この発明は,ねじりコイルバネの弾発力を利用したロールスクリーン装置において,回転加速時の制動作用と,停止位置決め精度に優れたロールスクリーンの制動装置に関するものである。」- 167 - (1頁右下欄3行~8行)r 乙11-25公報⑱の記載「本発明は,オープンショーケースの前 に優れたロールスクリーンの制動装置に関するものである。」- 167 - (1頁右下欄3行~8行)r 乙11-25公報⑱の記載「本発明は,オープンショーケースの前面開口を断熱のために遮蔽するのに用いられたり,窓のカーテン用として用いられるのに好適とした自動巻取式カバー関する。」(1頁左下欄20行~右下欄3行)s 乙11-25公報⑲の記載「この発明はロールブラインドのスクリーンを昇降する昇降装置に関するものである。」(1頁右下欄5行・6行)t 乙11-25公報⑳の記載「本発明はビデオテープレコーダ(以下VTRと称する)等の磁気記録再生装置における磁気テープ高速送り装置に関する。」(1欄21行~23行)u 乙11-25公報<21>の記載「本発明は,スプリング巻き上げ式スクリーンの制動装置に関する。」(1欄13行・14行)v 乙11-25公報<22>の記載「本発明は,家庭用ビデオテープレコーダ(以下VTRと称す)の,カセットより磁気テープを引出すベース部材を待機位置から係止位置まで移送し,かつ保持する駆動機構に関する。」(1欄20行~23行)w 乙11-25公報<23>の記載「本発明はスプリングでスクリーンを巻上げるロールブラインドの改良に関するものである。」(1欄21行~23行)- 168 - x 乙11-25公報<24>の記載「この考案は,たとえば,カーテン,ブラインド,軽量シヤツタ,映写用スクリーン等の各種スクリーンを巻取軸に巻取り,または引出して張設するスクリーン巻取り装置に関し,さらに詳しくは巻取軸にバネを内蔵して の考案は,たとえば,カーテン,ブラインド,軽量シヤツタ,映写用スクリーン等の各種スクリーンを巻取軸に巻取り,または引出して張設するスクリーン巻取り装置に関し,さらに詳しくは巻取軸にバネを内蔵して,スクリーンの引出しによりバネに作用力を蓄積し,スクリーンの巻取りは上述の蓄積されたバネの作用力により,巻取軸を逆転させて行なうスクリーン巻取り装置に関する。」(表紙を除く1頁19行~2頁7行)y 乙11-25公報<28>の記載「本発明は,開閉扉や蓋等のヒンジ機構に用いられる回転ダンパに関し,特に,ピアノの鍵盤蓋,複写機の用紙抑え蓋,洋式便器の便座や便蓋等,重力方向に対して水平に開閉作動する扉や蓋の緩衝装置に適する回転ダンパに関する。」(2頁左上欄7行~11行)z 乙11-25公報<29>の記載「本発明は,請求項1の上位概念に記載の巻取り装置に関する。」(3頁右上欄4行・5行)a' 乙11-25公報<30>の記載「本考案は,主としてロールスクリーンの巻上げに際し,巻終わり間近におけるスクリーン巻取筒の急速な回転を抑制してスクリーンの静粛且つ円滑な巻上げ操作を可能とし,また,必要に応じて,巻上げられるスクリーンを予め設定された定位置にて停止させるべく制動を行なうようにしたロールスクリーンの巻上げ制動装置に関するもので- 169 - ある。」(1欄26行~33行)b' 乙11-25公報<31>の記載「本考案は,主としてロールスクリーンの巻上げに際し,巻終わり間近におけるスクリーン巻取筒の加速を抑制し,スクリーンをほぼ一定の速度で終始一貫して静粛且つ円滑に巻取ることができるようにしたロールスクリーンの巻上げ制動装置に関す リーンの巻上げに際し,巻終わり間近におけるスクリーン巻取筒の加速を抑制し,スクリーンをほぼ一定の速度で終始一貫して静粛且つ円滑に巻取ることができるようにしたロールスクリーンの巻上げ制動装置に関するものである。」(1欄31行~36行)c' 乙11-25公報<32>の記載「この考案はロールスクリーン等の巻取制動装置に係り,ロールスクリーン等の巻き取りに際して,巻き終り間近におけるスクリーン等の巻き取りの加速を抑制してスクリーン等をほぼ一定した速度で巻き取ることができ,しかもスクリーン等の巻き取り終了時の衝撃を柔げて耐久性の向上を図つたロールスクリーン等の巻取制動装置に関するものである。」(2欄7行~14行)d' 乙11-25公報<33>の記載「本考案はロールブラインドの巻上げ機構に関するものであり,さらに詳言すると下降したスクリーンを巻上げるときの巻上げ速度を減速する装置に係るものである。」(2欄10行~13行)e' 乙11-25公報<34>の記載「本考案は,映写用スクリーン,シート状ブラインド,鎧戸状のシヤツターや雨戸等のロールスクリーンを,スクリーン巻上用軸に巻上格納し得ると共に該軸から繰出伸張させて任意の繰出姿勢に固定し得- 170 - るロールスクリーン装置に関する。」(3欄10行~14行)f' 乙11-25公報<35>の記載「本考案は,軽量バランスシヤツターの閉鎖時に作動する制動装置に関するものである。」(2欄2行・3行)g' 乙11-25公報<36>の記載「本考案はディスプレー,黒板の代用及びブラインド等に適用されるスクリーン巻取装置に関するものである。」(2欄2行・3行 2行・3行)g' 乙11-25公報<36>の記載「本考案はディスプレー,黒板の代用及びブラインド等に適用されるスクリーン巻取装置に関するものである。」(2欄2行・3行)h' 乙11-25公報<37>の記載「本考案は,住宅やビル等の開口部に建付けられる建築用シヤツターにおける衝撃吸収装置に関するものである。」(2欄6行~8行)i' 乙11-25文献<38>の記載「本考案は,シャッターや日除けシート等を巻上げる装置に関する。」