昭和57(オ)491 約束手形金

裁判年月日・裁判所
昭和59年3月29日 最高裁判所第一小法廷 判決 その他 福岡高等裁判所 昭和56(ネ)204
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      主位的請求についての本件控訴を棄却する。      予備的請求につき本件を福岡高等裁判所に差し戻す。      第一、二項についての控訴費用及び上

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判決文本文3,800 文字)

主    文      原判決を破棄する。      主位的請求についての本件控訴を棄却する。      予備的請求につき本件を福岡高等裁判所に差し戻す。      第一、二項についての控訴費用及び上告費用は、被上告人の負担とする。          理    由  上告代理人甲斐・の上告理由一及び二について  原審が適法に確定した事実関係のもとにおいては、本件営業所が商法四二条一項 本文にいう支店にあたり、また、手形の振出、裏書等の手形行為が本件営業所の営 業範囲内の行為であるとした原審の判断は、いずれも正当として是認することがで きる。論旨は、原審の認定にそわない事実又は独自の見解を前提として、原判決を 論難するものにすぎず、いずれも採用することができない。  同三及び四について  原審は、(一)(1) 上告人の常務取締役であり昭和四八年五月から本件営業所長 に就任したDは、同所長名義で、道路舗装工事の請負契約の締結及び履行並びに小 切手振出等をする権限を有していたが、上告人の内部規程によつて手形の振出、裏 書等手形行為は本店で統轄するものと定められていたため、その権限を有していな かつた、(2) Dは、上告人の許諾のもとに、昭和五三年八月ころからは上告人と 雇傭関係のない訴外Eに対し、本件営業所長の前記権限を包括的に委任し、これに 基づき、Eは、所長代理の肩書で本件営業所に常駐し、営業所長印等を使用し、同 所長名義で、主として官公庁関係の請負工事の入札参加、請負契約の締結等本件営 業所長の権限に属する業務一切を処理していた、(3) ところが、Eは、自分が経 営の実権を握つていた第一審被告F舗道株式会社(以下「F舗道」という。)等に 資金援助をする必要に迫られ、昭和五四年七月ころからF舗道に振り出させた約束 - 1 - 手形に本件営業所長名義の裏書を偽造し、これを割り引 ていた第一審被告F舗道株式会社(以下「F舗道」という。)等に 資金援助をする必要に迫られ、昭和五四年七月ころからF舗道に振り出させた約束 - 1 - 手形に本件営業所長名義の裏書を偽造し、これを割り引いて資金を作るようになつ た、(4) 本件手形は、Eが、同年八月下旬ころ、右と同様の目的でF舗道に振り 出させ、第一裏書人欄に本件営業所長D名義で裏書を偽造し(以下この裏書を「本 件裏書」という。)、第二裏書人欄に自分名義の裏書をし、いずれも被裏書人欄を 白地とし、取引先のG建設株式会社(以下「G建設」という。)の代表者に割引を 依頼して本件手形を手渡したところ、同代表者は、更に、被上告人の代表者に本件 手形の割引を依頼し、同代表者は、本件裏書が正当にされたものと信じて本件手形 の譲渡を受け、割引金一八五万円をG建設の代表者に交付し、同代表者は、そのう ち一七一万余円をEに送金した、(5) 被上告人は本件手形に第三裏書をし訴外株 式会社H硝子店にこれを交付し、同訴外会社が本件手形を満期に支払場所に呈示し たが、支払を拒絶されたので、被上告人は、本件手形を受け戻し、現にこれを所持 している、との事実を確定したうえ、(二) 上告人が被上告人に対し、本件裏書に 基づき担保責任を負うべき理由として、上告人は、Eが本件営業所長名義でした本 件裏書についても、同所長自身がした場合と同様に、これが権限外の行為であるこ とを善意の第三者に対抗することができない筋合であるところ、被上告人の代表者 が本件裏書の真否につき善意であつたから、上告人は右担保責任を負うべきである との判断を示し、G建設の代表者は本件裏書がEの偽造に係るものであることを知 つていたと認められなくもないが、この事実は上告人の右担保責任の存否を左右す るものではなく、被上告人の代表者がG建設の右知情につき悪意で本件手形を取得 者は本件裏書がEの偽造に係るものであることを知 つていたと認められなくもないが、この事実は上告人の右担保責任の存否を左右す るものではなく、被上告人の代表者がG建設の右知情につき悪意で本件手形を取得 したことについては何らの主張・立証がないとの理由を付加し、(三) 結局、被上 告人の主位的請求を全部認容すべきであるとし、これを棄却した第一審判決を取り 消し、右請求を認容している。  