主文 1 本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とし,附帯控訴費用は被控訴人小林産業株式会社の負担とする。 事実 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(控訴の趣旨)(1) 原判決中,控訴人敗訴の部分を取り消す。 (2) 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 (3) 被控訴人らは,控訴人に対し,各自金1167万8318円及びこれに対する平成10年12月17日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。(この請求は,当審において減縮されたものである。)(4) 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 (5) (3)項につき仮執行宣言(被控訴人小林産業株式会社の附帯控訴の趣旨に対する答弁)(1) 本件附帯控訴を棄却する。 (2) 附帯控訴費用は被控訴人小林産業株式会社の負担とする。 2 被控訴人ら(控訴の趣旨に対する答弁)(1) 本件控訴を棄却する。 (2) 控訴費用は控訴人の負担とする。 (被控訴人小林産業株式会社の附帯控訴の趣旨)(1) 原判決中,被控訴人小林産業株式会社の敗訴部分を取り消す。 (2)(主位的請求)控訴人は,被控訴人小林産業株式会社に対し,金380万円及びこれに対する平成9年7月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。(この請求は,次の予備的請求とともに,当審において減縮されたものである。)(予備的請求)控訴人は,被控訴人小林産業株式会社に対し,金352万5000円及びこれに対する平成9年7月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (3) 訴訟費用は第1,2審とも控訴人の負担とする 控訴人は,被控訴人小林産業株式会社に対し,金352万5000円及びこれに対する平成9年7月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (3) 訴訟費用は第1,2審とも控訴人の負担とする。 (4) 仮執行宣言第2 当事者の主張(A事件・B事件) 1 請求原因(1) 被控訴人小林産業株式会社(以下「被控訴人会社」という。)は,レース製造を主たる目的とする会社であり,控訴人は,組合員の事業の用に供するための土地の取得とその造成,工場の建設及びこれらの管理等を主たる目的とする,中小企業等協同組合法に基づき設立された協同組合である。 (2) 被控訴人会社は,平成7年12月22日,控訴人に加入し,平成8年4月4日,控訴人に対し,出資金300万円,協力金100万円を支払った。 (3) 被控訴人会社の代表取締役である被控訴人甲は,控訴人に対し,平成8年5月15日,748万2000円を,利息を年5分とし,弁済期を定めることなく貸し渡した。 (4) 被控訴人会社は,平成8年7月31日,控訴人に対して脱退届を提出し,控訴人から脱退した。 (5) 被控訴人会社と控訴人は,上記(4)の被控訴人会社の脱退に際し,上記(2)の出資金と協力金を,控訴人が被控訴人会社に原状回復として即時返還する旨の合意(以下「本件返還合意」という。)をした。 (6) 被控訴人甲は,控訴人に対し,平成8年11月14日付け内容証明郵便で,同郵便到達の日から10日以内に上記(3)の貸金を返済するよう催告する旨の意思表示をし,同郵便は,同月15日,控訴人に到達した。 (7) よって,被控訴人会社は,控訴人に対し,本件返還合意又は脱退に基づいて,主位的に出資金・協力金合計400万円から平成7年12月から平成8年7月まで1か月2万5000円の共益費用( した。 (7) よって,被控訴人会社は,控訴人に対し,本件返還合意又は脱退に基づいて,主位的に出資金・協力金合計400万円から平成7年12月から平成8年7月まで1か月2万5000円の共益費用(賦課金)合計20万円を控除した380万円及びこれに対する本件返還合意の日及び脱退の日の後である平成9年7月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求め,予備的に上記380万円からさらに平成8年8月から平成9年6月まで1か月2万5000円の共益費用(賦課金)合計27万5000円を控除した352万5000円及びこれに対する上記平成9年7月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。