平成20年(行ウ)第101号公務外認定処分取消請求事件判決 主文 1 被告の愛知県支部長が原告に対して平成17年8月10日付けでした地方公務員災害補償法に基づく公務外認定処分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,中学校の教員であった原告が,ユニホック競技の模範試合後に脳出血(以下「本件脳出血」という。)により倒れ,高次脳機能障害等の後遺症を負ったところ,本件脳出血は原告の従事した公務の過重性が原因であったとして,被告の愛知県支部長に対し,地方公務員災害補償法に基づく公務災害認定の請求をしたところ,本件脳出血には公務起因性が認められないとして,同法45条1項に基づき公務外認定処分(以下「本件処分」という。)を受けたことから,その取消しを求める事案である。 2 争いのない事実等(後掲の証拠及び弁論の全趣旨から容易に認められる事実を含む。)(1) 原告の身上経歴等ア原告(昭和35年○月○日生)は,昭和58年3月にA大学教育学部数学科を卒業し,同年4月1日,愛知県教育委員会から愛知県豊橋市公立学校教員に任命され,同日以降,同市立B中学校,同市立C小学校,同市立D中学校における勤務を経て,平成11年4月,同市立E中学校教諭に補された。 イ原告は,平成11年4月,E中学校に赴任すると同時に同中学校校長から陸上部の部活指導(顧問)を命ぜられてその部活指導に当たるようになり,また,平成14年度は,陸上部の顧問のほか,同中学校1年2組の学級担任,数学の教科指導,生徒指導主事,安全教育主任,防火・施設担当,交通指導担当及び営繕担当の各校務分掌を受けた。(甲 るようになり,また,平成14年度は,陸上部の顧問のほか,同中学校1年2組の学級担任,数学の教科指導,生徒指導主事,安全教育主任,防火・施設担当,交通指導担当及び営繕担当の各校務分掌を受けた。(甲6,20,乙A1,弁論の全趣旨)ウ原告は,地方公務員災害補償法2条1項所定の「職員」に該当する(同項1号)。(弁論の全趣旨)(2) 勤務時間ア E中学校の教職員の勤務時間(部活指導を除く。)は,次のとおりである。(甲2の28頁,乙A1の15頁)(ア) 所定勤務時間午前8時10分から午後4時55分(イ) 休憩時間午後1時15分から午後1時30分午後4時10分から午後4時40分(ウ) 休息時間午前中15分午後4時40分から午後4時55分イもっとも,原告は,前記のとおり,陸上部の部活指導の校務分掌を受けていたことから,前記アの所定勤務時間にかかわらず,平日は,少なくとも次のとおりの勤務を行っていた。(甲6,19,27,12,乙A1の29頁,証人F,原告本人,弁論の全趣旨)(ア) 陸上部の部活指導午前7時20分から午前8時(イ) 部活指導以外の校務午前8時10分から午後3時55分(ウ) 陸上部の部活指導午後4時から午後6時30分ころ(部活動は日没30分前までとされていたところ,本件脳出血発症前6か月間の期間は,概ね午後6時30分ころまで陸上部 の部活動が行われていた。)(エ) 休憩時間 45分ウ原告の平成14年1月から本件脳出血を発症した同年9月13日までの休暇取得状況は,次のとおりである。(乙A1の51頁及び237頁,弁論の全趣旨)(ア) 平成14年1月 0.5日(家事都合)(イ) 同年2 した同年9月13日までの休暇取得状況は,次のとおりである。(乙A1の51頁及び237頁,弁論の全趣旨)(ア) 平成14年1月 0.5日(家事都合)(イ) 同年2月から同年7月まで 0日(ウ) 同年8月 6日(夏季休暇)(エ) 同年9月 0日(3) 本件脳出血の発症ア本件脳出血を発症した日の前日である平成14年9月12日,原告は,E中学校祭(以下「学校祭」という。)の警備のため,E中学校に宿泊勤務した。そして,本件脳出血を発症した当日である同月13日,原告は,午前6時30分ころに起床し,午前7時ころから運動場において同僚教員のトラックの線引き作業の手伝いを行った後,生徒に対する諸注意やユニホック競技の準備などを行い,午前10時30分から約8分間にわたり,生徒とともにユニホックの模範試合を行った。原告は,その後,午前10時50分ころ,「疲れた。」と言って床に寝転んだ後,午前11時10分ころ,「気持ちが悪い。」と言って足を引きずるようにして歩き出し,その直後,足をもつれさせ,体育館の入り口の階段で躓いて倒れた。原告は,倒れた後,肘の曲げ伸ばしや手を胸に当てる仕草を繰り返していたが,担架で保健室に運ばれた後も回復の兆しが見られなかったため,午前11時50分ころ,同僚教員によって医療法人GH脳神経外科に搬送された。 原告は,同外科に搬送された直後は意識が清明であったものの,同日午後3時,右脳から出血して身体左側が麻痺しているとの診断を受け, 出血も増大して半昏睡状態となったため,午後4時ころ,緊急の開頭血腫除去術が施行された。(甲8,乙A1の13頁及び30頁以下,乙B7)イ原告は,同年10月1日,前記病院において,脳内血 出血も増大して半昏睡状態となったため,午後4時ころ,緊急の開頭血腫除去術が施行された。(甲8,乙A1の13頁及び30頁以下,乙B7)イ原告は,同年10月1日,前記病院において,脳内血腫及び左片麻痺と診断され,同月23日に施行された脳血管撮影により,もやもや病と確定診断された。そして,本件脳出血を発症した同年9月13日から同年11月25日までの間,前記病院に入院し,同日,社会福祉法人IJ病院に転院し,同病院において精神症状の治療及び運動機能訓練を受けた。(甲3の22頁以下,甲8,乙A1の13頁,114頁以下,乙B7)ウ原告は,本件脳出血の発症前からもやもや病に罹患していたことが判明しているところ,本件脳出血は,もやもや病により発達した異常血管網(後記のもやもや血管)が破綻して発生したものである。 本件脳出血の発症時,原告の年齢は42歳であった。(甲8,乙B2,弁論の全趣旨)(4) 本件処分等原告は,本件脳出血は原告の従事した公務に起因するものであるとして,平成14年10月9日,被告の愛知県支部長に対し,地方公務員災害補償法による公務災害認定請求を行ったが,同支部長は,本件脳出血は公務と相当因果関係をもって発生したことが明らかな疾病と認められないと判断して,平成17年8月10日,公務外の災害と認定する旨の決定をし(本件処分),同月18日,その旨を原告に通知した。(甲1,弁論の全趣旨)これを受けて,原告は,同年9月16日,被告の愛知県支部審査会に対して本件処分の審査請求を行ったが,同審査会は,平成19年10月12日,これを棄却する旨の裁決をし,同月15日,その旨を原告に通知したため,原告はこれを不服として,同月22日,地方公務員災害補償基金審 査会(以下「被告審査会」という。)に 成19年10月12日,これを棄却する旨の裁決をし,同月15日,その旨を原告に通知したため,原告はこれを不服として,同月22日,地方公務員災害補償基金審 査会(以下「被告審査会」という。)に対して本件処分の再審査請求を行ったが,被告審査会は,平成20年6月9日,これを棄却する旨の裁決をし,同年7月22日,その旨を原告に通知した。(甲2,3,弁論の全趣旨)(5) もやもや病についてもやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症の通称)とは,両側の頭蓋内の内頚動脈終末部,前及び中大脳動脈近位部,すなわち脳底部ウイリス動脈輪及びその近傍血管に狭窄ないし閉塞が生じて血流不足になり,これを補うため,代償的に側副血行路として,その近傍部位の脳底部に頭蓋内血管小分枝(穿通枝動脈)が網状に発達・拡張するなどして異常血管網が動脈層において形成される疾患である。MRIやMRAによる脳血管写によれば,この異常血管網がたばこの煙のように描写されることから,もやもや病と呼ばれている(以下,この異常血管網を「もやもや血管」という。)。前記各動脈に狭窄ないし閉塞が生じる原因は不明である。 もやもや病は,もやもや血管の脳血管写による形態から,6期に分類され,初期の第1期から最後の第6期までの6段階に分類される(6期相分類)。また,もやもや病の症状には,脳出血,脳梗塞及び脳虚血症状等がある。(甲8,29,乙B1,B2,B5,証人K,証人L,弁論の全趣旨)(6) ユニホック競技の模範試合についてユニホックはスポーツ競技の一種であり,12名の選手が6名ずつの2チームに分かれ,プラスチック製の小さなボールをアイスホッケー様のスティックを用いて,相手チームのゴールにシュートして点を競うゲームである。試合時間は20分(うち休憩2分)で, の選手が6名ずつの2チームに分かれ,プラスチック製の小さなボールをアイスホッケー様のスティックを用いて,相手チームのゴールにシュートして点を競うゲームである。試合時間は20分(うち休憩2分)で,障害物のない長方形のコート(縦20メートル以上30メートル以下,横10メートル以上15メートル以下。バスケットボールのコート程の大きさである。)上において行 われる。ユニホックは,そのルール上,ボールの周辺でプレーするときはスティックのブレード全体を膝より上に振り上げてはならず,また,危険を伴う形で相手チームの選手に対して押す,つかむ,タックルするなどの行為を行ってはならないなどと定められている。本件脳出血の発症日に原告が行ったユニホックは,体験講座であったため,試合時間は通常の試合時間よりも短い8分に設定された。(甲9の1,乙A5,証人M) 3 争点本件脳出血の公務起因性の有無 4 原告の主張(1) 原告の公務の過重性ア原告の労働時間(公務の量的過重性)(ア) 原告の担当職務であった公務a 数学の教科指導に関する職務b 学級担任としての職務c 進路指導主事(平成13年度)ないし生徒指導主事(平成14年度)としての職務d 安全教育主任としての職務e 防火・施設担当としての職務f 交通指導担当としての職務g 営繕担当としての職務(平成14年度)h 時間割作成担当責任者としての職務(平成13年度)i いじめ・不登校対策委員会の責任者としての職務(平成14年度)j 陸上部顧問としての部活指導に関する職務k その他の職務(a) 研修への参加(b) 学校祭に関する職務 (イ) 教材研究,学級事務及び学校事務a 教材研究教育職員は,教 部顧問としての部活指導に関する職務k その他の職務(a) 研修への参加(b) 学校祭に関する職務 (イ) 教材研究,学級事務及び学校事務a 教材研究教育職員は,教科指導の準備のために教材研究を行う必要があるところ,教科指導の準備に必要な教材研究は,すべての教育職員が自らの職務を遂行する上での必要不可欠なものとして義務付けられているものであり,教科指導のための公務にあたる。 b 学級事務原告は,平成13年度には3年4組,平成14年度には1年2組の学級担任であった。 学級担任は,担任する学級に属する生徒を指導するとともに,学級を適切に運営する職務を担っているが,当該職務の遂行のために,付随的な事務作業等が必要になるところ,学級担任としての職務の遂行に必要である付随的な事務作業等も公務にあたる(以下,学級担任としての職務及びこれに付随する事務作業等を,「学級事務」という。)。 c 学校事務進路指導主事ないし生徒指導主事の職務及び前記(ア)のdないしiの各職務は,学校全体に関わる職務であるが,これらの職務の遂行にあたっても,付随的な事務作業等が必要になるところ,これらの職務の遂行に必要である付随的な事務作業等も公務にあたる(以下,前記(ア)のcないしiの各職務及びこれらに付随する事務作業等を,「学校事務」,学級事務及び学校事務をまとめて,「学校事務等」,学校事務等における付随的な事務作業等を,「学校事務等の付随業務」,教材研究及び学校事務等の付随業務を,「教材研究等」とそれぞれいう。)。 (ウ) 所定勤務時間外の勤務について a 教材研究等について教育職員に対する職務命令は校務分掌こそ明示的になされるものの,校務分掌により担当する職務の遂行については,多くの場 。 (ウ) 所定勤務時間外の勤務について a 教材研究等について教育職員に対する職務命令は校務分掌こそ明示的になされるものの,校務分掌により担当する職務の遂行については,多くの場合,包括的かつ黙示的に行われ,教育職員はその中で公務に従事しているものであるから,労働時間の算定にあたっては,必ずしも個別の職務命令がなくとも,校長など管理者による包括的かつ黙示的な職務命令に従って教育職員としての職務を遂行する実態があるときは,これが労働時間に含まれることは明らかというべきである。 教材研究は,教育職員が自らの職務を全うするために必要不可欠なものとして義務づけられているものであり,学校事務等の付随事務についても校務分掌により担当を命ぜられた職務を遂行するために必要な業務であるところ,原告は,教科指導等の終了後は陸上部の部活指導に多大の時間を費やしていたため,教材研究はもとより,学校事務等の付随事務についても勤務時間外に行わざるを得なかったものであり,E中学校長はそのことを把握しつつこれらを原告に行わせていたのであるから,教材研究等は,社会通念上必要と認められる限り,勤務時間の内外を問わず,原告の公務に該当する。 b 学校祭の準備及び夜警について前記aのとおり,教育職員の労働時間の認定にあたっては,必ずしも個別の職務命令がなくとも,校長など管理者の事実上の拘束力下で教育職員としての職務を行う実態があるときは,これを労働時間に含めるべきであるところ,学校祭はE中学校の正式な行事であって,生徒が決めた出し物の準備を行うことは,学級担任としての重要な職務であり,特に原告の担任学級の出し物であるお化け屋敷は,その準備に多大な時間を要し,原告が勤務時間外にわたって準備せざるを得なかったものであり, 出し物の準備を行うことは,学級担任としての重要な職務であり,特に原告の担任学級の出し物であるお化け屋敷は,その準備に多大な時間を要し,原告が勤務時間外にわたって準備せざるを得なかったものであり,E中学校長はそのことを把握し つつ同人の下で原告にこれを行わせていたのであるから,学校祭の準備は,勤務時間の内外を問わず原告の公務に該当する。 