- 1 -平成27年10月13日判決言渡平成27年(行コ)第2号会場使用許可処分義務付等,会場使用許可処分の義務付け等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成24年(行ウ)第164号(第1事件),平成25年(行ウ)第156号(第2事件)) 主文 1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 2 上記部分につき,被控訴人の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審を通じて被控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨主文と同旨第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,大阪市の公立小中学校等に勤務する教職員によって組織された職員団体である被控訴人が,主催する教育研究集会(以下「教研集会」という。)の会場として,①平成24年に大阪市教育委員会(以下「市教委」という。)及び大阪市立P1小学校(以下「P1小学校」という。)校長に対し,②平成25年に市教委及び大阪市立P2小学校(以下「P2小学校」といい,P1小学校と併せて「本件各小学校」という。)校長に対し,本件各小学校の施設の目的外使用許可の申請をしたところ,各校長が,①について平成24年8月7日付けで,②について平成25年7月8日付けで,いずれも不許可処分(以下,に関する不許可処分を「平成24年度不許可処分」,に関する不許可処分を「平成25年度不許可処分」といい,併せて「本件各不許可処分」という。)をしたことから,控訴人に対し,本件各不許可処分の無効確認を求めるとともに,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償金621万7658円及びうち310万9020円に対する平成24年度の教研集会の開催日である同年9月8日 - 2 -から,うち310万8638円に対する平成25年度の教研集会の開催日であ 損害賠償金621万7658円及びうち310万9020円に対する平成24年度の教研集会の開催日である同年9月8日 - 2 -から,うち310万8638円に対する平成25年度の教研集会の開催日である同年9月14日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である(原審第1事件は平成24年度不許可処分,原審第2事件は平成25年度不許可処分にそれぞれ関するものである。)。 原審は,本件各不許可処分の無効確認請求の訴えにつき,いずれもこれを不適法として却下し,国家賠償請求につき,41万7658円及びうち20万9020円に対する平成24年9月8日から,うち20万8638円に対する平成25年9月14日から各支払済みまで年5分の割合による金員の支払を命じ,その余の請求を棄却するとの判決をした。控訴人は,国家賠償請求の一部認容部分につき,これを不服として控訴した。したがって,当審における審判の対象は,被控訴人の本訴請求のうち国家賠償請求に関する原判決の当否である。 2 前提事実等(当事者間に争いがないか,掲記の証拠により容易に認められる事実等)次のとおり補正するほかは,原判決4頁2行目から10頁9行目まで(同別紙を含む。)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決4頁12行目の「23条1号」を「21条1号」に,15行目の「23条2号」を「21条2号」に,17行目の「26条1項」を「25条1 項」に,18行目の「同条3項」を「同条4項」にそれぞれ改める。 (2) 同5頁23行目末尾の次に,改行して次のとおり付加する。 「 第2条(定義)この条例において「労働組合等」とは,地方公務員法(昭和25年法律第261号)第52条第1項に規定する職員団体及び地方公営企業等の労働関係に関 のとおり付加する。 「 第2条(定義)この条例において「労働組合等」とは,地方公務員法(昭和25年法律第261号)第52条第1項に規定する職員団体及び地方公営企業等の労働関係に関する法律(昭和27年法律第289号)第5条第2項(同法附則第5項において準用する場合を含む。)に規定する労働組合並びにこれらの連合体であって,本市の職員(地方公務員法第3条第2項に規定する - 3 -一般職に属する職員をいう。)をその構成員に含むものをいう。」 3 争点及び争点に対する当事者の主張次のとおり補正し,後記4に当審における当事者の補充主張を付加するほかは,原判決11頁14行目から18頁13行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決11頁14行目の「(2)」を「(1)」に改める。 (2) 同14頁17行目の「25条」を「24条」に改める。 (3) 同16頁16行目の「(3)」を「(2)」に,同17頁17行目の「(4)」を「(3)」にそれぞれ改める。 4 当審における当事者の補充主張(控訴人の補充主張)(1) 本件各不許可処分の違法性についてア原判決は,控訴人代表者市長P3(以下「市長」という。)が労働組合等の団結権等の侵害の認識や意図を有しており,このような認識や意図のもとに本件条例が制定されたものであることを前提に,本件条例12条のみを理由とする本件各不許可処分が明らかに合理性を欠くとする。 しかし,以下のとおり,市長にそのような認識や意図が存在するとの認定は誤りである。 (ア) 本件条例の制定は,控訴人において長年にわたり続いてきた不適正又は不健全な労使関係を抜本的に改めるために行われたものであって,その目的は,適正かつ健全な労使関係を確立することであり,労働組合等の 本件条例の制定は,控訴人において長年にわたり続いてきた不適正又は不健全な労使関係を抜本的に改めるために行われたものであって,その目的は,適正かつ健全な労使関係を確立することであり,労働組合等の団結権等の侵害の目的や意図はない。そして,本件条例は,これまで何度も取り組み失敗してきた労使関係の適正化又は健全化のために最低限必要な手段であることは明らかである。 (イ) 原判決認定の市長の発言を含めた市長の言動からは,市長の問題意識ないし意図が,労働組合等の団結権等の侵害ではなく,その維持管理 - 4 -に公金が投入されている市庁舎において特定の団体や人物を応援するために政治的活動を行うことが市民感覚から見て不適正であることを前提に,控訴人における労使関係若しくは体制の適正化又は健全化や公金の取扱いの適正性の確保の必要性にあることは明らかである。なお,原判決は,市長が,平成24年度は庁舎内の組合事務所の使用を認める意向を表明していたにもかかわらず,市会交通水道委員会において,労働組合等が市長選挙において自己の対立候補を支援する政治活動を行っていたという趣旨の指摘をされるや,直ちに労働組合等に対し庁舎内から退去を求める方針を表明して方針転換したことをもって,市長が労働組合等の団結権等の侵害の認識や意図を有していたことの根拠とするようであるが,市長は,就任の直前に上記の控訴人と労働組合等の極めて不適正な関係が判明したことから,市の労使関係がそのような状況にあるのであれば,従来法的に認められないと評価される可能性のあった平成24年度における便宜供与の打ち切りであっても法的に認められると判断して,上記のとおりの方針を表明したのであるから,何ら不合理なものではない。 (ウ) 市長に労働組合等の団結権等の侵害の意図がないことは,本件条例制 供与の打ち切りであっても法的に認められると判断して,上記のとおりの方針を表明したのであるから,何ら不合理なものではない。 (ウ) 市長に労働組合等の団結権等の侵害の意図がないことは,本件条例制定以降における控訴人と労働組合等との勤務労働条件等についての交渉経過からも裏付けられる。また,控訴人が行う市施設の各種使用許可についても,市民の貴重な財産であることを強く意識し,その有効活用が最大限に図られるよう見直しを行っており,使用許可を継続すべきでない事案については,各団体の性質にかかわらず,不許可処分を行っている。本件各不許可処分(本件条例の制定)についても,これら一連の取組みと同列に位置付けられるものであり,労働組合等の団結権侵害とは関係がない。 