平成16(ラ)85 救助付与取消決定に対する即時抗告事件

裁判年月日・裁判所
平成16年9月14日 広島高等裁判所 広島地方裁判所 平成16(モ)6
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判決文本文11,356 文字)

主文 1 原決定を取り消す。 2 広島地方裁判所平成15年(ワ)第1599号国家賠償請求事件について,抗告人らに対し,訴訟上の救助を付与する。 理由 第1 抗告の趣旨及び理由抗告人らが求めた抗告の趣旨は,主文同旨であり,その抗告の理由は,別紙2「抗告状」に記載のとおりであり,また,これに対する相手方の反論は,別紙3「意見書」に記載のとおりである。 それぞれの主張の要旨は次のとおりである。 1 抗告の理由の要旨(1) 抗告人らの資力を判断するにつき,同居親族の収入を合わせて考慮することは不当である。 ア訴訟救助の制度が設けられた趣旨は,憲法32条の裁判を受ける権利を実質的に担保することにあり,その運用に当たっては,当事者が訴訟救助を受けられないことにより,結果的に,同条が保障する「司法の拒絶」となることがないように配慮すべきである。夫婦その他の同居親族においては,事実上経済的な生活基盤を共通にすることが少なくないとしても,訴訟提起及びその遂行に要する費用は,民法730条,752条及び760条などに規定されている親族間の扶助ないし扶養義務の対象ではない。訴訟救助の判断において,申立人以外の同居の親族の資力を勘案することは,結局,訴訟の提起及びその遂行の可否を,申立人らの配偶者や同居の親族の意向という本人の意図の及ばない事情に依拠させることになるが,これは,先に見た「司法拒絶の禁止」の趣旨に照らし,不当である。 イ抗告人Aは,わずかな年金以外には収入はなく,同居する長女夫婦の援助を受けて生活しているが,同夫婦らも経済的に裕福ではなく,訴訟費用や必要経費の支弁まで求めることはできない。 抗告人Bは,子であるC夫婦及びその子であるD夫婦 はなく,同居する長女夫婦の援助を受けて生活しているが,同夫婦らも経済的に裕福ではなく,訴訟費用や必要経費の支弁まで求めることはできない。 抗告人Bは,子であるC夫婦及びその子であるD夫婦及びその子ども2人らとともに居住しているが,同抗告人にはわずかな年金収入があるほか,C夫婦及びD夫婦に収入があるものの,食事を採る場所も別にするなど互いに生計を別にしており,住民票上及び外国人登録票上も世帯は別となっている。また,C夫婦には住宅ローンの支払がある上,中国に留学している娘のEへの仕送りもあり,生活は苦しく,同抗告人の訴訟費用等の負担はできない状況にある。 したがって,抗告人らがいずれも「訴訟の準備及び追行に必要な資力がない者又はその支払により生活に著しい支障を生ずる者」に当たることは明らかである。 (2) 本件の特殊事情を考慮すれば,訴訟費用が多額にのぼることは当然予想され,抗告人らがこれを負担できないことは明らかである。 ア抗告人らは,1945年ころ,旧「満州国」に取り残され,様々な困難を乗り越えてようやく日本に永住帰国したものの,貧困な受入れ体制の下で厳しい日常生活を余儀なくされている。 イ本件訴訟は,調査費等の当事者負担費用,通訳人関係費用,支援組織の活動費用(現状ではボランティアによっている。)等に多額の費用を要するものである。しかし,抗告人らは,帰国するに際して相当の費用を負担している上,貯蓄もない。既に高齢となっており,抗告人らの収入は年金以外にはなく,他に将来にわたる安定した収入も望めない。頼るべき子どもらも言語や偏見の問題から就労にも困難が伴い,経済的に余裕があるわけではない。 2 相手方の反論の要旨(1) 訴訟救助のいわゆる資力要件の判断基準については,申立人及びこれと生計を同 き子どもらも言語や偏見の問題から就労にも困難が伴い,経済的に余裕があるわけではない。 2 相手方の反論の要旨(1) 訴訟救助のいわゆる資力要件の判断基準については,申立人及びこれと生計を同じくする家族を単位として判断し,また,訴訟費用の負担が,通常の生活を営む上で著しい支障を生じるか否かを,収入及び支出を考慮して検討するのが相当である。