平成27年12月15日判決言渡平成26年(行ウ)第486号小石川植物園周辺道路整備工事公金支出差止等請求事件 主文 1 本件訴えのうち,次の部分をいずれも却下する。 (1) 被告文京区長に対し,小石川植物園西側道路整備工事に係る支出負担行為の差止めを求める部分のうち,文京区とA株式会社との間で平成26年8月21日に締結された同工事の一部に係る工事請負契約の締結の差止めを求める部分(2) 被告文京区長に対し,小石川植物園西側道路整備工事に係る地方自治法232条の4第1項に規定する支出の差止めを求める部分(3) 被告文京区長に対し,国立大学法人東京大学との間で,小石川植物園周辺道路整備工事に関する平成21年12月22日付け「小石川植物園と区道の整備に関する基本協定書」に基づく年度協定のうち,平成28年度分以降のものを締結することの差止めを求める部分 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告文京区長は,小石川植物園西側道路整備工事に係る公金の支出(支出命令を除く。)をしてはならない。 2 被告文京区土木部管理課長は,小石川植物園西側道路整備工事に係る公金の支出命令をしてはならない。 3 被告文京区長は,国立大学法人東京大学との間で,小石川植物園周辺道路整備工事に関する平成21年12月22日付け「小石川植物園と区道の整備に関する基本協定書」による基本協定に基づく年度協定のうち,平成28年度分以 降のものを締結してはならない。 第2 事案の概要本件は,東京都文京区の住民である原告らが,同区内にある東京大学大学院理学系研究科附属植物園(以下「小石川植物園」という。)の周辺道路について同区が行ってい 結してはならない。 第2 事案の概要本件は,東京都文京区の住民である原告らが,同区内にある東京大学大学院理学系研究科附属植物園(以下「小石川植物園」という。)の周辺道路について同区が行っている整備工事(以下「本件周辺道路整備工事」という。)は,同植物園の環境に与える影響について何ら配慮することなく実施されており,環境基本法等の法令の趣旨・目的に鑑み,文京区が負う環境配慮義務に違反するなどとして,被告文京区長(以下「被告区長」という。)に対し,未だ工事の完成していない同植物園の西側道路の整備工事(以下「本件西側道路整備工事」という。)に係る公金の支出(支出命令を除く。)の差止め(請求1)を求め,被告文京区土木部管理課長(以下「被告管理課長」という。)に対し,同工事に係る公金の支出命令の差止め(請求2)を求めるとともに,被告区長に対し,文京区が国立大学法人東京大学(以下「東京大学」という。)との間で締結した「小石川植物園と区道の整備に関する基本協定書」による基本協定(以下「本件基本協定」という。)に基づき締結するものとされている年度協定(以下「本件年度協定」という。)のうち,平成28年度分以降のものの締結の差止め(請求3)を求める住民訴訟である。 1 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者ア原告らは,文京区の住民である。 イ被告区長は,文京区の執行機関である。 ウ被告管理課長は,本件西側道路整備工事に係る公金の支出命令について,被告区長の委任を受けた者である(文京区会計事務規則(昭和39年文京区規則第9号。乙42)6条1項,別表,文京区役所組織条例(昭和47年文京区条例第3号。乙43)2条土木部の項1号)。 (2) 小石 任を受けた者である(文京区会計事務規則(昭和39年文京区規則第9号。乙42)6条1項,別表,文京区役所組織条例(昭和47年文京区条例第3号。乙43)2条土木部の項1号)。 (2) 小石川植物園の概要ア小石川植物園は,植物学の教育・研究等を目的とする東京大学大学院理学系研究科附属植物園として,東京都文京区α-×-1に設置されている。 イ小石川植物園は,江戸幕府の「御薬園」に始まる日本最古の植物園であり,平成24年9月19日に国の名勝及び史跡(文化財保護法109条1項)に指定された。4000種の植物が配置され,世界的に見ても優れた研究植物園である(甲1)。 (3) 本件周辺道路整備工事の経緯等ア本件周辺道路整備工事の概要本件周辺道路整備工事は,文京区が,小石川植物園の周辺道路(以下「本件周辺道路」という。)を拡幅し,拡幅部に設置されている既存の塀を撤去して新たにフェンスを設置するものであり,これに伴い,本件周辺道路に隣接する小石川植物園の一部の用地が道路用地として提供され,用地上の樹木の撤去等の工事を行うものである。 イ本件基本協定の締結(甲6)文京区と東京大学は,平成21年12月22日,「小石川植物園と区道の整備に関する基本協定書」による基本協定(本件基本協定)を締結した。 本件基本協定において,東京大学は小石川植物園の一部の用地を無償で道路法の適用を受ける道路とすることを承諾し,文京区は樹木等や既存の塀の撤去,フェンスの設置等の工事を行うものとされ,工事の種類に応じた費用負担について取り決められたほか,この協定に基づく各年度の工事の内容,範囲,費用等については,協議の上,年度協定等を締結するものとされた。 ウ本件年度協定の締結等(ア) 文京区と東京大 いて取り決められたほか,この協定に基づく各年度の工事の内容,範囲,費用等については,協議の上,年度協定等を締結するものとされた。 ウ本件年度協定の締結等(ア) 文京区と東京大学は,平成23年6月20日,本件周辺道路整備工事(第1期)(樹木の移植・剪定等を行うもの。以下「第1期工事」と いう。)の工事内容,範囲等を定める「小石川植物園と区道の整備に関する平成23年度協定書」(乙44)による年度協定(以下「平成23年度協定」という。)を締結した。 (イ) 文京区長は,平成23年7月13日,道路法18条1項後段に基づき,特別区道文第290号(西側道路の一部)及び同第894号(西側道路の一部及び南側道路)について,東京大学から特別区道路線区域の編入願及び承諾書の提出を受けた上,同植物園の敷地の一部を編入する内容で区域を変更する旨の決定をした(乙20から22まで)。 (ウ) 文京区は,平成23年7月29日,株式会社Bとの間で,第1期工事に係る工事請負契約を締結した。 (エ) 平成24年4月20日,第1期工事が竣工した(弁論の全趣旨)。 (オ) 東京大学の設置した小石川植物園植生調査委員会(委員長 C東京大学大学院理学系研究科教授(平成19年4月から平成23年3月まで及び平成25年4月以降,小石川植物園の園長の職にある(乙36)。 以下「C園長」という。)。以下「調査委員会」という。)は,平成24年9月29日に植物調査を実施した上で,平成25年1月18日付けで「小石川植物園塀改修にかかわる植物調査について(中間報告)」(甲22)を作成した。 (カ) 文京区と東京大学は,平成25年3月22日,本件周辺道路整備工事(第2期)(南側道路部分について,道路の舗装等を行うもの。以下 物調査について(中間報告)」(甲22)を作成した。 (カ) 文京区と東京大学は,平成25年3月22日,本件周辺道路整備工事(第2期)(南側道路部分について,道路の舗装等を行うもの。以下「第2期工事」という。)の工事内容,範囲等を定める「小石川植物園と区道の整備に関する平成25年度協定書」(乙30)による年度協定(以下「平成25年度協定」という。)を締結した。 (キ) 文京区は,平成25年3月25日,A株式会社との間で,第2期工事に係る工事請負契約を締結した。 (ク) 調査委員会は,平成25年4月22日及び同年8月6日に植物調査 を実施した上で,平成25年11月15日付けで,本件周辺道路整備工事が行われても植物園に必須な植物が失われる危険性はない旨記載された「小石川植物園塀改修にかかわる植物調査について(最終報告)」(甲27の2枚目以下)を作成した。 (ケ) 平成25年12月12日,第2期工事が竣工した(弁論の全趣旨)。 エ本件西側道路整備工事に係る状況(ア) 文京区と東京大学は,平成26年3月14日,本件周辺道路整備工事(第3期)(西側道路部分について,擁壁の設置等を行うものであり,本件西側道路整備工事の一部である。以下「第3期工事」という。)の工事内容,範囲等を定める「小石川植物園と区道の整備に関する平成26年度及び平成27年度協定書」(乙31)による年度協定(以下「平成26・27年度協定」)を締結した。 (イ) 文京区は,平成26年8月21日,A株式会社との間で,工期を同月22日から平成28年2月19日までとして,第3期工事に係る工事請負契約(以下「本件工事請負契約」という。)を締結した。同株式会社は,平成26年11月25日,第3期工事に着工した。(乙32 期を同月22日から平成28年2月19日までとして,第3期工事に係る工事請負契約(以下「本件工事請負契約」という。)を締結した。同株式会社は,平成26年11月25日,第3期工事に着工した。(乙32の1ないし32の11,弁論の全趣旨)(4) 監査請求及び本訴の提起ア監査請求原告らは,平成26年7月11日,文京区監査委員に対し,第1記載の各請求を含む措置を求める住民監査請求をしたところ,同年9月4日付けで原告らの監査請求をいずれも却下又は棄却する監査結果(第1記載の各請求に係る部分についてはいずれも棄却)が示され,同監査結果は,そのころ,原告らに通知された(甲35,弁論の全趣旨)。 イ訴訟提起等原告らは,平成26年10月3日,被告区長を被告として本件訴訟を提 起したが,平成27年10月29日,行政事件訴訟法15条1項に基づき,本件西側道路整備工事に係る公金の支出の差止めを求める請求のうち,支出命令の差止めを求める部分について,被告を被告管理課長に変更することの許可を求める旨の申立てをし,当裁判所は,同月30日,これを許可した(顕著な事実)。 2 争点(1) 請求1に係る訴えの適法性(被告適格)(2) 請求3に係る訴えの適法性(平成28年度以降の本件年度協定の締結が財務会計上の行為に当たるか否か。)(3) 本件西側道路整備工事に係る公金の支出及び平成28年度以降の本件年度協定の締結の適法性 3 争点に関する当事者の主張の要旨(1) 争点(1)(請求1に係る訴えの適法性(被告適格))について(被告区長の主張の要旨)地方自治法上,公金の支出権限は会計管理者に属しているところ,文京区においても,文京区会計管理者がその権限を有しており,文京区長にその権限はない。 よっ いて(被告区長の主張の要旨)地方自治法上,公金の支出権限は会計管理者に属しているところ,文京区においても,文京区会計管理者がその権限を有しており,文京区長にその権限はない。 