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飲酒運転車に同乗中事故により死亡した被害者について,会社の後輩である運転者が連日の勤務により疲労状態にあること及び事故直前に共に飲酒していて運転者が飲酒による影響を受けていたことを十分認識しながら事故車に同乗した事実を斟酌し,損害の公平な分担の見地から危険への接近も含む過失を認定し50パーセントの過失相殺を認めた事例平成18年10月3日判決言渡平成16年(ワ)第393号損害賠償請求事件判決主文 被告A及び被告Bはいずれも原告Cに対し,各金322万4867円及びこれに対する平成16年1月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。被告A及び被告Bはいずれも原告Dに対し,各金322万4867円及びこれに対する平成16年1月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。原告らのその余の請求をいずれも棄却する。訴訟費用は,これを2分し,その1を原告らの負担とし,その余を被告らの負担とする。この判決は,第1,2項に限り,仮に執行することができる。事実 及び理由第1当事者の求めた裁判 請求の趣旨( )被告A及び被告Bはいずれも原告Cに対し,各784万9872円及びこれ に対する平成16年1月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支 払え。( )被告A及び被告Bはいずれも原告Dに対し,各784万9872円及びこれ に対する平成16年1月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。( )訴訟費用は被告らの負担とする。( )仮執行宣言 請求の趣旨に対する答弁( )原告らの請求をいずれも棄却する。( )訴訟費用は原告らの負担とする。第2当事者の主張 請求原因( )交通事故の発生(以下「本件事故」という) 求の趣旨に対する答弁( )原告らの請求をいずれも棄却する。( )訴訟費用は原告らの負担とする。第2当事者の主張 請求原因( )交通事故の発生(以下「本件事故」という) 支払え。( )訴訟費用は被告らの負担とする。( )仮執行宣言 請求の趣旨に対する答弁( )原告らの請求をいずれも棄却する。( )訴訟費用は原告らの負担とする。第2当事者の主張 請求原因( )交通事故の発生(以下「本件事故」という) 求の趣旨に対する答弁( )原告らの請求をいずれも棄却する。( )訴訟費用は原告らの負担とする。第2当事者の主張 請求原因( )交通事故の発生(以下「本件事故」という) 。ア日時平成16年1月13日午後10時8分ころイ場所三重県名賀郡町番地先の国道d号(以下「本件事故abc現場」という)。ウ事故車両普通乗用自動車(以下「事故車」という)。エ運転者Eオ同乗者F,Gカ事故態様Eは,本件事故現場付近を事故車で走行中,ハンドル操作を誤り,対向車線を超えて道路南側にあるコンクリート製の住宅土台部分に衝突させ,これにより,E,F,Gの3名が死亡した。( )責任原因 Eは,事故車を自己のため運行の用に供していたから自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という)3条に基づき,また,Eには,適切なハンドル操作。を誤ったという過失があるから民法709条に基づき,原告らに生じた損害を賠償する責任がある。( )損害 ア治療費5万7540円イ死亡による慰謝料2800万円Fは,本件事故による脳挫傷,下顎骨折で死亡したが,平成10年10月10日には原告Cと婚姻し,2人の間には原告Dが誕生し,3人で幸せな生活を送っていたものであり,本件事故による死亡慰謝料としては2800万円をもってしても足りないほどである。ウFの逸失利益5396万7382円Fは,死亡時33歳で,H株式会社の社員であり,67歳までの34年間の逸失利益は,次のとおりである。平成14年度男子労働者賃金センサス555万4600円生活費控除割合40%喪失期間34年のライプニッツ係数16.193計算式555万4600円×(1-0.4)×16.193=5396万7382円エ葬儀費用 ンサス555万4600円生活費控除割合40%喪失期間34年のライプニッツ係数16.193計算式555万4600円×(1-0.4)×16.193=5396万7382円エ葬儀費用168万8631円オ小計8371万3553円( )好意同乗減額 Eは本件事故時には飲酒の上での運転であり,Fもそれを知っていたのであるから,発生した損害額から好意同乗による減額をするのが公平に適うものであり,その減額割合は30パーセント,額にして2511万4065円(円未満切捨)と思料する。 