平成30(行ウ)29 行政文書の不開示決定取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和元年11月1日 札幌地方裁判所
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判決文本文6,724 文字)

- 1 -令和元年11月1日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成30年(行ウ)第29号行政文書の不開示決定取消等請求事件口頭弁論終結日令和元年8月23日判決 主文 1 本件訴えのうち札幌矯正管区長が別紙文書目録記載の文書を開示する旨の決定をすることの義務付けを求める部分を却下する。 2 本件訴えのその余の部分に係る原告の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 札幌矯正管区長が原告に対し平成29年6月16日付けでした別紙文書目録記載の文書に係る不開示決定を取り消す。 2 札幌矯正管区長は,原告に対し,別紙文書目録記載の文書を開示する旨の決定をせよ。 第2 事案の概要本件は,刑務所に収容されている原告が,「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」(以下「法」という。)に基づき,札幌矯正管区長に対して当該刑務所における原告の医療措置に関する保有個人情報の開示請求をしたところ,札幌矯正管区長からその全部を開示しない旨の決定(以下「本件不開示決定」と いう。)を受けたことから,①本件不開示決定の取消しを求めるとともに(請求の趣旨第1項),②札幌矯正管区長に対し上記保有個人情報を開示する旨の決定をすることの義務付けを求める(同第2項)事案である。 1 法の定め法12条1項は,何人も,法の定めるところにより,行政機関の長に対し, 当該行政機関の保有する自己を本人とする保有個人情報(行政機関の職員が職- 2 -務上作成し,又は取得した個人情報であって,当該行政機関の職員が組織的に利用するものとして,当該行政機関が保有しているものをいう。法2条5項本文)の開示を請求することができる旨定める。 2 -務上作成し,又は取得した個人情報であって,当該行政機関の職員が組織的に利用するものとして,当該行政機関が保有しているものをいう。法2条5項本文)の開示を請求することができる旨定める。 もっとも,上記規定は,「刑事事件若しくは少年の保護事件に係る裁判,検察官,検察事務官若しくは司法警察職員が行う処分,刑若しくは保護処分の執 行,更生緊急保護又は恩赦に係る保有個人情報(当該裁判,処分若しくは執行を受けた者,更生緊急保護の申出をした者又は恩赦の上申があった者に係るものに限る。)」については適用されない(法45条1項)。 2 前提事実(後掲証拠から容易に認められる事実及び当裁判所に顕著な事実)(1) 原告 原告は,平成25年2月7日に懲役8年の判決を受け,同年5月30日から網走刑務所において刑の執行を受けている者である(乙1)。 (2) 本件不開示決定ア原告は,平成29年5月22日,札幌矯正管区長に対し,別紙文書目録記載の保有個人情報(原告が,在監中の網走刑務所において,平成27年 10月19日午後5時頃に,同所職員の行為によって負った負傷に関する診断書等の書類及び写真の一切。以下「本件保有個人情報」という。)の開示を請求した(乙2)。 これに対し,札幌矯正管区長は,同年6月16日,開示請求の対象が刑事事件に係る裁判又は刑の執行に係る保有個人情報(処分又は執行を受け た者に係るもの)に該当し,法45条1項により開示請求の規定の適用から除外されているとして,法18条2項に基づき,本件保有個人情報の全部を開示しないとの決定(本件不開示決定)をした(甲1)。 イ原告は,平成29年9月19日,法務大臣に対し,本件不開示決定を不服として審査請求をしたところ(乙3),法務大臣は,平成30年3月 の全部を開示しないとの決定(本件不開示決定)をした(甲1)。 イ原告は,平成29年9月19日,法務大臣に対し,本件不開示決定を不服として審査請求をしたところ(乙3),法務大臣は,平成30年3月1 4日,原告に対し,当該審査請求を棄却する旨の裁決をした(甲2)。 - 3 -ウ原告は,平成30年9月8日,本件訴訟を提起した(当裁判所に顕著な事実)。 3 争点(1) 本件不開示決定の適法性(2) 義務付けの訴えの適法性(本案前の争点) 第3 争点に対する当事者の主張 1 争点(1)(本件不開示決定の適法性)について(被告の主張)(1) 本件保有個人情報は,法45条1項により開示請求の規定が適用されない「刑…の執行」に係る保有個人情報に該当する。 したがって,本件保有個人情報を開示しないものとした本件不開示決定の判断には,何らの誤りはない。 (2) この点につき原告は,①医療上の措置は法45条1項の「刑…の執行」には当たらない,②同項の趣旨からすると,個人情報の対象たる本人自身から開示請求があった場合にまで,開示請求の適用除外とすべきではない,など と主張する。 しかし,法45条1項により開示請求等の対象から除外される保有個人情報とは,それを開示請求等の対象とすることによって,当該個人が,被疑者,被告人,受刑者等として刑事収容施設に現に収容されていること,あるいはかつて収容されていたことが明らかになる情報を広く含む。したがって,原 告に対して講じられた医療上の措置に係る本件保有個人情報も,開示請求等の対象から除外される保有個人情報に該当する。 