よって,請求1に係る訴えは,権限のない者を被告とする点で不適法である。 (原告らの主張の要旨)請求1において差止めを求める「支出」には支出負担行為を含む趣旨である。 (2) 争点(2)(請求3に係る訴えの適法性(平成28年度以降の本件年度協定の締結が財務会計上の行為に当たるか否か。))について(被告区長の主張の要旨)地方自治法242条の2第1項に定める住民訴訟の対象とされる財務会計 上の行為とは,財産的価値の維持,保全を図る財務的処理を直接の目的とするものに限るとされており,財務会計上の行為である「契約の締結」とは,地方公共団体の公金又は財産の財産的価値の維持,保全を直接の目的とし,その締結自体によって直接地方公共団体に対し損害を与え,又は与える客観的可能性を有するものをいうと解される。 しかるに,原告らが締結の差止めを求める本件年度協定の性質は,当該年度における本件基本協定の細目を定めるものにすぎない。また,本件年度協定では,当該年度に施行する工事の内容を決めることを主たる目的とし,本件周辺道路整備工事に要する費用については,本件基本協定において文京区と東京大学との間で費用負担の定めがなされているので,本件年度協定では,かかる費用の支払方法が定められるにとどまる。したがって,本件年度協定の締結が,文京区の公金又は財産の財産的価値の維持,保全を直接の目的としているということはできない。 さらに,本件基本協定に定める工事費用は,東京大学に対してではなく,工事請負業者に対して支出されるものであり,本件年度協定の締結によって の維持,保全を直接の目的としているということはできない。 さらに,本件基本協定に定める工事費用は,東京大学に対してではなく,工事請負業者に対して支出されるものであり,本件年度協定の締結によって直接工事代金の支出がされるわけではないから,その締結自体によって直接文京区に損害を与え,又は与える客観的可能性を有するということもできない。 したがって,平成28年度以降の年度協定の締結は財務会計上の行為には当たらないから,請求3に係る訴えは不適法な訴えである。 (原告らの主張の要旨)本件年度協定は,当該年度にどのような工事を行うかを具体的に定め,かつ,本件基本協定の費用負担の定めと相まって,文京区が当該年度に行われる工事について発生する費用のどこまでを負担するのか,逆に言えば,東京大学に対して費用負担を求めることができる範囲はどこまでかを,当該年度について具体的に定めるものであるから,本件年度協定の締結は財務会計上 の行為である。 被告らは,本件基本協定に定める工事費用の支出は,当該各工事契約の履行によりなされるものであって,本件年度協定の締結によって,直接工事代金の支出がなされるわけではないと主張するが,本件周辺道路整備工事に係る公金の支出の合法性は工事請負契約のみに依拠するものではなく,本件年度協定に基づくものでなければならない。 (3) 争点(3)(本件西側道路整備工事に係る公金の支出及び平成28年度以降の本件年度協定の締結の適法性)について(原告らの主張の要旨)ア文京区の環境配慮義務の根拠及び内容(ア) 環境基本法は,環境の保全について,生態系の微妙な均衡の下に成り立っている限りある環境の現在及び将来世代による享受とこの将来にわたっての維持を基本理念として(3条),地方公共団体について,上記基本 環境基本法は,環境の保全について,生態系の微妙な均衡の下に成り立っている限りある環境の現在及び将来世代による享受とこの将来にわたっての維持を基本理念として(3条),地方公共団体について,上記基本理念にのっとり,国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し,及び実施する責務を課している。また,自然環境保全法は,地方公共団体等に対して,上記の基本理念にのっとり自然環境の適切な保全が図られるよう努める義務を定めている(2条)。 (イ) 文京区が平成11年3月に制定した文京区環境基本計画は,まず,文京区の自然環境の特性として,歴史的経緯から小石川植物園などのまとまった緑地が残されていることを指摘しており,実際に小石川植物園は,文京区内の最大の緑地帯である。その上で,同計画は,「大きな緑を核とし,小さな緑を増やし,つなげる」ことを個別目標の冒頭に挙げ,「緑の核」である小石川植物園を含む緑を守るために,行政の役割として「まとまった緑地や斜面緑地・貴重な樹木を保全する」ことを規定し,さらに,各種事業の推進に当たっては「緑の保全・創出に努める」とし ている。 また,文京区みどりの保護条例(昭和50年文京区条例第53号)は,みどり(樹木及び樹林並びに草花)の保護と育成を通じて,豊かな自然環境を確保することを目的とし(1条),都市における自然の重要性を認識し,区民及び事業者とともに,あらゆる施策を通じて,みどりの保護と育成に努めることを区長の責務とし(3条),さらに何人も区内の樹木及び樹林を保存するために積極的に努力しなければならないと定めている(8条)。 (ウ) さらに,環境基本法や東京都環境基本条例(平成6年東京都条例第92号)は,それぞれ国や都が実施する環境に著しい影響を 林を保存するために積極的に努力しなければならないと定めている(8条)。 (ウ) さらに,環境基本法や東京都環境基本条例(平成6年東京都条例第92号)は,それぞれ国や都が実施する環境に著しい影響を及ぼすおそれのある事業について,環境の保全に適切な配慮がなされるよう事前の評価のための措置を求め,また同様の施策の実施を文京区に対しても求めている(環境基本法20条,4条,東京都環境基本条例11条,5条)。 (エ) これらの法令の趣旨目的に鑑みれば,文京区は,その実施する事業が環境,とりわけ植生や生態系に重大な影響を及ぼすおそれがある場合には,当該事業の実施決定前に当該事業が環境に与える影響について,適切な評価を行い,影響を最小化するための検討を行う義務を有している。仮に,当該事業が環境影響評価法ないし東京都環境影響評価条例(昭和55年東京都条例第96号)の対象事業でないとしても,当該事業による植生や生態系への影響のおそれの程度に応じた配慮が必要とされるところである。 (オ) 小石川植物園は,植物の多様性の保全を通じて植物学の研究・教育に貢献してきた施設であり,その希少種を保護し,生態系を維持することにより植物の多様性を確保することは,日本の植物学の教育・研究の発展と,これを通じた生態系・生物多様性の保護を図る上で極めて重要である。したがって,このような小石川植物園の植生の伐採を伴う本件 周辺道路整備工事の実施に当たっては,文京区は,実施決定前に,工事によって生じる小石川植物園の植生や生態系への影響を評価し,影響を最小化する方策を検討する義務(環境配慮義務)を有していた。 イ文京区による環境配慮義務違反(ア) 文京区は,上記環境配慮義務を一切果たさず,本件周辺道路整備工事の実施を決定し,これまで第1期工事及び第2期 討する義務(環境配慮義務)を有していた。 イ文京区による環境配慮義務違反(ア) 文京区は,上記環境配慮義務を一切果たさず,本件周辺道路整備工事の実施を決定し,これまで第1期工事及び第2期工事を実施している。 すなわち,文京区は,本件基本協定の締結によって,東京大学に対し,小石川植物園の一部をコミュニティ道路として整備する義務を負ったのであるから,これによって本件周辺道路整備工事の実施は決定したものということができる。したがって,文京区は,本件基本協定の締結前に,工事によって生じる小石川植物園の植生や生態系への影響を評価し,影響を最小化する方策を検討する義務を有していた。 ところが,文京区白身が認めているように,文京区は,本件基本協定の締結までに,工事が小石川植物園の植生や生態系に与える影響について,何の調査も行っていないのみならず,その後も現在に至るまで,工事の影響について何ら検討を行っていない。その結果として,本件周辺道路整備工事は通常の土木公園工事と位置付けられ,本件年度協定には小石川植物園の植生や生態系に与える影響等に配慮した条項はなく,入札業者の選定に当たっても移植等を行う技術の有無等について何ら条件が付されていないなど,本件周辺道路整備工事を実施するに当たって,小石川植物園に対する植生への影響を一切考慮していない。 したがって,本件基本協定の締結及びこれに基づく本件周辺道路整備工事の実施は,上記環境配慮義務に違反するものであり,違法・不当である。 (イ) また,既存の塀等の建替えが必要であったとしても,そのために道路拡幅工事を実施する必然性は全くないにもかかわらず,文京区は,既 存の塀の建替えを東京大学に求めるに当たって,道路拡幅工事を所与の条件としたのであって,それ自体,違法・不当 そのために道路拡幅工事を実施する必然性は全くないにもかかわらず,文京区は,既 存の塀の建替えを東京大学に求めるに当たって,道路拡幅工事を所与の条件としたのであって,それ自体,違法・不当であるといわざるを得ない。 (ウ) なお,本件周辺道路整備工事については,その植物に対する影響について,一定の調査が行われているが,文京区ではなく東京大学が実施したものであり,これを文京区による上記環境配慮義務の履行とみることはできない。 また,上記調査は,その中間報告の発表までに既に相当の樹木が伐採されており,本来事業の実施決定前に行われるべき影響調査としては,およそ意味をなさない。 ウ東京大学による調査について(ア) 東京大学による調査は,セットバック部分に限定して,当該場所で自生していた植物に対する影響を検討したものであり,以下の2点を全く考慮せず,調査自体としても極めて不十分なものである。 (イ) 第1に,小石川植物園全体への影響を考慮していない点である。小石川植物園は,江戸時代から続くその長い歴史の中で地形にほとんど手を入れないことで,健全な生態系を育んできたが,これは多様な植物,動物,微生物の間のおびただしい関係によってつくられているものであり,その保全は,生物多様性の維持に大きく依存している。 そのため,文京区が施工する本件周辺道路整備工事によって,1200平方メートル以上もの敷地が道路用地にされる上,実際には,拡幅部分よりも更に広い範囲で掘削工事が行われている本件では,過去に小石川植物園が経験したことのない生物的因子の広範かつ急激な変化が生じることで,植物園全体の植生に多大な影響が生じるおそれがある。 また,小石川植物園の南側・西側の外延をなす当該敷地は,樹木や下草等によって,内部の環境を守る,バ 生物的因子の広範かつ急激な変化が生じることで,植物園全体の植生に多大な影響が生じるおそれがある。 