(A事件)また,被控訴人甲は,控訴人に対し,上記消費貸借契約に基づいて,元金748万2000円及びこれに対する貸付日である平成8年5月15日から同年11月25日まで約定の年5分の割合による利息及び翌26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。(B事件) 2 請求原因に対する認否(1) 請求原因(1)の事実は認める。 (2) 請求原因(2)の事実のうち,被控訴人会社が控訴人に対し,平成8年4月4日に出資金300万円と協力金100万円を支払ったことは認めるが,その余は否認する。被控訴人会社が控訴人に加入したのは,県の承認を得て,控訴人の理事会が被控訴人会社の取得区画地の承認をした平成8年2月23日である。 (3) 請求原因(3)の事実は認める。 (4) 請求原因(4)の事実のうち,被控訴人会社が平成8年7月31日に控訴人に対して脱退届を提出したことは認めるが,法令上,協同組合からの脱退は事業年度の末日においてしかできないから,仮に被控訴人会社の脱退届が有効であっ 事実のうち,被控訴人会社が平成8年7月31日に控訴人に対して脱退届を提出したことは認めるが,法令上,協同組合からの脱退は事業年度の末日においてしかできないから,仮に被控訴人会社の脱退届が有効であったとしても,被控訴人会社の脱退の効力が生ずるのは,脱退届が提出された日の属する事業年度の末日である平成9年6月30日である。 (5) 請求原因(5)の事実は否認する。被控訴人会社が控訴人に支払った協力金100万円は,被控訴人会社が控訴人に加入するにあたっての一時賦課金の性質を有するものであるから,脱退に伴って返還されるものではない。また,出資金は,被控訴人の脱退によって返還すべきものであることは認めるが,その返還の時期は,脱退の効力の生じた後である。 (6) 請求原因(6)の事実は認める。 3 抗弁(1) 控訴人の事業目的は,低利の中小企業高度化資金を利用し,組合員が共同して工業団地を形成することにあるが,具体的には,次のような事業計画を有していた。 ① 福井県a郡b町c地区に土地を取得して工業団地を造成する。 取得予定土地の面積は約5万平方メートルであり,その取得・造成費用に約15億円余を見込んでいた。 ② 控訴人は,造成後の工業団地(以下「本件工業団地」という。)を組合員個々の事業計画に合わせて区分けし,組合員は,その事業計画にそった工場を建設する。 ③ 控訴人は,工業団地造成及び工場建設費用に必要な資金について,その90パーセントを中小企業事業団等から低利な中小企業高度化資金を借り受け,残り10パーセントは各組合員の拠出により調達する。ただし,工業団地造成費のうち組合員拠出分については,取り敢えず,控訴人が市中銀行から借り入れて,一時的にこれを立て替える。 ④ 控訴人は,上記中小企業事業団等か 各組合員の拠出により調達する。ただし,工業団地造成費のうち組合員拠出分については,取り敢えず,控訴人が市中銀行から借り入れて,一時的にこれを立て替える。 ④ 控訴人は,上記中小企業事業団等からの借入資金を,当初3年間は利息のみ支払い,その後17年間に分割して元利金を返済する。 ⑤ 各組合員は,各工場と敷地の取得予定金額に応じて,控訴人の返済元利金を負担する。 ⑥ 事業計画に要する資金の大部分を借入れにより賄うことから,工場と敷地は控訴人名義で取得するが,控訴人が20年後に借入元利金の返済を完了したときは,工場と敷地は各組合員の所有となる。 ⑦ 各組合員は,控訴人が上記借入元利金の返済を完了するまでの間,取得予定の工場と敷地を自らの費用で管理するとともに,当該工場と敷地に係る固定資産税等の公租公課を負担するほか,工業団地全体の共益費用も一定割合で負担する。 (2) 控訴人は,平成7年4月25日,工業団地取得・造成費用15億1329万円の資金を,計画どおり,90パーセントは中小企業事業団等の高度化資金の借入れにより,また,残り10パーセントを市中銀行からの借入れによって,それぞれ調達し,同年12月末までに団地造成工事を完了した。 (3) 被控訴人会社は,本件工業団地内の次の区画地(以下「本件取得予定地」という。)