主文 被告人を懲役8年及び罰金200万円に処する。 未決勾留日数中570日をその懲役刑に算入する。 その罰金を完納することができないときは,1万円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 甲株式会社に対する投資名目で金銭をだまし取ろうと考え,別表1(省略)記載のとおり,平成28年7月22日頃から平成29年8月20日頃までの間,16回にわたり,岡山市a区b町c丁目d番e号f等11か所において,情を知らないCらをして,面談等により,D等8名に対し,真実は,同社では,顧客から受領した金銭を運用することなく,その時点で返済期限が到来している顧客から受領した金銭の元本及び配当金並びに同社の運営経費等に費消する意思であり,かつ,被告人には元本及び配当金を約定どおり返済するに足りる資産はないのに,これらの事情を秘し,同社等における顧客から受領した金銭の運用や被告人の資産で顧客から受領した金銭の元本及び配当金の支払が約定どおり受けられるかのように装い,同表欺罔文言欄記載のうそを言うなどして,前記Dらに,同社に金銭を預ければ,預けた金銭の元本及び配当金の支払が約定どおり受けられるものと誤信させ,よって,平成28年7月22日頃から平成29年8月30日頃までの間,17回にわたり,前記f等11か所において,前記Dらから,前記Cに手渡すなどの方法により,現金合計1億円の交付を受け,もって人を欺いて財物を交付させた。 第2 分離前の相被告人E,同F,同C,同G,同H,同I,同J,同K,L及び甲株式会社会員らと共謀の上,いずれも法定の除外事由がないのに,別表2(省 略)記載のとおり,平成28年7月22日頃 第2 分離前の相被告人E,同F,同C,同G,同H,同I,同J,同K,L及び甲株式会社会員らと共謀の上,いずれも法定の除外事由がないのに,別表2(省 略)記載のとおり,平成28年7月22日頃から平成29年8月30日頃までの間,17回にわたり,不特定かつ多数の相手方である前記D等8名から,前記f等において,前記Cが現金の交付を受ける方法等により,元本及び所定の配当金を支払うことを約して現金合計1億円を受け入れ,もって業として預り金をした。 (事実認定の補足説明)第1 本件の争点本件の争点は,判示第1の行為当時被告人が詐欺の故意を有していたか否かである。 当裁判所は,判示第1の行為当時被告人が詐欺の故意を有していたことが認められると判断した。以下,その理由を説明する。 第2 前提事実関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 1 被告人の経歴及び資産並びに甲株式会社設立の経緯等⑴ 被告人は,漫画をアプリケーションで配信する事業や経営コンサルタントの会社の経営に失敗するなどし,遅くとも平成25年7月までにはこれらを廃業しており,この時点で,保有資産はほとんどない反面,億単位の借金を抱え,大幅な債務超過の状態にあった。被告人は,このような自らの立場に鑑み,同年6月頃から「M」の偽名を使用するようになった。なお,平成27年7月時点でも,被告人の資産は多くとも2000万円程度しかなく,前記の債務超過状況が改善されることもなかった。 ⑵ 被告人は,平成25年の夏前頃,乙の名称で顧客の資産運用を行う事業に携わるN,Oらと知り合い,神戸市内の乙の事務所に出入りするようになった。 ⑶ 被告人は,乙が前記事業で損失を出すと,Nに対し,自分なら2,3か月あればその損失を取り返して乙を救済することができる旨述べるなどし,新 知り合い,神戸市内の乙の事務所に出入りするようになった。 ⑶ 被告人は,乙が前記事業で損失を出すと,Nに対し,自分なら2,3か月あればその損失を取り返して乙を救済することができる旨述べるなどし,新たな事業を行うため,新会社設立に向けた手続が行われた。新会社は,被告人が 同年3月頃までに知り合ったPが取締役を務めるシンガポール所在の人材派遣会社丙の関連会社という位置付けで,甲株式会社という名称で,設立されることとなった。 2 元本保証・高配当を約した現金受入れを開始した経緯等⑴ 被告人は,平成25年7月頃,Nを介してE及びその妻Fと知り合うと,まもなく,Eから,同人が傘下の勧誘員を通じて顧客勧誘に関与していた投資会社である株式会社丁の調査を依頼された。 被告人は,この調査をPに依頼した。Pからの回答によると,丁のシンガポール事務所の事業実体が確認できなかったことから,Eは,その当時で顧客から総額8億5000万円の資金を集めていたので,自らが傘下勧誘員を通じて勧誘した顧客に多額の損失を生じさせてしまうことを懸念し,今後の対処方法を被告人に相談した。その後,被告人がEらと打合せを重ねた結果,丁とは別に,新たに顧客から出資を募ることによって丁の顧客の損失を補てんする方針が決まった。 ⑵ 被告人は,同年8月頃,乙の関係者から紹介されて知り合ったQを連れ,Eが経営する大阪府内の株式会社戊の事務所を訪れた。その際,Eは,自らの傘下で丁の顧客勧誘員を務めていたC,Gらに対し,丁は破綻が近い旨伝え,被告人は,CらEの傘下勧誘員らに対し,Qを紹介した上で,同人が大企業の社長の資産を運用するなど株取引の経験が豊富な敏腕トレーダーである旨述べるなどした。なお,Qは,個人で株取引をしたことがあっただけで,他人の資産を株取引等で運用した経験は 介した上で,同人が大企業の社長の資産を運用するなど株取引の経験が豊富な敏腕トレーダーである旨述べるなどした。なお,Qは,個人で株取引をしたことがあっただけで,他人の資産を株取引等で運用した経験は一度もなく,被告人もそのことを知っていた。 ⑶ その後,E,F,Cらは,不特定多数人から資金を集めるためのスキームについて打合せを重ね,その際,被告人が同席することもあった。 その結果,遅くとも同年9月頃までには,被告人やNらが設立準備を進めていた新会社(前記1⑶)を流用し,これに対する投資名下に現金を集めること,顧客に対する配当額は毎月出資額の3パーセント,ただし最初は4パーセン トとすること,元本を保証すること,顧客には現金を受け入れる際に「借用書」と題する書面を交付することなどが決まり,以上の現金受入れスキーム(以下「本件スキーム」という。)に基づく現金の受入れが始まった。なお,被告人も,その当初から,元本保証を含む本件スキームに基づいて現金を受け入れていることを認識していた。 ⑷ 前記新会社として同年9月17日付けで設立された甲社は,資本金2000万円の株式会社であり,設立当時の代表取締役はOであったが,同年10月18日付けでEが共同代表取締役に就任した。資本金2000万円はEが用意したものを,被告人がNとOへ渡し,Nらが一旦銀行口座に入金した。Nは,被告人の指示により,すぐに2000万円を出金し,その全額が被告人の個人的な返済に充てられた。N,Oら乙関係者は,Qを除き,平成26年2月頃に甲社を離れ,以後,同社との関係を断った。 3 丁幹部らの参加と甲社の拡大⑴ 丁は,平成25年9月頃に金融庁の調査を受け,同年10月頃には業務停止命令を受けたことから,同社の幹部らが顧客からのクレーム対応に追われる事態となった。 被 3 丁幹部らの参加と甲社の拡大⑴ 丁は,平成25年9月頃に金融庁の調査を受け,同年10月頃には業務停止命令を受けたことから,同社の幹部らが顧客からのクレーム対応に追われる事態となった。 