令和2(ワ)12803等 著作物の独占的利用権に基づく侵害差止等請求事件 (第1事件)、損害賠償請求事件(第2事件)

裁判年月日・裁判所
令和4年3月30日 東京地方裁判所
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判決文本文81,286 文字)

1 令和4年3月30日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 令和2年(ワ)第12803号 著作物の独占的利用権に基づく侵害差止等請求事件 (第1事件) 令和3年(ワ)第2271号 損害賠償請求事件(第2事件) 口頭弁論終結日 令和4年2月16日 5 判 決 原 告 X1 原 告 X2 10 原告ら訴訟代理人弁護士 太 田 真 也 被 告 Y 同訴訟代理人弁護士 安 藤 絵 美 子 主 文 15 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 第1事件 20 ⑴ 被告は、別紙著作物目録記載の各著作物について、複製、自動公衆送信及び 送信可能化してはならない。 ⑵ 被告は、別紙被告公開著作物目録記載1ないし4の各著作物をいずれも削除 せよ。 ⑶ 被告は、原告らに対し、353万9228円及びこれに対する令和2年8月 25 16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 ⑷ 仮執行宣言 2 第2事件 ⑴ 被告は、原告らに対し、150万円及びこれに対する令和3年2月17日か ら支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 ⑵ 仮執行宣言 5 第2 事案の概要等 1 事案の概要 ⑴ 原告らは、「ラジオへんすて」という名称のサークルの共同運営者であると ころ、自らが企画したクラウドファンディングのプロジェクト(以下「本件企 画」という。)のために、漫画家である被告に対し、 ⑴ 原告らは、「ラジオへんすて」という名称のサークルの共同運営者であると ころ、自らが企画したクラウドファンディングのプロジェクト(以下「本件企 画」という。)のために、漫画家である被告に対し、別紙著作物目録記載1の 10 著作物(以下「本件漫画1」といい、本件漫画1を含め、「ウチのムスコがマ ザコンになった理由」という題名で被告が作成又は公開した漫画を「ウチムス マザコン」と総称する。)及び同記載2の著作物(以下「本件漫画2」といい、 本件漫画1と併せて「本件各漫画」という。)などの作成を依頼し、被告との 間で、原稿作成依頼契約(以下「本件契約」という。)を締結した。 15 ⑵ 第1事件 原告らが、被告は、本件契約を締結するに当たり、原告らに対し、本件各漫 画につき、著作権法63条1項に基づく独占的利用許諾をする旨の合意(以下 「本件合意」という。)をしたにもかかわらず、これに違反して、本件各漫画 と同一の内容である別紙被告公開著作物目録記載の各著作物(以下「被告公開 20 著作物」と総称する。なお、被告公開著作物の具体的な内容は、次に掲げる被 告公開著作物一覧①ないし⑤のとおりである。)を公開したと主張して、著作 権法112条に基づき、本件各漫画の複製、自動公衆送信及び送信可能化の差 止め並びに被告公開著作物1ないし4の削除を求めるとともに、被告には、本 件合意に違反して、被告公開著作物をインターネット上のウェブサイト等にお 25 いて公開した行為による債務不履行のほか、本件企画に関して委託した業務に 3 関し、次に掲げる本件各債務不履行一覧①ないし⑧の各債務不履行(以下、順 に「本件債務不履行1」ないし「本件債務不履行8」といい、併せて「本件各 債務不履行」という。)があると主張して、損害賠償金353万9228円及 びこれに対する訴状送達の いし⑧の各債務不履行(以下、順 に「本件債務不履行1」ないし「本件債務不履行8」といい、併せて「本件各 債務不履行」という。)があると主張して、損害賠償金353万9228円及 びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和2年8月16日から支払済み まで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合 5 による遅延損害金の支払を求める事案である。 (被告公開著作物一覧) ① 被告のブログに公開された、本件漫画1の末尾に収録されている4コマ 漫画「ありし日の失敗」(被告公開著作物1及び3) ② 被告のブログに公開された、本件漫画1の末尾に収録されている4コマ 10 漫画「ありし日の失敗2」(被告公開著作物載2) ③ インターネット上のサービスであるpixivに公開されたウチムス マザコン(被告公開著作物4) ④ 株式会社イースト・プレス(以下「イースト・プレス」という。)から 発行されたウチムスマザコンの単行本(被告公開著作物5) 15 ⑤ 被告のツイッターアカウントに投稿された本件漫画2の一コマ(被告公 開著作物6) (本件各債務不履行一覧) ① 本件企画において発行する同人誌の原稿につき、依頼した内容と異なる 原稿を提出したこと及び履行期限までに原稿を提出しなかったことによ 20 る債務不履行(本件債務不履行1) ② 本件漫画2につき、履行期限までに原稿及びネームを提出しなかったこ とによる債務不履行(本件債務不履行2) ③ 本件漫画1につき、事前の合意に反し、既存の公開済みの作品を提出し たとこと、依頼した内容と異なる原稿を提出したこと及び履行期限までに 25 原稿を提出しなかったことによる債務不履行(本件債務不履行3) 4 ④ 本件漫画1につき、履行期限までにネームを提出しなかったことによる 債務不履行( 稿を提出したこと及び履行期限までに 25 原稿を提出しなかったことによる債務不履行(本件債務不履行3) 4 ④ 本件漫画1につき、履行期限までにネームを提出しなかったことによる 債務不履行(本件債務不履行4) ⑤ 本件企画の宣伝用の漫画につき、履行期限までに原稿を提出しなかった ことによる債務不履行(本件債務不履行5)、 ⑥ 本件企画に関し、通常一般に非公開であるべき機密情報を漏えいしたこ 5 とによる債務不履行(本件債務不履行6)、 ⑦ 本件企画のイベントである打上げへの参加を直前にキャンセルしたこ とによる債務不履行(本件債務不履行7) ⑧ 本件漫画2のうちの1コマをツイッターにおいて公開したことによる 債務不履行(本件債務不履行8) 10 ⑶ 第2事件は、原告らが、第1事件の係属中に、被告が、本件企画に参加した 他の漫画家9名に対し、「独占的利用権を許諾(譲渡)するということは、著 作者(作家)であっても自分の著作物(作品)を一切使えない」などと記載さ れた文書を送付したことが不正競争防止法2条1項21号にいう「虚偽の事実」 の告知に該当すると主張して、被告に対し、同法4条に基づき、損害賠償金1 15 50万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和3年2月17日か ら支払済みまで民法所定の年3分の割合による金員の支払を求める事案であ る。 2 前提事実(後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実をいう。なお、 本判決を通じ、証拠を摘示する場合には、特に記載しない限り、枝番を含むもの 20 とする。) ⑴ 当事者 ア 原告らは、 「ラジオへんすて」という名称のサークルの共同運営者である。 イ 被告は、漫画家であり、本件各漫画の作者である。 ⑵ 本件企画 25 ア 本件企画は、「ラジ ア 原告らは、 「ラジオへんすて」という名称のサークルの共同運営者である。 イ 被告は、漫画家であり、本件各漫画の作者である。 ⑵ 本件企画 25 ア 本件企画は、「ラジオへんすて」の5周年を記念して企画されたものであ 5 り、いわゆるクラウドファンディングの手段により資金を募った上で、「ラ ジオへんすて」と関係のある漫画家に漫画原稿の作成を有償で依頼し、それ らを収録した1冊のコミック本(乙7。以下「本件コミック」という。)を 制作し、資金を提供した支援者(以下、単に「支援者」という。)に配布す ることなどを主たる目的とするものである。 5 そして、本件企画においては、支援者に対する返礼品として、支援金額に 応じ、本件コミックのほか、「絆」というタイトルの同人誌(以下「同人誌 「絆」」という。)、本件企画に参加した漫画家の作品に対する思いや意気 込みを収録したCD、お礼状、本件コミックの表紙のイラストを用いたグッ ズ等の配布や、漫画家が同席する打上げ(以下、単に「打上げ」という。) 10 への招待といった各種の特典が設けられていた。そして、原告らは、漫画家 に対し、本件コミックに収録される原稿の作成や提供以外にも、上記のよう な各種特典の提供に関しても、任意かつ無償の協力を求めていた。 イ 本件企画は、支援金につき目標金額及び募集期間を設定するものであり、 募集期間中に集まった支援金が目標金額に満たなかった場合には、「プロジ 15 ェクト不成立」となり、支援金は全額、支援者に対して返金される一方で、 漫画家は、本件コミックのために提供した漫画原稿に係る原稿料の支払を受 けることはできないこととされていた。 (以上につき、甲2の1、甲11の1~6、乙7、28、弁論の全趣旨) ⑶ 被告によるウチムスマザコンの公開 クのために提供した漫画原稿に係る原稿料の支払を受 けることはできないこととされていた。 (以上につき、甲2の1、甲11の1~6、乙7、28、弁論の全趣旨) ⑶ 被告によるウチムスマザコンの公開 20 被告は、平成29年6月27日以降、現在に至るまで、pixivにおいて、 ウチムスマザコンを公開している(被告公開著作物4。なお、ここで公開され ているウチムスマザコンを、特に「pixiv版」という。)。 ⑷ 本件契約の締結 原告らと被告は、平成29年7月28日、本件契約を締結した(ただし、本 25 件契約の具体的内容については、後述のとおり、当事者間に争いがある。)(弁 6 論の全趣旨)。 ⑸ 本件企画の経過 「ラジオへんすて」は、平成29年9月1日、募集期間を2か月間、目標金 額を157万円と設定の上、本件企画の募集を開始したところ、同年10月2 8日に、支援金額が募集金額を上回り、本件企画は「サクセス」となった(乙 5 28)。 ⑹ 本件コミックの発行 原告らは、平成29年12月頃、本件漫画1を含め、本件企画に参加した1 0名の漫画家による作品を収録した本件コミック「Thank U」を発行し、 その頃、支援者に配布した(乙7、弁論の全趣旨)。 10 ⑺ 原稿料の支払 原告らは、平成29年12月22日、被告に対し、本件漫画1に対する原稿 料として、32万6976円を支払った(甲5)。 ⑻ SNS等における被告の投稿 ア 被告は、平成29年11月1日、自らのツイッターアカウントにおいて、 15 「作家は誰しもが、その紙の上の世界にリンクして執筆作業をしている。そ のオンとオフの切り替えが上手くできなくて、ツイッターに出て来れません でした。こんなになってまで何故描く必 ントにおいて、 15 「作家は誰しもが、その紙の上の世界にリンクして執筆作業をしている。そ のオンとオフの切り替えが上手くできなくて、ツイッターに出て来れません でした。こんなになってまで何故描く必要があるか?その答えは、みなさん が支援してくださったへんすてクラウドファンディングの本に載ることに なるでしょう」と投稿した(甲10の1)。 20 イ 被告は、平成29年11月1日、自らのツイッターアカウントにおいて、 「伝えようとしたいことが伝わらず言いたいように言われ、葛藤を抱えなが らのダイブは精神を削り取りました。矛盾と理不尽の中で、くじける思いも しましたがあと2Pなのでトンネル出るまで頑張ります。クラウドファンデ ィングの応援ありがとうございました。そして遅ればせおめでとうございま 25 す。」と投稿した(甲10の1)。 7 ウ 被告は、平成29年12月29日、ツイッターのいわゆる鍵アカウントに おいて、「更にそのお金は作家にいきませんからねー。」と投稿した(甲1 0の2)。 エ 被告は、平成30年7月12日、自らのブログにおいて、「実は、この半 年間は弁護士さんにお世話になっています。昨年参加した同人誌のトラブル 5 に巻き込まれて現在も弁護士を通して対応を検討中です。上記対応中のため 詳細は控えますが、心身共に疲弊しており一日でも早く上手い着地点に収ま ることを願っております。」と投稿した(甲10の3)。 ⑼ ウチムスマザコンの書籍化 被告は、平成30年3月26日、イースト・プレスを発行者として、ウチム 10 スマザコンの単行本(被告公開著作物5)を発行した(乙54、弁論の全趣旨。 なお、この単行本に収録されたウチムスマザコン(全126ページ)を、特に 「イースト・プレス版」という。)。 ⑽ 被告による本 スマザコンの単行本(被告公開著作物5)を発行した(乙54、弁論の全趣旨。 なお、この単行本に収録されたウチムスマザコン(全126ページ)を、特に 「イースト・プレス版」という。)。 ⑽ 被告による本件漫画2の一コマの投稿 被告は、平成30年2月5日、被告公開著作物6記載のとおり、本件漫画2 15 のうちの一コマを他の画像とともに、被告のツイッターアカウントにおいて投 稿したが、同投稿は、現在は削除されている(甲4の6、弁論の全趣旨)。 ⑾ 本件訴訟の提起等 ア 原告らは、令和2年5月25日、当庁に本件訴訟(第1事件)を提起した (当裁判所に顕著な事実) 20 イ 被告代理人は、第1事件が当裁判所に係属中の令和2年11月17日頃、 本件企画に参加した9名の漫画家に対し、「照会書」と題する書面(以下「本 件照会書」という。)を送付した。 本件照会書の内容は、漫画家がそれぞれ本件コミックのために提供した作 品について、「ラジオへんすて」に対し独占的利用権を許諾(譲渡)したか 25 否かを尋ねるものであり、その本文中には、次のような記載が存在する。 8 「独占的利用権を許諾(譲渡)するということは、著作者(作家)であ っても自分の著作物(作品)を一切使えない(出版、インターネットやツ イッターでの表示、同様の作品や登場人物の絵を公表することも含む)と いうことを意味しています。作家の先生方がへんすてに独占的利用権を許 諾(譲渡)したか否かについてお教え下さい。また、関連事項もお答えい 5 ただければ幸いです。」 「お忙しいところ大変恐縮ですが、何卒、著作権者の権利擁護のため、 ご協力を賜りたくお願い申し上げます。」 (以上につき、乙8~16、第2事件の甲3) ⑿ 被告によるウチムスマザコンの一部 「お忙しいところ大変恐縮ですが、何卒、著作権者の権利擁護のため、 ご協力を賜りたくお願い申し上げます。」 (以上につき、乙8~16、第2事件の甲3) ⑿ 被告によるウチムスマザコンの一部公開 10 被告は、現在、自らのブログにおいて、被告公開著作物1ないし3を公開し ている。 第3 争点 1 本件各漫画に係る独占的利用許諾契約の成否(争点1) 2 本件各債務不履行の有無 15 ⑴ 同人誌「絆」の原稿提出に係る債務不履行の有無(本件債務不履行1)(争 点2) ⑵ 本件漫画2の原稿提出に係る債務不履行の有無(本件債務不履行2)(争点 3) ⑶ 本件漫画1の原稿提出に係る債務不履行の有無(本件債務不履行3)(争点 20 4) ⑷ 本件漫画1のネームの提出に係る債務不履行の有無(本件債務不履行4)(争 点5) ⑸ 宣伝用漫画原稿の提出に係る債務不履行の有無(本件債務不履行5)(争点 6) 25 ⑹ 機密情報の漏えいに係る債務不履行の有無(本件債務不履行6)(争点7) 9 ⑺ 打上げのキャンセルに係る債務不履行の有無(本件債務不履行7) (争点8) ⑻ 本件漫画2の無断公開に係る債務不履行の有無(本件債務不履行8)(争点 9) 3 「虚偽の事実」の告知の有無(争点10) 4 原告らの損害(争点11) 5 5 差止めの必要性(争点12) 第4 争点に対する当事者の主張 1 争点1(本件各漫画に係る独占的利用許諾契約の成否)について (原告らの主張) ⑴ 本件企画の趣旨 10 ア クラウドファンディングとは、企画者が実現したい企画を有しているもの の、それを実現するための資金がない場合に、支援者に対し、当該企画に対 する思いや熱意、発案の理由などとともに、当該企 10 ア クラウドファンディングとは、企画者が実現したい企画を有しているもの の、それを実現するための資金がない場合に、支援者に対し、当該企画に対 する思いや熱意、発案の理由などとともに、当該企画が実現した場合のリタ ーン(返礼品)を提示した上で資金を募るものであり、先行投資型の資金調 達手段である。 15 当該企画に魅力を感じた支援者が、当該企画に対する支援として資金を拠 出し、募集期間内に集まった資金の合計額が当初設定された目標金額に到達 した場合には、企画者は当該企画を実行し、支援者に対して返礼品を提供す る必要がある。これに対し、募集期間内に得られた資金が目標金額に満たな かった場合には、当該企画は白紙となり、それまでに集まった資金は全額支 20 援者に返却する必要がある。 したがって、企画者が自らの企画を実現させるためには、支援により得ら れるメリットやレアリティー(市場におけるプレミア価値をいう。以下同じ。) を明らかにした上で、支援者に対し、当該企画の魅力を積極的にアピールす る必要がある。 25 イ 本件企画は、「ラジオへんすて」の発足から5周年を記念して、漫画を収 10 録したコミック(本件コミック)やCD等の頒布物を制作・発行することを 主たる目的とする企画であるところ、当該漫画がインターネット上で全て公 開されているのであれば、支援者は、あえてお金を出して支援する必要はな いと感じてしまうため、本件企画に当たっては、「本件コミックでしか読め ない内容が含まれる」という公約を掲げる必要があった。 5 そして、本件コミックに収録した漫画を他の出版社で書籍化したり、イン ターネット上で公開したりすることにより、上記のような公約を破ることは、 支援者が支援を行った理由を失わせるものであり、詐欺行為にも受け取られ 件コミックに収録した漫画を他の出版社で書籍化したり、イン ターネット上で公開したりすることにより、上記のような公約を破ることは、 支援者が支援を行った理由を失わせるものであり、詐欺行為にも受け取られ かねないため、企画者の信用を失墜させ、さらには、支援金の払戻しなどの 損害賠償問題に発展するおそれがある。 10 ⑵ 本件合意の成立 ア 合意に至る経緯 5月10日の打合せ(以下、平成29年の出来事については、月日のみ を記載する。) 被告は、5月10日当時、ウチムスマザコンを自分のツイッターに投稿 15 していたところ、それまで被告はSNS上にアップロードした連載作品を 最後まで完結させたことがなかった。 そこで、原告X2は、ウチムスマザコンが未完のまま終わることがない ように応援したいという気持ちから、被告に電話で連絡を取り、本件企画 に参加してウチムスマザコンを完結させ、コミックとして出版することを 20 提案した。その際、原告X2は、被告に対し、クラウドファンディングの システムや本件企画の趣旨、契約内容や本件企画への参加条件等について 説明し、ウチムスマザコンをpixivやツイッターで全て公開し、支援 をしなくても無料で読める状態にしてしまうと、支援者に対するレアリテ ィーを提供することができなくなるため、本件企画への参加条件が失われ 25 てしまうことを伝えた。 11 これに対し、被告は、「pixivで公開するのは、全話じゃなくて、 ウチムスの話の結末は、クラウドファンディングで出版するコミックだけ で読めるようにしましょう。続きが気になったら支援して。みたいな」な どと述べ、参加条件を理解したため、原告らは、被告の本件企画への参加 を承諾した。 5 また、原告X2は、「ラジオへんすて」のスタ ようにしましょう。続きが気になったら支援して。みたいな」な どと述べ、参加条件を理解したため、原告らは、被告の本件企画への参加 を承諾した。 5 また、原告X2は、「ラジオへんすて」のスタッフで、平成28年に他 界した「人妻づま子」というハンドルネームの女性についての漫画(本件 漫画2)の作成を依頼したところ、被告はこれを承諾した。原告X2は、 プロット(原作)は原告X2において作成した上で、被告が作画を担当す ることや、本件コミック以外での公開は認められないことを説明したが、 10 被告も、本件企画の趣旨を理解して参加することになったものである。 5月30日の松本市での打合せ 原告らは、被告がその後もpixivやツイッターでウチムスマザコン の公開を続けていたことから、被告がこのまま全話を公開してしまうので はないかという懸念を抱き、5月30日、長野県松本市の喫茶店にて被告 15 との打合せ(以下「5月30日の打合せ」という。)を行った。 原告X2は、5月30日の打合せにおいて、被告に対し、再度、ウチム スマザコンの全話をpixivやツイッターで公開してしまうと、本件企 画のレアリティーが失われるため、本件企画への参加条件が失われること や、本件企画はpixivで公開した作品をそのまま本に収録するという 20 ものではないことなど、本件企画におけるレアリティーの必要性について 説明した。これに対し、被告は、ウチムスマザコンの全話をインターネッ ト上で公開したとしても、「はなまるきょうだい」という漫画を付加する ことにより、レアリティーを維持することができるなどと提案したが、原 告X2はこれに応じなかった。 25 これを受けて、被告は、pixivでウチムスマザコンのラストを未公 12 開とすると、既存の読者が辛い気持 ティーを維持することができるなどと提案したが、原 告X2はこれに応じなかった。 25 これを受けて、被告は、pixivでウチムスマザコンのラストを未公 12 開とすると、既存の読者が辛い気持ちになってしまうため、pixivで もラストは公開するが、その代わりに、話の途中を一部未公開にすること で本件企画のレアリティーを提供することができると提案した。これに対 し、原告X2は、本意ではなかったものの、辛うじてレアリティーが維持 できると考えたことから、同提案を受け入れ、本件企画への被告の参加を 5 承諾することとした。 