平成10(行コ)71 ホームヘルパー派遣決定処分取消等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成8年(行ウ)第73号)

裁判年月日・裁判所
平成13年6月21日 大阪高等裁判所 その他
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判決文本文33,974 文字)

主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(一) 原判決主文第二項を取り消す。 (二) 被控訴人は控訴人に対し,金150万円及びこれに対する平成8年4月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。(三) 訴訟費用は第1,第2審とも被控訴人の負担とする。 (四) (二)につき仮執行宣言 2 被控訴人主文同旨第2 事案の概要等 1 事案の概要(一) 本件は,老人福祉法(平成2年法律第58号による改正後のもの。以下単に「法」という。)10条の4第1項に規定するホームヘルパーの派遣につき,大阪市α福祉事務所長(以下「福祉事務所長」という。)に対し,週7回,1回3時間の派遣を申請した第一審原告亡A(以下「第一審原告」という。)に対し,福祉事務所長は平成8年1月8日付で週3回,1回2時間の派遣を認める決定(以下「本件変更決定」という。)をしたが,この決定は,憲法25条,老人福祉法等の定めるホームヘルプサービスの最低の基準であるケアミニマムに違反し,また,この決定に至るまでの担当職員の行為にホームヘルパーの派遣状況を見直すべきケースマネージメント(派遣状況管理)義務に違反した違法があるなどとして,国家賠償法1条1項に基づき,第一審原告が福祉事務所長及び第一審原告担当の職員であったB,Cの雇用者である被控訴人に対し,精神的慰謝料100万円,弁護士費用50万円及びこれらに対する訴状送達の日の翌日である平成8年4月23日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 (二) 原審においては,この国家賠償請求事件は,本件変更決定の処分の取消を求める行政事件訴訟の関連請求として審理された。 (三) 原判決は,本件変更決定は,第一審原 損害金の支払を求めた事案である。 (二) 原審においては,この国家賠償請求事件は,本件変更決定の処分の取消を求める行政事件訴訟の関連請求として審理された。 (三) 原判決は,本件変更決定は,第一審原告に対する処分ではあるが,それまでの派遣状況と比較して有利な内容の利益処分であるから第一審原告にはその取消を求める訴えの利益がないとしてその取消を求める訴えを却下し,損害賠償請求については,老人福祉法,同法施行令,同規則などの規定からみて,法は,国民に対しホームヘルパーの派遣を求める申請権を認めたものと解することはできず,また,被控訴人の本件要綱や本件要領も法の委任や条例に基づくものとは認められないから,単なる行政の内部指針(訓令)であり,行政裁量を行う上での参考に止まること,当時の派遣状況や,第一審原告と同様の要介護者の待機件数,ホームヘルパー数などからして本件変更決定にかかる内容はやむを得なかったとして,第一審原告の権利の侵害も被控訴人の職員に主張の派遣状況管理義務違反もなかったとし,被控訴人の責任を否定したため,第一審原告は控訴を提起した。 (四) 控訴提起後の平成10年12月13日第一審原告は死亡し,本件変更決定の処分の取消を求める行政事件は審理の対象を失って当然終了したが,第一審原告の相続人である控訴人が国家賠償請求事件を承継した。なお,控訴人は,当審では,損害賠償の内容として第一審原告の人格権侵害による精神的苦痛に対する慰謝料請求のほか,損害費目として新たに第一審原告の得べかりし利益をも追加主張した。 2 当事者の主張当事者の主張は,次のとおり控訴人の当審における主張の要旨を付加するほか,原判決の事実摘示中,「第二当事者の主張」欄に記載のとおりであるから,これを引用する。 (控訴人の当審における主張の要旨)(一) 本件変更 次のとおり控訴人の当審における主張の要旨を付加するほか,原判決の事実摘示中,「第二当事者の主張」欄に記載のとおりであるから,これを引用する。 (控訴人の当審における主張の要旨)(一) 本件変更決定の違法性(1) ホームヘルパー派遣を求める申請権の存在原判決は,ホームベルパー派遣制度の全体的な観察や憲法との関連性を無視し,法で求められているケアミニマムを憲法や法の趣旨との関係で検討することをしていない結果,ホームヘルパ派遣を求める申請権を否定し,第一審原告の申請どおりの派遣,回数,時間,内容を認めなかったとしても違法の問題を生じないと判断したが,この判断は以下のとおり誤りである。 ① 憲法,老人福祉法,本件要綱,本件要領及び行政の運用に基づくホームヘルパー派遣制度全体の趣旨目的をみれば,第一審原告はホームヘルパー派遣に関する申請権を有し,居宅においてケアミニマム(概ね本件派遣基準に定める回数,時間,内容などの基準をいう。以下同じ。)を満たす内容のホームヘルパー派遣を求める請求権を有することは明らかである。 まず,行政事件訴訟法3条5項に基づく「法令に基づく申請」とされるためには,その申請権が法令の明文によって規定されている場合だけでなく,申請した者が何らかの行政庁の応答を受ける利益を法律上保障されていると制度上認められる場合を含むものと解すべきであるところ,法,本件要綱,本件要領の検討のみによっても,申請した者にこれらの利益が保障されていることは明らかである。 本件要綱は,6条でホームヘルパーの派遣を求めようとするものは「ホームヘルパー派遣申出書」を提出することや,福祉事務所長は,派遣決定,変更,却下,廃止等を行ったときは,通知書により申出者あて通知することを定め,申請主義を採用していることが明らかであり,変更や却下など処分の 派遣申出書」を提出することや,福祉事務所長は,派遣決定,変更,却下,廃止等を行ったときは,通知書により申出者あて通知することを定め,申請主義を採用していることが明らかであり,変更や却下など処分の存在を前提とし,申請に対し行政庁として何らかの応答をなすべき義務を定めている。 更に,本件要領では本件派遣基準を定め,寝たきり高齢者については最低12時間以上,介護が必要な派遣については1回3,4時間とすることを明確に規定し,サービス内容についても本件要綱5条が細かく規定しているところ,本件要綱,本件要領のこれらの規定は,法10条の4の事業を遂行するために市民のホームヘルパーの派遣を受ける権利を具体化したもので,その権利内容は明確である。 ② 原判決は,老人福祉法,同法施行令及び施行規則に不服申立や取消訴訟に関する規定がないことを申請権のないことの根拠とするが,明らかな誤りである。昭和61年に改正される以前の老人福祉法30条及び31条は,老人ホームヘの入所等の措置につき不服のある高齢者が不服申立てをする場合の規定を設けていた(当時の老人福祉法30条,31条)。これらと同趣旨の規定は,生活保護法に現在も存在している(同法64条,66条)。 このような老人福祉法30条,31条の規定は,行革一括法により老人ホームヘの入所措置が機関委任事務から団体委任事務とされたことにより(すなわち,市町村長および都道府県知事に老人ホーム入所措置事務における上級行政庁が存在しなくなったことにより),一般原則どおり行政不服審査法によることとなり,不要として削除されたもので,老人ホームヘの入所措置につき審査請求,再審査請求をすることができる以上,法は,国民に対し,ホームヘルパー派遣申請権を認めていると解すべきである。 ③ 控訴人の主張する申請権は,実体的なサービス給付請 人ホームヘの入所措置につき審査請求,再審査請求をすることができる以上,法は,国民に対し,ホームヘルパー派遣申請権を認めていると解すべきである。 ③ 控訴人の主張する申請権は,実体的なサービス給付請求権とは区別される手続的権利である。本件に即していえば,申請から給付の実施に至る一連の手続につき法の目的にふさわしく進められるよう要求することのできる権利ということができ,手続過程自体が要求する権利を実現し,確定して行く過程であり,福祉サービスについては,適正な行政手続を受ける権利が実体的権利とは独立したものとして保障されなければならない。 その意味で,高齢者から派遣変更を求める明確な意思表示がある場合には,派遣変更申請行為があったと見るべきであり,市町村が何らの応答もしなかった場合は一見明白に申請権が侵害されたというべきであって,後記のとおり行政手続法5条にも反する。 また,本件変更決定のように本件派遣基準にも満たない不十分な派遣決定しか行わなかった場合にも,申請権は侵害されており,原判決は本件変更決定が一部拒否処分としての性質を有することを看過している。 (2) 本件派遣基準(ケアミニマム)の基準性① 憲法25条,13条を具体化した立法とその解釈原判決は,前記のとおり,憲法との関連性についてこれを無視し,法で求められているケアミニマムを憲法の趣旨との関係で検討することをしていない。 憲法25条の生存権の法的性質については,法的権利としての性格を有し,裁判規範性を有するとの見解が一般的となっている。憲法25条を具体化した法令の解釈に際して,憲法の趣旨を斟酌すべきことについては異論はなく,このような場合,原則として立法裁量が問題となることはなく,当該行政処分が憲法の趣旨を含めて解釈された法令に反するかどうかを検討すれば足りる。 例外的 法の趣旨を斟酌すべきことについては異論はなく,このような場合,原則として立法裁量が問題となることはなく,当該行政処分が憲法の趣旨を含めて解釈された法令に反するかどうかを検討すれば足りる。 例外的に裁判所が検討し得る場合としては,憲法を具体化した法令が極めて抽象的で,「具体化」の名に値しないような場合ということになろう。