また,小石川植物園の南側・西側の外延をなす当該敷地は,樹木や下草等によって,内部の環境を守る,バッファーゾーンとしての役割も果 たしてきたが,これらが失われることで,日照条件や通風,温度,湿度等の非生物的因子にも大きな変化をもたらすことになる。 このように,小石川植物園への影響を考える上では,植物の多様性が確保されるかという視点こそが最も重要なのであり,セットバック部分に希少な樹木がなければ問題がないなどという判断は到底あり得ない。小石川植物園は,都市特有の環境や生物多様性の影響を受けて存在している以上,そのような地域固有の小石川植物園の価値は,哺乳類,鳥類,昆虫,両生爬虫類,魚類など生態系に関与としている生物層を調査して初めて判断できるものであり,植物調査のみでは不十分である。 (ウ) 第2に,セットバック部分周辺に存在する樹木,特にマンサクなど希少種への悪影響である。水分や栄養素等を吸収し,倒木しないように樹木を支える役割を担う樹木の根の広がる範囲は,一般に「樹冠」の範囲(枝振り)とほぼ同じだと考えられており,実際には更なる広がりを持っているとも言われている。セットバック部分を掘削等すれば,その周辺部分の根も傷めることになるから,周辺部分に存在する樹木等への影響の検討は不可欠だといえる。特に,本件では,第3期工事で予定するセットバックの周辺部分に限っても,「Sycopsissinensis(マンサク科)」のように中国が原産で,国内には数本しか存在しない希少な研究樹木や準絶滅危惧種の「アテツマンサク」,化石植物で有名な第3期植物群のコレクションであり,世界三大紅葉木といわれるニッサボクなどが現存する。 しかるに, で,国内には数本しか存在しない希少な研究樹木や準絶滅危惧種の「アテツマンサク」,化石植物で有名な第3期植物群のコレクションであり,世界三大紅葉木といわれるニッサボクなどが現存する。 しかるに,文京区は,影響が及ぶ樹木リストを作成するに当たって,樹木の位置だけを記載し,樹冠の範囲を記載せず,上記のような希少な樹木・草花への影響の検討から意図的に目を反らし,不十分な調査をしてきたものである。 被告らは,擁壁線形を根系の形にできるだけ合わせるようにしたと主 張するが,樹木において水や栄養分の吸収は根の先端部分が担っており,どこまで根の先端があるか調査をしていない以上,樹木の生育に対して配慮をしたとはいえない。 エ小括以上のとおり,文京区による本件基本協定の締結及びこれに基づく本件周辺道路整備工事の実施は,上記環境配慮義務に違反するものであって,違法・不当な行為である。 したがって,上記工事のための第3期工事に対する公金の支出は直ちに中止しなければならない。また,上記支出に当たっては,事前に東京大学との間で本件基本協定に基づく本件年度協定が締結されることになるが,かかる年度協定の締結もしてはならない。 (被告らの主張の要旨)ア原告らの主張する環境配慮義務はないこと原告らは,文京区は,本件周辺道路整備工事の実施決定前に,同工事によって生じる小石川植物園の植生や生態系への影響を評価し,影響を最小化する方策を検討する義務(環境配慮義務)を有していたと主張するが,そのような義務を定める規定はないのみならず,原告らの掲げる環境基本法等の法令等の趣旨からも,直ちにそのような法的義務を導き出すことができないから,文京区には,原告らの主張する環境配慮義務はない。 また,本件工事の規模及び内容に照らせば,環境 告らの掲げる環境基本法等の法令等の趣旨からも,直ちにそのような法的義務を導き出すことができないから,文京区には,原告らの主張する環境配慮義務はない。 また,本件工事の規模及び内容に照らせば,環境影響評価法及び東京都環境影響評価条例に基づく環境影響評価の法的義務が生じないことは明らかであり,本件周辺道路整備工事に際して,一般的な意味での植生調査を超えて,環境調査ないし環境アセスメント(環境影響評価)が必要であるかのような原告らの主張は失当である。 イ環境に配慮していること上記の点を措いたとしても,文京区は,環境に何らの配慮もしておらず, 何らの検討もしていないということはない。 (ア) すなわち,植物学の教育・研究等を目的とした専門性の高い学術研究機関である小石川植物園は,東京大学がその敷地及び立木等を所有し,設置,管理しているのであるから,本件周辺道路整備工事が小石川植物園の植生や生態系に影響を与えるのか否か,施工範囲内に植生する植物はいかなる措置を講ずるべきかについて,専門的・学術的見地からも,またその権限の有無からも,責任ある判断ができるのは,東京大学をおいて他にない。文京区は,かかる東京大学と協議を重ね,その意向に沿って,本件基本協定の締結等,本件周辺道路整備工事の実施に当たってきたのであるから,文京区は,小石川植物園の植生や生態系に与える影響について,何らの配慮・検討もしていないと非難されるべきいわれはないというべきである。 本件基本協定の締結後,文京区は,小石川植物園内の樹木等につき立木調査を行い,樹木リストの案を作成した。同案は,東京大学が上記判断をなすに当たっての叩き台というべきもので,東京大学からこれに対する修正意見が示されるなどして,最終的に東京大学がした(植生や生態系に与え 行い,樹木リストの案を作成した。同案は,東京大学が上記判断をなすに当たっての叩き台というべきもので,東京大学からこれに対する修正意見が示されるなどして,最終的に東京大学がした(植生や生態系に与える影響についての)判断に従って本件周辺道路整備工事は実施されている。 なお,C園長は,平成19年に東京大学の本部から植物園の敷地のセットバックについて報告を受け,セットバックの幅が極端に広くなければ,セットバックが植物園の本質的な価値にまで影響を与えるとは思えないとして,敷地の提供もやむを得ないとの判断をしている。 さらにいえば,実際の工事においても,文京区,東京大学及び施工業者の3者による定例会を通じ,東京大学の意見等を踏まえるなどして進めており(第3期工事もそのようにして進めていく予定である。),文京区は,東京大学の判断を踏まえ,東京大学と共同して,本件周辺道路整 備工事を進めてきたのである。 (イ) 文京区は,東京大学との協議やその要望を踏まえ,従前の計画を変更し,園内の樹木の根系の形を考慮し擁壁線形を,想定される根系の形にできるだけ合わせるようにするなどの配慮を行い,本件年度協定を締結した。 (ウ) 原告らは,本件年度協定の締結に関する協議が,文京区と東京大学の本部との間でなされており,小石川植物園の植生や生態系に与える影響等ヘの配慮が一切されていないと主張するが,文京区の協議の相手方は法人としての東京大学であり,本件年度協定の締結に当たり,文京区が小石川植物園の職員の関与を確保すべき義務はない。 これを措いたとしても,文京区は,第1期工事の施工の際,東京大学の樹木管理担当者の現場立会いを要求し,その意見を反映して工種の変更がなされており,植物園の職員の意見を聴きながら工事を進めてきた。 (エ) 原告らは, も,文京区は,第1期工事の施工の際,東京大学の樹木管理担当者の現場立会いを要求し,その意見を反映して工種の変更がなされており,植物園の職員の意見を聴きながら工事を進めてきた。 (エ) 原告らは,文京区が,小石川植物園の植生や生態系に与える影響等に配慮しなかった結果,移植した植物の多くが枯死している状況にあるというが,そもそもセットバック部分及びその周辺部には,小石川植物園の本質的価値を保つ上で保存が必須な樹木はないのであるから,仮に移植した植物が枯死したとしても,小石川植物園の本質的価値には影響がない。 (オ) よって,文京区が,環境に何らの配慮もしておらず,何らの検討もしていないということはできないのみならず,事実に反する主張であるといわざるを得ない。 ウ文京区都市マスタープランとの関係文京区が平成8年7月に定めた「文京区都市マスタープラン」は,文京区内の道路について,「体系的な生活道路の整備」,「安全でゆとりのある道路環境の整備」を課題としており,かかる課題を克服するためには, 道路の拡幅は当然その一手法というべきところ,同マスタープランでは,小石川植物園の西側地区について,生活道路の整備の促進が掲げられていることから,当然に,同地区の道路の拡幅は,同マスタープランによって想定されているということができる。 エ工事代金支払義務の履行に何ら違法がないことなお,仮に文京区に環境配慮義務違反があり,本件工事請負契約に違法があるとしても,直ちに同契約が無効ということにはならないから,文京区は,同契約に基づき,A株式会社に対し,工事代金支払義務を負うこととなる。 よって,その支払の差止めには理由がない。 オ結語以上のとおり,そもそも文京区には原告らの主張する環境配慮義務などないばかりか, 株式会社に対し,工事代金支払義務を負うこととなる。 よって,その支払の差止めには理由がない。 オ結語以上のとおり,そもそも文京区には原告らの主張する環境配慮義務などないばかりか,原告らが守るべきとする小石川植物園の植生等について,文京区は,東京大学との協議を踏まえ,本件基本協定の締結ないし実際の工事に至っており,小石川植物園の環境に十分配慮しているのであるから,文京区による本件基本協定の締結及びこれに基づく本件周辺道路整備工事の実施が違法な行為ということはできない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実,争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) 本件基本協定の締結に至る経緯ア平成8年版文京区都市マスタープラン文京区は,平成8年,都市計画法18条の2第1項に定める「市町村の都市計画に関する基本的な方針」として,文京区都市マスタープラン(乙1。以下「平成8年マスタープラン」という。)を定めた。 平成8年マスタープラン中「緑と水の整備方針」においては,緑地,公園と史跡などの歴史・文化的資源や神田川を有機的に結び付け,住民がそこで憩うことのできる緑と水のネットワークの形成を進めるとし,小石川植物園など池泉のある特徴的な庭園の自然環境の保全を推進するとした上で,小石川植物園を緑の核として,西側道路及び南側道路を緑と水のネットワークと位置付けるなどして,将来の都市構造の骨格としてネットワークの形成を図るとともに,史跡を巡るルートとの連携により,個性を十分に発揮したまちづくりを推進するものとしている(42頁から45頁まで)。 