を取得して工場を建設する予定であったが,その取得価格は3億2304万8000円であった。 101番 7264.09平方メートル102番 1864.37平方メートル(後に2区画に分割)103番 1264.82平方メートル計 10393.28平方メートル(4) 控訴人と被控訴人会社は,被控訴人会社の加入にあたり,控訴人が借り入れた上記高度化資金やその他の経費 103番 1264.82平方メートル計 10393.28平方メートル(4) 控訴人と被控訴人会社は,被控訴人会社の加入にあたり,控訴人が借り入れた上記高度化資金やその他の経費に関する負担について,次のとおり合意(以下「本件負担合意」という。)をした。 ① 高度化資金借入分については,平成7年4月25日から平成10年1月20日までは年2.7パーセントの割合の利息のみを支払い,平成11年から平成27年までは毎年1月20日に元金の17分の1と利息とを併せて支払う。 ② 控訴人立替分(市中銀行借入分)については,平成7年4月25日以降年3.3パーセントの割合の利息を支払い,元金は随時支払う。 ③ 固定資産税については,平成8年度分から負担する。 ④ 共益費用については,平成6年7月分から負担する。 (5) 本件負担合意によれば,被控訴人会社が控訴人に加入後脱退までの間に負担すべきであった債務は,次のとおり合計2270万0539円である。 ① 本件取得予定地の取得価格3億2304万8000円のうち,高度化資金分(90パーセント相当分の2億9074万3200円)の借入金利(年2.7パーセント)分として,借入日である平成7年4月25日から脱退日である平成9年6月30日までの2年と67日分である1714万1103円② 本件取得予定地に関する控訴人立替分(取得価格の10パーセント相当分の3230万4800円)の借入金利(年3.3パーセント)分について,同じく2年と67日分である232万7804円③ 共益費用(賦課金)として,次のとおり合計242万6800円ア平成6年7月から平成7年4月まで1か月2万円ずつ計20万円イ平成7年5月から平成8年6月まで1か月2 益費用(賦課金)として,次のとおり合計242万6800円ア平成6年7月から平成7年4月まで1か月2万円ずつ計20万円イ平成7年5月から平成8年6月まで1か月2万5000円ずつ計35万円ウ平成8年7月から平成9年6月まで1か月15万6400円ずつ計187万6800円④ 固定資産税として,次のとおり合計80万4832円ア平成8年分 51万8607円イ平成9年分(半額) 28万6225円(6) 控訴人は,被控訴人会社に対し,平成12年1月31日の原審の本件口頭弁論期日において,被控訴人会社の請求のうち出資金300万円の返還請求債権に対し,上記(5)②の立替金利のうち30万2068円,③の共益費用(賦課金)242万6800円及び④の固定資産税80万4832円の合計353万3700円の請求権をもって,平成9年6月30日時点の対当額で相殺するとの意思表示をした。 (7) 被控訴人甲は,被控訴人会社の代表取締役として,悪意で上記被控訴人会社の控訴人に対する債務の不履行を行い,控訴人に本件負担合意に基づく債権相当額の損害を被らせたものであるから,商法266条の3に基づき,被控訴人会社と連帯して上記損害を賠償すべき義務がある。 (8) 控訴人は,被控訴人甲に対し,平成12年1月31日の原審の本件口頭弁論期日において,被控訴人甲の請求債権に対し,上記(5)②の立替金利のうち残金202万5736円及び①の高度化資金借入金利のうち545万6264円の合計748万2000円の請求権をもって,平成9年6月30日時点の対当額で相殺する旨の意思表示をした。 4 抗弁に対する認否と反論(1) 抗弁(1),(2)の各事実は知らない。 64円の合計748万2000円の請求権をもって,平成9年6月30日時点の対当額で相殺する旨の意思表示をした。 4 抗弁に対する認否と反論(1) 抗弁(1),(2)の各事実は知らない。 (2) 抗弁(3)の事実は認める。 (3) 抗弁(4)の事実は否認する。 被控訴人会社は,控訴人に加入する際,「加入にあたっての約定書」(以下「本件約定書」という。)を取り交わしたが,これは組合(控訴人)と組合員間の基本となるべき包括条項を列記するのみで,組合員の個々の事業に関する具体的な権利義務を定めたものではない。