被告人は,同年11月頃,京都市内において,E同席の下,当時,丁の代表取締役に就任していたIのほか,いずれも同社の取締役であったL,J,K,及びRと会うと,キャバクラで数百万円を支払うなどしてIらを遊興させ,更にIらに1人100万円を渡すなどするとともに,Iらに対し,その場に同席させたQを自らの右腕の名トレーダーだと紹介するなどしつつ,丁と決別して甲社に加わるよう求めた。 ⑵ 被告人は,さらに,同年11月頃,神戸市内の甲社の事務所において,既に甲社の一員として顧客勧誘活動を行っていたG,Cらに対し,I,L,J,K及びRを甲社に参加させることを承諾させ,引き続き,Eらが,Iら5名に対し,本件スキームに基づいて現金を集めることなどを説明し,Iら5名から, 同スキームに則って顧客を勧誘し現金を集めることの承諾を得た。甲社は,それ以降,Iら5名の参加を得て同社に対する投資名下に顧客の勧誘を続けた。 4 現金受入れの概要甲社では,「1口100万円を預けて甲社の会員になれば,預入れの翌々月末から預けた金額の3パーセントの配当金を毎月受け取ることができる。元本を保証し,配当開始から1年後には元本を償還するが,償還を受けるか預入れを更新するかは顧客が選ぶことができる。」などの条件で顧客を勧誘し(その後,配当金の割合は若干の変動があった。),確実かつ高利の利殖を期待する顧客から現金を受け入れ,その際,元本に1年分の配当金額を加えた額を借り受けた旨記載した「借用書」と題する書面を顧客に交付していた。なお,甲社では,現金の受入れや配当金の支払等は,基本 殖を期待する顧客から現金を受け入れ,その際,元本に1年分の配当金額を加えた額を借り受けた旨記載した「借用書」と題する書面を顧客に交付していた。なお,甲社では,現金の受入れや配当金の支払等は,基本的に銀行口座を介さず,現金の授受により行っていた。 5 甲社の組織形態 ⑴ 甲社では,設立当初から被告人が会長の立場にあり,やがてキングなどとも呼称されるようになった。被告人は,甲社の活動期間を通じて,同社の最高権力者として振る舞っていた。 ⑵ 甲社では,平成26年2月にOらが離脱した後は,Eが単独の代表取締役となり,同社の社長として活動するようになった。Eは,平成28年8月に甲社の代表取締役を退いたが,同社での活動は継続した。なお,同社の経理は一貫してFが担当した。 ⑶ 甲社は,E,G,CらをリーダーとするAグループ,I,L,J,KらをリーダーとするBグループに分かれており,やがて,両グループとも,各リーダーの下,上位者から順に,ディレクター,マネージャー,エヴァンジェリストの肩書きを持つ会員が配置され,ピラミッド構造の組織が構築された。 ⑷ 甲社では,新たに顧客を勧誘して現金を受け入れると,勧誘者又はその上位者にバックマージンが支払われるシステムが採られており,そのうちイニシ ャルフィーは,顧客から新たに現金を受け入れた場合に,1回限り,受領金の12パーセントから30パーセント程度が支払われるもの,ランニングフィーは,毎月,受領金の1パーセントから2パーセントが支払われるものであった。 ⑸ 甲社では,平成26年以降,毎月1回ディレクター会議を開催し,被告人,E,Fのほか,A,B各グループのリーダー及びディレクターらが参加し,被告人が同社の会長として会議の大半の時間を用いて話をしていた。また,A,Bの各グループとも,デ ィレクター会議を開催し,被告人,E,Fのほか,A,B各グループのリーダー及びディレクターらが参加し,被告人が同社の会長として会議の大半の時間を用いて話をしていた。また,A,Bの各グループとも,ディレクター会議での伝達事項等が,同会議に参加しない会員らにも周知されていた。 ⑹ 平成27年6月頃,Bグループの者らが,Sを社長にするよう求めたため,SとEのどちらを社長とするかを決める選挙を行った。得票数は,Sの方が多かったものの,被告人が,選挙の結果に反して,Eに社長を続けてもらう旨発言し,Eが社長を続けることとなった。 6 顧客勧誘方法⑴ 被告人は,平成25年,甲社で現金の受入れを進めるに当たり,同社が顧客から預かった受領金をQが運用して増やしていると装うため,Qに対し,名トレーダーを装ってトレードをしているふりをするよう依頼した。これを承諾したQは,神戸市内の甲社の事務所に設置されたトレーダールームに常駐し,同所を訪れる甲社の会員や,同社への出資を検討している顧客に対し,株式の銘柄や指数等が表示された6画面モニターを使って株式取引について説明するなどし,受領金を自らが運用しているふりをしていた。なお,Qは,平成27年12月頃,甲社の事務所移転に伴って前記神戸市内の事務所を出たが,その後もトレーダーの立場で同社のディレクター会議に出席するなどしていた。Qは,甲社の活動期間中,甲社が受け入れた受領金を運用したことは一度もなく,被告人もそのことを知っていた。 ⑵ 被告人は,これに加えて,甲社の活動期間中,顧客に現金を預けさせるため, 甲社のセミナー等において,自らが東南アジアで成功した投資家で,東南アジアで運用して稼いでいる旨や,甲社が高率の配当を支払えるのは自らの運用により多額の利益を上げているからである旨などを話してい 甲社のセミナー等において,自らが東南アジアで成功した投資家で,東南アジアで運用して稼いでいる旨や,甲社が高率の配当を支払えるのは自らの運用により多額の利益を上げているからである旨などを話していた。しかし,被告人は,甲社が受け入れた受領金を株式投資等により運用していたことは一度もなく,自らが運用しようと考えたこともなかった。 ⑶ 被告人は,さらに,甲社の活動期間中,セミナー等において,甲社の会員らに対し,自らが丙社の大株主で,同社の会長であるなどと説明していた。しかし,実際には,被告人(その親族を含む。)が丙社の株式を取得したことはなく,被告人が同社の経営に関与したこともなかった。 ⑷ 被告人は,甲社の活動期間中,投資家として東南アジアで成功した資産家であると装い,食事会等の場で甲社の会員らに対し,元本の返還や配当の支払につき,自らが責任を持つ旨述べるなどした。被告人は,時にはセミナーにおいて,甲社会員らに対し,お金を配ることもあった。 ⑸ 被告人は,平成26年1月頃以降,シンガポールを訪れた甲社の会員らを繰り返し被告人が居住するというマンションに招いたが,同マンションは丙社が賃借したもので,その賃料月額1万7000シンガポールドルも同社で支払っていた。なお,賃料のほかに,自動車のリース費用,自動車運転手代,メイドを雇うための代金等も丙社が被告人のために支払っており,合計すると日本円にして毎月750万円前後を支払っていた。 ⑹ 甲社のA,B各グループのリーダーやディレクター,あるいはこれらの者の下位に位置する甲社の会員らは,顧客に対し,受領金は被告人や被告人の右腕のQが運用する旨や,最終的には資産家である被告人の資産で元本及び配当金の支払が約定どおり受けられる旨などを伝え,甲社に対する出資を勧誘していた。 7 受領金の回収・ 受領金は被告人や被告人の右腕のQが運用する旨や,最終的には資産家である被告人の資産で元本及び配当金の支払が約定どおり受けられる旨などを伝え,甲社に対する出資を勧誘していた。 