平成19(ワ)4787 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成22年9月9日 大阪地方裁判所
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判決文本文42,943 文字)

主文 被告Y1は,原告X1及び原告X2に対し,それぞれ957万0920円及びこれに対する平成3年9月7日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告X1及び原告X2の被告Y1に対するその余の各請求,原告X1及び原告X2の被告Y2に対する各請求並びに原告X3及び原告X4の被告らに対する各請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,原告X1及び原告X2に生じた費用の各4分の3,被告Y1に生じた費用の17分の8並びに被告Y2に生じた費用の17分の16を原告X1及び原告X2の負担とし,原告X3及び原告X4に生じた費用の全部並びに被告らに生じた費用の各17分の1を原告X3及び原告X4の負担とし,原告X1及び原告X2に生じた費用の各4分の1並びに被告Y1に生じた費用の17分の8を被告Y1の負担とする。 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由 第1請求被告らは,連帯して下記金員を支払え。 原告X1及び原告X2に対し,それぞれ1957万2272円及びこれに対する平成3年9月7日から各支払済みまで年5分の割合による金員 原告X3及び原告X4に対し,それぞれ120万円及びこれに対する平成4年1月3日から各支払済みまで年5分の割合による金員第2事案の概要等 事案の概要本件は,被告らが製造・販売したガス湯沸器の不完全燃焼を原因とする一酸化炭素中毒による死傷事故について,原告らが,上記ガス湯沸器に欠陥があったことが上記死傷事故の原因であるなどとして,被告らに対し,共同不法行為 に基づき(原告X1及び原告X2(以下「原告X1ら」という。)においては,更に被告Y1に対し,被告Y1の従業員がガス湯沸器の不正改造を行ったこと の原因であるなどとして,被告らに対し,共同不法行為 に基づき(原告X1及び原告X2(以下「原告X1ら」という。)においては,更に被告Y1に対し,被告Y1の従業員がガス湯沸器の不正改造を行ったことが上記死亡事故の原因であるとして,使用者責任(民法715条)及び不法行為(民法709条)に基づき),連帯して損害賠償及びこれに対する不法行為の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うよう求めた事案である。 前提事実(末尾に証拠を摘示した事実以外は当事者間に争いがない。)(1)被告らア被告Y1は,ガス器具の販売等を業とする会社である。 イ被告Y2は,ガス器具の製造等を業とする会社であり,被告Y1の100パーセント子会社である。 (2)被告らによるガス湯沸器の製造・販売等被告Y2は,昭和55年ころから,ガス湯沸器からの排気ガスを内蔵した排気ファンによって屋外へ排気する強制排気システムを備えたガス湯沸器の製造を開始し,被告Y1は,これを販売してきたものであるところ,本件と関係する機種,製造時期及び累積生産台数は,概要下記のとおりである。 記型式製造時期累積生産台数PH-81F 昭和55年4月~昭和62年3月 14万2084台PH-101F昭和55年10月~昭和59年12月 4万5550台PH-131F昭和55年10月~平成元年7月 5万2691台(3)一酸化炭素中毒による死亡事故(平成3年9月7日)の発生ア亡Aは,平成3年9月7日,長野県北佐久郡軽井沢町にある学校法人Eの保養施設Uハイムにおいて,被告Y2が製造したガス湯沸器(型式PH-131F,昭和56年5月製造。以下「本件湯沸器1」という。)の不完全燃焼により発生した一酸化炭素中毒により死亡した る学校法人Eの保養施設Uハイムにおいて,被告Y2が製造したガス湯沸器(型式PH-131F,昭和56年5月製造。以下「本件湯沸器1」という。)の不完全燃焼により発生した一酸化炭素中毒により死亡した(以下「本件軽井 沢事故」という。)。 イ亡Aの権利義務は,夫であるBが法定相続分3分の2の割合で相続し,父である亡C及び母である亡Dが各6分の1の割合で相続した。 そして,亡Cは平成16年2月13日に,亡Dは平成22年6月5日にそれぞれ死亡したことから,亡C及び亡Dが相続した亡Aの権利義務は,同人らの子であり,亡Aの兄である原告X1及び亡Aの姉である原告X2が各2分の1の割合で相続した。(甲8の1ないし4)(4)一酸化炭素中毒による傷害事故(平成4年1月3日)の発生原告X3及び原告X4(以下「原告X3ら」という。)は,平成4年1月3日午前1時ころ,賃借していた奈良県北葛城郡のVハイツ2階で就寝していたところ,Vハイツ1階(F方)に設置されていた被告Y2が製造したガス湯沸器(型式PH-81F,昭和56年11月製造。以下「本件湯沸器2」といい,本件湯沸器1と併せて「本件各湯沸器」という。)の不完全燃焼により発生した一酸化炭素が2階に流入し,一酸化炭素中毒により意識を失った(以下「本件奈良事故」といい,本件軽井沢事故と併せて「本件各事故」という。)。 (5)本件各事故の発生原因ア本件各湯沸器に内蔵された排気ファンは,コンセントに電源プラグを差し込んで電気を供給しない限り作動せず,また,本件各湯沸器には,電気が供給されない場合は,ガスの供給を止めて燃焼を継続しないように制御する安全装置が組み込まれていたところ,本件各事故当時,本件各湯沸器には,安全装置を電気回路から排除し,その機能を無効にする不正改造が施されていた。 イもっとも,上 めて燃焼を継続しないように制御する安全装置が組み込まれていたところ,本件各事故当時,本件各湯沸器には,安全装置を電気回路から排除し,その機能を無効にする不正改造が施されていた。 イもっとも,上記不正改造がなされた場合であっても,電気が供給されている限り排気ファンは作動するが,本件各湯沸器は,電源プラグをコンセントに差し込まずに使用されたため,上記安全装置が働かず,排気ファン が作動していない状態でガスの供給が継続され,不完全燃焼により発生した一酸化炭素が屋外に排出されることなく屋内に充満したことにより本件各事故が発生した。 争点及びこれに対する当事者の主張本件の主たる争点は,(1)被告らの責任原因(共同不法行為)の有無(①欠陥製品を製造・販売してはならない義務違反,②保守管理義務(不正改造防止義務)違反,③欠陥製品の回収・告知義務違反),(2)被告Y1固有の責任原因の有無(①使用者責任,②不法行為責任),(3)原告らの損害の有無及び額であり,これらの争点に対する当事者の主張は,要旨以下のとおりである。 (1)被告らの責任原因(共同不法行為。民法719条)ア欠陥製品を製造,販売してはならない義務違反の有無(争点1)【原告らの主張】(ア)ガス湯沸器は,不完全燃焼による一酸化炭素中毒によって人の生命・身体の安全を脅かす凶器ともなり得る危険性を有しているにもかかわらず,使用者は,このことを意識することなく,安全な器具であるとして使用するなどしているものであるから,これを製造・販売する被告らは,消費者の使用によってガス湯沸器に危険な性状が生じないように,ガス湯沸器の安全性を確保すべき高度の注意義務を負っているところ,本件各湯沸器には,以下の欠陥があった。 a燃焼装置と排気装置の連動不全本件各湯沸器は,内蔵する排気ファンによ 状が生じないように,ガス湯沸器の安全性を確保すべき高度の注意義務を負っているところ,本件各湯沸器には,以下の欠陥があった。 a燃焼装置と排気装置の連動不全本件各湯沸器は,内蔵する排気ファンによって排気ガスを強制排気する仕組みとなっており,その排出機能は,専ら排気ファンに依存しているにもかかわらず,使用者がその重要性に気付きにくい構造になっていた。 もとより一酸化炭素中毒の発生を防止するためには,燃焼機能と排気装置が連動し,必ず排気が室外に排出されるという仕組みが不可欠 であり,しかも,燃焼時に不可避的に発生する一酸化炭素を確実に排出するためには,「燃焼時には排気する」ではなく,「排気機能が作動していない時には燃焼しない」という,排気を絶対条件とする完全な連動でなければ,真のフェールセーフ設計とはいえないのである。 この点,本件各湯沸器は,口火装置部,燃焼装置部,排気装置部及び安全装置部の4装置部から成っているところ,口火装置部と排気装置部が,安全装置部を経由した電気回路により電気的制御がなされているのに対し,燃焼装置部は,口火さえ点火していれば,あとは流入水の圧力によってガス弁が開き,ガスが流入し空気と混合して燃焼を開始する構造になっており,この一連の動作は電気を必要とせず,燃焼装置部の動作に対して安全装置部からの電気的な制御が直接的に及ぶ余地はない。他方,排気装置部は,水流スイッチが入ることで安全装置部を経由した回路が閉じて作動する仕組みとなっている。もし,水流スイッチの故障によって開いたままになったり,FRリレーが故障してFRリレー接点が開いたままになったりすると,排気ファンへ通電することができず,排気ファンは作動しないし,排気ファン自体が故障した場合には,通電しても,排気ファンは作動しないのである。 しかし,このような レー接点が開いたままになったりすると,排気ファンへ通電することができず,排気ファンは作動しないし,排気ファン自体が故障した場合には,通電しても,排気ファンは作動しないのである。 しかし,このような場合でも,電源プラグがコンセントに差し込まれ,他の電機部品や電気回路が正常である限り,口火装置部の電気回路は通常どおりに形成されるので,燃焼が開始され,その結果,排気ファンが停止したままの状態で燃焼が継続し,排気ガスが室内へ溢出して致命的な状態に陥る危険がある。すなわち,本件各湯沸器は,そもそも排気装置部の動作に異変が生じた場合に生じる危険性に対する安全対策が不十分であり,排気ファンが確実に作動していることを示す表示器や警報機のたぐいも設置されていない。 結局,本件各湯沸器における燃焼装置部と排気装置部は,水流発生 を共通のトリガーとして,燃焼を開始するにつれて排気ファンも始動するという始動時における一定の連動があるにすぎず,また,排気ファンが停止すれば必ず直ちに燃焼が停止するという連動はなく,「排気ファンが作動していないときには燃焼しない」という完全な連動にはなっていなかった。そのため,「排気ファンが作動していないときにも燃焼が起こりうる」という危険性を排除することができない構造となっていたのであり,この点において致命的な欠陥があり,製造物が通常有すべき安全性を欠いていたのである。 b不正改造誘発本件各湯沸器は,①安全装置であるコントロールボックス内のプリント基板に短期間で頻繁にはんだ割れが生じるという欠陥に加え,②安全装置を電気回路から排除する不正改造が容易に行われる構造であるという欠陥,すなわち,本件各湯沸器は,フロントカバーを開けると,コントロールボックスに収められたリレーの接点の出力端子がコントロールボックスの入口に設置さ 除する不正改造が容易に行われる構造であるという欠陥,すなわち,本件各湯沸器は,フロントカバーを開けると,コントロールボックスに収められたリレーの接点の出力端子がコントロールボックスの入口に設置された端子台にむき出しになっており,その端子を針金等でつないで直結し,コントロールボックスを電気回路から排除する改造(いわゆる「短絡」。以下「本件不正改造」という。)が容易であるという欠陥があったものであり,この2点において製造物として通常有すべき安全性を欠いていた。 はんだ割れによってコントロールボックスが故障すると,ガスの供給が遮断され,湯沸器として使用できなくなるが,この状態を解消する最も安全かつ確実な対応はコントロールボックスの交換である。しかし,コントロールボックスは供給が不十分であり,また,高価であった上,被告らが修理要領等に記載した,これに代わる修理方法も極めて複雑困難であったため,故障したコントロールボックスを電気回路から排除して湯沸器を使用可能にする上記②に係る不正改造が誘発 されたのである。したがって,上記①及び②の欠陥は,両者相まって製品の安全性を欠く一つの欠陥と評価されるべきである。 (イ)なお,電源プラグをコンセントに差し込まない状態で,本件各湯沸器を使用することは,通常予見される使用形態を著しく逸脱する使用方法ではなく,誤使用とはいえない。