主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人らの各請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴の趣旨主文と同旨。 2 答弁(1) 本件控訴を棄却する。 (2) 控訴費用は控訴人の負担とする。 第2 事案の概要,関連法規,審理の経過等 1 事案の概要本件は,Aの相続人である被控訴人らが,控訴人に対し,控訴人が平成9年12月10日付けで被控訴人らに対してしたAの相続にかかる下記(1),(2)の相続税更正処分及び過少申告加算税の賦課決定部分(以下「本件処分」という。)の取消しを求めた事案である。 (1) 被控訴人Bア平成6年4月12日の相続開始にかかる相続税の更正処分のうち,課税価格2億5991万2000円,納付税額1494万4100円を超える部分イ過少申告加算税の賦課決定部分(2) 被控訴人C及び同Dア同日の相続開始にかかる各相続税の各更正処分イ各過少申告加算税の賦課決定処分 2 関連法規の規定(1) 相続税法22条(評価の原則)この章で特別の定のあるものを除く外,相続,遺贈又は贈与に因り取得した財産の価額は,当該財産の取得の時における時価により,当該財産の価額から控除すべき債務の金額は,その時の現況による。 (2) 租税特別措置法ア 70条(国等に対して相続財産を贈与した場合等の相続税の非課税)第1項相続又は遺贈により財産を取得した者が,当該取得した財産をその取得後当該相続に係る相続税法第27条第1項又は第29条第1項の規定による申告書(括弧内省略)の提出期限までに国若しくは地方公共団体又は民法第34条の規定により設立された法人その他の公益を目的とする事業を営む法人のうち,教育若しくは科学の振興,文化の向上,社会福祉 よる申告書(括弧内省略)の提出期限までに国若しくは地方公共団体又は民法第34条の規定により設立された法人その他の公益を目的とする事業を営む法人のうち,教育若しくは科学の振興,文化の向上,社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定めるものに贈与(括弧内省略)をした場合には,当該贈与により当該贈与をした者又はその親族その他これらの者と相続税法第64条第1項に規定する特別の関係がある者の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められる場合を除き,当該贈与をした財産の価額は,当該相続又は遺贈に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入しない。 第2項前項に規定する政令で定める法人で同項の贈与を受けたものが,当該贈与があつた日から2年を経過した日までに同項に規定する政令で定める法人に該当しないこととなつた場合又は当該贈与により取得した財産を同日においてなおその公益を目的とする事業の用に供していない場合には,同項の規定にかかわらず,当該財産の価額は,当該相続又は遺贈に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入する。 イ第70条の2(贈与財産が公益事業の用に供されなかつた場合等の修正申告等)第1項前条第1項又は第3項の規定の適用を受けてこれらの規定に規定する相続又は遺贈に係る申告書を提出した者(その者の相続人及び包括受遺者を含む。)は,これらの規定の適用を受けた財産について同条第2項又は第4項に規定する事由が生じた場合には,これらの規定に規定する2年を経過した日の翌日から4月以内に国税通則法第19条第3項に規定する修正申告書を提出し,かつ,当該期限内に当該修正申告書の提出により納付すべき税額を納付しなければならない。 第2項前条第1項又は第3項の規定の適用を受けた者は,これらの規定の適用を受けた財産について同条 告書を提出し,かつ,当該期限内に当該修正申告書の提出により納付すべき税額を納付しなければならない。 第2項前条第1項又は第3項の規定の適用を受けた者は,これらの規定の適用を受けた財産について同条第2項又は第4項に規定する事由が生じたことに伴い当該財産の価額を相続税の課税価格に算入すべきこととなつたことにより,相続税法第27条又は第29条の規定による申告書を提出すべきこととなつた場合には,これらの規定にいう2年を経過した日の翌日から4月以内に国税通則法第18条第2項に規定する期限後申告書を提出し,かつ,当該期限内に当該期限後申告書の提出により納付すべき税額を納付しなければならない。 第3項前2項の規定により申告書を提出すべき者がこれらの申告書を提出しなかつた場合には,税務署長は,これらの申告書に記載すべきであつた課税価格,相続税額その他の事項につき国税通則法第24条若しくは第26条の規定による更正又は同法第25条の規定による決定を行う。 3 原審における被控訴人らの主張の要旨(1) 相続の開始及び被控訴人らと被相続人との身分関係Aは平成6年4月12日死亡した。被控訴人Bはその夫被控訴人C及び同Dはその子として相続人となった。 (2) 課税の経緯別紙「課税の経緯」のとおりである。 (3) 被控訴人らの相続税の申告内容被控訴人らは,平成6年11月16日,財団法人佐川交通社会財団(以下「佐川財団」という。)に対して,Aの相続(以下「本件相続」という。)により取得した四国佐川急便株式会社(以下「四国佐川」という。)の株式6000株(以下「本件株式」という。)を,佐川財団の基本財産に組み入れることを指定して寄付し(以下「本件寄付」という。),本件相続にかかる相続税(以下「本件相続税」という。)の申告に際し,租税特別措置法(平成6年4月 株式」という。)を,佐川財団の基本財産に組み入れることを指定して寄付し(以下「本件寄付」という。),本件相続にかかる相続税(以下「本件相続税」という。)の申告に際し,租税特別措置法(平成6年4月12日当時施行のもの,以下「措置法」という。)70条1項の適用を受けるべく,その旨を申告した。 (4) 本件処分の違法事由ア佐川財団は,租税特別措置法施行令40条の3第1項所定の法人であり,措置法70条1項所定の「政令で定める」法人に該当する。 イ控訴人は,本件株式を本件相続税の課税価格の計算の基礎に算入して本件処分をしたものであり,本件処分は,措置法70条1,2項の適用を誤った違法がある。 ウ四国佐川は,本件相続開始時,佐川急便株式会社(以下「佐川急便」という。)