平成17(行コ)307 障害基礎年金不支給決定取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成13年(行ウ)第201号

裁判年月日・裁判所
平成18年10月26日 東京高等裁判所 その他 東京地方裁判所 平成13(行ウ)201 その他
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判決文本文10,216 文字)

- 1 -H18.10.26東京高等裁判所平成17年(行コ)第307号障害基礎年金不支給決定取消等請求控訴事件主文 原判決のうち控訴人に関する部分を取り消す。 上記取消しに係る被控訴人の請求を棄却する。 控訴人と被控訴人との間の訴訟費用は,第1審及び第2審とも,被控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1控訴の趣旨主文第1,2項と同旨第2被控訴人の請求東京都知事が,被控訴人に対して平成10年12月3日付けでした障害基礎年金を支給しない旨の処分を取り消す。 第3事案の概要 国民年金法第30条第1項第1号は,疾病にかかり,又は負傷し,かつ,その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病について初めて医師の診療を受けた日において被保険者である者が,所定の基準日において障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときに,その者に障害基礎年金を支給する旨規定している。被控訴人は後記のとおり統合失調症の診断を受け,上記の障害の状態にあるが,適用される国民年金法制上被保険者とされていなかった。本件に適用される平成元年法律第86号による改正前の国民年金法の規定は,被保険者の範囲について概要次のように定めていた。すなわち,国民年金法(平成元年法律第86号による改正前のもの)第7条第1号は,日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者(ただし,被用者年金各法の被保険者及びその配偶者であって所定の要件を満たすもの- 2 -に該当しないもの)を強制的に国民年金の被保険者としつつ,その例外として,学校教育法第41条に規定する高等学校の生徒,同法第52条に規定する大学の学生その他の生徒又は学生であって政令で定めるものを除外していた。被控訴人は,後記の診断を受けた当時大学生であり,同法第7条第1号の除外規定の適用を受けたため,国 生徒,同法第52条に規定する大学の学生その他の生徒又は学生であって政令で定めるものを除外していた。被控訴人は,後記の診断を受けた当時大学生であり,同法第7条第1号の除外規定の適用を受けたため,国民年金の被保険者とされなかった。同号の除外規定の適用を受ける者も国民年金に任意加入をすることができることとされていたが,被控訴人は国民年金に任意加入していなかった。 また,同法第30条の4第1項は,疾病にかかり,又は負傷し,その初診日において20歳未満であった者に対しては,更に所定の要件を満たせば障害基礎年金を支給する旨規定している。したがって,同項所定の要件に該当する場合には,障害基礎年金の支給を受けることができるのであるが,被控訴人が統合失調症につき初めて医師の診療を受けたのは被控訴人が20歳に達した後であった。 本件は,被控訴人が,大学在学中に統合失調症(当時の呼称は「精神分裂病」)の診断を受け,東京都知事に対して障害基礎年金につき裁定の請求をしたが,国民年金法第30条第1項第1号所定の要件を満たさず,同法第30条の4所定の要件も満たさないものとして,不支給の処分を受けたため,①学生について,国民年金の強制適用の対象から除外し,国民年金に任意加入する場合に保険料免除の制度を設けていない国民年金法(平成元年法律第86号による改正前のもの)第7条第1号の規定は,憲法第14条,第25条,第31条に違反すること,②20歳前に統合失調症を発病し,医師の診療を受けるべき状態にあった被控訴人に対しては,疾病の特質等にかんがみ,国民年金法第30条の4第1項所定の初診日が20歳未満の時点の傷病により障害を負った者を対象とする無拠出の障害基礎年金を支給すべきであるのに,不支給の処分を行ったのは違法である- 3 -ことなどを理由として,控訴人社会保 項所定の初診日が20歳未満の時点の傷病により障害を負った者を対象とする無拠出の障害基礎年金を支給すべきであるのに,不支給の処分を行ったのは違法である- 3 -ことなどを理由として,控訴人社会保険庁長官(いわゆる地方分権一括法により,処分をした行政庁である東京都知事から処分権限を承継)に対し,上記不支給処分の取消しを求めると共に,原審共同被告国に対し,昭和34年以降,学生の身分を有する者に対する不合理な差別を容認するなど,憲法に違反する内容の立法を行ったこと,又はこのような不合理な差別等による不利益を救済する措置を講じなかったことが違憲,違法であると主張して,国家賠償法第1条第1項に基づき慰謝料2000万円の支払を請求した事案である。 