c 陸上部の部活指導と地域クラブ活動の指導について平成14年度は,小・中学校における週休2日制の完全実施に伴い,豊橋市においては土日の部活動が制限(日曜については完全禁止)されたため,全国大会への出場を目指すE中学校の陸上部としては,前年まで行っていた日曜日の部活動練習に代わるものとして,地域クラブという形式をとって練習せざるを得なかったが,実態は,学校の部活動の延長であり,前年まで行っていた日曜日の部活動と全く同一のものであった。すなわち,地域クラブと陸上部の各指導者及び生徒のメンバーは全く同じであり,練習場所も部活動練習と同じくE中学校の施設を教頭の許可を得て使っており,地域クラブ活動は陸上部活動と全く同一のものであったものであり,また,地域クラブとして出場した大会で獲得した賞状が職員室の前に披露されるなど,職員間では,地域クラブ活動は,陸上部活動の延長として認識されていたことに加え,E中学校長や豊橋市教育委員会においてもそのことを十分に認識した上で地域クラブを奨励していたものであるから,地域クラブ活動は,陸上部活動の延長であり,地域クラブ活動の指導は,部活指導の一環として,公務に該当するものである。 d 夏休みの部活指導(一日練習)について原告は,夏休み中の陸上部の一日練習の際,朝の練習(以下「朝練」という。)と夕方の練習(以下 として,公務に該当するものである。 d 夏休みの部活指導(一日練習)について原告は,夏休み中の陸上部の一日練習の際,朝の練習(以下「朝練」という。)と夕方の練習(以下「夕練」という。)との間に陸上部員の生徒に対し勉強や水泳の指導を行っていたところ,水泳の指導は,心肺機能の強化という点で陸上部における長距離練習そのものであるし,また,前記勉強の指導は,生徒に部活動と勉強とを両 立させるために部活指導の一環として行ったもので,社会通念上も必要と認められるものであり,部活指導を命ぜられた包括的な職務命令に基づいて行った必要な職務の遂行といえるから,いずれも公務に該当するものである。 (エ) 以上の前提に立つと,原告の本件脳出血の発症前6か月間の時間外労働時間は次のとおりであり,公務の量的過重性が認められる。なお,時間外労働時間の詳細は,別紙1(添付省略)の労働時間内訳表の各原告欄記載のとおりである(ただし,1か月を30日として計算し,発症前1か月は本件脳出血の発症の1日前から30日前を,同2か月は同発症の31日前から60日前を,同3か月は同発症の61日前から90日前を,同4か月は同発症の91日前から120日前を,同5か月は同発症の121日前から150日前を,同6か月は同発症の151日前から180日前を,それぞれ指すものとする(以下同じ。)。)。 ① 発症前1か月 :122時間30分② 発症前2か月 :146時間30分③ 発症前3か月 :127時間05分④ 発症前4か月 :107時間00分⑤ 発症前5か月 :106時間25分⑥ 発症前6か月 :109時間20分イ原告の公務の質的過重性(ア) 陸上部の部活指導についてE中学校の陸上部は,平成14年度,愛知 ⑤ 発症前5か月 :106時間25分⑥ 発症前6か月 :109時間20分イ原告の公務の質的過重性(ア) 陸上部の部活指導についてE中学校の陸上部は,平成14年度,愛知県では初めてとなる3年連続の全国大会への出場が期待されており,原告は,その期待に応えなければならないという強い精神的プレッシャーを感じつつ,陸上部の部活指導や全国大会出場に向けての校長との連絡調整等のマネージメント業務を行っていた。また,体力に自信がなかった原告は,陸上 部の顧問に従事するにあたって自らを鍛えようと自主的にトレーニングを行っており,これらのことがあいまって,原告の肉体的・精神的な疲労は蓄積していった。 (イ) 教科指導以外の公務について原告は,本来の職務である教科指導に加え,平成14年度は生徒指導主事を務めていたことから,夏休み明けは生徒のトラブル処理,生徒への指導などで繁忙であった上,安全教育主任等の職務も負っていたことから,これら複数の職務による時間的な負担,肉体的・精神的な負担は相当に重いものであった。これらの肉体的・精神的な負荷が,本件脳出血の発症の一要因となったものである。 (ウ) ユニホック競技の模範試合について原告は,本件脳出血が発症する直前に8分間のユニホック競技の模範試合を行っているところ,42歳の原告が体力の優れた中学生らとともにほぼ絶え間なく急ダッシュと急ストップを繰り返すユニホック競技を行ったことは,原告の心身に相当の緊張感と急激な肉体的な負荷を与えたものと考えられるから,本件脳出血は,同模範試合をきっかけに発症したものである。 (2) 原告の基礎疾患についてア高血圧原告の血圧は,高血圧に分類されるものの,軽症であって,直ちに脳出血の原因とな ,本件脳出血は,同模範試合をきっかけに発症したものである。 (2) 原告の基礎疾患についてア高血圧原告の血圧は,高血圧に分類されるものの,軽症であって,直ちに脳出血の原因となるほどのものではないから,これが直ちに本件脳出血の原因となるものではない。仮に,原告の高血圧がいくらか本件脳出血に寄与していたとしても,本件脳出血時の原告の血圧の上昇は,前記(1)の公務による肉体的・精神的負荷が重大な契機になって生じたものであり,原告の高血圧自体は脳出血を引き起こし得るほどの重度のものではおよそないと認められるから,高血圧があったからといって本件脳出血 の公務起因性が否定されるものではない。 イもやもや病本件脳出血を発症したもやもや血管は,正常に存在する血管が異常に発達・拡張しただけのものであり,その血管壁の構造そのものには基本的に脆弱性はなく,もやもや血管の破綻は,主として長期間に及ぶ過重な公務を原因として血行力学的負荷が持続的に加わったことによって発生したものであるから,本件脳出血は公務の過重性によって生じたものであり,もやもや病の自然経過によるものではない。 5 被告の主張(1) 原告の公務の過重性ア原告の労働時間(ア) 勤務時間外の教材研究等について勤務時間内の教材研究等が原告の公務に含まれることは認めるが,勤務時間外に教材研究等を行うことについては,校長の職務命令は認められないから,原告の公務には含まれない。 (イ) 勤務時間外の学校祭の準備及び夜警について勤務時間内の学校祭の準備が原告の公務に含まれることは認めるが,勤務時間外の準備は,これについて校長の職務命令は認められないから,原告の公務には含まれない。 (ウ) 地域クラ 勤務時間内の学校祭の準備が原告の公務に含まれることは認めるが,勤務時間外の準備は,これについて校長の職務命令は認められないから,原告の公務には含まれない。 (ウ) 地域クラブ活動の指導について地域クラブは,生徒の保護者がその役員を務め,会計処理も学校の部活動とは別に行われるなど,学校とは人的・経済的に独立した組織であるから,これを部活動と同視することはできず,地域クラブ活動の指導を原告の公務に含めることはできない。 (エ) 夏休みの部活指導(一日練習)について原告は,夏休みの一日練習の際,午前7時から午前10時までは朝 練の指導を,午後4時から午後6時30分までは夕練の準備ないし夕練の指導を行っており,これらは原告の公務に含まれるものであるが,原告が朝練後夕練開始までの間に行っていた勉強や水泳の指導は,E中学校のカリキュラムとして決められたものではなく,校長の職務命令の下に行われたものではないから,公務に含まれるものではない。 (オ) 以上の前提に立つと,原告の本件脳出血の発症前6か月間の時間外労働時間は次のとおりであり,公務の量的過重性は認められない。なお,時間外労働時間の詳細は,別紙1(添付省略)の労働時間内訳表の各被告欄記載のとおりである。 ① 発症前1か月 :41時間40分② 発症前2か月 :54時間00分③ 発症前3か月 :50時間30分④ 発症前4か月 :39時間30分⑤ 発症前5か月 :61時間05分⑥ 発症前6か月 :29時間50分イ原告の公務の質的過重性(ア) 原告の公務全般について公務過重性を判断するにあたっては,労働時間だけではなく,当該労働の質も合わせて考慮する必要があるところ,原告が従事していた イ原告の公務の質的過重性(ア) 原告の公務全般について公務過重性を判断するにあたっては,労働時間だけではなく,当該労働の質も合わせて考慮する必要があるところ,原告が従事していた教育職員の業務は裁量の余地が大きく,また,本件脳出血の発症前1か月ないし2か月は夏休み期間にかかっており,公務は閑散であったと考えられることを考慮すると,原告が従事していた労働による負荷は,一般の公務員の労働負荷よりも低かったと考えられる。したがって,原告の従事した公務に質的過重性は認められない。 (イ) ユニホック競技の模範試合について原告は,毎夜30分程度のジョギングや,陸上部の生徒とともにラ ンニングを行っていたことを考慮すると,ユニホック競技の模範試合への出場が原告の身体に強度の肉体的負荷を与えたとは考えられないから,同模範試合は本件脳出血とは無関係である。 (2) 原告の基礎疾患についてア高血圧原告の血圧は,原告が公務に従事しなくなった本件脳出血の発症後も高数値であるから,原告の高血圧は,原告の公務の過重性を原因とするものではなく,加齢による動脈硬化が進行していたからであると考えられる。そして,このように私病である高血圧ともやもや病の基礎疾患とが合併した状態が,長年の経過中に原告の脳の血管壁に負荷を与え,本件脳出血が発症したものと考えられる。 イもやもや病もやもや血管は,自己調整機能(状況に応じて血流量を調節するために正しく反応する血管の収縮能や拡張能)を失い,異常に拡張した状態の脳血管であり,微小脳出血も通常人より有意に多いものであるから,本来的に脳出血を発症しやすい性質のものである。原告が罹患していたもやもや病は,その自然経過により,6期相分類 い,異常に拡張した状態の脳血管であり,微小脳出血も通常人より有意に多いものであるから,本来的に脳出血を発症しやすい性質のものである。原告が罹患していたもやもや病は,その自然経過により,6期相分類のうち第3期(もやもや増勢期)まで既に進行しており,脳血管の自己調整機能が破綻していつでも脳出血が起こりうる状態にあったから,本件脳出血は,もやもや血管の脆弱性と前記高血圧とがあいまって発症したものであり,原告の従事した公務との因果関係はない。 第3 当裁判所の判断 1 原告の勤務状況(1) 公務該当性の判断基準教育職員が従事した勤務時間外の勤務が公務といえるためには,当該勤務が当該教育職員の職務の範囲に属するものであることを前提に,当該勤 務が指揮命令権者である校長の指揮命令下に置かれた職務の遂行と評価できることが必要であるが,その指揮命令は黙示的なものでも足り,指揮命令権者の事実上の拘束力下に置かれたものと評価できるものであれば公務にあたるというべきである(最高裁昭和47年4月6日第一小法廷判決・民集26巻3号397頁,最高裁平成12年3月9日第一小法廷判決・民集54巻3号801頁参照)。もっとも,教育職員の勤務は,春季,夏季,冬季の学校休業期間における勤務実態が一般の行政事務職員とは大きく異なった勤務形態であり,職務の内容も,教育職員本来の職務である教科指導から,職員会議への出席や研修への参加等といった本来の職務に付随した業務のほか,進路指導,生徒指導といった生徒に対する広範な指導業務,部活動指導などの課外活動に関する業務,PTA活動に関する業務など,非常に広範囲で,かつ,千差万別であるところ,教育職員の職務として義務付けられた職務遂行の範囲が明確ではなく,かつ,教科指導など,職務遂行のために事前に相当程度の準備行 PTA活動に関する業務など,非常に広範囲で,かつ,千差万別であるところ,教育職員の職務として義務付けられた職務遂行の範囲が明確ではなく,かつ,教科指導など,職務遂行のために事前に相当程度の準備行為を必要とする職務が少なくないこともあって,教育職員の職務遂行による業務量を定量的に捕捉することにはそもそも困難が伴う上,各教育職員にはその職務の特殊性から自主性,自発性,創造性に基づく職務遂行とそれによる成果の発揮が期待されており,その面からも,教育職員の勤務については,どこまでが職務命令に基づいた拘束下にある職務遂行であるのかの区別があいまいであることなどから,一般の行政事務職員と同様の勤務時間の管理をすることが非常に困難な側面があり,それ故,公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(以下「給特法」という。)6条及び公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令により,職務命令に基づく時間外勤務を例外的な場合に限定して原則として禁止するとともに,労働基準法37条の適用を排除して時間外勤務手当及び休日勤務手当は支給しない代わりに,包括的な評 価によって手当(教職調整額)を支払うこととされているものであり,このことは,教育職員の職務遂行が,個別的な指揮命令を受けてなされるというより,校務分掌等による包括的な職務命令に従い,各教育職員が自主性,自発性,創造性を発揮しながら自ら進んで職務を遂行するという側面が強いことを意味しているものであり,教育職員が所定勤務時間内に職務遂行の時間が得られなかったため,その勤務時間内に職務を終えられず,やむを得ずその職務を勤務時間外に遂行しなければならなかったときは,勤務時間外に勤務を命ずる旨の個別的な指揮命令がなかったとしても,それが社 が得られなかったため,その勤務時間内に職務を終えられず,やむを得ずその職務を勤務時間外に遂行しなければならなかったときは,勤務時間外に勤務を命ずる旨の個別的な指揮命令がなかったとしても,それが社会通念上必要と認められるものである限り,包括的な職務命令に基づいた勤務時間外の職務遂行と認められ(給特法による包括的な手当で想定されている職務遂行にあたるといえよう。),指揮命令権者の事実上の拘束力下に置かれた公務にあたるというべきであり,それは,準備行為などの職務遂行に必要な付随事務についても同様というべきである。 以下では,校務分掌等により原告が担当を命ぜられていた職務の内容を確定した上,原告がした勤務時間外の職務遂行が,包括的な職務命令に基づいた職務遂行といえるか(職務遂行のために社会通念上必要なものと認められるか)という見地から,公務該当性を判断することとする。 (2) 原告の担当職務であった公務について証拠(甲1ないし3,6,9の2,甲10ないし12,18ないし20,22ないし27,乙A1,3,4,9,10)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件脳出血の発症から6か月前である平成14年3月17日から本件脳出血の発症時(同年9月13日)までの間に,E中学校教諭として次のような職務を担当していたものと認められる。 ア数学の教科指導に関する職務原告は,第1学年4クラスの数学の教科を担当していたところ,1週間の数学の授業時間のコマ数(1コマ50分)は選択授業を含め15コ マであるが,このほかに,総合学習2コマ,道徳1コマ,学級活動1コマ(月曜日の1時限目),生徒会指導1コマ(生徒指導主事としての担当),裁量2コマを担当しており,1週間の受持ち時間は全部で22コマであった。 E中学校の1週間の授業時間のコマ数 学級活動1コマ(月曜日の1時限目),生徒会指導1コマ(生徒指導主事としての担当),裁量2コマを担当しており,1週間の受持ち時間は全部で22コマであった。 E中学校の1週間の授業時間のコマ数は,1日6コマ,1週間30コマであり,原告の平日の空き時間は,月曜日には空きがなく,他の曜日は1日2コマであった。 数学の教科は,ティームティーチング(授業場面において,2人以上の教育職員が連携・協力して1人1人の生徒及び集団の指導の展開を図る指導方法であり,E中学校はこれを採用していた。以下「TT」という。)の指導方法が取られており,平成14年度に原告とTTによってチームを組んでいた同僚教員は中学校で数学を数えるのは初めてであったことから,同僚教員を指導しながらTTに取り組むことになった。 (甲6,乙A1の128頁,原告本人,弁論の全趣旨)イ学級担任としての職務原告は,平成13年度が3年4組,平成14年度が1年2組(2人担任制)の担任であったところ,学級担任は,月曜日の1時限目に学級指導を行うほか,朝の会・帰りの会による生徒への連絡事項の伝達,担任学級に属する生徒全員が担任に提出する生活日記へのコメントの記載,学級経営案の作成,2人担任制による生徒の一日の様子についての話合い,課題の点検,教科の段取り,保護者会,通知票の作成,指導要録の作成,家庭訪問,諸帳簿の作成などの職務を行っていた。 部活指導以外の平日の所定勤務時間内の勤務のスケジュールは,予鈴が午前8時5分,本鈴が午前8時10分に鳴って勤務が開始され(担任学級に赴いて生徒の出席確認と健康観察を行う。),午前8時20分から午前8時30分過ぎまで職員の打合せ,午前8時35分から午前8時4 0分過ぎまで朝の会,午前8時45分から1時限目の授業を開始し,午前中に間 出席確認と健康観察を行う。),午前8時20分から午前8時30分過ぎまで職員の打合せ,午前8時35分から午前8時4 0分過ぎまで朝の会,午前8時45分から1時限目の授業を開始し,午前中に間に各10分ずつを挟んで4時限,午後零時35分から午後1時10分まで給食,午後1時10分から午後1時30分まで放課,午後1時35分5時限目の授業を開始し,午後に間に10分を挟んで2時限,午後3時25分6時限目終了,午後3時40分まで清掃,午後3時45分から午後3時55分まで帰りの会,午後4時ないし4時30分までに下校となっていた。(甲6,19,20,23,27,31,32,弁論の全趣旨)ウ進路指導主事(平成13年度)ないし生徒指導主事(平成14年度)としての職務原告は,平成13年度進路指導主事,平成14年度生徒指導主事を担当していたところ,進路指導主事の職務は,生徒の一生に関わる問題であり,生徒指導主事と並んで年間を通じて精神的負担の重い職務であり,とりわけ年度末には,進路指導委員会の開催,第3学年全4クラスの高校別受験成績一覧表の作成,合格証の受領,生徒の進学先の各高校との連絡や書類提出,就職した生徒については就職担当への対応など,非常に神経を使う仕事が多い上,定時制高校の合格発表が3月末であることもあって,新年度当初まで高校への書類提出などの職務が続いた。 生徒指導主事の職務としては,平成14年度から学校週休2日制が完全実施となったことを受けた年度当初における春休みの生徒指導上の問題点等に関する報告書の作成をはじめとして,生徒指導計画の立案,金曜日の4時限目に生徒指導部会の開催と結果報告書の作成,全生徒の下校を確認する下校指導,生徒指導の統括,中高連絡協議会・中高生徒指導連絡協議会など外部機関との連絡協議会等への参加, 導計画の立案,金曜日の4時限目に生徒指導部会の開催と結果報告書の作成,全生徒の下校を確認する下校指導,生徒指導の統括,中高連絡協議会・中高生徒指導連絡協議会など外部機関との連絡協議会等への参加,豊橋市教育委員会からの巡回訪問への対応,5月の連休明け・夏休み前・豊橋祇園祭時・盆踊り時に実施された合同補導や校区内巡視など,外部と連携しながら 全生徒の指導に取り組む任務であり,肉体的・精神的負荷も多く,相当に負担の重い職務であった。(甲6,19,20,23,27,原告本人,弁論の全趣旨)エ安全教育主任としての職務原告は,平成13年度及び平成14年度と続けて安全教育主任(健康安全部の一部門)の職務を担当していたところ,平成14年度には,安全教育主任の職務として,年度の当初に,新1年生全員(155名)を対象として交通安全教室を開催するとともに,新学期避難訓練の責任者として計画立案と避難指導を指揮したのをはじめ,豊橋市教育委員会主催の安全教育主任研修会への参加(地震防災対策強化地域拡大に伴い,豊橋市内の全中学校の安全教育主任の部長に選任された。),5月の連休時及び夏休みの部活指導後に行った指定通学路の実地安全点検(各種実測を含む)と行政への要望書の提出,豊橋市安全教育推進委員会への参加(豊橋市内中学生用行動マニュアルづくりが決定され,原告が作成責任者となった。),同マニュアルないし地震防災パンフレットの作製準備などの職務を行った。(甲6,19,20,27,原告本人,弁論の全趣旨)オ防火・施設担当としての職務原告は,平成13年度及び平成14年度と続けて防火・施設担当(施設管理部の一部門)の職務を担当していた。(甲6,20,弁論の全趣旨)カ交通指導担当としての職務原告は,平成13年度及び平成14年度 平成13年度及び平成14年度と続けて防火・施設担当(施設管理部の一部門)の職務を担当していた。(甲6,20,弁論の全趣旨)カ交通指導担当としての職務原告は,平成13年度及び平成14年度と続けて交通指導担当(生徒指導部の一部門)の職務を担当していたところ,平成14年度には,年度の当初に朝の交通指導などを行っていた。(甲20,27)キ営繕担当としての職務(平成14年度)原告は,平成14年度営繕担当(施設管理部の一部門)の職務を担当 していた。(甲6,20)ク時間割作成担当責任者としての職務(平成13年度)原告は,平成13年度時間割作成担当の責任者になっていたことから,平成14年3月終わりから4月初めにかけてほぼ連日に及んで,平成14年度前・中・後期3期分の時間割表の作成作業に従事した。(甲6,23,27,乙A1の128頁,弁論の全趣旨)ケいじめ・不登校対策委員会の責任者としての職務(平成14年度)原告は,平成14年度生徒指導主事に加え,いじめ・不登校対策委員会(生徒指導部の一部門である生徒指導の下に置かれた委員会の一つ)の責任者になっていたことから,委員会の開催はもとより,全生徒を対象にアンケートを実施したり,全教諭に報告書の提出を依頼し,校内のいじめ・不登校の実態を調査して報告書にまとめるなどした。(甲6,20)コ陸上部顧問としての部活指導に関する職務原告は,E中学校に赴任した平成11年度から,陸上部の顧問を命ぜられ,前年度に赴任していた先輩教員のFが監督となり,同人とともに陸上部の部活指導を行った。Fは,学生時代に陸上の経験があったことから,練習メニューは,Fが作成し,Fが作成したメニューに従って2人で分担して指導したが,指導内容としては,メニューに従った通常練習 陸上部の部活指導を行った。Fは,学生時代に陸上の経験があったことから,練習メニューは,Fが作成し,Fが作成したメニューに従って2人で分担して指導したが,指導内容としては,メニューに従った通常練習の指導,トラックのライン引き,タイムトライアル時のタイム計測,ロード練習(原告は自転車で伴走し,遅れた生徒などが無事学校まで戻れるよう見届けるなどしていた。)のほか,原告は,ウォーミングアップやジョギング,クールダウンの運動を生徒と一緒に行うことが多く,よく走っていた。 陸上部の部活動は,平日は,午前7時20分から午前8時までの朝練,午後4時から午後6時30分ころまで(部活動は日没30分前までとさ れていたところ,本件脳出血発症前6か月間の期間は,概ね午後6時30分ころまで陸上部の部活動が行われていた。)の夕練を行っていた。土日については,平成13年度までは,部活動が認められていたことから,部活動として練習を行っていたが,平成14年度に公立学校において週休二日制が完全実施されたことに伴い,日曜日の部活動ができなくなり(同時に,大会についても部活動として参加できる範囲が限定された。),豊橋市では,校区ごとに生徒の保護者が役員となった任意団体として地域クラブを設立しそこで日曜日の部活動に代わる活動をさせる方針が取られ,E中学校の陸上部の日曜日の部活動に代替するものとしてE長距離クラブ(以下,単に「地域クラブ」ともいう。)が設立されたところ,地域クラブにおいて前年度まで陸上部の部活動として行っていた日曜日の練習をすることになり,その指導も,部活指導を職務として担当するFと原告が担当し,練習も校長から施設利用の許可を受けて学校で行っていたものであり,地域クラブの練習には,陸上部の全員が参加しており,実態は陸上部の部活動と異ならないも 部活指導を職務として担当するFと原告が担当し,練習も校長から施設利用の許可を受けて学校で行っていたものであり,地域クラブの練習には,陸上部の全員が参加しており,実態は陸上部の部活動と異ならないものであった。(甲6,12,証人F,原告本人,弁論の全趣旨)サその他の職務(ア) 研修への参加原告は,新学習指導要綱の改正に伴う教育職員の現職研修に参加したのをはじめ,平成14年8月には3日間にわたり20年目職場研修に参加し,研修報告書を作成するなどした。(甲6,27)(イ) 学校祭に関する職務E中学校では,平成14年9月13日及び14日の両日にわたり,生徒1人1人が主役となり生徒全員で創り上げるという目的の学校行事(学芸)として学校祭が開催されたが,原告は,学校祭フィナーレを担当し,8月下旬に学校祭フィナーレ実行委員会を開催し,生徒の 実行委員に対する指導・助言をしたり準備作業を一緒にしたりしたほか,原告の担任学級においても学級企画としてお化け屋敷を出すことになったため,相担任とともに夏休み中から生徒を1,2日出校させて助言・指導を行ったほか,お化け屋敷設営の準備作業については,生徒の負担を減らすために部活指導後にこれを中心的に行っていた。 また,E中学校においては,学校祭が円滑に挙行されるよう,生徒指導部が主体となって学校祭における生徒指導及び警備計画を策定していたところ,生徒指導部は,学校祭についての指導,服装や頭髪など身なりについての指導を行うとともに,学校祭の前々日から学校祭2日目までの間,生徒指導部において,警備を行い,とりわけ,学校祭前夜及び学校祭1日目の夜には,夜間の学校への侵入,いたずらなどが発生しないように夜警を行っており,原告は,生徒指導主事としてその中心的役割を担い,警備につい において,警備を行い,とりわけ,学校祭前夜及び学校祭1日目の夜には,夜間の学校への侵入,いたずらなどが発生しないように夜警を行っており,原告は,生徒指導主事としてその中心的役割を担い,警備については,学校祭の前夜である9月12日の夜警を担当し,学校に泊まり込んだ。 さらに,原告は,学校祭1日目には,ユニホック競技の模範試合に選手として参加することになり,生徒とともに競技を行った。(甲6,20,23,27,乙A1の28頁,原告本人)(3) 勤務時間外の教材研究等についてア教材研究は,教育職員が自らの職務を全うするために必要不可欠なものとして義務づけられており(弁論の全趣旨),また,学校事務等の付随事務も,原告が担当する職務の遂行のために必要不可欠なものであったと解されるから,原告の職務の範囲に当然に属するものと解される。 また,校長は,原告に対し,校務分掌等により前記(2)のアないしサの職務を包括的に命じていたと解されるところ,原告は,平日の授業の空き時間は1日の6コマ中月曜日には1コマもなく,他の曜日も2コマしかなく(甲6,乙A1の128頁。なお,後者は,月曜日の1時限目が 空きになっているが,学級活動の時間には原告も関与していたと推認される。),その少ない空き時間は,担任する生徒全員が担任に提出する生活日記へのコメントの記載及びTTの打合せなどにほとんどすべてを用いていたことに加え(甲31,32,証人F,原告本人),教科指導後は午後6時30分ころまで陸上部の部活指導をしており(乙A1の29頁など),教材研究等を行う時間は,部活指導を終えた後にしか確保できず,やむを得ず勤務時間外に教材研究等を行わざるを得なかったものと推認される。 そして,証拠(甲6,12,13,18,23,24,27,証人F,原告本人)及び は,部活指導を終えた後にしか確保できず,やむを得ず勤務時間外に教材研究等を行わざるを得なかったものと推認される。 