【DRY-RUN】主 文 原判決、及び第一審判決中被告人Aに関する部分を破棄する。 被告人は無罪。 理 由 弁護人上辻敏夫の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反の主張
主文 原判決、及び第一審判決中被告人Aに関する部分を破棄する。 被告人は無罪。 理由 弁護人上辻敏夫の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。 しかしながら、所論にかんがみ、職権で調査すると、原判決、及び第一審判決中被告人Aに関する部分は同法四一一条一号により破棄を免れないものと認められる。 一本件公訴事実について、原判決に示された事実関係とこれに対する法律判断は、おおむね次のとおりである。 (一)1 大和郡山市は、昭和三八年に低開発地域工業開発促進法に基づき全市域が低開発地域に指定されたが、そのころから用地を買収してc団地と称する工場敷地を造成し、ここに工場を誘致する事業を行つていた。その主管課は建設部開発課であつた。同課では市長の特命によりc団地以外の土地を市が買収し企業に転売して工場誘致をした例が二、三あるだけで、その他はいずれもc団地への工場誘致の事務を行つていた。 2 被告人は昭和三〇年四月から引き続き大和郡山市市議会議員であり、昭和三九年四月から同市議会総合開発特別委員会委員、昭和四〇年五月から同委員会委員長であつた者、Bは昭和三九年四月一六日から同市建設部開発課課長補佐として企業誘致に関することなど同課所管の事務全般について課長を補佐し、昭和四〇年九月一日から同課課長として同課の事務全般を掌理していた者、Cは昭和三七年一〇月一日から同市企画課企画係長として工場誘致などの企画にあたり、その後開発課所管の工場誘致に関する事務を応援担当し、昭和四〇年九月一日から開発課誘致係長として工場誘致に関することなど誘致係所管の事務を担当し、昭和四一年四月一- 1 -日から同課課長補佐兼誘致係長として前記課長補佐及び誘致係長の職務を 援担当し、昭和四〇年九月一日から開発課誘致係長として工場誘致に関することなど誘致係所管の事務を担当し、昭和四一年四月一- 1 -日から同課課長補佐兼誘致係長として前記課長補佐及び誘致係長の職務を行つていた者、Dは昭和三九年一月一六日から奈良県総合開発課企画係長として奈良県内における企業誘致に関する事務を担当し、同年四月一日から大和郡山市建設部開発課所管の同市c団地への工場誘致に関する事務の連絡、指導、応援事務を行つていた者である。 3 株式会社E製作所(以下、Eという。)は工場用地として大和郡山市a町字bに一二四二坪の土地(以下、本件土地という。)を所有していたが、昭和四〇年三月ごろには経営状態が悪化したため、本件土地を売却して金策しようとし、国会議員から紹介してもらつた被告人に対しその売却あつせん方を依頼した。そこで、被告人はCに対し本件土地の買手を探してくれるよう依頼し、Cは知合いの不動産取引業者Fに本件土地の買受けを依頼した。Fは更に知合いの金融業兼宅地建物業をしているGに協力を求めた。その結果、F、Gは、本件土地の買受け、売却はすべて被告人及びCに任せ、転売利益を得るという考えで、買受け代金を出捐することになつた。同年四月二七日市役所市議会議員応接室においてEからGに対し本件土地が一〇〇〇万円を若干下回る価格で売却されたが、すでに被告人とFは右会社の窮状を救うため本件土地の売買代金の内金として各二〇〇万円を支払つており、同日Gはその残金を支払つた。したがつて、本件土地は、実質的には被告人、F、Gの三名による共同買受けであつたが、最も多額の出捐をしたGがその所有権取得の登記名義人となり、その登記を経た。 4 その後、被告人はGから営業資金が要るので本件土地を担保に借金して欲しいと頼まれ、昭和四〇年四月三〇日H協同組合から市 も多額の出捐をしたGがその所有権取得の登記名義人となり、その登記を経た。 4 その後、被告人はGから営業資金が要るので本件土地を担保に借金して欲しいと頼まれ、昭和四〇年四月三〇日H協同組合から市が総合開発事業のため融資を受ける形式をとつて一〇〇〇万円を借り受け、これを被告人、G、Fの三名で本件土地買受け代金出捐額に応じて分配したため、本件土地買受け代金はH協同組合からの借受金債務として残ることになつた。右金員借受けの手続にはBが頼まれて協- 2 -力した。 5 被告人は、H協同組合から前記借受金の返済を迫られ、本件土地の売却を市の工場誘致の事務を担当しているC、Bに依頼していたが、同人らにおいてもその売却先が仲々見つからずに月日を経過した。 6 大阪府門真市のI株式会社(以下、Iという。)は、c団地内に工場用地を求めようとし、同社代表取締役Jが奈良県総合開発課を訪ねて、Dにその旨を申し出たところ、同人はこれを大和郡山市のC、Bに連絡し、同人らにJを紹介した。 D、C、BらはJらIの者をc団地に案内したが、同団地内には適当な土地がなかつたので、同団地から一キロメートル余り離れたところにある本件土地を見せたところ、右会社側はこれを買い取ることを希望した。そこで、Cは被告人及びFにその旨の報告をし、相談の結果約一五〇〇万円(これに必要経費が加算される。)で本件土地をIに売却することになつた。