- 1 -令和6年6月13日判決言渡平成30年(行ウ)第188号生活保護基準引下げ違憲処分取消等請求事件平成30年(行ウ)第263号生活保護基準引下げ違憲処分取消等請求事件平成30年(ワ)第29540号生活保護基準引下げ違憲国家賠償請求事件(以下それぞれ「第1事件」などという。) 主文 1 第1事件及び第2事件の各取消請求に係る訴えのうち、各主位的請求に係る部分をいずれも却下する。 2 別紙2「処分一覧表」の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁が同別紙の対応する「処分の名宛人」欄記載の各原告に対して同別紙の 「処分日」欄記載の各日付けでした生活保護法25条2項に基づく各保護変更決定をいずれも取り消す。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、別紙3「訴訟費用負担目録」記載のとおりの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 第1事件⑴ 処分についての取消請求ア主位的請求 別紙2「処分一覧表」(ただし、取消請求の原告(第1事件)に係る部分に限る。以下、本項において同じ。)の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁が同別紙の対応する「処分の名宛人」欄記載の各原告に対して同別紙の「処分日」欄記載の各日付けでした生活保護法25条2項に基づく各保護変更決定のうち、平成27年厚生労働省告示第227号(以 下「平成27年告示」という。)によって金額を減額する部分をいずれ - 2 -も取り消す(以下、この請求を「主位的取消請求1」という。)。 イ予備的請求主文2項のうち、取消請求の原告(第1事件)に係る部分と同旨(以下、この請求を「予備的取消請求1」という。)⑵ 国家賠償請求 別紙4「国賠請求一覧」 いう。)。 イ予備的請求主文2項のうち、取消請求の原告(第1事件)に係る部分と同旨(以下、この請求を「予備的取消請求1」という。)⑵ 国家賠償請求 別紙4「国賠請求一覧」(ただし、第1事件原告に係る部分に限る。以下、本項において同じ。)の「被告」欄記載の被告らは、同別紙の対応する「原告」欄記載の原告に対し、連帯して、1万円及びこれに対する同別紙の「起算日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 2 第2事件⑴ 処分についての取消請求ア主位的請求別紙2「処分一覧表」(ただし、取消請求の原告(第2事件)に係る部分に限る。以下、本項において同じ。)の「処分行政庁」欄記載の各処 分行政庁が同別紙の対応する「処分の名宛人」欄記載の各原告に対して同別紙の「処分日」欄記載の各日付けでした生活保護法25条2項に基づく各保護変更決定(以下、前記1⑴アの各保護変更決定と併せて「本件各取消請求対象決定」という。)のうち、平成27年告示によって金額を減額する部分をいずれも取り消す(以下、この請求を「主位的取消 請求2」といい、主位的取消請求1と併せて「本件各主位的取消請求」という。)。 イ予備的請求主文2項のうち、取消請求の原告(第2事件)に係る部分と同旨(以下、この請求を「予備的取消請求2」といい、予備的取消請求1と併せ て「本件各予備的取消請求」という。また、各主位的取消請求と各予備 - 3 -取消請求を併せて「本件各取消請求」という。)⑵ 国家賠償請求別紙4「国賠請求一覧」(ただし、第2事件原告に係る部分に限る。以下、本項において同じ。)の「被告」欄記載の被告らは、同別紙の対応する「原告」欄記載の原告に対し、連帯して、1万円及びこ 家賠償請求別紙4「国賠請求一覧」(ただし、第2事件原告に係る部分に限る。以下、本項において同じ。)の「被告」欄記載の被告らは、同別紙の対応する「原告」欄記載の原告に対し、連帯して、1万円及びこれに対する同別紙の「起 算日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 3 第3事件別紙4「国賠請求一覧」(ただし、第3事件原告に係る部分に限る。以下、本項において同じ。)の「被告」欄記載の被告らは、同別紙の対応する「原 告」欄記載の各原告に対し、連帯して、1万円及びこれに対する同別紙の「起算日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え(以下、前記1⑵、2⑵の各国家賠償請求と併せて「本件各国賠請求」という。)。 第2 事案の概要 1 事案の要旨⑴ 厚生労働大臣(厚生労働省設置法により厚生労働省が設置される前の厚生大臣と併せて以下「厚労大臣」という。)は、生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号。以下、この基準を「保護基準」といい、同法による保護を単に「保護」という。)が定める生活扶助に関 する基準(以下「生活扶助基準」という。)