平成15(ネ)85 構内権不存在確認請求,損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成15年10月15日 広島高等裁判所 山口地方裁判所 平成13(ワ)98
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判決文本文19,566 文字)

主文 1 原判決中主文第2項を取り消す。 2 被控訴人の控訴人らに対する上記取消にかかる部分の請求をいずれも棄却する。 3 控訴人らの本件控訴中その余の部分を棄却する。 4 被控訴人の本件控訴を却下する。 5 訴訟費用は,第1,2審を通じて3分し,その2を控訴人らの負担とし,その余を被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴人A,控訴人B及び控訴人C(以下合わせて「控訴人ら」という。)の控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 X事件につき(主位的申立て)被控訴人の訴えを却下する。 (予備的申立て)被控訴人の請求を棄却する。 3 Y事件につき主文2項と同旨。 4 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2 被控訴人の控訴の趣旨 1 原判決主文第1項を,「控訴人らは,被控訴人に対し,a市b町c番地所在のD病院敷地内に設置されたタクシー待機レーンに,控訴人らのタクシー車両が常時客待ちのため駐車待機する権利を有しないことを確認する。」と変更する。 2 上記1の予備的請求(当審で追加した請求)控訴人らは,被控訴人に対し,控訴人らのタクシーを前項記載のレーンに駐車待機させて被控訴人のタクシーの駐車待機を妨害してはならない。 第3 事案の概要 1 請求の要旨被控訴人は,Eとの契約によりa市b町c番地所在のE経営のD病院敷地内に設置されたタクシー待機レーン(以下「本件レーン」という。)を常時客待ちのためタクシーを駐車待機させて使用する権利を取得したが,控訴人らが同様の権利を有すると主張しタクシーを本件レーンに駐車待機させて被控訴人の上記権利を侵害しているとして,①被控訴人と控訴人らとの間で控訴人らが上記権利を有しないことの確認を求める(原審X事件)とともに,② 権利を有すると主張しタクシーを本件レーンに駐車待機させて被控訴人の上記権利を侵害しているとして,①被控訴人と控訴人らとの間で控訴人らが上記権利を有しないことの確認を求める(原審X事件)とともに,②控訴人らの上記行為が不法行為を構成するとして,控訴人らに対し,損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた(原審Y事件)。 原審はX事件及びY事件の被控訴人の請求をすべて認容し,控訴人らが控訴した。被控訴人もX事件につき,上記第2の1のとおりの控訴の趣旨で控訴したうえ,当審で,この請求を主位的請求とし,③予備的に,控訴人らに対し,控訴人らがそのタクシーを本件レーンに駐車待機させて被控訴人のタクシーの駐車待機を妨害することの禁止を求める請求を追加した。 2 基礎事実(末尾に証拠の記載のないものは争いがない。)(1) 当事者被控訴人と控訴人らは,いずれも一般乗用旅客自動車運送業を主たる営業目的とする会社である。 (2) 平成12年の裁判上の和解の成立被控訴人は,昭和31年ころからD病院の敷地の一部を賃借し,昭和55年にはこれに建物を建築し,同建物を車庫や事務所として使用して,タクシー営業をしていたが,平成9年ころ,同病院の増改築に伴い,同病院から営業場所の変更等の申入れを受け,被控訴人の建物の移築場所や他社にタクシーレーンの使用を認めるか等の点につき,同病院との間で紛争が生じ,平成11年4月28日,D病院を経営するEを被告として,借地権等確認の訴訟を提起した(山口地方裁判所平成11年(ワ)第80号)が,平成12年9月14日,両者間で裁判上の和解(以下「本件和解(1)」という。)が成立した。 その内容の要旨は次のとおりであった。(甲1,2,弁論の全趣旨。書証番号はX事件またはX・Y両事件併合後の書証番号 14日,両者間で裁判上の和解(以下「本件和解(1)」という。)が成立した。 その内容の要旨は次のとおりであった。(甲1,2,弁論の全趣旨。書証番号はX事件またはX・Y両事件併合後の書証番号を指す。以下特記しないかぎり同じ。)。 ア被控訴人とEは,上記土地賃貸借契約一切を本日合意解約する。 イ Eは,本件レーンに,被控訴人のタクシーが常時客待ちのため駐車待機することを認める(以下,Eの承諾を得て常時客待ちのためタクシーを駐車待機させて本件レーンを使用することを内容とする権利を,当事者の呼称に倣い「本件構内権」という。「構内権」というときはタクシーについての,一般的な同様の権利をいう。)。 ウ Eが,本件レーンの位置,範囲及び台数を都合により変更するときは,被控訴人は異議なくこれを承諾する。ただし,Eは,同変更後も,被控訴人がタクシーを常時客待ちのため駐車待機させて同レーンを使用することを認める。 エ Eは,被控訴人以外のタクシー業者から駐車待機の要請があったときはこの事実を先ず被控訴人に書面で通知し,被控訴人が当該タクシー業者と協議し,責任をもって調整解決するものとする。Eは,被控訴人からその協議の経過及び結果の報告を文書で受けるとともに,同協議結果を尊重する(この合意を以下「本件和解(1)第4項合意」という。)。 (3) その後の経過アその後間もない平成12年10月2日,控訴人らと有限会社F,G有限会社,H有限会社,有限会社Iは,Eに対し,「統一要望書」と題する書面を提出して,これら7社がタクシーを本件レーンで客待ちのため駐車待機させて本件レーンを使用することを認めるよう求めた。