すなわち,本件7機種(不正改造により一酸化炭素中毒事故を発生させたPH-81F,PH-101F,PH-131F,不正改造以外の原因で一酸化炭素中毒事故を引き起こしたPH-102Fのほか,これに類似の機種であるPH-82F,PH-132F,PH-161Fを加えた7機種をいう。)に内蔵された排気ファンは外から見えない構造になっているために,一般消費者はガス湯沸器の使用中 2Fのほか,これに類似の機種であるPH-82F,PH-132F,PH-161Fを加えた7機種をいう。)に内蔵された排気ファンは外から見えない構造になっているために,一般消費者はガス湯沸器の使用中に排気ファンが作動していることは認識しておらず,電源プラグを抜いたまま使用すると,生命身体に対する危害が生じるとの認識はないのであって,電源プラグを入れずに使用したことを一般消費者の責めに帰すべきではない。 (ウ)仮に,被告らが,一体として本件各湯沸器の製造販売に関する一律の義務を負わないとしても,被告Y2は,欠陥製品を製造しない義務を負っているにもかかわらず,欠陥製品を製造し,被告Y1は,欠陥製品を販売しない義務を負っているにもかかわらず,欠陥製品を販売したことについて,それぞれ責任を負うものというべきである。 【被告らの主張】(ア)本件各湯沸器に欠陥があったことは否認する。 本件各湯沸器には,強制排気装置が内蔵されており,電源プラグがコンセントに差し込まれている限り排気ファンが回って排気を強制的に外に排出することができる上,安全装置であるコントロールボックスによって,電源プラグがコンセントから抜けたり,停電するなどして通電がなくなり,排気ファンが回らなくなった場合には,ガスの供給を止めて 燃焼を止める仕組みになっており,本件各湯沸器が開発され,製造販売された当時の技術水準等に照らして安全性能の高い器具であった。 a(a)原告らは,本件各湯沸器は「燃焼装置と排気装置の連動が不全である」と主張するけれども,本件各湯沸器は,燃焼装置と排気装置との間に水流発生をトリガーとして排気ファンが始動するとともに燃焼を開始するという連動と,排気ファンが作動せず排気が室内へ流出したときに燃焼を停止させる(排気溢れ防止装置)という連動の双方を 装置との間に水流発生をトリガーとして排気ファンが始動するとともに燃焼を開始するという連動と,排気ファンが作動せず排気が室内へ流出したときに燃焼を停止させる(排気溢れ防止装置)という連動の双方を有しているのであって,原告らの上記主張は失当である。 上記の排気溢れ防止装置は,排気ガスを直接検知するハイリミットスイッチの働きにより,常に排気ガスの室内への流出を監視しており,排気ファンを制御する電子回路部品の故障や排気ファン自体の故障により排気ファンが作動しない場合のみならず,強風により排気筒に弱圧が加わって排気ガスが屋外に排出されなかったり,排気筒出口がふさがれて排気ガスが屋外に排出されなかった場合にも,5分以内に燃焼を停止させる機能を有している。 本件各湯沸器の上記安全性能は,その製造,販売当時におけるJIS規格及び技術基準の規定に適合したものであり,その構造も,国が定める技術水準に規定された構造であって,本件各湯沸器は,ガス事業法39条の3及び液化ガスの保管の確保及び取引の適正化に関する法律39条により,国の指定検査機関である財団法人日本ガス機器検査協会の検定に合格している。 (b)原告らは,「排気ファンが作動していないときには燃焼しない」という排気ファンと燃焼装置との直接的な連動がないことをもって不完全な連動であると主張するけれども,このような直接的な連動を可能にするためには,排気ファンが作動している状態を検知する手段が不可欠であるが,そうした技術は,本件各湯沸器が開発 された昭和55年当時には確立されておらず,原告らの主張は,本件各湯沸器が製造,販売された当時の技術水準を全く無視したものである。 本件7機種は,すべて停電により排気ファンが作動しないときには燃焼を停止するか又は燃焼しないという停電時安全装置をも有しており, 各湯沸器が製造,販売された当時の技術水準を全く無視したものである。 本件7機種は,すべて停電により排気ファンが作動しないときには燃焼を停止するか又は燃焼しないという停電時安全装置をも有しており,排気装置と燃焼装置との連動において,当時の他社の安全装置と比較しても優れた機能を有していたものである。 (c)以上のとおり,本件各湯沸器の燃焼装置と排気装置の連動は決して不全ではなく,コントロールボックスの機能を殺すという本件不正改造がなされることにより,排気溢れ防止装置と停電時安全装置の双方の機能が無効になって初めて,本件各湯沸器の燃焼装置と排気装置の連動が不全になるのである。そして,本件各湯沸器は,安全装置が作動しないように不正改造が施されていたものであり,このような不正改造は製品の製造・販売後に第三者によってなされた加工であるから,製造・販売時において,本件各湯沸器に欠陥はなかったというべきである。 b(a)本件各湯沸器に,コントロールボックス内のプリント基板が短期間で頻繁にはんだ割れを生じるという欠陥があったことは否認する。 電機部品の接続部にはんだを用いると,接合部分に応力がかかった状態における温度変化によって収縮と膨張を繰り返し,はんだ割れが生じること自体は,はんだの性質である。そもそもプリント基板のはんだ割れ自体によって器具の使用者の生命身体に危害を加えることは考えられないから,これは法律上の欠陥ではないし,また,本件各湯沸器は,いずれも製造後本件各事故発生まで9年ないし10年以上使用されており,仮にこれらのコントロールボックス内の プリント基板にはんだ割れがあったとしても,それが製造後短期間で発生したとはいえないから,欠陥であるともいえない。 (b)コントロールボックス入口の端子台等の構造に関する原告らの主張は認 の プリント基板にはんだ割れがあったとしても,それが製造後短期間で発生したとはいえないから,欠陥であるともいえない。 (b)コントロールボックス入口の端子台等の構造に関する原告らの主張は認めるが,本件不正改造が容易であったことは否認する。 コントロールボックスの端子を直結する作業自体は容易であるとしても,端子を直結することの意味を理解するためには,器具の構造及び電気回路についての知識が必要であり,その点において改造は容易ではない。また,製品のカバーを外した場合に安全装置の電気回路の端子が露出していることは,本件各湯沸器が製造された時期においては一般的なことであって,それ自体が危険性を有するものではないし,仮に電気回路の端子の上にカバーが付けられていたとしても,器具の修理の際にはそれを外し,端子を露出させて故障箇所を調べる必要があるから,修理業者にとっては,端子が露出している場合と差異はない。 端子を直結する改造は,ガス器具の安全装置を機能させない極めて危険な改造であって,製造業者としては第三者が故意にこのような改造を行うことはおよそ想定できない。 (c)被告Y2は,コントロールボックスの故障があったときの修理方法として,コントロールボックスの交換によって対応することを定めていた。また,被告Y2において,コントロールボックスの製造,供給が滞ったことはなく,修理業者に対しても,修理部品在庫及び所持修理部品に余裕を持つよう指導しており,特に昭和63年以降,修理依頼のあった場合には必ずコントロールボックスを携行するよう度々指導していた。 (イ)仮に,本件不正改造がなされた場合であっても,それ自体が不完全燃焼による一酸化炭素中毒事故の直接の原因ではない。本件不正改造が 行われていても,電源プラグをコンセントに入れて使用すれば, (イ)仮に,本件不正改造がなされた場合であっても,それ自体が不完全燃焼による一酸化炭素中毒事故の直接の原因ではない。本件不正改造が 行われていても,電源プラグをコンセントに入れて使用すれば,排気ファンが回転して排気がなされ,事故発生には至らない。本件各湯沸器の取扱説明書や器具正面に貼付された注意シール等においては,本体の電源プラグをコンセントに入れてから使用するように記載されている。本件各事故は,安全装置であるコントロールボックスの作動を妨げる本件不正改造がなされた上に,電源プラグをコンセントに入れない誤使用が重なって発生したものである。 イ保守管理義務(不正改造防止義務)違反の有無(争点2)【原告らの主張】(ア)ガス湯沸器を製造・販売する被告らは,製造・販売後においても,当該ガス湯沸器の安全性を維持するため保守管理を継続して行う義務,すなわち,①被告らの従業員や被告らが製造・販売するガス湯沸器を取り扱うサービスショップ及び工事業者に対し,不正改造等をしないように指導監督する義務,②欠陥のあるガス湯沸器の交換及び修理の対応が可能なように,十分な交換部品・機器の備蓄等交換及び修理体制を確立する義務を負い,さらに,上記①の指導監督に当たっては,単に不正改造をしてはならないとの文章により注意喚起をするだけでは足りず,不正改造により死亡事故が発生したこと,具体的な不正改造の内容を明確にして,修理業者が真摯に不正改造を防止しなければならないような内容で注意喚起すべき義務を負う。 (イ)家庭用ガス湯沸器は長期間にわたって使用されるため,製造・販売後においても継続して安全性を確保する手立てが必要となる。被告らは,被告Y1が代行店契約を締結した修理業者(Y1サービスショップ)に対し,被告Y2が製造し,被告Y1が販売した製品の修理業務 造・販売後においても継続して安全性を確保する手立てが必要となる。被告らは,被告Y1が代行店契約を締結した修理業者(Y1サービスショップ)に対し,被告Y2が製造し,被告Y1が販売した製品の修理業務を代行させるY1サービスショップ体制を整備し,サービスショップ対して技術援助を行い,時にはサービスショップの宣伝広告を行うなどして,製品 の修理業務に積極的に関与していたものであって,Y1サービスショップは,被告らとは別の営業主体ではあるが,被告らの製品の修理のみを行うとされていることからすると,サービスショップの修理行為は,被告らの修理行為と同視できる状況にあったといえる。 また,被告らは,昭和60年及び昭和62年に発生した不正改造による死亡事故により,サービスショップの担当者による不正改造の事実及びその具体的方法,修理先等の情報を把握できる立場にあったし,被告Y1が販売した製品に関する修理の技術指導等を目的とする「ショップ会議」を開催したり,Y1サービスショップに対して「トレーナーニュース」,「メンテナンス情報」等を配布していたのであって,サービスショップに対して本件不正改造の禁止措置について詳細に周知徹底させることが可能であった。 そして,修理業者が不正改造をしてはいけないと分かっていながらその危険性を軽視して本件不正改造をしていることからすると,被告らは厳しく対処する必要があったものであり,本件不正改造による一酸化炭素中毒事故を防止するためには,被告らが行動することが最も効果的であり,実効性があったといえる。 (ウ)a本件7機種について行われた本件不正改造は,ガス湯沸器に関する専門的知識を有する者でなければ到底行い得るものではないから,いずれも被告らの従業員,サービスショップ又は関連工事業者のいずれかによって行われたものであ て行われた本件不正改造は,ガス湯沸器に関する専門的知識を有する者でなければ到底行い得るものではないから,いずれも被告らの従業員,サービスショップ又は関連工事業者のいずれかによって行われたものである。 また,本件軽井沢事故においては,被告Y1の従業員であるGが本件湯沸器1に不正改造をしたことが明らかであり,本件奈良事故においては,被告Y1奈良営業所の従業員が本件湯沸器2の不正改造をしたことが強く推認され,仮にそうでないとしてもサービスショップの者が不正改造をしていたことは十分推認される。 したがって,被告らが,被告らの従業員,サービスショップ及び関連工事業者に対して不正改造をしないよう指導監督する義務を尽くしていなかったといえる。 b被告らは,不正改造による一酸化炭素中毒事故により人が死亡したという極めて重大な事実を認識し,かつ,不正改造をしたのはY1サービスショップの従業員かそれ以外の修理業者の可能性があり,修理の機会にしか不正改造をするはずがないとの認識を有していたにもかかわらず,不正改造によって死亡等の重大事故が発生している事実をY1サービスショップに具体的に知らせることなく,単に不正改造をしないようにとの注意喚起をしていただけであって,このような注意喚起の方法は,不正改造による一酸化炭素中毒事故の防止のためには不十分であり,被告らに課せられた保守管理義務(不正改造防止義務)を履行したとはいえない。 