を、平成25年5月16日付けで発出した同年厚生労働省告示第174号、平成26年3月31日付けで発出した同年厚生労働省告示第136号及び平成27年3月31日付けで発出した同年厚生労働省告示第227号(平成27年告示)により順次改定した(以下、これらの告示による生活扶助基準の各改定を、各改定に 対応する告示が発出された年に応じ、「平成25年改定」などといい、こ - 4 -れらを併せて「本件改定」という。また、平成25年改定がされる直前の生活扶助基準を「改定前基準」という。)。保護の実施機関である 発出された年に応じ、「平成25年改定」などといい、こ - 4 -れらを併せて「本件改定」という。また、平成25年改定がされる直前の生活扶助基準を「改定前基準」という。)。保護の実施機関である被告地方公共団体の福祉事務所長らは、本件改定に伴い、原告らに対し、生活保護の支給額を変更する決定をした。 ⑵ 本件は、東京都内の居宅において生活扶助を受けている原告らが、本件改 定及びこれを理由とする生活保護法25条2項に基づく保護変更決定によって生活扶助の受給額を減らされたことは違憲、違法であるなどと主張して、被告らを相手に、前記第1記載の各請求をする事案である(なお、本件各国賠請求における年5分の割合による金員の支払請求は、いずれも平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支 払を求める附帯請求である。)。 2 関係法令等の定め別紙5「関係法令等の定め」記載のとおり 3 本件各訴えに至る経緯等に関する前提事実(争いのない事実、顕著な事実並びに括弧内掲記の証拠(特記しない限り、枝番号のあるものは枝番号を全 て含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 原告ら原告らは、いずれも、現在、それぞれの居宅で(生活保護法30条1項)生活扶助を受けており、後記⑵ア、イ又はウの保護変更決定を受けた者である(弁論の全趣旨)。 ⑵ 本件改定に基づく保護変更決定ア原告らのうち、平成25年8月1日以前から生活扶助を受けていた者は、対応する保護の実施機関から、平成25年改定を理由とする生活保護法25条2項に基づく保護変更決定をそれぞれ受けた(弁論の全趣旨)。 イ原告らのうち、平成26年4月1日以前から生活扶助を受けていた者は、 対応する保護の実施 25年改定を理由とする生活保護法25条2項に基づく保護変更決定をそれぞれ受けた(弁論の全趣旨)。 イ原告らのうち、平成26年4月1日以前から生活扶助を受けていた者は、 対応する保護の実施機関から、平成26年改定を理由とする生活保護法2 - 5 -5条2項に基づく保護変更決定をそれぞれ受けた(弁論の全趣旨)。 ウ原告らのうち、平成27年4月1日以前から生活扶助を受けていた者は、対応する保護の実施機関から、平成27年改定を理由とする生活保護法25条2項に基づく保護変更決定(以下、前記ア、イの各保護変更決定と併せて「本件各国賠請求対象決定」という。)をそれぞれ受け た(弁論の全趣旨)。 取消請求の原告に対してされた平成27年改定に基づく各保護変更決定(本件各取消請求対象決定)は、それぞれ別紙2「処分一覧表」の対応する「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁が同別紙の「処分日」欄記載の各日付けで行ったものであるところ、取消請求の原告は、自身に 対する本件各取消請求対象決定に対し、同別紙の「審査請求日」欄記載の各日にそれぞれ審査請求をし、同別紙の「裁決日」欄記載の各日に当該審査請求を棄却する旨の裁決をそれぞれ受けた(弁論の全趣旨)。 ⑶ 本件各訴えの提起、併合及び変更の経緯(弁論の全趣旨、顕著な事実)ア第1事件原告は、平成30年5月14日、第1事件に係る訴えを提起し た。第1事件における請求の内容は、第1事件原告において、前記第1の1⑵記載の国家賠償請求をするとともに、取消請求の原告(第1事件)において、主位的取消請求1をするというものであった。 イ第2事件原告は、平成30年7月2日、第2事件に係る訴えを提起した。第2事件における請求の内容は、第2事件原告において、前記第1 の2⑵記載の国 的取消請求1をするというものであった。 イ第2事件原告は、平成30年7月2日、第2事件に係る訴えを提起した。第2事件における請求の内容は、第2事件原告において、前記第1 の2⑵記載の国家賠償請求をするとともに、取消請求の原告(第2事件)において、主位的取消請求2をするというものであった。 第2事件は、平成30年8月7日、第1事件に併合された。 ウ第3事件原告は、平成30年9月14日、前記第1の3記載の国家賠償請求を請求の内容とする第3事件に係る訴えを提起した。 第3事件は、平成30年10月24日、第1事件及び第2事件に併合 - 6 -された。 エ取消請求の原告(第1事件)は、令和5年4月27日、第13回口頭弁論期日において、第1事件における請求に予備的取消請求1を追加する旨の訴えの変更をした。 