イ仮に市長に本件条例案を市会に上程した動機において職員らの団結権等 - 5 -侵害の認識や意図があったとしても,本件条例は,市会の民主的手続により有効・適法に制定されたのであるから,条例自体が違憲ないし違法であるというのであればともかく,そうでない以上,条例は住民はもとより市に対しても法的拘束力を持つから,条例の明文の規定に従ってなされた本件各不許可処分の違法性を判断するに当たって,本件条例12条の存在を考慮すべきでない要素とすることは不当である。市長の認識や意図により本件各不許可処分を違法とすることは,市長の指示によることと市会において民主的手続により制定された条例の規定によることを混同した判断である。 ウ原判決は,「本件条例12条は,少なくとも同条例が適用されなければ違法とされる控訴人の処分(便宜供与の不許可処分)を適法化するために適用される限りにおいて,職員団体の団結権等を違法に侵害するものとして憲法28条に違反して無効というべきであるから,本件各不許可処分の違法性を判 訴人の処分(便宜供与の不許可処分)を適法化するために適用される限りにおいて,職員団体の団結権等を違法に侵害するものとして憲法28条に違反して無効というべきであるから,本件各不許可処分の違法性を判断するに当たっては,独立した適法化事由とはならないというべきである。」とする。 しかし,本件条例12条の存在やその内容については,本件各不許可処分を行った両校長の判断において判断要素の選択や判断過程に合理性を欠く点はなく,また,重要な事実の基礎を欠くわけではない。むしろ,本件条例12条の存在やその内容は重要な事実の基礎であり,判断要素として欠くべからざるものであって,本件条例12条により不許可としたことは両校長の判断として何ら合理性を欠くものではない。そして,被控訴人は,本件各小学校を利用できなかったものの,平成24年度及び平成25年度のいずれも同一の本件代替施設で教研集会を行っていることからみて,本件各不許可処分による不利益も大きなものとはいえない。以上によれば,原判決が挙げるその他の事情(教研集会の意義,学校教育上支障のないこと,被控訴人の自主性を阻害しないこと)を考慮しても,正当かつ有効に存在する本件条例12条のもとでは,労働組合への便宜供与としてなされる学校施設の利用を不 - 6 -許可としたことは社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとはいえない。 なお,原判決は,「学校施設を教研集会の会場として使用したことによって学校教育上の支障が生じたことはなかったことが認められる」とし,また,第三者調査チームの調査報告書で学校施設の目的外使用について何ら触れられていないし,「本件全証拠を検討してみても,本件各不許可処分がなされた時点において,控訴人と被控訴人との関係が不適正又は不健全な労使関係にあったことや,学校施設を教研集会の会 用について何ら触れられていないし,「本件全証拠を検討してみても,本件各不許可処分がなされた時点において,控訴人と被控訴人との関係が不適正又は不健全な労使関係にあったことや,学校施設を教研集会の会場として使用することが被控訴人の自主性を阻害していることを窺わせるような証拠も見出せない。」とする。しかし,第三者調査チーム作成の調査報告書には,教育委員会のアンケート調査によると,校園長・教頭のうち,所属の教職員が,勤務時間中に電話で組合活動に関する連絡をしているのを見た(聞いた)ことがある者27名,メールで同様の行為をしているのを見た(聞いた)ことがある者1名,勤務時間中に組合活動に関するビラや機関誌等を配っているのを見た(聞いた)ことがある者63名,勤務時間中に組合活動に関して無許可で校内の教室等を使用しているのを見た(聞いた)者8名とし,人事異動について,「組合に異動対象者について,協議・説明・意見聴取し,異動が確定した者の報告を通常のルールより早い段階で行」ったり,「組合役員を務める部下役員に相談・意見聴取」したりする例などがあるとの記載がある。これらの事実から,学校現場においても不適正又は不健全な労使関係が蔓延しており,教研集会を含む学校施設の使用も,その一環として行われていることが裏付けられ,それは労働組合等の自主性を阻害する要素と評価されるべきである。 (2) 両校長の過失の有無についてア条例は,地方自治法の定めるところに従い,議会の議決により成立することからすれば,適法であるのが前提であり,その条例に従った処分も適法と推定される。また,公務員は条例に従う義務があり(地方公務員法32条),条例に反すれば懲戒処分の対象となる。このような事情のもとで - 7 -一般の公務員が条例に従った処分をする際にその条例が違法であ れる。また,公務員は条例に従う義務があり(地方公務員法32条),条例に反すれば懲戒処分の対象となる。このような事情のもとで - 7 -一般の公務員が条例に従った処分をする際にその条例が違法であるかもしれないとか,条例に従った処分をすると違法であるかもしれないという検討を常にしなければならないという注意義務を負うとすることは現実離れしている。しかも,条例そのものが違法でない場合であっても,その条例に従った処分をすることが不適法になる可能性を考慮して,その処分が適法か否かを検討しなければならないとすることは極めて高度の注意義務を課すものである。校長は,法律の専門家ではなく,法的知識は一般の市民と同程度であるから,そのような注意義務を果たすことは不可能である。 イある事項に関する法律解釈について異なる見解があり,公務員がそのうちの一つに立脚して公務を遂行した場合において,後にその遂行が違法と判断されたからといって直ちに当該公務員に過失があったとはされないのが確立した判例法理である。公務員には法令遵守義務があり,条例に従って公務を遂行する義務がある以上,条例が違法であるとの見解があるからといって公務を遂行しなければ,職務を怠ったという非違行為だけでなく,法令遵守義務違反という非違行為にも該当する。したがって,公務員にとって,条例に基づいて公務を遂行することが一見極めて明白に違法である場合でない限り,法律解釈について異なる見解があったとしても,当該公務員が条例に基づき公務を遂行するに当たって過失があったとはいえないと解すべきである。原判決は,一見極めて明白に違法である場合に限らず,公務員に違法の可能性の認識があれば過失が認められるとの判断基準を採用していると考えられるが,それでは公務員の過失が認定される範囲が極めて広範になりかねず, 一見極めて明白に違法である場合に限らず,公務員に違法の可能性の認識があれば過失が認められるとの判断基準を採用していると考えられるが,それでは公務員の過失が認定される範囲が極めて広範になりかねず,結果責任を問うに等しいことになる。 ウ(ア) 原判決は,両校長が職務上尽くすべき注意義務を尽くしていれば,当然に被控訴人の団結権等を違法に侵害することを認識し得たと判示するが,仮に市長が職員の団結権等を侵害する意図を有していたとしても,何故そのことから,本件各不許可処分が当然に被控訴人の団結権等を違 - 8 -法に侵害することを両校長において認識し得たというのか,その論理構成が不明である。 (イ) 原判決は,本件条例制定に至る主な経緯は,マスコミ等で広く報道されたものであり,両校長も容易に知り得たと判示するが,本件条例制定の経緯についてのマスコミ報道の具体的な内容等は証拠上明らかにされていない上,新聞記事には本件条例が適法であるとの見解も示されており,法的知識が豊富でない校長が本件条例の違法性を認識するのが当然であるというほど明確に本件条例の違法性を指摘した報道はされていない。 (ウ) 原判決は,本件条例12条が労働組合等の団結権等を侵害するおそれがないかについて,控訴人内部で検討されず,また,本件条例12条が上記団結権等を違法に侵害しない旨の公権的な解釈等が示されたとも認められないと判示するが,控訴人内部で条例の違法性を検討していないことや公権的な解釈が示されていないことは,むしろ両校長が本件条例又は本件条例を適用した処分の違法性を検討する必要性を認識し得なかった理由というべきである。 (エ) 市教委は,本件条例及び同条例施行規則の施行に伴い,本件審査基準を改正した上で,各学校長等に,平成24年7月30日付け及び同年8月1 日 る必要性を認識し得なかった理由というべきである。 (エ) 市教委は,本件条例及び同条例施行規則の施行に伴い,本件審査基準を改正した上で,各学校長等に,平成24年7月30日付け及び同年8月1 日付けの各通知(本件各通知)をしていたところ,原判決は,このような通知が発出されていても,両校長が本件条例の違法性を認識し得たのであり,本件条例,本件審査基準及び本件各通知に反して本件各不許可処分をしてはならないとするが,およそ現実的ではない。 