被告による公開 被告は、6月20日、原告らに対し、「「ウチムスマザコン」は、あと 10頁で、60頁構成の全ページが描き終わる。ひとまずネット版では、 残り10ページ中の、5~6ページを公開して終わる予定で、ラジオへん 10 すてクラウドファンディングのコミックになるときに、残り10ページ中 の4~5ページ分を追加エピソードとして収録し、ここでしか読めない特 典的につける。」という内容の進捗報告をしたため、原告らは、被告が5 月30日の打合せどおりに作業を進めているという認識を持った。 しかしながら、被告は、6月27日、原告らに対する事前の連絡なく、 15 ウチムスマザコンにつき、全60ページ(pixiv版)をpixivで 公開した。 イースト・プレスでの書籍化 被告は、6月29日、原告らに対し、イースト・プレスからウチムスマ ザコンの書籍化のオファーを受けた旨を報告したため、原告らは、被告に 20 は本件企画への参加意思がないものと受け止め、本件企画への参加は辞退 した上で、他社で書籍化をすることを求める趣旨で、「他でもコミックス 化できるのは喜ばしいことで応援しています。 らは、被告に 20 は本件企画への参加意思がないものと受け止め、本件企画への参加は辞退 した上で、他社で書籍化をすることを求める趣旨で、「他でもコミックス 化できるのは喜ばしいことで応援しています。」と返事をしたが、原告X 2が原作者となり、被告が作画を担当する「づま子のキセキ」は別なので、 締切日は10月末日ぐらいであることを伝えた。 25 これに対し、被告は、原告らに対し、①他社での書籍化の場合には、ほ 13 ぼ書き直しになるため、本件コミックに収録される漫画(以下、本件コミ ックに収録されるウチムスマザコンを、特に「本件コミック版」という。) の原稿とは別物になることに加え、②pixiv版の一部を削除し、その 部分に、本件コミックに収録されるまでの流れを新規で掲載することを提 案した。 5 原告らは、本件企画に関しては、支援したからこそ得られるレアリティ ーが重要であり、本件コミックでしか読めない内容が含まれている必要が あることなどを再度確認したところ、被告は、重ねて、上記①・②の点を 約束したため、原告らは、本件企画への被告の参加を引き続き承諾するこ ととした。 10 これを受け、被告は、同月30日、イースト・プレスの担当者に送った メールの写しを原告らにもスカイプで共有したが、そこには、①他社出版 社で書籍化の際は書き足し・書き直しがある、②他社出版社で書籍化の際 には、ラジオへんすてクラウドファンディングコミック用に提出したもの と同じ原稿は載せない、③他社出版社で書籍化の際には、ラジオへんすて 15 クラウドファンディングコミック用に提出したエピソードから削った上 で、別エピソードを追加の形で収録するとの記載がある。 7月13日の電話打合せ及びその後の被告の対応 被告は、7月13日にも、原告らと電 ク用に提出したエピソードから削った上 で、別エピソードを追加の形で収録するとの記載がある。 7月13日の電話打合せ及びその後の被告の対応 被告は、7月13日にも、原告らと電話で打合せを行い、上記②の点を 約していたが、その数日後に、原告らに対し電話をして、途中のページの 20 差替えではなく、本件コミック版には、60ページの後に書き下ろしを付 けるなどと、再度合意内容を変更する旨の提案を一方的に行った。しかし、 原告らは、それだと60ページで一旦話が完結してしまう上に、既にネッ トで公開済みの60ページ分については一切変化がないことになるため、 当該60ページ分にはレアリティーがあるとはいえないと考え、被告に対 25 し、本件コミックに収録するのは新規で書き下ろす4ページ分に限られる 14 旨を伝えた。 これに対し、被告は、64ページ分の原稿料が必要であると主張し、強 い不満を表明したため、原告X2は、本意ではなかったものの、被告との 間で、本件コミックが発行されるまでの間に、pixiv版60ページに つき、非公開とするか、又は削除や内容の差替えを行うなどして、本件コ 5 ミック版のレアリティーを確保することを条件として、本件コミックに6 4ページ全体を収録することを合意した。 アンケートの実施 原告らは、新規書き下ろし分の4ページの内容に少しでもレアリティー を付加できるようにするため、7月14日から同月20日までの間、当時 10 既に公開されていたウチムスマザコンの読者に対し、どのような内容の漫 画が収録されれば購入・支援したいと感じるかについてのアンケート調査 を実施した。 その後、原告らは、同月28日、被告に対し、上記アンケート調査の結 果を報告した。 15 の漫 画が収録されれば購入・支援したいと感じるかについてのアンケート調査 を実施した。 その後、原告らは、同月28日、被告に対し、上記アンケート調査の結 果を報告した。 15 7月20日の打合せ 原告X2は、7月20日、スカイプで、被告に対し、同月28日の打合 せに関し、事前に質問事項等を伝えた上で、後から合意内容が覆ることの ないように、充実した打合せを行い、契約内容をきちんと確認したいとの 意向を伝えた。その際、被告からは、イースト・プレスでの書籍化の際に 20 は、ページ数が120ページになるため、全部書き直しになる旨の説明が あった。 7月28日の打合せ 原告ら及び被告は、7月28日、松本駅内の喫茶店において、本件企画 についての打合せ(以下「7月28日の打合せ」という。)を行った。 25 その際、原告X1は、被告に対し、本件企画の規約を印刷した書面(甲 15 2の1)を読み上げながら説明した。そして、原告らは、被告に対し、改 めて、他の出版社でウチムスマザコンを書籍化し、本件コミックのレアリ ティーを維持することができないのであれば、ウチムスマザコンという作 品で本件企画に参加することは差し控えるよう伝えた。 これに対し、被告は、①イースト・プレスに提出するウチムスマザコン 5 の原稿(イースト・プレス版)は、新たに書き直す予定であり、本件コミ ック版原稿とは別物となるため、本件コミックのレアリティーは損なわれ ない旨や、②本件コミック版の分量は60ページであるのに対し、イース ト・プレス版の分量は120ページであるため、本件コミック版をそのま ま使用することはできない旨を原告らに説明した。 10 イ 合意の成立 以上のとおり、原告らは、被告に対し、前記⑴のような ・プレス版の分量は120ページであるため、本件コミック版をそのま ま使用することはできない旨を原告らに説明した。 10 イ 合意の成立 以上のとおり、原告らは、被告に対し、前記⑴のような本件企画の趣旨を 伝え、本件企画のために作成した作品については、レアリティーが重要であ るため、原告らが独占的に使用することができるものであることや、被告に おいて同じ内容のものをインターネット上で公表したり、他社から出版した 15 りするのであれば、レアリティーが失われるため、本件クラウドファンディ ング企画への参加を辞退するよう説明したところ、被告は、他の出版社等で 出版等をする場合には、「違いを楽しむもの」や「全ページ書き直し」にな るため、レアリティー(プレミア価値)は損なわれないことを約束したもので ある。 20 なお、ここでいう「違いを楽しむものになる。」、「全ページ書き直し」 とは、全く同一内容の著作物ではないこと、すなわち、いわゆるデッドコピ ー(違いを明確に認識できないものや、見た目が同一となるもの、一部表現 が変わっても意味合いが変わらないもの)状態ではないことを意味する。 そして、被告は、本件企画の趣旨を理解した上で、7月28日、原告らと 25 の間で、本件企画へ参加し、①本件各漫画の原稿を作成し、原告らに提出す 16 る旨の契約(本件契約)を締結するとともに、②被告自身も本件各漫画を利 用することができなくなり、仮に被告において、本件各漫画をインターネッ トで公表したり、他の出版社から発売したりするなど、本件企画のレアリテ ィーを失わせるような行為をした場合には、原告らにおいて当該行為につい て差止めや削除を請求することができることを当然の前提として、原告らに 5 対し、本件各漫画を独占的に利用することを許諾する旨の合意( を失わせるような行為をした場合には、原告らにおいて当該行為につい て差止めや削除を請求することができることを当然の前提として、原告らに 5 対し、本件各漫画を独占的に利用することを許諾する旨の合意(本件合意) をした。 ウ 被告の主張に対する反論 被告は、本件合意の成立を否認するが、次のとおり、その主張には理由が ない。 10 被告は、本件合意の存在を裏付ける書面が存在しない旨主張するが、上 記のとおり、被告は、一旦合意した内容を幾度となく反故にしており、原 告らが新たな合意内容を証拠として残そうとすると、「漫画家Y´を信じ てください。」などと言い、原告らを威圧して証拠となる書面等の作成を 阻止したため、契約書が作成できなかったものである。 15 被告は、原告X2において、ウチムスマザコンがイースト・プレスから 書籍として出版される予定であることに対し、何ら異議を述べなかった旨 主張するが、被告は、「他社の書籍化の場合は、ほぼ書き直し」、「他社 出版社で書籍化の際には、ラジオへんすてクラウドファンディングコミッ ク用に提出したものと同じ原稿はのせない」と述べており(甲2の6)、 20 イースト・プレスから同一の著作物が出版される予定とは伝えていない。 むしろ、被告は、同一の著作物が書籍化されると、原告らに提出する本 件漫画1のレアリティーが失われることを認識していたからこそ、原告ら に対し、両者は別物になる旨説明していたものである。 原告らは、7月28日の打合せの際に、被告に対し、「他社出版社でウ 25 チムスマザコンを書籍化することで、ラジオへんすてクラウドファンディ 17 ングコミックのレアリティーを守れない状態になるなら、ウチムスマザコ ンという作品での参加はしないでください。」と伝えたところ、 マザコンを書籍化することで、ラジオへんすてクラウドファンディ 17 ングコミックのレアリティーを守れない状態になるなら、ウチムスマザコ ンという作品での参加はしないでください。」と伝えたところ、被告は、 「他社出版社で提出するウチムスマザコンの原稿はラジオへんすてクラ ウドファンディングに提出する原稿とは別物になり、同じ表現でも書き直 しになるので、ラジオへんすてクラウドファンディングに提出する原稿の 5 レアリティーは損なわれない。」、「ラジオへんすてクラウドファンディ ングコミックでの60頁は、他社出版社版ではより詳細に書き直しになる ので、120ページ構成になり、ラジオへんすてクラウドファンディング コミックへ提出した原稿を、そのまま他社出版社で使うことはできないの で安心してほしい。」などと説明した。 10 被告は、原告らがイースト・プレスでの書籍化を応援していた旨主張す るが、原告らは、被告が6月27日、事前の合意に反してウチムスマザコ ン全60ページをpixivで公開したことに加え、同月29日、他の出 版社から書籍化のオファーを受けた旨報告してきたことから、被告には本 件企画に参加する意図がないものと受け止め、本件企画にはウチムスマザ 15 コンを提出しないという前提で、書籍化を勧める内容の返信をしたもので ある。 原告X2が「ウチムス漫画に感じたから、広く伝えたい」とのメッセー ジを送信したのは、前後の文脈に照らせば、ウチムスマザコンという作品 に対する敬意から、同作品の良さが世の中に広く知られること自体は喜ば 20 しい旨を伝えるものにすぎず、レアリティーを失わせるような行為を許容 する趣旨ではない。 また、原告らは、他社で書籍化したとしても、支援者やラジオへんすて の不利益にはならない旨の被告の回答を受け を伝えるものにすぎず、レアリティーを失わせるような行為を許容 する趣旨ではない。 また、原告らは、他社で書籍化したとしても、支援者やラジオへんすて の不利益にはならない旨の被告の回答を受けて、本件企画への被告の参加 を了承した上で、「書籍化のお話は、普通にチャンスですので、「うまく 25 進めて」下さい!へんすてでY´先生の漫画を独占したい気持ちや、先に 18 だしたいとかはないです。」などと述べたものであり、被告が本件コミッ ク版原稿と同一内容の漫画を他社で出版することを許容していたもので はない。 被告は、原告X2が10月20日、被告に対し、「ブログから抜粋して 書くことわかりました」と伝えたことを根拠に、公開済みの作品を提出す 5 ることを許容していた旨主張する。しかしながら、「ブログから抜粋して 書く」というのは、前後の文脈に照らして、「被告のブログから、文章や 絵画によって表現されたアイディア(ネタ)をヒントにして新たに書き下 ろす」という意味であり、ブログに掲載されている既存の漫画をそのまま 収録するという意味に解することはできない。 10 被告は、32万6976円の原稿料で著作権を譲渡することなどあり得 ない旨主張するが、原告らが被告から受けたのは、著作物の独占的利用権 であって、著作権の譲渡ではない。原告らと被告との間の独占的利用許諾 契約により、著作者である被告が行えなくなるのは、当該著作物と全く同 一内容の著作物をインターネット上で公表したり、他の出版社から発売し 15 たりするといった当該企画におけるレアリティー(プレミア価値)を喪失 させるような行為のみである。 ⑶ 被告による本件合意違反 被告は、本件合意に反して、本件漫画1については、インターネット上のウ ェブサイトやpixivで公開し ティー(プレミア価値)を喪失 させるような行為のみである。 ⑶ 被告による本件合意違反 被告は、本件合意に反して、本件漫画1については、インターネット上のウ ェブサイトやpixivで公開したほか、公開したpixivのURLをツイ 20 ッターにて拡散したりし、また、イースト・プレスにて書籍化されたウチムス マザコンの宣伝に当たっても、公開先のpixivのURLを投稿したり、被 告がツイッターにおいて熱中症に関する漫画を公開した際にも公開先のUR LのQRコードを掲載したりしているほか、書籍としても出版している。また、 本件著作物2については、ツイッターで公開している。 25 したがって、原告らは、本件合意に基づき、被告に対し、本件各漫画につき、 19 差止め及び削除を求めるものである。 (被告の主張) ⑴ 本件企画の趣旨 被告は、本件企画の趣旨について、原告らから具体的な説明を受けていない。 ⑵ 本件合意に至る経緯 5 ア 5月10日の打合せ 原告らは、5月10日、被告に対し、「ラジオへんすて」の活動5周年を 記念するクラウドファンディングを企画していること、その企画内容として、 ①漫画家への感謝とお礼の気持ちを込めて、本当に描きたいものをテーマに してコミックを制作することや、②ラジオへんすてメンバーであった人妻づ 10 ま子の生きた軌跡を知ることで、「いのち」と向き合う契機とすることを考 えている旨を伝えた。 その上で、原告らは、被告に対し、ウチムスマザコンのコミック化を提案 し、被告としても、原稿を提供するという大枠については承諾したが、当時、 それ以外には具体的な条件は何ら決まっていなかった。そして、詳細につい 15 ては追って話し合うこととされ、同日の時点では、インターネットで公開可 能な範囲や原 という大枠については承諾したが、当時、 それ以外には具体的な条件は何ら決まっていなかった。そして、詳細につい 15 ては追って話し合うこととされ、同日の時点では、インターネットで公開可 能な範囲や原稿料については明確な提案も合意もなく、被告は、原告らから、 インターネットで全てを公開した場合には本件企画に参加することができ ないという説明は受けていない。そもそも、被告は、原告らから、「レアリ ティー(プレミア価値)」という言葉も聞いていない。 20 もとより、原告らは、被告に対し、著作物の独占的利用権の設定を求める ことなどなく、本件企画に参加して原稿を提供することが、当然に当該原稿 に係る著作物の独占的利用権を許諾することになるといった説明もなかっ た。 イ 5月15日のやり取り 25 原告X1は、5月15日、被告に対し、クラウドファンディングを成立さ 20 せるためには、多くの人にクラウドファンディングについて知ってもらった 上で、多くの人に参加してもらうことが何よりも重要である旨のメッセージ を送信した。 これを受けて、被告は、原稿を提出しても、クラウドファンディングが不 成立になればコミック化は実現されず、原稿料の支払も受けられないという 5 不安定な依頼であることを理解した。 ウ 5月26日ないし28日のやり取り 原告X2は、5月26日、被告に対し、「全てのページをネットで公開予 定でしょうか?」、「大体なんページくらいになりそうでしょうか」とのメ ッセージを送信した。 10 これに対し、被告が、全てのページを公開する予定であることや、ページ 数は現時点では40ページであるが、最終的には50ページになる予定であ ることに加え、本件コミックへの収録が難しいようであればその旨伝えてほ しい旨回答す 全てのページを公開する予定であることや、ページ 数は現時点では40ページであるが、最終的には50ページになる予定であ ることに加え、本件コミックへの収録が難しいようであればその旨伝えてほ しい旨回答すると、原告X2は、「お金を落としたいと思っていただける内 容にしていかないといけない部分もありますので、また相談させてくださ 15 い。」などと答えたが、インターネットで公開してはならないなどとは述べ ず、かえって、「はなまるきょうだい」をおまけとして付けるという被告の 提案に対し、「前向きに皆に話してきますね!」、「さっそく話したら、ウ チマザと同じ題材で明るい話題なら、読者もホット出来て楽しめるのでは? と意見来ています。まずは見てみたいと意見出ているので、プレゼンできそ 20 うなところ(今ある分全部でも大丈夫です)頂けましたらチームにお見せし ますね!」と、リターン品としての本件コミックでは「おまけ」が読めるよ うにする方向で計画を進めていった(乙1)。 また、原告X2は、同月28日には、被告に対し、「この漫画を同人誌(自 主出版)することは誰にも何処にもご迷惑はかからないという認識で進めて 25 良いのですね?」と更に質問をし、被告が、「はい、誰にもどこにも迷惑か 21 かりません。著作権は私です!」と回答すると、原告X2は、「わーい!良 かったです!」とのメッセージを送信し、ほかに公開が続くことを前提にや り取りを行った。 エ 5月30日の打合せ 被告は、5月30日の打合せにおいて、原告X2から、本件企画が「ラジ 5 オへんすて」初の企画であり、返礼品の制作を考えていることや、できる範 囲で参加してほしいことなどを伝えられたものの、その打合せの内容は、本 件企画を成功させるための意見交換や、本件漫画2の内容等を和やかに協議 すると 企画であり、返礼品の制作を考えていることや、できる範 囲で参加してほしいことなどを伝えられたものの、その打合せの内容は、本 件企画を成功させるための意見交換や、本件漫画2の内容等を和やかに協議 するというものであり、原告らから具体的な参加条件や契約内容を示され、 被告がこれを承諾するというような場面はなかった。そのため、同日の時点 10 では、参加条件や契約内容は未確定であった。 また、被告は、原告らから、インターネットでウチムスマザコンを公開す ると、本件企画には参加できなくなることや、著作権の扱いについての説明 を受けておらず、独占的利用権という言葉も出ていない。そして、被告が「は なまるきょうだい」を「おまけ」として追加することを提案し、原告X2が 15 これを却下したという事実も存在しない。 オ 被告による公開 被告は、6月20日、原告X2に対し、「ウチムスマザコンも遺すところ あと10Pです。ひとまずネット版では5~6Pで終わる予定で、へんすて ブックになるときに加筆ぶんとして追加EPを特典的につけたいと思って 20 います。」などと、インターネット版の公開をすることを伝えた(乙1〔1 4頁〕)。当時、被告としては、本件コミック版として追加のエピソード漫 画を収録することを考えていた。 その上で、被告は、同月27日、pixivでウチムスマザコンを全てア ップロードし、公開した。この時点でも、本件企画への参加のための具体的 25 な条件等は合意されておらず、インターネットに公開しないという合意も存 22 在しなかった。 カ 他の出版社での書籍化 被告は、6月29日、原告X2に対し、イースト・プレスから書籍化の提 案があったことを伝えたところ、原告X2は、「大丈夫ですよ~」、「へん すてより った。 カ 他の出版社での書籍化 被告は、6月29日、原告X2に対し、イースト・プレスから書籍化の提 案があったことを伝えたところ、原告X2は、「大丈夫ですよ~」、「へん すてよりも先に発表になる場合は、いつになるかわかった時点で教えてくだ 5 さい。」などと回答した。 これを受けて、被告は、原告X2に対し、本件企画の開始時期や本件コミ ックの刊行時期を尋ねたところ、原告X2は、「外部に伝えることは、確定 事項でないため慎重にお願いいたします」、「「Y´先生が責任を持って大 丈夫と言える」のでしたら、仮ではありますがスケジュールをお伝えさせて 10 いただきますね。」などと述べた上で、本件企画の開始が8月某日であり、 本件コミックの刊行は12月某日であるという仮のスケジュールを示した。 そして、被告は、原告X2に対し、「あとは、へんすてさんサイドが、書 籍化は困るかどうか…」と、再度書籍化についての意向を確認したが、原告 X2は、「他でもコミックス化できるのは喜ばしいことで応援しています。 15 「ウチムス」の書籍化は当初からへんすて側で止めたりとかはありません (づまさんの漫画は別)」と回答した(乙2)。 また、原告X2は、「へんすてでの書籍発表前とか後とかはあまり問題視 しておらず、「気持ち次第」です。前に発売したとしても、ソチラも応援す ることがへんすてクラウドファンディングの宣伝にもなるし、後から発売な 20 ら、ソチラのコミックス化も宣伝しつつやってゆきますし、気持ちのよい企 画でしたら問題はないと思います。」、「簡単に言えば「ウチムス漫画に感 じたから、広く伝えたい」なので、ほかでのコミックス化はむしろ喜ばしい ことです。ただ、先方の存在は我々にとっては未知ですので、後々もめる事 が無い様にちゃんと す。」