7 受領金の回収・保管状況,配当金の支払状況等⑴ 甲社では,現金の受入れを始めた当初は,A,B各グループのリーダーがそ の下位の会員が受け取った受領金を集約した上,これを神戸市内の同社事務所に持参してFに手渡していた。その後,Bグループが受け入れた受領金については,Sが全国の各地区に赴くなどして回収するようになり,Sは,回収した現金を繰り返し被告人に届けていた。 ⑵ Sは,平成27年11月頃に甲社を去り,それ以降,Bグループが受け入れた受領金については,被告人の付き人等として秘書的な役割をしていたTやUらが,各地区の責任者等から,受領金から配当金,イニシャルフィー及びランニングフィーを差し引いた残金の全部又は一部を回収して被告人に届けるようになった。Bグループ内のVチームが受け入れた受領金については,主に,同チームで資金管理を担当していたWが,前同様の残金を,自ら又は被告人の付き人等を介するなどして,被告人に渡していた。 ⑶ S,T,Wは,Bグループのお金を回収している間,被告人に対し,Bグループの預り金の金額について報告をしていた(Tは各地区ごとに月2回程度,Wは月末の1週間ないし10日前から月末にかけてほぼ毎日,Sはほぼ毎日)。 8 本件犯行当時の資金繰りの状況等⑴ 甲社では,元本を保証しながら毎月3パーセント程度の配当金を支払っていたため,顧客から現金を受け入れれば受け入れるほど,顧客に支払わなければならない元本及び配当金の金額が累積的に増加していき,遅くとも平成28年半ば頃から,配当金の支払に充てる現金すら不足する地区が現れるよう 客から現金を受け入れれば受け入れるほど,顧客に支払わなければならない元本及び配当金の金額が累積的に増加していき,遅くとも平成28年半ば頃から,配当金の支払に充てる現金すら不足する地区が現れるようになった。被告人は,回収役のTらから報告を受けるなどしてこれを把握すると,Tに対して資金に余裕のある地区から現金を回すよう指示し,これを受けたTが,余裕のある地区で保管する受領金の一部を配当原資が不足する地区に届けて融通するなどしていた。 また,被告人は,平成29年4月等複数の機会に,甲社のリーダーや地区責任者から,配当原資が不足しているのでお金を持ってきてほしいなどと求め られたこともあり,そのうち何度かは,被告人が配当に充てる現金を準備したこともあった。 ⑵ 被告人は,従前から,ディレクター会議等において,少しでも多くの会員を募って受領金を増やすよう求めるなどしていたところ,配当原資が不足する事態が生じるようになった後も,100万人の会員を集めるよう求めたり,配当割合の変更を伝えるなどして,甲社の会員らに対し,より多くの受領金を集めるよう促していた。 9 本件各犯行状況等Cら別表1(省略)の「勧誘者」欄に記載された甲社会員は,平成28年7月22日頃から平成29年8月20日頃までの間,面談等により,同別表1の「被害者」欄に記載されたDら8名に対し,同別表1の「欺罔文言」欄記載の文言を申し向けるなどし,元本を保証した上で毎月3パーセント又は2パーセントの配当を支払う旨約して甲社に金銭を預けるよう勧誘した。これを受けた前記Dら8名は,甲社に金銭を預ければそれが運用に充てられ,仮に運用に失敗しても最終的には被告人の資産が元本及び配当金の支払の担保となるものと認識し,受領金の元本及び配当金の支払が約定どおり受けられるものと信じ,同 甲社に金銭を預ければそれが運用に充てられ,仮に運用に失敗しても最終的には被告人の資産が元本及び配当金の支払の担保となるものと認識し,受領金の元本及び配当金の支払が約定どおり受けられるものと信じ,同別表1の「交付年月日」,「交付場所」,「交付方法」及び「詐取金額」の各欄記載のとおり,Cらに現金合計1億円を交付し,これらの金銭を甲社に預けた。 本件各犯行後の状況等甲社は,平成29年3月以降,毎月の配当金,償還金,バックマージン等の顧客への支払が各月の新規の顧客からの受領金額を上回り,同年9月には,配当金の支払が困難となって現金の受入れを停止し,破綻した。 第3 現金受入れと顧客勧誘に関する被告人の言動 1 E,F,G,J,L,Iらの供述内容被告人は,甲社のリーダーやディレクター等といった主要メンバーその他の会員らに対し,甲社の活動期間中,繰り返し,①受領金は,被告人が,その右腕 であるQのトレードや海外のヘッジファンドで運用する旨のうそや,②最終的には被告人のばく大な資産によって受領金の元本及び配当金の支払を担保できる旨のうそを言っていた。 2 信用性各証人の前記供述は,内容が概ね一致しているだけではなく,争いがなく,証拠により容易に認定できる前記第2の前提事実(①被告人がQに名トレーダーを装ってトレードをしているふりをするよう依頼していたこと,②被告人は,セミナー等において,そのような事実が存在しないにもかかわらず,自らが東南アジアで運用している旨や,甲社が高率の配当を支払えるのは自らの運用により多額の利益を上げているからである旨などを話していたこと,③会員らに丙社の筆頭株主は被告人であるとの虚偽の説明をしていたこと,④Iらを勧誘するときに数百万円を支払った上で1人当たり100万円を渡すなどしていたことな いるからである旨などを話していたこと,③会員らに丙社の筆頭株主は被告人であるとの虚偽の説明をしていたこと,④Iらを勧誘するときに数百万円を支払った上で1人当たり100万円を渡すなどしていたことなどの事実)とも整合しているので,信用することができる。 これに対し,Cは,被告人は,人集めをしてくれれば自らの資産をその人に還元する旨述べていたなどとして,被告人が受領金を運用に充てる旨話していたことを否定する趣旨の供述をする。しかし,被告人が自らの資産を還元し,寄付をするために当該相手方から金銭を集めるというのは不合理であるし,被告人自身もセミナー等において,自らが東南アジアで運用して稼いでいる旨を話したと供述しているのであるから,被告人の不利益供述とも反するものであり,信用することができない。Cは,元警察官として法的知識があるので,被告人が受領金を運用に充てる旨話していたことを前提に甲社の活動をしていたと供述してしまうと,自らが何らかの罪に問われるのをおそれ,前記のような供述をしていると考えられる。 3 被告人の供述の信用性被告人は,受領金をその右腕であるQのトレードや海外のヘッジファンドで運用する旨のうそを述べたことは認めるものの,最終的には被告人のばく大な 資産によって受領金の元本及び配当金の支払を担保できるということについては,Eや,ロールプレイング中に甲社会員であるXが言っているのを聞いたことはあるが,自分では言ったことがない旨供述する。 しかし,甲社の会員らに対し,元本の返還や配当の支払につき,自らが責任を持つ旨述べていることや,資産家であると言っていたこととも整合せず,被告人の供述を信用することはできない。 4 小括以上によると,被告人は,Eを含めた甲社会員らに対し,甲社の活動期間中,繰り返し,① ていることや,資産家であると言っていたこととも整合せず,被告人の供述を信用することはできない。 4 小括以上によると,被告人は,Eを含めた甲社会員らに対し,甲社の活動期間中,繰り返し,①被告人が,受領金をQのトレードや海外のヘッジファンドで運用する旨のうそや,②最終的には被告人のばく大な資産によって受領金の元本及び配当金の支払を担保できる旨のうそ(以下①②のうそを合わせて「現金受入れ等に関する被告人のうそ」という。)