そして,証拠(甲6,12,13,18,23,24,27,証人F,原告本人)及び弁論の全趣旨によると,原告は,生徒思いで非常に真面目な性格であり,教材研究等に関しても手を抜くことはなかったと推認され,在校時には,TTに関する同僚教員への指導にも相応の時間を割いていたと考えられること,学級事務における付随事務だけでも,生徒から提出される生活日記へのコメントの記載,2人担任制による相担任との話合い,課題の点検,欠席した生徒への連絡や家庭訪問,諸帳簿への記入など,多岐にわたること,原告は,学級事務以外にも生徒指導主事をはじめ様々な校務分掌を受けており,それらに関する事務を行う必要があり,更に陸上部の部活指導による時間的拘束は非常に多く,全体の業務量は,およそ所定勤務時間内に終えられるようなものではなかったと推認されること,平成14年当時,豊橋市の中学校において毎日12時間以上働いていると回答した教育職員が42%の多数に上っており,中学校の教育職員の長時間労働は広く常態化していたと推認されること(平成4年から平成19年の調査結果)などが認められ,これらの事実を併せ考えると,原告が勤務時間外に学校事務等の付随事務や教材研究に要した時間は,原告が教員生活20年目を迎えたベテランの教員であったことや授業のない空き時間が多少あったことを考慮した上で, 控え目に見ても,平日に午後8時過ぎまで居残ってこれらの職務を遂行しなければならない日が相当程度あったということは優に推認でき,そのような勤務時間外の勤務を行ったことは,原告が校務分掌により担当していた公務の業務量に照らし社会通念上も必要やむを得ない範囲のものであったと認められ 日が相当程度あったということは優に推認でき,そのような勤務時間外の勤務を行ったことは,原告が校務分掌により担当していた公務の業務量に照らし社会通念上も必要やむを得ない範囲のものであったと認められるから,原告は,少なくとも別紙2(添付省略)の労働時間表記載の平日(拘束時間を20:00まで記載した日)に午後8時まで教材研究等の公務に従事していたと認めるのが相当である。 イこの点につき,被告は,勤務時間外の教材研究等について校長の職務命令は認められず,原告の自主的な活動である旨主張するが,原告が前記(2)アないしサの職務を遂行すべきことについて校長の包括的な指揮命令があったことは明らかであり,その全体の業務量からして,これらの職務を所定の勤務時間内に終えることはおよそ困難であり,加えて教材研究についても教育職員が自らの職務を全うするために必要不可欠なものであって,社会通念上必要と認められる範囲のものは,教育職員の職務に他ならず,これらの職務を完遂することは,校長による前記包括的な職務命令において当然に予定されているといえることからすれば,黙示的な職務命令が及んでいるものと認められ,被告の前記主張は採用できない。 (4) 勤務時間外の学校祭の準備及び夜警についてア学校祭は,特別教育活動の一環としてE中学校の正式な行事として決定され(乙A1,弁論の全趣旨),同中学校の学校経営案(甲20)にもその開催予定や運営組織が盛り込まれていたこと,学校祭を含む特別教育活動の指導を通じて自浄力と活力のある行動ができる集団を作ることが同中学校の平成14年度の重点努力目標のひとつとして掲げられていたこと(甲20の1頁)のほか,原告の担任する学級(1年2組)は生徒の意思決定によってお化け屋敷を開催することになったところ, お化け屋敷を設 4年度の重点努力目標のひとつとして掲げられていたこと(甲20の1頁)のほか,原告の担任する学級(1年2組)は生徒の意思決定によってお化け屋敷を開催することになったところ, お化け屋敷を設営するためには,机を3段重ねにして紐で固定し,段ボールを用いて迷路を造り,窓に暗幕を張るなど,中学1年生の生徒のみには任せられない力や注意を要する作業が必要であり,事故防止という観点や生徒の負担が重くならないように配慮するという観点からも,担任である原告自らが前記作業を応援しなければならなかったことは十分に理解できることであり,社会通念上も必要なことであったと考えられることなどの事実に照らすと,原告が学校祭の準備を行うことは,原告の職務の範囲に属するものと認めるのが相当である。 学校祭は,学校全体のスケジュールに組み込まれ,夏休み明け直後の9月13日及び同月14日に開催が予定されていたところ(乙A1の91頁),原告の担任学級の出し物であるお化け屋敷は,準備に相当の時間を要するものであり,また,夏休みが明けてからは,原告はその準備を他の学校事務等の付随事務や教材研究と並行して行わなければならなくなることからして,学校祭の準備のためには,夏休み明けからだけでは時間が不足していることが明らかであり,夏休みのうちから適宜準備を進めておく必要があったこと(甲12,乙A1の46頁以下,77頁,86頁以下),教育職員が学校祭の準備を行う生徒を指導し,また,警備については,生徒指導部が中心になって行うことが,学校全体の方針として定められていたものであり,学校祭前夜の夜警については,原告が担当とされていたところ,夜警には深夜の巡回も含まれていたことから,原告が前夜から学校に泊まり込んだのは,予め定められた学校の警備計画に従ったものといえること(乙A1の2 夜の夜警については,原告が担当とされていたところ,夜警には深夜の巡回も含まれていたことから,原告が前夜から学校に泊まり込んだのは,予め定められた学校の警備計画に従ったものといえること(乙A1の28頁),原告は,平日においては,陸上部の指導を終えた後にしか学校祭の準備を行う時間を確保できなかったこと(甲6,12,23,証人F,原告本人,弁論の全趣旨)などの事実からすると,原告が勤務時間外に行った学校祭の準備及び夜警は,まさしく教育職員の職務の遂行としてなされたものと認 められ,公務に当たるというべきである。なお,原告は,本件脳出血を発症した前日の平成14年9月12日,前記のとおり,夜警のためE中学校において泊まり込んでいるところ,同日午後10時から午後10時30分までの間,校舎2棟,体育館,武道場,木工室,金工室などのガラスが割られていないかどうかの点検のために見回りをし,その後同日午後11時30分までは,翌日に行われるユニホック競技の体験講座の準備及び同僚教員との情報交換を行ったことが認められる。(甲6,7,23,乙A1,原告本人,弁論の全趣旨)イこの点につき,被告は,勤務時間外の学校祭の準備及び夜警について校長の職務命令は認められず,原告の自主的な活動である旨主張するが,原告の前記職務の遂行が,校長の包括的な職務命令に従い,職務を全うするために社会通念上必要と認められる範囲でなされ,そうした職務遂行は学校の方針として予定されていたものであり,校長においても認識していたものであることからすれば,教材研究等の場合と同様,黙示的な職務命令が及んでいると認められ,被告の前記主張は採用できない。 (5) 陸上部の部活指導について原告は,平成11年4月にE中学校に赴任すると同時に,校務分掌により,陸上部の顧問に任命さ な職務命令が及んでいると認められ,被告の前記主張は採用できない。 (5) 陸上部の部活指導について原告は,平成11年4月にE中学校に赴任すると同時に,校務分掌により,陸上部の顧問に任命されているところ,豊橋市教育委員会が作成した部活動指導の手引き(甲25)及びE中学校の学校経営案(甲20)によれば,公立中学校の教育の中に特別教育活動として部活動が取り入れられ,その目標として,生徒の自発的,自治的な活動を通して自主的な生活態度や社会性を育成し,併せて心身の健康を助長することが掲げられており,市及び学校が積極的に部活動を推進していたことが認められ,部活動の指導をすることは,教育職員の職務の範囲に属し,かつ,同指導について校長の明示の職務命令があったことは明らかである。 そして,証拠(乙A1の29頁,証人F,証人N,原告本人)及び弁論 の全趣旨によれば,陸上部の指導時間は,平日は前記(2)のコのとおりであり,夏休み期間の指導時間は,後記(8)のウのとおりであることがそれぞれ認められるから,同時間帯につき,原告の公務への従事を認めるのが相当である。 (6) 地域クラブ活動の指導についてア証拠(甲30,39,40,乙A7ないし9,証人F,証人N,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,前記(2)のコのとおり,地域クラブは,平成14年4月から,公立の小中学校における週休二日制の完全実施に伴い,豊橋市においては,日曜日の部活動が禁止されたことから,同月,学校の部活動に代わるものとして発足したものであり,地域クラブの発足はE中学校長の指導に従ってなされたものであったこと,その際,校長からは,地域クラブについて学校の部活動の延長として活動してはならないとの指導はなされなかったと推認されること,地域クラブの練習は部活動のない日曜 指導に従ってなされたものであったこと,その際,校長からは,地域クラブについて学校の部活動の延長として活動してはならないとの指導はなされなかったと推認されること,地域クラブの練習は部活動のない日曜日に行われたこと,体育的部活動問題検討委員会が平成21年10月7日付けで豊橋市教育委員会に提出した答申(甲30)や平成22年の新聞報道(甲40)などによると,学校の部と地域クラブの所属選手及び指導者が同じであり,地域クラブがいわゆる「クラブと称した部活動」となっている実態が報告されているところ,E中学校の陸上部と地域クラブの所属選手は,42名中2名を除きすべて同じであり,地域クラブの指導も,実態としては,陸上部の場合と同じくFと原告の2人が主となって行われていたこと(ただし,原告は,E長距離クラブの運営等について記載した書面には,顧問,コーチとして明示的には記載されていなかった。),練習場所もE中学校教頭の許可を得て部活動と同じくE中学校の施設を利用して行われており,E長距離クラブの活動の実態は,前記報告されている「クラブと称した部活動」であったと認められ,部活動の延長にほかならないものであったと評価し 得ること,平成14年度は,日曜日の部活動が禁止され,地域クラブが設立された初年度であり,地域クラブ活動の実態からして関係者において部活動と地域クラブの分離が十分に意識されていたとは到底考えられず,原告やFにおいても,地域クラブは部活動の代替として行われるものであり,部活指導を命ぜられている職務命令の下,部活動による指導効果を高め,期待された成果を上げるために,地域クラブについても同様に指導を行うことが期待されており,自己の職務の延長であると認識してこれを引き受けていたものと推認され,まったくの自主的,自発的な判断から任意に地域ク た成果を上げるために,地域クラブについても同様に指導を行うことが期待されており,自己の職務の延長であると認識してこれを引き受けていたものと推認され,まったくの自主的,自発的な判断から任意に地域クラブの指導を行っていたものとは考えられないこと,部活指導については,職務命令権者である校長の明示又は黙示の了解のもと,これを指導する教育職員の自主性,自発性,創造性を発揮した裁量による職務遂行が期待されているところ,陸上部の日曜日の部活動を地域クラブ活動に代替させ,これを部活動の延長として行うことについては,校長も了解していることであると,F及び原告において認識し得る状況にあったと推認されることなどの事実が認められ,これらを総合的に考慮すると,地域クラブ活動は,少なくとも平成14年度については部活動の延長にほかならなかったものであり,F及び原告は,陸上部の部活指導を命ぜられている自己の職務の一環として地域クラブの指導にあたっていたと認めることができるから,地域クラブ活動の指導は,部活指導と同じく公務に該当するものと認めるのが相当である。 イこの点につき,被告は,地域クラブはE中学校とは人的・金銭的に独立した組織であるから,学校の部活動と同視することはできず,地域クラブ活動は原告の公務にあたらない旨主張するところ(前記第2の5の(1)のアの(ウ)参照),確かに,地域クラブの役員は陸上部の指導者と完全な同一性を有するわけではなく(乙A8),運営主体も保護者であり(乙 A3),人的体制において陸上部とは一定の相違がみられること,また,地域クラブにおいては,同クラブ加入者から必要な費用を集め,学校から同クラブに対する補助金は出ないなど,学校とは金銭的に独立した組織であったことといった,前記主張に沿う各事実も認められる。しかしながら, ラブにおいては,同クラブ加入者から必要な費用を集め,学校から同クラブに対する補助金は出ないなど,学校とは金銭的に独立した組織であったことといった,前記主張に沿う各事実も認められる。しかしながら,地域クラブ活動の指導にあたっていたのは主としてFと原告であり,実際に練習を行う人的体制については陸上部とほとんど相違はなく,練習場所も主に学校のグラウンドであったことなど,その活動実態は,陸上部の部活動と何ら異ならなかったこと,また,前記の地域クラブ発足の経緯(部活動に代わるものとして校長の指導の下に立ち上げられたこと,地域クラブ活動を部活動の延長としてはならないとの指示などは何らなされていなかったと考えられること)や,地域クラブには陸上部の部活動の延長という認識で同部に属する生徒全員が参加し,3年連続の全国大会出場に向けてがんばろうとしており,陸上部の顧問である原告においてもそうした部の目標の達成に向けて指導者として参加しなければならないとの使命感のもと,生徒に対し陸上部の部活動の延長として地域クラブの指導にあたっていたことには無理からぬ事情があり,社会通念上も必要やむを得ないことであったと考えられることなどを前提にすると,地域クラブの人的体制が陸上部と完全には同一でなかったことや,学校から金銭的に独立した組織であったことを考慮しても,なお地域クラブ活動は陸上部の部活動とその主要な部分について同一性を有し,その実態として,陸上部の部活動の延長であったと認めるのが相当であるから,被告の前記主張は採用できない。 (7) 夏休みの部活指導(一日練習)についてア午前7時20分から午前10時までの朝練の指導並びに午後4時から午後6時30分までの夕練の準備及び指導が原告の公務に含まれることは,当事者間に争いはない。 イ一方,前記 についてア午前7時20分から午前10時までの朝練の指導並びに午後4時から午後6時30分までの夕練の準備及び指導が原告の公務に含まれることは,当事者間に争いはない。 イ一方,前記朝練の指導後夕練の準備を開始するまでの午前10時から午後4時までの間(ただし,1時間の休憩を除く。)