言渡平成24年9月20日交付平成24年9月20日裁判所書記官 - 1 -平成23年(ワ)第29049号特許権に基づく製造販売差止等請求事件口頭弁論の終結の日平成24年6月28日判決愛知県大府市<以下略>原告株式会社名南製作所同訴訟代理人弁護士高橋譲二松永圭太同訴訟代理人弁理士石田喜樹同補佐人弁理士園田清隆石田正己愛知県高浜市<以下略>被告橋本電機工業株式会社同訴訟代理人弁護士三木浩太郎小川晶露早川尚志 主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙被告製品1目録記載の製品を製造し,販売し,又は輸出してはならない。 - 2 - 2 被告は,別紙被告製品1目録記載の製品及びその半製品を廃棄せよ。 3 被告は,別紙被告製品2目録記載の製品を製造し,販売し,又は輸出してはならない。 4 被告は,別紙被告製品2目録記載の製品及びその半製品を廃棄せよ。 録記載の製品及びその半製品を廃棄せよ。 3 被告は,別紙被告製品2目録記載の製品を製造し,販売し,又は輸出してはならない。 4 被告は,別紙被告製品2目録記載の製品及びその半製品を廃棄せよ。 5 被告は,原告に対し,5000万円及びこれに対する平成23年9月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,板状体のスカーフ面加工方法及び装置に関する特許権を有する原告が,被告の製造販売するスカーフジョインターについて,原告の特許権に係る特許発明の技術的範囲に属すると主張して,被告に対し,そのスカーフジョインターの製造,販売等の差止め及び廃棄,特許法65条に基づく補償金650万円及び民法709条に基づく損害賠償金1億4300万円の合計1億4950万円のうち5000万円並びにこれに対する訴状送達の日の翌日である平成23年9月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提となる事実(当事者間に争いのない事実)(1) 本件特許権原告は,発明の名称を「板状体のスカーフ面加工方法及び装置」とする特許権(特許番号第4460618号。以下,この特許を「本件特許」という。)の特許権者である。本件特許は,平成10年6月16日にした原出願(特願平10-186866,以下「原出願」という。)から,平成21年1月9日に分割出願されたものであり,平成22年2月19日に特許権の設 - 3 -定の登録がされた(以下,この特許権を「本件特許権」という。)。 (2) 本件発明本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項2の記載は,本判決添付の特許公報(以下「本件公報」という。)の該当項記載のとおりである(以 件特許権」という。)。 (2) 本件発明本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項2の記載は,本判決添付の特許公報(以下「本件公報」という。)の該当項記載のとおりである(以下,この請求項2に係る発明を「本件発明」という。)。 (3) 構成要件の分説本件発明は,次の構成要件からなる。 A 刃物受台の板状体を支持する支持面に対し傾斜して備えられた回転切削刃物を,B 当該回転切削刃物の刃先と前記刃物受台の刃先当接部とを当接させ乍ら,前記板状体に対して相対的に直線移動させることにより,C 前記板状体の端部をスカーフ面に切削加工し,D 前記刃先当接部から突出した前記板状体端部を切削屑として排除する板状体のスカーフ面加工装置において,E 前記回転切削刃物の前記相対的直線移動方向下手側で且つ当該回転切削刃物の刃先近傍における前記板状体の表面のうち,切削屑として排除されることになる部分を前記刃物受台に向けて押圧可能で,而も前記回転切削刃物と一体化して相対的直線移動する押圧部材を設け,F 前記押圧部材と前記刃物受台とによって,前記切削屑として排除されることになる部分を挟持し乍ら切削加工することを特徴とする,G 板状体のスカーフ面加工装置。 (4) 被告の行為 - 4 -被告は,別紙被告製品1目録記載の製品(以下「被告製品1」という。)を製造,販売している。 (5) 被告製品1の構成被告製品1の構成は,本件発明の構成要件に対比させて表現すると,次のとおりである。 a 刃物受台上の単板を支持する支持面に対し傾斜して備えられたスカーフ加工用の回転刃を,baの回転刃の刃先と刃物受台の刃先 明の構成要件に対比させて表現すると,次のとおりである。 