もし当該申立人及びこれと生計を同じくする家族の具体的な収入及び支出について疎明が尽くされていない場合には,申立人が居住する地域において通常必要とする生活費等が参照されるべきであって,訴えを提起するに当たって差し当たり必要とされる手数料程度の訴訟費用については,少なくとも,申立人及び同居家族の実収入がその居住地に対応する地域における家計調査年報の平均世帯の実支出を相当程度下回ることが資力要件判断の基準とすべきであるところ,同居家族の収入を合わせ考慮すれば,抗告人らが前記資力要件を満たさないことは明らかである。 (2) すなわち,抗告人Aは,妻と長女夫婦及びその子の5人世帯であるところ,平成14年中の同夫婦の給与収入は合計764万9656円であるから,広島市における5人世帯の年間平均実支出相当額595万0696円を大幅に上回っており,同抗告人が資力要件を満たすとは認められないことが明らかである。 また,抗告人Bは,子であるC夫婦並びに孫であるD夫婦及びその子らと同居しており,7人世帯であるが,同世帯の平成14年中の収入は,同抗告人のものを含めて合計1047万7136円であり,中国地方における7人世帯の年間平均実支出相当額655万7548円を上回っており,同抗告人が資力要件を満たさないことも明らかである。 (3) 抗告人らの主張は合理性を欠き,失当である。 ア裁判費用等の負担は,訴訟制度を 均実支出相当額655万7548円を上回っており,同抗告人が資力要件を満たさないことも明らかである。 (3) 抗告人らの主張は合理性を欠き,失当である。 ア裁判費用等の負担は,訴訟制度を利用する国民に課せられた公的義務であるが,訴訟救助制度は,その例外として,経済的困窮者の裁判を受ける権利を実質的に保障するため,一定の要件の下に裁判費用等の支払を一時猶予しようとするものであって,訴訟救助を付与すべきかどうかの判断については,このような公的義務と裁判を受ける権利の保障との調和の観点から,適正,妥当に行われなければならない。 イ資力要件を判断するに当たっては,訴訟救助申立人及びこれと生計を同じくする家庭を単位として判断するのが合理的であって,訴訟救助制度とその趣旨を同じくする財団法人法律扶助協会による法律扶助の付与審査においても同様の基準を用いている。すなわち,訴訟救助は,訴訟費用等を支払うことによって,その生活に著しい支障を生ずる者に対してその支払を猶予する制度であるから,申立人が現実に生活している生活水準を基準として判断せざるを得ず,よって,世帯全体を含めて検討すべきであって申立人の所得のみを基準に判断すべきではない。 ウ抗告人らは,本案訴訟の特殊性を強調して訴訟費用等が多額にわたると主張するが,予想される争点を勘案すると,科学的専門的な調査・立証を要するものではなく,むしろ,抽象的な法的判断を求めている部分があるから,当然に多額の訴訟費用等の支出が予定されているわけではなく,抗告人らの訴訟費用等の負担額はさほど大きなものではないともいえる。 第2 当裁判所の判断当裁判所は,抗告人らに対し,訴訟上の救助を付与すべきであると判断する。その理由は,次のとおりである。 1 訴訟上の救助は,訴訟の準備及び追行に なものではないともいえる。 第2 当裁判所の判断当裁判所は,抗告人らに対し,訴訟上の救助を付与すべきであると判断する。その理由は,次のとおりである。 1 訴訟上の救助は,訴訟の準備及び追行に必要な費用(以下「訴訟費用等」という。)を支払う能力がない者等に対し,裁判費用,執行官の手数料及びその職務の執行に要する費用,裁判所が付添いを命じた弁護士の報酬及び費用の支払をそれぞれ猶予し,訴訟費用の担保を免除するものであるが(民訴法83条1項),これを付与する要件として,①無資力者であること(訴訟費用等を支払う資力がない者又はその支払により生活に著しい支障を生ずる者であること。以下「資力要件」ともいう。),及び②勝訴の見込みがないとはいえないこと,の2つが規定されている(同法82条1項)。そして,前記①の資力要件の有無を判断するに当たっては,申立人の収入と予想される訴訟費用等の額とを比較関連させるなどして考察すべきであるところ,本件における本案訴訟である広島地方裁判所平成15年(ワ)第1599号国家賠償請求事件(以下「本案訴訟」という。)