取消請求の原告(第2事件)は、令和5年4月27日、第13回口 頭弁論期日において、第2事件における請求に予備的取消請求2を追加する旨の訴えの変更をした。 4 生活扶助基準及び本件改定に関する前提事実⑴ 受給世帯別の生活扶助基準額の算定方法ア受給世帯別の生活扶助基準額は、一定の標準となるべき世帯(昭和61 年4月以降においては夫婦子一人(33歳、29歳、4歳)の三人世帯(乙A5〔8頁〕。以下「標準世帯」という。)の生活扶助基準額を設定した上で、これを起点として、後記イのとおり、世帯員の年齢や人数、住居地の級地区分に応じて設定される指数を乗じて算定される(乙A21。 以下、標準世帯の生活扶助基準額を起点として各受給世帯の生活扶助基準 額を算出する過程を「展開」といい、展開のために、世帯員の年齢階級別、世帯人員別、住居地の級地別に設定される指数を「展開指数」という。)。 扶助基準額を起点として各受給世帯の生活扶助基準 額を算出する過程を「展開」といい、展開のために、世帯員の年齢階級別、世帯人員別、住居地の級地別に設定される指数を「展開指数」という。)。 イまず、一般低所得世帯(夫婦子一人の勤労三人世帯)における第1類費(食費や被服費等、個人単位に消費される経費に対応するもの)に相 当する支出額と第2類費(光熱水費等、世帯全体としてまとめて支出される経費に対応するもの)に相当する支出額の構成割合を参考として、標準世帯の生活扶助基準額を第1類費と第2類費に分割する。 次に、標準世帯の生活扶助基準額のうちの第1類費については、20~40歳の栄養所要量を100とした場合の年齢階級別の指数を乗ず ることにより、世帯員の年齢階級別の第1類費を算定する。また、標準 - 7 -世帯の生活扶助基準額のうちの第2類費については、世帯人員別に定めた指数(一般低所得世帯における世帯人員別の消費支出を参考とした指数)を乗ずることにより、世帯人員別の第2類費を算定する。 さらに、1級地-1以外の級地に住居地のある世帯については、1級地-1の基準額を起点に級地別に設定された指数を乗ずることにより、 級地別の生活扶助基準額を算定する。 (なお、本判決中の図表は、全て準備書面又は書証からの引用又はこれらを基に作成したものである。)⑵ 生活扶助基準の改定方式 ア生活扶助基準の改定方式としては、昭和59年4月1日以降、それまでの格差縮小方式(一般低所得世帯の消費支出が平均以上に高い伸び率を示していたという昭和40年頃の社会経済情勢を背景として、受給世帯と一般低所得世帯との消費水準の格差を縮小させるために、翌年度の政府経済見通しにおける民間最終消費支出の伸び率を基礎としつつ 伸び率を示していたという昭和40年頃の社会経済情勢を背景として、受給世帯と一般低所得世帯との消費水準の格差を縮小させるために、翌年度の政府経済見通しにおける民間最終消費支出の伸び率を基礎としつつ、これに受給 世帯と一般低所得世帯との格差を縮小させるための追加分を上乗せすることによって改定率を算定する方式)に代えて、水準均衡方式(生活扶助 - 8 -基準が一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達しているとされた昭和58年当時の社会情勢を背景として、翌年度の政府経済見通しにおける個人消費の伸び率を基礎としつつ、これに前年度までの一般国民の消費実態の予測値と実績値との差を勘案した調整をした上で改定率を算定する方式であり、格差縮小分を改定率に上乗せしない点で格差縮小方式とは 異なる。)が採用されている(乙A5〔3頁〕、A7の2、A8、A33)。 イ水準均衡方式の下において生活扶助基準が改定されると、標準世帯の生活扶助基準額に水準均衡方式によって算定された改定率を乗じた上で、この改定された標準世帯の生活扶助基準額を起点として、前記⑴イの方法に より、各受給世帯の生活扶助基準額が展開されることになる。 ⑶ 本件改定に至るまでの生活扶助基準の検証の経過ア平成15年から平成16年にかけて行われた検証 平成15年7月、社保審の福祉部会の下に、「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」(以下「専門委員会」という。)が設置された。 専門委員会は、生活保護基準の在り方や一般低所得世帯及び被保護世帯の生活実態等の検証の結果として、平成15年12月16日付けで「生活保護制度の在り方についての中間取りまとめ」(乙A13。以下「平成15年中間取りまとめ」という。)を、平成16年12月15日付け 帯の生活実態等の検証の結果として、平成15年12月16日付けで「生活保護制度の在り方についての中間取りまとめ」(乙A13。以下「平成15年中間取りまとめ」という。)を、平成16年12月15日付けで「生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書」(乙A4。 以下「平成16年報告書」という。)を、それぞれ取りまとめた(以下、専門委員会によるこの検証を「平成16年検証」という。)。 