平成12年(ワ)第24号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成13年9月5日判決 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 主位的請求被告C市は,原告A会社に対し金7130万円,原告Bに対し金1736万円,及びこれらに対する昭和62年3月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 予備的請求被告C市は,原告A会社に対し金2691万円,原告Bに対し金655万2000円,及びこれらに対する平成12年5月9日から支払済みまで年5分の割合による金員,並びに原告A会社に対し別紙物件目録1記載の土地につき,原告Bに対し別紙物件目録2記載の土地につき,それぞれ平成12年4月1日から市道認定取消しないし原状回復まで毎月末日限り1平方メートル当たり1か月金75円の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本訴は,原告A会社につき別紙物件目録1記載の土地を,原告Bにつき別紙物件目録2記載の土地を,その同意を得ないまま被告C市が市道に認定したことにより,当該土地の使用収益権が侵害されたとして,原告らがそれぞれ被告に対し,不法行為に基づき,主位的請求として,当該土地の処分価額相当額の損害賠償と市道認定の日とする昭和62年3月17日からの遅延損害金の支払を,予備的請求として,①市道認定の日とする昭和62年3月17日から本訴提起の日である平成12年3月31日までの当該土地の賃料相当額の損害賠償,②これに対する訴状送達の日の翌日である平成12年5月9日からの遅延損害金,及び③本訴提起の日の翌日である平成12年4月1日から市道認定取消し又は原状回復までの当該土地の賃料相当額の損害賠償を,それぞれ求めた事案である。 1 争いのない事実等(1) 別紙物件目 害金,及び③本訴提起の日の翌日である平成12年4月1日から市道認定取消し又は原状回復までの当該土地の賃料相当額の損害賠償を,それぞれ求めた事案である。 1 争いのない事実等(1) 別紙物件目録1及び2記載の土地(以下「本件土地」と総称する。)は,いずれも原告A会社が売買により取得し,所有していたものであり,この所有権移転については,昭和39年11月7日受付の所有権移転登記を経ている(甲1から7まで)。 このうち,別紙物件目録1記載の土地はその後も原告A会社が所有し(争いがない。),別紙物件目録2記載の土地は,原告A会社から原告Bが譲り受け(平成5年3月22日受付の所有権移転登記が経由されている。甲6,7),現在所有している(争いがない。)。 (2) 本件土地については,昭和62年3月17日に道路法8条2項に基づくC市議会の議決を経た上で(争いがない。),同年4月24日に,①別紙物件目録1(1)及び(5)記載の土地を含む総延長226メートル,最大幅員9.3メートル,最小幅員7.4メートル,平均幅員7.6メートル,面積1949.4平方メートルの土地部分がD横6号線として,②別紙物件目録1(2),(3)及び(4),並びに別紙物件目録2記載の土地を含む総延長227.6メートル,最大幅員6.1メートル,最小幅員4.5メートル,平均幅員4.6メートル,面積1283.6平方メートルの土地部分がD横7号線として,C市長により,道路法に規定する市道の路線の認定を受けた。これらの市道については,同年5月15日に道路の区域が決定され,供用が開始された(乙5の1・2)。 (3) 市道認定後,本件土地の表面は舗装され,側溝が整備されており,また,地下には水道管が敷設されている(争いがない。)。 2 争点(1) 被告C市は,本件土地の市道認定に当たって, 1・2)。 (3) 市道認定後,本件土地の表面は舗装され,側溝が整備されており,また,地下には水道管が敷設されている(争いがない。)。 2 争点(1) 被告C市は,本件土地の市道認定に当たって,原告らの同意を得ていないか。 (2) 本件土地の市道認定によって原告らに損害が生じたといえるか。 (被告の主張)原告A会社が昭和42年から昭和43年にかけて,本件土地の周辺を宅地造成し分譲したが,本件土地は,この分譲宅地の買受人や一般市民の通行の便益に供するために無償で提供された土地であり,国や地方自治体が道路用地等のために買収する等の特段の事情がある場合は別として,交換価値はなく,また,これを道路以外の用途で使用することは原則としてできない性質のものである。 