そして、昭和四一年一一月二四日市役所二階応接室においてIから五三〇万円の小切手が支払われた(なお、残金一〇〇〇万円は、後日右会社が被告人名義で本件土地を担保にK協同組合から借り受けて前記被告人がH協同組合から借り受けていた金員の返済に充てることとされた。)。同日、右小切手は現金化され、そのうちから前記H協同組合からの借受金の利息、本件土地の不動産取 にK協同組合から借り受けて前記被告人がH協同組合から借り受けていた金員の返済に充てることとされた。)。同日、右小切手は現金化され、そのうちから前記H協同組合からの借受金の利息、本件土地の不動産取得税など本件土地を転売するまでに要した費用が差し引かれ、三〇五万円が本件土地の転売による利益として残つたところ、Gが一五〇万円、Fが五〇万円、被告人が三〇万円をそれぞれ取得し、本件土地の転売に尽力した謝礼として、被告人から、Cに三〇万円、Bに三〇万円、Dに一五万円が各贈与された。 7 なお、Iでは、D、C、Bによる本件土地売買のあつせんは同人らがその職務としてくれたものと考えていた。 (二) 以上の事実を前提に、原判決は、C、B、Dに各贈与された金員がそれぞれの職務に関する賄賂であるかどうかについて判断し、本件土地につきEからG- 3 -(実質的には同人、被告人、Fの三名。以下、本件土地売買の当事者として同様の趣旨でGとだけいう。)に、GからIに順次なされた売買は私人間の行為であり、C、B、Dがその売買につき尽力したことが同人らの工場誘致に関する職務の執行にならないことは勿論であるが、刑法一九七条にいう「職務ニ関シ」とは公務員の職務執行行為だけではなく、これと密接な関係のある行為に関する場合をも含むと解すべきであるところ、本件においては、C、B、Dは個人的関係に基づいてIに対し本件土地の売買をあつせんしたのではなく、同社が奈良県及び大和郡山市の各工場誘致などに関する事務の窓口を訪れて工場用地を買い入れたい旨申し込んだのを受けて、右事務を担当していた同人らにおいて同市が開発して工場誘致を図つていたc団地に案内し、同団地内に希望にそう土地がなかつたことから、かねてGから売却処分方を依頼されていた本件土地に案内し、これを買い入れるようあつせんし 同人らにおいて同市が開発して工場誘致を図つていたc団地に案内し、同団地内に希望にそう土地がなかつたことから、かねてGから売却処分方を依頼されていた本件土地に案内し、これを買い入れるようあつせんしたものであつて、そのあつせん行為はC、B、Dの各工場誘致に関する職務と密接な関係のある行為に該当すると解するのが相当であるから、C、B、DがGとIとの間の本件土地の売買をあつせんした行為に対する謝礼は賄賂であり、被告人に贈賄罪の成立を認めた第一審判決には事実誤認はないとしているのである。 二、そこで原判決の右判断の当否について検討する。 刑法一九七条にいう「職務ニ関シ」とは、公務員の職務執行行為だけでなく、これと密接な関係のある行為に関する場合をも含むと解すべきであるが、ここに密接な関係のある行為とは、公務員の職務執行行為と何らかの関係があれば足りるというものではなく、公務員の職務に密接な関係を有するいわば準職務行為又は事実上所管する職務行為であることを要するのである。これを本件についてみるに、C、B、Dが、Iが奈良県及び大和郡山市の各工場誘致などに関する窓口を訪れて工場用地を買い入れたい旨申し込んだのを受けて、右事務を担当していた同人らにおいて同市が開発して工場誘致を図つていたc団地に案内した行為が同人らの職務執行- 4 -行為にあたることはいうまでもないが、同団地内にIの希望にそう土地がなかつたことから、かねてGから売却処分方を依頼されていた本件土地に案内しこれを買い入れるようあつせんした行為は、同人らの職務と密接な関係を有するいわば準職務行為又は事実上所管する職務行為であるということはできない。したがつて、C、B、DがGとIとの間の本件土地の売買をあつせんした行為に対する謝礼は賄賂ではないのである。してみると、本件につきC、B、DがGと は事実上所管する職務行為であるということはできない。したがつて、C、B、DがGとIとの間の本件土地の売買をあつせんした行為に対する謝礼は賄賂ではないのである。してみると、本件につきC、B、DがGとIとの間の本件土地の売買をあつせんした行為に対する謝礼は賄賂であるとして、被告人に対し贈賄罪の成立を認めた原判決、及び第一審判決中被告人Aに関する部分は、法律の解釈を誤り、被告事件が罪とならないのに、これを有罪とした違法があるものというべきであり、右の違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであつて、刑訴法四一一条一号によりこれを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。 よつて、同法四一三条但書、四一四条、四〇四条、三三六条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 検察官栗本六郎公判出席昭和五一年二月一九日最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官団藤重光裁判官藤林益三裁判官下田武三裁判官岸盛一裁判官岸上康夫- 5 -
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