なお、平成16年検証においては、今後、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要 があると提言された。また、これらの検証に際しては、地域別、世帯類 - 9 -型別等に分けるとともに、調査方法及び評価手法についても専門家の知見を踏まえることが妥当であるとされたほか、捕捉率(生活保護の受給要件を満たす世帯がどれだけ実際に生活保護を受けているか)についても検証を行う必要があるとの指摘もあった。(乙A4〔3頁〕)イ平成19年に行われた検証 平成19年10月、上記アの定期的な検証を行うため、厚生労働省社会・援護局長の下に「生活扶助基準に関する検討会」(以下「検討会」という。)が設置された。 検討会は、生活扶助基準の水準が、保護を受給していない低所得世帯における消費実態との均衡が適切に図られているか(水準の妥当性)、 第1類費と第2類費の合算によって算出される基準額が消費実態を反映しているか(体系の妥当性)等について検証し、平成19年11月30日付けで「生活扶助基準に関する検討会報告書」(乙A5。以下「平成19年報告書」という。)を取りまとめた(以下、検討会によるこの検証を「平成19年検証」という。)。 証し、平成19年11月30日付けで「生活扶助基準に関する検討会報告書」(乙A5。以下「平成19年報告書」という。)を取りまとめた(以下、検討会によるこの検証を「平成19年検証」という。)。 なお、平成19年検証においては、直近に行われた平成16年の全国消費実態調査(後記5⑵ア参照。平成16年全消調査)の結果を用いて検証・評価が行われた(乙A5〔2頁〕)。 ウ平成23年から平成25年にかけて行われた検証平成23年2月10日、社保審の下に、前記アの定期的な検証を 行うことなどを目的とする常設の部会として、社会保障審議会令6条1項、社会保障審議会運営規則2条に基づき、生活保護基準部会(以下「基準部会」という。)が設置された(乙A22)。 基準部会は、検証の結果として、平成25年1月18日付けで「社会保障審議会生活保護基準部会報告書」(乙A6。以下「平成25年 報告書」という。)を取りまとめた(以下、基準部会によるこの検証 - 10 -を「平成25年検証」という。)。 エ平成28年から平成29年にかけて行われた検証基準部会は、本件改定後である平成28年5月から平成29年12月にかけて、本件改定による影響の把握等について検証を行い、検証の結果として、平成29年12月14日付けで「社会保障審議会生活保護基準部会 報告書」(乙A89。以下「平成29年報告書」という。)を取りまとめた(以下、基準部会によるこの検証を「平成29年検証」という。)。 ⑷ 本件改定の内容(甲A10、A22の3、乙A1の1~A3の3、弁論の全趣旨)ア本件改定の全体像 本件改定は、①改定前基準における生活扶助基準の展開指数と、平成25年検証において明らかとなった一般低所得世帯(具体的には、全世帯 1~A3の3、弁論の全趣旨)ア本件改定の全体像 本件改定は、①改定前基準における生活扶助基準の展開指数と、平成25年検証において明らかとなった一般低所得世帯(具体的には、全世帯を収入の低い方から順番に並べ、世帯数が等しくなるように十等分し、収入の低い方から数えて1番目のグループ。以下「第1・十分位世帯」という。同様に、対象となる世帯をm等分した場合の年間収入 額が低い方から数えてN番目のグループを「第N・m分位世帯」という。)の消費実態に基づく展開指数(以下「平成25年検証展開指数」という。)とのかい離を解消する方向で改定前基準の展開指数を是正し、受給世帯間の均衡を図る調整(以下「ゆがみ調整」という。)、②平成25年検証の結果とは別に、平成20年以降のデフレ傾 向が続く中で生活扶助基準額が据え置かれたことにより、受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加したとの認識の下、物価変動率を指標として認識、測定した同増加の分だけ生活扶助基準額を引き下げることにより、生活扶助基準額の水準と一般国民世帯の生活水準との不均衡の是正を図る調整(以下「デフレ調整」という。)及び③これらの調整 が受給世帯に与える影響を緩和するための措置(激変緩和措置)を内容 - 11 -とするものであった。 本件改定の手順は、まず、改定前基準についてゆがみ調整を行い、次に、ゆがみ調整後の生活扶助基準額(以下「ゆがみ調整後基準額」という。)にデフレ調整を行って、改定後の生活扶助基準額を算定した上で、激変緩和措置を講じながら、3年間にわたって、各年の改定幅が おおむね均等となるように段階的に改定をしていくというものであった。 厚労大臣は、本件改定の当時、本件改定による財政効果を3年間で合計約670億円(このうち、ゆが にわたって、各年の改定幅が おおむね均等となるように段階的に改定をしていくというものであった。 厚労大臣は、本件改定の当時、本件改定による財政効果を3年間で合計約670億円(このうち、ゆがみ調整による財政効果が約90億円、デフレ調整による財政効果が約580億円)と見積もっていた(甲A10〔27頁〕、乙A18、A19)。 