主文 被告人を懲役1年5か月に処する。 未決勾留日数中90日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,A,B,Cと共謀の上,平成13年9月2日午後8時58分ころ,株式会社Dが経営する,神戸市a区bc丁目d番e号所在のファミコンショップ「E」において,同店店長Fが管理するゲーム機4台(販売価格合計3万9200円相当)を窃取した。 (証拠の標目)―括弧内の甲,乙で始まる数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号―省略(事実認定の補足説明)弁護人は,被告人には判示のゲーム機4台(以下「本件被害品」という。)の窃取(以下,共犯者の点をおいて「本件犯行」ともいう。)につき判示Aらとの間に共謀がなく,窃盗の犯意もなかったから無罪である旨主張し,被告人も当公判廷(第2回公判期日以降)において弁護人の主張に沿う主張をするところ,前掲関係各証拠によれば判示事実は疑いの余地なく認定できるのであるが,その理由につき補足して説明する(なお,以下証人や被告人の当公判廷における供述を証人尋問調書のページで「A○ページ」等と示し,被告人については公判期日の回数も記す。 また,括弧内の甲,乙で始まる数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号である。)。 1 前提事実前掲関係各証拠によれば,以下の各事実が認められ,これらの点は被告人も争わない。 (1) 本件犯行当日,被告人は,A,判示B,同C(以下,A,B,Cを総称して「Aら3名」と,Aら3名と被告人とを総称して「被告人ら4名」という。)とともにいた(なお,その場所については争いがある。)ところ,判示ファミコンショップ「E」に行くことになった。 (2) 被告人ら4名は,それ以前にも4名 告人とを総称して「被告人ら4名」という。)とともにいた(なお,その場所については争いがある。)ところ,判示ファミコンショップ「E」に行くことになった。 (2) 被告人ら4名は,それ以前にも4名ないしそのうちの何名かで本件の被害品のようなゲーム機,ゲームソフトの万引きをしたことがあった。 (3) 被告人は,その際((1)でみたEに行くことになった時点より前か後かについては争いがある。),持ち合わせていたゲームソフトを売る旨Aら3名に申し向けた。 (4) その後,被告人ら4名は原動機付自転車(3台。被告人とBは各々,AはCが運転する原動機付自転車に乗車)に乗ってEに向かい,4人が順次入店した。 (5) その当時,Eには店員Gのみがおり,被告人はカウンターにいたGにゲームソフトの買い取りを求め,値段交渉など話をしていた。 (6) Aは,被告人がGと話している間,店の北西角部にあるショーケースの鍵を開けようとした(この間のCとBの行動についても,被告人とAら3名の供述の間には食い違いがある。)。 (7) Aは,前記ショーケースの鍵を開けて本件被害品を持ち出したが,その際「がちゃがちゃ」という音をさせた。この音は被告人にも聞こえる大きさだった。 (8) Aは本件被害品を窃取すると直ちにE店舗から出た。被告人はその直後同店から出たが,Aら3名は被告人が店から出てくるのを待って,4名が同時に前記原動機付自転車で走り去った。 (9) 被告人ら4名はそのまま別のファミコンショップ「H」へ行き,Aが同店で本件被害品を2万2000円で売り,その場で一万円札を5000円札2枚に両替した。 (10) Aは,本件の後,Aが警察に出頭する前日である平成14年8月4日,JRf駅で被告人と会い,その際,被告人に対し,本件犯行につき被告人のこと の場で一万円札を5000円札2枚に両替した。 (10) Aは,本件の後,Aが警察に出頭する前日である平成14年8月4日,JRf駅で被告人と会い,その際,被告人に対し,本件犯行につき被告人のことは警察に話さない旨告げた。 2(1) これに加え,まず,A(A1,2ページ)とB(B1ページ,17ページ)は,1(1)でみたEに行くことに決まる前にAがゲーム機ないしゲームソフトを取りに行こうか等と話しており,またCは,Eに行く前Aが「E行こうか。」等と述べたがそれは同店でゲームソフト等を盗んで金にしようという意味であり,自分(C)だけでなく,被告人やBもAの発言の意味をそのとおり正しく理解し,これに同意した旨供述する(C1,2ページ,11,12ページ)。次に,Aは,被告人はAがゲームを取りに行こうか等と話したのに対して1(3)のような発言をし,自分(A)は被告人の発言を聞いて被告人がEの店員を引きつける役割を申し出たものと理解した旨供述し(A4ページ),CやBも同様の供述をする(C2,3ページ,B2,3ページ,9,10ページ)。そして,Aら3名は,Aが商品を盗む役をする旨申し出,BとCが暗黙のうちに見張り役を引き受けることとなり,実際にEでその役割どおりに行動した旨供述している(A4ページ,7ページ,15,16ページ,24,25ページ,C2ないし4ページ,B4ページ,11,12ページ)。 