主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第一控訴の趣旨一原判決を取り消す。 二大蔵大臣が控訴人に対し平成12年6月20日付け蔵金第608号でした戒告処分を取り消す。 第二事案の概要一事案の概要は、原判決5頁12行目の末尾に「なお、法第31条に基づく処分権限は、平成12年7月1日の中央省庁等改革関係法施行法の一部施行に伴い、同法による改正後の公認会計士法第31条により、大蔵大臣から内閣総理大臣に移管され、さらに、同法第49条の4第1項により、内閣総理大臣から被控訴人に委任されている。」を加え、当審における控訴人の主張の要旨として次項のとおり加えるほかは、原判決「事実及び理由」欄中の「第二事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。 二当審における控訴人の主張の要旨 1 法第2条第1項は、文理上、監査法人の社員が他の公認会計士又は監査法人の補助者となることを何ら制限しているものではない。原判決は、法律上の文言とは別に、趣旨解釈により新たな構成要件を作り出して行政上の制裁措置を課するものであるから、憲法第31条に定める法定手続の保障に反する。 2 監査法人は、商法の合名会社に類似することから、監査法人の内部関係及び外部関係等については、大幅に商法の合名会社に関する規定が準用されており、法第34条の14の定める監査法人の社員の競業禁止条項も、合名会社における社員の競業避止規定(商法第74条第1項)に準じて規定されているものである。しかるところ、同項の解釈としては、同種の営業を目的とする他の会社の補助者すなわち使用人になることは、何ら禁止されるものではない。株式会社の取締役の競業を制限する商法第264条についても同様であって、取締役が他の競業会社の取締役や使用人になるこ 的とする他の会社の補助者すなわち使用人になることは、何ら禁止されるものではない。株式会社の取締役の競業を制限する商法第264条についても同様であって、取締役が他の競業会社の取締役や使用人になることは、同条に違反するものではない。このように、商法における競業避止規定に関する解釈及びその理念に照らせば、法第34条の14の規定は、監査法人の社員が他の公認会計士又は他の監査法人の補助者として監査証明業務にたずさわることを制限したものではないと解すべきである。 3 原判決は、法第34条の14の趣旨から監査法人の社員の職務専念義務を導き出し、補助者として監査証明業務にたずさわることも、職務専念義務に反し競業禁止義務に違反に該当するとしている。 しかし、同条の趣旨は、監査法人が構成員相互の人的信頼関係に基礎を置く商法の合名会社に類似することを表現したものにすぎないのであって、その趣旨から職務専念義務を導き出すことは相当ではない。 4 法第34条の14は、責任の主体か分散化することになれば、社員相互の緊密な協力関係が維持できないことなどから、社員の兼業を禁止したものである。しかし、他の公認会計士又は監査法人の補助者として監査証明業務にたずさわるだけでは、責任の主体が分散化することにはならないから、法第34条の14に定める競業禁止義務に違反する行為に当たらないというべきである。 5 法第34条の14は、公認会計士と併せて税理士の資格を有する監査法人の社員が別に税理士業務を営むことについて何ら制限するものではない。そうすると、自らの税理士業務を営む割合が極めて高く、監査法人の社員としての監査証明業務にたずさわることが困難なときでも、かかる事態が許容されるのであるから、原判決の同条の解釈を前提とすれば、かかる事態は、同条の趣旨に反するということになる。したが 監査法人の社員としての監査証明業務にたずさわることが困難なときでも、かかる事態が許容されるのであるから、原判決の同条の解釈を前提とすれば、かかる事態は、同条の趣旨に反するということになる。したがって、同条は、監査法人の社員の職務専念義務を規定したものでないと解すべきである。 6 公認会計士たる所以は、法第2条第1項にいう監査証明業務を営むことであるが故に、法は監査証明業務を軸として構成されている。