-1-平成27年5月14日判決言渡同日原本受領裁判所書記官平成25年(ワ)第8678号損害賠償等請求事件口頭弁論終結日平成27年3月12日判決原告株式会社O.T.A. 訴訟代理人弁護士遠藤直哉訴訟復代理人弁護士秦野晃一訴訟代理人弁護士村谷晃司同佐藤公亮同石田卓遠同川村覚同田島紘一郎被告医療法人敬晴会主文 1 被告は,原告に対し,2100万円及びこれに対する平成21年7月24日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを3分し,その1を被告の,その余を原告の負担とする。 4 この判決の第1項は,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,6594万円及びうち2100万円に対する平成21年7月24日から,うち4494万円に対する平成25年9月19日から各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,①原被告間で締結された「特許発明・ノウハウ実施許諾及び技術研修実施-2-契約」が解除されたところ,その契約の解除に伴う損害賠償又は原状回復として,原告が被告に支払った金員相当額2100万円及び解除の後日である平成21年7月24日から支払済みまでの商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求め,②原被告間で締結された「大阪再生医療センターの設立及び運営支援業務」等の業務委託契約について,原告が支援業務を履行したことに基づき,業務委託報酬4494万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成25年9月19日から支払済 医療センターの設立及び運営支援業務」等の業務委託契約について,原告が支援業務を履行したことに基づき,業務委託報酬4494万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成25年9月19日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の各支払を求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実)(1) 当事者原告は,人間ドック及び統合医療の紹介及び斡旋業等を目的とする株式会社である。 被告は,診療所を経営する医療法人であり,肩書地において,医療法人敬晴会リセリングクリニックを開設している。また,被告は,同クリニック内において,「大阪再生医療センター」(以下,「医療センター」という。)を運営している(甲13)。 (2) 原被告間の契約1(甲1契約)ア原告と被告は,平成20年4月30日付け「特許発明・ノウハウ実施許諾及び技術研修実施契約書」(甲1)に記載の内容の合意をした(契約日を除き,契約の成立は争いがない。以下,同契約書に記載の契約を「甲1契約」という。)。 イ同契約書によると,甲1契約は,原告と被告が,それぞれの立場で,再生医療事業(本件事業)を展開するに当たり,遵守すべき事項を定めることを目的とするものであり,被告は,原告に対し,北海道において,被告の技術を利用した再生医療(除皺,陥凹治療等)を独占展開するために必要な試料,ノウハウ及び情報等を提供する(本件業務)とともに,当該再生医療の実施に必要な知的財産権の実施を許諾すること,原告は,被告から提供された秘密ノウハウ-3-を用いて,被告の技術を用いた施療を現実に行う提携医療施設を募集した上で,当該ノウハウ等を当該提携医療施設に提供し,施療を行わせることを目的とし(第1条),契約の有効期間を平成20年5月1日 3-を用いて,被告の技術を用いた施療を現実に行う提携医療施設を募集した上で,当該ノウハウ等を当該提携医療施設に提供し,施療を行わせることを目的とし(第1条),契約の有効期間を平成20年5月1日から平成30年4月30日としている(第7条)。 ウ甲1契約の対象とする特許権は,特願2005-190374号(皮膚組織改善材),特願2006-354259号(皮膚組織改善材及びその製造方法)等であり(第2条,以下,上記に係る特許権ないし特許を受ける権利につき,「本件特許権等」という。),被告は,原告が,本件事業を行うことについて,甲1契約締結後ただちに,特許権者の承諾を得ることとされ(第5条1項),被告がその承諾を得られないときは,原告は甲1契約を解除でき,その場合,被告は原告に対して契約金を返還し,損害を賠償することとされ(同条2項),このことは,被告が甲1契約の有効期間中に本件特許権等の実施権を失った場合も同様とされた(同条3項)。 