- 1 - 主文 1 被告は、原告に対し、20万円及びこれに対する令和5年6月28日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、これを10分し、その1を被告の負担とし、その余 を原告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、被告に送達された日から14日を経過したときは、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 被告は、原告に対し、230万4753円及びこれに対する令和5年6月28日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、原告が在籍していた広島市立A高校(以下「被告高校」という。)の 校長が、令和4年9月4日、原告の母に対し、明日から原告を学校に来させないでほしい旨を告げたこと(以下「本件告知」という。)について、原告が、被告に対し、本件告知は適正な手続によらない違法な退学処分又は無期限の停学処分等に当たり、これにより転学を余儀なくされたなどと主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求として、転学に要した費用や慰 謝料等合計230万4753円及びこれに対する令和5年6月28日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) ⑴ 本件告知に至る経緯(乙1、3、5、弁論の全趣旨)- 2 - ア原告は、令和3年4月、被告が設置・運営する被告高校に入学した。 イ原告には、2年に進学した令和4年6月頃(以下、日付は、特に年を表記しない限り、令和4年の 弁論の全趣旨)- 2 - ア原告は、令和3年4月、被告が設置・運営する被告高校に入学した。 イ原告には、2年に進学した令和4年6月頃(以下、日付は、特に年を表記しない限り、令和4年の日付である。)から、遅刻や、他の生徒ないし教員に対する暴言等の問題行動が見られるようになり、7月4日には、原告の母と教員らとの間で面談が行われ、同月8日から別室(生徒指導室)で の指導が行われるようになった。 原告に対する指導は、夏休みの期間も含め継続して行われたが、原告に改善が見られたため、2学期の始まる8月23日からは通常どおり登校し、教室で授業を受けることとなった。 ウ原告の母は、原告の担任から被告高校に来るよう求められ、9月4日、 被告高校の校長であるB(以下「B校長」という。)等と面会した。B校長は、このとき、原告の母に対し、原告の授業態度が悪すぎるため、被告高校においてはこれ以上の指導はできないとして、退学処分や停学処分ではない旨を述べつつ、「明日から学校に来させないでください」と告げた(本件告知)。 ⑵ 本件告知後の経過原告は、9月5日以降、被告高校には登校せず、翌6日には、被告高校で転学のために必要な書類を受け取り、同月12日に転学届を提出し、10月1日に通信制の高校に転学した。 ⑶ 関係法令の定め ア学校教育法11条校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。 イ学校教育法施行規則26条 1 校長及び教員が児童等に懲戒を加えるに当たっては、児童等の心身- 3 - の発達に応ずる等教育上必要な配慮をしなければならない。 2 懲戒のうち、退学 教育法施行規則26条 1 校長及び教員が児童等に懲戒を加えるに当たっては、児童等の心身- 3 - の発達に応ずる等教育上必要な配慮をしなければならない。 2 懲戒のうち、退学、停学及び訓告の処分は、校長(中略)が行う。 3 前項の退学は、市町村立の小学校、中学校(中略)若しくは義務教育学校又は公立の特別支援学校に在学する学齢児童又は学齢生徒を除き、次の各号のいずれかに該当する児童等に対して行うことができる。 一性行不良で改善の見込みがないと認められる者二学力劣等で成業の見込みがないと認められる者三正当の理由がなくて出席常でない者四学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者4・5(略) ⑷ 被告高校における内規等の定め(乙2、4)ア被告高校を含む被告が運営する高等学校については、「広島市立高等学校学則」(乙2。