主文 本件各控訴を棄却する。理由 本件各控訴の趣意は、被告人Aの弁護人稲村建一、被告人Bの弁護人宇都宮晴子、被告人Cの弁護人浅見昭一各提出の控訴趣意書に、これに対する答弁は検察官中村利彦作成名義の答弁書にそれぞれ記載するとおりであるから、ここに、いずれもこれを引用するが、これに対する当裁判所の判断は、次のとおりである。被告人Aの弁護人稲村建一の控訴趣意について、控訴趣意第一点事実誤認若しくは法令違反の主張について、所論は、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律(以下狩猟法という)一六条後段の規定は、人畜に対し具体的危険のある銃猟行為を禁止した趣旨と解すべく、被告人Aのした本件銃猟行為は右の如き具体的危険のない行為であるばかりか、原判示Dは狩猟の際におけるいわゆる勢子の関係にある者で、同条後段にいう人畜に含まれないものと解すべく、従つて同被告人がDに向つて原判示の距離をおいて散弾銃を発射したとしても、同条後段違反の罪に当らないものというべく、しかも、同被告人は仰角約八〇度の角度で発砲したものであるから、Dが同被告人の前方約八八メートルの地点にいたとしても、Dに対しては何ら具体的危険性は及ばないものであり、同被告人の本件行為は罪とならないものというべく、仮に同被告人の本件散弾銃発射行為が危険性のある行為であるとしても、同被告人は本件の具体的状況の下において全く危険はないものと考えて本件行為に及んだものであるから、同被告人には故意がない、というのである。<要旨>然し、狩猟法一六条は、「日出前若ハ日没後、市街其ノ他人家稠密ノ場所若ハ衆人群集ノ場所」における銃</要旨>猟行為(同条前段)又は「銃丸ノ達スヘキ虞アル人畜、建物、汽車、電車若ハ艦船二向テ」する銃猟行為(同条後段)を禁止したものであり、同条 街其ノ他人家稠密ノ場所若ハ衆人群集ノ場所」における銃</要旨>猟行為(同条前段)又は「銃丸ノ達スヘキ虞アル人畜、建物、汽車、電車若ハ艦船二向テ」する銃猟行為(同条後段)を禁止したものであり、同条後段の禁止行為はその前段の禁止行為と同一趣旨に出たものであり、その前段の規定が、一定の時刻、場所において人畜等に危険の及ぶ虞れのある銃猟行為を禁止している趣旨に鑑みれば、それは具体的危険の有無を問わず、同条前段所定の禁止行為が抽象的、一般的に人畜等に危険を及ぼす虞れがあるものとして一切これを禁止しているものというべく、従つて、これと趣旨を同じくする同条後段の規定も銃丸の達すべき虞れのある人畜、建物、汽車、電車若しくは艦船に向つてする銃猟行為一切を、その行為の当該具体的状況のもとにおける具体的危険の有無を問わず、禁止したものと解するのが相当である。 る趣旨に鑑みれば、それは具体的危険の有無を問わず、同条前段所定の禁止行為が抽象的、一般的に人畜等に危険を及ぼす虞れがあるものとして一切これを禁止しているものというべく、従つて、これと趣旨を同じくする同条後段の規定も銃丸の達すべき虞れのある人畜、建物、汽車、電車若しくは艦船に向つてする銃猟行為一切を、その行為の当該具体的状況のもとにおける具体的危険の有無を問わず、禁止したものと解するのが相当である。さらに、これを詳言すれば、同条前段で禁止されている時刻、場所における銃猟行為は、それ自体において人畜等に危険の及ぶ虞れのある行為としていわゆる抽象的危険犯と解すべきことは明らかであるから、同条後段をこれと別異に解して、特に具体的危険のある場合に限りそこにいう銃猟行為を禁止したものと解することは、特に条文においてその趣旨の示されない以上、とうてい正当な解釈とは認められないのである。そして、銃猟行為自体もともと人畜等に対し危険を伴う行為であるから、銃猟行為の許される期間、場所における銃猟行為であつても、狩猟法は、特に、一六条に掲げる時刻、場所等における銃猟行為は、その行為自体特に人畜等に危険の及ぶ虞れの高い行為として、これを禁止しているのであり、同条後段の規定をこのように抽象的危険犯と解したからといつて、これを官憲の恣意的判断を許す拡張解釈ということはできず、右一六条が人畜等に危険の及ぶ虞れの高い行為を禁 して、これを禁止しているのであり、同条後段の規定をこのように抽象的危険犯と解したからといつて、これを官憲の恣意的判断を許す拡張解釈ということはできず、右一六条が人畜等に危険の及ぶ虞れの高い行為を禁止したことは、公共の福祉を保持するためのもとより必要な措置というべく、違憲のそしりを受けるものとは考えられない。