原審は,被控訴人の控訴人に対する請求を認容し,原審共同被告国に対する請求を棄却した。原判決のうち控訴人敗訴部分を不服とする控訴人が控訴を提起した。なお,被控訴人は控訴を提起しなかったため,原判決のうち被控訴人の原審共同被告国に対する請求を棄却した部分は確定した。 関係法令の定め等,前提事実,争点及びこれに対する当事者双方の主張は,後記のとおり当審における被控訴人の主張を追加するほかは,原判決「事実及び理由」欄中の「第2事案の概要」の1から3まで(原判決2頁23行目から10頁24行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 第4当裁判所の判断 平成元年改正前国民年金法第7条第1号が憲法第14条,第25条,第31条に違反することを理由とする本件処分の取消請求について当裁判所も,平成元年改正前国民年金法第7条第1号が憲法第14条,第25条,第31条に違反することを理由とする本件処分の取消請求は,理由がないからこれを棄却すべきであると判断する。その理由は,次のとおり訂正するほかは,原判決 民年金法第7条第1号が憲法第14条,第25条,第31条に違反することを理由とする本件処分の取消請求は,理由がないからこれを棄却すべきであると判断する。その理由は,次のとおり訂正するほかは,原判決「事実及び理由」欄中の「第3争点に対する判断」の1(原判決10頁26行目から12頁4行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 - 4 -原判決11頁15行目から12頁1行目までを次のとおり改める。 「被控訴人の上記主張の趣旨は,平成元年改正前国民年金法においても,その後の国民年金法の改正によって現に実現されているとおり,学校教育法第41条に規定する高等学校の生徒,同法第52条に規定する大学の学生その他の生徒又は学生であって政令で定めるものを平成元年改正前国民年金法第7条第1号の適用対象から除外せずに強制加入の取扱いをすると共に,一般とは異なる学生用の保険料免除基準を設けたり,学生納付特例制度を設けたりすることにより,保険料負担能力のない学生について障害基礎年金を受給する途を閉ざさないようにすべきであったというものであると解される。要するに,被控訴人は,保険料負担能力のない学生について障害基礎年金を受給する措置が執られていないとし,この点をとらえて憲法第14条,第25条等に違反する旨主張するのであるが,平成元年改正前国民年金法第7条第1号は,日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者(ただし,被用者年金各法の被保険者及びその配偶者であって所定の要件を満たすものに該当しないもの)を強制的に国民年金の被保険者としつつ,同号イは,その例外として,学校教育法第41条に規定する高等学校の生徒,同法第52条に規定する大学の学生その他の生徒又は学生であって政令で定めるものを広く除外していたのであって,同号イにより除外される学生の中に障害 として,学校教育法第41条に規定する高等学校の生徒,同法第52条に規定する大学の学生その他の生徒又は学生であって政令で定めるものを広く除外していたのであって,同号イにより除外される学生の中に障害基礎年金を受給する措置が執られるべきものが含まれていることを理由に,同号イが違憲無効となると論ずるのは,論理に飛躍があり,失当であるといわざるを得ない。被保険者の範囲をどのように定めるかについては,国民年金制度全体をどのように構築するかの問題であり,立法者の広範な裁量にゆだねられているのであって,それが著しく合理性を欠き,明らかに裁量の逸脱,濫用と見ざるを得ないような場合を除き,違憲の問題を来さないものというべきである(最高裁昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号12- 5 -35頁参照)。被控訴人は,保険料負担能力のない学生について障害基礎年金を受給する措置が執られていないとし,この点をとらえて憲法第14条,第25条等に違反する旨主張するのであるから,被控訴人の上記主張は,保険料負担能力のない学生についてそのような措置が執られていないことを理由として立法不作為の責任を追及する趣旨のものではあり得ても,本件処分の取消しを求める根拠にはならないものといわざるを得ない。したがって,被控訴人の上記主張は採用することができない。 なお,被控訴人が,本件処分時において,拠出制障害基礎年金の支給要件である保険料納付要件を満たしていたことについては,本件全証拠によってもこれを認めることができない。」 