エ以上によれば,両校長に過失は認められない。 (被控訴人の補充主張)(1) 本件各不許可処分の違法性についてア原判決認定のとおり,市長の発言には随所にあからさまな組合敵視,徹 - 9 -底排除の姿勢が現れており,到底団結権侵害の認識ないし意図を否定できるものではない。 控訴人は,市長が「公の施設は税金によって支えられている」という正当な方針を有していたと主張するが,この点は他の団体と同様に使用に当たっての減免率などの経済的条件を調整すればよいだけのことである。さらに学校施設のように他の団体も無償で使用している場合に,労働組合だけを完全排除することを正当化する合理的理由は示されていない。 本件各不許可処分は,市政改革の一連の取組みの一つであり,各団体の性質(例えば,労働組合等であることなど)にかかわらず,行政財産の使用不許可処分をしているから,団結権侵害と無関係であるとの控訴人の主張は,憲法28条を全く理解せず,団結権を無視して判断したことを自認するものである。控訴人が挙げる行政財産の使用不許可処分の例は,客観的にやむを得ない理由が存在していると考えられ,本件とは事案を異にするものである。 イ市長は,自ら策定した本件条例12条案が市会で制定され施行されることを意欲していたのであり, 処分の例は,客観的にやむを得ない理由が存在していると考えられ,本件とは事案を異にするものである。 イ市長は,自ら策定した本件条例12条案が市会で制定され施行されることを意欲していたのであり,当時の市会を構成する議員団の状況等によれば,市長提案の条例内容が多数派の賛成を得て可決成立する現実的可能性が濃厚であり,実際に提案どおりの条例が可決成立したのであるから,本件条例制定に至る経過は,不当労働行為の意欲意思をもった市長の企図が実現したという因果の経過を示すものにほかならない。 ウ本件条例12条自体が憲法28条又は14条違反により無効であるから,本件条例12条のみを考慮してなされた本件各不許可処分は,考慮すべきでないことを考慮したものである。 また,両校長は,本件各不許可処分に当たり,本件条例12条の存在と申請者が職員団体である被控訴人であることのみを考慮し,その他の要素を全く考慮しなかったのであるから,その判断要素の選択を誤って考慮す - 10 -べき事項を考慮しなかったのであり,その判断過程に合理性はない。 控訴人が援用する第三者調査チームの調査報告書については,具体的に認定し得た違法行為は皆無であり,本件条例12条のような広汎かつ峻厳な使用規制をすべきとの提言をしておらず,また,本件条例制定の担当者には便宜供与に関して正常な労使関係を逸脱したとまでの認識はなかったというのであるから,本件条例12条の規制の必要性を根拠付け得ないことは明らかである。さらに,控訴人主張の不適切事例は,うわさ話の類であるし,教研集会に関するものでもないから,本件各不許可処分をするに当たって考慮すべき事項とはいえない。 (2) 両校長の過失の有無についてア(ア) 控訴人の主張によれば,どのような違憲,違法な処分であっても,適法な手続のも ないから,本件各不許可処分をするに当たって考慮すべき事項とはいえない。 (2) 両校長の過失の有無についてア(ア) 控訴人の主張によれば,どのような違憲,違法な処分であっても,適法な手続のもとで成立した条例が存在するという形式的な理由だけで,条例及び条例に基づく行政処分の憲法や法令への適合性の検討審査が不要となり,憲法を最高規範とする法秩序が保てなくなる。また,控訴人の主張は,本件条例12条の適用範囲が一義的に明確でかつ適法であることを前提とする点においても不当である。 また,原判決の判示する職務上の注意義務は,具体的状況下における両校長の判断態度を前提とした規範的判断であって,控訴人の主張するような一般の公務員が条例に従った処分をする際にその条例が違法であるかもしれないとか,条例に従った処分をすると違法であるかもしれないという検討を常にしなければならない注意義務があるという判断をしているわけではない。 (イ) 教研集会の意義やその実施が学校教育上支障がないこと,被控訴人の自主性を阻害しないこと,従前学校施設の利用を許可していたことによって控訴人と被控訴人との関係が不適正又は不健全な労使関係に至ったかどうかの検討は,専門的な法的知識がなければ困難なことではない。 - 11 -また,本件条例12条の制定前には,教研集会について学校施設の利用を許可することは何の問題もないと認識されていたこと,両校長は,従前からの学校施設の利用状況を十分に知っており,本件条例12条の制定前後を通して教研集会と同様の意義・目的が認められる集会に学校施設の利用が許可されていることによれば,本件条例12条が学校施設の利用の場面において労働組合等という申請者の特質を根拠に不合理な差別を行っていることは,両校長自身が認識するところであるといえる 校施設の利用が許可されていることによれば,本件条例12条が学校施設の利用の場面において労働組合等という申請者の特質を根拠に不合理な差別を行っていることは,両校長自身が認識するところであるといえる。 そして,その認識は憲法28条の保障する団結権等の侵害の認識であるから,これも専門的な法的知識がなければ判断が困難であるものではない。さらに両校長の注意義務は,客観化された学校施設の利用を許可する権限と責務を有する処分行政庁としての平均的公務員を前提とするのであり,実際に権限行使をした両校長の能力を前提とするものではない。 したがって,両校長は,法律の専門家ではないものの,学校施設の利用許可についての法的知識が一般市民と同程度であるなどとはいえないし,原判決の示す注意義務を果たすことが不可能などと評価することはできない。 イ控訴人の一見極めて明白に違法である場合に限って過失を認めるべきであるとの主張は,控訴人の独自の見解にすぎない。原判決は,いわゆる職務行為基準説を採用した上で,違法と過失の二元的判断を行っているものであり,処分行政庁における平均的公務員を基準とすれば,違法であることを認識し得る状況にあったことから,両校長の過失を認定したに過ぎない。 ウ(ア) 両校長は,本件条例の施行前後で被控訴人による学校施設の利用を許可するか不許可とするかの処分が正反対に変わることを認識しており,その正反対の処分の根拠が,申請者が労働組合等であることに存することは十分に認識していたから,両校長において本件各不許可処分が被控 - 12 -訴人の団結権等を侵害することを認識し得たとの結論になることは明らかである。 (イ) 本件条例が,選挙の際に同選挙に立候補した前市長を一部の労働組合等が応援したことを契機として,市長の扇動のもとに労働組合等を敵 を侵害することを認識し得たとの結論になることは明らかである。 (イ) 本件条例が,選挙の際に同選挙に立候補した前市長を一部の労働組合等が応援したことを契機として,市長の扇動のもとに労働組合等を敵視して,市長と同じ政党に所属し,市会の多数を握る会派を中心に制定されたことは,マスコミ報道によって明らかであって,公知の事実である。 (ウ) 両校長は,上記ア(イ)のとおり,本件各不許可処分による不合理な差別を認識しており,本件条例12条又は同条を適用した処分の違法性を検討する必要性を認識していたから,控訴人内部で本件条例12条の違法性を検討していないことや同条が団結権等を違法に侵害しない旨の公権的な解釈等が示されていない状況下では,自ら認識した不合理な差別という問題について調査検討すべき立場にあった。 (エ) 市教委の本件各通知は,両校長に対する拘束力を有さないこと,本件各通知は,本件条例12条が団結権等を違法に侵害するおそれについて十分に検討したものではないこと,両校長が調査検討すれば,本件各通知が内部において十分な検討を経たり,公権的解釈に基づいたりするものではないことは容易に明らかになったことからすれば,両校長が本件各不許可処分をするに当たり立脚した一方の見解は相当な根拠に基づくものとは認められず,両校長が本件各通知の見解を正当と解してこれに立脚して公務を遂行したとしても,両校長の過失は否定されない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)について(1) 公立学校施設の目的外使用の許否の判断について地方公共団体の設置する公立学校は,地方自治法244条1項にいう「公の施設」として設けられるものであるが,これを構成する物的要素としての - 13 -学校施設は,同法238条4項にいう行政財産である。