次に、所論は、原判示Dは狩猟の際におけるいわゆる勢子の役目を勤めたもので、勢子その他の狩猟関係者は右一六条にいう人畜に当らないというが、Dが所論の如く勢子の役目を勤めたとしても、同人に銃丸の達すべき虞れのある方向に向つて散弾銃を発射して銃猟行為をする以上、やはりそれは右一六条後段の禁止行為に当るものというべく、勢子その他の狩猟関係者を同条後段の人から特に除外すべき理由は毫も見出せないのであるから、この点の所論は独自の見解というべきである。また、所論は、被告人Aが仰角約八〇度の角度で発砲したことをもつて、Dが同被告人の前方約八八メートルの場所にいたとしても、Dに対し何ら銃丸による危険を及ぼす虞れはなかつた、というか、同被告人が、その使用した散弾銃の銃丸の最大射程距離の範囲内である約八八メートル前方に右Dがいたのに、その方向に向つて散弾銃を発射したことが、証拠上認められる本件においては、その発射角度の如何、すなわち具体的危険の有無を論ぜず、一六条後段の禁止行為に当るものと解すべきことは、既に述べたところがら明らかなところであり、所論は、独自の見解に依拠して具体的危険の有無を問題とするもので、採用の限りでない。 、同被告人が、その使用した散弾銃の銃丸の最大射程距離の範囲内である約八八メートル前方に右Dがいたのに、その方向に向つて散弾銃を発射したことが、証拠上認められる本件においては、その発射角度の如何、すなわち具体的危険の有無を論ぜず、一六条後段の禁止行為に当るものと解すべきことは、既に述べたところがら明らかなところであり、所論は、独自の見解に依拠して具体的危険の有無を問題とするもので、採用の限りでない。さらに、所論は、同被告人において本件銃猟行為について危険性の認識がなく、故意を欠く、というが、狩猟法一六条後段違反の罪の成立について具体的危険の存在することの認識を必要としないことは、その罪が前記の如く抽象的危険犯と解する以 て本件銃猟行為について危険性の認識がなく、故意を欠く、というが、狩猟法一六条後段違反の罪の成立について具体的危険の存在することの認識を必要としないことは、その罪が前記の如く抽象的危険犯と解する以上当然であるから、この点の論旨も理由がない。以上の次第でこの点の論旨はすべて理由がない。同第二点理由不備、理由そご及ひ法令違反の主張について、所論は、被告人Aの本件散弾銃発射の発射角度について、原判決は「水平よりやや上向き」と認定した趣旨と解されるが、この点についての原判決の示す証拠は不備である、というのである。然し、原判決は、同被告人の本件発射行為における発射角度については、何ら認定判示していないのであり、所論は、狩猟法一六条違反行為が具体的危険犯であることを前提として、原判決に副わない主張をするものでいずれも前提を欠き、とうてい理由がない。被告人Bの弁護人宇都宮晴子の控訴趣意について、控訴趣意一、二点事実誤認及ひ訴訟手続の法令違反の主張について、所論は、被告人Bの司法警察員に対する供述調書及び司法警察員作成の実況見分調書中被告人の指示部分は、任意性に疑いがあるのに拘らず、これを証拠として採用したことは、訴訟手続の法令違反があり、同被告人は本件現場において散弾銃を発射して銃猟をした事実がないのに、同被告人に対し原判示の事実を認定したことは、事実を誤認したものである、という。所論に鑑み、記録を検討してみるのに、被告人Bの司法警察員に対する供述調書が、所論の如く任意になされたことについて疑いを容れるものであるとは、とうてい認められない。本件において捜査に当つた司法警察員Eの実況見分調書の作成並びに同被告人らから任意提出させ領置した同被告人ら所有の散弾銃の領置手続に妥当を欠くもののあつたことは、所論指摘のとおりであり、また、同 たことは、事実を誤認したものである、という。所論に鑑み、記録を検討してみるのに、被告人Bの司法警察員に対する供述調書が、所論の如く任意になされたことについて疑いを容れるものであるとは、とうてい認められない。本件において捜査に当つた司法警察員Eの実況見分調書の作成並びに同被告人らから任意提出させ領置した同被告人ら所有の散弾銃の領置手続に妥当を欠くもののあつたことは、所論指摘のとおりであり、また、同 い。