令和3(ワ)1053 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年1月25日 名古屋地方裁判所
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判決文本文5,400 文字)

- 1 -令和4年1月25日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官令和3年(ワ)第1053号 損害賠償請求事件口頭弁論終結日 令和3年11月29日判 決(当事者の表示 省略 )5主 文1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実第1 当事者の求めた裁判101 請求の趣旨(1) 被告らは,原告に対し,連帯して500万円及びこれに対する令和3年5月16日(被告Aについては同月29日,被告Bについては同年8月5日)から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 (2) 訴訟費用は被告らの負担とする。 15(3) 仮執行宣言2 請求の趣旨に対する答弁主文同旨第2 当事者の主張1 請求原因20(1) 当事者ア 被告Cは,政治資金規正法上の政治団体であり,権利能力のない社団である。 イ 被告D(以下「被告D」という。)は,被告Cの代表者である。 ウ 被告A(以下「被告A」という。)は,被告Cの会計責任者である。 25エ 被告B(以下「被告B」という。)は,被告Cの副事務長である。 - 2 -オ 原告は,被告Cの会員である。 (2) 寄附原告は,令和2年6月15日,被告Cに対し,10万円を寄附した(以下,この寄附金を「本件寄附金」という。)。 (3) 不法行為5ア 被告A及び被告Bは,原告に無断で,少なくとも令和2年10月22日から同月24日までの間,佐賀県青年会館において,アルバイトを募って,名義人に同意を得ることなくその氏名を署名して他人名義の書面を作成させた(以下「本件不法行為①」という。)。 イ 被告A及び被告Bは,原告に無断で,少なくとも令和2年1 おいて,アルバイトを募って,名義人に同意を得ることなくその氏名を署名して他人名義の書面を作成させた(以下「本件不法行為①」という。)。 イ 被告A及び被告Bは,原告に無断で,少なくとも令和2年11月1日か10ら同月3日までの間,被告Cの本部事務所及びKKRホテル名古屋において,E,F,G及びHに指示して,収集した署名簿を基に,署名者に同意を得ることなく,また代筆の要件を満たさないにもかかわらず,その氏名を署名して他人名義の書面を作成させた(以下「本件不法行為②」という。)。 ウ 被告A及び被告Bは,本件寄附金を本件不法行為①及び②をすることに15充てた(以下「本件不法行為③」という。)。 (4) 債務引受被告Dは,令和3年2月4日,記者会見において,「あっ,僕も証言します。 事務局長はすごく悪く言われてますけど,あの,そんなことを僕が許すわけもありませんし,言うわけもありません。あの,で,僕も,1000歩譲っ20て,もし,そうだったと仮定したって100%僕の責任に戻る,任命した僕が責任を取るわけですから,僕がそれを進めるわけがありません。」と述べて,被告A及び被告Bの損害賠償債務について併存的債務引受をした。 (5) 損害原告は,本件不法行為①から③までによって,政治団体の構成員としての25アイデンティティを侵害され,次のとおり損害を被った。 - 3 -ア 本件寄附金 10万円イ ボランティア活動の日当 40万円原告は,令和2年6月15日から同年11月8日までの間,少なくとも40日間,1日中署名活動を行った。その日当は1日当たり1万円を下らない。 5ウ 慰謝料 400万円原告は,真摯にリコール運動を展開し,事務局にも種々の助言や手助けをするな 0日間,1日中署名活動を行った。その日当は1日当たり1万円を下らない。 5ウ 慰謝料 400万円原告は,真摯にリコール運動を展開し,事務局にも種々の助言や手助けをするなど精力的に活動してきた。しかしながら,結果として,不正署名問題に巻き込まれる形となり,請求代表者の一人として,民主主義の根幹を冒涜する行動をしたものとみられ,「不正署名を行った請求代表者」のレ10ッテルを張られるとともに,真にリコールを完遂させたいという思いを踏みにじられた。 また,原告が頭を下げて署名をしてもらった者からも,「原告もグルだったのではないか,自分たち(署名者)が署名したのも不正署名とみられているのではないか。」などと責められ,非常に心苦しい毎日を過ごしている。 15これにより原告が被った精神的苦痛を慰謝するための慰謝料は,400万円を下らない。 エ 弁護士費用 50万円原告は,本件訴訟を追行するため,弁護士への委任を余儀なくされた。 (6) よって,原告は,被告らに対し,被告Cについては民法715条1項に基20づき,その余の被告らについては不法行為に基づき,連帯して損害賠償金500万円及びこれに対する不法行為の後の日(訴状送達の日の翌日)である令和3年5月16日(被告Aについては同月29日,被告Bについては同年8月5日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める。 252 請求原因に対する認否 - 4 -(1) 被告C及び被告Dア 請求原因(1)は知らない又は否認する。 イ 請求原因(2)は認める。 ウ 請求原因(3)は知らない又は否認する。 エ 請求原因(4)は争う。 5オ 請求原因(5)は争う。 (2) 被告Aア 請求原因(1 い又は否認する。 イ 請求原因(2)は認める。 ウ 請求原因(3)は知らない又は否認する。 エ 請求原因(4)は争う。 5オ 請求原因(5)は争う。 (2) 被告Aア 請求原因(1)は認める。 イ 請求原因(2)は知らない。 ウ 請求原因(5)は争う。 10原告の主張する被侵害利益は,「グルだとみられる」,「レッテルを張られる」ことにより心苦しい思いをしているという,正に単なる心情,不快感をいうものであり,不法行為の要件としての権利侵害に当たらない。「政治団体の構成員としてのアイデンティティ」を侵害されたという主張も,原告自身の政治活動の自由に何らかの干渉,圧迫が及んでいるというもので15はなく,単に,リコールに向けた思いを踏みにじられる結果となったなどという心情,不快感をいうものにすぎない。 (3) 被告Bア 請求原因(1)のうちエは認め,その余は知らない又は否認する。 イ 請求原因(2)は知らない。 20ウ 請求原因(5)は争う。 