(表紙を除く1頁15行・16行)j' 乙11-25文献<39>の記載「本考案は,ブラインドの支持用の水平ローラであり,該ローラ自身の軸線の回りに回転するように備え付けられたローラと,ローラに固定された上端と自由な下端を有するブラインドと,上記ローラをブラインドが巻き上げられた状態に付勢するための弾発手段と,ブラインドの巻き上げ時に上記ローラの回転を遅くするための遠心ブレーキとを備えたタイプのローラブラインドに関する。」(表紙を除く3頁11行~18行)k' 乙11-25文献<40>の記載- 171 - 「本考案はシャッタの開扉時における衝撃を緩和するための巻上緩衝装置に関するものである。」(4頁4行・5行)l' 乙11-25公報<41>の記載「本発明はドアヒンジに関し,さらに詳しくは液体ダンパを内蔵したドアヒンジに関する。」(2頁左上欄1行・2行)m' 乙11-25文献<42>の記載「本案は電気掃除機等の電気機器の電源コードを全舞でコードリールに巻戻すいわゆる自動巻戻式のコードリール装置に関する。」(表紙を )m' 乙11-25文献<42>の記載「本案は電気掃除機等の電気機器の電源コードを全舞でコードリールに巻戻すいわゆる自動巻戻式のコードリール装置に関する。」(表紙を除く2頁3行~5行)n' 乙11-25文献<43>の記載「本考案は,閉鎖作動時にその下降速度に制動を与えて静粛に閉鎖できるようにした建物用シヤツターの緩衝装置に関するものである。」(表紙を除く1頁17行~19行)o' 乙11-25公報<44>の記載「本発明は,オーバードアのに上限緩衝装置に関するものである。」(1頁左下欄13行・14行)p' 乙11-25公報<45>の記載「本発明は一般家庭の台所等において特に加熱調理時などに発生する油煙や蒸気等を室外へ排気するために使用される排煙装置に関するものである。」(1頁左下欄14行~16行)q' 乙11-25公報<46>の記載「本発明は窓の開閉装置に関する。さらに詳しくは,建物の天窓や- 172 - 排煙窓,列車や船舶の窓などの開閉装置に関する。」(2頁左上欄4行~6行)(ノ) 想到容易性についてa 本件発明2-1について前記第2の1(7)及び前記(ア)~(ネ)のとおり,乙11-2・4~17・19~25公報・明細書・文献(ただし,乙11-25<25>~<27>は,本件特許2の優先日である平成5年11月15日以降に出願されているため,これらを除く。)には,「エネルギ吸収手段」に相当する技術が記載されている。しかしながら,乙11-4~11・19~25公報・文献記載の技術は,テープや電気コード,ロールブラインド・スクリーン,シャッターの制動装 )には,「エネルギ吸収手段」に相当する技術が記載されている。しかしながら,乙11-4~11・19~25公報・文献記載の技術は,テープや電気コード,ロールブラインド・スクリーン,シャッターの制動装置等,カニューレ挿入装置等の技術分野とは全く異なる技術分野に属するものであって,「中空針」がなく,同記載のエネルギ吸収手段は「中空針が後退するエネルギ」を吸収するものではない。また,乙11-15~17公報・明細書記載の技術は,注射器の技術分野に属するものであるが,乙11-15公報記載の技術は「針」がなく,乙11-16,11-17-1・2公報・明細書記載の技術は「中空針」こそあるものの,中空針が「後退」するものでなく,いずれも「中空針が後退するエネルギ」を吸収するものではない。 これに対し,乙11-2・12~14公報・明細書には,「中空針が後退するエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段」に係る技術に相当する技術の開示が認められる。また,乙11-2・12~- 173 - 14公報・明細書記載の技術は,注射器の分野であって,針とハンドルを有する医療器具という意味においてカニューレ挿入装置等の技術分野と類似する上,証拠(甲5)によれば,本件明細書2には,「本技術は,カニューレに直接使用されることに必ずしも限定されるものではなく,カテーテル用ガイドワイヤの如き他の医療器具を挿入するためにも使用することができる。」(4欄13行~17行)と記載されていることが認められるから,本件発明2-1は,注射器を意識的には除外していない。この点,乙11-2公報記載の弾性制動手段は,不随意にプランジャが復帰して患者の組織を傷つけたり患者の血液を吸引したりすることを防ぎ,注射針が後退する少なくとも最初の段階での後退速度を遅らせることを の点,乙11-2公報記載の弾性制動手段は,不随意にプランジャが復帰して患者の組織を傷つけたり患者の血液を吸引したりすることを防ぎ,注射針が後退する少なくとも最初の段階での後退速度を遅らせることを課題とするものであり,乙11-13明細書記載の保持フィンガーは,ごみ処理係の人等が使用済みの注射器バレルの前方端部からハブアセンブリを取り外した場合において針刺し事故に遭うことを防ぐことを課題とするものであり,乙11-14明細書記載の吸収繊維パッドないしスポンジは,バレルの後方から残った液体が漏れ出したり飛び散ったりするのを防ぐことを課題とするものであり,コイルばね等の偏倚手段による中空針の望ましくない高速度での後退や異常に強い後退,うるさいかちっという音等を解消するという本件発明2-1の課題(甲5。10欄34行~11欄8行)とは異なる。しかしながら,乙11-1・2・12~14公報・明細書記載の技術及び本件発明2-1は,いずれも針を後退させることによって医療従事者の針刺し事故を防ぐという前提の課題において,共- 174 - 通する(乙11-14明細書も,本件訂正発明1に対応する米国出願の一部継続出願であり,上記前提の課題を有する(乙9の11,11の14)。)。乙11-1発明に,乙11-2公報記載の弾性制動手段や乙11-12公報記載のプランジャー内のテーパー部,乙11-13明細書記載の保持フィンガー,乙11-14明細書記載の吸収繊維パッドないしスポンジを組み合わせることが困難であるとも認められない。