令和2(行ヒ)238 住民訴訟による違法確認請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年5月14日 最高裁判所第二小法廷 判決 破棄自判 高松高等裁判所 令和1(行コ)27
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判決文本文2,563 文字)

- 1 -令和2年(行ヒ)第238号 住民訴訟による違法確認請求事件令和3年5月14日 第二小法廷判決 主 文原判決中上告人敗訴部分を破棄する。 前項の部分につき,被上告人の控訴を棄却する。 控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。 理 由上告代理人田中浩三,同坂田知範,同矢田茂明の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について1 本件は,徳島県(以下「県」という。)の住民である被上告人が,県知事であるA(以下「A知事」という。)が管弦楽団の演奏会への出席のために公用車を使用したことは違法であり,公用車の燃料費並びに同行した秘書及び運転手の人件費に相当する額につき,県はA知事に対して不法行為に基づく損害賠償請求権を有するにもかかわらず,上告人はその行使を違法に怠っていると主張して,地方自治法242条の2第1項3号に基づき,上告人を相手に,当該怠る事実が違法であることの確認を求める住民訴訟である。 2 原審が適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。 (1) 県は,平成23年,県内の全24市町村が開催地となった同24年の国民文化祭を契機として,とくしま国民文化祭記念管弦楽団(以下「本件管弦楽団」という。)を設立し,平成25年度からは,公益財団法人徳島県文化振興財団(以下「本件財団」という。)に本件管弦楽団の事業を委託した。 本件管弦楽団は,日本を代表する世界的指揮者を音楽監督に迎え,職業音楽家により構成されるところ,その事業は,演奏会の都度管弦楽団を組織し,県内の各地を訪れて,県,県内の各市町村等と連携しながら演奏会を開催するというものである。 - 2 -(2) A知事は,県知事であっ 構成されるところ,その事業は,演奏会の都度管弦楽団を組織し,県内の各地を訪れて,県,県内の各市町村等と連携しながら演奏会を開催するというものである。 - 2 -(2) A知事は,県知事であった平成23年から同29年にかけて,県内において開催された本件管弦楽団による多数回の演奏会に公用車を使用して出席した。 そのうち,平成29年7月22日に吉野川市の公民館において開催された演奏会(以下「本件演奏会」という。)は,同市,吉野川市教育委員会及び吉野川市民コンサート実行委員会が主催し,県及び本件財団が共催するものであった。 (3) 徳島県県有車両管理規則14条は,県有車両は,公用以外の目的のために使用してはならないと規定している。 3 原審は,上記事実関係等の下において,要旨次のとおり判断し,本件演奏会への出席に係る燃料費及び人件費に相当する額である1万5173円につき,県はA知事に対して不法行為に基づく損害賠償請求権を有しているとして,被上告人の請求のうち,同請求権の行使を怠る事実が違法であることの確認を求める部分を認容した。 A知事による本件演奏会への出席は,各種団体等の主催する会合に列席するなどの交際に該当するところ,県が本件演奏会の共催者にとどまり,A知事による挨拶等もされていないことからすると,特定の事務を遂行し対外的折衝等を行う過程において具体的な目的をもってされるものとは認め難い。これに加え,A知事が観客や主催者である市の首長等と意見交換もしていないことからすると,本件演奏会への出席は,相手方との友好,信頼関係の維持増進を図ることを目的とすると客観的にみることはできない。そして,観客と同様の条件下で演奏会を体感し,今後の県政運営における判断材料とする必要性があるといい得るとしても,そのような必要性が認められるの を図ることを目的とすると客観的にみることはできない。そして,観客と同様の条件下で演奏会を体感し,今後の県政運営における判断材料とする必要性があるといい得るとしても,そのような必要性が認められるのは,せいぜい1,2回の出席のときにすぎず,本件演奏会についてそのような必要性があるとはいえない。したがって,A知事による本件演奏会への出席が公務に該当するということはできず,その目的のために公用車を使用することは違法である。 4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。 - 3 -前記事実関係等によれば,県は,本件管弦楽団を設立し,本件財団に委託するなどして,本件管弦楽団において県内の各地を訪れて演奏会を開催する事業を行うこととなったところ,本件演奏会も,その一環として,県内の吉野川市等が主催し,県及び本件財団が共催したというのである。そうすると,県が本件演奏会を共催したことは,住民の福祉の増進を図ることを基本として,地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う県の文化振興政策に基づくものと評価することができ(地方自治法1条の2第1項参照),県の事務に含まれるものということができる。 したがって,県を統轄して,これを代表し,また,その事務を管理し及びこれを執行する県知事であるA知事が,県の事務として開催された本件演奏会に出席したことは,公務に該当するものというべきである。そして,A知事が公務として本件演奏会に出席し,そのため公用車を使用したことに違法があるというべき事情は見当たらない。 5 以上によれば,県が,A知事に対し,本件演奏会の出席に要した費用に相当する額の損害賠償請求権を有しているとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理 い。 5 以上によれば,県が,A知事に対し,本件演奏会の出席に要した費用に相当する額の損害賠償請求権を有しているとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして,以上に説示したところによれば,被上告人の請求は理由がなく,これを棄却した第1審判決は相当であるから,上記部分につき,被上告人の控訴を棄却することとする。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官 菅野博之 裁判官 三浦 守 裁判官 草野耕一 裁判官岡村和美)

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