令和5年(ワ)第356号名誉毀損慰謝料等請求事件 判決 主文 1 被告は、原告に対し、33万円及びこれに対する令和5年9月28日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、これを10分し、その9を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は、原告に対し、330万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告に対し、⑴宇陀市のホームページから宇陀市政治倫理審査会による令和5年2月24日付答申を削除するとともに、⑵「広報うだ」の1頁全面に別紙記載の謝罪文を1回、⑶宇陀市のホームページのトップページに別紙記載の謝罪文を1年間掲載せよ。 第2 事案の概要 1 本件は、原告が市職員に対して恫喝・尋問・強要・軟禁行為をし、被告の市長に対して恫喝行為をした旨を、被告の市長が記者会見で公表し、原告による上記各行為に対する政治倫理審査会の答申内容を公表したことにより、原告の名誉が毀損されたとして、原告が被告に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償金330万円(慰謝料300万円、弁護士費用30万円)及びこれに対 する訴状送達の日の翌日である令和5年9月28日から支払済みまで民法所定 の年3%の割合による遅延損害金の支払並びに民法723条に基づく名誉回復処分として、同答申の削除及び謝罪文の掲載を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)(1) 当事者等 被告は、 処分として、同答申の削除及び謝罪文の掲載を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)(1) 当事者等 被告は、普通地方公共団体であり、宇陀市長A(以下「被告市長」という。)は、令和2年6月28日の宇陀市長選挙において当選して以降、現在まで市長の職にある。原告は、平成26年4月27日の宇陀市議会議員選挙にて初当選し、現在まで宇陀市議会議員の職にある。 (2) 本件に至る経緯 ア原告と農林商工部長との会話内容等原告は、令和4年9月7日、本会議終了後の午後2時ごろ、宇陀市議会図書室において、同年6月の宇陀市議会第2回定例会に提出されながら撤回された「宇陀市の公の施設の指定管理者の指定について(宇陀市榛原駅前交流施設に係るもの)」という議案(以下「本件議案」という。)を担当 する農林商工部の部長であったB(以下「B部長」という。)と面談し、本件議案が撤回されるに至る過程について質問をした(以下「本件行為1」という。)。 イ原告の被告市長に対する発言原告は、令和4年9月20日、宇陀市議会本会議終了後、被告市長に対 し「喧嘩をうってるんですか。」又は「喧嘩をうってんのか」と発言した(以下「本件行為2」といい、本件行為1と併せて「本件各行為」という。)。 ウ被告市長による公表行為被告市長は、令和4年10月19日、宇陀市役所において、記者会見を行い、宇陀市政治倫理審査会へ本件各行為についての諮問書の提出を行う こと及び下記内容を公表した(以下「本件公表1」という。)(甲1)。本件 公表1を受けて、日刊紙5紙により「市議が市幹部恫喝か」などの見出しで報道がされたところ、うち3紙は原告の氏名を実名で報道するものであ を公表した(以下「本件公表1」という。)(甲1)。本件 公表1を受けて、日刊紙5紙により「市議が市幹部恫喝か」などの見出しで報道がされたところ、うち3紙は原告の氏名を実名で報道するものであった(甲4)。 記① 令和4年9月7日13時50分頃から14時15分頃までの間に、議 会図書室において、原告宇陀市議会議員により宇陀市農林商工部長への恫喝・尋問・強要・軟禁行為があった。 ② 9月20日の市議会本会議でC副議長への市長答弁の中で、原告議員の名前を出したことに対する報復なのか、議会終了直後に議場で市長に詰め寄り、大きな声で「喧嘩うってんのか」と恫喝した。 