cさらに,被告らの保守管理義務違反は,上記の指導監督を怠ったという不作為のみではない。被告らは,組織的に不正改造に関与していたもので,本件軽井沢事故については被告Y1の営業所の従業員自身が不正改造を行い,本件奈良事故についても被告らの営業所の従業員自身が安易に不正改造を行ったと推認されるなど,被告ら自身が積極的に危険な もので,本件軽井沢事故については被告Y1の営業所の従業員自身が不正改造を行い,本件奈良事故についても被告らの営業所の従業員自身が安易に不正改造を行ったと推認されるなど,被告ら自身が積極的に危険な製品を作り出していたのであって,この点においても,被告らは保守管理義務(不正改造防止義務)に違反している。 【被告らの主張】(ア)被告らに,原告らが主張するような保守管理義務はない。 製造物の保守管理についての責任は,所有権の当然の内容として所有者が負担するのが私法上の原則であり,製造者は,具体的な契約関係のない個々の使用者に対し,流通後のそれぞれ具体的な使用状況に置かれた各製品の安全性を維持するための具体的な保守管理を継続して行う義 務を負うものではない。 また,Y1サービスショップ及び工事業者は,被告らにとって独立の取引先ないし契約当事者であり,被告らは,具体的な修理業務等について指導監督する立場にはなく,原告らが主張するような指導監督義務はない。 昭和52年4月1日付け通商産業省の「ガス器具に係る補修用性能部品の最低保有期間の設定について」と題する通達(52生局第126号)によれば,本件各湯沸器のような先止式ガス瞬間湯沸器についての補修用性能部品の最低保有期間は,当該製品の製造打切りから7年とされているところ,本件各湯沸器のコントロールボックスは,これを使用した製品の製造を打ち切った平成元年7月から規定の7年以上を経過した平成9年5月まで製造していたものである。また,上記通達による最低保有期間は努力義務であり,原告らが主張するような「十分な交換部品・機器の備蓄等交換及び修理体制の確立を行う義務」は法律上の根拠がない。 そもそもガス湯沸器などのガス消費機器の保守点検については,本来危険性を内在するガスそれ自体の安全な利用を確保する な交換部品・機器の備蓄等交換及び修理体制の確立を行う義務」は法律上の根拠がない。 そもそもガス湯沸器などのガス消費機器の保守点検については,本来危険性を内在するガスそれ自体の安全な利用を確保する観点から,各個別の供給先及び継続的な供給契約関係のある都市ガスやLPガスなど各種ガスの供給事業者に対して,個別のガス消費機器の具体的な安全性を維持するべく,法律上,特別なガス消費設備調査等の義務が課されているのである(ガス事業法40条の2第1項,同施行規則106条1号2,液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律27条1項3号,同施行規則27条5号)。 (イ)被告らの義務違反にかかる事実はすべて否認し,主張は争う。 被告らは,本件不正改造による一酸化炭素中毒事故が発生した後,度々,ガス供給業者や修理に携わる業者等に対し,不正改造をせず,不正 改造を発見した場合には元に戻すように働きかけてきた。本件軽井沢事故においても,被告らの従業員が不正改造をなした事実はなく,まして,被告らが組織的に不正改造に関与したなどという主張は全く根拠がない。 被告らは,本件軽井沢事故発生以前に3件の不正改造による一酸化炭素中毒死亡事故が発生した事実を認識していたが,その不正改造は,特定できない第三者が意図的に行ったものであって,極めて異例な事態であると考えており,他の場所でも発生し得るなどということは全く考えることができなかった。 したがって,本件各事故の発生時点において,被告らには本件各事故発生の具体的な予見可能性はなかったというべきである。 (ウ)また,原告らが主張する義務は,容易に履行し得るものではなく,被告らには原告ら主張の行為をする期待可能性がなかったし,さらに,原告らが主張する義務を果たしたとしても,本件各事故の発生を未然に防止できたか 原告らが主張する義務は,容易に履行し得るものではなく,被告らには原告ら主張の行為をする期待可能性がなかったし,さらに,原告らが主張する義務を果たしたとしても,本件各事故の発生を未然に防止できたかは疑わしく,被告らの不作為と本件各事故との間には因果関係がないというべきである。 ウ回収・告知義務違反の有無(争点3)(ア)ガス湯沸器の一斉点検及び回収・告知義務違反の有無【原告らの主張】a被告らは,ガス湯沸器の安全性に疑いがあることが判明した場合には,直ちに既に製造・販売されている当該機種について一斉点検を行った上,回収ないし修理をすべき義務を負っている。 bすなわち,家庭用ガス湯沸器は一酸化炭素中毒による死傷事故を発生させる危険性をはらんだ機器であるから,その安全性に疑問が生じた場合には,一斉点検の上,回収ないし修理をすべきところ,被告らは,昭和60年,昭和62年及び平成2年に起こった事故の機種がいずれもPHシリーズのもので昭和56年に製造されたものであること, これらの事故の原因が不正改造にあったこと,昭和62年ころには相当数の不正改造が行われていたことなどからすると,不正改造の危険性を十分に認識していたのであって,本件各湯沸器が不正改造によって一酸化炭素中毒事故を引き起こす危険を有しており,安全性に疑いがあることを十分に認識していたといえる。また,被告らは,昭和62年の事故の後,事故を防止するための方策として「ガス器具の安全点検に関する注意」と題する書面をサービスショップや営業所に配布した。しかし,その後,平成2年に不正改造による事故が発生したのであって,上記書面を配布するだけでは事故を回避することができなかったことが露呈された。このことから,被告らは,より効果的な方策をとるべきであったのであり,その方策の一つが一斉 よる事故が発生したのであって,上記書面を配布するだけでは事故を回避することができなかったことが露呈された。このことから,被告らは,より効果的な方策をとるべきであったのであり,その方策の一つが一斉点検及び回収等である。被告らは,ガス湯沸器のエンドユーザーを特定して個別に訪問して点検することはもとより,リコールを実施して機器を回収することにも特に困難はなかったのであり,被告らが一斉点検及び回収義務を履行することは十分に可能であった。 c以上のとおり,被告らには一斉点検及び回収義務があるのに,被告らはこの義務を全く履行しなかったばかりか,被告らが製造販売したガス湯沸器によって人命が幾つも失われているにもかかわらず,他人事のように構えて一斉点検及び回収の義務はないと考え,不正改造に起因する事故への対策について取締役全員が集まって会議を開いたこともなく,経済産業省から再発防止策を講じるようにとの要請を受けても真摯に受け止めていなかったのであって,被告らには製造販売業者としての自覚及び消費者の生命身体の安全に対する配慮が全くなかったことが明らかであり,義務違反の程度は重大かつ悪質である。 【被告らの主張】a本件各湯沸器を含む本件7機種の安全性に疑いがあることが判明し たことは否認する。また,本件各事故の発生時において,何ら具体的な法律の根拠もないのに,原告らが主張するような具体的義務を被告らが負う理由はない。 b被告らは,個々の器具の所在場所が分からず,仮にその場所を知っているガス事業者に対して所在場所を聞いても,ガス事業者側は情報提供を法的に義務付けられていないため,被告らが器具の所在場所を把握できる保証はないし,法令の根拠もなく,単に器具に不正改造が施されているかもしれないという抽象的な危険性を説明しても,消費者において被告 法的に義務付けられていないため,被告らが器具の所在場所を把握できる保証はないし,法令の根拠もなく,単に器具に不正改造が施されているかもしれないという抽象的な危険性を説明しても,消費者において被告らによる任意の点検を受け入れてもらうこと自体が非常に困難であり,また,被告らには,全国的に一斉点検をするような人員もノウハウもない。 本件軽井沢事故以前に発生した一酸化炭素中毒事故の現場検証等を行った警察からは,当時,器具に不正改造が施されているため,メーカーである被告らの責任は追及しないと言われており,何ら法令上の根拠もなく,また,実施できる人的体制もないのに,被告らにおいて自身で具体的な点検・回収作業を行うことを考えること自体,期待可能性がない。 c原告らの主張する義務の履行によって本件各事故の回避が可能であったかは不明であり,原告らの主張する義務についての被告らの不作為と本件各事故との間には因果関係もない。 (イ)消費者に対する告知義務違反の有無【原告らの主張】a被告らは,ガス湯沸器の安全性に疑いがあることが判明した場合には,消費者に対し,電源プラグが抜けていたり停電等により強制排気装置に通電がない状態の下で,本件7機種を使用すれば一酸化炭素中毒に至る危険があること,消費者が使用する機器がそのような危険を 有するものであるかどうかは,電源プラグを抜いて強制排気装置が作動しない状態で機器を使用した場合に機器が作動し湯が排出されるかどうかにより判別することが可能であること,電源プラグを抜いて機器を使用した場合に機器が作動し湯が排出される場合は直ちに使用を中止することを告知すべき義務を負う。 b上記(ア)【原告らの主張】bで主張したとおり,家庭用ガス湯沸器は一酸化炭素中毒による死傷事故を発生させる危険性を内包しているところ, る場合は直ちに使用を中止することを告知すべき義務を負う。 b上記(ア)【原告らの主張】bで主張したとおり,家庭用ガス湯沸器は一酸化炭素中毒による死傷事故を発生させる危険性を内包しているところ,本件各湯沸器の安全性に疑いがあることが判明しており,昭和63年に配布した「ガス器具の安全点検に関する注意」と題する注意文書の配布では不正改造を防止することができずに平成2年に死亡事故が発生したことに加え,ガス湯沸器に最も近い存在であるのは消費者であるから,消費者に対してガス湯沸器に危険性があることやその使用を中止すべきことを告知することは事故の防止のために必要不可欠であったし,マスメディアや新聞等を介して告知を行うことも容易であった。 c以上のとおり,被告らは,消費者に対し,上記告知をすべき義務を負っていたにもかかわらず,この義務を一切履行しなかったものである。 【被告らの主張】a本件各湯沸器を含む本件7機種の安全性に疑いがあることが判明したことは否認する。 b本件各事故以前の3件の不正改造による事故は,不正改造自体,第三者の意図的で異常な行為であり,警察の捜査等によっても,いつ誰がどのような事情で不正改造を行ったのかが特定されなかった上,被告らは,ガス湯沸器の修理業務を行う関係業者に対して不正改造をしないよう啓蒙し,不正改造を発見した場合には是正するよう要請して いたものであり,それにもかかわらず安全装置の機能を無効にすることが明らかな不正改造が行われることを具体的に予見することはできなかった。また,被告らは,技術的な知識や情報を持ち合わせていない消費者に対し,誤解や混乱を生じさせることなく,これを製品の危険性として告知する能力を持ち合わせていなかった。 以上によれば,被告らには,消費者に対して原告らが主張するような告知をす 合わせていない消費者に対し,誤解や混乱を生じさせることなく,これを製品の危険性として告知する能力を持ち合わせていなかった。 以上によれば,被告らには,消費者に対して原告らが主張するような告知をする期待可能性はなかったというべきであり,被告らは,消費者に対する告知義務を負っていなかった。 cまた,安全装置機能を無効にする不正改造が危険であるなどという広報自体は,ガス事業者において,一般的に,また,法定の定期保全点検の際などに行っていたところであって,仮に,被告らにおいてそのような危険の告知を本件各事故の発生以前に行うことが可能であったとしても,これによって,本件各事故が発生しなかったという現実的な結果回避可能性は認められないから,被告らの告知をしなかったという不作為と本件各事故との間に因果関係はないというべきである。 (2)被告Y1の責任原因(①使用者責任(民法715条1項),②不法行為責任(民法709条))の有無(争点4)【原告らの主張】ア本件湯沸器1の不正改造は,被告Y1の従業員であるGが平成3年8月9日の修理の際,あえて行ったものである。 