本件土地は,市道認定の前後を通じて道路として使用されており,認定によって土地の使用形態には何ひとつの変化もない。 よって,原告らが損害を受けたとはいえない。 (原告の主張)原告A会社は,本件土地の周辺の土地を,役員及びその親戚知人に土地の現状のまま売買したもので,売却当時には道路としての形成はなかった。 本件土地の周辺の土地は,原告A会社からの買受人から更に購入した者が住宅を建築するようになり,本件土地は自然発生的に道路として形成されてきたものであり,さらに,被告C市が周辺住民の陳情を受け応急措置として路面の補修工事を施工した結果,道路となったものである。 本件土地は,市道認定前であれば,被告C市に売却又は賃貸借をすることも可能であり,市道として必要な幅員を越えた部分は周辺隣接地主に売買又は賃貸借することができた。しかし,被告が市道認定の上で,舗装,排水溝工事を執行したことなどの結果,使用収益が制限されて損害を受けた。 (3) 損害額はいくらか。 原告らは,本件土地は,原告B は賃貸借することができた。しかし,被告が市道認定の上で,舗装,排水溝工事を執行したことなどの結果,使用収益が制限されて損害を受けた。 (3) 損害額はいくらか。 原告らは,本件土地は,原告B会社所有部分が2300平方メートル,原告B所有部分が560平方メートルあるところ,既に表面は舗装され,地下には水道管が敷設され,側溝等も敷設されているから,原告らが被告に対し,市道認定取消しを求めても原状回復に多大な費用を伴い,また,原状回復をすれば本件土地周辺住民の上水道施設,排水施設等に問題を惹起することになるとして,主位的に,1平方メートル当たり金3万1000円の割合による金員を処分価額相当損害金額として,予備的に,1平方メートル当たり1か月金75円の割合による金員を賃料相当損害金額として,それぞれ主張している。 第3 争点に対する判断 1 争点1について(1) 証拠(その具体的な摘示は,適宜,判示文末に記載する。)によれば,次の事実が認められる。 ア原告A会社は,昭和38年10月9日,設立され,昭和59年6月30日に株主総会の決議により解散し(解散登記は,同年7月12日),昭和62年6月14日,株主総会で清算結了の報告,決算報告書の承認がされ,同月24日清算結了の登記が経由された。しかし,その後,平成10年2月19日に復活し,同日清算結了の登記が抹消された(甲20,乙19)。 イ本件土地は,原告A会社に取得された後,昭和41年11月に分筆登記が経由されている。この分筆によって,所在C市字E地番F及びGの土地が東方向から西方向に向けて並んだ形で連なる細長い帯状の一団の土地部分と,その北側にこれと平行して,同所在地番H,I及びJの土地が東方向から西方向に向け並ん 筆によって,所在C市字E地番F及びGの土地が東方向から西方向に向けて並んだ形で連なる細長い帯状の一団の土地部分と,その北側にこれと平行して,同所在地番H,I及びJの土地が東方向から西方向に向け並んだ形で連なる細長い帯状の一団の土地の,2つの土地の固まりが作られた(この状態は,一見して2本の道路が平行して走っているような形状を示している。)。その後,平成5年5月19日に地番Jの土地が,同地番のほか,地番K及びLの3筆に分筆されたが,これ以外には変化がないまま,現在に至っている(甲1から8まで,乙24)。 なお,別紙物件目録1の(1)及び(5)の土地は,昭和53年3月に,登記官の職権により,不動産登記簿上の地目が公衆用道路とされている(甲1,5)。 ウ昭和60年ころには,本件土地は,野道同様で路面の破損がはなはだしく,側溝もないため降雨時には泥沼と化し,人の歩行すらできず,自動車,オートバイ,自転車等の車両は水没し,しぶきを上げて走る状態で,また,乾燥した天候のときには車の通行により粉じんを巻き上げ付近住民は迷惑している状況にあった。こうした状況にあったため,本件土地周辺の住民は,昭和61年3月14日,C市長に対し,本件土地を含む土地について市道編入の上で路面アスファルト舗装及び側溝構築をしてほしい旨請願した。さらに,昭和62年1月22日,C市D地区自治会は,A市長に対し,本件土地を含む同自治会地区内の土地について,市道に編入した上で路面舗装工事をしてほしいとの請願をした(乙1の1・2,2の1・2)。 また,本件土地周辺住民は,昭和61年にA市議会に対し,本件土地を含む土地についての市道編入に関する陳情をした。