したがって,公立学校施設 ,地方自治法244条1項にいう「公の施設」として設けられるものであるが,これを構成する物的要素としての - 13 -学校施設は,同法238条4項にいう行政財産である。したがって,公立学校施設を設置目的である学校教育の目的に使用する場合には,同法244条の規律に服することになるが,これを設置目的外に使用するためには,同法238条の4第7項に基づく許可が必要である。 そして,地方自治法238条の4第7項の上記文言に加え,学校教育法137条,学校施設の確保に関する政令(昭和24年2月1日政令第34号。 以下「学校施設令」という。)1条,3条の各規定によれば,学校施設の目的外使用を許可するか否かは,原則として,管理者の裁量に委ねられているものと解するのが相当である。すなわち,学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが,そのような支障がないからといって当然に許可しなければならないものではなく,行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的,態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできるものである。学校教育上の支障とは,物理的支障に限らず,教育的配慮の観点から,児童,生徒に対し精神的悪影響を与え,学校の教育方針にもとることとなる場合も含まれ,現在の具体的な支障だけでなく,将来における教育上の支障が生ずるおそれが明白に認められる場合も含まれる。また,管理者の裁量判断は,許可申請に係る使用の日時,場所,目的及び態様,使用者の範囲,使用の必要性の程度,許可をするにあたっての支障又は許可をした場合の弊害若しくは影響の内容及び程度,代替施設確保の困難性など許可をしないことによる申請者側の不都合又は影響の内容及び程度等の諸般の事情を総合考慮してされるものであり,その裁量権の行使が逸脱濫用 場合の弊害若しくは影響の内容及び程度,代替施設確保の困難性など許可をしないことによる申請者側の不都合又は影響の内容及び程度等の諸般の事情を総合考慮してされるものであり,その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては,その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で,その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し,その判断が,重要な事実の基礎を欠くか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って,裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべきも - 14 -のと解するのが相当である。 教職員の職員団体は,教職員を構成員とするとはいえ,その勤務条件の維持改善を図ることを目的とするものであって,学校における教育活動を直接目的とするものではないから,職員団体にとって使用の必要性が大きいからといって,管理者において職員団体の活動のためにする学校施設の使用を受忍し,許容しなければならない義務を負うものではないし,使用を許さないことが学校施設につき管理者が有する裁量権の逸脱又は濫用であると認められるような場合を除いては,その使用不許可が違法となるものでもない。また,従前,同一目的での使用許可申請を物理的支障のない限り許可してきたという運用があったとしても,そのことから直ちに,従前と異なる取扱いをすることが裁量権の濫用となるものではない。もっとも,従前の許可の運用は,使用目的の相当性やこれと異なる取扱いの動機の不当性を推認させることがあったり,比例原則ないし平等原則の観点から,裁量権濫用に当たるか否かの判断において考慮すべき要素となったりすることは否定できない(以上,最高裁平成15年(受)第2001号同18年2月7日第三小法廷判決・民集60巻2号401頁参照)。 これに対し,控訴人 るか否かの判断において考慮すべき要素となったりすることは否定できない(以上,最高裁平成15年(受)第2001号同18年2月7日第三小法廷判決・民集60巻2号401頁参照)。 これに対し,控訴人は,本件条例12条により両校長は裁量判断をする余地はなく,労働組合等である被控訴人に対して本件各小学校施設の使用を許可することはできないから,本件各不許可処分は適法であると主張するので,以下検討する。 (2) 認定事実等ア本件条例の制定の経緯証拠(甲94,99ないし101,104,108,109,乙1,4ないし8,14ないし17,証人P4)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) 大阪市においては,平成16年から平成17年にかけて,カラ残業, - 15 -ヤミ年金,ヤミ退職金,ヤミ専従などの職員厚遇問題が表面化し,これを受けて,大阪市福利厚生制度等改革委員会が設置され,時間内組合活動の適正化,本庁舎地下1階における組合本部への便宜供与の見直し,各庁舎における組合支部への便宜供与の見直し,組合との交渉内容の公表,組合に対する本庁舎駐車場の目的外使用の不許可等の各種の改革が行われたが,その後も特に現業部門を中心として労使癒着は十分に解消されず,プール金等の不適正資金問題の発覚,重大事犯の摘発,職場規律の緩み,区役所と地域団体との不透明な関係,違法ないし不適切な政治活動の事象が見られた。 (イ) 平成23年11月27日に実施された控訴人の市長選挙(以下「本件市長選挙」という。)において当選し,同年12月19日に就任した市長は,同月24日に大阪市戦略会議において,労働組合等に対する庁舎内の事務室使用料の減免について,「24年度までは覚書があるのなら,僕は25年度から減免なしということで考えている」と発言した。 市長は,同月24日に大阪市戦略会議において,労働組合等に対する庁舎内の事務室使用料の減免について,「24年度までは覚書があるのなら,僕は25年度から減免なしということで考えている」と発言した。 (ウ) 平成23年12月26日,控訴人の市会交通水道委員会において,P5議員が,控訴人の交通局職員の内部告発に基づくとして,勤務時間中に選挙活動をするためにバス乗務時間の少ない特殊ダイヤによって従事した者がいること,職員の机の引出しに「選挙関係」というラベルが貼られ,その中に選挙活動関係の書類が大量に入れられていること,事業所の公用電話が選挙活動に使用されていることを指摘したのに対し,同局の担当者は,職員2名がバス乗務以外の業務に偏って従事していたこと,組合活動を行うため本来の終業時刻より早く退勤した者がいたことを確認した旨回答した。また,同議員は,同局の本局庁舎内においても,本件市長選挙前に前市長の推薦者カードが勤務時間内に配布され,選挙期間中に候補者を支援する内容の労働組合の新聞が数回にわたり卓上に配布されていると聞き及んでいる旨指摘し,これに対し,同局の担 - 16 -当者は,指摘された事実を調査し,厳正に対処する旨述べた。市長は,同議員から答弁を求められて,次のとおり発言した。 「まず,組合側にはこれまでの考えというか,そういうことをリセットしてもらわなきゃいけないと。今までは組合が推したトップが当選してきたもんですから,それぐらいは許されてきたことがあるんでしょうけれども,僕は一切許しません。一度,組合と今の市役所の体質についてはグレートリセットをして,一から考え直したいというふうに思っています。今まで認められてきた組合活動についても一回リセット。まずは厳格に,まずは認めない方向からどこまで法的に認められるのか,それ てはグレートリセットをして,一から考え直したいというふうに思っています。今まで認められてきた組合活動についても一回リセット。まずは厳格に,まずは認めない方向からどこまで法的に認められるのか,それは法的に認められるとしても,別にそこまで認める必要がないんであれば認めません。組合の事務所も,どうもこの地下にあるんですかね。