組合員の個々の事業計画が協議確定された際には,改めて所用の個別契約書が締結されることが予定されていた(本件約定書4条参照)のであって,加入時点で当然に組合員が取得予定土地につき,控訴人主張のような債務を負担するものではない。 (4) 抗弁(5)の主張は争う。 控訴人は,平成8年4月4日,被控訴人会社との間で基本的な組合加入契約は締結したものの,将来の事業計画に関する具体的な権利義務関係を生じさせないまま,同年7月31日被控訴人会社を脱退させたのであるから,被控訴人会社が控訴人に負担する債務は,上記加入時から脱退時まで月額2万5000円の共益費用(賦課金)の支払義務のみである。控訴人は,共益費用(賦課金)として,平成8年7月から平成9年6月まで1か月15万6400円を主張するが,控訴人は,控訴人の求めに応じて平成8年7月31日に脱退届出を提出した被控訴人会社に対して,翌8月以降は組合や理事会に関する通知をせず,その組合員としての権利を一切認めなかったのであるから,被控訴人会社に対して同月以降の共益費用の負担を求めるのは権利濫用である。また,平成8年7月から増額された共益費用のうち月額13万1400円の部分につい としての権利を一切認めなかったのであるから,被控訴人会社に対して同月以降の共益費用の負担を求めるのは権利濫用である。また,平成8年7月から増額された共益費用のうち月額13万1400円の部分については,その実体が被控訴人会社の取得予定土地に対する固定資産税負担分であるから,平成8年7月以降も本来の共益費用の額は従来どおりの月額2万5000円とすべきである。被控訴人会社に将来割当を予定した土地(本件取得予定土地)に係る固定資産税は,当該土地について具体的な契約が成立していないのであるから,その負担を求められる理由はない。 (5) 抗弁(7)の事実は否認し,主張は争う。 (C事件) 1 請求原因(1) A・B事件抗弁事実(1)ないし(8)に同じ。 (2) 被控訴人会社が控訴人に対して,本件負担合意に基づいて負担する債務のうち,前記相殺(A事件・B事件の抗弁(6),(8))後の残額は,1167万8318円である。 (3) 被控訴人甲は,控訴人に対し,商法266条の3に基づいて,本件負担合意により被控訴人会社が控訴人に負うべき債務と同額の損害賠償債務を負担するから,上記1167万8318円を支払うべき義務がある。 (4) よって,控訴人は,被控訴人らに対し,連帯して1167万8318円及びこれに対するC事件訴状送達の日の翌日である平成10年12月17日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。 2 請求原因に対する認否(1) 請求原因(1)に対する認否は,A事件・B事件の抗弁事実(1)ないし(8)についての認否に同じ。 (2) 請求原因(2),(3)の主張は争う。 理由 第1 A事件・B事件 1 請求原因について(1) 請求原因(1)の事実は,当事者間に 認否に同じ。 (2) 請求原因(2),(3)の主張は争う。 理由 第1 A事件・B事件 1 請求原因について(1) 請求原因(1)の事実は,当事者間に争いがない。 (2) 請求原因(2)の事実のうち,被控訴人会社が控訴人に対し,平成8年4月4日に出資金300万円と協力金100万円を支払ったことは,当事者間に争いがない。 被控訴人会社が控訴人に加入した時期について,その日が平成7年12月22日であることは,原審では当事者間に争いがなかったところ,控訴人は,当審において,その日は,県の承認を得て控訴人の理事会が被控訴人会社の取得区画地を承認した平成8年2月23日であると主張するにいたった。 しかしながら,控訴人が被控訴人会社に送付した平成7年12月25日付け書面(乙11号証)に,「弊組合に早速と御入会を賜りましたこと有り難く御礼を申し上げます。」と記載されていること,また,平成7年7月から平成9年6月まで控訴人の理事長であった原審証人丙が,被控訴人会社の加入時期は平成7年12月22日であると証言していることに照らせば,被控訴人会社が控訴人に加入した日は,平成7年12月22日と認めるのが相当である。 (3) 請求原因(3)の事実は,当事者間に争いがない。 (4) 請求原因(4)の事実のうち,被控訴人会社が平成8年7月31日控訴人に脱退届を提出したことは,当事者間に争いがない。 