以下「被告高校学則」という。)が適用され、生徒に対する懲戒につき、学校教育法11条(前記⑶ア)と学校教育法施行規則26条2項及び3項(同イ)と同旨の規定を設けている。 イ被告高校の規定集(乙4)には、校務運営についての生徒指導部の内規として、生徒に反社会的行為があった場合にするものとする「特別な指導(反社会的行為の指導)」についての規定があり(同内規3④。以下「被告高校内規」という。)、その内容は大要下記(ア)ないし(カ)のとおりであり、詳細は別紙のとおりである。 (ア) 生徒に反社会的行為があった場合の指導については、被告高校学則に定めるもののほか、速やかに特別な指導を行う。 (イ) 反社会的行為の内容ごとに設けられた日数(例:㋐飲酒、喫煙、薬物乱用等につき3日、㋑いじめにつき4日、㋒その他学校 導については、被告高校学則に定めるもののほか、速やかに特別な指導を行う。 (イ) 反社会的行為の内容ごとに設けられた日数(例:㋐飲酒、喫煙、薬物乱用等につき3日、㋑いじめにつき4日、㋒その他学校の指導に従わず、生徒としての本分に反し、学校の秩序を乱した場合につき3日など) を基準とした指導期間を設けて特別な指導を行う。ただし、問題行動の- 4 - 程度や内容によっては、指導期間を変更することがある。 (ウ) 特別な指導は、㋐学校反省指導・家庭反省指導、㋑訓戒の2種類である。 (エ) 指導案は、生徒指導部が問題行動に係る事実と背景を確認し、HR担任・家庭等と連携を取った上で指導原案を作成し、これを生徒指導委 員会で審議し、校長が決定する。 (オ) 指導方法の申渡し及び指導の解除についてa 校長は、教頭、HR担任等同席の上、特別な指導に至った経緯、理由を生徒保護者に説明し、実施方法について具体的に説明する。 b 生徒・保護者に弁明の機会を与え、弁明があるときは生徒指導委員 会において検討し、その協議・検討を参考に校長が是非を判断する。 c 教頭は、反省状況の評価を行い校長に報告する。 d 校長は、解除の是非について生徒指導部を通じて生徒に伝える。 (カ) その他a 反省指導については校内での指導を基本とする。 (指導する場所は別 室とする。)b 特別な指導を行う場合、事案によっては家庭反省を促す場合がある。 その後、面談を行い、反省の度合いによっては特別な指導を開始する。 c 反省指導期間は、問題行動の程度や内容によっては変更することがある。 ⑸ 特別な指導等に関する広島県教育委員会作成に係る資料広島県教育委員会は、従前、広島県で生徒が起こした問題行動で懲戒に相当する事案において、 程度や内容によっては変更することがある。 ⑸ 特別な指導等に関する広島県教育委員会作成に係る資料広島県教育委員会は、従前、広島県で生徒が起こした問題行動で懲戒に相当する事案において、ほとんどの場合に正式な処分によることなく、停学については自主退学等といった措置がとられる傾向があったところ、懲戒と措置の区分が曖昧で、特別な指導や自主退学等をどのような手順と内容で行う べきかなどについて整理が不十分であったことなどの問題点を踏まえ、平成- 5 - 16年10月付け「高等学校における問題行動への対応について」と題する文書(甲1。以下「本件県教委資料」という。)を発出し、特別な指導や自主退学勧告等の問題について不適切な対応を未然に防止するための基本的な考え方、留意点や手順・対応モデル等を示している。本件県教委資料には、大要以下の記載がある。 ア家庭反省指導を含む特別な指導について(ア) 懲戒による停学との違い家庭反省指導は、保護者の理解を得て一定期間、家庭において反省させる指導であるところ、学校の説明不足などから「保護者の理解を得て」の部分が曖昧になり、生徒・保護者にとって当該措置が強制と受け取ら れ、事実上の停学となっている場合がある。家庭反省指導は、本来、「当該生徒が保護者とじっくり話し合い、生活を振り返るための時間」を設けるなどの理由で行われる指導であり、保護者の理解を得た上で実施することができるものであって、保護者の理解が得られない場合は、学校反省指導を実施する。 一方、停学は、学校教育法施行規則26条等で規定されているとおり、校長が行うもので、生徒にとって期間中教育を受けられなくなる懲戒処分であり、この処分を検討する場合は、家庭反省指導等の特別な指導と明確に分けて考える必要 育法施行規則26条等で規定されているとおり、校長が行うもので、生徒にとって期間中教育を受けられなくなる懲戒処分であり、この処分を検討する場合は、家庭反省指導等の特別な指導と明確に分けて考える必要がある。 (イ) 基本的な考え方 家庭反省指導は、保護者の理解を得た上で実施する。学校教育法施行規則26条等に規定されている懲戒停学と明確に区別して行う必要があり、家庭反省でも懲戒でもなく、指導を行わずに自宅に居させるだけの「家庭待機」と呼ばれる措置を命ずることはできない。 (ウ) 実施するための留意点 ① どのような場合に、どのような手順と方法で、どの程度の期間で行- 6 - うか、明確な基準を設け、事前に生徒及び保護者に説明しておくこと。 ② 事実関係と指導の内容を十分説明し、弁明の機会を与え、弁明されたことについては検討を行うなどして生徒及び保護者の理解を得ること。 ③ 反省指導を受ける生徒及び保護者に、反省指導の意義、方法、日程、 心得、準備物等について文書で示し、説明すること。 イ自主退学勧告、懲戒による停学・退学について(ア) 自主退学に係る基本的な考え方自主退学は、本来自主的な意思表示に基づくものであり、その勧告が、生徒・保護者に対して「退学願」の提出を強制することになってはなら ない。学校教育法施行規則26条等の懲戒による退学処分に相当するとして自主退学を勧告する場合も、その事由を示し、当該生徒の将来を配慮するための勧告である旨の説明をするなどの慎重な対応が求められる。 (イ) 懲戒による停学・退学に係る基本的な考え方懲戒のうち停学及び退学は、個々の生徒の状況に応じたきめ細かい指 導を尽くした上で、なお懲戒による停学・退学以外に対応の方法がないと判断した場合にのみ実施 よる停学・退学に係る基本的な考え方懲戒のうち停学及び退学は、個々の生徒の状況に応じたきめ細かい指 導を尽くした上で、なお懲戒による停学・退学以外に対応の方法がないと判断した場合にのみ実施できる。 (ウ) 問題行動に係る自主退学勧告、懲戒による停学・退学の前に必要な生徒指導上の留意点a 積極的にすべきこと 当該生徒等から事情聴取を行って事実を明確にすることや、これまでの特別な指導を踏まえて処分等を検討すること、問題行動に係る弁明の機会を与え、趣旨を明確に説明して期間を置くこと等b してはならないこと「家庭待機」等と呼ばれる指導・措置・処分を保留した期間を作ら ないこと等- 7 - 3 争点及びこれに関する当事者の主張⑴ 本件告知の違法性(原告)ア学校における生徒等の懲戒に関する学校教育法施行規則26条の規定やこれを踏まえた本件県教委資料で示された基本的な考え方、留意点等の趣 旨・存在意義は、被告が運営する被告高校においても当然に当てはまる。 イこれらの規定等に照らせば、懲戒による停学及び退学は、個々の生徒の状況に応じた指導を尽くした上で、なお懲戒による停学・退学以外の対応の方法がないと判断した場合に限定して行うことが必要であり、それ以外の方法での教育を受ける権利(憲法26条)を侵害する形での懲戒は許さ れない。本件告知は、退学処分又は無期限の停学処分に当たるところ、原告は学校教育法施行規則26条3項各号に該当しない上、本件告知前後で原告の話を聞くなどの手続が一切保証されておらず、学校での様子も家庭に報告されていないことも併せ考慮すれば、学校側が指導を尽くしたとはいえないから、本件告知は要件を満たさず、また手続保障も尽くされてい ない違法な退学・停学処分である。 ず、学校での様子も家庭に報告されていないことも併せ考慮すれば、学校側が指導を尽くしたとはいえないから、本件告知は要件を満たさず、また手続保障も尽くされてい ない違法な退学・停学処分である。 ウまた、本件において、B校長は、その期間及び趣旨を明確に示すことなく本件告知に及んでおり、家庭反省指導を行う上で必要な保護者の理解も得ていないのであるから、本件告知は家庭反省指導には当たらず、指導を行わずに自宅に居させる「家庭待機」であり、違法な措置である。 (被告)アそもそも、本件県教委資料は被告に適用されるものではなく、被告高校は被告高校学則及び被告高校内規に従って懲戒・指導をするものである。 イ本件告知は、退学処分ないし停学処分には当たらず、教育的指導として自主的な欠席を促す家庭反省指導として行ったものである。原告の状況は、 本件告知以前に行われた約2か月間にわたる学校反省指導を経てもなお改- 8 - 善せず、むしろ悪化していた。