エ同日、被告市長は、本件各行為が、宇陀市政治倫理条例4条の政治倫理基準に抵触するとして、同条例7条2項3号に基づき、宇陀市政治倫理審査会に諮問し、令和5年2月24日に、同審査会によって、上記諮問に対する答申(以下「本件答申」という。)がされた(甲2)。その答申書には、要旨、下記のとおりの記載がある。 記本件各行為は、いずれも宇陀市政治倫理条例4条1項1号(市民全体の代表者として、品位と名誉を損なうような一切の行為を慎み、その職務に関し不正の疑惑を持たれるおそれのある行為をしないこと)に違反する。 すなわち、本件行為1は、恫喝行為には至らないものの、倫理上問題があ ると考えられる程度の詰問行為・強要行為に該当し、議員としての品位を損なうものである。本件行為2は、倫理上問題があると考えられる程度の不適切な発言であり、議員としての品位に欠ける行為である。 オ同日、被告市長は、宇陀市役所において、記者会見を行い、記者らに対し、本件答申の内容を公表し、次いで被告ホームページにも本件答申を掲 載し、その内容を公表した(以下「本件公表2」という オ同日、被告市長は、宇陀市役所において、記者会見を行い、記者らに対し、本件答申の内容を公表し、次いで被告ホームページにも本件答申を掲 載し、その内容を公表した(以下「本件公表2」という。)。 3 争点(1) 本件公表1及び本件公表2(以下「本件各公表」という。)の違法性(争点1)(2) 本件各公表によって生じた損害額(争点2)(3) 名誉回復処分の必要性及びその方法(争点3) 4 争点に対する当事者の主張(1) 本件各公表の違法性(争点1)(原告の主張)ア被告市長自らが、単独で市民と同様の調査権を行使するような方法で政治倫理審査会に諮問を行うことは違法である。被告市長は、原告のB部長 に対する質問行為が「恫喝・尋問・強要・軟禁」にあたらないことを容易に判断できたはずであり、そのような行為に対する諮問は違法である。 また、政治倫理審査会の委員は、被告市長から諮問がされた後に選任されており、選任手続において中立性、公平性を担保できない重大な手続的瑕疵があるため、被告市長の諮問はこの点においても違法である。 よって、これらの違法な諮問を公表する行為及び諮問の答申を公表する本件各公表は、当然に違法となる。 イ諮問行為が違法とはいえない場合であっても、行政機関の公表行為は、公表目的の正当性、公表内容の性質、その真実性、公表方法・態様、公表の必要性と緊急性等を踏まえて、公表することによる利益と公表すること による不利益とを比較衡量し、その公表が正当な目的のための相当な手段といえるかどうかを検討すべきであり、公表によってもたらされる利益があったとしても、生じる不利益を犠牲にすることについて正当化できる相当な理由がなければ違法となる。 (ア) 本件各公表の目的は、原告への口封 どうかを検討すべきであり、公表によってもたらされる利益があったとしても、生じる不利益を犠牲にすることについて正当化できる相当な理由がなければ違法となる。 (ア) 本件各公表の目的は、原告への口封じのためなされたものであると 推認できるものであり、これは正当な目的とはいえない。公表内容は、 原告が刑法犯罪に該当する行為をしたというもの(本件公表1)や、議員としての品位に欠けるというもの(本件公表2)であり、その真偽の如何を問わず原告の名誉権に打撃を与える性質の内容であった。それにもかかわらず、被告市長は公表内容の真実性について慎重な検討をしないまま、影響力が甚大な記者会見を実施しており、本件各公表はその存 否が定かでない段階でこれを公表する必要性や緊急性があるものとはいえなかった。 (イ) 原告は、B部長に対し、「恫喝・尋問・強要・軟禁」にあたる行為をしておらず、本件行為1は、無施錠の市議会図書室において、他議員の同席のもと、本件議案が撤回に至るまでの事情を調査するために同部長 と短時間に平穏な態様でなされていたものにすぎない。 令和4年9月20日、原告は、宇陀市議会において、被告市長に対し「喧嘩をうっているんですか。」と言ったものの、これは被告市長が、公の場において、あたかも原告が被告市職員に対して違法行為を働いたかのような発言をしたことに驚き、本会議終了後、被告市長へ真意を聞こ うと問いかけたところ、「話をすることがない。」