は,昭和20年8月8日の旧ソビエト連邦参戦通告時に,中国東北部(旧満州)に居住していた日本人の子どもで,ソ連軍の侵攻と日本の敗戦に伴う混乱と不安定な情勢の中で,肉親が死亡したり,離ればなれとなったこと等の事情により日本に引き揚げることができず,中国に残留せざるを得なかった者ら(いわゆる残留孤児)が,日本国に対し,残留孤児の存在を知りながら,早期の帰国実現を怠ったのみならず,永住帰国後に当然行うべき種々の自立支援の措置をも怠ったとして,国家賠償法に基づき,損害賠償を求めているものであり,既に,残留孤児となってから長期間が経過していることから証拠収集にもかなりの労力を要することが予想され,また,残留孤児本人 措置をも怠ったとして,国家賠償法に基づき,損害賠償を求めているものであり,既に,残留孤児となってから長期間が経過していることから証拠収集にもかなりの労力を要することが予想され,また,残留孤児本人や関係者などに日本語が不自由な者もいることから,訴訟の提起や維持につき必須と思われる事情聴取などにも通訳が必要となる等の事情により,本案訴訟の訴訟費用等は相当の額に及ぶものであることが容易に推測されるところである。よって,本件における資力要件の有無を判断するに当たっては,以上の点にも留意し,慎重に検討すべきである。 2 一件記録によれば,抗告人A(昭和14年5月生まれ。65歳)は,妻(60歳),長女及びその夫並びに孫と同居して生計を共にしていること,同抗告人夫婦の収入を除いた同家族全体の収入は年間764万余円であるが,抗告人Aの収入としては月額3万1000円(年額37万2000円)ほどの年金しかなく,妻の収入(2か月で3万8000円で年額22万8000円)を併せても年額60万円程度にすぎないこと,したがって,抗告人Aの同居家族全体の収入は長女夫婦によるものがその大半を占めていると認められること,また,抗告人B(68歳)は,子及びその妻並びに孫及びその妻らと同居して生計を共にしていること(なお,同抗告人は,当審に至って,子及び孫らとは生計を共にしてはいない旨主張するに至っているが,同居の事実等からすると,生計も共にしていると推認するのが相当であり,当審に至って提出された同主張に係る疎明資料はたやすく採用できない。),同抗告人の収入を含む同家族全体の収入は年額1059万余円であるが,同抗告人自身の収入としては,年額102万余円の年金程度しかなく(なお,平成14年度における同抗告人の収入としては,外に給与収入156万余円があるが,同抗告人は同年に は年額1059万余円であるが,同抗告人自身の収入としては,年額102万余円の年金程度しかなく(なお,平成14年度における同抗告人の収入としては,外に給与収入156万余円があるが,同抗告人は同年に退職しているから,今後同趣旨の収入を得る見込みはないと考え,同給与収入分は同抗告人の収入に加えないこととした。もっとも,同収入を加えたとしても,後記のとおり,同抗告人自身の収入のみを基準として判断すると,資力要件を具備することが認められる。),したがって,同抗告人の同居家族全体の収入は同抗告人の子及び孫らの収入がその大半を占めていると認められること,以上の事実が認められる。 ところで,本件においては,抗告人らが前記②の要件(民訴法82条1項ただし書)を満たすことについては特に争いはない(一件記録上も同要件の具備されることが認められる。)。また,前記①の要件(資力要件)については,抗告人らそれぞれの収入のみを基準として判断するときは,後述するように,いずれもこれを具備することが認められるが,生計を共にし同居する家族全員の収入を加えて判断するときは,抗告人らのいずれについても同要件を具備しないことが認められる(この点についての認定判断は,概ね原決定〔民訴法333条に基づく再度の考案後の決定〕が判示するとおりである。)。 したがって,本件における実質的な争点は,抗告人らが資力要件を満たす(訴訟費用等を負担する資力がない)かどうかを判断するに当たって,抗告人らと生計を同じくする同居家族全体の収入を合算して考慮すべき(この考え方は,相手方の主張に沿ったものである。以下,便宜上「合算説」ともいう。)か,それとも抗告人ら自身のそれぞれの収入のみを考慮するにとどめるべき(この考え方は,抗告人らの主張に沿ったものである。以下,便宜上「単独説」ともい たものである。以下,便宜上「合算説」ともいう。)か,それとも抗告人ら自身のそれぞれの収入のみを考慮するにとどめるべき(この考え方は,抗告人らの主張に沿ったものである。以下,便宜上「単独説」ともいう。)か,という点に帰する。 