また,平成8年マスタープラン中「地域別整備方針」においては,小石川植物園の西側地区は,印刷・製本業の事業所が集積 個性を十分に発揮したまちづくりを推進するものとしている(42頁から45頁まで)。 また,平成8年マスタープラン中「地域別整備方針」においては,小石川植物園の西側地区は,印刷・製本業の事業所が集積しており,住工共存市街地としての環境改善を図るため,生活道路の整備を促進することとするほか,西側道路は上記緑と水のネットワークとして,小石川植物園の塀をフェンス等の開放感のある形態で整備することにより,一体感のある整備を図るなどとしている(81頁,83頁)。 イ西側道路の状況西側道路沿いには印刷・製本業の工場が集積しており,日常的に,大型トラック(8トン車)などの貨物車・作業車等の通行・駐停車が多く,フォークリフト等を用いた路上での作業が見受けられる。自転車の通行も多く,貨物車等の駐停車がある状況では,自動車がその横を通過するのに僅かなスペースしか生じない場所もある。(乙11,12,19の2・9頁,12頁)西側道路の歩道は幅員1メートル程度と狭く,車いすのすれ違いが困難で,傘を差すと人がすれ違うことができない程度である。ガードレールが設置されている箇所もあるが,連続していない。(甲22添付の写真,甲36・14頁以下,乙23,37)(2) 本件基本協定の締結 文京区は,かねてより東京大学との間で,小石川植物園の既存の塀の改修について,本件周辺道路の整備と併せて協議を重ねていたところ,既存の塀を基本的には文京区の費用で改修し,小石川植物園の敷地をおおむね1メートルセットバックする内容で合意し,平成21年12月22日,「小石川植物園と区道の整備に関する基本協定書」による基本協定(本件基本協定)を締結した(前提事実(3)イ,乙3から7まで,弁論の全趣旨)。本件基本協定には次のとおりの定め 平成21年12月22日,「小石川植物園と区道の整備に関する基本協定書」による基本協定(本件基本協定)を締結した(前提事実(3)イ,乙3から7まで,弁論の全趣旨)。本件基本協定には次のとおりの定めがある(甲6。甲は東京大学を,乙は文京区をそれぞれ示す。以下同じ。)。 ア目的(1条)この協定は,平成8年マスタープランに基づき小石川植物園の塀及び当該塀付近の区道を整備するに当たり,甲及び乙の役割その他必要な事項を定めることを目的とする。 イ区道編入部分(2条)甲は,まちづくりに寄与するため,植物園の一部の用地を無償で道路法の適用を受ける道路とすることを承諾するものとする(1項)。 前項の規定により道路法の適用を受けることとなる用地(以下「拡幅部」という。)の対象部分の概要は,以下のとおりとする。なお,拡幅部の面積等の詳細については,乙が今後実施する基本設計を行う際,甲と乙が協議の上定める(2項)。 ① 区間1拡幅対象箇所 α×~×番(西側道路)道路延長約710メートル拡幅後の平均道路幅員 7.5メートル② 区間2拡幅対象箇所 α×~×番(南側道路)道路延長約180メートル 拡幅後の平均道路幅員 7.0メートル前項の規定により拡幅部の面積等が決定したときは,甲は,拡幅部の特別区道路線区域の編入願及び無償使用承諾書を速やかに乙に提出し,乙は,工事着工までに,道路法18条に基づき拡幅部を道路区域に編入するものとする(3項)。 ウ整備内容(3条)乙は,拡幅部を既存区道部と併せて,植物園と一体的な歩行者空間として整備を行うものとする(1項)。 道路の拡幅に伴う樹木,施設等の撤去については,乙が行うものとする(2項)。 道路の拡幅に伴う植物園内の樹 部を既存区道部と併せて,植物園と一体的な歩行者空間として整備を行うものとする(1項)。 道路の拡幅に伴う樹木,施設等の撤去については,乙が行うものとする(2項)。 道路の拡幅に伴う植物園内の樹木等の移植又は施設等の移設については,乙が今後実施する基本設計を行う際,甲と乙が協議の上定める(3項)。 乙は,拡幅部における植物園の既存の塀を撤去し,フェンスとする(4項)。 前項の規定により新設するフェンス(以下「新設フェンス」という。)の仕様については,甲と乙が協議の上定める(5項)。 エ年度協定等の締結(4条)甲と乙は,この協定に基づき,各年度の工事の内容,範囲,費用等について協議し,年度協定等を締結するものとする。 オ工事の設計及び施行(5条)工事の設計及び施行は,年度協定等に基づき乙が行うものとし,甲は必要に応じて乙に協力するものとする。 カ費用負担(6条)甲と乙の費用負担は,次のとおりとする。 (ア) 新設フェンスについては,乙は,新設フェンスを基本協定書別紙に定める鋼製フェンスの仕様で設置した場合に要すると見込まれる費用の 額を上限として負担し,これを超える部分については,甲がその費用を負担するものとする。 (イ) 新設フェンスの詳細な費用負担については,3条5項の規定により仕様が決定した後,上記(ア)の規定に基づき定める。 (ウ) 3条2項及び4項に規定する樹木,施設等及び既存の塀の撤去に要する費用は乙がこれを負担し,同条3項に規定する植物園内の樹木等の移植又は施設等の移設に要する費用については,甲及び乙がそれぞれ2分の1を負担する。 (エ) その他道路整備に要する費用については,乙が負担するものとする。 キ工事費等の支払(7条)工事費等の 設に要する費用については,甲及び乙がそれぞれ2分の1を負担する。 (エ) その他道路整備に要する費用については,乙が負担するものとする。 キ工事費等の支払(7条)工事費等の支払方法は,年度協定において定めるものする。 ク工事費等の清算(8条)乙は,前条の規定による工事費等について,年度ごとに清算し,清算額について甲に通知するものとする。 (3) 第1期工事の竣工までの経緯ア文京区は,平成22年4月1日,株式会社Dとの間で,委託期間を同日から平成23年3月31日までと定める本件周辺道路の基本設計の委託契約を締結した(甲13)。 イ文京区は,平成22年5月頃,小石川植物園内の立木調査を行った後,東京大学との協議の上,樹木の伐採又は移植の別,移植する樹木の移植場所等について方針を決定した。この協議には東京大学施設企画課等の職員が参加しており,C園長は協議に参加していなかったが,逐一報告や相談を受けていた。(乙8,9,36)ウ文京区は,平成22年9月及び10月,地元町会に対して説明会を開催したところ,沿道住民からは,主として車道幅員を確保すべきであるとの意見が出された(乙11から14まで)。 エ文京区は,平成22年10月,沿道住民に対して本件周辺道路の基本計画の原案についてアンケート調査を行ったところ,西側道路沿いについては,回答した約36パーセントの者のうち,74.1パーセントの者が「大変良い」又は「良い」と評価し,18.5パーセントの者が「良くない」又は「大変良くない」と評価した。「大変良い」又は「良い」と評価した者の中には,その理由として,現在は歩道が非常に狭く,平日の昼間は小石川植物園への来園者,自転車,トラック等が入り乱れて非常に い」又は「大変良くない」と評価した。「大変良い」又は「良い」と評価した者の中には,その理由として,現在は歩道が非常に狭く,平日の昼間は小石川植物園への来園者,自転車,トラック等が入り乱れて非常に危険であったためとするものがあった。一方,「良くない」又は「大変良くない」と評価した者の中には,その理由として,必要性が低いと感じるとするものや,植栽帯はいらないのでその分歩道を広くしてほしいとするものがあった。(乙15)オ平成23年1月26日のβ・γ地区コミュニティ・ゾーン整備協議会においては,小石川植物園の樹木を少しでも守るべきであり,他の方法を考えるべきとの意見が出たが,道路の幅員を確保すべきとする反対意見も出た(乙17)。同年3月16日の地元説明会では,小石川植物園の樹木を守るべきとの意見が多数出た(乙18)。 カ文京区は,平成23年3月,新たに文京区都市マスタープラン(以下「平成23年マスタープラン」という。)を定め,その「地域別の方針」において,広大な緑空間であり,東アジアの植物研究の世界的センターとして機能している小石川植物園の魅力を生かし,西側道路及び南側道路については園内の緑と一体化した歩行空間の整備を進めるものとしている(乙2・76頁,77頁)。 キ文京区は,平成23年3月31日,本件周辺道路の基本計画(以下「本件基本計画」という。乙19の1,19の2)を策定した。 本件基本計画においては,基本的考え方として,西側道路については貨物車・作業車等の通行が多く,路上作業も多いことから,これらの産業活 動に配慮した道路整備が必要と考えられ,これらの作業に支障のないよう車道の幅を確保することに留意して検討を進めたとされるほか,道路を小石川植物園側に拡幅するに当たり,園内の樹木への影響を最小 動に配慮した道路整備が必要と考えられ,これらの作業に支障のないよう車道の幅を確保することに留意して検討を進めたとされるほか,道路を小石川植物園側に拡幅するに当たり,園内の樹木への影響を最小限に抑えることが求められるともされている(乙19の2・11頁,12頁)。 西側道路における車道幅員は4.0ないし5.5メートル(従前より狭くはしていない。乙24),歩道幅員については,道路構造令の最低歩道幅員を考慮し,標準歩道幅員を1.5ないし2メートル,最大3メートルとした(乙19の2・13頁)。 西側道路沿いにおける小石川植物園の敷地のセットバックの幅は0ないし2メートル程度,平均1.3メートルとされ(乙18・11頁),本件基本計画中の園内の樹木リストにおいては,調査樹木350本のうち,部分的に剪定し,又は転倒防止のための支柱を設置するものは119本,移植するものは65本,伐採するものは82本とされた(乙19の2・32頁)。 擁壁については,園内の樹木の保護のため,0.5から1メートル程度部分的に擁壁を道路側に出す配慮がされた(乙19の2・16頁,97頁から101頁まで)。また,複数の擁壁工法が検討され,西側道路においては,園内の樹木への影響が最も大きい工法は排除され,最も影響の少ない工法は他案よりも施工費が約2ないし3倍高いため排除され,残った樹木への影響が同程度の2案のうちから,より経済的であるL型擁壁(最小厚)による工法案が採用された(乙19の2・41頁,46頁)。 ク東京大学は,文京区と協議の上,平成23年6月16日,文京区に対し,区道の拡幅部の面積,新設フェンスの形状,上記キのとおりの樹木の取扱い等について異存がない旨回答した(甲15,弁論の全趣旨)。 