ニッツ係数16.193計算式555万4600円×(1-0.4)×16.193=5396万7382円エ葬儀費用168万8631円オ小計8371万3553円( )好意同乗減額 Eは本件事故時には飲酒の上での運転であり,Fもそれを知っていたのであるから,発生した損害額から好意同乗による減額をするのが公平に適うものであり,その減額割合は30パーセント,額にして2511万4065円(円未満切捨)と思料する。そこで,上記減額分2511万4065円を上記損害合計8371万3553円から控除すると,控除後の損害額は,5859万9488円となる。計算式8371万3553円×30%≒2511万4065円8371万3553円-2511万4065円=5859万9488円( )損害の填補 原告らは,本件事故後,自賠責保険金3000万円の支払を受けた。そこで,上記保険金3000万円を上記損害金5859万9488円から控除すると,控除後の損害金は,2859万9488円となる。( )弁護士費用として280万円を加えると,合計損害額は3139万94 88円となる。( )原告Cは亡Fの妻であり,原告Dは亡Fの子であり,亡Fにつき各2分 の1の相続分を有する。( )被告らは,亡Eの父母である。( )そうすると,被告両名は,原告らに対する本件事故に基づく上記損害賠 償債務3139万9488円を各相続分2分の1である1569万9744円ずつ相続している。したがって,原告らは,被告両名に対し,それぞれ上記1569万9744円の2分の1である784万9872円の支払いを請求できる。よって,原告C及び同Dは,自賠法3条,民法709条に基づき,それぞ したがって,原告らは,被告両名に対し,それぞれ上記1569万9744円の2分の1である784万9872円の支払いを請求できる。よって,原告C及び同Dは,自賠法3条,民法709条に基づき,それぞれの相続分に応じ,被告A及び同Bに対し,各784万9872円及びこれに対する本件事故日である平成16年1月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。請求原因に対する認否及び被告らの主張( )請求原因( )の事実は認める。( )同( )は知らない。( )同( )は否認する。( )同( )は否認する。抗弁( )のとおり好意同乗減額は70パーセントを下らな き,それぞれの相続分に応じ,被告A及び同Bに対し,各784万9872円及びこれに対する本件事故日である平成16年1月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。請求原因に対する認否及び被告らの主張( )請求原因( )の事実は認める。( )同( )は知らない。( )同( )は否認する。( )同( )は否認する。抗弁( )のとおり好意同乗減額は70パーセントを下らな い。( )同( )は否認する。抗弁( )のとおり既払金は3006万2990円であ る。( )同( )は否認する。( )同( )は知らない。( )同( )は認める。抗弁(1)他人性の欠如による免責アFらは,事故車の運行を支配していて,自賠法3条の他人性がない。Eは,H株式会社のIダム付替町道第1工区工事事務所(以下「現場事務所」という)において,ボーナスのない養成社員として,1か月当たり。80時間を超える違法で過酷な超過勤務を強いられていた。そして,本件事故前日の平成16年1月12日はEだけが徹夜勤務を強いられ,翌13日午前5時まで仕事を続け,約2時間仮眠をとっただけで,再び勤務につき,事故当日の同月13日午後6時30分ころまでに仕事を終了し,その後,上司であるJらと共に,居酒屋2軒でビール,日本酒,焼酎を飲酒し,現場事務所に店の車で送り届けられた。Eは,飲酒酩酊していたので,現場事務所で宿泊していく予定であったが,上司であるF及びGからそれぞれ であるJらと共に,居酒屋2軒でビール,日本酒,焼酎を飲酒し,現場事務所に店の車で送り届けられた。Eは,飲酒酩酊していたので,現場事務所で宿泊していく予定であったが,上司であるF及びGからそれぞれの自宅まで車を運転して送り届けるように強制的に指示された。