- 1 -平成23年11月24日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成23年(行ケ)第10079号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成23年11月10日判決原告 X同訴訟代理人弁護士大津卓滋原田活也佐藤一誠同補佐人弁理士麦島 隆被告特許庁長官同指定代理人宮崎 恭山口由木黒瀬雅一板谷玲子 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が訂正2010-390107号事件について平成23年2月2日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,原告の本件出願に係る特許請求の範囲の請求項1,4及び5を下記2のとおりとする訂正審判の請求について,特許庁が同請求は成り立たないとした別紙審決書(写し)記載の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4の取消事由があると主張して,その取消 - 2 -しを求める事案である。 1 特許庁における手続の経緯(1) 原告は,発明の名称を「法面の加工方法および法面の加工機械」とする特許第2008978号( ると主張して,その取消 - 2 -しを求める事案である。 1 特許庁における手続の経緯(1) 原告は,発明の名称を「法面の加工方法および法面の加工機械」とする特許第2008978号(平成2年9月12日特許出願。同8年1月11日設定登録。 請求項の数は全9項。以下「本件特許」という。)に係る特許権者である(甲3)。 (2) 原告は,平成22年10月20日,本件特許のうち請求項1,4及び5について,訂正することを求める審判請求をし,特許庁に訂正2010-390107号事件として係属した。 (3) 特許庁は,平成23年2月2日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との本件審決をし,同月10日,その謄本が原告に送達された。 2 本件訂正の内容本件訂正は,次のとおり,訂正事項1ないし3からなる。なお,下線部が訂正部分である。以下,本件訂正後の各請求項に係る発明を,請求項の番号に従って「本件訂正発明1」,「本件訂正発明4」及び「本件訂正発明5」という。 (1) 訂正事項1(請求項1の訂正)訂正前:土砂等の切取り,掘削等の作業を行ない法面を形成する部位の上部の地面に所定間隔離間させて左右のアンカーを固定する左右のアンカー固定工程と,土砂等の切取り,掘削等の作業を行なうバックホウ等の油圧で走行したり作動される法面の加工機械本体に前記左右のアンカーにワイヤーがそれぞれ取付けられた左右のウインチあるいは前記左右のアンカーに固定された左右のウインチのワイヤーを前記法面の加工機械本体に取付ける左右のウインチ取付け工程と,前記法面の加工機械本体および前記左右のウインチを作動させて法面を形成する部位の土砂の切取り,掘削等の作業を行なう法面形成工程とを含むことを特徴とする法面の加工方法訂正後:土砂等の切取り,掘削等の作業を行ない 機械本体および前記左右のウインチを作動させて法面を形成する部位の土砂の切取り,掘削等の作業を行なう法面形成工程とを含むことを特徴とする法面の加工方法訂正後:土砂等の切取り,掘削等の作業を行ない法面を形成する部位の上部の地面に所定間隔離間させて左右のアンカーを固定する左右のアンカー固定工程と,土砂等の切取り,掘削等の作業を行なうバックホウ等の油圧で走行したり作動される - 3 -法面の加工機械本体に前記左右のアンカーにワイヤーがそれぞれ取付けられた左右のウインチあるいは前記左右のアンカーに固定された左右のウインチのワイヤーを前記法面の加工機械本体に取付ける左右のウインチ取付け工程と,前記法面の加工機械本体および前記左右のウインチを作動させて,前記加工機械本体を,前記加工機械本体の幅よりも広い前記左右のアンカーの幅寸法間にわたって左右および上下方向に移動させて法面を形成する部位の土砂の切取り,掘削等の作業を行なう法面形成工程とを含むことを特徴とする法面の加工方法(2) 訂正事項2(請求項4の訂正)訂正前:バックホウ等の油圧で走行したり作動する法面加工機械本体と,このバックホウ等の法面の加工機械本体に取付けられた左右のウインチと,この左右のウインチから伸縮されるワイヤーを固定する法面を形成する部位の上部の地面に所定間隔離間されて固定される左右のアンカーとからなることを特徴とする法面の加工機械訂正後:バックホウ等の油圧で走行したり作動する法面加工機械本体と,このバックホウ等の法面の加工機械本体に取付けられた左右のウインチと,この左右のウインチから伸縮されるワイヤーを固定する,法面を形成する部位の上部の地面に前記加工機械本体の幅よりも広い間隔離間させて固定される左右のアンカーとからなることを特徴とする法面の加工機 と,この左右のウインチから伸縮されるワイヤーを固定する,法面を形成する部位の上部の地面に前記加工機械本体の幅よりも広い間隔離間させて固定される左右のアンカーとからなることを特徴とする法面の加工機械(3) 訂正事項3(請求項5の訂正)訂正前:バックホウ等の油圧で走行したり作動する法面の加工機械本体と,法面が形成される部位の上部の地面に所定間隔離間されてアンカーで固定された左右のウインチと,この左右のウインチから伸縮されるワイヤーを前記法面の加工機械本体に取付ける取付け金具とからなることを特徴とする法面の加工機械訂正後:バックホウ等の油圧で走行したり作動する法面の加工機械本体と,法面が形成される部位の上部の地面に前記加工機械本体の幅よりも広い間隔離間させたアンカーで固定された左右のウインチと,この左右のウインチから伸縮されるワイ - 4 -ヤーを前記法面の加工機械本体に取付ける取付け金具とからなることを特徴とする法面の加工機械 3 本件審決の理由の要旨(1) 本件審決の理由は,要するに,①本件訂正発明1は,下記ア及びイの引用例1及び2に記載された各発明等並びに慣用の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,その訂正は,同法126条5項に適合しない,②本件訂正発明4は,引用例1及び2に記載された各発明等並びに慣用の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,同法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,その訂正は,同法126条5項に適合しない,③本件訂正発明5は,引用例1及び2に記載された各発明並びに慣用の技術に基づいて当業者が容易に発明を の際独立して特許を受けることができないものであるから,その訂正は,同法126条5項に適合しない,③本件訂正発明5は,引用例1及び2に記載された各発明並びに慣用の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,同法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,同法126条5項に適合しない,というものである。ただし,本件の特許出願は,前記1(1)のとおり,平成2年9月12日であるから,本件審決の理由中の特許法126条5項との記載は,平成6年法律第116号による改正前の特許法126条3項の誤記であると認める。 ア引用例1:特開平2-144415号公報(平成2年6月4日公開。