主文 原判決中、控訴人(附帯被控訴人)敗訴の部分を取消す。被控訴人(附帯控訴人)らの請求を棄却する。本件附帯控訴を棄却する。訴訟費用は、第一、二審を通じ、全部被控訴人(附帯控訴人)らの負担とする。事実 一、 被控訴人・附帯控訴人(以下「被控訴人」という。)らは、控訴につき控訴棄却の判決を、附帯控訴につき「附帯控訴に基づき原判決を次のとおり変更する。(1)控訴人・附帯被控訴人(以下「控訴人」という。)は被控訴人らに対しそれぞれ別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)の持分三分の一ずつの所有権移転登記手続をせよ。(2)控訴人は被控訴人らに対し各金二〇万六、六六六円およびこれに対する昭和四一年一〇月二二日以降完済まで年五分の割合による金員を支払え。」との判決ならびに右(2)につき仮執行の宣言を求め、その請求の原因ならびに控訴人の主張に対する答弁として、次のとおり陳述した。(一) 1 本件土地は、亡Aの所有てあるところ、昭和三七年二月一六日付で贈与を原因としてBに、昭和四一年四月九日付で贈与を原因として同女から控訴人に、それぞれ所有権移転登記が経由されている。2 亡Aは、昭和三七年一一月一五日頃、妻亡Bに対し本件土地を死因贈与し、所有権移転登記を経由したものであるが、Bは昭和四一年六月一三日Aより先に死亡したから、民法第九九四条第一項の準用により右死因贈与の効力は生じなかつたものである。3 仮りに、右が単なる生前贈与であるとしても、右贈与は、AとBとの間における通謀虚偽表示であるから無効である。仮りにしからずとしても、Aは本件土地をBと共有する意思をもつて共有持分二分の一をBに贈与したものであつて、右持分を超える持分二分の一は通謀虚偽表示であ おける通謀虚偽表示であるから無効である。仮りにしからずとしても、Aは本件土地をBと共有する意思をもつて共有持分二分の一をBに贈与したものであつて、右持分を超える持分二分の一は通謀虚偽表示であるから無効である。 おける通謀虚偽表示であるから無効である。仮りにしからずとしても、Aは本件土地をBと共有する意思をもつて共有持分二分の一をBに贈与したものであつて、右持分を超える持分二分の一は通謀虚偽表示であ おける通謀虚偽表示であるから無効である。仮りにしからずとしても、Aは本件土地をBと共有する意思をもつて共有持分二分の一をBに贈与したものであつて、右持分を超える持分二分の一は通謀虚偽表示であるから無効である。4 控訴人は、Bに対する本件土地の贈与が通謀虚偽表示であることを知りながら、Bから同土地の所有権移転登記を経由した悪意の第三者である。5 仮りに本件土地が贈与によりBの所有となつたとしても、Bが同土地を控訴人に贈与したのは、Bの唯一の遺産相続人である夫・Aの遺留分(三分の一)の侵害にあたるところ、Aは昭和四五年六月二日付訴変更申立書(原審における同日の口頭弁論期日に陳述)により遺留分減殺の意思表示をした。6 遺留分減殺請求権の消滅時効の抗弁は否認する。AはBに対する本件土地の贈与が無効であり、したがつてBの控訴人に対する本件土地の贈与も無効であると信じていたから本訴を提起し控訴人に所有権がないことを訴訟上主張しできたのであつて、本件のように遺留分権利者が贈与の無効を主張して訴訟上係争中である場合には、民法第一一四五条にいわゆる減殺すべき贈与があつたことを遺留分権利者が知つていたとはいえないから、右消滅時効の進行は開始しない。7 第一審原告Aは、昭和四六年一月一八日死亡し、長男CがAの権利を単独相続し本件訴訟を承継したところ、同人も同年八月二日死亡し、被控訴人ら三名(Cの長女D、長男E、二男F)がCの権利を共同相続し本件訴訟を承継した。8 よつて、控訴人は被控訴人に対し本件土地につきそれぞれ持分三分の一ずつ(もしBに対する二分の一持分権の贈与が認められる場合は六分の一の、または贈与が有効とされた上Aの遺留分減殺請求が認められる場合は九分の一の持分。)の所有権移転登記手続をする義務がある。