- 1 -主文 被告は,原告Aに対し,金2745万5726円及びこれに対する平成15年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,原告Bに対し,金2745万5726円及びこれに対する平成15年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,これを10分し,その3を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。 ,,。 この判決は第1項及び第2項に限り仮に執行することができる事実及び理由第1請求 不法行為に基づく損害賠償請求(1)被告は,原告Aに対し,3986万1558円及びこれに対する平成15年4月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)被告は,原告Bに対し,3986万1558円及びこれに対する平成15年4月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 債務不履行に基づく損害賠償請求(1)被告は,原告Aに対し,3986万1558円及びこれに対する平成15年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)被告は,原告Bに対し,3986万1558円及びこれに対する平成15年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要 事案の要旨本件は,被告及び被告被承継人株式会社C(平成21年7月1日付けで被告- 2 -に吸収合併されて消滅し,被告が訴訟承継した。以下「C」といい,被告とCとを併せて「被告ら」という)の設営する飲食店の店長として業務に従事し。 ていたD(以下「亡D」という)が,急性心筋梗塞により死亡したことにつ。 いて,同人の両親である原告らが,被告らに対し,不法行為又は労働契約の債務不履行に基づく損害賠償請求(両者は, 務に従事し。 ていたD(以下「亡D」という)が,急性心筋梗塞により死亡したことにつ。 いて,同人の両親である原告らが,被告らに対し,不法行為又は労働契約の債務不履行に基づく損害賠償請求(両者は,選択的に請求する)として,原告。 らにつきそれぞれ3986万1558円及びこれに対する各起算日(不法行為,,に基づく損害賠償請求については亡D死亡の日である平成15年4月22日債務不履行に基づく損害賠償請求については,請求後相当期間経過後の同年5月1日)から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求。 めた事案である。 前提事実(後掲各証拠(特に記載しない限り各枝番を含む。以下同じ)及。 び弁論の全趣旨により認められる前提事実。証拠の記載がない事実は,当事者間に争いがない)。 (1)当事者等ア原告Aは,亡Dの父,原告Bは,亡Dの母であり,原告らの他に亡Dの相続人はいない(甲4。 )イ被告は,和食・洋食レストランの企画・経営を事業内容とする株式会社であり,Cは,飲食店業,加工調理食品の販売等を目的とする株式会社であり,被告が平成15年4月1日にベンチャー部門(中華事業部)を独立させ,子会社として設立したものであるが,平成21年7月1日に被告に,,(,吸収合併されて消滅しその権利義務の一切は被告に承継された甲12,乙14,弁論の全趣旨。 )ウ亡D(昭和48年9月7日生,死亡時29歳)は,平成9年3月にX大学を卒業後,同年4月1日に被告に入社し,平成15年4月1日のCの設立と同時に,被告に在籍のままCに出向した(甲42,乙3,8。 )(2)亡Dの発症と死亡- 3 -亡Dは,平成15年4月22日午前7時ころ,Cが設営する堺市a町b丁c番地所在の「E店(以下「本件店舗」という)において,冠動脈硬 向した(甲42,乙3,8。 )(2)亡Dの発症と死亡- 3 -亡Dは,平成15年4月22日午前7時ころ,Cが設営する堺市a町b丁c番地所在の「E店(以下「本件店舗」という)において,冠動脈硬化」。 症による急性心筋梗塞(以下「本件発症」という)により死亡した(以下。 「本件死亡」という。甲6。 )(3)労働者災害補償給付の支給決定原告らは,本件死亡が業務上のものであるとして,平成15年8月18日に堺労働基準監督署長に対し,遺族として労働者災害補償の給付を申請したところ,同署長は,本件死亡が業務上の死亡であるとして,平成16年11月29日付けで遺族補償一時金,遺族特別支給金,遺族特別一時金及び葬祭料の支給決定をした(甲7ないし10。 )(4)損害のてん補等ア原告らは,労災保険給付として,平成16年12月2日ころ,遺族補償(,)。 一時金934万円及び葬祭料59万5200円を受領した甲9 イ原告らは,平成19年2月15日に被告の加入するF福祉協会の労災保障上乗せ保険制度による給付金(遺族補償金)として,500万円を受領した(乙1,2。 ) 本件の主な争点(1)亡Dの業務の過重性及び業務と本件死亡との因果関係(争点1)(2)被告らの債務不履行責任(安全配慮義務違反)及び不法行為責任(争点2)(3)不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効(争点3)(4)過失相殺・素因減額等(争点4)(5)原告らの損害(争点5) 当事者の主張の要旨(1)亡Dの業務の過重性及び業務と本件死亡との因果関係ア業務過重性について- 4 -(原告らの主張)(ア)長時間労働亡Dは,本件店舗に毎朝午前9時30分ころから同10時ころまでの間に出勤し,本件発症の1か月前は,翌午前4時ころから5時ころまで店内で 重性について- 4 -(原告らの主張)(ア)長時間労働亡Dは,本件店舗に毎朝午前9時30分ころから同10時ころまでの間に出勤し,本件発症の1か月前は,翌午前4時ころから5時ころまで店内で働いていた。また,亡Dは,休日も出勤していた。 被告らに提出されていた亡Dの労働時間管理表は,その勤務時間の実態を反映しておらず,本件発症前6か月間の時間外労働時間は,別紙1時間外労働時間数等一覧表(原告ら主張)のとおりである。これによれ,,,ば亡Dの時間外労働はいずれも月100時間をはるかに超えており本件発症の2か月,3か月前は,120時間を超えている。本件発症前. ,,1か月間の労働時間は34502時間でありそのうち時間外労働は153.02時間であった。 亡Dは,休憩時間が特に定められておらず,従業員が客の少なくなる午後2時以降のアイドルタイムに適宜休憩を取っている間も業務を行っており,昼食時間は10分から15分程で,夜食もつまみ食いで,閉店後に弁当を買ったり外食をしたりしていた。 (イ)G転出による負担の増加被告らの正社員であるGが亡Dの上司として本件店舗に勤務しているときは,Gが指揮して本件店舗の業務を行っていた。亡Dは,Gの転出前も長時間の労働に従事していたが,本件店舗にGがいたころは,同人と仕事を分担して行うことができた。 ところが,平成15年1月中旬にGが他店へ転出したため,亡Dは,本件店舗のすべての業務を自分で行わざるを得なくなった。同年3月には,同じく正社員であるHが応援として従業員に加わったが,亡Dの労働時間の軽減にはならなかった。 ,,,,そのため亡DはG転出後は以前にも増して退店時間が遅くなり- 5 -本件店舗に泊まりがけで仕事をすることも多くなり,休日も出勤するようになった。 (ウ)亡Dの ならなかった。 ,,,,そのため亡DはG転出後は以前にも増して退店時間が遅くなり- 5 -本件店舗に泊まりがけで仕事をすることも多くなり,休日も出勤するようになった。 (ウ)亡Dの業務内容等a亡Dは,本件店舗を閉店した後も,企画や日末処理,日報,日計表の仕上げ,厨房の掃除等の雑用及びパソコンでのデータ処理を行っていた。 b亡Dは,被告ないしC本社(C設立前は被告,C設立後は同社。以下「本社」ともいう)で週2回開催される店長会議に出席しなけれ。 ばならなかった上,そのための資料作りにも追われていた。 c本社の行う監査前には,店舗の清掃が必要であったが,亡Dは,これを一人で行っていた。亡Dは,一人では清掃ができないときには,アルバイト代を自己負担で支払い,他店舗の店長やそのアルバイトに応援を頼んで行ったが,朝までかかっていた。 d亡Dは,被告らが店長として遵守すべき事項を記した「店舗運営管理マニュアル」と題するマニュアル(乙3:53丁以下。以下「本件店長マニュアル」という)に定められた店長職務基準等の過酷な諸。 事項に従わざるを得なかったため,心理的な負担があった。 eホールの業務は,客の待ち時間を極力少なくするために精神的緊張を伴った。 (エ)従業員との関係等亡Dは,人員削減に対する意見の相違等から中国人の料理長との折合いが悪く,厨房部門のパートやアルバイト(以下,両者を併せて「パートら」という)も亡Dの指示に従わずに料理長の指示に従うなど,厨。 房従業員とのコミュニケーションは,良好ではなかった。そのため,亡Dは,営業時間中や業務終了後も自分で皿洗い等を行っていた。 (オ)本件店舗の経営状況の影響- 6 -本件店舗は,周囲の数多くの外食店との過当競争で経営が厳しく,亡Dは,経費を節約して売上げを伸ばす ,営業時間中や業務終了後も自分で皿洗い等を行っていた。 (オ)本件店舗の経営状況の影響- 6 -本件店舗は,周囲の数多くの外食店との過当競争で経営が厳しく,亡Dは,経費を節約して売上げを伸ばすために,継続的に長時間の残業を行わざるを得ない状態にあった。 (カ)被告の主張に対する反論等a亡Dは本件店舗だけでなく,当時居住していた堺市d町e丁所在の被告ないしCの社員寮(以下「本件社員寮」という)においても仕。 事をしており,営業時間後に本件店舗内で業務外の遊びなどをしたことはない。 b本件店舗は赤字経営であったが,客が少なくなって店長の負担が軽くなったわけではない。かえって,亡Dは,何とか売上げを伸ばして利益を上げようと必死になっていた。 c亡Dが店長になってからは,本件店舗で自分のパソコンを使用して麻雀をしたのは2度に過ぎず,しかも,いずれも極めて短時間であるから,一時的に休息を取ったに過ぎない。また,亡Dは,本件店舗で音楽を聴いていたことはあるが,それは,データ処理作業中に聴いていたか,一時的に休息をとっていたに過ぎず,作業をしていなかったことを示すものではない。 (キ)以上のとおり,亡Dは,本件店舗の店長として長時間労働をしていた上,他の従業員との人間関係によるストレスなど精神的負担等も抱えていたため,その業務は過重であった。 (被告の主張)(ア)労働時間,,亡Dら正社員の始業時間は午前11時終業時間は午後11時であり休憩時間は6時間超労働の場合45分以上,8時間超労働の場合60分以上であり,各自が来客のほとんどないアイドルタイム(午後2時から同6時まで,以下「アイドルタイム」という)に適宜取ることになっ。 - 7 -ていた。 亡Dは,店長という管理監督者の立場にあり,時間管理はされておらず,自らシフトを アイドルタイム(午後2時から同6時まで,以下「アイドルタイム」という)に適宜取ることになっ。 - 7 -ていた。 亡Dは,店長という管理監督者の立場にあり,時間管理はされておらず,自らシフトを作成し,出勤表に月に6日の公休を定め,本社へ報告することになっていたのであるから,その労働条件は,決して過酷なものではなかった。 そして,本件発症前1か月間の勤務実績は,各日10時間の勤務であり,公休日5日を取得しているから,過重な労働ではない。堺労働基準監督署作成の労働時間集計表(乙3:20丁以下,以下「本件集計表」といい,別紙2の1ないし別紙2の6として添付する)の記載は,亡。 Dの労働時間を正確に反映したものではない。 (イ)亡Dが営業時間終了後に本件店舗にいた理由亡Dが,本件店舗に長時間滞在していたのは,業務をするためではなく,本件店舗近くの本件社員寮と本件店舗との生活を混同していたからである。亡Dは,本件店舗において,深夜,自分のパソコンで麻雀ゲームに興じたり,音楽を聴いたことからも,この時間帯に業務をしていたとは認められない。 (ウ)仮に,亡Dが午後11時の閉店後に業務を行っていたとしても,それは,同人が勤務時間中にまじめに仕事をせず午後11時以降に仕事を行っていたことを示すに過ぎないから,拘束時間の長さを示すものではない。 (エ)本件店舗は,Cの中でも平均的な売上げ規模の店舗であり,十分なスタッフがそろっていたから,人員の不足はなく,Gの転出が亡Dの業務の負担になったこともない。また,平成15年3月1日から同年4月末までは,Hが亡Dとともに店長をしていたほか,Iも勤務していたから,来客数に対応できない人員態勢ではなかった。 (オ)本件店舗における亡Dの業務は,次のとおりであった。 - 8 -a亡Dの業務は,店舗全体の 亡Dとともに店長をしていたほか,Iも勤務していたから,来客数に対応できない人員態勢ではなかった。 (オ)本件店舗における亡Dの業務は,次のとおりであった。 - 8 -a亡Dの業務は,店舗全体の確認,パートらへの指示・指導,年間・月間・日割予算の作成,損益計算書の作成,基本シフトの作成,原材料の仕入れ,仕込み,廃棄処分,清掃,整備の指示と確認,接客の先頭に立ち苦情処理を行うこと,伝票整理,日報の記載,レジ精算のチェック,月に一度の本社での店長会議に出席すること,月に一度の棚卸しなどであるが,このような業務は,どのような飲食店の店長でも容易にできる業務であって,特段の能力を要求されるものではない。 b店長会議や研修への出席は,仕事を休んで参加できるから喜ぶべきことであり,監査は日ごろの心がけ次第であって何ら苦痛ではない。 c客の待ち時間を極力少なくすることは,外食産業に従事する者としては当然のことであるから,これを精神的緊張の状態とするのは不当である。 d他の従業員とのコミュニケーションを上手に行うことは,店長として当然のことである。亡Dと料理長とは,兄弟のように仲が良く,折合いが悪いということはなかった。 (カ)以上のとおりであるから,亡Dに長時間労働はなく,またその業務の内容も過重なものではない。 イ業務と本件死亡との因果関係(原告らの主張)(ア)残業や休日出勤を含む長時間労働が続くことによる過重な労働負担によって労働者に精神的,身体的負担がかかると,心臓等に影響を及ぼし,脳血管疾患や心疾患などの急性循環器障害が発症し,その結果死亡にいたる可能性があることは,医学的見地から認められている。 亡Dは,長時間の労働に従事させられ,特に平成15年4月1日にCに出向してからは,これまで以上に,疲労回復のための十分な睡眠や休息 果死亡にいたる可能性があることは,医学的見地から認められている。 亡Dは,長時間の労働に従事させられ,特に平成15年4月1日にCに出向してからは,これまで以上に,疲労回復のための十分な睡眠や休息の時間が確保できないような長時間にわたる過重な労働に従事させら- 9 -,,。 ,れかつ他の従業員との人間関係によるストレスも加わった亡Dはこれら過重な労働負担によって,冠動脈が自然経過を超えて著しく硬化した結果,本件発症に至り,死亡したものである。 (イ)亡Dには,心筋梗塞を発症する遺伝要因はなく,高血圧,肥満等の危険因子もない。 (被告の主張)亡Dは,過労以外の原因で本件発症をして死亡したものであるから,業務と本件発症・死亡との間に因果関係はない。 すなわち,本件死亡は,亡Dが自らの健康管理を怠り,職場と本件社員寮あるいは昼夜を混同した日常生活を送っていたことが原因である。 (2)被告らの債務不履行責任(安全配慮義務違反)及び不法行為責任(原告らの主張)ア労働時間管理・労働軽減義務違反等被告らは,いずれも雇用主として,従業員である亡Dの労働時間・労働状況を掌握するとともに管理をし,過剰な長時間労働によりその健康が害されないよう配慮すべき注意義務を負っていたのにこれを怠り,亡Dの異常な長時間労働を知り,又は知り得たにもかかわらず,その実際の労働状況や労働時間を把握し,長時間労働を軽減させるための措置をとらなかった。 被告らは,労働基準法や労働安全衛生法に従い,亡Dの健康管理,労働,,,時間休憩時間休日等について適正な労働条件を確保すべきであるのに全く配慮をしていない。また,被告らは,亡Dら店長の労働時間については自主申告制を採っていて,実態調査は行っておらず,厚生労働省の平成14年2月12日付け基発第212001号 を確保すべきであるのに全く配慮をしていない。また,被告らは,亡Dら店長の労働時間については自主申告制を採っていて,実態調査は行っておらず,厚生労働省の平成14年2月12日付け基発第212001号「過重労働による健康障害を」(「」防止するために事業者が講ずべき措置等の通達以下平成14年通達という)で要求されている措置も何ら採っていない。 。 - 10 -イ被告の主張に対する原告らの反論等(ア)亡Dの店長としての職務権限は本件店舗に限定され,給与においても管理監督者にふさわしい待遇はされていなかったから,経営者と一体的立場にあったとはいえない。したがって,亡Dは,管理監督者ではなく単なる従業員に過ぎなかったから,労働基準法や前記通達等によって保護される対象から除外されない。 (イ)亡Dの労働状況に照らせば,同人は,自己の健康を管理できる限度を超えていた。 (ウ)冠状動脈の硬化は自覚できない上,雇主の前で体調が悪い等と言えば,たちまちその後の地位や昇給に影響するため,亡Dは,体調等について被告らに申告できる状態にはなかった。 (被告の主張)ア被告らには,安全配慮義務違反はない。 イ亡Dは,店長として使用者から労働時間を管理する権限の委譲を受けていたから,平成14年通達で保護される対象から除外され,自らの責任において健康を管理すべき立場にあった。 ウ亡Dの健康状態は良好で,異常を認めるべき事情は何らなかったから,被告らには,亡Dに医療機関を受診させる義務がなく,その健康状態を把握することもできなかった。 エ仮に,亡Dに長時間労働があったとしても,本件店舗のセキュリティ装置のセット時刻は,常時被告らに通知される仕組みにはなっていないし,亡Dが被告らに提出していた出勤表によっても長時間労働をうかがうことはまったくできず 労働があったとしても,本件店舗のセキュリティ装置のセット時刻は,常時被告らに通知される仕組みにはなっていないし,亡Dが被告らに提出していた出勤表によっても長時間労働をうかがうことはまったくできず,かつ,亡Dから被告らに対し,仕事が忙しいなどの申告や発言もなかった。 