被控訴人が国民年金法第30条の4第1項所定の要件に該当するとして被控訴人に対して20歳前障害基礎年金を支給すべきことを理由とする本件処分の取消請求について(1)国民年金法第30条第1項は,「疾病又は負傷及びこれらに起因す の4第1項所定の要件に該当するとして被控訴人に対して20歳前障害基礎年金を支給すべきことを理由とする本件処分の取消請求について(1)国民年金法第30条第1項は,「疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日」を「初診日」という旨規定し,国民年金法第30条の4第1項は,疾病にかかり,又は負傷し,その初診日において20歳未満であった者が障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときはその者に障害基礎年金を支給する旨規定している。このように,国民年金法第30条第1項及び第30条の4第1項は,傷病の発生日ではなくその初診日において所定の要件を満たす者に対して障害基礎年金を支給する要件としているところ,その趣旨は,国民年金の保険者が傷病の発生時期の認定をすることができるだけの資料を有しないことにかんがみ,医学的見地から上記認定の客観性,公平性を確保するために受診の事実をもって適用の範囲を画することとするにあると解するのが相当である。国民年金法第30条第1項及び第30条の4第1項の上記の文言及び趣旨- 6 -によれば,同項にいう「初診日」とは,傷病の発生日ではなく,上記定義規定のとおり,傷病について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日を意味するものと解するのが相当である。 なお,証拠(甲72,73,乙37,57)によれば,先天性又は生後早期の段階で発症する知的障害及び先天性の身体障害にある者については,乳幼児期に医師の診療を受け,また,学校保健法第4条,第5条所定の健康診断の際に認識されるのが通常であると考えられることから,行政解釈に基づき,診断書等による証明がなくても,疾病等にかかりその初診日において20歳未満であった者として,昭和60年改正前国民年金法第57条に基づく障 されるのが通常であると考えられることから,行政解釈に基づき,診断書等による証明がなくても,疾病等にかかりその初診日において20歳未満であった者として,昭和60年改正前国民年金法第57条に基づく障害福祉年金を支給するという取扱いが,昭和40年法律第93号による改正以後の国民年金法により精神薄弱(現在の呼称は知的障害)が障害年金の対象となる傷病とされた後の行政実務の運用とされており,昭和60年法の下では,上記障害福祉年金が同法第30条の4に基づく20歳前障害基礎年金とされて,同様の運用がされていることが認められるが,これらの取扱いは,上記のとおり,先天性又は生後早期の段階で発症する知的障害及び先天性の身体障害にある者については,乳幼児期に医師の診療を受け,また,学校保健法第4条,第5条所定の健康診断の際に認識されるのが通常であると考えられることに基づくものであり,上記のような解釈,運用がされていることをもって,国民年金法第30条の4にいう「初診日」について上記と異なる解釈をする根拠とすることはできないものというべきである。 被控訴人は,上記の運用について,後に障害を来す原因となる傷病に起因する症状が20歳に達する前に存在していて医師等の診療を受けるべき状態に至っていたことが医学的に確認することができる場合には,受診の事実の有無を問わずに国民年金法第30条の4にいう「初診日」の要件を満たすとする解釈を前提とするものであり,同条についてはそ- 7 -のように解するのが相当である旨主張するが,仮に上記の運用が被控訴人の主張するとおりの考え方を前提とするものであるとしても,そのことが,直ちには,そのような考え方が同条の解釈として正当なものであると解する法律上の根拠になり得るとはいえない。そして,国民年金法第30条第1項及び第30条の4第1 とするものであるとしても,そのことが,直ちには,そのような考え方が同条の解釈として正当なものであると解する法律上の根拠になり得るとはいえない。そして,国民年金法第30条第1項及び第30条の4第1項の上記の文言及び趣旨によれば,同条にいう「初診日」が傷病について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日を意味するものと解するのが相当であることは,前記のとおりであって,仮に上記の運用が被控訴人の主張するとおりの考え方を前提とするものであるとすれば,当該運用は,同条についての前記の解釈とは異なる見地から行政上の措置として行われていることになるといわざるを得ない。したがって,被控訴人の上記主張は採用することができない。 (2)これを本件について見ると,本件全証拠によっても被控訴人が20歳に達する前に統合失調症で医師の診療を受けたことを認めるに足りず,したがって,被控訴人が国民年金法第30条の4第1項所定の要件を満たすものということはできないというほかはない。そうすると,被控訴人に対して20歳前障害基礎年金を支給すべきことを理由とする本件処分の取消請求についても,理由がないからこれを棄却すべきである。 被控訴人の当審における主張に対する判断被控訴人は,後記のとおり種々の理由を挙げ,統合失調症については国民年金法第30条の4第1項の規定を拡張解釈して同項の適用を肯定すべきである旨主張する。