ケ文京区と東京大学は,平成23年6月20日,第1期工 文京区に対し,区道の拡幅部の面積,新設フェンスの形状,上記キのとおりの樹木の取扱い等について異存がない旨回答した(甲15,弁論の全趣旨)。 ケ文京区と東京大学は,平成23年6月20日,第1期工事の工事内容,範囲等を定める平成23年度協定を締結した(前提事実(3)ウ(ア))。なお, 同協定の締結は,文京区土木部長の専決による(乙38,弁論の全趣旨)。 同協定には次のとおりの定めがある(乙44)。 (ア) 工事内容等(1条)工事の内容,範囲,費用等の内訳は,以下のとおりとする。 a 費用負担の内訳(工事費等(概算金額))樹木移植費一式 750万円フェンス工200メートル 0円(グレードアップなし)擁壁工一式 0円(グレードアップなし)b 工事の内容,範囲万年塀180メートル,防護柵114メートル等の撤去工埋蔵文化財発掘調査仮復旧舗装工等の仮設工自然石擁壁(フェンスを含む。)工等の街築工(以上,南側道路側)樹木の剪定,伐採・伐根,移植工等(西側及び南側道路全面)(イ) 工事費等の支払(2条)本件基本協定7条の工事費等の支払方法は,750万円の完了清算払いとする。請求書は,支払期限の30日前までに東京大学へ提出するものとする。 (ウ) 施行基準等(3条)本件基本協定3条2項及び4項に規定する整備に当たり,乙は,文京区工事施行規程(昭和55年4月文京区訓令甲第10号)に基づき工事を施行する。 (エ) 設計協議(4条)乙は,設計に必要な事項について甲と協議の上,設計するものとする(1項)。 乙は,設計終了後,速やかに設計図書につ 区訓令甲第10号)に基づき工事を施行する。 (エ) 設計協議(4条)乙は,設計に必要な事項について甲と協議の上,設計するものとする(1項)。 乙は,設計終了後,速やかに設計図書について甲に説明するものとす る(2項)。 乙は,設計内容を変更する必要があるときは,前2項に準じて処理するものとする(3項)。 甲又は乙は,フェンス,擁壁その他の主要な構造物の基本構造を変更する必要があるときは,平成23年9月末日までに,甲と乙が協議の上決定するものとする(4項)。 (オ) 検査の立会い等(5条)乙は,完了検査をするときは,関係図書を添えて甲に立会いを依頼するものとする(1項)。 前項の規定にかかわらず,甲及び乙は,必要があると認めたときは,工事に係る資料の提出若しくは報告を求め,又は係員の立会いを求めることができる(2項)。 (カ) 構造物の引継ぎ(6条)乙は,この協定書の別添内訳書の工事件名ごとに完了検査を行うものとし,完了検査後,関係図書を添えて速やかに構造物を甲に引き継ぐものとする。なお,引き継いだ構造物は,甲が維持管理を行う。 (キ) 清算(7条) 乙は,工事が完了したときは,速やかに工事費等の清算を行い,甲に請求する。 コ東京大学は,平成23年6月23日,文京区に対し,小石川植物園の敷地面積16万1588平方メートルのうち1277.80平方メートルにつき,特別区道路線区域の編入願及び無償使用承諾書を提出した。 文京区長は,平成23年7月13日,道路法18条1項後段に基づき,特別区道文第290号(西側道路の一部)及び同第894号(西側道路の一部及び南側道路)に上記編入願及び承諾書に係る同植物園の敷地部分を編入する内容で区域を変更する 日,道路法18条1項後段に基づき,特別区道文第290号(西側道路の一部)及び同第894号(西側道路の一部及び南側道路)に上記編入願及び承諾書に係る同植物園の敷地部分を編入する内容で区域を変更する旨決定し,告示した。これにより,道路敷 地の幅員は,特別区道文第290号(西側道路の一部)において6.32メートルから7.61メートルに,同第894号(西側道路の一部及び南側道路)において5.61メートルから7.27メートルにそれぞれ拡幅された。 (以上につき,前提事実(3)ウ(イ),争いのない事実,乙20から22まで)サ文京区は,平成23年7月29日,株式会社Bとの間で,第1期工事に係る工事請負契約を締結した(前提事実(3)ウ(ウ))。Bは,東京大学の樹木管理担当者の立会いの下,剪定,移植等について本件基本計画を変更しつつ植栽工を施工した(乙25の2から25の5まで)。 シ文京区は,平成23年8月10日,地元各町会の連名で,①西側道路についてはガードレールで区切られた歩道が連続しておらず,歩行者や車いすがすれ違えるようにし,安全な道路となるよう早期に整備を完了させること,②西側道路は印刷製本業が多く並んでおり,できるだけ幅の広い車道とし,地元に配慮すること等について要望を受けた(乙23)。 ス平成24年4月20日,第1期工事が竣工した(前提事実(3)ウ(エ))。 (4) 第2期工事竣工までの経緯ア文京区と東京大学は,平成24年3月28日,南側道路部分について,道路の舗装等を行う第2期工事の工事内容,範囲等を定める「小石川植物園と区道の整備に関する平成24年度協定書」(甲19)による年度協定(以下「平成24年度協定書」という。)を締結した。なお,同協定の締結は,文京区土木部長の専決による(乙3 囲等を定める「小石川植物園と区道の整備に関する平成24年度協定書」(甲19)による年度協定(以下「平成24年度協定書」という。)を締結した。なお,同協定の締結は,文京区土木部長の専決による(乙38,弁論の全趣旨)。 イ小石川植物園は,平成24年9月19日,国の名勝及び史跡(文化財保護法109条1項)に指定され,第2期工事は中止された(前提事実(2)イ,甲20)。 ウ東京大学は,文化財保護法125条1項に基づく現状変更等の許可を申請するに当たり,文化庁から事実上の要請を受けたため,調査委員会(委 員長 C園長)を設置した。調査委員会は,平成24年9月29日に植物調査を実施した上で,平成25年1月18日付けで中間報告を取りまとめた。(前提事実(3)ウ(オ),弁論の全趣旨)中間報告においては,工事により植生に影響を受けると想定される範囲の地域で発見された植物はいずれも植物園内の他地域に自生し,又は栽培されているとみられ,特に系統保存すべき植物はほとんどないとされた(甲22)。 エ文京区は,平成24年11月2日,当初の想定より樹木の根系が広いことがあるとする東京大学の依頼を受け,西側道路の整備に当たっては,樹木の生育に支障がないよう,擁壁の位置を一部道路側に変更した(乙26)。 オ東京大学は,平成25年3月18日,文化庁長官に対し,名勝及び史跡である小石川植物園について,文化財保護法125条1項に基づく現状変更等の許可を申請し,同年6月21日に条件付き許可を受けた後,同年8月2日にこの許可が取り消された上で再度条件付き許可を受けた。この条件は,工事に際しては文京区教育委員会委員(文化財担当)の立会いを求め,重要な遺構などが検出された場合には,設計変更等により,その保存を図ることなどを求める れた上で再度条件付き許可を受けた。この条件は,工事に際しては文京区教育委員会委員(文化財担当)の立会いを求め,重要な遺構などが検出された場合には,設計変更等により,その保存を図ることなどを求めるものである。(甲23から25まで)カ文京区と東京大学は,平成25年3月22日,平成24年度協定を合意解除し,第2期工事について,改めて平成25年度協定を締結した(前提事実(3)ウ(カ))。なお,同協定の締結は,文京区土木部長の専決による(乙38,弁論の全趣旨)。同協定には次のとおりの定めがある(乙30)。 (ア) 工事内容等(1条)工事の内容,範囲等は,以下のとおりとする。 車道舗装工,歩道舗装工,側溝,境石等の街築工,交通安全施設工,下水施設工(南側道路側)(イ) 施行基準等(2条) 基本協定書3条1項に規定する整備に当たり,乙は,文京区工事施行規程に基づき工事を施行する。 (ウ) 設計協議(3条)乙は,設計に必要な事項について甲と協議の上,設計するものとする(1項)。 乙は,設計終了後,速やかに設計図書について甲に説明するものとする(2項)。 乙は,設計内容を変更する必要があるときは,前2項に準じて処理するものとする(3項)。 (エ) 立会い等(4条)甲及び乙は,必要があると認めたときは,工事に係る資料の提出若しくは報告を求め,又は係員の立会いを求めることができる。 キ文京区は,平成25年3月25日,A株式会社との間で,第2期工事に係る工事請負契約を締結した(前提事実(3)ウ(キ))。 ク調査委員会は,平成25年4月22日及び同年8月6日に植物調査を実施した上で,平成25年11月15日付けで最終報告を取りまとめた(前提事実(3)ウ( 締結した(前提事実(3)ウ(キ))。 ク調査委員会は,平成25年4月22日及び同年8月6日に植物調査を実施した上で,平成25年11月15日付けで最終報告を取りまとめた(前提事実(3)ウ(ク))。最終報告においては,中間報告同様,工事により植生に影響を受けると想定される範囲の地域で発見された植物はいずれも植物園内の他地域に自生し,又は栽培されているものであり,工事が行われても植物園に必須な植物が失われる危険性はないとされた(甲27)。 ケ平成25年12月12日,第2期工事が竣工した(弁論の全趣旨)。 (5) 本件西側道路整備工事に係る状況ア文京区と東京大学は,平成26年3月14日,第3期工事の工事内容,範囲等を定める平成26・27年度協定を締結した(前提事実(3)エ(ア))。 なお,同協定の締結は,文京区土木部長の専決による(乙38,弁論の全趣旨)。同協定には次のとおりの定めがある(乙31)。 (ア) 工事内容等(1条)万年塀489.1メートル,防護柵393.2メートル等の撤去工仮囲い設置・撤去の仮設工L型擁壁工(擁壁上部に取り付けるフェンスは別途工事),排水工,付帯施設設置工,仮復旧舗装工(以上,西側道路側)(イ) 施行基準等(2条)本件基本協定3条2項及び4項に規定する整備に当たり,乙は,文京区工事施行規程に基づき工事を施行する。 (ウ) 設計協議(3条)乙は,設計に必要な事項について甲と協議の上,設計するものとする(1項)。 乙は,設計終了後,速やかに設計図書について甲に説明するものとする(2項)。 乙は,設計内容を変更する必要があるときは,前2項に準じて処理するものとする(3項)。 (エ) 検査の (1項)。 乙は,設計終了後,速やかに設計図書について甲に説明するものとする(2項)。 乙は,設計内容を変更する必要があるときは,前2項に準じて処理するものとする(3項)。 (エ) 検査の立会い等(4条)乙は,完了検査をするときは,関係図書を添えて甲に立会いを依頼するものとする(1項)。 