と無視されたために出た発言であり、本件行為2は「恫喝」にあたらない。 (ウ) このような事情に照らせば、本件各公表は、正当な目的のための相当な手段といえず、違法である。 (被告の主張) ア被告市長は、B部長が原告から恫喝を受けたとの報告及びその際の会話の録音を聞き ような事情に照らせば、本件各公表は、正当な目的のための相当な手段といえず、違法である。 (被告の主張) ア被告市長は、B部長が原告から恫喝を受けたとの報告及びその際の会話の録音を聞き、そのうえで議会での解決を望み、令和4年9月9日に正副議長に対し、状況の報告を行った。そして、議長が事実確認を行うため、原告に対し事情聴取を試みたもののこれを拒まれたことから、同月20日に市議会全員協議会が開催されたが、その場でも原告は、「覚えていない」 と繰り返したため、正副議長から「事実確認、解決が議会ではできない」 との報告を受けた。そのため、被告市長は、原告の行為が政治倫理上問題であると考え、宇陀市政治倫理条例第7条2項3号に基づいて諮問を行ったものであり、これは適法な諮問である。また、宇陀市政治倫理審査会の委員の選任を実際に行うのは被告の市職員であり、被告市長ではないため、諮問において中立性、公平性を担保できない重大な手続的瑕疵があったと はいえない。 イ本件公表1を行った目的は、市民への情報提供にあり、現職市議会議員の行為が、政治倫理上問題があったか否かという、市民が関心を有する事項であり、公表の目的は正当なものである。加えて、宇陀市政治倫理条例では、審査会の会議が原則公開とされている以上、諮問を行うことを、事 前に公表する必要性がある。そして、原告が「恫喝・尋問・強要・軟禁」と評価されてもおかしくない行動をしていたことからすれば、公表内容も真実であるといえ、これが市民の重大な関心事であることに照らせば、記者会見という公表方法も相当である。 本件公表2についても、あくまで答申内容をそのまま公表したものであ るためその内容は真実であるし、政治倫理審査会の答申結果が市民の重大な関心事であることに照ら 見という公表方法も相当である。 本件公表2についても、あくまで答申内容をそのまま公表したものであ るためその内容は真実であるし、政治倫理審査会の答申結果が市民の重大な関心事であることに照らせば、記者会見という公表方法も相当である。 以上より、本件各公表は、正当な目的のための相当な手段にて行われたものであり、違法な公表とはいえない。 ⑵ 本件各公表によって生じた損害額(争点2) (原告の主張)原告は、被告市長の本件各公表により、その名誉を毀損された。その慰謝料額及び弁護士費用を含めた損害額合計は330万円が相当である。 (被告の主張)否認ないし争う。 ⑶ 名誉回復処分の必要性及びその方法(争点3) (原告の主張)現職の宇陀市議会議員である原告にとっては、単に損害賠償請求による金銭的な補償を受けるだけでは、その名誉を十分に回復したとはいえない。そのため、被告のホームページ上に掲載している本件答申を削除したうえで、宇陀市の広報誌である「広報うだ」及び同ホームページ上にて、被告市長に よる記者発表や、本件答申が実際には誤っていた旨の謝罪文を掲載して名誉回復措置を講じるべきである。 (被告の主張)答申内容の公表が名誉毀損に該当するのであれば、これをホームページから削除されるべきことは争わない。しかし、名誉毀損が成立すれば、損害賠 償金が発生し、これが支払われることにより原告の精神的苦痛は慰謝されること、原告は本件公表後も宇陀市議会議員を務め続けており、令和6年5月の市議会議員選挙でも再選していること、原告は、本訴提起の際に自ら記者会見を開いており、仮に名誉毀損が認められれば原告側からの公表が予想されることから、謝罪文の掲載は不要である。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 いること、原告は、本訴提起の際に自ら記者会見を開いており、仮に名誉毀損が認められれば原告側からの公表が予想されることから、謝罪文の掲載は不要である。