は,原告は,Fとともに,陸上部員に対して勉強や水泳の指導を行っていたものであり,これらの公務性については当事者間に争いがあるところ,証拠(甲12,乙A4,証人F,証人N,原告本人)及び弁論の全趣旨によると,これらの指導は,生徒が互いに仲間意識を持って陸上部の練習に取り組み,全国大会出場という部の目標を達成するために行った,指導者である教育職員としての工夫の一端であったこと,夏休みの部活動予定表によると,陸上部を含む部活動には一日通しての練習が予定された日が記載されており(乙A1の111頁),同予定表は校長の許可を得て作成されたものであったことからすると(証人F),前記予定表で一日の練習が予定された日については,部活動を目的としてこれを指導する教育職員が生徒を学校内に止め置く時間中,教育職員の当然の職務として生徒の安全や生活面での指導を行う必要があり,かつ,その指導内容についてはこれを指導する教育職員の裁量に委ねられているといえ,校長も当然にそのことを認識しつつ積極的に容認していたと評価することができる(換言すれば,校長が夏休みの開始前に前記予定表によって包括的に一日を通じての部活指導を命じていたといえるものである)から,一日の練習が予定された日については,陸上部の練習の指導以外の水泳や勉強の指導についても陸上部の部活指導の一環であると認められるものであり,校長による包括的な職務命令が及んでいると認められるというべきである。 そして,証拠 いては,陸上部の練習の指導以外の水泳や勉強の指導についても陸上部の部活指導の一環であると認められるものであり,校長による包括的な職務命令が及んでいると認められるというべきである。 そして,証拠(証人F,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,前記勉強及び水泳の指導に要した時間は,午前10時から午後4時までのうち休憩1時間を除いた5時間であると認められるから,前記アの朝練及び夕練の時間の合計(5時間10分)に5時間を加えた10時間10分 が,原告の公務に従事した時間となる。 ウこの点につき,被告は,朝練の指導後夕練の開始までの間に原告が行った勉強や水泳の指導は,E中学校のカリキュラムとして決められた行事ではなく,校長の命令の下に行われたものではないから,原告の公務に含まれない旨主張し,確かに,前記勉強や水泳の指導は,学校のカリキュラムとして明示的に定められたものではなく,F及び原告がその創意工夫の下で考案した指導法であることが認められる。しかしながら,これらの指導が,陸上部の部活指導の一環として行われたものであることは,前記のとおりであり,校長においても,夏休み部活動予定表により,一日を通してF及び原告が陸上部の生徒を指導することを包括的に指示しており,具体的な指導内容については実際に指導する教育職員の裁量に委ねていたものと認められるから,被告の前記主張を採用することはできない。 (8) 原告の勤務状況の総括以上認定した事実のほか,証拠(甲6,9の2,12,18,19,23,24,26,27,39,乙A1,4,5,10,証人F,証人N,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件脳出血が発症する前の6か月間である平成14年3月17日から同年9月12日までの間,別紙2(添付省略)の労働時間表記載のとおり公務を行って ,証人N,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件脳出血が発症する前の6か月間である平成14年3月17日から同年9月12日までの間,別紙2(添付省略)の労働時間表記載のとおり公務を行っていたことが認められる。 そして,原告が公務に従事していた時間帯は,おおむね次のとおりである。 ア平日の勤務(夏休み及び春休み期間中を除く。)(ア) 陸上部の朝練の指導午前7時20分から午前8時(イ) 教科指導及び学校事務等午前8時10分から午後3時55分ただし,陸上部の夕練がないときは,午後4時55分まで学校事務 等を行っていた。 (ウ) 陸上部の夕練の指導午後4時から午後6時30分ころ(エ) 教材研究等夕練の指導終了後から午後7時30分ただし,別紙2(添付省略)の労働時間表に拘束時間を20:00まで記載した日は,午後8時まで教材研究等を行っていた。 (オ) 休憩時間 45分イ土日の勤務(ア) 土曜日陸上部の部活指導午前7時30分又は午前8時から正午(イ) 日曜日地域クラブ活動の指導午前7時20分又は午前8時から午後零時30分ウ夏休み中の勤務(平成14年7月20日から同年8月31日)(ア) 午前練習の日(○)① 陸上部の部活指導午前7時20分から正午② 教材研究等ないし学校祭の準備午後1時から午後4時55分ただし,勤務日のみ。 (イ) 一日練習の日(◎)① 午前の練習午前7時20分から午前10時② 勉強の指導午前10時から午前11時③ 水泳の指導午前11時から午 練習の日(◎)① 午前の練習午前7時20分から午前10時② 勉強の指導午前10時から午前11時③ 水泳の指導午前11時から午後0時④ 昼食午後0時から午後1時⑤ 勉強またはレクリエーション午後2時から午後4時⑥ 夕練の指導午後4時から午後6時30分ただし,予定では一日練習となっていた日でも,午前のみ部活指導を行い,午後には教材研究等を行った日があったと考えられるほ か,8月20日以降は,学校祭の準備を行うようになり,同月24日からは,午後7時ころまで学校祭の準備を行うことがあった。 エ春休み中の勤務(3月23日から4月4日)(ア) 平日① 部活指導午前7時20分から午前8時ただし,午前9時又は午前10時30分までの日もあった。 ② 学校事務等午前8時から午後4時55分又は午後6時30分(イ) 土日部活指導午前7時から午前10時オまた,本件脳出血が発症する前6か月間である平成14年3月17日から同年9月12日までの間の時間外労働時間の集計は,次のとおりである。 ① 発症前1か月 :86時間10分② 発症前2か月 :97時間10分③ 発症前3か月 :114時間35分④ 発症前4か月 :101時間00分⑤ 発症前5か月 :81時間25分⑥ 発症前6か月 :72時間05分(9) 原告の公務の質的過重性ア陸上部の部活指導について証拠(甲6,12,乙A4,A10,証人F,証人N,原告本人)及び弁論の全趣旨によれ 発症前6か月 :72時間05分(9) 原告の公務の質的過重性ア陸上部の部活指導について証拠(甲6,12,乙A4,A10,証人F,証人N,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。 (ア) E中学校の陸上部は,平成14年度,前々年度から2回連続の全国大会への出場を果たしていたため,同年度は,愛知県で初となる3年連続の全国大会への出場が期待されており,その期待は同中学校の保 護者や教育職員などの学校関係者のみならず,同中学校が所属する豊橋市や愛知県からも寄せられており,原告は,Fとともに,かかる期待に応えなければならないとの精神的緊張を抱えていた。 (イ) 原告は,陸上部の指導にあたって,練習中の指導はもとより,大会における記録を分析したり,駅伝の練習で走るコースを自ら試走して実際の走行計画を立てたり,指導者としての体力をつけるためにジョギングをしたりするなど,緻密な作業を含む準備的作業を日常的に継続して行っていたものであり,肉体的・精神的負荷を伴うものであった。 (ウ) 原告は,E中学校に転任する以前に野球部の監督に就任した経験はあるものの,陸上部の監督や顧問に就任したことはなく(ただし,C小学校において小学生の陸上競技指導をした経験はあった(原告本人24頁)。),本格的な陸上競技に携わることは初めてであり,陸上競技自体を好いていたり,得意としていたりしたわけではないが,全国大会出場という部員達の目標を叶えるべく,日夜熱心に指導を行っていた。また,陸上部では,原告がE中学校で陸上部の顧問に任命される1年前からFが同部の指導にあたっており,原告が顧問になると同時にFが顧問に就任したが,Fは,学生時代には陸上競技でインターハイに出場した経験もあったことから,原告は,陸上部の指導に 問に任命される1年前からFが同部の指導にあたっており,原告が顧問になると同時にFが顧問に就任したが,Fは,学生時代には陸上競技でインターハイに出場した経験もあったことから,原告は,陸上部の指導においてFとは異なる自分なりの役割を果たそうと努力していた。 (エ) 教科指導のない夏休み期間においても,陸上部または地域クラブの出場する大会(市内総合体育大会,通信陸上大会,東三河中学校総合大会,愛知県総合体育大会,東海大会)が多く開催されており,原告はこれらの大会当日に生徒に付き添う必要があったことに加え,大会で良い成績を修めるために,夏休み期間の指導や生徒の体調管理には平常時よりも更に気を遣わなければならず,それゆえ,夏休み期間中 にもかかわらず原告が公務から完全に解放される期間は8月12日から同月15日までの夏季休暇を除けばほとんどなく,精神的負荷は強いものであったと推認され,また,練習日にしても大会出場日にしても,夏の暑い盛りの部活指導の勤務は体力的にも相当に負担のかかるものであり,肉体的負荷も強いものであった。 (オ) 以上の事実を併せ考慮すると,原告は,陸上競技の経験がない自らが,全国大会への3年連続出場が期待された,いわゆる強豪と評し得る陸上部を陸上経験者のFとともに指導することに関し,やりがいを感じつつも,相当の肉体的・精神的負荷を受け,さらに,前記のとおり教科指導のない夏休み期間中も陸上部の部活指導から完全に解放される期間がなかったばかりか,夏の暑い盛りに練習を継続しつつ,夏季に集中して開催され,かつ,まさに部活動の成果の発揮が期待される場である多くの大会へ部員を参加させることに伴う指導者としての肉体的・精神的負荷には強いものがあったことから,疲労を回復させるどころか,更に疲労を蓄積させていったものと推認され 果の発揮が期待される場である多くの大会へ部員を参加させることに伴う指導者としての肉体的・精神的負荷には強いものがあったことから,疲労を回復させるどころか,更に疲労を蓄積させていったものと推認される。 イ教科指導以外の公務(陸上部の部活指導を除く。)について証拠(甲6,19,23,27,乙A1,A12の1ないし3,証人F,原告本人)及び弁論の全趣旨によると,次の各事実が認められる。 (ア) 原告は,平成14年度,数学の教科指導及び陸上部の部活指導以外の校務として,学級担任,生徒指導主事,安全教育主任(豊橋市の中学校全体の安全部長を含む。),防火・施設担当,交通指導担当及び営繕担当などの多種多様な職務を務めていたものであり(前記第2の2の争いのない事実等の(1)のア参照),夏休み中にも,これらの職務に関して種々の業務があり,これら多種多様な職務を遂行していたことによる恒常的な肉体的・精神的負荷にも相当に強いものがあったと推認される。 (イ) 原告が平成13年度に担当していた進路指導主事の職務は,入試関係の書類のチェック,生徒の成績分布の確認,各高校との連絡や就職担当への対応など,いずれも生徒の将来に関わる事項でミスが許されない性質のものであり,多大な精神的緊張を伴う職務であったが,平成14年4月初めまでその職務の遂行が続いた。 (ウ) 原告は,平成13年度に時間割作成業務を責任者として担当していたが,同業務は,3学年合計14クラスの3学期分の時間割を,指導教育職員が重複することなくかつ予定されたカリキュラムをすべて終えられるように過不足なく調整する必要があり(乙A1の128頁参照),その調整には相当の困難を要し,精神的負荷の大きい仕事であったが,この職務も平成14年4月初めまで続いた。 (エ) 生徒指導主事 えられるように過不足なく調整する必要があり(乙A1の128頁参照),その調整には相当の困難を要し,精神的負荷の大きい仕事であったが,この職務も平成14年4月初めまで続いた。 (エ) 生徒指導主事の職務は,毎週金曜日に開催される生徒指導部会への出席,学校内部におけるいじめ・暴力行為・喫煙などの問題行動の情報収集,下校指導のほか,外部機関との情報交換を行うとともに,外部機関と連携して生徒指導にあたり,合同補導や校区内巡視などを実施するなど,学校内に止まらぬ幅広い活動を行っていたものであり,いじめ・不登校対策委員会の責任者としての職務も含め,その業務量は相当に及び,進路指導主事と並び,肉体的・精神的負荷の非常に強い職務であった。 (オ) 安全教育主任としての職務についても,平成14年度は地震防災対策強化地域の拡大に伴い,安全教育主任としての任務が増大した時期であり,原告は,豊橋市内の全中学校の安全教育主任の部長に選任され,市内中学生用の行動マニュアルの作成などの業務に従事していたほか,指定通学路の実地安全点検にも手を抜くことはなく,行政への要望書の提出なども行うなど,看過できない業務量があった。 (カ) E中学校は,数学の教科指導においてTT制度を採用していたとこ ろ,TTによって一人の教育職員に係る事務負担は一般的に軽減される側面はあるものの,原告の相教育職員は中学校で数学を教えるのは初めてであり,原告は同教育職員を指導する立場に置かれていたことから,TTによって原告の肉体的・精神的負荷はむしろ増すこととなった。また,学級事務についても,原告の担任学級は,2人担任制であったことから,学級運営及び生徒指導のために,相教育職員との話合いが常時必要であり,また,生活日記へのコメントの記載も恒常的な業務として存在しており,既述の いても,原告の担任学級は,2人担任制であったことから,学級運営及び生徒指導のために,相教育職員との話合いが常時必要であり,また,生活日記へのコメントの記載も恒常的な業務として存在しており,既述のとおり,その他種々の付随的事務があることにかんがみると,学級事務の業務量にも相当なものがあった。 (キ) 原告は,前記のとおり,学校祭で担任学級の企画として催すお化け屋敷の準備を,夏休み期間中から断続的に行っていたものであり,これは,前記の陸上部の部活指導とあいまって,夏休み期間中に,原告が公務から解放されるまとまった期間を取れない原因の一つにもなっていた。 (ク) 原告は,真面目な性格で,生徒の希望はできる限り叶えてやりたいとの思いを有する熱心な教育職員であり,前記のような非常に多忙な中にあっても,与えられた職務について手抜きをすることは一切なかった。 (ケ) 以上の事実を併せ考慮すると,原告は,本件脳出血の発症前6か月間において,高度の精神的緊張を伴う校務を含む職務をほとんど休む間もなくこなし,その労働密度は相当に高かったことが認められ,量的のみならず質的にも非常に重い公務を遂行していたものであり,過重な公務による肉体的・精神的負荷を恒常的に受けていた状態にあったことが優に認められるから,原告は,これによって,長期間にわたり疲労を蓄積させていったものと推認される。 ウ学校祭の前夜からの夜警について原告は,前記のとおり,本件脳出血が発症した前日である平成14年9月12日,E中学校において宿泊を伴う夜警に従事しているところ,証拠(甲6の18頁,甲27の14頁,乙A1,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,その当時,学校祭の開催に合わせ,学校のプールに長いすが投げ込まれたり運動場にたばこの吸い殻があったりす いるところ,証拠(甲6の18頁,甲27の14頁,乙A1,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,その当時,学校祭の開催に合わせ,学校のプールに長いすが投げ込まれたり運動場にたばこの吸い殻があったりする事例が発生しており,そうした事態の発生を未然に防止するため,E中学校として,学校祭の前夜及び学校祭1日目の夜には夜警を行うことがあらかじめ定められていたものであり,原告は,あらかじめ定められていた警備計画に従って夜警に従事したものであるが,生徒指導主事として,不測の事態の発生を防止すべき責任者でもあったことから,相応の緊張感を持って夜警に従事していたものであったこと,そのため,原告は,深夜にも巡回をしているほか,就寝する際にも,不審者の侵入を防ぐために,校長室のソファで電灯を点けたまま就寝するなど,物理的にも精神的な緊張が解けない状況に置かれていたことなどの事実が認められ,これらの事実に照らすと,原告は,前日は良質な睡眠を取ることができず,睡眠によって肉体的・精神的疲労の回復を図ることはできない状態であったと推認される。 エユニホック競技の模範試合について(ア) ユニホックは,バスケットボールのコートほどの大きさのコートにおいて,6名ずつの選手がアイスホッケー様のスティックを用いて相手チームのゴールにボールをシュートして点を競うスポーツであるところ,証拠(甲6の19頁,9の1,14,16,乙A2,A5,証人M)及び弁論の全趣旨によると,ボールの動きは人間の動きよりも速く,人間はボールの動きに合わせて急なダッシュとストップを繰り返さざるを得ないこと,模範試合を行った原告も生徒もユニホックの 素人であり,ポジションに従って一定範囲のみ動くというより,コート全面を走り回るような状態であったと推測され,とりわけ,原告は前 ざるを得ないこと,模範試合を行った原告も生徒もユニホックの 素人であり,ポジションに従って一定範囲のみ動くというより,コート全面を走り回るような状態であったと推測され,とりわけ,原告は前記のとおり真面目な性格であり,生徒に模範試合を見せる以上,コート上を必死に駆け回ったと推認されること,原告は,ユニホックを行った前日の夜は夜警のために学校に泊まり込み,電灯を点けたままソファで就寝したこともあって,良質な睡眠が取れておらず,蓄積した疲労が十分に回復していなかったことが推認され,これらの事実を併せ考慮すると,原告は,長期間の疲労が蓄積していたところに前記のような広範囲にわたる瞬発力の求められる急な動作を反復したことにより,急性かつ相当程度強度の肉体的負荷を受けたものと推認される。 (イ) この点につき,被告は,原告にジョギングやランニングの習慣があったことからして,8分間程度のユニホック競技が原告の身体に強度の肉体的負荷を与えたとは考えられない旨主張し,これに沿う証拠(乙A2,A5)を提出するが,原告が疲労を蓄積させたままユニホック競技の模範試合において8分間とはいえ広範囲にわたり瞬発力の求められる急な動作を反復したことは前記のとおりであり,原告はユニホック競技の模範試合により急性かつ相当程度強度の肉体的負荷を受けたと推認されるから,被告の前記主張を採用することはできない。 オ小括以上アないしエの事実を総合すると,原告は,長期間にわたって,労働密度の高い公務に日々長時間にわたり従事し,その身体に高度の肉体的・精神的疲労の蓄積を生じさせていたところに,本件脳出血の発症直前に,ユニホック競技の模範試合によって急性かつ相当程度強度の肉体的負荷を受けたと認めることができ,この一連の経過は,本件脳出血を発症させ 神的疲労の蓄積を生じさせていたところに,本件脳出血の発症直前に,ユニホック競技の模範試合によって急性かつ相当程度強度の肉体的負荷を受けたと認めることができ,この一連の経過は,本件脳出血を発症させるに十分な蓋然性を有するものであり,後記のとおり,本件脳 出血の発症時期がユニホック競技の模範試合の終了直後であることをも考え併せれば,ユニホック競技による肉体的負荷が引き金になって本件脳出血が発症したものと推認されるというべきである。 カ被告の主張についてところで,被告は,教育職員の公務は,その職務の性質上,裁量性が大きく,また,本件脳出血の発症1か月ないし2か月前は夏休み期間にかかっており,公務は閑散であったから,原告が従事した公務による負荷は相対的に低く,質的過重性は認められないと主張し,確かに,教育職員の主たる公務である教科指導については,その指導方法等について教育職員に一定程度の裁量が認められ,また,夏休み期間は,教科指導がないことが認められる(乙A1,弁論の全趣旨)。しかしながら,前記認定の各事実からすれば,原告が従事していた公務は,前記のとおり教科指導方法に一定の裁量性があることによっては緩和されない多大な肉体的・精神的負荷を恒常的に伴うものであり,また,夏休み期間中も,教材研究等はもとより,生徒指導主事としての業務をはじめとする学校事務等が継続する上,陸上部(地域クラブ活動を含む)の部活指導については部員達の練習を指導したり,大会に向けた準備や指導をする業務が,かえってピークを迎えるものであり,これに学校祭の準備などが加わり,夏休み期間中だからといって原告が公務から完全に解放される期間はほとんどなく,かえって肉体的・精神的疲労が一層蓄積する状態にあったと認められるのであるから,原告の従事した公 校祭の準備などが加わり,夏休み期間中だからといって原告が公務から完全に解放される期間はほとんどなく,かえって肉体的・精神的疲労が一層蓄積する状態にあったと認められるのであるから,原告の従事した公務の精神的負荷が相対的に低いものであったとか,夏休み期間の公務が閑散であったということは到底認められない。したがって,被告の前記主張は採用することができない。 2 本件脳出血の発症時期本件脳出血は,前記のとおりもやもや血管が破綻したことにより発症した と認められるところ,もやもや血管からの出血は,脳動脈瘤のごとく動脈の本管から急激に出血する場合と異なり,非常に緩除に発生するものであるため,本件脳出血の発症時期を正確に特定することは困難である。しかしながら,原告は,平成14年9月13日に倒れる前,約8分間にわたるユニホック競技を行っており,その間普段と特に異なる様子は見られなかったこと,ユニホックは,ストップとダッシュを繰り返す急激な動作を伴うスポーツであり,原告の血圧を一過性ではあるが急激に上昇させたと推認されること,原告は,同競技を終えた約30分後に吐き気を訴えているが,これは出血量の増大とともに起こった頭蓋内圧亢進の症状と推測されること,原告は,前記ユニホック競技終了後に足を引きずる動作を見せて倒れるなど,急激な動作をこなしていた前記ユニホック競技中とは明らかに異なる様子を呈していることからすると,本件脳出血の発症時期は,前記ユニホック競技を終えた直後であると推認するのが合理的である。 (甲8,乙A1,証人K11頁以下,弁論の全趣旨) 3 原告の健康状況(基礎疾患)(1) 高血圧ア本件脳出血の発症前の原告の血圧の測定値は,次のとおりである。 (乙A1の33頁)計測年月日収縮期血圧拡張期血圧①H 全趣旨) 3 原告の健康状況(基礎疾患)(1) 高血圧ア本件脳出血の発症前の原告の血圧の測定値は,次のとおりである。 (乙A1の33頁)計測年月日収縮期血圧拡張期血圧①H8.6.29 ②H9.6.30 ③H10.6.30 ④H11.6.30 ⑤H12.6.30 ⑥H13.6.30 ⑦H14.6.28 イ WHOの専門委員会と国際高血圧学会が日本人向けに修正したガイドラインによると,軽症高血圧に該当するのは,収縮期血圧140~159又は拡張期血圧90~99,中等症高血圧に該当するのは,収縮期血圧160~179又は拡張期血圧100~109,重症高血圧に該当するのは収縮期血圧180以上又は拡張期血圧110以上とされているところ,原告は,拡張期血圧が恒常的に高く,軽症ないし中等症の域にあり,収縮期血圧についても恒常的にやや高めであり,軽症の域にあることが時々見られる状態にあったといえる。このうち,拡張期血圧は,高血圧の自然経過の初期に多く見られ,小動脈から細動脈の血管抵抗は増加しているものの,大きな動脈の変化はまだ生じていない状態を反映していることが多いと判断されているが,拡張期血圧の高い状態が継続し,収縮期血圧の上昇も出現してきた場合には,大きな動脈についても動脈硬化や動脈狭窄等が疑われる病的状態にあると考えられており,原告についても,持続して拡張期血圧が高血圧状態にあり,かつ,収縮期血圧も時々高い数値を示していたことを考えると,大きな血管についても少なくとも動脈硬化性変化の初期を反映していたとみることが可能である。(乙B3,弁論の全趣旨)そうすると,本件 収縮期血圧も時々高い数値を示していたことを考えると,大きな血管についても少なくとも動脈硬化性変化の初期を反映していたとみることが可能である。(乙B3,弁論の全趣旨)そうすると,本件脳出血の素因として,後記のとおり脆弱なもやもや血管に動脈硬化性変化が加わった病的な状態が存在していたということができ,これは,本件脳出血の発症のリスクファクターとなるものと評価できる。 ウなお,原告は,原告の高血圧は原告の従事した公務の過重性に起因するものであると主張し,確かに,長時間労働と血圧上昇との因果関係は一般的には認められるが(乙A14の92頁),本件においては,原告が公務に従事しなくなり,かつ,本件脳出血による脳圧亢進が終息した と解される時期(本件脳出血から数か月後(証人L47頁))以降も,原告の血圧はおおむね中等症高血圧ないし軽症高血圧を記録しており(甲4の1・2),原告が公務に従事していた時期の血圧値と大きな差異はないものであり,原告の従事した公務と原告の血圧との間に因果関係があると認めるに足りる証拠はないので,原告の前記主張は採用できない。 (2) もやもや病原告は,本件脳出血発症当時もやもや病に罹患していたところ,その発症時期及び本件脳出血発症時の病期は,次のとおりである。 アもやもや病の発症時期についてもやもや病は,多くの場合,幼少期に脳の成長に従い血流量を増加させなければならない時期に内頚動脈が何らかの原因により狭窄することにより,血流量の増加が果たされないことによって発症するものであるから(証人K67頁,証人L49頁),原告のもやもや病も,幼少期のころに発症していた可能性が高いといえるものの,成人型のもやもや病の中には数年で急速に進行する例も存在し,また,もやもや病の発症時期に関する正 K67頁,証人L49頁),原告のもやもや病も,幼少期のころに発症していた可能性が高いといえるものの,成人型のもやもや病の中には数年で急速に進行する例も存在し,また,もやもや病の発症時期に関する正確な調査報告は存在しないことから(証人L49頁),原告がもやもや病を発症した時期を明確に特定することは困難である。 もっとも,仮に原告のもやもや病が急速に進行する病態のものであったとしても,脳出血を発症するおそれがある段階に至るまでには数年を要するとされていることから,最も遅い場合であっても,原告は,本件脳出血を発症した平成14年9月13日よりも数年前に,もやもや病を発症したと推認することができる(証人L49頁,弁論の全趣旨)。 イもやもや病の病期についてもやもや病は,もやもや血管の脳血管写による形態から,初期の第1期から最後の第6期まで6段階に分類されるところ(6期相分類),そ のうち第3期は,正常な前大脳動脈及び中大脳動脈が脱落し,後交通動脈を介する後大脳動脈の描出が明瞭であることから,もやもや増勢期といわれ,脳出血の発症が最も多い時期とされている(乙B2,B6,証人L)。本件脳出血発症時の原告のもやもや病は,前記第3期に該当するというのが医師の一致した意見であり,これは,脳出血の発症が最も多い時期であるとの前記臨床結果とも合致するものであり,原告の病期は第3期であったと考えられる。(甲21,乙B3,B6,証人K,証人L)(3) 原告の嗜好・趣味等,既往病歴原告は,本件脳出血の発症当時,ジョギングをほぼ毎日約30分間行っており,喫煙癖はなく,飲酒は時々する程度であり,既往病歴は,脳・心臓疾患を含め一切有していなかった。(乙A1の48頁以下) 4 もやもや病の病態,脳出血の発症機序等前記争い 0分間行っており,喫煙癖はなく,飲酒は時々する程度であり,既往病歴は,脳・心臓疾患を含め一切有していなかった。(乙A1の48頁以下) 4 もやもや病の病態,脳出血の発症機序等前記争いのない事実等のほか,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) もやもや病の病態についてアもやもや病は,前記のとおり,脳内にある内頚動脈の末梢が狭窄ないし閉塞することによって生じた脳内の血流不足を補うために,穿通枝動脈がやむを得ず網状に発達・拡張する疾患のことをいうが,もやもや病には,脳出血,脳虚血症状及びてんかん等を発症する症候性のものと,何らの症状も呈しない無症候性のものがある。原告の罹患していたもやもや病は,本件脳出血を発症する以前は前記各症状をいずれも呈していなかったことから,無症候性のものであったと認められる。(甲8,乙B2,証人K,弁論の全趣旨)イもやもや病に罹患した場合,無症候性のものであっても,経過中に虚血性,出血性を問わず脳卒中発作を生じやすいことが指摘されており, 脳出血の発症リスクは約1.38%(脳卒中の年間発症率である3.2%のうち脳出血を呈したものの割合を乗じた値)であり,同割合は,未破裂脳動脈瘤患者の脳出血発症リスク(約0.6%)の2.3倍,脳動脈瘤患者の同リスク(約1%)のおよそ1.4倍であるとの報告が存在することから,もやもや病は,症候性か無症候性かを問わず,脳出血の発症リスクは有意に高率であると認められる。