このことを受け、B校長は、他の教員ないし生徒への影響や、原告及び原告の母において原告の状況の改善の必要性についての認識が不足していると見受けられたことも考慮し、また指導として家庭での反省を行うことにつき原告の母から同意を得られたと認識するような反応が見られていたことも踏まえ、被告高校内規のうち特別な指 導に係る規定(④)のイただし書に基づき家庭反省指導として本件告知を行った。 そして、原告の本件当時の状況から、指導期間を明確に示さずに家庭反省指導を行う必要性及び相当性が認められたため、指導期間を示さなかったものであるから、本件告知は適法である。 ウ仮に、本件告知が実質的な停学処分に当たるとしても、学校教育法11条に照らして、いかなる懲戒を行うべきかの判断は、 たため、指導期間を示さなかったものであるから、本件告知は適法である。 ウ仮に、本件告知が実質的な停学処分に当たるとしても、学校教育法11条に照らして、いかなる懲戒を行うべきかの判断は、校長等直接教育を行う者の合理的裁量に委ねられるべきであるところ、B校長において本件告知に至るまでの経緯に照らし、原告の状況が改善することを期待して本件告知を行ったことは、社会通念上著しく妥当性を欠くとはいえず、裁量権 の範囲の逸脱ないし濫用とは認められず、適法である。 ⑵ 損害(原告)ア転学に要した費用 30万4753円(ア) 転学先の高校の学費(半期)17万6700円 (イ) トライ式高等学院(半期)12万1352円転学先の高校ではサポート校への在学が必要とされているところ、原告はトライ式高等学院に在学することになったものである。 (ウ) 教科書代6701円イ慰謝料200万0000円 ウ合計 230万4753円- 9 - (被告)否認ないし争う。 被告は、退学処分等を行っておらず、転学は原告が家族と相談の上で自ら決めたことであるから、転学に要した費用について被告が責任を負うものではない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実争いのない事実並びに掲記の証拠(ただし、枝番の記載は省略する。)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ⑴ 本件告知に至るまでの経緯 ア原告は、令和3年4月、被告高校に入学した。原告は、1年生在籍時、クラスで1位の成績を取るなど授業に前向きな姿勢を示しており、問題行動は特に把握されていなかった。 もっとも、原告は、1年在籍時 ア原告は、令和3年4月、被告高校に入学した。原告は、1年生在籍時、クラスで1位の成績を取るなど授業に前向きな姿勢を示しており、問題行動は特に把握されていなかった。 もっとも、原告は、1年在籍時、同級生との間でトラブルを起こしたことがあり、被告高校は、このことを、原告が2年生に進学した4月ないし 5月頃、原告がいじめをしていたという報告を受ける形で把握した。原告は、このことについての被告高校側の対応に不信感を抱くようになり、6月頃から、遅刻をしたり、授業中に眠ったりするほか、同月23日には、教員に対して、殺したい、少年法があるから今ならやれるよ、といった趣旨の発言をするなど、問題行動をするようになっていった。 (甲7、8、乙1、9、証人C・1頁、証人B・1、12頁、原告本人・1~3、10、11頁)イ原告の担任教師は、6月頃、原告の母に対し、電話で、原告に遅刻が多いことや、殺したいといった趣旨の発言をしていることを伝えたが、原告の母はこれを重くは受け止めなかった。 原告は、上記問題行動による他の生徒への影響が懸念されたため、7月- 10 - 1日から始まる期末考査については、他の生徒とは別の部屋で受けることとなった。 原告の母は、同月4日、被告高校に呼び出され、その後合流した原告とともに被告高校の教師と面談をした。この面談において、原告は、被告高校に対し、指導を受ける意思を示し、期末考査終了後である同月8日から、 指導無視、周囲に対する威嚇及び周囲への迷惑行為について、「特別な指導」を受けることとなった。 原告及び原告の母は、同月13日、B校長等と面談をし、このとき、原告は、深い反省の意思を示した。その後、被告高校は、いじめ防止委員会を開催するなどして、夏休みの期間も原告の指導を継続すること た。 