甲1)イ引用例2:特開昭61-176703号公報(甲2)(2) なお,本件審決が認定した引用例1記載の発明(以下「引用発明1a」という。)並びに本件訂正発明1と引用発明1aとの一致点及び相違点,引用例1記載の発明(以下「引用発明1b」という。)並びに本件訂正発明4と引用発明1bとの一致点及び相違点,本件訂正発明5と引用発明1bとの一致点及び相違点は,次のとおりである。 ア引用発明1a:破砕作業を行う傾斜した補強面の上方に,左,中,右の位置に設置した3つの巻取機がそれぞれ取り付けられた基台を,左と右の基台の間隔が - 5 -破砕機を搭載した台車の幅よりも広くなるよう,間隔をあけてアンカーにより地面に固着し,破砕作業を行う破砕機を搭載した台車に前記巻取機のワイヤーを係止する工程と,中に設置した巻取機に巻回され,台車のベースに設けられた固定連結具に係止された主ワイヤーによって,主として台車の重量を支え,台車の昇降移動を行うとともに,左右に設置した巻取機に巻回され,台車のベースに軸を介して回動自在に取 れ,台車のベースに設けられた固定連結具に係止された主ワイヤーによって,主として台車の重量を支え,台車の昇降移動を行うとともに,左右に設置した巻取機に巻回され,台車のベースに軸を介して回動自在に取付けられた可動連結具の先端に係止され,事故等により主ワイヤーが緩んだり切れたような場合に台車の落下を防止する機能を有する左ワイヤー及び右ワイヤーによって,可動連結具を回動させて台車の舵取りを行い,主として台車を左右方向へ移動し,破砕機で破砕作業を行う工程を含む傾斜した補強面の改修方法イ本件訂正発明1と引用発明1aとの一致点:法面を形成する部位の上部の地面に間隔をあけてアンカーを固定するアンカー固定工程と,法面の加工機械本体に,前記のアンカーに固定されたウインチのワイヤーを取付けるウインチ取付け工程と,前記法面の加工機械本体及び前記ウインチを作動させて加工機械本体を左右及び上下方向に移動させて法面を形成する作業を行なう法面形成工程とを含む法面の加工方法ウ本件訂正発明1と引用発明1aとの相違点(ア) 本件訂正発明1は,法面を形成する作業が土砂等の切取り,掘削等の作業であって,その作業を行う加工機械本体はバックホウ等の油圧で走行したり作動されるものであるのに対し,引用発明1aは,法面を形成する作業が破砕作業であり,その作業を行う加工機械本体が油圧により作動される破砕機を搭載した台車であるものの,台車が油圧で走行するかは不明な点(イ) 本件訂正発明1は,加工機械本体を左右及び上下に移動させるためのアンカー及びウインチが,法面及び加工機械本体の「左右」,すなわち2つ設けられており,当該左右のウインチを作動させて,加工機械本体を加工機械本体の幅よりも広い左右のアンカーの幅寸法間にわたって左右及び上下に移動させるものであるのに対し, 本体の「左右」,すなわち2つ設けられており,当該左右のウインチを作動させて,加工機械本体を加工機械本体の幅よりも広い左右のアンカーの幅寸法間にわたって左右及び上下に移動させるものであるのに対し,引用発明1aでは,アンカー及びウインチが補強面及び台車の「左,中, - 6 -右」,すなわち3つ設けられており,「中」に設置されたウインチに巻回されている主ワイヤーによって,主として台車を上下に移動させ,「左右」に設置されたウインチに巻回されている左右ワイヤーによって,主として台車を左右方向へ移動させるものであり,左及び右のウインチの間隔が台車の幅よりも広いものの,その幅寸法間にわたって移動させて作業を行っているか,明確ではない点(以下「本件相違点1」という。)(ウ) ウインチ取付け工程について,本件訂正発明1は,法面の加工機械本体にウインチを取り付けるか,あるいはアンカーに固定されたウインチのワイヤーを法面の加工機械本体に取付けるか,の二者択一となっているのに対し,引用発明1aは,アンカーに固定されたウインチのワイヤーを加工機械本体に取り付けたものである点エ引用発明1b:破砕機を搭載した台車と,傾斜した補強面の上方にアンカーにより地面に固着された基台に取り付けられ,左,中,右の位置に,左と右の基台の間隔が破砕機を搭載した台車の幅よりも広くなるよう,間隔をあけて設置された3つの巻取機と,左右に設置した巻取機に巻回され,台車のベースに軸を介して回動自在に取付けられた可動連結具の先端に係止されており,台車の左右方向への移動を受け持つとともに,事故等により主ワイヤーが緩んだり切れたような場合に台車の落下を防止する機能を有する左ワイヤー及び右ワイヤーと,中に設置した巻取機に巻回され,台車のベースに設けられた固定連結具に係止されており, に,事故等により主ワイヤーが緩んだり切れたような場合に台車の落下を防止する機能を有する左ワイヤー及び右ワイヤーと,中に設置した巻取機に巻回され,台車のベースに設けられた固定連結具に係止されており,主として台車の重量を支え,台車の昇降移動を受持つ機能を有する主ワイヤーとを備えた地山補強面破砕装置オ本件訂正発明4と引用発明1bとの一致点:法面の加工機械本体と,ウインチと,このウインチから伸縮されるワイヤーを固定する,法面を形成する部位の上部の地面に互いに離間されて固定されるアンカーとからなる法面の加工機械カ本件訂正発明4と引用発明1bとの相違点(ア) 法面加工機械本体について,本件訂正発明4はバックホウ等の油圧で走行 - 7 -したり作動されるものであるのに対し,引用発明1bは傾斜した補強面上を走行可能で,油圧により作動される破砕機を搭載した台車であるものの,台車が油圧で走行するか不明な台車である点(イ) 本件訂正発明4は,アンカー及びウインチが法面及び加工機械本体の「左右」,すなわち2つ設けられ,左右のアンカーは,加工機械本体の幅よりも広い間隔離間させて固定されているのに対し,引用発明1bでは,アンカー及びウインチについて,左右に設けられたアンカー及びウインチの間隔は,台車の幅よりも広い間隔に離間させて固定されているものの,補強面及び台車の「左,中,右」,すなわち3つ設けられている点(以下「本件相違点2」という。)(ウ) 本件訂正発明4は,ウインチが法面加工機械本体に取り付けられ,ワイヤーがアンカーに固定されているのに対し,引用発明1bは,巻取機(ウインチ)がアンカーにより固着された基台に取り付けられ,ワイヤーが台車の可動連結具及び固定連結具に係止されている点キ本件訂正発明5と引用発明1bとの一致 るのに対し,引用発明1bは,巻取機(ウインチ)がアンカーにより固着された基台に取り付けられ,ワイヤーが台車の可動連結具及び固定連結具に係止されている点キ本件訂正発明5と引用発明1bとの一致点:法面の加工機械本体と,法面が形成される部位の上部の地面に互いに離間させたアンカーで固定されたウインチと,このウインチから伸縮されるワイヤーを前記法面の加工機械本体に取付ける取付け金具とからなる法面の加工機械ク本件訂正発明5と引用発明1bとの相違点(ア) 法面加工機械本体について,本件訂正発明5はバックホウ等の油圧で走行したり作動されるものであるのに対し,引用発明1bは傾斜した補強面上を走行可能で,油圧により作動される破砕機を搭載した台車であるものの,台車が油圧で走行するか不明な台車である点(イ) 本件訂正発明5は,アンカー及びウインチが法面及び加工機械本体の「左右」,すなわち2つ設けられ,左右のアンカーは,加工機械本体の幅よりも広い間隔離間させて固定されているのに対し,引用発明1bでは,アンカー及びウインチについて,左右に設けられたアンカー及びウインチの間隔は,台車の幅よりも広い - 8 -間隔に離間させて固定されているものの,補強面及び台車の「左,中,右」,すなわち3つ設けられている点(以下「本件相違点3」という。) 