、「簡単に言えば「ウチムス漫画に感 じたから、広く伝えたい」なので、ほかでのコミックス化はむしろ喜ばしい ことです。ただ、先方の存在は我々にとっては未知ですので、後々もめる事 が無い様にちゃんと考えて行きたいです。」などとも述べるなどしており、 25 同一内容の著作物が書籍化されることについて全く異存はなく、イースト・ 23 プレスとトラブルにならないようにしてほしいとだけ述べた(乙2)。 キ 7月13日の電話打合せ 被告は、7月13日に電話で打合せをしたかは記憶がないが、前記のとお り、6月29日の時点で、本件コミック版とイースト・プレス版は、pix iv版と同一のものであることにつき、原告X2から承諾を得ていた。その 5 上で、被告は、本件コミック版には、本件企画限定の原稿を追加する方法を 考え、この頃、それを原告らに伝えたことはある。 もともと、ウチムスマザコンをコミック化することが本件企画の出発点で あり、4ページのみを書き下ろして本件コミックに収録するというのは、本 件企画の本来の内容と全く異なるものであるほか、この時点では、そもそも 10 原稿料の詳細が不明な状態であり、被告が60ページ分の原稿料の支払にこ だわる意味がない。 ク 7月20日の電話打合せ 被告は、7月20日頃、同月28日の打合せについての連絡を受けたこと はあるが、同打合せが「しっかりとした契約内容の確認」の場であるという 15 説明は受けていない。 ケ 7月28日の打合せ 7月28日の打合せの内容は、当事者間で何も書面化されなかったものの、 原告らは、被告に対し、既にインターネットで公開中のウチムスマザコンの 原稿60ページを8月中に提供することを依頼し、被告はこれを承諾した。 20 また、原告 当事者間で何も書面化されなかったものの、 原告らは、被告に対し、既にインターネットで公開中のウチムスマザコンの 原稿60ページを8月中に提供することを依頼し、被告はこれを承諾した。 20 また、原告らと被告は、60ページの原稿に加え、本件コミック用に追加の 原稿を収録することについて話し合い、詳細は未定であったものの、被告は、 アンケート結果を反映した内容の原稿を提供するという理解をした。 これに伴い、原告らは、被告に対し、本件企画の宣伝漫画や販売促進用ノ ベルティあとがきの原稿(同人誌「絆」のことを指すものであるが、当時、 25 被告は「販売促進用ノベルティあとがき」という認識しかなく、詳細は把握 24 していなかった。)も無償で作成する必要がある旨を伝えた。 そして、被告は、原告らから、契約内容の詳細を記した書面を渡されてお らず、2枚程度の用紙を見せられたが、その内容は記憶にない。また、原告 らが契約内容を後日メールで送信することにつき、被告が拒否をしたという 事実は存在しない。この点につき、被告は、後日、原告らから、正式な依頼 5 確認書や契約書等の書面が郵送で送られてくるものであると考えていた。 ⑶ 本件合意の成立 ア 被告が、原告らから、本件各漫画の原稿の作成を依頼されたことは事実で あるが、被告は、原告らに対し、本件各漫画の独占的な利用を許諾したとい う事実は存在しない。 10 もとより、原稿の作成依頼を承諾したからといって、それに付随して、著 作物である当該原稿についての独占的な利用を許諾することにはならない。 イ 被告が本件各漫画に対し独占的な利用の許諾をしていないことは、次の事 実からも明らかである。 著作者が自らの著作物に係る著作権を譲渡し、その結果、著作者自身も 15 当該 。 イ 被告が本件各漫画に対し独占的な利用の許諾をしていないことは、次の事 実からも明らかである。 著作者が自らの著作物に係る著作権を譲渡し、その結果、著作者自身も 15 当該著作物を利用することができなくなるという重大な効果を伴う合意 をするのであれば、契約書を作成するのが通常であるが、本件においては、 そのような書面は何ら作成されていない。 被告は、原告らから、原稿料として32万6976円を受領したが、著 作権者が自分の生命ともいうべき著作物に係る著作権について、その程度 20 の金額で譲渡したり、独占的利用権を付与したりするということは考えら れない。 原告X2は、5月26日、被告から、本件漫画1の全てのページをイン ターネットで公開する予定である旨伝えられた際にも、異議を述べること なく、本件漫画1を同人誌として出版することの可否を確認しており、被 25 告との間で、本件漫画1に係る著作権が被告にあることや、本件漫画1が 25 他で公開される予定であることを前提としたやり取りを行っている(乙1 〔9~12頁〕)。 原告X2は、被告から、ウチムスマザコンがイースト・プレスから書籍 として出版される予定であることを伝えられた際にも全く異議を述べて おらず、むしろ、「大丈夫ですよ~」、「他でもコミックス化できるのは 5 喜ばしいことで応援しています、「ウチムス」の書籍化は当初からへんす て側で止めたりとかはありません。」、「簡単に言えば「ウチムス漫画に 感じたから、広く伝えたい」なので、ほかでのコミックス化はむしろ喜ば しいことです。」、「書籍化のお話は、普通にチャンスですので、「うま く進めて」下さい!へんすてでY´先生の漫画を独占したい気持ちや、先 10 にだしたいとかはないです。」などと述べていた(乙2)。 しいことです。」、「書籍化のお話は、普通にチャンスですので、「うま く進めて」下さい!へんすてでY´先生の漫画を独占したい気持ちや、先 10 にだしたいとかはないです。」などと述べていた(乙2)。 原告X2は、被告から、ウチムスマザコンの原稿につき、被告のブログ から抜粋して作成すると伝えられたことに対し、10月20日、「ブログ から抜粋して書くこと分かりました」と了承していた。 原告X2は、平成30年1月11日、イースト・プレスの編集長に連絡 15 を取っているが、その際、原告らがウチムスマザコンについての独占的利 用権を有するなどとは全く述べず、むしろ、同月12日は、本件漫画1が 掲載された本件コミックの在庫数を伝え、その扱いについて伺いを立てて いる。 被告代理人が、漫画家9名に対して、作品についての独占的利用権を原 20 告らに許諾したか否かを問い合わせたところ、8名から、許諾していない という回答があった。唯一「許諾した」と回答した漫画家も、本件コミッ クに収録された原稿と同一のキャラクターが登場する「冷蔵庫物語」とい う作品を電子書籍化しており、実際には、原告らに対し、自らの作品につ いての独占的利用権を許諾していたとはいい難い状況である。 25 ⑷ 本件合意違反 26 本件各漫画につき、被告が自動公衆送信及び送信可能化していることは認め る。もっとも、被告は、本件各漫画を書き直しており、厳密には複製には当た らない。 2 争点2(同人誌「絆」の原稿提出に係る債務不履行の有無)(本件債務不履行 1) 5 (原告らの主張) ⑴ 契約の成立 ア 原告らと被告は、7月28日、被告が漫画原稿を次に掲げる内容で作成し、 原告らに提出する旨の契約を締結した。 期限:10 5 (原告らの主張) ⑴ 契約の成立 ア 原告らと被告は、7月28日、被告が漫画原稿を次に掲げる内容で作成し、 原告らに提出する旨の契約を締結した。 期限:10月末日 10 内容:本件コミックに提出した作品にちなんだ経緯や、作家自身のエピ ソード等、コミックと併せて読んだときに更にレアリティーを感じるよう な、読者にとって魅力的な内容にすること。 分量:10ページ以下 原稿料:無償 15 イ 上記の契約内容は、被告が原告らに対し、7月31日にスカイプで送信し たメッセージにおいても、「販売促進用ノベルティあとがき本 10P以下 で 10月末UP」と記載されていることからも明らかである(甲2の4)。 ⑵ 不完全履行(本件債務不履行1-1) 被告は、11月10日、原告らに対し、漫画原稿を提出したが、同漫画原稿 20 は、「ファンディングがスタートしても、うまく意思の疎通ができないことで 行き違ったり注意されたり、色々しんどかったです。」と本件企画の悪口を人 妻づま子さんのイラストとともに書いたものであり、「読者にとって魅力的な 内容にする」という債務の本旨に従った内容ではなかった。 その後、被告は、11月12日に全く異なる内容の原稿を提出したが、同原 25 稿は、原告らの要望に沿う内容ではなく、債務の本旨に従った内容ではなかっ 27 たため、不完全履行に当たる。 ⑶ 履行遅滞(本件債務不履行1-2) 被告は、9月27日、インターネット上での自らの不用意な発言や拡散によ り炎上騒ぎを起こしたが、その動向の確認等に気を取られた結果、原稿作成に 着手するのが遅くなった。 5 また、被告は、既に提出期限を徒過した11月1日になって、原告 の不用意な発言や拡散によ り炎上騒ぎを起こしたが、その動向の確認等に気を取られた結果、原稿作成に 着手するのが遅くなった。 5 また、被告は、既に提出期限を徒過した11月1日になって、原告らに対し、 「同人誌用寄稿原稿(ページ数把握していません)」などと告げ(甲34)、 原稿の提出を更に遅らせた。そのため、原告X1は、11月2日、やむを得ず、 その時点からでも被告が参加可能な原稿量として、被告に対し、スカイプで、 1ページだけ描くことを依頼したところ、被告もこれを了承した(甲9の2〔1 10 頁目〕)。また、原告X2は、同月5日、被告に対し、ツイッターのダイレク トメッセージで、進捗状況の確認及び催促を行った(甲9の2〔2頁目〕)。 上記のとおり、被告が11月10日に提出した原稿は債務の本旨に従った内 容ではなかった。そのため、原告X1は、同月11日、被告に対し、再三、通 話により問い合わせを行い、相談の申出をしたものの、被告はこれらを拒否し 15 た上で、同月12日、「内容を変更した差替え用の原稿をスカイプに送りまし た」と一方的に告げた上で、新たな原稿のデータを提出したが、当初の期限で あった10月末日を12日も徒過したものであり、履行遅滞に当たる。 (被告の主張) ⑴ 契約の成立 20 原告らは、7月28日の打合せにおいて、被告に対し、販売促進用ノベルテ ィあとがきの原稿(10ページ以下)を無償で作成し、10月末日を目安に提 出することを依頼したが、その内容は未確定であり、被告は、原告らからの具 体的な提案を待って作成することとした。 ⑵ 履行遅滞に当たらないこと(本件債務不履行1-2) 25 ア 期限の延長 28 原告X2は、10月31日、被告に対し、同人誌「絆」の原稿の提出期限 が11 こととした。 ⑵ 履行遅滞に当たらないこと(本件債務不履行1-2) 25 ア 期限の延長 28 原告X2は、10月31日、被告に対し、同人誌「絆」の原稿の提出期限 が11月10日である旨連絡した(乙6〔13~14頁〕)。 そして、被告は、11月1日、原告らに対し、「づま子のキセキ」の原稿 を提出した後、「未提出は・加筆4P同人誌用寄稿原稿(ページ把握してい ません)」などと、ぺージ数を把握していない旨を伝えた。これに対し、原 5 告X1は、同月2日、「同人誌原稿につきましては、コミック原稿と同じA 5サイズで1ページお描きいただきたいと思います。」(乙5)と返信した。 イ 原稿の提出 被告は、11月10日、原告らに対し、同人誌「絆」の原稿1ページを提 出しており、履行遅滞には当たらない(乙5〔最終頁〕)。 10 そして、被告は、同月12日、修正した原稿を提出しているが、そもそも 修正の必要性はなかったものであり、10日の時点で履行を行っている。 ⑶ 不完全履行に当たらないこと(本件債務不履行1-1) ア 10日に提供した原稿 被告が原告らに対して提出した原稿(甲7)には、原告らの悪口に当たる 15 ような記載は存在しない。同原稿は、本件企画や故人である人妻づま子に対 する被告の感謝の気持ちを記述するとともに、漫画家として、「死」を表現 するに当たっての苦しみや葛藤を述べたものであり、原告らの主張する「読 者にとって魅力的な内容にする」という債務の内容を前提としても、債務の 本旨に沿ったものであり、不完全履行には当たらない。 20 イ 12日に提供した原稿 被告は、この原稿について、原告X1から通話を求められたため、「修正 であればどのあたり 債務の 本旨に沿ったものであり、不完全履行には当たらない。 20 イ 12日に提供した原稿 被告は、この原稿について、原告X1から通話を求められたため、「修正 であればどのあたり修正すればよろしいかお教えいただければ、やりますの でよろしくお願いします!」(乙6〔22頁〕)と返信したものの、原告X 1は、繰り返し通話を求めた。これに対し、被告は、通話時間を確保できな 25 かったため、DM(ダイレクトメッセージ)の送信を依頼したものの、原告 29 X1は応じなかった。そこで、被告は、全く異なる原稿を作成してみて、そ の原稿でも問題があるようであれば、再度原告らの望む原稿内容について指 示を受けようと考え、11月12日、差替えの原稿を原告らに提供した(乙 5〔最終頁〕)したところ、原告X1は11月14日、「同人誌原稿につき まして、差替えの物をウチムス加筆原稿の修正分と共に再度ご送付いただき 5 ました事、ありがとうございます。」(乙6〔24頁〕)と異議なく受領し た。 したがって、仮に10日の原稿が債務の本旨に従ったものでなかったとし ても、12日に提供した原稿は債務の本旨に従ったものである。 3 争点3(本件漫画2の原稿提出に係る債務不履行の有無) (本件債務不履行2) 10 (原告らの主張) ⑴ 契約の成立 ア 原告らと被告は、7月28日、被告が、本件漫画2を次に掲げる内容で作 成し、原告らに提出する旨の契約を締結した。 期限:原告X2が8月中にネーム案を作成した上で、被告が、それを基 15 に漫画的な絵に描き起こしたネームを9月中に提出し、原告らによる確認 を経た上で、完成原稿を10月中に提出する(甲2の3)。 内容:故人である「人妻づま子」の闘病の様子や生きた証を漫画として 収録する。 な絵に描き起こしたネームを9月中に提出し、原告らによる確認 を経た上で、完成原稿を10月中に提出する(甲2の3)。 内容:故人である「人妻づま子」の闘病の様子や生きた証を漫画として 収録する。 イ 上記契約の内容は、原告らが被告に対し、同月31日にスカイプで送信し 20 たメッセージにおいても、「づまんが 9月中にネームUP10月中UP」 と記載されていることからも明らかである(甲2の4)。 ⑵ 履行遅滞 ア ネームの提出の遅滞(本件債務不履行2-1) 被告は、9月5日、原告X1に対し、ツイッターで、「づま子のキセキに 25 取り掛かるのは早くて来週になる」などと伝えていたが、その後、被告は、 30 同月27日に起こした炎上騒ぎの結果、原稿作成に着手するのが遅くなり、 結果として、ネームの提出が遅れることとなった。 そして、被告は、同日、原告X2から進捗確認のための電話連絡を受ける と、「他の仕事が忙しいので、9月中に提出する予定だった「づま子のキセ キ」のネーム提出が遅れそう。」などと述べたほか、いつまでに提出できる 5 かという原告X2の質問に対し、「10月中旬には提出する。」と回答した。 その後、10月20日になっても被告からネームが提出されず、連絡もなか ったため、原告X2が被告に対し、ツイッターのダイレクトメッセージによ り進捗状況を問い合わせたところ、被告は、「づまさんマンガに関しては、 現段階プロットを練っている状況です。」と回答した(甲37)。 10 最終的に、被告は、10月25日、原告らに対し、ネームを提出したが、 当初の期限である9月末日を25日も徒過したものである。 イ 完成原稿の提出の遅滞(本件債務不履行2-2) 上記ネームには、原告X2の作成したネーム案とは異なり、抗がん剤 ネームを提出したが、 当初の期限である9月末日を25日も徒過したものである。 イ 完成原稿の提出の遅滞(本件債務不履行2-2) 上記ネームには、原告X2の作成したネーム案とは異なり、抗がん剤の 影響で、女性である「人妻づま子」の頭髪が全くないなど、故人への配慮 15 を欠いた描写があったため、原告X2は、被告に対し、黒い帽子を被った 描写にするよう修正を依頼した(甲29の1~3)。 そして、被告は、11月18日、原告らに対し、ツイッターのDMによ り完成原稿を提出したが(甲38)、当初の期限である10月末日を18 日も徒過したものであり、履行遅滞に当たる。 20 被告は、11月9日までに原稿を提出した旨主張するが、本件契約締結 当初の提出期限は、ネームにつき9月、完成原稿につき10月であった。 このことは、被告自身が、7月31日には、スカイプで「づまんが 9月 中にネームUP10月中UP」と提出期限を確認していることからも明ら かである。 25 (被告の主張) 31 ⑴ 契約の成立 原告らと被告は、7月28日の打合せにおいて、本件漫画2つき、原告X2 がまずネーム案及び人妻づま子に宛てた手紙(以下「ネーム案等」という。) を作成することになったが、原告X2によるネーム案等の提出期限は明確に定 められず、そのため、被告の提出期限も定められていなかった。 5 ⑵ 履行遅滞 ア 期限延長の合意 原告X2は、8月8日、被告に対し、スカイプで「づまさんまんがのネー ム、話合いながら作ってますのでもう少しお待ちください!」とのメッセー ジを送信した。これに対し、被告は、同日、原告X2に対し、「はい!どち 10 らにしろ15日くらいまでは手が付けられないので、大丈夫です。がんばり ます~」と返信し、事実上、ネーム提出の期限 メッセー ジを送信した。これに対し、被告は、同日、原告X2に対し、「はい!どち 10 らにしろ15日くらいまでは手が付けられないので、大丈夫です。がんばり ます~」と返信し、事実上、ネーム提出の期限を8月中旬頃まで待ち、その 後、被告において原稿の作成に着手することとなった。 その後、原告X2は、9月1日、被告に対し、ネーム及び手紙等を送信し たが、送信されたネームの内容は、実際にはネームと呼べる状態のものでは 15 なかったほか(乙23)、手紙についても、「これに関する返答は、感想や 質問を含め一切お受けできません。づまさんの漫画を魂を込めて書かれるの に必要だと信じ、書きます。」と冒頭に記載されており(乙24)、被告と しては、原告X2の心情を汲み取りながらネーム作成に取り掛かるしかなか った。 20 加えて、被告は、原告らから、既に提出済みのウチムスマザコンの原稿6 0ページについて、原告らからの指摘を受けた修正作業を行う必要があった ことや、9月には本件企画が開始したことを受け、原告らから頻繁に宣伝活 動の依頼があり、被告も宣伝方法についてのアイディアを考えたり、宣伝活 動を行ったりする必要があったことから、漫画を作成する時間的な余裕がな 25 くなっていた。 32 そこで、被告は、原告らに対し、印刷会社への納期に間に合わせるための 最終期限を教えてほしいと申し入れ、スケジュールを再調整した結果、遅く とも9月末日までには、本件漫画2のネームの提出期限を10月中、完成原 稿の提出期限を11月10日とすることを合意した。 これを受けて、原告X1は、10月1日、被告に対し、本件コミックの原 5 稿(ただし、ウチムスマザコン60ページは既に提出済み)、本件漫画2の 原稿、同人誌「絆」用の原稿及びコミック表紙カットイラスト これを受けて、原告X1は、10月1日、被告に対し、本件コミックの原 5 稿(ただし、ウチムスマザコン60ページは既に提出済み)、本件漫画2の 原稿、同人誌「絆」用の原稿及びコミック表紙カットイラスト完成版の締切 りが11月10日である旨伝えている(乙6〔13~14頁〕)。 イ 期限内の提出 被告は、10月25日及び26日、原告X2に対し、「づま子のキセキ」 10 のネームを提示したが(乙1、25)、原告X2から、主として頭髪の長さ に関して修正依頼を受けたため、修正を行った上で(乙26、27)、11 月1日、完成原稿を提出した(乙5、7)。 これに対し、原告らは、被告が11月18日に、本件漫画2の原稿を提出 したというが、これは提出済みの本件漫画2の完成原稿に対し、原告らが修 15 正を相談し(乙6〔24~26頁〕)、修正期限を同月20日と指定したこ とを受け(乙6〔27頁〕)、同月19日の朝に修正原稿を送ったものであ る。 4 争点4(本件漫画1の原稿提出に係る債務不履行の有無) (本件債務不履行3) (原告らの主張) 20 ⑴ 契約の成立 原告らと被告は、7月28日、被告が、本件コミックに掲載する本件漫画1 の原稿につき、pixivで既に公開されていた60ページ分の原稿に加え、 新規書き下ろし4ページ分を次の内容で作成し、原告らに提出する旨の契約 (本件契約)を締結した。 25 ア 期限:内容や構図が確認できる状態のネームを、9月末日まで(スタッフ 33 による確認後に修正等が発生することを加味した期限) イ 内容:以下の内容につき、各1ページずつ ①病気を乗り越え、元気になった現在の息子の様子 ②現在の娘の様子 ③息子が闘病中の家族の様子。本編では夫の ) イ 内容:以下の内容につき、各1ページずつ ①病気を乗り越え、元気になった現在の息子の様子 ②現在の娘の様子 ③息子が闘病中の家族の様子。本編では夫のことがあまり触れられ 5 ていないので、出していく。 ④「ウチムス」を完結することができた経緯として、クラファンコ ミックに収録することになった経緯 ウ レアリティー:本件企画の趣旨(前記1(原告らの主張)⑴参照)に照ら し、レアリティーを有していること 10 エ 原稿料:1頁当たり最低3500円程度で、64ページ分 ⑵ 不完全履行 ア 既存の公開済みの作品を提出したこと(本件債務不履行3-1) 被告は、10月26日、原告らに対し、コマ割りも手書きであり、絵画部 も線画だけの乱雑で下書きのような状態の原稿を、完成原稿として提出した 15 が(甲8の1)、同原稿は、①被告が、創作漫画ではボツや打切りが続いて いるときに、エッセイ漫画を描いている同業者の話を聞いて、自分もエッセ イ漫画を描いてみようと思ったことや、苦労話を内容とするものであり、上 記⑴イ記載の内容とは異なるものであったほか、②そもそも、被告のツイッ ターアカウントで公開済みの既存のものであり、レアリティーを有していな 20 かった。そこで、原告らは、被告に対し、契約内容を再度説明した上で、契 約内容に従った原稿を再提出するよう依頼した。 また、原告X1は、11月2日にも、被告に対し、スカイプで連絡をし、 上記⑴イの内容につき確認をしたところ、被告はこれを了解した。 