(二) 控訴人は、B する二分の一持分権の贈与が認められる場合は六分の一の、または贈与が有効とされた上Aの遺留分減殺請求が認められる場合は九分の一の持分。)の所有権移転登記手続をする義務がある。(二) 控訴人は、Bとの左記共同不法行為によりAの財産権を侵害し金六二万円相当の損害を蒙らせたから、被控訴人ら三名に対し各金二〇万六、六六六円およびこれに対する訴状送達の翌日である昭和四一年一〇月二二日以降完済まで年五分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。 る場合は六分の一の、または贈与が有効とされた上Aの遺留分減殺請求が認められる場合は九分の一の持分。)の所有権移転登記手続をする義務がある。(二) 控訴人は、Bとの左記共同不法行為によりAの財産権を侵害し金六二万円相当の損害を蒙らせたから、被控訴人ら三名に対し各金二〇万六、六六六円およびこれに対する訴状送達の翌日である昭和四一年一〇月二二日以降完済まで年五分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。1 Bの生前、熊谷市ab丁目c番地d郵便局に、Bを預金名義人とする(イ)金一〇万円、(ロ)金四〇万円、(ハ)金一二万円の三口合計金六二万円の定額郵便貯金がなされていた。2 しかし、右は単にB名義を用いたものに過ぎず、実際にはAに属する定額郵便貯金であつた。すなわち、Aは妻Bの生前、家計一切の処理および財産管理をBに一任していた関係上、Aが出捐した資金をもつて名義のみを便宜Bとする右定額郵便貯金がなされたものであり、したがつて、BはAの意思に反してこれを勝手に処分することは許されないものであつた。仮りにしからずとするも、AはBと準共有とすべき趣旨のもとに便宜Bの単独名義にしておいたものである。3 しかるに控訴人は、昭和四一年六月一〇日、上記事情を知りながら、Bと相謀り右名義を控訴人に変更した。4 よつて控訴人は共同不法行為に由る右金六二万円相当の損害を被控訴人らに賠償すべきである。二、 控訴人は、控訴につき「原判決中控訴人敗訴の部分を取消す。被控訴人らの請求を棄却する。」との判決を、附帯控訴につき附帯控訴棄却の判決を求め、請求の原因に対する答弁ならびに抗弁として次のとおり陳述した。(一) 本件土地がもとAの所有であつたこと、同土地につき被控訴人ら主張のとおりの登記が経由されたこと、被控訴人 控訴棄却の判決を求め、請求の原因に対する答弁ならびに抗弁として次のとおり陳述した。(一) 本件土地がもとAの所有であつたこと、同土地につき被控訴人ら主張のとおりの登記が経由されたこと、被控訴人ら主張のごときB名義の定額郵便貯金がその主張の日に控訴人に名義変更されたこと、被控訴人ら主張のとおり遺留分減殺の意思表示がなされたこと、および関係人の死亡、相続関係、訴訟手続承継関係はすべて認めるが、その余の事実は否認する。(二) 本件土地は、昭和三七年二月一五日BがAから、次いで昭和四一年四月八日控訴人がBからそれぞれ贈与を受けたものである。 被控訴人ら主張のとおりの登記が経由されたこと、被控訴人ら主張のごときB名義の定額郵便貯金がその主張の日に控訴人に名義変更されたこと、被控訴人ら主張のとおり遺留分減殺の意思表示がなされたこと、および関係人の死亡、相続関係、訴訟手続承継関係はすべて認めるが、その余の事実は否認する。(二) 本件土地は、昭和三七年二月一五日BがAから、次いで昭和四一年四月八日控訴人がBからそれぞれ贈与を受けたものである。仮りに、AとBとの間の贈与が通謀虚偽表示であるとしても、控訴人はかかる事情を知らない善意の第三者であるから、虚偽表示による贈与の無効を控訴人に対抗することはできない。(三) Aは、Bが死亡した昭和四一年六月一三日、Bの遺産に対する相続の開始および減殺すべき贈与のなされていたことを知つていたから、遺留分減殺請求権は一年の経過とともに消滅時効の完成により消滅した。