Eは,被控訴人に対し,本件和解(1)に基づき,上記アの事実のあったことを通知し,これを受けた被控訴人は,上記7社 本件レーンで客待ちのため駐車待機させて本件レーンを使用することを認めるよう求めた。Eは,被控訴人に対し,本件和解(1)に基づき,上記アの事実のあったことを通知し,これを受けた被控訴人は,上記7社に対し,本件和解(1)により上記アのような要請があったときは被控訴人が対応することとなったこと,上記7社の代表を決めて連絡するようにとの通知をした。(甲4ないし6)イこれに対し,上記7社は,被控訴人に対し,平成12年10月17日ころ,「本件和解(1)は被控訴人とEとの間に成立したものであって,上記7社を拘束するものではないから,上記7社はD病院の施設管理権を有するEと直接交渉を進める所存である。」旨通知し,被控訴人の上記申出に応じない態度を表明した。(甲7)ウ平成12年12月12日,a市内の中小タクシー業者から相談を受けたJ弁護士(控訴人らの本件訴訟代理人)は,Eに対し,質問書を送付した。 その要旨は,「本件和解(1)は,被控訴人以外のタクシー業者から駐車待機の要請があったときは要請の事実を被控訴人に通知する義務,被控訴人と他の業者間で協議がなされたときはその結果を尊重する義務がEにあることを定めたにすぎず,Eが被控訴人に交渉委任する趣旨であるとか,Eが被控訴人以外のタクシー業者と交渉することを禁ずる趣旨であるとは解されない。これがD病院の構内におけるタクシーの駐車待機に関して全面的に被控訴人と他の業者との協議に委ねる趣旨であるとすれば,それは業者間の談合を正面から容認し,患者等タクシー利用者の視点を欠くもので,公益団体であるEに対する社会的批判を免れない。そこで,この点に関する回答を求める。回答の内容(回答がない場合にはその事実)を一般に公表することも検討する。」というものであった。 (Y事件甲11) るEに対する社会的批判を免れない。そこで,この点に関する回答を求める。回答の内容(回答がない場合にはその事実)を一般に公表することも検討する。」というものであった。 (Y事件甲11)エ Eは,J弁護士に対し,平成12年12月20日,上記質問書に対し,回答書を送付した。 その要旨は,「本件和解(1)の第4項がD病院と被控訴人以外の他のタクシー業者が交渉することを禁ずるものであるとまでは理解していないが,他のタクシー業者からのD病院の設置したタクシー待機レーンに駐車場所を確保してほしいとの前提での交渉に応じる意思がなく,これに応じかねることは再三申し上げているとおりであり,業者間の協議の整わない現時点においては,駐車待機は被控訴人のみにとどまるとしても,利用客は他の業者のタクシーで乗り入れ,又はこれを呼び入れて構内から発車させることも自由である。」というものであった。 (Y事件甲12)オその後,「統一要望書」をEに提出した上記7社から3社が脱退し,本件レーンの駐車待機を求めるタクシー業者は,控訴人らほか1社のみとなった。脱退した3社中,G有限会社及びH有限会社は,平成13年1月26日,被控訴人に対し,D病院でのタクシー駐車待機について,調整解決を要望する旨通知した。(甲8,弁論の全趣旨)カ控訴人らは,平成13年3月28日から本件レーンにタクシーを駐車待機するようになり,被控訴人からこれを止めるよう警告されたが,本件レーンの使用を続けた。(甲9ないし12,Y事件甲19)(4) 平成14年の裁判上の和解の成立被控訴人は,同年6月18日,控訴人らとD病院の事務部長K(以下「K」という。)を被告として,Y事件の訴えを提起したが,平成14年7月2日,被控訴人とK及びE(利害関係人)と 上の和解の成立被控訴人は,同年6月18日,控訴人らとD病院の事務部長K(以下「K」という。)を被告として,Y事件の訴えを提起したが,平成14年7月2日,被控訴人とK及びE(利害関係人)との間で,裁判上の和解(以下「本件和解(2)」という。)が成立した。その内容の要旨は次のとおりであった。(記録上明らかである。)ア被控訴人とEは,本件和解(1)第4項合意を次のとおり改める。 (ア) Eは,被控訴人以外のタクシー業者から駐車待機の要請があったときは要請の事実を先ず被控訴人に書面で通知し,被控訴人が当該タクシー業者と協議し,責任をもって調整解決する。被控訴人は,Eに対し,その協議の経過・結果を文書で報告し,Eは,その協議結果を尊重しつつ,当該タクシー業者の駐車待機の可否を決定する。 (イ) 上記(ア)の協議が著しく遅延するなどして合意の成立が見込まれないとEが判断したときは,Eは,被控訴人及び当該タクシー業者と三者による協議を行った上で駐車待機の可否を決定する。 (ウ) Eは,上記(ア)の協議に応じないタクシー業者に対しては駐車待機を認めない。 (エ) Eが上記(ア)及び(イ)により駐車待機を認める被控訴人以外のタクシー業者(新規参入業者)の駐車待機台数は,7台の駐車レーン中3台以下とし,新規参入業者1台の場合は被控訴人が6台,新規参入業者2台の場合は被控訴人が5台,新規参入業者3台の場合は被控訴人が4台とする。将来タクシー待機レーンの変更等により駐車台数に増減があっても,Eは,その時点での比率を維持するよう努力する。 イ Eは,控訴人らに対するX事件の一審判決の確定又は控訴審判決の言渡日(和解による場合はその成立時,取下げ等による終了の場合にはその終了日)まで,控訴人らがタクシー待機レ するよう努力する。 イ Eは,控訴人らに対するX事件の一審判決の確定又は控訴審判決の言渡日(和解による場合はその成立時,取下げ等による終了の場合にはその終了日)まで,控訴人らがタクシー待機レーンで駐車待機することを認めない。 (5) 控訴人らの権利主張控訴人らは,被控訴人に対し,控訴人らが常時客待ちのためタクシーを駐車待機させて本件レーンを使用する権利を有すると主張している。