このように,被告らが亡Dの労働実態を知り,かつ,それによって同人が本件発症をすることを予見し,これを回避することは不可能であったか- 11 -ら,被告らに不法行為責任及び債務不履行責任はない。 (3)不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効(被告の主張)仮に,原告らにつき不法行為責任に基づく損害賠償請求権が認められるとしても,同請求権は,本件死亡の日である平成15年4月22日から3年間を経過した平成18年4月24日までに時効により消滅している。 (原告らの主張)消滅時効は争う。民法724条の3年の消滅時効の起算点は,損害及び加害者を知ったときであるところ,原告らが損害賠償請求権があることを知ったのは,労災の給付を申請し,給付金の支給決定を受けた平成16年11月29日より後であるから,未だ3年は経過していない。 (4)過失相殺・素因減額等(被告の主張)ア過失相殺亡Dは,疲労が蓄積しているのであれば,夜中まで起きて遊ぶのではなく,きちんと睡眠をとって休養しなければならなかった。それにもかかわらず,亡Dは,①本件発症の2日前の午前2時35分から午前3時10分までの間,パソコンを操作して麻雀ゲームに興じており,②本件発症前の2か月間に10回以上も頻繁に深夜まで音楽を聴いていた。 また,亡Dは,店長として自ら健康管理を行わなければならないし,真に労働が過重であれば,適切な労働時間となるように計画を行い,仮にそれが困難な場合には,上司や会社に申告するなどの行動が必要であっ 。 また,亡Dは,店長として自ら健康管理を行わなければならないし,真に労働が過重であれば,適切な労働時間となるように計画を行い,仮にそれが困難な場合には,上司や会社に申告するなどの行動が必要であったのに,これらを行っていない。 以上の事情は,仮に被告らの責任を肯定する場合でも,過失相殺の事由として考慮すべきである。 イ素因減額- 12 -本件死亡は,冠動脈硬化症による急性心筋梗塞によるものであるから,死亡原因の根本は,亡Dがもともと有していた冠動脈硬化である。また,本件発症について,亡Dの業務が直接の引き金を引いたとする根拠はないから,仮に業務と本件死亡との因果関係を肯定する場合であっても,被告らの業務の寄与の方が大きいとする理由は存しない。 (原告らの主張)ア過失相殺。 ,,争う亡Dが閉店後に本件店舗で麻雀をしたり音楽を聴いていたのは前記のとおり一時的な休息等のためであり,業務をせずに遊んでいたのではない。 亡Dは,まじめで几帳面で頑張って働く性格であり,本件店舗の売上げを伸ばして赤字を解消するように常に精神的な圧力がかけられており,人件費削減による赤字減らしのために過重労働を余儀なくされた結果,その犠牲になったものである。 亡Dは,店長という立場上,自己の健康について管理義務があるとしても限界があり,被告らが従業員の過重労働について何らの配慮もしていないことを考慮すると,亡Dに過失があったとはいえない。亡Dの性格は,同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲をはずれるものではないから,その性格及びこれに基づく業務遂行の態様等を心因的要因として斟酌することもできない。 仮に,亡Dに過失があったとしても,最大で2割程度にとどまる。 イ素因減額争う。医師の意見書には,亡Dが以前から有していた冠動脈硬 基づく業務遂行の態様等を心因的要因として斟酌することもできない。 仮に,亡Dに過失があったとしても,最大で2割程度にとどまる。 イ素因減額争う。医師の意見書には,亡Dが以前から有していた冠動脈硬化症が急激に悪化して死亡したとの記載があるが,これは,亡D(死亡当時29歳7か月)に年齢に相応した中程度の冠動脈の硬化があったというものに過ぎない。 - 13 -(3)原告らの損害(原告らの主張)ア逸失利益5555万8316円亡Dの死亡前年(当時28歳)の平成14年分の給与総額は,417万6026円(甲11)であるところ,これは,同年産業計・企業規模計・男子労働者大卒の年齢25歳から29歳までの平均給与総額437万2000円とおおむね一致する。 また,亡Dは,管理職ではないにもかかわらず,残業手当が支給されていなかったが,残業手当が支給されていれば,当時の収入も実際の支給額を相当上回っていたはずである。そして,被告は,東京証券取引所・大阪証券取引所の第一部に上場されている企業である。 以上によれば,亡D(死亡当時満29歳7か月)は,満67歳までの38年間就労し,1年間に少なくとも平成15年賃金センサス産業計・企業規模計・男子労働者大卒の平均収入である658万7500円の収入を得ることができたはずである。また,控除されるべき亡Dの生活費は,上記収入の50パーセントと考えられる。 以上を前提に,ライプニッツ方式で中間利息を控除し(ライプニッツ係数16.8678,亡Dの逸失利益を算出すると,5555万8316)円となる。 イ死亡慰謝料3000万円亡Dは,被告らで6年もの期間にわたり勤務した健康な労働者であったが,その間,店長として残業,休日出勤など過酷な業務に従事させられた結果,疲労が蓄積し,ついには本件発症をして死亡するに至っ 00万円亡Dは,被告らで6年もの期間にわたり勤務した健康な労働者であったが,その間,店長として残業,休日出勤など過酷な業務に従事させられた結果,疲労が蓄積し,ついには本件発症をして死亡するに至ったものである。したがって,亡Dの受けた精神的損害に対する慰謝料は,3000万円が相当である。 ウ葬儀費用150万円- 14 -原告らは,亡Dの葬儀費用として214万5902円の支払を余儀なくされたが(甲12,本件では,この内150万円の支払を求める。 )エ損益相殺等1493万5200円(ア)原告らは,労災保険により遺族補償一時金934万円及び葬儀料59万5200円の給付を受けている。 なお,被告は,特別支給金合計486万8000円を損害金から控除すべきであると主張しているが,特別支給金は,被災労働者等の福祉の増進を図るために労働者福祉事業の一環として支給されるものであり,被災労働者等や遺族に対する生活援助金,見舞金の性格を有するから,控除する必要はない。 (イ)原告らは,平成19年2月15日に被告らから500万円を受領した。 オ以上差引き合計7212万3116円カ原告らの相続額各3606万1558円原告らは,本件死亡により,亡Dの上記損害賠償請求権をそれぞれ2分の1の割合で相続した。 キ弁護士費用各380万円原告らは,本件訴訟の追行を弁護士に委任し,各380万円を報酬として支払う旨を約した。 ク合計各3986万1558円原告らは,被告に対し,各自,いずれも債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償として,3986万1558円の支払を求める。 ケ遅延損害金(ア)不法行為に基づく遅延損害金の起算点は,本件死亡の日である平成15年4月22日である。 (イ)債務不履行に基づく遅延損害金の起算点は,平成15年5月1 58円の支払を求める。 ケ遅延損害金(ア)不法行為に基づく遅延損害金の起算点は,本件死亡の日である平成15年4月22日である。 (イ)債務不履行に基づく遅延損害金の起算点は,平成15年5月1日で- 15 -ある。 原告Aは,本件死亡直後の平成15年4月22日か23日ころ堺東警察署で当時のCの代表者であったJらに対し,本件死亡につき十分な補償をするよう要求,催告しており,このことは,直ちに被告にも伝えられているはずである。したがって,遅延損害金は,前同日から相当な期間を経過した同年5月1日から発生するものと解すべきである。 (被告の主張)ア原告らの損害については,いずれも争う。 イ原告ら主張額に加え,労災保険からの特別支給金486万8000円も損害のてん補であるから,損害額から控除すべきである。 第3争点に対する判断 亡Dの業務及び死亡等に関して認められる事実前記第2の2の前提事実,証拠(甲5,6,13ないし18,20,22ないし24,28,35ないし43,乙3,5,6,8ないし26(各枝番を含む。以下同様,証人K,証人L,原告A本人,J本人(一部)及び弁論の))全趣旨によれば,亡Dの業務及び死亡等に関し,次の各事実が認められる。証拠(乙11,12,14,J本人)中以下の認定に反する部分は,上記各証拠に照らし,にわかに信用できない。 (1)亡Dの経歴及び本件店舗で勤務するに至る経緯ア亡Dは,平成9年3月に大学を卒業後,同年4月1日に被告に入社し,入社とともに平成11年8月まではM店で勤務し,同年9月からは被告でいうところの監督職となるとともに,同月からN館,平成12年10月からO店,同年12月からはP店等を歴任し,平成14年8月1日に本件店舗の店長となった。 イまた,亡Dは,前提事実記載のとおり,平成15年4 ろの監督職となるとともに,同月からN館,平成12年10月からO店,同年12月からはP店等を歴任し,平成14年8月1日に本件店舗の店長となった。 イまた,亡Dは,前提事実記載のとおり,平成15年4月1日にCが被告の子会社として設立されると,在籍出向社員としてCに配属された。 - 16 -(乙3)ウ亡Dは,平成14年7月までは実家である原告ら住所地で原告らと同居していたが,本件店舗の店長となった同年8月からは,本件店舗から約650メートル,徒歩10分程度の距離にある本件社員寮で一人暮らしを始め,本件死亡に至るまで同所から本件店舗に通勤していた。 (乙6,乙8の2,原告A本人)エ本件店舗は,Cの郊外立地のテストケースとして平成13年10月5日に開店した郊外店であり,営業時間は,午前11時から午後11時までである。本件店舗は,平成14年5月ころから赤字経営となり,被告らでは同年7月ころには,平成15年6月をもって店舗を閉鎖することも検討していたが,店舗・敷地賃貸人との契約に従い,同社の撤退後に引き続き営業をする業者を確保する必要等があったため,同時期に退店することができず,結局,本件店舗が閉店されたのは,平成17年4月であった(乙5の1・2,乙25,J本人。 )(2)亡Dの労働状況等ア店長の業務は,店舗全体の確認,パートらへの指示・指導,年間・月間・日割予算の作成,損益計算書の作成,基本シフトの作成,原材料の仕入れ,仕込み・廃棄処分・清掃・整備の指示と確認,接客の先頭に立ち苦情処理を行うこと,伝票整理・日報の記載・レジ精算のチェック,月に一度の本社での店長会議に出席すること,月に一度の棚卸しなどである。 被告らにおいては,店長として心がけるべき諸事項を記した「店長職務基準(乙3:57丁)等を内容とする本件店長マニュアルが定めら 月に一度の本社での店長会議に出席すること,月に一度の棚卸しなどである。 被告らにおいては,店長として心がけるべき諸事項を記した「店長職務基準(乙3:57丁)等を内容とする本件店長マニュアルが定められて」いる。 (乙3,14,証人K)イ亡Dは,原告らと同居していたころは,おおむね,午前9時前後に自宅を出て翌午前1時から午前2時の間に帰宅していた。亡Dは,公休日はと- 17 -っていたが,ほとんど自宅で過ごしており,原告Aに背中等のマッサージをするようにたびたび頼むなどしていた。 原告らは,平成11年ころから亡Dの顔色が良くなく,以前に比べてやせてほおが落ちているように感じたため,これを心配して亡Dに対し,過労死も多くある時代であるから,健康は自分で十分に注意するようになどと忠告していた。 (甲42,43,原告A本人)ウ平成14年10月ころの本件店舗の正社員は,G,亡D,Q及び料理長のR(以下「料理長」という)の4名であり,Gが支配人,亡Dが店長。 であり,Gが店舗を統轄していた。その後,Gが平成15年1月11日ころから被告らが経営するSのラーメン店での勤務を始め,同年2月1日付けで同店へ異動したため,亡Dが,名実ともに本件店舗を統轄することに,。 ,,,なったが正社員は一旦3名に減ったその後本件店舗では正社員でCのO店で店長をしていたHが平成15年3月1日から同年4月末までは応援として勤務し,亡Dとともに店長を務めたほか,Iも勤務した。 (乙11,J本人)エ本件店舗では,Gが支配人として勤務していた平成15年1月10日ころまでは,同人が主にホールの業務を行い,亡Dは客が多いときにはホール,少ないときには事務的な業務を行うというように,仕事の分担ができていたため,同人は,週に1回程度は休日をとっていた。 とこ 日ころまでは,同人が主にホールの業務を行い,亡Dは客が多いときにはホール,少ないときには事務的な業務を行うというように,仕事の分担ができていたため,同人は,週に1回程度は休日をとっていた。 ところが,亡Dは,Gが上記のとおり他店舗に移った後は,ホールと厨房の皿洗い等の両方の業務を行うようになり,勤務時間も長くなって,休日もほとんど出勤するようになった。また,亡Dは,前記の店長業務に加え,材料の発注等も自ら行い,月に一度の棚卸しも一人で行っていた。なお,亡Dは,まじめで几帳面で,人から言われたら断れないような性格であった。 - 18 -(甲13ないし15,22,23,42,43,乙3,証人K,証人L,原告A本人)オ平成15年2月26日には,本件店舗に対し,年に1度実施される本社による監査が実施されたが,亡Dは,これに先立って,本件店舗のパートらにではなく,同期でM店の店長をしていたT及び同店の従業員に応援を頼み,朝方まで本件店舗の清掃を行った(甲13,原告A本人。 )カ亡Dは平成15年3月3日から6日まで和歌山で実施された研修幹,,(部訓練)にHとともに参加した。同研修に参加したTは,研修中,亡Dが疲れた様子をしているように感じた。亡Dは,平成15年3月27日及び同年4月16日に被告本社で行われた店長会議に出席した(甲13。 )キ亡Dは,ホールで接客をする接客部門を担当するパートらとの人間関係には問題がなかったが,料理長や厨房部門を担当するパートらとの関係は良好ではなく,厨房部門のパートらは,料理長の意向を受け,亡Dの指示に従わないことがあった。 これは,前記のとおり本件店舗の経営が厳しかったため,店長である亡Dが人件費削減等のために厨房の皿洗い要員を廃止して厨房部門に割り振ろうとしたこと,パートらの希望する勤務制を 従わないことがあった。 これは,前記のとおり本件店舗の経営が厳しかったため,店長である亡Dが人件費削減等のために厨房の皿洗い要員を廃止して厨房部門に割り振ろうとしたこと,パートらの希望する勤務制を組めなかったこと,厨房の人数を増やしてほしいとの料理長からの要望に応じられなかったこと等が原因であった。 そのため,亡Dが,厨房部門のパートらに対し,細かな清掃や全員で皿洗いをすること等を指示しても聞いてもらえず,皿洗いは,亡Dやホール部門の従業員が行っていた。なお,食器は,自動食器洗浄機を使用して洗うが,その前に大きな汚れを取る等のため,一旦手洗いをする必要があった。 (甲13,15,乙3,乙15の11,証人L)ク本件店舗では,午後2時から午後6時が,基本的にはアイドルタイムで- 19 -あった。しかしながら,亡Dは,この時間にもパートらとともに午前中から残っている食器の洗い物をしたり,午後の材料を倉庫から持ってきて整えたり,ホールの清掃をする他,休憩中の料理長に代わって調理を行うこともあった。そのため,亡Dは,アイドルタイム中に店長がすべき事務作業ができないときがあった。 (証人L。 )ケ亡Dは,本件店舗に自分のパソコンを持ち込んでおり,勤務時間中にパソコンを使用していることもあったが,被告らに提出する書類は,すべて手書きで作成していた。そして,本件店舗の広告等も,従業員が作成した手書きのものが使用されていた。 なお,亡Dのパソコンに残されていたデータのうち,店舗の時間帯別売上集計,客数,客単価などを集計できる仕入れ発注表等(乙20,21)は,亡Dの先輩で当時P店長であったKが書式を作成して亡Dに渡したものであり,理論材料費の一覧表(甲41)は,当時O店長であったUが書式を作成して,亡Dの勉強のために渡したものである。 (甲41 )は,亡Dの先輩で当時P店長であったKが書式を作成して亡Dに渡したものであり,理論材料費の一覧表(甲41)は,当時O店長であったUが書式を作成して,亡Dの勉強のために渡したものである。 (甲41,乙20,21,24,証人K,証人L)コ亡Dは,朝従業員が出勤したときに,本件店舗のソファーで寝ていることが2週間に一,二回程度あり,本件発症の1か月前くらいには,アイドルタイムに月に一,二回仮眠をとっていた。 (証人L)サ亡Dは,本件店舗において,平成14年8月8日の午前2時33分ころから午前2時55分ころまでの約22分間及び平成15年4月20日午前2時35分から午前3時10分ころまでの約34分間,パソコンで麻雀ゲ,,ームを行ったほか同年1月9日から同年4月22日までの間に約14回営業時間終了後にパソコンで音楽を聞いていた。 また,原告Aが本件死亡後に本件社員寮を訪れたところ,室内の整理整- 20 -頓はされていなかった。 (甲38,乙17ないし19,原告A本人,弁論の全趣旨)シ亡Dは,栄養飲料を飲むことが多く,本件発症の1か月前ころには,パートのLに対し,笑いながらも,疲れた等とよく言っていた。また,亡Dは,監査と研修前には,これらが重なっていることが一番しんどいとも言っていた。 (甲13,15,22,証人L)ス亡Dは,本件発症の前日である平成15年4月21日は,午前2時21分に本件店舗に出勤し,業務をしたのち,閉店後の翌22日午前0時15分から午前2時30分まで,U及びHとともに店長3名で自主的なミーティングを実施していた。Uらは,ミーティング終了後に帰宅したが,亡Dは,店内に止まった。 (乙3,11)セ亡Dは,前提事実記載のとおり,急性心筋梗塞を発症して本件死亡に至った。平成15年4月22日の午前7時42分ころ早出 は,ミーティング終了後に帰宅したが,亡Dは,店内に止まった。 (乙3,11)セ亡Dは,前提事実記載のとおり,急性心筋梗塞を発症して本件死亡に至った。平成15年4月22日の午前7時42分ころ早出の従業員が本件店舗に出勤し,会社の作業服を着てホールの客用の長いすに仰向けになって横になっている亡Dを発見したが,休息をしているものと考え,特に声を掛けたりはしなかった。ところが,その後同日午前9時55分ころ出勤したLが亡Dの状況に異変を感じて確認したところ,同日午前10時5分ころ,同人が死亡していたことが判明した。