しかし,中小企業等協同組合法18条1項によれば,組合員は,90日前までに予告して「事業年度の終において脱退することができる」とされており,また,弁論の全趣旨によれば,被控訴人会社が脱退届を提出した日の属する控訴人の事業年度の終(末日)は,平成9年6月30日であると認められるから,被控訴人会社の上記脱 することができる」とされており,また,弁論の全趣旨によれば,被控訴人会社が脱退届を提出した日の属する控訴人の事業年度の終(末日)は,平成9年6月30日であると認められるから,被控訴人会社の上記脱退の効果は,平成9年6月30日に生じたものと認められる。 (5) そこで,請求原因(5)について判断する。 ア被控訴人会社は,本件返還合意又は脱退に基づき,出資金300万円のほか協力金100万円についても,実質的には出資金と同じ性質のものであるとして,その返還を求めているが,被控訴人会社が控訴人に提出した加入申込書(乙1号証)によれば,同書には「引受けようとする諸費」として,「出資金300万円」と「加入金100万円」とが記載され,弁論の全趣旨によれば,被控訴人会社の主張する協力金100万円は,上記「加入金」のことであると認められる。 しかし,この加入金は,上記加入申込書において,将来返還されるべき出資金とは明確に区別されて記載されていることからしても,出資金と同じ性質のものと認めることはできない。むしろ弁論の全趣旨によれば,加入金(協力金)は,控訴人に加入するために必要な一時賦課金の性質を持つものであって,将来返還することは予定されていなかったと認められる。このことからすると,控訴人の役員が協力金も返還すると約束したという原審証人乙の証言や同人の陳述書(甲6号証)における供述は,たやすく措信できるものではなく,他にこれを認めるに足る証拠はない。そうすると,被控訴人会社は,控訴人に対し,脱退しても協力金100万円の返還を求めることはできず,出資金300万円の返還を求めることができるに過ぎないというべきである。 イ被控訴人会社は,控訴人と被控訴人会社との間では,出資金を即時返還する旨の合意が成立したと主張し,原審証人乙の証言及び同人の陳述 300万円の返還を求めることができるに過ぎないというべきである。 イ被控訴人会社は,控訴人と被控訴人会社との間では,出資金を即時返還する旨の合意が成立したと主張し,原審証人乙の証言及び同人の陳述書(甲6号証)はこれに添うものである。 しかし,控訴人の役員が出資金を即時に返還する旨の発言をしたとしても,前記のとおり,被控訴人会社の脱退の効果が生じるのは,控訴人の事業年度の終(末日)である平成9年6月30日であり,出資金は,組合を脱退してから返還されるべきものであるから,被控訴人会社は,平成9年6月30日を経過しなければ,出資金の返還を控訴人に求めることはできないというべきである。 (6) 請求原因(6)の事実は,当事者間に争いがない。 (7) 以上認定の請求原因事実によれば,ア被控訴人会社は,控訴人に対し,出資金300万円の返還とこれに対する脱退の効力の生じた日の翌日である平成9年7月1から商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を(A事件),イ被控訴人甲は,控訴人に対し,貸金748万2000円の返還とこれに対する平成8年5月15日から返済期限である同年11月25日まで約定の年5分の割合による利息,翌日の26日から支払済みまでは民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を(B事件),各求めることができる。 2 抗弁について(1) 抗弁(1)及び(2)の事実は,証拠(乙7号証,原審証人丙の証言)及び弁論の全趣旨によって認めることができ,抗弁(3)の事実は,当事者間に争いがない。 (2) そこで,抗弁(4)及び(5)について判断する。 アその判断の前提となるべき事実関係として,次の事実が認められる。 (ア) 被控訴人会社が控訴人に加入するについて,被控訴人会社は,控訴人の理事長や事務局長な いて判断する。 アその判断の前提となるべき事実関係として,次の事実が認められる。 (ア) 被控訴人会社が控訴人に加入するについて,被控訴人会社は,控訴人の理事長や事務局長などから,抗弁(4)の①ないし④記載のような費用負担が必要であることの説明を受け,これを了承して控訴人に加入した。 (甲6号証,乙7号証,原審証人乙,同丙及び当審証人丁の各証言,弁論の全趣旨)(イ) しかし,被控訴人会社では,控訴人に加入した目的は,あくまで本件工業団地に工場を建設して操業することにあったことから,工場建築資金についても中小企業高度化資金の融資が認められば当然費用負担をする意思はあったものの,その建築資金の審査が未了である段階では,出資金と加入金(協力金)以外の諸費用の支払は,これを留保していた。 (甲6号証,原審証人乙の証言,弁論の全趣旨)(ウ) ところで,被控訴人会社の本件工業団地における事業計画は,機械設備を除いても投資総額が約9億2000万円にのぼるものであり,控訴人の他の組合員の投資予定額が概ね1億円前後であることと比較すると,その投資規模は突出したものであった。そして,中小企業高度化資金の融資については,控訴人の組合員全員が連帯保証することが義務付けられていたため,被控訴人会社の投資規模を知った他の組合員から,被控訴人会社の計画は過大投資であるとの不満が生じることとなった。 (甲6号証,原審証人乙及同丙の各証言,弁論の全趣旨)(エ) そこで,控訴人は,平成8年7月23日に緊急理事会を開き,被控訴人会社に対して,建築予算額の35パーセントの担保を提供するか,投資規模を縮小するかのいずれかの案を検討するように求めた。しかし,被控訴人会社としては,35パーセントの担保提供では負担が重 人会社に対して,建築予算額の35パーセントの担保を提供するか,投資規模を縮小するかのいずれかの案を検討するように求めた。しかし,被控訴人会社としては,35パーセントの担保提供では負担が重すぎて控訴人に加入する利益(メリット)がなく,他方,規模を縮小したのでは一貫工場は建設できないことから,いずれの案も受諾困難なものであった。そこで,被控訴人会社が難色を示したところ,控訴人の役員より,組合の多数意見に従えないのであれば脱退してもらうほかないとの話があったことから,被控訴人会社は,平成8年7月31日,控訴人に脱退届を提出した。 (甲5号証,6号証,乙7号証,原審証人乙及び同丙の各証言,弁論の全趣旨)イ抗弁(1)ないし(3)の事実及び上記ア認定の事実によれば,控訴人の組合員は,いずれも低利な中小企業高度化資金の融資を利用して本件工業団地に工場を建設することを目的として控訴人に加入したものであり,その加入目的が達成されれば,控訴人の主張するような本件負担合意に係る費用を各組合員が負担する義務のあることは明らかである。この点については,被控訴人会社も十分に認識していたと認められる。しかし,組合員が加入目的を達成することなく,控訴人を脱退したときに,当該組合員にどのような費用負担の義務が生じるのかについては,必ずしも明らかでない。 ウ控訴人は,その場合においても,本件負担合意に係る費用を負担する義務があると主張するが,証拠(乙7号証,原審証人丙及び当審証人丁の各証言)によっても,控訴人は,組合員が工場建設前に脱退するなどということは想定しておらず,せいぜいその場合には,脱退する組合員が代わりに控訴人に加入する企業を探し出して,その企業が脱退した組合員の地位を承継することを期待していたに過ぎないと認められる。上記証拠の中には, 想定しておらず,せいぜいその場合には,脱退する組合員が代わりに控訴人に加入する企業を探し出して,その企業が脱退した組合員の地位を承継することを期待していたに過ぎないと認められる。上記証拠の中には,脱退した組合員を承継する企業がない場合は,脱退した組合員が本件負担合意に係る費用を負担する旨の合意があったかのような供述や証言があるけれども,到底措信できるものではない。このことは,そのような合意を裏付ける文書などの確たる証拠が存在しないのみならず,控訴人の主張を前提にすれば,組合員が脱退した後,その組合員の地位を承継する形をとらない企業が新たに控訴人に加入し,その新組合員が脱退した組合員の取得する予定であった土地を取得することになった場合に,その費用負担と費用の精算関係がどのようになるかについて,控訴人が明確に主張できないでいることからも明らかである。控訴人は,本件訴訟において,当初,土地取得費及び造成費のうち1割の組合員拠出分(控訴人立替分)3230万4800円を請求しておりながら,当審においてこれを取り下げたが,このことは,控訴人が本件のような脱退があった場合の費用負担の在り方を全く想定しておらず,したがって,その場合の費用負担の根拠や算出基準が全く定められていなかったことを物語るものである。