(争いがない。) 3 争点(1) 被控訴人の本件構内権不存在確認の訴えに,訴えの利益はあるか。 (2) 控訴人らは本件構内権を有するか。 (3) 本件和解(1)及び(2)は独占禁止法に反するか。 (4) 被控訴人は,本件構内権に基づき,控訴人らに対し,本件レーンの使用の禁止を求めることができるか(予備的請求原因)。 (5) 控訴人らが常時客待ちのためタクシーを駐車待機させて本件レーンを使用した行為が不法行為を構成するか。 (6) 不法行為による損害の額 4 争点(1)(被控訴人の本件構内権不存在確認の訴えに,訴えの利益はあるか)についての当事者の主張(控訴人らの主張)(1) 被控訴人の請求は,Eと控訴人らとの権利関係につき確認を求めるものであって,被控訴人にはそのような第三者間の法律関係につき確認を求める利益はないから,訴えの利益を欠き,不適法であり,却下されるべきである。 (2) 確認の訴えは,即時確定の利益がある場合,即ち,現に訴える者の有する権利又は法律的地位に危険又は不安が存在し,これを除去するために確認判決を得ることが必要かつ適切な場合に限り許される。したがって,権利が不存在であることの確認を求める消極的確認の訴えは,権利があることの積極的確認の請求,あるいは,この権利の存在を前提とする給付請求によって有 ことが必要かつ適切な場合に限り許される。したがって,権利が不存在であることの確認を求める消極的確認の訴えは,権利があることの積極的確認の請求,あるいは,この権利の存在を前提とする給付請求によって有効かつ抜本的な解決が図れる場合には,それによるべきであって,このような場合には確認の利益を欠き,その訴えは不適法である。 これを本件についてみると,被控訴人の主張は,被控訴人は独占的に本件構内権を有しているところ,控訴人らがこれを侵害しているというものであるから,直接的に被控訴人のみが本件構内権を有することの積極的確認か,控訴人らに不作為を求める給付請求をすべきであって,控訴人らが本件構内権を有しないことの消極的確認を求めることは,不適法である。 (被控訴人の主張)(1) 確認訴訟において確認の利益が必要であり,確認判決を得ることが必要かつ適切な場合に限り許されるとすることについては異論がない。しかし,本件は,昭和54年11月1日付最高裁判決の事案とは,当事者及び権利の性質が本質的に異なる。本件において,本件構内権が問題になるのは,被控訴人とD病院との間か,控訴人らとD病院との間である。したがって,被控訴人がD病院に対して構内権の確認を求めたとしても(現時点では本件構内権を有するのが被控訴人のみであることを内容としたとしても),その判決の効力は当然には控訴人らには及ばず,D病院が控訴人らに対して何らかの法的措置をとることが可能な拘束力をもつものでもない。また,権利の内容も,上記最高裁判決のように所有権が問題になる場合とは異なり,本件では本件構内権が問題となっているのであって,その間には隔たりがあり,結局,被控訴人は,控訴人らを相手にして本件構内権の不存在確認訴訟を提起せざるを得ないのである。 (2) 所有権の帰属を争うときは 本件構内権が問題となっているのであって,その間には隔たりがあり,結局,被控訴人は,控訴人らを相手にして本件構内権の不存在確認訴訟を提起せざるを得ないのである。 (2) 所有権の帰属を争うときは,自己の権利の積極的確認を求めるべきであって,相手方の権利の消極的確認を求めるべきではないとの考え方も成り立つが,本件は,所有権の帰属が問題になっている事案ではなく,控訴人らが本件構内権を有するかどうかが問われている事案である。本件構内権に第三者に対する差止請求権が認められるかどうか不確定な状況下で紛争が生じているのであるから,正に消極的確認訴訟の絶好の対象となるべきものである。 5 争点(2)(控訴人らは,本件構内権を有するか)に関する当事者の主張(控訴人らの主張)控訴人らは,平成13年3月28日,本件レーンの使用を開始したが,Eは,何らこれを禁ずることなく,黙認した(Y事件の甲23)。このことから,Eと控訴人らとの間において,本件レーンの使用貸借に類似する無名契約が黙示的に成立したといえる。 (被控訴人の主張)控訴人らの上記主張は否認する。 6 争点(3)(本件和解(1)(2)は独占禁止法に違反するか)に関する当事者の主張(控訴人らの主張)(1) 被控訴人は,「本件和解(1)第4項合意は,よほどの理由がない限り,他の業者を参入させないことを意味している。」とし(XY両事件の甲3),また,「他のタクシー業者からの要求に対しては被控訴人が対応して,構内権の性質,被控訴人が本件構内権を取得するに至った経緯等を説明,説得して,できれば諦めさせる意図であった。」ことを明らかにしている(甲38)。 これらは,被控訴人が当初から事前協議の手続規定に過ぎない本件和解(1)第4項合意を利用して,強引に被控訴人の独占状 て,できれば諦めさせる意図であった。」ことを明らかにしている(甲38)。 これらは,被控訴人が当初から事前協議の手続規定に過ぎない本件和解(1)第4項合意を利用して,強引に被控訴人の独占状態を続けようと目論んでいたことを示すものであり,独占禁止法19条に違反する(競争者に対する取引妨害)。 (2) 本件和解(1)は,それ自体,業者間のいわゆる談合(競争制限)を容認するものとして独占禁止法違反の疑いが強い。 (3) 本件和解(2)は,事前協議に応じない業者に対しては駐車待機を認めないとする点で,いわゆる談合を強制するものであり,独占禁止法に違反しており,さらに,控訴人らを本件控訴審の判決言渡しまで本件レーンの使用から排除するものであり,競争者に対する取引妨害に該当する。 (4) 被控訴人の主張によれば,被控訴人は本件和解(1)第4項合意によって本件構内権を取得したのではないから,本件レーン全部についての独占的使用権を失うことはないこととなる。