3 そこで検討するに,訴訟救助制度は,法律扶助制度と同様に,訴訟費用を負担する能力のない者にもできるだけ裁判を受ける機会を与えようとするものであることはいうまでもないところであるが,その本質的性格については,平等な手続の下で裁判を受ける権利を保障した憲法32条や同14条,更には市民的及び政治的権利に関する国際人権規約(いわゆる国際人権B規約)14条1項の理念を実現する手段として理解し,その趣旨に沿うように解釈・運用されるべきであって,裁判を受ける権利を単なる「司法拒絶の禁止」,すなわち,「裁判所という法の下の平等の確保を保障する機構を利用することを形式的に保障したに止まるもの」と理解し,無資力者の裁判を受ける機会の保障に資する訴訟上の救助制度と憲法との直接的関連を否定して,これを貧困者に対する国家の恩恵的制度としてのみとらえるのは相当ではないというべきである。 4 以上の点を踏まえて検討すると,資力要件の有無を判断するに当たっては,生計を共にして同居する家族については,単に同居等していることだけから当然にそれらの家族の収入を申立人の収入に合算するというのは相当ではなく,少なくとも,本来申立人から独立して生計を営むことのできる者がたまたま何らかの事情により生計を共にするなどして同居している場合(本件における抗告人らとその家族との同居等がそのような場合であることは,一件記録から認められる。)における当該同居人の収入は,これを申立人の収入として合算すべきものではないと考えるのが相当である。 すなわち,合算説(相 家族との同居等がそのような場合であることは,一件記録から認められる。)における当該同居人の収入は,これを申立人の収入として合算すべきものではないと考えるのが相当である。 すなわち,合算説(相手方の主張)に従うと,訴訟救助申立人単独では資力がない(資力要件を満たす)が同居家族全体では資力がある(資力要件を満たさない)とされる場合には,申立人の訴訟提起に係る訴訟救助の申立ては認容されないことになるのであるから,申立人単独で訴訟を提起しようとすれば,訴訟費用等については,結局,申立人以外の他の同居者(同居家族の者で申立人より収入の多い者等)が負担せざるを得ないこととなってしまい,自らに収入の乏しい者は,生計を同じくする同居家族の同意がないと訴訟そのものの提起ができないことになりかねないのであって,これは,国民の裁判を受ける権利を侵害する結果ともなり得ることであり,先に見た訴訟救助制度の趣旨にもそぐわないものというべきである。更に敷衍すると,合算説によれば,ある程度の資力のある者は,子どもなど他の親族の世話にならずに同居しないで生活することも可能であり,その場合には同居親族がいないことから訴訟救助の資力要件を判断するについてもその固有の収入のみについてされる結果,訴訟救助を受けることができる場合も生じ得るが,生計を分けて生活することすらできない低収入の者は,子どもなどと同居せざるを得ない結果,かえって救助が受けられない事態が生じるということも避けられないのであって,合算説に合理的根拠を見い出し難い所以というべきである。 5 相手方は,「現実に,生計を同じくする家族がある場合については,一方で家族に収入がなければ,抗告人の実支出として当該家族に要する食事や生活費等が考慮されなければならないのは当然であるし,他方で,税制度上の優遇措置を ,生計を同じくする家族がある場合については,一方で家族に収入がなければ,抗告人の実支出として当該家族に要する食事や生活費等が考慮されなければならないのは当然であるし,他方で,税制度上の優遇措置を受ける等の利益もあり,また,当該家族に収入があれば,食費,光熱費,住居費などの実支出は,家族全員の収入によって賄われているのであるから,生計を同じくする家族を単位として資力要件を判断するという基準は,極めて合理的である。」と主張する。 しかしながら,相手方の前記主張は,申立人と生計を同一にする者とはいっても本来独立して生計を営む者ではないいわゆる核家族(夫婦と未成年の子が中心の家族)等を対象としての合算を主張する限度においては,当然なことであり,ことさら異を唱えるに足りる主張とはいえない。問題は,生計を同一にして同居しているとはいえ,当該申立人からは本来独立して生計を営むことのできる者(例えば,成人した子であって独立した生計を営むことのできる収入のある者等)が,何らかの事情によってたまたま当該申立人と生計を同一にして同居している場合(前記のとおり,本件抗告人らの場合が正にその例である。)において,当該申立人以外の同居人等に関する資力をも申立人自身のそれと合算した上で資力要件の有無を判断するのが相当であるかどうか,ということにあるのであって,相手方主張に係る点に異論がないからといって,合算説に合理的根拠が認められるということにならないことは当然である。 