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昭和41(オ)768 船舶海上保険金請求

裁判所

昭和45年12月24日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄自判 東京高等裁判所 昭和38(ネ)2244

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3,369 文字

主文 原判決中上告人敗訴部分を破棄する。右部分につき被上告人の控訴を棄却する。原審および当審における訴訟費用は被上告人の負担とする。理由 上告代理人毛受信雄、同長野潔、同熊谷林作、同谷正男名義の上告理由第一点について。原判決は、上告人・被上告人間の本件船舶海上保険契約当時における普通保険約款中の保険者の免責事項を定めた三条の規定は「二、襲撃、捕獲、拿捕、又ハ抑留(海賊ニ依ル場合ハ之ヲ除ク)」とあるうちの括弧書の部分が抹消されていたのであるが、右抹消は、保険業法一〇条による主務大臣の認可を受けないでなされた普通保険約款の変更であつて無効であり、したがつて、海賊による襲撃により生じた本件事故につき、保険者たる上告人は、抹消前の右規定に基づき損害を填補すべき義務を免れないものであると判断し、右変更を無効とする理由として、およそ一般保険契約者は、契約に際し、特段の事情があるため意識的に約款と異なる約定をしない限り、保険業者のあらかじめ開示する普通保険約款につき、その個別の条項を知ると否とにかかわらず、これに概括的に同意したものとみなされ、これに拘束されるものであるが、保険業法は、保険約款のこのような拘束力に鑑み、一方において保険業の健全な発達育成をはかるとともに、他方において保険制度を利用する一般公衆の正当な利益を護り、保険契約者が保険契約の技術性の故に不当な不利益を被ることのないよう、国家が保険業を監督する趣旨で、普通保険約款の作成変更につき主務大臣の認可を必要とするものと定めているのであつて、約款の法規範的拘束力が是認される所以は、その内容において合理化されており、保険業者の一方的恣意を許さず、主務大臣の認可を要することに基づくものであるから、保険業者が- 1 -右 いるのであつて、約款の法規範的拘束力が是認される所以は、その内容において合理化されており、保険業者の一方的恣意を許さず、主務大臣の認可を要することに基づくものであるから、保険業者が- 1 -右認可を受けずに変更した約款の条項は、保険契約者に対し法規範的拘束力をもつ根拠を欠くものである旨を説示しているのである。 的恣意を許さず、主務大臣の認可を要することに基づくものであるから、保険業者が- 1 -右 いるのであつて、約款の法規範的拘束力が是認される所以は、その内容において合理化されており、保険業者の一方的恣意を許さず、主務大臣の認可を要することに基づくものであるから、保険業者が- 1 -右認可を受けずに変更した約款の条項は、保険契約者に対し法規範的拘束力をもつ根拠を欠くものである旨を説示しているのである。これに対し、論旨は、約款の変更についての認可の有無はその私法上の拘束力に消長を及ぼすものではない旨を主張し、右判断の違法をいう。思うに、普通保険約款が保険契約者の知・不知を問わずこれを拘束する効力を有するものであること、その作成変更につき主務大臣の認可を要するとされる趣旨が、主として、右のような拘束力を有する約款が保険業者の恣意により作成されることを防ぎ、約款の内容を適法かつ合理的ならしめて保険契約者の保護をはかることにあることは、右の原判決説示のとおりである。しかし、主務大臣の認可を受けない保険約款の変更は、如何なる種類の保険においても、すべて一律にその効力を有しないものとするのは相当でない。船舶海上保険においては、一般の火災保険や生命保険とは異なり、保険契約者となる者すなわち船舶海上保険を利用する者は、多くは、商行為をなすことその他営利的な目的をもつて船舶を航海の用に供する者であり、相当程度の営業規模と資力を有する企業者であるのが普通であつて、保険業者に比して必ずしも経済的に著しく劣弱な地位にあるとはいえない。