前項の規定にかかわらず,甲及び乙は,必要があると認めたときは,工事に係る資料の提出若しくは報告を求め,又は係員の立会いを求めることができる(2項)。 (オ) 構造物の引継ぎ(5条)乙は,年度ごとに完了検査を行うものとし,完了検査後,関係図書を添えて速やかに構造物を甲に引き継ぐものとする。なお,引き継いだ構造物は,甲が維持管理を行う。 イ文京区は,平成26年8月21日,A株式会社との間で,工期を同月2 2日から平成28年2月19日までとして,第3期工事に係る工事請負契約(本件工事請負契約)を締結した。同株式会社は,平成26年11月25日,第3期工事に着工した。(前提事実(3)エ(イ)) 2 本案前の争点等について(1) 争点(1)(請求1に係る訴えの適法性(被告適格))について被告らは,本件西側道路整備工事に係る公金の支出(支出命令を除く。)の差止めについて,被告文京区長を被告とすることはできない旨主張するところ,地方自治法242条の2第1項1号の規定による差止請求は,「当該執行機関又は職員」が違法な財務会計上の行為を行うことを防止するため,その事前の差止めを請求するものであるから,同号にいう「当該執行機関又は職員」とは,その性質上,差止めの対象となる財務会計上の行為を行う権限を有する者をいうと解すべきである。 ところで,地方自治法242条1項に規定する公金の支出(以下「広義の支出」という 行機関又は職員」とは,その性質上,差止めの対象となる財務会計上の行為を行う権限を有する者をいうと解すべきである。 ところで,地方自治法242条1項に規定する公金の支出(以下「広義の支出」という。)は,具体的には,支出負担行為(支出の原因となるべき契約その他の行為)及び支出命令がされた上で,地方自治法232条の4第1項に規定する支出(以下「狭義の支出」という。)がされることによって行われるものである(地方自治法232条の3,232条の4第1項)。これらのうち支出負担行為及び支出命令は当該地方公共団体の長の権限に属する(地方自治法149条6号,232条の4第1項)のに対し,狭義の支出は会計管理者の権限に属する(地方自治法232条の4)。 原告らが請求1において差止めを求めるのは,広義の支出のうち,支出命令を除いた支出負担行為及び狭義の支出であると解されるところ,狭義の支出については,上記のとおり,被告区長には権限がないから,請求1のうち,本件西側道路整備工事に係る狭義の支出の差止めを求める部分に係る訴えについては,地方自治法242条の2第1項1号の「当該執行機関又は職員」以外の者を被告としていることとなり,不適法である。 一方,本件西側道路整備工事に係る支出負担行為については,被告区長が権限を有しており(地方自治法149条2号),委任等によりその権限を委譲し,又は今後委譲することを示す証拠もないから,請求1のうち,本件西側道路整備工事に係る支出負担行為の差止めを求める部分に係る訴えについては,地方自治法242条の2第1項1号の「当該執行機関又は職員」を被告としており,後記(2)において不適法とされる部分を除き,適法である。 (2) 請求1に係る訴えの適法性(訴えの利益)について地方自治法242条の2第1項1号 1号の「当該執行機関又は職員」を被告としており,後記(2)において不適法とされる部分を除き,適法である。 (2) 請求1に係る訴えの適法性(訴えの利益)について地方自治法242条の2第1項1号の規定による差止請求の訴えは,その性質上,差止めの対象となる行為が完了した場合には,訴えの利益を欠き,不適法となると解される。 本件においては,前提事実(3)エ(イ)のとおり,本件西側道路整備工事のうち,第3期工事に係る部分については,本件口頭弁論終結日である平成27年12月3日に先立つ平成26年8月21日に,既に本件工事請負契約が締結されており,支出負担行為を了しているから,請求1に係る訴えのうち,本件工事請負契約の締結の差止めを求める部分に係る訴えについては,訴えの利益を欠き,不適法である。 (3) 争点(2)(請求3に係る訴えの適法性(平成28年度以降の本件年度協定の締結が財務会計上の行為に当たるか否か。))についてア原告らは,本件年度協定のうち,平成28年度分以降のものを締結することは財務会計上の行為に当たるとして,その差止めを求めている。 そこで検討するに,地方自治法242条の2に定める住民訴訟の対象とされるのは同法242条1項に定める事項,すなわち公金の支出,財産の取得・管理・処分,契約の締結・履行,債務その他の義務の負担,公金の賦課・徴収を怠る事実,財産の管理を怠る事実に限られるのであり,これらの財務会計上の行為又は怠る事実以外のものを対象とする訴えは,住民訴訟の類型に該当しない不適法なものというべきである(最高裁昭和49 年(行ツ)第90号同51年3月30日第三小法廷判決・集民117号337頁,最高裁昭和62年(行ツ)第22号平成2年4月12日第一小法廷判決・民集44巻3号431頁参照)。 本件に 年(行ツ)第90号同51年3月30日第三小法廷判決・集民117号337頁,最高裁昭和62年(行ツ)第22号平成2年4月12日第一小法廷判決・民集44巻3号431頁参照)。 本件において,原告らが本件周辺道路整備工事に係る公金の支出の差止めを求めているものであることに照らすと,原告らは,公金の支出に係る手続の一つとして,平成28年度分以降の本件年度協定の締結を差し止めることを求めているものと解される。そして,公金の支出(広義の支出)に関する財務会計上の行為は,支出負担行為(地方自治法232条の3),支出命令及び狭義の支出(同法232条の4第1項)から成るものであるところ,本件年度協定が,支出命令や支出に当たらないことは明らかであるから,それが支出負担行為に当たるかどうかが問題になるものというべきである。そして,支出負担行為は,普通地方公共団体の支出の原因となるべき契約その他の行為とされており(地方自治法232条の3),支出命令を受けた会計管理者において,当該支出負担行為が法令又は予算に違反していないこと及び当該支出負担行為に係る債務が確定していることを確認して支出を行うこと(同法232条の4第2項)に照らして,予算執行の第一段階の行為といえるものであるから,具体的には,請負契約のように予算の具体的支出を要する債務を負担する行為や,補助金の交付決定のような行為等がこれに当たるものと解するのが相当である。 イ本件についてこれをみると,本件年度協定は,本件基本協定4条に基づき,各年度の工事の内容,範囲,費用等について協議し,締結されるものである。 そして,原告らが締結の差止めを求める平成28年度以降の本件年度協定の内容がどのようなものとなるかは今後具体化するものと解されるので,予想される内容を明らかにするために,平成 されるものである。 そして,原告らが締結の差止めを求める平成28年度以降の本件年度協定の内容がどのようなものとなるかは今後具体化するものと解されるので,予想される内容を明らかにするために,平成23年度協定,平成25年協定及び平成26・27年度協定(以下「従前の年度協定」という。)につ いてみると,そこで定められているのは,工事内容及び範囲,施行基準等,設計協議,工事の立会い並びに構造物の引継ぎといった事項にとどまっている(認定事実(3)ケ,(4)カ,(5)ア)。このうち,平成23年度協定においては,費用負担の内訳,工事費等の支払方法及び清算の時期についても定められてはいるが,これは基本協定書6条において樹木の移植等に要する費用の負担割合が定められていたことから,第1期工事の費用負担を概算で定めたものと解されるところであって,具体的な債務の負担は工事業者との間での契約締結を待つべき関係にあり,当該協定自体が文京区に何らかの債権を取得させ,又は債務を負担させるものではない。そうすると,従前の年度協定は,予算の具体的支出を要する債務を負担する内容のあるものとはいえず,支出負担行為に当たるとはいえない。 以上の事情に照らすと,平成28年度以降の本件年度協定も,従前の年度協定同様,文京区土木部長の専決の下,工事内容及び範囲,施行,設計等に係る事項について主として定めることになると見込まれるところであり,これと異なる内容のものになるであろうと認めるだけの事情はない。 そうすると,平成28年度以降の本件年度協定が,予算の具体的支出を要する債務を負担する内容のものになるであろうとはいえず,支出負担行為に当たるとはいえない。 なお,原告らが,平成28年度以降の本件年度協定の締結が,地方自治法242条1項に規定する「契約の締結」に当 る債務を負担する内容のものになるであろうとはいえず,支出負担行為に当たるとはいえない。 なお,原告らが,平成28年度以降の本件年度協定の締結が,地方自治法242条1項に規定する「契約の締結」に当たると主張するものと解したとしても,住民訴訟が,住民に対して地方公共団体の執行機関又は職員による違法な財務会計上の行為又は怠る事実の予防又は是正を裁判所に請求する権能を与え,もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的としたものであることからすれば,当該契約は,財務的処理を直接の目的としてされるものでなければならないものと解される。そして,本件年度協定自体が文京区に何らかの債権を取得させ,又は債務を負担させる内 容のものになるであろうとはいえないなどの上記の事情に照らせば,本件年度協定の締結は,財務的処理を直接の目的にするものとはいえず,上記「契約の締結」には当たらない。このように解したとしても,本件年度協定を踏まえて締結される工事業者との間での契約が財務会計上の行為に該当し,別途当該契約の差止めを求めることが可能である以上,住民訴訟制度の趣旨を損なうことにはならない。 以上より,請求3に係る訴えは,財務会計上の行為又は怠る事実以外のものを対象とするものであり,不適法である。 3 本案の争点(争点(3)(本件西側道路整備工事に係る公金の支出の適法性))について(1) 本案の判断を示すべき事項について上記2における本案前の争点等に係る検討を踏まえると,本件においては,①被告区長が本件西側道路整備工事に係る支出負担行為(ただし,第3期工事に係るものを除く。)をすることの適法性,②被告管理課長が本件西側道路整備工事に係る支出命令(第3期工事に係るものを含む。)をすることの適法性について判断が求められることになるところ し,第3期工事に係るものを除く。)をすることの適法性,②被告管理課長が本件西側道路整備工事に係る支出命令(第3期工事に係るものを含む。)