しかし,法令によりある程度の具体化が行われている限り,裁判所は「健康で文化的な最低限度の生活」を維持するに足りる水準の追究を放棄すべきではなく,この水準は,ある程度客観的に決定できるはずである。この水準すなわちケァミニマムは,ホームヘルパー派遣制度の全体の趣旨及び目的及び当該高齢者の具体的な生活状況から客観的に決定でき,裁判所において相当なホームヘルパーの派遣回数,時間,内容を具体的に確定することが困難であるとしても,少なくとも被控訴人の本件変更決定による内容がケアミニマムを下回るものであるか否かにつき判断することができ,かつ,これを判断すべきものである。 原判決は,このような認識に立たず,専門性,財政的理由及び規定の抽象性,不明確性を理由として,右水準の確定を放棄した。 しかし,「専門性」も「財政的制約」も,行政の行為とりわけ福祉行政におけるサービス給付においては常に当然の前提となる事情である。このような理由によって司法判断が拒否されるのであれば,要介護高齢者の生存権保障を具体化するための行政の作為・不作為に対する司法判断はおよそ不可能ということになってしまう。 ② 憲法25条を具体化した老人福祉法老人福祉法が憲法25条を受けて定められたものであることについては異論はない。更に,同法については,制定当初の昭和38年から本件変更決定がなされた平成8年に至るまでの間に,時代の要請を受けて何度かの改正が行われ,以下のと を受けて定められたものであることについては異論はない。更に,同法については,制定当初の昭和38年から本件変更決定がなされた平成8年に至るまでの間に,時代の要請を受けて何度かの改正が行われ,以下のとおり内容的にもより生存権保障の趣旨に適うものになっていった沿革がある。 (ア) 老人福祉法制定当時老人福祉法上のホームヘルプサービスは,昭和38年7月に制定された老人家庭奉仕事業として始まる(当時の老人福祉法12条)。生活保護法のみでは老人の生存権保障が出来ないことが認識され,福祉サービスについての権利が具体化された第一歩ということができる。 老人家庭奉仕事業は,この段階では市町村の固有事務とされていたが,「老人の生活を保障する国の責任」を意識し,この事業に対して,法26条2項に基づく補助金を交付することができることになっており,かつ,その運営については,厚生省の定める「老人家庭奉仕事業運営要綱」に準拠して行なわれてきたという実情があった。この「運営要綱」は,国の責任の自覚のもとに,一応の最低基準を各自治体に示すものとして作成されたものである。 (イ) 昭和61年改正在宅福祉サービスよりも施設福祉サービスを重視する形で展開されてきた従来の考え方から在宅福祉サービスの重要性が強く認識されるようになってきた昭和61年老人福祉法が改正され,従前の老人家庭奉仕事業に加えて,ショートステイ事業及びデイ・サービス事業についての規定が置かれることとなった。 また,同年の改正に際しては,老人ホームの入所措置を機関委任事務から市町村の団体委任事務とした。これは,「老人福祉は,地域住民に対し,そのニーズを把握し,必要なサービスを提供するものであることから地域の実情に精通している地方公共団体が中心となって施策を展開していくのが適当」と判断されたためとされて 「老人福祉は,地域住民に対し,そのニーズを把握し,必要なサービスを提供するものであることから地域の実情に精通している地方公共団体が中心となって施策を展開していくのが適当」と判断されたためとされている。 (ウ) 平成2年改正いわゆるゴールドプラン(高齢者保健福祉10カ年戦略)にともない,老人福祉法は,平成2年にも改正され,老人家庭奉仕事業は,公的在宅福祉サービス三事業,すなわち,老人居宅生活支援事業(老人居宅介護等事業・老人デイサービス事業・老人短期入所事業)の1つとして,同一の条文にまとめられ市町村の事務として位置付けられた(5条の2)。老人居宅介護等事業は,従来の老人家庭奉仕員派遣事業の名称を変更したものである。ここに至り,ホームヘルプサービス事業も団体委任事務となった。これは,国の責務に対する自覚から,いずれは委任事務化すべきとされていた立法当時の趣旨と地域住民のニーズを把握している地方公共団体をサービス提供の主体とすべきとの趣旨を両立させたものである。 また,在宅福祉サービスに関する事項が,老人福祉法上施設福祉サービスより先に規定されることになり,前者を重視する姿勢を明確に打ち出すこととなった。 ① 老人福祉法,同施行令,同施行規則の定めるサービス基準以下のとおり,法及び法施行令,施行規則はホームヘルパー派遣の要件,サービス内容(及びサービス給付水準)の双方について,いずれも具体的な基準を示している。 (ア) ヘルパー派遣要件法10条の4第1項は,「65歳以上の者であって,身体上又は精神上の障害があるために日常生活を営むのに支障があるもの」をホームヘルプサービスの対象者としている。これは,家族と同居しているか否か,高齢者のみの世帯か否か,生活保護世帯または非課税世帯か否か等の事情を問わず,高齢者本人の状態が「身体上又 障があるもの」をホームヘルプサービスの対象者としている。これは,家族と同居しているか否か,高齢者のみの世帯か否か,生活保護世帯または非課税世帯か否か等の事情を問わず,高齢者本人の状態が「身体上又は精神上の障害があるために日常生活を営むのに支障がある」かどうかだけを要件とし,これを満たす者に対しては無条件にホームヘルパー派遣を行うことを明らかにした重要な条文である。 したがって,厚生省が,平成4年3月に作成した「ホームヘルプ事業運営の手引き」が「ホームヘルパーの派遣対象者は,心身の障害等により日常生活を営むのに支障があるおおむね65歳以上の者のいる家庭であって,老人又はその家族が老人の介護サービスを必要とする場合である。」とし,さらに「ホームヘルプ事業の目的は,日常生活を営むのに支障のある高齢者本人に対する支援であるとともに,家族に対する支援でもある。ホームヘルパーの派遣対象者を1人世帯に限ることは適当ではない。また,同居家族がいることをもって,派遣を行わなかったり,派遣の優先順位を下げることがあってはならない。従って,現在,要項等によりこうした制限を設けている市町村は,これを早急に撤廃する必要がある。」と述べて,市町村が高齢者本人の状態が「身体上又は精神上の障害があるために日常生活を営むのに支障がある」かどうかだけを要件とせずにさまざまな制限を設けることを厳重に戒めているのは,上記のとおり,法10条の4第1項の解釈として当然のことを強調したものに過ぎない。 このように,厚生省が市町村に対し,当然のことを強調しなければならなかったのは,少なくない市町村において,恩恵的福祉観が根強く浸透している現実を直視したからである。 (イ) サービス内容ホームヘルパーによるサービス内容について,施行規則1条の2は,「法第10条の4第1項第1 なくない市町村において,恩恵的福祉観が根強く浸透している現実を直視したからである。 (イ) サービス内容ホームヘルパーによるサービス内容について,施行規則1条の2は,「法第10条の4第1項第1号に規定する厚生省令で定める便宜は,入浴,排せつ及び食事等の介護,調理,洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の身体上又は精神上の障害があって日常生活を営むのに支障がある65歳以上の者に必要な便宜とする」とし,①入浴,排せつ及び食事等の介護,②調理,洗濯及び掃除等の家事,③生活等に関する相談及び助言の3項目を掲げている。これは,ホームヘルプサービスの内容をほぼ網羅しており,かつ具体的である。 (ウ) サービス給付水準ホームヘルパーによるサービス給付水準について,施行令1条の2は「法第10条の4第1項第1号の措置は,当該65歳以上の者が居宅において日常生活を営むことができるよう,当該65歳上の者の身体及び精神並びにその置かれている環境に応じて適切な同号に規定する便宜を供与し,または供与することを委託して行うものとする」と定めている。 これは,「身体及び精神並びにその置かれている環境に応じて」「居宅において日常生活を営むことができるよう」な水準を求めているものであり,法令レベルの具体化としてはこれで十分である。 そして,これこそが,控訴人が主張し,D証人が現時点における「在宅ケアのミニマム」とする「日常生活維持レベル」のホームヘルプサービスなのである。 なお,生活保護法と比較検討しても,実際には,老人福祉法,同施行令及び同施行規則と大差はない。すなわち,生活保護法上,制度上の扶助としては,生活扶助,教育扶助等全部で7種あるが(同法11条),その扶助の内容は,例えば生活扶助では「生活扶助は,困窮のため最低限度の生活を維持する と大差はない。すなわち,生活保護法上,制度上の扶助としては,生活扶助,教育扶助等全部で7種あるが(同法11条),その扶助の内容は,例えば生活扶助では「生活扶助は,困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して,左に掲げる事項の範囲内において行われる。1衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの 2移送」(12条)とある。生活扶助に関しては,他に30条,31条にも方法について定めた規定があるが,これも具体的なものではない。同法施行令や施行規則には,扶助の内容に関する規定はない。他の扶助についても,ほとんど同様である。 次に,基準については8条に「保護は,厚生大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし,そのうち,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする」とある。これ自体は,ホームヘルプサービス以上に抽象的な規定であるが,ここでは厚生大臣の定める基準により具体化を行おうとしている。そして,実際の「保護基準」では,世帯の人数,年齢層,居住地等に応じて,各扶助の金額が定められている。 