イゆがみ調整の概要ゆがみ調整は、平成25年検証の結果を踏まえ、①年齢階級間の第1類費の差を小さくすること、②世帯員が一人増加するごとに第1類費の合計に乗ずる逓減率を増加させる一方で、第2類費を増額させること、③第1類費及び第2類費について級地間の差を小さくすることを内容と するものであった。 もっとも、本件改定に当たっては、改定前基準額に、平成25年検証展開指数を改定前基準の展開指数で除した割合を乗ずるのではなく、平成25年検証展開指数と改定前基準の展開指数との和を2で除したものを更に改定前基準の展開指数で除した割合を乗ずること(以下「2 分の1処理」という。)により、ゆがみ調整後基準額を算出することとされた(なお、2分の1処理を激変緩和措置の一つとして位置付けるべきか否かについては、当事者間に争いがある。)。 ウデフレ調整の概要デフレ調整は、総務省統計局から公表されている消費者物価指数(以下 「総務省CPI」という。その概要につき後記5⑴参照)のデータを基 - 12 -礎として算定される物価指数、すなわち、①物価指数の算定対象に含まれる品目(以下「指数品目」という。)について、総務省CPIの指数品目のうち生活扶助以外の保護で賄われる品目その他の生活扶助費から支出することが想定されていない品目(以下「除外品目」という。)を除外した品目(以下「生活扶助相当品目 )について、総務省CPIの指数品目のうち生活扶助以外の保護で賄われる品目その他の生活扶助費から支出することが想定されていない品目(以下「除外品目」という。)を除外した品目(以下「生活扶助相当品目」という。)に限定した上で、 その価格指数(後記5⑴エ参照)として総務省CPIの価格指数を用い、かつ、②家計の消費支出全体に占める個々の指数品目の消費支出の割合(以下「ウエイト」という。)として、総務省CPIの総合指数(後記5⑴オ参照)のウエイトを参照して算定された物価指数(以下「生活扶助相当CPI」という。)の変動率を改定の指標とする生活扶 助基準額の減額改定を内容とするものであった。具体的には、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの下落率-4.78%(以下「本件下落率」という。なお、ウエイト参照年(後記5⑴イ参照)は平成22年である。)をもって、平成20年から平成23年までの間、デフレ傾向が続く中で生活扶助基準額が据え置かれたことによって生じ た受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加分(生活扶助基準額の実質的な引上げ分)であると評価し、同下落率をゆがみ調整後基準額に反映させる(ゆがみ調整後基準額に(1-0.0478)を乗ずる)ものであった。 エ本件改定における激変緩和措置の概要 ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことによって生活扶助基準額が大幅に減額となる世帯に配慮する観点から、本件改定による増減幅は、本件改定前と比べて±10%を超えないように調整された。 本件改定は、平成25年改定、平成26年改定及び平成27年改定の3回にわたり3年間にわたって段階的に実施され、平成25年改定後 の保護基準は平成25年8月1日から、平成26年改定後の保護基準は - 13 -平成2 平成26年改定及び平成27年改定の3回にわたり3年間にわたって段階的に実施され、平成25年改定後 の保護基準は平成25年8月1日から、平成26年改定後の保護基準は - 13 -平成26年4月1日から、平成27改正後の保護基準は平成27年4月1日から、それぞれ適用された。 5 総務省CPI及び当事者が援用する各種統計調査に関する前提事実⑴ 総務省CPIの概要(全体として乙A27、A28)ア物価指数としての意味合い 総務省CPIは、我が国の家計における消費の対象とされている代表的な財・サービスの全体から成るグループ(以下「買い物かご」という。)を観念した上で、同じ「買い物かご」を購入するのに必要な貨幣量の増減を表した指数である。ある時点の総務省CPIは、基準となる時点のそれを100とした場合における比例換算値として表される(以 下、上記の基準となる時点又は年を「基準時」又は「基準年」といい、比較対象となる他の時点又は年を「比較時」又は「比較年」という。また、基準年に応じて、総務省CPIを「平成22年総務省CPI」などといい、同様に、生活扶助相当CPIについても「平成20年生活扶助相当CPI」などという。)。 イ買い物かご総務省CPIを算定するには、基準時を定めた上で、検討の対象となる買い物かごの内容、すなわち、買い物かごに入れる(買い物かごを構成する)財・サービスの品目(指数品目)及び個々の指数品目の消費支出が買い物かご全体の消費支出に占める割合(ウエイト)を定めてお かなければならない(以下、物価指数の算定に当たり特定の一時点のウエイトを参照する場合におけるその時点又は年を「ウエイト参照時」又は「ウエイト参照年」という。)