その後、被告は、ネームを提出しないまま、11月9日になって、原告ら 25 に対し、完成原稿を提出した。同原稿の3ページ目は、「その後のY´家@ 34 ファミリー はこれを了解した。 その後、被告は、ネームを提出しないまま、11月9日になって、原告ら 25 に対し、完成原稿を提出した。同原稿の3ページ目は、「その後のY´家@ 34 ファミリー(ありし日の失敗1・2)」というタイトルの4コマ漫画であっ たが、その内容は、既存の作品であり、かつ、現在も被告のブログで公開さ れており、レアリティーを欠くものであるから、債務の本旨に従ったもので はなく、不完全履行に当たる。 イ 3ページ目の完成原稿が提出されていないこと(本件債務不履行3-2) 5 完成原稿として提出された追加4ページ分の3ページ目は、「その後のY ´家@ファミリー(ありし日の失敗1・2)」というタイトルの、家族4人 が豆まきをしている漫画であり、事前に合意された「息子が闘病中の家族の 様子。本編では夫のことがあまり触れられていないので、出していく」とい う内容とは全く異なるものであった。 10 ⑶ 履行遅滞(本件債務不履行3-3) 被告は、9月27日に自らが起こした炎上騒ぎの結果、原稿作成に着手する のが遅くなった。そのため、期限である同月末を過ぎても被告から連絡がない ので、原告X2は、10月2日、被告に対し、電話で進捗状況について確認を したところ、被告は、「内容を濃くしているので、9月末には間に合わない」 15 との理由で、ネームの確認期限を延長するよう求めてきた。 これを受けて、原告らは、ネームの提出期限を10月16日まで延長したも のの、同日を過ぎても、被告からネームは提出されず、連絡もなかったことか ら、同月20日、被告に対し、進捗状況の報告を求めたところ(甲9の3〔1 頁目〕)、被告は、「ウチムスマザコンの新規書き下ろし4ページに関しては 20 ブログの育児ネタを抜粋してかくつもりです。」などと、 同月20日、被告に対し、進捗状況の報告を求めたところ(甲9の3〔1 頁目〕)、被告は、「ウチムスマザコンの新規書き下ろし4ページに関しては 20 ブログの育児ネタを抜粋してかくつもりです。」などと、まだ提出できるもの がない状態である旨回答した。 そして、原告X2は、10月26日、被告に対し、電話でその後の進捗状況 を確認したところ、被告は、「後から他社出版社の月刊誌の企画のゲスト原稿 を入れちゃって、その原稿で忙しいから、ラジオへんすてクラウドファンディ 25 ングの原稿は全く手つかずの状態。ラジオへんすてクラウドファンディングコ 35 ミックだけの新規書き下ろしの4ページは、確認用のネームすら未着手。全く やっていない。」と笑いながら回答したため、原告X2は、これ以上の延滞は 困るなどと抗議をした。 さらに、原告X1は、11月2日にも、被告に対し、再度、スカイプで進捗 状況の確認及び催促を行ったが(甲9の3〔2頁目〕)、同月5日になっても 5 原稿が提出されなかっため、原告X2は、同日、被告に対し、進捗状況の確認 及び催促を行った(甲9の7〔3頁目〕)。 その後、被告は、11月9日になってようやく、本件漫画1の完成原稿を原 告らに提出したが、当初のネームの提出期限であった9月末日から39日も徒 過しており、履行遅滞に当たる。 10 (被告の主張) ⑴ 契約の成立 ア 7月28日の打合せでは、被告が、原告らに対し、既にインターネットで 公開中のウチムスマザコンの原稿60ページを提出することについて合意 が成立したほか、本件コミック版用に、同60ページ以外にも原稿を追加す 15 ることを話し合ったものの、その詳細は未定であった。 なお、この頃、原告らと被告との間で、4枚程度の追加原稿を提供する打 合 か、本件コミック版用に、同60ページ以外にも原稿を追加す 15 ることを話し合ったものの、その詳細は未定であった。 なお、この頃、原告らと被告との間で、4枚程度の追加原稿を提供する打 合せをしたものの、詳細は未定であり、被告としては、アンケート結果を反 映させた内容の原稿を提供するという理解であった。 イ 原告X2は、9月29日、被告に対し、本件ホームページ内にウチムスマ 20 ザコンの中から印象的なカットを紹介のために掲載し、その下にpixiv のURLを掲載し、更にそのリンクの下に「クラウドファンディングだけの 追加ページ4pが納められることを追記」することを提案した。これに対し、 被告は、「4p」とは書かずに、単に「加筆あり」とだけ記載することを提 案したところ、その内容で進めることとなった。 25 このように、原告らは、自ら既にウチムスマザコンが公開されているpi 36 vivのURLを本件ホームページに掲載することを提案している上に、追 加ページについても、4ページとすることが絶対条件であったわけではなく、 要するに、加筆部分を設けて「違いを楽しめるようにする」予定であった。 ウ 原告らは、公開済みの作品を提出したことが債務不履行である旨主張する が、原告X2は、被告から、ウチムスマザコンの原稿につき、被告のブログ 5 から抜粋して作成すると伝えられたことに対し、10月21日、「ブログか ら抜粋して書くこと分かりました。追加4Pの打ち合わけ、・息子さん・娘 さん・家族・へんすての事でそれぞれ1Pずつでお願いいたします!」と了 承していた。 エ 原告X1は、11月2日未明、被告に対し、「加筆4P」の内容として、 10 「加筆1P目:現在の息子さんのお話 2P目:現在の娘さんのお話 3P 目:息子さんが闘病中 承していた。 エ 原告X1は、11月2日未明、被告に対し、「加筆4P」の内容として、 10 「加筆1P目:現在の息子さんのお話 2P目:現在の娘さんのお話 3P 目:息子さんが闘病中だった際の、ご家族のお話 4P目:ウチムスマザコ ンとへんすてについてのお話」と送信し(乙5)、「家族の事」として依頼 していた加筆部分(3頁目)について、唐突に「息子さんが闘病中だった際 の、ご家族のお話」という内容に一方的に変更するよう告げた。 15 これに対し、被告は、原告X2から、追加分の内容については、「ハッピ ーED(エンディング)の後の楽しい話が読みたい」というアンケートが大 多数であった旨報告を受けていたところ(乙5)、闘病中の辛い話を追加エ ピソードとすることはアンケート結果にも打合せ内容にもないことであっ たこと、家族の事としてはブログの育児漫画を掲載することで了承を得てい 20 たことから、この箇所については誤りであると認識した。 その後、原告X2は、11月5日、ウチムスマザコン追加分4Pについて、 「息子さん、娘さん、ご家族、へんすて各1P」と記載しており、3枚目は 「ご家族」という表記に戻った。 ⑵ 不完全履行 25 ア 既存の公開済みの作品の提出(本件債務不履行3-1) 37 被告は、11月9日、原告らに対し、加筆4頁分の原稿を提出した(乙5)。 これらにも、ブログから抜粋した「その後のY´家@ファミリー(ありし日 の失敗1・2)」が含まれていたが、ブログから抜粋することも、内容を「追 加4Pの打ち合わけ、・息子さん・娘さん・家族・へんすての事」とするこ とも、10月21日の原告らからの依頼内容に沿う内容であった。 5 なお、原告らは、被告が10月26日に被告が加筆した4頁について、甲 8号証の1を完成原 さん・娘さん・家族・へんすての事」とするこ とも、10月21日の原告らからの依頼内容に沿う内容であった。 5 なお、原告らは、被告が10月26日に被告が加筆した4頁について、甲 8号証の1を完成原稿として納品したと主張しているが、このような不鮮明 なものを完成原稿として提出するはずなどない。そのため、甲8号証の1は 追加エピソードとして作成したものとは考えられない。 イ 3ページ目の完成原稿が提出されていないこと(本件債務不履行3-2) 10 被告は、11月9日、原告らに対し、加筆4ページ分の原稿を提出した(乙 5)が、これについて、原告X2は、「大変なページの修正、追加ページ分 の4P受け取らせていただきました。AくんとBちゃんのその後が元気であ ると知れて嬉しいページでした。」とのメッセージを送信したほか(乙5〔最 終頁〕)、原告X1も、「ウチムスマザコンの原稿修正分と・加筆4Pの原 15 稿のご提出、ありがとうございました。」というメッセージ送信しており(乙 6〔20頁〕)、その内容について何ら異議を述べていない。 ⑶ 履行遅滞(本件債務不履行3-3) 原告X2は、10月30日、被告に対し、本件コミック本の原稿(本件漫画 1の追加ページ分及び本件漫画2の原稿)の締切りは11月10日である旨伝 20 えているほか(乙6〔13、14頁〕)、原告X1も、10月31日、被告に 対し、ウチムスマザコンの原稿、「づま子のキセキ」の原稿、同人誌「絆」用 の原稿及びコミック表紙カットイラスト完成版の締切りが11月10日であ る旨伝えている。 そして、被告は、11月9日には、追加ページ分を含めたウチムスマザコン 25 の原稿を提出しているのであるから、履行遅滞には当たらない。 38 5 争点5(本件漫画1のネームの提出に 。 そして、被告は、11月9日には、追加ページ分を含めたウチムスマザコン 25 の原稿を提出しているのであるから、履行遅滞には当たらない。 38 5 争点5(本件漫画1のネームの提出に係る債務不履行の有無)(本件債務不履 行4) (原告らの主張) ⑴ 契約の締結 ア 被告は、前記4(原告らの主張)⑴のとおり、7月28日、原告らに対し、 5 本件漫画1の新規書き下ろし4頁分について、その内容や構図が確認できる 状態のネームを9月末日までに提出することを了承していた。(甲11の1 ~4)。 その後、8月15日頃に、原告X2は、本件企画の返礼品として、祝賀会 でネームのコピーをプレゼントしたいことや、その場合、被告の負担が増え 10 ることなく、支援者の得られるレアリティーが増えることなどを相談したと ころ、「負担が増えないなら良い。」と被告が了承したため、この時点で、 9月末日までにネームを提出することに係る契約が成立したものである。こ の本件コミックに収録された完成原稿のネームを集めたネームコピー本は、 本件コミックと比較して楽しむこともできるなど、高額コースの支援者にと 15 って非常にレアリティーの高い特典であった そして、原告らは、9月1日の本件企画の公表時から、本件企画の高額コ ースの支援者に対する返礼品として、祝賀会に参加した支援者に対し、「ネ ームコピー本」を贈呈することを明らかにしており、そのことは、本件企画 の委託会社である「CAMPFIRE」(以下、単に「CAMPFIRE」 20 という。)のシステムを利用して、原告らが作成した本件企画に係るホーム ページ(以下「本件ホームページ」という。)にも記載されている。 イ 被告は、プレゼント用のネームを無償提供することは、10月20日にな っ テムを利用して、原告らが作成した本件企画に係るホーム ページ(以下「本件ホームページ」という。)にも記載されている。 イ 被告は、プレゼント用のネームを無償提供することは、10月20日にな って初めて知らされた旨主張する。しかしながら、被告は、9月12日、原 告X1に対し、スカイプで「ファンディングのTOPにでてきたときに、パ 25 ッと内容が解りにくいな?という気がしました(バナー)」とのメッセージ 39 送信していることからも、本件ホームページの内容を確認していたといえる。 また、原告らは、9月13日、被告に対し、本件ホームページを一緒に確 認しながら、「祝賀会コース」の支援者に対し、ネームコピー本を贈呈する ことについて説明している(甲11の3)。 さらに、原告X1は、11月2日にも、被告に対し、本件漫画1の新規書 5 き下ろし分についての確認及び催促を行った際に、「また、この加筆4P目 のへんすてに関するネームを、祝賀会で参加者にプレゼントさせていただく ネームコピー本にまとめさせていただきます。」と伝えたところ、被告から は、「ネーム了解しました。」との回答があった(甲9の7〔2頁〕、甲3 0の1、2) 10 ⑵ 債務不履行 前記4(原告らの主張)⑵及び⑶のとおり、被告は、期限を過ぎてもネーム を提出せず、最終的に、11月9日になって、被告は本件漫画1の完成原稿を 提出するに至ったが、結局、ネームが提出されることはなかった。これにより 原告らは、祝賀会に参加した支援者に対し、本件漫画1のネームを贈呈するこ 15 とができなかったのであり、被告の上記行為は債務不履行に当たる。 (被告の主張) ⑴ 契約の締結 ア 7月28日の打合せでは、被告が、原告らに対し、既にインターネットで 公開中のウチム とができなかったのであり、被告の上記行為は債務不履行に当たる。 (被告の主張) ⑴ 契約の締結 ア 7月28日の打合せでは、被告が、原告らに対し、既にインターネットで 公開中のウチムスマザコンの原稿60ページを提出することについて合意 20 が成立したほか、本件コミック用に、同60ページ以外にも原稿を追加する ことを話し合ったものの、その詳細は未定であった。 なお、この頃、原告らと被告との間で、4枚程度の追加原稿を提供する打 合せをしたものの、詳細は未定であり、被告としては、アンケート結果を反 映させた内容の原稿を提供するという理解であった。 25 イ プレゼント用のネームを提供することについては、被告は、10月20日 40 に初めて知らされたものであり(乙6〔5~6頁〕)、8月15日の時点で 原告らの主張するような契約が成立したという事実は存在しない。また、期 限について明確に合意したという認識はない。 すなわち、原告X2は、同日、被告に対し、ツイッターのダイレクトメッ セージで「打ち上げに絡む原稿のお話 イベント「祝賀会」参加者さまに、 5 各先生方のネームをコピー本としてまとめたものをお渡しする事になって おります。 (連絡がちゃんといっていませんでしたらすみません)ですので、 デジタルでしたら、ネームやプロットの時点で一度データを保存しておいて 欲しいです。その時点でコチラに送って下さっても大丈夫です。」と伝えた (乙6〔5頁〕)。 10 これに対し、被告は、事前にネームの提供について聞いておらず、本件漫 画1についてはネームがなく、「づま子のキセキ」についてはネームを掲載 することに抵抗がある旨返信したところ(乙6〔6頁〕)、原告X2は、本 件漫画1の追加分のうち、ラジオへんすてに関するページのみをネ 画1についてはネームがなく、「づま子のキセキ」についてはネームを掲載 することに抵抗がある旨返信したところ(乙6〔6頁〕)、原告X2は、本 件漫画1の追加分のうち、ラジオへんすてに関するページのみをネームとし て提出することを提案した(乙6〔8頁〕)。 15 その後、原告X1は、11月2日、被告に対し、加筆4ぺージ分のうち4 ページ目(ウチムスマザコンとへんすてについてのお話)をネームとして、 ネームコピー本に収録する旨を伝え(乙5)、被告もこれを承諾した。 ⑵ 債務不履行 被告は、11月9日、ネームを提出しており、債務不履行はない(乙5〔1 20 3頁〕)。 6 争点6(宣伝用漫画原稿の提出に係る債務不履行の有無) (本件債務不履行5) (原告らの主張) ⑴ 契約の締結 ア 原告らと被告は、7月28日、被告が、「ラジオへんすてクラウドファン 25 ディングの宣伝漫画」(以下「宣伝用漫画」という。)の原稿を次の内容で 41 作成し、原告らに提出する旨の契約を締結した(甲9の5)。 期限:8月18日 内容:被告のファンやツイッターのフォロワー対して、ラジオへんすて クラウドファンディングの開催や、被告がラジオへんすてクラウドフ ァンディングでの企画に参加するという宣伝と、被告のファンやツイ 5 ッターのフォロワーが応援したくなる内容 原稿料:無償 イ 被告は、宣伝用漫画については正式な依頼を受けた記憶がない旨主張する が、上記の契約内容は、被告が7月31日、スカイプで送信したメッセージ においても、「ファンディングまんが(無償)8/18公開」と記載されてい 10 ることからも明らかである(甲2の4)。 なお、宣伝用漫画については、7月20日の打合せの際 カイプで送信したメッセージ においても、「ファンディングまんが(無償)8/18公開」と記載されてい 10 ることからも明らかである(甲2の4)。 なお、宣伝用漫画については、7月20日の打合せの際に、被告自身から 提案を受けたため、7月28日の打合せの際に、原告らが正式に作成を依頼 したものである。 ⑵ 履行遅滞(本件債務不履行5) 15 被告は、他社との契約を優先した結果、8月18日の締切りまでに原稿を提 出しなかったものであり、履行遅滞に当たる。結局、現在に至っても、被告か らは原稿が提出されていない。 (被告の主張) ⑴ 契約の締結 20 被告は、宣伝用漫画について、正式に作成依頼を受けた記憶はない。 すなわち、原告らは、7月28日の打合せにおいて、被告に対し、ファンデ ィング漫画を無償で作成することになる旨や、ファンディング漫画は8月18 日に公開予定である旨を伝えたものの、その内容は未確定であり、被告として は、原告らからの具体的なページ数の指定や提案を待って作成することとした。 25 その後、原告らも、被告に対し、ファンディング漫画について提出を促した 42 り、進捗を問い合わせたりしていないことからも、ファンディング漫画の提出 に係る契約は成立していない。 ⑵ 履行遅滞(本件債務不履行5) 上記のとおり、契約が成立していない以上、履行遅滞となる余地はない。 7 争点7(機密情報の漏えいに係る債務不履行の有無)(本件債務不履行6) 5 (原告らの主張) ⑴ 契約の締結 被告は、原告らとの間で、本件契約を締結しているところ、同契約は、本件 企画に付随するものである以上、被告は、同契約に基づき、本件企画に関し、 通常一般的に非公開であるべき情報を外部に漏えいしない債務を 被告は、原告らとの間で、本件契約を締結しているところ、同契約は、本件 企画に付随するものである以上、被告は、同契約に基づき、本件企画に関し、 通常一般的に非公開であるべき情報を外部に漏えいしない債務を当然に負っ 10 ていたというべきである。 ⑵ 心情の公表による機密漏えい(本件債務不履行6-1) ア 経緯 被告は、9月20日に、被告自身のインターネット動画配信中に、ラジオ へんすてクラウドファンディングスタッフに無断で、本件企画の応援キャラ 15 クターなるものを作成し(甲26)、同月23日に、原告らに対して事後報 告するとともに、本件企画の公式キャラクターにするよう要求してきたが、 原告らは、他の漫画家も参加している中、被告が独断で作成したキャラクタ ーを公式に採用すると、他の漫画家のファンに対し、被告をひいきにしてい るという悪い印象を与えかねないと考え、これを断った。 20 また、原告らは、9月27日に発生した炎上騒ぎに関し、被告に対し、自 分本位の行動は控えるよう依頼したほか(甲28)、被告から提出された本 件漫画2の原稿作成に関し、頭髪のない姿ではなく、黒い帽子を着用した描 写にするよう原稿の修正を依頼した(甲29の1~39)。 イ 投稿内容 25 被告は、上記の一連の経緯に立腹し、11月1日、被告自身のツイッター 43 アカウントにおいて、次のような投稿を行った(甲10の1)。 「作家は誰しもが、その紙の上の世界にリンクして執筆作業をしている。 そのオンとオフの切り替えがうまくできなくて、ツイッターに出て来れま せんでした。こんなになってまで何故描く必要があるか?その答えは、み なさんが支援してくださったへんすてクラウドファンディングの本に載 5 る事になるでしょう。」 「 くて、ツイッターに出て来れま せんでした。こんなになってまで何故描く必要があるか?その答えは、み なさんが支援してくださったへんすてクラウドファンディングの本に載 5 る事になるでしょう。」 「伝えようとしたいことが伝わらず言いたいように言われ、葛藤を抱え ながらのダイブは精神を削り取りました。矛盾と理不尽の中で、くじける 思いもしましたがあと2Pなのでトンネル出るまで頑張ります。クラウド ファンディングの応援ありがとうございました。」 10 ウ 債務不履行に当たること 上記投稿は、読者が本件企画限定のコミックを手に取り、その内容を実際 に読む前に、被告が作画担当をした作品につき、原案の作者である原告X2 や、企画責任者である原告らに連絡・相談もなく、「あと2Pなのでトンネ ル出るまで頑張ります。」という制作側の進捗状況を許可なく投稿したり、 15 「精神的に追い込まれるような辛い内容の漫画を描いた」、「矛盾や理不尽 な思いをさせられながら描いた」、「漫画に関して言いたいように言われな がら描いた」という、虚偽の事実を摘示したりしたことにより、原告らが「コ ミック制作に参加した漫画家を精神的に追い詰め損害を与えている」などの 事実と異なる誤解を与えるものであり、一般的に、読者にとって期待する内 20 容でないことは明らかであることはもちろん、本件企画のレアリティー(プ レミア価値)を有するコミックの内容という、通常一般的に非公開であるべ き情報を漏えいするものであるから、債務不履行に当たる。 ⑶ 原稿料の有無の公表による機密漏えい(本件債務不履行6-2) ア 投稿内容 25 被告は、12月29日、自身のツイッターアカウントにおいて、フォロワ 44 ーであるクラウドファンディングの支援者に対し、「そのお金は作家にいか ない」などと 2) ア 投稿内容 25 被告は、12月29日、自身のツイッターアカウントにおいて、フォロワ 44 ーであるクラウドファンディングの支援者に対し、「そのお金は作家にいか ない」などとして、企画限定コミック以外の返礼品については原稿料が支払 われないという、企画参加者しか知り得ない契約内容を明らかにする投稿を した(甲10の2)。 イ 債務不履行に当たること 5 上記投稿は、本件クラウドファンディング企画参加者しか知りえない契約 内容であって、通常一般的に非公開であるべき情報を漏えいするものである から、債務不履行に当たる。 ⑷ トラブルの公表による機密漏えい(本件債務不履行6-3) ア 投稿内容 10 被告は、平成30年7月9日、自身が企画したファンとの交流イベントで あって、ラジオへんすてクラウドファンディングの支援者も多数参加したバ ーベキュー会で、口頭でのトラブルに対する「告白」を行ったことや、その 「告白」に対して「ネット上で発言できない苦しさを理解してもらえ」たな どとして、被告がトラブルに対する告白を行ったことを、自身のツイッター 15 アカウントにおいて発信した(甲40)。 