また,法45条1項は,刑の執行等に係る保有個人情報について,その刑の執行を受けた者等による開示請求であるか否かを問わ 保有個人情報も,開示請求等の対象から除外される保有個人情報に該当する。 また,法45条1項は,刑の執行等に係る保有個人情報について,その刑の執行を受けた者等による開示請求であるか否かを問わず,開示請求等の対象から除外される旨規定している。したがって,本人自身からの開示請求は 適用除外とならない旨の原告の主張は,法律の規定を離れた独自の見解とい- 4 -わざるを得ない。 (3) また,原告は,「医療情報に関する自己情報開示請求権」なる権利が憲法13条により保障されているとした上,法45条1項の合憲限定解釈ないし適用違憲を主張する。 しかし,そもそも「医療情報に関する自己情報開示請求権」なる権利が憲 法13条によって保障されると解すべき理由はなく,原告の上記主張はその前提を欠く。 (4) なお,原告は,本件保有個人情報のうち少なくとも写真については開示請求が認められるべきであるとも主張するが,当該写真も刑事収容施設に収容されている原告に対して講じられた医療上の措置に係る保有個人情報であっ て,本件保有個人情報のその余の情報と別異に解すべき理由はない。 (原告の主張)(1) 法45条1項にいう「刑…の執行」とは,刑法第1編第2章に規定された死刑,懲役,禁錮,罰金,拘留,科料,没収,追徴及び労役場留置を実施することをいうものと解するべきである。したがって,医療上の措置は,被収 容者に懲役刑等を実施するという「刑…の執行」には当たらず,本件保有個人情報は法45条1項の適用除外情報に該当しない。 また,法45条1項の趣旨は,個人情報の対象たる本人のプライバシー保護を図ることにあるから,当該本人自身から開示請求があった場合にまで,同項により開示請求の適用除外とすべきではない。 また,法45条1項の趣旨は,個人情報の対象たる本人のプライバシー保護を図ることにあるから,当該本人自身から開示請求があった場合にまで,同項により開示請求の適用除外とすべきではない。 本件においてこれをみるに,本件保有個人情報は医療上の措置に係る情報であり,また,その開示を求めているのは原告自身である。 したがって,本件保有個人情報は,法45条1項に該当せず,法12条1項による開示請求が認められるべきである。 (2) そもそも,医療情報に関する自己情報開示請求権は,自己情報開示請求権 の中でも特に重要な権利であり,憲法13条により保障されているというべ- 5 -きであって,このことからすれば,法45条1項の「刑…の執行」に係る保有個人情報には,少なくとも医療情報は該当しないとの合憲限定解釈を行うべきである。 また,上記のとおり,医療情報に関する自己情報開示請求権が憲法13条により保障されている以上,本件保有個人情報に法45条1項を適用してこ れを開示しないものとした本件不開示決定は,原告の自己情報開示請求権を侵害するものとして,憲法13条,21条1項に反し,適用違憲に当たるというべきである。 したがって,本件不開示決定は,これらの点からも違憲・違法である。 (3) なお,本件保有個人情報のうち写真については,原告が刑事収容施設に収 容されていることを前提として作成されるものではなく,刑の執行等に係る保有個人情報に該当しない。 したがって,本件保有個人情報のうち,少なくとも写真については,開示請求が認められるべきである。 2 争点(2)(義務付けの訴えの適法性)について (被告の主張)上記1において主張したとおり,本件不開示決定は適法であるから,「当該処分…が取り消される 求が認められるべきである。 2 争点(2)(義務付けの訴えの適法性)について (被告の主張)上記1において主張したとおり,本件不開示決定は適法であるから,「当該処分…が取り消されるべきもの」(行政事件訴訟法37条の3第1項2号)であるとはいえない。 したがって,本件保有個人情報に係る開示決定の義務付けの訴えは,訴訟要 件を欠き,不適法である。 (原告の主張)争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件不開示決定の適法性)について (1) 法45条1項は,刑の執行に係る保有個人情報については開示請求の規定- 6 -が適用されない旨定めている。 本件についてこれをみるに,原告が開示を求めた本件保有個人情報は,「原告が,在監中の網走刑務所において,平成27年10月19日午後5時頃に,同所職員の行為によって負った負傷に関する診断書等の書類及び写真の一切」というものであり,明らかに,刑の執行に係る保有個人情報に該当 するものといわざるを得ない。 したがって,本件保有個人情報の開示請求は,法45条1項により,認められないものというべきである。 (2) この点につき原告は,本件保有個人情報は医療措置に係る情報であるところ,医療上の措置は法45条1項にいう「刑…の執行」に当たらないと解す べきであり,したがって本件保有個人情報は法45条1項の適用除外情報に該当しない旨主張する。 しかし,刑事収容施設における受刑者への処遇は,刑の執行としての刑事施設での拘置に必然的に内包される作用であって,法45条1項にいう「刑…の執行」に当たるものというべきところ,このことは,上記処遇の内容が 医療上の措置に係るものである場合であっても,何ら他の場合と異なるところはない。 