その家賃については減免ということがあったらしいんですが,それも認めませんし,先ほどの幹部会議で僕は方針を示したんですが,組合の政治活動自体は―これは法的には,特に現業職の場合には政治活動は認められてますけれども,公の施設の中での政治活動というのは―これは公の施設はいろんな政党支持者の人からの納税で支えられている施設なわけですから,そんなところで政治活動なんてするのはあってはならないことである中で,次々といろんな問題が出てきますから,事務所には公のこの施設からまず出ていってもらうというところからスタートしたいと。 ですから,地下の事務所とか,それから交通局にもいろいろ入ってるんですかね,事務所。だから,まずそこから出ていってもらって,まずはそこからスタートかなというふうに思っています。大阪市役所のこの組合問題というのは,もう長年市民の皆さんがいろいろ不満に思っていたところがあるんですが,なかなかやはり組合が推すトップがトップになる以上,市民が考えるようなそういう毅然たるといいますか,厳正なる対処がやり切れなかったところがあると思いますので,これは徹底的に - 17 -やっていきたいと思っています。ただ,職員が本来の組合活動として,勤務労働条件とかそういう労働環境を整えるために使用者側と交渉するとか,これはもう当たり前の権利ですから,それはもう当然認めてですね。」(エ) 平成23年12月28日,市長は, として,勤務労働条件とかそういう労働環境を整えるために使用者側と交渉するとか,これはもう当たり前の権利ですから,それはもう当然認めてですね。」(エ) 平成23年12月28日,市長は,市会定例会の施政方針演説の中で,次の発言をした。 「大阪市役所の組合問題にも執念を燃やして取り組んでいきたいと考えております。大阪市役所の組合の体質はやはりおかしいという風に率直に感じます。この庁舎内で,政治活動をすることは,これは当然許されません。(中略)組合が,この公の施設で,政治的な発言を一言でもするようなことがあれば,これは断じて許せません。(中略)組合を適正化する,ここにも執念を燃やしていきたいと思っております。(中略)大阪市役所のこの組合の体質というものが,今の全国の公務員の組合の体質の象徴だと思っております。ギリシャをみてください。公務員,公務員の組合という者をのさばらしておくと国が破綻してしまいます。ですから,大阪市役所の組合を徹底的に市民感覚にあうように是正,改善していくことによって,日本全国の公務員の組合を改めていく,そのことにしか日本の再生の道はないというふうに思っております。」(オ) 平成23年12月30日,市長は,控訴人の幹部職員に対し,次の電子メールを送信した。 「まず組合適正化を施政方針演説の軸としたことを,幹部は徹底して認識すること。これまでの価値観を変えてもらわなければなりません。(中略)組合適正化制度を作ります。(中略)公の施設内での便宜供与は禁止。賃料をとっている事務所(これも早期に退去を求めます)を除いて,まず公の施設内での組合への便宜供与は全て完全に止めます。(中略)ここはこれまでの価値観を転換し,厳格にルール化します。意見交換, - 18 -協議等もってのほか。法的に認めらている最低 いて,まず公の施設内での組合への便宜供与は全て完全に止めます。(中略)ここはこれまでの価値観を転換し,厳格にルール化します。意見交換, - 18 -協議等もってのほか。法的に認めらている最低限の交渉しか認めません。 以上のルールを破った,所属,職員には厳罰です。」(カ) 平成23年12月31日,市長は,控訴人の幹部職員に対し,次の電子メールを送信した。 「対組合関係適正化条例を制定します。(中略)組合を縛ると不当労働行為となりかねないので,あくまでも市役所組織を縛る条例とします。 (中略)政治活動をする公務員組合に公の税を投入すること(本来徴収すべき金員の減免)は,当該組合の政治的主張と相反する政治的主張を持つ市民の税金を投入することになる。(中略)組合の公の施設内での政治活動厳禁組合に対する便宜供与の厳禁・勤務条件等の一般原則(法律上の義務以外は認めない等)その他,組合との関係を適正化条例案を詰めて,できれば,2月議会で提案したいです。」(キ) 平成24年1月4日,市長は,年頭挨拶において,労働組合等に対するスタンスを適正化する条例を制定する意向を表明した。市長の上記方針を受けて,控訴人の人事室(当時は総務局人事部)において,同月中旬ころから本件条例案の検討が始められた。また,同月12日,控訴人と労働組合等との間の不適切な関係を調査し,内部統制の観点からその改善策を提言することを目的として結成された第三者調査チームによる調査が開始され,同チームは,同年4月2日,「大阪市政における違法行為等に関する調査報告」(以下「本件調査報告」という。)を控訴人に提出した。 本件調査報告においては,大阪市政における違法行為等の背景に労使癒着の構造があり,それが職員団体等の選挙活動に結びつきやすいと指摘し,本件市長選挙における職 告」という。)を控訴人に提出した。 本件調査報告においては,大阪市政における違法行為等の背景に労使癒着の構造があり,それが職員団体等の選挙活動に結びつきやすいと指摘し,本件市長選挙における職員団体等の選挙活動にも触れた上で,上記癒着の構造から脱却し,健全な労使関係を構築するためにヤミ便宜供与等の除去,そして,職員の政治活動に関するグレー・ゾーンを解消す - 19 -るためにルールや仕組みを作ることなどが提言されたが,市本庁舎内の組合事務所における政治活動や労働組合等による学校施設の目的外使用については触れられていなかった。 (ク) 平成24年5月8日,人事室長は,市長に対し,本件条例の条例案の概要を説明し,市長がこれを了解したことから,条例案の条文の具体的検討が開始された。市教委は,同月29日,被控訴人に対し,本件条例案の概要を説明する中で,労働組合等に対する便宜供与は,健全な労使関係が確保されるまで行わないという内容が条例に盛り込まれることを述べた。さらに,市教委は,同年6月5日の被控訴人との交渉において,教研集会についても学校施設の使用を許可しないのかという質問をされたのに対し,これを許可しない旨回答した。 (ケ) 控訴人の総務局行政部行政課は,本件条例の条例案を市会に上程するためのりん議を平成24年6月5日に起案し,同月20日,人事室長から市長に上記条例案についての説明がされた。その際の本件条例12条の原案は,「労働組合等の組合活動に関し本市が行う便宜の供与は,本市において適正かつ健全な労使関係が確保されていると認められない限り,行わないものとする」とされていた。市長は,条例案中の「適正かつ健全な労使関係が確保されていると認められない限り,」について,適正かつ健全な労使関係にあると判断される労働組合等に対 められない限り,行わないものとする」とされていた。市長は,条例案中の「適正かつ健全な労使関係が確保されていると認められない限り,」について,適正かつ健全な労使関係にあると判断される労働組合等に対しては個別に便宜供与を行うことができるとの誤解を招くおそれがあることを理由として,これを削除するように指示した。 (コ) 市長の上記指示に従って修正された条例案は,平成24年6月27日に市長の決裁を受け,同年7月6日,市会に上程され,同月12日,財政総務委員会に付託された。同月20日の同委員会の審議において,P6議員は,本件条例12条に関し,条例成立後は,職員団体が主催する教研集会についても一切使用許可を出さないのかと質問し,教育委員 - 20 -会事務局教務部教職員給与・厚生担当課長は,教研集会の開催を理由とした行政財産の目的外使用についても,職員団体の他の活動への便宜供与と同様に使用許可を行わないものと考えている旨回答した。上記条例案は,同月27日,財政総務委員会において原案どおり可決され本会議に報告されて,本会議においても可決され,本件条例は,同月30日の公布を経て,同年8月1日施行された。 イ被控訴人の教研集会の実施状況前記前提事実等に加え,証拠(甲17の1及び2,18の1ないし4,19の1ないし10,甲20,62,63,65,89,乙18,19,証人P7,同P8,被控訴人代表者)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) 被控訴人は,遅くとも平成19年頃から,4つの支部の持ち回りにより年1回の頻度(9月の第2土曜日)で開催する教研集会の会場として,控訴人設置の学校施設の目的外使用許可の申請をし,平成23年までは同使用許可を受けて,教研集会を開催し,300名から350名の参加者があった。 (イ の第2土曜日)で開催する教研集会の会場として,控訴人設置の学校施設の目的外使用許可の申請をし,平成23年までは同使用許可を受けて,教研集会を開催し,300名から350名の参加者があった。 (イ) 上記教研集会は,次のとおり,教育現場において日々生起する教育実践上の課題等毎に教員等が報告又は講演及び討議等をする8ないし10の分科会と分科会での検討を踏まえた全体会等が行われた。 a 平成19年(a) 「国際連帯の教育」分科会報告「帰国した子どもの教育センター校の現状と課題」(b) 「障がい児教育」分科会「個別指導計画のつくり方・使い方」(c) 「部落解放教育」分科会「部落問題学習の授業のネタ」の作成経緯の報告 - 21 -(d) 「在日朝鮮人教育」分科会実践報告(e) 「平和教育」分科会報告「子どもの手による平和教育」(f) 「男女共生教育」分科会報告「全教職員で取り組む性教育」(g) 「健康教育」分科会給食実施中学校の報告(h) 特別分科会「英語をどう教えるか」(i) 特別分科会「給食を通して見えてきたこと~中学校給食問題~」b 平成20年(a) 「国際連帯の教育」分科会「センター校」に通う子どもたちの在籍校での取り組みの報告(b) 「障がい児教育」分科会小学校・中学校での特別支援教育の報告(c) 「部落解放教育」分科会部落問題学習の取り組みの報告(d) 「在日朝鮮人教育」分科会民族教育の実践報告,公開授業の取り組みの報告(e) 「平和教育」分科会「歴史的事実を踏まえ,行動化につながる反戦・反核・平和」の取り組みの報告(f) 「男女共生教育」分科会ワークショップ「男女平等教育のための学習プログラム」(g 「平和教育」分科会「歴史的事実を踏まえ,行動化につながる反戦・反核・平和」の取り組みの報告(f) 「男女共生教育」分科会ワークショップ「男女平等教育のための学習プログラム」(g) 「健康教育」分科会「学校における食育の推進」についての実践報告 - 22 -(h) 「教育条件整備の運動」分科会学校教育と地域連携の取り組みの報告,新しい学校づくりの実践報告c 平成21年(a) 「国際連帯の教育」分科会報告「在籍学級担任との連携強化を求めて」報告「中高連携について」(b) 「障がい児教育」分科会報告「進路保障の取り組み」「中学校」報告「学担と障担との連携」「小学校」(c) 「部落解放教育」分科会報告「矢田教育差別事件を考える」(d) 「在日朝鮮人教育」分科会報告「P9小とP10学校との交流」報告「P11小の民族教育」(e) 「平和教育」分科会報告「原発問題を考える」他1本(f) 「男女共生教育」分科会報告「二人で考える,みんなで考える『私』の働き方」(g) 「健康教育」分科会講演「新型インフルエンザの実際」(h) 「地域連携の教育」分科会報告「『P12中ナビ』づくりで学校改善」~保護者とつながり,地域とつながる学校づくりをめざして~(i) 特別分科会「学級づくり」報告「はじめての学級指導のヒント」 - 23 -(j) 特別分科会「外国語活動」報告「大阪らしい外国語活動を創造しよう~先行実施する池田市の外国語活動に学ぶ~」d 平成22年(a) 「国際連帯の教育」分科会報告「センター校の取り組みについて」報告「センター校と原学級の連携を軸に」(b) 「障がい児教育」分科会報 外国語活動に学ぶ~」d 平成22年(a) 「国際連帯の教育」分科会報告「センター校の取り組みについて」報告「センター校と原学級の連携を軸に」(b) 「障がい児教育」分科会報告「ともに学び,ともに育つ,豊かなつながりを求めて」報告「小・中で取り組む,障がい児教育」(c) 「部落解放教育」分科会報告「狭山と出会いませんか一人ひとりを大切にする教育の原点として」(d) 「在日朝鮮人教育」分科会報告「韓国・朝鮮にふれあおうつながろう」~民族学級と課内実践をつなげた取り組み~報告「たんぽぽのような子どもたち」~「外国人教育」は「日本人教育」と感じて~(e) 「平和教育」分科会報告「沖縄の今を伝える」(f) 「男女共生教育」分科会講演「学校教育と性的少数者について~知らない,わからないでいいの?~」(g) 「健康教育」分科会講演「知っておきたいスポーツする子どもの体調管理と水分補給~運動会や体育の授業,部活動などに向けて~」 - 24 -(h) 特別分科会「学級づくり」講演「担任力をみがく学級づくり実践」(i) 特別分科会「授業づくり」講演「物づくりを取り入れた授業~火おこしから広がる授業展開~」e 平成23年(a) 「国際連帯の教育」分科会報告「帰国・来日の多数在籍校の取り組みと課題」報告「夜間中学校の現状について」(b) 「障がい児教育」分科会報告「つながり合う仲間として」~4人の子どもたちの思いに寄り添いながら~報告「字も書かれへん。ことばも話されへん。でも,ぼくは高校受験すんねん」報告「高校教育の保障にどう取り組むか」(c) 「部落解放教育」分科会講演「命をつなぐ職人の技~皮革で小物を作ろ 「字も書かれへん。ことばも話されへん。でも,ぼくは高校受験すんねん」報告「高校教育の保障にどう取り組むか」(c) 「部落解放教育」分科会講演「命をつなぐ職人の技~皮革で小物を作ろう~」(d) 「在日朝鮮人教育」分科会報告「もっと知ろう友だちの国」~一人一人が笑顔でいられるために~報告「20周年をむかえて~民族学級のあゆみ~」(e) 「平和教育」分科会報告「まわりの友だちとよりよい関係を築こう」~SABONAマットを使った実践を通して~(f) 「男女共生教育」分科会報告「性的少数者と学校教育パートⅡ」 - 25 -(g) 「健康教育」分科会報告「食物アレルギーのある子どもへの対応」(h) 特別分科会「授業づくり」講演「版画を楽しく『紙版画の世界』~紙版画の基礎から広がる版画の世界~」(i) 特別分科会「民族学級のアレコレ」講演「民族教育をみんなのものに~知ろう,広めよう,深めよう~」(ウ) 上記の教研集会の会場として学校施設を使用することによって学校教育上の支障が生じたことはなかった。 (エ) 被控訴人は,次の内容の教研集会の開催のためにP1小学校の講堂,普通教室,特別教室等10室の使用許可を求める平成24年度の許可申請をしたが,不許可とされたため,「エル・おおさか」(本件代替施設)において教研集会を開催したものの,開催場所の都合で全体会をすることができなかった。 a 開催日平成24年9月8日(土)b 内容次のとおりの分科会と全体会(a) 「国際連帯の教育」分科会報告「多様化する外国籍の両親を持つ日本生まれの児童生徒への取り組みと課題」報告「入試制度の変化による帰国・渡日生徒の影響について」(b) 「障がい児教育」分科会講 帯の教育」分科会報告「多様化する外国籍の両親を持つ日本生まれの児童生徒への取り組みと課題」報告「入試制度の変化による帰国・渡日生徒の影響について」(b) 「障がい児教育」分科会講演「ともに学び,ともに育ち,ともに生きる視点での障がい児教育」 - 26 -報告「障がい児の進路保障」報告「全国学テの学校別公表が支援学級に与える影響について」(c) 「部落解放教育」分科会「P13の現状と課題」(d) 「在日朝鮮人教育」分科会P14小学校,P15中学校からのレポート発表(e) 「平和教育」分科会「沖縄修学旅行」「東日本大震災ボランティア」レポート(f) 「ジェンダー平等教育」分科会「教育現場から見た子どもたちの性」講演「漫画『○』の出版にかかわって」(g) 「健康教育」分科会「教育指導の計画における保健と食育の連携」(h) 特別分科会「多様性教育入門」(i) 特別分科会「エネルギーワークショップ」c 見込み人数約300名(オ) 被控訴人は,次の内容の教研集会の開催のためにP2小学校の6室の普通教室,多目的室,音楽室,理科室及び体育館の使用許可を求める平成25年度の許可申請をしたが,不許可とされたため,「エル・おおさか」(本件代替施設)において教研集会を開催した。 a 開催日平成25年9月14日(土)b 内容次のとおりの分科会と全体会等(a) 「国際連帯の教育」分科会「P16」,「P17運営委員会」及び「P18」の代表等の講 - 27 -演(b) 「障がい児教育」分科会「共に学び,共に育ち,共に生きる」の実践報告,レポートの発表及び講演(c) 「部落解放教育」分科会狭山事件学習会の報告(d) - 27 -演(b) 「障がい児教育」分科会「共に学び,共に育ち,共に生きる」の実践報告,レポートの発表及び講演(c) 「部落解放教育」分科会狭山事件学習会の報告(d) 「在日朝鮮人教育」分科会民族学級・民族倶楽部での取り組みとそれを支える学級での実践報告,レポート発表(e) 「平和教育」分科会「大阪大空襲の体験を語る会」会員からの聞き取り,大阪城周辺に残る「戦争の跡」巡り及び「P19」見学(f) 「ジェンダー平等教育」分科会講演「ドキュメンタリー映画『○』を通して『従軍慰安婦』問題を正しく知る」(g) 「健康教育」分科会報告「性的少数者(LGBT)に出会い・知り・気づいたこと」(h) 特別分科会「リコーダーを吹いてみよう! 