さらに、被告は、同月12日には、自身のブログ「鹿日記」において、「ご 報告」というタイトルの記事を投稿し、「この半年間は弁護士さんにお世話 になっています。」、「昨年参加した同人誌のトラブルに巻き込まれて現在 も弁護士を通して対応を検討中です。」などと記載し、そのブログのURL 20 を自身のツイッターアカウントにおいて、上記投稿を広く外部に漏えいする 目的で発信した(甲41)。 イ 債務不履行に当たること 上記投稿は、示談の話が進行中であるというような通常一般的に非公開で あるべき機密情報を外部 において、上記投稿を広く外部に漏えいする 目的で発信した(甲41)。 イ 債務不履行に当たること 上記投稿は、示談の話が進行中であるというような通常一般的に非公開で あるべき機密情報を外部に漏えいしたものであるから、債務不履行に当たる。 25 (被告の主張) 45 ⑴ 契約の締結 被告は、そもそも本件企画に関し、機密情報を保持する旨の契約は締結して おらず、原告らの主張するような機密情報を保持する義務など負っていない。 ⑵ 心情の公表による機密漏えい(本件債務不履行6-1) 被告は、いかなる機密情報も漏えいしていない。また、被告の投稿内容は、 5 本件コミックの内容について、読者に悪い先入観を生じさせるようなものでは ない。一般的に考えても、漫画家が努力して漫画の制作に取り組んでいる現状 を読者に伝えることは、読者の期待を高めることはあっても、悪い印象を与え ることはない。 ⑶ 原稿料の有無の公表による機密漏えい(本件債務不履行6-2) 10 被告はいかなる機密情報も漏えいしていない。 ⑷ トラブルの公表による機密漏えい(本件債務不履行6-3) 被告はいかなる機密情報も漏えいしていない。 8 争点8(打上げのキャンセルに係る債務不履行の有無)(本件債務不履行7) (原告らの主張) 15 ⑴ 契約の締結 ア 原告らは、本件企画において、漫画家という特別な存在と一つのテーブル を囲み、密接な距離で会話をすることができるほか、その場限定の特別な返 礼品を得られるなどの特別な権利を返礼品として設定していた。 そして、原告らは、7月28日の打合せにおいて、打上げに関し、被告に 20 対し、「今回のクラウドファンディングでは、高額コースのリターン品とし の特別な権利を返礼品として設定していた。 そして、原告らは、7月28日の打合せにおいて、打上げに関し、被告に 20 対し、「今回のクラウドファンディングでは、高額コースのリターン品とし て、そのコースをご支援いただいた方々と、コミック本に作品で参加してく ださった先生方を交えた「打ち上げ」を企画しております。」、「具体的に は、支援者の方との飲食による懇親・会場でのリターン品の直接手渡し・コ ミックへのサインを考えております。さらに最高額コースの支援者の方に関 25 しては、先生方の作品のキャラのイラストもお願いできればと思います。」 46 などとして、甲2の1(6ページ目)を読み上げながら説明した。 これに対し、被告は、「その日に合わせてスケジュールを空けます。」と 述べ、打上げ及び祝賀会の双方に参加することを了承したため、原告らと被 告との間では、同日、被告が祝賀会及び打上げに参加する旨の契約が成立し た(甲2の3)。 5 イ その後、祝賀会及び打上げのイベントが12月16日に開催されることが 決まった。 ⑵ 債務不履行 ア 被告は、本件企画に対する募集期間が終了した後の11月30日、「長距 離移動の時間の問題がある。」という理由で、打上げへの参加を突如キャン 10 セルした。 しかしながら、クラウドファンディングの性質上、一人でも支援者が発生 している状態で、販売内容を事後的に追加したり、撤回したりすることは、 支援者がクラウドファンディングによって得られるレアリティーを損なう 行為として、許容されるものではない。しかるに、被告は、既に本件企画の 15 支援者が生じている状態で、事後的に打上げへの参加をキャンセルしたので あり、その行為は債務不履行に当たる。 イ 被告は、「当日の長距離移動の時間の い。しかるに、被告は、既に本件企画の 15 支援者が生じている状態で、事後的に打上げへの参加をキャンセルしたので あり、その行為は債務不履行に当たる。 イ 被告は、「当日の長距離移動の時間の問題がある」ことをキャンセルの理 由としていたが、打上げの翌日に家族とともに都内で遊んでいる様子をツイ ッターに投稿していることからしても(甲11の8及び9)、実際はイベン 20 ト当日は都内近郊に滞在しており、被告によるキャンセルに正当な理由がな いことは明らかである。 また、被告は、本件企画に関与した漫画家全員が参加したわけではない 旨主張するが、当初から祝賀会及び打上げに不参加の意思を表明していた漫 画家には参加義務がないのは当然である。そして、被告以外には、参加する 25 旨合意しておきながらキャンセルした漫画家は存在しない。 47 さらに、被告は、原告らも被告の参加については調整中として公表してい たはずであるなどと主張する。しかしながら、本件企画のホームページ上に は、「★現時点でのご参加決定先生」という項目に被告の名前を掲載してお り、被告の参加は確定的なものとして公表している。なお、「+先生方のス ケジュール調整中です」という記載は、現時点で参加が決定した漫画家以外 5 の漫画家も、今後の調整次第では参加する可能性があることを示したものに すぎない。 (被告の主張) ⑴ 被告は、祝賀会については参加したものの、祝賀会後の打上げへの参加は辞 退した。もっとも、いずれについても、契約上の義務はなく、本件企画に関与 10 した作家全員が参加したものではない。 すなわち、本件企画に参加した漫画家10名のうち、祝賀会に参加した者は 7名(欠席3名)、打上げに参加した者は4名(欠席6名)であったところ、 原告らは、被告以外の欠席者 加したものではない。 すなわち、本件企画に参加した漫画家10名のうち、祝賀会に参加した者は 7名(欠席3名)、打上げに参加した者は4名(欠席6名)であったところ、 原告らは、被告以外の欠席者に対しては、損害賠償を求めていないことからし ても、打上げへの参加が法的な拘束力を持つものではないことは明らかである。 15 ⑵ 原告らも、参加者については調整中として公表していたものであり、影響は 生じていない(甲11の4)。なお、原告らは、被告が打上げをキャンセルし ておきながら、都内で遊んでいた旨主張し、甲11の8及び9を提出するが、 これは打上げの日のものではない。 9 争点9(本件漫画2の無断公開に係る債務不履行の有無) (本件債務不履行8) 20 (原告らの主張) ⑴ 契約の締結 原告らと被告は、前記1(原告らの主張)⑴のとおり、7月28日、本件合 意を締結した。これにより、被告は、原告らに対し、本件企画の返礼品である 本件コミックに収録された漫画のレアリティーが損なわれないようにするた 25 めに、同漫画は本件企画の支援者だけが読めるようにする債務を負っていた。 48 ⑵ 債務不履行 被告は、平成30年2月5日、被告自身のツイッターアカウントにおいて、 本件コミックに収録されている本件漫画2の一コマを、原告らに無断で公開し た。これは、支援者以外の不特定多数者に本件企画の返礼品を公表するもので あり、そのレアリティーを失わせるものであるから、債務不履行に当たる。 5 (被告の主張) 原告らの主張するような本件合意は成立していない。 10 争点10(「虚偽の事実」の告知の有無) (原告らの主張) 被告は、第1事件の係属中に、本件コミックに作品を提供した漫画家9名に対 10 し、本 うな本件合意は成立していない。 10 争点10(「虚偽の事実」の告知の有無) (原告らの主張) 被告は、第1事件の係属中に、本件コミックに作品を提供した漫画家9名に対 10 し、本件照会書を送付したが、本件照会書には、次のとおり、原告らの営業上の 信用を害する虚偽の事実が記載されている。 ⑴ 虚偽の事実 本件照会書には、「独占的利用権を許諾(譲渡)するということは、著作者 (作家)であっても自分の著作物(作品)を一切使えない(出版、インターネ 15 ットやツイッターでの表示、同様の作品や登場人物の絵を公表することも含む) ということを意味しています。」との記載がある(以下「本件記載部分」とい う。)。しかしながら、第1事件において原告らが主張している「独占的利用 権」により、被告を含めた漫画家が行うことができなくなるのは、提出した著 作物と全く同一内容の著作物をインターネット上で公開したり、他の出版社か 20 ら発売したりするといった本件企画のレアリティーを喪失させるような行為 のみであり、「全ページ書き直し」や「違いを楽しむものにする」ことにより、 レアリティーを損なわないように配慮すれば、自分の著作物を使用することは 可能であるほか、「同様の作品や登場人物の絵」を公表することは制限されて いないから、上記記載は虚偽である。 25 ⑵ 営業上の信用を害すること 49 本件照会書には、「お忙しいところ大変恐縮ですが、何卒、著作権者の権利 擁護のため、ご協力を賜りたくお願い申し上げます。」との記載も存在すると ころ、この部分と併せて本件記載部分を読むと、あたかも原告らが、著作者に よる著作物の使用を広範に制限して、著作者の著作権を侵害しているような印 象を与えるから、本件記載部分は、原告らの「営業上の信用を害する」虚偽の 5 本件記載部分を読むと、あたかも原告らが、著作者に よる著作物の使用を広範に制限して、著作者の著作権を侵害しているような印 象を与えるから、本件記載部分は、原告らの「営業上の信用を害する」虚偽の 5 事実であることは明らかである。 (被告の主張) 原告らの主張する「違いを楽しむもの」となっているか否かや、「全く同一の 内容」であるか否かの判断は、結局は原告らの主観によるものであり、著作権譲 渡や独占的利用権許諾の効果として、自己の著作物の公表が結果的に妨げられる 10 ことには変わりはない。実際にも、原告らは、本件コミックに収録された本件漫 画1とページ数や体裁等が全く異なるイースト・プレス版原稿についても同一の 著作物であると主張している。 したがって、本件記載部分は虚偽ではない。 11 争点11(原告らの損害) 15 (原告らの主張) ⑴ 第1事件に関する損害 353万9228円 ア 本件合意違反による債務不履行に基づく損害 157万1029円 本件各漫画は、本来、本件企画の返礼品として、支援者しか読めない性 質のものであったところ、被告がインターネット上のウェブサイトやpi 20 xivにおいてこれらを公開したことや、イースト・プレスを通じて本件 漫画1を発行したことなどにより、原告らは、これらを本件企画の返礼品 として頒布することにより得ることのできた利益を失った。 これによる損害額は、次の ないし の合計157万1029円となる。 原稿料(59ページ分) 26万0721円 25 市場価値相当分 18万9154円 50 経済的信用が毀損されたことによる損失 68万9154円 弁護士費用 43万2000円 イ 本件各債務不 市場価値相当分 18万9154円 50 経済的信用が毀損されたことによる損失 68万9154円 弁護士費用 43万2000円 イ 本件各債務不履行に基づく損害 196万8199円 原告らは、被告の本件各債務不履行により、次のとおり、合計196万8 199円の損害を被った。 5 本件債務不履行7に基づく損害 5万5987円 被告が打上げへの参加をキャンセルしたことにより、打上げに参加する 権利のうち、被告が参加することにより発生するレアリティーに相当する 市場価値が喪失したところ、その額は5万5987円となる。 本件各債務不履行に基づく損害 191万2212円 10 被告の本件各債務不履行により、原告らは、本来必要のない対応や業務 等を余儀なくされたところ、それらの負担を金銭に換算すると、151万 2212円に相当する。 また、上記の対応や業務により原告らが被った精神的苦痛を慰謝するに 足りる慰謝料の額は、40万円を下らない。 15 ⑵ 第2事件に関する損害 150万円 被告は、本件コミックに作品を提供した漫画家9名という、今後も原告ら が制作活動を継続するに当たって協力関係が必要となる相手に対し、虚偽の 告知をしたものであり、原告らの営業上の信用は著しく毀損されたものであ る。したがって、被告の不正競争行為により原告らが被った損害の額は、1 20 50万円を下らない。 (被告の主張) 争う。 12 争点12(差止めの必要性) (原告らの主張) 25 被告は、現在も、インターネット上のウェブサイトにおいて、本件漫画1を複 51 製の上、自動公衆送信及び送信可能化を継続して 2 争点12(差止めの必要性) (原告らの主張) 25 被告は、現在も、インターネット上のウェブサイトにおいて、本件漫画1を複 51 製の上、自動公衆送信及び送信可能化を継続しており、原告らからの再三の注意 や警告にも全く応じない。そして、本件合意に基づく原告らの独占的な利用権に 対する侵害行為の停止又は予防のためには、被告に対し、本件漫画1の複製、自 動公衆送信及び送信可能化を差し止める必要があるほか、既にインターネット上 のウェブサイトに公開されている被告公開著作物1ないし4の各著作物をいず 5 れも削除する必要がある。 (被告の主張) 争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 10 前記前提事実に加え、証拠(後掲証拠のほか,原告ら2名及び被告の各本人尋 問の結果)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる(なお、 特に記載がない限り、以下の月日はいずれも平成29年のものである。)。 ⑴ 5月10日の打合せ 原告X2は、5月10日、被告に対し、スカイプを通じ、「ラジオへんすて」 15 の活動5周年を記念するクラウドファンディングを企画していること、その企 画内容として、①漫画家への感謝とお礼の気持ちを込めて、「本当に描きたい もの」というテーマと、②「ラジオへんすて」のメンバーであった「人妻づま 子」が亡くなったことを受け、「いのち」というテーマを掲げたコミック本の 制作を検討していることを伝えた。 20 その上で、原告X2は、被告に対し、本件企画への参加を求めるとともに、 被告が当時、pixivで少しずつ公開を続けていたウチムスマザコンを完成 させた上で本件コミックに収録することや、「人妻づま子」についての漫画の 原稿を作成することを打診したところ、被告もこれを承諾し 被告が当時、pixivで少しずつ公開を続けていたウチムスマザコンを完成 させた上で本件コミックに収録することや、「人妻づま子」についての漫画の 原稿を作成することを打診したところ、被告もこれを承諾した。 その後、原告及び被告X2は、同月11日には、詳細について協議をするた 25 め、同月30日に松本市内で打合せをすることとした。(以上につき、甲1の 52 1、乙1〔7、8頁〕、乙58) ⑵ 5月15日のダイレクトメッセージによるやりとり 原告X1は、5月15日、被告に対し、改めて、本件企画の内容を紹介する ダイレクトメッセージを送付した。 同メッセージは、クラウドファンディングの手法により費用を調達した上で、 5 「ラジオへんすて」の5周年を記念したコミックを制作することや、クラウド ファンディングを成功させるためには、SNS上のファンに対し、クラウドフ ァンディングの紹介や説明を恒常的に発信することが重要であることを説明 した上で、被告に対し、「Y´先生にはまずCFの概要や意義を深くご理解し ていただき、その上でSNS上のファンの方々に向けて、現時点からCFのご 10 紹介やご説明を恒常的に発信していただきたく思います。」と依頼するもので あり、本件コミックに収録した漫画に係る権利関係についての記載や、本件コ ミックに収録した漫画の原稿が以後他の場所では公開できなくなることなど についての言及は一切存在しない。 これに対し、被告は、月末に原告X2と打合せをする予定であるため、その 15 際に詳細を詰めていきたいと考えている旨返信した。 (以上につき、乙4〔1~4頁〕、58) ⑶ 5月26日のダイレクトメッセージによるやり取り 原告X2は、5月26日、被告に対し、ウチムスマザコンにつき、①全ての ページをインターネット上で 上につき、乙4〔1~4頁〕、58) ⑶ 5月26日のダイレクトメッセージによるやり取り 原告X2は、5月26日、被告に対し、ウチムスマザコンにつき、①全ての ページをインターネット上で公開予定であるのか、②最終的に全部で何ページ 20 程度になる予定であるのかを尋ねる内容のダイレクトメッセージを送ったと ころ、被告は、①エッセイ部は全て公開であるが、本件企画に対しては、別途 「はなまるきょうだい」という漫画の原稿を提供することができること、②現 時点では40ページであるが、最終的には50ページになる予定であることを 回答した。 25 これに対し、原告X2は、ページ数については了解可能であるが、「はなま 53 るきょうだい」を別途提供することについては検討中であることや、漫画の内 容については、支援者が支援したいと思えるもの、お金を落としたいと思える ものにする必要があると考えていることを伝えた上で、ウチムスマザコンにつ いては、「ネット公開の時にカットされた別視点等でのお話や、お姉ちゃんの 様子など、ご家族サイドの様子が知れたり、ニコニコエピソード(現在のAく 5 ん)などの、ウチマザに関するオマケが読めると嬉しいなと思います。」との メッセージを送った。 これを受けて、被告は、「おまけエピソード入れるのもokです。」とのメ ッセージを返信した。 (以上につき、乙1〔9~11頁〕) 10 ⑷ 5月30日の打合せ 原告X2と被告は、5月30日、松本市内の喫茶店において打合せを行った (5月30日の打合せ)。 同打合せにおいては、本件コミック本に収録するウチムスマザコンのページ 数を暫定的に60ページとすること、本件漫画2については、手紙形式で現在 15 から過去に時間軸が移動するような内容とすること、その 打合せにおいては、本件コミック本に収録するウチムスマザコンのページ 数を暫定的に60ページとすること、本件漫画2については、手紙形式で現在 15 から過去に時間軸が移動するような内容とすること、その他にも各種のリター ン品の制作を検討中であるところ、被告としては、参加できる範囲で参加すれ ばよいことが確認された。 なお、原告X2作成に係る打合せノートには、本件コミックに収録した漫画 に係る権利関係についての記載や、本件コミックに収録した漫画の原稿が以後 20 他の場所では公開できなくなることなどについての言及は一切存在しない。 (以上につき、甲2の2、乙4、21、22、58) ⑸ 本件企画の内容 原告らは、5月頃、本件企画への参加を求める漫画家に宛てて送信するメー ルの原案を作成した。 25 同原案には、原稿の内容として、「先生方が、いま本当に描きたいもの」、 54 「いのち」という二つのテーマを中心に据えることが記載されているほか、 本企画の支援者に対するリターン品として配布するために、参加する漫画家 に対し、①本件コミック本用の原稿、②CD用意気込み・経緯等の音声収録、 ③同人誌用漫画・文章、④お礼状用サイン、⑤イベント参加、⑥イベント時 の支援者に対する応答(サイン・イラスト)を依頼する旨が記載されている 5 ものの(なお、原稿料の支払が発生するのは、上記①のみである。)、提出 した原稿については、以後作者の側において使用できなくなる旨の記載は一 切存在しない。 (以上につき、甲2の1、弁論の全趣旨) ⑹ 6月20日のダイレクトメッセージによるやり取り 10 被告は、6月20日、原告X2に対し、「ウチムスマザコンも遺すところあ と10Pです。ひとまずネット版では5~6Pで終わる予定で、へんすてブッ 0日のダイレクトメッセージによるやり取り 10 被告は、6月20日、原告X2に対し、「ウチムスマザコンも遺すところあ と10Pです。ひとまずネット版では5~6Pで終わる予定で、へんすてブッ クになるときに加筆ぶんとして追加EPを特典的につけたいと思っています。」 とのダイレクトメッセージを送った。これに対し、原告X2は、「ネット公開、 本用、ありがとうございます。」と返信した。(乙1〔13~14頁〕) 15 ⑺ 被告によるウチムスマザコンの公開 被告は、6月27日、ウチムスマザコン全60ページをpixivにアップ ロードして公開した。これに対して、原告らが被告に対し、事前の合意内容と 異なるなどと異議を述べることはなかった(弁論の全趣旨)。 ⑻ イースト・プレスによる書籍化 20 被告は、6月28日、イースト・プレスから、ウチムスマザコンの書籍化に ついての申し出を受けた(弁論の全趣旨)。 これを受けて、被告は、6月29日、原告らに対し、書籍化のオファーを受 けたこと、書籍化した場合には同人誌の発表に先行する可能性があることなど を伝えた上で、「ラジオへんすて」として、ウチムスマザコンを書籍化するこ 25 とに問題があるか否かを尋ねた。 55 これに対し、原告X2は、「他でもコミックス化できるのは喜ばしいことで 応援しています。「ウチムス」の書籍化は当初からへんすて側で止めたりとか はありません(づまさんの漫画は別)」とのメッセージを送った。 これを受けて、被告は、「同人誌として60P(現状ネットにあるもの)を 同人誌として出すという条件であちらにも相談してみようと思います。おそら 5 く、書籍化の場合ほぼ書き直しの予感ですw」、「書籍化することを見込んだ 内容を加筆する・・・ウチムスのEPを削 るもの)を 同人誌として出すという条件であちらにも相談してみようと思います。おそら 5 く、書籍化の場合ほぼ書き直しの予感ですw」、「書籍化することを見込んだ 内容を加筆する・・・ウチムスのEPを削り、この話が作られるにいたるまで、 ここの載るまでの流れを同人誌に載せるなどの方法もあると思うので、ちょっ と考えてみたいと思います。」、「案のほうは、本当に案なので、今は流して もらっても大丈夫です。」とのメッセージを送った。(乙2) 10 これに対し、原告X2は、「他の場所で書籍化するにあたってのへんすてと してのポイントは、・この企画に関わる人に迷惑をかけたり思いを踏みにじる ような事にならないか? ・書籍の売り上げを伸ばす目的での悪意ある「発売 日操作」出し抜きとかでなければ、僕らは普通に喜べますし、応援できます。 