このため,乙11-2・12~14公報・明細書記載の上記各技術は,本件発明2-1や乙11-1発明と技術分野が類似し,前提課題においても共通し,乙11-1発明との組合せも困難ではないから,乙11-1発明に乙11-2・12~14公報・明細書記載 記載の上記各技術は,本件発明2-1や乙11-1発明と技術分野が類似し,前提課題においても共通し,乙11-1発明との組合せも困難ではないから,乙11-1発明に乙11-2・12~14公報・明細書記載の上記各技術を組み合わせて本件発明2-1を容易に想到することができるというべきである。 この点につき,原告は,①乙11-2公報記載の技術については,プランジャを2往復させるという複雑な複数の動作を要するものであるから,乙11-1発明に組み合わせることは困難である,②乙11-12公報記載の技術については,プランジャー内のテーパー部が中空針後退のエネルギの全部を吸収しており,「中空針が後退するエネルギの一部を吸収する」技術を開示するものではない旨主張する。しかしながら,①被告らの主張は,乙11-2公報記載の発明全部を組み合わせるのではなく,乙11-2公報記載の弾性制動手段だけを組み合わせるものであり,このように,乙11-1発明に乙11-2公報記載の上記技術を組み合わせることは困難であるとはいえない。また,- 175 - ②乙11-12公報には,針ホルダーやハブが常にプランジャー内のテーパー部で停止する旨の記載も示唆もないから(乙11の12。請求項16も参照。),上記テーパー部が中空針後退のエネルギの全部を吸収しているとはいい難い上,仮に中空針後退のエネルギの全部を吸収しているとしても,技術的意義を異にしない微差にすぎない。したがって,原告の上記主張は,前示の判断を左右するものではない。 b 本件発明2-3について前記(ア)・(コ)のとおり,乙11-2・12公報には,「中空針に担持されてハンドルに固定された表面に圧接する要素が後退の間に摩擦を生じる」技術に相当する技術の開示が認められる。乙11- 前記(ア)・(コ)のとおり,乙11-2・12公報には,「中空針に担持されてハンドルに固定された表面に圧接する要素が後退の間に摩擦を生じる」技術に相当する技術の開示が認められる。乙11-2・12公報記載の各技術が,本件発明2-3や乙11-1発明と技術分野が類似し,前提課題において共通し,乙11-1発明との組合せも困難でないことは,前記aと同様である。 c 本件発明2-5について前記(シ)のとおり,乙11-14明細書には,「端部構造に固定されて端部構造に対する中空針の衝撃の一部を吸収する押し潰し可能な要素」に係る技術に相当する技術の開示が認められる。乙11-14明細書記載の技術が,本件発明2-5や乙11-1発明と技術分野が類似し,前提課題において共通し,乙11-1発明との組合せも困難でないことは,前記aと同様である。 ウ小括以上によれば,本件発明2-1・3・5は,いずれも当業者が乙11-- 176 - 1発明及び周知技術から容易に想到し得たものである。したがって,本件特許2の請求項1・3・5は,進歩性の欠如により特許無効審判で無効とされるべきものである(一件記録(乙33)によれば,本件特許2の請求項1・3・5は,平成23年6月27日,無効審決がされ,同審決は,同年11月4日,確定し,同月30日,登録されたことがうかがわれるが,弁論終結後に提出された証拠であるため,なお判断したものである。)。 (4) 乙11-1発明と周知技術に基づく本件発明2-7・8の想到容易性ア本件発明2-7・8と乙11-1発明との対比について(ア) 本件発明2-7について乙11-1公報記載の発明は,乙11-1発明①のとおりであり,本件発明2-7と乙11-1発 本件発明2-7・8と乙11-1発明との対比について(ア) 本件発明2-7について乙11-1公報記載の発明は,乙11-1発明①のとおりであり,本件発明2-7と乙11-1発明①との相違点は,本件発明2-7では,①中空針が後退するエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段があるとともに(構成要件2-7-A),②中空針の中からの血液を収容するとともに,中空針の後退によって生ずる力に抗して,中空針が後退する間と中空針が後退した後に,血液を確実に保持するための収容/保持手段があるのに対し(構成要件2-7-B),乙11-1発明①では,これらがない点で相違する。 (イ) 本件発明2-8について乙11-1公報記載の発明は,乙11-1発明①のとおりであり,本件発明2-8と乙11-1発明①との相違点は,前記2(8)イも併せ考慮して,本件発明2-8では,①中空針が後退するエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段があるとともに(構成要件2-8-A),- 177 - ②中空針の中からの血液を収容するとともに,中空針の後退によって生ずる力に抗して,中空針が後退する間と中空針が後退した後に,血液を確実に保持するための収容/保持手段が,中空針の後退によって生じる力から中空針と共に運動するように固定された室の内部を隔離するための隔離手段を備えるのに対し(構成要件2-8-B),乙11-1発明①では,これらがない点で相違する。 イ相違点に係る本件発明2-7・8の構成の容易想到性について証拠(乙16の6~9)によれば,次の記載が認められる。 (ア) 乙16-6明細書の記載(別紙乙16-6明細書添付図面参照)a 「本発明は,概して静脈療法のためのカテーテル組立体に関し 乙16の6~9)によれば,次の記載が認められる。 (ア) 乙16-6明細書の記載(別紙乙16-6明細書添付図面参照)a 「本発明は,概して静脈療法のためのカテーテル組立体に関し,特に医療従事者への不注意な受傷を防ぐ役割を果たす選択的に位置できる保護シールドを含むカテーテル組立体に関する。」(抄訳1頁11行~13行)b 「針部材の鋭利な性質に鑑みて,医療従事者への不注意な受傷を避けるべく取扱いに注意が払われる。