- 1 - 主文被告人を懲役15年に処する。 未決勾留日数中250日をその刑に算入する。 京都地方検察庁で保管中の包丁1本(領置番号省略)を没収する。 理由【罪となるべき事実】被告人は、令和3年11月24日午前1時29分頃、京都府向日市A町BC番地D被告人方前付近において、被告人方の真下の部屋に住んでいたE(当時52歳。)から被告人が立てた騒音を理由に怒鳴り込まれて言い争いをする中で激高し、殺意をもって、Eの左腹部を、手に持っていた刺身包丁(刃体の長さ約21.5センチメートル。領置番号省略。以下「本件包丁」という。)で1回突き刺し、よって、同日午前3時26分頃、搬送先のF病院において、同人を腎動静脈損傷による出血性ショックにより死亡させて殺害した。 【証拠の標目】(略)【事実認定の補足説明】1 争点被告人の自宅にあった本件包丁がEの左腹部に刺さり、これによりEが死亡したことに争いはなく、間違いなく認められる。弁護人らは、被告人が、本件包丁でEの左腹部をわざと突き刺したことが間違いないとはいえないから、殺人の実行行為と殺意は認められず、被告人は無罪であると主張する。したがって、本件の争点は、被告人が殺意をもって殺人の実行行為に及んだかである。 2 争点に対する判断Eに生じた刺創は、本件包丁がEの左腹部にほぼ垂直に刺さり、第8、第9肋骨を切開しながら、左背部まで貫通するほぼ直線状の傷であるから、かなり強い力で意図的に突き刺したものであることが相当程度推認される。また、近隣住民のGや - 2 - Hの供述等によると、本件包丁がEに刺さる直前、被告人とEは大声で口論をしていたことが認められるから、被告人がEに本件包丁を突き刺すこともあり得る状況であったといえる。そして、近隣住民のGやIの供述 Hの供述等によると、本件包丁がEに刺さる直前、被告人とEは大声で口論をしていたことが認められるから、被告人がEに本件包丁を突き刺すこともあり得る状況であったといえる。そして、近隣住民のGやIの供述等によると、被告人は、通路に座り込んだEが出血していたにもかかわらず、そのことに驚くことなく、Eへの怒りをあらわにしていたことが認められるから、被告人にとってEの負傷は想定外の出来事でなかったと推認される。 これらのことからすると、被告人がわざとEの左腹部を強い力で突き刺したことが強く推認される。 弁護人らは、偶然の事故により本件包丁がEに刺さった可能性やEが自殺した可能性を主張し、被告人は、本件包丁がEに刺さった経緯は分からないが、Eが自殺したと考えられる旨供述する。 しかしながら、Eが本件以前に自殺を考えていた形跡はなく、被告人と言い争いをしていたEが、唐突に自殺を決意するとは考えられない。Eが自殺した可能性は常識に照らして考えられない。被告人の供述は、本件包丁がEに刺さる直前、直後の状況について、近隣住民の供述と相容れない上、被告人が本件包丁を手にしてから本件包丁がEに刺さるまでの経緯が曖昧かつ不自然であって、信用することができない。また、偶然の事故により、Eの身体を貫通する程の強い力がかかるとは考えにくい。例えば、Eと被告人が本件包丁を奪い合ったとした場合、Eが自分の左腹部に刃先が向くような奪い方をしたとは考えにくいし、仮にそのような奪い方をしたとしても、そのまま自分の体に垂直に本件包丁が突き刺さり、体を貫通してしまうとは常識に照らして考えられない。 以上より、被告人がわざとEの左腹部を本件包丁で強く突き刺したことは間違いなく認められる。そして、このことは、被告人が人の死亡する危険性の高い行為を、そのような行為であると分か て考えられない。 以上より、被告人がわざとEの左腹部を本件包丁で強く突き刺したことは間違いなく認められる。そして、このことは、被告人が人の死亡する危険性の高い行為を、そのような行為であると分かりつつ及んだことを意味するから、被告人は殺意をもって殺人の実行行為に及んだと認められる。 【法令の適用】 - 3 - 罰条 刑法199条刑種の選択 有期懲役刑未決勾留日数の算入 刑法21条没収 刑法19条1項2号、2項本文訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書【量刑の理由】被告人は、被害者の左腹部を、鋭利な刺身包丁で肋骨を切りながら背中まで貫通させる強い力で1回突き刺しており、生命侵害の危険性が非常に高い犯行である。 突然命を奪われた被害者の無念さは察するに余りある。 被告人は、深夜に断続的に騒音を立てたことから被害者に怒鳴り込まれ、言い争う中で激高して突発的に犯行に及んでいる。耳の遠いことなどが影響し、被告人が自分の立てた騒音を騒音と思わなかった可能性のあることや、元々関係性の悪かった被害者に怒鳴り込まれたことが被告人の興奮を増長した面はある。しかし、被告人は、被害者が来てからごく短時間で犯行に及んでいる上、口論から刃物を持ち出して被害者を突き刺すということには大きな飛躍がある。したがって、被害者に怒鳴り込まれたことを理由に、被告人が犯行に及んだことへの非難を弱めることはできない。 以上を踏まえ、被告人がした罪の重さを検討すると、同種事案(けんかに起因する刃物類を用いた殺人1件の単独犯の事案)の中でやや重い部類といえる。 その他の調整要素について見ると、被告人に前科はなく、高齢であるとはいえ、反省の態度が見られない。被告 同種事案(けんかに起因する刃物類を用いた殺人1件の単独犯の事案)の中でやや重い部類といえる。 その他の調整要素について見ると、被告人に前科はなく、高齢であるとはいえ、反省の態度が見られない。被告人は荒唐無稽な弁解に終始しており、自らの犯した罪と向き合うことが全くできていない。 以上より、被告人に対しては、主文の刑を科すのが相当であると判断した。 (求刑 懲役20年、主文掲記の没収)令和4年12月14日京都地方裁判所第3刑事部 - 4 - 裁判長裁判官 安永武央 裁判官 村川主和 裁判官 大野友己
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