を言っていたと認められる。 第4 前記第3の現金受入れ等に関する被告人のうそを受けた甲社会員らの認識甲社の会員らは,総じて,被告人の前記第3の現金受入れ等に関する被告人のうそにより,受領金は,被告人が,その右腕であるQのトレードや海外のヘッジファンドで運用し,最終的には被告人のばく大な資産によって受領金の元本及び配当金の支払を担保できると信じた上で,顧客に対し,受領金の運用や被告人の資産で受領金の元本及び配当金の支払が約定どおり受けられる旨申し向けて現金を受け入れていた旨供述している。 1 EF夫妻以外の甲社会員らについてまず,甲社のリーダーであるG,J,L,Iらは,丁で共に仕事をしていたE同席の下,被告人の紹介を受けている上,当時のGらの置かれていた丁の破綻又はそれが近いという状況の中で,Gについては,被告人から丁でE傘下の勧誘員が勧誘した顧客の多額の損失を補てんし,Eらを助けると言われ,J,L,Iらについては,被告人から丁の顧客からのクレーム対応で苦しんでいるのを助けると言われ,前記第3の現金受入れ等に関する被告人のうそを信じたというの は十分納得できるものである。もし,現金受入れ等に関する被告人のうそを信じていなかったのであれば,いずれは丁と同様に甲社の事業が破綻してしまい,丁の顧客の損 被告人のうそを信じたというの は十分納得できるものである。もし,現金受入れ等に関する被告人のうそを信じていなかったのであれば,いずれは丁と同様に甲社の事業が破綻してしまい,丁の顧客の損失の補てんや助けにならないことは自明であり,Gらが甲社への参加を決意することは考えにくい。その他の勧誘を行った甲社会員らについても,被告人がQに依頼して,神戸市内の甲社の事務所に設置されたトレーダールームに常駐させ,受領金をQ自らが運用しているふりをさせたり,被告人がセミナーにおいて,甲社会員らに対し,お金を配ったり,高級なコンドミニアムであるシンガポールの自宅に招いたりするなど,現金受入れ等に関する被告人のうそを信用させるべく行動をしており,被告人の資産の状態等を信じたというのは十分納得のできるものである。したがって,EF夫妻以外の甲社会員らが,現金受入れ等に関する被告人のうそを信じたことについては問題なく認められる。 2 EF夫妻についてEF夫妻についても,被告人と共に出資を募ることとなった経緯について検討すると,以下のとおり,現金受入れ等に関する被告人のうそを信じたことが認められる。 ⑴ Eの供述内容平成25年7月頃,Nを介して被告人と知り合い,丁の調査を依頼したところ,同社のシンガポール事務所にはほとんど人がいないことが分かった。その後,被告人から,丁は実体がほとんどない,間違いなく破綻するだろうと言われ,どうすればいいのかと被告人に相談した。すると,被告人から,自分が増やしてお客様に返すお金を作ってやるから任せろなどと言われた。更に何度かFと一緒に被告人と会う中で,被告人から,シンガポールに被告人が運用しているファンドがあり,己などの企業や宗教団体から1口50億円で資金を預かって運用しているなどと言われた。また,被告人 更に何度かFと一緒に被告人と会う中で,被告人から,シンガポールに被告人が運用しているファンドがあり,己などの企業や宗教団体から1口50億円で資金を預かって運用しているなどと言われた。また,被告人からQを紹介され,Qは被告人が証券会社から6億円でヘッドハントした株式の敏腕トレーダーであり,1日約1パーセントの利益を上げているなどと言われた。被告人から,運 用は被告人がするので原資を集めてほしいと言われ,シンガポールのファンドやQの株のトレードで運用するのだと思った。被告人を紹介したいと思い,平成25年8月頃,C,Gらに,大阪の株式会社戊の事務所に集まってもらった。その場で,被告人は,Eらに,被告人が運用して金を増やしてやる,かなりの資産を持っているので,何かあったらその資産を取り崩して,責任は自分が取ると言われ,その話を信じた。 ⑵ Fの供述内容平成25年7月頃,Nを通じて被告人と知り合った。Eが被告人に丁の調査をお願いしたところ,被告人から,調べたが何もしていないんじゃないか,おそらくこの秋には破綻するんじゃないかと言われ,とても驚き,不安になった。その後,Eと一緒に何度も被告人と会い,E傘下の勧誘員が顧客から合計8億5000万円を預かっていたので,丁が破綻したらお客様に迷惑をかけることになると被告人に相談した。すると,被告人から,自分は金融のプロなので,そのお金を取り戻してあげようかと言われた。被告人から,シンガポールでヘッジファンドを保有しており,日本の大手生命保険会社から500億円を預かって運用している,お金を集めて被告人に預ければ,そこで運用して,8億5000万円の損害を埋めることができるということを言われた。また,被告人から,株主として保有している会社が20社ほどあり,かなりの資産を持っていると言われ て被告人に預ければ,そこで運用して,8億5000万円の損害を埋めることができるということを言われた。また,被告人から,株主として保有している会社が20社ほどあり,かなりの資産を持っていると言われた。そこで,Fは,被告人を信じてもう一度お客様からお金を預かって,何とか損害の穴埋めができるようにしたいと思った。 ⑶ 信用性ア供述内容の合理性E及びFの各供述は,被告人に依頼して丁を調査してもらった結果,その実体に疑義が強まり,被告人から同社が近いうちに破綻する旨の見通しを示されたため,同社におけるEの傘下勧誘員らが勧誘した顧客に多額の損失を生じさせてしまうことを懸念して被告人に相談したところ,被告人か ら,被告人が運用すれば損失を取り戻せる旨言われて甲社において運用原資を集めるようになったというものであったという点で一致している。その内容は,丁の調査に端を発したものとして,自然かつ合理的なものである。 イ N,O,S供述との整合性 Nの供述内容平成25年夏前頃に被告人と知り合うと,被告人から,シンガポールのファンドで資金を運用していると言われた。当時の私は,乙で9000万円近い損失を出していたところ,被告人から,2,3か月あればこのくらいの損失は取り戻せる,株で運用すれば数か月で数十倍になるなどと言われた。被告人は,半月で2000万円にするという約束で,私の友人のYから1500万円を借りた。 Oの供述内容平成25年春にNと会ってから1か月くらいして,被告人と知り合った。そのとき,被告人は,シンガポールにおいて日本人で初めてのヘッジファンドの立ち上げに関わった,有力な情報が入ってきて資産を増やすことができるという話をしていた。 乙の投資がうまくいっておらず,Nや被 のとき,被告人は,シンガポールにおいて日本人で初めてのヘッジファンドの立ち上げに関わった,有力な情報が入ってきて資産を増やすことができるという話をしていた。 乙の投資がうまくいっておらず,Nや被告人から,乙を救済するという話を聞いた。被告人は,新しく会社を作る話をしていた。その立ち上げにEは関与していない。 Sの供述内容平成25年7月頃,Eの紹介で初めて被告人と会うと,被告人は,プライベートバンカーを名のり,その日のうちに,金利を9月までに15パーセント付けると言って出資を持ち掛けてきた。