平成21(ワ)45432 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成24年9月13日 東京地方裁判所
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判決文本文31,806 文字)

- 1 -平成24年9月13日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成21年(ワ)第45432号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成24年6月5日判決当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 原告のために,この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは,別紙物件目録記載の各動物用医薬品を製造し,販売し,譲渡し,貸し渡し,輸出し,又は譲渡等の申出をしてはならない。 2 被告らは,別紙物件目録記載の各動物用医薬品を廃棄せよ。 3 被告らは,原告に対し,連帯して2200万円及びこれに対する平成22年1月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,ペット寄生虫の治療・予防用組成物に関する発明について特許権を有する原告が,被告らの製造,販売等する動物用医薬品が原告の特許の特許発明の技術的範囲に属するとして,被告らに対し,特許法100条に基づき,上記動物用医薬品の製造,譲渡等の差止め及び廃棄を求めるとともに,民法70 - 2 -9条,719条に基づき,損害金2200万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成22年1月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実並びに各項末尾掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者ア原告は,フランス共和国リヨンに本店を有する法人である。原告は,動物用医薬品の製造及び販売等を業とし,殺虫活性物質フィプロニルを主成分とする犬・猫用の各ノミ・マダニ駆除 )(1) 当事者ア原告は,フランス共和国リヨンに本店を有する法人である。原告は,動物用医薬品の製造及び販売等を業とし,殺虫活性物質フィプロニルを主成分とする犬・猫用の各ノミ・マダニ駆除剤「フロントライン」を製造し,販売している。 (甲10ないし14,15の1・2)イ被告フジタ製薬株式会社(以下「被告フジタ製薬」という。)は,医薬品,動物用医薬品及び獣医用医薬品の製造,販売及び輸出入等を業とする株式会社である。 ウ被告共立製薬株式会社(以下「被告共立製薬」という。)は,動物用の医薬品,医薬部外品及び医療用具の製造,販売及び輸出入等を業とする株式会社である。 (2) 本件特許権原告は,次の特許権(以下「本件特許権」という。)を有している。 特許番号第3765891号発明の名称ペット寄生虫の治療・予防用組成物優先日平成7年9月29日 - 3 -平成8年9月11日出願日平成8年9月27日登録日平成18年2月3日(3) 本件各発明本件特許出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1,同7,同25及び同26の記載は,本判決添付の特許公報(以下「本件公報」という。)の各該当項記載のとおりである(以下,請求項1に係る発明を「本件発明1」と,請求項7に係る発明を「本件発明2」と,請求項25に係る発明を「本件発明3」と,請求項26に係る発明を「本件発明4」といい,これらを併せて「本件各発明」という。)(4) 本件各訂正発明ア被告フジタ製薬は,平成22年4月6日,本件特許について,特許無効審判(無効2010-80 発明を「本件発明4」といい,これらを併せて「本件各発明」という。)(4) 本件各訂正発明ア被告フジタ製薬は,平成22年4月6日,本件特許について,特許無効審判(無効2010-800061号)を請求し,これに対し,原告は,同年11月26日,前記審判事件において,請求項1及び26等について,特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明を目的として,訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)をした。 イ本件訂正請求は,請求項1を別紙訂正目録記載1のとおり訂正し,請求項25を削除の上,請求項26を請求項25に繰り上げて同目録記載2のとおり訂正するというものである(以下,訂正請求による訂正後の請求項1に係る発明を「本件訂正発明1」と,訂正後の請求項1を引用する請求項7に係る発明を「本件訂正発明2」と,請求項25に係る発明を「本件訂正発明4」といい,これらを併せて「本件各訂正発明」という。)。 - 4 -(甲35,41)(5) 構成要件の分説ア本件発明1を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件1A」のようにいう。)。 1A 「(a) 〔化1〕で表される殺虫活性物質:【化1】 (ここで,R1はハロゲン原子,CNまたはメチル基を表し,R2はS(O)nR3,4,5-ジシアノイミダゾール-2-イルまたはハロアルキル基を表し,ここで,R3はアルキルまたはハロアルキル基を表し,R4は水素またはハロゲン原子を表すか,NR5R6,S(O)mR7,C(O)R7またはC(O)OR7,アルキル,ハロアルキル,OR8または-N=C(R9)(R10)を表し,こ キル基を表し,R4は水素またはハロゲン原子を表すか,NR5R6,S(O)mR7,C(O)R7またはC(O)OR7,アルキル,ハロアルキル,OR8または-N=C(R9)(R10)を表し,ここで,R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子,アルキル,ハロアルキル,C(O)アルキル,S(O)rCF3,アシルまたはアルコキシカルボニル基を表すか,R5とR6とが一緒になって2価のアルキレン基を作り,この - 5 -アルキレン基は2価のヘテロ原子を1つまたは2つを含むことができ,R7はアルキルまたはハロアルキル基を表し,R8はアルキル,ハロアルキル基または水素原子を表し,R9はアルキル基または水素原子を表し,R10は単数または複数のハロゲン原子で置換されていてもよいフェニルまたはヘテロアリール基を表し,Xは炭素,三価の窒素原子またはC-R12を表し,R12は水素原子,CNまたはNO2を表し,yはSF5基,CN,NO2,S(O)rCF3,ハロゲン原子,ハロアルキルまたはハロアルコキシ基を表し,m,nおよびrは互いに独立に0,1または2の整数を表し,pは1,2,3,4または5の整数を表し,ただし,R1がメチルの場合は,R3がハロアルキルで,R4がNH2で,pが2で,6位にあるyがClで,4位にあるyがCF3で,XがNであるか,R2が4,5-ジシアノイミダゾール-2-イルで,R4がClで,pが3で,6位にあるyがClで,4位にあるyがCF3で,XがC-Clである)」から成り,1B 「(b) ポリビニルピロリドン,酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体,ポリオキシエチレン化されたソルビタンエステルおよびこれらの混合物の中から選択される結晶化阻害剤 lである)」から成り,1B 「(b) ポリビニルピロリドン,酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体,ポリオキシエチレン化されたソルビタンエステルおよびこれらの混合物の中から選択される結晶化阻害剤」から成り,1C 「(c) アセトン,ベンジルアルコール,ブチルジグリコール,ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル,エタノール,イソプロパ - 6 -ノール,メタノール,エチレングリコールモノエチルエーテル,エチレングリコールモノメチルエーテル,ジプロピレングリコールモノメチルエーテル,プロピレングリコール,ジエチレングリコールモノエチルエーテル,エチレングリコールおよびこれらの溶媒の少なくとも二つの混合物から成る群の中から選択される有機溶媒」から成り,1D 「(d) エタノール,イソプロパノールおよびメタノールから成る群の中から選択される有機溶媒とは異なる有機共溶媒」から成り,1E 式(I)の化合物は1~20%(w/v)の割合で存在し,1F(1) 結晶化阻害剤は1~20%(w/v)の割合で存在し(2) 且つ(c)で定義した溶媒中に式(I)の化合物を10%(W/V),結晶化阻害剤を10%添加した溶液Aの0.3mlをガラススライドに付け,20℃で24時間放置した後にガラススライド上を肉眼で観察した時に観察可能な結晶の数が10個以下あり,1G 有機溶媒(c)は組成物全体を100%にする比率で加えられ,1H 有機共溶媒(d)は(d)/(c)の重量比(w/w)が1/15~1/2となる割合で存在し,1I 有機共溶媒(d)は水および/または溶媒c)と混和性がある,1J 動物の身体の一部へ局所塗布することによって動物の全身へ拡散する,直ちに使用可能な溶液の形をした,寄生虫からペットを治療または予防するための組成物。 および/または溶媒c)と混和性がある,1J 動物の身体の一部へ局所塗布することによって動物の全身へ拡散する,直ちに使用可能な溶液の形をした,寄生虫からペットを治療または予防するための組成物。 