以上述べたことから明らかなように,法令自体の文言だけをみれば,ホームヘルプサービスに関するものも,生活保護に関するものも差はほとんどなく,かえって前者の方が具体的とも読める。これは,生存権という時代とともに,内容,水準ともに推移しうる権利を具体化した法令である以上,宿命的に負わなければならない限界である。すなわち,生存権は,生命を維持することを保障したものではなく,健康で文化的な最低限度の生活を保障したものであり,それ故に,各時代の国民の生活水準等に左右される性格を有しており,短期的な改変を予定していない法令ではある程度は抽象的たらざるをえないのである。 ① 第一審原告に対し給付されるべきであっ ものであり,それ故に,各時代の国民の生活水準等に左右される性格を有しており,短期的な改変を予定していない法令ではある程度は抽象的たらざるをえないのである。 ① 第一審原告に対し給付されるべきであったサービス水準第一審原告は長男である控訴人による家族介護を受けていたが,本件変更決定(平成8年1月8日付)当時,控訴人は嚥下障害による窒息の危険のため片時も目を離すことができない第一審原告に対し,2年半にわたり文字通り24時間の在宅介護を献身的に続けた結果として,全身疲労,腰痛,胃潰瘍,十二指腸潰瘍,肋骨骨折等,満身創痍の状態であった。 D証人の表現を借りれば,第一審原告と控訴人の世帯は,「介護者による無理心中を起こしかねない」ほどの,極めて危険な極限状態にあった。 このように介護疲れで満身創痍の控訴人が1人で24時間介護を行っているのに対し,被控訴人がなすべき支援は,サービス内容については掃除・洗濯・買物・調理などの家事援助だけでなく,食事介助・排泄介助・入浴に代わる清拭などの身体介護サービスを給付することであり,サービス量について言えば,少なくとも毎日ホームヘルパーを派遣することであった。 大阪市は,本件提訴(平成8年4月4日)後,平成9年11月4日に至り,ようやく,第一審原告と控訴人に対し「週6回・計18時間」のヘルパー派遣を行うようになった(乙35号証)が,これは,控訴人が腰椎椎間板ヘルニアの悪化により文字通り歩くことすらできなくなり,完全に介護力を失った後のことであった。 ② 本件要綱,本件要領の定める本件派遣基準更に,本件要領では本件派遣基準を定め,寝たきり高齢者については最低12時間以上,介護が必要な派遣については1回3,4時間とすることを明確に規定し,サービス内容についても本件要綱5条が細かく規定しているところ,本件要 本件派遣基準を定め,寝たきり高齢者については最低12時間以上,介護が必要な派遣については1回3,4時間とすることを明確に規定し,サービス内容についても本件要綱5条が細かく規定しているところ,本件要綱,本件要領のこれらの規定は,法10条の4の事業を遂行するために市民のホームヘルパーの派遣を受ける権利を具体化したもので,その基準としての内容は明確である。 以上から,本件変更決定による第一審原告に対するホームヘルパーの派遣状況は,憲法以下本件要綱,本件要領によって具体的に定められたケアミニマムを満たしていないから,違法というべきである。 (3) 行政手続法5条違反原判決は,本件要綱及び本件要領に基づく本件派遣基準は大阪市高齢者保健福祉計画(以下「本件計画」という。乙12号証)と同一内容であるとするが,本件派遣基準は本件計画の目標年次の平成11年度までの暫定的なものと解すべきである。更に,原判決のとおりであるとすると,上記(1)のとおり,本件変更決定は,法令上の申請に対する処分であるから,本件要綱及び本件要領に基づく本件派遣基準は,行政手続法5条の「申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定に従って判断するために必要とされる基準」に該当し,被控訴人がこの基準を定立して公表した以上,行政庁である被控訴人はこれに拘束され,この基準に満たない本件変更決定は行政手続法に反する違法なものとなる。 (4) 憲法31条,25条,信頼の原則違反仮に,本件変更決定が法令上の申請権に対する処分に該当しないため,行政手続法5条の適用がないとしても,憲法31条及び25条により基準の定立は要請されており,被控訴人は本件派遣基準を定立して公表した以上,それを遵守する義務があるほか,前記公表により,市民に対し本件派遣基準に従ったホームヘルパーの派遣が 31条及び25条により基準の定立は要請されており,被控訴人は本件派遣基準を定立して公表した以上,それを遵守する義務があるほか,前記公表により,市民に対し本件派遣基準に従ったホームヘルパーの派遣が受けられるものとの信頼を与えており,信頼の原則からもこれに従ったホームヘルパー派遣を行うべき義務があるから,本件変更決定はこれに違反する違法なものである。 (二) ケースマネージメント義務違反(1) ケースマネージメント義務平成5年7月12日の第一審原告の退院から本件派遣決定のあった平成8年1月8日までの2年数ヶ月間,被告大阪市の職員であるBとCは,本件福祉事務所のヘルパー派遣コーディネーター及び老人福祉担当主査として,尽くすべき注意義務に違反した。 その注意義務の内容は,第一審原告に対し,本人及び家族の状況の変化に対応して,そのニーズに応じた適切なケースマネージメントを行う義務があるというものである。 本件では,BもCも,必要なケースマネージメントを行わず,上記の注意義務に反し,これにより第一審原告及び控訴人の心身の状態を悪化させたものである。 ① ケースマネージメントの不可欠性ホームヘルパー派遣や訪問看護などを中心とする在宅ケアが利用者のために適切になされるためには,責任ある機関によるケースマネージメントが行われることが不可欠で,その必要性が福祉現場の実践において認識されるようになったのは,1980年代後半のことであった。・② ケースマネージメントの意義と具体的内容ケースマネージメントとは,一般に,「障害や疾病をもった要援護者について,社会生活上での複数のニーズを充足させるため,そのような人がその時々において,ニーズに最も合致した適切な社会資源(サービス)受けることができるようにするための一連の援助の措置」と定義づけられる。 社会生活上での複数のニーズを充足させるため,そのような人がその時々において,ニーズに最も合致した適切な社会資源(サービス)受けることができるようにするための一連の援助の措置」と定義づけられる。 そして,その具体的な過程は,(ア)まずどのようなニーズがあるのかを本人と家族を含めて的確にアセスメントを行い,(イ)これに基づきケースの援助目標を設定しながら,援助計画の作成を行い,(ウ)それに必要なサービスを地域の中で組織し,組み立て,実際のサービスの提供を行い,(エ)その後,その効果がうまくいかない場合や本人などの状況の変化などに応じて,訪問調査や関係機関の情報収集などでフォローアップを行い,(オ)必要に応じて再度アセスメントを行って,サービスの再組織,再組み立てを行う,という一連の過程を繰り返し行うことである(乙第39号証「ホームヘルパー業務の手引き」p12~p13その他)。 ③ 平成5年夏頃におけるケースマネージメントに対する認識第一審原告が退院してきた平成5年夏ころには,全国の在宅ケアの現場において,サービス提供にあたってケースマネージメントを実践すべきことは当然の共通認識であった。 その認識を示すものは以下のとおりである。 (ア) 厚生省通知で定められた「老人ホームヘルプサービス事業運営要綱」(甲7号証)及び平成4年3月に定められた「ホームヘルプ事業運営の手引き」(甲8号証)(イ) 厚生省「老人ホームヘルプサービス事業運営要綱」の規定(甲7号証)(ウ) 在宅介護支援センター実施要綱(平成6年)(エ) 厚生省通知『高齢者サービス総合調整推進会議等の設置及び運営について』は昭和62年6月18日に発せられ,平成2年8月と平成5年2月に改正された(乙38号証p95~p96)。 (オ) 本件計画(乙12号証)(カ) 本件要綱と本件要領 進会議等の設置及び運営について』は昭和62年6月18日に発せられ,平成2年8月と平成5年2月に改正された(乙38号証p95~p96)。 (オ) 本件計画(乙12号証)(カ) 本件要綱と本件要領大阪市の本件要綱及び本件要領においても,ホームヘルプサービスの実施主体である福祉事務所がケースマネージメントを行うことが当然の内容として含まれている。 ④ 介護保険制度におけるケアマネジメントとの関係なお,平成12年4月実施の介護保険制度下では,介護支援専門員(ケアマネージャー)が,ケアマネージメントを行うことになっている。ケアマネージャーという職種自体は新しい制度であるが,そこで行われるべきケアマネージメントは,老人福祉法下においてコーディネーターの役割やケースマネージメントとして議論され実践の積み重ねられたものをまとめたものであり,介護保険制度になって創設された役割ではない。 介護保険法の理念を受けて,ケアマネージャーの運営基準を定めた「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」(平成13年3月31日厚生省令第38号,以下「運営基準」という。)には,ケアマネージヤーの以下のような注意義務が定められており(13条),この基準は厚生省の課長通知によれば,目的達成のための必要最低基準とのことである。この義務は,前述した②のケースマネージメントの手法とも対応するものとなっている。 (ア) 課題分析の実施(イ) 課題分析における訪問,面接,説明,理解など(ウ) 居宅サービス計画原案の作成(エ) 居宅サービス計画の説明及び同意(オ) 実施状況の把握等及び評価等⑤ また,大阪市においては,β老人福祉センターの実践報告(昭和62年),αでのケースマネージメント実践報告(平成2年頃)など,全国的に見ても古くからのケースマネージメントに関 況の把握等及び評価等⑤ また,大阪市においては,β老人福祉センターの実践報告(昭和62年),αでのケースマネージメント実践報告(平成2年頃)など,全国的に見ても古くからのケースマネージメントに関する先駆的な実践例の蓄積があったのであるから,大阪市内の福祉現場においては,平成5年当時にはケースマネージメントを行うべきことは担当者の当然の職務となっていた。 (2) 本件におけるケースマネージメント義務違反① 第一審原告の状態第一審原告は,平成5年5月13日に左大腿骨骨折のために入院して手術を行い,同年7月12日に退院となるが,当時85歳で,脳梗塞の後遺症,両下肢機能の著しい障害があり,身体障害者2級を認定されていたが,脳梗塞の後遺障害としての嚥下障害も次第に進行していた。 歩行が困難となり,移動の介助が必要になり,介助によって車椅子移動の状態になり,専門的なリハビリが行われなかったため,退院後は,歩行困難の状態が続いていた。 食事については,脳梗塞後遺症による嚥下障害で,食事の介助が必要な状態が続いている。また,痰を吐き出すことも困難で,痰を吐き出すための援助が必要であり,介助者が常時そばに付き添う必要がある状態が続く。 排泄については,排泄の機能の低下はみられても,その機能そのものは維持されていた。そのため排泄のたびにポータブルトイレヘの移乗の援助を必要とした。自力では入浴できず,退院当初は,福祉施設へ通所しての月2回の入浴サービスがなされている。 以上のことから,第一審原告については,在宅で生活する要介護高齢者全体の中でも特に重いケースであるととらえるべきで,介護支援専門員・E氏による要介護度判定結果は,最も重く苛酷な介護と形容される「要介護5」であった(甲75号証)。 ② 家族の介護力家族介護を負担する長男の控訴人の介 ースであるととらえるべきで,介護支援専門員・E氏による要介護度判定結果は,最も重く苛酷な介護と形容される「要介護5」であった(甲75号証)。 ② 家族の介護力家族介護を負担する長男の控訴人の介護力についてみても,60代で家事経験もない独身男性であり,介護意欲はあるものの,十分な介護に関する準備も知識もないもので介護技術は高くなく,介護時の困難に対応する能力にも欠けていたため,身体的・精神的にみて,長期にわたると予想される介護を負担できるだけの介護力に欠ける。 ③ 嚥下障害の看過ないし軽視Bは,平成5年8月2日,控訴人が7月15日から生活保護を受給していることを知るや,「長男の介護力等により本人の在宅が可能であり,このケースは廃止となる。」(乙6号証の21)との理由でホームヘルパーの派遣を廃止してしまい,一貫して,本件について第一審原告の状況や家族の介護力のいずれについても適切な評価をせず,ハイリスクのケースであるということの認識に欠けていた。 とりわけ,第一審原告に「嚥下障害」があるという認識,そのために常時介護者を要するという状況であったとの認識が欠けていたことは致命的である。 Bは,α老人訪問看護ステーションの提出する生活保護法老人訪問看護券・老人訪問看護料明細書(乙7号証の5~乙7号証の22)を通じ,又は関係医療機関等からの情報収集活動により上記嚥下障害を当然に知らなければならなかったところ,一例として,平成7年4月分には「特に嚥下困難が著しく食事に時間がかかり,喀痰喀出困難も見られ指導を要する。」との記載がある(乙7号証の18)のに,その認識がなかった。 ④ 「3つの危機」における本件福祉事務所の対応の誤り福祉事務所は,ケースマネージメント義務に基づき,その間の状況の変化についてモニタリングを行い,情報を把握したう )のに,その認識がなかった。 ④ 「3つの危機」における本件福祉事務所の対応の誤り福祉事務所は,ケースマネージメント義務に基づき,その間の状況の変化についてモニタリングを行い,情報を把握したうえで評価し,再アセスメント及び派遣内容の見直しをしなければならなかったにもかかわらず,これを完全に怠った。 本件福祉事務所が特に積極的な関わりをもって援助することが必要であったと思われる危機的状況が,次の三つの時期に見られる。 (ア) 第1の危機は平成5年7月で,退院後の介護体制づくりにおける問題,および控訴人の生活問題などが起きている。在宅における介護生活の始まる最初の半年間は,非常に危機に陥りやすい時期であり,先の見通しをもった援助をすべき大事な時期であった。 (イ) 第2の危機は,平成6年夏である。この時期は,援助機関と控訴人の調整が必要な問題が起き,また訪問看護中断による援助体制の問題が発生している。第一審原告の状態も寝たり起きたりから寝たきり状態になっている。それに伴う控訴人の介護負担が増し,控訴人が精神的に不安定になるという問題などが起きている。 (ウ) 第3の危機は,平成7年夏から秋の時期である。この時期は,第一審原告の体調の変化,それに伴い控訴人が精神的に不安定になり,また控訴人の介護疲労が著しくなっているという問題などが起きている。 このような三つの大きな危機状況があったにもかかわらず,いずれの時期も,Bらは,適切に把握し,評価し,援助計画の見直しと派遣内容の変更を行うことなく,漫然と放置したほか,以下の具体的な違法行為をした。 ⑤ 具体的な違法行為(ア) 平成5年8月2日のホームヘルパー派遣廃止決定退院直後の最も大事な時期に,Bらの行ったことは,生活保護受給を希望した控訴人に対し在宅に戻らずに老人病院への転院を勧め,それ 具体的な違法行為(ア) 平成5年8月2日のホームヘルパー派遣廃止決定退院直後の最も大事な時期に,Bらの行ったことは,生活保護受給を希望した控訴人に対し在宅に戻らずに老人病院への転院を勧め,それでも在宅生活を希望するや,家族がいることを理由にヘルパー派遣の廃止をした。これは,当時の厚生省の通知及び大阪市の本件要綱に反した違法なものであった。すなわち,当時のホームヘルパー派遣制度は,もはや介護する家族のない独居老人に限られた制度ではなく,介護する家族の支援を含めた制度となっており,介護する家族がいることを派遣廃止の理由とすることはできず,「ホームヘルプ事業運営の手引き」(甲8号証)にも「ホームヘルパーの派遣対象者を1人世帯に限ることは適当ではない」と記載されているほか,被控訴人は,本件要綱,本件要領の昭和45年の改訂にあたって,それまで派遣対象を独居老人のみとしていたものを,家族のある世帯にも拡大して現在に至っているのであり,ホームヘルパー派遣廃止決定をした福祉事務所長の処分は,20年以上も前に撤廃していた要件を理由として廃止した違法なものであった。Bは,これを認識しないまま業務を行ってきており,派遣依頼書(乙6号証の12)においてもなお,「本来は独居被保護老人のみのヘルパー派遣業務ですが」などと記載している始末である。 (イ) 平成5年10月15日から平成8年1月9日までの間の身体介護の拒否ようやく平成5年10月になって,第一審原告へのヘルパー派遣の再開決定をしたのも,第一審原告から文書による異議申し立てがあり,第一審原告の代理人弁護士阪田健夫からそのような廃止決定の違法性について指摘を受けたため,再開せざるをえなくなったためであり,原判決が認定するような「生活保護の手続の担当者から長男に対する就労の指導をする上において,就労阻 阪田健夫からそのような廃止決定の違法性について指摘を受けたため,再開せざるをえなくなったためであり,原判決が認定するような「生活保護の手続の担当者から長男に対する就労の指導をする上において,就労阻害要因を取り除くのが望ましいとの要望もあり」という理由ではない。乙6号証のケース記録に再開決定の理由について何ら触れられていないのも,そもそも廃止決定自体が誤りであったために,再開に当たってなんらの理由も記載できなかったからである。 当時の第一審原告の状況から従前どおりの家事援助につき週2回・1回2時間というヘルパーの派遣では,それ以外の曜日や時間帯については,長男の介護なしには第一審原告は在宅で生活することはできないから,派遣再開により,長男がパートタイムでさえも就労できるはずもない。 また,この時期(平成5年10月)には,すでに介護生活が3ヶ月近くに及び,控訴人の介護疲れが関係記録からも伺え,だるさや腰痛を訴えるようにもなり通院しているという状況になっていたから,ケースマネジメントとしては,訪問の上状況の変化を把握し,相当の身体介護を援助して控訴人の介護負担を軽減しなければ,控訴人の状況が悪化し第一審原告の生命維持のための援助すら危ういという評価を行い,ヘルパー派遣再開と同時に,身体介護のヘルパー派遣をすべきであったし,そのため援助回数や時間も拡大するべきであった。 しかるに,控訴人が平成5年10月25日,福祉事務所の担当主査であるCに排泄介護,衣類着脱介護,おむつ交換,口腔保清等の介護サービスをサービス内容に含めるように求めたのに対し,Cは,身体介護サービスは原則として同居者が介護できない場合にのみ行うことになっているが,第一審原告には控訴人がほとんど在宅しているから控訴人が介護できるとして,その場で口頭で拒否した。 Cは,仮に は,身体介護サービスは原則として同居者が介護できない場合にのみ行うことになっているが,第一審原告には控訴人がほとんど在宅しているから控訴人が介護できるとして,その場で口頭で拒否した。 Cは,仮にも10月15日の派遣再開において,おいおい見直していくことを第一審原告や控訴人に約束しているのである。このような控訴人からの訴えは,まさに派遣内容が第一審原告世帯の状況にあっておらず,再アセスメントの上,派遣内容を見直すべき機会であった。少なくともこの時期に身体介護に派遣内容をあらためるべきであった。 (ウ) 平成6年7月から平成6年11月8日までの清拭介助の拒否この時期は,訪問看護を提供してきた機関(α医師会の訪問看護ステーション)と控訴人の間に問題が起き,清拭などを行う訪問看護が7月から3ヶ月余りもの長期間中断された。第一審原告の状態も寝たり起きたりから寝たきり状態になっている。それに伴う控訴人の介護負担が増し,控訴人が身体的にも,精神的にも不安定になるという問題が起きている。 平成6年夏以降の控訴人の状況は,ホームヘルパー巡回日誌によれば,6月ころから控訴人の介護疲れや胃潰瘍など体調の悪化に関する記載が多数見られる。それまで控訴人の行っていた買い物もヘルパーに任せるようになってきている。