エ甲1契約に基づき,被告は,原告に対し,本件事業における事業契約書の作成支援,細胞培養施設の設営支援,本件事業の実施に必要な技術に係る技術指導及び実施教育等の事業支援を行うこととされ(第3条),被告は,原告に対し,取引開始時点において契約金2100万円を支払い,原告が,提携医療機関と契約した際の契約一時金収入の20パーセント,原告が本件事業を通じて得た収入の5パーセントを支払うこととされている(第8条)。 (3) 本件特許権等の特許登録等(弁論の全趣旨)甲1契約にいう本件特許権等のうち,特願2005-190374号に係るもの(以下「本件特許権1」という。)は,平成18年6月28日,同出願を優先権主張の根拠とし,出願人を国立大学法人名古屋大学(以下「名古屋大学」という。)とするPCT出願(PC 190374号に係るもの(以下「本件特許権1」という。)は,平成18年6月28日,同出願を優先権主張の根拠とし,出願人を国立大学法人名古屋大学(以下「名古屋大学」という。)とするPCT出願(PCT/JP2006/312871)がされた。その後,国内移行手続(特願2007-523972号)がされ,同出願に係る特許発明は,平成24年5月11日特許として登録された(登録番号498286-4-5号)。 また,同じく特願2006-354259号に係るもの(以下「本件特許権2」という。)は,同様に平成19年12月26日,同出願を優先権主張の根拠とし,出願人を名古屋大学とするPCT出願(PCT/JP2007/074962)がされた。その後,国内移行手続(特願2008-528689号)がされ,同出願に係る特許発明は,我が国において平成21年1月23日特許として登録された(登録番号4247333号)。 (4) 原告の被告に対する送金原告は,被告代表者宛てに,平成20年4月28日,2100万円を送金した(甲2)。 (5) 原被告間の契約2(甲6契約)原告と被告は,平成19年9月1日,被告が原告に対し,「医療センターの設立及び運営支援業務」を委託し,被告が,原告に,別途覚書において定める委託業務ごとの対価に定める委託料金を支払う旨を合意した(以下「甲6契約」という。)。 原告と被告は,また同日付けで,業務の範囲を,本件(再生医療事業に関わる業務)に関わる運営支援業務及びこれに付随する事項とし,期間を同日から平成25年3月31日まで,定額の報酬額を月額20万円(税別)とする旨の覚書を締結した(以上甲6の1・2)。 (6) 原被告間の契約3(甲7契約)原告と被告は,平成20年4月30日,被告が原告に「再生医療事業 まで,定額の報酬額を月額20万円(税別)とする旨の覚書を締結した(以上甲6の1・2)。 (6) 原被告間の契約3(甲7契約)原告と被告は,平成20年4月30日,被告が原告に「再生医療事業運営支援業務」を委託し,被告が,原告に,別途覚書において定める委託業務ごとの対価に定める委託料金を支払う旨を合意した(甲7。以下「甲7契約」という。)。 原告と被告は,同日付けで,業務の範囲を,本件(再生医療事業に関わる業務)に関わる国内運営支援業務及びこれに付随する事項とし,期間を平成20年4月1日から平成25年3月31日まで,定額の報酬額を月額30万円(税別)とす-5-る旨の覚書(甲7の2。以下,この覚書に基づく合意を「甲7①合意」という。)及び業務の範囲を本件(再生医療に関わる業務)に関わる国外運営支援業務及びこれに付随する事項とし,期間を平成20年7月1日から平成23年10月31日までとし,定額の報酬額を月額50万円(税別)とする旨の覚書(甲7の3。 以下,この覚書に基づく合意を「甲7②合意」という。)をそれぞれ締結した。 (7) 被告の甲6契約,甲7契約の報酬相当額の支払被告は,原告に対し,甲6契約所定の平成20年12月分までの報酬相当額,並びに甲7①合意所定の平成20年6月分までの報酬相当額及び甲7②合意所定の平成21年3月分までの報酬相当額を支払い,以後,これに相当する金額を支払うことはなかった(上記各支払が甲6契約,甲7契約に基づく履行の対価としての支払であったかどうかについては争いがある。)。 2 争点(1) 甲1契約について,被告が本件特許権等の実施権を失ったか(争点1)(2) 甲6契約,甲7契約について,原告の履行があったか(争点2)(3) 甲6契約,甲7契約が,その実体と異なる名目的な契 甲1契約について,被告が本件特許権等の実施権を失ったか(争点1)(2) 甲6契約,甲7契約について,原告の履行があったか(争点2)(3) 甲6契約,甲7契約が,その実体と異なる名目的な契約であったか(虚偽表示の成否。