4 取消事由(1) 本件訂正発明1の進歩性に係る判断の誤り(取消事由1)ア引用発明1aの認定の誤りイ引用発明2の認定の誤りウ本件相違点1に係る判断の誤り(2) 本件訂正発明4の進歩性に係る判断の誤り(取消事由2)ア引用発明1bの認定の誤りイ引用発明2の認定の誤りウ本件相違点2に係る判断の誤り(3) 本件訂正発明5の進歩性に係る判断の誤り(取消事 進歩性に係る判断の誤り(取消事由2)ア引用発明1bの認定の誤りイ引用発明2の認定の誤りウ本件相違点2に係る判断の誤り(3) 本件訂正発明5の進歩性に係る判断の誤り(取消事由3)ア引用発明1bの認定の誤りイ引用発明2の認定の誤りウ本件相違点3に係る判断の誤り第3 当事者の主張 1 取消事由1(本件訂正発明1の進歩性に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 引用発明1aの認定の誤りア本件審決は,引用発明1aの左右のワイヤーは主として台車を左右方向へ移動させるためのものであるが,台車の左右方向への移動を行うべく左右巻取機及びワイヤーの操作を行うと,台車へワイヤーの水平分力が作用するとともにワイヤーの張力の垂直分力がかかるものであるから,台車の昇降移動には,左右のワイヤーの張力の垂直分力も作用していると判断している。 しかし,引用例1には,「1本のワイヤーで昇降させ,左右への移動は,台車に設けられた舵取り機構を別個の駆動源で操作して行うようにしてもよい。」と記載 - 9 -されているところ,左右のワイヤーは,この「別個の駆動源」に相当するものであり,舵取り機構を遠隔操作する操舵機構にすぎない。左右のワイヤーが舵取り機能を果たすということは,1本の主ワイヤーで昇降方向の牽引力を果たしていることを意味するものである。 仮に,左右のワイヤーが台車の荷重を多少負担しているとしても,左右のワイヤーの水平分力は主たる荷重を負担する主ワイヤーの牽引方向に規制され,左右への移動は車輪が傾いた方向にわずかな幅でしかされない。 また,仮に,台車が左右に大きく移動できるのであれば,左右ワイヤーによる台車の荷重負担が主になるはずであるが,引用例1にはそのような記載はない。 イ次に 傾いた方向にわずかな幅でしかされない。 また,仮に,台車が左右に大きく移動できるのであれば,左右ワイヤーによる台車の荷重負担が主になるはずであるが,引用例1にはそのような記載はない。 イ次に,本件審決は,引用発明1aの左右のワイヤーが舵取りのみを行っているものであるとしても,そもそも引用発明1aと本件訂正発明1とは,法面を形成する部位の上部のウインチのワイヤーにより,加工機械本体を上下,左右に移動させる点では同じであると判断している。 しかし,左右のワイヤーが舵取りのみを行っているのであれば,台車は上下移動の際に車輪が傾いた方向にわずかな幅で傾くことはあっても,左右方向には移動しない。 また,引用例1の地山補強面破砕装置は,法面を形成するのではなく,既存の法面の補強面上を走行して破砕するものであり,法面形成に用いる本件訂正発明1とは走行時の抵抗が異なり,両者は共通しない。 ウまた,本件審決は,引用発明1aについて,左右の2本のワイヤーだけでも,その長さの変化により,台車の位置を上下,左右に変化させることができることは幾何学的にも自明であると判断している。 しかし,引用例1の地山補強面破砕装置の左右のワイヤーは舵取り機能しか有しないから,主ワイヤーが存在しなければ台車は上下,左右に移動することはできない。 エ被告の主張について - 10 -被告は,仮に左右のワイヤーが純粋にステアリング機能しか果たさない場合は,台車にかかる牽引力は,主ワイヤーによる鉛直方向のみとなるので,舵取り機構の従動によって車輪が斜め方向を向いていたとしても,台車が大きく斜めに進行することはできず,引用例1に記載された,左右のワイヤーが「台車の左右方向への移動を受け持つ」ことが実現されないこととなると主張する。 しかし,引用例1 向いていたとしても,台車が大きく斜めに進行することはできず,引用例1に記載された,左右のワイヤーが「台車の左右方向への移動を受け持つ」ことが実現されないこととなると主張する。 しかし,引用例1の地山補強面破砕装置は,補強面上を走行するものであり,斜め方向に進むに当たって抵抗が小さいから,左右のワイヤーの牽引力が小さくても,車輪が傾けばある程度左右に進むことができるのであり,左右のワイヤーを牽引に使う必要はない。 (2) 引用発明2の認定の誤り本件審決は,引用発明2はウインチを作動させる油圧モータの流量を変えることにより,アスファルトフィニッシャの向きを既舗装面から未舗装面との間の境界線に沿って左右方向に変えながら上昇移動することができるものであると認定している。 しかし,引用例2の法面処理用作業車の巻上装置は,アスファルトフィニシャ等の処理用作業車の直線的な移動を想定した発明であって,本件訂正発明1のような広範囲での左右方向の移動は想定していない。同装置の場合,一回の作業で形成される舗装範囲は,巻上機本体に搭載されている左右のウインチとアスファルトフィニッシャ前部の牽引フレームの左右の端部と互いに平行関係にある2本のワイヤーロープで形成される法面の1列にすぎない。作業員は,作業車が具備する舵取り手段を操作して作業車の向きを変えることはできるが,舗装済みの領域と未舗装領域との間の境界線に沿って上昇方向に移動させることができる程度の向きの変更にすぎず,作業車の幅よりも広い加工領域を上下,左右にわたって移動することは想定されていない。 (3) 本件相違点1に係る判断の誤りア本件審決は,引用発明2には,作業機械を上下に移動させるためのワイヤー - 11 -を左右2本とすることにより,作業機械の左右方向への制御がで 。 (3) 本件相違点1に係る判断の誤りア本件審決は,引用発明2には,作業機械を上下に移動させるためのワイヤー - 11 -を左右2本とすることにより,作業機械の左右方向への制御ができることが示唆されているから,引用発明1aにおける,上下移動のための中のワイヤー1本と左右移動のための左右のワイヤー2本からなる台車移動装置に代え,左右2本のワイヤーによって上下,左右の移動ができる装置を採用することは,当業者が容易に想到できたことであると判断している。 しかし,本件訂正発明1は,左右のワイヤーを逆ハ字状に張設し,加工機械本体と左右のウインチを作動させて加工機械本体をその幅よりも広い左右のアンカー幅寸法にわたって上下,左右に移動させて法面を形成することを特徴とするものであるところ,引用例1の地山補強面破砕装置の左右のワイヤーは,台車の舵取りを行うにすぎないものであるし,引用例2の法面処理用作業車の巻上装置の左右のワイヤーは,平行に張設することに限定されているのであり,加工機械本体や左右のウインチを作動させて加工機械本体をその幅よりも広い左右のアンカーの幅寸法にわたって上下,左右に移動させて法面を形成することに関する構成は全く開示されていない。そして,引用例2の法面処理用作業車の巻上装置の2本のワイヤーを引用例1の地山補強面破砕装置に適用した場合,舵取り機構の2本のワイヤーに置き換えることになり,それにより前輪は傾斜させることはできるが,左右のワイヤーで大きく牽引することはできない。 したがって,当業者は,引用例1及び2に記載された各発明に基づき,本件訂正発明1を容易に想到することはできない。 イまた,仮に,引用例1の地山補強面破砕装置の台車が左右の広範囲に移動することができるとしても,3本のワイヤーについて,①左右の た各発明に基づき,本件訂正発明1を容易に想到することはできない。 