したがって,他の業者がせっかく本件構内権を得ても,被控訴人の独占権を侵害することになり,本件構内権を行使することはできない。これは明らかに取引競争者に対する取引妨害であり,独占禁止法に違反する。 (被控訴人の主張)(1) 本件和解(1)及び(2)には,控訴人らの契約成立阻止,契約不履行の誘引その他取引を不当に妨害する部分はない。 のみならず,当該行為が独占禁止法19条及びこれに基づく一般指定15項に該当するというためには,不当であること,すなわち個別に公正競争阻害性を具備することが必要である。 本件においては,①本件和解(1)及び(2)が,もともと被控訴人のみが独占的に本件構内権を有していた経緯の中で,これを他の業者にも一部開放しようとする試みであったこと,② ことが必要である。 本件においては,①本件和解(1)及び(2)が,もともと被控訴人のみが独占的に本件構内権を有していた経緯の中で,これを他の業者にも一部開放しようとする試みであったこと,②対価が存在しないこと,③複数業者が本件構内権を有することとなれば,業者間及び業者とE間の各調整が必要となること等の個別的事情が認められ,これらを考慮すると,本件和解(1)及び(2)が不当なものとは到底いえない。 控訴人らの主張は,これらの個別的事情を全く無視するものである。 (2) また,当該契約が独占禁止法に違反しても,公序良俗に違反する場合でなければ,当然に私法上無効とされるわけではない(昭和52年6月20日付最高裁判決)。 7 争点(4)(被控訴人は,本件構内権に基づき,控訴人らに対し,本件レーンの使用の禁止を求めることができるか(予備的請求))に関する当事者の主張(被控訴人の主張)本件のようなレーン使用権は,タクシー業界において,その存在がかねてより認識されており,いわば商慣習法(商法1条)として,その効力として,このような権利を有しない業者に対し使用の差止を求めることができると解される。 (控訴人らの主張)被控訴人の主位的請求と予備的請求は,両立し得るものであり,互いに排斥的な関係に立つものではなく,訴えの利益に関してもそれぞれ独立にその存否が判断できるものであるから,両請求は主位的,予備的関係にない。このような請求は,請求の基礎の同一性を欠くものであり,これを控訴審において追加することは,審級管轄(裁判所法16条,24条)に反し,不適法である。 8 争点(5)(控訴人らが常時客待ちのためタクシーを駐車待機させて本件レーンを使用した行為が不法行為を構成するか)に関する当事者の主張(被控訴人の主張 法16条,24条)に反し,不適法である。 8 争点(5)(控訴人らが常時客待ちのためタクシーを駐車待機させて本件レーンを使用した行為が不法行為を構成するか)に関する当事者の主張(被控訴人の主張)(1) 被控訴人は,昭和31年6月14日,Eとの間で,D病院の敷地の一部分につき,建物所有を目的とする土地賃貸借契約を締結し,以降,同病院敷地内において,独占的にタクシー営業ができる本件構内権を有しており,他に本件構内権をもつタクシー業者は存在しなかった。 (2) Eは,本件和解(1)において,被控訴人が本件構内権を有することを認めた。 (3) 控訴人らは,平成13年3月28日から平成14年2月28日まで,共同して本件レーンに控訴人らのタクシーを常時客待ちのため駐車待機させ,被控訴人の本件構内権を違法に侵害した。 (控訴人らの主張)(1) 被控訴人主張の本件構内権は,被控訴人だけが独占することを前提として,控訴人らがこれを侵害したと主張するものと解されるが,被控訴人がこのような本件構内権を独占するものではなく,控訴人らの行為が不法行為を構成するものではない。 (2) 本件和解(1)は,被控訴人が本件構内権を独占する趣旨のものとは解されない。このことは,その和解交渉の過程で,被控訴人が提案したが採用されなかった「被控訴人のみが常時駐車する権利を確認する」との文言や,Eから提案されたが最終的に採用されなかった「自由に待機駐車することを認める」との文言との対比(甲3の資料①ないし④,⑥)から明らかである。 (3) 控訴人らは,平成13年3月28日以降,D病院のタクシー待機レーンにそのタクシーを駐車待機させ,タクシー営業を行っている。これは,被控訴人と競合する営業行為を行っているだけであって,公正な競争行為である限り,これ 13年3月28日以降,D病院のタクシー待機レーンにそのタクシーを駐車待機させ,タクシー営業を行っている。これは,被控訴人と競合する営業行為を行っているだけであって,公正な競争行為である限り,これが被控訴人の営業妨害になることはあり得ない。 Eは,もともとD病院構内のタクシー営業につき,被控訴人以外の業者に開放する意向を持っていたのであり(甲25,26),控訴人らは,D病院院長の本件和解(1)は被控訴人に何らの法的権利を付与したものではないとの回答(乙2)や,Eの代理人弁護士の同病院のタクシー駐車レーンにおいて駐車待機を行っているのが被控訴人だけにとどまっているのは単に事実上そうなっているだけであって法的な根拠に基づくものではないとの見解(Y事件甲15,16)を確認した上で,上記のように控訴人らのタクシーを駐車待機させて営業を開始したものである。そして,このような控訴人らの行為に対し,タクシー待機レーンの設置者で施設管理権者であるEは,当初からこれを全く禁ずることなく認めており,控訴人らのタクシーが同時に3台を超えて駐車することがないよう口頭で注意を与えるのみであった(甲14,乙7)。したがって,控訴人らとEとの間には,控訴人らのタクシーが同時に3台を超えない範囲でタクシー待機レーンを無償で使用して営業をすることができる黙示的な合意が成立しており,控訴人らはこのような本件構内権を取得しているのであるから,何ら被控訴人の権利を侵害するものではない。