a 刃物受台上の単板を支持する支持面に対し傾斜して備えられたスカーフ加工用の回転刃を,baの回転刃の刃先と刃物受台の刃先当接部とを当接させつつ,aの単板に対して相対的に直線移動させることにより,caの単板の端部をスカーフ面に切削加工し,dbの刃先当接部から突出したaの単板端部を切削屑として排除する板状体のスカーフ面加工装置において,eaの回転刃の相対的直線移動方向下手側で且つ回転刃の刃先近傍におけるaの単板の表面のうち,切削屑として排除されることになる部分及び切削屑として排除されない部分の両領域をaの刃物受台に向けて押圧可能で,而もaの回転刃と一体化して相対的直線移動する押圧部材を設け,feの押圧部材とaの刃物受台とによって,切削屑として排除されることになる部分を挟みこみ,これを保持しつつ切削加工することを特徴とする,g 板状体のスカーフ面加工装置。 (6) 本件発明と被告製品1との対比被告製品1は,本件発明の構成要件AないしD,F及びGを充足するが, - 5 -構成要件Eについて,構成要件に「切削屑として排除されることになる部分」とあるのに対し,被告製品1では「切削屑として排除されることになる部分及び切削屑として排除されない部分の両領域」である点で相違する。 (7) 原告による警告原告は,被告に対し,平成19年12月1日に被告に到達した内容証明郵便により,原出願の願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項3に係る発明の内容を記載して,被告製品1がその技術的範囲に属する旨の警告をした。 2 争点(1) 被告が別紙被告製品2目録記載の製 原出願の願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項3に係る発明の内容を記載して,被告製品1がその技術的範囲に属する旨の警告をした。 2 争点(1) 被告が別紙被告製品2目録記載の製品(以下「被告製品2」という。被告製品1と併せて,以下「各被告製品」という。)を製造,販売し,又はそのおそれがあるか否か(争点1)(2) 各被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか否か(争点2)(3) 被告が先使用による通常実施権を有するか否か(争点3)(4) 本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか否か(争点4)(5) 原告が補償金の支払を請求することができるか否か(争点5)(6) 被告の責任及び損害額(争点6) 3 争点についての当事者の主張(1) 被告が被告製品2を製造,販売し,又はそのおそれがあるか否か(争点1)ア原告の主張 - 6 -被告は,被告製品2を製造,販売している。 イ被告の主張被告は,平成12年4月,被告製品2の試作機を製作して西北プライウッド株式会社に納入し,テスト及び改造を繰り返したが,所定の能力を発揮することができなかったので,平成17年5月にこれを撤去して廃棄したものであり,被告は,被告製品2を製造していないし,今後もこれを製造する予定はない。 (2) 各被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか否か(争点2)ア原告の主張(ア) 被告製品1は,aの回転刃の相対的直線移動方向下手側で且つ回転刃の刃先近傍におけるaの単板の表面のうち,切削屑として排除されることになる部分をaの刃物受台に向けて押圧可能で,而もaの回転刃と一体化して相対的直線移動する押圧部材を設 線移動方向下手側で且つ回転刃の刃先近傍におけるaの単板の表面のうち,切削屑として排除されることになる部分をaの刃物受台に向けて押圧可能で,而もaの回転刃と一体化して相対的直線移動する押圧部材を設けたものであるから,本件発明の構成要件Eを充足する。 (イ) 被告製品2のスカーフカッターは,板状体のスカーフカッターで,単板のスカーフカッターである被告製品1のスカーフカッターとは,対象を板状体とするか,単板とするかの違いがあるだけで,その余の構成は同一であるから,被告製品2も本件発明の構成要件Eを充足する。 イ被告の主張(ア) 本件発明に係る特許請求の範囲の請求項2は,押圧部材によって押圧される部分を「切削屑として排除されることになる部分」に限定し - 7 -て規定している。また,本件特許の願書に添付された明細書(以下「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明の段落【0012】,【0013】及び【0051】の記載によれば,本件発明は,回転切削刃物が切断する部分,すなわち,「該回転切削刃物によって切削屑として排除されることになる部分」が押圧部材によって押圧され,かつ,押圧部材と刃物受台とに挟持されることによって,同部分付近のあばれが平坦に矯正され,もって加工精度の高い良好な切断面を得るという作用効果を奏するものであることが理解されるし,本件特許の願書に添付された図面のうち,【図2】,【図10】(b)及び【図12】によれば,押圧部材はまさに切削屑を押圧していることが理解される。 (イ) もっとも,本件発明の明細書の発明の詳細な説明には,「該押圧面13は,該単板3から切削屑として排除されることになる部分の全部を必ずしも押圧する必要はなく,例えば,その一部分でも良い。更には, イ) もっとも,本件発明の明細書の発明の詳細な説明には,「該押圧面13は,該単板3から切削屑として排除されることになる部分の全部を必ずしも押圧する必要はなく,例えば,その一部分でも良い。更には,該単板3から切削屑として排除されることになる部分以外の表面に押圧面13が広がっても良い。しかし,該押圧面13は,少なくとも切削屑として排除されることになる部分には含まれていなければならない。」(段落【0024】),「該押圧面13は切屑化部分だけではなく,切断線19の丸鋸5が直線移動する方向上手側付近に及んでも差し支えはない。これは,押圧部材11が単板3の少なくとも切屑化部分を押圧していればスカーフ面の切断精度を高めることができるからである。」(段落【0052】)との記載があり,これによれ - 8 -ば,押圧部材によって押圧されるのは,少なくとも,「切削屑として排除されることになる部分」を含んでいればよく,それ以外の部分を押圧することでもよいと解する余地もある。 しかしながら,原告は,原出願の審査過程において,原出願に対する拒絶理由通知を受けて審査官と面接し,その際の「押圧部材によって押圧する箇所が,切削くず側「のみ」であることを限定すれば,進歩性が出ると考えられるが,原状のクレームの記載では,拒絶理由解消は難しい。」との審査官の意見に対応して,原出願に係る特許請求の範囲の請求項3の「該回転切削刃物の刃先近傍の表面のうち,少なくとも該板状体から切削屑として排除される側の前記表面の少なくとも一部分を押圧可能に備える押圧部材」を「当該回転切削刃物の刃先近傍における前記板状体の表面のうち,切削屑として排除されることになる部分を前記刃物受台に向けて押圧可能で」と補正し,2か所の「少なくとも」の文言を削除して, る押圧部材」を「当該回転切削刃物の刃先近傍における前記板状体の表面のうち,切削屑として排除されることになる部分を前記刃物受台に向けて押圧可能で」と補正し,2か所の「少なくとも」の文言を削除して,押圧箇所を「切削屑として排除されることになる部分」に限定したのであり,それにもかかわらず,再度拒絶理由通知を受けたので,本件特許を分割出願したのである。そうすると,原告は,上記補正によって,押圧箇所を「切削屑として排除されることになる部分」に限定し,「少なくとも切削屑として排除されることになる部分を押圧することでも良い」旨の記載を意識的に除外したのであるから,本件明細書の発明の詳細な説明における段落【0024】及び【0052】の記載は,本件発明の技術的範囲を確定するに当たって参酌すべきではない。 - 9 -(ウ) したがって,本件発明の構成要件Eは,押圧部材が当該回転切削刃物の刃先近傍における前記板状体の表面のうち,特に切削屑として排除されることになる部分のみを前記刃物受台に向けて押圧するものと解すべきである。各被告製品は,押圧部材が切削屑として排除されることになる部分及び切削屑として排除されない部分の両領域を押圧するのであって,切削屑として排除されることになる部分のみを押圧するものではないから,本件発明の構成要件Eを充足しない。 ウ被告の主張に対する原告の反論本件発明の技術的範囲は,原則として,本件発明に係る特許請求の範囲の記載やその補正等の経過を斟酌して定めるべきであり,本件特許とは別の手続である原出願の審査経過を斟酌して定めるべきではない。仮に原出願の審査経過を斟酌することが許されるとしても,原告が補正に当たり「少なくとも」との文言を削除したのは,「少なくとも」という文言が単 の手続である原出願の審査経過を斟酌して定めるべきではない。仮に原出願の審査経過を斟酌することが許されるとしても,原告が補正に当たり「少なくとも」との文言を削除したのは,「少なくとも」という文言が単に強調的な意味しか持たないからであるにすぎないし,これを削除することが押圧対象を切削屑として排除されることになる部分のみに限定することになるものでもない。 (3) 被告が先使用による通常実施権を有するか否か(争点3)ア被告の主張(ア) 被告従業員のAは,平成6年8月頃,丸カッターの進行方向前方で,かつ,丸カッターの刃先近傍の板のうち切削屑として排除されることになる部分とそれ以外の部分を押さえ,丸カッターと共に移動する前押さえ部を設けた合板用スカーフカッターを設計し,その試作品 - 10 -を製造した。