との合併手続を進めていたから,本件株式の時価は両社の合計純資産を基礎とすべきである。しかし,控訴人は,四国佐川の純資産価額のみを基礎として1株当たり14万2595円(6000株合計8億5557万円)として本件株式を評価し,本件処分をした。 4 原審における控訴人の主張の要旨(1) 被控訴人らの上記3(1)ないし(3)の事実は認め,同(4)の主張を争い,以下のとおり主張した。 (2) 本件処分は適法である。 ア本件株式価額の課税価格の計算基礎への算入の可否について本件株式の価額は,以下のとおり,本件相続税の課税価格の計算の基礎に算入される。 本件株式については,本件寄付から2年を経過した日までに配当がなかったから,佐川財団は,本件寄付から2年経過時まで本件株式を公益を目的とする事業の用に供していない。したがって,本件株式の価額は,措置法70条2項の規定により,本件相続に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入される。 イ本件株式の評価の適否について本件株式の価額は,1株当 用に供していない。したがって,本件株式の価額は,措置法70条2項の規定により,本件相続に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入される。 イ本件株式の評価の適否について本件株式の価額は,1株当たり14万2595円,総額8億5557万円と評価すべきである。 相続税等における財産の評価についての昭和39年4月25日付け直資56ほか国税庁長官通達(以下「評価基本通達」という。)に基づき,被控訴人らが選択した「評価方法」によって上記金額と評価できる。 5 原判決の判断の大要(1) 本件寄付があった時から2年間,本件株式の配当がなかったことをもって,佐川財団が本件株式を公益を目的とする事業の用に供していないといえるかどうかについて。 ア措置法70条2項の規定は,同条1項の贈与のあった日から2年を経過した日において,同項に規定する政令で定める法人に該当しないこととなった場合又は当該贈与により取得した財産を同日においてなおその公益を目的とする事業の用に供していない場合には,租税実体法上,その時点において,後発的に課税要件が変更することを意味するものである。 イ措置法70条2項所定の贈与があった日から2年を経過した日においてもなお贈与を受けた財産を法人がその公益を目的とする事業の用に供していないとの要件は,課税庁において具体的に主張立証すべき事由である。 ウ措置法70条1項の適用がある贈与が公益を目的とする事業を営む法人にあった場合には,通常の場合には,贈与の対象の財産は,法律上,確定的に法人の所有に帰し,完全にその支配下に入る。したがって,前記イの要件を,その財産をあくまでも直接に上記目的の事業の用に供しない場合と解すると,贈与の対象が金銭であれ,有価証券であれ,専らその法人内部の事情により後発的な課税要件の変更事由の発生の有無が決する の要件を,その財産をあくまでも直接に上記目的の事業の用に供しない場合と解すると,贈与の対象が金銭であれ,有価証券であれ,専らその法人内部の事情により後発的な課税要件の変更事由の発生の有無が決することになって不合理である。 エそこで,措置法70条1項の趣旨が,公益の目的の事業を営む法人に対して,相続や遺贈で取得した財産を寄付する者には,政策的に相続税を軽減することにあること,同条2項においては,同様の後発的課税要件の変更事由として,贈与を受けた日から2年間を経過した日までの間にその法人が同条1項所定の法人でなくなった場合が定められていること等にてらすと,対象となった財産に対する完全な支配の移転があった場合には,原則として,同条2項の公益を目的とする事業の用に供していないとの前記要件は問題にならず,各要件は,具体的には,例えば,この2年間のうちに贈与者がその財産を当該法人から廉価で買い戻したこと等の措置法70条1項を利用した相続回避行為が行われたような場合を意味するものと解するのが相当である。 オ以上の立場に立つと,本件において,佐川財団が本件寄付を受けてから2年間を経過した日までに本件株式について配当がなかったから,佐川財団は本件株式を公益を目的とする事業の用に供していないとの要件を充たすものと解することはできない。また,少なくとも,配当の有無によってこの要件を判断する合理的な理由は全くないといわざるを得ない(仮に,配当があっても,それだけでは,配当金が公益を目的とする事業の用に直接に供されたとはいえない。)。 (2) 本件処分の違法について本件寄付は,措置法70条1項の規定を充たすものである。同条2項の「事業の用に供していない」との要件を充たしたとの立証はない。したがって,本件処分には,本件株式を相続税の課税価格の計算の基礎に て本件寄付は,措置法70条1項の規定を充たすものである。同条2項の「事業の用に供していない」との要件を充たしたとの立証はない。したがって,本件処分には,本件株式を相続税の課税価格の計算の基礎に算入した点でいずれも違法があり,いずれも取消しを免れない。 (3) 結論被控訴人らの各請求はすべて認容すべきである。 6 原判決の上記判断を不服として被控訴人が控訴したのが本件である。 第3 争点及び当事者の主張 1 争点(1) 本件株式価額の課税価格の計算基礎への算入の可否。 (2) 本件株式の評価の適否。 (3) 本件相続税額の算定如何。 2 原審における当事者の主張原判決の事実欄の第二に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,次のとおり補正する。 (1) 原判決6頁7行目から末行目までの全部を次のとおり改める。 「(二)(1) 四国佐川の合併手続四国佐川は,被合併会社である関係会社数社とともに,合併会社である佐川急便と次の経過により合併手続進行中であった。 ア両会社は平成5年12月18日に合併期日を平成6年9月21日とする合併契約を締結した。これにより四国佐川は合併解散する。 イ両会社は平成6年1月8日に臨時株主総会において,合併を承認する決議をした。 ウ平成6年4月12日に本件相続が開始した。 エ平成6年9月21日に合併期日が到来した。 オ同月27日に合併登記がされた。 (2) 本件株式の特質とその時価の評価方法ア合併手続進行中の本件株式は,取引相場のない株式であり,合併契約以降は,現実に流通性,換金性を喪失している。このような株式についての課税時期における時価(客観的交換価値)の算出について,相続税財産評価関係通達には,合併という経済事情及び時価の重要な判定要因の変化に対応するものが存在しない。 