イまた,仮に,引用例1の地山補強面破砕装置の台車が左右の広範囲に移動することができるとしても,3本のワイヤーについて,①左右のワイヤーのいずれかを巻き上げ,他方を緩めることによる車輪の傾動動作,②左右のワイヤーのいずれかを巻き上げ,他方を緩めることによる左右いずれかへの牽引動作,③それとほぼ同時に調整する必要がある主ワイヤーを緩めたり巻き上げたりする動作,を連続して行うという複雑な操作が必要となるが,本件訂正発明1では,引用例1の地山補強面破砕装置の主ワイヤーのような規制が存在しないため,左右の広範囲に動くこ - 12 -とが舵取り機構を用いることなく容易に達成できるのであり,その構成や作用効果は,引用例1記載の発明とは全く異なるものである。 (4) 以上のとおり,本件訂正発明1の進歩性に係る本件審決の判断は誤りであるから,本件審決は取り消されるべきである。 〔被告の主張〕(1) 引用発明1aの認定の誤りについてア原告は,引用例1の地山補強面破砕装置の左右のワイヤーは舵取り機構を遠隔操作する操舵機構にすぎないなどと主張する。 しかし,引用例1では,「主ワイヤーは台車のベースに設けられた固定連結具に係止されており主として台車の重量を支え,台車の昇降移動を受持つ」と記載されているように,主ワイヤーによる台車の重量支持は「主として」というものであって,左右のワイヤーが台車の重量の支持を全くしないとはされておらず,引用例1の地山補強面破砕装置は,左右のワイヤーの張力によっても台車を支持して上下,左右方向に移動するものである。 また,引用例1では,ウインチモータ等の操作により,台車を隣接位置まで移動させ,その繰り返しにより広大な補強面での作業が可能で の張力によっても台車を支持して上下,左右方向に移動するものである。 また,引用例1では,ウインチモータ等の操作により,台車を隣接位置まで移動させ,その繰り返しにより広大な補強面での作業が可能であることや,左右のワイヤーは,台車のベースに軸を介して回転自在に取り付けられた可動連結具の先端に係止され,台車の左右方向への移動を受け持つことが開示されているところ,仮に,左右のワイヤーが純粋にステアリングに係る機能しか果たさず,左右巻取機及び左右のワイヤーの操作によって台車の左右方向への移動が行われることがあり得ないとした場合には,台車にかかる牽引力は,主ワイヤーによる鉛直方向のみであるから,舵取り機構の従動によって車輪が斜め方向を向いていたとしても,台車が大きく斜めに進行することはなく,その操作を繰り返すことにより広大な補強面での作業が可能となるものではないから,左右のワイヤーが「台車の左右方向への移動を受け持つ」ことが実現されないこととなる。 したがって,引用例1の地山補強面破砕装置は,3本のワイヤーの張力のバラン - 13 -スにより台車を上下,左右方向に移動させているものである。 なお,引用例1の「1本のワイヤーで昇降させ,左右への移動は,台車に設けられた舵取り機構を別個の駆動源で操作して行うようにしてもよい。」との記載は,単に舵取り機構の駆動源として別個のものを用いることができることが示されているにすぎず,台車を3本のワイヤーで牽引して昇降,左右移動するようにしたこととは,直接関係のないものである。 イ次に,原告は,仮に左右のワイヤーが台車の荷重を多少負担しているとしても,左右のワイヤーの水平分力は主たる荷重を負担する主ワイヤーの牽引方向に規制され,左右への移動は車輪が傾いた方向にわずかな幅でしかされないなどと主張 のワイヤーが台車の荷重を多少負担しているとしても,左右のワイヤーの水平分力は主たる荷重を負担する主ワイヤーの牽引方向に規制され,左右への移動は車輪が傾いた方向にわずかな幅でしかされないなどと主張する。 しかし,本件審決は,引用発明1aと本件訂正発明1とが牽引機構に関して相違していないと判断したものではなく,引用発明1aの「主ワイヤー及び左右のワイヤー」を備えるアンカー及びウインチ等の牽引機構と,本件訂正発明1の「左右2本のワイヤー」を備える牽引機構との違いを本件相違点1として認定した上で,引用発明1aに引用発明2等を適用すれば,本件相違点1に係る本件訂正発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものであると判断したものである。 したがって,原告の主張は理由がない。 ウ次に,原告は,左右のワイヤーが舵取りのみを行っているものであるとしても,引用発明1aと本件訂正発明1とは,法面を形成する部位の上部のウインチのワイヤーにより,加工機械本体を上下,左右方向へ移動させる点では同じであるとした本件審決の判断について,引用例1の地山補強面破砕装置の左右のワイヤーが舵取りのみを行うのであれば,本件審決が説示するように,台車が左右方向に移動することはない旨主張する。 しかし,本件審決は,引用発明1aの左右のワイヤーが舵取りのみを行っていると仮定した場合であっても,引用例1には,ウインチモータ等の操作により,台車を上下,左右方向へ移動させることにより広大な補強面での作業が可能であること - 14 -が示されているから,引用発明1aと本件訂正発明1とは,法面上部のワイヤーにより,加工機械本体を上下,左右方向へ移動させる点において共通していると判断したものであって,その共通点の判断に誤りはない。 エさらに,原告は,左右2本 件訂正発明1とは,法面上部のワイヤーにより,加工機械本体を上下,左右方向へ移動させる点において共通していると判断したものであって,その共通点の判断に誤りはない。 エさらに,原告は,左右2本のワイヤーだけでも,その長さの変化により,台車の位置を左右,上下に変化させることができることは,幾何学的にも自明であるとした本件審決の判断について,引用例1の地山補強面破砕装置の左右のワイヤーは舵取り機能しか有しないから,主ワイヤーが存在しなければ台車は上下方向にも左右方向にも移動することはできないと主張する。 しかし,上記アのとおり,引用例1の地山補強面破砕装置では,左右のワイヤーの張力によっても台車を支持しているものである。また,本件審決の上記説示は,例えば,左右2点より伸びる糸の結び目は,その左右の糸の長さを変更することより,左右2点を含む平面上の任意の位置を指すことができることを,ワイヤー(糸の長さ)と台車(糸の結び目)に置き換えて表現したものであって,誤りではない。 したがって,原告の主張は理由がない。 (2) 引用発明2の認定の誤りについて原告は,引用例2の法面処理用作業車の巻上装置において,アスファルトフィニッシャは本件訂正発明1のような広範囲の左右方向の移動は想定していないから,ウインチを作動させる油圧モータの流量を変えることにより,アスファルトフィニッシャの向きを既舗装面から未舗装面との間の境界線に沿って左右方向に変えながら上昇方向に移動することができるとした本件審決の判断は誤りであると主張する。 しかし,引用例2の法面処理用作業車の巻上装置は,左右2台のウインチの巻上げ量を変え,各ウインチからの作業車を牽引する2本のワイヤロープの長さを調整することにより,作業車を左右に移動させるというものであり,左右の移動が 面処理用作業車の巻上装置は,左右2台のウインチの巻上げ量を変え,各ウインチからの作業車を牽引する2本のワイヤロープの長さを調整することにより,作業車を左右に移動させるというものであり,左右の移動が「広範囲」である点については,上記(1)アのとおり,引用発明1aに示されているものである。 したがって,原告の主張は理由がない。 - 15 -(3) 本件相違点1に係る判断の誤りについてア原告は,本件訂正発明1のように,加工機械本体をその幅よりも広い左右のアンカーの幅寸法間にわたって上下,左右に移動させて法面を形成することについては,引用例1及び2のいずれにも示されていないと主張する。 しかし,引用発明2には,左右2台のウインチの巻上げ量を変え,作業車を牽引する2本のワイヤロープの長さを調整することにより,作業車を左右に移動させることが示されており,また,台車を吊り下げた左右2本のワイヤーの長さを変化させることによって,台車の上下,左右の移動ができることは自明であるから,当業者において,引用発明1aに引用発明2等を適用することにより,引用発明1aの上下移動のための中ワイヤー1本と左右移動のための左右のワイヤー2本からなる台車移動装置に代えて,左右2本のワイヤーによって上下,左右の移動ができる装置を採用し,本件相違点1に係る本件訂正発明1の構成とすることは容易に想到することができたことである。 イまた,原告は,仮に引用例1の地山補強面破砕装置の台車が左右の広範囲に動くものであったとしても,非常に複雑な操作が必要になるが,本件訂正発明1は,引用例1の地山補強面破砕装置における主ワイヤーのような規制が存在せず,そのため左右の広範囲に動くことが舵取り機構を用いることなく容易に達成できるのであり,この面で構成及び作用効果とも 正発明1は,引用例1の地山補強面破砕装置における主ワイヤーのような規制が存在せず,そのため左右の広範囲に動くことが舵取り機構を用いることなく容易に達成できるのであり,この面で構成及び作用効果とも引用例1記載の発明とは全く相違すると主張するが,原告が主張する作用効果は,当業者が容易に想到し得たものであり,格別なものではない。 (4) 以上によれば,本件訂正発明1の進歩性に係る本件審決の判断に誤りはないから,原告の取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(本件訂正発明4の進歩性に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 引用発明1bの認定の誤り前記1〔原告の主張〕(1)と同様の理由により,本件審決の引用発明1bの認定の - 16 -誤りは誤りである。 (2) 引用発明2の認定の誤り前記1〔原告の主張〕(2)のとおり。 (3) 本件相違点2に係る判断の誤り。 前記1〔原告の主張〕(3)と同様の理由により,本件相違点2に係る本件審決の判断は誤りである。 (4) 以上によれば,本件訂正発明4の進歩性に係る本件審決の判断は誤りである。 〔被告の主張〕(1) 引用発明1bの認定の誤りについて前記1〔被告の主張〕(1)と同様の理由により,本件審決の引用発明1bの認定に誤りはない。 (2) 引用発明2の認定の誤り前記1〔被告の主張〕(2)のとおり。 (3) 本件相違点2に係る判断の誤り。 前記1〔原告の主張〕(3)の同様の理由により,本件相違点2に係る本件審決の判断に誤りはない。 (4) 以上によれば,本件訂正発明4の進歩性に係る本件審決の判断に誤りはない。 3 取消事由3(本件訂正発明5の進歩性に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 引用発明1bの認定の誤り 以上によれば,本件訂正発明4の進歩性に係る本件審決の判断に誤りはない。 3 取消事由3(本件訂正発明5の進歩性に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 引用発明1bの認定の誤り前記2〔原告の主張〕(1)のとおり。 (2) 引用発明2の認定の誤り前記1〔原告の主張〕(2)のとおり。 (3) 本件相違点3に係る判断の誤り。 前記1〔原告の主張〕(3)と同様の理由により,本件相違点3に係る本件審決の判断は誤りである。 - 17 -(4) 以上によれば,本件訂正発明5の進歩性に係る本件審決の判断は誤りである。 〔被告の主張〕(1) 引用発明1bの認定の誤りについて前記2〔被告の主張〕(1)のとおり。 (2) 引用発明2の認定の誤り前記1〔被告の主張〕(2)のとおり。 (3) 本件相違点3に係る判断の誤り。 前記1〔原告の主張〕(3)の同様の理由により,本件相違点3に係る本件審決の判断に誤りはない。 (4) 以上によれば,本件訂正発明5の進歩性に係る本件審決の判断に誤りはない。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(本件訂正発明1の進歩性に係る判断の誤り)について(1) 引用発明1aの認定の誤りについてア引用例1には,以下の記載がある。 (ア) この発明は,道路沿いの法面における土砂の崩壊を防止するためのモルタル吹き付け等による傾斜した地山補強面につき,長年月のうちの劣化に応じて改修工事をする際,新しい補強面の施工に先立ち,既存の補強面を破砕して除去する必要があることについて,そのために使用する装置の発明である。 (イ) 従来の地山補強面の破砕は,作業者が傾斜する補強面上に立ち,破砕機を直接その手で支持して操作する方法によっていたことから,作業上危険が伴う とについて,そのために使用する装置の発明である。 (イ) 従来の地山補強面の破砕は,作業者が傾斜する補強面上に立ち,破砕機を直接その手で支持して操作する方法によっていたことから,作業上危険が伴うとともに,多くの人手を要し,人件費や工事期間が増大するなどという問題点があった。 (ウ) この発明は,上記のような問題点を解消するためのもので,安全でかつ大幅な省力化と工期の短縮とが可能となる地山補強面破砕装置を得ることを目的とする。 (エ) この発明に係る補強面破砕装置は,補強面上を走行可能な台車と,この台車に姿勢調整装置を介して取り付けられた破砕機と,上記補強面の上方に設置され - 18 -た基台と上記台車とをワイヤーで連結し,このワイヤーの巻取機を駆動することにより,上記台車を補強面上で移動させる台車移動装置とを備えたものである。 (オ) 実施例についてみると,第5図及び第6図は,破砕装置を現場で動作させている場合の状況を説明する側面図及び正面図である。これらの図において,台車を補強面上で移動させるためのワイヤー(12a),(12b),(12c)は,補強面の上方にそれぞれアンカーにより地面に固着された基台(13a),(13b),(13c)に取り付けられたウインチに巻回されている。 第7図は,ワイヤー(12a),(12b),(12c)により台車を牽引する場合の各ワイヤーと台車との連結構造を示す説明図である。図において,主ワイヤーは,台車のベースに設けられた固定連結具に係止されており,主として台車の重量を支え,台車の昇降移動を受け持つ。左右のワイヤーは,台車のベースに軸を介して回動自在に取り付けられた可動連結具の先端に係止されており,台車の左右方向への移動を受け持つとともに,事故等により主ワイヤーが緩んだり,切れたりしたよう 。左右のワイヤーは,台車のベースに軸を介して回動自在に取り付けられた可動連結具の先端に係止されており,台車の左右方向への移動を受け持つとともに,事故等により主ワイヤーが緩んだり,切れたりしたような場合に,台車の落下を防止する。また,可動連結具の回動に応じて車輪の軸を水平面内で回動させる舵取り機構が存在する。 (カ) 実施例における動作について説明すると,準備作業が終了すると,操作盤の操作ボタンを操作して,まず台車を補強面の所定位置まで移動させる。 