かかる不正改造は,コンセントに電源プラグを差し込まなくても,すなわち強制排気ファンが作動しない状態でもガス湯沸器が着火することを可能にするものであり,一酸化炭素中毒による死亡等の事故を惹起する極めて高い危険性を有する行為であるから,Gには,少なくとも著しい過失があったことは明らかであり,Gには,亡Aが死亡したことについて不法行為責任が成立する。 イ仮に,Gが本件湯沸器1の不正改造を行っていないとしても,かかる不正改造は,平成3年8月7日に本件湯沸器1の修理を行った被告Y1の従業員Hが,不正改造の構造上の意味を理解しながら,あえて行ったものである。たとえ,Hが誤って不正改造を行っ いないとしても,かかる不正改造は,平成3年8月7日に本件湯沸器1の修理を行った被告Y1の従業員Hが,不正改造の構造上の意味を理解しながら,あえて行ったものである。たとえ,Hが誤って不正改造を行ったものであるとしても,その落度は,業務上,ガス湯沸器の修理を行う者としてあるまじきものであり,Hに著しい過失があったことは明らかである。 ウ上記ア又はイの不正改造は,被告Y1が販売した本件湯沸器1の修理の要請に応じて行われたものであり,被告Y1の事業の執行についてなされたものにほかならないから,被告Y1には使用者責任(民法715条1項)がある。 なお,G及びHは,本件湯沸器1の修理を行った当時,それ以前において既に発生し,被告らが把握していた一連の不正改造が原因となって発生した死亡事故の存在を被告Y1から全く知らされていなかったことからすると,被告Y1は,事業の監督について相当の注意をしたとはいえない。 エさらに,G又はHの不正改造行為は,同人らの突発的な行動ではなく,被告Y1が,不正改造が原因の複数の死亡事故発生を認識しながら,Gら従業員に対し,不正改造による死亡事故を周知せず,十分な指導監督を行わないまま,従業員により不正改造が行われ得る危険を放置していたことに起因するものである。そうすると,本件湯沸器1についてG又はHが行った不正改造行為は,同人ら従業員から構成される企業としての被告Y1自身の行為にほかならず,被告Y1には民法709条の不法行為責任が成立する。 【被告Y1の主張】ア被告Y1に使用者責任ないし不法行為責任があるとの主張は争う。 イGは,平成3年8月9日,パイロットバーナーの点火不良の不具合が生じていた本件湯沸器1の修理を行い,本件湯沸器1は使用可能になったが, その際にGが行った修理は,点火つまみの奥にある押し 。 イGは,平成3年8月9日,パイロットバーナーの点火不良の不具合が生じていた本件湯沸器1の修理を行い,本件湯沸器1は使用可能になったが, その際にGが行った修理は,点火つまみの奥にある押しレバーのゆがみをまっすぐに修正するというものであり,その修理作業の中でコンロトールボックスに触れていない。そのため,Gは,コントロールボックス端子台の配線がどのようになっていたかについて記憶がなく,仮に,コントロールボックスの端子台の配線が誤っていたとすれば,気付いた可能性があったとしても,実際には全く分からなかった。 ウまた,原告らは,Hが本件湯沸器1の不正改造を行ったとも主張するが,Hが不正改造を行った具体的な状況に関する主張は全く明らかでない。Hは,本件湯沸器1について,パイロットバーナーの点火不良の不具合に対処するため,本件湯沸器1に付いていたコントロールボックスをいったん外して持参した新品のコンロトールボックスに交換した。しかし,点火不良が改善しなかったことから,Hは,不具合の原因はコントロールボックスの故障によるものではないと判断し,取り付けた新しいコントロールボックスを外して元のコントロールボックスに戻したが,その際,コントロールボックスの配線は,元あったとおりに戻したと記憶している。Hが意図的にコントロールボックスの配線を改造をした事実はないし,Hは,そもそも交換用のコントロールボックスを修理の際に持参していたのであるから,原告らが主張するようなそれが不足していたために改造をしたなどという状況ではなく,本件湯沸器1の管理者であったUハイムが修理代金がかかることを了承していることからしても,Hがコントロールボックスを交換しないで本件湯沸器1のコントロールボックスの配線を改造する理由はないのである。 (3)原告らの損害(争 Uハイムが修理代金がかかることを了承していることからしても,Hがコントロールボックスを交換しないで本件湯沸器1のコントロールボックスの配線を改造する理由はないのである。 (3)原告らの損害(争点5)【原告らの主張】ア原告X1らの損害原告X1らは,本件軽井沢事故に係る被告らの不法行為によって,以下 の損害を被った。 (ア)亡Aの逸失利益3087万3642円基礎収入322万7300円(平成3年度産業計・企業規模計・学歴計・女子労働者平均賃金のうち40歳から44歳までの平均賃金による。)亡Aは,死亡時に専業主婦であったところ,主婦の家事労働は財産上の利益を生ずるものであり,これを金銭的に評価することは可能であるから,平均的労働不能年齢に達するまで女子雇用労働者の平均的賃金に相当する財産上の収益を上げるものと推定できる。 稼働年数25年(67歳まで)中間利息控除新ホフマン係数15.944生活費控除40パーセント3,227,300 円×(1-0.4)×15.944=30,873,642 円(イ)亡Aの死亡慰謝料2200万円亡Aは,予期しない一酸化炭素中毒に遭遇して苦しみ,42歳の若さで突然生命を奪われ,最愛の夫とも突然の離別を強いられることになった。これにより亡Aが被った精神的苦痛に対する慰謝料は2200万円を下らない。 (ウ)亡D及び原告X1らの固有の慰謝料各500万円亡D及び原告X1らは,被告らのずさん極まりない数々の義務違反により,突如として娘ないし妹である亡Aを失い,いずれも強い精神的苦痛を受けた。これにより原告らが被った精神的苦痛に対する慰謝料は,いずれも500万円を下らない。 (エ)相続原告X1らは,上記前提事実(3)イのとおり,亡Aの権利義務につき,亡A,亡C及び亡Dに係る3度の相続を経て, 原告らが被った精神的苦痛に対する慰謝料は,いずれも500万円を下らない。 (エ)相続原告X1らは,上記前提事実(3)イのとおり,亡Aの権利義務につき,亡A,亡C及び亡Dに係る3度の相続を経て,各6分の1の割合で相続 し,亡Dの固有の慰謝料請求権につき,2分の1ずつ相続した。 (オ)弁護士費用各326万円本件訴訟は,法律に関する専門的な知識を必要とするものであるから,法律的な知識経験を有する弁護士に依頼しなければ訴訟を遂行することはできない。しかも,いわゆる製造物責任に関する事案として,相当程度の専門性が求められることに鑑みれば,弁護士費用は,損害額の2割が相当である。 (カ)損害総合計各1957万2272円イ原告X3らの損害原告X3らは,本件奈良事故に係る被告らの行為によって,それぞれ以下の損害を被った。 (ア)慰謝料各100万円原告X3らは,初めての子どもの出産予定日を数か月後に控え,元旦の翌晩に眠りに就いた直後,突如として死に至る恐怖を体験し,身体に後遺症が残るのではないか,胎児に悪い影響を与え,障害が生じるのではないかとの恐怖や不安を感じ,また,原告X4は,平成4年4月15日に出産した長男に,今後何らかの障害が現れるのではないかとの不安を感じた。これら原告X3らが受けた精神的苦痛に対する慰謝料は,いずれも100万円を下らない。 (イ)弁護士費用各20万円弁護士費用は,上記ア(オ)と同じく,損害額の2割が相当である。 (ウ)損害総合計各120万円【被告らの主張】いずれも争う。 第3当裁判所の判断 認定事実 上記前提事実に加え,証拠(甲1,2,4,6,10ないし15,19ないし24,26,31,34ないし44,47,50ないし52,54,69ないし75,乙2,4,5,8ないし10(枝番があるもの 上記前提事実に加え,証拠(甲1,2,4,6,10ないし15,19ないし24,26,31,34ないし44,47,50ないし52,54,69ないし75,乙2,4,5,8ないし10(枝番があるものは枝番を含む。),証人H,証人G,証人I,証人J)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 (1)当事者等ア被告ら相互の関係被告Y2は本件各湯沸器を製造し,被告Y1は本件各湯沸器を販売した。 被告Y2は,被告Y1の100パーセント子会社であり,両社の本店所在地は平成7年11月まで同じであった。また,被告Y1の役員の多くが被告Y2の役員を兼務しており,平成19年1月までKが被告両社の代表取締役として最終的な意思決定を行っていた。 イ被告らとY1サービスショップの関係昭和四十四,五年ころ,被告Y2が製造するガス器具の販売台数が急速に伸び,アフターサービスの要請が高くなったことから,これを充実させるため,被告らは,サービスショップと代行店契約を締結し,サービスショップの修理員に修理を代行させるサービスショップ制度を創設した。 被告Y1は,代行店契約を締結したサービスショップに対し,「Y1サービスショップ」と名乗らせて,「当社の委託したサービスショップの社員であることを証明する」旨記載した身分証明書を発行し,「Y1」と記載された作業服を配布した上,サービスショップが担当する地域を決め,部品単価表や修理費の基準表を作成してサービスショップの部品代や修理費を統一していた。 そして,被告Y1は,サービスショップが無償修理をした場合は,その修理費用をサービスショップに支払い,また,サービスショップが修理を行った件数によって,サービスショップに補助金を支払うという補助金制 度も設けていた。サービスショップは,被告Y1に修理伝票を送り, 費用をサービスショップに支払い,また,サービスショップが修理を行った件数によって,サービスショップに補助金を支払うという補助金制 度も設けていた。サービスショップは,被告Y1に修理伝票を送り,被告Y1は,修理伝票の記載内容や利用者のアンケートで,修理代金が高かったり,修理内容に問題があったり,サービスショップの対応が悪いことが分かれば,サービスショップに注意するなどしていた。 さらに,被告Y1は,サービスショップに対して,被告Y2製の製品の構造を説明し,修理の方法を指導していた。 なお,昭和55年1月から平成8年6月までの間,被告Y2が製造したガス湯沸器の取扱説明書には,サービスショップへの修理依頼に関する宣伝文が掲載され,また,昭和51年6月から平成7年12月にかけて,被告Y1は,その費用で,被告Y2製の製品の修理業者として,サービスショップを新聞に掲載して広告していた。 (2)本件各湯沸器の構造等ア本件各湯沸器の作動原理本件各湯沸器は,器具せんつまみを回転させると,マグネット安全弁(ガス電磁弁)が開いてパイロットバーナーにガスが供給され,同時にスパークさせることにより口火を点火する。その後,器具せんつまみを20秒ほど押し続けると,パイロットバーナーの炎が熱電対を加熱することにより発生した熱起電力によってマグネット安全弁が開弁保持され,パイロットバーナーの口火が点火保持される状態となる(ちなみに,発起電力によりマグネット安全弁を開弁保持する原理は,電源から供給される電気とは関係がない。)。 そして,蛇口を開くと,水圧により検圧スイッチ(水流スイッチ)が入り,FRリレーが作動して排気ファンに通電して排気ファンが回転する一方,水圧自動ガス弁(水の流れにより作動するガスバルブ)を開弁させてメーンバーナーにガスを供給する。 メー ッチ(水流スイッチ)が入り,FRリレーが作動して排気ファンに通電して排気ファンが回転する一方,水圧自動ガス弁(水の流れにより作動するガスバルブ)を開弁させてメーンバーナーにガスを供給する。 メーンバーナーに供給されたガスは,パイロットバーナーにより点火さ れて燃焼し,その熱により水が温められ,蛇口から温水が出る。 イ制御システムとコントロールボックスの機能等本件各湯沸器の燃焼制御システムの回路は,別紙回路図のとおりであり,排気制御システムは,供給電源回路と低電圧回路から成立しており,また,熱電対回路によって燃焼制御システムが構成されている。 本件各湯沸器は,電源プラグをコンセントに差し込んだ状態で,器具せんつまみを回転させて器体スイッチを作動させるとコントロール部に電気が供給される。コントロール部のコントロールボックスには,PRリレーという低電圧回路の信号を熱電対回路に伝達するリレーがあり,コントロールボックスに電気が供給された際に初めて回路が閉じた状態になり,リレーが作動する。反対に,PRリレーへの通電がなくなり,回路がオープンになると,マグネット安全弁は閉じてガスを遮断し,パイロットバーナーの火が消える。