控訴人は,乙8号証の契約書を提出するけれども,その日付からも明らかなように,この契約書は本件紛争後に作成されたものに過ぎず,弁論の全趣旨に照らせば,この契約書に記載されたような合意が被控訴人会社が脱退するまでに,控訴人と組合員との間に成立していたとは認められない。 エ控訴人は,主張を裏付けるものとして,種々の証拠を提出し,控訴人関係者の証言を援用するけれども,これらの証拠を検討しても,控訴人の主張するような費用等(ただし,共益費用を除く。)を被 られない。 エ控訴人は,主張を裏付けるものとして,種々の証拠を提出し,控訴人関係者の証言を援用するけれども,これらの証拠を検討しても,控訴人の主張するような費用等(ただし,共益費用を除く。)を被控訴人会社が負担すべき根拠を見出すことはできない。 (ア) 乙2号証は,被控訴人が控訴人に加入する際に提出した本件約定書(加入にあたっての約定書)であり,その1条に「貴組合の次の条件を遵守致します。」として,その3に「持分及び加入金,諸費用等の一括現金払」,更にその5に「私が,取得(将来とも)使用する土地,建物,構築物,共有費用等について,組合が算定した金額の一括現金払」との条項が記載されているが,具体的金額や支払時期に関する記載はなく,組合員の脱退に関しては,3条が持分の払戻しについて控訴人が示すところに従う旨を規定しているに過ぎない。かかる記載内容からしても,同約定書は,基本的,包括的な約定書であって,この約定書から直ちに具体的金銭給付義務が生じるものと解することはできない。 (イ) 証拠(甲6号証,乙3,7,13,19ないし20,34,36号証,原審証人乙,同丙及び当審証人丁の各証言)並びに弁論の全趣旨によれば,控訴人は,被控訴人会社の加入後,同被控訴人に対し,控訴人の中小企業事業団や市中銀行からの借入金についてその金利の負担を求め,度々その支払を催告していたこと,他方,他の組合員は,控訴人からの求めに応じ,上記金利等を支払っていたことが認められる。しかし,弁論の全趣旨によれば,この組合員の金利負担行為は,組合員の事業計画が順調に進み,工場建設資金についても,高度化資金の融資が受けられることを当然の前提にして,それを見込んで行われていたに過ぎないと認められる。したがって,工場建設資金の融資の決定のない段階で,上記のような組合員による 設資金についても,高度化資金の融資が受けられることを当然の前提にして,それを見込んで行われていたに過ぎないと認められる。したがって,工場建設資金の融資の決定のない段階で,上記のような組合員による金利負担行為があるからといって,それが組合員の具体的かつ確定的に成立した債務の履行として行われていたものと解することはできない。けだし,控訴人に加入する組合員(企業)は,本件工業団地に工場を建設し,そこで操業することを目的としているのであって,なにも土地の取得を目的にしているのではないのであるから,たとえ控訴人が土地取得等のために高度化資金等の借入れを起こし,現実にその金利負担をしているとしても,組合員の最終目的である工場建設に対する融資の決定が未了の段階で,土地取得等の費用の金利負担を,各組合員の具体的かつ確定的な債務と解するのは相当でないからである。 もっとも,控訴人の協同組合としての存立は,各組合員の資金の拠出によって成り立っているのであるから,控訴人が既に借り入れた高度化資金等の金利等につき,脱退したとはいえ,組合員であった被控訴人会社が何らの経済的負担をしないというのは,控訴人の財政的基盤を脆弱にするものであり,妥当性を欠くといえなくもない。しかし,控訴人において,組合員が目的を達成することなく脱退した場合に,どの範囲で当該組合員に経済的負担を求めるかについて,明確な規約などを定めなかった以上,それはやむを得ないことである。 (ウ) 証拠(乙36号証,当審証人丁の証言)によれば,控訴人は,組合員であった有限会社フクミツ梱包と有限会社小原鉄筋工業が負担した高度化資金等の金利等を,同社らが脱退又は倒産しても,返還しなかったことが認められる。 しかし,当審証人丁の証言によれば,有限会社小原鉄筋工業は,控訴人を脱退したものの,坂東島石 工業が負担した高度化資金等の金利等を,同社らが脱退又は倒産しても,返還しなかったことが認められる。 しかし,当審証人丁の証言によれば,有限会社小原鉄筋工業は,控訴人を脱退したものの,坂東島石山株式会社が小原鉄筋工業を引き継いで控訴人に加入したというのであり,有限会社フクミツ梱包については破産宣告があり,破産管財人との間でどのような話合いがなされたか不明であるというのであるから,この両社の事例も何ら前記認定判断を左右するに足るものではない。 