亡Dが横になっていた長いすのテーブルの上には,パソコンが画面上スクリーンセーバーが作動している状態で起動していたほか,複数の書類が散らばっていた。そして,亡Dの解剖の結果,本件死亡は,本件発症によるものであると診断された。 (乙3,証人L,原告A本人)ソ本件死亡後,本件店舗に着任した新しい店長は,休日を取っており,これまで亡Dが自ら行っていた材料の発注等についても従業員が行うように- 21 -なった。 (証人L)(3)亡Dの労働時間亡Dの具体的な労働状況は,前記認定のとおりであるところ,同人の労働時間について検討する。 ア営業時間中の業務時間前記認定の亡Dの業務内容に照らすと,同人は,本件店舗の営業時間中は,ホールや厨房での業務,事務作業を行っていたと認められる。なお,本件店舗の従業員は,店長を含め,アイドルタイム中に適宜45分ないし60分の休憩を取ることとなっていたが,前記認定のとおり,亡Dは,アイドルタイム中も皿洗いや調理等を行い,同時間帯に行うべき店長としての事務作業が行えないこともあった。 以上に照らせば,亡Dは,午前11時ころから午後11時ころまでの本件店舗の営業時間中は,アイドルタイムの間も含めて,基本的 理等を行い,同時間帯に行うべき店長としての事務作業が行えないこともあった。 以上に照らせば,亡Dは,午前11時ころから午後11時ころまでの本件店舗の営業時間中は,アイドルタイムの間も含めて,基本的には業務を行っていたものと認めることが相当である。 イ営業時間終了後の在店時間(,),,(ア) 証拠 乙11J本人及び弁論の全趣旨によれば本件店舗では亡Dが,従業員の中で最後まで在店しており,セキュリティ装置をセットして帰宅していたと認められる。したがって,本件店舗の警備会社であるV株式会社の監視状況表(甲16)により,亡Dの在店時間を推認することができる。 そして,前記認定にかかる業務内容等に照らせば,亡Dは,営業時間終了後,皿洗いや清掃,店長業務等の事務作業,研修や店長会議前にはその準備,監査前には清掃等を行っていたものと推認されるから,同人は,営業時間終了後の在店時間についても,基本的には業務を行っていたものと認めるのが相当である。 - 22 -(イ)これに対し,被告らは,亡Dが,本件店舗に長時間いたのは,本件社員寮と本件店舗との生活を混同していたからであり,業務をするためではなく,仮に,業務を行っていたとしても,亡Dが勤務時間中まじめに仕事をせずに午後11時以降に仕事を行っていたことを示すに過ぎない旨主張する。そして,証拠(甲4,乙11,15,25,26,証人K,J本人)によれば,被告らの店長が営業時間終了後に行うべき業務としては,レジの清算並びに売上高,現金残高及び従業員の労働時間等を記載した売上げ日報(乙15の4,乙26と同種の書類)や残って処分しなければならない食材を記したロス処分表(乙15の10)の作成があるところ,店長は,レジ担当や厨房担当の従業員が作成したこれら,,各書類の確認を行うのみで足り 乙26と同種の書類)や残って処分しなければならない食材を記したロス処分表(乙15の10)の作成があるところ,店長は,レジ担当や厨房担当の従業員が作成したこれら,,各書類の確認を行うのみで足りその所要時間は30分程度であるから店舗に長時間残ることはないはずであること並びに通常,店長は,営業時間終了後,おおむね30分から1時間程度で退店をしていることが認められる。また,亡Dは,前記認定のとおり,営業時間終了後,本件店舗でパソコンの麻雀をしたり,音楽を聴いていたこともあったことが認められる。 (ウ)しかしながら,亡Dが本件店舗の営業時間中に業務を怠り,遊んでいたとは認められないことは,前記認定のとおりである。そして,Kの上記供述にかかわらず,亡Dは,毎日の発注作業や,棚卸しを一人で行ったり,アイドルタイム中も従業員とともにホールや厨房の業務を行っていたため,店長が行うべき事務作業を行えないときがあったこと,監査の際には他店の従業員の協力を得てようやく清掃を完了したこと,料理長をはじめ,厨房部門の従業員が亡Dの指示を聞かないことがあったこと等の本件店舗における業務の状況に照らせば,同人は,本件店長マニュアル等において,店長がアイドルタイム等を利用して行うことが想定されている業務や,本来なら原則として営業時間内に他の従業員と分- 23 -,,,担して行うべき業務についても営業時間終了後に独力で行いしかも相当な時間を要していたものと推認される。なお,亡Dが被告らに提出していた出勤表(乙3:41丁以下)記載の労働時間は,前記認定の亡,。 Dの労働時間の実態を反映したものとはいえず直ちには信用できない,,,,また亡Dが営業時間終了後本件店舗でパソコンの麻雀をしたり音楽を聴いたりしていたことは,前記認定のとおりではあるが 。 Dの労働時間の実態を反映したものとはいえず直ちには信用できない,,,,また亡Dが営業時間終了後本件店舗でパソコンの麻雀をしたり音楽を聴いたりしていたことは,前記認定のとおりではあるが,麻雀は亡Dが店長になってから,各二,三十分程度を2回行ったことが認められる程度であり,音楽を聴きながら業務を行うことも,直ちに職務を怠ったとはいえない。さらに,本件社員寮が整理整頓されていなかったことは,前記認定のとおりであるが,このこともまた,亡Dが業務を怠っていたこと等を推認させるものではない。 他に,亡Dが本件社員寮と本件店舗との生活を混同していたことをうかがわせるような事情はない。 (エ)以上に照らせば,被告が指摘する諸事情を考慮しても,亡Dが営業時間終了後の在店時間中にも,基本的には業務を行っていたとの前記認定を覆すに足りるものではない。したがって,被告の主張は採用できない。 ウ以上のとおり,亡Dが,営業時間及び営業時間終了後本件店舗内に残っていた時間は,基本的には,同人が業務を行っていた時間であると認めるのが相当である。 もっとも,他方,亡Dは,各日に一定の時間を休憩時間として確保していたとまではいえないものの,食事は毎日,業務の合間に適宜とっていたこと,朝方やアイドルタイム中に仮眠をとる日も少なからずあったこと,深夜に短時間とはいえパソコンで業務とは関係のないゲームを行ったことも認められる。そうすると,亡Dの在店時間のうち各日当たり1時間を,休憩時間として差し引くのが相当である。 - 24 -エ以上を前提に,本件発症前6か月間(平成14年11月16日から平成15年4月22日までとする)の亡Dの本件店舗における業務時間を算。 定する(なお,甲16によりセット時間が明らかではない日については,営業終了の時間である午後11 (平成14年11月16日から平成15年4月22日までとする)の亡Dの本件店舗における業務時間を算。 定する(なお,甲16によりセット時間が明らかではない日については,営業終了の時間である午後11時までを業務時間と算定する)と,少な。 くとも,発症前4か月(別紙2の4)の労働時間を別紙3のとおり訂正するほかは,本件集計表記載のとおりとなる。そのうち,法定の時間外労働(,)時間1日当たり8時間1週間当たり40時間を超えて労働した時間数は,次のとおりである。 (ア)本件発症1か月前(平成15年3月23日から同年4月21日まで)153時間02分(別紙2の1)(イ)同2か月前(同年2月21日から3月22日まで)106時間20分(別紙2の2)(ウ)同3か月前(同年1月22日から2月20日まで)116時間34分(別紙2の3)(エ)同4か月前(平成14年12月23日から平成15年1月21日まで)96時間32分(別紙3)なお,証拠(乙3:43丁)によれば,亡Dは平成14年12月30日出勤し,翌31日を公休と届け出ていることが認められるから,本件発症前4か月の本件集計表(別紙2の4)中の同月30日,31日の勤務時間を訂正した。 (オ)同5か月前(平成14年11月23日から同年12月22日まで)116時間04分(別紙2の5)(カ)同6か月前(平成14年10月24日から同年11月22日まで)141時間11分(別紙2の6)なお,前記認定のとおり,亡Dの休日は,Gが支配人として勤務していた平成15年1月10日ころまでは週に1回程度であり,Gが他店舗に移- 25 -った後は,休日もほとんど出勤していたことが認められるが,本件集計表は,亡Dが,被告らに対し,公休日として届け出ている日(乙3:41丁以下)の業務時間を含めていない。そ Gが他店舗に移- 25 -った後は,休日もほとんど出勤していたことが認められるが,本件集計表は,亡Dが,被告らに対し,公休日として届け出ている日(乙3:41丁以下)の業務時間を含めていない。そして,亡Dが公休日として被告らに届け出ている日のうち,平成15年2月26日については本件店舗の監査が行われ,かつ,亡Dがそれに先だって清掃をしたこと,亡Dが同年3月3日から同月6日までの間,研修(幹部訓練)に参加したことも前記認定のとおりであり,亡Dがこれらの時間についても業務を行っていたことは明らかである。もっとも,これらの亡Dが業務に要した時間についても,上記時間には含まれていない。 (甲16,乙3)(4)本件死亡及びその後の対応等ア原告Aは,本件死亡の当日である平成15年4月22日に,堺東警察署でCのJやW部長に対し,本件死亡は過労死であるから,誠意をもった対応をするようにと要求した。 (原告A本人)イ前提事実記載のとおり,原告らは,本件死亡につき平成15年8月18日に堺労働基準監督署長に対し,労働者災害補償給付の申請を行い,平成16年11月29日に同署長により支給決定がされた。 ウ原告らは,平成18年11月30日に被告とCを相手方として本件訴訟を提起した。 (5)被告らにおける労働管理状況等ア本件店長マニュアルには,従業員の労働時間管理等については,具体的な記載例も含め,言及があるが,店長の労働時間に関する記載はない。 イ被告らは,店長が自ら記載して被告らに提出する出勤表によって労働時間を管理していたほか,月に1回程度C代表者等が店舗を巡回していた。 ウ被告らは,イのほかには,出勤表の記載の正確性を担保するような方策- 26 -をとっていなかった。前記巡回時においても,従業員に対するヒアリングを行うなど店長の労働時 等が店舗を巡回していた。 ウ被告らは,イのほかには,出勤表の記載の正確性を担保するような方策- 26 -をとっていなかった。前記巡回時においても,従業員に対するヒアリングを行うなど店長の労働時間や労働状況を把握するような具体的な方策は,採られていなかった。 (乙3,J本人)(6)通達等ア平成13年4月6日付け基発第339号「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」厚生労働省は,使用者が労働時間を適切に管理する責務を有するにもかかわらず,現状では,労働時間の把握に係る自己申告制の不適正な運用に,,伴い割増賃金の未払や過重な長時間労働といった問題が生じているなど上記管理が適切に行われていない現状を踏まえ,労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置を具体的に明らかにすることにより,労働時間の適切な管理の促進を図るため,平成13年4月6日付け基発第339号「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」を発した。 同通達は,使用者は,労働時間を適正に管理するため,労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し,これを記録すること,確認及び記録は,使用者が自ら現認することにより確認し,記録するか,タイムカード,I,,Cカード等の客観的な記録を基礎として確認し記録することを原則とし自己申告制により行わざるを得ない場合は,導入前に,その対象となる労働者に対して,労働時間の実態を正しく記録し,適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行い,自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているかどうかについて,必要に応じて実態調査を実施すること,労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと,また,時間外労働 の労働時間と合致しているかどうかについて,必要に応じて実態調査を実施すること,労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと,また,時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る- 27 -事業場の措置が,労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないか確認するとともに,当該要因となっている場合には,改善のための措置を講ずること等を内容としている。 (甲18)イ平成14年通達厚生労働省は,平成13年12月12日付け基発第1063号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く)の認定基準につ。 いて」において,脳,心臓疾患の労災認定基準を改正し,疲労の蓄積をもたらす長期間の過重業務も業務による明らかな過重業務として新たに考慮,,。 ,することとしたがこれに引き続き平成14年通達を発した同通達は過重労働による労働者の健康障害を防止することを目的として,1か月100時間を超える時間外労働を行わせた場合,又は2か月ないし6か月間の1か月平均が60時間を超えて,時間外労働を行わせた場合には,使用者は産業医等の助言指導を受けること,さらに,当該労働者自身に産業医等の面接を受けさせることを定め,事業者が講ずべき措置などを定めたものである。 (甲20) 争点1について(1)亡Dの労働実態及び労働時間は,前記認定のとおりであるところ,これらに照らすと,亡Dの労働時間は著しく長時間であると認められる。 そして,その業務内容も,特にGの転出後は,以前よりも業務量が増した上,本件店舗の経営が厳しかったことなどから,店長として人員削減等の経営立て直しのための対策を講ずる必要があって,精神的負荷のかかるものであった。また,本件店舗で 転出後は,以前よりも業務量が増した上,本件店舗の経営が厳しかったことなどから,店長として人員削減等の経営立て直しのための対策を講ずる必要があって,精神的負荷のかかるものであった。また,本件店舗では,上記対策の影響により,厨房部門の従業員らとの関係が悪化し,同従業員らが指示に従わないため,従業員らとの適切な業務分担もできなかったものである。さらに,亡Dは,日々の業務に加え,- 28 -店長として監査,店長会議,研修等にも対応をする必要があった。 以上に照らせば,亡Dの業務は,継続的な長時間労働である上,その内容も身体的精神的負荷のかかるものであったと認められるから,過重であったと認められる。 また,本件全証拠によっても,亡Dに業務外の私生活等において身体的,精神的に強い負荷がかかるような事情があったことを認めるに足る証拠はない。 (2)以上に照らせば,亡Dは,本件店舗の店長として過重な労働に従事し,十分な休憩や休日も取れなかったため,冠動脈が自然経過を超えて著しく硬化した結果,急性心筋梗塞が発症し,本件死亡に至ったものであるから,亡Dの業務と本件発症・死亡との間には,相当因果関係があると認められる。 (3)被告らは,亡Dの業務と発病・死亡との間に因果関係はなく,本件死亡は,自らの健康管理を怠り,職場と自宅あるいは昼夜を混同した日常生活が原因である旨主張する。そして,亡Dが営業時間終了後も本件店舗に長時間残っていたことは,前記認定のとおりである。 しかしながら,亡Dが本件店舗に長時間残っていたのは業務を行うためであって,それ以外の事情により職場と自宅あるいは昼夜を混同した日常生活をしていたとは認められないことは,前述のとおりである。そうすると,被告らの上記主張は採用できない。 争点2について,,,(1)被告らは雇用契約 場と自宅あるいは昼夜を混同した日常生活をしていたとは認められないことは,前述のとおりである。そうすると,被告らの上記主張は採用できない。 争点2について,,,(1)被告らは雇用契約に付随する義務として使用者として労働者の生命身体及び健康を危険から保護するように配慮すべき安全配慮義務を負い,そ,,,,,の具体的内容として労働時間を適切に管理し労働時間休憩時間休日休憩場所等について適正な労働条件を確保し,健康診断を実施した上,労働者の年齢,健康状態等に応じて従事する作業時間及び作業内容の軽減等適切な措置を採るべき義務を負っている。そして,これに違反した場合には,安- 29 -全配慮義務違反の債務不履行であるとともに不法行為を構成するというべきである。 (2)ところが,被告らは,前記認定のとおり亡Dを長時間の時間外労働や精神的負荷のかかる業務に従事させたため,同人は,これによって疲労を蓄積し,本件発症をして死亡するに至ったものである。 また,被告らが亡Dに提出させていた出勤表(乙3:41丁以下)記載の労働時間が,亡Dの労働時間の実態を反映していたものではないことは前述のとおりであるところ,被告らは,J本人が,従業員が長時間店舗内にいることは,冷暖房のための電気代も要するし,店舗内の飲料等の管理も適切に行われなくなって好ましくないとの趣旨の供述をしたことからも明らかなように,費用面からも従業員の勤務時間には関心を有しており,しかも,警備会社のセキュリティ装置等を利用したり,同警備会社や本件店舗の従業員からヒアリングを実施するなどすれば,亡Dの過重労働の実態を容易に把握することができたはずである。それにもかかわらず,被告らは,客観的に労働時間の実態を把握できるこれらの方策を採らず,亡Dに対し,自己申告によ ングを実施するなどすれば,亡Dの過重労働の実態を容易に把握することができたはずである。それにもかかわらず,被告らは,客観的に労働時間の実態を把握できるこれらの方策を採らず,亡Dに対し,自己申告による出勤表を提出させていたのみである。そして,本件全証拠によっても,被告らが上記出勤表の内容が亡Dの実際の労働時間と合致しているかについての実態調査等を行った形跡は認められない。なお,証拠(乙14,J本人)によれば,本件店舗の初代店長でもあったJは,本件発症2日前の平成15年4月20日に本件店舗を訪れ,亡Dと昼食を共にとり,その際,亡Dの近況や,本件店舗の状況について聞いたりしたことが認められる。しかしながら,このことをもっても,上記結論が左右されるものではない。 