イしたがって,評価 な株式についての課税時期における時価(客観的交換価値)の算出について,相続税財産評価関係通達には,合併という経済事情及び時価の重要な判定要因の変化に対応するものが存在しない。 イしたがって,評価基本通達6を適用すべきである。このような特別な事情のある本件株式に同通達179,178を適用することは,相続税法22条の定める時価主義に反するからである。 ウそこで,佐川四国及び佐川急便の各資産の合計額を基礎として本件株式の評価をする方法が上記のような特別の事情を反映させるものであって相当である。 (3) ところが,控訴人は,四国佐川の純資産価額のみを基礎として1株当たり14万2595円(6000株合計金8億5557万円)として本件株式を評価し,本件処分をした。」(2) 同7頁8行目全部を次のとおり改める。 「3(一) 請求原因3(二)(1)の事実は認める。 (二) 同3(二)(2)アの事実のうち,本件株式が取引相場のない株式であることは認め,その余は争う。同イ,ウの各主張は争う。 (三) 同3(二)(3)の事実は認める。」(3) 同9頁10行目の「相続税法22条」の前に「(一)」を加える。 (4) 同11頁4行目の末尾の次に行を改めて次のとおり加える。 「(二)(1) 相続税法22条と評価基本通達の趣旨相続税法22条の定める「時価」とは客観的な交換価格をいうが,これが一義的に確定されないため,実務的には評価基本通達に定められた画一的な評価方式によって評価している。これは納税者の間の公平,納税者の便宜,徴税費用の節減の観点から合理的と考えられるからである。 そうとすると,上記の評価方式を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって,かえって実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかな場合には,別の評価方式によることが許されるものと 。 そうとすると,上記の評価方式を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって,かえって実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかな場合には,別の評価方式によることが許されるものと解すべきである。 (2) 本件株式の評価と評価基本通達179適用の当否ア本件株式のような取引相場のない株式の評価については評価基本通達179がその原則的な評価方法を定めている。 イ本件株式は,平成6年9月27日の合併を予定された取引相場のないものであり,合併予定との事情がその価格に影響を与えるとしても,これがどの程度のものであるかの主張立証はない。したがって,本件において評価基本通達179を適用することが,実質的な租税負担の公平を著しく害するような事情があるとはいえない。 (3) 被控訴人らの主張する評価方式の妥当性ア被控訴人らは,本件株式の評価を市場価格による時価評価をすべきであると主張するが,最終的には純資産価額による評価方法をとるべきであるとしている点で,主張に一貫性がない。 イしかも,本件株式の評価時は合併以前であるのに,その評価の基礎として佐川急便の純資産価格を加算する誤りがあり,合理的ではない。」(5) 同11頁5行目の「原告の反論」から6行目全部を次のとおり改める。 「 被控訴人らの反論 1 控訴人の主張1の事実は認める。同2(二)の事実は認め,同(三)の主張は争う。」(6) 同12頁8行目から10行目までの全部を削る。 3 争点(1)についての当審における控訴人の主張(1) 措置法70条等の趣旨ア相続税は,自然人の死亡に伴う相続又は遺贈により財産を取得した相続人等に対して,その取得財産の合計額を課税標準として課される(相続税法1条,2条)。このことは相続人等が取得した相続財産等を相続後どのように処分しようとも,変わ 相続又は遺贈により財産を取得した相続人等に対して,その取得財産の合計額を課税標準として課される(相続税法1条,2条)。このことは相続人等が取得した相続財産等を相続後どのように処分しようとも,変わらない。 しかし,措置法70条は,上記のとおり,これと異なる内容を定めているが,その趣旨は,国が科学又は教育の振興を重要な施策として取り上げ,これを推進するため税制面において優遇措置をとり,科学又は教育の振興等公益性の高い事業の保護育成を図るところにある。 したがって,措置法70条1項は,単に相続財産を特定の公益法人等に贈与したことによって政策的に相続税を軽減したものではなく,同条2項と相まって,その贈与が現実に教育若しくは科学の振興,文化の向上,社会福祉への貢献その他の公益の増進に現に寄与している場合に限って,政策的に相続税を軽減したものと解すべきである。 イそうすると,措置法70条1項,2項は,当該贈与のあった日から2年を経過した日においてその贈与財産が公益の用に供されているかどうかを判断し,これが充たされない場合には,相続税法の基本原則に戻り課税財産とすることも併せて定めたものと解すべきである。 (2) 株式についての事業供用要件及び本件株式ア措置法70条2項の「公益を目的とする事業の用に供」するとは,公益を目的として自らの危険と計算において継続的に行う事業のために,その物の本来の用法に従って使用されることをいうものと解される。株式の場合は,その本来の用法に従った使用として,配当を受けてこれを公益事業に供用することのほか,これを売却又は担保提供し,その代金等を公益事業に使用することも含まれる。 イ本件株式は,贈与時の平成6年11月16日から後の2年間において,配当がされたことはないし,売却,担保提供されたこともない。すなわち,本件 保提供し,その代金等を公益事業に使用することも含まれる。 イ本件株式は,贈与時の平成6年11月16日から後の2年間において,配当がされたことはないし,売却,担保提供されたこともない。すなわち,本件株式は,佐川財団の行う公益を目的とする事業の用に供されなかったものであるから,措置法70条2項に該当するものである。(3) 原判決の誤りア前記第2,5(1)エの判示部分について(ア) 措置法70条2項には原判決のような限定解釈を示唆するような文言は見当たらない。