平成26(ワ)976 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年9月22日 札幌地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-88417.txt

判決文本文33,412 文字)

主文 1 被告aは,原告に対し,2000万円及びこれに対する平成6年5月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告bは,原告の被告aに対する判決が確定したときは,原告に対し,2000万円及びこれに対する平成6年5月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,これを6分し,その5を原告の負担とし,その余は被告らの負担とする。 5 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告aは,原告に対し,1億2281万5869円及びこれに対する平成6年5月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告bは,原告の被告a に対する判決が確定したときは,原告に対し,1億2281万5869円及びこれに対する平成6年5月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,被告aが運転する自動車(以下「被告車」という。)と原告が運転する自転車(以下「原告車」という。)が衝突した交通事故により,原告に高次脳機能障害等の後遺障害が残存したと主張して,①被告aに対し,自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)3条又は不法行為による損害賠償請求権に基づいて,損害合計1億2281万5869円及びこれに対する平成6年5月17日(事故の日)から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,②被告aと共済契約を締結している被告bに対し,共済契約上の被害者による直接請求権に基づいて,原告の被告aに対する判決が 確定したことを条件として,前同額及びこれに対する前同日から支払済みまでの前同割合の遅延損害金の支払を,それぞれ求めた 済契約上の被害者による直接請求権に基づいて,原告の被告aに対する判決が 確定したことを条件として,前同額及びこれに対する前同日から支払済みまでの前同割合の遅延損害金の支払を,それぞれ求めた事案である。 なお,原告は,症状固定日について,主位的に平成23年8月8日,予備的に平成9年5月17日と主張した上で,予備的主張に係る損害額については,1億4119万8974円のうち主位的主張に係る損害額(1億2281万5869円)の限度で一部請求をするものである。 1 前提事実(争いない事実及び証拠等(末尾に掲記したもの)によって容易に認定することができる事実) あったときは,13歳(中学2年生)であった(甲21,乙1)。 原告車と被告車との間で,以下の交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した(乙1,2,弁論の全趣旨)。 ア日時平成6年5月17日午前7時40分頃イ場所北海道河東郡c町字d線e番地先路上(以下「本件道路」という。)ウ被告車被告a運転の普通乗用自動車エ原告車原告運転の自転車オ事故態様被告車が,本件道路をf方面からg方面に向かい走行中,本件道路を右方から左方に向かい進行してきた原告車と衝突した。ただし,具体的な事故態様については争いがある。 原告は,本件事故により,頭部外傷,脳挫傷,外傷性くも膜下出血,肺挫傷,肝挫傷,肋骨骨折,両側血気胸,頚椎捻挫,全身打撲,外傷性ショック,外傷性横隔膜ヘルニア,出血性ショック,外傷性てんかん等の傷害を負った(甲2ないし甲4の2,乙5の1)。 被告aは,本件事故について,不法行為及び自賠法3条による損害賠償責任を負う。 原告は,以下のとおり入通院した(ただし,本件事故とl病院への通院と の間の相当因果関係の有無については争いがある。 ,本件事故について,不法行為及び自賠法3条による損害賠償責任を負う。 原告は,以下のとおり入通院した(ただし,本件事故とl病院への通院と の間の相当因果関係の有無については争いがある。)。 ア原告は,本件事故当日の平成6年5月17日,①h脳神経外科病院,②i病院,③j病院の順に搬送され,同病院に同日から同年6月28日まで43日間入院した(甲2ないし甲4の6,乙3の1ないし乙6の3)。 イ i病院平成6年6月6日から平成7年8月16日まで通院(実通院日数2日間)(乙7の1ないし乙8の2)ウ j病院平成6年7月11日から平成7年4月19日まで通院(実通院日数5日)(甲4の7,甲4の8,乙9の1ないし乙12の2)エ k形成外科平成9年5月13日から同年11月22日まで通院(実通院日数9日)(乙13の1ないし乙18の2)オ l病院平成23年6月6日から同年8月8日まで通院(実通院日数6日間)(甲6の1)被告aは,本件事故当時,被告bとの間で自動車共済契約を締結していた(以下「本件共済契約」という。)。本件共済契約に適用される自動車共済事業規約には,被共済者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額について被共済者と損害賠償請求権者との間で判決が確定したときは,被告bは,損害賠償請求権者に対し,損害賠償額(被共済者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額から,自賠責保険,共済等によって支払われる金額及び被共済者が損害賠償請求権者に対して既に支払った損害賠償金の額を控除した額)を支払う旨の規定がある(甲9,弁論の全趣旨)。 原告は,平成26年5月14日,本件訴えを提起した。原告は,訴え提起当初,被告らに対し,それぞれ1億4112万3225円の一部として2000万円及びこ う旨の規定がある(甲9,弁論の全趣旨)。 原告は,平成26年5月14日,本件訴えを提起した。原告は,訴え提起当初,被告らに対し,それぞれ1億4112万3225円の一部として2000万円及びこれに対する平成6年5月17日から支払済みまでの年5分の割合による遅延損害金の支払を請求していたが,第3回弁論準備手続期日(平成26年11月20日)で陳述した訴えの変更申立書(同年10月31日送 達)により,1億2309万8548円及びこれに対する平成6年5月17日から支払済みまでの年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求に拡張した。その後,原告は,第16回弁論準備手続期日(平成28年7月1日)で陳述した訴えの変更申立書(請求の減縮)により,前記第1のとおりの請求額に請求の減縮をした(顕著な事実)。 2 争点本件事故の態様及び過失相殺割合原告に残存した後遺障害の有無及び程度原告の損害額消滅時効の成否除斥期間の経過により原告の請求権の一部が消滅するか 本件事故の態様及び過失相殺割合)に関する当事者の主張(原告の主張)原告は,原告車を運転し,本件道路の北西側の歩道をg方面に向かって進行中,本件事故現場において進路を変更し,車道を横断して本件道路の南東側の自転車用道路に進入しようとしたところ,原告の左方から進行してきた被告車と衝突してはね飛ばされ,路上に転倒した。 被告aは,制限速度を遵守するとともに,前方左右を注視して進路の安全を確認し,減速等をして衝突を防止すべき自動車運転上の注意義務を負うにもかかわらず,これを怠り,制限速度(時速50キロメートル)を大幅に超過する時速約130キロメートルで進行した過失により,原告車を発見して制動措置をとったものの間に合わず,被告車を原告車に衝突させたもので わらず,これを怠り,制限速度(時速50キロメートル)を大幅に超過する時速約130キロメートルで進行した過失により,原告車を発見して制動措置をとったものの間に合わず,被告車を原告車に衝突させたものであるから,原告に生じた損害について不法行為又は自賠法3条による損害賠償責任を負う。 本件道路は見通しが良く,原告はジャージを着用するなどしていたから,被告aは,進路前方を進行する若年の学生である原告が成人と比して不規則な進路変更等の行動に出る可能性を十分に予見し得たにもかかわらず,減速等の措 置をとることもなく,制限速度を大幅に超過する速度で原告をはね飛ばし,原告を路上に転倒させたものであるから,被告aには本件事故について重過失がある。なお,原告には進路変更の合図をしなかった落ち度があるものの,原告は本件事故当時13歳で注意能力が低く,一般道を時速約130キロメートルもの速度で走行してきた被告車との位置関係を見誤ったのも無理はないことからすれば,本件事故に関して原告について過失相殺をすべき事情はない。 (被告らの主張)被告車が本件道路をf方面からg方面へ向かって走行していたところ,右方の歩道上を被告車と同一方向に向かって走行していた原告車が,被告車の対向車線を越えて本件道路を横断し,被告車の進路を妨害したため,被告車の右前部と原告車が衝突した。以上に加え,本件道路が幹線道路であることも考慮すれば,被告aの速度超過を著しい過失又は重過失と評価しても,本件事故に関して原告にも過失があり,原告に生じた損害については2割又は3割の過失相殺がされるべきである。 (原告の主張)合4級)が残存した。 高次脳機能障害について本件事故の態様,原告の症状の推移等からすれば,後記のとおり,原告は,本件事故により,自賠法施行令別表 るべきである。 (原告の主張)合4級)が残存した。 