その結果,Eは,極限的疲労状態のもと,飲酒して事故車を運転していて本件事故が発生したものである。事故車は,国道d号線を名張市からe方面に向かって走行していたと推定されるが,事故現場は,出発地点である現場事務所から約2キロメートルの所であるから,Eが運転を開始してから極めて短時間後に起きた事故であり,道路左側の北側路肩には約50メートル草むらが削られた真新しい跡があり,事故車は,ブレーキ痕もないまま対向車線を横断して約12メートル畑の中を飛び越えて突っ込み,道路南側のa町bc番地K方のコンクリート製の住宅土台部分に正面衝突をして激突している。 行していたと推定されるが,事故現場は,出発地点である現場事務所から約2キロメートルの所であるから,Eが運転を開始してから極めて短時間後に起きた事故であり,道路左側の北側路肩には約50メートル草むらが削られた真新しい跡があり,事故車は,ブレーキ痕もないまま対向車線を横断して約12メートル畑の中を飛び越えて突っ込み,道路南側のa町bc番地K方のコンクリート製の住宅土台部分に正面衝突をして激突している。このような本件事故態様からすると,Eが,極度の疲労と酔いによって居眠り運転してしまったものと推察される。F及びGは,本件事故当夜,Eと一緒に多量に飲酒しながら,かつ,そ れまでの過酷な労働でEの疲労が尋常でなかったことを,一緒の現場で働いていたものとして当然承知していたのに,Eに対し,津市や当時の久居市にあるFらの自宅まで長時間,しかも夜間で降雪状況のなか,飲酒運転を強いたことは極めて異常,悪質である。イ以上のとおり,Eは,事故当日は,現場事務所で宿泊をしていく予定であったが,上司であるF及びGから自宅まで送り届けるように強いられた結果,事故車の運転を強いられたものであり,Eに対する飲酒運転を指示し,運行を支配していた者は,FとGである。したがって,Fらは,自賠法3条にいう「他人」には当たらず,他人性が欠如していて,過失相殺100パーセン 転を強いられたものであり,Eに対する飲酒運転を指示し,運行を支配していた者は,FとGである。したがって,Fらは,自賠法3条にいう「他人」には当たらず,他人性が欠如していて,過失相殺100パーセントと同等と評価できるから,被告らには原告らに対する損害賠償責任はない。(2)危険への接近ア免責の法理としての危険への接近本件において,Fは,上司としてEの違法で過酷な超過勤務による過労状態や前夜の徹夜状態を知っており,事故当夜,打ち上げの宴会に同席してEと多量に酒類を飲んでいるうえ,飲酒をしたために現場事務所の宿舎で泊まりを予定していたEに対し,スタッドレスを装備したEの車で津市内の自宅まで送るように言っている。このような事実からすれば,自損事故とはいえ,Fは,飲酒運転による重大事故の発生を予見し,あるいは予見すべき立場にあり,上記飲酒運転の主犯的立場にある。したがって,Fは,自ら危険に接近し,その存在を認識しながら,あえてそれによる被害を容認していたのであるから,いわゆる免責の法理としての危険への接近に該当するので,EのFに対する損害賠償責任は,免責が認められるべきで,被告らに原告らに対する損害賠償責任はない。 な事実からすれば,自損事故とはいえ,Fは,飲酒運転による重大事故の発生を予見し,あるいは予見すべき立場にあり,上記飲酒運転の主犯的立場にある。したがって,Fは,自ら危険に接近し,その存在を認識しながら,あえてそれによる被害を容認していたのであるから,いわゆる免責の法理としての危険への接近に該当するので,EのFに対する損害賠償責任は,免責が認められるべきで,被告らに原告らに対する損害賠償責任はない。イ減額の法理としての危険への接近F及びGは,Eが極度の疲労と多量の飲酒により事故を起こす危険を認 識しながら,Eの車に同乗した。したがって,Fは,自ら危険に接近し,その存在を認識しながら,あえてそれによる被害を容認していたのであるから,いわゆる減額の法理としての危険への接近に該当するので,EのFに対する損害賠償責任は減額が認められるべきで,被告らの原告らに対する損害賠償責任は70パーセント以上減額される。(3)過失相殺ないし好意同乗減額上記(1),(2)のとおり,Eが極度の過労状態で飲酒運転したことによる本件事故 られるべきで,被告らの原告らに対する損害賠償責任は70パーセント以上減額される。(3)過失相殺ないし好意同乗減額上記(1),(2)のとおり,Eが極度の過労状態で飲酒運転したことによる本件事故発生について,Eに事故車を運転させた先輩であるF及びGの責任は誠に重大である。