争点3)(4) 甲6契約,甲7契約は解除されたか(争点4)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(甲1契約について,被告が本件特許権等の実施権を失ったか)について【原告の主張】(1) 本件特許権等の実施権の取得ア本件特許権の許諾関係名古屋大学は,本件特許権等につき,株式会社TESホールディングス(以下「TES」という。)に対して実施許諾をしていた。 被告は,平成18年12月18日,TESとの間で,次の内容にて,近畿地区における本件特許権等の独占的実施契約を締結した。 -6-(ア) 実施許諾TESは,被告に対し,近畿地区において,TESの技術を利用した再生医療(除皺,陥凹治療等)を独占的に展開するために必要な試料,ノウハウ及び情報等を提供するとともに,被告が行う医療センターにおける当該再生医療の実施に必要な知的財産権の実施を許諾する。 (イ) サブライセンス許諾被告は,TESから提供された秘密ノウハウを用いて,TESの技術を用いた施療を現実に行う提携医療施設を募集した上で,TESから提供された試料,TESの技術を利用して自ら生産した試料及び関連するノウハウ等をTESの書面による承諾の下に,当該提携医療施設に提供し,施療を行わせることができる。 イ名古屋大学とTES間の契約の契約上の地位の移転平成20年4月10日,被告とTESは,国内全てに関して名古屋大学がTESに許諾した実施権の譲渡契約を締結した(甲3)。 また,同年5月1日には,被告, TES間の契約の契約上の地位の移転平成20年4月10日,被告とTESは,国内全てに関して名古屋大学がTESに許諾した実施権の譲渡契約を締結した(甲3)。 また,同年5月1日には,被告,TES及び名古屋大学の三者間において,名古屋大学とTESとの本件特許権等の独占実施権設定契約を解消し,新たに名古屋大学から被告に対して本件特許権等の実施を許諾する契約書を締結する旨の契約が締結された(甲4)が,その実質はTESが有する実施権を被告に譲渡するものであった。 (2) 本件特許権等の実施権の喪失前記(1)イの平成20年4月10日及び平成20年5月1日付けの国内独占に関する契約は,被告の経済的な理由によるTESに対する契約対価の不払に基づき,平成20年6月26日付けの覚書(甲5添付)により解除された。 これにより,被告は,北海道地区における本件特許権等の実施権を失った。 (3) 前提事実(4)記載の送金についての返還請求権の発生ア前提事実(4)記載の送金は,甲1契約において定められた(8条)契約金21-7-00万円の支払として被告に対してされたものであるところ,原告と被告は,甲1契約において,被告が北海道における本件特許権等の実施権を失った場合には,被告は,原告に対し,契約金2100万円(前提事実(4)記載の送金)を返還する合意をした(第5条3項,第1条(1))。 上記(2)のとおり,被告は,平成20年6月26日には,本件特許権等について北海道で実施する実施権を失っており,原告は,被告に対し,遅くとも平成21年7月6日には解除の意思表示をしたから,被告は,原告に対し,甲1の第5条3項に基づき,契約金2100万円を返還すべき義務を負う。 イまた,原告は,予備的に,被告が本件実施権を獲得できなかったこと(甲1 日には解除の意思表示をしたから,被告は,原告に対し,甲1の第5条3項に基づき,契約金2100万円を返還すべき義務を負う。 イまた,原告は,予備的に,被告が本件実施権を獲得できなかったこと(甲1第5条2項)を理由とする解除に基づく返還義務も主張する。 ウよって,原告は,被告に対し,解除に基づく原状回復又は損害賠償として,2100万円の支払及びこれに対する遅延損害金の支払を求める。 【被告の主張】(1) 被告の本件特許権等の実施権の取得について原告の主張のうち,(1)に記載の事実は認める。もっとも,(1)イの事実のうち,被告,TES及び名古屋大学間の合意(甲4)は,名古屋大学とTES間の既存契約の解消と,名古屋大学と被告間の新契約の締結を内容とするものであり,TESの権利を被告に譲渡する旨の契約ではない。 (2) 被告の本件特許権等の実施権の喪失について原告の主張を否認する。 平成20年6月26日に被告,TES,名古屋大学間において締結された覚書は,上記平成20年5月1日付けの合意の解消にすぎず,それゆえ,既存の契約(名古屋大学とTES間,TESと被告間の各契約)が存続することになるから,被告が本件特許権等の実施権を失ったわけではない。 