この陳情は,昭和61年3月定例議会において建設土木委員会に付託されて,閉会中継続審査に付された。同委員会は,市 ,昭和61年にA市議会に対し,本件土地を含む土地についての市道編入に関する陳情をした。この陳情は,昭和61年3月定例議会において建設土木委員会に付託されて,閉会中継続審査に付された。同委員会は,市当局者ともども現地調査を行い,その結果,①当該地域は一部宅地造成がされているものの生活道路が不整備なため相応の不便をかこっている実情にあり,その実情を市当局も十分理解していること,②しかし,同地域の道路が私道であるため,その地権者の協力を求めると同時に十分話し合いをし,市道として認定できる要件が充たされるならばできるだけ早い時期に市道として認定し,整備舗装していきたいという前向きの姿勢に市当局があることを認めた。そして,同委員会もそうした実情からしてこの陳情の趣旨は十分理解できるとした上で,この陳情を採択すべきものと決定し,同年6月の第2回議会においてその旨の報告がされた。これを受け,同議会においても報告どおりにこの陳情は採択された(乙15,証人M)。 エ昭和62年ころ,被告C市においては,私道を市道として認定をするために,土木課職員において地権者から同意の押印をもらう作業をするのが通常であった(証人M)。 (2) 他方,昭和40年ころには原告会社の専務取締役をし,昭和45年ころには原告A会社の代表取締役をしていたNは,その自伝において,次のように述べている(甲24,26,乙13)。 ア昭和41年ころ,D原野にブルドーザーで道路を拓くことを企て,O商工高校の南西角から同校敷地の南側境界線を南東方向に延長するような形で,ブルドーザーを使って原告A会社の所有地の中央を貫いてさんご礁の岩盤を削り,Pにもう一歩というところまで幅員5間の道路を造った。 イこの道路(Nは,「5間道路」と呼んでいる。)は,原告A会社の所有地 ザーを使って原告A会社の所有地の中央を貫いてさんご礁の岩盤を削り,Pにもう一歩というところまで幅員5間の道路を造った。 イこの道路(Nは,「5間道路」と呼んでいる。)は,原告A会社の所有地のほか,D地区所有地を通過しているが,Nは,D地区の承諾を得て,道路とした部分については市に無償で贈与するので,市道として維持管理してほしい旨を市役所に申し出た。 ウ Nがこのようにして道路を拓いた真の目的は,原告A会社の所有地を宅地として造成し,高く売却するためであり,同人は,5間道路の北側に更に道路を通し総面積で8000坪の宅地ができるように図面を作り,設計どおりに区画整理をして分筆登記をした。 分筆登記後,造成した宅地は売却した。地価は買値から12倍となった。その後,土地は更に値上がりし,売却の5年後の昭和47年にこれらの宅地を転売した人は,一躍土地成金となった。 エ 5間道路は,O商工高校側の入口部分が,原告B会社及びD地区以外の所有地であったため,空地とはいえ無断でブルドーザーを入れられ,道路にされたことに当該地の地主が憤慨し,騒ぎになった。そのため,代替地を提供する等の条件で交渉を試みたが,なかなか了解を得られなかった。 そこで,冷却期間を置こうと考え,5間道路を閉鎖した。通行禁止の立て札を立てたが,いつの間にか立て札がなくなり,人々が通行を始めた。地主たちも,大きな石を置いたり,大木を持ってきたりして道路をふさいだが,また誰かに取り払われるというイタチごっこが始まり,根比べの末,通行人側の粘り勝ちとなり,地主も当該地を道路用地として原告B会社に売り渡すことになり,5間道路は,天下の大道として,堂々とタクシーやトラックが通行するようになった。 これらの記述と(1)で認めたところを対比すると,本件土地が分筆された時期 用地として原告B会社に売り渡すことになり,5間道路は,天下の大道として,堂々とタクシーやトラックが通行するようになった。 これらの記述と(1)で認めたところを対比すると,本件土地が分筆された時期と符合するほか,Nが5間道路と述べているものは,その位置関係及び幅員からして,その後D横6号線として認定されることとなった土地部分(以下「南側土地部分」という。)に該当するものと認められる。また,Nが5間道路の北側に通すこととしたと述べている道路は,その後D横7号線として認定されることとなった土地部分(以下「北側土地部分」という。)のことと認めることができ,これらによれば,Nの上記記述は基本的に信用できるものと認められる。 