令和6特(わ)3843 金融商品取引法違反

裁判年月日・裁判所
令和7年5月9日 東京地方裁判所
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判決文本文3,317 文字)

令和7年5月9日東京地方裁判所刑事第1部宣告令和6年特(わ)第3843号金融商品取引法違反被告事件 主文 被告人両名をそれぞれ懲役1年6月及び罰金100万円に処する。 被告人らにおいてその罰金を完納することができないときは、それぞれ金1万円を1日に換算した期間、その被告人を労役場に留置する。 被告人両名に対し、この裁判が確定した日から3年間それぞれその懲役刑の執行を猶予する。 被告人Bから金2116万1630円を追徴する。 理由 【罪となるべき事実】被告人Aは、株式会社C証券取引所上場部開示業務室に勤務していた同社の従業員であり、被告人Bは、被告人Aの実父である。 第1 被告人Aは、令和6年1月25日頃及び同月26日頃、その職務に関し、C証券取引所の従業員らが、D株式会社がC証券取引所と締結した株券上場契約の履行に関し知った、Dの業務執行を決定する機関が、C証券取引所が開設する有価証券市場に株券を上場していた株式会社Eの株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を知り、あらかじめEの株券を買い付けさせて利益を得させる目的をもって、同月29日頃から同月30日頃までの間に、東京都内において、被告人Bに対し、電話で、同公開買付けの実施に関する事実を伝達したものであり、これにより伝達を受けた被告人Bが、法定の除外事由がないのに、同公開買付けの実施に関する事実の公表前である同日から同年2月2日までの間、株式会社F証券を介し、東京都中央区a町b番c号所在のC証券取引所等において、被告人B名義で、Eの株券合計1200株を代金合計1020万6020円で買い付け、 第2 被告人Bは、同年1月29日頃から同月30日頃までの間に、被告人Aから、被告人Aがその職務に関し て、被告人B名義で、Eの株券合計1200株を代金合計1020万6020円で買い付け、 第2 被告人Bは、同年1月29日頃から同月30日頃までの間に、被告人Aから、被告人Aがその職務に関し知った判示第1記載の公開買付けの実施に関する事実の伝達を受け、法定の除外事由がないのに、同公開買付けの実施に関する事実の公表前である同日から同年2月2日までの間、F証券を介し、C証券取引所等において、被告人B名義で、Eの株券合計1200株を代金合計1020万6020円で買い付け、第3 被告人Aは、同年3月25日頃、G株式会社がC証券取引所と締結した株券上場契約の履行に関し、Gの業務執行を決定する機関が、C証券取引所が開設する有価証券市場に株券を上場していた株式会社Hの株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を知り、あらかじめHの株券を買い付けさせて利益を得させる目的をもって、同月28日頃、新潟県内において、被告人Bに対し、面前で、同公開買付けの実施に関する事実を伝達したものであり、これにより伝達を受けた被告人Bが、法定の除外事由がないのに、同公開買付けの実施に関する事実の公表前である同月29日及び同年4月1日、F証券を介し、C証券取引所等において、被告人B名義で、Hの株券合計1万1000株を代金合計244万1810円で買い付け、第4 被告人Bは、同年3月28日頃、被告人Aから、被告人Aが同契約の履行に関し知った判示第3記載の公開買付けの実施に関する事実の伝達を受け、法定の除外事由がないのに、同公開買付けの実施に関する事実の公表前である同月29日及び同年4月1日、F証券を介し、C証券取引所等において、被告人B名義で、Hの株券合計1万1000株を代金合計244万1810円で買い付け、第5 被告人A 施に関する事実の公表前である同月29日及び同年4月1日、F証券を介し、C証券取引所等において、被告人B名義で、Hの株券合計1万1000株を代金合計244万1810円で買い付け、第5 被告人Aは、同年3月29日頃、その職務に関し、C証券取引所の従業員らが、株式会社Iの親会社である株式会社JがC証券取引所と締結した株券上場契約の履行に関し知った、Iの業務執行を決定する機関が、C証券取引所が開設する有価証券市場に株券を上場していた株式会社Kの株券の公開買付けを行 うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を知り、あらかじめKの株券を買い付けさせて利益を得させる目的をもって、同日頃、新潟県内において、被告人Bに対し、面前で、同公開買付けの実施に関する事実を伝達したものであり、これにより伝達を受けた被告人Bが、法定の除外事由がないのに、同公開買付けの実施に関する事実の公表前である同日及び同年4月1日、F証券を介し、C証券取引所等において、被告人B名義で、Kの株券合計3000株を代金合計442万1230円で買い付け、第6 被告人Bは、同年3月29日頃、被告人Aから、被告人Aがその職務に関し知った判示第5記載の公開買付けの実施に関する事実の伝達を受け、法定の除外事由がないのに、同公開買付けの実施に関する事実の公表前である同日及び同年4月1日、F証券を介し、C証券取引所等において、被告人B名義で、Kの株券合計3000株を代金合計442万1230円で買い付けた。 【証拠の標目】(略)【法令の適用】(中略)なお、被告人Bの弁護人は、追徴額につき、売付代金総額(2116万1630円)から買付代金総額(判示第2、第4、第6で認定したとおり、1706万9060円)を控除した額である409万2570円にとどめるべきであると 弁護人は、追徴額につき、売付代金総額(2116万1630円)から買付代金総額(判示第2、第4、第6で認定したとおり、1706万9060円)を控除した額である409万2570円にとどめるべきであると主張するが、金商法が定める没収・追徴制度の趣旨に加え、本件においては金商法198条の2第1項ただし書を適用すべき事情は見当たらないことからすれば、追徴額は売付代金総額である2116万1630円とするのが相当である。 【量刑の理由】本件については、本来であれば証券市場の公正性や健全性を確保すべき立場にあるC証券取引所の従業員であった被告人Aが、父である被告人Bの求めに応じて公開買付けの実施に関する事実を伝達し、それに基づきインサイダー取引が行われたという点に顕著な特徴がある。本件は、証券市場開設者の従業員が関与した犯行であるという点で、証券市場の公正性及び健全性を根底から揺さぶり、かつ、証券市 場に対する投資家の信頼を甚だしく損ねるものといえる。 行われたインサイダー取引の規模も小さくない。 被告人Aは、その立場を悪用したもので、強い非難に値する。被告人Aは、父親との関係を改善したいとの思いから、被告人Bの求めに応じて犯行に及んだというのであるが、安易な犯行動機に酌量の余地はない。 被告人Bは、株取引で確実に利益を得ようとして犯行に及んだというのであるが、浅ましく利欲的な犯行動機は強い非難に値する。また、被告人Bは、犯行により多額の利益を得ている。 そうすると、被告人両名の刑事責任は軽くなく、被告人両名には相応の懲役刑と罰金刑を併科することとするが、被告人Aに前科はなく、被告人Bにも異種罰金前科以外の前科はないことなどを踏まえると、懲役刑については刑の執行を猶予するのが相当である。以上に加えて、被告人両名が事実を認め、反省の態 ることとするが、被告人Aに前科はなく、被告人Bにも異種罰金前科以外の前科はないことなどを踏まえると、懲役刑については刑の執行を猶予するのが相当である。以上に加えて、被告人両名が事実を認め、反省の態度を示していること、自業自得ながら被告人Aは本件を契機に懲戒解雇の処分を受けたことなども併せ考慮し、刑期、罰金額及び執行猶予の期間を定めた。 (求刑被告人両名につき懲役1年6月及び罰金100万円、被告人Bにつき主文同旨の追徴)令和7年5月9日東京地方裁判所刑事第1部 裁判官大川隆男

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