したがって,これらを考慮すると,被害者であるFが負担すべき過失相殺ないし好意同乗減額は,損害の公平な分配の見地からみて70パーセントを下ることはない。(4)損害の填補原告らは,本件事故後,事故車の自賠責保険から死亡分保険金3000万円,傷害治療費など6万2990円の合計3006万2990円の支払を受けた。抗弁に対する認否いずれも否認する。第3当裁判所の判断 請求原因(1)の事実は当事者間に争いがない。この事実と証拠(略)によると,請求原因(2)の事実が認められ,Eには,自賠法3条及び民法709条に基づき,Fが本件事故により被った損害を賠償すべき責任があるというべきである。原告らの損害本件事故による原告らの損害として,次のとおり認められる。(1)治療費 証拠(略)によると,5万7540円である。(2)死亡慰謝料証拠(略)によると,亡Fの死亡慰謝料は,原告らが第2の1(3)イで主張するとおり,2800万円が相当である。 よると,請求原因(2)の事実が認められ,Eには,自賠法3条及び民法709条に基づき,Fが本件事故により被った損害を賠償すべき責任があるというべきである。原告らの損害本件事故による原告らの損害として,次のとおり認められる。(1)治療費 証拠(略)によると,5万7540円である。(2)死亡慰謝料証拠(略)によると,亡Fの死亡慰謝料は,原告らが第2の1(3)イで主張するとおり,2800万円が相当である。(3)逸失利益証拠(略)によると,亡Fの逸失利益は,原告らが第2の1( )ウで主張 するとおり,5396万7382円と計算できる。(4)葬儀費用証拠(略)によると,150万円が相当である。(5)以上の合計8352万4922円 相続(1)原告らによる損害賠償請求権の相続証拠(略)によれば,原告C(昭和45年9月生)は亡Fの妻,原告D(平成12年9月生)は亡Fの子であるから,原告らは,請求原因(7) 2万4922円 相続(1)原告らによる損害賠償請求権の相続証拠(略)によれば,原告C(昭和45年9月生)は亡Fの妻,原告D(平成12年9月生)は亡Fの子であるから,原告らは,請求原因(7)のとおり,Fの損害賠償請求権を相続したことが認められる。(2)被告らによる損害賠償債務の相続請求原因(8)の事実は当事者間に争いがなく,被告らは,Eの損害賠償債務を相続したことが認められる。他人性の欠如による免責(抗弁(1))について(1)被告らは,抗弁(1)で,本件事故当夜,Eは前日の徹夜を含むそれまでの過酷な勤務により極度に疲労し,かつ,多量の飲酒をしていたが,FとGは,Eと一緒に飲酒をし,そのことを知りながら,Eに車で自宅まで送り届けるように強制し,Eの車に同乗したから,Fらは,事故車の運行を支配していて,自賠法3条の他人性がないと主張する。そこで検討するに,本件事故に至る経緯として,当事者間に争いのない事実と,証拠(略)によると,次の事実が認められ,他にこの認定を左右する に足りる証拠はない。アE(昭和52年11月15日生)は,平成14年3月にM大学工学部土木工学科を卒業後,父の被告Aが営む土建業のN株式会社がこれまで,三重県内で有力な建設業者であるH株式会社(本店所在地津市fg番h号)の2次下請であったが,将来は,1次下請である協力会社になれることを期待して,同年4月に,H株式会社に養成社員(正社員ではなく,ボーナス等の支給もない)として入社し,先輩社員から指導を受けるようにな。 い。アE(昭和52年11月15日生)は,平成14年3月にM大学工学部土木工学科を卒業後,父の被告Aが営む土建業のN株式会社がこれまで,三重県内で有力な建設業者であるH株式会社(本店所在地津市fg番h号)の2次下請であったが,将来は,1次下請である協力会社になれることを期待して,同年4月に,H株式会社に養成社員(正社員ではなく,ボーナス等の支給もない)として入社し,先輩社員から指導を受けるようにな。った。しかし,Eは,H株式会社において,労働基準法に違反する超過勤務を強いられ,平成14年5月から本件事故が起きた平成16年1月までの残業時間は1655時間に及んでいた(証拠(略。そのため,H株式会))社は,Eの死亡後,労働基 て,労働基準法に違反する超過勤務を強いられ,平成14年5月から本件事故が起きた平成16年1月までの残業時間は1655時間に及んでいた(証拠(略。