このような針の廃棄のために特別な容器(しばしば針容器と呼ばれる)が次第に利用されるようになってきているが,関連したカテーテルから針を除去する際に手元に適当な容器があるとは限らない。さらには,針は,廃棄の前には露出している。 本発明は,医療従事者を不注意な受傷から保護するべく構成された,別体の特別な廃棄用の入れ物を必要としないカテーテル組立体に向けられている。」(抄訳1頁23行~29行)- 178 - c 「前記カテーテル組立体は,さらに,カテーテル部材上に選択的に除去可能に位置できる,概して細長い,好適には管状のシールド部材を含む。前記シールド部材は,一般的には使用の前に,第1の位置に位置でき,ここにおいて前記シールド部材は前記カテーテル部材の前記管状部を概して囲い込む。前記組立体の使用のために,前記シールド部材は,カテーテル部材上の第2の位置へ逆向きに移動でき,ここにおいて前記針部材の前記伸張部は,カテーテル部材の中から引き込まれることができ,前記針部材は,前記シールド部材の中に受容される。このようにして,前記カテーテル部材が患者に挿入された後,前記針部材は,前記シールド部材中に引き込まれることができ,これは,針部材による不注意な受傷から使用者を遮蔽する役割を果たす。 に受容される。このようにして,前記カテーテル部材が患者に挿入された後,前記針部材は,前記シールド部材中に引き込まれることができ,これは,針部材による不注意な受傷から使用者を遮蔽する役割を果たす。」(抄訳2頁13行~22行)d 「図1は,本発明の原理を具体化するカテーテル組立体の斜視図である。 図2は,使用の前等に第1の位置にある組立体の保護シールドを示す本カテーテル組立体の断面図である。 図3は,図1の3-3線に沿って取られた断面図であって,使用の際等に第2の位置にある組立体の保護シールドが示されている。」(抄訳3頁13行~17行)e 「カテーテル組立体10は,さらに,当初は概してカテーテル部材10の中に位置し得る針部材20を含む。特に,針部材20は,ハブ部22と,ハブ部から伸びた細長い管状部24とを含む。例示される- 179 - ように,針部材の管状部24の自由ないし遠位端は,針の管状部が望遠鏡式に中に位置するときには,カテーテル部材の管状部16の自由ないし遠位端をちょうど越えている。この取り合わせにより,針の管状部の自由端は,患者の血管中への外側カテーテル部材の挿入を容易とするように,適切に構成され鋭利にされている。 典型的には,針部材の細長い筒部24は,ハブ部22により規定される内部容積と連通している。カテーテル挿入の間,毛管力及び/又は血圧は,血液を管状部24を通してハブ部22の内部26へと流させ得る。ハブ部は,典型的には透明なポリマー材料より形成され,医療従事者がこの血液の流れないし「フラッシュバック」を観察できるようになっている。空気抜きフィルタ28は,好適にはハブ部22に固定されて針部材の中からの空気の抜け出しを許容するが,フィルタを通した液体の流れは防止する。」(抄訳3頁 ラッシュバック」を観察できるようになっている。空気抜きフィルタ28は,好適にはハブ部22に固定されて針部材の中からの空気の抜け出しを許容するが,フィルタを通した液体の流れは防止する。」(抄訳3頁33行~4頁12行)(イ) 乙16-7公報の記載(別紙乙16-7公報添付図面参照)a 「軸線に沿って且つ軸線の周りにポリマー材料によって形成され針ハブの流れ込みチャンバと流体連通状態で係合する先端と,針ハブの流れ込みチャンバから延びるための基端とを有する逆流プラグ本体と,前記軸線に沿って基端から先端まで前記逆流プラグ本体を貫通して延び,その中に流れを許容する通路と,疎水性のフィルタ媒質で作られ且つ前記通路を横切る通気膜であって,前記逆流本体内にインサート成形され且つ当該逆流本体によって保持された基端方向に延びる外周部を含み,先端近くの通路内の液体は基端に到達することができ- 180 - ないが,通路内の気体は当該通気膜を通過することによって先端と基端との間を自由に流通することができるようになされた前記通気膜と,前記通路の内壁内に長手方向に形成され,前記通気膜から基端まで延びて前記通路の基端内に嵌合部材が配置された後にそれを通る流れを許容する溝手段と,からなる静脈オーバー・ザ・ニードル・カテーテル・チューブのための逆流プラグ。」(特許請求の範囲請求項1)b 「本発明は,静脈オーバー・ザ・ニードル・カテーテル(針を挿入した後カテーテルを挿入し,その後,針を抜く方式のカテーテル)の針ハブのための血液無漏洩逆流プラグに関する。この逆流プラグは,該プラグ内に嵌合されたときにプラグ内を貫通する通路の基端から空気を排気するための溝へ空気は通過させるけれども血液は通過させない一体化されたフィルタ材料を含む。」(【 グに関する。この逆流プラグは,該プラグ内に嵌合されたときにプラグ内を貫通する通路の基端から空気を排気するための溝へ空気は通過させるけれども血液は通過させない一体化されたフィルタ材料を含む。」(【0001】,2欄2行~9行)c 「特に,カテーテルがオーバー・ザ・ニードル方法によって挿入され血液の逆流が確認された後に,カテーテルは血管内へと更に進められ及び/又は針は抜き取られる。カテーテルが所望通りに血管内に挿入され針が抜き取られ且つ捨てられた後,患者の血液から医者を守ることが望まれている。典型的には,流れ込みチャンバには,針とカテーテルとが血管内に正しく位置決めされたときにチャンバから空気を追い出すために先端に通気装置が設けられている。病原菌,エイズの伝染,肝炎及びこれらと同様の不治の血液病に関連して,血液の漏れを防止する方法及び器具は極めて重要となり切望されている。流れ込みチャンバ及び早期の観察に対する多くの試みが提案されて来た。こ- 181 - れらのいくつかは扱いづらく,高価で且つオーバー・ザ・ニードル・カテーテルの挿入のための通常の受け入れられた方法に支障を来す。 