三、 証拠関係(省略) 理由 一、 本件土地がもとAの所有であつたこと、同土地につき被控訴人ら主張のとおりの登記が経由されたこと、被控訴人ら主張のごとき定額郵便貯金があつたこと、右貯金は被控訴人ら主張のようにBから控訴人に名義変更されたこと、被控訴人ら主張のとおり遺留分減殺の意思表示がなされたこと、被控訴人ら主張にかかる関係人の死亡、相続関係、訴訟手続承継関係はいずれも当事者間に争いがない。(一) 成立に争いのない甲第二号証、同第一四号証、原審における証人Cの証言および第一審原告A本人尋問の結果により真正に成立したと認めうる同第七号の一、二、原審における控訴人本人尋問の結果により真正に成立したものと認めうる 第二号証、同第一四号証、原審における証人Cの証言および第一審原告A本人尋問の結果により真正に成立したと認めうる同第七号の一、二、原審における控訴人本人尋問の結果により真正に成立したものと認めうる乙第一号証の一、二に、原審における証人C、同G、同H、同I、同Jの各証言および第一審原告A本人尋問の結果、当審における被控訴人E本人尋問の結果を総合すれば、左記事実を認めることができる。(1) A(明治一一年一一月二七日生)は先妻Kに死別後、昭和一六年二月一九日B(明治二七年四月一一日生)と婚姻し、終戦後数年経つた頃からBの姻戚にあたる控訴人(Bの前夫の甥)を引取つて世話をしながら、本件土地の上にあるA所有の住家で暮らしていた。 る証人C、同G、同H、同I、同Jの各証言および第一審原告A本人尋問の結果、当審における被控訴人E本人尋問の結果を総合すれば、左記事実を認めることができる。(1) A(明治一一年一一月二七日生)は先妻Kに死別後、昭和一六年二月一九日B(明治二七年四月一一日生)と婚姻し、終戦後数年経つた頃からBの姻戚にあたる控訴人(Bの前夫の甥)を引取つて世話をしながら、本件土地の上にあるA所有の住家で暮らしていた。やがて控訴人は、昭和三二年頃妻Iと婚姻し、Aはその頃から「いずれ将来は家屋敷(本件土地とその地上の建物)を控訴人夫婦にやる。」と家族らに話していた。A夫婦は、A所有の十数軒の貸家の家賃収入によつて生活してきたが、Bが老後のことを心配するので、昭和三七年一一月一六日、本件土地をBに贈与し、所有権移転登記手続を経由した。また昭和三八年四月一五日本件土地の上にある建物もBに遺贈する内容の遺言状(乙第一号証の二)を四分一勇夫に代筆させ、これに自ら署名した上Bに交付したこともあつた。さらに同年九月二九日Aが長男Cに代筆させ自ら署名した遺言状(甲第二号証の二)にも、本件土地およびその地上建物は妻Bに、熊谷市大字d字ef番地のgの宅地およびその地上の建造物一切は孫であるEおよびF両名に、同市hi番地所在の建造物およびA所有の財産一切は長男Cにそれぞれ遺贈する旨の記載が存する。(もつとも本件土地は、昭和三七年一一月一六日Bに贈与して所有権移転登記まで経由していたのであるから、上記各遺言状中本件土地に関する部分は、同土地がBに帰属する Cにそれぞれ遺贈する旨の記載が存する。(もつとも本件土地は、昭和三七年一一月一六日Bに贈与して所有権移転登記まで経由していたのであるから、上記各遺言状中本件土地に関する部分は、同土地がBに帰属することを確認的に示したものと解するのが相当である。)(2) Bは昭和四〇年春頃から病床に臥し、昭和四一年六月一三日子宮がんのため死亡するまで控訴人およびその妻Iの看病を受けた。(3) 昭和四一年一、二月頃、Aは、Bと控訴人夫婦に対し「家屋敷(本件土地と地上建物)を控訴人名義に移すように。」と話し、その後も早く右登記手続をするよう催促した。当時すでに本件土地はBの所有名義になつており、本件土地の上に存するA所有の建物(木造瓦葺二階建居宅一棟および木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建居宅一棟)は保存登記を了していなかつたが、後妻の立場にあつたBとしては、Aの子や孫に対する気兼ねから躊躇していたところ、再三にわたるAの催促に従い、この際、本件土地をBから控訴人に贈与してその所有権移転登記手続をするとともに、同土地の上に存する前記建物につきAのため保存登記をした上、Aから控訴人に対する贈与による所有権移転登記手続を司法書士に嘱託することにした。 