。 総務省CPIの指数品 かなければならない(以下、物価指数の算定に当たり特定の一時点のウエイトを参照する場合におけるその時点又は年を「ウエイト参照時」又は「ウエイト参照年」という。)。 総務省CPIの指数品目は、統計法上の基幹統計調査(同法2条6項)である家計調査(後記⑵イ参照)に基づき、家計の消費支出の中で 重要度が高く、価格変動を代表することができるものから選定される。 - 14 -総務省CPIの品目別のウエイトは、ウエイト参照年の家計調査における平均1か月の世帯当たりの品目別の消費支出額(なお、対象とする世帯は、総世帯ウエイト以外については二人以上世帯とされている。)を用いて設定され、買い物かご全体の総消費支出額を1万とした場合における各品目の支出額の比例換算値として表される。 基準年が5年ごとに改定されること(西暦年の末尾が0と5の年が基準年となること)に合わせて、指数品目及びウエイトも改定されている(以下、ある年における直近の指数品目の改定が反映された総務省CPIの指数品目を当該年に応じて「平成20年指数品目」などといい、そのうちの生活扶助相当品目を、当該年に応じて「平成20年生活扶 助相当品目」などという。)。 ウ指数品目の価格データ買い物かごの内容が決まると、基準時及び比較時において当該買い物かごを購入するのに必要な貨幣量をそれぞれ測定することになるが、そのために必要な個々の指数品目の購入価格については、原則として、 統計法上の基幹統計調査である小売物価統計調査によって得られる新品の小売価格が用いられる。 物価変動以外の要因(品質変化等)により指数品目の価格が変動している場合には、小売価格をそのまま用いるのではなく、小売価格からそのような物価変動以外の要因を除去した上で 売価格が用いられる。 物価変動以外の要因(品質変化等)により指数品目の価格が変動している場合には、小売価格をそのまま用いるのではなく、小売価格からそのような物価変動以外の要因を除去した上で比較時の価格が算定され る(物価変動以外の要因を除去して比較時の価格を算定するために行われるこのような調整を「品質調整」という。)。 なお、デスクトップ型のパソコン(以下「パソコン1」という。)、ノート型のパソコン(以下「パソコン2」という。)及びカメラについては、技術革新のスピードが速く、製品のライフサイクルが短いため、 同品質の製品の小売価格を継続的に調査することが困難であることから、 - 15 -これら3品目の価格については、全国の主要な家電量販店で販売された全製品のPOS情報(レジで商品のバーコードを読み取りながら収集される販売価格及び販売数量データを基にした情報)等が用いられている。 また、これら3品目の品質調整については、ヘドニック法(商品間の価格差の一部は、これらの商品の有する共通の諸特性、例えば、パソ コンであればCPUのクロック周波数、ハードディスクの容量等によって測られる品質差に起因するとの考えに基づき、商品の諸特性の変化から品質変化に見合う価格変化部分を回帰分析により推定し、残りの部分を品質変化以外の実質的な価格変化として処理する手法)が用いられている。(乙A27〔17頁〕、A28〔14、41頁〕) エ指数の算定式総務省CPIは、品目別の価格指数(個々の指数品目の比較時の価格を基準時の価格で除した値に100を乗じたもの)を各指数品目のウエイトで加重平均した値として求められる。このようにして求められる物価指数は、国際労働機関(ILO)が作成した「消費者物価指数マニ ュ 時の価格で除した値に100を乗じたもの)を各指数品目のウエイトで加重平均した値として求められる。このようにして求められる物価指数は、国際労働機関(ILO)が作成した「消費者物価指数マニ ュアル―理論と実践―」(以下「CPIマニュアル」という。)において、「ロウ指数」に属するものとして位置付けられる(乙A50、A54〔1.17〕)。 CPIマニュアルによれば、「ロウ指数」におけるウエイト参照時は、指数が比較時より後に計算されるならば、基準時と比較時の間の任意の 時点でよいとされており、実際に、ウエイト参照時を基準時とする方式(以下「ラスパイレス方式」といい、同方式により算出される指数を「ラスパイレス指数」という。)もあれば、ウエイト参照時を比較時とする方式(以下「パーシェ方式」といい、同方式により算出される指数を「パーシェ指数」という。)もある。総務省CPIは、このう ちのラスパイレス指数に分類される。 - 16 -なお、消費者は、物価が下落した品目の消費支出を増加させ、物価が上昇した品目の消費支出を減少させる傾向にあるから(このため、物価が下落した品目のウエイトが大きくなり、物価が上昇した品目のウエイトが小さくなる。)、一般に、デフレ傾向が続く局面においては、パーシェ指数における物価下落率はラスパイレス指数におけるそれよりも 大きくなり、かつ、基準時から比較時までの期間が長くなるにつれ、両者の差も大きくなることが知られている。 