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記第2の2の前提事実に加え、証拠(証人B、原告本人、被告代表者本人のほか後掲の各書証)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 (1) 本件行為1の状況について ア本件行為1の経緯被告市長は、令和4年6月の宇陀市議会第2回定例会において、本件議案を提出し、これは同月6日本会議にて、議長により上程された。その2日後である同月8日、被告市長は、本件議案を撤回し、これは議会で承認された。 本件行為1当時、宇陀市議会では「あきのの湯」という市運営施設に関 して政治倫理上問題があると考えられる行動をとった議員に対する責任追及が行われていた(弁論の全趣旨)。 イ本件行為1の状況本件行為1は、原告が、本件議案が突如撤回されたことが、何らかの政治的外圧によってなされたものであるとの疑いを持ったことから宇陀市 議会図書室にてなされたものであり、原告とB部長のほか、原告に同席を依頼されたD宇陀市議会議員も同席していた(甲11)。原告は、B部長に対し、本件議案の撤回に関し、「議員からの圧力はなかったのか」「いろんな政治倫理のことを千度今言われてるんでね。この件で、あきのの湯の件でも。」「私らかて言われっぱなしでは、調子悪いさかいね。」「あなたの立 場的にしんどなる話やさかい。」という言葉を発した。これに対し、B部長は、原告の上記質問に対し「百条委員会か何かですか。これ。」「僕言いますよ、議長に、尋問ちゃいますの、これ。」と答えており、原告とB部長が宇陀市議会図書室で話していた時間である約20分のうち、本 長は、原告の上記質問に対し「百条委員会か何かですか。これ。」「僕言いますよ、議長に、尋問ちゃいますの、これ。」と答えており、原告とB部長が宇陀市議会図書室で話していた時間である約20分のうち、本件議案の撤回に関するやり取りの会話は、約7分半程度であった。その際、原告は、 B部長に対して、声を荒らげたり、大声を出したりすることはなかった。 B部長は、本件行為1の会話を録音しており、面談終了後直ちに被告市長に報告し、録音した音声を聞かせた。(甲6)(2) 本件行為2の状況ア令和4年9月20日、被告市長は、宇陀市議会本会議において、本件行 為1につき、「この圧力という件につきましては、9月7日の本会議が終わってから、原告が農林商工部長を呼び出し、市議会議員が撤回するような圧力をかけたのではないかということを強く確認を迫るという出来事がございました。農林商工部長には、大変恐怖とつらい思いをさせてしまいました。部長からすぐに報告を受けまして、E議長には政治倫理上問題では ないかということを強く申し入れております。当然適切な対応がされると いうふうに思っております。」と述べた。これに対し、原告は、同会議終了後、被告市長に対し、一直線で歩み寄り、本件行為2を被告市長にした(乙6)。 イ本件行為2の後、被告は、令和4年11月4日から同月21日にかけて、同年9月20日の宇陀市議会本会議の関係職員及び原告以外の市議会議員 に対し、原告が本議会終了直後に議場で市長に詰め寄り、大きな声で「喧嘩うってんのか」と恫喝したか否かについて聞き取り調査をした。その結果、多くの関係職員及び原告以外の市議会議員が、「喧嘩を売ってるんですか。」又は「喧嘩をうってんのか」との発言をしていたものを聞いたと答えた。(乙6) ついて聞き取り調査をした。その結果、多くの関係職員及び原告以外の市議会議員が、「喧嘩を売ってるんですか。」又は「喧嘩をうってんのか」との発言をしていたものを聞いたと答えた。(乙6) 2 争点1についての判断⑴ 本件各公表の違法性ア諮問行為の違法性宇陀市政治倫理条例7条2項3号は、この条例による政治倫理の確立を図るため、「市長の諮問を受けた事項」について調査、答申をすることがで きる旨を定めており、諮問事項についてそれ以上の限定をしていない(乙2)。そして、本件行為1については、原告とB部長との音声データこそ残っているものの、その行為が同条例4条1項1号に違反しないと直ちに判断できるものではなく、これを諮問することが不合理であるとはいえない。 