美しい音色にびっくり!」(i) 特別分科会「放射線って? ガイガーカウンター(放射線測定器)を作ろう!」c 見込み人数約300名(カ) 両校長は,本件条例12条,これに伴って改正された本件審査基準及び本件各通知に基づき,被控訴人が労働組合等であることのみを理由として,本件各不許可処分を行った。 (3) 検討 - 28 -ア本件条例12条の法令違反について(ア) 地方自治法14条1項違反について前記(1)において説示したとおり,地方自治法238条の4第7項,学校教育法137条,学校施設令1条,3条の各規定によれば,学校施設の目的外使用の許可につき,管理者は裁量権を有しているというべきである。この点に関し,本件条例12条は「労働組合等の組合活動に関する便宜の供与は,行わないものとする。」と定めているところ,その文言や前記⑵ア認定の本件条例制定の経緯に照らせば,同条は,労働組合等の組合活 の点に関し,本件条例12条は「労働組合等の組合活動に関する便宜の供与は,行わないものとする。」と定めているところ,その文言や前記⑵ア認定の本件条例制定の経緯に照らせば,同条は,労働組合等の組合活動に関する便宜の供与は一律に禁止する趣旨の規定であると解する余地が相応にあることは否定できない。しかしながら,証拠(甲7)によれば,本件条例の目的は「適正かつ健全な労使関係の確保を図り,もって市政に対する市民の信頼を確保すること」(1条)とされ,同8条において,「任命権者は,適正かつ健全な労使関係の確保に努めなければならない。」(1項),「任命権者は,適正かつ健全な労使関係が確保されているかどうかを検証し,必要かつ適切な措置を講じなければならない。」(2項)と定められていることなど本件条例の制定趣旨並びに前記地方自治法238条の4第7項等の法令の趣旨との整合性をも考慮に入れて本件条例12条を解釈すれば,同条は,前記(1)の管理者の裁量権の行使を排除するものではなく,労働組合等の組合活動に当たる学校施設の目的外使用の許否についての同施設管理者の裁量権行使に当たり考慮すべき事情の一つとして,適正かつ健全な労使関係を阻害する便宜の供与であるかどうかを考慮すべきことを求めるものと解するのが相当であり,そのように解すれば,本件条例12条は,管理者の裁量権の行使に一定の制約を加えるとしても,上記地方自治法238条の4第7項等の各規定に違反するとはいえない。 (イ) 地方自治法238条の7第1項違反について - 29 -地方自治法238条の7第1項は,同法238条の4の規定による処分に不服がある場合にその審査請求又は異議申立てを認めた規定であって,行政財産を使用する権利を保障した規定とは解されないから,本件条例12条が地方自 8条の7第1項は,同法238条の4の規定による処分に不服がある場合にその審査請求又は異議申立てを認めた規定であって,行政財産を使用する権利を保障した規定とは解されないから,本件条例12条が地方自治法238条の7第1項に違反するとはいえない。 (ウ) 教育基本法12条2項,学校教育法137条及び社会教育法44条1項違反について教育基本法12条2項,学校教育法137条及び社会教育法44条1項は,学校施設を管理する機関に対し,労働組合等が行う教研集会のために学校施設の利用を許可することを義務付ける規定とは解されないから,本件条例12条が同各条項に違反するとはいえない。 (エ) 教育公務員特例法21条及び22条違反について教育公務員特例法21条2項は,教育公務員の任命権者の研修実施義務を定めているが,地方自治体に対し教育公務員の自主研修のために施設を提供する義務を定めたり,教職員の職員団体に施設を使用する権利を保障したりした規定とは解されず,同条1項及び同法22条も同様に,地方自治体に対し教育公務員の自主研修のために施設を提供する義務を定めたり,教職員の職員団体に施設を使用する権利を保障したりした規定とは解されないから,本件条例12条が同各条の規定に違反するとはいえない。 イ本件条例12条の憲法違反について(ア) 憲法14条違反について被控訴人は,本件条例12条は,労働組合等に対する便宜供与を一律に禁止するものであるから,便宜供与につき,労働組合等を他の団体と差別的に取り扱うものであると主張する。 しかし,前記ア(ア)において説示したとおり,本件条例12条は,労働組合等の組合活動に関する便宜供与を一律に禁止したものではなく, - 30 -労働組合等の組合活動に当たる学校施設の目的外使用の許否 し,前記ア(ア)において説示したとおり,本件条例12条は,労働組合等の組合活動に関する便宜供与を一律に禁止したものではなく, - 30 -労働組合等の組合活動に当たる学校施設の目的外使用の許否についての同施設管理者の裁量権行使に当たり,適正かつ健全な労使関係を阻害する便宜の供与であるかどうかが考慮すべき事情の一つとして判断されることになる。そして,前記1(2)アにおいて認定した本件条例の制定の経緯によれば,「適正かつ健全な労使関係の確保を図り,もって市政に対する市民の信頼を確保する」目的のための規制には合理性があり,その手段として労使癒着や違法又は不適切な政治活動につながりかねない労働組合等の組合活動に関する便宜供与を禁止することには合理的関連性があると認められる。したがって,本件条例12条が憲法14条に違反するとはいえない。 (イ) 憲法28条違反について被控訴人は,本件条例12条は,労働組合等に対する便宜供与を一律に禁止するものであるから,憲法28条により保障された団結権等を侵害すると主張する。しかし,本件条例12条が労働組合等に対する便宜供与を一律に禁止する趣旨とは解せられないことは,前記ア(ア)において説示したとおりであるから,被控訴人の上記主張はその前提を欠くというべきであり,また,労働組合等が使用者から便宜の供与を受けることが憲法28条の保障する団結権等に内在ないし派生する権利であると解することはできないから,労働組合等に対し便宜供与をしないとすることが直ちに憲法28条の定める団結権等を侵害するとはいえない。 被控訴人は,前記(2)ア認定の市長の発言によれば,市長が労働組合等の団結権等の侵害の認識ないし意図を有しており,かかる認識ないし意図から本件条例12条を制定した旨の主張をする。しかし,市長の意図はと 訴人は,前記(2)ア認定の市長の発言によれば,市長が労働組合等の団結権等の侵害の認識ないし意図を有しており,かかる認識ないし意図から本件条例12条を制定した旨の主張をする。しかし,市長の意図はともかくとして,本件条例は市会での審議に基づき適法に制定されたのであるから,市長個人の意思に基づき制定されたということはできない。 - 31 -したがって,被控訴人の上記主張は採用できない。 ウ以上によれば,本件各不許可処分の違法性は,前記(1),(3)アにおいて説示したとおり,両校長の裁量判断が裁量権の逸脱又は濫用に当たるかどうかによって判断されるのであり,控訴人主張のように労働組合等の組合活動に関する便宜供与に該当すれば,他の諸事情を一切考慮することなく,本件各小学校の目的外使用を不許可とすべきであったということはできない。 そして,両校長の裁量判断は,許可申請に係る使用の日時,場所,目的及び態様,使用者の範囲,使用の必要性の程度,許可をするにあたっての支障又は許可をした場合の弊害若しくは影響の内容及び程度,代替施設確保の困難性など許可をしないことによる申請者側の不都合又は影響の内容及び程度等のほか,学校施設の目的外使用が適正かつ健全な労使関係を阻害する便宜供与に当たるかどうか等の諸般の事情を総合考慮してされることになると解するのが相当である。 これを本件についてみるに,前記(2)イ認定のとおり,被控訴人開催の教研集会は,その内容によれば,被控訴人の労働運動としての側面を有するものの,教員らによる自主的研修としての側面をも有しており,その側面に関する限りは,自主的で自律的な研修を奨励する教育公務員特例法21条,22条の趣旨にかなうものである。そして,証拠(甲89,被控訴人代表者)及び弁論の全趣旨によれば,本件各申請に係る本件 その側面に関する限りは,自主的で自律的な研修を奨励する教育公務員特例法21条,22条の趣旨にかなうものである。