原告及び原告の母は、同月13日、B校長等と面談をし、このとき、原告は、深い反省の意思を示した。その後、被告高校は、いじめ防止委員会を開催するなどして、夏休みの期間も原告の指導を継続することとした。 なお、原告は、同月7日から同月19日までの間、反省記録を作成したが、原告の母は、反省記録の保護者所感覧について、当初は所感を記載していたものの、同月13日分以降については記載をしなかった。 B校長等は、夏休み開始後である同月24日、原告及び原告の母と面談し、夏休みの過ごし方や夏休み中の定期的な登校を促した。これを受け、 原告は、夏休み中に3回登校し、被告高校の教師と面談をし、被告高校は、原告が指導を受け入れて落ち着いてきたと捉え、2学期開始日である8月23日から原告を教室に復帰させることとした。この復帰に当たり、B校長等は、原告及び原告の母と面談し、原告に対し、教員の指導に従うこと、授業規律を守ること、暴言を吐かないことなどを伝えるとともに、原告の 母に対し、同じようなことが再び起こった場合にはこれ以上の指導が難しい旨を伝えた。 (甲7、8、乙1、3、5、9、証人C・1~4頁、証人B・2~6頁、原告本人・4頁)⑵ 本件告知時の状況 ア原告は、2学期開始日(8月23日)以降、教室での授業に復帰したが、- 11 - 教師に怒られることなどがあってやる気をなくし、遅刻をするほか、授業中にタブレットでゲームをしたり、教師に対して「くそが」、「しね」、「鬼畜か」と発言するなど、再び問題行動を繰り返すようになった。このことから、被告高校は、学校による指導だけでは改善が困難だと考え、原告の母と面談することとした。(甲8、乙9、証人B・6~7頁、原告本人・5、 6、13、14頁)イ B校長等は、 った。このことから、被告高校は、学校による指導だけでは改善が困難だと考え、原告の母と面談することとした。(甲8、乙9、証人B・6~7頁、原告本人・5、 6、13、14頁)イ B校長等は、9月4日、被告高校において、原告の母と面談をし、これまでの指導を振り返った上で、夏休み明けの原告の状況を説明し、被告高校としては指導の限界を感じており、「明日から学校に来させないでください」と伝えた(本件告知)。B校長は、本件告知をするに当たり、家庭で今 後について話し合ってほしい旨を述べたが、具体的な期間及び期間を設けない理由や、話し合いの対象や、どのようにしたら被告高校での授業に復帰できるのか等については説明をしなかった。これに対し、原告の母は、B校長に対し、停学ないし退学といった処分なのかと問うたところ、B校長は、停学処分でも退学処分でもない旨説明した。 原告の母は、この面談の結果、最終的に、「いい挫折かもしれない」という発言をした。 (甲7、乙9、証人C・5~6、15頁、証人B・7~10、21~23頁、弁論の全趣旨)⑶ 本件告知後の経緯 ア原告の母は、本件告知がされた翌日である9月5日、本件告知を含む前日の被告高校での面談の結果に納得ができず、広島市教育委員会に架電し、本件告知の経緯についての説明や学校に戻るにはどうすればよいのかを書面で作成の上交付してほしい旨要望したところ、学校から連絡をさせる旨の返答を受けた。(甲7、証人C・15頁) イ B校長は、9月5日に広島市教育委員会からの連絡を受け、同月6日の- 12 - 午前中、原告の母に架電した。原告の母は、このとき、B校長に対し、月曜日(同月5日)から学校に来るなというのは急ぎ過ぎなのではないか、などと9月4日の面談について納得でき 6日の- 12 - 午前中、原告の母に架電した。原告の母は、このとき、B校長に対し、月曜日(同月5日)から学校に来るなというのは急ぎ過ぎなのではないか、などと9月4日の面談について納得できない旨を述べたが、B校長は、まずは家族で話し合ってほしいと、上記面談時と同様の説明を繰り返した。 また、この電話において、通信制課程のある高校への転学が話題となり、 B校長は、原告の母が転学を考えていることを認識しつつ、過去に被告高校から私立の通信制高校に転学した生徒がいる旨回答をした。 (甲7、乙9、証人C・15、16頁、証人B・10~11、25頁)ウ原告の母は、9月4日の面談以降、被告高校には戻れず、次の学校を探すしかないと考えるに至り、転学先を探したが、時期的に入学可能な学校 が1つしかなかったため、その候補となる通信制の高等学校の説明会に参加をし、同月6日、B校長と電話で会話した後に、原告とともに、転学のために被告高校に準備してもらう必要がある書類を届けるため、被告高校を訪れた。