そして,以上によれば,(1)イの分筆は,原告A会社の所有地を宅地として造成し,高く売却するためのものであり,南側土地部分及び北側土地部分は,そのための道路とすることを構想して分筆されたものであると認められる。さらに,以上のようにCの方針にどおりに原告A会社の所有地の処分が行われていることからすれば,道路として構想,分筆したこれらの土地部分を無償で市道とすることが原告A会社の方針であったものと推認される。 (3) 以上の事実に加え,証拠(乙9,17,20及び23並びに証人Q)によれば,次の事実が認められる。 ア原告A会社は,元来畜産業を目的として設立されたが,負債があり,その返済に困難があったため,畜産部門を農業法人化した上で,昭和50年代後半には,所有土地を処分して任意清算することとした。 イこの方針の下,原告A会社は,昭和58年3月18日に有限会社Rとの間で,同社に原告A会社の所有土地を4億0314万6000円で売買する内容の売買契約を締結し,これによって本件土地(厳密にいえば,本件土地に加え,その A会社は,昭和58年3月18日に有限会社Rとの間で,同社に原告A会社の所有土地を4億0314万6000円で売買する内容の売買契約を締結し,これによって本件土地(厳密にいえば,本件土地に加え,その後Sに譲り渡された所在A市字E地番T,並びに更に分筆の上で建設省に売却された同所在地番K及び同地番Vの土地も含む。U以下これらの土地を「残存所有地」という。)を除き,所有する土地すべてを換価処分し,この代金で負債を返済した。 ウ原告A会社の昭和59年6月30日の臨時株主総会では,解散の決議を行い,清算人としてS,V,Wの3名が選任されるとともに,残存所有地の処分方法について緊急動議が出されて議題とされ,いずれC市に移転すべきものであり早くに処分すべきであるという議論がされた上で,清算人会に一任することが決議された。 この点,原告らは,甲第31号証はこの臨時株主総会の議事録原稿であり,これによれば残存所有地の処分については前回の昭和57年8月15日の定時総会と同様とする旨決議されたのであり,前回と同様に株主15名連名の名義にする旨の決議があったと主張し,原告A会社代表者兼原告B本人も同旨の供述をしている。 甲第31号証の該当部分は,緊急動議があり第4号議案として取り上げた旨の記載のあとの「それを慎重に審議し清算人に前回同様とすることに満場一致で決議した」との部分である。しかし,「清算人に前回同様とする」との部分は文章として意味が通じない上に,表記上も「前回同様」の記載部分は他の記載部分と比して字間が詰まったものとなっていることが認められる。改ざんの疑いが強いといわざるを得ないため,甲第31号証は採用できず,原告A会社代表者兼原告B本人の供述も採用することは困難である。 他方,確かに甲第18号証によれば,昭和 とが認められる。改ざんの疑いが強いといわざるを得ないため,甲第31号証は採用できず,原告A会社代表者兼原告B本人の供述も採用することは困難である。 他方,確かに甲第18号証によれば,昭和57年8月15日の原告A会社定時総会で,残存所有地について15名の株主連名の名義とする旨の決議があったことが認められる。しかし,同時に解散決議がされ,また,解散に伴う土地売渡先を株式会社Xに決める旨の決議があったものと認められるところ,原告A会社は,実際にはこの解散決議によって解散登記に至っておらず,実際の解散登記は,その1年11か月ほど後に,昭和59年6月30日の株主総会の解散決議に基づいてされている。さらに,現実の土地売渡先も有限会社Rであるのは先に認定したとおりであること,残存所有地に株主連名の移転登記が経由された経過は認められないことに照らせば,昭和57年8月の定時総会決議は,結局のところ白紙に戻されたものと推認される。 エ昭和59年6月30日に開かれた原告A会社清算人会においては,Sが代表清算人に選任され,同人は代表清算人に就任することを承諾した。清算人会では,残存所有地について,将来関係当局に譲渡する方向での協議が行われ,同年8月25日に開催された原告A会社定時株主総会において将来関係当局に譲渡する旨の報告はしたものの,具体的に処分方を決めるまでには至らなかった(この点は証人Q11項から13項まで,及び111項から114項までによって認める。原告らは,同証人114項により,残存所有地を市に譲渡する旨の協議は清算人会では一切されていないと主張しているが,供述の断片を捉えた主張であって採用できない。)。 