この場合,傾斜面の登坂は主ワイヤーの牽引力により行い,左右方向への方向転換は左右のワイヤーの張力バランスで行う。すなわち,例えば右ワイヤーに比較して左ワイヤーの張力が大きくなるようにウインチモータによる巻取量をより大きくすると,第7図に示すように,可動連結具が反時計方向に回動し,舵取り機構がこれに従動して車輪を左へ傾動させる。 (キ) 最初の位置における破砕作業が終了すると,再びウインチモータ等の操作スイッチを操作することにより,台車を隣接位置にまで移動させ,その停止位置で破砕動作を再開する。以上の操作を繰り返すことにより,広大な補強面の破砕を,わずかの操作員により高能率に短期間に行うことが可能となる。 - 19 -(ク) 上記実施例では,台車を3本のワイヤーで牽引して昇降,左右移動するようにしたが,1本のワイヤーで昇降させ,左右への移動は,台車に設けられた舵取り機構を別個の駆動源で操作して行うようにしてもよい。 (ケ) この発明の効果として,補強面上を走行可能な台車と,この台車に姿勢調整装置を介して取り付けられた破砕機と,上記補強面の上方に設置された基台と上記台車とをワイヤーで連結し,このワイヤーの巻取機を駆動して上記台車を移動させる台車移動装置とを備えたので,作業の安 姿勢調整装置を介して取り付けられた破砕機と,上記補強面の上方に設置された基台と上記台車とをワイヤーで連結し,このワイヤーの巻取機を駆動して上記台車を移動させる台車移動装置とを備えたので,作業の安定が確保されるとともに,大容量の粉砕機を使用することができ,大幅な省力化と工事期間の短縮が可能となる。 (コ) 第6図には,台車から上方の3つの基台に向けてつながれたワイヤーが描かれており,このうち左右のワイヤーは,台車からみて,広範囲に広がった形で左右の基台につながれている。 イ以上によると,引用例1の地山補強面破砕装置については,台車に連結された各ワイヤーのうち,主ワイヤーは,台車の重量を支えるだけであって,台車の昇降移動を受け持つものであるのに対し,左右のワイヤーは,台車の左右方向への移動を受け持つものであって,左右巻取機の回動及びこれに基づく左右ワイヤーの操作によって,台車は,広大な補強面の移動が可能となるものということができる。 ウ原告の主張について(ア) 原告は,引用例1の地山補強面破砕装置の左右のワイヤーは,台車の舵取り機構を遠隔操作する操舵機構にすぎないと主張する。 しかしながら,①引用例1の記載によると,最初の位置における破砕作業が終了すると,ウインチモータ等の操作スイッチを操作することによって左右のワイヤーの張力を調整し,台車を隣接位置にまで移動させ,その停止位置で破砕動作を再開するとの操作を繰り返すことにより,広大な補強面の破砕を行うことが可能となるものであって,左右のワイヤーの張力バランスによって広大な補強面の左右を移動できるようにするものであり,これは,主ワイヤー1本の牽引力のみでは不可能であること,②引用例1の記載によると,「主ワイヤーは,台車のベースに設けられ - 20 -た固定連結具に係 の左右を移動できるようにするものであり,これは,主ワイヤー1本の牽引力のみでは不可能であること,②引用例1の記載によると,「主ワイヤーは,台車のベースに設けられ - 20 -た固定連結具に係止されており,主として台車の重量を支え,台車の昇降移動を受け持つ」とされ,主ワイヤーによる台車の重量支持は「主として」というものであって,左右のワイヤーが台車の重量の支持を全くしないとはされていないことから,主ワイヤーによる牽引力が台車に働くと,舵取り機構の従動によって車輪が傾いた方向に動こうとし,例えば,第7図のように左に車輪が傾動している場合には,主ワイヤーの牽引力によって,基台(13c)を中心に右ワイヤーにも牽引力が掛かりつつ,この右ワイヤーを半径にして,台車は登坂しつつ,左方向へ移動できること,③仮に左右のワイヤーが純粋にステアリングに係る機能しか果たさず,左右巻取機及び左右のワイヤーの操作によって台車の左右方向への移動が行われるということがあり得ないとすると,牽引の機能を有するものは上下方向へ牽引する主ワイヤー1本だけということになるが,この場合,台車に掛かる牽引力は,鉛直方向のみであるから,たとい舵取り機構の従動によって車輪が斜め方向を向いていたとしても,車台は,斜めに大きく進行することはなく,車軸の傾きの坑力に関わらずに車輪を回転させずに鉛直方向に移動するか,又は車軸の傾きが坑力となって進行しないかのいずれかの結果となるもので,引用例1記載の左右のワイヤーは,「台車の左右方向への移動を受け持つ」ことが実現されないこととなること,以上のとおりいうことができることからすると,原告の主張は採用することができない。 (イ) また,原告は,仮に左右のワイヤーが台車の荷重を多少負担しているとしても,左右のワイヤーの水平分力は主たる荷重を負 りいうことができることからすると,原告の主張は採用することができない。 (イ) また,原告は,仮に左右のワイヤーが台車の荷重を多少負担しているとしても,左右のワイヤーの水平分力は主たる荷重を負担する主ワイヤーの牽引方向に規制され,左右への移動は車輪が傾いた方向にわずかな幅でしかされないなどと主張する。 しかしながら,本件審決は,引用発明1aと本件訂正発明1とが牽引機構に関して相違していないと判断したものではなく,引用発明1aの「主ワイヤー及び左右のワイヤー」を備えるアンカー及びウインチ等の牽引機構と,本件訂正発明1の「左右2本のワイヤー」を備える牽引機構との違いを本件相違点1として認定した上で,引用発明1aに引用発明2等を適用すれば,本件相違点1に係る本件訂正発明1の - 21 -構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものであると判断したものであるから,原告の主張は,その前提において失当である。 (ウ) 次に,原告は,左右のワイヤーが舵取りのみを行っているものであるとしても,引用発明1aと本件訂正発明1とは,法面を形成する部位の上部のウインチのワイヤーにより,加工機械本体を上下,左右方向へ移動させる点では同じであるとした本件審決の判断について,左右のワイヤーが舵取りのみを行うのであれば,本件審決が説示するように台車が左右方向に移動することはないと主張する。 しかし,引用例1に「最初の位置における破砕作業が終了すると,再びウインチモータ等の操作スイッチを操作することにより,台車を隣接位置まで移動させ,その停車位置で破砕動作を再開する。以上の操作を繰り返すことにより,広大な補強面の破砕を,わずかの操作員により高能率に短期間に行うことが可能となる。」と記載されているように(上記ア(キ)),引用例1の地山補強面破砕装置 作を再開する。以上の操作を繰り返すことにより,広大な補強面の破砕を,わずかの操作員により高能率に短期間に行うことが可能となる。」と記載されているように(上記ア(キ)),引用例1の地山補強面破砕装置においても,ウインチ等の操作により,台車が上下,左右に移動することは明らかであるから,引用例1記載の発明について,本件訂正発明1とは,法面を形成する部位に上部のウインチのワイヤーにより,加工機械本体を上下,左右方向へ移動させるものである点で共通するとした本件審決の判断に誤りはない。 また,原告は,引用例1の地山補強面破砕装置は,法面を形成するのではなく,既存の法面の補強面上を走行して破砕するものであり,法面形成に用いる本件訂正発明1とは走行時の抵抗が異なるから,両者は共通しないとも主張する。 