イ本件訂正発明1を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,訂正請求による訂正に係る構成要件1Cを「構成要件1C’」という。)。 - 7 -1A 「(a) 〔化1〕で表される殺虫活性物質:【化1】 (ここで,R1はハロゲン原子,CNまたはメチル基を表し,R2はS(O)nR3,4,5-ジシアノイミダゾール-2-イルまたはハロアルキル基を表し,ここで,R3はアルキルまたはハロアルキル基を表し,R4は水素またはハロゲン原子を表すか,NR5R6,S(O)mR7,C(O)R7またはC(O)OR7,アルキル,ハロアルキル,OR8または-N=C(R9)(R10)を表し,ここで,R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子,アルキル,ハロアルキル,C(O)アルキル,S(O)rCF3,アシルまたはアルコキシカルボニル基を表すか,R5とR6とが一緒になって2価のアルキレン基を作り,このアルキレン基は2価のヘテロ原子を1つまたは2つを含むことができ,R7はアルキルまたはハロアルキル基を表し,R8はアルキル,ハロアルキル基または水素原子を表し,R9はアルキル基または水素原子を表し, - 8 -R10は単数または複数のハロゲン原子で置換されていてもよいフェニルまたはヘテロアリール基を表し,Xは炭素,三価の窒素原子またはC-R12を表し,R12は水素原子,CNまたはNO2を表し,yはSF ロゲン原子で置換されていてもよいフェニルまたはヘテロアリール基を表し,Xは炭素,三価の窒素原子またはC-R12を表し,R12は水素原子,CNまたはNO2を表し,yはSF5基,CN,NO2,S(O)rCF3,ハロゲン原子,ハロアルキルまたはハロアルコキシ基を表し,m,nおよびrは互いに独立に0,1または2の整数を表し,pは1,2,3,4または5の整数を表し,ただし,R1がメチルの場合は,R3がハロアルキルで,R4がNH2で,pが2で,6位にあるyがClで,4位にあるyがCF3で,XがNであるか,R2が4,5-ジシアノイミダゾール-2-イルで,R4がClで,pが3で,6位にあるyがClで,4位にあるyがCF3で,XがC-Clである)」から成り,1B 「(b) ポリビニルピロリドン,酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体,ポリオキシエチレン化されたソルビタンエステルおよびこれらの混合物の中から選択される結晶化阻害剤」から成り,1C 「(c) ジプロピレングリコール n-ブチルエーテル,エチレングリコールモノエチルエーテル,エチレングリコールモノメチルエーテル,ジエチレングリコールモノエチルエーテル,ジプロピレングリコールモノメチルエーテルおよびこれらの溶媒の少なくとも二つの混合物から成る群の中から選択される有機溶媒」から成り,1D 「(d) エタノール,イソプロパノールおよびメタノールから成る - 9 -群の中から選択される有機溶媒とは異なる有機共溶媒」から成り,1E 式(I)の化合物は1~20%(w/v)の割合で存在し,1F(1) 結晶化阻害剤は1~20%(w/v)の割合で存在し(2) 且つ(c)で定義した溶媒中に式(I)の化合物を10%(W/V),結晶化阻 の化合物は1~20%(w/v)の割合で存在し,1F(1) 結晶化阻害剤は1~20%(w/v)の割合で存在し(2) 且つ(c)で定義した溶媒中に式(I)の化合物を10%(W/V),結晶化阻害剤を10%添加した溶液Aの0.3mlをガラススライドに付け,20℃で24時間放置した後にガラススライド上を肉眼で観察した時に観察可能な結晶の数が10個以下あり,1G 有機溶媒(c)は組成物全体を100%にする比率で加えられ,1H 有機共溶媒(d)は(d)/(c)の重量比(w/w)が1/15~1/2となる割合で存在し,1I 有機共溶媒(d)は水および/または溶媒c)と混和性がある,1J 動物の身体の一部へ局所塗布することによって動物の全身へ拡散する,直ちに使用可能な溶液の形をした,寄生虫からペットを治療または予防するための組成物。 ウ本件発明2を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件2A」のようにいう。)。 2A 式(I)の化合物が1-[4-CF3 2,6-Cl2フェニル]3-シアノ 4-[CF3-SO]5-NH2ピラゾールである2B 請求項1または2に記載の組成物。 エ本件訂正発明2を構成要件に分説すると,次のとおりである。 2A 式(I)の化合物が1-[4-CF3 2,6-Cl2フェニル]3-シアノ 4-[CF3-SO]5-NH2ピラゾールである - 10 -2B 請求項1または2に記載の組成物。 オ本件発明3を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件3A」のようにいう。)。 3A 有機溶媒がジプロピレングリコール n-ブチルエーテル,エチ 3を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件3A」のようにいう。)。 3A 有機溶媒がジプロピレングリコール n-ブチルエーテル,エチレングリコールモノエチルエーテル,エチレングリコールモノメチルエーテル,ジエチレングリコールモノエチルエーテル,ジプロピレングリコールモノメチルエーテルおよびこれらの溶媒の少なくとも二つの混合物から成る群の中から選択されるグリコールエーテルである3B 請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。 カ本件発明4を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件4A」のようにいう。)。 4A グリコールエーテルがジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびジプロピレングリコールモノメチルエーテルから成る群の中から選択される4B 請求項25に記載の組成物。 キ本件訂正発明4を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,訂正請求による訂正に係る構成要件4Bを「構成要件4B’」という。)。 4A グリコールエーテルがジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびジプロピレングリコールモノメチルエーテルから成る群の中から選択される4B 請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。 (6) 被告らによる動物用医薬品の製造・販売 - 11 -被告フジタ製薬は,殺虫活性物質フィプロニルを主成分とする犬・猫用のノミ・マダニ駆除剤である別紙物件目録記載の各動物用医薬品(以下「各被告製品」という。)を業として製造し,平成21年5月から,被告共立製薬と共同し,各被告製品を業として販売している。 (甲3ないし8,9の1・2)。 (7) 各被告 物用医薬品(以下「各被告製品」という。)を業として製造し,平成21年5月から,被告共立製薬と共同し,各被告製品を業として販売している。 (甲3ないし8,9の1・2)。 (7) 各被告製品の構成各被告製品の構成を本件発明1及び本件訂正発明1の構成要件に対応させて分説すると,次の点は当事者間に争いがない。 1a フィプロニルから成り,1b クロタミトンという結晶化阻害剤から成り,1c ジエチレングリコールモノエチルエーテルという有機溶媒から成り,1d エタノールという有機溶媒とは異なる有機共溶媒から成り,1e フィプロニルは約10%(w/v)の割合で存在し,1f(1) 結晶化阻害剤は約3%(w/v)の割合で存在し(2) 且つジエチレングリコールモノエチルエーテル中にフィプロニルを10%(W/V),結晶化阻害剤を10%添加した溶液の0.3ml をガラススライドに付け,20℃で24時間放置した後にガラススライド上を肉眼で観察した時に観察可能な結晶の数が10個以下あり,1g ジエチレングリコールモノエチルエーテルは組成物全体を100%にする比率で加えられ,1h エタノールはエタノール/ジエチレングリコールモノエチルエーテルの重量比が1/15~1/2となる割合で存在し, - 12 -1i エタノールは水と混和性がある,1j 組成物。 (8) 各被告製品の本件発明1及び本件訂正発明1に対する充足性各被告製品は,本件発明1の構成要件1A,CないしIを充足するが,構成要件1Bを充足しない。また,各被告製品は,本件訂正発明1の構成要件1A,C’ないしIを充足するが,構成要件1Bを充足しない。 2 争点及び当事 発明1の構成要件1A,CないしIを充足するが,構成要件1Bを充足しない。また,各被告製品は,本件訂正発明1の構成要件1A,C’ないしIを充足するが,構成要件1Bを充足しない。 2 争点及び当事者の主張本件の争点は,①各被告製品の構成,②各被告製品が本件各発明及び本件各訂正発明の技術的範囲に属するか,③本件各発明に係る請求項1,7,25及び26並びに本件各訂正発明に係る請求項1,7及び25が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか,④被告らの責任及び損害である。 (1) 争点①(各被告製品の構成)について(原告の主張)ア本件発明1及び本件訂正発明1の各構成要件1Jに対比した構成(1j)各被告製品は,犬若しくは猫の身体の一部へ局所塗布することによって犬若しくは猫の全身へ拡散する,直ちに使用可能な溶液の形をした,ノミやマダニから犬若しくは猫を治療または予防するための組成物である。 