オ Sは,原告A会社が昭和62年に清算結了の登記をするまで原告A会社の代表清算人の立場にあったが,昭和62年当時,本件土地に ないと主張しているが,供述の断片を捉えた主張であって採用できない。)。 オ Sは,原告A会社が昭和62年に清算結了の登記をするまで原告A会社の代表清算人の立場にあったが,昭和62年当時,本件土地について,原告B会社が分譲した土地の譲受人らが道路として使用しているものであり,これを他に売却するとか賃貸借するとかはできない土地であるとの認識を有していた。また,同人は,原告A会社の清算上,残存所有地を整理するには市道に認定されるほうが都合がいいと考えていた。 さらに,原告A会社が残存所有地を処分することなく清算結了してしまったことについて,Sは,残存所有地は換価できるものでもなく実害もなかったため,放置してしまったと述べている。 (4) 以上によれば,ア本件土地は,昭和41年の分筆によって現在の地形が基本的に定められる際に道路として構想され,道路としての使用が予定されており(本件土地の形状及び位置関係からしても,これらのことは明らかである。),うち南側土地部分については,昭和53年ころには公衆用道路として使用される状態となっており,残りの北側土地部分についても,遅くとも昭和60年には公衆が道路として使用する状態になっていたこと,イ原告A会社は,昭和40年代の本件土地周辺の所有地を他に売却する当時から,本件土地を無償で市道とする方針を有しており,原告A会社が解散する際にも,本件土地を含めた残存所有地は,道路として市に無償で使用させる方向で議論が行われ,そのことについて原告A会社株主から明確な反対もなかったこと,ウ原告A会社の清算結了の登記を経た昭和62年当時には,原告A会社代表清算人Sは,本件土地を含む残存所有地は公衆用の道路として使用されるべきものでこれを他に売却したり賃貸したりすることはできず,その意味で無価値物であるとの認 を経た昭和62年当時には,原告A会社代表清算人Sは,本件土地を含む残存所有地は公衆用の道路として使用されるべきものでこれを他に売却したり賃貸したりすることはできず,その意味で無価値物であるとの認識にあったこと,エウの認識を背景として,原告A会社代表清算人Sは,原告A会社の清算を進める上では残存所有地が市道に認定されるほうが都合がいいと考えており,また,ウの認識から,原告A会社は,残存所有地をそのままにして清算を結了するに至ったこと,オ被告C市当局は,本件土地の市道認定がされた昭和62年当時,市道認定をするには所要の手続が必要であり,その内容のひとつとして地権者の承諾を得る必要があることを認識しており,承諾を得る作業を行うのが通常であったこと,カ被告C市が本件土地周辺住民から,本件土地の市道認定について請願を受けてから市道認定に至るまでに1年以上経過していること,が認められる。 これらによれば,昭和62年当時,原告A会社は,被告から本件土地の無償使用についての承諾を求められれば,何ら異存なく承諾したであろうと考えられる。また,被告C市も本件土地を市道として認定するためにはこの承諾を得る必要を認識しており,現実に承諾を得るための時間的余裕もあったものと認められる。逆に,承諾を得ないまま市道認定を強行しなければならないような事情が被告にあったとは認められない。 (5) ところで,残存所有地の無償使用についての原告A会社の承諾書面であると被告Aが主張する乙第3号証の別紙には,残存所有地の特定事項が記載されているほか所有者として「A株式会社」と記載され,「A会社社長之印」が押捺されているところ,これと乙第14号証及び第17号証にそれぞれ押捺されている原告A会社代表取締役印の印影との対照並びに証人Qによれば,乙第3号証の当該押印は 会社」と記載され,「A会社社長之印」が押捺されているところ,これと乙第14号証及び第17号証にそれぞれ押捺されている原告A会社代表取締役印の印影との対照並びに証人Qによれば,乙第3号証の当該押印は原告A会社代表取締役印によるものであることが認められる。 また,証人Qによれば,昭和62年当時,原告A会社代表取締役印はSが保管しており,原告A会社側の関与なしに被告C市側がこれを押印することは不可能であることが認められる。 そして,以上を総合すれば,乙第3号証の押印は,原告A会社代表清算人であるSが押印したものであり,これによって,原告A会社は被告C市に対し,本件土地を含む残存所有地の市道認定に当たって,被告C市が残存所有地を市道として無償で使用することについての承諾を与えたものと認めることができる。 (6) この点,証人Qは,乙第3号証の押印について自らした可能性は否定しないもののその記憶がない旨述べているが,同人は供述当時74歳の老人であり,また,13年も以前の事柄であり,(4)で認めた諸事情からして同人にとって特別に印象的な事柄ではないと考えられることや,同人と原告Bとの関係を考慮すれば,上の認定を左右するものではない。 また,原告らは,①本件土地の市道認定の同意書の有無についてC市議会で問題とされたが,平成11年6月18日の同議会建設土木委員会の報告書では同意書がないものと報告されており,また,平成11年9月のC市議会でも同意書の存在が明らかにされていないこと,②乙第3号証の表紙と別紙には契印がなく,表紙には承諾者の記名押印もないこと,③乙第3号証と同一様式で被告が別件土地の市道としての無償使用承諾文書であるとしている乙第10号証から第12号証までの中には,道路敷きではない土地の所有者の押印が含まれていること,④昭和62 いこと,③乙第3号証と同一様式で被告が別件土地の市道としての無償使用承諾文書であるとしている乙第10号証から第12号証までの中には,道路敷きではない土地の所有者の押印が含まれていること,④昭和62年当時原告A会社は清算会社となっていたから,原告A会社の実印といえるものは代表清算人の印鑑であり,解散前の代表取締役印ではないことを指摘し,⑤昭和57年に残存所有地を株主共有名義とする旨の株主総会決議をしているのであるから,原告A会社がこれと矛盾して無償使用の承諾をすることはあり得ない,⑥以上からすれば,乙第3号証の印鑑は偽造されたものか,乙第3号証の別紙が土地使用の承諾書とは違う別の目的で作られたものかのいずれかと考えられると主張している。 確かに,証拠上①から③の事実を認めることができる。また,昭和62年当時原告A会社が清算会社であったことは上に述べたとおりである。しかし,⑤の点は,先に判示したように認められるから,上記認定をゆるがせにするものではない。また,⑥の主張のとおりだとすれば,被告C市が乙第3号証を証拠として提出する過程で私文書偽造罪(刑法159条)に該当する行為が行われたおそれが強いことになるが,被告側にそうした犯罪行為にまで及ばなければならない事情があるとは認められない。①の点は,その後に乙第3号証が発見されたと考えることができ,②,③及び④の点も,乙第3号証が真正に成立したものではないことを直ちに帰結するものではない。 (5)までに認定した事実によれば,原告らの上記指摘を踏まえても,乙第3号証は,Fが押印することにより真正に成立したものと認められる。そして,(4)に示した諸事情からはFが被告C市に対し本件土地の無償使用の承諾を与えることは極めて合理的な行動であると考えられるのであるから,それらの諸事情と併せ乙第3号証 立したものと認められる。そして,(4)に示した諸事情からはFが被告C市に対し本件土地の無償使用の承諾を与えることは極めて合理的な行動であると考えられるのであるから,それらの諸事情と併せ乙第3号証を検討すれば,上記のとおりの認定をすることが十分に可能である。原告らの上記主張は採用することができない。 (7) 以上の次第で,本件土地の市道認定に当たって,被告C市が原告A会社の同意を得なかったものと認めることはできない。 他方,被告C市は原告Bから別紙物件目録2記載の土地の無償使用について直接同意を得ていないことがうかがわれる。しかし,原告Bは,本件土地の市道認定の後に原告A会社から別紙物件目録2記載の土地を譲り受けたのであるから,原告A会社が市道認定によって負担すべき制限は甘受しなければならない立場にある(最一小判昭和44年12月4日民集23巻12号2407頁参照)。別途,同意がないことを理由とした損害賠償請求はできないというべきである。 2 したがって,そのほかの点の判断をするまでもなく,本訴請求はいずれも理由がない。 那覇地方裁判所石垣支部裁判官小海隆則(別紙)物件目録1(1) A市字DF番公衆用道路 1014平方メートル(2) A市字DI番原野 387平方メートル(3) A市字DY番原野 42平方メートル(4) A市字DH番原野 137平方メートル(5) A市字DG番公衆用道路 720平方メートル2(1) A市字DJ番原野 市字DH番原野 137平方メートル(5) A市字DG番公衆用道路 720平方メートル2(1) A市字DJ番原野 495平方メートル(2) A市字DZ番原野 65平方メートル
▼ クリックして全文を表示