そして,このようなEによる施設管理権の行使は,本件和解(1)による被控訴人と他のタクシー業者との間の事前の協議がもはや不可能ないし困難であることが客観的に明らかになった後に行われたものであり,このような事態を招いた責任は専ら被控訴人にあるのであるから,控訴人らには,不法行為は成立しない との間の事前の協議がもはや不可能ないし困難であることが客観的に明らかになった後に行われたものであり,このような事態を招いた責任は専ら被控訴人にあるのであるから,控訴人らには,不法行為は成立しない。 9 争点(6)(不法行為による損害の額)に関する当事者の主張(被控訴人の主張)(1) 被控訴人が控訴人らの共同不法行為によって平成13年4月1日から平成14年2月28日までの11か月間に被った損害は,次のとおりである。 ア営業損害 295万8771円控訴人らは,上記の期間中に合計2491回のタクシー営業を行ったので,その営業収入は,少なくとも315万2996円であり,この金額に燃料費割合6・16パーセントを乗じた額である19万4225円を控除した金額が被控訴人の営業損害である。 イ監視・調査費用 537万3225円被控訴人は,控訴人らの不法行為を監視・調査するため,平成13年4月に5名,同年5月から同年8月までは各2名,同年9月に8名,同年10月に4名,同年11月に3名,同年12月と平成14年1月に各2名,同年2月に1名を交代で1人ずつ常時現場に派遣し,その費用として合計261万7837円の支出を余儀なくされた。 また,控訴人らは,実力をもって客待ちのための駐車待機を強行するなどの不法行為を繰り返したので,被控訴人は,平成13年9月11日から同年12月28日まで株式会社Lに発注してガードマンを派遣させて控訴人らの不法行為を阻止せざるを得なかったが,その費用として,275万5388円の支出を余儀なくされた。 (2) 弁護士費用 83万円被控訴人は,本訴の提起及び追行を被控訴人訴訟代理人らに委任し,その費用及び報酬として,83万円の支払を約した。 (控訴人らの主張 を余儀なくされた。 (2) 弁護士費用 83万円被控訴人は,本訴の提起及び追行を被控訴人訴訟代理人らに委任し,その費用及び報酬として,83万円の支払を約した。 (控訴人らの主張)被控訴人主張の損害の算定根拠となる個々の事実は争わない。 被控訴人がしたガードマンの派遣は,不当な自力救済であるうえ,実力による競争者に対する取引妨害であり,独占禁止法19条に違反する暴挙である。この費用を控訴人らに負担させることは,違法行為の被害者に,加害者の加害に要した費用を負担させるものであり,到底許されない。 第3 争点に対する判断 1 まず,本件和解(1)成立前の経過についてみると,証拠(甲1,2,19の(1)ないし(3),20の(1)ないし(12),21の(1)ないし(6),23ないし30)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) 被控訴人の創業者であるMは,昭和27年10月25日,一般乗用旅客自動車運送事業の免許を受けてa市内でタクシー事業等を始めたが,昭和29年4月1日には被控訴人を設立して法人化し,同年6月19日には被控訴人がMの事業譲渡を受けてN陸運局長の認可を受けた。以来,被控訴人は,a市を中心にタクシー事業等を行ってきたものである。 (2) 被控訴人は,昭和31年3月24日,D病院に対し,同病院における乗客の利用状況を訴えて同病院の構内に被控訴人のためのタクシー駐車場の設置を請願し,同病院の承諾を得て,同年4月6日,N陸運局長に対し,同病院構内に被控訴人の営業所を新設することを内容とする一般乗用旅客自動車運送事業計画変更(営業所の新設)認可申請をし,同年5月12日,同認可を受けた。 そこで,被控訴人は,同年6月14日,同病院との間で,自動車サービスセンター設置のためとして, 般乗用旅客自動車運送事業計画変更(営業所の新設)認可申請をし,同年5月12日,同認可を受けた。 そこで,被控訴人は,同年6月14日,同病院との間で,自動車サービスセンター設置のためとして,次のような内容の契約をした(敷金及び権利金の授受はなかった。)。 ア設置の場所は,同病院構内玄関横の同病院が指定する場所とする。 イ使用期間は2年間とし,賃貸料は月額200円とする。 ウ必要によって同病院が撤去の要求をしたときは,被控訴人は即時無償で撤去する。 エ被控訴人は,毎日午前9時から午後6時まで自動車2両以上を常駐させ,同病院若しくは同病院に来院中の者から車の請求があった場合には,即時その要求に応じる。 オ車の要求に対して被控訴人が配車できない場合には,被控訴人は,他の業者に斡旋の労をとる。 (3) その後,上記契約は更新され,昭和54年9月1日以降使用期間は1年間とされ,昭和58年8月31日締結の契約以降,土地(71・5平方メートル)の使用は賃貸借であることが明定され,自動更新とすることが約定された。 また,その目的は,平成4年4月1日締結の契約以降「自動車サービスセンター運営のため」に,平成6年10月1日締結の契約以降は「来院者の輸送サービス提供の目的」に各改められた。賃貸料は,昭和46年9月1日以降月額3000円,昭和55年9月1日以降月額1万円,平成6年10月1日以降月額5万円に変更された。 (4) 被控訴人は,上記契約の当初から,D病院の構内にタクシー2台を常駐させ,上記土地上に待合室を建築し,昭和55年ころ,待合室兼事務室やタクシー4台が常駐できる車庫のある木造平家建営業所(合計71・50平方メートル)を新築した。 また,D病院への出入口には,駐車場が有料であるため,ゲートが ,昭和55年ころ,待合室兼事務室やタクシー4台が常駐できる車庫のある木造平家建営業所(合計71・50平方メートル)を新築した。 