主文 1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 2 上記の部分につき,被控訴人の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を次のとおり変更する。 2 被控訴人の請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要(以下,略語は,特に断りのない限り,原判決の例による。ただし,原判決中「被告教育委員会」とあるのはいずれも「処分行政庁」と読み替える。) 1 本件は,被控訴人が,①処分行政庁が被控訴人に対してした本件処分(本件図書館の利用及び入館を禁止する処分)は違法であると主張して,控訴人に対し,本件処分の取消しを求め(本件処分取消請求),②控訴人の職員が本件処分等により被控訴人を差別的に取り扱い,かつ被控訴人の公文書開示請求書を紛失し,それらにより被控訴人が精神的苦痛を被ったなどと主張して,控訴人に対し,国家賠償法1条1項又は民法709条に基づき,慰謝料40万円及びこれに対する違法行為・不法行為後の令和元年11月21日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(本件損害賠償請求)事案である。 原審が,本件処分取消請求を認容し,本件損害賠償請求について慰謝料5000円及びこれに対する同日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容したところ,控訴人が控訴した。 2 条例等の定め及び前提事実以下のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の第2の2及び3に記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 原判決2頁20行目の「土岐市図書館」を「本件図書館」に, 以下のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の第2の2及び3に記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 原判決2頁20行目の「土岐市図書館」を「本件図書館」に,21行目の「設置するもの」を「設置するものと」に,同行目の「本件条例」から22行目の「により」までを「分館等の設置,職員の配置及び図書館協議会の設置等について概括的に規定した上で(3~5条),本件条例の施行に関して必要な事項は教育委員会規則で」に,それぞれ改める。 ⑵ 原判決3頁22行目の「あること」の次に「(被控訴人名義の利用カードやその家族名義の利用カードを提示することなく貸出を求めること,予約冊数の制限〔20冊〕を実質的に超える冊数の受取りを要求すること,開架にある本を探して持ってくるよう要求すること,自分が探したいジャンルの本の一覧を要求すること,レファレンス対応者として特定の司書を執拗に指名すること,度重なる長時間にわたるレファレンスを要求すること,レファレンスに該当する本が見つからない場合にも高圧的な態度ですぐ探すよう要求すること,一部の司書に対し,レファレンスの内容をメモ用紙に記載して交付するよう要求することなど)」を加える。 ⑶ 原判決3頁22行目の「行動」から24行目の「可能性がある」までを「行動に及ばないよう求め,これが遵守されない場合には,やむを得ず本件図書館の利用を制限することになる」に改め,4頁1行目の「場合の」から同行目末尾までを「場合に,急にカウンターで利用者番号を小声で言い,職員がその声を聞き取れず聞き返すと,緊張感がない,聞き返すななどと言うこと」に改め,2行目の「エ 」の次に「職員の名前を確認するために,」を加え,3行目の「行うこと」を「消しゴムで消すこと」に改める。 ⑷ 原判決4頁13行 と,緊張感がない,聞き返すななどと言うこと」に改め,2行目の「エ 」の次に「職員の名前を確認するために,」を加え,3行目の「行うこと」を「消しゴムで消すこと」に改める。 ⑷ 原判決4頁13行目の「受け容れない」から14行目の「場合」までを「聞き入れない場合や,仮に同期間中に改善等がみられたとしても同期間経過後に同様の事態に至った場合」に改める。 ⑸ 原判決5頁7行目の「図書」を「資料」に改め,8行目の「借出し」の次に「・返却行為」に改める。 ⑹ 原判決5頁24行目の「扱うこと」を「扱うことと」に改める。 3 争点及びこれについての当事者の主張以下のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の第2の4に記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 原判決7頁10行目の「上記利益」から「できる」までを「上記利益が同処分を解除してもなお守られる」に改める。 ⑵ 原判決8頁3行目の「一時期の貸出制限数」を「一度の貸出冊数の上限」に改める。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,被控訴人の請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は,以下のとおりである。 2 認定事実原判決の「事実及び理由」の第3の2⑵(15頁26行目以下)に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決16頁7行目の「①に」を「①と」に改める。 