典型的には,このようなチャンバは針ハブの外部と通気されている。」(【0003】,2欄23行~39行)d 「米国特許4,193,399は,空気は通過させるが血液の流れは空孔が小さいので阻止される多孔質のポリマー材料によって作られた流れ込みチャンバを有する。ここで使用される材料は,焼結方法によって作られた超高分子ポリエチレンである。このようなプラグは,流れ込みチャンバ内に圧入され且つ摩擦だけによってチャンバ内に保持されるように設計されている。焼結成形された材料は本来弾力性が比較的低く,プラグはそれ自体では流れ込みチャンバ内にしっかりと グは,流れ込みチャンバ内に圧入され且つ摩擦だけによってチャンバ内に保持されるように設計されている。焼結成形された材料は本来弾力性が比較的低く,プラグはそれ自体では流れ込みチャンバ内にしっかりと保持されず,実際に定位置から落ちる。米国特許4,046,144は,空気は逃がすが血液は逃がさないために,針ハブのキャップ内の基端に配置された膜を有する。米国特許4,917,671は,基端から流れ制御プラグの内側の位置に圧入され且つ摩擦による以外は両方向において保持されない多孔質を有する。従って,容易に接続することができる改良された流れ込みハブが必要とされている。 本発明は,容易に接続することができる改良された流れ込みハブを提供することを目的とする。」(【0005】・【0006】,3欄6行~26行)e 「図1は,軸線Aに沿って且つ軸Aを中心として形成されたフラッシュバック本体12を含むIV(静脈注射)カテーテル11のための- 182 - フラッシュバックプラグ10の好ましい実施例の分解斜視図である。」(【0013】,4欄33行~36行)f 「同じく図2に示すように,親水性のフィルタ媒質よりなる通気膜17は,本体12内に成形された基端方向に延びる外周部材18を有する。」(【0014】,4欄44行~46行)(ウ) 乙16-8公報の記載(別紙乙16-8公報添付図面参照)a 「本発明は,全体として,静脈内,動脈内又は中央静脈内流体を投与するためのカテーテル,特に,改良された閉システムの血管カテーテルに関するが,これにのみ限定されるものではない。」(【0001】,3欄38行~41行)b 「理解し得るように,細菌及びウィルスは,カテーテルを取り外しかつ再密封しようとして操 テーテルに関するが,これにのみ限定されるものではない。」(【0001】,3欄38行~41行)b 「理解し得るように,細菌及びウィルスは,カテーテルを取り外しかつ再密封しようとして操作するときに血流内に入ることが多く,その結果,感染の虞れが生じる。更に,血液はカテーテルを通じて漏洩して医者等に接触し,その医者等が感染する可能性のある血液に触れる虞れがある。更に,血液はカテーテルに栓をする前,患者のベッドに漏れる虞れがある。かかる血液の漏洩は,特に,血液が感染している場合,危険であり,病原菌の感染の可能性がある。更に,カテーテルを通じて血液が漏洩する結果,患者のベッドの交換等という不必要な作業が必要となる。このため,血液がカテーテルを通じて漏洩することは極めて望ましくなくかつ極めて危険なことである。」(【0004】,4欄22行~34行)c 「本発明によると,血管内に適正に位置決めされたならば,閉シス- 183 - テムカテーテルを提供する改良された静脈カテーテルを実現することである。即ち,カテーテルを血管内に挿入したならば,該カテーテルは効果的に自己密封し,カテーテルが血液の漏洩を防止するのみならず,カテーテルの内側部分を外部の周囲の環境から効果的に遮断し,細菌及びウィルスが挿入したカテーテルを通じて患者の血流内に入るのを防止する。」(【0006】,5欄7行~15行)d 「本発明の別の目的は,上述の目的を達成する一方,血液が誤って漏洩するのを防止しかつ医者等が感染する虞れのある血液に触れるのを防止する閉システム静脈カテーテルを提供することである。」(【0012】,6欄25行~28行)e 「スタイレット組立体32の皮膚穿通スタイレット37は,カテーテル22の流体流路28内に 止する閉システム静脈カテーテルを提供することである。」(【0012】,6欄25行~28行)e 「スタイレット組立体32の皮膚穿通スタイレット37は,カテーテル22の流体流路28内に摺動可能に配置され,弾性的なガスケット部材30に嵌入することが出来る。」(【0020】,7欄28行~31行)f 「図2及び図5に図示するように,スタイレット組立体32は,皮膚穿通スタイレット37に加えて,発火点キャビティ76を画成する観察チャンバ74を備えている。発火点キャビティ76は皮膚穿通スタイレット37の流体流れ穴78と流体連通し,穴78を介して皮膚貫通スタイレット37を通る血流は,発火点キャビティ76内で観察することが出来る。」(【0026】,9欄9行~15行)g 「フリット部材82は,通気スタイレット94及びエラストマーカバー部材100と協働し,血液は,皮膚穿通スタイレット37及びカ- 184 - テーテル22を血管内に適正に位置決めしたとき,皮膚穿通スタイレット37を介して観察チャンバ74の発火点キャビティ76内に流動することが出来る。」(【0028】,10欄13行~18行)h 「退却可能なシース130の本体部材132には,皮膚穿通スタイレット37が伸長位置(図9を参照)にあるとき,皮膚穿通スタイレット37よりも長い長さ寸法を備え,皮膚穿通スタイレット37の穿刺先端38,及び皮膚穿通スタイレット37が退却可能なシース130の本体部材132により完全に囲繞されるようにする。」(【0036】,12欄25行~31行)(エ) 乙16-9公報の記載(別紙乙16-9公報添付図面参照)a 「本発明は,I.V.カテーテル,特に,このようなカテーテルの使用中に,偶然に血液との接 2欄25行~31行)(エ) 乙16-9公報の記載(別紙乙16-9公報添付図面参照)a 「本発明は,I.V.