そして,被告従業員のBは,Aが開発した上記「前押さえ部」を設けた単板用スカーフカッターを設計するなどして,平成9年7月頃,本件発明と技術的思想を同一にする発明を完成した。 (イ) 被告は,本件発明の内容を知らないで,① 株式会社サンテック(現商号「株式会社大三商行サンテック事業部」。以下「サンテック」という。)から,スカーフカッター3台を含むスカーフ切断接合システム3基の製造を依頼され,上記発明に基づいて,スカーフカッター(以下「サンテック用スカーフカッター」という。)を製造して,平成9年7月頃,これをサンテックに譲渡し,また,② マレーシア国のSHINYANGPLYWOOD社(以下「シンヤン」という。)から,オートフィーダー,整合装置,スカーフカッター,キャリング装置,糊付・冷圧接合・クランプ・定尺切断装置(ジョイント装置)及び堆積機(オートスタッカー)を一体的に構成したスカ ンヤン」という。)から,オートフィーダー,整合装置,スカーフカッター,キャリング装置,糊付・冷圧接合・クランプ・定尺切断装置(ジョイント装置)及び堆積機(オートスタッカー)を一体的に構成したスカーフ切断接合システムの製造を依頼され,上記発明に基づいてスカーフカッター(以下「シンヤン用スカーフカッター」という。)を製造して,同年10月29日から11月2日までの間,名古屋市港区内の名古屋市国際展示場ポートメッセなごやにおいて開催された第33回名古屋国際木工機械展に出品した上,平成10年1月頃,これをシンヤンに譲渡した。 (ウ) サンテック用スカーフカッター及びシンヤン用スカーフカッターは,いずれもカッターの進行方向前方で,かつ,丸カッターの刃先近傍の板のうち切削屑として排除されることになる部分とそれ以外の部 - 11 -分を押さえ,丸カッターと共に移動する前押さえ部を設けたスカーフカッターであり,その発明は本件発明と同一であるから,被告は,本件特許権について通常実施権(特許法79条)を有する。 イ原告の主張本件発明の第1の特徴は,構成要件Eの「切削屑として排除されることになる部分を前記刃物受台に向けて押圧可能で」ある「押圧部材を設け」ていることにあり,第2の特徴は,構成要件Fの「前記押圧部材と前記刃物受台とによって,前記切削屑として排除されることになる部分を挟持し乍ら切削加工する」ことにあるが,サンテック用スカーフカッター及びシンヤン用スカーフカッターが本件発明の上記特徴を呈することはないから,少なくとも構成要件Eと構成要件Fにおいては,被告が本件発明に至った事実があるとは認められない。 したがって,被告は,当時,本件発明の構成要件E及びFの構成を有する発明を完成 ないから,少なくとも構成要件Eと構成要件Fにおいては,被告が本件発明に至った事実があるとは認められない。 したがって,被告は,当時,本件発明の構成要件E及びFの構成を有する発明を完成していなかったし,当該発明の実施である事業をすることができなかったから,先使用による通常実施権を有しない。 (4) 本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか否か(争点4)ア被告の主張サンテック用スカーフカッター及びシンヤン用スカーフカッターに係る発明は,前記(3)アのとおり,いずれも本件発明と同一であって,本件特許出願前に日本国内において公然知られ,又は公然実施をされた発明であるから,本件特許権には,特許法123条1項2号,同法29条1項の無 - 12 -効事由がある。 したがって,本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,特許法104条の3により,原告は,被告に対し本件特許権を行使することができない。 イ原告の主張前記(3)イのとおり,少なくとも構成要件Eと構成要件Fにおいて,被告が本件発明に至った事実があるとは認められないから,被告は,本件発明の構成要件E及びFの構成を有する発明を完成していなかった。 したがって,本件特許は,新規性の欠如を理由に,特許無効審判により無効にされるべきものとは認められない。 (5) 原告が補償金の支払を請求することができるか否か(争点5)ア原告の主張(ア) 特許法65条が警告又は悪意を補償金請求の要件としたのは,第三者に対する不意打ち防止のためであるから,分割出願前になされた警告であっても,それが第三者にとって不意打ちに当たらなければ「警 (ア) 特許法65条が警告又は悪意を補償金請求の要件としたのは,第三者に対する不意打ち防止のためであるから,分割出願前になされた警告であっても,それが第三者にとって不意打ちに当たらなければ「警告」に該当するというべきである。 