一棟および木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建居宅一棟)は保存登記を了していなかつたが、後妻の立場にあつたBとしては、Aの子や孫に対する気兼ねから躊躇していたところ、再三にわたるAの催促に従い、この際、本件土地をBから控訴人に贈与してその所有権移転登記手続をするとともに、同土地の上に存する前記建物につきAのため保存登記をした上、Aから控訴人に対する贈与による所有権移転登記手続を司法書士に嘱託することにした。(4) 昭和四一年四月頃、控訴人は右登記手続に要する諸費用の調達ができたので、同月八日右手続の嘱託等のため勤務先から休暇をとり、BとAの指示のとおりに前記登記手続を司法書士に嘱託した。Aは前記建物の登記手続嘱託の必要上自己の印鑑を同日控訴人に預ける際も、たまたま見舞に来ていたJおよび病床のB両名の面前でAから控訴人に渡されており、Aの印鑑証明下附申請に必要なAの委件状も控訴人がわざわざ一旦帰宅してA本人の意思を確かめた上作成された。ところがAは控訴人の留守中自己の印鑑がない等と言い出し、BとIが、印鑑は控訴人が預 ており、Aの印鑑証明下附申請に必要なAの委件状も控訴人がわざわざ一旦帰宅してA本人の意思を確かめた上作成された。ところがAは控訴人の留守中自己の印鑑がない等と言い出し、BとIが、印鑑は控訴人が預つているから心配ないとなだめるのも聞きいれず、「三面記事をにぎわす。」等と騒ぐので、Iがたしなめたところ、Aは「Iに叱られたから控訴人にやるのはいやになつた。」と言い出した。同日夕方帰宅した控訴人は、Aの右言動を聞かされて困惑したが、Aとの紛糾を避けるため、A所有の前記建物の右登記手続をすすめることは見合わせることとし、B所有の本件土地の所有権移転登記手続だけは予定どおりすすめることとし、翌朝直ちに司法書士にその旨の電話連絡をした結果、同月九日本件土地につきBから控訴人に対する前記所有権移転登記手続が経由された。(5) 同月一〇日、Aは病床に臥すBを残して長男Cの家に去つてしまつた。その後、A、Cらは、Bに対し本件土地をAに返還せよと迫つたが、Bは、右土地はすでに上記のごとくAから贈与を受け昭和三七年一一月一六日Bに対する移転登記まで経由したBの所有に属するものであるから応じられないと主張して、右要求をはねつけた。(6) かくて、A、CらとB、控訴人らとの間柄は険悪な状態に立ちいたり、病床にあつて容態のすぐれないBは、Aらの強硬な態度を嘆きつつ、控訴人夫婦の手厚い看護に感謝して、同年六月二日Bの前記定額郵便貯金を控訴人に贈与することにし、郵便局員Gに指示して控訴人の名義に変更する手続をすませた。 一月一六日Bに対する移転登記まで経由したBの所有に属するものであるから応じられないと主張して、右要求をはねつけた。(6) かくて、A、CらとB、控訴人らとの間柄は険悪な状態に立ちいたり、病床にあつて容態のすぐれないBは、Aらの強硬な態度を嘆きつつ、控訴人夫婦の手厚い看護に感謝して、同年六月二日Bの前記定額郵便貯金を控訴人に贈与することにし、郵便局員Gに指示して控訴人の名義に変更する手続をすませた。以上の事実を認定することができる。原審における証人Cの証言、第一審原告Aおよび当審における被控訴人E各本人尋問の結果中叙上認定に副わない部分は容易に措信できず、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。(二) 被控訴人らは、Aは本件土地をBに死 人Cの証言、第一審原告Aおよび当審における被控訴人E各本人尋問の結果中叙上認定に副わない部分は容易に措信できず、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。