(乙B2,証人K43頁以下,証人L9頁以下,弁論の全趣旨)ウ無症候性であったもやもや病が症候性に転換する好発年齢は,5歳を中心とする若年型と,30歳代を中心とする成人型とに分類されるところ(甲8添付の文献2の213頁,乙B2,証人K,証人L),原告が ウ無症候性であったもやもや病が症候性に転換する好発年齢は,5歳を中心とする若年型と,30歳代を中心とする成人型とに分類されるところ(甲8添付の文献2の213頁,乙B2,証人K,証人L),原告が本件脳出血を発症したのは42歳の時であり,後者の成人型に含まれるものである。 エもやもや病による病変の発症形態としては,若年型では虚血性が多く,成人型では出血性が多いことが疫学的事実として報告されているところ,そのような相違が生じる原因は,若年型では,幼児期の脳の成長に血液の供給路が対応できず,脳虚血状態が生ずることによってもやもや血管が形成され,他方,成人型では,幼児期に形成されたもやもや血管が長年の自然的経過をたどって脆弱化し,もやもや血管が破綻しやすい状態になっていることにあると考えられている。(乙B2,証人K,証人L,弁論の全趣旨)(2) もやもや血管の脆弱性についてアもやもや血管は,本来的に細く脳出血の好発部位とされている穿通枝が,脳動脈の狭窄ないし閉塞により不足する血流を補うためにやむを得ず網状に発達・拡張したものであるため,もやもや血管は,正常な血管に比して血行力学的負荷(直接的には血圧による負荷)による影響を受けやすい状態にあって,本来的な脆弱性を有しており,長年の時間的経 過の中で主として血行力学的負荷の影響により脆弱化が進んでいるものと推測されている(証人L44頁以下)。このことは,無症候性のもやもや病においても,脳出血の危険因子とされる微小脳出血が健常人よりも有意に多く起こっており(甲21,証人K52頁以下),もやもや血管の一部には,内弾性板の断裂や,類繊維素変性(血圧による血管壁への負荷が高い状態が続くことによって,脳血管壁に存在する中膜筋層が有する血流量の自動調整能(血圧の多寡に応じて血流 以下),もやもや血管の一部には,内弾性板の断裂や,類繊維素変性(血圧による血管壁への負荷が高い状態が続くことによって,脳血管壁に存在する中膜筋層が有する血流量の自動調整能(血圧の多寡に応じて血流量を調整する機能)が失われ,これにより血管壁の筋細胞が破壊されるなどして内弾性板に断裂が起こり,血管壁が正常な構造を失ってもろくなり破綻しやすくなった状態)などの病的変化が起きていることが確認された例が報告されていることによっても,裏付けられている。なお,血行力学的負荷によってもやもや血管が脆弱化することを想定した場合,もやもや血管の血管壁の脆弱化は,数か月単位で進行すると解するのが医師の共通した見解である。(甲8,21,乙B2,3,6,証人K,証人L,弁論の全趣旨)イこの点につき,医師であるKは,もやもや血管の内弾性板が正常である以上,同血管は,構造的に脆弱であるとは必ずしもいうことができず,公務の過重により良質の睡眠が取れないなど同血管の脆弱化を促進する要因がなければ破綻することはない旨証言する(証人K)。 しかしながら,証拠(甲8,21,乙B2,3,6,証人K,証人L)及び弁論の全趣旨によると,もやもや血管の内弾性板が正常な血管と同様に健全な状態で存在するとの確たる臨床報告があるわけではなく,かえって内弾性板の損傷したもやもや血管が確認された例があること,もやもや血管の物理的な脆弱性については証人K自身も認めるところであること(証人K7頁),血流による血管壁への異常に高い負荷が持続したというエピソードが明確に捕捉されていないケースにおいても,も やもや血管から出血する例があることが窺われること,もやもや血管は血流の自動調整能が十全に機能していないとの検査結果があること(証人L43頁),もやもや血管は,本来的に細く脳出 いても,も やもや血管から出血する例があることが窺われること,もやもや血管は血流の自動調整能が十全に機能していないとの検査結果があること(証人L43頁),もやもや血管は,本来的に細く脳出血の好発部位とされている穿通枝が脳の血流不足を補うためにやむを得ず網状に発達・拡張した異常な血管であり,正常な血管に比して血行力学的負荷による影響を受けやすい状態にあって,本来的な脆弱性を有していることなどからすると,時間的経過の中で血行力学的負荷の影響により脆弱化が進んでいる状態にあると推認され,もやもや血管が正常な血管に比して脆弱性を有していることは否定できないというべきである。したがって,前記証言を直ちに採用することはできない。 (3) もやもや血管における脳出血の発症についてアもやもや病の自然経過による脳出血発症の場合もやもや病罹患者について脳出血の発症率が,健常人と比べてはもとより,未破裂動脈瘤患者と比べても有意に高率であるとはいえ,その発症率は年間約1.38%であって,脳出血を発症しないで経過する者の方が圧倒的に多数であり,もやもや血管の病期が脳出血の発症が最も多発する3期に至ったからといって脳出血を常に発症するわけではない。 もやもや病罹患者で,脳出血を発症した者については,発症前に高血圧などのリスクファクターを有していた場合が相対的に多いが,高血圧であるからといって高確率で脳出血を発症するということが確認されているわけではなく,他方,高血圧という指摘を受けていなかった場合でも,もやもや血管が破綻して出血する例があるほか(証人L48頁),通常とは異なる血管への負荷の増大をきたすようなエピソードが何ら窺えないような場合にも,もやもや血管が破綻して出血したと考えられる例も一定割合あり,もやもや病の自然的経過,すなわち日 人L48頁),通常とは異なる血管への負荷の増大をきたすようなエピソードが何ら窺えないような場合にも,もやもや血管が破綻して出血したと考えられる例も一定割合あり,もやもや病の自然的経過,すなわち日常生活に伴う長年にわたる血管壁への通常の血流による血行力学的負荷の積み重 ねによってももやもや血管が破綻し得るものと考えられ,このことは,前記若年型では虚血性が多く,他方,自然的経過によるもやもや血管の脆弱化が進んでいると見られる成人型では出血型が多いという臨床報告からも裏付けられるところである。(乙B6,証人K,証人L)もっとも,前記は,通常の臨床事例からの分析であり,脳出血を発症したもやもや病罹患者について,生活歴等の調査がされているわけではないことから,もやもや病の自然的経過で脳出血を発症したと見られるケースについて,実際にも,通常とは異なる血管への負荷の増大をきたすようなエピソードが他に何ら存在しないケースであったのかについては,裏付けが得られているわけではない。(証人L43頁)イ過重労働がもたらす身体への負荷による脳出血発症の場合(ア) 過重労働による肉体的・精神的負荷(ストレス)によって疲労が蓄積すると,基礎疾患のない健康人であっても,これによって生体機能が低下して,血圧上昇,心拍数の増加,不眠,疲労感などの生理的な反応を引き起こし,また,長時間労働により睡眠が十分に取れず疲労の回復が困難になると,疲労が蓄積して血圧の上昇等が生じ,これらの要因が血管病変等を発症させることがあるというのは,明らかな臨床結果であるところ(乙A14の89頁以下),血管病変等の基礎疾患を有する者については,通常の勤務には何ら支障なく耐えられる健康状態であったとしても,長時間労働により基礎疾患をその自然的経過を超えて増悪化する蓋然性 (乙A14の89頁以下),血管病変等の基礎疾患を有する者については,通常の勤務には何ら支障なく耐えられる健康状態であったとしても,長時間労働により基礎疾患をその自然的経過を超えて増悪化する蓋然性があることは当然のことであり,もやもや病罹患者についても,基礎疾患のない健康人であっても血管病変等を発症させる程度の過重な労働を強いられた場合,もやもや病の自然的経過のみでは脳出血を発症しなかったとしても,過重労働による肉体的・精神的負荷が加わったことによって,自然的経過を超えてもやもや血管の脆弱化を促進するなどして疾患を増悪化させ,脳出血を引 き起こすに至ることがあると考えられ,また,自然的経過によっても,いずれ時間が経過すれば脳出血の発症に至るおそれが相当程度あったとしても,過重労働により自然的経過を超えて早期に脳出血を引き起こすということもあるものと考えられる。 (イ) なお,肉体的・精神的負荷(ストレス)により良質の睡眠が確保できず,これにより夜間の睡眠時に血圧を低下させて血管壁の修復を図るという防御作用が機能せず,血行力学的負荷が血管壁に絶えずかかることにより血管壁の類繊維素変性が進行するという医師の見解が存在するところ(証人K13頁),そうしたメカニズムの説明が妥当であるかは疑問も指摘されているが(証人L45頁以下),過重な労働による肉体的・精神的負荷により脳出血の発症に至ることがあることには変わりがないことからすれば,本件脳出血が公務に起因したものといえるかについては,血管病変等を生じ得るほどの過重労働があったかが重要であり,その見地から検討を加えれば足りるものと思料する。 (4) 高血圧との相乗作用について高血圧は脳血管疾患の最大のリスクファクターとされ,血圧値,特に拡張期血圧と脳血管疾患発症の相対危険 り,その見地から検討を加えれば足りるものと思料する。 (4) 高血圧との相乗作用について高血圧は脳血管疾患の最大のリスクファクターとされ,血圧値,特に拡張期血圧と脳血管疾患発症の相対危険度の間には,有意な相関関係がみられるとされているところ,原告は,軽症ないし中等症の高血圧であって,少なくとも動脈硬化性変化の初期にあったことから,もやもや血管に動脈硬化性変化が加わった病的な状態にあったと認められ,これにより脳出血の危険性は増大していたとは考えられるけれども,高血圧自体は重いとはいえず,また,もやもや病罹患者で高血圧を併発している場合に,脳出血の発症可能性が高まるとはいえても,高確率で発症する蓋然性があるという臨床的知見があるわけではなく,原告はそれまで何らもやもや病に起因した症状を訴えていなかったことなどからすると,原告は,もやもや病及 び高血圧という基礎疾患を有していたものの,長期間に及ぶ過重労働という負担がなければ,通常の勤務には支障なく耐えられるだけの心身の状態にあったと推認され,過重労働という負担を抜きにして,それら基礎疾患の自然的経過によって脳出血を発症する寸前にまでもやもや病及び高血圧による血管病変が増悪化していたとは,本件全証拠によっても,到底認めがたいというべきである。 5 本件脳出血の公務起因性(1) 基礎疾患がある場合の公務起因性の判断基準ア地方公務員が罹患した疾病が,地方公務員災害補償法1条所定の「公務上の災害」といえるためには,公務と当該疾病の発症との間に相当因果関係のあることが必要であり,かつ,それをもって足りるというべきところ,当該公務員が当該疾病の発症の一因となりうる基礎疾患を有していた場合,必ずしも当該疾病の発症について公務遂行が相対的に有力な原因となっていたことま であり,かつ,それをもって足りるというべきところ,当該公務員が当該疾病の発症の一因となりうる基礎疾患を有していた場合,必ずしも当該疾病の発症について公務遂行が相対的に有力な原因となっていたことまでの必要はなく,基礎疾患を有する職員が,公務の遂行に伴う高度の肉体的・精神的負荷により,病変である基礎疾患を医学的経験則上の自然的経過を超えて増悪させ,当該疾病を発症させるに至った場合には,公務と当該疾病との間に相当因果関係の存在を肯定することができることになると解される(最高裁平成18年3月3日第二小法廷判決参照)。 イところで,脳・心臓疾患の業務起因性に関する行政上の判断基準については,専門医師で構成された専門家会議によって検討され,厚生労働省労働基準局長が行政通達の形で明示した「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(平成13年12月12日付け基発第1063号。以下「新認定基準」という。)が存在する。新認定基準は,行政機関が公務災害の認定において準拠すべき内部通達であって,司法上の判断にあたっては必ずしもこれに拘束さ れるものではないが,同基準の前身となった旧認定基準が昭和62年に設定されて以降(昭和62年10月26日付け基発第620号),旧認定基準に従った業務外認定を取り消す裁判例が相次いだことなどを受けて,平成7年(同年2月1日付け基発第38号),平成8年(同年1月22日付け基発第30号)及び平成13年と業務起因性の判断を緩和する方向での改正が行われ,しかも新認定基準が前記のとおり専門の医師で構成された専門家会議を経て策定されているなどの経緯に鑑みると,同基準は,司法上の判断にあたっても一定程度の有用性を有するものであり,新認定基準に示された公務の過重性が認められる場合に 専門の医師で構成された専門家会議を経て策定されているなどの経緯に鑑みると,同基準は,司法上の判断にあたっても一定程度の有用性を有するものであり,新認定基準に示された公務の過重性が認められる場合には,脳・心臓疾患の公務起因性が推定されるというべきである。 (2) 本件についてア新認定基準が有用性を有することは前記のとおりであるところ,同基準によると,脳・心臓疾患の発症前6か月間の時間外労働を見て,発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は,当該疾患と業務との関連性は強いとされている。しかるに,原告は,本件脳出血の発症前6か月間において,控え目に見ても,別紙2(添付省略)の労働時間表のとおり,①発症前1か月は86時間10分,②発症前2か月は97時間10分,③発症前3か月は114時間35分,④発症前4か月は101時間00分,⑤発症前5か月は81時間25分,⑥発症前6か月は72時間05分の時間外労働をそれぞれ行っており,公務の量的過重性が明らかに認められるだけでなく,原告は,学級担任及び陸上部の部活指導に加え,生徒指導主事をはじめ多数の職務を担当していたものであり,公務の質的過重性という面からもその肉体的・精神的負荷は相当に重いものがあったと認められ,原告が従事していた前記公務と本件脳出血の関連性は,前記基準からしても非常 に強いものがあると認められる。 