2 争点2(甲6契約,甲7契約について,原告の履行があったか)について【原告の主張】-8-(1) 甲6契約の目的甲6契約は,平成19年頃,医療センターの開設に伴う支援業務及び同センターにおける本件特許権等に係る技術の実施及び同発明技術を用いた施術を十分かつ円滑に行うための情報を得ることを目的として締結されたものである。原告は,医療センターの開設に当たって必要となる折衝を行い,また同所で行う施術について,本件特許権等の発明に携わり同発明のノウハウを つ円滑に行うための情報を得ることを目的として締結されたものである。原告は,医療センターの開設に当たって必要となる折衝を行い,また同所で行う施術について,本件特許権等の発明に携わり同発明のノウハウを熟知している名古屋大学教授のP1から同発明の実施のノウハウについての情報の教示を受け,それを原告に伝えていたものである。 (2) 甲7契約の目的(委託業務の提供)平成20年4月頃,被告は,当時運営していた「なぎさクリニック」と称する歯科医院にて,名古屋大学の開発したリセリング技術を学びたい者を対象とした研修制度を,事業として展開しようとしていた。したがって被告は,本件特許権等に関する技術について,より深いノウハウや知識を得る必要があり,また研修プログラムの開発や同運営開始に当たってのサポートを欲していた。そこで,原告は,被告に対して,研修プログラムの開発や,研修制度の実行において必要となる知識やノウハウの収集を目的とした支援業務を行うこととし,甲7契約及び甲7①合意に至った。また,被告は,国外における本件特許権等の技術を用いた施術の施行を画策していたので,その支援(海外法人との契約交渉,P1との連携支援業務等)を原告が請け負うことを業務内容として,甲7②合意をしたものである。 (3) 原告の甲6契約,甲7契約に関する業務の提供原告の甲6契約,甲7契約に関する業務の提供は,別紙業務一覧表記載のとおりである。 【被告の主張】原告の主張を否認する。 後記のとおり,甲6契約及び甲7契約は,真実はいずれも業務の委託とその対価-9-たる業務委託料の支払を目的とするものではなかったことから,原告は「委託業務の実施」と評価し得る業務は一切行っていない。 3 争点3(甲6契約,甲7契約が,その実体と異なる名目的な契約 価-9-たる業務委託料の支払を目的とするものではなかったことから,原告は「委託業務の実施」と評価し得る業務は一切行っていない。 3 争点3(甲6契約,甲7契約が,その実体と異なる名目的な契約であったか[虚偽表示の成否])について【被告の主張】(1) 甲6契約,甲7契約の目的甲6契約,甲7契約は,真実はいずれも業務の委託とその対価たる業務委託料の支払を目的とするものではなく,P1に対するリベートの支払を可能にするために便法上作成された形式上のものにすぎない。 (2) 甲6契約甲6契約は,P1が医療センターの顧問となることの対価として,顧問料として月額20万円を支払う目的で作成されたものである。 すなわち,P1は,名古屋大学の教授という公務員の地位にあり,兼職や関係業者からの利益供与が禁じられる立場にあったことから,原告代表者の提案により,甲6契約を締結し,被告から原告を介してP1に毎月20万円を支払うこととしたものである。なお,平成19年6月以降,医療センターは,P1を顧問としていたが,後にその関係を解消した。 (3) 甲7契約甲7契約は,本件特許権に係る医療技術の発明者であるP1に対するリベート支払のために作成されたものである。すなわち,平成20年4月以前,TESは,P1に対し,月額80万円のリベートを秘密裏に払っていたものであるところ,前記1の【被告の主張】(1)に記載のとおり,本件特許権に関し,被告が名古屋大学から直接の許諾を受けることとなり,上記リベートに関しても,被告がこれを負担することになったが,これについても,原告代表者の発案で,原告を介して支払うことになったものである。 (4) まとめ-10-以上のとおり,甲6契約,甲7契約は,いずれも原告の被告に対す ることになったが,これについても,原告代表者の発案で,原告を介して支払うことになったものである。 (4) まとめ-10-以上のとおり,甲6契約,甲7契約は,いずれも原告の被告に対する実体的な業務委託料請求権の根拠となるものではない。 【原告の主張】(1) 甲6契約,甲7契約の目的甲6契約,甲7契約の目的は,前記2【原告の主張】(1) ,(2)記載のとおりである。 (2) 被告の主張に対する反論被告の主張は,原告もまたP1の関係者であるにもかかわらず,原告からならばなぜP1にリベートを支払うことができるのかが全く説明されておらず,説明自体が合理的でない。 