イ本件発明2及び本件訂正発明2の各構成要件2A・Bに対比した構成(2a・b)各被告製品は,フィプロニルが1-[4-CF3 2,6-Cl2フェニル]3-シアノ 4-[CF3-SO]5-NH2ピラゾールである(2a)。また,各被告製品は,1aないしjの構成を有する組成物である(2b)。 - 13 -ウ本件発明3の構成要件3A・Bに対比した構成(3a・b)各被告製品は,有機溶媒がジエチレングリコールモノエチルエーテルというグリコールエーテルである(3a)。また,各被告製品は,1aないしjの構成を有する組成物である(3b)。 エ本件発明4の構成要件4A・B及び本件訂正発明4の構成要件4A・Bに対比した構成(4a・b)各被告製品は,グリコ 製品は,1aないしjの構成を有する組成物である(3b)。 エ本件発明4の構成要件4A・B及び本件訂正発明4の構成要件4A・Bに対比した構成(4a・b)各被告製品は,グリコールエーテルがジエチレングリコールモノエチルエーテルである(4a)。また,各被告製品は,3a・b及び1aないしjの構成を有する組成物である(4b)。 (被告らの主張)ア本件発明1及び本件訂正発明1の各構成要件1Jに対比した構成(1j)について原告の主張は否認する。各被告製品は,犬又は猫の全身へ拡散するのではなく,その体表に広く拡散するにすぎない。 イ本件発明2及び本件訂正発明2の各構成要件2A・Bに対比した構成(2a・b)について原告の主張は否認する。 ウ本件発明3の構成要件3A・Bに対比した構成(3a・b)について原告の主張は否認する。 エ本件発明4の構成要件4A・B及び本件訂正発明4の構成要件4A・Bに対比した構成(4a・b)について原告の主張は否認する。 - 14 -(2) 争点②(各被告製品が本件各発明及び本件各訂正発明の技術的範囲に属するか)について(原告の主張)ア本件発明1及び本件訂正発明1について(ア) 各被告製品は,犬若しくは猫の身体の一部へ局所塗布することによって犬若しくは猫の全身へ拡散する,直ちに使用可能な溶液の形をした,ノミやマダニから犬若しくは猫を治療又は予防するための組成物であるから,本件発明1及び本件訂正発明1の各構成要件1Jの「動物の身体の一部へ局所塗布することによって動物の全身へ拡散する,直ちに使用可能な溶液の形をした,寄生虫からペットを治療又は予防するための組成物 ら,本件発明1及び本件訂正発明1の各構成要件1Jの「動物の身体の一部へ局所塗布することによって動物の全身へ拡散する,直ちに使用可能な溶液の形をした,寄生虫からペットを治療又は予防するための組成物」に当たる。 (イ) 各被告製品中の結晶化阻害剤であるクロタミトンは,構成要件1Bの「ポリビニルピロリドン,酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体,ポリオキシエチレン化されたソルビタンエステルおよびこれらの混合物の中から選択される結晶化阻害剤」と異なる。 a しかしながら,本件発明1及び本件訂正発明1は,殺虫活性物質フィプロニルや結晶化阻害剤等の各成分が公知でありながら,それらを一定の質量割合で組み合わせることにより,効果が低く,使用が容易とはいえず,大きさや毛皮の種類とは無関係に全ての種類の家畜に容易に使用することもできず,動物の身体全体に散布する必要がある上,乾燥すると結晶化現象が起き,毛皮の外観に影響を与えたり毛皮がべとついたりするという従来の殺虫剤が有していた課題を解決したもの - 15 -である。このため,本件発明1及び本件訂正発明1の実質的な価値は,結晶化阻害剤等の各成分に特定の化合物を選択したことではなく,殺虫活性物質フィプロニルの拡散効果と結晶化阻害剤等の各成分を一定の質量割合で組み合わせるという配合条件にある。本件発明1及び本件訂正発明1の実質的な価値が結晶化阻害剤等の各成分に特定の化合物を選択したことにあるならば,その化合物は構成要件1F(2)に定める結晶化阻害効果を有し,構成要件1F(2)は不要だったはずである。 なお,原告は,本件特許の出願手続において,構成要件1Bの結晶化阻害剤を「ポリビニルピロリドン,酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体,ポリオキシエチレン化されたソルビタンエステ はずである。 なお,原告は,本件特許の出願手続において,構成要件1Bの結晶化阻害剤を「ポリビニルピロリドン,酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体,ポリオキシエチレン化されたソルビタンエステルおよびこれらの混合物の中から選択される結晶化阻害剤」に補正したが,この補正は,本件明細書の【0017】・【0018】に挙げた結晶化阻害剤として使用可能な多数の化合物のうち,ポリオキシエチレン-脂肪酸エステル,ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル,アルキルスルフェート等の乳化剤,ポリビニルアルコール等の重合体が文献に記載されているという理由で拒絶理由通知を受けたため,これらを除外する趣旨で行ったにすぎない。このため,補正して本件特許を取得したからといって,本件発明1及び本件訂正発明1の実質的な価値が結晶化阻害剤に特定の化合物を採用したことにあるわけではない。 したがって,構成要件1Bのうち「ポリビニルピロリドン,酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体,ポリオキシエチレン化されたソル - 16 -ビタンエステルおよびこれらの混合物」という構成は,本件発明1及び本件訂正発明1の本質的部分ではない。 b 構成要件1Bのポリビニルピロリドンという結晶化阻害剤は,下図(a)のとおり,脂溶性N-エチルピロリドンビルディングブロックで構成され,アミド部分を含むため,殺虫成分であるフィプロニル分子との間で分子間水素結合をすることができる。一方,各被告製品中のクロタミトンという結晶化阻害剤も,下図(b)のとおり,N-エチルピロリドンビルディングブロックのアミド部分と類似するN-エチルアミド部分を含むため,フィプロニル分子との間で分子間水素結合をすることができる。このため,ポリビニルピロリドンもクロタミトンも,フィプロニルの有 ディングブロックのアミド部分と類似するN-エチルアミド部分を含むため,フィプロニル分子との間で分子間水素結合をすることができる。このため,ポリビニルピロリドンもクロタミトンも,フィプロニルの有機溶媒への溶解を促進させるとともに,溶液の結晶化を阻害し,毛皮をべとつかせない。 図(b) 図(a) 原告は,本件発明1及び本件訂正発明1の作用効果と各被告製品の作用効果が同一かどうかを検証するため,構成要件1F(2)に定める結晶化阻害効果が構成要件1Bに定める化合物の場合とクロタミトンの - 17 -場合のいずれでも得られるかどうかを,比較実験したところ,構成要件1Bに定める化合物の場合とクロタミトンの場合のいずれにおいても,構成要件1F(2)に定める結晶化阻害効果が得られた。なお,被告らも比較実験を行っているが,約80%超という高い相対湿度の下で,構成要件1Bに定める化合物の場合にだけ,風を溶液に当てるなどした形跡があり,不適切な実験である。 したがって,構成要件1Bの「ポリビニルピロリドン,酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体,ポリオキシエチレン化されたソルビタンエステルおよびこれらの混合物」という構成をクロタミトンと置き換えても本件発明1及び本件訂正発明1の目的を達することができ,同一の作用効果を奏する。 c クロタミトンを外用液状製剤の結晶化阻害剤として使用し得ることは,平成8年2月13日に公開された公開特許公報(特開平8-40898号)(以下「甲24公報」という。)の【0014】の記載により,公知となっていた。 したがって,構成要件1Bの「ポリビニルピロリドン,酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体,ポリオキシエチレン化されたソルビタンエステルおよ )の【0014】の記載により,公知となっていた。 したがって,構成要件1Bの「ポリビニルピロリドン,酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体,ポリオキシエチレン化されたソルビタンエステルおよびこれらの混合物」という構成をクロタミトンに置き換えることは,当業者が平成21年5月以降における各被告製品の製造等の時点において容易に想到することができた。 d 前記aのとおり,本件発明1及び本件訂正発明1の技術的意義は,殺虫活性物質フィプロニルの拡散効果や結晶化阻害剤等の各成分を一 - 18 -定の質量割合で組み合わせるという配合条件にあり,新規性や進歩性もその点にある。このため,各被告製品の成分であるフィプロニルとクロタミトン,ジエチレングリコールモノエチルエーテル,エタノールを本件発明1及び本件訂正発明1にいう質量割合で組み合わせることを開示した公知技術も本件特許の出願時には存在しなかった。なお,原告は,平成16年9月7日,拒絶理由通知を受けて意見書を提出したが,この意見書において,結晶化阻害剤として使用可能な化合物を限定したことによる新規性や進歩性を主張したことはない。 したがって,各被告製品は,本件特許の出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたものでない。 