高次脳機能障害について本件事故の態様,原告の症状の推移等からすれば,後記のとおり,原告は,本件事故により,自賠法施行令別表第二第5級2号(神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労働に服することができないもの)に該当する高次脳機能障害を発症し,当該症状はl病院で高次脳機能障害の診断を受けた平成23年8月8日に症状固定となった。 ただし,m医師が,脳外傷後高次脳機能障害では,急性期後に症状が寛解し,症状の変動がなくなる脳外傷後約3年後が症状固定時として妥当である旨意 見していること,原告に現在残存する障害は,本件事故後約3年後の時点においても存在していたこと等からすれば,予備的に,平成9年5月17日を症状固定日として主張する。 ア脳外傷直後の意識障害が6時間以上継続する場合,永続的な高次脳機能障害が残ることが多いとされているところ,原告は,平成6年5月17日午前7時40分頃に受傷してから,重篤な意識障害が同日午後5時まで約9時間継続し,また,少なくとも同月30日まで意識障害が継続していた。 イ j病院で撮影されたCT画像及びMRI画像によれば,原告には,受傷当日に外傷性の異常所見がみられ,受傷から40日後も異常部位が一部に残存していた。原告の脳の中心構造に多数の異常所見が認められ,左頭頂部に外傷を負ったにもかかわらず,MRI画像(T2強調)で脳の中心構造や右前頭葉硬膜下腔に高信号域がみられることは,左頭頂部への衝撃が対側の前頭葉へと伝播し,脳の深部に衝撃が加わったことを裏付ける。 びまん性軸索損傷の場合,脳室内出血やくも膜下出血を伴いやすいとされるところ,原告には,脳梁及び中脳に出血所見がみられる。 ウ原告は,受傷直後は発語 し,脳の深部に衝撃が加わったことを裏付ける。 びまん性軸索損傷の場合,脳室内出血やくも膜下出血を伴いやすいとされるところ,原告には,脳梁及び中脳に出血所見がみられる。 ウ原告は,受傷直後は発語ができず表情も乏しく,次第に症状が軽減して通学が可能な程度に回復するも,現在まで高次脳機能障害の症状が継続している。このような症状の経過は,脳外傷による高次脳機能障害において想定される病態と一致し,本件事故により高次脳機能障害が発症したことと整合する。また,原告には既往症はなく,本件事故以外に高次脳機能障害を発症し得る原因はない。 エ原告は,平成6年7月の復学後成績が低下し,部活動への意欲が失われるなど社会的行動障害が生じた。また,l病院において,物忘れ,注意力及び集中力が欠如等しており,知識や語彙の獲得が不十分で,言語性記銘・学習能力や状況判断力が低く,即時・長期記憶障害があり,遂行機能障害があるとされ,原告の妻nの回答結果からは社会的行動障害も疑われると して,軽度の高次脳障害が認められると診断された。 原告は,就業した平成12年4月以後,記憶力の不足等により,調理関係の単純作業でも転職を繰り返さざるを得なかった。原告は,単純な繰り返し作業などに限定すれば一般就労は可能だが,新しい事項を学習できない,環境が変わると作業を継続できないなどの問題があり,一般人と比較して作業能力が著しく制限されており,就労の維持には職場の理解と援助を欠かすことができない。したがって,原告の後遺障害は,自賠法施行令別表第二第5級2号に該当する。 線状瘢痕について原告は,本件事故後,k形成外科で形成外科的治療を受けたものの,左背部から左胸,腹部にかけての裂創痕及び手術痕による線状瘢痕が残存した。 当該線状瘢痕は,露出面以外の面積の2分の1程度を 痕について原告は,本件事故後,k形成外科で形成外科的治療を受けたものの,左背部から左胸,腹部にかけての裂創痕及び手術痕による線状瘢痕が残存した。 当該線状瘢痕は,露出面以外の面積の2分の1程度を超える部分に線状瘢痕を残すものとして,自賠法施行令別表第二第12級に該当する。 (被告らの主張)高次脳機能障害について以下のとおり,原告が高次脳機能障害を発症したことは否認ないし争う。 ア原告につき,本件事故直後の意識障害が6時間以上継続したとの医学的証拠はなく,仮に意識障害が長時間持続したとしても,高次脳機能障害が残存するとは限らない。 イ j病院のCT画像及びMRI画像でも,外傷後ほぼ3か月以内に完成する脳室・脳溝拡大といった,びまん性脳室拡大・脳萎縮の所見は認められず,脳の器質的損傷を示す画像所見は認められない。また,高次脳機能障害の原因である障害された大脳皮質の部位を特定することができず,巣症状も明らかではない。よって,高次脳機能障害の発症ないし残存の原因と神経病理の医学的根拠がない。 m医師作成の後遺障害診断書(甲6の1)及び意見書(甲20)は,本 件事故から長期間が経過した後に作成されたもので,原告がj病院への通院を止めた以後の医証が存在しないこと,当該意見書等が依拠するところは神経心理学的検査のみで,画像所見を踏まえた診断が記載されていないこと等からすれば,同医師の診断結果等には,医学資料としての信用性はない。 ウ原告が平成7年4月19日まで入通院したj病院では,各種神経心理学検査が行われたものの,びまん性軸索損傷や高次脳機能障害の診断はされなかった。その後,原告は,平成23年6月6日にl病院を受診するまでの間,進学,就職,1人暮らし,nとの同居及び婚姻を経験し,現在は勤務調理師として稼働するなど特 索損傷や高次脳機能障害の診断はされなかった。その後,原告は,平成23年6月6日にl病院を受診するまでの間,進学,就職,1人暮らし,nとの同居及び婚姻を経験し,現在は勤務調理師として稼働するなど特段の支障なく社会生活を送ってきており,高次脳機能障害を原因として就労に支障ないし制限が生じたとは認められない。しかも,原告の症状は,徐々に増悪又は遅発的に発症しており,少なくともl病院を受診した平成23年6月6日頃以前は高次脳機能障害による症状はなかったと推認される。当該経過は,事故外傷による一般的な高次脳機能障害の症状の経過と矛盾することからも,原告については,本件事故とは無関係に内因性の疾病が発症した可能性が高い。 エ原告の高次脳機能障害の症状が平成9年5月17日に固定したとの原告の予備的主張は否認し,争う。 線状瘢痕について原告に裂創痕及び手術痕による線状瘢痕が残存したこと及びk形成外科における治療は認め,その余は争う。 (原告の主張)主位的主張(平成23年8月8日を症状固定日とするもの)ア治療費等 500万8198円既払分治療費 498万6106円 立替分治療費 2万2092円(l病院の文書料1万2600円,同病院の検査記録及び画像プリント代9492円)イ入院雑費 6万8800円1日当たり1600円とし,入院日数43日相当分である上記額が損害となる。 ウ通院交通費 4万2515円平成6年5月17日から平成9年12月9日までの分 3万5000円1日当たり1000円とし,通院日数35日相当分である上記額が損害となる。 l病院分 7515円自宅からl病院までの距離41.754キロメートル×通院日数6日×2×15円=7515円エ休業損害 334万9742円本件 5日相当分である上記額が損害となる。 l病院分 7515円自宅からl病院までの距離41.754キロメートル×通院日数6日×2×15円=7515円エ休業損害 334万9742円本件事故と相当因果関係を有する休業損害として,平成20年から平成24年にかけての平均賃金と原告の実収入の差額を請求する。 原告は,本件事故後学力が低下し,希望する高等学校に進学することができなかった。原告は,高等学校卒業後,調理師の専門学校を経て平成11年4月に就職したものの,仕事がうまくいかず,転職を繰り返すことを余儀なくされた。原告は,平成20年10月に現在の勤務先に就職し,以後病院食の調理等に従事している。原告は,本件事故に遭わなければ,希望する高等学校に進学し,転職を繰り返すことはなかった。 また,原告は,平成11年から稼働を始め,以後稼働を継続していることからすれば,平均賃金相当額の収入を得る蓋然性が高い。 原告が平成20年から平成24年にかけて現在の勤務先から支給された給与額は,265万8404円(平成20年分),287万988 0円(平成21年分),335万6572円(平成22年分),304万0744円(平成23年分)及び366万5558円(平成24年分)である。 他方,同各年の賃金センサス(男性高卒)の平均賃金は,371万9100円(平成20年。25歳ないし29歳),353万6800円(平成21年。25歳ないし29歳),355万1200円(平成22年。 25歳ないし29歳),405万3000円(平成23年。30歳ないし34歳)及び409万0800円(平成24年。30歳ないし34歳)である。 当該平均賃金額と原告の実収入額との差額合計334万9742円が,原告の休業損害となる。 オ後遺障害逸失利益 6912万7 歳)及び409万0800円(平成24年。30歳ないし34歳)である。 当該平均賃金額と原告の実収入額との差額合計334万9742円が,原告の休業損害となる。 オ後遺障害逸失利益 6912万7556円以下のとおり算出される上記額が,本件事故と相当因果関係を有する後遺障害逸失利益となる。 基礎収入458万8900円(症状固定時の平成23年の賃金センサス男性高卒全年齢平均賃金)×労働能力喪失率0.92(4級)×16.374(休業損害との調整のため,32歳からの35年間のライプニッツ係数を用いる。)=6912万7556円カ入通院慰謝料 205万円原告の入院日数43日及び通院期間延べ18か月からすれば,上記額が相当である。 キ後遺障害慰謝料 1600万円原告の後遺障害等級(4級)等からすれば,上記額が相当である。 ク付添看護費 2127万9305円入院付添費 34万4000円1日当たり8000円とし,入院日数43日相当分である上記額が損 害となる。 退院後及び将来分の付添費用 2093万5305円原告は,退院後,家族の看視及び随時介護が必要となり,現在も日常的行為は自力で行うことができるが,nの付添いがないと電車の乗換えを間違える,日用品の買物を忘れるなどすることが度々ある。