そのため,H株式会))社は,Eの死亡後,労働基準法違反で捜査を受け,被告らに対し,Eの未払残業代として143万余円を支払う旨申し入れたが,被告らは受け取っていない。Eは,平成15年5月29日から,Iダム付替道路第一工区工事事務所に配属されたが,同事務所では,一番若いため,事務所の最後の戸締まりを行うことが多く,工程的に無理な受注を請けたので,労働基準法に反する違法な超過勤務が日常化し,特に平成16年1月5日から事故のあった同月13日までの間は,休日もなく,過度の残業を強いられ,事故当日は,前夜の徹夜勤務により,かなりの疲労状態にあった(証拠(略。その))結果,入社当時70数キログラムあったEの体重は,62キログラムにまで減少していた。イEとF(昭和45年12月5日生)とは,平成16年1月5日からH株式会社の同じ職場で働いていた。Eは同社の養成社員,Fは同社の正社員でEより年長者の上司であった。G(昭和48年3月10日生)も,H株式会社の正社員で,Eより年長 者の上司であり,Eの入社後は,Eの教育係を担当していて,本件事故日に事故車に同乗していた。なお,Eは,平成15年3月11日にH株式会社の職場でGからポールを当てられて負傷したことがあるが,Eが同社で先輩社員からいじめを受けていたと認めるに足りる証拠はない。ウEは,本件事故日である平成16年1月13日は明け方に仮眠を約2時間しただけで勤務を開始し,Iダムの現場事務所では同日提出期限の変更書類が完成した。 上司であり,Eの入社後は,Eの教育係を担当していて,本件事故日に事故車に同乗していた。なお,Eは,平成15年3月11日にH株式会社の職場でGからポールを当てられて負傷したことがあるが,Eが同社で先輩社員からいじめを受けていたと認めるに足りる証拠はない。ウEは,本件事故日である平成16年1月13日は明け方に仮眠を約2時間しただけで勤務を開始し,Iダムの現場事務所では同日提出期限の変更書類が完成した。そこで,同現場事務所に勤務する職員で打ち上げをすることとなり,同日午後7時ころから,同事務所の現場代理人であるJ(昭 しただけで勤務を開始し,Iダムの現場事務所では同日提出期限の変更書類が完成した。そこで,同現場事務所に勤務する職員で打ち上げをすることとなり,同日午後7時ころから,同事務所の現場代理人であるJ(昭和28年7月5日生,L(昭和43年6月30日生,F,G,Eの5))人で,同現場事務所から約900メートル離れた居酒屋「O」でビール等を飲んだ。その後,同日午後9時前に,Lの運転する車に乗って,E,F,Gの3人は,同事務所から約1.5キロメートル離れた近鉄大阪線a町駅近くで降りて,近くの居酒屋「P」で,さらに焼酎を飲んだ。Lは,飲酒運転ではあったが,Jを同日午後9時ころ,現場事務所へ送り届けた。Jは同事務所で泊まり,Lはさらに車を運転してe町の自宅に帰った。エ平成16年1月13日午後10時ころ,E,F,Gの3人は,居酒屋「P」の店主が運転する車で,現場事務所へ戻ったが,その後,上記3名は,Eが運転する事故車に乗って各自宅に帰ることとし,Eが事故車をシートベルトをして運転し,Gが助手席に,Fが後部座席にそれぞれ座って,国道d号線を名張市方面から自宅のある津市方面に向かって走行していたが,同日午後10時8分ころ,現場事務所から約2.7キロメートル離れたa町bc番地先で,Eが運転を誤って本件事故を起こした。本件事故の際,Eの血中アルコール濃度は1.60㎎/ml,Fの血中アルコール濃度は1.72㎎/ml,Gの血中アルコール濃度は1.27㎎/mlで,いずれも中等度酩酊の状態で,判断力が鈍ってくる状況であった。(2)また,証拠(略)によると,Lが,平成16年1月14日のEの葬儀の 際,被告Aらに対し,同月13日の事故前に,FがEに対し,雪が降っていたため,スタッドレスを装備したEの車で津市内の自宅まで送るように言っていたことを聞いた旨述べ は1.60㎎/ml,Fの血中アルコール濃度は1.72㎎/ml,Gの血中アルコール濃度は1.27㎎/mlで,いずれも中等度酩酊の状態で,判断力が鈍ってくる状況であった。(2)また,証拠(略)によると,Lが,平成16年1月14日のEの葬儀の 際,被告Aらに対し,同月13日の事故前に,FがEに対し,雪が降っていたため,スタッドレスを装備したEの車で津市内の自宅まで送るように言っていたことを聞いた旨述べ 16年1月14日のEの葬儀の 際,被告Aらに対し,同月13日の事故前に,FがEに対し,雪が降っていたため,スタッドレスを装備したEの車で津市内の自宅まで送るように言っていたことを聞いた旨述べた事実が認められる。