そのため,電源プラグがコンセントに差し込まれていない場合や停電している場合,あるいはコントロールボックスが故障している場合は,PRリレーへの通電がないため,マグネット安全弁が閉じてガスが供給されず,湯沸器を使用することはできないようになっている。 また,排気ファンが故障等により止まった場合には,屋内に排気が溢れ出ることによって生じる温度の上昇により,排気が屋内に漏れていることを検出し,ハイリミットスイッチが作動してPRリレーの回路をオープンにし,ガスの供給が遮断される仕組みになっている。 (3)本件不正改造コントロールボ 温度の上昇により,排気が屋内に漏れていることを検出し,ハイリミットスイッチが作動してPRリレーの回路をオープンにし,ガスの供給が遮断される仕組みになっている。 (3)本件不正改造コントロールボックスの端子台は,熱電対回路と低電圧回路をつなぐ中継部となっているところ,端子台の配線を一つの端子にまとめるなどの本件不正改造を行うと,PRリレーが機能しなくなり,電源が入っていなかったり,コントロールボックスが故障している場合であっても,パイロットバーナーが点火保持され,蛇口を開くとメーンバーナーも点火し,ガス湯沸器として 使用可能となる。 本件不正改造がされている場合も,電源が入っていれば排気ファンは作動するが,電源が入っていない場合は,排気ファンが作動していない状態でガスの供給が継続され,不完全燃焼で生じた一酸化炭素が屋外に排出されずに屋内に充満し,一酸化炭素中毒事故の危険性が生じる。 本件各湯沸器において,端子台はコントロールボックスの外側に付けられていたため,配線を一つにまとめる等により改造することは,作業としては容易であった。 もっとも,ガス湯沸器の回路に関する知識がある者でなければ本件不正改造の効果を認識することはできないことから,修理業者などガス機器に関する専門的ないし職業的な知識を有する者でなければ改造を行うことはできない。 (4)本件各事故発生に至るまでに発生した本件不正改造による一酸化炭素中毒事故と被告らの対応ア被告らにおいて,ガス湯沸器の事故報告の窓口は,昭和48年ころは,Lが担当するクレーム処理を担当する被告Y2の部署が行っていたところ,その後,Lが同被告サービス部に異動するのに伴ってこの部門もサービス部に移り,さらに,昭和63年にLが同被告品質管理部に異動するのに伴って,この部門も品質管理部に移動した。そ 署が行っていたところ,その後,Lが同被告サービス部に異動するのに伴ってこの部門もサービス部に移り,さらに,昭和63年にLが同被告品質管理部に異動するのに伴って,この部門も品質管理部に移動した。そして,平成2年4月からは,Mが品質管理部の実質的な責任者となった。 イ昭和60年1月6日,北海道札幌市において,2名が一酸化炭素中毒により死亡する事故(以下「札幌事故」という。)が発生した。事故機種は昭和56年10月に製造されたPH-101Fである。被告Y2は,昭和60年1月7日に事故発生を知り,被告Y1札幌営業所の従業員は,同年2月7日,事故器を確認した上,同月19日,被告Y2サービス部お客様相談室(以下「お客様相談室」という。)のLに対し,端子台の1つ の端子に2つの結線を重ねて改造されていること,PRリレーが基板から浮いており,本件不正改造がなければ当該湯沸器は使えない状態であったと考えられることを報告した。 ウ(ア)昭和62年1月9日,北海道苫小牧市において,一酸化炭素中毒により2名が死亡し,3名が軽傷を負う事故(以下「苫小牧事故」という。)が発生した。事故機種は,昭和56年9月に製造されたPH-101Fである。被告Y2は,昭和62年1月10日に事故発生を知り,被告Y1の札幌営業所の従業員は,調査の上,同月13日,Lに対し,事故器は,コントロールボックスの端子台の2つの端子を針金で直結する改造が行われていること,事故が発生した部屋のあるアパート4部屋のうち,事故が発生した部屋を含めた3部屋にPH-101Fが設置されており,事故器以外の2台にも,事故器と同様の改造が施され,直結の針金を外した状態では点火,燃焼せず,コントロールボックスの接点不良が疑われる旨報告した。また,事故発生時において,事故器の電源プラグがコンセントから の2台にも,事故器と同様の改造が施され,直結の針金を外した状態では点火,燃焼せず,コントロールボックスの接点不良が疑われる旨報告した。また,事故発生時において,事故器の電源プラグがコンセントから外されていたことが判明した。 (イ)苫小牧事故発生後,苫小牧市でY1サービスショップを営んでいたNが過去に本件不正改造を行ったことがある旨述べたことから,被告Y1は,Nとの契約を解約した上,ガス事業者とともに,Nが修理を行ったガス湯沸器の点検を行ったところ,本件不正改造が施されたものが一,二件見つかった。 エ(ア)お客様相談室では,昭和62年1月13日ころ,技術部も加わり,修理業者にコントロールボックスの動作回路が理解されてきたことが本件不正改造が行われる理由であるとして,本件不正改造を防止する方策の検討を行い,部品取替えの容易化,部品を取り替えなければ運転しない構造にすること,接続・取付箇所を封印又はロックすること,改造作業を困難にすること等が検討されたが,器具の構造が変更されることは なかった。 (イ)また,被告らは,北海道地区において,被告Y1の従業員やY1サービスショップに対し,具体的な改造の例を示して,不正改造を行わないように注意喚起する講習を行った。 (ウ)その後,お客様相談室は,昭和63年5月24日,「ガス器具の安全点検に関する注意」と題する書面を全国の営業所等に配布した。この書面には,器具に設置されている種々の安全装置(過熱防止装置,温度ヒューズ,不完全燃焼防止装置,立消え安全装置,風圧スイッチ,逆風防止装置,安全弁等)が正しく働くように整備すること,いかなる理由があっても(例えば,修理時に手持ちの部品がなかった,何度も安全装置が働いてしまう等)これらの安全装置を外したり殺したりする等の改造作業は行ってはならない 正しく働くように整備すること,いかなる理由があっても(例えば,修理時に手持ちの部品がなかった,何度も安全装置が働いてしまう等)これらの安全装置を外したり殺したりする等の改造作業は行ってはならないこと,万一このような改造作業が原因で事故が発生した場合には責任を問われる可能性があること,そのため安全に関する部品在庫は絶対に切らさないこと,修理サービスに出向く場合には安全に関する部品は必ず携帯すること,以上のことをY1社内のみならず,サービスショップ,販売店,工事業者等にも広く伝え,実行するように徹底を期すること等が記載されていた。 オ(ア)平成2年12月11日,北海道帯広市において,一酸化炭素中毒により2名が死亡する事故が発生した(以下「帯広事故」という。)。事故機種はPH-101Fである。被告Y2は,翌12日に事故の発生を知ったものであるところ,事故器のコントロールボックス端子台の配線に本件不正改造が施されており,電源プラグがコンセントに差し込まれていなかったこと,コントロールボックスにはんだ割れがあったことが判明した。 (イ)事故発生を受けて,被告Y2は,平成2年12月17日,通商産業省に対して事故の報告を行い,ガス湯沸器に本件不正改造が行われてい たことによって事故に至ったことを報告した。 また,W株式会社は,同種のガス湯沸器について緊急点検を行ったが,この点検で本件不正改造が施されたガス湯沸器は発見されなかった。 カお客様相談室は,平成2年12月20日付けで,「ガス器具の安全点検に関する注意」と題する書面を再び配布し,被告Y2品質管理部は,統括所長あてに,「ガス器具の安全点検に関する注意の件」と題する書面を配布した。同文書には,「ガス器具の安全点検に関する注意」を徹底のため再度配布すること,各統括営業所内にて関係者に広 質管理部は,統括所長あてに,「ガス器具の安全点検に関する注意の件」と題する書面を配布した。同文書には,「ガス器具の安全点検に関する注意」を徹底のため再度配布すること,各統括営業所内にて関係者に広く啓蒙してほしいこと,コントロールボックスの端子部に本件不正改造が施されていたことが原因で北海道で一酸化炭素中毒による死亡事故が発生したこと,業務上過失致死の疑いで本件不正改造を行った人物を捜す調査が行われていること,本件不正改造に被告らの関係者は関与していない模様であることが記載されていた。 (5)本件軽井沢事故の発生ア本件軽井沢事故は,平成3年9月7日に発生した。本件軽井沢事故に係る本件湯沸器1は,被告Y2が昭和56年5月に製造し,販売事業者であるO商事が昭和57年5月7日にUハイムの浴室(脱衣場)に設置したものである。 イUハイムは,平成3年5月から7月にかけて,利用者から,本件湯沸器1の種火を付けるのに苦労したとか,本件湯沸器1が使えないなどといった苦情が寄せられたことから,同年7月21日,O商事に修理を依頼した。 O商事は,同月23日熱電対を交換したが,改善しなかったため,翌24日,再度点検した上,種火を大きくしてみたものの,相変わらず改善が見られなかったたため,被告Y1の長野営業所に修理を依頼した。 ウそこで,被告Y1の長野営業所従業員であったHが,平成3年8月7日,修理のためにUハイムに赴いた。 Hは,本件湯沸器1を点検し,器具せんつまみを回してもパイロットバーナーが点火しないことから,コントロールボックスないしマグネット部分に故障があるのではないかと考え,とりあえず,コントロールボックスを新しいものと交換したが,パイロットバーナーが点火しなかったため,コントロールボックスを元のものに戻した。Hは,上記作業に当たっ 分に故障があるのではないかと考え,とりあえず,コントロールボックスを新しいものと交換したが,パイロットバーナーが点火しなかったため,コントロールボックスを元のものに戻した。Hは,上記作業に当たって,コントロールボックスの端子台の配線を外してコントロールボックスを交換したが,元のものに戻した際,再び端子台の配線をつないだ。 次に,Hは,マグネットを交換してみたが,やはりパイロットバーナーが点火しなかったことから,これも元のものに戻したが,結局,自分では修理できないと判断し,O商事に立ち寄り,修理費用がかかると伝えて買換えを勧めた。 エそこで,O商事が,Uハイムに意向を尋ねたところ,Uハイムから,費用がかかっても修理をしてほしいとの回答があったことから,再び,被告Y1の長野営業所従業員であるGが,平成3年8月9日,修理に赴いた。 Gは,修理に赴くに当たって,Hから,コントロールボックスとマグネットを交換してみたが,改善しなかったとの報告を受けており,マグネットバルブの押し不足が故障の原因ではないかと考えていたことから,本件湯沸器1の点火操作を何度か繰り返したところ,最初は点火しなかったが,強く回したり長く保持するなどした場合には点火することがあったため,マグネットまで電圧が来ており,押しレバーの具合が悪いと判断した。そして,Gは,マグネットバルブを押し上げるスピンドルの奥の押しレバーのゆがみを修正する修理を行い,これにより本件湯沸器1は点火するようになったが,かかる修理の際,コントロールボックスに触れたことはなかった。 オ平成3年9月7日,本件軽井沢事故が発生したところ,事故後の調査によって,事故発生当時,本件湯沸器1は,コントロールボックスの配 線を一つの端子にまとめて配線する形の本件不正改造が行われており,かつ,コンセント 本件軽井沢事故が発生したところ,事故後の調査によって,事故発生当時,本件湯沸器1は,コントロールボックスの配 線を一つの端子にまとめて配線する形の本件不正改造が行われており,かつ,コンセントに電源プラグを入れずに使用されていたため,排気ファンが作動せず,一酸化炭素が室内に充満した結果,事故に至ったことが判明した。また,コントロールボックスには,はんだ割れが認められ,コントロールボックスが故障していたため,正規の配線のままではパイロットバーナーが点火しないことが判明した。 (6)本件軽井沢事故後における被告らの対応事故を受けて,被告Y2の品質管理部は,平成3年9月,各サービスセンターと営業所に対し,「メンテナンス情報」と題する書面を発出した。この書面には,強制排気式ガス湯沸器について,安全装置の回路が改造又は誤接続されていると,本来の安全装置の機能を果たさず,不完全燃焼,異常加熱が起きること,不具合現象にかかわらず,機会のあるごとに安全装置の回路の改造や誤接続がないかを確認すべきことが具体的な確認の方法も含めて記載されていた。 