かえって,措置法70条1項は「当該贈与により当該贈与をした者又はその親族その他これらの者と相続税法64条1項に規定する特別関係がある者の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められる場合を除き」と規定し,租税回避目的の場合に同項の適用が否定されることを明文で示しているのである。措置法70条2項が,原判決のいうような場合に限って適用されるというのであれば,この規定と重複する意味のない規定であるということになる。 (イ) 原判決のいうように贈与の対象財産の完全な支配の移転があった場合には,それ以上の要件を要求しないのが,措置法70条2項の趣旨だというのであれば,その立法当初において,端的に「贈与の履行(引渡し,支払い等)が行われていない場合」などと定められたはずである。しかし,実際には立法にあたり,「公益を目的とする事業の用に供していない」という要件が設けられたのである。 イ上記第2,5(1)ウの判示部分について(ア) 措置法70条2項の規定の仕方からすれば,もともと,本件特例が認められない場合を専ら特定公益法人側の事情によって規定しているのである。同条項が,事業供用要件以外にも「(特定公益法人が)当該贈与があった日から2年を経過した日までに(特定公益法人に)該当しない 認められない場合を専ら特定公益法人側の事情によって規定しているのである。同条項が,事業供用要件以外にも「(特定公益法人が)当該贈与があった日から2年を経過した日までに(特定公益法人に)該当しないことになった場合」を挙げていることからも裏付けられる。 (イ) 法が一定の政策目的によって,課税の減免規定を設ける場合において,これを納税者のコントロールの及ばない客観的条件にかからしめ,あるいは,第三者の行為にかからしめたとしても,それは立法政策の問題であって,立法裁量の範囲内に属するものというべきである。 措置法70条2項の上記3,(1)アの立法目的からして,そこで定められた減免の要件は合理的なものであって,立法裁量を逸脱するものではない。 (ウ) また,贈与者においては,贈与財産の性質等から供用の可否を通常予測し得るし,本件特例を受けようとする者は,贈与契約の締結にあたり,条件ないし負担を付するなどの方法により「公益を目的とする事業の用に供すること」を確保し得るのであるから,このような規定が納税者に著しく酷になるものでもない。 しかも,贈与者に対しては,少なくとも贈与財産が公益目的に寄与したか否かによって課税関係が左右されるというそのこと自体は明らかにされていることから予測を裏切ることはない。贈与財産について公益目的に寄与したかどうかという明確な基準によって,課税の有無が決定するので,納税者間にも不公平は生じない。措置法70条2項に不合理な点はないのである。 (エ) 措置法70条2項と同様に,第三者の行為によって課税関係が左右される制度は,措置法31条の2(優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例)第3項(乙9),同40条(国等に財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税)1項後段,措置法施行令25条の17第2 31条の2(優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例)第3項(乙9),同40条(国等に財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税)1項後段,措置法施行令25条の17第2項2号などがあり,このような制度は法70条2項に限ったことではない。 4 争点(1)についての当審における被控訴人らの主張(1) 措置法70条1項と同法40条の要件の違い措置法40条は受贈者である公益法人を法令が特定せず,2年以内の事業の供用を原則としている点で,措置法70条1項と異なる。措置法70条1項が受贈者を特定することにより「贈与が公益増進に著しく寄与すること」の要件を消化している。その意味で,これを現実化した「事業供用」の要件も消化され,原則的に不要となっている。 したがって,「事業供用」の解釈にあたって,措置法40条は原則としての「事業供用」が,直接的「事業供用」と解する余地があるも,措置法70条の原則であるすべての財産贈与に適用がある場合の1項の例外としての同2項の「事業供用」は,おのずから異なる解釈が必要となる。つまり,例外規定である以上,1項の適用を排除すべき事例が想定されるものでなければならず,これは,1項の適用を利用して事後的に租税軽減を図る行為に限定解釈されなければならない。 (2) 株式と事業供用ア原判決が贈与の「対象となった財産の完全な支配の移転があったことにより,事業供用要件を充たす」としたのは当然である。なぜなら,株式のような財産が基本財産に組み入れられ,資産が増加し充実したことが,すなわち「事業供用」と考えられるからである。 イこれに対し,控訴人は,株式の事業供用があるというためには,その配当を受領するか,株式処分による資金を具体的な事業資金としなければならないとすることを主張する。しかし,この主張は るからである。 イこれに対し,控訴人は,株式の事業供用があるというためには,その配当を受領するか,株式処分による資金を具体的な事業資金としなければならないとすることを主張する。しかし,この主張は以下の点からしても,正当ではない。 (ア) 租税法は実体法を支配しない。控訴人の主張によれば,配当受領か株式処分を強制し,これがない場合は課税するとの趣旨となる。本末転倒で,税法の実体法支配の解釈である。 (イ) 措置法70条2項が同条1項の例外規定であることから考えて,当然ながら1項が実体法に沿った課税関係を規定するものであるのに反し,突然,実体法による事後的変動を要求し,これがない場合,1項を無視し非課税を撤回するものとする,法理無視の解釈に至る控訴人の論理は,法解釈の基礎を理解しないものである。 (ウ) 措置法40条との解釈の不一致措置法40条は,公益法人に対する贈与行為の要件を規定している。控訴人は,法40条の適用にあっては,2年以内の事後的処分そのものが「事業供用」を否定する要件とするにもかかわらず,70条2項の解釈にあっては「株式」の処分を前提とする立論をとり,その場合には逆に「事業供用」を認める要件とする。被控訴人が,ここにきて論理,法理ではなくかつ租税法律主義の原則をも無視し,課税の結論のみを得ようとしていることが明白となっている。 (3) 控訴人の上記3(3)イの主張についてア原判決は,措置法70条2項が,同条1項の例外であり,租税法律主義の下での例外適用に,納税者に不利益,不合理な解釈,事実認定を許されないとする当然の法理を宣明したものである。 イ上記3(3)イ(イ)の主張に対し贈与者以外の者の行為にかからしめる課税の適否の合理性について,原審が「課税庁において具体的に主張立証すべき事由であるといわざるを得ない」とし したものである。 イ上記3(3)イ(イ)の主張に対し贈与者以外の者の行為にかからしめる課税の適否の合理性について,原審が「課税庁において具体的に主張立証すべき事由であるといわざるを得ない」としたまでで法理にかなうし,それは立法政策の問題ではなく,まさに法解釈の問題である。 ウ上記3(3)イ(ウ)の主張に対し贈与者が後発的事実を予想できるか否かの問題ではなく,「事業供用」の有無,すなわち「株式」を基本財産組入れをしたまま2年を経過したことが「事業供用」に該当しないか否かであり,また,これに対する課税が合理的な法解釈の範囲内の事実か否かの問題であり,控訴人の主張は筋違いである,エ上記3(3)イ(エ)の主張に対し控訴人のいう「第三者」は,贈与当事者の受贈者をも第三者と表現し,これを立論しようとしている。措置法31条の2第3項,同法40条1項後段は,いずれも,贈与当事者である受贈者ないし売買当事者である買受人の事後的行為ないし,これら当事者が当然に理解している行為により非課税の撤回が可能とする構造であり,予想支配できない当事者以外の第三者の行為(本件の場合,株式配当の決定は株式発行会社である。)により課税関係が左右されるものではない。 第4当裁判所の判断 1 争いのない事実以下の事実は当事者間に争いがない。 (1) 請求原因1の事実(原判決4頁9行目から10行目まで)。 (2) 同2の事実(同4頁末行目から5頁4行目まで)。 (3) 同3(一)(1)の事実(同5頁6行目から6頁1行目まで)。 (4) 控訴人主張1の事実(同7頁10行目から末行目まで)。 (5) 控訴人主張2(二)の事実(同9頁3行目)。 (6) 請求原因3(二)(1)の事実(本判決第3,2(1))。 (7) 本件株式は取引相場のない株式である。 (8) 請求原因3(二 末行目まで)。 (5) 控訴人主張2(二)の事実(同9頁3行目)。 (6) 請求原因3(二)(1)の事実(本判決第3,2(1))。 (7) 本件株式は取引相場のない株式である。 (8) 請求原因3(二)(3)の事実(本判決第3,2(1))。 2 事実の経過と争点(1) 以上の当事者間に争いのない事実並びに弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア Aは平成6年4月12日に死亡し,その夫である被控訴人B,その子である被控訴人C及び同Dがその相続人となった。 イ被控訴人らは,平成6年11月16日,佐川財団に対し,本件相続により取得した四国佐川の株式6000株(本件株式)を,佐川財団の基本財産に組み入れることを指定して寄付した(本件寄付)。 ウ被控訴人らは,平成6年12月9日に次のとおり本件相続税の申告をした。 (ア) 被控訴人Ba 取得財産の価額 3億3029万1923円b 債務控除額 7037万9320円c 課税価格 2億5991万2000円d 納付すべき税額 1494万4100円(イ) 被控訴人Ca 取得財産の価額 0円b 債務控除額 0円c 課税価格 0円d 納付すべき税額 0円(ウ) 被控訴人Da 取得財産の価額 0円b 債務控除額 0円c 課税価格 0円d 納付すべき税額 0円エ被控訴人らは上記ウの申告書中に本件株式について措置法70条1項の適用を受けようとする旨の記載をした。 オところが,本件株式(佐川四国の6000株で,合併後の佐川急便の1200株)については,本件寄付のあった平成6年11月16日から2年を経過 措置法70条1項の適用を受けようとする旨の記載をした。 オところが,本件株式(佐川四国の6000株で,合併後の佐川急便の1200株)については,本件寄付のあった平成6年11月16日から2年を経過した日まで配当がされなかった。 カそこで,控訴人は,本件株式はその日においても公益を目的とする事業に供されているとは認められないとして,その相続開始時の価額である8億5557万円を本件相続税の課税価格に算入して所要の税額計算をしたうえ,平成9年12月10日付けで,以下のとおり本件処分をした。 (ア) 被控訴人Ba 取得財産の価額 7億5807万6923円(3億3029万1923円+8億5557万円×0.5)b 債務控除額 7037万9320円(申告金額)c 課税価格(a-b) 6億8769万7000円(7億5807万6923円-7037万9320円 )(1000円未満切り捨て。以下同じ。)d 納付すべき税額 4938万7100円(イ) 被控訴人Ca 取得財産の価額 2億1389万2500円(8億5557万円×0.25)b 債務控除額 0円(申告金額)c 課税価格(a-b) 2億1389万2000円(2億1389万2500円-0円)d 納付すべき税額 1216万7000円(ウ) 被控訴人Da 取得財産の価額 2億1389万2500円(8億5557万円×0.25)b 債務控除額 0円(申告金額)c 課税価格(a-b) 2億1389万200円(2億1389万2500円-0円)d 納付すべき税額 1216万7000円キ被控訴人らは,本件株式の価額を本件相続税の課税価格の計算の基礎に算入すべきでないと主張し,これを算入して本件相続税額を決定し 500円-0円)d 納付すべき税額 1216万7000円キ被控訴人らは,本件株式の価額を本件相続税の課税価格の計算の基礎に算入すべきでないと主張し,これを算入して本件相続税額を決定した本件処分の取消しを求めているものである。 (2) 以上の事実経過等からして,本件における第一次的な争点は,争点(1)の「本件株式価額の課税価格の計算基礎への算入の可否」である。これが肯定されるときは,争点(2)の「本件株式の評価の適否」及び同(3)の「本件相続税額の算定如何」を検討すべきことになる。 そこで,以下この順序で当裁判所の判断を進めることにする。 3 争点(1)について(1) 相続税法の定めア相続又は遺贈により財産を取得した者がある場合,その者が相続又は遺贈により取得した財産の全部に対し,相続税を課する(1条,2条)。しかし,宗教,慈善,学術その他公益を目的とする事業を行う者で政令で定めるものが相続又は遺贈により取得した財産で当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの(12条1項3号)等の財産の価額は,相続税の課税価格に算入しない(12条1項)。