この認定に反する証人Lの証言部分は,上記各証拠と対比して採用できない。(3)以上によると,FとGが,養成社員であるEに対し指導的立場に立つ正社員であり,しかもEより年長であったことからすれば,事故車をEが運転しFとGが同乗したことにつき,FとGの意向が相当程度働き,Eがこれを断りにくい状況にあったことは否定できないと考えられる。しかし,Lの証言によっても,FがEに対し脅迫的言動を用いるなど,本人の意思に反して運転を強制した事実は認められないし,他に,FとGがEに対し,その意思に反して運転を強制するような行為をしたと認めるに足りる立証はない。とすれば,Eが事故車の運転を拒むことができない状況にあったとまではいえない。しかも,飲酒運転は道路交通法が禁止する重大な違法行為であり,重大事故を発生させる危険が極めて大きいことからすると,Eとしては飲酒運転することを拒むことが不可能ではなかったといえる。したがって,FとGがEに対し運転を強制した事実は認められず,Fが事故車の運行を支配していた事実までを認めることはできない。そうすると,Fに,被告らが主張する他人性の欠如を認めることはできないから,抗弁(1)は理由がない。危険への接近(抗弁(2))について(1)抗弁(2)アについて被告らは,本件事故当夜,Eは,前日の徹夜を含むそれまでの過酷な勤務により極度に疲労し,かつ,多量の飲酒をしていたが,FとGは,Eが極度の疲労と多量の飲酒により重大な事故を起こす危険を認識しながら,あえてそれによる被害を容認して,Eの車に同乗したと での過酷な勤務により極度に疲労し,かつ,多量の飲酒をしていたが,FとGは,Eが極度の疲労と多量の飲酒により重大な事故を起こす危険を認識しながら,あえてそれによる被害を容認して,Eの車に同乗したと主張する。 での過酷な勤務により極度に疲労し,かつ,多量の飲酒をしていたが,FとGは,Eが極度の疲労と多量の飲酒により重大な事故を起こす危険を認識しながら,あえてそれによる被害を容認して,Eの車に同乗したと での過酷な勤務により極度に疲労し,かつ,多量の飲酒をしていたが,FとGは,Eが極度の疲労と多量の飲酒により重大な事故を起こす危険を認識しながら,あえてそれによる被害を容認して,Eの車に同乗したと主張する。確かに,証拠(略)によると,Eは本件事故当夜まで,前日の徹夜を含め て過酷な勤務状況にあり,FとGは,同じ会社で働く者としてそのことを知っていた。また,FとGは,本件事故当夜,Eと一緒に飲酒しており,Eが多量の飲酒をしていたことも知っていた。そして,本件事故直後の血中アルコール濃度は,Eが1.60㎎/ml,Fが1.72㎎/ml,Gが1.27㎎/mlで,いずれも中等度酩酊の状態であった。以上の事実が認められ,そうであれば,FはEが極度の疲労と多量の飲酒により事故を起こす可能性も認識していたと認められる。しかし,そうであるからと言って,FとGが,事故による生命侵害という被害まで容認していたと認めることは困難である。行為と結果とは別であるから,行為の危険性を認識していたとしても,直ちにその行為から生じる結果まで容認していたとは言えない。生命侵害の結果まで容認していたと言うためには,被害者において,生命侵害の高度の蓋然性を認識しながら敢えて同乗したことを要すると考えられる。しかしながら,本件において,Fが,雪道での安全性を考えてスタッドレスタイヤをはいているEの車で送るようEに言っていることからすると,FとGが生命侵害の高度の蓋然性まで認識していたと認めるのは困難である。そうすると,抗弁(2)アの危険への接近による免責の主張は認められない。(2)抗弁(2)イについて以上で述べたように,FとGは,少なくとも,Eが極度の疲労と多量の飲酒により事故を起こす可能性も認識していたと認められる。そうすると,損害負担の公平の見地から,抗弁( (2)抗弁(2)イについて以上で述べたように,FとGは,少なくとも,Eが極度の疲労と多量の飲酒により事故を起こす可能性も認識していたと認められる。そうすると,損害負担の公平の見地から,抗弁(2)イの危険への接近による損害減額の主張は認められるが,その減額の程度については,後記過失相殺の判断において,併せて判断することとする。 も認識していたと認められる。そうすると,損害負担の公平の見地から,抗弁( (2)抗弁(2)イについて以上で述べたように,FとGは,少なくとも,Eが極度の疲労と多量の飲酒により事故を起こす可能性も認識していたと認められる。