他方、本件行為2についても、同様に、同1号に違反しないと直ちに判断 できるものではなく、これを諮問することが不合理とはいえない。そのため、本件各行為について諮問をする行為が直ちに違法であるということはできない。 また、原告は、宇陀市政治倫理審査会の委員が、被告市長からの諮問がされた後に選任されており、選任手続において中立性、公平性を担保でき ない重大な手続的瑕疵があると主張するが、被告市長が選任に中立性、公 正性を害する関与をしたことを窺わせる事情は認められず、諮問後に選任されたからといって、直ちに中立性、公平性を担保できない重大な手続的瑕疵があるとはいえない。 イ本件各公表の違法性地方公共団体による公表が違法となるかは、公表目的の正当性、公表内 容の性質、その真実性、公表方法・態様、公表の必要性と緊急性等を踏まえて、公表することが真に必要であったか否かを検討し、その際、公表することによる利益と公表することによる不利益とを比較衡量し、その 容の性質、その真実性、公表方法・態様、公表の必要性と緊急性等を踏まえて、公表することが真に必要であったか否かを検討し、その際、公表することによる利益と公表することによる不利益とを比較衡量し、その公表が正当な目的のための相当な手段といえるかどうかを検討すべきであり、公表によってもたらされる利益があったとしても、生じる不利益を犠牲に することについて正当化できる相当な理由がなければ違法となると解すべきである。 本件各公表は、原告が、本件各行為を行ったことが政治倫理上問題であるかを諮問するものであり、被告市民にとって、関心を有する事項であり、公表の目的は正当である。そして、宇陀市政治倫理条例では、審査会の会 議が原則公開とされていることからも、諮問を行う際に、その内容を公表することの必要性も認められる。 もっとも、本件各公表は、「原告宇陀市議会議員により宇陀市農林商工部長への恫喝・尋問・強要・軟禁行為があった。」「原告議員の名前を出したことに対する報復なのか、議会終了直後に議場で市長に詰め寄り、大きな 声で「喧嘩うってんのか」と恫喝した。」などと、本件各行為が恫喝・尋問・強要・軟禁にあたることを前提とした記載となっている。そして、とりわけ、本件行為1が、密室で行われたとはいえ、B部長もひるむことなく原告に応対し、原告の発問も声を荒げたり、大声を出したりするものではなかったこと、本件議案の撤回に関する質問時間が約7分と短時間であった ことに鑑みれば、本件行為1が「恫喝」「強要」「軟禁」に該当するとの評 価は過剰であり、そのことは、B部長の音声を聞かされた被告市長にも容易に判断できることであった。同様に、本件行為2についても、大声であったことや発言内容を考慮しても、これを「恫喝」にあたると評価することは過 あり、そのことは、B部長の音声を聞かされた被告市長にも容易に判断できることであった。同様に、本件行為2についても、大声であったことや発言内容を考慮しても、これを「恫喝」にあたると評価することは過剰である。 そして、本件各行為が「恫喝」「尋問」「強要」「軟禁」にあたることを前 提とした記載の公表をする態様に値する必要性及び緊急性があったとはいえないし、原告が被告の議員という市民を代表する立場として、選挙によって選ばれる者であるという事情に照らせば、本件公表1による社会的評価の低下という不利益は、公表による利益よりも大きいといえる。 以上に照らせば、本件公表1を正当化できる理由はなく、これは原告の 名誉を毀損するものというべきである。 (2) 本件公表2の違法性本件公表2の違法性の判断についても、本件公表1と同じく、公表目的の正当性、公表内容の性質、その真実性、公表方法・態様、公表の必要性と緊急性等を踏まえて、公表することが真に必要であったか否かを検討し、その 際、公表することによる利益と公表することによる不利益とを比較衡量し、その公表が正当な目的のための相当な手段といえるかどうかを検討すべきである。 本件公表2は、原告が、本件各行為を行ったことが政治倫理上問題であるかについて諮問にかけたその結果を公表するものであり、被告の市民にとっ て、関心を有する事項を周知する目的を有していることから、公表の目的は正当である。 