また,D病院への出入口には,駐車場が有料であるため,ゲートが設置してあったが,Eは,被控訴人のタクシーがゲート開閉のためにリモート・コントローラーを備え付けて無料で出入りすることを認めていた。 2 次に本件和解(2)成立前の経過についてみると,証拠(末尾に記載)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 控訴人Cの取締役O及び控訴人Aの取締役Pは,平成13年3月6日ころ,D病院のK事務部長と面談し,本件レーンへのタクシーの乗り入れを了解して欲しい旨申し入れたところ,Kから,「病院として,トラブルさえなければ関知しない。」との返答を得た。 そこで,控訴人らは,控訴人らが本件レーンにタクシーを駐車待機してこれを使用してもD病院はこれを黙認するものと判断し,同月27日,上記後根においてKに電話をかけ,翌28日からタクシーの乗り入れを開始する旨伝え,実際に同日から同使用を始めた。 (乙16)(2) 被控訴人は,控訴人らに対し,同日,D病院が控訴人らの駐車待機を承諾した事実はないと明言していること,控訴人らのこの行為は威力業務妨害罪(刑法234条)に該当すると指摘した上で,直ちに控訴人らの駐車待機を止めるよう求め,これを止めない場合には,刑事告訴すると通知した。 これに対し,控訴人らは,被控訴人に対し,同日,「Eから,本件レーンについて被控訴人のみに独占的な使用権を与えるものではないとの回答を得ており,他のタクシー業者が駐車待機をしても,被控訴人の駐車待機を不当に妨げない限り,被控訴人に対する業務妨害にはならない。同日午前11時ころ,D病院の事務部長であったKが控訴 ではないとの回答を得ており,他のタクシー業者が駐車待機をしても,被控訴人の駐車待機を不当に妨げない限り,被控訴人に対する業務妨害にはならない。同日午前11時ころ,D病院の事務部長であったKが控訴人らのタクシーの駐車待機を確認した上で,『トラブルさえなければ,当方としては何も言う立場にない。』と言明した。被控訴人が威力業務妨害罪で告訴するのであれば,控訴人らの方も虚偽告訴罪(刑法172条)で告訴せざるを得なくなる。」との記載のある回答書を送付して,その旨回答した。 (甲9ないし12,Y事件甲19)(3) 被控訴人は,Kに対し,平成13年3月29日ころ到達の書面で,「控訴人らにD病院への集客のための乗り入れを承諾・許可したことがあるか。控訴人らはKが『トラブルさえなければ,当方としては何も言う立場にない。』旨明言したと言っているが,事実か。事実とすれば,被控訴人が控訴人らの乗り入れに異を唱え,トラブルになっている現状で,控訴人らに集客のための乗り入れを許可するのか。」と質した。これに対し,Kは,被控訴人に対し,同日ころ,書面で,「控訴人らのD病院への集客のための乗り入れについては,承諾・許可・禁止をしたことはない。照会のあったような発言をしたことは事実であるが,そのトラブルとは,患者から苦情があるとか,病院の業務に支障を来すような事態を意味する。最後の照会事項については,最初の照会事項に対する回答で理解されたい。」と回答した。 被控訴人は,Kに対し,控訴人らの乗り入れの禁止を求めたが,Kは,これに応じなかった。 (甲13,14,弁論の全趣旨)(4) 控訴人らは,その後も本件レーンへのタクシー乗り入れを継続した。そこで,被控訴人は,警備会社に警備を委託し,控訴人らのこれらの行為を実力で排除する方法をとる一方, ,14,弁論の全趣旨)(4) 控訴人らは,その後も本件レーンへのタクシー乗り入れを継続した。そこで,被控訴人は,警備会社に警備を委託し,控訴人らのこれらの行為を実力で排除する方法をとる一方,Eに対し,平成13年3月31日,控訴人らの排除を求めた(甲10,Y事件甲25)。 (5) また,被控訴人は,平成13年4月3日,控訴人らを相手方として,その駐車待機の禁止と損害賠償を求める調停の申立てを山口簡易裁判所にしたが,調停成立に至らなかったため,同年5月10日,控訴人らを相手方として,山口地方裁判所に控訴人らが本件構内権を有しないことの確認を求めるX事件の訴えを提起し,さらに,同月16日,Eを相手方として,控訴人らにD病院の構内で常時客待ちのための駐車待機をさせないよう求める調停の申立てをし,その後,同年6月18日にY事件も提訴した。 (甲15,16,Y事件甲27ないし29)(6) 控訴人らの本件レーンへのタクシー乗り入れは,同年10月10日まで続いたが,その間の駐車待機は本件の7レーンのうち3レーンを超えることはなかった。その後は,同月19日及び23日にそれぞれ1台のみが乗り入れたにとどまる。 (甲41) 3 本件構内権の法的性質について上記1に認定の事実によれば,本件和解(1)が成立するまでの被控訴人とEとの法律関係は,Eが,被控訴人に土地を賃貸し,被控訴人が同土地上に建物を建てて事務所等に使用することを承諾し,一方で,被控訴人は,必要に応じてD病院の関係者や来院者に配車する義務を負うというものにとどまり,事実上被控訴人が本件レーンを独占的に使用していたことは認められるものの,それは他の業者の参入がなかったために事実上被控訴人が独占的に使用していたに過ぎず,この事実から,Eが上記独占的使用を被控 ,事実上被控訴人が本件レーンを独占的に使用していたことは認められるものの,それは他の業者の参入がなかったために事実上被控訴人が独占的に使用していたに過ぎず,この事実から,Eが上記独占的使用を被控訴人の法的権利として認め契約内容とすることまで承諾したと認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 次に,前記基礎事実に認定の本件和解(1)の内容にかんがみれば,本件和解(1)により,Eは,被控訴人がタクシーを常時客待ちのために駐車待機させて本件レーンを使用することを認め,被控訴人の使用を受忍する義務を負い,被控訴人はこれに対応する権利(前記の本件構内権)を取得したといえる。