へんすてでの書籍発表前とか後とかはあまり問題視しておらず、「気持ち次第」 15 です。」、「簡単に言えば「ウチムス漫画に感じたから、広く伝えたい」なの で、ほかでのコミックス化はむしろ喜ばしいことです。」などと返信した。 これを受けて、被告は、原告X2に対し、オファーを受けたのは、自らが漫 画家となる契機を作ってくれたイースト・プレスの初代担当者からであること、 同担当者からは、8年間、いつか一緒に仕事をしたいといわれ続けていたこと、 20 発売日操作や出し抜きなどは考えていないことなどを伝えたところ、原告X2 は、「書籍化のお話は、普通にチャンスですので、「うまく進めて」下さい! へんすてでY´先生の漫画を独占したい気持ちや、先にだしたいとかはないで す。そのようなお方でしたら安心ですので、そちらも頑張って進めて下さいま せ。」と返信した。 25 その後、被告は、6月30日、原告X2に対し、イースト・プレスの担当者 たいとかはないで す。そのようなお方でしたら安心ですので、そちらも頑張って進めて下さいま せ。」と返信した。 25 その後、被告は、6月30日、原告X2に対し、イースト・プレスの担当者 56 に送ったメッセージの一部を抜粋したものを送信したが、その内容は、同人誌 として発行したものを書籍化することの可否を確認するものであり、「書籍化 の歳は書き足し・書き直しがあると思います。同人誌では、ネット現状のもの、 またはエピソードを削った上で別エピソード追加の形で収録する予定です。 (書籍化の際には同じ原稿はのせない予定です)先方からは、同人誌にのって 5 いる作品でも問題なく書籍化を進めていただきたい、書籍化の件は全力で応援 させていただきたい、たくさんの人に作品を知ってほしいとお言葉をいただい ております。」との記載がある。 (以上につき、乙2〔1~8頁〕、58) ⑼ 7月28日の打合せ 10 原告らと被告は、7月28日、松本駅付近の喫茶店にて打合せを行なった(7 月28日の打合せ)。 同打合せでは、ウチムスマザコンについて、現在58頁であるが、本件コミ ックに収録する際には、新規に4ページ分(以下「追加4ページ分」という。) を追加すること及びその内容はアンケートで決めることが確認されたほか、イ 15 ースト・プレス版は表現等で書き直しがあること、分量は120頁になる予定 であることなどが話し合われた。その上で、原告らは、被告に対し、ウチムス マザコンの原稿(60頁)を8月中に作成・提出することを依頼し、被告はこ れを承諾した。 また、本件漫画2については、8月中に原告X2から被告に対し、原案を提 20 出し、9月中に被告が原告X2に対し、原稿を提出することとなった。 以上に加え、原告らは、被告に た。 また、本件漫画2については、8月中に原告X2から被告に対し、原案を提 20 出し、9月中に被告が原告X2に対し、原稿を提出することとなった。 以上に加え、原告らは、被告に対し、無償での作業として、①宣伝用漫画の 原稿の作成や、②同人誌「絆」の原稿を10月末日までに作成・提出すること、 ③祝賀会及びその後の打上げへの参加、④LINEスタンプの作成、⑤支援者 へのお礼状に印刷するサインデータを8月中に提供することを依頼し、被告は 25 これらをいずれも承諾した。 57 なお、7月28日の打合せで決定した事項につき、原告らと被告との間で書 面が作成されることはなかった。また、原告X2作成に係る打合せノート(甲 2の3)には、本件コミックに収録した漫画に係る権利関係についての記載や、 本件コミックに収録した漫画の原稿が以後他の場所では公開できなくなるこ となどについての言及は一切存在しない。 5 (以上につき、甲2の3、乙4、58) ⑽ アンケートの結果 原告X2は、7月28日、被告に対し、アンケートの結果を報告したが、そ の内容としては、ハッピーエンディングの後の楽しい話が読みたいという声や、 ウチムスマザコンの後日談が読みたいという声が多く寄せられていた(乙5 10 〔1~2頁〕)。 ⑾ 7月31日のメッセージ 被告は、7月31日に、原告X2に対しメッセージ(以下「7月31日のメ ッセージ」という。)を送り、原告らに提出すべき原稿等につき、以下のとお り確認を求めたところ、原告X2は、「抜けありません!」と返信した。(乙 15 5〔2頁〕) ・サインデータ 8月中UP ・ウチムス本文60P 8月中UP ・ファンディングまんが(無償) 8/18公開 ・販売促進用ノベルティあとがき ありません!」と返信した。(乙 15 5〔2頁〕) ・サインデータ 8月中UP ・ウチムス本文60P 8月中UP ・ファンディングまんが(無償) 8/18公開 ・販売促進用ノベルティあとがき本 10P以下で 10月末UP 20 ・スタンプデータ はやいとこUP ・づまんが 9月中にネームUP10月中UP ⑿ クラウドファンディング開始に至るまでのやり取り ア 8月8日 被告は、8月8日、原告X2に対し、お礼状に印刷するサインのデータを 25 提供した。 58 また、原告X2は、8月8日、被告に対し、「づまさんまんがのネーム、 話し合いながら作っていますのでもう少しお待ちください!」とのメッセー ジを送信した。これに対し、被告は、「はい!どちらにしろ15日くらいま では手がつけられないので、大丈夫です。がんばります~」と返信した。 (以上につき、乙5〔3~4頁〕、58) 5 イ 8月17日 被告は、8月17日、原告らに対し、制作したLINEスタンプのデータ を送信した。これに対し、原告X2は、お礼を述べるとともに、「こちらの、 手紙とネーム遅れてすみません」「いそぎます!」とのメッセージを送信し た。 10 また、被告は、同日、本件漫画1(追加4ページ分を除いたもの。以下「本 件漫画1本体」という。)の原稿を提出した。この原稿は、pixiv版の 原稿をベースとしつつ、被告の息子が入院中に被告が病室でネットラジオを 聴くシーンについて、その画面に「へんすて」という文字とへんすてキャラ クターの絵を描いた上で、「へんすてわ!今夜も元気なX2´です!」、「X 15 1´さん挨拶挨拶!」などと、ラジオ番組における原告らの発言を記載する という修正を加えたものであった。 てキャラ クターの絵を描いた上で、「へんすてわ!今夜も元気なX2´です!」、「X 15 1´さん挨拶挨拶!」などと、ラジオ番組における原告らの発言を記載する という修正を加えたものであった。 (以上につき、甲3の1〔43枚目〕、乙5〔4頁〕、7〔原告漫画の22 枚目〕、58) ウ 8月26日 20 原告X1は、8月26日、被告に対し、漫画家の「C」を本件企画に参加 させることにつき、被告から声をかけることを依頼し、被告はこれを了承し た。(乙4〔12頁〕、58) エ 8月28日 原告X1は、8月28日、被告に対し、スカイプで追加の音声を収録する 25 ことを依頼した。(乙4〔16頁〕、58) 59 ⒀ クラウドファンディングの開始 「ラジオへんすて」は、9月1日、本件企画に対する支援の募集を開始し た。募集期間は2か月間と設定され、本件のホームページにおいて、本件企 画の返礼品が公開されたが、その中には、祝賀会及び打上げに関し、次のよ うな記載が存在する。(甲11、乙28、58) 5 ア 「記念祝賀会参加権 2017年12月16日(土)都内で開催予定」に ついては、「現時点でのご参加決定先生」として、他の5名の漫画家ととも に被告の名前が掲載されているほか、 「+先生方のスケジュール調整中です」、 「※参加決定の先生のスケジュールにより急遽不参加となってしまった場 合は別途リターンを検討しております」(甲11の2、11の3) 10 イ 「漫画家先生と打ち上げ参加権 2017年12月16日(土)記念祝 賀会後開催予定」については、「打ち上げ参加漫画家先生全員のサインも しくは先生1名に裏表紙にその場でイラスト描き下ろし企画あり」、「現 時点でのご参加決定先生」として、他の3名の漫画家の名前 )記念祝 賀会後開催予定」については、「打ち上げ参加漫画家先生全員のサインも しくは先生1名に裏表紙にその場でイラスト描き下ろし企画あり」、「現 時点でのご参加決定先生」として、他の3名の漫画家の名前とともに、被 告の名前が掲載されているほか、「+先生方のスケジュール調整中です」、 15 「参加先生全員のイラストを目の前で自分のコミック背表紙裏に描いて貰 え手渡しして頂けます。参加先生全員&シークレット先生の寄せ書きサイ ン色紙、少人数対面式個室で濃密なお時間を!参加支援者さまご自身で先 生方にご質問できます」(甲11の4) ⒁ クラウドファンディング開始後のダイレクトメッセージでのやり取り 20 ア 9月1日 原告X2は、9月1日、被告に対し、本件漫画2の素材として、「てが み」、「プロット」及び「へんすてメンバー画像(づまさん作)」を送信 した。これを受けて、被告は、漫画を作成するための素材としては不十分 であると感じたものの、本件漫画2の作成に取り掛かることとした。(乙 25 5〔6頁〕、23、24、58) 60 イ 9月5日 被告は、9月5日、原告X1に対し、「づまんがにとかかるのは速くて 来週です・・・」と伝えた。(乙4〔19頁〕) ウ 9月11日 原告X1は、9月11日、被告に対し、本件企画及び「ラジオへんすて」 5 のホームページに掲載するためのイラストの提供や、ツイッターやSNSに おけるフォロワーに対する情報拡散を依頼した。(乙4〔21~26頁〕、 58) エ 9月12日 原告X1は、9月12日、被告に対し、CAMPFIREに共有するため 10 の本件企画用の宣伝イラストを提供するよう求めた。(乙4〔26頁〕、5 8) オ 9月15日 原告X1は、9月15日、被告に は、9月12日、被告に対し、CAMPFIREに共有するため 10 の本件企画用の宣伝イラストを提供するよう求めた。(乙4〔26頁〕、5 8) オ 9月15日 原告X1は、9月15日、被告に対し、本件企画のホームページ等におい て被告を表示するための画像として、被告のツイッターアイコンの画像を使 15 用することについての許可を求めたところ、被告はこれを承諾した。(乙4 〔29~30頁〕、58) カ 9月20日及び26日 原告X1は、9月20日及び26日の2回にわたって、被告に対し、①ツ イッターで本件企画について投稿する際に、本件企画のホームページのUR 20 Lを添付することや、②被告のブログ等において、被告の思いとともに本件 企画を紹介することを依頼した(乙4〔30~35頁〕、58) キ 9月29日 原告X2は、9月29日、被告に対し、ウチムスマザコンから印象的なカ ットを取り出して本件企画のホームページ内に掲載した上で、その画像の下 25 にpixivのURLを掲げるとともに、追加4ページ分が収録されること 61 を記載することを提案した。これに対し、被告は、4ページと明示するので はなく、加筆部分があることを記載することを提案したところ、原告X2も これを了承し、同日のうちに同提案を実行に移した。(乙5〔8~10頁〕、 28、58、原告X2〔15~17頁〕) ク 10月20日及び21日 5 原告X2は、10月20日、被告に対し、祝賀会及び打上げに関し、祝賀 会は12月16日の12時から16時まで、打上げは同日の16時から19 時の予定であること、祝賀会のみに参加することも可能であること、祝賀会 については同伴者1名まで無料とすること、回答期限は10月25日までで あることを伝えるとともに、打 、打上げは同日の16時から19 時の予定であること、祝賀会のみに参加することも可能であること、祝賀会 については同伴者1名まで無料とすること、回答期限は10月25日までで あることを伝えるとともに、打上げの際に被告のために用意するドリンクに 10 ついて、被告独自の名前を付けることを依頼したところ、被告はこれを承諾 した。 また、原告X2は、10月20日、被告に対し、①本件各漫画の進捗状況 を確認するとともに、②宣伝のために使用できる原稿の送付や、③「連絡が ちゃんといっていませんでしたらすみません」とした上で、祝賀会の参加者 15 に対しネームをコピー本としてまとめたものを配布する予定であるため、ネ ームやプロットの時点で一旦データを保存しておくこと、④本件コミックの 表紙の線画を10月中に提出することを求めた。 これに対し、被告は、①については、「追加ページに関しては、ブログの 育児ネタを抜粋してかくつもりです!」と伝えたほか、②については、既に 20 原稿を提出済みであること、③については、初めて聞いた話であり、本件漫 画1についてはもともとネームがなく、本件漫画2のネームを掲載すること には抵抗があること、④については、「応援キャラのめいちゃん」を描くこ とを伝えた。 これを受けて、原告X2は、10月21日、「ブログから抜粋して書く 25 事分かりました。追加4Pの打ち合わけ、・息子さん・娘さん・家族・へ 62 んすての事で、それぞれ1Pずつでお願いいたします!」と返信した。 (以上につき、乙6〔1~8頁〕、58) ケ 10月25日及び26日 被告は、10月25日、原告らに対し、本件漫画2のネームを提出した。 これに対し、原告X2は、同月26日、被告に対し、髪の毛のない描写は受 5 け入れられないなどと 10月25日及び26日 被告は、10月25日、原告らに対し、本件漫画2のネームを提出した。 これに対し、原告X2は、同月26日、被告に対し、髪の毛のない描写は受 5 け入れられないなどとして、修正を依頼した。 これを受けて、被告は、同日、修正内容につき原告X2とスカイプで打合 せをした上で、修正したネームを提出したところ、原告X2もその内容を了 解した。 (以上につき、乙2〔10頁〕、5〔12頁〕、25~27、58) 10 コ 10月28日 原告X2は、10月28日、被告に対し、本件企画が目標金額に到達した ことを報告した(乙6〔10頁〕、28)。 サ 10月30日 原告X2は、10月30日、被告に対し、「11/10の締め切りまで残 15 りの日数も少なくなってまいりましたが、お体ご自愛くださりつつ、執筆の お願いをさせていただけましたら幸いです。」とのメッセージを送信した。 これに対し、被告は、「進捗づまんが5pです。今しばらくお待ちください ませ。」と返信した(乙6〔13頁〕)。 シ 10月31日 20 原告X1は、10月31日、被告に対し、「・コミック本の原稿 ・同人 誌にご寄稿いただける原稿 ・コミック表紙カットイラスト完成版」の締切 りが11月10日であることを確認する内容のメッセージを送った。(乙6 〔14頁〕) ス 11月1日及び2日 25 被告は、11月1日、原告らに対し、本件漫画2の完成原稿を提出すると 63 ともに、その時点で未提出の原稿は、①本件漫画1の追加4ページ分、②同 人誌「絆」の原稿であるという認識を示すとともに、同原稿のページ数は把 握していないことを伝えた。 これに対し、原告X2は、11月2日、被告に対し、①本件漫画2につき、 技術的な修正 4ページ分、②同 人誌「絆」の原稿であるという認識を示すとともに、同原稿のページ数は把 握していないことを伝えた。 これに対し、原告X2は、11月2日、被告に対し、①本件漫画2につき、 技術的な修正の可能性を指摘しつつも、被告に原稿作成を依頼することがで 5 きたことに対する謝意を述べるとともに、②追加4ページ分の内容につき、 次のとおり記載した上で、4ページ目については、祝賀会で参加者にプレゼ ントするネームコピー本にまとめる予定であることや、③同人誌原稿の分量 については、A5サイズで1ページであることを伝えた。 ・加筆1P目:現在の息子さんのお話 10 2P目:現在の娘さんのお話 3P目:息子さんが闘病中だった際の、ご家族のお話(以下、このペ ージを単に「3ページ目」という。) 4P目:ウチムスマザコンとへんすてについてのお話(以下、このペ ージを単に「4ページ目」という。) 15 (以上につき、乙5〔12~13頁〕、58) セ 11月5日 原告X2は、11月5日、被告に対し、未提出の原稿等が次のとおりであ ることにつき確認を求めた(乙6〔17頁〕、58)。 ・本原稿、ウチムスマザコン追加分 4P(息子さん、娘さん、ご家族、へ 20 んすて各1p) ・同人誌原稿 ・祝賀会参加者プレゼント用ネーム(ウチムスマザコン追加ページより) ソ 11月7日 原告X1は、11月7日、被告に対し、既に提出済みであった本件漫画1 25 本体につき、技術的な修正箇所を指摘した。これに対し、被告は、「修正部 64 ふくめ加筆ぶんとあわせ10日にUPします。」と返信した。 また、被告は、11月7日、原告X1に対し、祝賀会については同伴 術的な修正箇所を指摘した。これに対し、被告は、「修正部 64 ふくめ加筆ぶんとあわせ10日にUPします。」と返信した。 また、被告は、11月7日、原告X1に対し、祝賀会については同伴者1 名とともに参加予定である旨を伝えたところ、原告X1もこれを承諾した (乙4〔36頁〕、6〔18~20頁〕、58)。 タ 11月9日 5 被告は、11月9日、「加筆4P+修正分は以下になります。」、「加筆 分のネーム原稿です」とのメッセージとともに、原告X2に原稿のデータを 提出した。 これに対し、原告X2は、同日、「追加ページ分の4P受け取らせていた だきました。AくんとBちゃんのその後が元気であると知れて嬉しいページ 10 でした。」と返信した。 (以上につき、乙5〔13頁、14頁〕、58、弁論の全趣旨)。 チ 11月10日 被告は、11月10日、原告らに対し、「同人使用の1Pです。よろしく お願いします。これで全てUPです。」とのメッセージとともに、同人誌「絆」 15 の原稿(甲7)を送付した。 また、原告X1は、11月10日、被告に対し、本件漫画1の修正分及び 追加4ページ分の完成原稿の提出につき謝意を述べた上で、追加4ページ分 の4ページ目につき、技術上の修正点を指摘した。 さらに、原告X1は、被告に対し、同人誌「絆」の原稿の内容につき緊急 20 で相談したいことがあるとして、スカイプでの通話を求めた。これに対し、 被告は、忙しいため通話に必要な時間が確保できないとして、要件をダイレ クトメッセージで伝えるよう求めたが、原告X1は、文章では伝えにくい内 容なので口頭で話をしたいとして、これに応じなかった。 (以上につき、甲7、乙5〔14頁〕、6〔20~24頁〕、58) 25 ツ 11月 伝えるよう求めたが、原告X1は、文章では伝えにくい内 容なので口頭で話をしたいとして、これに応じなかった。 (以上につき、甲7、乙5〔14頁〕、6〔20~24頁〕、58) 25 ツ 11月12日 65 被告は、原告らと相談ができない状況の中、11月12日、「かひつ04 の修正と、同人誌用の差し替え1Pです。」とした上で、追加4ページの分 の4ページ目の修正原稿及び同人誌「絆」の修正原稿(乙31)を提出した ところ、原告X1は、同月14日になって、これらの修正原稿の提出に対し 謝意を示した。(乙5〔14頁〕、6〔24頁〕、31、58) 5 テ 11月18日及び19日 原告X1は、11月18日、被告に対し、本件漫画2につき、技術上の修 正事項を指摘した上で、同月20日までに修正した原稿を提出するよう依頼 した。 被告は、これを受けて、11月19日、修正した原稿を再提出したところ、 10 同日、原告X1から、原稿の提出につき謝意を示された。 (以上につき、乙6〔24~27頁〕、58) ⒂ 被告による打上げへの参加の辞退 「ラジオへんすて」は、11月27日、被告に対し、「祝賀会」の詳細を告 知する内容のメールを送信した。 15 これに対し、被告は、11月30日、原告らに対し、当日の長距離移動の時 間の問題があるとして、祝賀会には参加するものの、打上げについては参加を 辞退する旨のメッセージを送付したが、原告らからは、特段の反応はなかった。 (以上につき、甲11の7、甲42、弁論の全趣旨) 2 争点に対する判断 20 ⑴ 争点1(本件各漫画に係る独占的利用許諾契約の成否) ア 本件合意の成否 著作者は、著作者が自身も利用できない独占的許諾利用契約を締結する 場合には、その後の著作者の 対する判断 20 ⑴ 争点1(本件各漫画に係る独占的利用許諾契約の成否) ア 本件合意の成否 著作者は、著作者が自身も利用できない独占的許諾利用契約を締結する 場合には、その後の著作者の表現、創作活動等にも重大な影響を与えるこ とになるから、経験則上、その許諾に係る利用方法及び条件を明記する契 25 約書を取り交わすのが自然であるといえる。それにもかかわらず、前記認 66 定事実によれば、原告ら及び被告は、本件合意に関する契約書その他の書 面を一切作成していないことが認められる。しかも、前記認定事実及び弁 論の全趣旨によれば、原告らは、被告との間で、5月頃から11月頃まで の間、多数のメッセージを送受信しているにもかかわらず、被告に対し、 本件合意によって被告が本件各漫画を今後利用することができなくなる 5 ことを伝えていた事実を認めることはできず、原告らが7月28日に被告 に交付したと主張している書面(甲2の1)にも、5月30日の打合せ及 び7月28日の打合せの際に原告X2が作成したノート(甲2の2及び3) にも、上記事実の記載を認めることはできない。 また、前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば、①そもそも、原告らが 10 被告に本件企画への参加を打診した時点で、ウチムスマザコンは、既にそ の一部がインターネット上で公開されていたのであり、本件コミックには 既存の作品を収録することが、当事者間においても当然の前提となってい たこと、②被告は、5月26日、原告X2に対し、ウチムスマザコンにつ いては全て公開する予定である旨を伝えているところ、これに対し、原告 15 X2は特段異議を述べていないこと、③被告は、6月20日にも、原告ら に対し、「ウチムスマザコンも遺すところあと10Pです。ひとまずネッ ト版では5~6Pで終わる予定で、へんすてブッ 対し、原告 15 X2は特段異議を述べていないこと、③被告は、6月20日にも、原告ら に対し、「ウチムスマザコンも遺すところあと10Pです。ひとまずネッ ト版では5~6Pで終わる予定で、へんすてブックになるときに加筆分と して追加EPを特典的につけたいと思っています。」