しかるところ、法第34条の12第1項、第47条の2及び第24条第1項の各規定の解釈を検証してみると、いずれの場合も、補助者としての立場に基づく監査証明業務への関与は、監査証明業務を行うことには該当しない。 7 財務諸表監査の趣旨又は制度に照らし、法第2条第1項の監査証明業務とは、財務諸表の適否に関して会計の専門家として意見を表明することである。すなわち、財務諸表の適否に関する意見表明が公認会計士又は監査法人の任務であり、それが監査契約に基づき、公認会計士又は監査法人が被監査会社に履行すべき債務の内容であって、当該意見形成のために選択適用される監査手続の実施それ自体は、法第2条第1項の監査証明業務に該当しない。したがって、監査法人の社員が補助者として他の公認会計士又は監査法人の指揮監督下で監査手続の実施に関与したとしても、監査証明業務を行ったものと評価することはできない。 8 監査法人の社員が別に税理士業務を営むことが許容されていることと比べると、他の公認会計士又は他の監査法人の補助者として従事することが禁止されるのは、著しく整合性を欠くので、憲法第22条第1項で保障される営業の自由に対する合理的な理由のない規制というべきである。 第三当裁判所の判断一当裁判所も、法第34条の14の規定がこれを行うことを禁止している、「その監査法人の業務 22条第1項で保障される営業の自由に対する合理的な理由のない規制というべきである。 第三当裁判所の判断一当裁判所も、法第34条の14の規定がこれを行うことを禁止している、「その監査法人の業務の範囲に属する業務」とは、法「第2条第1項の業務」及び当該監査法人の定款で定めるところによる法第2条第2項の業務等をいう(法第34条の5参照)ところ、「第2条第1項の業務」とは、同項及び法第47条の2の規定に照らし、「財務書類の監査又は証明をすること」一般、すなわち、財務書類が適正、正確なものであるかを検査する行為及びその検査結果に基づき財務書類が適法正確であることを確認して証明する行為一般をいうものであって、その関与の仕方等につき、両行為に格別限定が付されているものではなく、また、確認・証明行為のみをいうものでもないと解されるから、監査法人の社員である公認会計士が、被監査会社との間で直接の契約関係を結ばず、補助者としての立場から検査行為又は確認・証明行為のみに関与した場合であっても、「第2条第1項の業務」、ひいては法第34条の14の規定にいう「その監査法人の業務の範囲に属する業務」を行ったこととなり、同条に違反したものと評価されることになるので、本件処分は適法であり、その取消しを求める控訴人の請求は、理由がないものと判断する。 その理由は、次のとおりに原判決を改め、次項のとおり当審における控訴人の主張に対する判断を加えるほかは、原判決「事実及び理由」欄中の「第三当裁判所の判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。 1 原判決22頁2行目の「ところで」から同23頁7行目の「いうべきである。」までを次のとおりに改める。 「ところで、法は、監査法人の設立については、その社員を公認会計士の資格を有する者のみに限定し、その数を5人以上とし、社員 ころで」から同23頁7行目の「いうべきである。」までを次のとおりに改める。 「ところで、法は、監査法人の設立については、その社員を公認会計士の資格を有する者のみに限定し、その数を5人以上とし、社員にはすべて業務を執行する権利及び義務を与えるなどの一定の要件を設け(法第34条の4)、かつ、認可制度を採用し(法第34条の7)、監査法人がこの要件を欠くこととなった場合に認可を取り消すことができる制度を設ける(法第34条の20)とともに、法第34条の14の規定を設けて、監査法人の社員が、「その監査法人の業務の範囲に属する業務」を行うことを絶対的に禁止している。これらは、いずれも、監査法人自体が、その権限と責任において、財務書類の監査及び証明業務という、合理的経済活動のために必要であって、公共の利益にも資する極めて重要な業務を行うものであるため、監査法人の社員相互の緊密な協力関係を維持し、組織的な監査業務及び証明業務の主体並びにそれらの責任の主体としての監査法人の実体を確保し、監査業務及び証明業務の内容の充実と独立性を維持する趣旨であると解される。