したがって,原告には妻の随時介護が必要であり,以下のとおり算出される上記額が本件事故と相当因果関係を有する付添費用となる。 1日当たり3000円×365日×19.119(14歳からの平均余命年数に相当するライプニッツ係数)=2093万5305円ケ家庭教師費用 15万円原告は,本件事故後著しく学力が低下したため,家庭教師を依頼せざるを得なかった。これに要した費用は,本件事故と相当因果関係を有する。 コ小計 1億 93万5305円ケ家庭教師費用 15万円原告は,本件事故後著しく学力が低下したため,家庭教師を依頼せざるを得なかった。これに要した費用は,本件事故と相当因果関係を有する。 コ小計 1億1707万6116円予備的主張(症状固定日を平成9年5月17日とするもの)予備的に主張する症状固定日である平成9年5月17日を前提とした損害は,以下のとおりとなる。 ア治療費等500万8198円,入院雑費6万8800円,通院交通費4万2515円,入通院慰謝料205万円,付添看護費2127万9305円及び家庭教師費用15万円(いずれも主位的主張と同じ。)。なお,休業損害は請求しない。 イ後遺障害逸失利益 8718万9212円原告は,症状固定日である平成9年5月17日時点で16歳であり,後遺障害による労働能力の喪失がなければ,18歳に達した時点から67歳に達するまで就労が可能であり,かつ,当該期間の基礎収入は,賃金センサス平成9年男性学歴計全年齢平均賃金を基礎とすべきである。したがって,以下のとおり算出される上記額が,本件事故と相当因果関係を有する 後遺障害逸失利益となる。 基礎収入575万0800円×労働能力喪失率0.92(4級)×16. 4796(67歳までのライプニッツ係数-18歳に達するまでのライプニッツ係数)=8718万9212円ウ後遺障害慰謝料 1800万円原告の後遺障害等級(4級)等からすれば,上記額が相当である。 エ小計 1億3378万8030円損害のてん補主位的主張1億1165万0790円,予備的主張1億2836万2704円326円を控除した残額は,上記額となる。 弁護士費用主位的主張1116万5079円,予備的主張1283万6270円原告は,原告訴訟代理人に本件について 備的主張1億2836万2704円326円を控除した残額は,上記額となる。 弁護士費用主位的主張1116万5079円,予備的主張1283万6270円原告は,原告訴訟代理人に本件について委任したものであり,損害元金(前護士費用となる。 結論 1億2281万5869円なる。予備的主張においては,損害額(合計1億4119万8974円)が主位的主張に係る損害額よりも多額となるが,主位的主張に係る請求額と同額を一部請求する。 (被告らの主張)主位的主張についてア治療費等既払分治療費498万6106円については認める。立替分治療費につ いては不知ないし争う。 イ入院雑費否認ないし争う。 1日当たり800円とし,入院日数43日相当額である3万4400円が相当である。 ウ通院交通費否認ないし争う。 ただし,l病院への通院交通費を除く平成6年5月17日から平成9年12月9日までの通院交通費3万5000円については争わない。 エ休業損害,後遺障害逸失利益いずれも否認ないし争う。 オ入通院慰謝料否認ないし争う。 122万1722円が相当である。 カ後遺障害慰謝料否認ないし争う。 キ付添看護費否認ないし争う。 入院付添看護料(交通費含む。)として,25万4820円(=(入院1日当たり3700円×43日+通院1日当たり1850円×2)+(交通費1日当たり2140円×43日))の限度で認める。 ク家庭教師費用認める。 予備的主張について治療費等,入院雑費,通院交通費,入通院慰謝料,後遺障害慰謝料,付添看護費及び家庭教師費用についての認否は主位的主張に対するものと同様である。 後遺障害逸失利益については否認ないし争う。 損害のてん補既払金が合計542万5326円であ ,後遺障害慰謝料,付添看護費及び家庭教師費用についての認否は主位的主張に対するものと同様である。 後遺障害逸失利益については否認ないし争う。 損害のてん補既払金が合計542万5326円であることは争わない。 弁護士費用及び結論否認ないし争う。 (被告らの主張)損害を知った時(民法724条前段)は原則として事故時であり,j病院医 師が原告の両親に将来の高次脳機能障害の後遺障害残存の可能性を告知していたことなどからすれば,これによる損害の発生は予見可能であったから,仮に原告が予備的に主張する平成9年5月17日が症状固定日であったとしても,同日が損害を知った時となる。 また,被告bは,平成10年9月13日,原告の親権者である父親oに示談案を提示し,同月27日にoが諾否の連絡をすることとなったが,その後原告側から連絡等はなかった。したがって,原告の被告aに対する損害賠償請求権の消滅時効の起算日は,遅くとも同月28日であり,平成13年9月27日の経過により消滅時効が完成した。被告らは,予備的に当該損害賠償請求権に係る消滅時効を援用する。 (原告の主張)争う。原告は,本件事故時は高次脳機能障害の存在を知らず,平成23年8月8日にm医師の診断を受けたことにより,初めて本件事故により高次脳機能障害を負ったことを確定的に知った。したがって,原告は同日に損害の発生を現実に認識したもので,翌9日が消滅時効の起算点となるから,消滅時効は完成していない。 に関する当事者の主張(被告らの主張)原告は,平成26年5月14日,本件訴えを提起して明示的一部請求をし,不法行為時から20年が経過した後に請求を拡張したものであるから,当初請求部分(2000万円及び遅延損害金)を超える部分(以下「本件残部請求部分」 5月14日,本件訴えを提起して明示的一部請求をし,不法行為時から20年が経過した後に請求を拡張したものであるから,当初請求部分(2000万円及び遅延損害金)を超える部分(以下「本件残部請求部分」という。)については,除斥期間の経過により画一的かつ法律上当然に消滅した。 民法724条後段の解釈上,本件残部請求部分についても除斥期間は経過していない旨の原告の主張について 争う。同条後段は除斥期間を定めた規定であり,訴訟物の範囲や個数,審理・審判の対象,被告の認識,明示的一部請求か黙示的一部請求かなどの問題は,除斥期間の適用の可否とは関係がない。 除斥期間の起算点は平成7年5月7日ないし症状固定日であるとの原告の主張について争う。加害原因となった本件事故時が不法行為の時(民法724条後段)である。原告が援用する最高裁判所平成16年4月27日第三小法廷判決・民集58巻4号1032頁(以下「平成16年判決」という。)は,蓄積進行性の健康被害のように不法行為により発生する損害の性質上,加害行為が終了してから相当期間が経過した後に損害が発生する場合に対象を限定した上で損害発生時説に立つことを示したものである。しかるところ,高次脳機能障害は,蓄積進行性の健康被害とは医学的発症機序においても異なり,加害行為が終了してから相当期間経過後に損害が発生するものではないから,同判例の射程外である。また,除斥期間の起算点を症状固定日とする根拠もない。 (原告の主張)争う。以下のとおり,本件残部請求部分については除斥期間の経過による権利消滅は生じていない。 民法724条後段の解釈上,本件残部請求部分についても除斥期間は経過していないこと原告は,本件事故日から20年間が経過する前に本件訴えを提起し,本件事故により生じた不法行為 は生じていない。 民法724条後段の解釈上,本件残部請求部分についても除斥期間は経過していないこと原告は,本件事故日から20年間が経過する前に本件訴えを提起し,本件事故により生じた不法行為に基づく損害賠償請求権という1個の請求権の数量的一部請求を行ったところ,これにより当該請求権全体について審理がなされることになった以上,当該請求権全体についての法律関係の確定は終局判決の確定まで遅れることとなった。同条後段の適用については,数量的一部請求の場合でも請求権全体について提訴がされたと評価できるため,権 利の消滅は生じない。 原告が明示的一部請求である本件訴えを提起したことにより,本件残部請求部分については裁判上の催告として消滅時効の中断効が生じている(最高裁判所平成25年6月6日第一小法廷判決・民集67巻5号1208頁。以下「平成25年判決」という。)。本件残部請求部分について除斥期間の経過により権利が消滅するとすれば,訴状記載の請求の趣旨のとおりの請求が認容された場合でも,同条前段の短期消滅時効については裁判上の催告によって消滅時効が中断しているにもかかわらず,本件残部請求部分が請求できなくなるという不当な結果が生じる。同条後段の解釈としては,提訴による裁判上の催告の効力が継続する限り,除斥期間により権利が消滅することはないと解すべきである。 また,仮に本件で明示的一部請求ではなく単に2000万円の支払のみを求めた場合は,訴訟物である債権の全部について訴求したものとされる以上(最高裁判所昭和45年7月24日第二小法廷判決・民集24巻7号1177頁),その後に請求を拡張した場合であっても除斥期間の問題は生じない。 このように,明示的に数量的一部請求を行った場合と,一部請求であることの明示をしなかった場合とで権利救済の 民集24巻7号1177頁),その後に請求を拡張した場合であっても除斥期間の問題は生じない。 このように,明示的に数量的一部請求を行った場合と,一部請求であることの明示をしなかった場合とで権利救済の範囲を異にする合理的理由はない。 除斥期間の起算点は早くとも平成7年5月17日と解されること交通事故訴訟では,事故後相当期間経過後に後遺障害が発生し,医師による症状固定の診断により初めて後遺障害の発生を認識し,損害賠償請求をすることが事実上可能となるから,症状固定日が不法行為の時(民法724条後段)であり,除斥期間の起算点となると解すべきである(平成16年判決参照)。