などとして、ウチム スマザコンを引き続きインターネット上で公開しつつ、本件コミック版に 20 ついては、特典として追加のエピソードを加筆する予定であることを伝え ているところ、これに対し、原告X2は、「ネット公開、本用、ありがと うございます。」などと謝意を述べていること、④その後、被告は、6月 27日、ウチムスマザコンの全体(60ページ)をpixivにアップロ ードしているが、原告らは、これに対し、特段異議を述べていないこと、 25 ⑤原告X2は、6月29日、被告から、ウチムスマザコンを単行本として 67 出版することの可否を尋ねられた際に、これに対して異議を述べず、かえ って、「書籍化のお話は、普通にチャンスですので、「うまく進めて」下 さい!へんすてでY´先生の漫画を独占したい気持ちや、先に出したいと かはないです」と伝えるなどして、むしろ、ウチムスマザコンの単行本化 を後押しするような発言をしていること、⑥被告は、同日、原告X2に対 5 し、現状としてインターネットで公開されている60ページを本件コミッ ク版として出版する予定である旨伝えたほか、6月30日にも、「同人誌 では、ネット現状のもの、またはエピソードを削った上で別エピソード追 加の形で収録する予定です。」と伝えたところ、原告X2は、これらに対 しても特段異議を述べていないこと、⑦原告らは、本件企画の募集期間中、 10 本件ホームページにpixivへのリンクを張っており、自ら、本件ホー ムページを閲覧した者がウチムスマザコン( 、これらに対 しても特段異議を述べていないこと、⑦原告らは、本件企画の募集期間中、 10 本件ホームページにpixivへのリンクを張っており、自ら、本件ホー ムページを閲覧した者がウチムスマザコン(pixiv版)を読める状態 に置いていたこと、以上の各事実が認められる。 上記認定事実によれば、原告らが本件企画への参加を被告に打診した時 点から一貫して、原告らと被告との間では、被告がウチムスマザコンをイ 15 ンターネットで公開することを前提としたやり取りが行われていたので あり、しかも、原告らが本件合意をしたと主張する時期の前後には、被告 は、ウチムスマザコン全60ページをpixivにアップロードして公開 するとともに、イースト・プレスからウチムスマザコンの書籍化の申出を 受け、被告は、原告らにこれらを伝えていたことが認められる。そうする 20 と、被告は、当初から自身がウチムスマザコンを一切利用できないような 独占的利用許諾契約を締結する意思がなかったものと認めるのが相当で ある。そして、原告らも、被告がウチムスマザコンをインターネット上で 公開したり、別の出版社から書籍化したりすることを許容していたのであ り、かえって、原告X2は、被告から上記書籍化の相談を受けた際に、「書 25 籍化のお話は、普通にチャンスですので、「うまく進めて」下さい!へん 68 すてでY´先生の漫画を独占したい気持ちや、先にだしたいとかはないで す。」と述べるなど、被告に対し、本件各漫画を独占する意図がないこと を伝えた上、むしろ、これを後押しするような発言をしていたことが認め られる。そうすると、原告らの主張は、本件合意に至る経緯と矛盾するも のといえる。 5 これらの事情の下においては、本件合意の内容及び本件合意に至る経緯 に照らしても、本件合意を認めるのは相当ではない る。そうすると、原告らの主張は、本件合意に至る経緯と矛盾するも のといえる。 5 これらの事情の下においては、本件合意の内容及び本件合意に至る経緯 に照らしても、本件合意を認めるのは相当ではないというべきである。 本件を実質的にみても、本件企画は、漫画家への感謝とお礼の気持ちを 込め、漫画家を応援するという趣旨を含むものであり、本件企画に参加し た漫画家の表現活動を制約するような本件合意は、そもそも、その趣旨に 10 反するものであり、被告本人尋問の結果を踏まえても、被告は、本件合意 がこのような制約を伴うものであれば、本件企画に参加することはなかっ たものと認められる。 イ 原告らの主張に対する判断 原告らは、本件合意を裏付ける書面が作成されていないのは、被告は何 15 度も合意内容を反故にしていたところ、原告らが合意内容を証拠として残 そうとすると、被告が「漫画家Y´を信じてください。」などと述べ、原 告らを威圧して書面等の作成を阻止したためである旨主張する。 しかしながら、前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば、原告らが、被 告に対し、書面等の作成を求めていたことすら認めることはできず、まし 20 て、被告が、原告らを威圧して書面等の作成を阻止したことを認めること はできない。 したがって、原告らの主張は、採用することができない。 a 原告らは、本件合意をするに当たり、本件企画のレアリティーを失わ せるような行為をしないことを当然の前提として、原告らに独占的な利 25 用権を設定する旨の合意(本件合意)をした旨主張する。 69 しかしながら、レアリティーという言葉自体が日本語として極めて漠 然としたものであり、原告らも、「ここでしか読めない」、「違いを楽 しむもの」、「プレミア価値」、「書き直しに当たるかどうか」などと 言葉を変えて がら、レアリティーという言葉自体が日本語として極めて漠 然としたものであり、原告らも、「ここでしか読めない」、「違いを楽 しむもの」、「プレミア価値」、「書き直しに当たるかどうか」などと 言葉を変えて曖昧に説明するにとどまり、その定義をこれ以上明確にす ることができない。そうすると、著作者が自身も利用できない独占的許 5 諾利用契約の条件としては、明らかに合理性を欠くものであり、表現、 創作活動を制約するものとしてそれ自体不相当なものといえるから、漫 画家としての被告がこのような条件に合意したというのは、極めて不自 然である。のみならず、前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば、原告 らは、被告との間で、5月頃から11月頃までの間、多数のメッセージ 10 を送受信しているにもかかわらず、原告らが、被告に対し、レアリティ ーという言葉を使用していた事実すら認めることができず、原告らが7 月28日に被告に交付したと主張している書面(甲2の1)にも、5月 30日の打合せ及び7月28日の打合せの際に原告X2が作成したノ ート(甲2の2及び3)にも、レアリティーという言葉は一切記載され 15 ていない。現に、原告X2自身も、本人尋問において、レアリティーと いう言葉を使用していなかったことを認めるに至っている(原告X2本 人32頁)。そうすると、原告らの主張は、前記判断を左右するものと はならない。 b 仮に、原告らの主張を前提として、本件企画のレアリティーを失わせ 20 るような行為をしない旨の合意があったとしても、次のとおり、そもそ も、被告が上記行為をしたものとは認められない。 ① 被告公開著作物4及び5(本件漫画1関連)について 証拠(乙7、54)及び弁論の全趣旨によれば、本件コミック版と イースト・プレス版を比較すると、両者には同一のコマも多数存在 。 ① 被告公開著作物4及び5(本件漫画1関連)について 証拠(乙7、54)及び弁論の全趣旨によれば、本件コミック版と イースト・プレス版を比較すると、両者には同一のコマも多数存在す 25 るものの、本件コミック版は60ページであるのに対し、イースト・ 70 プレス版は120ページであり、本件コミック版にはないコマが全体 にわたって多数追加されていること、とりわけ、イースト・プレス版 は、本件コミック版とは異なり、4章構成を採用した上で、最終章で ある4章には、病気から回復した後の息子の様子が30ページ以上も 新規に追加されたものであるから、明らかに書き直しに当たるといえ 5 ること、しかも、イースト・プレス版は、同じレイアウトのコマであ っても、絵のタッチが修正されていたり、吹き出しが追加されたり、 文字のデザインが変更されていたりするものも多く、全体として、随 所において書き直しが行われたこと、本件漫画1には、pixiv版 には存在しない追加4ページ分が加えられていること、以上の事実が 10 認められる。 上記認定事実によれば、本件コミック版は、イースト・プレス版と の対比において、上記のような書き直しや修正箇所の分量を踏まえる と、いわば「ここでしか読めない」ものであり、イースト・プレスに おいて発行された被告公開著作物5は、原告らの主張を前提としても、 15 本件漫画1のレアリティーを損なうものと認めることはできない。ま た、本件漫画1は、pixiv版には存在しない追加4ページ分が加 えられていることからすると、pixiv版との対比においても、い わば「ここでしか読めない」ものであり、pixivにおいて公開さ れた被告公開著作物4は、原告の主張を前提としても、本件漫画1の 20 レアリティーを損なうものと認めることはできない。 おいても、い わば「ここでしか読めない」ものであり、pixivにおいて公開さ れた被告公開著作物4は、原告の主張を前提としても、本件漫画1の 20 レアリティーを損なうものと認めることはできない。 なお、原告らは、追加4ページ分の一部につき、事前の合意と異な る内容の原稿が提出されたという理由で、別途、本件債務不履行3- 2を主張するものの、同主張も採用することができないことは、後述 のとおりである。 25 ② 被告公開著作物1ないし3(本件漫画1関連)について 71 弁論の全趣旨によれば、被告公開著作物1ないし3は、追加4ペー ジ分の3ページ目の原案であることが認められるところ、原告の主張 を前提としたとしても、追加4ページ分のそれ以外のページは公開さ れていないのであって、追加4ページ分全てを新規に書き下ろす旨の 合意が成立したとは認めるに足りる的確な証拠はない。そうすると、 5 本件企画を支援して本件コミックを入手しない限り、本件漫画1に収 録されている追加4ページ分全てをみることはできないのであるか ら、全体として、いわば「ここでしか読めないもの」であるというこ とができる。 したがって,被告公開著作物1ないし3も、本件漫画1のレアリテ 10 ィーを損なうものであるとは認められない。 ③ 被告公開著作物6(本件漫画2関連)について 前記認定事実によれば、被告がインターネットに公開したのは、本 件漫画2の1コマにすぎないところ(被告公開著作物6)、当該部分 が自由に閲覧可能であるとしても、本件企画を支援して本件コミック 15 を入手しない限り、本件漫画2全体を読むことができないのであるか ら、原告らの主張を前提としても、本件漫画2は、全体として、いわ ば「ここでしか読めないもの」であるということができる。 ④ を入手しない限り、本件漫画2全体を読むことができないのであるか ら、原告らの主張を前提としても、本件漫画2は、全体として、いわ ば「ここでしか読めないもの」であるということができる。 ④ したがって、原告らの主張は、仮に原告らの主張を前提としたとし ても、いずれも採用することができない。 20 原告らは、被告にウチムスマザコンの単行本化を勧めたのは、被告が6 月27日にウチムスマザコンを無断で公開したことに加え、同月29日に は単行本化のオファーを受けたことを報告してきたことから、原告らにお いて、被告には本件企画に参加する意図がないと受け止めたためである旨 主張する。 25 しかしながら、6月27日の公開以前から、被告が原告らに対し、ウチ 72 ムスマザコンの公開を前提とした発言をしており、原告らもそれを踏まえ た対応をしていたことは、上記において説示したとおりである。のみなら ず、前記認定事実によれば、被告が同月29日に原告X2に送ったメッセ ージには、単行本化をする場合に本件企画から辞退する旨言及したものは 一切存在せず、むしろ、被告は、「同人誌として60P(現状ネットにあ 5 るもの)を同人誌として出すという条件であちらにも相談してみようと思 います。」、「書籍化することを見込んだ内容を加筆する」、「ここに載 るまでの流れを同人誌に載せるなどの方法もあると思う」などとして、本 件コミックにもウチムスマザコンを収録することを前提とする内容のメ ッセージを複数送っていることが認められる。しかも、前記認定事実によ 10 れば、原告X2は、悪意をもって発売日を操作する目的でなければ、本件 コミックと書籍化の先後関係は問題ではないなどとまで述べており、本件 コミック版とイースト・プレス版が併存することを前提とした対応を行っ ていることが認めら をもって発売日を操作する目的でなければ、本件 コミックと書籍化の先後関係は問題ではないなどとまで述べており、本件 コミック版とイースト・プレス版が併存することを前提とした対応を行っ ていることが認められる。そうすると、原告らの主張は、上記の経過と異 なる前提に立って主張するものにすぎない。 15 したがって、原告らの主張は、採用することができない。 原告X2は、本件コミックが出版されるまでにpixiv版の公開を中 止することで、本件コミックのレアリティーを回復させることにつき、原 告らと被告との間で合意が成立していたと供述し、原告らはその旨主張す る。 20 しかしながら、前記認定事実によれば、原告らと被告との間では多数の メッセージのやり取りが行われているにもかかわらず、pixiv版の公 開を中止することに言及されたものは一切存在しないことが認められる ことからすると、原告X2の供述は、信用性が低いものと認められる。 したがって、原告らの主張は、採用することができない。 25 その他に、原告らの主張及び証拠を改めて検討しても、原告らの主張は、 73 具体的な裏付けを欠くもの又は本件合意に至る経緯に矛盾するものとい うほかない。原告らの主張の実質は、結局のところ、本件各漫画につき、 被告に対し、本件コミック版に収録されたものと少しでも重複する漫画や 画像の公開を禁止しようとするものである。このような行為は、漫画家と しての被告の表現活動を著しく制約するものであり、かえって漫画家を応 5 援するという本件企画の趣旨にも抵触するともいえる。これらの事情に鑑 みても、原告らの主張は、いずれも採用することができない。 ⑵ 争点2(同人誌「絆」の原稿提出に係る債務不履行)(本件債務不履行1) について ア 本件債務不履行1-1(不完 らの事情に鑑 みても、原告らの主張は、いずれも採用することができない。 ⑵ 争点2(同人誌「絆」の原稿提出に係る債務不履行)(本件債務不履行1) について ア 本件債務不履行1-1(不完全履行)について 10 原告らは、被告は、同人誌「絆」に掲載する原稿に関し、「読者にとって 魅力的な内容にする」債務を負っていたにもかかわらず、被告が実際に提出 した原稿(甲7)には、「ファンディングがスタートしても、うまく意思疎 通ができないことで行き違ったり注意されたり、色々しんどかったです。」 と本件クラウドファンディング企画の悪口が記載されており、これが債務不 15 履行に当たる旨主張する。 しかしながら、「読者にとって魅力的な内容」の原稿を作成することは、 それ自体抽象的かつ主観的な内容であることに加え、本件企画を実行する原 告らと、本件企画が応援する一漫画家として参加した被告との関係に照らし ても、損害賠償責任を負うような法的債務ではなく、本件企画を成功させる 20 ための努力目標を確認する趣旨にとどまると解するのが相当である。仮に、 被告が「読者にとって魅力的な内容」の原稿を作成する債務を負っていたと しても、原告らが指摘する上記の記載は、その前後の文脈と併せて読めば、 被告が原稿を作成するに当たって問題に直面しながらも、最終的にそれらを 乗り越えて完成させたという経緯の一部を記載したものであることが認め 25 られ(甲7)、このように漫画家が創作活動に当たって感じた困難や葛藤を 74 読者に対して率直に吐露することが、直ちに「読者にとって魅力的な内容」 ではないと認めることはできない。 したがって、原告らの主張は、採用することができない。 イ 本件債務不履行1-2(履行遅滞)について 原告らは、被告は10月末日 容」 ではないと認めることはできない。 したがって、原告らの主張は、採用することができない。 イ 本件債務不履行1-2(履行遅滞)について 原告らは、被告は10月末日までに原稿を提出すべき債務を負っていた 5 にもかかわらず、当該期限を徒過して11月12日に原稿を提出したこと が履行遅滞に当たる旨主張する。 そこで検討するに、前記認定事実によれば、①7月28日の打合せにお いて、被告において担当すべき各作業及びその提出期限が確認され、同人 誌「絆」の原稿の提出期限については、10月末日であるとされたこと、 10 ②もっとも、上記各作業は、本件企画に関し被告が最終的に行うこととな った全ての作業を網羅したものではなく、実際にも、原告らは、7月28 日以降も、被告に対し、本件企画への参加を他の漫画家に勧誘するよう依 頼をしたり(8月26日)、追加の音声収録を求めたりしたほか(8月2 8日)、その後も、本件企画のホームページ等に掲載するための宣伝用イ 15 ラストの提供や、本件企画を宣伝する内容の投稿を被告のツイッターで行 うこと(9月11日、12日)、ブログ等で本件企画に対する思いを記載 すること(9月20日、26日)、コミック表紙の線画の提出(10月2 0日)など、継続的に各種の作業を依頼していること、③その上で、原告 X2は、10月30日、被告に対し、「11/10の締め切りまで残りの 20 日数も少なくなってまいりましたが、お体ご自愛くださりつつ、執筆のお 願いをさせていただけましたら幸いです。」とのメッセージを送っている こと、④原告X1は、10月31日、被告に対し、「・コミック本の原稿 ・ 同人誌にご寄稿いただける原稿 ・コミック表紙カットイラスト完成版」 の締切りが11月10日である旨報告していること、以上の各事 こと、④原告X1は、10月31日、被告に対し、「・コミック本の原稿 ・ 同人誌にご寄稿いただける原稿 ・コミック表紙カットイラスト完成版」 の締切りが11月10日である旨報告していること、以上の各事実が認め 25 られる。 75 上記認定事実によれば、原告らと被告との間では、7月28日の時点で は、10月末日までに同人誌「絆」の原稿を提出すべきことが確認された ものの、当該期限は、飽くまで、同日の時点で想定されていた被告の作業 を前提とした暫定的なものであり、その後、被告に対する追加の作業依頼 等も生じる中、被告の作業の進捗状況にも配慮した上で、遅くとも10月 5 30日の時点までには、最終的な原稿の提出期限を11月10日とする旨 の合意が成立したものと認めるのが相当である。 そして、前記認定事実によれば、被告は、上記の合意を前提として、1 1月10日には、原告らに対し、同人誌「絆」の原稿を提出したことが認 められる。 10 そうすると、同人誌「絆」の原稿の提出につき被告に履行遅滞があった ということはできず、原告らの上記主張は採用することができない。 これに対し、原告らは、11月10日に提出された原稿(甲7)は債務 の本旨に従ったものではなく、最終的に完成原稿が提出されたのは同月1 2日である旨主張するものの、同月10日に提出された原稿の内容が債務 15 の本旨に沿ったものであることは、前記において説示したとおりである。 したがって、原告らの主張は、採用することができない。 ⑶ 争点3(本件漫画2の原稿提出に係る債務不履行の有無)(本件債務不履行 2) 本件事案に鑑み、まず、上記 イと同種の争点である本件債務不履行2-2 20 から検討する。 不履行の有無)(本件債務不履行 2) 本件事案に鑑み、まず、上記 イと同種の争点である本件債務不履行2-2 20 から検討する。 ア 本件債務不履行2-2(完成原稿の提出に係る履行遅滞) 原告らは、被告は、10月末日までに本件漫画2の原稿を提出すべき債 務を負っていたにもかかわらず、当該期限を徒過して11月18日に原稿 を提出したことが履行遅滞に当たる旨主張する。 25 そこで検討するに、前記認定事実によれば、①本件漫画2については、 76 7月28日の打合せにおいて、原告X2が8月中に作成したネーム原案に 基づき、被告が作画を担当することとなったこと、②被告は、7月31日 の時点で、「づまんが 9月中にネームUP10月中UP」とのメッセー ジを送っていること、③その後、原告X2は、9月1日に上記ネーム原案 を被告に提出したこと、④原告らは、9月以降も、被告に対し、本件企画 5 の宣伝用イラストの提供を始めとする各種作業を追加的に依頼していた こと、⑤被告は、10月25日、原告X2に対し、本件漫画2のネームを 提出したものの、原告X2は、同月26日、頭髪のない「人妻づま子」の 描写は受け入れられないという理由で、被告に修正を依頼したこと、⑥そ の後、原告X2は、10月30日、被告に対し、11月10日が締切りで 10 あることを確認する内容のメッセージを送っていること、⑦被告は、同月 1日、上記の修正依頼を反映した原稿を再提出していること、⑧原告X2 は、同月2日に同原稿を受領した際に、技術的な修正の可能性を指摘しつ つも、被告に原稿の作成を依頼できたことに対する謝意を述べたこと、以 上の各事実が認められる。 15 上記認定事実によれば、原 月2日に同原稿を受領した際に、技術的な修正の可能性を指摘しつ つも、被告に原稿の作成を依頼できたことに対する謝意を述べたこと、以 上の各事実が認められる。 15 上記認定事実によれば、原告らと被告との間では、7月28日の時点で は、10月末日までに原稿を提出すべきことが確認されたものの、当該期 限は、飽くまで、同日の時点で想定されていた被告の作業を前提とした暫 定的なものであり、その後、被告に対する追加の作業依頼等も生じる中、 被告の作業の進捗状況にも配慮した上で、遅くとも10月30日の時点ま 20 でには、最終的な原稿の提出期限を11月10日とする旨の合意が成立し たものと認めるのが相当である。 そして、上記認定事実によれば、被告は、まず10月25日に本件漫画 2のネームを提出した上で、11月1日には、原告X2による修正依頼を 踏まえた原稿を提出し、これに対し、原告X2は、技術的な修正な可能性 25 を指摘しつつも、被告に原稿作成を依頼できたことに対する謝意を述べて 77 いることからすると、被告は、遅くとも同日の時点で債務を履行したもの と認めることができる。 