さらに9月頃には,「肋骨にひびが入ったとのことで,体を固定していた」,「介護に支障を来している」という状態であった。さらに,同年10月には,腰痛の自覚症状が見られる(甲46号証,控訴人の陳述書)。 第一審原告自身の状況も,嚥下困難がひどくなっている状態が窺え,9月以降は第一審原告は血尿が出たり,腰痛を訴えており,そのために入浴サービスも行けない状態になっている。 このような状況の悪化と並行して,平成6年7月に,それまで一部清拭などをしていた訪問看護 9月以降は第一審原告は血尿が出たり,腰痛を訴えており,そのために入浴サービスも行けない状態になっている。 このような状況の悪化と並行して,平成6年7月に,それまで一部清拭などをしていた訪問看護の停止となり,また第一審原告の体調不良のため通所入浴サービスも中断したのである。そこで控訴人が,同年8月,ヘルパーに対してそれに代替する援助として,身体介護の一つである「清拭」の援助を求め,さらに保健所,大阪市民生局などに訴えていった。このことを,遅くとも同月22日にはフリーヘルパーからの情報でBらは把握しながら,これを黙殺した(乙6号証の33)。 さらに,平成6年11月4日,控訴人が直接福祉事務所に赴き,Bに対し,清拭の援助への派遣内容の変更と派遣時間の拡大を求めたことに対し,これに何らの正当な理由なく拒否した。 この点について原判決は,Bの対応を違法な対応にあたらないとして正当化しているが,Bがしたことは,ただ控訴人に対し,「他の医師に診察してもらい指示書を出してもらうよう教示した」だけであって,「今まで控訴人が出来ていたことをヘルパーの仕事として取ることはおかしな話であり,それが出来ないなら訪問入浴サービスを申し込んでもらいたい」(乙6号証の34)といって拒否したのである。ヘルパーによる清拭のためにバイタルチェックが必要とされていたのは,1970年代のことであり,訴訟になって苦し紛れに清拭にバイタルチェックのことを持ち出してきたが,かえってBのホームヘルパー派遣業務に関する専門性の欠如を露呈した。 Bは,控訴人に対し,「イ) 清拭を時間内に行うとすれば,それまでの週2回2時間の派遣時間では時間的に不足すること」とも,「ウ) そのための派遣回数や時間の増加は,区内に待機者が多数存在し現時点では難しいこと」など一言も述べていないのであ 行うとすれば,それまでの週2回2時間の派遣時間では時間的に不足すること」とも,「ウ) そのための派遣回数や時間の増加は,区内に待機者が多数存在し現時点では難しいこと」など一言も述べていないのであって,このことは,Bの証言からも,乙6号証の34の記載からも明らかである。 (エ) 平成7年夏以降同年12月までの派遣拡大要請の無視その後平成6年11月8日に,訪問看護が再開となったため,清拭に関しては当面の援助が再開したが,そもそもこの時期には,全面的に控訴人の身体介護を軽減するために,清拭のみならず,食事介助,排泄介助,痰除去の援助などについて,身体介護ヘルパーを,毎日派遣する必要が生じていた(証人D)。 しかしこれをBらは放置したことから,同年の暮れ以降さらに状態は悪化していく。嚥下障害がさらに進行したためか,食物を飲み込むことが一層困難になった。 そのため少量の食事にも2時間程度かかることになり,控訴人は,平成6年末には生活保護のケースワーカーFが訪問した際にヘルパーによる食事介助と清拭介助を依頼した。このような状況はFからCやBに伝えられたはずであるが,Bら福祉事務所は何らの対応もとらずに放置した。 こうして,生活保護の医療要否意見書によれば,控訴人は,平成6年12月3日に「寝たきり老人(母)の世話のため,慢性疲労の状態」と診断され,平成7年6月7日,12月4日にも,同様の診断が下されている。ヘルパー巡回日誌でも,同年10月には控訴人が腰痛のため通院という記録もある。ここではすでに介護を続けて2年になり,体的にも精神的にも相当追い込まれた状況であった。 (オ) これらの状況に耐えかねた控訴人は,平成7年10月頃,ホームヘルパーを通じて福祉事務所に食事介助を依頼したが認められなかった。第一審原告は控訴人への重い負担を心苦しく重い,「早 況であった。 (オ) これらの状況に耐えかねた控訴人は,平成7年10月頃,ホームヘルパーを通じて福祉事務所に食事介助を依頼したが認められなかった。第一審原告は控訴人への重い負担を心苦しく重い,「早く死んでしまいたい」と口に出すこともあったが,このときも,BもCも,訪問調査に来ることもなく,何らの対応もとらずに全く無視をしている。ここで訪問調査していれば,そのニーズを理解し,少しでも早く派遣拡大できたにもかかわらず,その後思いあまった控訴人が弁護士に依頼して派遣拡大の申し入れをするまでの間放置したのである。 仮に,BとCだけでは対応が困難であったというのであれば,少なくとも当時αでも何度も開かれていた「高齢者サービス調整チーム実務者会議」(乙12)にかけて,各機関の連携のなかで,どのようにニーズに応じたサービス援助を行えるかを検討すべきであった。 以上のとおり,BとCは,第一審原告が重度であり,特に嚥下障害により目が離せないことと控訴人の介護力が低いこと(介護意欲はあるが介護技術が未熟であること,介護疲れが顕著であること等)について適切な評価をせず,事実誤認があったため,身体介護(特に排せつと食事)支援の重要性の認識を全く欠如させていた。 このような認識及び対応は,平成5年から同7年当時,全国において標準的に実施しなければならないとされていた通常のケースマネジメント義務の水準を著しく逸脱していた。特に状況の変化が著しいのに訪問調査を2年以上行わず,強い求めがあっても訪問を拒否したことはケースマネージメントとして論外であったし,困難なケースとして,高齢者サービス調整チーム実務者会議のケース検討会に本件をかけ,医療と福祉・保健の連携をはかる必要があったがこの必要性も感じていなかった。 これに対し原判決は,「この区のホームヘルパー派遣の して,高齢者サービス調整チーム実務者会議のケース検討会に本件をかけ,医療と福祉・保健の連携をはかる必要があったがこの必要性も感じていなかった。 これに対し原判決は,「この区のホームヘルパー派遣の待機者の状況などを勘案すると,本件派遣変更の申出書やそれに先立つ第一審原告からの変更を求める申し出に対するコーディネーターや担当主査の対応について違法であるということはできない。」とするが,CやBが,平成5年10月,平成6年8月,11月,平成7年10月と,第一審原告への派遣拡大や清拭や食事介助などの追加の要請を拒否してきた理由は,いずれもホームヘルパー数の不足による待機者の存在などではなく,BやCの制度の趣旨への無理解やケースマネジメントを尽くさず,第一審原告世帯のニーズ把握や評価を怠ったためである。 ちなみに,福祉事務所長は,第一審原告が弁護士を代理人として派遣変更申請を行うと,それまで2年間拒否し続けた申請を,訪問調査を行って派遣回数を週3回に増やすとともに,食事介助を含む身体介護サービスを行うことに態度を急転換させた。また,本件訴訟の提訴が近いことを知るや,本件決定からわずか3ヶ月足らずの時期に派遣回数を週4回に増加させ,さらに平成9年11月には,介護者である控訴人の腰椎椎間板ヘルニアの症状悪化にともない,週6回18時間まで拡大している(乙35号証)。 逆に,α担当のヘルパーは平成5年度末から7年度末にかけて21人から37人へと16人も増えている(平成8年10月29日付被控訴人準備書面別表2)が,この増員の際には第一審原告に対する派遣時間は全く増加しなかった。平成8年1月の本件変更決定による週一回の増加は,既存のヘルパーのやりくりによって行われたものである。 また,第一審原告宅への派遣増加の必要性を感じていれば,当時大阪市では非課 く増加しなかった。平成8年1月の本件変更決定による週一回の増加は,既存のヘルパーのやりくりによって行われたものである。 また,第一審原告宅への派遣増加の必要性を感じていれば,当時大阪市では非課税世帯と課税世帯で派遣主体がそれぞれ社会福祉協議会とホームヘルプ協会に一応分かれていたものの,ホームヘルプ協会の派遣実績が伸びていなかったことからすれば,同協会からの派遣を一部に組み合わせることを協議し実現することは可能であった。この点においてもホームヘルパー数不足は,本件の派遣拒否やBらの訪問調査を行わなかったことを許容できる理由にはなりえないのである。 現実に,大阪市は,原判決後の平成11年4月からは大阪市ホームヘルプ協会の登録ヘルパーを生活保護世帯及び非課税世帯に対しても派遣することとし,本件要綱及び要領を改めた(甲77号証,78号証)。 このような事実経過を見るならば,第一審原告に対するホームヘルパー派遣についての福祉事務所長の判断は,α担当のホームヘルパーの人数やα内の派遣待機者数の増減とは直接関係がないことは明らかである。 (三) 本件計画の違法性(1) 本件計画における事実誤認① ホームヘルパー増員目標数「2300人」の計算根拠大阪市は,本件計画において,計画最終年次の平成11年度末におけるホームヘルパー増員目標数を,常勤換算で2300人と定めた。これは,本件派遣基準に基づくホームヘルパー派遣を完全実施した場合の派遣時間総数を年間452万8432時間と推定し,これを賄うためのホームヘルパーの人数は,常勤ヘルパー1人の年間派遣時間が2184時間であるとして,前記452万8432時間を2184時間で除すことにより得られた人数である(乙第12号証94頁)。 ② ところが,「常勤ヘルパー1人の年間派遣時間が2184時間」であるとの認 2184時間であるとして,前記452万8432時間を2184時間で除すことにより得られた人数である(乙第12号証94頁)。 ② ところが,「常勤ヘルパー1人の年間派遣時間が2184時間」であるとの認識は明らかな事実誤認であった。 すなわち,派遣時間とは派遣先の利用者宅を訪問してから辞去するまでの実時間をいい,老人センターとの往復時間など移動のための時間は含まない(甲2号証,本件本件要領第6条2項)。