原告は,症状固定と診断された平成23年8月8日に,高次脳機能障害が残存したことによる損害の発生を認識し,損害賠償請求をすることができる状態になったから,除斥期間の起算点は同日とされるべきである。 そうでないとしても,一般的に小児事例では高次脳機能障害の症状固定の 判断は1年以上の経過観察を経て行われることからすれば,本件において医師による症状固定の判断が可能となったのは早くとも本件事故から1年後の平成7年5月17日頃であり,客観的にみて損害が発生したといえる時期は同日頃であった。したがって,除斥期間の起算点は早くとも同日頃であるとすべきである。 第3 当裁判所の判断 前記前提事実,証拠(各項に掲げるもの)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア本件道路(国道241号)は,本件事故現場付近においては歩車道の区別がある片側1車線の直線道路であり,特段視界を妨げるものは存在しない。本件事故現場付近の本件道路の制限速度は,時速50キロメートルであった(甲1,乙2)。 イ原告は,本件事故当時,中学校に通学するため,原告車を運転して本件道 ,特段視界を妨げるものは存在しない。本件事故現場付近の本件道路の制限速度は,時速50キロメートルであった(甲1,乙2)。 イ原告は,本件事故当時,中学校に通学するため,原告車を運転して本件道路の北側の歩道をf方面からg方面に向って進行していたところ,横断歩道のない地点で本件道路を南側に横断し始めた(甲2,甲4の5,乙2,弁論の全趣旨)。 ウ被告aは,被告車を運転し,原告車と同一方向に向かって本件道路を時速約130キロメートルで走行していたところ,向かって右側の歩道を進行していた原告車が,被告車の対向車線を越えて本件道路を横断し,被告車の走行車線に進入してきた。被告は,原告車を視認してわずかに左転把したものの,被告車の右前部を原告車に衝突させた。原告は,衝突の衝撃で約20メートル跳ね飛ばされ,路面に転落した(乙2,証人o)。 事故態様及び過失相殺割合についてア前記認定事実によれば,被告aは,自動車を運転するに際し,制限速度を遵守するとともに,前方左右を注視して進路の安全を確認してハンド ル,ブレーキ等を適切に操作し,道路,交通等の状況に応じ他人に危害を及ぼさない方法で運転すべき注意義務を負うにもかかわらず,これを怠り,制限速度時速50キロメートルを大幅に超過する時速約130キロメートルで進行するとともに,進路の前方及び右方の安全確認を十分に行わず,ハンドル,ブレーキ等を適切に操作しなかった過失により,本件道路を横断中の原告車に被告車の右前部を衝突させたことが認められる。したがって,被告aは,不法行為及び自賠法3条に基づいて,本件事故により原告に生じた損害を賠償すべき義務を負うというべきである。 イ被告らは,本件事故においては原告にも過失があり,原告に生じた損害について2割又は3割の過失相殺がされるべきであ づいて,本件事故により原告に生じた損害を賠償すべき義務を負うというべきである。 イ被告らは,本件事故においては原告にも過失があり,原告に生じた損害について2割又は3割の過失相殺がされるべきである旨主張する。 確かに,本件事故の発生には,交差点以外の場所において本件道路を横断した原告の運転行為も一因となっていることは否定することができない。 しかしながら,被告aが本件事故直前に一般道において制限速度を時速約80キロメートルも超過する時速約130キロメートルで走行していたことは前記認定のとおりであって,本件事故における被告aの過失は極めて重大であるというべきである。そして,本件事故現場付近の本件道路が直線であり,被告aの進路方向には特段視界を妨げるものが存在しなかったことも考慮すれば,被告aが進路の前方及び右方を十分に注視し,前記のような大幅な速度違反をしていなければ,原告車を視認した時点で減速等の操作をすることにより原告車との衝突を回避し得たか,衝突が避けられなかったとしても,原告に重篤な傷害を負わせるには至らなかったものと認められる。 そうすると,前記で説示した本件事故における被告aの過失の重大性に鑑みると,原告の前記の運転行為や本件道路が幹線道路に当たり得ること等を考慮してもなお,本件事故において原告にも過失があったものと認め ることはできない。 前記前提事実,証拠(各項に掲げるもの)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア原告は,本件事故後間もなく,h脳神経外科病院に救急搬送された。原告は,搬送時意識障害があった。原告は,肺挫傷,肋骨骨折,血気胸,頭部打撲,全身打撲,外傷性ショックと診断され,各種措置を受けた後,同日中にi病院に転院となった。(乙3の1ないし3)イ原告のi 告は,搬送時意識障害があった。原告は,肺挫傷,肋骨骨折,血気胸,頭部打撲,全身打撲,外傷性ショックと診断され,各種措置を受けた後,同日中にi病院に転院となった。(乙3の1ないし3)イ原告のi病院における通院・治療経過等(甲2,甲3,乙4の1ないし3,乙7の1ないし乙8の2,証人o)原告は,平成6年5月17日午前10時30分頃,i病院に救急搬送され,ICUに収容された。原告は,外傷性横隔膜ヘルニア,両側血気胸,左肋骨骨折及び左肺挫傷と診断され,横隔膜修復術を受けた。 原告は,i病院への搬入時,呼名反応がなく,開眼のままうなり声をあげている状態であった。原告は,平成6年5月17日午後1時43分の時点でも未覚醒で,同日午後4時頃の段階でも体動はあるものの覚醒せず,意識があるか不明の状態であった。 原告は,左頭部に血腫が生じている可能性が高く,脳挫傷の可能性があるとして,平成6年5月17日午後4時30分頃,頭部の検査のためj病院に転院した。 原告は,j病院に入院中の平成6年6月6日及び退院後の平成7年8月16日,横隔膜修復術の予後の検査のため,i病院に通院した(実通院日数2日)。原告は,平成6年6月6日の通院時は,言葉が上手く出てこない様子であった。 ウ原告のj病院における入通院・治療経過等(甲4の1ないし8,甲17,乙5の1ないし乙6の3,乙9の1ないし乙12の2) 原告は,平成6年5月17日午後5時頃,j病院に救急搬送された。 原告は,頭部のCT検査等を受け,同日時点で外傷性くも膜下出血,びまん性軸索損傷等と診断され,人工呼吸器管理下に置かれ,脳圧降下剤等の投与を受けるなどした。 同病院では,同月18日に頭部CT検査,同月20日に頭部MRI検査,同月23日に頭部CT検査,同月27日に頭部MRI検査が 診断され,人工呼吸器管理下に置かれ,脳圧降下剤等の投与を受けるなどした。 同病院では,同月18日に頭部CT検査,同月20日に頭部MRI検査,同月23日に頭部CT検査,同月27日に頭部MRI検査がそれぞれ実施された。 原告は,各種検査の結果,頭部外傷,頚椎捻挫,脳挫傷(脳梁後部と左前頭葉),びまん性軸索損傷,外傷性くも膜下出血,肺挫傷,肝挫傷,肋骨骨折,両血気胸,全身打撲,外傷性横隔膜ヘルニア,外傷性ショック,出血性ショック,外傷性てんかんなどと診断され,同年6月28日まで入院した。 入院中の原告の意識障害について原告は,j病院に搬入された時点では意識がなく,平成6年5月17日午後5時50時点でJCS(ジャパン・コーマ・スケール)で200(痛みや刺激で少し手足を動かしたり,顔をしかめる状態で,刺激しても覚醒しない状態)であった。その後,原告の意識レベルは,同日午後6時45分の時点でGCS(グラスゴー・コーマ・スケール)で重症,同日午後8時以後は同月20日夜間までGCSで中等症,JCSでおおむね20ないし30(大声又は身体を揺さぶることで開眼する,痛みや刺激を繰り返すとかろうじて開眼するといった,刺激で覚醒する状態)が続いた。原告は,同月21日以後は自身の名を発声するなど覚醒レベルが高くなってきたが,同月25日午後8時頃まではJCSではおおむね3(刺激しないでも覚醒しているが,名前や生年月日が言えない状態)が続いた。 原告の平成6年5月26日以後の入院中の症状の推移等 原告は,同日ないし同月29日,自らの怪我の状態を認識することができずに創部のガーゼをはがすなどし,また,痛いと述べたりうなり声をあげるほかは,頷く程度で発語がなかった。原告は,同月30日も同様の状態だったが,面会に来た担任の教師らの呼びかけに 認識することができずに創部のガーゼをはがすなどし,また,痛いと述べたりうなり声をあげるほかは,頷く程度で発語がなかった。原告は,同月30日も同様の状態だったが,面会に来た担任の教師らの呼びかけに応じることができた。 原告は,同月31日及び同年6月1日も,問いかけに対しうなずくなどのほかはわずかしか発語せず,面会した母にここはどこかと述べるなど,自己の状態を認識することができない状態が継続していた。原告は,同月3日,夕食を食べたことを忘れるといった記憶障害,深夜に詰所の電話をかけようとするなど社会的行動障害がみられた。 原告は,同月7日以後は行動が安定しだし,会話も可能になりつつあったが,同月11日に自宅に外泊し,翌12日に帰院した際には外泊時の友人らとの会話内容を覚えていないなど記憶障害があった。 原告は,同月13日以後は症状が安定し,同月28日に経過良好としてj病院を退院したが,自身の行動をあまり覚えていないなどのため社会生活への対応が懸念されていた。 平成6年6月8日から同月13日にかけて実施されたWISC-R検査では,言語性IQ79,動作性IQ80,全検査IQ78であった。 同検査を踏まえ,原告について,知能分類では境界線領域にある,検査や日常生活場面を通じて発話量が少なく反応もあやふやなことが多い,パターン化した行動はスムーズにできるが,新しい課題では戸惑いが強く実行まで時間がかかる,継続的処理能力の低下が見られ,いくつかの異なる工程を自発的に進めることが困難と評価された。 原告は,退院後,平成6年7月11日から平成7年4月19日までj病院に通院し(実通院日数5日),通院期間中,頭部強打に伴う健忘症があるため経過観察とされた。 