以上に照らせば,被告らの亡Dに対する労働管理は,まことに不十分なものであり,被告らが,亡Dの労働時間を適正に管理する義務を怠っていたことは明らかである。 (3)これに対し,被告らは,亡Dは管理監督者であり,労働基準法や原告ら- 30 -が指摘する通達にいう労働者に当たらないから,これらによって求められる労働管理をする義務はない旨主張する。 そこで検討すると,労働基準法41条2号に規定する「監督若しくは管理の地位にある者(以下「管理監督者」という)は,同法が定める労働条」。 件の最低基準である労働時間,休憩及び休日に関する規定の適用が除外されるものであるところ,その範囲については一般的には,部長,工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者であって,労働時間,休憩及び休日に関する規制の枠を超えて事業活動をすることが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し,現実の勤務態様も,労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限定されなければならない。す 休憩及び休日に関する規制の枠を超えて事業活動をすることが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し,現実の勤務態様も,労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限定されなければならない。すなわち,具体的には,管理監督者の範囲については,資格及び職位の名称にとらわれることなく,職務内容,責任と権限,勤務態様に着目する必要があり,賃金等の待遇面についても留意しつつ,総合的に判断されなければならないものである。 これを本件についてみると,なるほど亡Dは,本件店舗の店長として同店におけるパートらの採用やシフトの決定等の労務管理を行う権限を有し(乙3,証人K,証人L,実際にこれらを行使するとともに,前記認定の店長)。 ,,(,),業務を行っていたしかしながら他方 証拠 証人KJ本人によれば亡Dの店長としての職務や権限は,あくまでも本件店舗に関する事項に限定されていた上,人員募集やパートにかかる費用については,上司に相談してその決裁を受けることになっていたこと,閉店等の重要な経営判断は,あくまでも被告らが行っていたことが認められる。 これらの事情に照らせば,亡Dは,本件店舗の経営責任の一端を担っていたといえるものの,それは,あくまでも限定されたものであるから,企業経営上の必要から経営者と一体的な立場にあったとは到底いえず,労働基準法の労働時間等の枠を超えて事業活動をすることを要請されざるを得ない重要- 31 -な職務と責任を付与されていたとは認められない。本件店長マニュアルを子細に検討しても,上記結論は左右されるものではない。 したがって,亡Dは管理監督者でなく,労働基準法の労働時間,休憩及び休日に関する規定や,前記通達等の適用を除外されるものではないから,被告らの主張は採用できない。 (4)そして,長時間労働や過 。 したがって,亡Dは管理監督者でなく,労働基準法の労働時間,休憩及び休日に関する規定や,前記通達等の適用を除外されるものではないから,被告らの主張は採用できない。 (4)そして,長時間労働や過重な労働により,疲労やストレス等が過度に蓄,,。 積し労働者の心身の健康を損なう危険があることは周知のとおりであるそうすると,被告らは,亡Dの労働時間を適正に管理しない結果,同人が長時間労働に従事して死亡に至ることを予見することが可能であったというべきである。 (5)以上によれば,被告らは,亡Dの労働時間を適切に管理せず,同人の労働時間,休憩時間,休日等を適正に確保することなく,長時間労働に従事させたものであるから,安全配慮義務違反が認められる。そして,被告らの上記安全配慮義務違反と本件死亡との間には,因果関係が認められる。 したがって,被告らは,本件死亡について安全配慮義務違反の債務不履行責任及び不法行為責任を負うと認められる。 争点3について(1)前記認定判断のとおり,被告らには不法行為責任が認められるが,不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効は3年であるところ,本件においては,原告らの損害賠償請求権は,本件死亡の日である平成15年4月22日から3年間を経過した平成18年4月23日に時効により消滅したと認められる。 (2)原告らは,本件損害賠償請求権の存在を知ったのは,労災保険給付金の支給決定を受けた平成16年11月29日より後ころのことであるから,上記3年は,いまだ経過していない旨主張する。 しかしながら,本件死亡による損害は,亡Dが死亡した日である平成15- 32 -年4月22日に発生し,原告らは,同日亡Dの死亡を知り,Jらに対し,本件死亡が過労死であるとして,これに対する対応を求めていたことに照らせば,原告らは,同 Dが死亡した日である平成15- 32 -年4月22日に発生し,原告らは,同日亡Dの死亡を知り,Jらに対し,本件死亡が過労死であるとして,これに対する対応を求めていたことに照らせば,原告らは,同日に本件死亡が被告らに責任のある過労死であること,すなわち,損害及び加害者を知ったものと認められる。 そうすると,同損害賠償請求権の時効の起算点は,前同日からとすべきであり,労災給付の支給決定がされていたかどうかは,これを左右するものではないと解される。したがって,原告らの主張は採用できない。 (3)もっとも,前記認定の被告らの安全配慮義務違反は,不法行為であるとともに債務不履行を構成するところ,債務不履行に基づく損害賠償請求権の消滅時効は10年であるから,原告らが同請求をすることを妨げるものではない。 争点4について(1)過失相殺ア被告らの安全配慮義務違反と亡Dの本件発症・死亡との間に因果関係が認められ,被告らが債務不履行責任を負うことは,前記認定判断のとおりである。 イしかしながら,亡Dは,店長として,本件店舗の従業員を指示監督する立場にあったのであるから,たとえ,店長として自ら率先して業務を行うことが求められる局面がある(前記店長職務基準にも「管理は実行であ,る。店長は実行する人である」との記載があることが認められる)と。 。 はいえ,他方,管理者としての指導力を発揮し,自己の負担を含め,従業員間の仕事の分担の適正さを図り,店舗全体としての業務の効率化を図ることも,その権限及び責務に照らし,求められていた。したがって,亡Dとしても,前述のとおり必ずしも指導や業務命令が徹底できなかった厨房部門を含め,店長として本件店舗における仕事量の配分や従業員に対する指示の方法ないし内容に意を用いて,自らの業務量を適正なものとし,休- も,前述のとおり必ずしも指導や業務命令が徹底できなかった厨房部門を含め,店長として本件店舗における仕事量の配分や従業員に対する指示の方法ないし内容に意を用いて,自らの業務量を適正なものとし,休- 33 -息や休日を十分にとって疲労の回復に努めるべきであり,前記認定にかかる本件店舗の経営状況・人間関係,業務内容等を勘案しても,当時の本件店舗がこれを行うことを期待できない状態にあったとはいえない。 これに加え,亡Dが適宜の機会をとらえ,被告らに対し,本件店舗の懸案事項と考えられるもの,すなわち,本件店舗の経営状況,従業員の不足・勤務状況及び自己の業務の状況等を申告するなどして,亡Dが被告らに対し,業務軽減のための措置を採るよう求めることもまた,店長の任務の内であり,これが不可能であったともいえない。 それにもかかわらず,亡Dは,穏やかな性格で,仕事を自ら引き受けるような面があったにせよ,結果として上記措置を採らず,すべて自己の負担に帰していたのであるから,店長としての業務遂行に当たって不十分な面があるとともに,自らの健康保持に対する配慮も十分ではなかったといわざるを得ない。 ウ以上に照らせば,亡Dには,本件死亡について一定の過失があったというべきであり,その割合は,2割と認めるのが相当である。 そこで,本件において被告らに賠償を命ずべき金額は,民法418条を適用して損害額の2割を減ずることが相当と認める。 (2)素因減額ア証拠(甲5,28,乙3,原告A本人)によれば,次の事実が認められる。 (ア)亡Dは,特段の既往症はなく,両親である原告らにも虚血性心疾患等の既往はない。そして,亡Dは,学生時代には,スポーツが好きで休日には野球を楽しむなどしており,特に健康上の問題を訴えたことはなかった。 (イ)亡Dは,大学在学中の平成8年4 らにも虚血性心疾患等の既往はない。そして,亡Dは,学生時代には,スポーツが好きで休日には野球を楽しむなどしており,特に健康上の問題を訴えたことはなかった。 (イ)亡Dは,大学在学中の平成8年4月8日,被告に入社後の平成9年4月2日,平成13年11月13日及び平成14年10月17日にそれ- 34 -ぞれ受診した健康診断においても,いずれも異常は見当たらず,健康上の問題を指摘されたこともなかった。