そうであるとすれば、実質的な検討を加えてみても、控訴人主張のように、自己の名で被監査会社との間で契約を締結し、自己の責任で監査証明業務を行ったときでない限り、法第34条の14の規定が禁止する法第2条第1項の業務を行ったことにならないと解した場合には、監査法人の社員として当該監査法人の監査業務又は証明業務の執行にたずさわる割合に比べて、他の公認会計士又は他の監査法人の補助者として監査業務及び証明業務にたずさわる割合が高く、自己が構成員である監査法人の監査業務又は証明業務の執行にたずさわることが困難なようなときや、他の公認会計士又は他の監査法人の補助者として行動しているため、他の公認会計士又は他の監査法 割合が高く、自己が構成員である監査法人の監査業務又は証明業務の執行にたずさわることが困難なようなときや、他の公認会計士又は他の監査法人の補助者として行動しているため、他の公認会計士又は他の監査法人の指揮監督下に組み込まれているようなときも、法第34条の14による規制が及ばないことになるが、このような事態は、社員相互の緊密な協力関係を維持し、組織的な監査業務及び証明業務の主体並びにそれらの責任の主体としての監査法人の実体を確保し、監査業務及び証明業務の内容の充実と独立性を維持するという法第34条の14の前記趣旨に大きく反する結果を招来することになるといわなければならない。したがって、前記のような控訴人の解釈は、実質的にみても、法第34条の14の解釈として妥当性を欠くものというべきである。」 2 原判決24頁1行目の「監査証明業務の主体」を「監査及び証明業務の主体並びにそれらの責任の主体」に改める。 3 原判決25頁4行目の「しかし」から同8行目の「解される。」までを次のとおりに改める。 「しかし、法第2条第3項は、法第2条第1項の業務、すなわち財務書類が適正、正確なものであるかを検査する行為又はその検査結果に基づき財務書類が適法正確であることを確認・証明する行為一般を行う場合であっても、補助者としての立場でかかわる場合には、同項の規定する他の要件である「他人の求めに応じて報酬を得て」という要件(自己以外の被監査者からの委嘱により被監査者から報酬を受けてという意味に解される。)については、これに該当しないと解され、また、同じく同項の規定する「業とする」(営むのと同旨に解する余地がある。)という要件については、これに該当しないと解する余地があるため、同項の規定に加えて、公認会計士が、補助者としての立場で、財務書類の検査行為及び確認・証明行 とする」(営むのと同旨に解する余地がある。)という要件については、これに該当しないと解する余地があるため、同項の規定に加えて、公認会計士が、補助者としての立場で、財務書類の検査行為及び確認・証明行為にかかわることもできる旨を定めたものと解される。」 4 原判決26頁6行目の「したがって」から同8行目の「解されない。」までを次のとおりに改める。 「したがって、法第2条第1項の規定に加えて、「同項の業務」という文言に「…の補助者として」という限定を付する形で、法第2条第3項の規定が設けられていることは、むしろ、「第2条第1項の業務」という文言自体は財務書類の検査行為及び確認・証明行為一般を意味するものであって、関与の仕方等につき、両行為に格別の限定が付されているものではないという前記解釈を裏付けるものであり、控訴人が主張するように、法第2条第3項の規定が存在することをもって、補助者としてする監査証明業務は元々法第2条第1項の業務に含まれないという解釈の根拠とすることはできない。」 5 原判決28頁13行目の「禁止しており」から同29頁7行目の「失当である。」までを次のとおりに改める。 「禁止している。それにもかかわらず、無資格者が財務書類の検査行為及び確認・証明行為の補助業務に従事することが許されるのは、当該補助業務への従事が単独の公認会計士又は監査法人の社員たる公認会計士の指揮監督下にあって、その履行補助者として業務に当たっているため、その業務が全体として、当該公認会計士又は当該監査法人の業務とみなされることになる上、法の規定上も、このような補助業務への従事は、法第47条の2の規定する要件のうち、「他人の求めに応じ報酬を得て」という要件及び法第2条第1項の業務を「営む」という要件(「営む」とは、自ら営業することを意味する。)