これに対し、B校長は、少し早いななどと思いはしたが、引き止めることなどはせず、教頭にすぐ対応するように指示をし、被告高校は、 原告及び原告の母に対して同書類を交付した。(甲7、乙9、証人C・10~13頁、証人B・11、20頁)エ原告は、9月12日、被告高校に対し、転学届を提出した。(甲7、乙9)オ原告の母とB校長は、9月30日、電話で会話をした。同電話において、 B校長は、原告の母から本件告知の趣旨について問われたのに対し、本件告知は処分ではないが、被告高校において相当期間をかけて原告に指導を行ってもなお授業態度等が改善しなかったため、明日から登校しないようにと伝えた旨説明した。また、原告の母は、B校長に対し、本件告知に 告知は処分ではないが、被告高校において相当期間をかけて原告に指導を行ってもなお授業態度等が改善しなかったため、明日から登校しないようにと伝えた旨説明した。また、原告の母は、B校長に対し、本件告知に関する書類を交付するよう求めたがと、B校長は、本件告知は退学処分では なく、書類の作成・交付はできない旨回答した。さらに、原告の母は、こ- 13 - の電話において、引き続き原告を被告高校に登校させることを告げた。 原告の母の上記意向を受け、B校長を含む被告高校の教職員らは、原告が登校してきた場合の指導体制を整えたが、10月1日以降、原告は登校しなかった。 (甲3、4、5、乙9、証人B・11、12頁) 2 争点1(本件告知の違法性)について⑴ 原告は、本件告知は退学処分又は無期限の停学処分に当たり、仮に本件告知が退学処分や停学処分でない家庭反省指導に止まるとしても、いずれにせよ本件告知は適正な手続を欠く違法な懲戒・指導である旨を主張する。 そこで、まず、本件告知の性質について検討すると、B校長は、9月4日 の面談時に、原告の母に対し、原告については退学処分や停学処分ではない旨明確に述べており、原告の母もそのこと自体は認識していたと認められるから、本件告知が退学ないし停学処分に当たるものであったとは認められず、その性質は、被告高校内規が定める家庭反省指導に止まるものと認めるのが相当である。 次に、本件において教育的指導として家庭反省指導を選択したことの合理性については、本件告知に至るまでの間、被告高校においては、相当期間をかけて原告に対する継続的な指導がなされたが、期末考査後から夏休みの指導を経て一旦原告の授業態度が改善されたものの、夏休み後には原告の授業態度等が再び悪化し、原告が指導に従って反省ないし 相当期間をかけて原告に対する継続的な指導がなされたが、期末考査後から夏休みの指導を経て一旦原告の授業態度が改善されたものの、夏休み後には原告の授業態度等が再び悪化し、原告が指導に従って反省ないし改善する意欲を有して いない状況に至っていたのであって、このような中で、被告高校において、被告高校における学校内での指導ではなく、原告に対して家庭での反省を指示することには、一定の合理性があったということができる。 ⑵ 以上を踏まえ、家庭反省指導がその態様によって国賠法上違法となる場合があるかについて検討すると、家庭反省指導は、①必然的に生徒の校内学習 の機会の喪失を伴うものであって、それ自体当該生徒の教育を受ける機会を- 14 - 相当程度制限するものである上、②その手順や対応の内容(当該生徒ないし保護者に対する当該反省指導の意義、方法、期間等についての実質的説明の有無等)によっては、当該生徒ないし保護者にとって事実上強制の停学措置やこれに伴う自主退学勧告と受け止められかねない性質を帯びており、この趣旨は、本件県教委資料(甲1)にも明示されている。また、家庭反省指導 は、当該生徒が保護者とじっくり話し合うなどして自身の生活を振り返るための時間を設けるなどの理由で行われる指導であるところ、少なくとも保護者の理解がその実施の前提になるものと解され、本件県教委資料においても、保護者の理解を得られない場合には、学校反省指導を実施することが示されている。 