このような者については、同種の保険を反覆して利用することによつて普通保険約款の内容に通暁し、その各条項を仔細に検討し、契約の締結にあたつては、自己の合理的な判断と計算に基づいてその内容を定めることが、期待されうるとともに、保険業者としても、このような利用者の意思と利益を無視して約款その他の契約内容を一方的に自己に 約の締結にあたつては、自己の合理的な判断と計算に基づいてその内容を定めることが、期待されうるとともに、保険業者としても、このような利用者の意思と利益を無視して約款その他の契約内容を一方的に自己に有利にのみ定めることはできないのであつて、保険約款の内容を保険業者の定めるところに委ねても、必ずしもその合理性を確保しえないものではない。したがつて、海上保険についても、保険制度の公共性に基づき、その適正な運営のため保険業に対する国の一般的監督が必要とされることは勿論であるが、保険契約の内容を律する普通保険約款を公正妥当ならしめ保険契約者を保護するという点において- 2 -は、行政的監督は補充的なものに過ぎず、主務大臣の認可を受けないでもそれだけでただちに約款が無効とされるものではないというべきである。 性を確保しえないものではない。したがつて、海上保険についても、保険制度の公共性に基づき、その適正な運営のため保険業に対する国の一般的監督が必要とされることは勿論であるが、保険契約の内容を律する普通保険約款を公正妥当ならしめ保険契約者を保護するという点において- 2 -は、行政的監督は補充的なものに過ぎず、主務大臣の認可を受けないでもそれだけでただちに約款が無効とされるものではないというべきである。してみれば船舶海上保険につき、保険業者が普通保険約款を一方的に変更し、変更につき主務大臣の認可を受けないでその約款に基づいて保険契約を締結したとしても、その変更が保険業者の恣意的な目的に出たものでなく、変更された条項が強行法規や公序良俗に違反しあるいは特に不合理なものでない限り、変更後の約款に従つた契約もその効力を有するものと解するのが相当である。いま本件についてこれをみるに、原判決(その引用する第一審判決を含む。)の認定した前示約款三条二号の変更の経緯ならびに変更後の約款が長期にわたり海上保険取引の実際において妥当して来た事実に徴すれば、右変更は保険業者の恣意に出たものではなく相当の理由があり、かつ、その変更が特に不合理な結果を生ずるものとは認められないから、右変更後の約款は本件保険契約の内容を定めるものとして当事者を拘束する効力を有するものと解すべきである。そして、原判決(その引用する第一審判決を含む。)の確定した事実関係のもとにお られないから、右変更後の約款は本件保険契約の内容を定めるものとして当事者を拘束する効力を有するものと解すべきである。そして、原判決(その引用する第一審判決を含む。)の確定した事実関係のもとにおいては、被上告人主張の本件事故は普通保険約款三条二号所定の襲撃にあたり、上告人は右事故につき保険金支払の責に任じないものと解すべきであつて、被上告人の本訴請求は失当である。したがつて、これと結論を異にする原判決には、右のような約款変更の効力に関する判断を誤つた違法があり、右判断の違法をいう論旨は結局理由がある。よつて、その余の上告理由について判断をするまでもなく、原判決は上告人敗訴部分につき破棄を免れず、被上告人の請求を棄却した第一審判決を相当として被上告人の控訴を棄却すべきものとし、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八四条、九六条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。 を異にする原判決には、右のような約款変更の効力に関する判断を誤つた違法があり、右判断の違法をいう論旨は結局理由がある。よつて、その余の上告理由について判断をするまでもなく、原判決は上告人敗訴部分につき破棄を免れず、被上告人の請求を棄却した第一審判決を相当として被上告人の控訴を棄却すべきものとし、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八四条、九六条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。裁判官松田二郎は退官につき評議に関与しない。- 3 -最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官岩田誠裁判官入江俊郎裁判官長部謹吾裁判官大隅健一郎- 4 -

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