そのため,知り合いの投資家2人から約600万円ないし800万円のお金を預かり,翌日,そのお金を新横浜駅で直接被告人に渡した。 各供述の信用性N及びOは,そもそも甲社による現金の受入れに,設立当初から離脱までのわずかな期間しか関与しておらず,あえて被告人に不利な虚偽供述をするような動機は認められない。また,N及びOの前記各供述は,具体的なものであり,不自然,不合理な点はない上に,供述内容が相互に整合し,補強し合っている。したがって,N及びOの前記各供述は信用することができる。 また,Sの前記供述も,初めて被告人と出会った日の出来事を具体的に述べたもので,体験した者でなければ語り得ない生々しいものである上,Sが供述した被告人の行動は,信用することができるN供述に登場するYに対するそれとも整合する。したがって,Sの前記供述も信用することができる。 検討以上のとおり,N及びOの各供述からすれば,被告人が,E及びFと出資を募る話をする以前から,乙の名称で顧客から資金を預かって運用する事業に携わっていたN及びOに対し,自らがシンガポールでファンドを運用している旨のうそを述べたり,自らの ば,被告人が,E及びFと出資を募る話をする以前から,乙の名称で顧客から資金を預かって運用する事業に携わっていたN及びOに対し,自らがシンガポールでファンドを運用している旨のうそを述べたり,自らの運用により乙の損失を取り戻せるなどと申し向けていたものと認められるところ,E及びFの供述内容,すなわち,被告人から,シンガポールでヘッジファンドを保有し,顧客から預かった資金を運用しており,被告人が運用すれば丁の破綻に伴う損失を取り戻せる旨言われて運用原資を集めることになった旨の供述内容は,このような事実関係とよく整合している。 加えて,N及びSの各供述からすれば,被告人は,Eらと共に行う事業とは無関係に,YやSに対し,自らに金銭を預ければ短期間のうちに増やして高率の配当金を支払う旨を伝え,出資を働きかけていたものと認められるところ,Eの供述内容,すなわち,被告人から,自分が増やしてお 客様に返すお金を作ってやるから任せろなどと言われたなどの供述内容は,これらの事実関係ともよく整合している。 ウ E,Fの供述の信用性以上のことから,E及びFの前記供述は,内容が自然かつ合理的で,信用できるN,O及びSの供述とも整合するものであり,信用することができる。したがって,E及びFが現金受入れ等に関する被告人のうそを信じたことが認められる。 3 弁護人の主張(Eが現金受入れ等に関する被告人のうそを信じたかについて)⑴ 被告人の居住状況弁護人は,Eが,被告人から,日本の居住もないし,事務所があるわけでもないし,マンションを借りているわけでもないという説明を受けた,被告人から名刺をもらったことがないと供述していることを理由に,Eは,被告人を実業家であり資産家であると信じてはいなかったはずであると主張する。 しかし,当時被告人 わけでもないという説明を受けた,被告人から名刺をもらったことがないと供述していることを理由に,Eは,被告人を実業家であり資産家であると信じてはいなかったはずであると主張する。 しかし,当時被告人は,Eに対し,シンガポールに居住していると述べており,現にPを通じて丁のシンガポール事務所の実体について素早く調査し,その結果をEに伝えていたのであるから,日本に事務所や住居を持たないことに疑問を持たなかったことが不合理であるとはいえない。また,Eが当時自らが傘下勧誘員を通じて勧誘した顧客に多額の損失を生じさせてしまう危機的状況にあった中で,救済の手を差し伸べてくれた被告人を信用してしまってもやむを得ない面がある上,当時丁のトップであったIに弁護士を探して付けてくれた被告人を信頼したという供述に不自然さは見られない。 シンガポールのファンドについて弁護人は,被告人がEに言ったとされている,シンガポールに被告人が運用しているファンドがあり,己などの企業や宗教団体から1口50億円で資金を預かって運用しているという内容は,生命保険料を預かり,それを運用して利益を上げている生命保険会社がその資産を運用することを外注するなどそ れだけで荒唐無稽な話であり,虚偽と分かる内容であるから,それが事実だと思ったとするEの供述は信用することができないと主張する。 しかし,当時Eが危機的状況にあったことを考えると,被告人のうそを見破れなかったとしても不自然とはいえない。また,Eは,被告人に資金の運用状況等を尋ねたところ,被告人から,それを聞いてどうするのと言われ,他の会社の名前をこれ以上明かせられない,運用に関しても守秘契約を結んでいるので出せないと言われた旨供述しており,Eが深堀りすることなく信じた理由について具体的かつ合理的に説明しているの と言われ,他の会社の名前をこれ以上明かせられない,運用に関しても守秘契約を結んでいるので出せないと言われた旨供述しており,Eが深堀りすることなく信じた理由について具体的かつ合理的に説明しているのであるから,弁護人の主張には理由がない。 ⑶ 甲社の集金システムについて弁護人は,甲社の集金システムからすると,配当や手数料を差し引くと,2年を経過すれば,集金した金以上の支出が必要となってくるもので,数百億円もの資産を有するとされる被告人が,自ら損をする集金システムを前提として集金を主導することはあり得ないことは自明であると主張する。 しかし,被告人は,Qによる株の運用や,被告人によるファンドの運用により,集めたお金を増やして配当する前提で話をしており,Eも集めた金を被告人が株やファンドの運用で高い利益を上げて増やしてくれると認識していたのであるから,弁護人の主張には理由がない。 4 小括以上によると,前記第3の現金受入れ等に関する被告人のうそを聞いたEF夫妻を含めた甲社会員らは,その内容はうそではなく,真実であると信じていたと認められる。 確かに,Eを含めた甲社会員らが,甲社の活動期間中,現金受入れ等に関する被告人のうその真実性を疑う場面がなかったわけではなく,その旨の供述をしている者もいる。しかし,甲社の事業が破綻に至るまでは一応配当は支払われていたこと,シンガポール等の海外の拠点から資金を国内に移動させることが滞って いるとの被告人の発言や,被告人がシンガポールにばく大な財産を保有していることを否定する根拠はなかったことからすると,甲社の破綻に至るまでは,Eらが現金受入れ等に関する被告人のうそが真実でないと認識するに至ることはなかったといえる。 第5 受領金が最終的に誰の手に渡ったかについて 1 B ったことからすると,甲社の破綻に至るまでは,Eらが現金受入れ等に関する被告人のうそが真実でないと認識するに至ることはなかったといえる。 第5 受領金が最終的に誰の手に渡ったかについて 1 BグループについてBグループについては,本件各犯行がなされた平成28年7月22日頃から平成29年8月20日頃までの間は,Vチーム以外についてはTが,VチームについてはWが,被告人の指示を受け,受領金から,イニシャルフィーに加え,配当金及びランニングフィーに充てる現金まで差し引き,その残額から被告人が指定する金額を被告人又は被告人の代理の者に届けていた旨,T及びWがそれぞれ供述する。 T及びWは,被告人から報告を受けてから届けるまでの過程について詳細に供述しており,その供述内容に不自然な点はない。