しかし,引用例1の地山補強面破砕装置は,補強面を破砕するものであるから,破砕後の法面を走行することも想定されるところ,破砕後の法面は,走行時の抵抗が必ずしも小さいものとは考えられないから,走行時の抵抗の面で両者に顕著な差異があるということはできず,原告の主張を採用することはできない。 (エ) さらに,原告は,引用例1の左右のワイヤーは舵取り機能しか有しないから,主ワイヤーが存在しなければ台車は上下方向にも左右方向にも移動することはできないとして,左右2本のワイヤーだけでも,その長さの変化により,台車の位 - 22 -置を上下,左右に変化させることができることは,幾何学的にも自明であるとした本件審決の判断は誤りであると主張する。 しかし,左右のワイヤーは,台車の舵取り機能のみを有するものではなく,上記イのとおり,台車の左右方向への移動を受け持つものであるから,原告の主張はその前提において誤りであり,採用することはできない。なお,本件審決の上記説示 ,台車の舵取り機能のみを有するものではなく,上記イのとおり,台車の左右方向への移動を受け持つものであるから,原告の主張はその前提において誤りであり,採用することはできない。なお,本件審決の上記説示は,被告が主張するとおり,例えば左右2点より伸びる糸の結び目は,その左右の糸の長さを変更することより,左右2点を含む平面上の任意の位置を指すことができることを,ワイヤー(糸の長さ)と台車(糸の結び目)に置き換えて表現したものであると解される。 エ以上によれば,本件審決の引用発明1aの認定に誤りがあるとは認められない。 (2) 引用発明2の認定の誤りについてア引用例2には,以下の記載がある。 (ア) 引用発明2は,例えばダム,水路,道路,護岸等の工事での法面を舗装する場合において,舗装に使用するアスファルトフィニッシャのような作業車を法面に沿って巻上げ,巻下げするウインチでなる巻上装置に関するものである。 (イ) 例えば法面舗装によってダムを建設する場合,法面にこれを横切るように設けた通路に自走式巻上機を置き,巻上機に搭載したウインチによりアスファルトフィニッシャ等の作業車を巻き上げつつ法面を舗装し,1列の舗装が終わったら,巻上機を移動させて舗装すべき法面の最低位置まで作業車を巻き下げ,再び巻き上げつつ舗装するという作業を繰り返すことによって舗装を行う必要がある。しかるところ,既舗装面と未舗装面との間の境界線は,直線とは限らず,曲線の場合もあるが,従来の技術では,単にウインチによって巻上げ,巻下げをするだけであったことから,曲線の場合の境界線に沿って作業車を巻き上げることが困難で,舗装面が重なったり,舗装材を舗装できない部分が生じたりするとの問題があった。 (ウ) 引用発明2は,作業車を巻上機上のウインチによって巻上げ,巻 合の境界線に沿って作業車を巻き上げることが困難で,舗装面が重なったり,舗装材を舗装できない部分が生じたりするとの問題があった。 (ウ) 引用発明2は,作業車を巻上機上のウインチによって巻上げ,巻下げする - 23 -場合,既処理面と未処理面の境界線に沿って作業車を巻き上げ,巻き下げることが可能となり,かつ,作業車を処理開始点にまで巻き下げる際に,真直に目的値にまで巻き下げることのできる構成の法面処理用作業車の巻上装置を提供しようとするものである。 (エ) 引用発明2の巻上装置は,法面処理用作業車を法面に沿って巻上げ,巻下げする2台の同型のウインチを巻上機上の左右に搭載し,各ウインチに巻かれるワイヤロープを作業車の前部の牽引フレームの左右の端部にそれぞれ接続し,上記ウインチの駆動用油圧モータの油圧回路には,両油圧モータに供給する作動油の流量を等流量とする分流装置を設けるとともに,この分流装置と油圧モータとの間の各油圧モータ対応の回路間に,両回路間を連通,遮断する2位置切換弁を設けることを特徴とする。 そして,引用発明2の巻上装置においては,左右のウインチを巻上げ方向に作動させる場合には,上記2位置切換弁を左右のウインチモータへの回路が連通する位置とし,作業車上のオペレータのハンドル操作によって,作業車の向きが変えられるようにすることにより,境界線に沿って作業車が移動できるようにする。 (オ) 実施例についてみると,第2図及び第3図は,引用発明2の巻上装置を搭載した巻上機を使用して法面舗装を行っている状態を示している。アスファルトフィニッシャの巻上装置である巻上機本体上の左右に搭載されるウインチ(9A),(9B)は,同型の油圧モータとドラムをそれぞれ有するもので,各ウインチにそれぞれ巻き取り,繰り出しされる各ワイヤロープは ィニッシャの巻上装置である巻上機本体上の左右に搭載されるウインチ(9A),(9B)は,同型の油圧モータとドラムをそれぞれ有するもので,各ウインチにそれぞれ巻き取り,繰り出しされる各ワイヤロープは,アスファルトフィニッシャの前部に設けた牽引フレームの左右の端部にそれぞれ接続される。 (カ) 実施例における動作については,この装置において法面の舗装を行う場合,巻上機本体の運転室内のオペレータが,ウインチ(9A),(9B)等を運転することによって,アスファルトフィニッシャをゆっくりと巻き上げて舗装する。この場合,運転室のオペレータは,ウインチ(9A),(9B)を作動させる油圧モータの流量を変えることによって,アスファルトフィニッシャの向きを変えることが - 24 -でき,アスファルトの舗装済みの領域と未舗装領域との間の境界線に沿って,上昇方向にアスファルトフィニッシャを移動させることができる。 イ以上によると,引用例2には,アスファルトフィニッシャである処理用作業車を法面に沿って巻上げ,巻下げする2台の同型のウインチを巻上機上の左右に搭載し,各ウインチに巻かれるワイヤロープが処理用作業車の前部に設けた牽引フレームの左右の端部にそれぞれ接続され,巻上機本体上のオペレータの操作によって,左右のウインチの巻上げ量を変え,処理用作業車の向きを変えるようにして,処理用作業車をアスファルトの舗装済みの領域と未舗装領域との境界線に沿って移動させながら上昇することができるようにした法面処理用作業車の巻上装置の発明が記載されているものと認められる。 ウ原告は,引用例2の法面処理用作業車の巻上装置は,アスファルトフィニシャ等の処理用作業車の直線的な移動を想定した発明であって,舗装済みの領域と未舗装領域との間の境界線に沿って上昇方向に移動させる ウ原告は,引用例2の法面処理用作業車の巻上装置は,アスファルトフィニシャ等の処理用作業車の直線的な移動を想定した発明であって,舗装済みの領域と未舗装領域との間の境界線に沿って上昇方向に移動させることができる程度の向きの変更であるにすぎず,作業車の幅よりも広い加工領域を上下,左右方向にわたって加工することは想定されていないと主張する。 確かに,上記アのとおり,引用例2によると,巻上機本体にウインチが搭載されるものであるから,作業車の左右への移動について,おのずから2台のウインチ同士の間隔による制約が存在するものと考えられるが,他方,引用例2の記載において,巻上機本体に搭載されるウインチ同士の間隔に特段の規定はなく,巻上機本体からはみ出してウインチを設置することも可能であることを考えると,巻上機本体や作業車の幅までしか,作業車が左右に移動できないとまでいうことはできない。 なお,原告は,引用例2の「直線的に走行」との文言(2頁右上段14行目)に基づき,少なくともワイヤロープに関しては平行に張設しなければならないとも主張するが,上記文言は,ウインチの巻下げ時には,ワイヤロープが等長ずつ繰出されて作業車が直線的に走行しながら巻下げられるようにしたとの説明の中で用いられているものであり,巻下げ時に限定した記載であることは明らかであるから,ウ - 25 -インチの巻上げ時に2本のワイヤロープの長さを調整することにより,作業車を左右に移動させることを否定する根拠となるものではない。 