そうすると,損害負担の公平の見地から,抗弁(2)イの危険への接近による損害減額の主張は認められるが,その減額の程度については,後記過失相殺の判断において,併せて判断することとする。過失相殺ないし好意同乗減額(抗弁(3))について上記4(1)(2)で認定した各事実を総合すると,FとGは,Eがかなり疲労状態にあり,かつ,飲酒していたことを十分知っていたにもかかわらず,養成社 員で年下のEに対し,自宅まで送るように言い,事故車に同乗したのである。このようなFの事故車への同乗の経緯に基づくと,本件事故当時,Fは単に好意同乗をしていたというにとどまらず,Eが事故発生の危険の高い飲酒運転することを知りながら,これを容認して同乗していたといわざるを得ず,かかる事情は,損害の公平の観点から,損害額の算定に当たって斟酌するのが相当である。そこで,以上で認定した事実及び証拠(略)によると,Fは,三重県内で有力な建設業者であるH株式会社(昭和i年j月k日設立,資本金l億円,代表取締役Q)において,Eの先輩社員であるが,未だ社会人として経験の浅いEが,連日の超過勤務でかなりの疲労状態にあることを知り,かつ,Eと共に飲酒して,同人が飲酒による影響を受けていたことを十分知っていたにも拘わらず,Eに事故車を運転して津市の自宅まで送るように言って事故車に同乗していたもので,3人の死亡という重大な結果を引き起こすに至ったEの飲酒運転を助長した過失は大きいといえる。したがって,原告らの損害額については前記危険への接近も含む過失相殺として50パーセントの減額をするのが相当である。よって,上記2(5)の損害合計 至ったEの飲酒運転を助長した過失は大きいといえる。したがって,原告らの損害額については前記危険への接近も含む過失相殺として50パーセントの減額をするのが相当である。よって,上記2(5)の損害合計8352万4922円につき上記減額をすると,残額は4176万2461円となる。計算式8352万4922円×(1-0.5)=4176万2461円 損害の填補(抗弁(4))について原告らは,本件事故後,自賠責保険金3000万円の支払を受けた事実を認めており,この事実と証拠(略)によると,抗弁(4)のとおり,原告らは,本件事故後,自賠責保険から死亡分保険金及び傷害治療費の合計3006万2990円の支払を受けた事実が認められる。 き上記減額をすると,残額は4176万2461円となる。計算式8352万4922円×(1-0.5)=4176万2461円 損害の填補(抗弁(4))について原告らは,本件事故後,自賠責保険金3000万円の支払を受けた事実を認めており,この事実と証拠(略)によると,抗弁(4)のとおり,原告らは,本件事故後,自賠責保険から死亡分保険金及び傷害治療費の合計3006万2990円の支払を受けた事実が認められる。したがって,上記損害の一部填補後の損害残額は,1169万9471円となる。計算式4176万2461円-3006万2990円=1169万9471円 弁護士費用本件事案の内容,訴訟の審理経過及び認容額等を総合考慮すると,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用の額は,120万円が相当である。結論 以上によると,原告らが被告らに請求できる本件事故による損害総額は1289万9471円であり,上記相続の結果,各原告が,各被告に対し請求できるのはその4分の1の322万4867円(円未満切捨)となる。計算式1289万9471円/4≒322万4867円よって,原告らの本件各請求は,被告ら各自に対し,それぞれ各322万4867円及びこれに対する本件事故日である平成16年1月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却し,訴訟費用の負担につき民訴法61条,64条,65条を,仮執行宣言につき同法259条をそれぞれ適用して,主文のとおり判 損害金の支払いを求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却し,訴訟費用の負担につき民訴法61条,64条,65条を,仮執行宣言につき同法259条をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。津地方裁判所民事部裁判官水谷正俊
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