本件特許は,原出願からの分割出願であるところ,分割出願は,新たな出願ではあるものの,複数の発明を含む原出願の一部を分割するもので,分割出願に係る発明は原出願の明細書,特許請求の範囲又は図面に開示されていたものでなければならないとされているから,分割出願に係る発明は原出願において開示された発明に包含されているといえる。原告は,原出願に係る発明について警告をしているから,原 - 13 -出願の明細書,特許請求の範囲又は図面に開示されていた分割出願に係る発明についても警告をしたと評価することができるのであって,第三者にとって不意打ちに当たらない。 (イ) 被告は,平成19年12月1日に原告から警告を受け,平成22年2月19日までの間に,被告製品1を6500万円で少なくとも1台販売した。本件特許権の実施料率は10%とみるのが相当であるから,原告がその実施に対して受けるべき金銭の額は,650万円を下らない。 イ被告の主張(ア) 原告が平成19年12月1日にした警告は,本件特許権が原出願から分割出願される前であって,その内容も専ら原出願に係る特許請求の範囲の請求項3に係る発明に関するものであるから,本件発明の内容を記載して警告をしたということはできない。 (イ) 被告製品1は,オートフィーダー,整合装置,スカーフカッター,キャリング装置,糊付・冷圧接合・クランプ・定尺切断装置(ジョイント装置)及び堆積機(オートスタッカー)を一体的に構成した (イ) 被告製品1は,オートフィーダー,整合装置,スカーフカッター,キャリング装置,糊付・冷圧接合・クランプ・定尺切断装置(ジョイント装置)及び堆積機(オートスタッカー)を一体的に構成したスカーフ切断接合システム全体であり,本件発明は,その一部を構成するスカーフカッターに関するものであるから,実施料相当額が被告製品1の代金の10%ということはあり得ない。 (6) 被告の責任及び損害額(争点6)ア原告の主張(ア) 被告は,各被告製品を製造販売することが本件特許権を侵害するも - 14 -のであることを知り,又は過失によりこれを知らないで,各被告製品を製造,販売した。 (イ) 被告は,平成22年2月19日から現在までの間に,各被告製品を少なくとも5台製造して1台6500万円で販売したものであり,被告の利益率は40%と推測されるから,被告は,各被告製品の製造販売により少なくとも1億3000万円の利益を受けた。 原告は,本件特許権を実施していたのであって,被告の侵害行為によって損害を受けたことは明らかであるところ,被告の利益の額は原告が受けた損害の額と推定される(特許法102条2項)から,被告の侵害行為によって原告が受けた損害の額は,1億3000万円を下らない。 また,被告の侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用は1300万円とするのが相当である。 イ被告の主張原告の主張は争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(被告が被告製品2を製造,販売し,又はそのおそれがあるか否か)について被告が被告製品2を製造,販売していること及びそのおそれがあることについては,これを認めるに足りる証拠がない。 したがって, 品2を製造,販売し,又はそのおそれがあるか否か)について被告が被告製品2を製造,販売していること及びそのおそれがあることについては,これを認めるに足りる証拠がない。 したがって,被告製品2に係る原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 - 15 - 2 争点2(被告製品1が本件発明の技術的範囲に属するか否か)(1) 本件発明に係る特許請求の範囲の請求項2の記載によれば,本件発明にいう「切削屑として排除されることになる部分を前記刃物受台に向けて押圧可能で」とは,文言のとおり,回転切削刃物と一体化して相対的直線移動する押圧部材が,回転切削刃物の相対的直線移動方向下手側で,かつ,回転切削刃物の刃先近傍における板状体の表面のうちで,切削屑として排除されることになる部分を刃物受台に向けて押圧することができるものであることを意味するものと認められるところ,本件明細書に,この認定に反する記載はない(甲1)。 前記の前提となる事実(5)によれば,被告製品1は,回転刃と一体化して相対的直線移動する押圧部材が,回転刃の相対的直線移動方向下手側で,かつ,回転刃の刃先近傍における単板の表面のうちで,切削屑として排除されることになる部分及び切削屑として排除されない部分の両領域を刃物受台に向けて押圧することができるというのであり,押圧部材が,切削屑として排除されることになる部分を刃物受台に向けて押圧することができるものであるから,被告製品1は,本件発明の構成要件Eを充足する。 (2) 被告は,本件発明に係る特許請求の範囲の請求項2は,押圧部材によって押圧される部分を「切削屑として排除されることになる部分」に限定して規定しているし,本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば 2) 被告は,本件発明に係る特許請求の範囲の請求項2は,押圧部材によって押圧される部分を「切削屑として排除されることになる部分」に限定して規定しているし,本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば,本件発明は,「切削屑として排除されることになる部分」が押圧部材によって押圧されることなどによって,同部分付近のあばれが平坦に矯正され,もって加工精度の高い良好な切断面を得るという作用効果を奏するものであることが理 - 16 -解され,また,図面によれば,押圧部材が切削屑を押圧していることが理解されると主張する。 しかしながら,本件発明に係る特許請求の範囲の請求項2は,「切削屑として排除されることになる部分を前記刃物受台に向けて押圧可能で」と規定しているのであって,その文言から,押圧部材によって押圧される部分を「切削屑として排除されることになる部分」に限定して規定したと解釈することはできないし,特許請求の範囲の請求項2に,押圧部材によって押圧される部分を「切削屑として排除されることになる部分」に限定したことを窺わせるような記載もない。 そして,甲1(本件公報)によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,「前記回転切削刃物と一体化して相対的直線移動する押圧部材によって,前記回転切削刃物の前記相対的直線移動方向下手側で且つ当該回転切削刃物の刃先近傍における前記板状体の表面のうち,切削屑として排除されることになる部分を前記刃物受台に向けて押圧し,当該切削屑として排除されることになる部分を当該押圧部材と前記刃物受台とによって挟持し乍ら切削加工することを特徴とする,板状体のスカーフ面加工方法及び装置とした。」(段落【0012】),「本願発明は,上述のとおり構成されているので,以下に記載されるような効果を奏 台とによって挟持し乍ら切削加工することを特徴とする,板状体のスカーフ面加工方法及び装置とした。」(段落【0012】),「本願発明は,上述のとおり構成されているので,以下に記載されるような効果を奏する。先ず,回転切削刃物と一体化して刃物受台で支持された板状体に対して相対的直線移動する押圧部材によって,前記回転切削刃物の前記相対的直線移動方向下手側で且つ当該回転切削物の刃先近傍における前記板状体の表面のうち,切削屑として排除されることになる部分を前記刃物受台に向けて押圧し,当該切削屑として排除され - 17 -ることになる部分を当該押圧部材と前記刃物受台とによって挟持し乍ら切削加工するものであるから,該板状体にあばれが存在していても,該回転切削刃物により切断される部分の近傍のあばれは,該押圧部材と刃物受台との挟持作用で順次平坦に矯正されていき,該回転切削刃物は該平坦に矯正された切削屑として排除されることになる部分を切断するので,これまでにない加工精度の高い,良好な切断面を得ることができる。」(段落【0013】),「押圧部材11によって押圧される押圧面13は,丸鋸5が移動する方向の下手側の刃先軌跡5aに極めて近い部分の単板表面であって, しかも該単板3から丸鋸5により切削屑として排除されることになる部分(以下,切屑化部分という)の単板表面である。」(段落【0051】)との記載があることが認められるが,これらの記載によっても,押圧部材によって押圧される部分を「切削屑として排除されることになる部分」に限定したと解釈することはできないし,本件明細書の発明の詳細な説明において,押圧部材によって押圧される部分を「切削屑として排除されることになる部分」に限定したことを示唆するような記載はなく,かえって,「該押圧面13は, はできないし,本件明細書の発明の詳細な説明において,押圧部材によって押圧される部分を「切削屑として排除されることになる部分」に限定したことを示唆するような記載はなく,かえって,「該押圧面13は,該単板3から切削屑として排除されることになる部分の全部を必ずしも押圧する必要はなく,例えば,その一部分でも良い。更には,該単板3から切削屑として排除されることになる部分以外の表面に押圧面13が広がっても良い。しかし,該押圧面13は,少なくとも切削屑として排除されることになる部分には含まれていなければならない。」