(二) 被控訴人らは、Aは本件土地をBに死因贈与した旨、仮りにしからずとするもAのBに対する本件土地の贈与は通謀虚偽表示である旨、仮りにしからずとするも共有持分二分の一のみの贈与であつて右持分を超える分は通謀虚偽表示である旨主張するが、事実は前記認定のとおりであつて、原審における証人Cの証言、第一審原告Aおよび当審における被控訴人E各本人尋問の結果中右主張に副う部分は措信し難く、他に被控訴人ら主張の右事実を認めるに足りる証拠はないから、被控訴人らの上記主張はいずれも採用できない。よつて、AからBヘの本件土地の贈与が無効であることを前提とする被控訴人らの請求は、すべて理由がない。(三) 次に、被控訴人らは遺留分減殺を主張するのに対し、控訴人は右減殺請求権は消滅時効により消滅したと主張するので按ずるに、Bの相続人は、夫であるA唯一人であることは当事者間に争いがなく、叙上認定の事実によると、AはBの死亡した昭和四一年六月一三日に相続の開始および減殺すべき贈与の認識があつたものと認めるのが相当であるところ、右減殺の意思表示がなされたのは昭和四五年六月二日であることは当事者間に争いがないから、右意思表示は、減殺請求権が昭和四一年六月一三日から一年の経過により消滅した後にされたものというべきである。もつとも、本件記録によると、Aは昭和四一年九月一七日、控訴人を被告として浦和地方裁判所熊谷支部に贈与の無効を主張して本件土地の所有権移転登記手続請求の訴を提起して訴訟係属中であつたこ<要旨>とは本件記録に徴し明らかである。 示がなされたのは昭和四五年六月二日であることは当事者間に争いがないから、右意思表示は、減殺請求権が昭和四一年六月一三日から一年の経過により消滅した後にされたものというべきである。もつとも、本件記録によると、Aは昭和四一年九月一七日、控訴人を被告として浦和地方裁判所熊谷支部に贈与の無効を主張して本件土地の所有権移転登記手続請求の訴を提起して訴訟係属中であつたこ<要旨>とは本件記録に徴し明らかである。ところで、民法第一〇四二条にいう「減殺すべき贈与」があつたこと</要旨>を の無効を主張して本件土地の所有権移転登記手続請求の訴を提起して訴訟係属中であつたこ<要旨>とは本件記録に徴し明らかである。ところで、民法第一〇四二条にいう「減殺すべき贈与」があつたこと</要旨>を知つた時とは、単に贈与の事実を知つた時でなく、それが減殺をなし得べきことを知つた時を指すと解すべきであるから、遺留分権利者となり得る者が右贈与の無効なることを信じ訴訟上抗争しているような場合は、単に贈与を知つていたとしても、それだけでは「減殺すべき贈与」があつたことを知つていたものとは直ちに断定できない(大判昭和一三年二月二六日民集一七巻二七五頁参照)が、訴訟上無効を主張さえすれば時効の進行を始めないことになると、民法が特別の短期時効を法定した趣旨にも反する結果となるから、無効の主張がなされている場合においても、全くなんらの根拠もない単なる言いがかりに過ぎないことが明らかであるような場合には「減殺すべき贈与」を知つていたものと認めるのが相当であり、無効の主張により時効の進行の開始を阻止し得ないものというべきである。本件においては、Aが昭和三七年一一月一六日本件土地を自らBに贈与して所有権移転登記を経由したものであり、しかも昭和四一年一、二月頃からAは再三にわたりB所有の本件土地を控訴人に贈与して所有権移転登記を経由するよう同人らにすすめた結果、同年四月九日その実現を見たものであつて、右は他ならぬA自身の発意に基づいてなされたものであるところ、上記のようにAの不穏当な発言を控訴人の妻Iがたしなめたことをとらえて、Aは嫁に叱られた等と言い立て、病床に臥している妻Bの身を顧みずBを残して長男C宅に立ち去り、事を構えて、贈与が無効である等と不当な言いがかりを付けているに過ぎず、結局、Aは、Bの死亡した昭和四一年六月一三日、本件土地につき減殺すべき 