4 争点4(甲6契約,甲7契約は解除されたか)について【被告の主張】上記3のとおり,甲6契約,甲7契約は,P1に対するリベート提供を可能にするためにされた実体のないものであり,医療センターとP1の関係が解消されたため,原被告間においても,平成21年2月28日をもって,甲6契約を解除している(乙1)。 また,その頃甲7契約も,同様に口頭の合意により,解約されている。 【原告の主張】被告の主張を否認する。原被告間で解除の合意は成立していない。 第4 判断 1 認定事実後掲各証拠及び弁論の全趣旨に前提事実を総合すると,次の各事実を認めることができる。 (1) 名古屋大学とTES間の従前の契約平成18年9月1日付けで,名古屋大学は,TESに対し,本件特許権1等に関し,少なくとも日本国内における独占的通常実施権を許諾した(甲3)。TE-11-Sは,平成18年9月から,平成19年8月までの間に,被告を含む3団体(被告とTES間においては,平成18年12月18日付け業務委託等基本契約書等の締結)に対し,サ 諾した(甲3)。TE-11-Sは,平成18年9月から,平成19年8月までの間に,被告を含む3団体(被告とTES間においては,平成18年12月18日付け業務委託等基本契約書等の締結)に対し,サブライセンスの契約をしていた(甲3)。なお,被告がこの契約に基づいて実施できる地域は,近畿地区(滋賀県,京都府,大阪府,兵庫県,奈良県及び和歌山県)であった(争いがない。)。 平成19年6月4日付けで,名古屋大学は,TESに対し,本件特許権2等に関し,実施許諾契約を締結していた(甲4)。 原告と被告は,同年9月1日,甲6契約を締結した(甲6の1,2)。 また,この頃,P1は,原告の名古屋大学に対する申請に基づき,被告(医療センター)の顧問となった(甲17)。 (2) 平成20年4月10日付けで,TESと被告は,本件特許権1等に関し,TESが名古屋大学から許諾を受けている実施権等の権利につき,被告に譲渡し,被告がTESに対し,対価として総額5000万円を支払うことを内容とする契約を締結した(甲3)。 次いで,同年5月1日付けで,名古屋大学,TES及び被告の三者において,名古屋大学とTES間の(1)に記載の本件特許権等についての契約を解消し,新たに名古屋大学と被告間で,本件特許権等についての実施契約を締結することとする旨の覚書が締結された(甲4)。 (3) 平成20年6月26日,上記(2)の名古屋大学,TES及び被告間の同年5月1日付け覚書を解消する旨の覚書が締結された(甲5)。 同年6月30日には,名古屋大学と株式会社乳歯幹細胞バンク(以下「乳歯幹細胞バンク」という。)間において,本件特許権等を含む,P1らを発明者とする出願中の特許権について,独占的実施権許諾契約がされた(甲12)。 (4) 原告代表者 会社乳歯幹細胞バンク(以下「乳歯幹細胞バンク」という。)間において,本件特許権等を含む,P1らを発明者とする出願中の特許権について,独占的実施権許諾契約がされた(甲12)。 (4) 原告代表者は,平成19年9月から,平成21年1月まで,別紙業務一覧表のとおり,1か月に平均して4回弱ほど(最も多い月でも平成20年6月の9回であり,2回程度の月も多い),被告代表者,P1,TES代表者等との打合せの-12-機会を持った。 もっとも,上記打合せについては,原告において,甲6契約固有の履行,又は甲6契約と甲7契約の双方の履行として認識されており,甲7契約の単独の履行としてされたものは存在していない。 (5) 平成21年2月頃,原告は,甲6契約を解消する旨被告に書面で連絡したが,被告がこれに応答しなかったためか,同年7月6日,甲6契約,甲7契約に基づく月額報酬の未払分の支払を求めるとともに,甲1契約を解除するとの意思表示をした(甲5)。 (6) 原告は,平成21年2月以降,前記(5)に記載したような活動はしなくなり,平成21年3月14日頃には,甲6契約を解除する旨を記載し,これに原告の記名押印をした契約解除合意書と題する書面を差し入れた(乙1)。 その後,原告は,被告に対し,当初は1,2か月に1回,平成22年2月以降は半年に約1回,平成24年4月頃まで,各業務委託契約について,知人等が関心を持っているので必要があれば紹介する旨などが1行程度記載された電子メールを送信するにすぎなかった(甲10(枝番を含む),弁論の全趣旨)。 