以上のような家庭反省指導の意義やその前提に鑑みると、家庭反省指導については、①生徒の教育を受ける機会を相当程度制限することに見合う適正な手順・対応が求められるほか、②事実上強制の停学措置やこれを伴う自主退学勧告と受け止められないように十分に配慮して行う必要があるとい ては、①生徒の教育を受ける機会を相当程度制限することに見合う適正な手順・対応が求められるほか、②事実上強制の停学措置やこれを伴う自主退学勧告と受け止められないように十分に配慮して行う必要があるというべきであって、このことは、本件県教委資料等、複数の都道府県単位の教育委 員会において家庭反省指導に関しては指導期間や指導の際の手順等が詳細に定められ、現に、被告高校の内規においても、家庭反省指導は保護者の理解を得た上で実施し、生徒及び保護者に対する家庭での反省指導を指示するに至った経緯及び理由の説明、弁明の機会の付与、指導期間の設定及び明示等の手続を履践することとされていることからも裏付けられているということ ができる。 そして、上記のような適正な手順・対応ないし配慮を著しく欠くような態様で家庭反省指導がされた場合には、対象となる生徒の教育を受ける機会を不当に制限するとともにその学校内の地位を著しく不安定にすることになることからすると、上記のような場合においては、当該家庭反省指導について、 教育指導上の裁量権の範囲を逸脱ないし濫用するものとして、国家賠償法上- 15 - 違法となる場合があるというべきである。 ⑶ これを本件告知についてみると、本件告知がされたときのB校長との会話の内容とそれに対する原告及びその保護者の認識について、原告の母は、B校長から、本件告知のほか、謝っても戻れない、マンツーマンで見てくれる高校があるなどとも言われ、被告高校に在籍することはできなくなったと認 識した旨を陳述ないし供述する(甲7、証人C5、14、15頁等)。 この点に関し、①夏休み後に授業に復帰するに当たって実施された面談において、B校長が次に問題行動があった場合には被告高校での指導が難しい旨を伝え、それにもかかわらず原 証人C5、14、15頁等)。 この点に関し、①夏休み後に授業に復帰するに当たって実施された面談において、B校長が次に問題行動があった場合には被告高校での指導が難しい旨を伝え、それにもかかわらず原告が問題行動をし、9月4日の面談においてもB校長が被告高校での指導は難しい旨を再度伝えていること、②9月4 日の面談の後、B校長が、原告の母から本件告知の性質等について質問を受けたにもかかわらず、実質的には退学処分や停学処分ではない旨を述べるとともに家庭内で話し合うことを繰り返し求めるのみで、本件告知がどのようなものであり、どのような趣旨でされたのかという点や、家庭内でどのような検討・反省をしたら授業に復帰する方向に改善していけるのかという点に ついての説明をしていない上、その家庭内での反省がどの程度の期間続くのかといった、家庭内での指導を受け入れるかどうかを判断するに当たって必要となる情報を何ら提供しなかったこと、③その後日を置かずに原告の母が転学を検討してその手続を取った際も、B校長において原告及びその保護者がそのような決断に至った経緯を確認したり、思いとどまらせたりするなど といった行動に一切出ないまま転学に向けた準備を進める態度を示したことなどを踏まえると、9月4日の面談時におけるB校長の発言(本件告知を含む。)は、その内容において前記1⑵イのとおり認定できるほか、原告の母が陳述ないし供述するとおりの文言であったかどうかはともかくとして、少なくとも原告及び原告の母の主観において、転学をも選択肢として検討せざる を得ないと認識させるに足りる態様のものであり、また、B校長においても、- 16 - 原告及び原告の母がそのような認識を持つことを十分念頭に置いてされたものであったと認めるのが相当である。 そして いと認識させるに足りる態様のものであり、また、B校長においても、- 16 - 原告及び原告の母がそのような認識を持つことを十分念頭に置いてされたものであったと認めるのが相当である。 そして、以上のような9月4日の面談時におけるB校長の発言の内容及び態様のほか、上記①ないし③を含む本件告知の前後にわたるB校長の一連の対応を併せ考慮すると、本件告知は、保護者の理解を得て「当該生徒が保護 者とじっくり話し合い、生活を振り返るための時間」を設けるなどの理由で行われる指導を行う趣旨でされたものとは到底評価できず、基本的に、事実上の無期停学状態にした上で、自主退学を促すことに主眼を置いてされたものというべきであって、家庭反省指導をするに当たり、教育を受ける機会の制限や懲戒との区別等との関係で履践すべき適正な手順・対応を欠くととも に必要な配慮を著しく欠き、教育指導上の裁量権の範囲を逸脱ないし濫用するものとして、国家賠償法上の違法行為であると認めるのが相当である。 