e 前記aのとおり,原告は,構成要件1Bの結晶化阻害剤を補正したが,この補正は,結晶化阻害剤として使用可能な化合物の一部が文献に記載されているという理由で拒絶理由通知を受け,平成16年当時は「除くクレーム」が例外的にしか認められなかったため,これを除外する意図で行ったにすぎない。また,構成要件1Bにおける化合物が少ないのは,上記文献に記載された化合物を除く使用可能な全ての化合物を記載することが困難であり,特許出願のプラ なかったため,これを除外する意図で行ったにすぎない。また,構成要件1Bにおける化合物が少ないのは,上記文献に記載された化合物を除く使用可能な全ての化合物を記載することが困難であり,特許出願のプラクティスとして,特に好ましい代表例だけを挙げたからである。原告は,実施例に結晶化阻害剤としてポリビニルピロリドンとポリオキシエチレン化されたソルビタンエステルに相当するポリソルベート80を使用する場合だけを挙げたが,発明の内容が実施例に記載した内容に限定されるわけ - 19 -でもない。このため,原告の側において各被告製品が本件発明1及び本件訂正発明1の技術的範囲に属しないことを承認したり外形的にそのように解されるような行動をとったりしたものではない。 したがって,各被告製品が本件特許の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もない。 f そうであるから,各被告製品中のクロタミトンは,構成要件1Bの構成において均等である。 イ本件発明2ないし4並びに本件訂正発明2及び4について各被告製品は,フィプロニルが1-[4-CF3 2,6-Cl2フェニル]3-シアノ 4-[CF3-SO]5-NH2ピラゾールであるから,本件発明2の構成要件2Aの「式(I)の化合物が1-[4-CF3 2,6-Cl2フェニル]3-シアノ 4-[CF3-SO]5-NH2ピラゾールである」に当たる。各被告製品は,本件発明1の構成要件1A,CないしJを充足するとともに,構成要件1Bにおいて均等であるから,本件発明2の構成要件2Bの「請求項1…に記載の組成物」という構成においても均等であり,また,各被告製品は,本件訂正発明1の構成要件1A,CないしJを充足するとともに,構成要件1Bにおいて均等で 本件発明2の構成要件2Bの「請求項1…に記載の組成物」という構成においても均等であり,また,各被告製品は,本件訂正発明1の構成要件1A,CないしJを充足するとともに,構成要件1Bにおいて均等であるから,本件訂正発明2の構成要件2Bの「請求項1…に記載の組成物」という構成においても均等である。 また,各被告製品は,有機溶媒がジエチレングリコールモノエチルエーテルというグリコールエーテルであるから,本件発明3の構成要件3Aに当たる。各被告製品は,本件発明1の構成要件1A,CないしJ及び本件 - 20 -訂正発明1の構成要件1A,CないしJを充足するとともに,構成要件1Bにおいて均等であるから,本件発明3の構成要件3Bの「請求項1…に記載の組成物」という構成においても均等である。 さらに,各被告製品は,グリコールエーテルがジエチレングリコールモノエチルエーテルであるから,本件発明4の構成要件4Aに当たる。前記のとおり,各被告製品は,本件発明3の構成要件3Aを充足するとともに,構成要件3Bにおいて均等であるから,本件発明4の構成要件4Bの「請求項25に記載の組成物」という構成においても均等であり,また,各被告製品は,本件訂正発明1の構成要件1A,CないしJを充足するとともに,構成要件1Bにおいて均等であるから,本件訂正発明4の構成要件4Bの「請求項1…に記載の組成物」という構成においても均等である。 ウ以上のとおり,各被告製品は,本件各発明及び本件各訂正発明と均等であり,本件各発明及び本件各訂正発明の技術的範囲に属する。 (被告らの主張)ア本件発明1及び本件訂正発明1について(ア) 本件発明1及び本件訂正発明1の各構成要件1Jについては,本件明細書に組成物が全身へ 技術的範囲に属する。 (被告らの主張)ア本件発明1及び本件訂正発明1について(ア) 本件発明1及び本件訂正発明1の各構成要件1Jについては,本件明細書に組成物が全身へ拡散する機構が記載も示唆もされていないため,充足性を判断することができない。 (イ) クロタミトンは,構成要件1Bの結晶化阻害剤と異なる。 a 本件発明1及び本件訂正発明1は,動物の身体全体に散布する必要がない上,乾燥しても結晶化現象が起きず,毛皮の外観に影響を与えたり毛皮がべとついたりしないような組成物を提供することを目的と - 21 -するから,成分が少量ゆえに高濃度であるにもかかわらず結晶化しないことは必須であり,結晶化阻害剤は本件発明1及び本件訂正発明1の本質的部分である。しかも,原告は,結晶化阻害剤として使用可能な化合物が文献に記載されているという理由で拒絶理由通知を受けたのに対し,組成物が毛皮を通過できるような結晶化阻害剤としての開示はないと主張し,構成要件1Bの結晶化阻害剤を「ポリビニルピロリドン,酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体,ポリオキシエチレン化されたソルビタンエステルおよびこれらの混合物の中から選択される結晶化阻害剤」に限定する旨補正して本件特許を取得したから,結晶化阻害剤として選定した化合物も本件発明1及び本件訂正発明1の本質的部分である。 これに対し,殺虫活性物質フィプロニルの拡散効果は,文献に記載されており,本件発明1及び本件訂正発明1の本質的部分ではない。 したがって,構成要件1Bのうち「ポリビニルピロリドン,酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体,ポリオキシエチレン化されたソルビタンエステルおよびこれらの混合物」という構成は,本件発明1及び本件訂正 したがって,構成要件1Bのうち「ポリビニルピロリドン,酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体,ポリオキシエチレン化されたソルビタンエステルおよびこれらの混合物」という構成は,本件発明1及び本件訂正発明1の本質的部分である。 b 構成要件1Bのポリビニルピロリドンと各被告製品中のクロタミトンは,化学構造も吸湿性等の物性も全く異なる。ポリオキシエチレン化されたソルビタンエステルは,アミド部分を含まない。1-メチル-2-ピロリドン等も,クロタミトンと同じN-アミド部分を含むが,結晶化阻害効果が得られない。 - 22 -被告らは,本件発明1及び本件訂正発明1の作用効果と各被告製品の作用効果が同一かどうかを検証するため,構成要件1F(2)に定める結晶化阻害効果が構成要件1Bに定める化合物の場合とクロタミトンの場合のいずれでも得られるかどうかを,次の方法で比較実験したところ,構成要件1Bに定める化合物の場合には,いずれの方法でも,構成要件1F(2)に定める結晶化阻害効果が安定して得られなかったのに対し,クロタミトンの場合には,いずれの方法でも,構成要件1F(2)に定める結晶化阻害効果が得られた。なお,原告の比較実験は,ガラススライドでなく,時計皿を使用しているから,不適切な実験である。 ① 滴下試験法一定量の溶液を滴下した後に析出する結晶の量を測定する方法。本件明細書に記載されている方法である。 ② 塗布試験法一定量の溶液を滴下し,ほぼ一定の面積に塗り広げた後に析出する結晶の量を測定する①の代替方法。 ③ 加水析出法一定量の溶液にフィプロニルの溶解度が低い水を加えた後に析出する結晶の量を測定する①の代替方法。 したがって,構成要件1Bの「 定する①の代替方法。 ③ 加水析出法一定量の溶液にフィプロニルの溶解度が低い水を加えた後に析出する結晶の量を測定する①の代替方法。 したがって,構成要件1Bの「ポリビニルピロリドン,酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体,ポリオキシエチレン化されたソルビタンエステルおよびこれらの混合物」という構成をクロタミトンと置き - 23 -換えれば本件発明1及び本件訂正発明1の目的を達することができるが,同一の作用効果を奏するとはいえない。 c 各被告製品は,被告ら独自の膨大な調査や実験,臨床試験によって開発された。 甲24公報にはクロタミトンの記載があるが,これは,水虫薬の主成分たる硝酸オキシコナゾールの溶剤として用いられる低級アルコールの量を減らして皮膚への刺激を軽減させるとともに,酸性の硝酸オキシコナゾールを弱アルカリ域においても安定化させるために配合されたものである。このため,甲24公報は,主成分が異なる上,クロタミトンを使用する目的も異なり,クロタミトンをフィプロニル等の殺虫活性物質の結晶化阻害剤として使用し得ることを開示していない。 本件明細書にも,結晶化阻害剤の選択方法については記載されておらず,ポリビニルピロリドンとポリソルベート80をフィプロニル等の殺虫活性物質の結晶化阻害剤として使用する実施例しか挙げられていない。 したがって,構成要件1Bの「ポリビニルピロリドン,酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体,ポリオキシエチレン化されたソルビタンエステルおよびこれらの混合物」という構成をクロタミトンに置き換えることは,当業者が平成21年5月以降における各被告製品の製造等の時点において容易に想到することができなかった。 ビタンエステルおよびこれらの混合物」という構成をクロタミトンに置き換えることは,当業者が平成21年5月以降における各被告製品の製造等の時点において容易に想到することができなかった。 d 原告は,拒絶理由通知を受けて提出した意見書において,各成分を - 24 -一定の質量割合で組み合わせたことではなく,結晶化阻害剤として使用可能な化合物を限定したことによる新規性や進歩性を主張していたにすぎない。