なお,相手方は,民法730条,752条及び760条等の親族間における扶助義務ないし扶養義務を根拠として合算説を理由付けようとするかの如くではあるが,民法上の扶助義務ないし扶養義務を負う親族は必ずしも被扶養者と同居しているわけではないから,民法上の扶養義務等を根拠とするのであれば,訴訟 を根拠として合算説を理由付けようとするかの如くではあるが,民法上の扶助義務ないし扶養義務を負う親族は必ずしも被扶養者と同居しているわけではないから,民法上の扶養義務等を根拠とするのであれば,訴訟救助の付与要件である資力要件を判断するに当たって考慮する親族の範囲を申立人と同居している者に限るとすることは論理的でないというべきである上,個人的な裁判のための費用は,一般に親族間の身分関係維持のための結合ないし共助に直接奉仕するものではないから,例えば夫婦間における協力,扶助義務,又は婚姻費用負担義務,親族間の扶養義務等の履行としてその負担ないし立替えを要求することはできないものであると解される(とりわけ,本案訴訟は,前記のとおり,相当多額の訴訟費用等が必要となることは容易に推測されるところであって,抗告人Bも,これらを家族に負担させることはできず,仮に,本件訴訟救助が付与されないときは,本案訴訟をあきらめざるを得ない旨述べているところである〔弁護士藤井裕作成の電話録取書〕)。 さらに,相手方は,訴訟上の救助制度とその趣旨を同じくする財団法人法律扶助協会における扶助付与審査要件との均衡を主張する。確かに,一件記録によれば,(ア)同協会における審査基準として,①資力要件,②勝訴の見込みがないとはいえないこと,③法律扶助の趣旨に適すること,が定められていること,(イ)これらの要件を満たした者につき,民事裁判等の手続における代理人の報酬等の立替えがされること,(ウ)これらの要件のうち,①及び②については,ほぼ訴訟上の救助制度におけるものと同様の趣旨のものであると解されること,等の各事実が認められる。 しかしながら,一件記録によるも同協会における資力要件に係る審査基準において法律扶助申込者に加えてこれと同居するすべての親族の収入を勘案して ものであると解されること,等の各事実が認められる。 しかしながら,一件記録によるも同協会における資力要件に係る審査基準において法律扶助申込者に加えてこれと同居するすべての親族の収入を勘案しているかどうかについては必ずしも明確ではなく,むしろ,原則として申込者及びその配偶者の収入についてのみ考慮していることがうかがわれる。のみならず,同協会による法律扶助制度は,近年になり民事法律扶助法(平成12年4月28日法律第55号)が制定・施行され,その扶助内容もそれ以前のものと比較すると相当程度改善されたことは認められるものの,同様の制度を持つ欧米及び近隣の各国と比較した場合,その資金的基盤が果たして十分なものかどうかについては,必ずしも評価が一致するものではなく,議論の別れるところである(裁判所に顕著な事実)。同協会による扶助審査基準の設定ないし運用においては,資金的基盤に大きく影響を受けるものであり,それと連動していること(すなわち,資金的基盤が強固であれば,資力要件は緩やかなものとなり,逼迫すれば厳しいものとなること)は容易に推察されるところであって,現時点におけるわが国における法律扶助事業の資金的基盤は必ずしも潤沢とはいえないのであるから,憲法上の裁判を受ける権利を実質的に保障しようとする訴訟救助制度の付与要件の解釈に当たり,前記のような背景を持つ同協会の審査基準と同様に解さなければならない論理的必然性はないというべきである。 6 前記のとおり,本件において,抗告人らの子や孫らは,抗告人らと生計を共にして同居しているとはいえ,本来,抗告人らと独立して生計を営むことのできるのに何らかの事情によってたまたま同居等しているという場合であるから,少なくともこのような場合については,訴訟救助の申立てに関する資力要件の有無の判断は,抗告人ら らと独立して生計を営むことのできるのに何らかの事情によってたまたま同居等しているという場合であるから,少なくともこのような場合については,訴訟救助の申立てに関する資力要件の有無の判断は,抗告人ら個人の収入のみに基づいて行われるべきであるということができる。 そこで検討するに,資力要件を満たしているかどうかの判断に当たっては,申立人の資産や収入から,これと生計を同一とする家族に必要な生活費を控除した上で,当該訴訟に要すると考えられる裁判費用,調査費用及び弁護士費用等の諸経費を支出することが可能かどうかを,全体的に判断すべきである。