に該当せず、同 業務への従事は、法第47条の2の規定する要件のうち、「他人の求めに応じ報酬を得て」という要件及び法第2条第1項の業務を「営む」という要件(「営む」とは、自ら営業することを意味する。)に該当せず、同規定の禁止するところではないからであるというべきである。したがって、法第2条第1項の業務とは財務書類の検査行為及び確認・証明行為一般を意味するものであって、両行為に格別の限定が付されているものではないという前記解釈を採っても、無資格者が補助業務に従事することが許されなくなるわけではない。 よって、前記解釈では公認会計士資格を有しない者でも補助業務への従事は許されるという一般的見解と相反することになるという控訴人の前記主張は、失当である。」二当審における控訴人の主張に対する判断 1 控訴人は、原判決は、法律上の文言とは別に、趣旨解釈により新たな構成要件を作り出して制裁措置を課するものであるから、憲法第31条に定める法定手続の保障に反する旨主張する。 しかし、前示のとおり、法第2条第1項及び関連規定の文理上、監査法人の社員が他の公認会計士又は監査法人の補助者として、財務書類の監査又は証明業務に関与することは、法第34条の14の規定に反するというべきであって、控訴人の主張こそ、法第2条第1項の業務をあえて狭く解釈しようとするものであるから、控訴人の上記主張は、前提を欠くものとして、採用することができない。 2 控訴人は、商法における競業避止規定に関する解釈等に照らせば、法第34条の14の規定は、監査法人の社員が他の公認会計士又は他の監査法人の補助者として監査証明業務にたずさわることを制限したものではない旨主張する。 しかし、商法第74条第1項は、「…取引ヲ為シ又ハ…他ノ会社ノ無限責任社員若ハ取締役卜為ルコトヲ得ズ」と規定しているのであるから、同項 監査証明業務にたずさわることを制限したものではない旨主張する。 しかし、商法第74条第1項は、「…取引ヲ為シ又ハ…他ノ会社ノ無限責任社員若ハ取締役卜為ルコトヲ得ズ」と規定しているのであるから、同項が、合名会社の社員が単なる補助者ないし使用人としてその会社と同種の営業にたずさわることを禁止しているものでないことは、その文理上明らかであり、この解釈を規定の文言の全く異なる法第34条の14の解釈に押し及ぼすことはできない。また、商法第74条第1項等の商法における競業避止規定の趣旨は、要するに会社の利益を守るためのものであって、だからこそ、任意規定とされているのであるが、法第34条の14の趣旨は、前示のとおりであって、監査法人制度の特性に由来する公益的性質をも有するものであり、だからこそ、商法第74条第1項等とは異なり、当該監査法人による承諾の余地のない強行規定とされているのである。したがって、実質的観点から考察してみても、規定の趣旨及び性質が異なる法第34条の14を商法第74条第1項にならって解釈することは相当ではない。株式会社の取締役の競業を制限する商法第264条についても、法第34条の14とその文言及び趣旨が異なることは、同様であって、商法第264条を根拠にして法第34条の14を解釈することはできない。 したがって、控訴人の前記主張は、採用することができない。 3 控訴人は、原判決は、法第34条の14の趣旨から監査法人の社員の職務専念義務を導き出し、補助者として監査証明業務にたずさわることも、職務専念義務に反し競業禁止義務違反に該当するものとしているが、同条の趣旨から職務専念義務を導き出すことは相当ではない旨主張する。 しかし、控訴人の上記主張は、原判決を正解しない主張であって、到底採用することができない。 4 控訴人は、法第34条 しているが、同条の趣旨から職務専念義務を導き出すことは相当ではない旨主張する。 しかし、控訴人の上記主張は、原判決を正解しない主張であって、到底採用することができない。 4 控訴人は、法第34条の14は、責任の主体が分散化することになれば、社員相互の緊密な協力関係を維持できないことなどから、社員の兼業を禁止したものであるが、他の公認会計士又は監査法人の補助者として監査証明業務にたずさわるだけでは、責任の主体が分散化することにはならないから、同条に反しない旨主張する。 