本件において捜査に当つた司法警察員Eの実況見分調書の作成並びに同被告人らから任意提出させ領置した同被告人ら所有の散弾銃の領置手続に妥当を欠くもののあつたことは、所論指摘のとおりであり、また、同司法警察員において、同被告人らに対し反省の情が認められるとして、事件を検察官に送致するに際ししかるべき処分たとしても、そのことの故に、同被告人の同司法警察員に対する供述が、所論の如く偽計又は約束による自白に準じ、証拠能力を欠くものといえないのはもとより、同被告人は同司法警察員に対し、鳩を撃つため最初に二発、一、二分おいてさらに一発、散弾銃を発射した旨供述し、該調書を読み聞かされて署名したことは同被告人も原審公判廷で認めているところであるから、同被告人としては内容も判らず司法警察員に対し調書を作成されたという主張も、筋が通らないものである。そして、同被告人の右司法警察員に対する供述調書、原審第四回公判廷における証人Dの供述調書(同証人は、現場において鳩を飛び立たせた後、五、六発の銃声を聞いているというのであり、そのうちの二発の銃声はA、Cが各一発発射したものと認められるので、当時、同所で他に三、四発発射した者の存在したことを認めることができる)等によれば、被告人Bが原判示場所において原判示の如く散弾銃を発射した事実を優に認定できるものというべく、記録を精査してみても、原判決の同被告人に対するこの点の事実認定に誤認を疑うべきかどはない。論旨は理由がない。同第三、四点法令違反の主張について、所論は、原判決が、被告人Bの射角を問わず、最大射程距離内にある建物に向つて散弾銃を発射すれば、具体的危険の有無に拘らず、狩猟法一六条後段の規定に違反すると解した点において、同法の解釈を誤つた違法があり、同違反罪が成立するためには、射角等を明らかにし、具体 る建物に向つて散弾銃を発射すれば、具体的危険の有無に拘らず、狩猟法一六条後段の規定に違反すると解した点において、同法の解釈を誤つた違法があり、同違反罪が成立するためには、射角等を明らかにし、具体的危険の有無を論ずべきである、という。 れば、具体的危険の有無に拘らず、狩猟法一六条後段の規定に違反すると解した点において、同法の解釈を誤つた違法があり、同違反罪が成立するためには、射角等を明らかにし、具体 る建物に向つて散弾銃を発射すれば、具体的危険の有無に拘らず、狩猟法一六条後段の規定に違反すると解した点において、同法の解釈を誤つた違法があり、同違反罪が成立するためには、射角等を明らかにし、具体的危険の有無を論ずべきである、という。狩猟法一六条後段の規定に違反する罪が抽象的危険犯と解すべきことは、既に、被告人Aの弁護人の控訴趣意第一点において説明したとおりであり、被告人Bの使用に係る散弾銃の銃丸の達すべき虞れのある建物に当る原判示建物が、その散弾銃の射程距離内である前方約一五六メートルのところにあるのに、同被告人がその建物の方に向つて散弾銃を発射して銃猟をした以上、その射角等の如何を問わず、同条後段違反罪が成立するのであり、原判決には所論の如き法令違反のかどは存しない。論旨は理由がない。次に、所論は、同被告人は人家にあたらぬよう留意して方角をきめ、射角を大にして撃とうとしていたのであるから、本件は可罰的違法性がない、というのであるが、前記の如く狩猟法一六条後段の規定は人畜等に危険の及ぶ虞れのある銃猟行為の一切を禁止しているものと解すべきであるから、たとえ同被告人が所論の如き注意を払い、散弾銃を発射じて銃猟したとしても、それ故に可罰的違法性を欠き罪とならない行為である、と解することは許されない。論旨は理由がない。被告人Cの弁護人浅見昭一の控訴趣意について、控訴趣意第一点理由不備又は理由そごの主張について、所論は、原判決は、被告人Cが、前方約一三八メートルにDがいるのに、その方向に向つて散弾銃を発射して銃猟をしたとして、同被告人を処罰しているのであるが、同被告人の使用した散弾銃による七、八号の散弾の獲物に対する危険距離を含めてみても、有効射程距離はせいぜい五〇メートルであつて、Dの存在していた場所は、最大射程距離内にはある 罰しているのであるが、同被告人の使用した散弾銃による七、八号の散弾の獲物に対する危険距離を含めてみても、有効射程距離はせいぜい五〇メートルであつて、Dの存在していた場所は、最大射程距離内にはあるが、有効、危険距離の範囲外であり、同被告人の本件所為は、Dに対し危険を与える範囲外の行為というべく、原判決が最大射程距離と有効射程距離とを区別せず、同被告人の原判示所為を狩猟法一六条後段の規定に違反するとしたのは、理由不備又は理由そごの違法がある、という。 