2 争点1(甲1契約について,被告が本件特許権等の実施権を失ったか)について(1) 上記によると,被告は,もともと,本件特許権1等の実施に関し,TESが名古屋大学から許諾を受けた実施権のサブライ 争点1(甲1契約について,被告が本件特許権等の実施権を失ったか)について(1) 上記によると,被告は,もともと,本件特許権1等の実施に関し,TESが名古屋大学から許諾を受けた実施権のサブライセンスとして,近畿地区に限った実施権を保有していたものであって,他の区域における本件特許権等の実施権を有していなかったものであるところ,被告は,平成20年4月10日,TESが有していた本件特許権等を日本国内において実施し得る地位を取得しようとしたが,同年6月26日の覚書によりこの地位の取得は果たされず,同年6月30日には,乳歯幹細胞バンクが,名古屋大学から,本件特許権等を含む特許権について,独占的実施権を取得し,以後,被告において,甲1契約の前提となる北海道地区における本件特許権等の実施権が取得されることはなかったと認められる。 (2) そうすると,被告は,遅くとも平成21年7月6日時点において,原告に対し,-13-社会通念上,北海道地区における本件特許権等の実施権を失ったものと評価し得る。 また,仮に,上記平成20年6月26日の覚書締結後も,被告が乳歯幹細胞バンクから当該地位の譲渡を受けたり,同社から再実施許諾を得たりする余地を観念し得たとしても,証拠(甲5)によると,原告は被告に対して平成21年3月頃に催告をしたものと推認され,それに対して被告は,その後も乳歯幹細胞バンクから北海道地区における本件特許権等の実施権を取得することがなかったのであるから,やはり,遅くとも平成21年7月6日には,被告は北海道地区における実施権を失ったと認めるのが相当である。 したがって,甲1契約は,甲1契約の第5条3項により,平成21年7月6日頃の原告の解除の意思表示をもって適法に解除されたものというべきである。 (3) 証拠(甲1,2, るのが相当である。 したがって,甲1契約は,甲1契約の第5条3項により,平成21年7月6日頃の原告の解除の意思表示をもって適法に解除されたものというべきである。 (3) 証拠(甲1,2,18)によると,前提事実(4)記載の送金は,甲1契約の契約金の被告に対する支払としてされたものであること,甲1契約では,同契約の有効期間中に本件特許権等の実施権を失ったことを理由として解除された場合には,原告に対し,(無条件で)契約金を返還することとされていることがそれぞれ認められる,これによると,被告は,原告に対し,上記解除により,契約金全額である2100万円の返還をすべき義務を負い,解除の後日である平成21年7月24日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金を付加してこれを支払う義務を負う。 この点に関する原告の請求は,理由がある。 3 争点2(甲6契約,甲7契約について,原告の履行があったか)について(1) 前提事実及び前記1の認定によると,被告は,原告に対し,その趣旨は争うものの,平成19年9月から平成20年3月まで税別(以下同じ)月額20万円(甲6契約の報酬相当額),同年4月から6月までは,月額50万円(甲6契約と甲7①合意の報酬相当額の合計),同年7月から12月までは月額70万円(甲6-14-契約と甲7②合意の報酬相当額の合計),平成21年1月から3月までは,月額50万円(甲7②合意の報酬相当額)を支払っていたものである。 しかし,平成21年1月までの期間の原告の業務提供に関しては,別紙業務一覧表に基づく原告の説明によっても,具体的にどのようなことがされたのか明らかでなく,特に,別紙業務一覧表中の甲6契約のみに係る業務概要の記載が多岐にわたっていて,甲6契約の対象業務が広範囲に及んでいたこ に基づく原告の説明によっても,具体的にどのようなことがされたのか明らかでなく,特に,別紙業務一覧表中の甲6契約のみに係る業務概要の記載が多岐にわたっていて,甲6契約の対象業務が広範囲に及んでいたことがうかがわれる一方,甲7契約の各報酬額が甲6契約の報酬額よりも高額であること,原告も,甲7合意①の僅か3か月後の,平成20年6月30日時点において,被告が既に資金不足等の理由により甲1契約の前提となる北海道の実施権のほか,名古屋大学から日本全国を対象とした本件特許権等の実施許諾を得る見込みがなくなっていたことを了知し(甲15),したがって,同時点以降,本件特許権等のライセンスの取得についての業務はされていない上,原告は,被告が意図する再生医療の事業展開(甲7契約において原告の支援業務とされたもの)に必ずしも明るい見通しを得ていたものではなかったと考えられることからすると,甲6契約の履行を超えて,甲7契約固有の業務提供と呼べるほどのものが行われたのかについては疑問を禁じ得ない。確かに被告は,前記のとおり甲6契約の報酬額よりも多額の金員を原告に支払っているが,被告の支払額に一貫性がないことからすると,被告がどこまで各契約の履行状況を踏まえて報酬を支払っていたのかについても疑問がある。