しかしながら,同項は疾病にかかり,又は負傷し,その初診日において20歳未満であった者が障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときはその者に障害基礎年金を支給する旨規定しており,その意義は前記のとおりに解すべきであることが一義的に明らかである。 したがって,被控訴人の主張するように同項を拡張解釈することは,立法- 8 -者の意思に反して同項の規定を改変す 旨規定しており,その意義は前記のとおりに解すべきであることが一義的に明らかである。 したがって,被控訴人の主張するように同項を拡張解釈することは,立法- 8 -者の意思に反して同項の規定を改変することにほかならないのであり,解釈の名の下に立法権を侵害するに帰するものであって許されないものといわざるを得ない。 (1)被控訴人は,疾病起因性が認められなければ医師の診療を受けたことにならないことからすれば,疾病起因性が国民年金法第30条の4第1項所定の「初診日」の要件の実質的,本質的な内容を構成しているということができるのであり,受診行為そのものに本質的な重要性があるとはいえず,画一的な処理,迅速な処理の要請が働くとしても二次的なものであるにすぎないとし,上記の疾病起因性を前提にして例外的に医師等の受診の事実がなくても受診を要する程度の状態に至っていれば足りる旨主張する。 国民年金法第30条の4第1項は,疾病にかかり,又は負傷し,その初診日において20歳未満であった者が障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときはその者に障害基礎年金を支給する旨規定するところ,同項所定の要件を満たすというためには,確かに,「初診日」が障害の原因となった傷病について診療が行われたことを要するのであり,その意味では,制度上,被控訴人が主張する疾病起因性が必要とされているということはできる。また,同項が,上記のとおり20歳に達する前に疾病にかかるなどして後に障害が残った者を救済することとしており,初診日の要件を設けたのも,前記のとおり,国民年金の保険者が傷病の発生時期の認定をすることができるだけの資料を有しないことにかんがみ,医学的見地から認定の客観性,公平性を確保するために受診の事実をもって適用の範囲を画することとするという技術的理由に基づくものであ 生時期の認定をすることができるだけの資料を有しないことにかんがみ,医学的見地から認定の客観性,公平性を確保するために受診の事実をもって適用の範囲を画することとするという技術的理由に基づくものであることからすれば,立法者は,社会保障政策として20歳前障害基礎年金の支給制度を設けるに当たり,後に障害を来す原因となる傷病に起因する症状が20歳に達する前に存在していて医師等の診療を受ける- 9 -べき状態に至っていたことが医学的に確認することができる場合について救済の必要性があると判断した上で,適用の範囲を画するために「初診日において20歳未満であった者」という要件を定めたものと考えられるのであり,上記の社会保障政策を実際に制度化するに当たってその範囲を上記のとおり限定したことにより,その範囲に含まれる者と含まれない者との間で平等原則に違反するかどうかの問題が生じていることもあり得るところである。しかしながら,同項は,①障害の原因となった傷病が発生した時に20歳未満であったことをもって必要かつ十分な要件として規定しているわけではなく,②疾病にかかり,又は負傷し,その初診日において20歳未満であったことを要件として規定しているのであり,障害の原因となった傷病が発生した時に20歳未満であったこと(①)を前提としつつ,そのことに加えて上記のとおりその初診日において20歳未満であったこと(②)を要件として定めている。 そして,同項が②のとおり規定した趣旨は,前記のとおり,国民年金の保険者が傷病の発生時期の認定をすることができるだけの資料を有しないことにかんがみ,医学的見地から上記認定の客観性,公平性を確保するために受診の事実をもって適用の範囲を画することとするにあり,このことには合理性があるということができる。これによれば,上記①及び②の とにかんがみ,医学的見地から上記認定の客観性,公平性を確保するために受診の事実をもって適用の範囲を画することとするにあり,このことには合理性があるということができる。これによれば,上記①及び②の要件のうち①だけが重要であるとして②を満たさなくてもよいということはできないから,上記①及び②の要件のうち①だけを満たせばよいと解することは,立法の趣旨に反して同項を改変することに帰するといわざるを得ない。したがって,同項所定の要件を満たすためには,障害の原因となった傷病が発生した時に20歳未満であったということだけでは足りず,当該傷病について医師の初診を受けた時に20歳未満であったことを要することは明らかであって,被控訴人の上記主張は採用することができない。 - 10 -(2)被控訴人は,後に障害を来す原因となる傷病に起因する症状が20歳に達する前に存在していて医師等の診療を受けるべき状態に至っていたことが医学的に確認することができる場合において,そのうち20歳に達する前に受診した者は国民年金法第30条の4に基づく20歳前障害基礎年金の支給を受けることができるのに,受診しなかった者はその支給を受けることができないとしてこれらを区別することは,受診しなかったことについて本人に責められるべき事情がない限り不公正な取扱いであると主張する。 確かに,前記のとおり,国民年金法第30条の4が上記のとおり20歳に達する前に疾病にかかるなどして後に障害が残った者を救済することとしており,初診日の要件を設けたのも,国民年金の保険者が傷病の発生時期の認定をすることができるだけの資料を有しないことにかんがみ,医学的見地から認定の客観性,公平性を確保するために受診の事実をもって適用の範囲を画することとするという技術的理由に基づくものであることからすれば,立 とができるだけの資料を有しないことにかんがみ,医学的見地から認定の客観性,公平性を確保するために受診の事実をもって適用の範囲を画することとするという技術的理由に基づくものであることからすれば,立法者は,社会保障政策として20歳前障害基礎年金の支給制度を設けるに当たり,後に障害を来す原因となる傷病に起因する症状が20歳に達する前に存在していて医師等の診療を受けるべき状態に至っていたことが医学的に確認することができる場合について救済の必要性があると判断した上で,適用の範囲を画するために「初診日において20歳未満であった者」という要件を定めたものと考えられるのであり,社会保障政策上このような救済の必要性が肯定された以上,立法者が実際に制度化するに当たって20歳前障害基礎年金の受給者の範囲,支給要件等につき区別を設けた場合には,平等原則に違反するかどうかの問題が生ずることはあり得るところであって(前記大法廷判決参照),当該区別について合理的な理由があるといえるかどうかを検討する必要が生ずるものといわざるを得ない。現行の国民年金法第3- 11 -0条の4が20歳に達する前に受診した者と受診しなかった者とを区別している理由は,前記のとおり,国民年金の保険者が傷病の発生時期の認定をすることができるだけの資料を有しないことにかんがみ,医学的見地から上記認定の客観性,公平性を確保するために受診の事実をもって適用の範囲を画することとするにあるのであって,上記のとおり区別することには合理性があるということができる。他方,後に障害を来す原因となる傷病に起因する症状が20歳に達する前に存在していて医師等の診療を受けるべき状態に至っていたことが医学的に確認することができる場合について救済の必要性が肯定されたものと考えられることは前記のとおりであり,この る症状が20歳に達する前に存在していて医師等の診療を受けるべき状態に至っていたことが医学的に確認することができる場合について救済の必要性が肯定されたものと考えられることは前記のとおりであり,このような救済の必要性と比較するときは,20歳に達する前に受診したという基準を設けることによって達成される,適用の範囲を画する上での明確性の要請が,上記の救済の必要性に客観的に優先するものであるといえるかどうか,仮に上記の救済の必要性の方が優先するとした場合に国民年金法上任意加入の制度が設けられていることによって制度上の合理性が担保されているといえるかどうかについては,慎重な検討を要する問題が内在しているとはいえる。したがって,以上の点に照らすと,確かに,立法政策の上においては,上記の場合について,現行の国民年金法第30条の4のように,「初診日において20歳未満であった者」であることを要件として定める制度だけが唯一の可能な選択肢ではなく,障害の原因となった傷病が発生した時に20歳未満であったことが医学的に証明されることを要件とする制度を設けることもあり得るところではあるが,これは立法政策の問題として,立法者の裁量の範囲に属するものであって,現行法上,上記のような定めがされており,その文言及び趣旨に照らせば立法者の意思が明らかである以上,これに反する内容の拡張解釈をすることは許されないものというほかはないことは,前記のとおりである。したがって,被控訴人の- 12 -上記主張は,採用することができない。 第5 結論 よって,被控訴人の控訴人に対する請求を認容した原判決は不当であって,控訴人の本件控訴は理由があるから,原判決のうち控訴人に関する部分を取り消し,その取消しに係る被控訴人の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判 認容した原判決は不当であって,控訴人の本件控訴は理由があるから,原判決のうち控訴人に関する部分を取り消し,その取消しに係る被控訴人の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第21民事部裁判長裁判官浜野惺裁判官高世三郎裁判官遠藤真澄

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