をすることの適法性について判断が求められることになるところ,原告らの主張は,本件基本協定は文京区が環境配慮義務を果たさないまま締結した違法なものであるから,かかる原因行為に基づいて行われる上記①及び②の財務会計上の行為も違法になるというものを基本としつつ,補足的に第3期工事の固有の違法性をも主張するものと解される。この点,原因行為の違法がいかなる場合に財務会計上の行為の違法をもたらすかは問題となるところであるし(最高裁平成17年(行ヒ)第304号同20年1月18日第二小法廷判決・民集62巻1号1頁,最高裁平成22年(行ヒ)第175号同23年12月2日第二小法廷判決・集民238号237頁参照),また,本訴提起時において既に樹木の伐採等を行った第1期工事が完了するなどしている状況下においてその後の工事に係る財務会計上の行為の差止めを求めることにより いかなる利益が保護されることになるのか疑問がないではないが,これらについての検討は措くとして,以下では,まず,(2)及び(3)において,原因行為とされる本件基本協定を締結したことに違法事由があるかどうかを中心に検討することとし,次に(4)において,第3期工事の固有の違法性の有無につき補足的に検討することとする。 (2) 文京区の裁量権についてア本件基本協定締結の違法性判断における判断の視点は,次のとおりとなるものと解される。 すなわち,地方公共団体は,住民の福祉の増進を図ることを基本として地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担い(地方自治法1条の2第1項),都市計画に関する基本的な方針(いわゆる市町村マスタープラ 公共団体は,住民の福祉の増進を図ることを基本として地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担い(地方自治法1条の2第1項),都市計画に関する基本的な方針(いわゆる市町村マスタープラン。都市計画法18条の2第1項)を定めるなどして都市の整備,開発その他都市計画の適切な遂行に努める責務を負うほか(都市計画法3条1項),安全かつ円滑な交通を確保することができるよう特別区道の管理を行う道路管理者(道路法16条1項,29条,地方自治法283条2項,281条2項)でもある。加えて,地方公共団体は,文化財の保存が適切に行われるよう努める任務を負い(文化財保護法3条),かつ,環境の保全を図るため,その区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し,実施する責務その他自然環境を保全する責務を負うほか(環境基本法7条 ,自然環境保全法2条,東京都環境基本条例5条(乙33)),文京区においては,被告区長が,都市における自然の重要性を認識し,あらゆる施策を通じて,樹木等の保護と育成に努める責務を負っている(文京区みどりの保護条例3条(乙34))。 そうすると,道路の整備工事をどの範囲でどのように施行するかといった事柄に関する判断に当たっては,上記のような様々な責務等を負い,それぞれの利害得失等について総合的な調整を行う文京区に,政策的ないし 技術的な見地からの広範な裁量が認められるものというべきである。したがって,本件基本協定の締結に係る文京区の判断については,それが交通の安全・円滑,景観の維持・改善等を含む都市の整備,文化財の保存,周辺の環境の保全・樹木等の保護等の見地から上記のような事柄に係る諸般の事情を総合的に勘案した裁量権の行使として合理性を有するか否かを検討するのが相当であり,その判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠く 環境の保全・樹木等の保護等の見地から上記のような事柄に係る諸般の事情を総合的に勘案した裁量権の行使として合理性を有するか否かを検討するのが相当であり,その判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したもの(以下「裁量逸脱等」という。)として違法となると解するのが相当である。 イこれに対し,原告らは,文京区が,本件基本協定によって文京区が本件周辺道路整備工事実施の義務を負う前に,工事によって生じる小石川植物園の植生や生態系への影響を評価し,影響を最小化する方策を検討する義務(環境配慮義務)を負うべきものと主張する。 そこで検討すると,本件周辺道路整備工事は,環境影響評価法2条2項及び環境影響評価法施行令1条,別表第1並びに東京都環境影響評価条例2条5号,別表(乙45)及び東京都環境影響評価条例施行規則(昭和56年東京都規則第134号。乙46)3条,別表第1所定の環境影響評価の対象となる事業(以下「環境影響評価対象事業」という。)ではないものと認められるところであり,このような環境影響評価対象事業とならない程度の規模の道路の整備工事は,そもそもその規模から環境影響の程度が著しいとはいえないために同事業とされていないのであるから,同事業に対するものと同様の環境影響評価等を事前に行うことが求められているとはいえない。 なるほど,小石川植物園は,学術上貴重な樹木等を収集栽培し,国の名勝及び史跡として貴重な歴史的価値を有し,平成8年マスタープラン等の上でも緑の核として位置付けられている(乙1)のであるから,整備工事 を計画・実施するに当たって,その環境の保全を無視してよいとは考えられないが,小石川植物園における自然環境の保全や樹木等の保護に係る事情は,上記イにおい る(乙1)のであるから,整備工事 を計画・実施するに当たって,その環境の保全を無視してよいとは考えられないが,小石川植物園における自然環境の保全や樹木等の保護に係る事情は,上記イにおいて見たとおり,文京区の裁量権に基づく判断において考慮される事情の一つと理解すべきものであるし,本件基本協定に基づく工事についていかなる方法で環境への影響を評価するかについても,文京区の合理的裁量に委ねられているものと解するのが相当である。そして,本件では,本件周辺道路整備工事が小石川植物園内の環境に与える影響が争点とされているものであるところ,同植物園は,東京大学が,植物学の教育・研究等を目的として,その専門的知見に基づき管理してきている施設なのであるから,同大学が,かかる目的をも踏まえつつ,上記影響についていかなる判断をしているかは,上記工事を計画・実施する文京区の判断に裁量逸脱等があるかどうかを検討するに当たって,重要な事情として参酌されるべきものと解される。 (3) 本件基本協定の締結に係る裁量逸脱等の有無についてア原告らは,文京区が,本件基本協定の締結前に,工事によって生じる小石川植物園の植生や生態系への影響を評価し,影響を最小化する方策を検討する義務を有していたにもかかわらず,何らこの点についての調査検討を行っていないのは環境配慮義務に違反するものであると主張するが,いかなる方法で環境への影響を評価するかは,文京区の合理的裁量に委ねられているものというべきであることは既に述べたとおりである。 そこで,本件の事情の下で,文京区に上記の点において裁量逸脱等があるかどうかについて検討すると,文京区は,前記認定事実のとおり,本件基本協定の締結前から,小石川植物園が所属する東京大学との間で協議を重ねてきており,同協議の結果,東京大学 点において裁量逸脱等があるかどうかについて検討すると,文京区は,前記認定事実のとおり,本件基本協定の締結前から,小石川植物園が所属する東京大学との間で協議を重ねてきており,同協議の結果,東京大学は,同植物園内の環境の保全等の観点に照らしても本件基本協定を締結することに差し支えがないものと判断した上で,文京区との間で同協定を締結したものといえる。そして, 本件基本協定締結後に行われた3回の現地調査を踏まえた東京大学の調査委員会(東京大学内外の研究者5名で構成)の検討結果によっても,工事により植生に影響を受けると想定される範囲の地域で発見された植物はいずれも植物園内の他地域に自生し,又は栽培されているものであり,工事が行われても植物園に必須な植物が失われる危険性はないとされたものであることに照らすと(認定事実(4)ク。甲27),東京大学の本件基本協定締結当初の判断に疑問を差し挟むべき事情があるとはいえない。本件基本協定において道路用地として提供されるのは小石川植物園の周縁部分の一部の土地であることが予定されていたものであり,実際にも,本件周辺道路整備工事が小石川植物園の敷地面積16万1588平方メートルのうち,約0.8パーセントに当たる1277.80平方メートルの本件周辺道路沿いの敷地部分のみを道路として利用するものにとどまっていることに照らしても,上記判断内容は首肯し得るものである。このような事情に照らすと,本件基本協定に従ってその後の工事を行った場合に小石川植物園の環境の保全等が図れなくなるというだけの事情があるとはいえないし,また,文京区が,工事による環境への影響について自ら調査を行わなかったことについても相応の理由があったといえるところであるから,文京区が本件基本協定を締結したことについて裁量逸脱等があったとはいえ また,文京区が,工事による環境への影響について自ら調査を行わなかったことについても相応の理由があったといえるところであるから,文京区が本件基本協定を締結したことについて裁量逸脱等があったとはいえない。 なお,本件基本協定締結後の状況についてみても,文京区は,東京大学と協議を重ね,その意見を聴いて工事の内容,範囲等を定め,第1期工事においては東京大学の樹木管理担当者の立会いの下で工事を実施してきており,本件周辺道路整備工事の実施当初から樹木保護のため,0.5から1メートル程度部分的に擁壁を道路側に出す配慮を行い,樹木保護の見地も踏まえて擁壁工法を検討している(認定事実(3)キ)ほか,第3期工事において設置する擁壁の位置について,東京大学の要望を受け,樹木の根系を傷つけ,その生育に支障が生じないよう,擁壁の位置を一部道路側に変 更しており(認定事実(4)エ),東京大学の意見等を受けて擁壁の位置について一定の配慮をしている。したがって,本件基本協定締結後の状況をもって,同協定締結に裁量逸脱等があるということはできないし,また,同協定を前提とする工事契約締結等について裁量逸脱等があるということもできない。 