エ原告は,平成9年5月13日にk形成外科を受診し,瘢痕拘縮(腹部ないし 月19日までj病院に通院し(実通院日数5日),通院期間中,頭部強打に伴う健忘症があるため経過観察とされた。 エ原告は,平成9年5月13日にk形成外科を受診し,瘢痕拘縮(腹部ないし胸部)と診断された。その後,原告は,複数回にわたって瘢痕拘縮形成術を受けるなどし,同年11月22日まで通院した(実通院日数9日)(甲5,乙13の1ないし乙18の2)。 オ原告の本件事故後の能力の推移,生活状況等中学校在学中から専門学校卒業まで(平成6年から平成12年まで)原告は,j病院を退院後,平成6年7月から復学したが,従前は学年で中位程度であった成績が,復学直後は学年で下から三,四番目まで落ち,その後も勉強についていくことができなかった。原告の両親が家庭教師を雇うなどした結果,成績は若干回復したものの本件事故前のレベルには回復せず,その後も依然として不良であった。原告は,平成8年度の入学試験を受験し,同年4月に普通科高等学校に入学した(甲4の2,7,8,甲21,甲29,乙20,証人o)。 原告は,本件事故前は活発な性格であったが,本件事故後は活発さが一定程度失われ,自宅では自分の部屋にいることが多くなり,家族との会話も少なくなった。また,原告は,本件事故以前に比べ物忘れが多くなり,受け答えに時間を要するにようになった(甲21,甲25,証人o)。 原告は,平成11年3月に高等学校を卒業すると,同年4月から平成12年3月まで調理師の専門学校に通学した(甲21,証人o)。 原告の稼働状況等原告は,専門学校を卒業後,平成12年4月に就職して調理等の作業に従事したが,仕事でミスをするなどしたため,同年11月に退職した(甲21,証人o,弁論の全趣旨)。 原告は,同月には別の会社に転職し,調理等の作業に従事したが,対人関係の構築 職して調理等の作業に従事したが,仕事でミスをするなどしたため,同年11月に退職した(甲21,証人o,弁論の全趣旨)。 原告は,同月には別の会社に転職し,調理等の作業に従事したが,対人関係の構築や作業内容の把握に支障があったこともあり,平成16年 及び平成20年にも転職した(甲21,甲29,証人n,証人o)。 原告は,同年に入社した現在の勤務先では,主に病院食等の調理業務(各調理師が多数の病院食を分担して調理するもの)に従事している(証人n)。 原告の生活状況等原告は,1人暮らしを始めた平成十四,十五年頃まで両親と同居していたが,頼まれた買い物を忘れることがあった(証人o)。 原告は,平成15年4月に交際していたnと同居を開始した。両者は,平成18年12月に婚姻し,平成22年に娘をもうけ,現在まで同居している。nは,原告について,注意力が散漫で仕事上のミスが多く,人間関係の構築が苦手であるとは思っていたが,平成23年に高次脳機能障害の診断を受けるまで,原告が精神疾患に罹患していたり,本件事故により脳に障害を負っているとは思ったことはなかった(甲19,甲30,証人n)。 カ被告bとの示談交渉は平成10年以降行われていなかったが,oが,平成20年7月頃,補償を求める原告の希望を受け被告bに連絡したところ,消滅時効が成立している旨回答された。原告及びoは,平成22年頃に赴いた法律相談で脳の検査を勧められたことから,仕事が長続きしないのは本件事故により生じた脳の障害の影響かもしれないと考え,原告訴訟代理人に相談するなどした(甲29,甲30,乙20,証人n,証人o)。 原告は,原告訴訟代理人から高次脳機能障害の可能性を指摘され,l病院を紹介された。原告は,平成23年6月6日から同年8月8日まで同病院に通院し(実通院日 甲29,甲30,乙20,証人n,証人o)。 原告は,原告訴訟代理人から高次脳機能障害の可能性を指摘され,l病院を紹介された。原告は,平成23年6月6日から同年8月8日まで同病院に通院し(実通院日数6日),後記キのとおり高次脳機能障害と診断された(甲29,証人o)。 キ l病院(当時)m医師作成の平成23年9月8日付け自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書には,以下の趣旨の記載がある(甲6の1)。 傷病名脳外傷後高次脳機能障害症状固定日平成23年8月8日既存障害なし自覚症状もの忘れ,注意力・集中力の欠如他覚症状等知識,語彙獲得が不十分である。言語性記銘・学習能力及び状況判断力が低い。即時・長期記憶障害が存する。遂行機能障害としてまとめられる。社会的行動障害も疑われ,これらの症状から外傷性脳損傷に頻発する前頭葉機能低下に加え,左側頭葉に局在した機能低下があると判断する。 ク m医師作成の平成23年9月8日付けの「脳外傷による精神症状等についての具体的所見」には,原告について実施された神経心理学的検査について,以下の趣旨の記載がある(甲6の2)。 日本版WAIS-Ⅲ成人知能検査では,全検査IQ89(平均の下),言語性IQ90(平均),動作性IQ91(平均),知能レベルは平均から平均の下であり,軽度ながら知能低下が認められる。問題点として,①習得している知識と語彙の量が同年代平均の6割程度しかなく,抽象的思考力もやや低いこと,②表現力の低下,③経験に基づいて状況を統合的に分析する能力の低下が認められる。 日本版ウェクスラー記憶検査法WMS-Rでは,やや強い記憶障害が認められた。問題点は,①主として言語情報の即時記憶障害及び新規学習が困難であること,②一度取り込んだ情報をすぐに忘れてしまう る。 日本版ウェクスラー記憶検査法WMS-Rでは,やや強い記憶障害が認められた。問題点は,①主として言語情報の即時記憶障害及び新規学習が困難であること,②一度取り込んだ情報をすぐに忘れてしまうこと(長期記憶障害)であり,他方,数字や図形の機械的記憶は平均的水準が保持されている。 各種前頭葉機能検査の結果,同時処理困難,行動計画と修正行動の困難,経験に基づく状況判断が不十分であることなどが観察された。これらは遂行機能障害の特徴である。他方,単一作業における注意機能は保 持されている。 総合原告については軽度の高次脳機能障害が認められる。症状は,脳損傷後の知識・語彙獲得が不十分であること,言語性記銘・学習能力が低いこと,状況判断力が低いこと,即時・長期の記憶障害があること,遂行機能障害があることとしてまとめられる。nによるBADS遂行機能障害の質問票への回答からは,社会的行動障害も疑われる。 ケ現在の原告の精神症状等らの症状は,原告がnと同居を開始した平成15年頃から現在に至るまで基本的に変化はない(甲6の2,3,甲19,証人n)。 原告は,会話の内容を覚えられず同じことを何度も聞き返したり話したりする,道順を覚えることが苦手である,物の置き場所や買い物の約束などを忘れることがあるなどの記憶障害がみられる。 原告は,ストーブの消火,家の戸締まりなどを忘れることがあるなど,注意障害とみられる症状がある。 原告は,身の回りの動作はおおむね自立して行えるが,公共交通機関の複雑な乗り継ぎを行うことができないことがある,自動車通勤をしているものの,知らない場所には1人で到達することができないことがあるなど,軽度の遂行機能障害とみられる症状がある。 原告は,家庭や職場ではおおむね良好に振る舞っているが,言 ある,自動車通勤をしているものの,知らない場所には1人で到達することができないことがあるなど,軽度の遂行機能障害とみられる症状がある。 原告は,家庭や職場ではおおむね良好に振る舞っているが,言いたい内容を適切に相手に伝えることが困難なことがあるなど,社会的行動障害が疑われる症状がみられる。 原告が本件事故により高次脳機能障害を発症したかについてア脳外傷による高次脳機能障害は,脳の器質的損傷による障害として,主として多彩な認知障害(記憶・記銘力障害,注意・集中力障害,遂行機能障害 など),行動障害(周囲の状況に合わせた適切な行動ができない,複数のことを同時に処理することができない,職場や社会のルールを守れない,話が回りくどい,行動を抑制できないなど),人格変化(受傷前にみられなかった発動性の低下と抑制低下)などの症状を呈するもので,これらの症状は,脳外傷後の急性期に始まり,時間の経過とともに多少軽減しながら慢性期にかけて続くことが特徴的とされる(甲15,甲16)。 前記の各症状は,主に脳外傷によるびまん性脳損傷を原因として発症するが,局在性脳損傷(脳挫傷,頭蓋内血腫など)との関わりも否定することができないとされる。また,脳外傷による高次脳機能障害は,種々の理由により見落とされやすいとされる(甲15)。 イ前記認定事実によれば,原告は,j病院に入院中から,自身の怪我の状態を認識することができない,失語,自身の行為や他者との会話内容を覚えていないといった記憶障害や記銘力障害が認められ,退院後に復学したものの,成績は大幅に低下し,また,活発さが一定程度失われ,物忘れが多くなり,受け答えにも時間を要するようになり,専門学校卒業後は転職を繰り返し,社会生活において,記憶障害,注意障害,軽度の遂行機能障害,社会的行 幅に低下し,また,活発さが一定程度失われ,物忘れが多くなり,受け答えにも時間を要するようになり,専門学校卒業後は転職を繰り返し,社会生活において,記憶障害,注意障害,軽度の遂行機能障害,社会的行動障害が疑われる症状が認められる。上記で指摘した本件事故後の原告の各症状に鑑みれば,原告は,本件事故を契機として認知障害,行動障害が生じ,人格的にも変容し,その状態は本件事故から現在に至るまで継続していることが認められる。 しかして,原告の前記各症状が本件事故による脳の器質的障害によるもjに強い衝撃を受け,頭部外傷,脳挫傷(脳梁後部と左前頭葉),外傷性くも膜下出血,びまん性軸索損傷等の傷害を負ったことが認められる。 そして,脳外傷による高次脳機能障害の発症を医学的に判断するために は,意識障害の有無とその程度及び長さの把握と,画像資料上で外傷後ほぼ3か月以内に完成する脳室拡大・びまん性脳萎縮の所見が重要とされているところ(甲15),以下,これらの点について検討する。 