ところで,抗告人Aは広島市に居住する者であるから,同市における平均的な2人世帯(同抗告人は妻Fとの2人世帯として判断するのが相当である。)の生活費を基準として判断すべきであるところ,総務省統計局の平成14年家計調査(総世帯)結果表によれば,広島市の勤労者世帯における平均世帯人員数は2.28人,実支出月額は38万2558円であることが認められ,これを世帯人員数を基準として按分計算により2人世帯に換算すると,月額33万5314円となる(小数点以下四捨五入)。 382,558円÷2.28人×2人=335,577円これを年額に換算すると402万6924円となるから,広島市における2人世帯の資力要件としては,特段の事由がない限り,年額400万円(税込みの収入額)をもって基準額とするのが相当である。 また,抗告人Bは福山市居住であるが,同市と広島市との間で基準を異にすべきほどの差異も見い出し難いから,同抗告人についても同様の基準により判断すべきである。そうすると,同抗告人は単身者として判断するのが相当であるから,単身世帯の基準額を算出すべきことになるところ,前記広島市における勤労者世帯の平均実支 告人についても同様の基準により判断すべきである。そうすると,同抗告人は単身者として判断するのが相当であるから,単身世帯の基準額を算出すべきことになるところ,前記広島市における勤労者世帯の平均実支出額を基礎として算出した2人世帯の基準年額400万円を按分計算する方法によりこれを求めるのが相当と思料される。もっとも,生計費は必ずしも世帯人員数に比例するものではないから,単純に2人世帯の年額の半額とすることは妥当ではなく,訴訟救助と同様の基盤に立つ制度である法律扶助制度における世帯人員別の資力要件の判断基準を参考として按分することが相当であると認められるところ,一件記録中の「法律扶助事業案内法律相談と裁判費用の立替え」によれば,法律扶助を付与する上での世帯人員別の資力要件の基準額は,単身者は月収18万2000円,2人世帯は同25万1000円であるとなっていることが認められる。ただし,前各月収は,手取額のものとして扱うのが実務であることから,各金額の実額をそのまま採用することはせず,単身者と2人世帯の基準額の按分割合を採用し,これをもとに前記広島市の2人世帯の基準額400万円に当てはめて,1人(単身者)の基準額を算定するのが相当である。そこで,これを基準として按分計算により単身者の資力要件となる収入額を算出すると,年額290万0398円(小数点以下四捨五入)となる。よって,単身者の資力要件の基準額としては,特段の事由がない限り,年額290万円(税込みの収入額)とするのが相当である。 400万円×18万2000円÷25万1000円=290万0398円(なお,相手方の主張によれば,基準となるべき年収額〔税込み〕は,広島市における1人世帯においては395万0696円であり,2人世帯においては445万0696円となっている。) 円(なお,相手方の主張によれば,基準となるべき年収額〔税込み〕は,広島市における1人世帯においては395万0696円であり,2人世帯においては445万0696円となっている。)これらの基準を抗告人らに当てはめると,いずれも資力要件を満たすことが認められる。すなわち,前記のとおり,抗告人Aは月額3万1000円(年額37万2000円)ほどの年金収入しかなく,妻の収入を併せても年額60万円程にすぎず,また,抗告人Bについては,平成14年分の収入として102万7998円(ただし,同年の総収入額は259万2997円であるが,これには給与収入156万4999円が含まれているところ,前記のとおり,同抗告人は同年末をもって退職しており,その後は無職であるから,これを除くのが相当である。)と認められるにすぎないから,いずれも前記基準額に満たないものであることは明らかである。 よって,抗告人らの本件訴訟救助の申立ては,いずれも資力要件を満たすものであるから,訴訟上の救助を付与すべきである。 以上によれば,抗告人らの本件訴訟上の救助申立てを再度の考案により却下した原決定は不当であるから,取消しを免れない。本件即時抗告は理由がある。 よって,主文のとおり決定する。 平成16年9月14日 広島高等裁判所第2部裁判長裁判官鈴木敏之裁判官松井千鶴子裁判官工藤涼二

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