3 争点1(本件処分の適法性)について⑴ 本件処分の根拠とされている本件規則6条は,本件条例6条の委任を受け,「この規則若しくは館長の指示に従わない者」に対して「図書館資料及び施設の利用を禁止」することができるとするものであるが,本件図書館が地方自治法244条2項の「公の施設」に当たることは明らかであり,「正当な理由」がない限り住民の利用を拒むことはで 「図書館資料及び施設の利用を禁止」することができるとするものであるが,本件図書館が地方自治法244条2項の「公の施設」に当たることは明らかであり,「正当な理由」がない限り住民の利用を拒むことはできないから,本件規則6条はこの規律を具体化したものと解される。 本件図書館は,図書館法に基づいて設置された公立図書館であるところ(本件条例1条,2条),図書館が,図書その他の資料を一般公衆の利用に供し,その教養,調査研究,レクリエーション等に資することを目的とする施設であり(図書館法2条1項,2項),公立図書館においては入館や図書館資料の利 用に対する対価の徴収が禁じられていること(図書館法17条)などに照らせば,個々の住民の公立図書館利用権が重要な権利であることは明らかであって,これをみだりに制限することは許されないというべきである。ただ,一部の利用者が公立図書館の管理運営に重大な支障をもたらす態様で公立図書館を利用するような場合には,図書館の上記目的を実現するためにも,必要かつ合理的な範囲内で当該利用者の図書館利用を制限する必要が生じ得ることは明らかであり,図書館法等がそのような制限を一切想定していないとは考え難い。 以上の諸点を踏まえれば,本件規則6条は,①対象者が「この規則若しくは館長の指示に従わない者」であって,②その者に引き続き本件図書館の施設等の利用を許したのでは本件図書館の管理運営に重大な支障を生ずるおそれが大きい場合に限り,③当該支障発生の防止のために必要かつ合理的な範囲内で,その「利用を禁止」し得ることを定めたものと解するのが相当であり,そのように解する限りにおいて,図書館法,地方自治法その他の関係法令に反するものではなく,本件条例6条の委任の範囲を逸脱するものでもないというべきである。 なお めたものと解するのが相当であり,そのように解する限りにおいて,図書館法,地方自治法その他の関係法令に反するものではなく,本件条例6条の委任の範囲を逸脱するものでもないというべきである。 なお,地方教育行政法33条1項は,教育委員会が,図書館を含む教育機関の「管理運営の基本的事項」について,必要な教育委員会規則を定めるものと規定しているが,これは,図書館等の教育機関を所管し,その管理等の事務を執行する権限を有する教育委員会(同法21条1号,32条)に,当該教育機関の管理運営上の「基本的事項」に関する規則制定権を,条例を介することなく直接付与したものであって,当該教育機関の管理運営上の「基本的事項」以外の事項に関する規則制定権を条例により教育委員会に付与することを禁ずる趣旨ではないと解される。本件条例6条は,「公立図書館の設置に関する事項」全般についての条例制定権(図書館法10条)を有する地方公共団体たる控訴人が,本件図書館の設置等を定める本件条例の施行に関して必要な事項全般につき,教育委員会規則への包括的な委任をしたものであり,その委任の範 囲が本件図書館の管理運営上の基本的な事項に限られると解すべき根拠は見当たらない。 ⑵ 前提事実及び認定事実によれば,被控訴人は,本件処分を受けるまで,本件図書館を頻繁に利用していたところ,令和元年7月31日付けで処分行政庁事務局長名の通知書1により,同年10月1日付けでA館長及び処分行政庁教育長連名の通知書2により,本件図書館における様々な問題行動についての具体的な指摘を受けるとともに,それらを改善しない場合等には本件図書館の利用を制限することになる旨(通知書1)又は禁止する旨(通知書2)の警告を受けたにもかかわらず,同月4日から同年11月19日までの間に,認定事実アからオまで それらを改善しない場合等には本件図書館の利用を制限することになる旨(通知書1)又は禁止する旨(通知書2)の警告を受けたにもかかわらず,同月4日から同年11月19日までの間に,認定事実アからオまでのような多種多様な問題行動に及んだものである。これらの問題行動が,本件図書館の職員や設備,図書等に多大な負担等を生じ又は生じ得るものであり,かつ,本件図書館の正常な利用過程において繰り返す必要が生ずることが想定し難いものであることは,後記4⑵のとおりである。 かかる経緯に照らせば,被控訴人について,①「館長の指示に従わない者」に当たることはもとより,②引き続き本件図書館の施設等の利用を許したのでは本件図書館の管理・運営に重大な支障を生ずるおそれが大きく,③当該支障発生の防止のため,本件処分のように本件図書館の資料及び施設の利用を全面的に禁止することが必要かつ合理的であったと認めるのが相当である。 ⑶ なお,本件処分には確定的な利用禁止期間(終期)の定めがない。 しかしながら,本件規則6条に基づく利用禁止は,前記のとおり,地方自治法244条2項の規律を具体化するものであって,対象者の過去の行為に対する制裁等ではなく,あくまでも現在及び将来における本件図書館の管理・運営に重大な支障が生ずるおそれが大きい状況の下で,その防止のために必要かつ合理的な範囲で行われるべきものである。処分行政庁としては,当該状況が解消された場合には,対象者が過去においてどれほどの問題行動に及んでいようとも,直ちに利用禁止を解除しなければならない反面,当該状況が存続する限 り,それまでに経過した禁止期間の長短等にかかわらず,必要かつ合理的な利用禁止を継続し得るものと解される。 処分行政庁が,本件処分に係る通知書(甲2の3)において,被控訴人の問題 り,それまでに経過した禁止期間の長短等にかかわらず,必要かつ合理的な利用禁止を継続し得るものと解される。 