また,ヘルパー巡回日誌作成等の事務作業やヘルパー同士のミーティング・打ち合わせ等の会議に要する時間が派遣時間に含まれないことも当然である。 このため,「常勤ヘルパー1人の年間派遣時間」は「多くとも1200~1300時間にすべきで,大阪市のように2184時間で換算するのは合理的根拠に乏しい。」との厳しい批判が既に平成5年時点においてなされている(甲59号証)。 以上述べたとおり,常勤ヘルパー1人の年間派遣時間が2184時間であるとする大阪市の認識は明白な事実誤認であり,したがって,本件派遣基準に基づくホームヘルパー派遣を完全実施するために必要な常勤ヘルパー数が2300人であるとする点も明らかな事実誤認である。そして,右事実誤認は,本件計画の根幹にかかわる重大な事実誤認であり,本件計画は治癒不能な瑕疵があると言わなければならない。 以上述べたとおり,大阪市の本件計画作成行為には重大な事実誤認があり,裁量の逸脱・濫用があるので,違法性が認められる。 (四) 損害① 逸失利益の存在被控訴人の注意義務違反(不適切なケースマネージメント)がなければ第一審原告が給付を受けることができたサービスとしては以下のものがある。 (ア) 平成5年10月からの身体介護(イ) 平成6年7月からの清拭(ウ) 平成5年10月からの訪問調査(エ) 平成6年7月か 原告が給付を受けることができたサービスとしては以下のものがある。 (ア) 平成5年10月からの身体介護(イ) 平成6年7月からの清拭(ウ) 平成5年10月からの訪問調査(エ) 平成6年7月からのヘルパーの毎日派遣② 人格権に対する侵害B及びCは,自らに課せられた公的責任を自覚せず,業務を誠実に遂行しなかったばかりか,第一審原告や控訴人の訴えを誠実に受け止めることをせず,訴えを強いて無視する行動に出た。こうしたB及びCの言動は,第一審原告の人格を著しく傷つけるものであり,個人の尊厳を保ち得ないほど劣悪な精神的かつ肉体的環境に追い込むものであった。かかる加害行為に対しては,慰藉料として損害賠償請求が認められるべきである。 ③ 損害額第一審原告が被控訴人職員の注意義務違反・加害行為によって受けた損害は,有形的なものであれ,無形的なものであれ,これを金銭的に見積もることは極めて困難であるが,一応の基準によって損害を積算されるべきである。 (ア) 有形的損害については,得べかりしサービス給付を,ヘルパーの受け取る報酬額(甲64号証によれば,介護サービスにつき1時間あたり1400円,家事サービスにつき1時間あたり930円である)に換算して算出することが可能である。 (イ) 人格権侵害及び本来受けられるサービスが受けられなかったことにより,健康で文化的な生活を奪われた精神的苦痛に対しては,サービスが未提供ないし不完全履行にとどまった期間を基準として,交通事故における入通院慰藉料などを参考にして慰藉料額が算定されるべきである。 (ウ) 弁護士費用は,通常の場合と異なり,権利行使の困難性,訴訟の追行の複雑性及び事案の特殊性などから考えて当然に認められるべきであり,かつ,代理人が単独では追行しえない訴訟であることを考慮して,交通事故等の場合に比 ,通常の場合と異なり,権利行使の困難性,訴訟の追行の複雑性及び事案の特殊性などから考えて当然に認められるべきであり,かつ,代理人が単独では追行しえない訴訟であることを考慮して,交通事故等の場合に比して,より高額な費用が認められるべきである。 (エ) 本件計画自体の違法による損害これについても,被控訴人が本件計画作成にあたり,重大な事実誤認による裁量の逸脱・濫用の結果,第一審原告に対し,上記裁量逸脱・濫用がなければ受けられたであろう,本件派遣基準どおりの派遣時間(週6回,合計18時間)のホームヘルプサービスを受けることができないという不利益を与えたと同時に,本件計画に瑕疵がなかったら第一審原告が受けられたであろうホームヘルパーの派遣は,相当程度の上積みされたであろうことは明らかであるから,これを受けられなかったことの精神的苦痛は,本件計画作成行為と相当因果関係のある損害である。 その損害額は,ホームヘルパー増員の年次別実施計画(乙第12号証の108頁~109頁)記載のとおり充足率が100%であれば受けることができたはずの派遣時間と実際に受けることができた派遣時間との差が逸失利益として損害となる。 第3 当裁判所の判断当裁判所も控訴人の請求は理由がないものと判断するものであるが,その理由は,当審における主張について判断するほか,原判決の理由説示のとおりである(但し,原判決56頁4行目から60頁1行目までを削る。)から,これを引用する。 1 本件変更決定の違法性の主張について控訴人は,憲法,法,法施行令,本件要綱,本件要領及び行政の運用に基づくホームヘルパー派遣制度全体の趣旨目的をみれば,第一審原告はホームヘルパー派遣に関する申請権を有すること,本件派遣基準は,憲法,法,法施行令などの定めるケアミニマムとして具体的に定立された法的 づくホームヘルパー派遣制度全体の趣旨目的をみれば,第一審原告はホームヘルパー派遣に関する申請権を有すること,本件派遣基準は,憲法,法,法施行令などの定めるケアミニマムとして具体的に定立された法的拘束力を有する基準としての性格を有し,これに満たない本件変更決定は違法となることを各主張するので,以下検討する。 (一) ホームヘルパー派遣申請権について控訴人は,第一審原告にはホームヘルパー派遣申請権があり,この申請権として主張するところは,行政手続法2条3号ないし行政事件訴訟法3条5項に基づく「法令に基づく申請」権であって,その申請権が法令の明文によって規定されている場合だけでなく,申請した者が何らかの行政庁の応答えを受ける利益を法律上保障されていると制度上認められる手続的権利,すなわち申請から給付の実施に至る一連の手続きにつき法の目的にふさわしく進められるよう要求することのできる権利で,この権利は実体的権利(給付請求権)とは独立したものとして保障されなければならないと主張する。 確かに,本件要綱(甲2号証)にはその6条にホームヘルパーの派遣を受けようとするものは「ホームヘルパー派遣申出書」を提出することが規定され,これに基づき,福祉事務所長が派遣決定,変更,却下,廃止等を行ったときは,通知書により申出者あて通知することを定め,申出主義を制度上採用し,申出に対する変更,却下など処分の存在を前提として,申出に対し行政庁として何らかの応答をなすべき義務が定められているとみられなくもない。 しかし,上記申出書の提出は,ホームヘルパーの需要状況を職権をもって広範かつ的確に把握することが事実上不可能であることから,その必要性と派遣についての希望の有無の把握を個々の需要者の申出にかからしめ,これを派遣決定等の発動に対する当初の契機とする趣旨に 権をもって広範かつ的確に把握することが事実上不可能であることから,その必要性と派遣についての希望の有無の把握を個々の需要者の申出にかからしめ,これを派遣決定等の発動に対する当初の契機とする趣旨に出たものとみるべきであり,これをもって,手続上の申請権を認めたものとみることはできないし,福祉事務所長がこれに基づき何らかの決定を行ったときにその申出人に対し通知すべきこととしたのも,派遣の要請や希望に対する行政の対応の結果を期待する申出人に告知することにより,その結果を知らしめるとの一種の行政サービスとみるべきものである。 原判決の理由説示のとおり,生活保護法で「申請」権が明記されているのに対し,法にはその旨の規定を欠いていることは,法令上申請権の有無につき明らかに区別し,異なる前提に立って立法がなされた事実を推認させ,かかる立法事実からも,両法は申請権,実体的権利の存否,権利としての成熟性につき異なる前提に立っているものと解釈せざるを得ず,そうであれば,従前の行政解釈のとおり,法は,手続的権利としても申請権を認めていないものとせざるを得ないのである。 また,後記(二)のとおり,上記結果の通知に対し,行政不服審査法その他の不服手続が用意されていないこともこの解釈を裏付けるものというべきである。 (二) 審査請求等の不服の可否について控訴人は,原判決が法,法施行令及び施行規則に不服申立や取消訴訟に関する規定がないことを申請権のないことの根拠としたことが明らかな誤りであると主張し,昭和61年に改正される以前の老人福祉法30条及び31条は,老人ホームヘの入所等の措置につき不服のある高齢者が不服申立てをする場合の規定を設けていたこと(当時の老人福祉法30条,31条),老人福祉法30条,31条の規定は,行革一括法により老人ホームヘの入所措置が機関委 の入所等の措置につき不服のある高齢者が不服申立てをする場合の規定を設けていたこと(当時の老人福祉法30条,31条),老人福祉法30条,31条の規定は,行革一括法により老人ホームヘの入所措置が機関委任事務から団体委任事務とされたことにより(すなわち,市町村長および都道府県知事に老人ホーム入所措置事務における上級行政庁が存在しなくなったことにより),一般原則どおり行政不服審査法によることとなり,不要として削除されたもので,老人ホームヘの入所措置につき審査請求,再審査請求をすることができる以上,法は,国民に対し,ホームヘルパー派遣申請権を認めていると解すべきであると主張する。 確かに昭和61年改正前の老人福祉法には,以下の規定が存在した事実は当裁判所に顕著である。 第30条第11条第5項の規定により市町村長が同条第1項から第3項までの規定による措置に関する事務の全部又は一部をその管理に属する行政庁に委任した場合における当該事務に関する処分についての審査請求は,都道府県知事に対してするものとする。 第31条市長村長がこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定によってした処分又は市町村長の管理に属する行政庁が第11条第5項の規定による委任に基づいてした処分に係る審査請求についての都道府県知事の裁決に不服がある者は,厚生大臣に対し再審査請求をすることができる。 