意識障害の有無,その程度及び長さについて脳外傷による高次脳機能障害は,意識消失を伴うような頭部外傷後に起こりやすいことが大きな特徴であり,脳外傷直後の意識障害がおよそ6時間以上継続するケースでは,永続的な高次脳機能障害が残ることが多いとされる(甲15)。 前記認定事実によれば,原告は,本件事故が発生した平成6年5月7日午前7時40分頃から,j病院に転院となる同日午後4時30分頃まで重篤な意識障害が継続していたことが認められる。また,原告は,同病院に搬入された時点で意識がなく,同日午後5時50分の時点でJCSがしていたものと認められる。したがって,脳外傷直後の意識障害がおよそ6時間以上継続するとの前記の要件を優に満たし,これは本件事故による頭 入された時点で意識がなく,同日午後5時50分の時点でJCSがしていたものと認められる。したがって,脳外傷直後の意識障害がおよそ6時間以上継続するとの前記の要件を優に満たし,これは本件事故による頭部への衝撃の大きさを裏付けるものと認められる。 また,原告の意識レベルは,その後も同月20日夜間までGCSで中等症,JCSでおおむね20ないし30の状態が続き,同月21日以後は覚醒レベルが改善したものの,同月25日午後8時頃まではJCSでおおこと,同月30日に至っても自身の怪我の状態を認識することができず,とが認められる。 画像所見について高次脳機能障害の発症の判断に係る画像所見に関しては,①びまん性軸 索損傷の場合,受傷直後の画像では正常に見えることもあるが,脳内(皮質下白質,脳梁,基底核部,脳幹など)に点状出血を生じていることが多く,脳室内出血やくも膜下出血を伴いやすいこと,②受傷数日後には,しばしば硬膜下ないしくも膜下に脳脊髄液貯留を生じ,その後代わって脳室拡大や脳溝拡大などの脳萎縮が目立ってくること,③3か月程度で外傷後脳室拡大は固定し,以後はあまり変化しないので,経時的な画像資料を通して脳室拡大・脳萎縮等の有無を確認する必要があること,④局在性脳損傷(脳挫傷,頭蓋内血腫等)が画像で目立つ場合でも,脳室拡大・脳萎縮等の有無や程度を把握することが重要であることが指摘されている(甲15)。 原告については,j病院に入院中,本件事故当日の平成6年5月17日から同年6月27日にかけて頭部CT及びMRI検査がされている(前m医師は,意見書(甲20)において,原告の頭部画像(甲17)について,次の趣旨の意見を述べる。すなわち,①本件事故当日撮影の頭部CT画像では,左頭頂部に頭皮下出血がみられ,全脳に腫張がみられる。また 師は,意見書(甲20)において,原告の頭部画像(甲17)について,次の趣旨の意見を述べる。すなわち,①本件事故当日撮影の頭部CT画像では,左頭頂部に頭皮下出血がみられ,全脳に腫張がみられる。また,左前頭葉,後方半球間裂部,脳梁膨大部,両側側脳室三角部,第3脳室及び中脳正中部前方に高吸収域が認められる。同年5月18日撮影の頭部CT画像では,依然として左頭頂部に頭皮下出血がみられ,脳腫脹が重篤で,左前頭葉,後方半球間裂部,脳梁膨大部,両側側脳室三角部,第3脳室及び中脳正中部前方に高吸収域がみられる。加えて,前日と比較して脳梁前方正中部及び左視床に低吸収域が認められる。 ②同月20日撮影の頭部MRI画像(T2強調)では,受傷当日及び翌日のCT画像の異常所見と一致する,左前頭葉,脳梁膨大部,脳梁前方正中部,左視床及び内包に高信号域が,右前頭頭頂葉白質の内側部に高信号域がそれぞれ認められ,右前頭部硬膜下腔に硬膜下血腫・水腫を疑わせる高信号域が認められる。③同月23日撮影の頭部CT画像では,脳腫脹は軽 快傾向にあり,左前頭葉,脳梁及び後方半球間裂部に高吸収域,脳梁膨大部,脳梁前方正中部,左視床及び内包に低吸収域がみられるが,全体として軽快傾向にあることが認められる。④同年6月27日撮影の頭部MRI画像(T2強調及びT1強調)では,受傷3日後のMRI(T2強調)画像と比較して,高信号域は脳梁膨大部と脳梁前方正中部に残存し,T2強調画像で高信号域だった領域はT1強調画像では低信号域として黒く残存している。そして,脳腫脹が消失傾向にあり,脳溝がはっきりしつつある。 m医師の上記意見は,j病院医師が頭部CT及びMRI検査を踏まえ原告の両親に対して行った説明(①脳梁及び左前頭部に出血がみられる,今後種々の神経症状が出る恐れがある旨の本件 きりしつつある。 m医師の上記意見は,j病院医師が頭部CT及びMRI検査を踏まえ原告の両親に対して行った説明(①脳梁及び左前頭部に出血がみられる,今後種々の神経症状が出る恐れがある旨の本件事故当日の説明,②脳内に出血があり意識が悪い旨の平成6年5月18日の説明,③大脳の視床部,左右を横走する箇所等に傷が生じている旨の同月20日の説明,④左脳に傷が生じている旨及び視床に傷があるため失読の症状がみられる旨の同年6月1日の説明(甲4の6,証人o)とも矛盾せず,これに反する的確な証拠はない。 これに対し,被告らは,m医師の意見等について,画像所見による診断をしておらず信用することができないと主張するが,前記のとおりm医師の意見書(甲20)は,本件事故直後から約40日間にかけて撮影されたCT画像及びMRI画像を踏まえたものであるから,被告らの上記主張は採用することができない。 以上によれば,本件事故直後の頭部画像において脳室内出血が生じていること,本件事故後約40日後のMRI画像において異常を示す部位が一部に残存し,脳溝が明らかになりつつあることが認められる。加えて,j病院でも,頭部画像検査を踏まえ外傷性くも膜下出血,びまん性軸索損 は,外傷による高次脳機能障害の場合にみられる画像所見と合致する画像所見が認められる。 ウ以上によれば,原告は,びまん性軸索損傷とその特徴的な所見が認められる上,頭部外傷を負った本件事故直後から認知障害,行動障害及び人格変化という高次脳機能障害に特徴的な症状が発現し,次第に軽減しながらもそれらの症状が残存して現在に至ることが認められる。このような症状の推移は,高次脳機能障害において一般に想定される症状の推移や病態と合致するものと認められる。 エ被告らの主張について判断を補足する。 状が残存して現在に至ることが認められる。このような症状の推移は,高次脳機能障害において一般に想定される症状の推移や病態と合致するものと認められる。 エ被告らの主張について判断を補足する。 被告らは,j病院ではびまん性軸索損傷や高次脳機能障害と診断されていないこと,原告の症状は徐々に増悪し又は遅発的に発症したものであり,l病院を受診した平成23年6月6日頃以前は高次脳機能障害による症状は認められないから,本件事故とは無関係に内因性の疾病が発症した旨主張する。 j病院においてびまん性軸索損傷と診断されたことが認められる。また,m医師も,本件事故直後から長時間意識消失が生じたこと,びまん性軸索損傷の好発部位に出血を伴う脳挫傷の所見が認められること,後方半球間裂部,両側側脳室三角部,第3脳室,中脳正中部前方等の部位に脳表や脳室壁の血管損傷に伴う出血所見があり,これらは受傷時の衝撃が頭蓋内の深部に及び,深部脳組織や脳血管を損傷したことを示唆することから,衝撃が及んだ広汎な領域にびまん性軸索損傷が生じたと考えられる旨の意見をしている(甲20)。加えて,脳外傷による高次脳機能障害の特徴として,種々の理由から見落とされやすいことが指摘されているところ,自賠責保険における脳外傷による高次脳機能障害に関する後遺障害認定においても,脳外傷に起因する後遺障害として高次脳機能障害が広く認識され始め,見過ごされやすい障害としての特 性から,的確に評価するよう求められたことを契機に,平成12年から自動車保険料率算定会(当時)が検討を開始し,平成13年から認定システムを実施,運営してきたことが認められる(甲15,16)。したがって,原告が平成9年の時点でj病院で高次脳機能障害と診断されなかったからといって,本件事故による高次脳機能 ,平成13年から認定システムを実施,運営してきたことが認められる(甲15,16)。したがって,原告が平成9年の時点でj病院で高次脳機能障害と診断されなかったからといって,本件事故による高次脳機能障害の発症を否定する根拠にはならない。 また,原告は,j病院に入院中から記憶障害や記銘力障害が認められ,退院後も成績が大幅に下落し,人格の変化も認められ,社会生活においても記憶障害,注意障害,軽度の遂行機能障害,社会的行動障害が疑われる症状が継続していることは前記のとおりであって,これらの症状が遅発的に発症したものでないことはもとより,また,本件事故と無関係の内因性の疾病が原因であることをうかがわせる的確な証拠は見当たらない。 したがって,被告らの上記主張は採用することができない。 高次脳機能障害についての症状固定日について症状固定日として主張するが,これはl病院において高次脳機能障害との確定診断がされた日であるところ,医学上一般に承認された治療方法をもってしてもその効果が期待し得ない状態であることを前提に,自然的経過によって到達すると認められる最終の状態としての症状固定日は,原告の症状の程度,推移を踏まえて認定すべきである。 しかして,脳外傷による高次脳機能障害は,急性期に重篤な症状が発現しても,時間の経過とともに軽減傾向を示すことが多く,一般に成人では受傷後1年以上を経てから症状固定の後遺障害診断書が作成されることが妥当であるが,小児の場合は受傷後1年が経過した時期でも後遺障害等級の判定が困難なことがあり,適切な時期まで経過観察が必要となる場合が多いとされている(甲15)。原告は,本件事故当時13歳であったから,症状固定の判断を下すまでには本来相応の期間の観察を要すると考えられるところ,復学直後 は学年で下から三,四番 る場合が多いとされている(甲15)。