そして,クロタミトンを外用液状製剤に使用し得ることは,昭和63年8月30日に公開された各公開特許公報(特開昭63-208517・208518号)や平成5年10月19日に公開された公開特許公報(特開平5-271077号)により,公知となっていた。 したがって,各被告製品は,当業者が本件特許の第1優先権主張日である平成7年9月29日時点で公知技術から容易に推考できたものである。 e 原告は,本件特許の出願当初,結晶化阻害剤につき,請求項1では構成要件1F(2)に定める結晶化阻害効果で限定するにとどめるとともに,請求項10では【0017】・【0018】に記載した多数の化合物を挙げていたが,前記dのとおり,既に公知であったクロタミトンを挙げていなかった。また,原告は,上記化合物の一部が文献に記載されているという理由で拒絶理由通知を受けたため,結晶化阻害剤を構成要件1Bの「ポリビニルピロリドン,酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体,ポリオキシエチレン化されたソルビタンエステルおよびこれらの混合物の中から選択される結晶化阻害剤」に限定する旨補正して本件特許を取得した。さらに,原告は,実施例でも結晶化阻害剤として2種類の化合物を使用する場合しか挙げていないから,構成要件1Bに定める化合物以外の結晶化阻害剤で 結晶化阻害剤」に限定する旨補正して本件特許を取得した。さらに,原告は,実施例でも結晶化阻害剤として2種類の化合物を使用する場合しか挙げていないから,構成要件1Bに定める化合物以外の結晶化阻害剤でも同様の作用効果 - 25 -を有することを本件明細書に記載したとはいえず,構成要件1Bに定める化合物が特に好ましい代表例だけを挙げたものともいえない。このため,原告の側において少なくとも各被告製品が本件発明1及び本件訂正発明1の技術的範囲に属しないことを外形的に承認したかのように解されるような行動をとったものといえる。 したがって,各被告製品が本件特許の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情がある。 f そうであるから,各被告製品中のクロタミトンは,構成要件1Bの構成において均等でない。 イ本件発明2ないし4並びに本件訂正発明2及び4について原告の主張は否認するか,これを争う。各被告製品は,本件発明1及び本件訂正発明1の各構成要件1Bにおいて均等でないから,本件発明2の構成要件2B,本件発明3の構成要件3B,本件発明4の構成要件4B,本件訂正発明2の構成要件2B及び本件訂正発明4の構成要件4B’の構成において均等でない。 ウ以上のとおり,各被告製品は,本件各発明及び本件各訂正発明と均等でなく,本件各発明及び本件各訂正発明の技術的範囲に属しない。 (3) 争点③(本件各発明に係る請求項1,7,25及び26並びに本件訂正発明に係る請求項1,7及び25が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)について(被告らの主張)本件各発明及び本件各訂正発明は,動物の身体全体に散布する必要がない - 26 - 及び25が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)について(被告らの主張)本件各発明及び本件各訂正発明は,動物の身体全体に散布する必要がない - 26 -上,乾燥しても結晶化現象が起きず,毛皮の外観に影響を与えたり毛皮がべとついたりしないような組成物を提供することを目的とするから,成分が結晶化しないことは必須である。本件明細書には,本件発明1の構成要件1AないしD又は本件訂正発明1の構成要件1A,B,C’及びDに定める成分で構成要件1F(2)に定める結晶化阻害効果が得られることを裏付ける実施例が記載されてないため,被告らは,前記(2)(被告らの主張)ア(イ)bのとおり,その検証を含む実験をしたところ,フィプロニルが溶解せずに組成物を構成できなかったり構成要件1F(2)に定める結晶化阻害効果が安定して得られなかったりしたものである。構成要件1F(2)に定める結晶化阻害効果を安定して得るには,湿度を低くするとともに,0.3mlの溶液が流れ落ちないよう,密閉容器を用いるなどして空気の流れを受けにくくし,通常より大きなスライドガラスを使用する必要があった。しかし,このような実験条件は,本件明細書中の発明の詳細な説明に記載されていない。このため,本件各発明及び本件各訂正発明は,本件明細書に記載された実験をしても,発明の目的を実現することができず,実現するには当業者であっても過度の試行錯誤を要するものといえる。 したがって,本件各発明に係る請求項1,7,25及び26並びに本件各訂正発明に係る請求項1,7及び25は,発明の未完成,いわゆるサポート要件違反又は実施可能要件違反(平成14年法律第24号による改正前の特許法36条4項)により特許無効審判で無効とされるべきものと認められる。 (原 7及び25は,発明の未完成,いわゆるサポート要件違反又は実施可能要件違反(平成14年法律第24号による改正前の特許法36条4項)により特許無効審判で無効とされるべきものと認められる。 (原告の主張)原告の実験によれば,本件発明1及び本件訂正発明1の各構成要件1Bに - 27 -定める化合物で構成要件1F(2)に定める結晶化阻害効果が得られる。また,当業者であれば,技術常識を適用し,インビトロの試験として,約60ないし75%といった平均的な相対湿度の下で,空気を溶液には直接当てず,0. 3mlの溶液を保持するのに十分な大きさのスライドガラスを使用して実験することができるから,そのような実験条件が本件明細書中の発明の詳細な説明に記載されていなくても,過度の試行錯誤を要するものといえない。 仮に特定の化合物の組合せで構成要件1F(2)に定める結晶化阻害効果が得られなければ,当該組合せは,本件各発明や本件各訂正発明の技術的範囲に属しないだけである。なお,原告は,前記の前提事実(4)のとおり,本件訂正請求により,構成要件1F(2)に定める結晶化阻害効果が得られないと被告らが主張する有機溶媒の一部を削除した。 したがって,本件各発明に係る請求項1,7,25及び26並びに本件各訂正発明に係る請求項1,7及び25は,発明の未完成,いわゆるサポート要件違反又は実施可能要件違反(平成14年法律第24号による改正前の特許法36条4項)により特許無効審判で無効とされるべきものとは認められない。 (4) 争点④(被告らの責任及び損害)について(原告の主張)被告らは,共同して,平成21年5月以降,各被告製品を業として製造販売するなどして,本件特許権を侵害してきたから,原告は,被告らに対し,各被 責任及び損害)について(原告の主張)被告らは,共同して,平成21年5月以降,各被告製品を業として製造販売するなどして,本件特許権を侵害してきたから,原告は,被告らに対し,各被告製品に係る製造販売等の差止請求権及び廃棄請求権,次の損害についての損害賠償請求権を有する。 - 28 -ア特許法102条3項による損害額 2000万円平成21年5月から同年11月までの間における各被告製品の合計売上高は,少なくとも2億円を下らず,本件各発明及び本件各訂正発明の実施料率は,少なくとも10%を下らないから,特許法102条3項による損害額は,2億円の10%に当たる2000万円を下らない。 イ弁護士費用 200万円(被告らの主張)原告の主張は争う。 第3 当裁判所の判断 1 原告は,各被告製品が本件各訂正発明の技術的範囲に属するとして,各被告製品の製造,譲渡等の差止め及び廃棄並びに損害賠償を求めるが,訂正を認める旨の特許無効審判の審決が確定したことを認めるに足りる証拠はないから,本件訂正請求に係る訂正の効果は,いまだ発生していない(平成23年法律第63号による改正前の特許法134条の2第5項,128条)。 したがって,原告の前記請求は,理由がない。 2 争点①(各被告製品の構成)について(1) 本件発明1の構成要件1Jに対比した構成(1j)について証拠(甲8,9の1・2,乙27)によれば,各被告製品は,犬若しくは猫の肩甲骨間の皮膚へ局所滴下することによって犬若しくは猫の皮脂と共に全身の皮膚へ広がる,直ちに使用可能な溶液の形をした,ノミやマダニから犬若しくは猫を治療するための組成物であ 告製品は,犬若しくは猫の肩甲骨間の皮膚へ局所滴下することによって犬若しくは猫の皮脂と共に全身の皮膚へ広がる,直ちに使用可能な溶液の形をした,ノミやマダニから犬若しくは猫を治療するための組成物であることが認められる。 (2) 本件発明2の構成要件2A・Bに対比した構成(2a・b)について - 29 -各被告製品は,フィプロニルから成るものであるところ,本件明細書の段落【0014】の記載によれば,フィプロニルの化学式は,1-[2,6-Cl2 4-CF3 フェニル]3-CN 4-[SO-CF3] 5-NH2 ピラゾールであることが認められるから,各被告製品は,2aの構成を有する。 また,各被告製品は,前記の前提事実(7)のとおり,1aないしiの構成を有するとともに,前記(1)のとおり,犬若しくは猫の肩甲骨間の皮膚へ局所滴下することによって犬若しくは猫の皮脂と共に全身の皮膚へ広がる,直ちに使用可能な溶液の形をした,ノミやマダニから犬若しくは猫を治療するための組成物である。 (3) 本件発明3の構成要件3A・Bに対比した構成(3a・b)について各被告製品は,ジエチレングリコールモノエチルエーテルという有機溶媒から成るものであるところ,本件明細書の段落【0016】の記載によれば,各被告製品中のジエチレングリコールモノエチルエーテルは,グリコールエーテルに属することが認められるから,各被告製品は,3aの構成を有する。 