オ以上のとおりであるから,控訴人の主張する本件負担合意に係る費用については,基本的にその支払義務を被控訴人に認めることはできない。 しかし,被控訴人会社が控訴人に加入していた期間の共益費用については,被控訴人会社はその支払義務を免れることはできないと解すべきである。けだし,弁論の全趣旨によれば,共益費用は,組合を維持するための経費に充てる費用であって,組合員として控訴人に加入することによって,当然に発生するものと認められるからである。したがって,被控訴人会社は,控訴人に加入した平成7年12月から脱退の効力が生じた平成9年6月まで,控訴人が定める共益費用を支払う義務がある。 控訴人は,被控訴人会社が加入する以前の平成6年7月からの共益費用を負担すべきであると主張するが,そのような負担を認めるべき合理的根拠はなく,控訴人の主張する本件負担合意の認められないことについては,既に認定したとおりである。 他方,被控訴人会社は,控訴人は平成8年8月以降,組合や理事会に関する通知を被控訴人会社にせず,その組合員としての権利を一切認めなかったのであるから,被控訴人会社に対して同月以降の共益費用の負担を求めるのは権利濫用であると主張する。しかし,たとえそうであるとしても,被控 を被控訴人会社にせず,その組合員としての権利を一切認めなかったのであるから,被控訴人会社に対して同月以降の共益費用の負担を求めるのは権利濫用であると主張する。しかし,たとえそうであるとしても,被控訴人会社自身も平成8年7月31日に脱退の効力が生じたと主張し,弁論の全趣旨によれば,被控訴人会社は,それ以降組合員としての権利の行使をしようとしなかったことが窺われるのであるから,控訴人の請求を権利の濫用ということはできない。 そして,乙36号証によれば,上記共益費用の額は,平成7年12月から平成8年6月までは1か月2万5000円,平成8年7月から平成9年6月までは1か月15万6400円であったと認めることができる。被控訴人会社は,平成8年7月から増額された共益費用のうち月額13万1400円の部分は,その実体は被控訴人会社の取得予定土地に対する固定資産税負担分であると主張するが,そのように認めるに足りる証拠はない。 したがって,被控訴人会社は,控訴人に対し,加入時から脱退時までの共益費用として合計205万1800円の支払義務があったことになる。 (3) 抗弁(6)の事実は,当裁判所に顕著である。そうすると,控訴人の相殺の抗弁は,出資金の返還請求権300万円に対し,共益費用請求権205万1800円の限度で有効であるから,被控訴人会社の控訴人に対する出資金返還請求権の額は94万8200円となる。 (4) 抗弁(7)の主張が理由のないことは,これまでの認定判断から,明らかである。 3 よって,被控訴人会社の請求(A事件)は,出資金の残金94万8200円とこれに対する脱退の効力の生じた日の翌日である平成9年7月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。また,被控訴人甲の請求( 残金94万8200円とこれに対する脱退の効力の生じた日の翌日である平成9年7月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。また,被控訴人甲の請求(B事件・748万2000円とこれに対する平成8年5月15日から支払済み年5分の割合により金員の請求)はすべて理由がある。 第2 C事件 1 C事件において,控訴人が請求原因として主張する事実(中小企業高度化資金借入金利分について被控訴人会社に負担すべき義務があるとの主張事実)が認めることができないことは,A事件・B事件の抗弁(4),(5)の認定判断から明らかである。 2 したがって,その余を判断するまでもなく,控訴人の請求(C事件)は理由がない。 第3 結論よって,A・B・C各事件に対する原判決の判断は相当であり,本件控訴及び附帯控訴は理由がないから,これらをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所金沢支部第1部裁判長裁判官川崎和夫裁判官源孝治裁判官榊原信次
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