そして、答申結果の内容も、本件行為1については、議案の撤回経緯について、原告からB部長に対し、「議員からの圧力はなかったのか」「いろんな政治倫理のことを千度今言われているんでね。この件で、あきのの湯の件で も。」「私らかて言われっぱなしでは、調子悪いさかいね。」「あなたの立場的 員からの圧力はなかったのか」「いろんな政治倫理のことを千度今言われているんでね。この件で、あきのの湯の件で も。」「私らかて言われっぱなしでは、調子悪いさかいね。」「あなたの立場的 にしんどなる話やさかい。」と、やや高圧的な言動があり、繰り返し同じ質問をしている場面もあるものであって、その時間はわずか7分半ほどにとどまるものであるものの、密室であること及び、議員と職員という力関係に照らせば、B部長において原告の期待する特定の回答を言うように要求されているような心理状態になることも無理はないものであり、本件答申が本件行為 1について「尋問」や「強要」に当たり宇陀市政治倫理条例第4条1項1号に反するような「品位と名誉を損なうような一切の行為」があったとした諮問結果は著しく不合理とはいえない。さらに、本件行為2についても、原告が被告市長に対し、議会終了直後に同人のもとへ行き、周囲に聞こえるような大きな声で「喧嘩うってんのか」又は「喧嘩売ってるんですか」といった 発言をしていることからしても、宇陀市政治倫理審査会がこれを「恫喝」行為があったと判断した諮問結果は、著しく不合理なものとはいえない。そして、被告は、これらの著しく不合理とはいえない答申結果をあくまでそのままの内容で公表したに過ぎず、手段としても相当である。 他方、本件公表2による原告の不利益は、原告の宇陀市議会議員としての 社会的評価を低下させるものであるものの本件公表1と異なり、本件公表2の内容があくまで答申結果を公表するものであることからすれば、その不利益が市民への情報提供をするという利益よりも大きいとは言えない。 加えて、本件行為2についても、原告が宇陀市長に対し、議会終了直後に同人のもとへ行き、周囲に聞こえるような大きな声で「喧嘩うってんのか」 が市民への情報提供をするという利益よりも大きいとは言えない。 加えて、本件行為2についても、原告が宇陀市長に対し、議会終了直後に同人のもとへ行き、周囲に聞こえるような大きな声で「喧嘩うってんのか」 又は「喧嘩売ってるんですか」といった発言をしていることからしても、宇陀市政治倫理審査会がこれを「恫喝」行為があったと判断した旨の答申を公表することは、正当な目的があるといえるため、違法とはいえない。 そうすると、本件公表2は違法とはいえない。 3 争点2についての判断 本件公表1により、原告の社会的評価は低下したものの、原告が、本件各公 表以降も再選の結果、被告で議員の職にあり続けていることからうかがわれる社会的評価の低下の程度等を考慮すれば、本件公表1によって原告に生じた損害は、精神的苦痛に対する慰謝料として30万円、弁護士費用として3万円の合計である33万円の限度で認めるのが相当である。 4 争点3についての判断 前記第2の2(2)ウで説示した公表態様等及び原告が、令和6年5月に被告の議員として再選している等の事情に照らせば、本件において、原告の名誉を回復するために、金銭による損害賠償に加えて謝罪広告を掲載する必要があるとまでは認められない。 したがって、原告の謝罪広告の請求は理由がないというべきである。 第4 結論以上によれば、原告の請求は、33万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和5年9月28日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 奈良地方裁判所民事部裁判長裁判官和田健 裁判官 主文 認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 理由 事実 争点 判断 奈良地方裁判所民事部裁判長裁判官和田健 裁判官今城智徳 裁判官矢島佑一 (別紙は省略)
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