しかし,これによって,Eが,被控訴人に対し,本件レーンの上記使用を独占することを承諾し,これに他の業者を参入させないことを約束したとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。もっとも,本件和解(1)第4項合意により,Eは,被控訴人以外のタクシー業者から駐車待機の要請があったときは要請の事実を先ず被控訴人に書面で通知する義務を負ったが,これは本件レーンの使用めぐる混乱を避けるための合意と解され,これが被控訴人に独占的に使用させることを認める合意であると解されないことはその文言上明らかである。 上記に説示したところによれば,被控訴人が本件和解(1)によって取得した本件構内権は,排他性のない債権で,かつ,本件レーンの独占的使用を内容としないものであるといえる。 さらに,前記基礎事実に認定の本件和解(2)の内容にかんがみれば,本件和解(2)により,Eは,本件和解(1)の合意を前提としながらも,被控訴人と本件レーン使用を申し入れたタクシー業者との協議による合意の成立が見込まれないときはEがその可否を決定することとする一方,X事件の一審判決確定又 は,本件和解(1)の合意を前提としながらも,被控訴人と本件レーン使用を申し入れたタクシー業者との協議による合意の成立が見込まれないときはEがその可否を決定することとする一方,X事件の一審判決確定又はその控訴審判決の言渡し等まで控訴人らが本件レーンをタクシーの駐車待機のため使用することを禁止する旨合意し,この限度で,控訴人らの本件レーンの使用を排斥し被控訴人が本件レーンを独占的に使用することを認めたものと解されるが,本件構内権が排他性のない債権であることに変わりはない。 4 争点(1)(被控訴人の本件構内権不存在確認の訴えに,訴えの利益はあるか。)について①前示のとおり,本件構内権は,土地の使用を内容とする権利ではあるが,排他性のない債権であるから,その使用を妨害する者に対して妨害禁止を求めることはできないこと,②本件では,控訴人らは上記の意味での本件構内権を有することを争う訳ではなく,自らも本件構内権を有していると主張し,本件レーンをタクシー駐車待機のため使用しようとしているものであることからすると,被控訴人は,控訴人らとの間で,被控訴人の有する本件構内権の存在確認を求めても無意味であり,控訴人らが本件構内権を有しないことの確認を求める方が有効かつ適切であるといえること(最高裁昭和38年(オ)第491号昭和39年11月26日第1小法廷判決参照)の点にかんがみれば,上記訴えは,訴えの利益を有する適法なものというべきであり,この点に関する控訴人らの主張は採用できない。 5 争点(2)(控訴人らは本件構内権を有するか)について前記のとおり,控訴人らは,「控訴人らは,平成13年3月28日,本件レーンの使用を開始したが,Eは,何らこれを禁ずることなく,黙認したのであり,これにより,Eと控訴人らとの間において,本件レーンの使用貸 のとおり,控訴人らは,「控訴人らは,平成13年3月28日,本件レーンの使用を開始したが,Eは,何らこれを禁ずることなく,黙認したのであり,これにより,Eと控訴人らとの間において,本件レーンの使用貸借に類似する無名契約が黙示的に成立した。」と主張する。 なるほど,前記2に認定のとおり,Kは,同日以降控訴人らが本件レーンにタクシーを駐車待機させたのを確認したが,これを禁止しなかった上,「トラブルさえなければ,当方としては,何も言う立場にない。」と発言したこと,Kは,被控訴人から控訴人らの上記駐車待機を禁止するよう求められたが,これに応じなかったことが認められるけれども,これらの事実は,タクシー業者間の紛争に関わりたくないというD病院の姿勢を示すものにとどまり,同事実によって控訴人らの上記主張事実を認めるのは困難であり,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 したがって,被控訴人の主位的請求(控訴人らが本件構内権を有しないことの確認請求)は理由がある。 6 争点(3)(本件和解(1)及び(2)は独占禁止法に違反するか)について本件和解(1)は,Eが被控訴人に対し本件レーンの独占的使用を認めたものではないが,これにより,Eは,被控訴人以外のタクシー業者から本件レーンの使用の要請を受けたときは,まず,被控訴人にこれを通知し,被控訴人と当該業者との協議に委ねることとしており,これを当該業者からみれば,当該業者はEと本件レーン使用に関する契約締結のための交渉をただちにはできないことを意味するから,この限度で,本件和解(1)は,被控訴人に一定の優先的な地位を与え,業者間の自由な競争に一定の制約を与えるものといえる。 また,本件和解(2)では,本件和解(1)と同様,Eは,被控訴人以外のタクシー業者から本件レーンの使用の要請を受けた の優先的な地位を与え,業者間の自由な競争に一定の制約を与えるものといえる。 また,本件和解(2)では,本件和解(1)と同様,Eは,被控訴人以外のタクシー業者から本件レーンの使用の要請を受けたときは,まず,被控訴人にこれを通知し,被控訴人と当該業者との協議に委ねなければならない上,本件和解(1)とは異なり,本件のうちX事件の一審判決確定又はその控訴審判決の言渡し等まで控訴人らに本件レーンをタクシーの駐車待機のため使用させてはならない旨約束したのであり,この限度で,本件和解(2)もまた,被控訴人に一定の優先的な地位を与え,業者間の自由な競争に一定の制約を与えるものといえる。 