原告は,本件事故当時13歳であったから,症状固定の判断を下すまでには本来相応の期間の観察を要すると考えられるところ,復学直後 は学年で下から三,四番目まで落ちた成績も本件事故から2年弱が経過した期間が経過した後も症状や能力の回復傾向を示していたことがうかがわれる。 以上に加えて,平成7年4月19日を最後にj病院への通院を止めた後,平成23年にl病院を受診するまでの間の医証が存在しないこと,m医師は,高次脳機能障害において症状の変動がなくなる時期には個人差があり,一定の目安として,外傷から概ね3年間ほどが症状固定時期として妥当と思われる旨意見している(甲20)ことからすると,原告が発症した高次脳機能障害による症状は,遅くとも,平成9年末には症状固定に至っていたものと認めるのが相当である。 原告の高次脳機能障害の後遺障害の程度についてl病院で実施された神経心理学的検査の結果,原告については,軽度の知能低下,言語性記銘・学習能力が低いこと,即時・長期の記憶障害,複数の行為の同時処理が困難であることや経験に基づく状況判断が不十分であることといった遂行機能障害があるが,数字や図形の機械的記憶や単一作業における注意機能は保持されているなどとして,総合的には高次脳機能障害の程度は軽度と診断されたを卒業し,複数回転職したものの,現在まで調理師として稼働していること,nオ)の各事実が認められる。 上記認定事実及び診断結果によれば,原告は,一般就労を維持することができるが,問題解決能力等に障害が残り,作業効率,作業持続力等に問題があると認められるから,原告の高次脳機能障害に係る後遺障害の程度は,自賠法施行令別表第二第9級10号(神経系統の機能又は精神に障害を残し,服する 障害が残り,作業効率,作業持続力等に問題があると認められるから,原告の高次脳機能障害に係る後遺障害の程度は,自賠法施行令別表第二第9級10号(神経系統の機能又は精神に障害を残し,服する ことができる労務が相当な程度に制限されるもの)に相当するというべきである。 原告主張の線状瘢痕について原告は,原告の身体に残存した線状瘢痕について,後遺障害等級12級に相当する旨主張する。 しかしながら,証拠(甲7)によれば,本件事故による外傷及びこれに関連して施行された手術により残存した原告の線状瘢痕は,日常露出しない部位(胸部,背部及び腹部)に存するものと認められるところ,胸部,腹部又は背部の全面積の4分の1の範囲に及んでいるとまでは認められないから,本件事故に適用される当時の自賠法施行令別表第二第12級13号(男子の外貌に著しい醜状を残すもの)相当及び第14級11号(男子の外貌に著しい醜状を残すもの)相当には当たらない。 したがって,原告の身体に残存した線状瘢痕については,後遺障害に該当すると認めることはできない。 小括以上によれば,原告には,本件事故により高次脳機能障害を発症し,自賠法施行令別表第二第9級10号の後遺障害が残存したものと認められる。 治療費 500万8198円既払分治療費498万6106円については当事者間に争いがない。 また,証拠(甲10ないし甲11の2)によれば,原告は,平成23年9月9日及び平成24年12月18日,l病院に対し,文書料1万2600円及び診療録等取得費用9492円を支払ったことが認められる。当該合計2万2092円(立替分治療費)は,症状固定日後に支出されたものであるが,本件の事実経過に鑑みれば,原告が高次脳機能障害を発症したとの診断のためには,同病院への通院及び検 ことが認められる。当該合計2万2092円(立替分治療費)は,症状固定日後に支出されたものであるが,本件の事実経過に鑑みれば,原告が高次脳機能障害を発症したとの診断のためには,同病院への通院及び検査等が必要であったことが認められるから, 当該立替分治療費についても,本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 入院雑費 6万4500円相当と認める1500円を乗じた上記額を,本件事故と相当因果関係を有する入院雑費と認める。 通院交通費 4万2515円l病院以外の通院交通費3万5000円については当事者間に争いがない。 また,同病院への通院に係る通院交通費は,症状固定日後に支出されたもろである。したがって,同病院への通院交通費7515円(=自宅から同病院までの距離約41.754キロメートル(甲12の3)×実通院日数6日×2×1キロメートル当たりのガソリン代15円)も,本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。 休業損害 0円原告は,平成20年分から平成24年分の平均収入と原告の実収入の差額成9年末と認められ,同日以後の原告の得べかりし利益については後遺障害逸失利益として評価するのが相当である。したがって,原告の請求する休業損害は,本件事故と相当因果関係を有するものとは認められない。 後遺障害逸失利益 3264万6686円原告の稼働歴等に鑑みると,原告の後遺障害に係る症状が固定した平成9年末(原告は当時17歳である。)の賃金センサス産業計・企業規模計・男子労働者・高卒・全年齢平均賃金である539万0600円(甲27,甲28)を基礎収入とするのが相当である。 したがって,以下のとおり算出される上記額が,本件事故と相当因果関係を有する後遺障害逸失利益となる。 基礎収入539万0600円× (甲27,甲28)を基礎収入とするのが相当である。 したがって,以下のとおり算出される上記額が,本件事故と相当因果関係を有する後遺障害逸失利益となる。 基礎収入539万0600円×労働能力喪失率0.35(9級)×17.3035(67歳までの50年間のライプニッツ係数18.2559-18歳に達する1年間のライプニッツ係数0.9524)=3264万6686円入通院慰謝料 130万円故により重傷を負ったことに鑑みると,原告の入通院慰謝料は,上記額とするのが相当である。 後遺障害慰謝料 690万円原告の後遺障害の程度(自賠法施行令別表第二第9級10号)及びその内容に鑑みると,後遺障害慰謝料は,上記額とするのが相当である。 付添看護費 27万9500円ア入院時の付添看護費 27万9500円証拠(甲21,証人o)によれば,oは,原告がj病院に入院している間,毎日見舞いに行っていたことが認められる。そして,本件事故当時の本件事故による原告の症状が重篤であり,看護を要したことが認められることに鑑みれば,本件事故と相当因果関係を有する損害として入院付添費を認めるのが相当であり,その額は,27万9500円(=1日当たり6500円×入院日数43日)が相当である。 イ退院後及び将来分の付添看護費 0円証拠(甲19,甲21,甲29,証人o)によれば,oは,原告がj病院を退院した後,中学卒業まで通学時に自動車で原告を送迎していたが,これは原告の両親が本件事故後原告に自転車を運転させることを恐れたことが主な理由であったこと,原告は,高等学校に進学して以後は基本的 に1人で公共交通機関を利用して通学していたこと,原告は,平成十四,十五年頃からnと同居を開始するまでの間1人暮らしをしていたこと,原告は,複数回 原告は,高等学校に進学して以後は基本的 に1人で公共交通機関を利用して通学していたこと,原告は,平成十四,十五年頃からnと同居を開始するまでの間1人暮らしをしていたこと,原告は,複数回転職をしているものの調理師として稼働していることが認め生活において家族の看護を要する状態にあると認めるに足りる証拠はない。 上記認定事実によれば,同病院の退院後及び将来分の付添看護費については,本件事故と相当因果関係を有する損害であると認められない。 家庭教師費用 15万円(争いがない。)小計 4639万1399円損害のてん補 4096万6073円を控除すると,上記額となる。 弁護士費用 409万6607円弁論の全趣旨によれば,原告は,本件事故による損害賠償請求を行うために原告訴訟代理人に委任して本訴を提起せざるを得なくなったことが認められるところ,本件事案の内容及び性質等に鑑みれば,その弁護士費用相当損害金は,上記額が相当である。 損害合計 4506万2680円 民法724条前段の「損害及び加害者を知った時」とは,被害者が,加害者に対し損害賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に,それが可能な程度に損害及び加害者を知った時を意味し,被害者が損害を知った時とは,被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうと解するのが相当である(最高裁判所昭和48年11月16日第二小法廷判決・民集27巻10号1374頁,最高裁判所平成14年1月29日第三小法廷判決・民集56巻1号2 18頁参照)。 j病院においては高次脳機能障害との診断を受けなかったこと,原告は,自身が高次脳機能障害を発症したことを知らないまま進学し,就労をしていたこと,原告は,平成23年8月8日,l病院において高次脳機能障害との診断 いては高次脳機能障害との診断を受けなかったこと,原告は,自身が高次脳機能障害を発症したことを知らないまま進学し,就労をしていたこと,原告は,平成23年8月8日,l病院において高次脳機能障害との診断を受け,これを受けて本件訴訟の提起に至ったことが認められる。したがって,原告は,遅くとも当該診断を受けた時には,当該後遺障害の存在を現実に認識し,加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に,それが可能な程度に損害の発生を知ったものというべきである。そうすると,原告の当該後遺障害に基づく損害賠償請求権の消滅時効は,遅くとも同日から進行すると解される。 なお,原告の高次脳機能障害の症状固定日については,平成9年末と認めるのが相当であることは前記で説示したとおりであり,一般的には,交通事故による後遺障害に基づく損害賠償請求権の消滅時効は,症状固定と診断を受けた日から進行するものと解される(最高裁判所平成16年12月24日第二小法廷判決・集民215号1109頁参照)。