また,被告らにおいて,本件軽井沢事故が被告Y1の従業員による修理ミスによって発生した可能性を否定できないとの認識から,修理に携わる者の修理技術を向上させる必要性について検討が始まり,平成3年10月ないし11月ころ,各営業所のトレーナーが修理担当者に指導的な立場で修理技術を指導するトレーナー制度が創設された。 (7)本件奈良事故の発生ア本件奈良事故は,平成4年1月3日に発生した。本件奈良事故に係る本件湯沸器2は,被告Y2が昭和56年11月に製造し,事故発生の七,八年前にVハイツが建築された際,同ハイツ1階に取り付けられたものである。Vハイツは,その1階と2階がそれぞれ賃貸され,本件奈良事故発生時,1 は,被告Y2が昭和56年11月に製造し,事故発生の七,八年前にVハイツが建築された際,同ハイツ1階に取り付けられたものである。Vハイツは,その1階と2階がそれぞれ賃貸され,本件奈良事故発生時,1階に2名,2階に原告X3らがそれぞれ居住していたところ,本件奈良事故が発生し,一酸化炭素中毒により1階に居住していた2名が死亡 した上,原告X3らも救急車で病院に搬送された。 事故後の調査により,本件湯沸器2のコントロールボックスの配線に本件不正改造が施されていたこと,事故発生当時,電源プラグをコンセントに入れずに使用されていたこと,そして,本件湯沸器2のコントロールボックスは故障していなかったことが判明した。 イ上記アについて,原告らは,不正改造は被告Y1奈良営業所従業員が行ったと考えられ,仮にそれが否定されたとしても,少なくとも被告Y1奈良営業所から依頼を受けたY1サービスショップの者が行ったと考えられる旨主張する。 なるほど,証拠(甲11,54)によれば,ガス事業者が,本件奈良事故の半年から1年ほど前に,Vハイツの入居者から火がつかないとの連絡があり,被告Y1奈良営業所に修理を依頼したことがあり,Y1サービスショップが修理をしたと思われる旨述べており,大阪サービスセンターのPが作成した平成4年1月14日付け報告書には,ガスを納入していたQからの聴取内容として,ここ2年ほどは修理をしていないが,過去2回ほど本件湯沸器2の修理を依頼し,原因は1度は調温軸固着で,もう1度は点火不良であり,修理は被告Y1の従業員が来ていた旨記載されていることが認められ,被告Y1奈良営業所の従業員又はY1サービスショップの者が本件湯沸器2の修理に当たった可能性を完全に否定することはできないけれども,他方,被告Y1奈良営業所が本件湯沸器2の修理をした履歴を められ,被告Y1奈良営業所の従業員又はY1サービスショップの者が本件湯沸器2の修理に当たった可能性を完全に否定することはできないけれども,他方,被告Y1奈良営業所が本件湯沸器2の修理をした履歴を裏付ける修理伝票等は存在せず,また,修理が行われた時期や改造が行われた時期も不明であることなどからすれば,第三者により改造がなされた可能性を排斥することはできず,結局,被告Y1奈良営業所の従業員又はY1サービスショップの者が改造を行った事実を認めるに足りない。原告らの上記主張は採用できない。 (8)本件各事故後における本件不正改造による一酸化炭素中毒事故の発生状 況等本件各事故発生後,平成4年1月7日から平成17年11月28日までの間に,本件7機種について,本件不正改造が原因の一酸化炭素中毒事故が9件発生し,7名が死亡し,9名が負傷した。 被告Y2は,経済産業省の指示を受けて,平成18年7月から本件7機種の点検・回収を行い,同年12月12日までに1万9318台の点検が終了したが,このうち,229台において,本件不正改造が発見された。本件不正改造が行われた地域は,36都道府県に及んでいた。 このように多くの本件不正改造が行われた背景について,被告Y2の第三者委員会は,平成18年12月21日付けの「事故の再発防止と経営改革に関する提言」において,修理業者がガス湯沸器の修理に赴き,湯沸器のコントロールボックスに問題があると分かったものの,取替え用のコントロールボックスが手元にない場合,使用者に何とかしてガス湯沸器を使えるようにしてほしいと懇願され,これに窮して一時的な応急処置として本件不正改造を行ったと考えられるとの見解を示した。 被告らの責任原因(共同不法行為・民法719条)について(1)争点1(欠陥製品を製造,販売してはならない義務 れに窮して一時的な応急処置として本件不正改造を行ったと考えられるとの見解を示した。 被告らの責任原因(共同不法行為・民法719条)について(1)争点1(欠陥製品を製造,販売してはならない義務違反)についてアまず,原告らは,本件各湯沸器は,燃焼装置と排気装置の連動不全があり,製造物が通常有すべき安全性を欠いていた旨主張する。 上記認定事実(2)アのとおり,本件各湯沸器は,パイロットバーナーの口火が点火していれば,流入水の圧力によってガス弁が開いてガスが流入して燃焼を開始し,この動作には電気を必要としない一方,排気ファンは通電がなければ作動しないことが認められるけれども,上記認定事実(2)イのとおり,本件各湯沸器は,PRリレーへの通電がなく,PRリレーの回路がオープンになっている場合には,マグネット安全弁が閉じてガスの供給を遮断し,パイロットバーナーの火が消えるという仕組みにより,電 源プラグがコンセントに入っていない場合には燃焼しないし,排気ファンが止まった場合には,屋内に排気が溢れ出てくることによる温度の上昇を感知して排気が屋内に漏れていることを検出し,PRリレーをオープンにして,ガスの供給が遮断される。 このように,本件各湯沸器は,排気ファンが回転しない場合には,ガスの供給も遮断されて燃焼しないのであり,燃焼装置と排気装置は連動する仕組みになっていたことが認められ,この点において,本件各湯沸器が通常有すべき安全性を欠いていたとは認められない。 原告らは,排気ファンが作動しないことを直接感知して燃焼を止める仕組みとなっていないことをもって,本件各湯沸器の欠陥であると主張するけれども,本件各事故においては,本件不正改造がなされていなければ,上記のとおり,燃焼装置と排気装置が連動して燃焼を止めることができていたのであるから, をもって,本件各湯沸器の欠陥であると主張するけれども,本件各事故においては,本件不正改造がなされていなければ,上記のとおり,燃焼装置と排気装置が連動して燃焼を止めることができていたのであるから,この点をもって本件各湯沸器の欠陥であるということはできない。 なお,原告らは,本件各湯沸器の仕組みでは,水流スイッチが故障して開いたままになったり,FRリレーが故障してFRリレー接点が開いたままになると,排気ファンは作動することができないし,排気ファン自体が故障した場合には,通電しても排気ファンが作動しないなどとも主張するけれども,本件各事故においては,そもそも水流スイッチ,FRリレーの故障,排気ファンの故障のいずれの事実も認められないから,原告らの主張は,前提において失当である。 イまた,原告らは,本件各湯沸器には,安全装置であるコントロールボックス内のプリント基板が短期間で頻繁にはんだ割れを生じるという欠陥,及び安全装置を電気回路から排除する不正改造が容易に行われる構造であるという欠陥があり,交換するためのコントロールボックスは供給が不十分で,高価である上,被告らが修理要領等に記載したこれに代わる修理方 法も極めて複雑困難であったため,故障したコントロールボックスを電気回路から排除してガス湯沸器を使用可能にする上記の不正改造が誘発されたのであって,本件各湯沸器は製造物として通常有すべき安全性を欠いていた旨主張する。 確かに,証拠(甲3)によれば,被告Y2は,経済産業省の指示を受けて,平成18年7月から本件7機種の点検・回収を行ったところ,点検・回収した機器のうち本件不正改造のあった226台の中で同年8月19日までに分析が終わった170台の機器については,137台について故障原因が特定されており,約7割強に相当する99台においてコン 検・回収した機器のうち本件不正改造のあった226台の中で同年8月19日までに分析が終わった170台の機器については,137台について故障原因が特定されており,約7割強に相当する99台においてコントロールボックス内の基板におけるはんだ割れが確認されたことが認められ,本件不正改造が行われる原因の1つは,はんだ割れによるコントロールボックスの故障を解消し,継続使用することにあったと考えられる。また,苫小牧市内でY1サービスショップを営んでいたNは,コントロールボックス内の修理は分からないから行わなかった,交換するためにコントロールボックスを注文しても,通常であれば札幌から2日くらいで到着するところを,1週間から10日ほどかかることもあった旨(甲14),東京都内でY1サービスショップを営む株式会社Rに勤務するS(甲36,68)は,修理要領に記載された方法でコントロールボックスの修理を行うには高い技術を要するため実用的ではなく,交換するほかなかったが,コントロールボックスの供給が不足しており,被告Y1の東京サービスセンターに注文しても,通常であれば翌日か翌々日に到着するところ,到着までに二,三週間から1か月くらいかかることがあった旨,原告らの主張に沿う供述をしていることが認められる。 しかしながら,上記認定事実(7)アのとおり,本件湯沸器2については,コントロールボックスに故障があったことは証拠上認められないのであって,はんだ割れによるコントロールボックスの故障を解消するために本件不正改造が行われた事実が認められない上,本件湯沸器1についても,上 記認定事実(5)ウ及びエのとおり,Hが交換用のコントロールボックスを用意していたのであり,また,Uハイムの管理者は,費用がかかっても修理してほしい旨述べていたのであって,コントロールボックスが 記認定事実(5)ウ及びエのとおり,Hが交換用のコントロールボックスを用意していたのであり,また,Uハイムの管理者は,費用がかかっても修理してほしい旨述べていたのであって,コントロールボックスが不足したり,コントロールボックスが高価であったために本件不正改造が行われたものとは認められない。また,本件湯沸器1にはんだ割れが生じていたとしても,不具合が生じたのは平成3年5月ころであるから,このころにはんだ割れが生じたものと推測されるところ,本件湯沸器1が設置されてからこの時点までに,既に約9年が経過していることからすれば,本件湯沸器1のコントロールボックス内のプリント基板が短期間ではんだ割れを生じたものとも認められない。 以上によれば,コントロールボックスの供給が十分であったのか否か等にかかわらず,原告らの主張はその前提を欠くものであり,採用することはできない。 ウなお,仮に,本件各湯沸器について,安全装置であるコントロールボックス内のプリント基板が短期間で頻繁にはんだ割れを生じること,安全装置を電気回路から排除する不正改造が容易に行われる構造であること,コントロールボックスの供給が不十分かつ高価であり,被告らが修理要領等に記載したこれに代わる修理方法も極めて複雑困難であったことが認められたとしても,第三者が安全装置を無効にする不正改造を行うことは,それ自体特殊な行為であり,本件各湯沸器の製造・販売時点において,本件不正改造が行われることを予見していたような特段の事情があれば格別,本件不正改造の可能性をもって,本件各湯沸器の欠陥ということはできないというべきである。 エ以上によれば,本件各湯沸器の製造・販売時点において同湯沸器に欠陥があったと認めることはできないから,被告らにおいて,欠陥製品を製造,販売してはならないとの義務違反 できないというべきである。 エ以上によれば,本件各湯沸器の製造・販売時点において同湯沸器に欠陥があったと認めることはできないから,被告らにおいて,欠陥製品を製造,販売してはならないとの義務違反があったとはいえない。 (2)争点2(保守管理義務(不正改造防止義務)違反の有無)についてア原告らは,被告らは,被告らの従業員,被告らが製造・販売するガス湯沸器を取り扱うサービスショップ及び工事業者に対し,不正改造等をしないように指導監督する義務があると主張するところ,上記認定事実(4)のとおり,本件軽井沢事故以前に3件の本件不正改造による事故が発生していた上,事故に至ったもの以外にも本件不正改造が行われたガス湯沸器が発見されており,被告らはこれらの事実を認識していたこと,また,本件不正改造は修理業者でなければ行えないものであり,しかも,苫小牧事故の後には,Y1サービスショップを営んでいたNが過去に本件不正改造を行った経験があると述べており,昭和62年1月13日ころには,お客様相談室において,修理業者にコントロールボックスの動作回路が理解されてきたことが本件不正改造が行われる理由であるとして,本件不正改造を防止する方策の検討を行っていたことからすると,被告らは,本件不正改造は,修理業者が修理の機会に行うものであり,今後も修理の機会に本件不正改造が行われる可能性があることを認識していたものと認められる。 