ただし,12条1項3号に掲げる財産を取得した者がその財産を取得した日から2年を経過した日において,なお当該財産を当該公益を目的とする事業の用に供していない場合においては,当該財産の価額は,課税価格に算入する(12条2項)。 イ以上のとおり,相続税法は,相続又は遺贈により取得した財産全部に対し相続税を課するのを原則とし,公益目的ないし社会政策的な見地から例外的に一定の財産を課税対象から除外しているものと考えられる。 (2) 措置法の定めア 70条1項の規定は,前記第2,2(2)アのとおりである。この規定に基づいて,相続又は遺贈により取得した財産の価額を相続税における課税価格の ら除外しているものと考えられる。 (2) 措置法の定めア 70条1項の規定は,前記第2,2(2)アのとおりである。この規定に基づいて,相続又は遺贈により取得した財産の価額を相続税における課税価格の計算基礎に算入しない要件を略説すると,次のとおりである。 (ア) 取得した財産を国,地方公共団体,公益目的法人で政令に定める法人に贈与すること。 (イ) 取得後法定の申告書の提出期限までに贈与すること。 (ウ) 贈与者,その親族,これらの者と所定の関係がある者の税負担が不当に減少する結果となると認められないこと。 イ 70条2項の規定は,前記第2,2(2)アのとおりである。この規定に基づいて,同条1項の規定に該当する贈与がされた財産の価額を相続税における課税価格の計算基礎に算入する要件を略説すると,次のとおりである。 (ア) 贈与を受けた者が公益目的法人で政令に定める法人であること。 (イ)a この法人が贈与日から2年を経過した日までに上記法人に該当しないこととなつたこと。 b 又は贈与財産を同日においてなおその公益を目的とする事業の用に供していないこと。 ウこの措置法70条1項,2項の規定は,基本的には相続税法12条と同じ性格を持ち,相続又は遺贈によって取得された財産に対し相続税が課されない例外を加えるものと解される。この規定の立法趣旨は,上記のような目的を持つ法人で,教育又は科学の振興等に著しく貢献するものに対する寄付を促進し,もって我が国における教育又は科学の振興等を図ろうとするところにある(乙7)。したがって,概括的にいえば,上記のような立法趣旨を実現することができない場合には,非課税とする理由はなく,原則に戻って相続税を課すべきである。 (3) 検討と当裁判所の立場ア以上のような相続税法の課税原則,一定財産に対する非課税制度の趣旨・目 実現することができない場合には,非課税とする理由はなく,原則に戻って相続税を課すべきである。 (3) 検討と当裁判所の立場ア以上のような相続税法の課税原則,一定財産に対する非課税制度の趣旨・目的,措置法70条1項,2項の内容,構造等にかんがみると,措置法70条2項にいう「公益を目的とする事業の用に供していない場合」とは,租税回避行為のほか,当該贈与の対象となった財産をその性格にしたがって当該事業の用に供するために実際に使用収益処分していない場合をいうものと解するのが正当である。 イこの点について,被控訴人らは,要旨次のように主張する。 (ア) 措置法70条1項は,受贈者を特定することにより「贈与が公益増進に著しく寄与すること」の要件を消化している。その意味で,これを現実化した同条2項の「事業供用」の要件も消化され原則的に不要となっている。 (イ) したがって,措置法70条2項の「事業供用」要件については,1項の適用を利用して事後的に租税軽減を図る行為に限定解釈されなければならない(原判決も同旨である。)。 (ウ) 贈与の「対象となった財産の完全な支配の移転があったことにより事業供用要件を充たす」(原判決)とすべきである。なぜなら,株式のような財産が基本財産に組み入れられ,資産が増加し充実したことが「事業供用」に当たるからである,と。 ウしかし,以下のとおり,措置法70条1項に該当する贈与がされたことによって,同条2項所定の「その公益を目的とする事業の用に供し」たといえるとの被控訴人らの主張は採用できない。 (ア) 第1に,措置法70条は,1項で相続税の非課税の要件を定めたうえで,さらに2項で非課税を排し課税要件を定めているのである。 このような規定の文言,内容,構造等からして,1項の要件を充たす贈与がされた場合,つまり,上記の公益 項で相続税の非課税の要件を定めたうえで,さらに2項で非課税を排し課税要件を定めているのである。 このような規定の文言,内容,構造等からして,1項の要件を充たす贈与がされた場合,つまり,上記の公益目的法人等が相続又は贈与によって財産を取得した(権利移転に必要な行為が終了したことを意味すると考えられる。)場合には,原則的に2項の課税要件を充たすものではないこと,つまり,これらの財産が当然に「その公益を目的とする事業の用に供」されたとの要件が充足されると理解することはできない。被控訴人らの主張するような理解はあまりにも,各規定の文言等に反するからである。 (イ) 措置法70条と同様の性格を持つ相続税法12条の規定は前記のとおりである。 この規定によっても,宗教,慈善,学術その他公益を目的とする事業を行う者で政令で定めるものが相続又は遺贈により取得した財産についても,これが当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なものとしても,当然には,当該公益を目的とする事業の用に供しているとは規定していないのである(相続税法12条2項)。 (ウ) 実際上も,金銭,債権,株式,無体財産権等の財産が上記公益目的の法人に贈与され,権利の移転に必要な行為が終了したとしても,現実にその事業目的に使われない事態を想定することができる。 確かに,これらの財産について上記公益目的の法人に対する権利の移転に必要な行為が終了しただけでも,当該法人の資産が増加するのが普通である(ただし,本件では,被控訴人らは本件株式の価額は零であると主張しているから,事情が違う。)から,当該法人にとっては有用であることは否定できない。被控訴人らは,この権利の移転が終わっただけの状態で措置法70条2項にいう「その公益を目的とする事業の用に供」していると認められると主張する。 しか 当該法人にとっては有用であることは否定できない。被控訴人らは,この権利の移転が終わっただけの状態で措置法70条2項にいう「その公益を目的とする事業の用に供」していると認められると主張する。 