しかしながら,症状固定日は,医学上一般に承認された治療方法をもってしてもその効果を期待し得ない状態であることを前提に,自然的経過によって到達すると認められる最終の状態を意味するものであるから,具体的な事情によっては後遺障害に基づく損害賠償請求権の消滅時効の起算点を症状固定日と解する必然性はないというべきである。しかして,脳外傷による高次脳機能障害は,医師により見落とされやすい障害であるとの特徴を有することは前記のとおりであることに加え,性格の変化等の症状があっても,外見上は健常人と異ならない場合があり,客観的には高次脳機能障害となってその症状が固定していたとしても,医師の診断がない段階で医学的知識に乏しい被害者が,事故により高次脳機能障害となったことを前提として損害の 人と異ならない場合があり,客観的には高次脳機能障害となってその症状が固定していたとしても,医師の診断がない段階で医学的知識に乏しい被害者が,事故により高次脳機能障害となったことを前提として損害の発生を現実に認識する ことは困難であると考えられる。原告は,症状固定日とされる日に高次脳機能障害である旨の確定診断を受けたことがなく,平成23年8月8日に至って確定診断を受けたことが認められる。そうとすれば,原告は,同日をもって高次脳機能障害の後遺障害の存在を認識し,加害者に対する損害賠償請求をすることが事実上可能な程度に損害の発生を知ったというべきである。したがって,症状固定日をもって消滅時効の起算点とすべき旨の被告らの主張は採用することができない。 被告らは,消滅時効の起算日は遅くとも平成10年9月28日(被告bがoから示談案についての回答を得られる予定であった日の翌日)であるとも主張する。 しかしながら,証拠(甲29,乙20ないし乙23,証人o)をみても,原告の両親と被告らとの間で示談交渉がなされていた当時,原告の両親が原告に高次脳機能障害の後遺障害が残存していることを認識していた事実は認められないから,この点に関する被告らの主張も採用することはできない。 以上に説示したところによれば,原告の損害賠償請求権については,高次脳機能障害に係る確定診断がなされた平成23年8月8日が消滅時効の起算日となるから,平成26年5月14日の本件訴えの提起時には3年の消滅時効期間が経過していないことが明らかであり,消滅時効は成立しないというべきである。 原告は,民法724条後段の適用については,数量的一部請求の訴えを提起した場合でも請求権全体について提訴があったものと評価することができるとし,本件訴えの提起により,本 べきである。 原告は,民法724条後段の適用については,数量的一部請求の訴えを提起した場合でも請求権全体について提訴があったものと評価することができるとし,本件訴えの提起により,本件事故に係る不法行為による損害賠償請求権全体についての法律関係の確定が終局判決の確定まで遅れることとなる旨主張する。 しかしながら,同条は,不法行為を巡る法律関係の速やかな確定を意図したものであり,同条前段の3年の短期消滅時効が被害者側の主観的な事情により完成が左右されるのに対し,同条後段の除斥期間は,被害者側の認識のいかんを問わず一定の時の経過によって法律関係を確定させるため請求権の存続期間を画一的に定めたものと解するのが相当である(最高裁判所平成元年12月21日第一小法廷判決・民集43巻12号2209頁参照)。 そして,明示的一部請求の場合は,請求された一部のみが訴訟物となり,残部は訴訟物とならず訴え提起がされていないこととなるところ,原告は,平成23年8月8日にl病院で高次脳機能障害であるとの診断がされて損害の全容が明らかになった後,あえてその一部を明示的に請求する旨の本件訴えを提起したものであり,訴え提起時においてはそれを超える部分を請求しない態度を明らかにしていたというべきである。 本件訴えのような数量的な明示的一部請求においては,本件事故により生じた損害賠償請求権全体(原告が主張する損害の全体)について審理されることになるものの,訴訟物として権利行使をしたのは当該一部のみであって,当初請求部分を超える部分(本件残部請求部分)については権利行使がされていないのであるから,本件訴えの提起は,当該部分に係る請求権の存続期間に影響を及ぼすものではないというべきである。 残部請求部分)につき請求の拡張がなされる前に本件事故 )については権利行使がされていないのであるから,本件訴えの提起は,当該部分に係る請求権の存続期間に影響を及ぼすものではないというべきである。 残部請求部分)につき請求の拡張がなされる前に本件事故から20年が経過しているから,本件残部請求部分は,除斥期間の経過により権利が消滅したものというべきである。 原告は,平成25年判決を指摘して,明示的一部請求であっても提訴による裁判上の催告の効力が継続する限り,除斥期間の経過によっても権利は消滅しない旨主張する。しかしながら,同判決は,明示的一部請求がされた場合の請求権の残部について,時効中断における裁判上の催告としての効力を 認めたものであるが,同判決が,明示的一部請求の場合は時効中断の関係においても裁判上の催告としての効力しか有さず,残部について中断効を生じさせるためには訴訟終了後6か月以内に民法153条所定の措置をとる必要があるとも判示していることからすれば,明示的一部請求の訴えが提起されただけで,当該請求権の残部についても訴えの提起があったと同様の効果が生じるものと扱うことはできないというべきである。 原告は,請求が認容された場合,裁判上の催告の効果が生じているにもかかわらず,除斥期間の経過により残部請求ができなくなるのは不当であるとも主張するが,除斥期間の経過前に請求の拡張をすることによりそのような結果を防止できるから,不当な結果を招くとの原告の主張は,およそ採用することができない。 なお,原告は,数量的一部請求の訴えの提起であっても,提訴により損害賠償請求をする旨を明らかにすれば,その後は除斥期間の問題にはならないとも主張するようであるが,独自の見解であって採用することはできない。 原告は,一部請求であることを明示することなく訴えを提起した場合には訴訟物である にすれば,その後は除斥期間の問題にはならないとも主張するようであるが,独自の見解であって採用することはできない。 原告は,一部請求であることを明示することなく訴えを提起した場合には訴訟物である債権の全部について訴求したものとみなされるから,後に請求を拡張したとしても除斥期間の問題は生じないことを指摘して,この場合と明示的一部請求をした後に請求を拡張した場合とで,権利救済の範囲を異にすることは合理性を欠く旨主張する。 しかしながら,一部請求であることを明示して訴えを提起するか否かは原告の訴訟物の選択の問題にすぎない。また,原告は,訴え提起時においてその主張する損害額全額を請求することもできたところ,あえて明示的一部請斥期間が経過する前に請求を拡張しなかったのであるから,その結果本件残部請求部分に係る権利が消滅するに至ったとしても,それは原告の訴訟追行に係る選択の結果にすぎないというほかない。したがって,原告の上記主張 は失当といわなければならない。 原告は,平成16年判決を挙げ,民法724条後段の「不法行為の時」の解釈上,原告の損害賠償請求権に係る除斥期間の起算点は,高次脳機能障害の確定診断がされた平成23年8月8日か,早くとも平成7年5月7日頃(本件事故の1年後)とすべき旨主張する。 しかしながら,同判決は,身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害や,一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害のように,当該不法行為により発生する損害の性質上,加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合は,当該損害の全部又は一部が発生した時が除斥期間の起算点となるとしたものであって,交通事故を原因とする高次脳機能障害の後遺障害に係る損害が,その損害の性質上,加害行為が終了してから相当の期間 場合は,当該損害の全部又は一部が発生した時が除斥期間の起算点となるとしたものであって,交通事故を原因とする高次脳機能障害の後遺障害に係る損害が,その損害の性質上,加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合に当たると解することはできない。そして,加害行為が行われた時に損害が発生する不法行為の場合には,加害行為の時が除斥期間の起算点となると解するのが相当である(平成16年判決参照)から,本件においては,本件事故時が除斥期間の起算点となると解するのが相当である。したがって,被告の上記主張も採用することができない。 以上で説示したところによれば,本件残部請求部分は,除斥期間の経過により権利が消滅したものというべきである。 6 まとめ以上によれば,被告aは,原告に対し,原告が本件訴えを提起した当初の一部請求額である2000万円及びこれに対する平成6年5月17日から支払済みまでの遅延損害金の支払義務を負うというべきである。また,前記前提事実bは,原告の被告aに対する判決が確定したときは,原告に対し,2000万円及びこれに対する同日から支払済みまでの遅延損害金の支払義務を負うというべきである。 第4 結論以上によれば,原告の請求は,主文第1項及び第2項の限度で理由があるからその範囲で認容し,その余の請求は理由がないからいずれも棄却すべきである。 よって,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第5部 裁判長裁判官岡山忠広 裁判官吉田豊 裁判官牧野一成 裁判官牧野一成

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る