また,前記(2)のとおり,各被告製品は,1aないしiの構成を有するとともに,犬若しくは猫の肩甲骨間の皮膚へ局所滴下することによって犬若しくは猫の皮脂と共に全身の皮膚へ広がる,直ちに使用可能な溶液の形をした,ノミやマダニから犬若しくは猫を治療するための組成物である。 (4) 本件発明4の構成要件4A 所滴下することによって犬若しくは猫の皮脂と共に全身の皮膚へ広がる,直ちに使用可能な溶液の形をした,ノミやマダニから犬若しくは猫を治療するための組成物である。 (4) 本件発明4の構成要件4A・Bに対比した構成(4a・b)について前記(3)のとおり,各被告製品中のジエチレングリコールモノエチルエーテルは,グリコールエーテルに属するから,各被告製品は,4aの構成を有する。 - 30 -また,各被告製品は,前記の前提事実(7)のとおり,1aないしiの構成を有し,前記(3)のとおり,3aの構成を有するとともに,犬若しくは猫の肩甲骨間の皮膚へ局所滴下することによって犬若しくは猫の皮脂と共に全身の皮膚へ広がる,直ちに使用可能な溶液の形をした,ノミやマダニから犬若しくは猫を治療するための組成物である。 3 争点②(各被告製品が本件各発明の技術的範囲に属するか)について(1) 本件発明1についてア各被告製品は,前記の前提事実(8)のとおり,本件発明1の構成要件1A,CないしIを充足し,前記2(1)の認定事実によれば,構成要件1Jを充足することが認められる。 したがって,本件発明1と各被告製品とは,構成要件1Bにおいて,本件発明1が「(b) ポリビニルピロリドン,酢酸ビニル/ ビニルピロリドン共重合体,ポリオキシエチレン化されたソルビタンエステルおよびこれらの混合物の中から選択される結晶化阻害剤」から成るのに対し,各被告製品ではクロタミトンという結晶化阻害剤から成る点で異なる。 イ特許請求の範囲に記載された構成中に他人が製造等をする製品と異なる部分が存する場合であっても,①当該部分が特許発明の本質的部分ではなく,②当該部分を上記製品におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同 た構成中に他人が製造等をする製品と異なる部分が存する場合であっても,①当該部分が特許発明の本質的部分ではなく,②当該部分を上記製品におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって,③そのように置き換えることに,当業者が上記製品の製造等の時点において容易に想到することができたものであり,④上記製品が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考で - 31 -きたものではなく,かつ,⑤上記製品が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは,上記製品は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である(最高裁平成6年(オ)第1083号同10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照)。 ウそこで,各被告製品が本件発明1の構成と均等なものとして,その技術的範囲に属するかどうかについて以下検討する。 (ア) ①非本質的要件についてa 本件公報(甲2)によれば,本件明細書の発明の詳細な説明の項には,次の記載があることが認められる。 (a) 「【発明の属する技術分野】本発明は寄生虫に寄生された動物の治療と寄生される可能性のある動物の予報のための組成物に関するものであり,特に,ペット,特にネコとイヌに寄生する寄生虫を抑制および駆除する組成物に関するものである。」(段落【0001】)(b) 「【従来の技術】ペットには下記a)~c)の一種または複数の寄生虫が寄生することが多い:a)ネコノミ,イヌノミ(Ctenocephalidesfelis,Cte (b) 「【従来の技術】ペットには下記a)~c)の一種または複数の寄生虫が寄生することが多い:a)ネコノミ,イヌノミ(Ctenocephalidesfelis,Cteno-cephalides種等)b)ダニ(Rhipicephalus種,Ixodes種,Dermacentor種,Amblyoma種等) - 32 -c)皮膚の爛れをおこす寄生虫(Demodex種,Sarcoptes種,Otodectes種等)…皮膚の爛れを起こす寄生虫は特に駆除が困難である。その理由はそのような寄生虫に作用する活性物質の数が非常に少なく,さらに頻繁に治療する必要があるためである。 多くの殺虫剤が知られているが,その活性は平均的であり,価格もまちまちである。しかし,これらの殺虫剤,例えばカーバメート,有機リン化合物,ピレスロイドなどを使用していると抵抗を獲得することが多い。WO-A-87/03781およびEP-A-0,295,117号には,抗寄生虫活性を含む広範囲の活性を有する多数のN-フェニルピラゾール類が記載されている。」(段落【0002】・【0003】)(c) 「【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は効果が高く且つ使用が容易な動物の治療および予防のための新規な抗寄生虫組成物を提供することにある。本発明の他の目的はおおきさや毛皮の種類とは無関係に,全ての種類の家畜に容易に使用できる組成物を提供することにある。本発明のさらに他の目的は動物の身体全体に散布する必要のない効果的な組成物を提供することにある。本発明のさらに他の目的は動物の体の一部に投与するだけで体全体に拡散し,乾燥し,しかも,結晶化現象が起きないような組成物を提供することにある。本発明のさらに他の目的 的な組成物を提供することにある。本発明のさらに他の目的は動物の体の一部に投与するだけで体全体に拡散し,乾燥し,しかも,結晶化現象が起きないような組成物を提供することにある。本発明のさらに他の目的は乾燥後に毛皮の外観に影響を与えない組成物,特に結晶が残らず,毛皮がべとつかないよう - 33 -な組成物を提供することにある。上記目的は本発明によって達成される。」(段落【0004】)(d) 「本発明で最も好ましい〔化3〕の化合物Aは,1-[2,6-Cl2 4-CF3 フェニル]3-CN 4-[SO-CF3] 5-NH2ピラゾール,慣用名フィプロニルである。〔化3〕の化合物はWO-A-87/3781,93/6089および94/21606やEP-A-295,117に記載の方法および化学合成の専門家が適宜行いえる他任意の方法で合成することができる。当業者はケミカルアブストラクツ(ChemicalAbstracts)とその中で引用されている文献の内容を全て自由に使用できれば,本発明化合物を化学的に製造することができるはずである。」(段落【0014】)(e) 「本発明組成物はペット,特にネコおよびイヌを対象にするもので,一般に皮膚に塗布することによって(スポットオン方式またはポアオン方式で)投与されるが,この投与は一般に表面積10㎠以下,特に5~ 10㎠の領域に対して行う局所投与で,好ましくは動物の両肩の間の2 箇所に塗布する。本発明組成物は塗布後に動物体全体に拡散し,その後は結晶化せずに乾燥するので毛皮の外観が変化することはなく,特に白い付着物は観察されず,汚れた様子は全くなく,手触りを損なうこともない。」(段落【0015】)(f) 「本発明で使用可能な結晶化阻害剤b)としては特に下記▲1▼~ ることはなく,特に白い付着物は観察されず,汚れた様子は全くなく,手触りを損なうこともない。」(段落【0015】)(f) 「本発明で使用可能な結晶化阻害剤b)としては特に下記▲1▼~▲5▼を挙げることができる:▲1▼ ポリビニルピロリドン,ポリビニルアルコール,酢酸ビ - 34 -ニル/ビニルピロリドン共重合体,ポリエチレングリコール,ベンジルアルコール,マンニトール,グリセロール,ソルビトール,ポリオキシエチレン化されたソルビタンエステル,レシチン,ソジウムカルボキシメチルセルロース,アクリル誘導体,例えばメタクリレート等。 ▲2▼ アルカリステアレート等のアニオン界面活性剤,特にステアリン酸ナトリウム,ステアリン酸カリウムまたはステアリン酸アンモニム,ステアリン酸カルシウム,トリエタノールアミンステアレート,ソジウムアビエテート,アルキルサルフェート,特にソジウムラウリルサルフェートおよびソジウムセチルサルフェート,ソジウムドデシルベンゼンスルホネート,ソジウムジオクチルスルホスクシネート,脂肪酸,特にやし油に由来する脂肪酸。 ▲3▼ カチオン界面活性剤,例えばN+ R’R”R'"R""Y-で表される水溶性の第4級アンモニウム塩(ここで,Rは水酸化されていてもよい炭化水素基であり,Y-は強酸のアニオン,例えばハロゲン化物のアニオン,硫酸イオンおよびスルホン酸イオンである。 使用可能なカチオン界面活性剤としてはセチルトリメチルアンモニウムブロミドがある。 ▲4▼ 非イオン性界面活性剤,例えばポリオキシエチレン化されていてもよいソルビタンエステル等,特にポリソルベート80,ポリオキシエチレン化されたアルキルエーテル,ポリエチレングリコールステアレート,ヒマシ油のポリオキシエチレン化 ばポリオキシエチレン化されていてもよいソルビタンエステル等,特にポリソルベート80,ポリオキシエチレン化されたアルキルエーテル,ポリエチレングリコールステアレート,ヒマシ油のポリオキシエチレン化誘導体,ポ - 35 -リグリセロールエステル,ポリオキシエチレン化された脂肪アルコール,ポリオキシエチレン化された脂肪酸,エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体。 ▲5▼ 両性界面活性剤,例えばラウリル置換されたベタイン化合物。 好ましくは上記結晶化阻害剤の少なくとも2種類の混合物を用いる。」(段落【0017】・【0018】)(g) 「特に好ましい方法は結晶化阻害剤系すなわちポリマータイプの膜形成剤と界面活性剤との組み合わせを用いるものである。界面活性剤は結晶化阻害剤b)として上記で挙げた化合物から選択する。 ポリマータイプの膜形成剤としては下記▲1▼~▲3▼を挙げることができる:▲1▼ 各種グレードのポリビニルピロリドン▲2▼ ポリビニルアルコール▲3▼ 酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体。 界面活性剤としては特に非イオン性界面活性剤が挙げられる。好ましくはポリオキシエチレン化されたソルビタンエステル,特に各種グレートのポリソルベート,例えばポリソルベート80を挙げることができる。被膜形成剤および界面活性剤は上記の結晶化阻害剤全量の範囲内で同量またはほぼ等量だけ使用することができる。この系は毛の表面に結晶を残さず,毛皮の美的外観を保つという目的が達成できるという特筆すべき利点を有している。すなわち,活性 - 36 -物質の濃度が高いにも係わらず,毛皮がくっつき合ったりベト付いた外観にならない。」(段落【0019】・【0020】)b また,証拠(甲1,25 を有している。すなわち,活性 - 36 -物質の濃度が高いにも係わらず,毛皮がくっつき合ったりベト付いた外観にならない。」(段落【0019】・【0020】)b また,証拠(甲1,25,乙4,11,19)によれば,次の事実が認められる。 (a) 本件発明1に対応する本件特許の特許請求の範囲の請求項1は,平成8年9月の出願当初,結晶化阻害剤につき,構成要件1F(2)に相当する「b)結晶化阻害剤:この結晶化阻害剤は,下記c)で定義される溶媒中に式(I)の化合物を10%(W/V),この結晶化阻害剤を10%添加した溶液Aの0.3mlをガラススライドに付け,20℃で24時間放置した後にガラススライド上を肉眼で観察した時に,観察可能な結晶の数が10個以下,好ましくはゼロであり,」とだけ記載され,具体的な化合物は,従属項である特許請求の範囲請求項10ないし15に,段落【0017】ないし【0020】とほぼ対応する形で記載されていた。 (b) 原告は,平成16年7月12日付けで,特許庁審査官から,本件特許の出願に係る発明のほとんどが,結晶化阻害剤を含めて,その出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明と同一若しくはこれに基づいて容易に発明をすることができ,又は,上記出願の日前に出願されて上記出願後に特許公報の発行がされた発明と同一であるなどとして,拒絶理由通知を受けた。 これに対し,原告は,平成16年9月7日,特許請求の範囲請求項1の結晶化阻害剤を構成要件1Bのとおりの化合物に特定し,そ - 37 -れ以外の化合物を記載した特許請求の範囲請求項10ないし13を削除するなどといった補正をするとともに,特許庁審査官に対して下記の記載を含む意見書を提出し,平成18年1月13日,特許査定を 37 -れ以外の化合物を記載した特許請求の範囲請求項10ないし13を削除するなどといった補正をするとともに,特許庁審査官に対して下記の記載を含む意見書を提出し,平成18年1月13日,特許査定を得た。 記「拒絶理由に鑑み,特許請求の範囲を対応米国特許出願の特許クレーム(米国特許第6,395,765号)とほぼ同じものに減縮致しましたので,この補正に基づいて再度御審査をお願い致します…。」(1頁35行~38行)「本発明の重要な利点は局所塗布(投与)用調剤における互いに矛盾する下記の課題,すなわち(1) 単に動物の毛皮に留めるのではなく,化合物を動物の毛皮を通って動物の皮膚に届けることができる(動物に塗布できる)必要がある。従って「溶剤系」であることが必要で,しかも,(2) 局所投与した化合物が結晶化したり,動物の毛皮上に残留してはならない。 という課題を解決した点にあります。上記の課題は互いに矛盾するものです。すなわち,濃縮組成物を使用すれば結晶化の問題があります(例えば,毛皮で止まり,毛皮を通して皮膚に塗布できず,動物から脱落する)。この問題は乾燥促進剤として「共存溶媒」を用いた場合にはさらにひどくなります。従って,濃縮組成物と乾燥促進剤とを一緒に用いることはできません。 - 38 -本発明がさらに解決すべき課題は,組成物全体(溶媒,共存溶媒,結晶化阻害剤および活性成分のフェニルピラゾール)が活性成分を皮脂中に供給できるものにしなければならない点です。すなわち,組成物は毛皮を通過できなければならず,しかも,活性成分が毛皮上で結晶化したり,残留せずに皮脂中に移行できなければなりません。 引例には各要素技術が ればならない点です。すなわち,組成物は毛皮を通過できなければならず,しかも,活性成分が毛皮上で結晶化したり,残留せずに皮脂中に移行できなければなりません。 引例には各要素技術が一般的に記載されていますが,上記の課題に対する認識がないため,その解決手段として本発明に定義の組合せを用いるということは記載がありません。従って,本発明の構成は新規です。」(3頁15行~32行)「本発明の投与法で得られるメカニズムは添付した下記文献(これは(URLは省略)のプリントアウトです)に説明されています:[参考文献1]“FRONTLINE:HowFRONTLINEWorks,”この文献には本発明の化合物のフィプロニル(fipronil)をペットに塗布した時に長期間その作用が継続する機構を説明しています。すなわち,フィプロニル(fipronil)は脂線中に取り入れられ,天然オイル中に蓄えられ,その後,「濾胞」から再度引き出され,皮膚および毛皮へ再度塗布される。これはフィプロニル(fipronil)がペットの皮膚および毛皮の天然オイル中に溶けたためである。この機構は引例および先願には記載がない。」(4頁39行~46行)c 特許権は,従来技術では達成し得なかった技術的課題を解決する手段を公開した代償として付与されるものであるから,このことを考慮 - 39 -すれば,特許発明の本質的部分とは,特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうち,公開された明細書や出願関係書類の記載から把握される当該特許発明特有の課題解決手段を基礎付ける特徴的部分をいうと解するのが相当である。 前記a及びbの認定事実を総合すれば,本件発明1は,犬猫等の動物の大きさや毛皮の種類とは無関係に,体の一部に投与するだけ の課題解決手段を基礎付ける特徴的部分をいうと解するのが相当である。 前記a及びbの認定事実を総合すれば,本件発明1は,犬猫等の動物の大きさや毛皮の種類とは無関係に,体の一部に投与するだけで全身の皮膚に拡散するとともに,乾燥しても結晶化せずに毛皮もべとつかせない動物用の抗寄生虫組成物を提供するという従来技術では達成し得なかった相矛盾する技術的課題を解決するために,いずれも既知の物質であるフィプロニルを中心とする特定の殺虫活性物質と特定の結晶化阻害剤を一定の質量割合で組み合わせたものであり,これが本件発明1特有の課題解決手段を基礎付ける特徴的部分であると認められるから,結晶化阻害剤に特定の化合物を選択することは,本件発明1の本質的部分の一部であるということができる。 したがって,本件発明1の構成要件1Bにおける「ポリビニルピロリドン,酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体,ポリオキシエチレン化されたソルビタンエステルおよびこれらの混合物」との構成は,本件発明1の本質的部分であるというべきである。 d 原告は,本件発明1の実質的な価値が結晶化阻害剤等の各成分に特定の化合物を選択したことにあるならば,その化合物は構成要件1F(2)に定める結晶化阻害効果を有し,構成要件1F(2)は不要だったはずであると主張する。しかしながら,構成要件1F(2)は,構成要件1 - 40 -Bに定めた結晶化阻害剤としての化合物に係る選択枠の中から,十分な結晶化阻害効果を有した化合物を選択する基準となる要件であって,構成要件1Bにおける構成が本件発明1の本質的部分であることを否定するものではないから,原告の上記主張は,採用することができない。 (イ) ③容易想到要件についてa 証拠(甲24,乙1ないし3,21 が本件発明1の本質的部分であることを否定するものではないから,原告の上記主張は,採用することができない。 (イ) ③容易想到要件についてa 証拠(甲24,乙1ないし3,21,24,25)によれば,クロタミトンは,元来,鎮よう・鎮痛・収れん・消炎剤として公知であったが,特開昭63-208517・208518号各公報により,昭和63年8月30日には抗白せん剤であるトルナフテートを含有した外用液剤又は外用ゲル乳剤の長期保管時における結晶化阻害剤として公知となり,甲24公報により,平成8年2月13日にはイミダゾール系抗真菌性薬物である硝酸オキシコナゾールを含有した外用液状製剤の保管時における結晶化阻害剤としても公知となり,被告らが各被告製品を製造販売するようになった平成21年5月当時,外用液状製剤における結晶化阻害剤として公知であったと認められる。しかしながら,クロタミトンの上記各効能は,いずれも水虫薬の保管時における結晶化を阻害するものにすぎず,当業者が上記各効能から動物用の抗寄生虫組成物の投与時における乾燥による結晶化を阻害する効能を想到することは,当該効能が公知であったことを認めるに足りる証拠がないことに鑑みれば,困難であったというべきである。 