原告の主張する被侵害利益は,独立した請求代表者である原告が「巻き込まれた」と感じたこと,「グルだったのではないかと疑われた」ことというものであり,一部の署名者,支援者から真実に反する疑いを不当にかけられたという事実上の不利益にとどまる。 25理 由 - 5 -1 本件不法行為①及び②について(1) 地方自治法の定めア 地方自治法81条1項は,選挙権を有する者は,その総数の3分の1(その総数が80万を超える場合にあっては,その80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の15を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもって,その代表者から,普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し 数に8分の1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の15を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもって,その代表者から,普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し,当該普通地方公共団体の長の解職の請求(以下,単に「解職請求」という。)をすることができる旨規定する。 イ 地方自治法81条2項において準用する74条の4第2項は,解職請求10の請求者の署名を偽造した者は,3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する旨規定する。 地方自治法81条2項において準用する74条の4第3項は,解職請求の請求者の署名に関し,選挙権を有する者の委任を受けずに又は選挙権を有する者が心身の故障その他の事由により請求者の署名簿に署名するこ15とができないときでないのに,氏名代筆者として請求者の氏名を請求者の署名簿に記載した者は,3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する旨規定する。 (2) 普通地方公共団体の長の解職請求の制度(以下,単に「解職請求制度」という。)を含む直接請求制度は,間接民主主義の欠陥を補強し,住民自治の徹20底を期するため,直接民主主義の原理に基づく直接請求の権利を住民の基本的な権利として認めているものである。解職請求の請求者の署名を偽造したり,氏名代筆の要件を欠くのに氏名を代筆したりする行為は,このように重要な意義を有する解職請求制度の公正さを損なうものであることから,地方自治法は,前記(1)イのとおり,上記の行為について刑事罰を定めているもの25と解される。すなわち,地方自治法81条2項において準用する74条の4 - 6 -第2項,3項は,解職請求制度の公正さを確保することを目的とする規定であり,個々の住民の権利利益を保護することを目的とする規定で わち,地方自治法81条2項において準用する74条の4 - 6 -第2項,3項は,解職請求制度の公正さを確保することを目的とする規定であり,個々の住民の権利利益を保護することを目的とする規定ではないものと解するのが相当である。 そうすると,仮に,原告が主張するとおり,被告A及び被告Bが本件不法行為①及び②をしたとしても,これによって原告の権利又は法律上保護され5る利益が侵害されたものと直ちにいうことはできない。そして,証拠(甲6,8)及び弁論の全趣旨によれば,被告Cの役員又は職員が本件不法行為①及び②のような署名の偽造等をしたといわれていることにより,被告Cの会員である原告が不快感,不安感等を覚えている事実が認められるものの,これをもって原告の権利又は法律上保護される利益が侵害されたものということ10はできず,ほかに本件不法行為①及び②によって原告の権利又は法律上保護される利益が侵害された事実を認めるに足りる証拠はない。 これに対して,原告は,本件不法行為①及び②によって政治団体の構成員としてのアイデンティティを侵害された旨主張するが,その意味するところが上記のような不快感,不安感等を超えて法律上保護される利益に当たるも15のとはいい難い。 2 本件不法行為③について原告は,被告A及び被告Bは,本件寄附金を本件不法行為①及び②をすることに充てたとして,これが原告に対する不法行為を構成する旨主張する。 確かに,証拠(甲1から4まで,8)及び弁論の全趣旨によれば,被告Cは,20I愛知県知事の解職の請求を目指す団体であることを標榜しており,原告自身も,愛知県知事I解職請求代表者証明書の交付を受けたものであって,同知事の解職の請求を目指すという目的で,被告Cに対して10万円を寄附した事実が認められる。そうすると, ことを標榜しており,原告自身も,愛知県知事I解職請求代表者証明書の交付を受けたものであって,同知事の解職の請求を目指すという目的で,被告Cに対して10万円を寄附した事実が認められる。そうすると,原告としては,本件寄附金が同知事の解職の請求のための適法で正当な活動に充てられることを期待していたものと推認される。 25しかしながら,寄附を受けた被告Cの役員又は職員が,当該寄附をした者と - 7 -の関係において,当該寄附金を同人の期待に沿うような使途に充てるべき法的な義務を当然に負うものとは解されない。そうすると,寄附を受けた被告Cの役員又は職員が,当該寄附金を当該寄附をした者の期待に反した使途に充てたからといって,これが同人に対する不法行為を構成するものと直ちにいうことはできない(当該役員又は職員が被告Cとの関係において善管注意義務等を負5うものと解される場合に,その義務の違反を構成することがあり得ることは別論である。)。 そして,ほかに,被告Cの役員又は職員が,寄附をした原告との関係において本件寄附金を原告の期待に沿うような使途に充てるべき法的な義務を負うことを根拠付ける具体的な事実を認めるに足りる証拠はない。 10したがって,仮に,原告が主張するとおり,被告A及び被告Bが本件不法行為③をしたとしても,これが原告に対する不法行為を構成するものとはいえない。 3 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担について民訴法1561条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第7部 20裁判長裁判官 齋 藤 毅 て,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第7部 20裁判長裁判官 齋 藤 毅 裁判官 三 嶋 朋 典25 - 8 - 裁判官 白 鳥 葵

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