しかし,この権利の移転が終わっただけの状態は,措置法70条1項の贈与がされたことや,相続税法12条の相続又は贈与を受けたことを意味するにすぎない。 措置法,相続税法がさらに「その公益を目的とする事業の用に供していない場合」を規定していることからして,いわば権利の移転が終わった状態では,「その公益を目的とする事業の用に供し」たとはみていないことが明らかである。 (エ) 贈与の対象となった財産の権利移転が終わった状態では,措置法70条1項,2項の目指す立法目的がほとんど実現されず,その趣旨が生かされないし,実際上も名目上の贈与行為による租税回避を避けることができない。 なお,先にも述べたように,本件においては,被控訴人らは本件株式の価額は零であると主張しているから,被控訴人らの主張による限り,その権利が佐川財団に移転したとしても,その資産が増加したとはいえず,いかなる意味でも佐川財団の事業に資するものがあったとはいえない。 (オ) 以上のいずれの点からしても,被控訴人らの上記主張は採用できないものである。 エなお,上記イ(イ)のように理解しないと,贈与の対象が金銭であれ,有価証券であれ,専らその法人内部の事情により後発的な課税要件の変更事由の発生の有無が決することになって明らかに不合理である(原判決)との見解は採用できない。 前記のとおり,相続税法は,相続又は遺贈により取得した財産の全部に対し,相続税を課するのを原則としている。取得財産を贈与その他どのように処分しようとも,これに相続税を課することとしている。しかし,贈与の相手方が措置法70条1項所定 遺贈により取得した財産の全部に対し,相続税を課するのを原則としている。取得財産を贈与その他どのように処分しようとも,これに相続税を課することとしている。しかし,贈与の相手方が措置法70条1項所定の法人であるなどの場合は,相続税が非課税とされているのである。この非課税とされる要件自体が,財産取得者からいえば,第三者である法人の事情にかかるのである。したがって,措置法70条2項は,前記3,(2)イ(イ)aのとおり,非課税とすべき理由のなくなった法人側の事情によって課税すると規定している。このように第三者の行為によって課税関係が左右される規定は措置法においても他にみられ(例えば,措置法40条1項後段),なんら不合理,不当とすべきものではない。 (4) 本件における法の適用(まとめ)ア措置法70条1項の適用の有無(ア) 前記のとおり,被控訴人らは平成6年4月12日にAから本件株式等の財産を相続により取得した。その後10か月以内(相続税法27条の申告書提出期限内)の日である平成6年11月16日に佐川財団に対し本件寄付をした。 (イ) 佐川財団が措置法70条1項にいう「民法第34条の規定により設立された法人その他の公益を目的とする事業を営む法人のうち,教育若しくは科学の振興,文化の向上,社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するもの」であることは,控訴人が明らかに争わないのでこれを自白したものとみなす。 (ウ) また,本件寄付が,同条項にいう「当該贈与により当該贈与をした者」らの「相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められる場合」であるとの主張立証もない。 (エ) したがって,本件寄付及びその旨の記載を含めた被控訴人らの前記申告書の提出等は,措置法70条1項,5項の規定の適用を受けるべきものであったと認められる。 イ同法 あるとの主張立証もない。 (エ) したがって,本件寄付及びその旨の記載を含めた被控訴人らの前記申告書の提出等は,措置法70条1項,5項の規定の適用を受けるべきものであったと認められる。 イ同法70条2項の適用の有無(ア) 佐川財団は平成6年11月16日に被控訴人らから本件寄付を受けたが,その後2年間を経過した日まで本件株式について配当を受けたことがないほか,これを使用収益処分したことがないものと認められる(弁論の全趣旨)。したがって,措置法70条1項にいう公益を目的とする法人である佐川財団が「当該贈与により取得した財産(本件株式)を同日においてなお公益を目的とする事業の用に供していない」と認められる。 (イ) そうすると,措置法70条2項の適用があり,同条1項の規定にかかわらず,本件株式の価額は,本件相続税の課税価格の計算の基礎に算入するべきである。 4 争点(2)について(1) 相続税法の定めと評価基本通達ア相続税法22条の規定は,前記第2,2(1)のとおりである。そこでいう「当該財産の取得の時における時価」とは客観的な交換価格をいうものと解される。 イ評価基本通達の概要(本件に関連する部分のみ)は別紙「評価基本通達」のとおりである。 (2) 争いのない事実等と本件株式の価額の評価方法についての当事者の主張ア本件相続の開始時においては,四国佐川が請求原因3(二)(1)(本判決第3,2(1))のとおり合併手続中であったこと,本件株式は取引相場のない株式であること,控訴人が,四国佐川の純資産価額のみを基礎として1株当たり14万2595円(6000株合計金8億5557万円)として本件株式を評価し,本件処分をしたことは,いずれも当事者間に争いがない。 なお,四国佐川は,評価基本通達178でいう大会社にあたることが認められる(乙 5円(6000株合計金8億5557万円)として本件株式を評価し,本件処分をしたことは,いずれも当事者間に争いがない。 なお,四国佐川は,評価基本通達178でいう大会社にあたることが認められる(乙1)。 イ控訴人は,これらの事実を前提にしても,評価基本通達178,179によって本件株式の価額を評価するのが相当であると主張する。 これに対し,被控訴人らは、上記アの事実等からして,本件株式の価額の評価においては,評価基本通達6によって国税庁長官の指示を受けるべきであるとしながら,最終的には評価基本通達179の(1)に定める「1株当たりの純資産価額」によって評価するのが相当とし,ただこの「純資産額」には四国佐川及び佐川急便の純資産額を合算すべきであると主張する。 (3) 判断ア以上の相続税法の規定,評価基本通達の趣旨,内容,当事者の主張からして,本件株式の価額の評価においては評価基本通達179の(1)に定める「1株当たりの純資産価額」による評価方法を採用するほかないであろう。 