しかし、同条の趣旨は、前示のとおりであって、責任の主体の分散化を避けるためだけのものではないので、控訴人の上記主張は、前提を欠くものというべきであり、採用することができない。なお、監査法人の社員である公認会計士が他の公認会計士又は監査法人の補助者として監査又は証明業務にたずさわるだけでも、監査法人の実体の弱体化につながることは明らかであるから、ひいては責任主体としての監査法人の維持、強化にも悪影響を及ぼすというべきである。 5 控訴人は、法第34条の14は、監査法人の社員が別に税理士業務を営むことについて何ら制限するものではないが、原判決の解釈によれば、自らの税理士業務を営む割合が極めて高く、監査法人の社員としての監査証明業務にたずさわることが困難なときでも、かかる事態が許容されることは、同条の趣旨に反することとなるので、同条は、職務専念義務を規定したものでないと解すべきである旨主張する。 しかし、同条は、監査法人の公認会計士に職務専念義務を定めたものではないから、控訴人の上記主張は、前提を欠くものとして、採用することができない。 6 控訴人は、法第34条の12第1項、第47条の2及び第24条第1項の各規定の解釈において、補助者としての立場に基づく監査証明業務への関与は 記主張は、前提を欠くものとして、採用することができない。 6 控訴人は、法第34条の12第1項、第47条の2及び第24条第1項の各規定の解釈において、補助者としての立場に基づく監査証明業務への関与は、監査証明業務を行うことには該当しない旨主張する。 しかし、そもそも、各規定全体の文理やその文言の用い方及び各規定の趣旨を度外視して、単純にある規定中の一定の文言の意味が他の規定中の同じ文言の意味と同一であるとする控訴人の主張は、その立論自体に無理があるといわざるを得ない。 また、法第34条の12第1項及び第47条の2の各規定が法第34条の14における「その監査法人の業務の範囲に属する業務」ひいては「法第2条第1項の業務」についての前記解釈の妨げにならないことは、既に原判決が26頁9行から29頁7行までにおいて判示した(本判決による付加訂正を含む。)とおりであり、これらに関する控訴人の上記主張は、原判決を正解しないものであって、採用することができない。 また、控訴人は、特別の利害関係のある場合の監査証明業務の制限を規定する法第24条第1項にいう「第2条第1項の業務」に補助業務も含まれると解すると、証券取引法第193条の2第2項、財務諸表等の監査証明に関する内閣府令第2条第1項第3号及び「財務諸表等の監査証明に関する省令」の取扱いに関する留意事項について(平成11年4月大蔵省金融企画局)が、特別の利害関係のある場合の補助者一般を監査証明業務から排除するのではなく、更に特別な補助者のみを規制していることと矛盾し、通達が法第24条第1項を変更する結果となる旨主張するが、財務諸表等の監査証明に関する内閣府令第2条第1項第3号は、そもそも法第24条第1項に基づくものではなく、別な法令である証券取引法第193条の2第2項の規定に基づくものであり、か なる旨主張するが、財務諸表等の監査証明に関する内閣府令第2条第1項第3号は、そもそも法第24条第1項に基づくものではなく、別な法令である証券取引法第193条の2第2項の規定に基づくものであり、かつ、同項の規制の名宛人は公認会計士ではなく、被監査者であって、規制対象も、監査業務及び証明業務一般ではなく、一定の者の一定の財務書類につき確定的な意見の表明としての「監査証明」を受ける場合に限られているのであるから、公認会計士を名宛人とし、広く監査業務及び証明業務一般への従事を規制対象とする法第24条第1項とは、その規制範囲に差があったとしても、不整合とまではいうことはできない(被控訴人は、法第24条第1項による規制は監査契約の主体たる公認会計士にのみ及び、補助者たる公認会計士には及ばない旨主張しており、仮にこのように解しても、法第24条第1項と前記「財務諸表等の監査証明に関する省令」の取扱いに関する留意事項とが不整合であるということはできない。)。 以上のとおり、控訴人の前記主張は、採用することができない。 