オ総務省CPIにおける基本となる指数系列総務省CPIにおいて基本となる指数系列(基本分類指数)は、全体の物価の動きを総合した「総合指数」と、その内訳を費目別に分類し た指数から成り、後者は、十大費目(①食料、②住居、③光熱・水道、④家具・家事用品 て基本となる指数系列(基本分類指数)は、全体の物価の動きを総合した「総合指数」と、その内訳を費目別に分類し た指数から成り、後者は、十大費目(①食料、②住居、③光熱・水道、④家具・家事用品、⑤被服及び履物、⑥保健医療、⑦交通・通信、⑧教育、⑨教養娯楽、⑩諸雑費)別の指数のほか、中分類及び小分類という類別の指数及び品目別の指数から成る。 総合指数の算定に当たっては、最初に、個々の指数品目の価格指数 を品目別のウエイトで最下位類ごとに加重平均して最下位類の物価指数を算定し、次に、各最下位類の上位類ごとに最下位類の指数を当該類別のウエイトで加重平均して上位類の物価指数を算定し、同様にして、順次、小分類指数、中分類指数、十大費目指数、総合指数の順に積み上げていく。 ⑵ 本件において当事者が援用する各種統計調査の概要ア全国消費実態調査(現在の全国家計構造調査。以下、名称の前後を問わず、「全消調査」という。)(甲A39〔11頁〕、弁論の全趣旨) 全消調査は、家計の収入・支出及び貯蓄・負債、耐久消費財、住宅・宅地等の家計資産を総合的に調査し、全国及び地域別の世帯の消費・所 得・資産に係る水準、構造、分布等を明らかにすることを目的として、 - 17 -総務省統計局が5年おきに実施している基幹統計調査(統計法2条6項)である(以下、特定の年に実施された全消調査を、実施年に応じて、「平成21年全消調査」などという。)。 全消調査は、全国の縮図となるように統計上の抽出方法によって選定された約5万7000世帯(うち単身世帯は約4400世帯)を対象と し、二人以上世帯については、実施年の9月から11月までの3か月間、単身世帯については、実施年の10月及び11月の2か月間、家計に れた約5万7000世帯(うち単身世帯は約4400世帯)を対象と し、二人以上世帯については、実施年の9月から11月までの3か月間、単身世帯については、実施年の10月及び11月の2か月間、家計における収入や支出の状況等に関する調査票を配布・回収・集計する方法によって行われる。 本件改定当時における直近の全消調査は、平成21年全消調査であっ た。 イ家計調査(甲A39〔11頁〕、乙A56、A57、弁論の全趣旨) 家計調査は、国民生活における家計収支の実態を把握し、国の経済政策・社会政策の立案のための基礎資料を提供することを目的として、総務省統計局が毎月実施している基幹統計調査である(以下、特定の年に 実施された家計調査を、実施年に応じて、「平成22年家計調査」などという。)。 家計調査は、後記の方法により選定された約9000世帯を対象とし、毎月、家計における収入や支出の状況等に関する詳細な調査票を対象世帯に配布・回収・集計する方法によって行われる。家計調査によっ て把握することができる消費支出額のデータには、総務省CPIの指数品目に対応する詳細な品目別の消費支出額のデータが含まれている。 家計調査の対象世帯は、学生の単身世帯等を除く全国の世帯であり、この中から全国の縮図となるように三段階(全国の中から市町村を選定する段階、市町村の中から地区を選定する段階及び地区の中から世帯を 選定する段階)に分けて無作為に対象を抽出する方法(層化三段抽出 - 18 -法)によって選定される。 ウ社会保障生計調査(乙A58、A75、弁論の全趣旨) 社会保障生計調査は、受給世帯の生活実態を明らかにすることによって保護基準の改定等生活保護制 法)によって選定される。 ウ社会保障生計調査(乙A58、A75、弁論の全趣旨) 社会保障生計調査は、受給世帯の生活実態を明らかにすることによって保護基準の改定等生活保護制度の企画運営のために必要な基礎資料を得るとともに、厚生労働行政の企画運営に必要な基礎資料を得ることを 目的として、厚労省が企画し、各地方自治体の長に委託して毎年実施している一般統計調査(統計法2条7項)である(以下、特定の年に実施された社会保障生計調査を、実施年に応じて、「平成22年社会保障生計調査」などという。)。 社会保障生計調査は、後記の方法により選定された約1100世帯 を対象とし、各世帯の状況(世帯類型、世帯員の状況等)や家計の状況等に関する調査票を対象世帯に配布・回収・集計する方法によって行われる。社会保障生計調査によって把握することができる消費支出額のデータには、総務省CPIの指数品目に対応する品目別の消費支出額のデータは含まれておらず、それよりも大きなグループ別での消費支出額の データしか含まれていない。 社会保障生計調査の調査世帯は、全国の受給世帯を対象として全国を地域別に10ブロックに分け、ブロックごとに都道府県・指定都市・中核市のうち1から3か所を調査対象自治体として選定し、そこから抽出する方法によって選定される。 