エ以上によれば,本件審決の引用発明2の認定に誤りがあるとは認められない。 (3) 本件相違点1に係る判断の誤りについてア原告は,本件訂正発明1は,左右のワイヤーを逆ハ字状に張設し,加工機械本体及び左右のウインチを作動させて加工機械本体をその幅より められない。 (3) 本件相違点1に係る判断の誤りについてア原告は,本件訂正発明1は,左右のワイヤーを逆ハ字状に張設し,加工機械本体及び左右のウインチを作動させて加工機械本体をその幅よりも広い左右のアンカー幅寸法にわたって上下,左右に移動させて法面を形成することを特徴とするものであり,かかる構成は,引用例1及び2には開示されていないから,当業者は,引用例1及び2に記載された各発明に基づき,本件訂正発明1を容易に想到することはできないと主張する。 イしかしながら,前記(1)のとおり,引用発明1aは,主ワイヤー及び左右の2本のワイヤーの3本によって台車がつながれており,左右のワイヤーは台車の左右方向への移動を受け持つことによって,台車の左右方向を含めた広大な補強面の移動が行われるものであるところ,この引用発明1aに,前記(2)のとおりの2台のウインチを作動させてワイヤロープの巻上げ量を変えながら作業車を境界線に沿って左右に移動させることができるようにするとの引用発明2を適用することにより,当業者において,引用発明1aの「左,中,右」の3つのアンカー及びウインチを,「左右」の2つのアンカー及びウインチとすることに困難はなく,本件訂正発明1の本件相違点1に係る構成に至ることは容易に想到し得たものということができる。 ウまた,原告は,本件訂正発明1は引用例1の主ワイヤーのような規制が存在せず,そのため左右の広範囲に動くことが舵取り機構を用いることなく容易に達成できるのであり,この面で構成及作用効果とも引用例1記載の発明とは相違するなどと主張する。 しかし,上記(2)ア(カ)のとおり,引用発明2においても,ウインチを作動させる油圧モータに流れる流量を変えることによって,2台のウインチのワイヤロープの巻上げ量を変え,アスファ どと主張する。 しかし,上記(2)ア(カ)のとおり,引用発明2においても,ウインチを作動させる油圧モータに流れる流量を変えることによって,2台のウインチのワイヤロープの巻上げ量を変え,アスファルトフィニッシャの向きを変えることができるのである - 26 -から,本件訂正発明1が格別の作用効果を奏するものということはできない。 エしたがって,本件審決の本件相違点1に係る判断に誤りがあるとは認められない。 (4) 小括よって,取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(本件訂正発明4の進歩性に係る判断の誤り)について(1) 引用発明1bの認定の誤りについて原告は,引用例1の地山補強面破砕装置の左右のワイヤーは,台車の舵取り機構を遠隔操作する操舵機構にすぎないなどとして,本件審決の引用発明1bの認定は誤りであると主張しているが,前記1(1)のとおり,引用例1の地山補強面破砕装置の左右のワイヤーは,台車の舵取り機能のみを有するものではなく,台車の左右方向への移動を受け持つものであると認められるから,原告の主張を採用することはできず,本件審決の引用発明1bの認定に誤りがあるとは認められない。 (2) 引用発明2の認定の誤りについて前記1(2)のとおり,本件審決の引用発明2の認定に誤りがあるとは認められない。 (3) 本件相違点2に係る判断の誤りについてア原告は,本件訂正発明4は加工機械本体をその幅よりも広い左右のアンカー幅寸法にわたって上下,左右に移動させて法面を形成することを特徴とするものであるが,引用例1の地山補強面破砕装置の左右のワイヤーは,台車の舵取りを行うにすぎず,また,引用例2の法面処理用作業車の巻上装置の左右のワイヤーは平行に張設することに限定されているから,当業者は,引用例1及び2に 1の地山補強面破砕装置の左右のワイヤーは,台車の舵取りを行うにすぎず,また,引用例2の法面処理用作業車の巻上装置の左右のワイヤーは平行に張設することに限定されているから,当業者は,引用例1及び2に記載された各発明に基づき,本件訂正発明4を容易に想到することはできないし,仮に,引用例1の地山補強面破砕装置の台車が左右の広範囲に移動することができるとしても,本件訂正発明4では,引用例1の地山補強面破砕装置の主ワイヤーのような規制が存在しないため,左右の広範囲に動くことが舵取り機構を用いることなく容易に達成できるのであり,その構成や作用効果は,引用例1記載の発明とは異なるなどと - 27 -主張する。 イしかし,引用発明1bは,前記(1)のとおり,左右のワイヤーが台車の左右方向への移動を受け持つことにより,台車の左右方向を含めた広大な補強面の移動が行われるものであり,この引用発明1bに,2台のウインチを作動させてワイヤロープの巻上げ量を変えながら作業車を境界線に沿って左右に移動させることができるようにするとの引用発明2を適用することにより,当業者において,引用発明1bの「左,中,右」の3つのアンカー及びウインチを,「左右」の2つのアンカー及びウインチとすることに困難はなく,本件訂正発明4の本件相違点2に係る構成に至ることは容易に想到し得たものということができる。また,前記1(3)ウのとおり,本件訂正発明1が格別の作用効果を奏するものということはできない。 ウ以上によれば,本件審決の本件相違点2に係る判断に誤りがあるとは認められない。 (4) 小括したがって,取消事由2も理由がない。 3 取消事由3(本件訂正発明5の進歩性に係る判断の誤り)について(1) 引用発明1bの認定の誤りについて前記2(1)のとおり, (4) 小括したがって,取消事由2も理由がない。 3 取消事由3(本件訂正発明5の進歩性に係る判断の誤り)について(1) 引用発明1bの認定の誤りについて前記2(1)のとおり,本件審決の引用発明1bの認定に誤りがあるとは認められない。 (2) 引用発明2の認定の誤りについて前記1(2)のとおり,本件審決の引用発明2の認定に誤りがあるとは認められない。 (3) 本件相違点3に係る判断の誤りについてア原告は,本件訂正発明5についても,本件訂正発明4と同様に,当業者は,引用例1及び2に記載された各発明に基づき,本件訂正発明5を容易に想到することはできず,また,本件訂正発明5の構成や作用効果は,引用例1記載の発明とは異なるなどと主張する。 イしかし,前記2(3)のとおり,当業者において,引用発明1bの「左,中,右」 - 28 -の3つのアンカー及びウインチを,「左右」の2つのアンカー及びウインチとすることに困難はなく,本件訂正発明5の本件相違点3に係る構成に至ることは容易に想到し得たものということができる。また,前記1(3)ウのとおり,本件訂正発明1が格別の作用効果を奏するものということはできない。 ウ以上によれば,本件審決の本件相違点3に係る判断に誤りがあるとは認められない。 (4) 小括したがって,取消事由3も理由がない。 4 結論以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件請求は棄却されるべきものである。 知的財産高等裁判所第4部裁判長裁判官滝澤孝臣 裁判官髙 部 眞規子 裁判官齋藤 巌 裁判官滝澤孝臣 裁判官髙眞規子 裁判官齋藤巌
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