しかし,審査請求及び再審査請求が認められていた措置ないしこれに係る処分とは,市長村長がこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定によってした処分及び当時の老人福祉法11条5項に基づく委任事務に関する処分を指すところ,これは,結局のところ,同法11条1項ないし3項に基づく老人ホームヘの収容又はその委託を中心とした身体的移動を伴う不利益処分ないし社会福祉主事による指導という不利益措 事務に関する処分を指すところ,これは,結局のところ,同法11条1項ないし3項に基づく老人ホームヘの収容又はその委託を中心とした身体的移動を伴う不利益処分ないし社会福祉主事による指導という不利益措置を指し,ホームヘルパー派遣制度の前身である老人家庭奉仕員の派遣又はその団体への委託を定める第12条を念頭に置いていないことは,同法12条の権能を「市町村」のそれとして規定しているのみで,市町村長の処分又は市町村長の管理に属する行政庁への委任につきこれを前提とする規定がないこと,前記のとおり老人家庭奉仕員の派遣につき,利用者側からの申請権を肯定するに足りる規定がないことから明らかである。 控訴人は,生活保護法に同趣旨の規定があることや,老人ホームヘの入所措置が処分であるのと同様,ホームヘルパー派遣の措置も処分であるとし,これについても審査請求,再審査請求ができると主張するが,前者の主張については生活保護法は,法文上も申請権があることを前提とする規定となっていることを無視するものであり,後者の主張については,上記審査請求及び再審査請求の対象が限られていること,原判決の理由説示にある平成2年改正にかかる法の各種規定(引用にかかる原判決の理由の一の3),特に法12条,12条の2が,ホームヘルパー派遣の措置の解除につき通知等を要求しながら(法12条),行政手続法12条及び14条を除き,行政手続法第三章の規定の適用を排除していること(法12条の2)をみても,法はホームヘルパーの新規派遣又は利益方向への派遣変更については,聴聞手続や理由の告知を要求していないことが明らかであり,この事実に,ホームヘルパー派遣につき申請権を窺わせる規定がないことによれば,法は,ホームヘルパー派遣措置の解除は不利益処分とし不服申立になじむとの立場に立っているとしても,利益的 が明らかであり,この事実に,ホームヘルパー派遣につき申請権を窺わせる規定がないことによれば,法は,ホームヘルパー派遣措置の解除は不利益処分とし不服申立になじむとの立場に立っているとしても,利益的なものについてまで行政不服審判法等による一般的不服の途を一律に認めているとは解されず,他にこれを認めるに足りる事実はない。控訴人の上記主張はその前提を欠くものといわなければならない。 (三) 行政手続法5条違反控訴人は,本件変更決定は,法令上の申請に対する処分であるから,本件要綱及び本件要領中の本件派遣基準は,行政手続法5条の「申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準」に該当し,被控訴人がこの基準を定立して公表した以上,その行政庁はこれに拘束され,この基準に満たない本件変更決定は行政手続法に反する違法なものとなる旨主張する。 しかし,行政手続法5条は「行政庁は,申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準(以下「審査基準」という。)を定めるものとする。」と規定するが,申請により求められた許認可等につき2条に定義規定を置き,「申請」とは,法令に基づき,行政庁の許可,認可,免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって,当該行為に対して行政庁が許諾の応答をすべきこととされているものをいうとされ,「法令」とは法律,法律に基づく命令(告示を含む。),条例及び地方公共団体の執行機関の規則(規程を含む。)をいうとされているから,ホームヘルパー派遣を求める申出が上記「申請」に当たるか否かは「法令に基づく申請」に該当するか否かにより決せられるというべきである。 そして,本件要綱及び本件要領が,法,命 をいうとされているから,ホームヘルパー派遣を求める申出が上記「申請」に当たるか否かは「法令に基づく申請」に該当するか否かにより決せられるというべきである。 そして,本件要綱及び本件要領が,法,命令その他の委任を受けたものでもなければ,条例の委任を受けたものでもなく,執行機関の規則としての拘束性を有するものでもないことは原判決の理由説示のとおりであるから,本件派遣基準が,ホームヘルプサービス事業運営上何らかの基準たり得るとしても,これをもって直ちに行政手続法5条の審査基準には当たらないというべきである。 (四) 信頼の原則等また,控訴人は,仮に,行政手続法5条の適用がないとしても,憲法31条及び25条により基準の定立は要請されており,被控訴人はこれを定立して公表した以上,被控訴人にはそれを遵守する義務があるほか,右の公表により,市民に対し本件派遣基準に従ったホームヘルパーの派遣が受けられるものとの信頼を与えており,信頼の原則からも被控訴人の行政庁はこれに従ったホームヘルパー派遣を行うべき義務があるところ,本件変更決定はこれに違反する違法なものであると主張する。 しかし,憲法31条及び25条が,手続的適正や健康で文化的な生活の最低基準の定立をその制度趣旨から要請しているとしても,本件要綱及び本件要領に基づく本件派遣基準が,法,条例その他の委任を受けて定立されたものでないことは上記のとおりであり,更にその上位法規たる憲法から直接に委任ないし留保を受けたものとみることも困難である。これが憲法規定の要請により定立されたものであることを認めるに足りる事情もない。 更に,信頼の原則が行政法規上準用ないし類推されることがあることは否定できないにしても,本件派遣基準が上記引用にかかる原判決理由説示の性格のものである以上,基準を満たさない派遣決定 る事情もない。 更に,信頼の原則が行政法規上準用ないし類推されることがあることは否定できないにしても,本件派遣基準が上記引用にかかる原判決理由説示の性格のものである以上,基準を満たさない派遣決定を違法とする法的拘束力を持たないといわなければならず,控訴人のこの点の主張も理由がない。 なお,控訴人は,原判決は本件変更決定が一部拒否処分としての性質を有することを看過していると主張する。 しかし,これも,ホームヘルパー派遣に関し,第一審原告が実体法上の請求権又は手続法上の申請権を有していることを前提とする主張であり,これらの権利が存在しないことが上記のとおりである以上,第一審原告の希望する条件が満たされなかったひとことをもって,本件変更決定が一部拒否処分を含むとみることはできない。 本件派遣基準(ケアミニマム)の基準性について控訴人は・原判決がケアミニマムを憲法の趣旨との関係で検討することをしていないと主張する。しかし,憲法25条に一定の限度で裁判規範性を肯定し,憲法25条を具体化した法令の解釈に際して,その趣旨を斟酌すべきものとしても,以下の事実によれば,本件変更決定が憲法の趣旨を含め一体として解釈された法令に反するとはいえないと解される。 すなわち,老人福祉法が憲法25条を受けて定められたものであること,更に,同法については,制定当初の昭和38年から本件変更決定がなされた平成8年に至るまでの間に,時代の要請を受けて何度かの改正が行われ,控訴人主張のとおり内容的にもより生存権保障の趣旨に適うものになっていった沿革があることも,老人福祉法の改正の経過に照らして明らかである。 しかし,法,法施行令,施行規則の定めるホームヘルプ事業の内容及び派遣の程度については,原判決説示のとおりであり,憲法を具体化した法令が極めて抽象的で,これをも 正の経過に照らして明らかである。 しかし,法,法施行令,施行規則の定めるホームヘルプ事業の内容及び派遣の程度については,原判決説示のとおりであり,憲法を具体化した法令が極めて抽象的で,これをもってその趣旨を十分に具体化したものといえるか否かには疑義がある。 すなわち,再説すれば,法及び法施行令,施行規則には,ホームヘルパー派遣の要件,サービス内容(及びサービス給付水準)について,以下の規定があるのみである。 (1) ヘルパー派遣要件法10条の4第1項は,「65歳以上の者であって,身体上又は精神上の障害があるために日常生活を営むのに支障があるもの」をホームヘルプサービスの対象者としている。 (2) サービス内容ホームヘルパーによるサービス内容について,施行規則1条の2は,「法第10条の4第1項第1号に規定する厚生省令で定める便宜は,入浴,排せつ及び食事等の介護,調理,洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の身体上又は精神上の障害があって日常生活を営むのに支障がある65歳以上の者に必要な便宜とする。」とし,ホームヘルプサービスの内容を規定している。 (3) サービス給付水準ホームヘルパーによるサービス給付水準について,施行令1条の2は「法第10条の4第1項第1号の措置は,当該65歳以上の者が居宅において日常生活を営むことができるよう,当該65歳上の者の身体及び精神並びにその置かれている環境に応じて適切な同号に規定する便宜を供与し,または供与することを委託して行うものとする。」と定めている。 控訴人は,以上の(1)ないし(3)の規定をもって,法令レベルの具体化としてはこれで十分であると主張し,これが,控訴人が主張し,D証人が現時点における「在宅ケアのミニマム」と指摘するものと主張する。 しかし,最低限度の ないし(3)の規定をもって,法令レベルの具体化としてはこれで十分であると主張し,これが,控訴人が主張し,D証人が現時点における「在宅ケアのミニマム」と指摘するものと主張する。 しかし,最低限度の「日常生活維持レベル」のホームヘルプサービスとは,どの程度の頻度(回数),時間,サービス内容を指すかの派遣を受ける者にとって最も重要な派遣基準は,これによっては明らかとはされていないし,その実践は行政庁の具体的な認定判断に委ねられている。