カテーテル,特に,このようなカテーテルの使用中に,偶然に血液との接触を引き起こし得る血液の逆流および滞留を防止することに関する。」(1頁右下欄17行~20行)b 「医療従事者を偶然の針による突刺しの危険を防止することのみならず,患者の血液とのいかなる接触からも防護することである。針ガードを有する上述のカテーテルの一つを使用する場合でさへ,カテーテルから血液の望ましくない漏れのために,医療従事者が患者の血液と接触する可能性がある。」(2頁左上欄13行~18行)c 「針の先端がカテーテルの先端部近くの位置に移動するにつれて,血液は,静脈圧または動脈圧の下にカテーテル内へ,或は中空針内へ流れ込むことになるが,しかし,血液は,また針の外壁とカテーテル・カニューレの内壁との間の環状隙間にも入り込み得る。この隙間内の- 185 - 血液がカテーテルハブへ流れるのを,ここでは,逆流と呼ぶ。」(2頁右上欄8行~13行)d 「本発明の目的は,挿入針と,カテーテル・カニューレとの間での血液の逆流を防止するカテーテルを提供することである。」(2頁左下欄8行~10行)e 「針20の基端は,フラッシュ・チャンバ22の先端開口に接着剤によって取り付けられ,このチャンバは針のハブ,すなわち,ハウジング30の内部に配置取り付けられている。このフラッシュ・チャンバのハウジングへの取付手段は,図示されていないけれども,ハウジングの内面からフラッシュ・チャンバの外面に延びる長手方向のレール状体からなっている。フラッシュ・チャンバの基端は,米国特許出願221,579号(1988年7月2 ,図示されていないけれども,ハウジングの内面からフラッシュ・チャンバの外面に延びる長手方向のレール状体からなっている。フラッシュ・チャンバの基端は,米国特許出願221,579号(1988年7月20日出願)に記載された多孔質の栓が施されている。チャンバが血液で満たされつつある時,この多孔質の栓を通して,空気が外部に追い出されるが,この孔のサイズは,血液がそこを通るには不十分なものである。」(2頁右下欄20行~3頁左上欄7行)f 「第1図は,また,針の先端が血管内の適正な位置に在る時に,カテーテル・アセンブリ内へ血液が所要量流れ込むのを図示している。 血液は,動脈圧または静脈圧の下に,40aにて指示される中空の針を通って,40bにて指示されるフラッシュ・チャンバ22内に流入する。第2図は,針の先端を血管内に位置させた後の,カテーテル・アセンブリの各構成部の相対位置を示す。すなわち,ガードのプッシ- 186 - ュオフ・タブが臨床医により先端方向に押されると,これによって,針ガード34が延長される。この操作で,針の先端26は,カテーテル10の先端より内部に,すなわち,第2図に図示する位置に引っ込む。」(3頁左上欄20行~右上欄7行)(オ) 想到容易性についてa 本件発明2-7について相違点②につき,前記(ア)~(エ)のとおり,乙16-6~9公報・明細書には,「中空針の中からの血液」の「収容/保持手段」に相当する技術が記載されている。しかしながら,乙16-7公報記載の技術は,中空針が「後退」することを前提としておらず,前記2(7)ウのように,中空針の後退により生じる圧縮力を阻止するものでもない。また,乙16-9公報記載の技術も,針ガードを先端方向に延ばすことによって針の先端を引 退」することを前提としておらず,前記2(7)ウのように,中空針の後退により生じる圧縮力を阻止するものでもない。また,乙16-9公報記載の技術も,針ガードを先端方向に延ばすことによって針の先端を引っ込めるのであって,中空針自体を「後退」させるものでないから,これも中空針の後退により生じる圧縮力を阻止するものではない。これに対し,乙16-6・8公報・明細書記載の技術は,中空針が後退するものであるが,いずれも付勢手段等の解除手段によるものではないから,前記2(7)ウのとおり,中空針の後退により生じる圧縮力を前提としておらず,これも中空針の後退により生じる圧縮力を阻止するものではない。したがって,乙16-6~9公報・明細書記載の技術は,いずれも収容/保持手段が「中空針の後退によって生ずる力に抗」するものではない。 b 本件発明2-8について- 187 - 相違点②につき,本件発明2-8の「前記収容/保持手段」は,本件発明2-7の「前記中空針の中からの血液を収容する共に,前記後退によって生ずる力に抗して,前記針が後退する間に及び該後退の後に,前記血液を確実に保持するための収容/保持手段」を指すことが明らかであるから,乙16-6~9公報・明細書記載の技術は,本件発明2-8との関係でも,収容/保持手段が「中空針の後退によって生ずる力に抗」するものではない。 ウ小括以上によれば,その余の点について検討するまでもなく,本件発明2-7・8は,当業者が乙11-1発明及び周知技術から容易に想到し得なかったものであり,進歩性を有する。したがって,本件特許2の請求項7・8は,特許無効審判で無効とされるべきものではない。なお,本件訂正発明2-8が特許無効審判で無効とされるべきものでないことは,前記6( ものであり,進歩性を有する。したがって,本件特許2の請求項7・8は,特許無効審判で無効とされるべきものではない。なお,本件訂正発明2-8が特許無効審判で無効とされるべきものでないことは,前記6(3)のとおりである。 (5) 結論以上のとおりであるから,本件特許2の請求項1・3・5は進歩性の欠如により特許無効審判で無効とされるべきものであるが,本件特許1の請求項1及び本件特許2の請求項7・8は特許無効審判で無効とされるべきものではない。 