イこの点に関し,原告らは,本件基本協定に基づく工事によって大規模な生物的因子の広範かつ急激な変化が生じることで,植物園全体の植生に多大な影響が生じるおそれがあるほか,バッファーゾーンが失われることで,日照条件や通風,温度,湿度等の非生物的因子にも大きな変化をもたらすことになるのであり,工事対象部分の形状及び面積の多寡のみによって,直ちに小石川植物園の中央部に影響が及ぶか否かを判断できない上,植物の生育環境を構成する土壌調査,植物群や林床植物を含む調査,植生を介して成立している動物・微生物調査などの植生調査,擁壁等の成分が 直ちに小石川植物園の中央部に影響が及ぶか否かを判断できない上,植物の生育環境を構成する土壌調査,植物群や林床植物を含む調査,植生を介して成立している動物・微生物調査などの植生調査,擁壁等の成分が雨水により土壌に流出する影響についての調査が工事前に必要であったのにそれがされなかったと主張し,これに沿う証拠として,一級造園施工管理技士であるE,東京営林局等に勤務経験のあるF及び環境省認定環境カウンセラー等であるGの各意見書(甲38,39,43)等を提出する。 そこで検討すると,小石川植物園のC園長は,その陳述書(乙36)において,小石川植物園には,生きた植物を栽培する場及び研究・教育の場としての二つの場としての機能や活動があり,これらの機能・活動を保つことが小石川植物園の本質的価値であるとした上,本件周辺道路整備工事によるセットバック部分に存在していた樹木について,同種樹木を別途栽培しており,伐採や移植後の枯死があったとしても必要な種の滅失はなく,また,セットバック部分の形状や面積に照らしても,同工事により動植物園の中央部に影響が及ぶとも考えられないなどとして,同工事が小石川植物園の本質的価値にまで影響を与えるとは考えられない旨述べており,ま た,将来への影響については,セットバックが植生に及ぼす影響が全くないということはないが,それがどこまで及ぶのか,良い影響なのか,悪い影響なのかは一概にいえず,将来どのような影響があるのかは,確立された調査方法がなく,これを正確に予測することは不可能であるとしつつ,仮に,将来,環境の変化が生じた場合には,小石川植物園が長い歴史の中で培ってきたノウハウや経験をもって,新しい環境を活かした植生配置と植栽を行うことにより,植物園の価値をさらに高めるよう努力することになるが,これまでも が生じた場合には,小石川植物園が長い歴史の中で培ってきたノウハウや経験をもって,新しい環境を活かした植生配置と植栽を行うことにより,植物園の価値をさらに高めるよう努力することになるが,これまでも,時代の要請や環境の変化に向き合い,その時々の条件を活かしながら,貴重な植物の栽培をしてきたことから,何らかの影響が出たとしても,必ずや適切に対処できるものと考える旨述べている。 上記見解は,C園長の小石川植物園における研究者としての長年の勤務経験を背景とするものと解されるところであり,また,既に見た東京大学の調査委員会における外部研究者を交えての検討結果とも一致するものであって,小石川植物園の性格や管理体制,本件周辺道路整備工事の規模と内容,同工事が環境影響評価対象事業となる規模のものではないこと等の諸事情に照らしても,十分に首肯し得るものである。上記各意見書,その他原告らの主張立証するところによっても,本件周辺道路整備工事によって,小石川植物園が上記機能・活動を保つことが困難になるおそれがあるとか,長年にわたり専門的知見に基づいて小石川植物園を管理してきた東京大学による対応が不可能となるほどの環境変化が生じるおそれがあると認めるだけの事情があるとはいえない。したがって,原告らの主張するような調査がされなかったからといって,それにより本件基本協定の締結が違法になるとはいい難い。 ウ原告らは,本件周辺道路について道路の拡幅は予定されておらず,都市計画上は必要性が認められてこなかったなどとも主張する。これは,かかる必要性が存在しなかった以上,その存在を前提として本件周辺道路整備 工事を行うことが裁量逸脱等に当たることをいう趣旨のものと解される。 しかしながら,上記認定事実のとおり,従前より,西側道路は,貨物車・作業車等の通行・ 存在を前提として本件周辺道路整備 工事を行うことが裁量逸脱等に当たることをいう趣旨のものと解される。 しかしながら,上記認定事実のとおり,従前より,西側道路は,貨物車・作業車等の通行・駐停車が多く,フォークリフト等を用いた路上での作業が見受けられ,車道幅員を減少させることについては沿道住民から強い反対意見がある一方で,歩道幅員は狭く,ガードレールも連続していないなど,歩行者にとって必ずしも安全といえない状況にあり,沿道住民からその拡幅を求める意見もあったのである。このような道路状況や住民の意見を踏まえ,本件基本計画においては,車道幅員を減少させない一方で,従前1メートル程度であった歩道幅員について,道路構造令の最低歩道幅員(歩行者の交通量が多い道路について3.5メートル,それ以外の道路について2メートル。道路構造令11条3項)を考慮し,標準歩道幅員を1. 5ないし2メートル,最大3メートルに拡幅することとされ,このために小石川植物園の敷地のセットバックの幅は0ないし2メートル程度,平均1.3メートルとされたものである(認定事実(3)キ)。また,文京区は,その後も地元各町会から早期の歩道整備の完了等について要望を受けていた(認定事実(3)シ)。以上に照らせば,被告区長の交通の安全・円滑の見地からの考慮が合理性を欠いていたものということはできない。 また,平成8年マスタープランにおいては,小石川植物園の西側地区は,印刷・製本業の事業所が集積しており,住工共存市街地としての環境改善を図るため,生活道路の整備を促進することとするとされている(認定事実(1)ア)ほか,平成23年マスタープランにおいては,広大な緑空間であり,東アジアの植物研究の世界的センターとして機能している小石川植物園の魅力を生かし,西側道路及び南側道路については る(認定事実(1)ア)ほか,平成23年マスタープランにおいては,広大な緑空間であり,東アジアの植物研究の世界的センターとして機能している小石川植物園の魅力を生かし,西側道路及び南側道路については園内の緑と一体化した歩行空間の整備を進めるとされており(認定事実(3)カ),生活道路ないし歩行空間の整備に必要な限りで道路の拡幅を行うことが都市の整備の見地から不当であるということはできない。 したがって,本件周辺道路について道路の拡幅の必要性が存在しなかったとはいえないから,その不存在を理由として,本件周辺道路整備工事を行うことが裁量逸脱等に当たるということはできない。 (4) 第3期工事に関する原告らの主張についてア本件基本協定締結に係る違法事由とは別に,原告らは,現在行われつつある第3期工事についても違法事由があることを主張しているものと解されるので,以下この点について検討する。 イ原告らは,セットバック部分の外にある樹木であっても,その樹冠の範囲と同程度かそれ以上にその根が広がっているものであるから,その根系調査が必要であったのであり,現に,セットバック部分の外の境界近くにあり,園内では他に1本しかない希少種である「SycopsissinensisOliv.」というマンサク科の植物(以下「本件植物」という。)の根が掘削工事(既に開始されている第3期工事の一部であると考えられる。)により切られ,危険な状態にあるなどと主張する。 しかしながら,C園長の陳述書(乙36)においては,本件植物は一定の価値のある樹木とはされず,セットバック部分及びその周辺部には,植物園の本質的価値を保つ上で保存が必要な樹木は特になかったと考えるとされている一方で,本件植物を含むセットバック部分の外の境界近くの樹木中 ある樹木とはされず,セットバック部分及びその周辺部には,植物園の本質的価値を保つ上で保存が必要な樹木は特になかったと考えるとされている一方で,本件植物を含むセットバック部分の外の境界近くの樹木中に,第3期工事の必要性に替えても特に保護すべきことが明らかな貴重な植物が存することを認めるべき証拠は見当たらないから,原告らの上記主張は採用できない。 ウまた,原告らは,第1期工事に係る樹木リスト上,セットバック部分等には希少種が合計61本あったにもかかわらず,入札業者の選定や工事の施工方法等について十分な配慮がされていないし,また,希少種ですら移植後に枯死させていることからすれば,第3期工事においても,同様の事象を発生させる危険がある旨を主張する。 しかしながら,既に見たとおり,本件周辺道路整備工事によるセットバック部分に存在していた樹木については,同種樹木が別途栽培されているところ,文京区の作成した樹木リスト(甲15)に希少種として記載された上記61本は,希少の範囲を広めに捉えたものであって,小石川植物園が積極的に収集・保存する野生植物と同義であるとは解されないし(弁論の全趣旨),前記(3)イで見たとおり,同工事の施工方法等について配慮がされていないともいえない。また,第1期工事の内容は樹木の伐採,移植等であって,本件工事請負契約によって行われる第3期工事は,第1期工事とは異なる施工業者による既存の塀の撤去,擁壁の設置等であるから,仮に第1期工事において施工上の問題があったとしても,それが当然に第3期工事においても施工上の問題等を生じさせるものと推認することはできないのであって,これらの事情に照らすと,原告らの上記主張は採用できない。 (5) 小括以上検討してきたところによれば,本件基本協定を締 上の問題等を生じさせるものと推認することはできないのであって,これらの事情に照らすと,原告らの上記主張は採用できない。 (5) 小括以上検討してきたところによれば,本件基本協定を締結したことについて文京区に裁量逸脱等の違法があったといえないから,その違法を原因として後続する支出負担行為や支出命令などの財務会計上の行為が違法になるともいえない。また,第3期工事について,同工事に係る支出命令を差し止めるべき固有の違法性があるともいえない。そうすると,原告らの請求は理由がないものというべきである。 第4 結論以上のとおり,本件訴えのうち,被告区長に対し,①本件西側道路整備工事に係る支出負担行為の差止めを求める部分のうち,本件工事請負契約の締結の差止めを求める部分,②本件西側道路整備工事に係る狭義の支出の差止めを求める部分及び③東京大学との間で,平成28年度分以降の本件年度協定を締結することの差止めを求める部分はいずれも不適法であるから却下し,原告らの その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第51部 裁判長裁判官小林宏司 裁判官桃崎剛 裁判官武見敬太郎
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