生活保護法では,8条で「保護は,厚生大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし,そのうち,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする」と規定し,厚生大臣の定める保護基準では,世帯の人数,年齢層,居住地等に応じて,各扶助の金額が具体的に定められていることと対比しても,法は控訴人がケアミニマムと主張する派遣基準がどのようなものとして定立されるべきかにつき抽象的,一般的な基準に言及しているとしても,更に具体的な基準を定立すべきか否か,如何なる法規形式でこれを行うかにつき何も規定するところはない。 控訴人は,法令によりある程度の具体化が行われている限り,裁判所は「健康で文化的な最低限度の生活」を維持するに足りる水準の追究を放棄すべきではなく,この水準は,ある程度客観的に決定できるはずで,この水準すなわちケアミニマムは,ホームヘルパー派遣制度の全体の趣旨及び目的及び当該高齢者の具体的な生活状況から客観的に決定でき,裁判所において相当なホームヘルパーの派遣回数,時間,内容を具体的に確定することが困難であるとしても,少なくとも被控訴人の本件変更決定による内容がケアミニマムを下回るものであるか否かにつき判断することができ,かつ,これを判断すべきものであると主張する。 しかし に確定することが困難であるとしても,少なくとも被控訴人の本件変更決定による内容がケアミニマムを下回るものであるか否かにつき判断することができ,かつ,これを判断すべきものであると主張する。 しかし,原判決認定の本件変更決定当時の第一審原告の状況及び介護者である控訴人の状況から,例えば,嚥下障害に対し,摂食の介護が望ましかったとか,排泄に対する援助が常時付されれば控訴人の負担は相当に軽いものとなった筈であるなどの判断はできても,本件変更決定における週3回,1回2時間の身体介護を含むホームヘルパーの派遣がこれを全く軽減できないものであったかどうか,また,「居宅において日常生活を営むことができる」,「当該65歳上の者の身体及び精神並びにその置かれている環境に応じて適切な・・・便宜」とは到底いえないものであるかについては一概には結論を出しがたい。逆に週7回,1回3時間の派遣であれば上記要件を常に満たすと断定できるかも,要介護者の身体状況や介護者の能力に照らし,極めて困難な問題である。また,適切な便宜か否かは介護者及び要介護者の要求水準とも関連し,一般的には適切でも,特定の人には不適切とも評価され得る余地が多分にあるから,控訴人主張のとおり,現実のホームヘルパーの派遣状況がケアミニマムを満たさないか否かの判断は,さほど容易とは思われない。 この点につき,当審証人Dは,長年福祉に携わってきた経験を有する研究者として,本件変更決定及びこれに先行する3つの危機を指摘して,それぞれの時期において相当とされた介護内容などを指摘し,平成8年1月当時の本件変更決定は,ケアミニマムを満たさないと供述し,その供述内容は,他のケースとの比較において,本件介護レベルの劣悪とこれによる第一審原告及び控訴人の肉体的,精神的窮状を指摘するものであり(甲57のD意見書も同 ,ケアミニマムを満たさないと供述し,その供述内容は,他のケースとの比較において,本件介護レベルの劣悪とこれによる第一審原告及び控訴人の肉体的,精神的窮状を指摘するものであり(甲57のD意見書も同旨),同証人の経験に照らし,この指摘は排斥しがたい重みを持っているということができる。 しかし,D意見書において,「在宅ケアにおいては,現在,ケアの最低基準は定められていない。ケアの最低基準が必要であると思われる。」とか,「在宅ケアの場合には,こうした基準はまったくない。」(4頁2行目,23行目)と記載されているとおり,在宅ケアのケアミニマムは定められていないことは,D証人も認めているところであり,同証人は,福祉の専門家として,在宅福祉のあるべき姿を述べているとも見うるのであり,甲52号証のD証人の著述部分においても,「これに対して在宅福祉サービスの場合には,現在,施設ケアのようなケアの基準は定められていない。確かに施設ケアと同じようには考えられないが,公共的な介護サービスの確立を図る場合には,なんらかの基準が必要になることはいうまでもない。」(120頁)と同旨が既述されている。この事実に,前記法,法施行規則等の基準の抽象性を併せ考慮すれば,在宅福祉サービスのケアミニマムを一義的に設定することはできず,その基準は確立されていないのが現状であるということができ,それらが存在し,確定できることを前提とする控訴人の主張は理由がない。 2 ケアマネージメント義務違反の主張について控訴人は,平成5年7月12日の第一審原告の退院から本件変更決定のあった平成8年1月8日までの2年数ヶ月間,被控訴人の職員であるBとCは,本件福祉事務所のヘルパー派遣コーディネーター及び老人福祉担当主査として,尽くすべきケアマネージメント義務に違反したと主張し,在宅介護におけ 1月8日までの2年数ヶ月間,被控訴人の職員であるBとCは,本件福祉事務所のヘルパー派遣コーディネーター及び老人福祉担当主査として,尽くすべきケアマネージメント義務に違反したと主張し,在宅介護におけるケースマネージメントの不可欠性やその具体的手法を主張し,これに沿う甲57及びD証言がある。 また,その福祉現場での必要性の認識や実践例として,控訴人指摘の「老人ホームヘルプサービス事業運営要綱」(甲7号証),平成4年3月に定められた「ホームヘルプ事業運営の手引き」(甲8号証),厚生省「老人ホームヘルプサービス事業運営要綱」の規定(甲7号証),在宅介護支援センター実施要領(平成6年),厚生省通知『高齢者サービス総合調整推進会議等の設置及び運営について』(乙39号証),本件計画(乙12号証),本件要綱と本件要領(甲2,3号証)などには,ホームヘルプサービスの実施主体である福祉事務所がケースマネージメントを行うことが当然の内容として含まれ,その重要性を指摘する部分がある。 また,控訴人は,この認識が平成12年4月実施の介護保険制度下で,正式に介護支援専門員(ケアマネージャー)として取り入れられたが,そこで行われるべきケアマネージメントは,老人福祉法下においてコーディネーターの役割やケースマネージメントとして議論され実践の積み重ねられたものをまとめたものであり,介護保険制度になって創設された役割ではないところ,運営基準には,必要最低基準として控訴人主張内容と対応するケアマネージメント義務が規定されていると主張し,この義務の存在を前提として,被控訴人職員のC及びBに同義務違反があったと主張する。 前掲証拠と証人Dの証言によれば,ケアマネージメントの必要性の認識が1990年代になって強調されるようになり,その実践のための議論や教化が頻繁に行われるよ 及びBに同義務違反があったと主張する。 前掲証拠と証人Dの証言によれば,ケアマネージメントの必要性の認識が1990年代になって強調されるようになり,その実践のための議論や教化が頻繁に行われるようになった事実が認められる。しかし,甲43,53,54,88,94には,他方で,平成4,5年当時,コーディネーターの重要性の意識とは裏腹に,その処遇や研修体系が未整備であり,その養成についても不十分であったし,在宅ケアでは,だれがどのようにケアマネジメントを行なうのかが議論されなければならないとか,サービス供給主体の多元化と各種サービス間の相互連絡体制の不備として,「老人福祉の分野では,高齢者人口の短期間での大幅な増加と,他方での各種制度やサービスの急激な拡大・発展が大きな原因となって,十分な体制がとられていない。」などの指摘もあり,当時は,ケアマネージメントは,その必要性が徐々に認識され,実践化しつつあったが,福祉現場でこれが定着していたとまではいえない段階にあった事実が認められる。 これによれば,平成5年ないし平成8年当時の福祉現場において,ケアマネージメント義務があったとまでは認め難く,C及びBに同義務があることを前提とする控訴人の請求は,老人福祉法上の義務の範囲・程度について,法規範性を有しない通知,通達や実践を根拠にして論ずるものであり,その余につき判断するまでもなく理由がない。 3 本件計画の違法性について控訴人は,本件計画におけるホームヘルパー増員目標数「2300人」の計算根拠は明らかな事実誤認に基づくものであり,本件派遣基準に基づくホームヘルパー派遣を完全実施するために必要な常勤ヘルパー数が2300人であるとする点も明らかな事実誤認であるとして,本件計画作成行為には重大な事実誤認があり,裁量の逸脱・濫用があるので,違法性が ホームヘルパー派遣を完全実施するために必要な常勤ヘルパー数が2300人であるとする点も明らかな事実誤認であるとして,本件計画作成行為には重大な事実誤認があり,裁量の逸脱・濫用があるので,違法性が認められる旨主張する。 本件損害賠償請求との関係でいえば,控訴人の主張は,仮に正当な事実認識に立って本件計画が策定されていたとした場合,本件派遣基準が満たされ,第一審原告に派遣されるべきヘルパーの回数,時間及び介護内容が現実のものよりも改善されたはずであるところ,ケアミニマムを下回るヘルパーの派遣しか受けられなかった原因は,本件計画に起因するとの主張と解することができるところ,主張の因果関係を認めるに足りる証拠や事実は認められないし,そもそも,本件派遣基準がケアミニマムとして,最低限満たされるべきであったとの主張が採用できないことも既述のとおりである。 この点に関する控訴人の主張も理由がない。 第4 結語よって,これと同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第4民事部裁判長裁判官武田多喜子裁判官正木きよみ,同三代川俊一郎は填補のため署名・押印できない。裁判長裁判官武田多喜子

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