加えて,証拠(甲34,52)によれば,被告らの代表取締役であったKにおいても,本件不正改造は,知識のない使用者が行うはずはなく,サービスショップの従業員やそれ以外の修理業者が本件不正改造を行っている可能性があると認識していたことが認められる。 そして,上記認定事実(1)イのとおり,被告Y1は,サービスショップに対して,被告Y2製の製品 ップの従業員やそれ以外の修理業者が本件不正改造を行っている可能性があると認識していたことが認められる。 そして,上記認定事実(1)イのとおり,被告Y1は,サービスショップに対して,被告Y2製の製品の構造を説明し,修理の方法を指導していたのであって,不正改造を行わないように指導できる立場にあったと認められる。他方,修理業者に対して本件不正改造を行わないように適切に注意を喚起することができる者が被告ら以外にいたことは証拠上認められない。 以上の事実に照らすと,ガス湯沸器を製造・販売したことから被告らに直ちに継続的な保守管理義務が発生するかどうかはともかく,少なくとも, 本件軽井沢事故が発生する前の時点において,被告らは,被告らが製造・販売した製品について今後も修理業者が本件不正改造を行うことにより一酸化炭素中毒による死亡事故が起こる危険性があることを認識できたのであり,また,被告らはサービスショップに対しても本件不正改造を行わないように指導できる立場にあった一方,他に修理業者に対して適切な注意喚起を行うことができる者はいなかったのであるから,被告らにおいて,修理業務に携わる被告らの従業員やサービスショップその他の修理業者に対し,安全装置の機能を失わせる本件不正改造を行わないように注意を喚起すべき義務を負っていたというべきである。 イそこで,被告らがその義務に違反したかについて検討するに,上記認定事実(4)エ(ウ)及びカのとおり,被告らは,苫小牧事故の後の昭和63年5月及び帯広事故の後の平成2年12月に,2度にわたり,いかなる理由があっても器具に設置されている安全装置を殺す改造は行ってはならないこと,このような改造作業が原因で事故が発生した場合には責任を問われる可能性があること,このことをY1社内のみならず,サービスショップ,販売店 具に設置されている安全装置を殺す改造は行ってはならないこと,このような改造作業が原因で事故が発生した場合には責任を問われる可能性があること,このことをY1社内のみならず,サービスショップ,販売店,工事業者等にも広く伝え,実行するように徹底を期すること等を記載した注意文書を全国の営業所等に配布しており,被告らの従業員やサービスショップ,販売店等に対し,本件不正改造をしないように積極的な働きかけをしていたことが認められるから,被告らは,上記義務を果たしていたものというべきである。 ウこの点,原告らは,単に不正改造をしてはならないとの文章で注意喚起をするだけでは不十分であり,被告らには,本件不正改造により死亡事故が発生したこと,具体的な不正改造の内容を明確にして,修理業者が真摯に不正改造を防止しなければならないような内容で注意喚起すべき義務があった旨主張するところ,上記認定事実(4)カによれば,品質管理部から,統括所長あてに配布した「ガス器具の安全点検に関する注意の件」と題す る書面には,コントロールボックスの端子部に本件不正改造がなされていたことが原因で北海道で一酸化炭素中毒による死亡事故が発生したことが記載されていることが認められるけれども,証拠(甲37)によれば,Rの代表取締役であるTは,本件不正改造を禁止する指示はあったが,具体的な死亡事故に関連させての指示は一切なかった旨供述していることが認められ,具体的な死亡事故の発生や本件不正改造の内容については,必ずしも修理業者にまで周知されていなかったことが認められる。 しかしながら,修理業者に対しても,具体的な死亡事故の発生や本件不正改造の内容について周知しておけば,本件不正改造の防止にとってより効果的であったといえるとしても,本件不正改造の内容を周知することは,逆に,何らかの 業者に対しても,具体的な死亡事故の発生や本件不正改造の内容について周知しておけば,本件不正改造の防止にとってより効果的であったといえるとしても,本件不正改造の内容を周知することは,逆に,何らかの理由で用いられている安全装置を無効化する不正改造の方法を,これを知らない者にも広く知らせることにつながる上,そもそも本件7機種はガスを燃焼させる装置であることからすれば,事故の危険性と言うだけで,事故内容等を具体的に伝えなくとも,「事故」とはガス漏れや不完全燃焼,爆発といった人命に関わるものと容易に理解できるのであるから,上記イで認定説示したとおり,被告らは本件7機種の修理に携わる者らに対し,安全装置の機能を失わせる不正改造をしないようにとの注意喚起を行ったことにより,注意義務を果たしたものというべきである。 エまた,原告らは,被告らが,組織的に不正改造に関与し,本件軽井沢事故については被告らの営業所の従業員自身が不正改造を行ったのであり,本件奈良事故についても被告らの営業所の従業員自身が安易に不正改造を行ったと推認されるのであり,被告ら自身が積極的に危険な製品を作り出していたのであって,この点においても被告らの保守管理義務(不正改造防止義務)違反は明らかである旨主張する。 しかしながら,本件奈良事故について,被告らが本件不正改造を行ったと認定できないことは,上記認定事実(7)イとおりであり,また,本件軽 井沢事故について,下記3において認定説示するとおり,Hが本件不正改造を行ったとしても,Hが故意に本件不正改造を行ったことを認めるに足りる証拠はない。 さらに,上記認定事実(4)のとおり,被告らは,本件不正改造による事故が起こるたびに,修理業者等に対して不正改造を行わないように注意喚起を行ってきたのであり,もとより被告らが組織的に不正改 はない。 さらに,上記認定事実(4)のとおり,被告らは,本件不正改造による事故が起こるたびに,修理業者等に対して不正改造を行わないように注意喚起を行ってきたのであり,もとより被告らが組織的に不正改造に関与していた事実を認めるに足りる証拠はない(なるほど,Nは,平成7年に北海道恵庭市で発生した本件不正改造による事故の裁判において提出された弁護士作成の事情聴取報告書(甲15)において,被告Y1札幌営業所で行われた講習会において本件不正改造を教えられたと述べているが,他方,Nは,証人尋問の際には,本件不正改造の方法をどのように知ったのかは分からない旨述べている(甲14)ことに照らし,上記事情聴取報告書の記載をそのまま信用することはできない。)。 オなお,原告らは,被告らには,欠陥のあるガス湯沸器の交換及び修理の対応が可能なように,十分な交換部品・機器の備蓄等交換及び修理体制の確立を行う義務があると主張するけれども,上記認定事実(7)アに加えて下記3において認定説示するとおり,本件各事故は,そもそも修理部品の不足が原因で発生したとは認められないから,原告らの上記主張は前提を欠くものであって,採用できない。 (3)争点3(ガス湯沸器一斉点検及び回収・告知義務違反の有無)についてア上記(2)アで認定説示したとおり,被告らにおいては,本件各事故の発生前において,それ以前に発生した一酸化炭素中毒事故と同種の事故が発生する可能性があることを認識できたものと認められる。 しかしながら,上記(1)で認定説示したとおり,本件各湯沸器自体に欠陥があったとは認められない上,上記認定事実(4)イ,ウ,オのとおり,本件軽井沢事故以前の事故の発生場所はいずれも北海道内に限られており, それ以外の地区で本件不正改造が報告されたという証拠はなく,また,被告らは れない上,上記認定事実(4)イ,ウ,オのとおり,本件軽井沢事故以前の事故の発生場所はいずれも北海道内に限られており, それ以外の地区で本件不正改造が報告されたという証拠はなく,また,被告らは,本件不正改造による一酸化炭素中毒事故の再発を防止するため,修理に携わる者に対して注意文書を配布して注意喚起を行い,本件軽井沢事故が発生した後には,トレーナー制度を創設し,修理技術の向上に努めるなど,一定の行為を行っていたことからすると,本件各事故が発生した当時において,被告らにおいて,本件軽井沢事故の起きた長野県や本件奈良事故の起きた奈良県で,本件7機種の一斉点検等を行うまでの義務があったものとは認められない。 イ原告らは,昭和63年に配布した「ガス器具の安全点検に関する注意」が奏功せずに平成2年の帯広事故が発生し,同文書の配布では事故を回避することができなかったことが露呈されたのであるから,被告らは,より効果的な方策を採るべきであった旨主張する。 確かに,注意文書の配布によっては同種事故の発生を食い止めることができなかったことからすれば,より効果的な方法を採ることが望ましかったといえるにしても,上記認定のとおり,本件不正改造による一酸化炭素中毒事故は3件とも北海道内で発生していたし,W株式会社によって一斉点検がなされたが,他に本件不正改造は発見されず,これが北海道内外を通じて広く行われていると認識できる状況にはなかったのであるから,注意文書を再度配付して,注意事項を徹底する方法が不十分ないし誤りであるということはできず,原告らの主張は採用できない。 この点,原告らは,「ガス器具の安全点検に関する注意」の配布による被告らの指導は,被告らの従業員にすら十分に伝わっていなかったと主張し,その根拠として,Hが,証人尋問において,「ガス器具の安全 い。 この点,原告らは,「ガス器具の安全点検に関する注意」の配布による被告らの指導は,被告らの従業員にすら十分に伝わっていなかったと主張し,その根拠として,Hが,証人尋問において,「ガス器具の安全点検に関する注意」に記載された「安全装置」の意味を問われたのに対し,空だき防止や過熱防止器を最初に挙げ,コントロールボックスも含まれると理解していたのかと尋ねられて初めてこれを肯定したことを指摘するけれど も,Hの上記証言は,空だき防止や加熱防止器を例示して述べたにすぎないことは明らかであって,それですべてであるとか,排気溢れ防止装置やこれを構成するコントロールボックスが安全装置に含まれないと述べているわけではないから,Hの上記証言をもって,被告らの指導が従業員に伝わっていなかったとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠もない。 ウさらに,原告らは,被告らは,本件各事故以前の同種事故の発生後に,消費者に対して,同種機器に危険性があること等を告知する義務を負っていたと主張するが,上記アで認定説示したとおり,被告らは,注意文書の配布等をすることによって一酸化炭素中毒事故の再発防止対策をとっていたことなどの事実に照らすと,本件各事故発生前の時点において,上記防止対策を超えて,本件不正改造による一酸化炭素中毒事故が発生していなかった長野県や奈良県を含む日本全国の消費者に対して,同種機器に危険性があること等を告知するまでの義務を負っていたものとは認められない。 (4)以上のとおり,本件各事故について,原告らが主張する被告らの注意義務ないし注意義務違反は,いずれもこれを認めることはできず,したがって,その余の点を判断するまでもなく,被告らに不法行為(民法719条)は成立しない。 争点4(被告Y1の責任原因(①使用者責任(民法715条1項) 反は,いずれもこれを認めることはできず,したがって,その余の点を判断するまでもなく,被告らに不法行為(民法719条)は成立しない。 争点4(被告Y1の責任原因(①使用者責任(民法715条1項),②不法行為責任(民法709条)の有無))について(1)上記認定事実(5)ウによれば,Hは,平成3年8月7日,本件湯沸器1のコントロールボックスの配線をいったん外し,再度配線を行ったことが認められるところ,同月9日に本件湯沸器1の修理を行ったGは,コントロールボックスを触っていないこと,その後,本件軽井沢事故が起こるまでの約1か月間,本件湯沸器1の不具合は報告されておらず,O商事が被告Y1以外の業者に修理を依頼するとか,第三者がコントロールボックスの配線に手を加えるとかいうことは考えにくい上,このことを窺わせる証拠もないことな どからすると,Hが,本件湯沸器1のコントロールボックスの配線の改造を行ったと推認するのが相当である。 (2)これに対し,原告らは,H及びGの各証言は信用できず,平成3年8月7日の時点でコントロールボックスにはんだ割れが生じており,Hは,交換用のコントロールボックスがなかったため修理をせず,修理(コントロールボックスの交換)をすれば2万円以上かかることを理由に湯沸器の交換を勧めたが,なお修理を強く求められたため,同月9日,Gがコントロールボックスの配線を改造したものと強く推認されるなどと主張する。 まず,原告らは,Hの証言が真実であれば,本件軽井沢事故が発生した当時,本件湯沸器1のコントロールボックスには異常がなかったことになるから,Hの証言は客観的事実と符合しない旨主張するけれども,Hは,コントロールボックスを交換しても湯沸器は直らなかったと証言しているものであって,コントロールボックスに異常がなかったとは証 とになるから,Hの証言は客観的事実と符合しない旨主張するけれども,Hは,コントロールボックスを交換しても湯沸器は直らなかったと証言しているものであって,コントロールボックスに異常がなかったとは証言していないし,また,コントロールボックスに異常があっても,他の部分にも異常があれば,コントロールボックスを交換しても直らないのであるから,Hの証言が客観的事実と符合していないとはいえない。 また,原告らは,本件軽井沢事故後である同年9月8日に軽井沢警察署において事情聴取がなされた際に作成された被告Y2のメモ(甲54)に,修理経過として「8/7出張(H)点検点火操作をした着かなくて部品が無くて直らなかった。」「修理をされたら2万円以上掛かりますので,学校の方へ交換の方向で確認してくださいと依頼した」と記載されており,コントロールボックスがなかったことが強く推認される旨主張する。Hは,上記記載が自分の報告に基づくものであることを自認し,この点について,どの部品を交換してもいいかも分からない状態であり,取替えを勧めるに当たって,自分なりに適当に値段を付けて2万円と話した旨証言しているところ,どの部品を交換するのかも分からずに2万円などと具体的な数字を述べるこ と自体不自然さが否めないとしても,上記メモには「部品」と書かれているだけであって,当時,被告Y1長野営業所においてコントロールボックスが不足していたことを裏付ける証拠もないことからすると,上記メモの記載によってHの証言の信用性を否定することはできない。 さらに,原告らは,Gの証言について,①被告Y1のサービス資料や被告Y2の事故調査追加報告書には,点火しないという不具合が生じる理由としてマグネット押さえ板の不具合は挙げられていないこと,②Jがマグネット押さえ板の調整によって点火 ,①被告Y1のサービス資料や被告Y2の事故調査追加報告書には,点火しないという不具合が生じる理由としてマグネット押さえ板の不具合は挙げられていないこと,②Jがマグネット押さえ板の調整によって点火を可能にする修理方法に触れる証言をしていないこと,③Gが修理した部品や修理方法を明確に説明できていないこと,④本件湯沸器1と同種のガス湯沸器では,点火するために器具せんつまみを回すと,器具せんつまみに加わった回転力が機械的な構造によって上から下へ押す力に変換されるにすぎないため,強く押して回してもマグネット押しレバーに働くシーソーの力は変わらず,Gが証言するような強く回したり長く保持したときに点火するという状況が生じることはなく,仮にこのような状況が生じたとしても,そこからマグネット押しレバーの不具合が推測されるものではないとして,マグネット押しレバーを調整したというGの証言は信用できないと主張する。原告らが指摘する上記①及び②について,Gは,マグネット押しレバーを調整した旨証言しているところ,証拠(甲2,10)によれば,被告Y1の工事業者向けサービス資料や被告Y2の事故調査追加報告書には,点火しないという不具合が生じる理由としてマグネット押しレバーの不具合は挙げられていないけれども,サービス資料は,主たる故障原因及び修理方法が記載されているにすぎず,これに記載されていない原因によって故障することがあり得ないとはいえないし,Jは,「レバー板」(Gが証言するマグネット押しレバーを指すものと考えられる。)は,それが変形すれば交換の対象となる旨証言していることからすると,マグネット押しレバーの交換による修理がないとはいえず,この点をもってGの証言の信用 性を否定することはできない。また,Gは,上記③について,修理した部品が分解図及び部品リス ることからすると,マグネット押しレバーの交換による修理がないとはいえず,この点をもってGの証言の信用 性を否定することはできない。また,Gは,上記③について,修理した部品が分解図及び部品リストの128番(レバー板)か127番(レバー取付)のどちらであるか分からない旨述べて,部品を特定できず,修理方法についても,レバーのゆがみをドライバーかプライヤーで調整したと証言する一方,器機をどこまで分解したかははっきりとは記憶していないなど,その証言には,あいまいな部分があるけれども,Gが修理を行った時点から既に18年余りが経過していることを考慮すれば,明確な記憶がないからといって,このことから直ちにGの供述の信用性を否定することはできないというべきである。さらに,上記④について,Jは,器具せんつまみを強く押してもマグネットを開けるシーソーに働く力は変化しない旨,Gの証言と整合しない証言をしているけれども,このことは,Gの本件湯沸器1の構造に関する理解が不十分であったことを示すにすぎず,このことをもってGの証言がすべて虚偽であるとか,Gが改造を行ったとかいうことができないことは明らかである。 したがって,原告らの上記主張を採用することはできない。 (3)上記(1)及び(2)で認定説示したとおり,本件湯沸器1のコントロールボックスの配線の改造を行ったのは,Hであると推認されるところ,この点について,Hは,自分の記憶では,コントロールボックスの配線は元どおりに戻したはずであり,配線の状態を故意に変えることはしていない旨供述するが,仮に,そうであったとしても,被告Y1の従業員としてガス湯沸器の修理を依頼された以上,本来の正しい配線を行うべき注意義務があったことは明らかであるから,結果として誤った配線を行ったことについて,少なくとも過失が認めら しても,被告Y1の従業員としてガス湯沸器の修理を依頼された以上,本来の正しい配線を行うべき注意義務があったことは明らかであるから,結果として誤った配線を行ったことについて,少なくとも過失が認められるというべきである。 (4)ところで,本件湯沸器1は,上記認定事実(3)のとおり,本件不正改造が行われていても,電源プラグがコンセントに入っていれば,排気ファンは回転するから,電源プラグをコンセントに入れずに本件湯沸器1を使用したこ とも,本件軽井沢事故が発生した原因の1つであると認められる。そして,証拠(甲54)によれば,本件湯沸器1には,「湯沸器の点火は乾燥機横のコンセントに電源を入れてください」と記載された紙が貼付されていたことが認められ,電源プラグがコンセントに差し込まれていない状況で本件湯沸器1を使用した点において,Hの過失行為と一酸化炭素中毒による亡A死亡の結果との相当因果関係の存在が問題となる余地がある。 しかしながら,電源が入っていなくても,ガス湯沸器が作動して温水が出る状態であれば,使用者において,電源プラグをコンセントに差し込むことを忘れるなどしたまま,ガス湯沸器を使用する可能性があるし,特に,本件湯沸器1が設置されていた場所が不特定の利用者が宿泊する保養施設であることからすれば,本件湯沸器1の使用方法に通じているとはいえない保養施設の利用者が,電源が入っていない状態で,本件湯沸器1を使用する可能性は,より高いというべきであり,Hにおいても,本件湯沸器1が電源を入れずに使用される可能性があることは容易に予見し得たと認められるところである。そうすると,電源プラグがコンセントに差し込まれていない状態で本件湯沸器1を使用した行為の介在をもって,相当因果関係は否定されないというべきであり,Hの行為と一酸化炭素中毒による亡A ところである。そうすると,電源プラグがコンセントに差し込まれていない状態で本件湯沸器1を使用した行為の介在をもって,相当因果関係は否定されないというべきであり,Hの行為と一酸化炭素中毒による亡Aの死亡の結果との間には相当因果関係があると認めるのが相当である。 (5)上記(3)で認定説示したとおり,Hは,本件湯沸器1の修理の際,過失によりコントロールボックスの配線を誤ったものであるところ,Hの上記行為が被告Y1の事業の執行について行われたことは明らかであるから,被告Y1は,民法715条1項本文に基づき,原告X1らに対し,亡Aの死亡による損害を賠償すべき責任を負うものというべきである。 争点5ア(原告X1らの損害)について(1)逸失利益2920万5520円弁論の全趣旨によれば,亡Aは,本件軽井沢事故当時,家事に従事する主 婦であったことが認められ,これによれば,本件事故に遭わなければ,67歳までの25年間,年額296万0300円(平成3年賃金センサス産業計女子学歴計の全年齢平均賃金)の利益を得られたものと認められる。 生活費控除率を0.3,中間利息控除についてライプニッツ係数14.0939によって算定すると亡Aの逸失利益は,以下の計算式のとおり,2920万5520円と算出される。 2,960,300×(1-0.3)×14.0939=29,205,520(2)慰謝料2100万円ア亡Aの慰謝料は,本件軽井沢事故の態様等の諸般の事情を考慮すると,2000万円が相当と認められる。 イこれに加えて,原告X1らは,親族としての固有の慰謝料請求権を主張するけれども,同人らは,亡Aの兄及び姉であり,本件軽井沢事故当時,それぞれ結婚して別に生活をしており,亡Aとの間に民法711条所定の者と実質的に同視し得べき身分関係が存したこと等につい 求権を主張するけれども,同人らは,亡Aの兄及び姉であり,本件軽井沢事故当時,それぞれ結婚して別に生活をしており,亡Aとの間に民法711条所定の者と実質的に同視し得べき身分関係が存したこと等について主張立証もないから,民法711条による慰謝料請求権は認められない。 これに対し,亡Dの固有の慰謝料請求権については,亡Dが亡Aの母親であること,本件軽井沢事故の状況,被告Y1の過失の内容等に鑑みれば,亡Dの固有の慰謝料としては100万円が相当である。 (3)相続上記前提事実(3)イのとおり,原告X1らは,亡Aの損害賠償請求権の6分の1ずつ相続し,亡Dの慰謝料請求権を2分の1ずつ相続したものであるところ,原告X1らが相続した被告らに対する損害賠償債権の額は,以下の計算式のとおり,各自870万0920円となる。 (29,205,520+20,000,000)×1/6+1,000,000×1/2=8,700,920(4)弁護士費用各87万円本件事案の内容,審理の経過,認容額等本件において認められる諸般の事 情を総合すると,被告Y1の行為と相当因果関係のある弁護士費用は,損害額の約1割に当たる各87万円と認めるのが相当である。 なお,原告らは,本件はいわゆる製造物責任に関する事案であり,相当程度の専門性が求められるとして,弁護士費用は損害額の2割程度が相当である旨主張するけれども,上記2で認定説示したとおり,本件軽井沢事故は製品の欠陥等によって発生したものとは認められないから,原告らの主張は理由がない。 (5)合計よって,原告X1らの損害額合計は各957万0920円と算出される。 第4 結論 以上のとおりであるから,原告らの請求は,原告X1ら各自について,被告Y1に対し,957万0920円及びこれに対する不法行為の日である平成3年9月7日 各957万0920円と算出される。 第4 結論 以上のとおりであるから,原告らの請求は,原告X1ら各自について,被告Y1に対し,957万0920円及びこれに対する不法行為の日である平成3年9月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを認容することとし,原告X1らの被告Y1に対するその余の各請求及び被告Y2に対する各請求並びに原告X3らの被告らに対する各請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担について民訴法61条及び64条本文を,仮執行宣言について同法259条1項をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第23民事部裁判長裁判官河合裕行 裁判官後藤誠 裁判官塚田有紀

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