処分行政庁が,本件処分に係る通知書(甲2の3)において,被控訴人の問題行動を具体的に列挙した上で,それらの問題行動がA館長の指示にもかかわらず改善されず又は新たにみられるようになったとして,本件処分を行うものとしていることも踏まえれば,本件処分は,それらの問題行動が繰り返されるおそれが大きい状況(以下「本件状況」という。)が存続する限りにおいて利用禁止を継続し,本件状況が解消された段階で直ちに解除の手続に入る,との前提の下に行われたものと解することができる(実際,控訴人も,本件訴訟提起後原判決前の令和3年3月及び4月,被控訴人に対し,今後は同様の問題行動を繰り返さない旨誓約すれば利用禁止を解除するとして,その旨誓約するか否かの問合せをしている〔乙8~〕。)。 そして,本件処分当時,被控訴人は,前記⑵のとおり,その問題行動について2度にわたる指摘及び警告を受けてもなお多種多様な問題行動を繰り返していたのであるから,処分行政庁としては,本件状況が解消される時期を見通すことは極めて困難であったといわざるを得ない。被控訴人としては,今後は同様の問題行動を繰り返さない旨誓約するなどして,本件状況を解消することも十分に可能であり,上記の経緯の下では,その程度の手続的負担を負うこともやむを得ない。 以上によれば,本件処分に確定的な利用禁止期間(終期)の定めがないことをもって,上記③の必要性・合理性を欠くということはできない。 ⑷ よって,本件処分は違法とはいえない。 4 争点2(本件処分等による被控訴人への対応の国家賠償法上の違法性の有無)について⑴ 本件処分については,前記3のとおり,取消事由たる違法 。 ⑷ よって,本件処分は違法とはいえない。 4 争点2(本件処分等による被控訴人への対応の国家賠償法上の違法性の有無)について⑴ 本件処分については,前記3のとおり,取消事由たる違法があるとはいえず,その他本件に顕れた一切の事情を考慮しても,処分行政庁が被控訴人に対して 本件処分をしたこと自体につき,国家賠償法1条1項の適用上,違法であるとは認められない。 ⑵ 本件図書館職員のその余の行為についても,国家賠償法1条1項の適用上,違法であるとは認められない。その理由は,以下のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の第3の2⑶アからオまでに記載のとおりであるから,これを引用する。 ア原判決17頁17行目の「することは,」の次に「通常,」を加え,25行目の「前記⑵ア」を「認定事実ア」に,18頁3行目の「他方で」から5行目末尾までを「たとえ本件図書館を頻繁に利用する者であっても,正常な利用過程において,上記のような多数回・高頻度の指摘を行う必要が生ずることは想定し難い。」に,それぞれ改める。 イ原判決18頁23行目の「前記⑵イ」を「認定事実イ」に,24行目の冒頭から「すること」までを「書庫出納票の大量発行」に,それぞれ改め,26行目の「のであって,」の次に「たとえ本件図書館の閉架書庫等を頻繁に利用する者であっても,正常な利用過程において,上記のような書庫出納票の大量発行を繰り返す必要が生ずることは想定し難く,」を加える。 ウ原判決19頁11行目の「前記⑵ウ」を「認定事実ウ」に改め,13行目末尾に「本件図書館の正常な利用過程において,そのような行為を繰り返す必要が生ずることは想定し難い。」を加える。 エ原判決19頁19行目から20頁2行目までを次のとおり改める。 行目末尾に「本件図書館の正常な利用過程において,そのような行為を繰り返す必要が生ずることは想定し難い。」を加える。 エ原判決19頁19行目から20頁2行目までを次のとおり改める。 「 しかしながら,被控訴人は,認定事実エのとおり,本件図書館において,館内閲覧であれば貸出手続を経る必要がないにもかかわらず,多数の図書の貸出手続を経た上,短時間でそれらを返却するという行為を繰り返しており,例えば令和元年10月13日には,本件図書館職員から,館内での閲覧であれば貸出手続は不要なので閲覧後に元の場所に戻してほしいとの要請をたびたび受けながら,それは利用者の自由である,貸出をしたという記録を残 したいなどと述べて上記の行為を繰り返し,当該行為による同日中の返却冊数は合計156冊にのぼったというのである。 上記のような行為は,本件図書館職員による返却手続等(返却された図書を本来の配架位置に戻す作業等を含む。)の事務を著しく増大させ,その業務を逼迫させ,ひいては他の利用者による本件図書館の利用を妨げるおそれがあるものといえる。そして,たとえ本件図書館を頻繁に利用する者であっても,正常な利用過程において,上記のような行為を繰り返す必要が生ずることは想定し難い。」オ原判決20頁15行目の「前記⑵オのとおり」を「認定事実オのとおり,本件図書館職員から注意を受けながら」に改める。 5 争点3(控訴人の職員は9月12日付け公文書開示請求書を紛失したか)について原判決の「事実及び理由」の第3の3に記載のとおりであるから,これを引用する。 6 よって,原判決中控訴人敗訴部分を取り消した上,同部分に係る被控訴人の請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第 であるから,これを引用する。 主文 よって,原判決中控訴人敗訴部分を取り消した上,同部分に係る被控訴人の請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第3部 裁判長裁判官土田昭彦 裁判官山本万起子 裁判官秋吉信彦
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