この点について,原告は,別紙業務一覧表記載の業務の提供のほか,被告の行う事業の海外展開等の支援業務をしていたと主張し,その旨の証拠(甲20の1ないし3)を提出するが,原告,被告らが関与する再生医療業務に興味があるといった程度の内容の,ライセンス契約等の申入れ等としては具体性に欠ける単なるメールの転送等にすぎず,同証拠からすれば,むしろ,原告が甲7合意の固有の業務として主張するものの実体について,前記のような疑問がより大きく生じるところである。 また,平成21年2 性に欠ける単なるメールの転送等にすぎず,同証拠からすれば,むしろ,原告が甲7合意の固有の業務として主張するものの実体について,前記のような疑問がより大きく生じるところである。 また,平成21年2月以降は,簡単な内容の電子メールが1,2か月に1回又-15-は半年間に1回の割合で送信されているにすぎず,業務提供の外形を維持するためにされたとも見得るほどのものである。 以上からすると,結局,本件において,甲6契約及び甲7契約の契約期間中,甲6契約の履行を超えた甲7契約固有の履行があったとは認め難いし,とりわけ,平成21年2月以降は,甲6契約及び甲7契約のいずれについても,その履行と評価され得る業務の提供がされたと認めるに足りないというべきである。 そして,甲6契約,甲7契約が,原告の受託業務の履行がなくとも,当然に最低月額報酬を得ることができるとする趣旨の合意であると解し得る事情も認められない。 むしろ,遅くとも原告が甲6契約の解除の意思表示を示した平成21年3月頃には,甲6契約及び甲7契約は形骸化しその実質を失っていたというべきである。 (2) 以上によると,原告は,最大限考えても,平成21年1月までの甲6契約に基づく報酬を請求することができるにとどまり,甲7契約に基づく報酬及び平成21年2月以降の甲6契約に基づく報酬を請求することはできないと認めるのが相当である。 そして,平成21年1月までの甲6契約に基づく報酬は,被告において甲6契約に基づく報酬額以上の額が支払済みであるということができるから,結局,原告は,甲6契約及び甲7契約に基づいて,被告の支払済みの分を超えて請求する権利を有しないものというべきである。甲6契約及び甲7契約に基づく原告の請求は,理由がない。 第5 結論以上によると,争点3, 契約及び甲7契約に基づいて,被告の支払済みの分を超えて請求する権利を有しないものというべきである。甲6契約及び甲7契約に基づく原告の請求は,理由がない。 第5 結論以上によると,争点3,4を判断するまでもなく,原告の請求は,2100万円及びこれに対する平成21年7月24日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 -16- 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 髙松宏之 裁判官 松阿彌隆 裁判官林啓治郎は差し支えのため署名押印することができない。 裁判長裁判官 髙松宏之-17-(別紙)業務一覧表 1 面談打合せ (表中の名大は名古屋大学を指す)業務日業務内容面談場所対象業務業務概要甲6契約甲7①合意甲7②合意H19/09/06P1打合せ東大白金○ 名大からセンターへの技術移転等打合せH19/09/28P1打合せ東京品川○ 7①合意甲7②合意H19/09/06P1打合せ東大白金○ 名大からセンターへの技術移転等打合せH19/09/28P1打合せ東京品川○ 同上に加え、契約諸条件の打合せH19/10/04被告代表者打合せ東大白金○ 細胞技術者の照会等H19/10/31P1打合せ東京品川○ 名大からセンターへのドクター派遣打合せH19/11/17被告代表者打合せ大阪○ センターの運用フロー打合せH19/12/02被告代表者打合せ大阪○ 同上H19/12/18P1打合せ東京品川○ 名大からセンターへの技術移転等打合せH20/01/18TES 社長打合せ東京三越○ TES 保有の権利譲渡交渉等H20/01/21TES 社長打合せ東京愛宕○ 同上H20/01/23P1打合せ東京愛宕○ TES 保有の権利譲渡交渉等H20/02/14P1打合せ東大本郷○ 同上H20/02/22TES 社長打合せ東京品川○ 同上H20/02/25TES 社長打合せ東京新橋○ 同上H20/02/26TES 社長打合せ東京品川○ 同上H20/02/28被告代表者打合せ東京品川○ 特許関係の打合せ等H20/03/06P1打合せ名古屋大○ 名大からセンターへのドクター派遣打合せH20/03/0 代表者打合せ東京品川○ 特許関係の打合せ等H20/03/06P1打合せ名古屋大○ 