また,Aは,AがHで本件被害品を売却して両替した(1(9))後,さらにその隣にあるコンビニエンスストア(I)で両替をし,結局Aは被告人ら(3名)にそれぞれ5000円渡したと供述し(A10,11ページ),CやBは被告人が分け前をもらったかについては見ていないような供述ではあるもののその他の点ではAと同様の供述をしている(C6,7ページ,18ページ, れ5000円渡したと供述し(A10,11ページ),CやBは被告人が分け前をもらったかについては見ていないような供述ではあるもののその他の点ではAと同様の供述をしている(C6,7ページ,18ページ,B7ページ,15ページ)。 なお,Aら3名は,Eに行く前に集まったところもIである旨供述している(A1ページ,C10ページ,B1ページ,8ページ)。 (2) 次に,Gは,自分は以前から被告人を知っているところ,被告人は普段はゲームソフトなどを売る際には必要最低限の話しかしない(G1,2ページ,6ページ)のに,1(7)の音が聞こえたので自分(G)がショーケースの方へ行こうとしたところ被告人はすぐに自分(G)を呼び止めて商品説明を求めたと供述する(同2ページ,12ページ)。 (3) これらに対し,被告人は,当公判廷では,第1回公判期日において公訴事実は間違いないと陳述したものの,第2回期日以降は,自分が1(3)のような発言をしたのは単に手持ちのゲームソフトを売ろうと思っただけであり,Eに行くこととなったのはその後であって,自分はAがEに行こうと言ったのを聞いて同人に被告人がゲームソフトを売る時にEでゲームソフトをみるなどするつもりがあるのとだけ思ったとする(被告人第6回3,4ページ)。また,被告人は,Eでゲームソフトを売る手続中後方でガチャガチャという音が聞こえたが,Aらが盗みをしているとは思わず(同6,7ページ,17ページ),Hに行ってからAから金銭を受け取ったこともない(同10ないし12ページ,19ページ)と供述している。なお,被告人は,Eに行く前に集まったところはIではなくJであった旨供述している(同1ページ)。 一方,被告人は,捜査段階では,その当初において共謀等について否認していたものの,平成14年9月3日以降 は,Eに行く前に集まったところはIではなくJであった旨供述している(同1ページ)。 一方,被告人は,捜査段階では,その当初において共謀等について否認していたものの,平成14年9月3日以降の取り調べにおいては,Aらの供述と符合するような共謀の事実や,Aがゲーム機などを盗みやすくするため時間稼ぎをした等Gの供述と符合するような供述をしていた。 3 そこで各人の供述の信用性について検討する。 (1) まず,Gは,本件被害店舗であるEの店員で,本件犯行当時,ゲームソフトの買い取りを求めた被告人と話をし,被告人ら4名の動きに不審なものがあると感じてその様子を店内外において注意深く見ていたものであり,その記憶は概ねよく保持されており,供述内容も自然かつ合理的,具体的であって,その供述の信用性を疑うべき事情はない。弁護人もGの供述の信用性には具体的疑問を呈していない。 (2) 次に,共犯者Aら3名も,覚えていない点は覚えていないとするなどその供述態度は真摯といえ,供述内容もそれぞれほぼ一貫していて,共謀の状況及び本件犯行前後の状況に至るまで具体的かつ詳細であり,不自然,不合理な点もなく,相互の供述内容の違いも前述の程度であって概ね符合し,信用性ある前記G供述ともよく符合するので,Aら3名の各供述には信用性が認められる。 この点,弁護人は,Aないし同人ら3名らによる引っ張り込みの危険を主張し,B及びCの供述がAのそれと符合するのは,すりあわせが行われたためであって,Aら3名の供述には信用性がない旨主張するが,Aはすでに執行猶予付きの確定判決を得ており(A1ページ),被告人がどのような処罰を受けるかについてさほど関心がない立場のはずであり,被告人との関係からしても,あえて虚偽の供述を維持し,その後BやCに虚偽の供述をさせるという 定判決を得ており(A1ページ),被告人がどのような処罰を受けるかについてさほど関心がない立場のはずであり,被告人との関係からしても,あえて虚偽の供述を維持し,その後BやCに虚偽の供述をさせるという別の犯罪行為までして被告人を陥れる必要性はなく,B及びCにおいても偽証罪になる虚偽の供述をしてまでAの指示に従い被告人を引っ張り込む動機はない。そして,Aの供述には被告人に本件の責任を押しつけようとするような面もみられず,前述した供述の違いも被告人に責任を押しつけようとすると生じる種類のものではない上,そのような違いがあることは弁護人の主張するすりあわせがなかったことを示すものである。そうすると,Aら3名の供述が信用できないという弁護人の主張には理由がない。なお,弁護人は,Aら3名は,本件のほかにもゲーム機などの万引き窃盗を行っているから,他の窃盗の際のできごとを本件の際のことと取り違えている可能性があると主張するが,本件では被告人がゲームソフトを売るという特徴ある行動をしており,Aら3名の供述内容にも照らすと,弁護人のいうような混同もないといえる。 (3)ア被告人は,2(3)でみたとおり,捜査途中から共謀等を自白するに至っているが,その自白内容をみると,共謀の状況のみならず,本件犯行前後の状況につき,具体的かつ詳細に供述しており,不自然,不合理な点もなく,G及びAら3名の供述ともよく符合しているところ,共謀等を認めるに至った理由についての供述も被告人の不安な心情を吐露した具体的かつ迫真性に富むものであって,極めて自然,合理的であるから,その供述には十分な信用性が認められる。 