そうすると、本件漫画2の原稿提出につき、被告に履行遅滞があったと いうことはできない。 したがって、原告らの主張は、採用することができない。 5 これに対し、原告らは、最終的に本件漫画2の完成原稿が提出されたの は11月18日であった旨主張する。 確かに、前記認定事実によれば、原告X2は、同日に被告に原稿の修正 を依頼しており、被告は翌19日に、これを受けた修正原稿を提出してい るものの、同依頼は、同月1日に原稿を受領した際に留保していた技術上 10 の修正点に関するものにすぎず、作品の実質的な内容の変更を求めるもの ではない。したがって、原告らの けた修正原稿を提出してい るものの、同依頼は、同月1日に原稿を受領した際に留保していた技術上 10 の修正点に関するものにすぎず、作品の実質的な内容の変更を求めるもの ではない。したがって、原告らの上記主張は、被告が11月1日の時点で 債務を履行したという前記認定を左右するものとはいえない。 したがって、原告らの主張は、採用することができない。 イ 本件債務不履行2-1(ネームの提出に係る履行遅滞) 15 原告らは、被告は、9月末日までに本件漫画2のネームを提出すべき債務 を負っていたにもかかわらず、当該期限を徒過して10月25日にネームを 提出したことが履行遅滞に当たる旨主張する。 しかしながら、前記認定事実によれば、本件漫画2のネームの提出は、原 告らにおいて原稿の概要を事前に確認しておくことにより、原告らの希望に 20 沿った内容の原稿が期限内に提出されることを担保するにすぎないもので あることが認められる。このような事情を踏まえると、仮に原告ら主張に係 る合意があったとしても、当該合意は、被告が原稿を期限内に提出さえすれ ば、ネームの提出期限を格別問題とするものではなかったと解するのが相当 である。そして、被告が本件漫画2の原稿を期限内に原告らに提出したこと 25 は、上記において説示したとおりである。 78 したがって、原告らの主張は、採用することができない。 ⑷ 争点4(本件漫画1の原稿提出に係る債務不履行の有無)(本件債務不履行 3) ア 本件債務不履行3-1(不完全履行) 原告らは、被告が、本件漫画1のレアリティーを維持するために、追加4 5 ページ分の全てにつき、新規に書き下ろす旨の債務を負っていたにもかかわ らず、3ページ目について公開済みの作品の原稿を提出したことが債務不履 行に当たる旨主張 レアリティーを維持するために、追加4 5 ページ分の全てにつき、新規に書き下ろす旨の債務を負っていたにもかかわ らず、3ページ目について公開済みの作品の原稿を提出したことが債務不履 行に当たる旨主張する。 しかしながら、争点1において説示したとおり、仮に原告らの主張を前提 としたとしても、追加4ページ分に係る合意は、本件漫画1を「ここでしか 10 読めない」内容にするために、pixiv版にはない追加4ページ分を収録 するという内容の限度であって、それ以上に、追加4ページ分全てを新規に 書き下ろす旨の合意が成立したことを認めるに足りる的確な証拠はない。 そして、3ページ目については、被告が既にブログにおいて公開していた 既存の漫画と同一の内容であることは当事者間に争いがないものの、それ以 15 外の3ページについては、本件コミックの収録に当たって、被告が新規に書 き下ろしたものであることが認められる(弁論の全趣旨)。そうすると、追 加4ページ分を全体としてみると、「ここでしか読めないもの」であるとい えるから、債務不履行に当たるものと認めることはできない。 したがって、原告らの主張は、採用することができない。 20 イ 債務不履行3-2(不完全履行) 原告らは、追加4ページ分のうち3ページ目については、「闘病中の家族 の様子」をテーマにする旨の合意があったのに、被告が、闘病中ではない家 族の様子を内容とする原稿を提出したことが債務不履行に当たる旨主張す る。 25 そこで検討するに、前記認定事実によれば、①追加4ページ分の内容は、 79 アンケートの結果を参照して決めることとなったこと、②アンケートでは、 ハッピーエンディングの後の楽しい話が読みたいという声や、後日談が読み たいという声が多数寄せられたこと、③その後、原告 79 アンケートの結果を参照して決めることとなったこと、②アンケートでは、 ハッピーエンディングの後の楽しい話が読みたいという声や、後日談が読み たいという声が多数寄せられたこと、③その後、原告X2は、10月21日 には、追加4ページ分の内訳として、「・息子さん ・娘さん ・家族 ・ へんすての事」というメッセージを送っていること、④原告X1は、11月 5 2日には、被告に対し、3ページ目の内容につき、「息子さんが闘病中だっ た際の、ご家族のお話」というメッセージを送っているものの、原告X2は、 11月5日、追加4ページ分の内容につき、「息子さん、娘さん、ご家族、 へんすて各1p」というメッセージを送り直しており、ここでは「家族が闘 病中」という限定は一切していないこと、⑤原告X2は、11月9日、被告 10 から追加4ページ分の原稿を受け取った際に、その内容について何ら異議を 述べることなく、むしろ肯定的な評価をしていること、以上の各事実が認め られる。 上記認定事実によれば、原告らと被告との間では、遅くとも10月20日 までには、アンケートの結果を踏まえた上で、追加4ページ分のうち3ペー 15 ジ目の内容としては、「家族」をテーマにするという限度で合意が成立した ものと認めるのが相当であり、上記認定に係る経過を踏まえると、それ以上 に、「闘病中の家族」をテーマとする旨の合意が成立したとまで認めること はできない。そうすると、原告らの主張は、上記経過に整合するものとはい えず、具体的な裏付けを欠くものといえる。 20 したがって、原告らの主張は、採用することができない。 ウ 債務不履行3-3について(履行遅滞) 原告らは、被告は9月末日までに本件漫画1の原稿を提出すべき債務を負 っていたところ、当該期限を徒過した11 張は、採用することができない。 ウ 債務不履行3-3について(履行遅滞) 原告らは、被告は9月末日までに本件漫画1の原稿を提出すべき債務を負 っていたところ、当該期限を徒過した11月9日に原稿を提出したことが履 行遅滞に当たる旨主張する。 25 しかしながら、7月28日の打合せにおいて設定された各原稿の提出期限 80 は飽くまで暫定的なものであり、これらが確定的な履行期限であったという ことができないことは、上記において説示したとおりである。そして、前記 認定事実によれば、その後、①原告X2は、10月30日、被告に対し、「1 1/10の締め切りまで残りの日数も少なくなってまいりましたが」とのメ ッセージを送っていること、②原告X1も、10月31日、被告に対し、「コ 5 ミック本の原稿」の締切りが11月10日である旨報告していることが認め られる。そうすると、上記認定事実によれば、本件漫画1の原稿につき、遅 くとも10月30日までには、最終的な提出期限を11月10日とする旨の 合意が成立していたものと認めるのが相当である。 そして、前記認定事実によれは、被告は、11月9日には、追加4ページ 10 分を含め、本件漫画1の原稿を全て提出していることが認められるから、本 件漫画1の原稿の提出につき、被告に履行遅滞があったということはできな い。 したがって、原告らの主張は、採用することができない。 ⑸ 争点5(本件漫画1のネームの提出に係る債務不履行の有無)(本件債務不 15 履行4) 原告らは、被告が本件漫画1の追加4ページ分について、その内容や構図が 確認できる状態のネームを9月末日までに提出する旨の債務を負っていたに もかかわらず、ネームを提出しなかったことが債務不履行に当たる旨主張する。 画1の追加4ページ分について、その内容や構図が 確認できる状態のネームを9月末日までに提出する旨の債務を負っていたに もかかわらず、ネームを提出しなかったことが債務不履行に当たる旨主張する。 そこで検討するに、前記認定事実によれば、①原告らが被告に交付したと主 20 張する書面(甲2の1)においては、ネームの提出が内容とされていないこと、 ②上記と同様に、7月31日のメッセージにおいても、ネームの提出について の言及がないこと、③原告X2は、10月20日になって、被告に対し、「連 絡がちゃんといっていませんでしたらすみません」と断った上で、祝賀会の参 加者に対しネームをコピー本としてまとめたものを配布する予定であること 25 を伝えていること、④これに対し、被告は、コピー本については初めて聞いた 81 旨返答したところ、原告X2は、追加4ページ分のうち、「ラジオへんすて」 に関するページ(4ページ目)のみのネームを提出することを提案したこと、 ⑤被告は、11月9日には「加筆分のネーム原稿です」というメッセージとと もに、原告らに対し、データを送信しているところ、原告らは、これに対して ネームが含まれていない旨指摘していないこと、⑥被告は、同月10日に同人 5 誌「絆」の原稿を原告らに提出した際にも、「これで全てUPです。」とのメ ッセージを送っているのに対し、原告らは、ネームの提出が未了である旨の指 摘を一切していないこと、以上の各事実が認められる。 上記認定事実によれば、7月28日の打合せにおいては、ネームの提出につ いては話題になっておらず、原告らは、10月20日になって被告にネームの 10 提出を依頼したこと、これを受けて、被告は、ネームの提出を承諾するととも に、4ページ目のネームを提出することになったこと、その際、提出期限は明 ず、原告らは、10月20日になって被告にネームの 10 提出を依頼したこと、これを受けて、被告は、ネームの提出を承諾するととも に、4ページ目のネームを提出することになったこと、その際、提出期限は明 確に定められなかったものの、被告は、他の原稿の提出期限と同様、11月1 0日を提出期限と考えた上で、同月9日にはネームを提出し、原告らも異議な くその提出を受け入れたことが認められる。 15 これらの事情の下においては、原告らと被告との間では、10月末頃に、ネ ームの提出期限については、11月10日とする旨の黙示の合意が成立したも のと認めるのが相当であり、当該合意を踏まえ、被告は、11月9日の時点で ネームを提出したものといえる。 したがって、原告らの主張は、採用することができない。 20 ⑹ 争点6(宣伝用漫画原稿の提出に係る債務不履行の有無)(本件債務不履行 5) 原告らは、7月28日の打合せにおいて、被告は8月までに宣伝用漫画を提 出する旨合意したにもかかわらず、これを提出しなかったことが債務不履行に 当たる旨主張する。 25 そこで検討するに、前記認定事実によれば、①7月30日のメッセージには、 82 宣伝用漫画を8月18日に提出する旨の記載が存在すること、②その一方で、 7月28日の打合せにおいて、宣伝用漫画の内容につき詳細を協議した形跡は なく、その後も、原告らと被告との間で行われた多数のメッセージにおいても、 宣伝用漫画としてどのようなものを作成するかについて、一切話題となってい ないこと、③原告らは、本件各漫画や同人誌「絆」の原稿を始めとするその他 5 の提出物に関しては、進捗状況や締切りを確認する内容のメッセージを再三に わたって送っているのに対し、宣伝用漫画については一度も催促をしておらず、 8月18 や同人誌「絆」の原稿を始めとするその他 5 の提出物に関しては、進捗状況や締切りを確認する内容のメッセージを再三に わたって送っているのに対し、宣伝用漫画については一度も催促をしておらず、 8月18日を経過した後も、期限を徒過した旨の指摘をしていないこと、④原 告らは、8月18日以降、被告に対し、宣伝用イラストの提供や、SNSやブ ログ等における宣伝を依頼し、被告はこれらの依頼に対応していたこと、以上 10 の各事実が認められる。 上記認定事実によれば、宣伝用漫画については、7月28日の打合せにおい て、一旦は被告において作成することとされたものの、その打合せの内容は、 全体として飽くまで暫定的なものであったことは、前記において説示したとこ ろである。その後、宣伝用漫画については、その詳細について協議が行われる 15 ことのない状況が続く中、原告らの関心は、宣伝用漫画の作成よりも、その他 の宣伝方法に移っていったことが認められ、被告もそのような原告らの関心の 移行に対応して、個別の宣伝依頼に応じていたことが認められる。 これらの事情の下においては、宣伝用漫画の作成依頼は、飽くまで暫定的な ものであって、上記認定に係るその後の事情を踏まえると、被告は、8月18 20 日以降、宣伝用漫画を作成する債務を負うものではなかったと認めるのが相当 である。 したがって、原告らの主張は、採用することができない。 ⑺ 争点7(機密情報の漏えいに係る債務不履行)(本件債務不履行6) 原告らは、本件契約の締結に伴い、被告は、本件企画に関し、通常一般的に 25 非公開であるべき情報を外部に漏洩しない義務を負っていた旨主張する。 83 しかしながら、前記に認定した事実によっても、原告らと被告との間の多数 のやり取りの中で、上記義務を合意し 5 非公開であるべき情報を外部に漏洩しない義務を負っていた旨主張する。 83 しかしながら、前記に認定した事実によっても、原告らと被告との間の多数 のやり取りの中で、上記義務を合意した事実を認めることはできず、その他に、 被告が原告らに上記義務を負うことを合意したと認めるに足りる証拠はない。 そもそも、被告は、本件企画に漫画家として参加したにすぎず、原告らにおい て被告が漏洩したと主張する内容も、およそ法的保護の対象となる機密情報と 5 いうことはできず、原告らの主張は、失当というほかない。 したがって、原告らの主張は、採用することができない。 ⑻ 争点8(打上げのキャンセルに係る債務不履行)(本件債務不履行7) ア 原告らは、被告が12月16日に開催された打上げに参加すべき義務を負 っていたところ、11月30日になって参加をキャンセルしたことが債務不 10 履行に当たる旨主張する。 そこで検討するに、前記認定事実によれば、①打上げは、12月16日の 16時から19時までであり、祝賀会と併せて参加すると、12時から19 時まで拘束されるものであるにもかかわらず(乙6〔2頁〕)、参加は無償 であり、交通費も被告自身が負担するものとされていること、②被告が祝賀 15 会や打上げへの参加を表明するに当たって、書面は作成されておらず、また、 一旦参加を表明すると、以後のキャンセルは許されない旨の説明は受けてい ないこと、③本件企画の募集は9月1日に始まっており、10月28日に終 了しているところ、原告X2は、同月20日の段階においてもなお、被告に 対し、「祝賀会には参加するが、打上げには参加しない」という選択も可能 20 である旨伝えていること、④被告が11月30日に原告らに対し、打上げへ の参加につきキャンセルの意向を おいてもなお、被告に 対し、「祝賀会には参加するが、打上げには参加しない」という選択も可能 20 である旨伝えていること、④被告が11月30日に原告らに対し、打上げへ の参加につきキャンセルの意向を伝えた際にも、原告らは特段異議を述べて いないこと、以上の各事実が認められる。 上記認定事実によれば、原告らは、被告に対し、飽くまで、被告の好意に 依拠する形で打上げへの参加を依頼したものにすぎないのであって、上記の 25 経過を踏まえても、被告が一旦参加を表明したことをもって、原告らと被告 84 との間で、その不参加につき債務不履行責任を負うような合意が成立したと まで認めることはできない。 したがって、原告らの主張は、採用することができない。 イ これに対し、原告らは、クラウドファンディングの性質上、支援者が生じ ている状態で、販売内容を事後的に変更することは、レアリティーを損なう 5 行為として許容されない旨主張する。 しかしながら、原告らと被告との間で、原告ら主張に係る合意が成立した ことを認めることができないことは、上記において説示したとおりである。 仮に、原告らの主張を前提としても、本件企画において応援する一漫画家が、 打上げへの参加を事後的にキャンセルすることにより支援者に対するレア 10 リティーが失われるのであれば、支援者から支援金を受け取る立場にある原 告らにおいて、キャンセルに備えた対策を講じれば足りるともいえるから、 上記において説示した事情を踏まえると、原告らの主張は、上記判断を左右 するものとはいえない。 したがって、原告らの主張は、採用することができない。 15 ⑼ 争点9(本件漫画2の無断公開に係る債務不履行の有無)(本件債務不履行 8) 原告らは、被告が、原告らとの間で本件合意を したがって、原告らの主張は、採用することができない。 15 ⑼ 争点9(本件漫画2の無断公開に係る債務不履行の有無)(本件債務不履行 8) 原告らは、被告が、原告らとの間で本件合意を締結していたにもかかわらず、 本件漫画2の原稿の一コマをインターネット上で公開したことが債務不履行 に当たる旨主張する。 20 しかしながら、原告らと被告との間で、本件合意を締結した事実が認められ ないことは、前記において説示したとおりである。そうすると、原告らの主張 は、前提を欠くものである。したがって、原告らの主張は、採用することがで きない。 ⑽ 争点10(「虚偽の事実」の告知の有無) 25 原告らは、「独占的利用権を許諾(譲渡)するということは、著作者(作家) 85 であっても自分の著作物(作品)を一切使えない(出版、インターネットやツ イッターでの表示、同様の作品や登場人物の絵を公表することも含む)という ことを意味しています。」との記載部分(本件記載部分)が不正競争防止法2 条1項21号にいう「虚偽の事実」に当たる旨主張する。 そこで、前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば、本件照会書は、本件企画 5 に参加した漫画家に対し、①第1事件においては、漫画家が原告らに対し、自 身の著作物につき「独占的利用権を許諾」したか否かが争点となっているとい う経緯として説明した上で、②そのような権利を原告らに許諾したという認識 があるか否かを尋ねるものであるところ、「独占的利用権の許諾」という語の 意味が一義的には明確でないことを踏まえ、③回答者の便宜を図るために、被 10 告ないし被告代理人において、第1事件における原告らの請求内容や主張内容 を踏まえ、その解釈を示したものであることが認められる。 そうすると、本件記載部分は、原告らの主張内容等 図るために、被 10 告ないし被告代理人において、第1事件における原告らの請求内容や主張内容 を踏まえ、その解釈を示したものであることが認められる。 そうすると、本件記載部分は、原告らの主張内容等を踏まえ、独占的利用権 の意義を説明するものとして誤ったところはなく、「虚偽の事実」に当たると いう余地はないというべきである。 15 これに対し、原告らは、レアリティーを損なわないように配慮すれば、自ら の著作物を使用することは可能であるから、本件記載部分が虚偽である旨主張 する。しかしながら、原告ら主張に係る本件合意の内容は、それ自体不明瞭な ものである上、少なくとも被告が本件漫画2の一コマのみをアップロードした 行為によっては、上記にいうレアリティーを損なうものとは当然いえないはず 20 であるのに、原告らは、上記行為ですら、本件合意に反する旨主張するもので ある。そうすると、原告らの主張する「独占的利用権の許諾」というのは、文 言上も実質上も著作者自らがその著作物を一切使えないことを意味するもの といえるから、本件記載部分が「虚偽」であるとは認められない。 したがって、原告らの主張は、採用することができない。 25 ⑾ 小括 86 その他に、原告らが提出する準備書面及び書証を改めて検討しても、上記に おいて説示した本件の事実経過に鑑みると、前記各判断を左右するものとはい えない。したがって、原告らの主張は、いずれも採用することができない。 以上によれば、その余の点を判断するまでもなく、原告らの請求は理由がな い。 5 3 結論 よって、原告らの請求は理由がないからいずれも棄却することとし、主文のと おり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 10 裁判長裁判官 よって、原告らの請求は理由がないからいずれも棄却することとし、主文のと おり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 10 裁判長裁判官 中 島 基 至 15 裁判官 齊 藤 敦 20 裁判官小田誉太郎は差支えのため,署名押印することができない。 裁判長裁判官 25 中 島 基 至 87 (別紙) 著作物目録 1 著作物名 「ウチのムスコがマザコンになった理由(ワケ)」 発行日 平成29年10月28日 5 著作者 被告 発行者 ラジオへんすて(原告ら) 2 著作物名 「づま子のキセキ」 10 発行日 平成29年10月28日 原作・企画 ラジオへんすて(原告ら) 著作者 被告 発行者 ラジオへんすて(原告ら) 15 20 88 (別紙) 被告公開著作物目録 1 被告公開著作物1 著作物名 「ウチのムスコがマザコンになった理由(ワケ)」 5 掲載場所 http://以下省略 2 被告公開著作物2 著作物名 「ウチのムスコがマザコンになった理由(ワケ)」 掲載場所 http://以下省略 10 3 被告公開著作物3 著作物名 「ウチのムスコがマザコンになった理由(ワケ)」 掲載場所 http://以下省略 15 4 被告公開著作物4 著作 ttp://以下省略 10 3 被告公開著作物3 著作物名 「ウチのムスコがマザコンになった理由(ワケ)」 掲載場所 http://以下省略 15 4 被告公開著作物4 著作物名 「ウチのムスコがマザコンになった理由(ワケ)」 掲載場所 https://以下省略 5 被告公開著作物5 20 著作物名 「ウチのムスコがマザコンになった理由(ワケ)」 発行者 株式会社イースト・プレス 6 被告公開著作物6 著作物名 「づま子のキセキ」のうち、下記の画像の青色の枠内の部分 25 掲載場所 Twitter

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