- 1 -令和3年第270号、第302号 公契約関係競売入札妨害、贈賄被告事件主 文被告人を懲役1年6月に処する。 この裁判が確定した日から3年間上記刑の執行を猶予する。 理 由(罪となるべき事実)被告人は、土木工事等を業とするA株式会社の代表取締役として同社の業務全般を統括していたものであるが、第1 香南市議会議員であった分離前の相被告人B及び香南市職員と共謀の上、同市が令和2年12月17日に執行するa町C団地解体工事の制限付一般競争入札に関し、同市職員が、同月7日頃から同月17日までの間、Bに対し、上記入札の最低制限価格の近似額が2900万円である旨教示し、その頃、Bが同市(住所省略)所在の同人方から、電話で被告人にその旨伝達し、よって、同月17日に同市(住所省略)所在のDにおいて執行された上記入札に際し、Aをして2900万円で入札させて上記工事を落札させ、第2 同月7日頃、Bに電話で、上記入札に関し、秘密事項の最低制限価格について、これを知り得る立場にある同市職員から聞き出して貰いたい旨請託し、これを承諾したBが、同日頃から同月17日までの間、同市において、上記最低制限価格を職務上知り得る立場にあった同市職員にその価格を教示するように申し入れ、同人に職務上不正な行為をするようにあっせんしたことに対する謝礼の趣旨で、同月22日頃、高知市(住所省略)所在の飲食店E駐車場において、Bに対し額面合計10万円の全国百貨店共通商品券を供与したものである。 (争点に対する判断)1 本件は公契約関係競売入札妨害及び贈賄の事案であり、関係各証拠によれば、被告人がBに対し、判示解体工事を落札したいので最低制限価格を教えてほ- 2 -しい旨依頼したこと、被告人がBから、同価格の近似額 関係競売入札妨害及び贈賄の事案であり、関係各証拠によれば、被告人がBに対し、判示解体工事を落札したいので最低制限価格を教えてほ- 2 -しい旨依頼したこと、被告人がBから、同価格の近似額が2900万円であると聞き、被告人が代表取締役を務める建設会社が判示解体工事を落札したこと、被告人がその謝礼として、Bに額面合計10万円の商品券を供与したことが認められる。 弁護人は、上記の事実経過については争っていないものの、Bが、判示入札の最低制限価格を知り得る立場にあった香南市職員に価格を教示するよう申し入れ、同職員から同価格の近似額の教示を受けたという事実はない旨主張するので、当裁判所が判示のとおり認定した理由について説明する。 2 Bは、令和4年6月9日、当公判廷に証人として出廷し、上記1及びに沿う供述をしている。 Bは、平成5年以降、赤岡町議会議員、香南市議会議員を務め、平成29年頃以降、被告人から飲食等の接待を受けるなどする中で、判示第1に係る訴因と同一の公契約関係競売入札妨害罪及びそれに関連して被告人から賄賂を収受したという判示第2に係る訴因に対応するあっせん収賄罪により、令和4年4月20日、当裁判所において懲役2年、執行猶予4年の判決を受け、その判決は控訴の申立てもなく確定している上、香南市議会議員の職も辞している。このような諸事情に照らし、Bの供述が全て虚構の事実を述べるものとは考え難い。 これに対し、弁護人は、本件各公訴事実は、当初、Bの捜査段階の供述に基づき、あっせん先であり、最低制限価格の漏洩元でもある公務員を、香南市住宅管財課長として特定していたにもかかわらず、起訴後、Bが、同課長ではなく、香南市長があっせん先かつ漏洩元である旨言を翻したため、令和3年12月3日付でなされた訴因変更請求に基づき、同 を、香南市住宅管財課長として特定していたにもかかわらず、起訴後、Bが、同課長ではなく、香南市長があっせん先かつ漏洩元である旨言を翻したため、令和3年12月3日付でなされた訴因変更請求に基づき、同課長から、「香南市職員」に訴因が変更されたという経緯があるところ、このように、重要な部分について供述を変遷させるようなB供述はおよそ信用できない旨主張する。 