【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 本件を広島高等裁判所に差し戻す。 理 由 上告代理人岸本静雄の上告理由について。 原審が確定したところによれば、上告人
主文原判決を破棄する。 本件を広島高等裁判所に差し戻す。 理由上告代理人岸本静雄の上告理由について。 原審が確定したところによれば、上告人は、昭和三四年九月二日、訴外D商事株式会社に対し、金額一五万円、支払期日同年一二月五日の本件約束手形を振り出し、同会社は、同年九月二日、訴外株式会社E銀行に対し、同銀行は、同年一二月四日、前者であるD商事株式会社に対し、同会社は、支払期日後である昭和三五年五月一七日、被上告人に対し、順次本件手形を裏書譲渡し、被上告人が現に本件手形を所持しているのであるが、上告人の主張によれば、本件手形は、上告人がD商事株式会社に金員の融通を得させる目的で振り出した、いわゆる融通手形であつて、同会社は、手形割引の方法として、本件手形をE銀行に裏書譲渡して、金融の目的を達し、支払期日の前日にこれを受け戻したというのである。 按ずるに、右のような融通の目的をもつてする約束手形の振出にあたつては、融通者たる振出人と被融通者たる受取人との間において、受取人が当該手形によつて金融の目的を達したときは、満期までに受取人が支払資金を供給するか、または、手形を回収して振出人に返還することが合意されるのを取引の一般とする。したがつて、受取人が、当該手形の割引を得た後、自らこれを受け戻したときには、右合意の効力として、受取人は右手形を振出人に返還すべき義務を負い、これを再び金融のため第三者に譲渡してはならないのであつて、この意味において、右手形は融通手形としての性質を失うのである。その結果、振出人が対価の欠缺を理由に受取人に対し手形金の支払を拒絶できる関係(人的抗弁)は、爾後、裏書により右手形が第三者に譲渡されたときは、その者に承継されるべきものとなるのであり、した- 1 - 果、振出人が対価の欠缺を理由に受取人に対し手形金の支払を拒絶できる関係(人的抗弁)は、爾後、裏書により右手形が第三者に譲渡されたときは、その者に承継されるべきものとなるのであり、した- 1 -がつて、受取人が、支払拒絶証書作成期間経過後に、第三者に対し、右手形を裏書譲渡した場合においては、振出人は、受取人に対し手形金の支払を拒絶できたことを理由に、右第三者に対しても、その善意悪意を問わず、手形金の支払を拒絶できるものといわなければならない。けだし、右支払拒絶証書作成期間後の裏書が指名債権譲渡の効力のみを有することは、手形法二〇条一項、七七条一項一号の規定するところであり、右譲渡については、手形法一七条が規定するような人的抗弁の制限はないからである。もとより、受取人が金融の目的を達した後受け戻した手形を期限後において再び金融を得るため利用できる趣旨で、右手形が授受されたものであれば、右手形は、なお、融通手形たる性質を失わないから、振出人は、支払拒絶証書作成期間経過後にせよ、右手形の裏書譲渡を受けた第三者に対し手形金支払義務を負わなければならないが、このような趣旨で融通手形が振り出されることはむしろ異例のことに属する。 叙上説示したところに徴すれば、本件手形が取引上一般に行われる融通手形の趣旨で振り出されたものであるとすれば、本件手形を受け戻したD商事株式会社は、これを上告人に返還すべく、金融を得るため他に譲渡することができないのに、支払拒絶証書作成期間経過後であること明らかな昭和三五年五月一七日、被上告人に対し、本件手形を有償で裏書譲渡したのであるから、上告人は、D商事株式会社に対し本件手形金の支払を拒絶できたことを理由に、被上告人の手形金請求を拒絶することができるものというべきである。上告人が、原審において、「D商事株式会社に対 のであるから、上告人は、D商事株式会社に対し本件手形金の支払を拒絶できたことを理由に、被上告人の手形金請求を拒絶することができるものというべきである。上告人が、原審において、「D商事株式会社に対する『融通手形の抗弁』をもつて、被上告人に対抗することができ、被上告人に対して右手形金の支払義務がない。」と述べたことの趣旨も、帰するところ、右の法律的関係を主張するにあつたものと解するのが相当である。しかるに、原判決は、「一般に融通手形と指称されるものが、満期前に限つて利用を許されるものであるとも断定し難く、従つて満期到来後の手形であるからといつて、ただちに融- 2 -通手形としての効用を失つたものともいい難いところである。」となしたのは、取引上一般に行われている融通手形の趣旨の解釈を誤つたものというべく、このため、D商事株式会社がE銀行から本件手形の割引を得た後これを受け戻した旨の上告人の主張事実の真否を確定せず、したがつて、当該事実に基づき上告人が本件手形金の支払を拒絶することができる関係にあることを顧慮することなく、上告人に手形金支払義務があると判断したことは、前示解釈の誤りにより審理不尽の違法をも冒したものといわざるをえない。されば、原判決の右違法を主張するものと解される論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。 よつて、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官横田正俊裁判官五鬼上堅磐裁判官柏原語六裁判官田中二郎- 3 - 磐裁判官柏原語六裁判官田中二郎- 3 -
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