3 争点⑵(損害)について⑴ 転学に要した費用原告は、本件告知によって転学を余儀なくされた旨主張する。 しかし、本件において、B校長は、原告の母に対し、本件告知は停学処分ないし退学処分として行われたものではないと明示的に伝えており、被告高校において、原告が登校した場合の指導体制が整えられていたことに鑑みれば、客観的に原告が被告高校に通い続ける道が閉ざされたものであったとは認められないし、原告ないしその保護者においても、法令、被告高校学則な いし被告高校内規などとの関係で、制度ないし規定上被告高校に通学できない状況に置かれたと認識せざるを得ない事情があったとまでは認められない。 結局、原告の転学は、他の高校の入学の受入れが可能な時期や本件告知ないし などとの関係で、制度ないし規定上被告高校に通学できない状況に置かれたと認識せざるを得ない事情があったとまでは認められない。 結局、原告の転学は、他の高校の入学の受入れが可能な時期や本件告知ないしその後の対応を含む被告高校との関係性も踏まえた上で、最終的には原告ないし家庭の判断で転学に至ったものといえ、本件告知により原告が転学 を余儀なくされたという関係があるとまでは認められない。 - 17 - したがって、転学に要した費用が、本件告知と相当因果関係のある損害であるとは認められない。 ⑵ 慰謝料本件告知は、既に述べたとおり、客観的には退学処分のような原告が被告高校に通い続ける道を閉ざすようなものではなかったものの、その具体的手 順ないし対応に鑑みると、事実上の無期停学状態にした上で自主退学を促すことに主眼を置かれてされたものであって、このような教育を受ける機会の制限や懲戒との区別等との関係で履践すべき適正な手順・対応を欠くとともに必要とされる配慮を著しく欠いた行為により、原告は、このような状況の下で被告高校における生徒としての地位が著しく不安定な状態に置かれた上、 他の高校の入学可能時期等との兼ね合いもあり、そのような状態のまま短期間のうちに転学するか否かという重大な決断を迫られたことにより、相当程度の精神的苦痛を被ったものと認められる。 他方で、本件告知の原因となった原告の問題行動に関しては、本件以前から保護者との面談や被告高校における約2か月間の学校反省指導が実施され、 原告や原告母において、原告の学校における行動の適否について検討し、改善する機会は十分に与えられていたにもかかわらず、原告自身において教室復帰後に授業態度が悪化していることを認識しつつも、本件告知時点において反省を深めることなく、 おける行動の適否について検討し、改善する機会は十分に与えられていたにもかかわらず、原告自身において教室復帰後に授業態度が悪化していることを認識しつつも、本件告知時点において反省を深めることなく、改善の意欲もなかったなどという事情がある。これらの事情に鑑みると、本件については、原告において、学校反省指導を超 える特別な指導等を受けざるを得ない状況のほか、転学も含め学習環境を変えることが合理的な選択肢となり得る状況を自ら作出した面があったことも否定できない。 以上のほか、本件告知が行われた時期は、高校2年生の9月であって、本来原告の進路に多大な影響を与えるような時期でないことなど本件に顕れた 一切の事情を総合考慮すると、原告の精神的苦痛を慰謝するための金額とし- 18 - ては、20万円とするのが相当である。 第4 結論以上によれば、原告の請求は主文の限度で理由があるからこれを認容することとし、その余は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。なお、仮執行免脱宣言については、相当でないからこれを付さないが、 仮執行の宣言の執行開始時期については、本判決が被告に送達された日から14日を経過したときと定めるのが相当である。 広島地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官光岡弘志 裁判官植田裕紀久 裁判官豊田ののか
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