四月九日その実現を見たものであつて、右は他ならぬA自身の発意に基づいてなされたものであるところ、上記のようにAの不穏当な発言を控訴人の妻Iがたしなめたことをとらえて、Aは嫁に叱られた等と言い立て、病床に臥している妻Bの身を顧みずBを残して長男C宅に立ち去り、事を構えて、贈与が無効である等と不当な言いがかりを付けているに過ぎず、結局、Aは、Bの死亡した昭和四一年六月一三日、本件土地につき減殺すべき している妻Bの身を顧みずBを残して長男C宅に立ち去り、事を構えて、贈与が無効である等と不当な言いがかりを付けているに過ぎず、結局、Aは、Bの死亡した昭和四一年六月一三日、本件土地につき減殺すべき贈与のあつたことを知つたものと認めるのが相当であるから、一年の経過により遺留分減殺請求権の消滅時効が完成したものといわなければならない。よつて、減殺の意思表示が有効であることを前提とする被控訴人らの請求もまた理由がない。(四) 被控訴人らは、前記定額郵便貯金はAの財産管理のためB名義を使用したに過ぎず、仮りにしからずとするもAとBとの準共有であるのに便宜B名義を使用したに過ぎないところ、Aの意思に反しBと控訴人の両名が前記のようにこれを控訴人の名義に変更したのはBと控訴人による共同不法行為であるからこれに因つて蒙つた損害賠償を求めると主張するので按ずるに、まず右貯金がAの財産管理のために単にBの名義を使用したに過ぎないとか、又はAとBとの準共有の趣旨のもとにBの単独名義にしたに過ぎない等の事実を認めるに足りる証拠は存しない。かえつて右貯金はいわゆる出し入れ自由の通常郵便貯金や銀行の普通預金等とは異なり、いわゆる「すえ置期間」のある定額郵便貯金であつて、他に格別の事由のないかぎり、日常家事における家計処理の便宜のためになされたものとは認め難いところ、原審における第一審原告Aおよび控訴人各本人尋問の結果に弁論の全趣旨を総合すれば、右貯金証書と印鑑はもつぱらB自身が所持保管してきたことが認められるから、右預金はBの預金であつて、Aの預金とは認め難く、Bの意思により払戻し、譲渡をなしうるものと認めるのが相当である(Bは上記のように財産関係をめぐりAとの間柄が険悪となり次第に自己の病状も悪化してきたので前途を心配し、看病につとめてくれる控訴人夫婦の 意思により払戻し、譲渡をなしうるものと認めるのが相当である(Bは上記のように財産関係をめぐりAとの間柄が険悪となり次第に自己の病状も悪化してきたので前途を心配し、看病につとめてくれる控訴人夫婦の誠意に感謝する気持から、右貯金に関する預金者の権利を控訴人に譲渡することとし、郵便局員に連絡のうえ所定の手続を経て控訴人に対する名義変更がなされたものと認められる。 心配し、看病につとめてくれる控訴人夫婦の 意思により払戻し、譲渡をなしうるものと認めるのが相当である(Bは上記のように財産関係をめぐりAとの間柄が険悪となり次第に自己の病状も悪化してきたので前途を心配し、看病につとめてくれる控訴人夫婦の誠意に感謝する気持から、右貯金に関する預金者の権利を控訴人に譲渡することとし、郵便局員に連絡のうえ所定の手続を経て控訴人に対する名義変更がなされたものと認められる。)。そうすると、右預金の実質的権利者がAであることを前提とする被控訴人らの損害賠償請求は、その余の点について判断するまでもなく、失当といわなければならない。二、 以上説示したとおり、被控訴人らの請求は、すべて理由がないから、原判決中被控訴人の請求を認容した部分は不当であり、控訴に基づき、原判決中控訴人敗訴の部分を取消して被控訴人の請求を棄却すべきものとし、附帯控訴は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九六条、第八九条、第九三条第一項本文を適用した上主文のとおり判決する。(裁判長判事瀬戸正二判事小堀勇判事青山達)別紙物件目録熊谷市大字d字jk番地のl宅地四〇六・三平方メ―トル
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