弁護人は,被告人の自白は,苛烈な取調べにより,また,被告人とAらの関係を逆手に取り,被告人を困惑させるような取調べによって得られたものであって,証拠 述には十分な信用性が認められる。 弁護人は,被告人の自白は,苛烈な取調べにより,また,被告人とAらの関係を逆手に取り,被告人を困惑させるような取調べによって得られたものであって,証拠能力を否定すべきである旨主張し,被告人は公判廷で「取調官から卑怯者扱いされ,責任をとれ等と言われたから自白をした」等と供述する(主として第5回公判期日での供述)が,被告人のこの供述によっても警察官の取調べが被告人の供述の任意性に影響するほどのものではなかったと認められ,さらに,被告人とAの間には先輩後輩に類似する関係はあったものの,被告人がAに逆らえないような関係ではなかったと認められるから,被告人を困惑させるような取り調べが行われたとは考えられず,イで述べるところにも照らし,被告人の供述する自白の理由は信用できず,弁護人の主張は採用できない。 イこれに対して,第2回公判期日以降の当公判廷における供述は,本件犯行についても曖昧かつ不自然,不合理な弁解を繰り返し,共謀の事実を認める供述をなした理由についてもおよそ合理的な説明をし得ていないものであるから,到底信用できない。 4 そうすると,まず,被告人は,Eで,2(2)でみたG供述どおりの行動をとったことが認められ,このことと1認定の前提事実,2(1)でみたAら3名の供述によれば,(被告人のEにおける前記行為が実行行為といえるものであるかはともかく,少なくとも,)被告人が本件犯行前自分がゲームソフトを売って店員を引き付ける役を引き受け,遅くともこのときに被告人とAら3名との間に本件犯行についての事前共謀が成立したことが認められる。 なお弁護人は,被告人がEで自己の運転免許証を提出しているところ,被告人が共犯者であればそのように自己の犯行が直ちに発覚するようなことはしないから,被告 事前共謀が成立したことが認められる。 なお弁護人は,被告人がEで自己の運転免許証を提出しているところ,被告人が共犯者であればそのように自己の犯行が直ちに発覚するようなことはしないから,被告人のこの行動は被告人が本件犯行に加わっていないことを示すものであると主張する。しかし,確かに,運転免許証を使うのは一般には検挙の危険があることであるが,被告人はGにとって顔見知りというのであるから,犯行後遠隔地に逃亡するなどの予定でもなければ被告人が偽名を使ったりすることにさほどの意味はない上,たとえば,Aも,その危険を感じつつ,Hにおいて,やがて盗品と判明する可能性がある本件被害品を売却するときに自らの運転免許証を使用している(A19ページ,甲16ないし20。Cは自分が自動車運転免許を持たず,また20歳未満であるからゲーム機などの売却はしない旨供述しているが,これも同様の意味をもつ事柄である。C6ページ,18ページ。)のであって,被告人が運転免許証を示していることなども被告人が本件犯行に荷担していることを認定する妨げにならないから,弁護人のこの主張も採用できない。 5 以上のとおりであって,判示事実は優に認定できる。 (法令の適用)被告人の判示所為は刑法60条,235条に該当するので,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役1年5か月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中90日をその刑に算入することとし,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由) 1 不利な情状(1) 動機が安易かつ短絡的である。 (2) 役割分担をして犯行に及んだ態様がよくない。被告人自身も,被害店店員が共犯者の犯行を発見,阻止等するのを妨害するための具体的行動をしている。被害金額は約3万9000円 かつ短絡的である。 (2) 役割分担をして犯行に及んだ態様がよくない。被告人自身も,被害店店員が共犯者の犯行を発見,阻止等するのを妨害するための具体的行動をしている。被害金額は約3万9000円と少なくなく,被害感情も厳しい。 (3) 保護観察付執行猶予中に,格別の理由なく及んだ犯行であり,常習性も否定できない。 (4) 被告人は現在自己の刑責を免れるために犯行を否認して共犯者にその責任を押しつける卑怯な態度に終始しており,捜査段階でみせた反省服罪の態度も失ってしまっている。 (5) 以上の点に加え,最近の生活態度や適切な監督者がいないことも併せ考えると,再犯のおそれもある。 2 有利にしん酌すべき情状(1) 本件の発案したのは共犯者(A)であるといえる。 (2) 周到な計画的犯行というほどのものではない。 (3) 前刑の執行猶予が取り消されればこれと併せて服役することとなる可能性が残ってはいる。 (4) 公判廷でもこれまでの生活態度については反省の弁を述べている。 よって,主文のとおり判決する。 平成15年4月10日神戸地方裁判所第11刑事係乙裁判官橋本一
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