ところで、記録によると、被上告人が、本件裏書につき上告人が被上告人に対し て担保責任を負うべき根拠として主張するところは、本件裏書が上告人によつて適 - 2 - 法にされたものであるとするほか、Eの本件裏書につき、商法四二条若しくは四三 条の適用又は民法一一〇条の類推適用があるというものであることが明らかである ところ、原判決は、その理由の法律上の根拠が必らずしも明らかではないが、Eが、 本件営業所につき、商法四二条一項本文にいう支配人と同一の権限を有するものと 看做されるいわゆる表見支配人(以下「表見支配人」ともいう。)に該当するとし、 同条に基づき、上告人は被上告人に対し、本件裏書につき担保責任を負うべきであ ると判断したものと解される。  しかしながら、原審の右判断は、到底首肯することができない。その理由は、次 のとおりである。(一) 原審の確定したところによると、Eは、上告人と雇傭関係 がなく、また、本件営業所の「所長代理」の肩書が付されていたにとどまるという のであるから、Eは、上告人の使用人ということはできないし、また、本件営業所 の主任者たることを示す名称が付されていたともいえないから、Eが同条一項本文 により本件営業所の支配人と同一の権限を有するものと看做されるべきであると解 することはできない。また、原審が確定した前示の事実関係のもとにおいては、E を本件営業所の支配人に準ずべ 、Eが同条一項本文 により本件営業所の支配人と同一の権限を有するものと看做されるべきであると解 することはできない。また、原審が確定した前示の事実関係のもとにおいては、E を本件営業所の支配人に準ずべきであると解する余地もない。したがつて、原判決 の前示判断は、商法四二条一項本文の解釈適用を誤つた違法なものというべきであ る。(二) さらに、同条二項にいう相手方等いわゆる表見代理が成立しうる第三者 は、当該取引の直接の相手方に限られるものであり、手形行為の場合には、この直 接の相手方は、手形上の記載によつて形式的に判断されるべきものではなく、実質 的な取引の相手方をいうものと解すべきであるうえ、記録によると、被上告人は、 原審において、本件裏書に基づき本件手形を取得した相手方、すなわちEに対し本 件手形の割引をした者(以下「本件裏書の相手方」という。)はG建設であり、被 上告人はG建設から本件手形上の権利の譲渡を受けたものである旨主張していたこ とが明らかであるにもかかわらず、原判決は、G建設の代表者は本件裏書がEの偽 - 3 - 造に係るものであることを知つていたと認められなくはないが、被上告人の代表者 が本件裏書の真否につき善意で本件手形を取得した以上、上告人は被上告人に対し、 本件裏書につき担保責任を負うべきであるとしているが、この判断は、同条二項に いう相手方又は表見代理が成立しうる第三者についての解釈適用を誤つた違法なも のであるか、又は論旨指摘の弁論主義に違背する違法なものであることが明らかで ある。そして、右(一)及び(二)の違法は、いずれも原判決の結論に影響を及ぼすこ とが明らかであるから、この違法をいう論旨は理由があり、原判決は破棄を免れな い。しかして、本件裏書が上告人の使用人でないEの偽造に係るものであり、被上 告人において本件裏書の相手方であると主張 ぼすこ とが明らかであるから、この違法をいう論旨は理由があり、原判決は破棄を免れな い。しかして、本件裏書が上告人の使用人でないEの偽造に係るものであり、被上 告人において本件裏書の相手方であると主張するG建設が右偽造について悪意であ る等の原審が確定した前示の事実関係のもとにおいては、被上告人の主位的請求は、 これを認容しうる余地がなく、棄却を免れないことが明らかであるから、右請求を 棄却した第一審判決は正当というべきであり、原審としては、主位的請求に対する 本件控訴を棄却し、予備的請求に対する本件控訴の当否について審理判断すべきで あつたというべきである。したがつて、原判決を破棄し、主位的請求に対する本件 控訴を棄却し、予備的請求に対する本件控訴については、審理を尽くさせる必要が あるから、本件を原審に差し戻すこととする。  よつて、民訴法四〇七条一項、四〇八条一号、三九六条、三八四条一項、九六条、 八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。      最高裁判所第一小法廷          裁判長裁判官    和   田   誠   一             裁判官    藤   崎   萬   里             裁判官    谷   口   正   孝             裁判官    角   田   禮 次 郎 - 4 -

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