また,被告人がTらに預り金について報告させていたことや,現金受入れ等に関する被告人のうそを甲社会員らが信じ,被告人が受領金を運用することになっていたこととも整合している。さらに,T及びWが,受領金から何を差し引いて被告人に渡したかについて虚偽の供述をする動機は見当たらない。したがって,T及びWの前記供述は信用することができ,Bグループについては,受領金から,イニシャルフィーに加え,配当金及びランニングフィーに充てる現金を差し引いた残額を被告人が手にしていたことが認められる。 2 AグループについてFは,平成26年からは,被告人の指示を受けたFが,受領金から,イニシャルフィーと経費相当額に加え,配当金及びランニングフィーに充てる現金まで差し引き,その残額を被告人又はTなど被告人の代理の者に渡しており,Aグループは最後までこのやり方をしていた旨供述する。 Aグループの受領金の取扱状況は,前記Bグループの方法と一致しており,Bグルー 残額を被告人又はTなど被告人の代理の者に渡しており,Aグループは最後までこのやり方をしていた旨供述する。 Aグループの受領金の取扱状況は,前記Bグループの方法と一致しており,Bグループと同様,現金受入れ等に関する被告人のうそをEF夫妻を含む甲社会員らが信じ,被告人が受領金を運用することになっていたこととも整合している。また,Tは,被告人の指示で,神戸の甲社の本社の事務所に現金を取りに行き,Fから受け取ったことがあると供述しており,Fが残額を被告人の代理の者に渡すこともあったという供述は,Tの供述とも整合するものである。 さらに,Fは,①平成25年9月に事務所を立ち上げた当初は,甲社のリーダーが同事務所に持参した受領金を,被告人が直接受け取っていた,②その後,A,B各グループとも,Fが,受領金からイニシャルフィー及び経費相当額を除いた金額を被告人に渡し,毎月,被告人から配当金及びランニングフィーに充てる現金を受け取っていた,③Bグループでは,平成26年秋頃からSが受領金を回収するようになったと供述している。これらの供述は,供述内容が詳細で具体的であるというだけではなく,①については,N及びG,②③についてはSも同様の供述をしている。 したがって,Aグループの受領金の取扱い状況がBグループと一致していることや,現金受入れ等に関する被告人のうそをEF夫妻を含む甲社会員らが信じ,被告人が受領金を運用することになっていたことと整合すること,供述するような取扱状況になった経過について詳細に説明し,その内容がNらの供述とも一致していることからすると,本件各犯行当時,被告人の指示を受けたFが,受領金から,イニシャルフィーと経費相当額に加え,配当金及びランニングフィーに充てる現金まで差し引き,その残額を被告人又は被告人の代理の者に渡し らすると,本件各犯行当時,被告人の指示を受けたFが,受領金から,イニシャルフィーと経費相当額に加え,配当金及びランニングフィーに充てる現金まで差し引き,その残額を被告人又は被告人の代理の者に渡していたとするFの供述は信用することができる。 3 被告人の供述の信用性被告人は,受領金からフィーや必要経費を引いた残額等の現金について,Aグループからは受け取っておらず,Bグループからは平成27年4月からは受け取っていたが,そのままEやFに渡していたと供述する。 しかし,平成27年4月から11月頃までBグループの現金を被告人に届けていたSは,回収した受領金のうち経費相当額を繰り返しFに届けていたと供述しているのであるから,受領金のうち運用に充てられるべき分もEやFに届けられるべきものであったのであれば,その機会に渡すはずである。これに対し,被告人は,Bグループの回収役らが,全国各地にいる被告人に渡しに行ってから,被告人がEやFに渡すという迂遠な方法をとる理由について具体的な説明をしていない。 また,被告人は,Bグループの者に頻繁に預り金の金額を報告させていたことについて,営業で誰が頑張っているか知るために聞いていただけで,どれくらいお金が集まったかなどに関心はなかったと述べる。しかし,被告人は,後述するとおり自身は広告塔でしかなかったと述べているのであり,それならばS等の評価権者でもなく,預り金の多寡によって自身の得る利益が変わるわけでもないことになるはずであり,Tは月2回,Wは月末の1週間ないし10日前から月末にかけてほぼ毎日,Sに至ってはほぼ毎日という高頻度で報告させる必要はない。頻繁に預り金の金額を報告させていたのは,最終的に自らがこれを取得するからであると考えるのが最も合理的である。 以上のとおり,被告人は,前記 Sに至ってはほぼ毎日という高頻度で報告させる必要はない。頻繁に預り金の金額を報告させていたのは,最終的に自らがこれを取得するからであると考えるのが最も合理的である。 以上のとおり,被告人は,前記供述のような方法をとっていた理由や,頻繁に預り金の金額を報告させていた理由について合理的な説明ができておらず,被告人の供述を信用することはできない。 4 弁護人の主張弁護人は,被告人が数十億円にのぼる金銭を費消したとの裏付けがないので,被告人が受領金からフィーや必要経費,配当金を引いた残額(弁護人の主張では数十億円にのぼる。)という大金を受け取っていたとはいえないと主張する。しかし,被告人に対し,受領金から配当金等を引いた残額を現金で被告人に手渡していたとのFやTの供述は前記のとおり十分信用することができるから,費消先の裏付けがないことが被告人が大金を受け取っていないということを意味す るとはいえない。したがって,弁護人の主張には理由がない。 5 小括以上のとおり,A,B各グループとも,受領金のうち,配当金,フィー及び経費相当額を除いた残金は最終的に被告人の手に渡ったことが認められる。 第6 前記第3ないし第5のまとめ以上のとおり,被告人は,丁で多額の出資金を集めていたEらの顧客勧誘の経験や人脈等を用いて出資者を募ろうと考え,Eらに対し,自らがシンガポールを拠点とする金融のプロであるなどの虚偽の事実を伝えつつ,自分が資金を運用すれば利益が出るなどと告げて,出資者を募って現金を集めるよう求め,甲社の主要メンバーその他の会員らに対し,折りに触れて,受領金は,被告人が,その右腕であるQのトレードや海外のヘッジファンドでの運用等の原資として運用する旨のうそや,最終的には被告人のばく大な資産によって受領金の元本及び配当金の に対し,折りに触れて,受領金は,被告人が,その右腕であるQのトレードや海外のヘッジファンドでの運用等の原資として運用する旨のうそや,最終的には被告人のばく大な資産によって受領金の元本及び配当金の支払を担保できる旨のうそを言い,これを信じた甲社の会員らが,顧客に対し,受領金の運用や被告人の資産で受領金の元本及び配当金の支払が約定どおり受けられる旨申し向けて現金を受け入れていたのであり,被告人は,受領金のうち,配当金,フィー及び経費相当額を除いた残金を受け取りながら,これを運用しなかったことはもちろん,自ら運用する意思も,他者に運用させる意思もなく,かつ,累積的に増加する元本等の支払を担保するに足る資産を保有していなかったことが認められ,本件各犯行も,現金受入れ等に関する被告人のうそを信じた甲社の会員らの活動の一環として敢行されたものであることは明らかである。