(段落【0024】),「該押圧面13は切屑化部分だけではなく,切断線19の丸鋸5が直線移動する方向上手側付近に及んでも差し支えはない。これは,押圧部材11が単 - 18 -板3の少なくとも切屑化部分を押圧していればスカーフ面の切断精度を高めることができるからである。」(段落【0052】)との記載があることが認められるのである(甲1)。また,本件特許の願書に添付された図面には,押圧部材が「切削屑として排除されることになる部分」だけを押圧しているもの(【図2】,【図10】(b)及び【図12】)があるが,発明の詳細な説明の記載に鑑みれば,押圧部材によって押圧される部分を「切削屑として排除されることになる部分」に限定する趣旨で上記図面を添付したとは考え難いところである(なお,被告は,原告は,原出願に係る特許請求の範囲の請求項3を補正し,2か所の「少なくとも」の文言を削除して,押圧箇所を「切削屑として排除されることになる部分」に限定し,「少なくとも切削屑として排除されることになる部分を押圧することでも良い」旨の記載を意識的に除外したと主張するが,証拠(甲3,乙16)によれば,原告は,平成20年5月26日付手続補正書によ 限定し,「少なくとも切削屑として排除されることになる部分を押圧することでも良い」旨の記載を意識的に除外したと主張するが,証拠(甲3,乙16)によれば,原告は,平成20年5月26日付手続補正書により,原出願に係る特許請求の範囲の請求項3の「回転切削刃物が該板状体に対して相対的に直線移動する方向の下手側で且つ該板状体の後述する刃物受台に接する表面と反対側の表面における該回転切削刃物の刃先近傍の表面のうち,少なくとも該板状体から切削屑として排除される側の前記表面の少なくとも一部分を押圧可能に備える押圧部材」を「回転切削刃物の前記相対的直線移動方向下手側で且つ当該回転切削刃物の刃先近傍における前記板状体の表面のうち,切削屑として排除されることになる部分を前記刃物受台に向けて押圧可能で,而も前記回転切削刃物と一体化して相対的直線移動する押圧部材」と補正したことが認められるところ,2か所の「少なくとも」の文言を削除しても,補正後の上記 - 19 -文言が,押圧部材によって押圧される部分を「切削屑として排除されることになる部分」に限定した趣旨であるとは解することができないのであって,原告が,「少なくとも切削屑として排除されることになる部分を押圧することでも良い」旨の記載を意識的に除外したとは認められない。)。 そうであるから,被告の前記主張は,採用することができない。 (3) 被告製品1は,本件発明の構成要件Eを充足し,また,構成要件AないしD,F及びGを充足しているから(前記の前提となる事実(6)),本件発明の技術的範囲に属する。 3 争点3(被告が先使用による通常実施権を有するか否か)について(1) 各項末尾掲記の証拠及び弁論の前趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア被告は,平成7 術的範囲に属する。 3 争点3(被告が先使用による通常実施権を有するか否か)について(1) 各項末尾掲記の証拠及び弁論の前趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア被告は,平成7年11月頃,サンテックから,スカーフカッター3台を含むスカーフ切断接合システム3基の製造を依頼され,開発部次長であったBを中心に開発,設計を行い,サンテック用スカーフカッターを組み込んだスカーフ切断接合システム(スカーフジョインター)を製造し,平成9年7月24日,他社が製造したプレス機やロールドライヤーなどとともに,LVL(単板積層木材)製造装置としてサンテックに引き渡した。 (乙6の1ないし4,7の1ないし9,35ないし38)イサンテック用スカーフカッターは,スカーフジョインターの一部を構成するもので,刃物受台に対して傾斜して備えられた丸鋸を,刃物受台に当接させながら直線に移動させ,板状体の端部を切削してスカーフ面に加工する装置であり,その前切部には,丸鋸による切削位置の前方付近に,空 - 20 -気圧でピストンロッドが出入りするガイド付き薄型シリンダによって制御されるMCナイロン製のプレートが備え付けられている。 (乙7の1ないし9,41ないし46,48)ウ上記プレートは,丸鋸が板状体の端部を切削する際に,板状体の表面に向けて切削屑として排除されることになる部分とそれ以外の部分を押圧して,丸鋸とともに移動するものであり,プレートが板状体の表面に向けて押圧する結果,板状体がプレートと刃物受台とによって挟持されるものである。 (乙8,45)(2) 上記(1)の認定事実によれば,サンテック用スカーフカッターは,スカーフジョインターの一部を構成するもので,刃物受台に 物受台とによって挟持されるものである。 (乙8,45)(2) 上記(1)の認定事実によれば,サンテック用スカーフカッターは,スカーフジョインターの一部を構成するもので,刃物受台に対して傾斜して備えられた丸鋸を,刃物受台に当接させながら直線に移動させて,板状体の前後端を切削してスカーフ面に加工する装置であるから,本件発明の構成要件AないしD及びGを充足する。また,サンテック用スカーフカッターには,丸鋸による切削位置の前方付近にプレートが備え付けられ,これが板状体の表面に向けて切削屑として排除されることになる部分とそれ以外の部分を押圧して,丸鋸とともに移動するというのであって,上記プレートは,本件発明の「押圧部材」に該当するものと認められるから,サンテック用スカーフカッターは本件発明の構成要件Eを充足する。さらに,サンテック用スカーフカッターは,上記プレートと刃物受台とによって板状体を挟持するものであるから,本件発明の構成要件Fを充足する。 したがって,サンテック用スカーフカッターは,本件発明の技術的範囲に - 21 -属するといわなければならない。 (3) 原告は,サンテック用スカーフカッターの設計図(乙7の3の拡大図である乙7の7)によれば,プレートの最下点の下面と刃物受台との間隔は4㎜で,単板の厚さは3.2㎜であるから,単板がプレートと刃物受台との間に来たとしてもなお0.8㎜の隙間があるから,プレートは,単板を押さえるものではなく,単板を単にガイドするものとして設計されていると主張する。しかしながら,そもそも,サンテック用スカーフカッターの設計図(乙7の7)は,端縁押えプレートの下面と刃物受台との間隔が4㎜であることを示しているだけであって,プレートの下面と刃物受台との間隔 る。しかしながら,そもそも,サンテック用スカーフカッターの設計図(乙7の7)は,端縁押えプレートの下面と刃物受台との間隔が4㎜であることを示しているだけであって,プレートの下面と刃物受台との間隔が4㎜であることを示しているわけではないし,プレートが最下点にある時点における状態を示したものであるということもできない。そして,プレートは,ガイド付き薄型シリンダのピストンロッドに取り付けられ,空気圧で上下に動作するように制御されているのであるから,このことに鑑みれば,プレートが単板を単にガイドするものとして設計されたとは認めることができない。 また,原告は,サンテック用スカーフカッターのプレートは,設計図では,単体構造でボルト穴が4個であるのに,近時撮影されたサンテック用スカーフカッターのプレートは,高さ方向に重なる上下の部品を有するとともにボルト穴のようなものが7個あることが認められるから,事後的に,切削屑として排除される部分を押圧するように設計の変更をしたと主張する。しかしながら,プレートのボルト穴のうち4個については設計図と位置関係が一致するのであり,また,プレートは,当初から,ガイド付き薄型シリンダのピストンロッドに取り付けられていて,空気圧で上下に動作するように制 - 22 -御されていたのであるから,事後的に,切削屑として排除される部分を押圧するように設計の変更をしたとは考え難い。 (4) サンテック用スカーフカッターに係る発明は,本件発明と同一の発明であると認められるところ,その発明をした被告の従業員を具体的に特定することはできないものの,被告はその発明をした従業員からこれを知得して,本件特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしていたものである。そして,被告が当時 の従業員を具体的に特定することはできないものの,被告はその発明をした従業員からこれを知得して,本件特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしていたものである。そして,被告が当時本件発明の内容を知っていたこと窺わせるような証拠は全くないから,このことに鑑みれば,被告は,本件発明の内容を知らないでその発明をした従業員からこれを知得したものと認められる。 そうすると,被告は,本件特許権について,先使用による通常実施権を有する。 4 以上によれば,被告製品1に係る原告の請求も,理由がない。 第4 結論よって,原告の請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官高野輝久 裁判官志賀勝 - 23 - 裁判官棚橋知子は,海外出張のため署名押印することができない。 裁判長裁判官高野輝久(別紙特許公報は省略)
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