したがって,本件発明1の構成要件1Bの「ポリビニルピロリドン, - 41 -酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体,ポリオキシエチレン化されたソルビタンエステルおよびこれらの混合物」との構成をクロタミトンに置き換えることは,当業者が平成21年5月以降における各被告製品の製造等の時点において容易に想到することができたということはできない。 b 原告は,クロタミトンが本件発明1の構成要件1B中のポリビニルピロリドンに含まれるアミド部分と類 る各被告製品の製造等の時点において容易に想到することができたということはできない。 b 原告は,クロタミトンが本件発明1の構成要件1B中のポリビニルピロリドンに含まれるアミド部分と類似するエチルアミド部分を含み,フィプロニル分子との間で分子間水素結合をすることができると主張する。しかしながら,フィプロニル分子の結晶化阻害効果が結晶化阻害剤のエチルアミド部分とフィプロニル分子との分子間水素結合によって生じることを認めるに足りる証拠はない。また,証拠(乙8,23)によれば,構成要件1B中のポリオキシエチレン化されたソルビタンエステルはアミド部分を有さず,逆に,1-エチル-2-ピロリドン,N、N-ジエチルアセトアミド,1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン,酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体はエチルアミド部分を有するにもかかわらず結晶化阻害効果を生じないことが認められる。そうであれば,クロタミトンがエチルアミド部分を含むからといって,構成要件1Bの構成をクロタミトンと置き換えることに,当業者が各被告製品の製造等の時点において容易に想到することができたとは考え難い。原告の上記主張は,採用することができない。 (ウ) ⑤意識的除外要件について - 42 -a 前記(ア)b認定のとおり,クロタミトンは,本件特許の出願当初における明細書に記載されなかった上,原告は,補正により,本件各発明において使用可能な結晶化阻害剤としての化合物を構成要件1Bの構成における3種類の化合物とその組合せに限定したのである。これらの事実を総合すれば,原告の側においてクロタミトンを結晶化阻害剤として用いる各被告製品が本件発明1の技術的範囲に属しないことを外形的に承認したように解されるような行動をとったものである。 。これらの事実を総合すれば,原告の側においてクロタミトンを結晶化阻害剤として用いる各被告製品が本件発明1の技術的範囲に属しないことを外形的に承認したように解されるような行動をとったものである。 したがって,各被告製品が本件特許の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情がある。 b 原告は,構成要件1Bの結晶化阻害剤について補正したのは,文献に記載されているという理由で拒絶理由通知を受けた化合物を除外する意図で行ったにすぎず,また,構成要件1Bにおける化合物が少ないのは,使用可能な全ての化合物を記載することが困難であり,特許出願のプラクティスとして,特に好ましい代表例だけを挙げたからであると主張する。しかしながら,特許権者の側において,特許発明の技術的範囲に属しないことをおよそ外形的に承認したように解されるような行動をとったものである以上,特許権者が後にこれと反する主張をすることは,禁反言の法理に照らして許されないというべきであって,当該行動の理由を問擬する原告の上記主張は,採用することができない。 エ以上に判示したところによれば,各被告製品は,本件発明1の構成と均等なものとはいえず,本件発明1の技術的範囲に属するものと解すること - 43 -はできない。 (2) 本件発明2ないし4について本件発明2及び3に係る特許請求の範囲の請求項7及び25は,本件発明1に係る特許請求の範囲の請求項1に従属し,本件発明4に係る特許請求の範囲の請求項26は,本件発明3に係る特許請求の範囲の請求項25に従属するものであるところ,さきに判示したように,各被告製品は,本件発明1の技術的範囲に属するものと解することができないから,各被告製品は,本件発明2ないし4の 3に係る特許請求の範囲の請求項25に従属するものであるところ,さきに判示したように,各被告製品は,本件発明1の技術的範囲に属するものと解することができないから,各被告製品は,本件発明2ないし4の各構成と均等でなく,本件発明2ないし4の技術的範囲に属するものと解することはできない。 4 結論よって,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官高野輝久 裁判官志賀勝 裁判官小川卓逸(別紙特許公報は省略) - 44 -(別紙)当事者目録 フランス共和国<以下略>原告メリアルエスアーエス同訴訟代理人弁護士熊倉禎男渡辺光佐竹勝一同訴訟復代理人弁護士相良由里子同補佐人弁理士山崎一夫田代玄東京都品川区<以下略>被告フジタ製薬株式会社東京都千代田区<以下略>被告共立製薬株式会社上記両名訴訟代理人弁護士浜 告フジタ製薬株式会社東京都千代田区<以下略>被告共立製薬株式会社上記両名訴訟代理人弁護士浜田治雄同補佐人弁理士西口克齊藤涼子赤津悌二 - 45 -(別紙)物件目録 1 製品名「マイフリーガード犬用」の動物用医薬品 2 製品名「マイフリーガード猫用」の動物用医薬品 - 46 -(別紙)訂正目録 1 【請求項1】「下記の(a)~(d)から成り,式(I)の化合物は1~20%(w/v)の割合で存在し,結晶化阻害剤は1~20%(w/v)の割合で存在し且つ(c)で定義した溶媒中に式(I)の化合物を10%(W/V),結晶化阻害剤を10%添加した溶液Aの0.3mlをガラススライドに付け,20℃で24時間放置した後にガラススライド上を肉眼で観察した時に観察可能な結晶の数が10個以下あり,有機溶媒(c)は組成物全体を100%にする比率で加えられ,有機共溶媒(d)は(d)/(c)の重量比(w/w)が1/15~1/2となる割合で存在し,有機共溶媒(d)は水および/または溶媒c)と混和性がある,動物の身体の一部へ局所塗布することによって動物の全身へ拡散する,直ちに使用可能な溶液の形をした,寄生虫からペットを治療または予防するための組成物:(a) 〔化1〕で表される殺虫活性物質:【化1】 - 47 - 身へ拡散する,直ちに使用可能な溶液の形をした,寄生虫からペットを治療または予防するための組成物:(a) 〔化1〕で表される殺虫活性物質:【化1】 - 47 - (ここで,R1はハロゲン原子,CNまたはメチル基を表し,R2はS(O)nR3,4,5-ジシアノイミダゾール-2-イルまたはハロアルキル基を表し,ここで,R3はアルキルまたはハロアルキル基を表し,R4は水素またはハロゲン原子を表すか,NR5R6,S(O)mR7,C(O)R7またはC(O)OR7,アルキル,ハロアルキル,OR8または-N=C(R9)(R10)を表し,ここで,R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子,アルキル,ハロアルキル,C(O)アルキル,S(O)rCF3,アシルまたはアルコキシカルボニル基を表すか,R5とR6とが一緒になって2価のアルキレン基を作り,このアルキレン基は2価のヘテロ原子を1つまたは2つを含むことができ,R7はアルキルまたはハロアルキル基を表し,R8はアルキル,ハロアルキル基または水素原子を表し,R9はアルキル基または水素原子を表し,R10は単数または複数のハロゲン原子で置換されていてもよいフェニルまたはヘテロアリール基を表し, - 48 -Xは炭素,三価の窒素原子またはC-R12を表し,R12は水素原子,CNまたはNO2を表し,yはSF5基,CN,NO2,S(O)rCF3,ハロゲン原子,ハロアルキルまたはハロアルコキシ基を表し,m,nおよびrは互いに独立に0,1または2の整数を表し,pは1,2,3,4または5の整数を表し,ただし,R1がメチルの場合は,R3がハロアルキルで,R4が コキシ基を表し,m,nおよびrは互いに独立に0,1または2の整数を表し,pは1,2,3,4または5の整数を表し,ただし,R1がメチルの場合は,R3がハロアルキルで,R4がNH2で,pが2で,6位にあるyがClで,4位にあるyがCF3で,XがNであるか,R2が4,5-ジシアノイミダゾール-2-イルで,R4がClで,pが3で,6位にあるyがClで,4位にあるyがCF3で,XがC-Clである),(b) ポリビニルピロリドン,酢酸ビニル/ ビニルピロリドン共重合体,ポリオキシエチレン化されたソルビタンエステルおよびこれらの混合物の中から選択される結晶化阻害剤,(c) ジプロピレングリコール n-ブチルエーテル,エチレングリコールモノエチルエーテル,エチレングリコールモノメチルエーテル,ジエチレングリコールモノエチルエーテル,ジプロピレングリコールモノメチルエーテルおよびこれらの溶媒の少なくとも二つの混合物から成る群の中から選択される有機溶媒,(d) エタノール,イソプロパノールおよびメタノールから成る群の中から選択される有機溶媒とは異なる有機共溶媒。」(下線部分は,訂正部分を示す。) 2 【請求項25】「グリコールエーテルがジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびジプロピレングリコールモノメチルエーテルから成る群の中から選択 - 49 -される請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。」(下線部分は,訂正部分を示す。)

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