しかしながら,①前記1に認定のとおり,被控訴人は,昭和31年以降,D病院内に営業所を設け,同病院構内にタクシーを常駐させて営業を続け,タクシー2両以上の常駐や,同病院若しくは同病院に来院中の者から求めがあった場合には,即時配車するなどの義務を課せられ,この義務を履行して,同病院の経営維持に一定の貢献をした実績があること,②本件構内権は,土地の使用を伴う権利であるから,これが競合して存在する場合には利用の調整等が必要不可欠であり,この調整が不調あるいは不完全であれば,同病院の運営管理に支障を来し混乱をもたらすおそれがあること,③前記基礎事実に認定のとおり控訴人らは被控訴人と本件レーン使用に関する協議をする姿勢を示さなかったこと等の点にかんがみれば,本件和解(1)及び(2)でまず被控訴人と利用を申し入れた業者との協議に委ねた合意や本件和解(2)でX事件の一審判決確定又はその控訴審判決の言渡し等まで控訴人らに本件レーンをタクシーの駐車待機のため使用させてはならない旨の合意は,これらが控訴人らに前記のような制約を与えることを考慮しても,一般指定(昭和57年公正取引 その控訴審判決の言渡し等まで控訴人らに本件レーンをタクシーの駐車待機のため使用させてはならない旨の合意は,これらが控訴人らに前記のような制約を与えることを考慮しても,一般指定(昭和57年公正取引委員会告示第15号)の15にいう不当な取引妨害行為に当たらないというべきである。 したがって,この点に関する控訴人らの主張は採用できない。 7 争点(4)(被控訴人は,本件構内権に基づき,控訴人らに対し,本件レーンの使用の禁止を求めることができるか)についてこの点は予備的請求の原因であるところ,前記のとおり,主位的請求が認容されたので,上記争点は判断の要がない。 8 争点(5)(控訴人らが常時客待ちのためタクシーを駐車待機させて本件レーンを使用した行為が不法行為を構成するか)前示のとおり,被控訴人は,本件和解(1)によって,Eに対して被控訴人のタクシーを駐車待機させて本件レーンを使用する権利を取得したが,この権利は,被控訴人が本件レーンを独占的に使用できる権利ではなく,他の業者との競合的使用を見込んだものであり,その点で制約を受ける権利であったこと,Kは,D病院の事務部長としてEから本件レーンの施設管理の委任を受けていた者といえるところ,控訴人らからの本件レーン使用の申し入れに対して,これを拒否する旨明言しなかった上,「トラブルさえなければD病院は関知しない。」旨回答し,控訴人らの本件レーン使用が開始された後も,これを禁止せず,事実上黙認する態度に終始したこと,控訴人らは,タクシーの駐車待機を本件レーンのうち3レーンの使用にとどめ,その余のレーンは被控訴人において使用できる状態にあったこと等の点にかんがみれば,前記2(6)に認定の控訴人らの行為によって被控訴人の本件レーンの使用が制限され,このため従前よりも営業収益が減少 ,その余のレーンは被控訴人において使用できる状態にあったこと等の点にかんがみれば,前記2(6)に認定の控訴人らの行為によって被控訴人の本件レーンの使用が制限され,このため従前よりも営業収益が減少したとしても,同行為が被控訴人の本件構内権を違法に侵害した行為であるとはいえないというべきであり,他にこれを肯認するに足りる証拠はない。したがって,この点に関する被控訴人の主張は採用できない。 9 被控訴人の本件控訴の適法性について被控訴人は原判決によって第1審におけるX事件請求及びY事件請求を全部認容されたのであるから,被控訴人の本件控訴は控訴の利益を欠き,不適法なものというべきである。被控訴人は,控訴の趣旨を「控訴人らは被控訴人に対し,……確認する。」との主文に変更することを求めるものとしているが,控訴人らに意思表示を求める給付請求でないことは被控訴人の主張から明らかであり,原判決の主文は,被控訴人の請求を一部にせよ棄却したものではないから,被控訴人の申立ては失当である。さらに被控訴人は,この点について,原判決の理由中の事実認定に不服があると主張するが,このような不服によって控訴の利益を肯定することはできない。また,被控訴人は,当審において,前記「被控訴人の控訴の趣旨」第2項に記載の予備的請求を追加したが,一般に控訴審における請求の追加は附帯控訴によってすべきものであるから,上記請求の追加をしたことにより被控訴人の本件控訴が適法なものに転換したということもできない。 10 結論よって,被控訴人のその余の主張について判断するまでもなく,被控訴人の請求は,原判決主文第1項の限度で理由があり,その余は理由がないから,原判決主文第2項を取り消して,被控訴人の同取消にかかる請求を棄却し,控訴人らの本件控訴中その余の部分を棄却し,被控 ,被控訴人の請求は,原判決主文第1項の限度で理由があり,その余は理由がないから,原判決主文第2項を取り消して,被控訴人の同取消にかかる請求を棄却し,控訴人らの本件控訴中その余の部分を棄却し,被控訴人の本件控訴は不適法であるから,これを却下することとし,訴訟費用の負担につき民訴法67条2項,61条,64条,65条1項本文をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第3部裁判長裁判官下司正明裁判官能勢顯男裁判官齋藤憲次原判決主文 主文 1 原告と被告らの間において,被告らがそのタクシーをa市b町c番地所在のD病院敷地内に設置されたタクシー待機レーンに常時客待ちのため駐車待機させる権利を有しないことを確認する。 2 被告らは各自原告に対し,916万1996円及び内金167万9002円に対する被告A,同Cについては平成13年6月24日から,被告Bについては同月26日から,内金748万2994円に対する平成14年7月26日から支払ずみまで年5分の割合による金銭を支払え。 3 訴訟費用は,XY両事件とも被告らの負担とする。 4 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。

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