すなわち,亡Dは,本件発症の約6か月前の平成14年10月17日の健康診断においても,身長173センチメートル,体重59.7キログラム,肥満度マイナス9.3パーセント,血圧130/72mmHg,尿検査正常,コレステロール値,中性脂肪値いずれも正常という結果であった。 (ウ)亡Dは,飲酒はするものの,日常的に多量に飲酒することはなく,喫煙習慣はなかった。 イ亡Dは,前記のとおり急性心筋梗塞により本件死亡に至ったと認められるところ,証拠(甲27)によれば,急性心筋梗塞は,遺伝素因として,両親又はいずれか一方の親に虚血性心疾患の既往があるときは子どもが虚血性心疾患になる頻度が高く,危険因子としては,高血圧,喫煙,高脂血症,肥満,糖尿病,運動不足,ストレス,性格(闘争的性格)等があるとされる。 しかしながら,亡Dは既往症ないし喫煙習慣がなく,これまで健康診断で異常を指摘されたこともない上,亡Dの両親である原告らにも虚血性心疾患等の既往がないことは,前記認定のとおりである。 。 したがって,亡Dには,本件発症の遺伝素因ないし危険因子である高血圧,喫煙,高脂血症,肥満,糖尿病があったとは認められない。 (乙3)ウもっとも,証拠(乙3)によれば,亡D(死亡当時29歳7か月)は,以前から冠動脈硬化症を有していたことが推認されるところではある。 しかしな 血症,肥満,糖尿病があったとは認められない。 (乙3)ウもっとも,証拠(乙3)によれば,亡D(死亡当時29歳7か月)は,以前から冠動脈硬化症を有していたことが推認されるところではある。 しかしながら,本件全証拠によっても,亡Dが被告らの業務に従事する以前から冠動脈硬化症を有していたことを認めることはできない。また,一般には,冠動脈の硬化は,年齢に従って徐々に進行するとされているところ,亡Dに認められた冠動脈硬化症が年齢に相応して認められる冠動脈- 35 -の硬化以上のものであったと認めるに足りる証拠はない。 エ以上に照らせば,亡Dが冠動脈硬化症を有していたことを本件発症につ,,いての減額事由として考慮することは相当ではなく同人の性格等を含め他に減額事由として考慮することが相当な事情は認められない。 争点5について(1)逸失利益5555万8316円証拠(甲11)によれば,本件死亡の前年である亡D(平成14年当時28歳)の平成14年分の給与総額は,417万6026円であることが認められるが,これは,同年産業計・企業規模計・男子労働者大卒の25歳から。 ,29歳までの平均給与総額437万2000円とおおむね一致するそして被告が,東京証券取引所・大阪証券取引所の第一部に上場されている企業であること,亡Dの本件死亡時の年齢(29歳7月,被告らにおける地位等)を併せ考えると,亡Dは,満67歳までの38年間にわたって,1年間に平成15年賃金センサス産業計・企業規模計・男子労働者大卒の平均収入である658万7500円を得られる蓋然性があるものと認められる。 また,前記認定の亡Dの生活状況に照らせば,逸失利益を算定するに当たって控除すべき生活費は,その全稼働期間を通じ,50パーセントが相当である。 以上を前提に,ライプニッツ方式で るものと認められる。 また,前記認定の亡Dの生活状況に照らせば,逸失利益を算定するに当たって控除すべき生活費は,その全稼働期間を通じ,50パーセントが相当である。 以上を前提に,ライプニッツ方式で中間利息を控除し,亡Dの逸失利益を算出すると,下記の計算式のとおり,5555万8316円となる(1円未満切捨て,以下同様。 )〔計算式〕658万7500×(1-0.5)×16.8678=5555万8316円(2)死亡慰謝料2400万円前記認定の亡Dの本件死亡に至る経緯,本件死亡時の年齢,身上関係,被告らにおける勤務の状況等その他一切の事情を考慮すると,亡Dの死亡慰謝- 36 -料は,2400万円が相当である。 (3)葬儀費用150万円証拠(甲12)によれば,原告らは,亡Dの葬儀費用として少なくとも214万5902円を支出したことが認められるが,このうち本件において支払を求めている150万円は,葬儀費用として本件労災と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 (4)過失相殺前述のとおり,本件では,亡Dにも2割の過失が認められるから,民法418条を適用して損害額の2割を減ずることが相当と認められる。 (5)素因減額等前記認定判断のとおり,認められない。 (6)損益相殺等ア遺族補償一時金前提事実記載のとおり,原告らは労災保険により,遺族補償一時金として934万円の支払を受けているが,同一時金は,労働者の被った財産上の損害のてん補のためにのみにされるものであるから,原告らの前記損害のうち逸失利益をてん補するものと認められる。 したがって,下記の計算式のとおり,前記逸失利益5555万8316円に2割の過失相殺をした金額から,遺族補償一時金を控除すると,残額は3510万6653円となる。 〔計算式〕5555万8316円× したがって,下記の計算式のとおり,前記逸失利益5555万8316円に2割の過失相殺をした金額から,遺族補償一時金を控除すると,残額は3510万6653円となる。 〔計算式〕5555万8316円×0.2=1111万1663円5555万8316円-1111万1663円=4444万6653円4444万6653円-934万円=3510万6653円イ葬祭料前提事実記載のとおり,原告らは,労災保険から葬祭料として59万5- 37 -200円の支払を受けているところ,これは,前記損害のうち葬儀関係費用をてん補するものと認められる。 したがって,葬祭料は,下記の計算式のとおり,前記葬儀費用150万円に2割の過失相殺をした金額から上記葬祭料を控除した60万4800円となる。 〔計算式〕150万円×0.2=30万円150万円-30万円=120万円120万円-59万5200円=60万4800円ウ労災保障上乗せ保険制度による受領金前記認定のとおり,原告らは,平成19年2月15日に被告の労災保障上乗せ保険制度により,500万円を受領しているから,同金額を控除する。 エ特別支給金被告は,労災保険による特別支給金(遺族特別支給金及び遺族特別一時金)の合計486万8000円も損害のてん補であるから,損害額から控除すべきであると主張する。 しかしながら,労災保険による特別支給金は,労働福祉事業の一環として,被災労働者の療養生活の援護等によりその福祉の増進を図るために行われるものであるから,被災労働者の損害をてん補する性質を有するということはできない。したがって,上記特別支給金を損害額から控除することは相当ではないから,被告の上記主張は採用できない。 (7)以上の差引き合計4991万1453円以上のとおり,過失相殺及び損益相殺を行った後の亡Dの損 って,上記特別支給金を損害額から控除することは相当ではないから,被告の上記主張は採用できない。 (7)以上の差引き合計4991万1453円以上のとおり,過失相殺及び損益相殺を行った後の亡Dの損害額は,下記の計算式のとおり合計4991万1453円となる。 〔計算式〕- 38 -過失相殺後の死亡慰謝料2400万円×0.2=480万円2400万円-480万円=1920万円過失相殺及び損益相殺後の合計3510万6653円+1920万円+60万4800円-500万円=4991万1453円(8)原告らの相続額各2495万5726円原告らは,亡Dの父母であるところ,相続により同人の上記損害賠償請求権を,それぞれ2分の1の割合で取得したから,その損害額は各2495万5726円である。 (9)弁護士費用各250万円本件事案の内容,本件の審理経過,認容額等に照らし,原告らの弁護士費用は,原告らそれぞれについて250万円を,本件と相当因果関係のある損害として認めるのが相当である。 (10)以上の結果,原告らの損害は,各2745万5726円となる。 (11)遅延損害金安全配慮義務違反の債務不履行に基づく損害賠償債務が履行遅滞となるのは,債務者が履行の請求を受けたときであるところ,前記認定のとおり,原告Aは,平成15年4月22日にJらに対し,本件死亡が過労死であるから誠実な対応をするように要求しているのであるから,本件の安全配慮義務違反の債務不履行に基づく遅延損害金発生の起算日は,請求の後であることが明らかな同年5月1日とするのが相当である。 第4 結論 以上のとおりであるから,原告らの本件請求は,債務不履行に基づく損害賠償金として,被告から原告らそれぞれに対し,2745万5726円及び平成15年5月1日から支払済みまで民法所定年5分 第4 結論 以上のとおりであるから,原告らの本件請求は,債務不履行に基づく損害賠償金として,被告から原告らそれぞれに対し,2745万5726円及び平成15年5月1日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支- 39 -払を求める限度で理由があるからこれらを認容し,その余の部分については理由がないから棄却し,被告の仮執行免脱宣言の申立ては,相当ではないからこれを却下することとする。 よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第15民事部裁判長裁判官田中敦裁判官池町知佐子裁判官上村海
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