る七、八号の散弾の獲物に対する危険距離を含めてみても、有効射程距離はせいぜい五〇メートルであつて、Dの存在していた場所は、最大射程距離内にはあるが、有効、危険距離の範囲外であり、同被告人の本件所為は、Dに対し危険を与える範囲外の行為というべく、原判決が最大射程距離と有効射程距離とを区別せず、同被告人の原判示所為を狩猟法一六条後段の規定に違反するとしたのは、理由不備又は理由そごの違法がある、という。然し、狩猟法一六条後段の禁止する銃猟行為は、銃丸の達すべき虞れのある建物等に向って銃猟する行為であり、同条の趣意に鑑みれば、銃丸の達すべき虞れとは、所論のごとくその銃丸に適応する獲物を射獲できる標準的な射程であるいわゆる有効射程距離をいうものではなく、その銃丸の到達すべきいわゆる最大射程距離をいうものと解すべく、そして、原審第八回公判調書中の証人Fの供述記載によれば、散弾銃の最大射程距離内にある人畜に銃丸が当れば、人畜に危険を与える虞れのあることが認められるのであるから、原判決が、被告人Cの使用した散弾銃の銃丸の最大射程距離内である前方約一三八メートルの所に原判示Dがいたのに、同被告人がその方向に向けて散弾銃を発射して銃猟をした行為を、右一六条後段の規定に違反するとして処断したことに、所論の暇疵はない。論旨は理由がない。同第二点法令違反の主張について、所論は、狩猟法一六条後段の規定の禁止する行為は人畜等に実質的に危険を及ぼす範囲内の行為であることを要するところ、被告人Cの使用した散弾銃による銃丸の最大射程距離は約二〇〇メートルであるが、この最大射程距離では人畜に到達しても人畜に危険を及ぼすものではないから、同被告人の本件行為は右一六条後段の禁止行為に当らない、というのである。然し 丸の最大射程距離は約二〇〇メートルであるが、この最大射程距離では人畜に到達しても人畜に危険を及ぼすものではないから、同被告人の本件行為は右一六条後段の禁止行為に当らない、というのである。然し、狩猟法一六条後段の規定の禁止する銃猟行為については、既に同弁護人の論旨第一点において説明したとおりであつて、所論は、独自の見解というへく、採用できない。論旨は理由がない。同第三点事実誤認の主張について、所論は、原判示Dは獲物の狩り出し役であり、競猟の場合のハンター相互間には、銃猟は「許された危険」として行為の違法性を阻却するものと解すべきであるのに、原判決は、Dが獲物の狩り出し役である事実を誤認し、同被告人の本件所為を有罪としたもので、原判決はこの点において判決に影響を及ぼすべきことの明らかな事実誤認がある、という。 見解というへく、採用できない。論旨は理由がない。同第三点事実誤認の主張について、所論は、原判示Dは獲物の狩り出し役であり、競猟の場合のハンター相互間には、銃猟は「許された危険」として行為の違法性を阻却するものと解すべきであるのに、原判決は、Dが獲物の狩り出し役である事実を誤認し、同被告人の本件所為を有罪としたもので、原判決はこの点において判決に影響を及ぼすべきことの明らかな事実誤認がある、という。然し、狩猟法一六条後段の規定にいう人の中にいわゆる勢子としての狩り出し役を勤める猟仲間を除外すべき理由のないことは、既に被告人Aの弁護人の控訴趣意第一点において説明したとおりであり、猟仲間に向つての銃猟行為が、所論の如くいわゆる「許された危険」として違法性を欠く、というが如きは、とうてい賛同することのできない見解というべく、所論は既にその前提において採るを得ず、論旨は理由がない。よつて、本件各控訴は、いずれもその理由がないので、刑訴法三九六条に則り本件各控訴を棄却することとし、当審における訴訟費用は、同法一八一条一項但書により、いずれも被告人に負担させないこととして、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官荒川正三郎裁判官谷口正孝裁判官時國康夫) 谷口正孝 裁判官 時國康夫
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