7 控訴人は、財務諸表監査の趣旨又は制度に照らし、法第2条第1項の監査証明業務とは、財務諸表の適否に関して会計の専門家として意見を表明することであり、当該意見形成のために選択適用される監査手続の実施それ自体をいうものではないから、補助者として監査手続の実施に関与したことをもって、監査証明業務を行ったものと評価することはできない旨主張する。 しかし、控訴人の上記主張は、規定の文理から離れて、法第2条第1項にいう「財務書類の監査又は証明」を、要するに、自らの名前で証明をする行為のみに限定解釈するものであり、採用することができない。また、実質的観点から考えても、自らの名前で意見を表明する場合のみが「財務書類の監査又は証明」に当たるというので に、自らの名前で証明をする行為のみに限定解釈するものであり、採用することができない。また、実質的観点から考えても、自らの名前で意見を表明する場合のみが「財務書類の監査又は証明」に当たるというのでは、被監査者との契約上、別の公認会計士又は監査法人の名義を用いたり、他の公認会計士の名義で報告書、証明書等を発給したり、あるいは、財務書類の検査行為のみにたずさわる場合には、当該公認会計士に対しては法の種々の規制が及ばないということになり、それでは、検査行為すなわち監査手続の実施それ自体を含む実際の監査業務及びこれに基づく証明業務全般の適正を保つことはできないから、このような事態を許容することとなる控訴人主張の解釈は、実質的にみても、相当ではない。 さらに、控訴人は、法の沿革や法第2条第3項、第3条第1項及び第2項、第30条、第47条等からみても、控訴人の上記主張が裏付けられる旨主張するが、いずれも、的を射ない主張であるか、又は既に判示したとおりであって、採用することができない(法第3条第1項にいう「前条第1項の業務」とは、規定全体を通読すれば、財務書類の検査行為及び確認行為一般を意味するものと解して、何ら矛盾はない。法第30条各号にいう「証明」は、控訴人の主張のとおり、いずれも自己の意見の表明を指すと解されるが、同条の規定全体の文理及び同条の趣旨に照らせば、同条各号にいう「証明」は、法第2条第1項にいう「財務書類の監査又は証明」とは異なることが明らかであるから、法第30条各号の解釈が法第2条第1項の解釈に影響するものではない。法第47条にいう「監査又は証明」についても、そのうち、「証明」は、専門的な意見の表明を指すと解されるが、それは、「監査又は証明を受けたものである旨を公表」という規定の仕方及び規定の趣旨上、そのように解するというにすぎ 又は証明」についても、そのうち、「証明」は、専門的な意見の表明を指すと解されるが、それは、「監査又は証明を受けたものである旨を公表」という規定の仕方及び規定の趣旨上、そのように解するというにすぎず、他の条項中の「監査又は証明」という用語を同条の「証明」と同一の意味に解釈しなければならないということはできない。)。 以上のとおり、控訴人の前記主張は、いずれも採用することができない。 8 控訴人は、監査法人の社員が別に税理士業務を営むことが許容されていることと比べると、他の公認会計士又は他の監査法人の補助者として従事することが禁止されるのは、著しく整合性を欠くので、憲法第22条第1項で保障される営業の自由に対する合理的な理由のない規制である旨主張する。 しかし、法は公認会計士の監査業務及び証明業務について一定の規制をしているのであるから、法第34条の14等が税理士業務(他の種々の業務についても同じ事である。)に触れていないのは当然であって、それが整合性を欠くということはできない。 したがって、控訴人の前記主張は、前提を欠くものであって、採用することができない。 三以上によれば、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第67条第1項、第61条を適用して、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第5民事部裁判長裁判官飯田敏彦裁判官持本健司裁判官菅野博之
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