確かに、弁護人の指摘するとおり、変更後の訴因に係る「香南市職員」が誰であるかについて、Bの供述には変遷がみられる。そして、捜査段階において虚偽- 3 -供述をし、これを維持し続けた理由、その後供述を変遷させた理由などについて、B自身による十分な説明がなされているとは認め難く、変遷前の供述部分と変遷後の供述部分のいずれが十分信用できるか、俄かに断定することは困難であり、あっせん先かつ最低制限価格の漏洩元である公務員が誰であるかを具体的に特定することはできない。しかしながら、Bの供述は、あっせん先かつ最低制限価格の漏洩元が「香南市職員」であるという限度では一貫していると考えられる上、入札の最低制限価格の決定が香南市内部の決裁を経てなされ、その情報を知り得るのはこれに関与する同市の関係職員であることなどとも整合していることに徴すると、この限度でBの変遷した供述部分の信用性を肯認することができるというべきである。 これに対し、弁護人は、被告人がBから聞いたのは最低制限価格そのものでなく、その近似額であったことも併せ考えれば、Bが議員として培った経験に基づき、又は民間業者等から価格の積算について意見を求めるなどして独自に価格を算出し、被告人にこれを伝えた可能性が排斥できないなどとも主張する。 しかしながら、Bが「香南市職員」から情報を聞き出すという違法な手段を用いていないにもかかわらず、犯 を求めるなどして独自に価格を算出し、被告人にこれを伝えた可能性が排斥できないなどとも主張する。 しかしながら、Bが「香南市職員」から情報を聞き出すという違法な手段を用いていないにもかかわらず、犯罪行為をした旨の虚偽の供述をし、自ら有罪判決を受け、長年務めた議員の仕事も辞職してまでして、敢えて虚偽供述をするとは考え難く、被告人とBとの間に、その原因となり得るようなトラブルがあったことも窺われない。また、民間業者等から価格の積算について意見を求めるなどしたとの点についてみても、これは抽象的な可能性を指摘するものに過ぎない。 以上の検討結果によれば、Bの供述は上記限度で信用することができ、弁護人の主張は採用できない。 3 なお、弁護人は、本件各公訴事実(令和3年12月3日付訴因変更請求に基づく変更後のもの)について、訴因が不特定であり、公訴事実の同一性を害しないかも不明であってそもそも訴因変更を許可すべきでなく、変更後の訴因についても公訴棄却されるべきであると主張する。しかし、本件各公訴事実は、いずれも- 4 -証拠上可能な範囲で、他の犯罪事実と区別できる程度に具体化されており、公訴事実の同一性が存在することは明らかであり、被告人の防御権を不当に侵害するものとも言えない。弁護人の主張は採用できない。 (量刑の理由)本件は、建設会社の代表取締役であった被告人が、香南市議会議員に対し、香南市が実施する公共工事の最低制限価格を聞き出して欲しい旨働きかけ、同議員が香南市職員より聞き出した当該価格の近似額の教示を受けて工事を落札した上、同議員に対し、その謝礼として額面合計10万円の全国百貨店共通商品券を供与したという事案である。 本件一連の犯行は、入札の公正を著しく害した上、公務員の職務の公正及び職務の公正に対する社会の信頼を損ねたもの し、その謝礼として額面合計10万円の全国百貨店共通商品券を供与したという事案である。 本件一連の犯行は、入札の公正を著しく害した上、公務員の職務の公正及び職務の公正に対する社会の信頼を損ねたものであって、犯情は芳しくなく、その当罰性は軽視できない。しかしながら、被告人には前科前歴がなく、50万円の贖罪寄付をするなどして反省の態度を示していることからすれば、本件は被告人を直ちに実刑に処すべき事案とまではいえない。そこで、被告人を主文掲記の刑に処した上で、その刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。 令和4年9月27日高知地方裁判所刑事部 裁判長裁判官 𠮷 井 広 幸 裁判官 前 田 早 織 裁判官 野 澤 尚 純
▼ クリックして全文を表示