名大からセンターへのドクター派遣打合せH20/03/09被告代表者打合せ名古屋○ 広報打合せ等H20/03/13被告代表者打合せ名古屋○ 国内事業パートナー紹介等H20/03/17P1打合せ東京品川○ 患者紹介打合せ等H20/03/20TES 社長打東京愛○ TES 保有の権利譲渡交渉等-18-合せ宕H20/03/24被告代表者打合せ大阪○ 海外事業パートナー紹介等H20/03/26TES 社長打合せ東京京橋○ TES 保有の権利譲渡交渉等H20/04/08被告代表者打合せ大阪○○ 被告代表者弁護士同席にて特許関係打合せH20/04/15P1打合せ東京品川○ 技術研修打合せ等H20/04/15被告代表者打合せ大阪○○ センター及び敬晴会の運用改善打合せ等H20/04/23被告代表者打合せ大阪○○ クリニックスタッフ同席にて運用打合せH20/04/24P1打合せ名古屋大○ TV 取材打合せ等H20/05/08被告代表者打合せ東京品川○○ センター及び敬晴会の運用改善打合せ等H20/05/17被告代表者打合せ大阪○○ 国内事業パートナー紹介H20/05/19P1打合せ東京品川○ TV 取材打 の運用改善打合せ等H20/05/17被告代表者打合せ大阪○○ 国内事業パートナー紹介H20/05/19P1打合せ東京品川○ TV 取材打合せ等H20/05/19被告代表者打合せ大阪○○ 国内事業パートナー紹介H20/05/22被告代表者打合せ東京品川○○ センター及び敬晴会の運用改善打合せ等H20/05/25被告代表者打合せ大阪○○ 同上H20/05/28P1打合せ名古屋大○ 広報戦略打合せH20/05/29被告代表者打合せ東京港区○○ 国内事業パートナー紹介等H20/06/04被告代表者打合せ大阪○○ 同上H20/06/05被告代表者打合せ東京品川○○ センター及び敬晴会の運用改善打合せ等H20/06/06被告代表者打合せ東京品川○○ 同上H20/06/09P1打合せ東京銀座○ 特許関係打合せ等H20/06/13P1打合せ名古屋大○ 同上H20/06/19被告代表者打合せ大阪○○ クリニックスタッフ同席にて運用打合せH20/06/20P1打合せ名古屋大○ 患者紹介打合せ等H20/06/21TES 社長打合せ東京愛宕○ TES 保有の権利譲渡交渉等-19-H20/06/26被告代表者打合せ東京品川○○ 特許関係打合せ等H20/07/08被告代表者打合せ名 TES 保有の権利譲渡交渉等-19-H20/06/26被告代表者打合せ東京品川○○ 特許関係打合せ等H20/07/08被告代表者打合せ名古屋○○○クリニックスタッフ同席にて運用打合せH20/07/11P1打合せ名古屋大○ 患者紹介打合せ等H20/07/22被告代表者打合せ大阪○○○クリニックスタッフ同席にて運用打合せH20/07/24P1打合せ東京品川○ ○海外展開打合せ等H20/07/30P1打合せ東京銀座○ 患者紹介打合せ等H20/08/03被告代表者打合せ大阪○○ 国内事業パートナー紹介等H20/08/29被告代表者打合せ大阪○○ 同上H20/09/02P1打合せ東京品川○ ○海外展開打合せ等H20/09/06P1打合せ東京品川○ ○同上H20/09/10P1打合せ名古屋大○ 広報戦略打合せH20/09/10被告代表者打合せ大阪○○ 同上H20/09/23P1打合せ東京品川○ ○海外展開打合せ等H20/10/03P1打合せ東京品川○ ○同上H20/10/27被告代表者打合せ大阪○○ センター及び敬晴会の運用改善打合せ等H20/11/08P1打合せ東京品川○ 患者紹介打合せ等H20/11/20P1打合せ東京品川○ ○海外展開打合せ等 の運用改善打合せ等 H20/11/08 打合せ 東京品川 患者紹介打合せ等 H20/11/20 打合せ 東京品川 海外展開打合せ等 H20/12/12 打合せ 東京品川 事業スキーム見直し打合せ等 H20/12/21 被告代表者打合せ 大阪 同上 H21/01/15 打合せ 東京駅 同上 H21/01/30 被告代表者打合せ 名古屋 海外事業パートナー紹介 2 電子メールによるもの 業務日 業務内容 面談場所 対象業務 業務概要 甲6契約 甲7①合意 甲7②合意 H21/08/31 メールによる業務報告 メール内容のとおり H21/10/17 同上 同上 H21/12/11 同上 同上 H22/01/10 同上 同上 H22/02/15 同上 同上 H22/07/27 同上 同上 H23/03/17 同上 同上 H23/08/14 同上 同上 H24/04/26 同上
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