そして,証拠(甲89,被控訴人代表者)及び弁論の全趣旨によれば,本件各申請に係る本件各教研集会のうち分科会の内容によっては,理科室,音楽室又は体育館その他教育用具や備品が備わっている学校施設を利用することの必要性が高く,学校施設を利用する場合と他の公共施設を利用する場合とで同分科会活動にとっての利便性に差異があり,全体会が開催できなかったとの不便も生じていることが認められる。また,被控訴人は,遅くとも平成19年から平成23年まで年1回,本件各申請に係る本件各教研集会とその内容において大 - 32 -きく異なることがない教研集会の会場として控訴人設置の学校施設を使用することを許可されており,その許可に基づいて被控訴人が学校施設を教研集会の会場として使用することによって学校教育上の支障が生じることもなかったのであり(前記(2)ア認定のとおり,第三者調査チームによる本件調査報告においても,学校施設の目的外使用については問題点として触れられていない。),本件各不許可処分がなされた時点において,本件各申請に係る本件各小学校施設での教研集会の開催により学校運営上の支障が生じるおそれがあることや,学校施設を教研集会の会場として使用することを許可することにより被控訴人の自主性が阻害されること等を窺わせる証拠はない。なお,控訴人は,第三者調査チームによる本件調査報告に,市教委のアンケート調査の結果,勤務時間中の組合活動等不適正な組合活動がされているのを見た(聞いた)校園長・教頭がおり,また,人事異動について,組合に協議・説明・意見聴取するなどした例などがあるとの記載があることから,学校現場においても不適正又は不健全な労使関係が蔓延し ているのを見た(聞いた)校園長・教頭がおり,また,人事異動について,組合に協議・説明・意見聴取するなどした例などがあるとの記載があることから,学校現場においても不適正又は不健全な労使関係が蔓延していると主張する。確かに,第三者調査チームによる本件調査報告には,控訴人主張のとおり,不適正な組合活動が行われたり,不適正又は不健全な労使関係を窺わせる記載がある(乙1)が,不適正な組合活動等が行われた時期や頻度等詳細は必ずしも明らかではなく,校園長・教頭の伝聞も含まれていること等を考慮すれば,上記の記載から直ちに学校現場において不適正又は不健全な労使関係が蔓延しているとまでは認めるに足りず,本件各教研集会の会場として控訴人設置の学校施設を使用することを許可することが適正かつ健全な労使関係を阻害する便宜の供与であるとは認めるに足りない。 このような事情のもとにおいて,本件各不許可処分は,本件条例12条の存在のみを考慮することによってなされており,上記のその他の当然考慮すべき事項を十分考慮していないのであって,その裁量権行使の判断要 - 33 -素の選択に合理性を欠いており,その結果,社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められるから,裁量権の逸脱又は濫用に該当し,違法というべきである。 2 争点(2)について(1) 前記1のとおり,両校長による本件各不許可処分は,裁量権の逸脱又は濫用として違法であると認められる。しかし,行政処分が裁量権の逸脱又は濫用として違法であったとしても,直ちに国家賠償法1条1項所定の違法が肯定されるわけではなく,その違法性が肯定されるのは,公権力の行使に当たる公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と上記行為をしたと認められるような事情がある場合に限られる(最高裁昭和60年11月21日 ,その違法性が肯定されるのは,公権力の行使に当たる公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と上記行為をしたと認められるような事情がある場合に限られる(最高裁昭和60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁,同平成5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁,同平成19年11月1日第一小法廷判決・民集61巻8号2733頁参照)。 (2) これを本件についてみるに,前記1(3)ウにおいて説示したとおり,職員団体である被控訴人による教研集会の開催は労働運動としての側面を有しているから,被控訴人開催の教研集会の会場として学校施設の使用を許可することは,本件条例12条所定の労働組合等の組合活動に関する便宜の供与に該当するといえる。しかるところ,本件条例12条は,前記(1)の管理者の裁量権の行使を排除するものではなく,両校長は,許可申請に係る使用の日時,場所,目的及び態様,使用者の範囲,使用の必要性の程度,許可をするにあたっての支障又は許可をした場合の弊害若しくは影響の内容及び程度,代替施設確保の困難性など許可をしないことによる申請者側の不都合又は影響の内容及び程度等のほか,学校施設の目的外使用が適正かつ健全な労使関係を阻害する便宜供与に当たるかどうか等諸般の事情を総合考慮して裁量判断をすべきであったことは,前記1(3)ア,ウにおいて説示したとおりである。 しかしながら,本各不許可処分がなされた当時,本件条例12条について, - 34 -上記のとおりの裁量判断をすべきであると解釈する見解が示されていたことを窺わせる証拠はなく,「労働組合等の組合活動に関する便宜の供与は,行わないものとする。」との同条の文言や本件条例の制定の経緯等によれば,労働組合等の組合活動に関する便宜の供与が一律に禁止されると を窺わせる証拠はなく,「労働組合等の組合活動に関する便宜の供与は,行わないものとする。」との同条の文言や本件条例の制定の経緯等によれば,労働組合等の組合活動に関する便宜の供与が一律に禁止されると解することにも相応の根拠があり,市教委も,本件条例及び同条例施行規則の施行に伴い,本件審査基準を改正して,使用許可ができる対象から労働組合等に関する部分を削除し,平成24年7月30日付け及び同年8月1 日付けで,条例施行日以降は,学校施設を労働組合等の組合活動のために使用許可することはできない旨の本件各通知を各学校長ないし各校園長に対し発出しているのである。そして,前記前提事実等及び前記1(2)記載のとおり,本件条例は,適法な手続に従って市会の議決により成立したものであるところ,地方公務員である両校長には,その職務を遂行するに当たって,本件条例に従う義務がある(地方公務員法32条)こと(なお,本件条例12条が違憲,違法な条例でないことは,前記1(3)において説示したとおりである。)も考慮すれば,両校長が本件条例12条により労働組合等の組合活動に関する便宜の供与が一律に禁止されると解釈して本件各不許可処分をしたことには無理からぬ面があったといわざるを得ない。そうすると,両校長が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件各不許可処分をした事情は認められないというべきであるから,両校長に国家賠償法上の違法及び過失を認めることはできない。 被控訴人は,本件条例12条が憲法14条,28条,その他の法令に違反することを前提として,両校長は本件条例及び本件各不許可処分が憲法や法令に違反しないかどうかについて調査検討する義務を負っていたのにこれを怠った過失がある旨主張するが,前記1(3)において説示したとおり,本件条例12条が憲法14条, 例及び本件各不許可処分が憲法や法令に違反しないかどうかについて調査検討する義務を負っていたのにこれを怠った過失がある旨主張するが,前記1(3)において説示したとおり,本件条例12条が憲法14条,28条,その他の法令に違反するとは認められないから,被控訴人の上記主張は採用できない。 - 35 - 3 当審における当事者の補充主張に対する判断前記1及び2において説示するとおりである。 4 結論以上によれば,被控訴人の国家賠償請求は,その余の争点について判断するまでもなく,いずれも理由がないからこれを全部棄却すべきところ,これを一部認容した原判決は相当でなく,本件控訴は理由があるから,原判決中控訴人敗訴部分を取り消し,同部分につき,被控訴人の請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第10民事部 裁判長裁判官角隆博 裁判官坂倉充信 裁判官中川正充
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