一般的に評価基本通達にしたがって財産の評価をするのを原則とすることが,納税者の間の公平,納税者の便宜,徴税費用の節減の観点から合理的と考えられるうえ,本件では,被控訴人らがその方法を選択しているからである。 イそこで,この「1株当たりの純資産価額」による評価方法を採用する場合に,上記(2)アのような本件に特有の事情を考慮して被控訴人らの主張するように「純資産額」を四国佐川及び佐川急便の純資産額の合算額とすべきであるかどうかについて検討する。 確かに,上記のように合併手続中である四国佐川の株式の価額は,それ以前と比較して,合併相手方の会社の資産,経営状況等の諸事情によって相当な影響を受けることは容易に推認することができる。しかし,本件株式が取引相場のない株式であ 中である四国佐川の株式の価額は,それ以前と比較して,合併相手方の会社の資産,経営状況等の諸事情によって相当な影響を受けることは容易に推認することができる。しかし,本件株式が取引相場のない株式であることなどから,本件において上記の特有の事情が本件株式の価額にどの程度の影響を与えたかを的確に認定するに足りる証拠はない。したがって,本件株式の価額が本件相続開始時である平成6年4月12日の時点ですでに零にまで落ち込んだと認めるべき証拠もない。 また,四国佐川と佐川急便の合併の法的効果が発生したのは,合併登記がされた平成6年9月27日であるから,それ以前における四国佐川の「純資産額」は佐川急便のそれを合したものでないことはいうまでもない。 これらの諸点を総合考慮すると,四国佐川一社の「純資産額」を基準にして上記評価基本通達179の(1)に定める「1株当たりの純資産価額」による評価方法を採用するときは,現に合併手続中であることによる価額への影響を反映しないきらいがあることは否定できない。しかし,被控訴人らの主張するように「純資産額」を四国佐川と佐川急便の純資産額の合算額としても,実勢を過大に評価反映するとの批判を免れないであろう。 このようないわば二律背反のような特殊な事情にあるうえ、他に適切・合理的な評価方法を見い出しにくい状況にてらすと,むしろ原則に回帰し,恣意性のおそれの少ない評価方法,すなわち,四国佐川一社の「純資産額」を基準にして上記評価基本通達179の(1)に定める「1株当たりの純資産価額」による評価方法を用いるのが相当であって,上記のような難点があるとしても,これを違法とするには至らないというべきである。 よって,この点においても,被控訴人らの主張は採用できない。 ウ上記の評価方法によると,本件株式の相続開始時における価額は8 うな難点があるとしても,これを違法とするには至らないというべきである。 よって,この点においても,被控訴人らの主張は採用できない。 ウ上記の評価方法によると,本件株式の相続開始時における価額は8億5557万円であると認められる(甲1の14表)。 5 争点(3)についてこれまで説示してきた当裁判所の立場に立って本件相続税額を算出すると以下のとおりとなる。 (1) 被控訴人らの取得財産の価額ア被控訴人B 7億5807万6923円(以下のa+b)内訳 a 3億3029万1923円(甲1の15表)b 4億2778万5000円=8億5557万円(本件株式の価額)×0.5(法定相続分,なお,相続税法55条)イ被控訴人C 2億1389万2500円内訳 8億5557万円(同上)×0.25(法定相続分,なお,相続税法55条)ウ被控訴人D 2億1389万2500円内訳 8億5557万円(同上)×0.25(法定相続分,なお,相続税法55条)(2) 債務及び葬式費用(甲1)ア被控訴人B 7037万9320円イ被控訴人C 0円ウ被控訴人D 0円(3) 課税価格ア被控訴人B 6億8769万7000円(7億5807万6923円-7039万9320円)イ被控訴人C 2億1389万2000円ウ被控訴人D 2億1389万2000円(4) 基礎控除額を控除した後の課税遺産総額(相続税法15条)11億1548万1000円((3)ア+イ+ウ)-8000万円(基礎控除額) 被控訴人D 2億1389万2000円(4) 基礎控除額を控除した後の課税遺産総額(相続税法15条)11億1548万1000円((3)ア+イ+ウ)-8000万円(基礎控除額)=10億3548万1000円(5) 相続税の総額(相続税法16条)4億2391万4000円=以下のア+イ+ウア被控訴人B 10億3548万1000円×0.5×相続税法16条所定の税率=2億3544万4000円イ被控訴人C 10億3548万1000円×0.25×相続税法16条所定の税率=9423万5000円ウ被控訴人D 10億3548万1000円×0.25×相続税法16条所定の税率=9423万5000円(6) 相続税額(相続税法17条)ア被控訴人B 2億6134万4107円4億2391万4000円×0.61650026567(6億8769万7000円÷11億1548万1000円)イ被控訴人C 8128万4946円4億2391万4000円×0.19174867164(2億1389万2000円÷11億1548万1000円)ウ被控訴人D 8128万4946円4億2391万4000円×0.19174867164(2億1389万2000円÷11億1548万1000円)(7) 納付すべき額(相続税法19条の2,1項)ア被控訴人B 4938万7100円2億6134万4107円-(4億2391万4000円×0.5)=4938万7100円イ被控訴人C 8128万4900円ウ被控訴人D 8128万4900円(8)過少申告加算税(国税通則法65条1項,2項)ア被控訴人B イ被控訴人C 8128万4900円ウ被控訴人D 8128万4900円(8)過少申告加算税(国税通則法65条1項,2項)ア被控訴人B 441万8500円344万4000円+97万4500円イ被控訴人C 1216万7000円812万8000円+403万9000円ウ被控訴人D 1216万7000円812万8000円+403万9000円 6 まとめ以上と同旨の本件処分は適法であって,これを取り消すべき違法の点はないというべきである。 第5 結論そうすると,被控訴人らの本件各請求は理由がなく棄却すべきものである。これと異なる原判決は相当でなく,これを取り消したうえ,被控訴人らの各請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第10民事部裁判長裁判官大出晃之裁判官水口雅資裁判官高橋善久
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