したがって,本件各犯行時,被告人が情を知らない甲社会員らの勧誘行為を通じて被害者らを騙す意思,すなわち,詐欺の故意を有していたということができる。 第7 甲社の支配者について(被告人とEの力関係)被告人は,Eが裏で被告人を操っており,自分は甲社の広告塔に過ぎないと供述し,弁護人もこれに沿う主張をするため,以下では,甲社の支配者が誰であっ たと認められるかについて検討する。 1 甲社会員らの供述甲社の各リーダーその他の幹部会員らは,一様に,同社の最高権力者は被告人であった旨供述している。 2 信用性前記甲社会員らは,Eが被告人に最終的な判断を仰いでいた,被告人はEに砕けた口調で話し,Eは被告人に敬語で話していた,被告人がEを叱責している場面があったなど,最高権力者が被告人であると考えた理由を具体的に説明している。また,甲社会員らの供述は,受領金のうち,配 に砕けた口調で話し,Eは被告人に敬語で話していた,被告人がEを叱責している場面があったなど,最高権力者が被告人であると考えた理由を具体的に説明している。また,甲社会員らの供述は,受領金のうち,配当金,フィー及び経費相当額を除いた残金を最終的に被告人が受け取っていること,すなわち被告人が利益の大半を得ていたこととも整合するものである。また,Eが拠出した甲社の資本金2000万円を,NとOが被告人から受け取り,被告人の指示により,一旦銀行口座に入金してからすぐに出金し,その全額が被告人の個人的な返済に充てられたことはEが被告人を裏で操っていたのならありえないことである。さらに,被告人が,甲社の社長を決める選挙を実施させた上,自らの一存で投票結果を覆し,Eを社長に留任させたことや,甲社の中核的な役職であるディレクターの任命権限は被告人にあり,被告人の指名又は承諾がなければディレクターに就任できなかったことなども,被告人が最高権力者であることを裏付けている。 3 被告人の供述の信用性被告人は,最高権力者として振る舞っていたものの,Eが裏で操っていたと供述する。 被告人は,最高権力者として振る舞っていたエピソードのうち,ディレクターの任命について,裏でEがあらかじめ昇格させる人を決めていたと供述し,EがBグループと仲が悪いので被告人が指示したように装ったのではないか,と供述する。しかし,被告人はBグループのみならずEが率いるAグループのマネー ジャーもディレクターに昇格させているのであるから,合理的な説明ができているとはいえない。そもそも,Eは,丁において窮地に陥っていて,被告人に救済を求める立場であったところ,素早く丁の破綻を見抜いたり,資産家ぶりを見せつけたりした被告人に導かれて,甲社の事業に参加したのである。そのよう そもそも,Eは,丁において窮地に陥っていて,被告人に救済を求める立場であったところ,素早く丁の破綻を見抜いたり,資産家ぶりを見せつけたりした被告人に導かれて,甲社の事業に参加したのである。そのような被告人とEの力関係が逆転したきっかけは見い出せず,Eが被告人を裏で操っていたというのは不自然,不合理といわざるを得ない。その他,被告人が最高権力者として振る舞っていた行為についても,具体的,合理的な説明ができておらず,被告人の供述を信用することはできない。 4 弁護人の主張弁護人は,甲社の経理を担当していたFが入力していたZデータについて,Fが被告人に見せておらず,被告人が甲社の経理に関与していなかったこと等を理由に,被告人は甲社の最高権力者ではなかったと主張する。しかし,Fが被告人にZデータを見せなかったのは,被告人が見せるよう指示しなかったからであり,また,規模が大きく,集金額の多いBグループについては,被告人は,頻繁にSらから預り金の金額の報告を受けていたものである。さらに,そもそも受領金から配当金,フィー及び経費相当額を差し引いた残額をFやSらが毎回被告人に渡していたことからすると,被告人がZデータを見ようとしなかったこと自体は何ら不自然ではない。したがって,弁護人の主張には理由がない。 第8 受領金の返済計画等に関する被告人の供述について 1 被告人の供述内容被告人は,①甲社では,元本保証と毎月3パーセント程度の配当支払を約束して預り金をするところ,甲社がシンガポールの丙社発行の転換社債を購入して同社に投資し,その資金で丙社が東南アジアに子会社を作って優良企業を買収し,売上げと利益を上げて,3年後に時価総額の低いシンガポールの上場会社を買収して丙社をシンガポールの証券取引所に上場すれば,株価が10倍程度に値上がり 社が東南アジアに子会社を作って優良企業を買収し,売上げと利益を上げて,3年後に時価総額の低いシンガポールの上場会社を買収して丙社をシンガポールの証券取引所に上場すれば,株価が10倍程度に値上がりし,多額の上場益を手に入れる計画があったが,上場には時間がかか り,3年間は上場益が出ないため,預り金の一部をそのまま別の預り金の配当に充てるが,丙社が3年かけて上場すれば,ばく大な上場益で,累積した受領金の元本を一気に全て確実に返済できると思っていた,②もっとも,これは表に出せないやり方であり,かつ,そのやり方をありのままに伝えたら顧客からお金が集まらないため,このやり方に代わる虚偽の投資話で勧誘して顧客から出資を募っていたと供述し,弁護人もこれに沿う主張をする。 2 信用性丙社を上場させるために甲社で受け入れた受領金を丙社に投資する計画があったと供述する者は被告人以外にいない上,以下のとおり,被告人の供述内容は極めて不合理であると言わざるを得ない。 まず,確実に高配当と元本保証を実現できる方法でありながら,表には出せず,それを伝えたら顧客からお金が集まらないというのはいかにも不自然,不合理であるし,顧客が知れば集金が期待できない手法を,被告人自身は間違いのない確実なものだと信じていたというのも甚だ不可解である。また,被告人は,被告人供述を前提としても甲社から報酬と経費を合わせて毎月200万円から2000万円を受け取っていたにもかかわらず,甲社に出資していない。 また,被告人は,毎月シンガポールに帰った際に,Pと食事をしながら,Pから状況の報告を聞いていたとするものの,被告人は,最終的に10倍程度に値上がりするはずの丙社発行の転換社債を甲社が取得したかどうかすら確認しておらず,その購入額も聞かず,丙社が上場を目指して発行し ら状況の報告を聞いていたとするものの,被告人は,最終的に10倍程度に値上がりするはずの丙社発行の転換社債を甲社が取得したかどうかすら確認しておらず,その購入額も聞かず,丙社が上場を目指して発行した転換社債でどの程度の資金を集めたかも聞いていないと供述しており,Pから聞いていた内容はあまりにも抽象的である。これらは,甲社の事業の帰趨を決定する極めて重要な事項であるのに,多数回に及ぶ会話の中で,前記のような事項についてPに確認していないというのは不自然,不合理であるといわざるをえない。 さらに,平成25年9月頃からあと3年で上場するという話があったにもかかわらず,3年が経過した平成28年9月時点でも丙社は上場しなかったが,そ の理由についても,Pから丙社の台湾の事業が政府の関係で延びたと聞いたという曖昧な説明しかできていない。甲社では,平成28年半ば頃から,配当金の支払に充てる現金すら不足する地区が現れるようになっていたのであるから,Pに対し,台湾の事業の進捗状況や,丙社の上場話の進捗状況について,しかるべき確認をしないというのは不自然,不合理である。