イしかして,原告は,前記のとおり長期間にわたって多忙な公務に従事していたところ,平成14年3月から4月にかけての春休みの前後のころには,進路指導主事の業務がピークであったことに加え,時間割表作成業務などが加わり,春休み期間中でありながら,労働時間が長くなっていたば たところ,平成14年3月から4月にかけての春休みの前後のころには,進路指導主事の業務がピークであったことに加え,時間割表作成業務などが加わり,春休み期間中でありながら,労働時間が長くなっていたばかりでなく,精神的負荷が強い状態が継続し,新年度になってからは,担任する学級が新1年生に変わり,生徒指導主事など校務分掌の変化も加わって,新学期の始まりとともに,夏休み前まで,教科指導,学級事務,学校事務のいずれとも繁忙期を迎え,時間外労働時間が非常に多くなり,1か月の時間外労働時間が100時間を超える月が2か月(1か月の時間外労働時間が80時間を超える月は3か月)続き,肉体的にも精神的にも多大な疲労が蓄積していたと推認され,さらに,夏休みを迎え,本来であれば職務が比較的閑散になり,教材研究等にも時間をかけられる時期であるはずが,陸上部の部活指導及び地域クラブ活動がピークを迎え,夏の暑い時期に長い休みも取ることができないまま,連日にわたって練習の指導にあたったほか,指導者として生徒を引率して多くの大会に参加させ,周囲の期待に応えるべく精力的に取り組んでいたものであり,また,夏休みの後半ころからは部活動終了後,学校祭の準備にもあたっていたものであり,結局,夏休みの時期においても1か月90時間を超える時間外労働をしていたものであって,9月になってからは,新学期に入り,多忙な日々の中,9月13日及び14日の2日間にわたって開催される学校祭の準備の仕上げに入り,9月12日には学校に泊まり込んで夜警に従事し,良質な睡眠がとれない状態でありながら,9月13日の学校祭の1日目には,ユニホック競技の模範試合に選手として参加したものであった。そして,公立中学校の教育職員の職務は,職務の遂行において自主性,自発性,創造性の発揮が求められ ており,裁 の学校祭の1日目には,ユニホック競技の模範試合に選手として参加したものであった。そして,公立中学校の教育職員の職務は,職務の遂行において自主性,自発性,創造性の発揮が求められ ており,裁量的性格が強いとはいえ,そのことは労働の質や量を軽くするものではなく,生徒の指導育成に対する社会的使命の重さから,かえって精神的負荷を高める要素が非常に強いといえる上,教科指導以外に,多種多様な学校事務等を担当することで,ただでさえ執務時間内にすべての職務を遂行することが困難な中,更に勤務時間外にわたる部活指導をも担当することで,労働時間は不可避的に長時間に及ぶことにならざるを得ない面があり,とりわけ夏休みには部活指導は大会への参加の時期となることから指導者にかかる肉体的・精神的負荷は高まり,夏休みであっても精神的緊張が解けない日々が続くものであり,原告のように部活指導(とりわけ3年連続の全国大会への出場が期待されるような有力校にあってはなおさらというべきである。)を担う教育職員にとっては夏休みだからといって職務が閑散になるようなことはなかったものである。このような一連の経過からすれば,原告は,少なくとも本件脳出血前6か月間の長時間労働の公務による負荷が長期間にわたって生体に加わることによって疲労の蓄積が生じ,既に原告のもやもや病及び高血圧による脳血管の病変をその自然的経過を超えて増悪させていたところに,ユニホック競技による急激な負荷が直接の引き金となって,本件脳出血を発症させたものと認められるというべきである。そして,原告の前記勤務状況に鑑みると,本件脳出血は,通常の勤務に耐え得る程度の基礎疾病を有する平均的労働者を基準にしても,原告の従事していた公務に内在し随伴する危険が現実化したものと認めることができ,本件脳出血と原告の従事した公 と,本件脳出血は,通常の勤務に耐え得る程度の基礎疾病を有する平均的労働者を基準にしても,原告の従事していた公務に内在し随伴する危険が現実化したものと認めることができ,本件脳出血と原告の従事した公務との間の相当因果関係は十分に肯定し得るものである(本件脳出血前6か月間の労働時間が殊更異常であったわけではないと考えられることからすると,原告は,E中学校において恒常的に公務による長時間労働に従事していたと推認されるが,本件脳出血前6か月間の労働からのみでも,本件脳出血の発症に関し相当因 果関係を認めるに十分である。)。 ウもっとも,原告は,高血圧及びもやもや病の基礎疾患(以下「本件リスクファクター」という。)を有していたところ(前記3参照),新認定基準によると,本件脳出血の発症当時,本件リスクファクターを有する原告に脳出血が起こる可能性は中等程度とされており,このことからすると,これらの疾患が本件脳出血の発症に一定程度寄与していた可能性を否定することはできない。しかしながら,本件脳出血発症前の原告の長時間労働の実態などからすると,基礎疾患を有しない健常人においても脳・心臓疾患を発症する蓋然性が極めて高いといえる程度の肉体的・精神的負荷を過重な公務によって受けていたことが明らかである一方,原告は,本件リスクファクターを有していたとはいえ,通常の勤務には耐えられるだけの心身の状態にあったと推認され,それらの基礎疾患の自然的経過により脳出血を発症する寸前にまで増悪化していたとは考えがたいことからすれば,過重な公務により原告が有していた本件リスクファクターが自然的経過を超えて増悪化され,本件脳出血の発症に至ったものと推認されるというべきである。 エ被告審査会及び被告の愛知県支部審査会(以下「被告審査会ら」という。)の判断につい リスクファクターが自然的経過を超えて増悪化され,本件脳出血の発症に至ったものと推認されるというべきである。 エ被告審査会及び被告の愛知県支部審査会(以下「被告審査会ら」という。)の判断についてところで,被告審査会らは,本件脳出血の公務起因性につき,要旨,原告は本件脳出血発症前日から直前までの間,異常な出来事や突発的事態に遭遇しておらず,また,原告は,本件脳出血の発症前1週間あるいは1か月間において,ある程度の負荷のかかる公務に従事したことは認められるが,本件脳出血を発症させるほどの質的又は量的に過重な職務に従事したものとは認められないとした上,原告は先天性の血管異常で脳出血を起こしやすいもやもや病に罹患しており,拡張期高血圧も認められるなど,本件脳出血を発症させる高度の蓋然性を有する素因を有し ていたから,原告の従事した公務が前記基礎疾患をその自然的経過を超えて増悪させたとはいえず,むしろ,前記素因が原告の基礎疾患を自然的経過の中で増悪させ,本件脳出血を発症させたと判断している(甲2,3)。 しかしながら,被告審査会らの前記判断は是認することができない。 その理由は,前記判示の理由のほか,次のとおりである。 (ア) 被告審査会らは,原告が陸上部の指導時間のほとんどを椅子に座りタイムを計測して過ごしており,午後6時30分には陸上部の指導を終え,また,練習メニューはFが決めていたことなどから,前記陸上部の指導により本件脳出血を発症する程度の疲労の蓄積は原告に認められないなどと判断しているが,前記のとおり,原告が多種多様な学校事務等の公務を控えつつ2時間30分の長時間にわたり陸上部の指導を行ったことは,それ自体精神的な疲労を生じさせるものであったと推認できるし,また,陸上選手のタイムの計測はコンマ何秒単位のもので,大 事務等の公務を控えつつ2時間30分の長時間にわたり陸上部の指導を行ったことは,それ自体精神的な疲労を生じさせるものであったと推認できるし,また,陸上選手のタイムの計測はコンマ何秒単位のもので,大会前の重要な練習については計測のミスは許されず,常に精神の緊張を伴うものであったと解されること,原告はタイム計測だけを行っていたわけではなく,トラックのライン引きから始まり,Fと分担して練習メニューに従った練習を指導し,ロード練習時には自転車で伴走し,ウォーミングアップやジョギング,クールダウンの運動は生徒と一緒に行うことが多く,また,帰宅後においても駅伝の練習で走るコースを自ら試走して実際の走行計画を立てたりするなど,Fとは異なる視点から生徒の指導方法を考案していたことなどからすると,原告の部活指導の職務遂行について,Fが練習メニューを策定していたことやタイム計測などの時間もかなりあったことをもって本件脳出血を発症する程度の疲労の蓄積を生じさせるものでなかったというのは,あまりに一面的な見方であり,とりわけ夏休み期間中は, 夏の暑い盛りに練習を指導したり,多くの大会に指導者として生徒を引率したりしていたもので,部活指導の業務量はピークを迎える時期であって,肉体的・精神的負荷には強いものがあったと推認される上,部活指導終了後には,教材研究等を行ったりする必要があり,更に生徒指導主事としての業務なども加わり,ただでさえ忙しい中,夏休みの後半からは,部活指導終了後,学校祭の準備にもあたっていたことからすれば,疲労を一層蓄積させていたことは明らかというべきである。 (イ) また,被告審査会らは,学校祭の準備は本件脳出血を発症させる程度の疲労を蓄積させるものではないと判断しているが,学校祭の準備は,日常の学校事務の中に解消されるもので かというべきである。 (イ) また,被告審査会らは,学校祭の準備は本件脳出血を発症させる程度の疲労を蓄積させるものではないと判断しているが,学校祭の準備は,日常の学校事務の中に解消されるものではなく,教材研究等の日々の学校事務に加えて行わなければならなかったこと,原告は,陸上部指導後の午後6時30分以降にしか学校祭の準備を行う時間を確保できなかったこと,とりわけ平成14年9月の新学期が明けてからは,教科指導の公務が開始される中,同月13日の学校祭の開催を目前に控え,原告はその準備の進捗状況に精神的なあせりを感じていたと推測されることなどからすると,学校祭の準備が,原告の従事した他の公務とあいまって本件脳出血を発症させる程度の疲労の蓄積に寄与したことは否定できないというべきであり,被告審査会らの前記判断は到底採用することができない。 (ウ) 次いで,被告審査会らは,原告が,発症前一週間に46時間程度,発症前1か月間に100時間程度の時間外労働に従事したことを認定しつつ,新認定基準によりながら,本件脳出血の公務起因性を否定しているが,新認定基準によると,同基準の定める長時間労働の基準により公務と当該疾患との関連性が強いと認められる場合,当該疾患が明らかに公務以外の原因たる基礎疾患により発症したと認められるな どの特段の事情がない限り,当該疾患の公務起因性は肯定するものとされており,原告が従事したとされる前記時間外労働の程度は,前記長時間労働の認定基準を優に超え,公務と本件脳出血との関連性は強いと認められるにもかかわらず,被告審査会らは,前記特段の事情を明確に認定することなく,本件脳出血の公務起因性を否定しており,かかる判断は,合理性があるとはいえない。被告審査会らは,労働時間が長時間であるとしても,部活指導については労 会らは,前記特段の事情を明確に認定することなく,本件脳出血の公務起因性を否定しており,かかる判断は,合理性があるとはいえない。被告審査会らは,労働時間が長時間であるとしても,部活指導については労働密度が低く,とりわけ,夏休み期間中は,職務が閑散になる時期であり,休養を十分に取り得たと考えたもののようであるが,そうした見方が失当であることは,既に述べたとおりである。 (エ) さらに,被告審査会らは,原告が本件脳出血の発症前日に従事した夜勤の際,7時間にわたる十分な睡眠が確保されたなどと判断しているが,前記のとおり,原告は前記夜警の際,深夜の巡視も行っているほか,精神的な緊張を保ったまま,不審者の侵入を防ぐ意味もあって校長室のソファで電灯を点けたまま就寝しており,良質な睡眠を取ることができなかったものと認められるから,被告審査会らの前記判断を採用することはできない。 (オ) 加えて,被告審査会らは,前記のとおり,原告が本件脳出血発症前日から直前までの間に異常な出来事や突発的事態に遭遇していないことを本件脳出血の公務起因性を否定する一つの理由としているが,脳出血を生ずるには必ずしも異常な出来事や突発的な事態に遭遇しなければならないものではなく,かえって,前記のとおり,原告の従事していた公務にはたとえ基礎疾患を有しない健康人であっても脳出血を発症させるおそれのある程度の質的及び量的な過重性が顕著に認められ,それ以上に異常な出来事や突発的な事態がなければ本件脳出血が発症しないというものではないことや,本件脳出血発症の直接的な引 き金となったユニホック競技の模範試合はそれ自体急激な肉体的負荷を生じるものであり,それまでの長期間に及ぶ過重な公務による負荷の継続とあいまって本件脳出血を発症したと考えるのが,自然な見方であることなど なったユニホック競技の模範試合はそれ自体急激な肉体的負荷を生じるものであり,それまでの長期間に及ぶ過重な公務による負荷の継続とあいまって本件脳出血を発症したと考えるのが,自然な見方であることなどに鑑みると,被告審査会らの前記判断過程を採用することはできない。 (カ) 以上より,被告審査会らの前記判断にかかわらず,当裁判所は,本件脳出血には公務起因性が認められるものと判断する。 第4 結論以上によれば,本件脳出血に公務起因性が認められるから,これを公務外の災害と認定した本件処分は違法であり,取消しを免れない。よって,原告の請求には理由があるからこれを認容し,訴訟費用の負担については行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官田近年則 裁判官鈴木輝子 裁判官遠藤俊郎は,転補につき,署名押印することができない。 裁判長裁判官田近年則
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