8 争点⑧(被告らの責任及び損害)(1) 被告らの責任について前記第2の1(2)・(4)によれば,被告らは,平成19年5月1日から平成- 188 - 22年9月23日までの間,共同して被告製品を製造し,販売し,輸出していたから,平成19年5月1日から本件特許権1の存続期間満了日である平成20年4月28日までの間は本件訂正発明1に係る本件特許権1及び本件発明2-7・8に係る本件特許権2を侵害し,平成20年4月29日から平成22年9月23日までの間は本件発明2-7・8に係る本件特許権2を侵害していたものであり,共同不法行為に基づき,上記各特許権の侵害により原告に生じた損害について,連帯して損害賠償責任を負う。 (2) 損害についてア特許法102条3項による損害額について鑑定の結果によれば,被告製品の売上高は,平成19年5月1日から平成20年4月28日までは「●(省略)●」,同月29日から平成22年9月23日までは「●(省略)●」であることが認められる。 証拠(甲32~34,乙29,30)によれば,本件各発明が属する医療器具の技術分野における実施料率は,他の技術分野における実施料率と比べて高いこと,静脈留置針(カニューレ挿入 められる。 証拠(甲32~34,乙29,30)によれば,本件各発明が属する医療器具の技術分野における実施料率は,他の技術分野における実施料率と比べて高いこと,静脈留置針(カニューレ挿入装置)の国内販売実績は,針刺し防止機構の付いたセーフティタイプが年々増加し,近年は約50%程度の市場占有率を有すること,中でも,止血弁の付いた被告製品の市場評価が高く,約30%の市場占有率を有することが認められる。 そして,前記第2の1(2)によれば,本件訂正発明1は,ラッチの駆動による安全後退用針を備えたカニューレ挿入装置全体に関する発明であるのに対し,本件発明2-7・8は,本件訂正発明1に係る装置に血液の収容・保持・隔離手段に係る構成を付加した発明であることから,本件訂正- 189 - 発明1に係る特許権の存続期間中と存続期間満了後とで実施料率を区別し,存続期間満了後の実施料率(本件発明2-7・8を根拠とするもの)は,存続期間中の実施料率(本件訂正発明1及び本件発明2-7・8を根拠とするもの)よりも低いものと認めるのが相当である。このことを基本として,本件全証拠から認められる諸事情を総合考慮すれば,本件訂正発明1に係る特許権1の存続期間中の実施料率は10%,その存続期間満了後の実施料率は3.3%と認めるのが相当である。 この実施料率を基に計算すると,特許法102条3項による損害額は,次の計算式のとおり,9995万3966円となる。 (計算式)「●(省略)●」×0.1+「●(省略)●」×0.033=9995万3966円(1円未満切捨て)イ弁護士費用について本件事案の内容,審理経過,前記認容額その他諸般の事情を総合考慮して,前記アの1割に当たる999万5396円とするのが相当である。 ウ 円(1円未満切捨て)イ弁護士費用について本件事案の内容,審理経過,前記認容額その他諸般の事情を総合考慮して,前記アの1割に当たる999万5396円とするのが相当である。 ウ確定遅延損害金について(ア) 平成20年11月25日までに生じた損害額a 次の計算式のとおり,平成19年5月1日から平成20年4月28日までは,1507万5076円,同月29日から同年11月25日までは,損害が日々均等に発生したものとして,2280万0084円がそれぞれ生じ,併せて3787万5160円が生じている(弁護士費用を含む。)。 (計算式)「●(省略)●」×0.1×1.1+「●(省略)●」×0.033- 190 - ×1.1÷878日(平成20年4月29日~平成22年9月23日)×211日(平成20年4月29日~同年11月25日)=「●(省略)●」+「●(省略)●」=3787万5160円 (1円未満切捨て)b 平成22年9月23日までに生じた確定遅延損害金額前記aの損害額につき,平成22年9月23日までに生じた確定遅延損害金額は,次の計算式のとおり,346万0648円となる。 (計算式)3787万5160円×0.05÷365日×667日(平成20年11月26日~平成22年9月23日)=346万0648円 (1円未満切捨て)(イ) 平成20年11月26日以降に生じた損害額a 平成20年11月26日から平成22年9月23日までは,損害が日々均等に発生したものとして,1日あたり「●(省略)●」の損害が生じている(弁護士費用を含む。)。 (計算式)「●(省略)●」×0.033×1.1÷878日(平成20年4月29日~平成22年9月23日)=「● のとして,1日あたり「●(省略)●」の損害が生じている(弁護士費用を含む。)。 (計算式)「●(省略)●」×0.033×1.1÷878日(平成20年4月29日~平成22年9月23日)=「●(省略)●」 (1円未満切捨て)b 平成22年9月23日までに生じた確定遅延損害金額前記aの損害額につき,平成20年11月27日から平成22年9月23日までの666日間に生じた確定遅延損害金額は,次の計算式のとおり,327万7901円となる。 (計算式)「●(省略)●」×0.05÷365日×665-1Σk=1 k=「●(省略)●」×0.05÷365日×(1+665)×665÷2=327万7901円 (1円未満切捨て) 9 結論- 191 - 以上によれば,原告の請求は,被告らに対し,被告製品の製造,譲渡,輸出及び譲渡申出の差止めを求めるとともに,連帯して特許権侵害の共同不法行為に基づく損害賠償金として,前記8(2)ア,イ,ウ(ア)・(イ)の各bの合計額である1億1668万7911円及びうち前記8(2)ア,イの合計額である1億0994万9362円に対する不法行為の後の日である平成22年9月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとする。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官阿部正幸 裁判官山門優 裁判官志賀勝 (別紙特許公 裁判官山門優 裁判官志賀勝 (別紙特許公報省略) - 192 - (別紙)当事者目録 アメリカ合衆国ユタ州<以下略>原告フェイズ・メディカル・インコーポレーテッド同訴訟代理人弁護士片山英二同本多広和同中村閑同訴訟代理人弁理士日野真美同補佐人弁理士黒川恵同杉山共永東京都文京区<以下略>- 193 - 被告メディキット株式会社東京都文京区<以下略>被告東郷メディキット株式会社被告ら訴訟代理人弁護士田中成志同平出貴和同山田徹同森修一郎同補佐人弁理士豊岡静男同櫻井義宏同高松俊 同補佐人弁理士豊岡静男同櫻井義宏同高松俊雄(別紙)物件目録 「スーパーキャスZ5」という製品名で特定される医療器具 - 194 - (別紙)特許権目録 1 本件特許権1特許番号第2647132号発明の名称安全後退用針を備えたカニューレ挿入装置出願日昭和63年4月28日登録日平成9年5月9日特許請求の範囲請求項1(1) (訂正前)「近い端及び遠い端を有する中空のハンドルと,該ハンドル内に配置されたニードルハブと,鋭い自由端と,前記ニードルハブに連結された固着端とを有するニードルと,前記ニードルハブを前記中空なハンドルの- 195 - 近い端に向かって付勢する付勢手段と,前記ニードルハブから独立して移動可能であり,前記ニードルハブを前記付勢手段の力に抗して一時的に前記中空のハンドルの遠い端に隣接して保持するラッチであって,前記ニードルの長さよりも短い振幅で手動により駆動され,前記ニードルの移動距離よりも短い距離のみ移動するラッチと,から成ることを特徴とする安全装置。」(2) (訂正後)「近い端及び遠い端を有する中空のハンドルと,該ハンドル内に配置されたニードルハブと,鋭い自由端と,前記ニードルハブに連結された固着端とを有し,カニューレを患者の定位置に案内し運ぶためのニードルと,前記ニードルハブを前記中空なハンドルの近い端に向かって付勢する付勢手段と,前記ニードルハブから独立して移動可能であり 結された固着端とを有し,カニューレを患者の定位置に案内し運ぶためのニードルと,前記ニードルハブを前記中空なハンドルの近い端に向かって付勢する付勢手段と,前記ニードルハブから独立して移動可能であり,前記ニードルハブを前記付勢手段の力に抗して一時的に前記中空のハンドルの遠い端に隣接して保持するラッチであって,前記ニードルの長さよりも短い振幅で手動により駆動され,前記ニードルの移動距離よりも短い距離のみ移動するラッチと,から成ることを特徴とするカニューレ挿入のための安全装置。」(下線部分は,訂正部分を示す。) 2 本件特許権2特許番号第2588375号発明の名称医療器具を挿入しその後保護する安全装置優先日平成5年11月15日出願日平成6年11月15日登録日平成8年12月5日(1) 特許請求の範囲請求項1- 196 - 「カニューレの如き医療器具を患者の体内へ挿入し且つその後患者の体内にあった該装置の部分に人が接触しないように保護するための安全装置において,患者を穿刺し,前記医療器具を患者の体内の適所へ案内して搬送する中空針であって,少なくとも1つの鋭利な端部を有する軸を具備する中空針と,人の指が届かないように,少なくとも前記針の鋭利な端部を包囲するようになされた中空のハンドルと,前記鋭利な端部を前記ハンドルから突出させた状態で前記軸を前記ハンドルに固定する固定手段と,前記固定手段を解除し,前記針の鋭利な端部を人の指が届かないように前記ハンドルの中へ実質的に永続的に後退させる解除/後退手段であって,前記針の軸よりも実質的に短い距離だけ簡単且つ単一の動作によって手操作で作動可能な解除/後退手段と,前記後退のエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段と 的に後退させる解除/後退手段であって,前記針の軸よりも実質的に短い距離だけ簡単且つ単一の動作によって手操作で作動可能な解除/後退手段と,前記後退のエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段とを備えることを特徴とする安全装置。」(2) 特許請求の範囲請求項3「請求項1の安全装置において,前記エネルギ吸収手段が,前記針と前記ハンドルの内部孔とのうちの一方に固定された表面と,前記針と前記内部孔とのうちの他方に担持されて前記表面に圧接し,前記後退の間に摩擦を生ずる要素とを備えることを特徴とする安全装置。」(3) 特許請求の範囲請求項5「請求項1の安全装置において,前記中空のハンドルは,前記針がそれに向かって後退する端部構造を有し,前記エネルギ吸収手段は,前記針と前記端部構造とうちの一方に固定されて前記端部構造に対する前記針の衝撃の一部を吸収する押し潰し可能な要素を有することを特徴とする安全装置。」- 197 - (4) 特許請求の範囲請求項7「請求項1の安全装置において,前記中空針の中からの血液を収容する共に,前記後退によって生ずる力に抗して,前記針が後退する間に及び該後退の後に,前記血液を確実に保持するための収容/保持手段とを更に備えることを特徴とする安全装置。」(5) 特許請求の範囲請求項8ア (訂正請求前)「請求項1の安全装置において,前記収容/保持手段が,前記後退によって生ずる力から前記室の内部を隔離するための隔離手段を更に備えることを特徴とする安全装置。」イ (訂正請求後)「請求項7の安全装置において,前記収容/保持手段が,前記針と共に運動するように固定された室を備え,前記後退によって生ずる力から前記室の内部を隔離するための隔離手段を更に備えることを特徴とす 求後)「請求項7の安全装置において,前記収容/保持手段が,前記針と共に運動するように固定された室を備え,前記後退によって生ずる力から前記室の内部を隔離するための隔離手段を更に備えることを特徴とする安全装置。」(下線部分は,訂正請求部分を示す。) - 198 -

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