なお,被告人は,丙社の上場話が順調に進んでいると思った根拠として,同社が,その売上げを伸ばすべく,台湾の事業を行う庚社及びきのこの会社(関係各証拠から辛社と認められる。)を買収した話を挙げている。しかし,E,Pらは,両社の事業はいずれも失敗に終わっており,平成28年8月頃,台湾の事業に個人的に投資した甲社会員の損失を補填するため,被告人の了承の下で,その投資額に対応する甲社の借用書を発行したということを供述している。被告人は,これに対し,事業が失敗したのではなく遅れるという話であったと弁解するが,甲社会員からPが追及される場に居合わせ,甲社の借用書の発行を了承した被告人が,台湾 行したということを供述している。被告人は,これに対し,事業が失敗したのではなく遅れるという話であったと弁解するが,甲社会員からPが追及される場に居合わせ,甲社の借用書の発行を了承した被告人が,台湾の事業が失敗に終わったことを把握できないはずはない。 加えて,被告人は,捜査段階の取調べでは,丙社のシンガポールでの上場の話をしていない。その理由として,Pに上場の話をオープンにしないでくれと言われていたから,Pにいろいろ面倒を見てもらっていたのでPのことを言うのを迷ったからなどと供述するが,上場をオープンにしない理由についてPにあまり聞いていないとも述べており,このような重要な事柄を聞かないのは不合理である。また,前記取調べ時には既に甲社の事業は破綻し,自らの身柄が拘束された段階である上,前記のとおり,上場話の期限である平成28年9月頃はもちろん,取調べ時点でも丙社は上場していなかったことも併せ考えると,もはや捜査機関に対して丙社の上場の話をすることに支障はなかったはずである。供述の変遷の理由を合理的に説明できていない。 以上のとおり,被告人の丙社の上場についての話には具体性がない上,台湾の事業の失敗とも整合せず,捜査段階の供述からも不自然に変遷しており,信用す ることはできない。 3 弁護人の主張弁護人は,丙社は,被告人に対し,シンガポールのマンションの家賃等で3年間で約2億8000万円,年間約9000万円を立て替えていたところ,年商5000万円の丙社が立て替えるのは経済的に不合理であり,前記立替金はEから丙社に投資金(転換社債の購入代金)と共に渡されていたと考えるのが合理的であると主張する。しかし,Pは,約2億8000万円のうちの半分の1億4000万円は被告人から返してもらったと供述している上,甲社から丙社に多額 社債の購入代金)と共に渡されていたと考えるのが合理的であると主張する。しかし,Pは,約2億8000万円のうちの半分の1億4000万円は被告人から返してもらったと供述している上,甲社から丙社に多額の資金が移転したという話はP,Eはもちろん,甲社の誰も供述していない。また,仮に,甲社が丙社発行の転換社債を購入するなど投資していたならば,そのことは甲社内部では隠すことではないのであるから(むしろ,丙社の上場後に多額の上場益を得るには記録を残しておく必要がある。),何らかの資料が残っているはずであるが,そのようなものは見当たらない。したがって,弁護人の主張には理由がない。 第9 結論以上により,前記被告人の供述や弁護人の主張を踏まえても,被告人が判示第1の行為当時,詐欺の故意を有していたことが認められる。 (量刑の理由)被告人は,自らが海外で成功した金融のプロで,かつ,ばく大な資産を保有する資産家であるなどとうそをつき,言葉巧みに丁の関係者を次々と自らの配下に取り込み,新たに設立された甲社をピラミッド構造の大規模な組織に拡大させて,最高権力者としてその頂点に君臨した上で,情を知らない組織の幹部から末端の会員に至るまでを自らの手足として利用し,多数の顧客をして,金銭を預ければ,受領金の運用や被告人の資産でその元本及び高利の配当金の支払を約定どおり受けられるものと誤信させ,全国に広がる顧客から現金を交付させている。以上のとおり,本件各犯行は,被告人が,自らを頂点とする組織に所属する者たちを欺き続け,これら被告人に 欺かれた者を更に新たな欺罔行為を行う勧誘者として新たな犯行に及ぶという犯行の連鎖を繰り返させ,その一環として敢行された,常習的,職業的犯行である。また,本件各犯行は,元本を保証した上で,毎月預り金の2パーセントない たな欺罔行為を行う勧誘者として新たな犯行に及ぶという犯行の連鎖を繰り返させ,その一環として敢行された,常習的,職業的犯行である。また,本件各犯行は,元本を保証した上で,毎月預り金の2パーセントないし3パーセントという高利の配当を行う旨約し,実際に約定どおりの配当を毎月継続して支払うなどの実績を作って確実かつ高利の利殖を期待する顧客心理につけ込んだ上,全国規模で各種会議や被告人が歌を歌う芸能人さながらのライブまで開催するなど,顧客を確実に騙す演出をしていたものであり,巧妙かつ大胆なものである。さらに,本件各犯行の被害者は合計8名であり,被害額は合計1億円もの多額に及んでいる。被害者らには,配当や被告人以外の勧誘者による弁済により,合計600万円余りが支払われたにすぎず,被害額の多さと比較して被害回復はほとんどなされていないと評価せざるをえず,被害者の多くが強い処罰感情を表明しているのも当然である。加えて,被告人は,事業に失敗するなどし,億単位の負債を抱える中で,丁の関係者らを欺いて現金の受入れを始め,その後,配当の支払に充てる金銭すら不足する事態になっても,現金の受入れの継続を思い止まるどころか,更に多くの受領金を集めるよう配下の会員らに指示するなどした上で本件各犯行に及んだものであるから,本件各犯行は,強い利欲的動機に基づくものと認められ,犯行に至る経緯及び動機に酌量の余地は全くない。なお,被告人が被害額のうち,どの程度を実際に手にしたのかを特定することは困難であるが,前記で認定したとおり,受領金から配当金,フィー,経費等を控除した残額を受け取っていたことからすると,相当の金額を手に入れていたといえる。 前記のような犯罪事実に関する事情に照らすと,被告人の刑事責任は重く,相当長期の服役はやむを得ない。 他方,被告人には前科がないこ 取っていたことからすると,相当の金額を手に入れていたといえる。 前記のような犯罪事実に関する事情に照らすと,被告人の刑事責任は重く,相当長期の服役はやむを得ない。 他方,被告人には前科がないことなどの有利な事情はあるものの,不合理な弁解に終始して責任を逃れようとする姿勢がみえることや,被告人自身は被害者らに対して慰謝の措置を一切講じていないこと(なお,先述した配当や被告人以外の勧誘者による弁済により,合計600万円余りの被害回復がなされている点については,1億 円の被害額からすればごく一部の被害回復にとどまり,被告人の出捐によるものでもない以上,量刑上の考慮はごく限定的である。)等の事情を踏まえると,被告人に対しては,主文の懲役刑を科した上で,出資法違反の犯罪が経済的に見合わないことを感得させるために罰金刑を併科するのが相当であると判断した。 (求刑-懲役10年及び罰金200万円)令和3年6月16日名古屋地方裁判所刑事第3部 裁判長裁判官宮本聡 裁判官西前征志 裁判官大井友貴
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