そも って,法45条1項にいう「刑…の執行」に当たるものというべきところ,このことは,上記処遇の内容が 医療上の措置に係るものである場合であっても,何ら他の場合と異なるところはない。 そもそも,法45条1項の趣旨は,刑の執行等に係る保有個人情報には本人の前科,前歴,逮捕歴,勾留歴等を示す情報が含まれており,これらの保有個人情報を開示請求の対象とすると,本人の前科等が明らかとなる危険性 があって,本人の社会復帰や更生保護を図る上で不利益となるおそれがあるため,このような弊害を防止しようとするところにある。刑事収容施設における医療上の措置に係る情報についても,仮にこれを開示請求の対象とすると,本人の刑事収容施設への収容歴が明らかとなり,その社会復帰や更生保護上の不利益となるおそれがあることに変わりはない。 したがって,明文上の規定もないまま,法45条1項の「刑…の執行」か- 7 -ら医療上の措置のみを除外することは相当とはいい難い。原告の上記主張は,採用することができない。 (3) また,原告は,法45条1項の趣旨は本人のプライバシー保護を図ることにあるから,当該本人自身から開示請求があった場合にまで,同項により開示請求の適用除外とすべきではない旨主張する。 しかし,そもそも法45条1項は,その文言上,開示請求をした者が誰であるのかによって適用除外の有無を区別しておらず,刑の執行等に係る保有個人情報につき一律に適用除外としている。実質的にみても,仮に本人自身から開示請求があった場合にはこれを認めるものとすると,本人に開示された個人情報が他の者の目に触れるおそれや,第三者が情報を得るために本人 をして開示請求をさせるおそれが出てくるのであって,本人自身が開示請求をした場合には法45条1項の文 ると,本人に開示された個人情報が他の者の目に触れるおそれや,第三者が情報を得るために本人 をして開示請求をさせるおそれが出てくるのであって,本人自身が開示請求をした場合には法45条1項の文言に反してまで開示請求を認めるというのは,およそ相当であるとはいい難い。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 (4) さらに,原告は,「医療情報に関する自己情報開示請求権」が憲法13条 により保障されているとした上,①法45条1項の「刑…の執行」に係る保有個人情報には,少なくとも医療情報は該当しないとの合憲限定解釈を行うべきである,②本件保有個人情報に法45条1項を適用してこれを開示しないものとした本件不開示決定は,憲法13条,21条1項に反し,適用違憲に当たる,などと主張する。 しかし,憲法13条の文言から,原告のいう「医療情報に関する自己情報開示請求権」なる権利が具体的権利として憲法上保障されているなどというのはにわかに考え難いのであって,原告の上記主張は,その前提を欠くものといわざるを得ない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告の上記主張は 採用することができない。 - 8 -(5) なお,原告は,本件保有個人情報のうち写真については,原告が刑事収容施設に収容されていることを前提として作成されるものではないから,開示請求が認められるべきであるとも主張する。 しかし,本件保有個人情報のうち写真についても,他の情報と同じく,刑の執行に係る保有個人情報であることに変わりはないのであって,これまで 述べてきたところに照らせば,開示請求が認められるということにはならない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 (6) 以上によれば, わりはないのであって,これまで 述べてきたところに照らせば,開示請求が認められるということにはならない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 (6) 以上によれば,本件保有個人情報を開示しないものとした本件不開示決定は,適法というべきである。 2 争点(2)(義務付けの訴えの適法性)についていわゆる申請型の義務付けの訴え(行政事件訴訟法3条6項2号)は,法令に基づく申請を却下し又は棄却する旨の処分がされた場合においては,当該処分が取り消されるべきものであり,又は無効若しくは不存在でなければ提起することができないところ(同法37条の3第1項2号),前記のとおり,本件 不開示決定は適法であり,その取消請求は理由がない。 したがって,本件訴えのうち,札幌矯正管区長に対して本件保有個人情報を開示する旨の決定をすることの義務付けを求める部分は,不適法な訴えであり,却下を免れない。 第5 結論 よって,本件訴えのうち,札幌矯正管区長に対して本件保有個人情報を開示する旨の決定をすることの義務付けを求める部分は不適法であるからこれを却下し,その余の訴えに係る請求はいずれも理由がないからこれらをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第5部 - 9 -裁判長裁判官 孝 裁判官萩原孝基 裁判官佐藤克郎 - 10 -(別紙)文書目録 原告が,在監中の網走刑務所において,平成27年10月19日午後5時頃に,同所職員の行為によって負った負傷に関する診断書等の書類及び写真の一切以上 27年10月19日午後5時頃に,同所職員の行為によって負った負傷に関する診断書等の書類及び写真の一切以上

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