6 本件改定に係る厚労大臣の判断過程本件改定に係る厚労大臣の判断過程について被告が論証する内容は、別紙6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」記載のとおりである。 第3 争点及び争点に関する当事者の主張 1 争点 - 19 -⑴ 本件各取消請求について本件改定の適法性(争点1)⑵ 本件各国賠請求につ 論証内容」記載のとおりである。 第3 争点及び争点に関する当事者の主張 1 争点 - 19 -⑴ 本件各取消請求について本件改定の適法性(争点1)⑵ 本件各国賠請求について本件改定及び本件各国賠請求対象決定(以下、これらを併せて「本件改定等」という。)の国家賠償法(以下「国賠法」という。)上の違法性及 び故意又は過失の有無並びに損害の有無及び額(争点2) 2 争点に関する当事者の主張⑴ 争点1に関する当事者の主張は、別紙7「争点1(本件改定の適法性)に関する当事者の主張」記載のとおりである。 ⑵ 争点2に関する当事者の主張は、別紙8「争点2(本件改定等の国賠法上 の違法性及び故意又は過失の有無並びに損害の有無及び額)に関する当事者の主張」記載のとおりである。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実前記第2の3から5までに記載した前提事実に加え、括弧内掲記の各証拠 及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 生活扶助基準の展開に関する近年の検証及び改定の概要ア平成15年中間取りまとめの内容(乙A13)標準世帯の生活扶助基準額を起点として個々の受給世帯の生活扶助基準額に展開していく過程には、以下の問題点がある(乙A13〔1、2 頁〕。 第1類費の年齢別の較差は、直近の年齢別の栄養所要量及び一般低所得世帯の年齢別の消費支出額の較差と比較して、おおむね妥当なものであるが、年齢階級の幅の在り方や0歳児の第1類費の算定の在り方(人工栄養費の考慮の在り方を含む。)については、見直しの必要 がある。 - 20 -生活扶助基準額のうちの第1類費と第2類費の割合は、一般低所得世帯の消費実態と比べると第1類費が相対的に大きく、かつ 在り方を含む。)については、見直しの必要 がある。 - 20 -生活扶助基準額のうちの第1類費と第2類費の割合は、一般低所得世帯の消費実態と比べると第1類費が相対的に大きく、かつ、第1類費が年齢階級別に組み合わされるため、多人数世帯ほど生活扶助基準額が割高になる。これを是正するためには、生活扶助基準額のうちの第2類費の構成割合を高めたり、世帯人員別に定められている第2類費の換算 率を多人数世帯ほど小さくしたりする方向で見直しを行う必要がある。 単身世帯の生活扶助基準額における第1類費と第2類費の構成割合は、現在の標準世帯(夫婦子一人の世帯)を起点としてそこから展開する方法によっては、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映させることができない。一般に単身世帯数が増加傾向にあるところ、受給世帯の 約7割が単身世帯であること、単身世帯における第1類費と第2類費を区分する実質的な意味は乏しいことも踏まえると、単身世帯については、別途の生活扶助基準を設定することを検討することが望ましい。 イ平成16年報告書の内容(乙A4)現行の生活扶助基準額は、個々の世帯員ごとに算定された額を足し 上げて世帯分の受給額が算定される第1類費に、世帯規模の経済性を考慮し世帯人員の数に応じて世帯分の受給額が算定される第2類費を合算して算定されるため、世帯人員別に見ると、必ずしも一般低所得世帯の消費実態が反映されたものとなっていない。そのため、以下の点について改善が図られるよう、所要の見直しを検討する必要がある (乙A4〔4頁〕)。 a 第1類費の年齢階級の設定の在り方の見直し(第1類費の年齢階級の幅の拡大、人工栄養費の在り方も含めた0歳児の第1類費の設定の在り方の見直し等)b 多人数世帯の生活扶助基準額 4頁〕)。 a 第1類費の年齢階級の設定の在り方の見直し(第1類費の年齢階級の幅の拡大、人工栄養費の在り方も含めた0歳児の第1類費の設定の在り方の見直し等)b 多人数世帯の生活扶助基準額の設定の在り方の見直し(生活扶助 基準額における第2類費の構成割合、多人数世帯の換算率に関する - 21 -見直しのほか、世帯規模の経済性を高めるような設定等)c 単身世帯の生活扶助基準額の設定の在り方の見直し(一般低所得世帯との均衡を踏まえて別途の生活扶助基準を設定すること)一般低所得世帯の生活扶助相当支出額をみると、地域差が縮小する傾向が認められたことから、今後、詳細なデータによる検証を行った上、 級地制度全般について見直しを検討する必要がある(乙A4〔6頁〕)。 ウ平成16年報告書の内容を踏まえた生活扶助基準の改定厚労大臣は、前記イbの指摘を踏まえ、平成17年度の生活扶助基準の改定において、4人世帯の第1類費に「0.95」、5人以上世帯の第1類費に「0.90」の逓減率を乗じ、4人以上世帯の第2類費を抑 制する旨の見直しを行った(乙A5〔6頁〕、A7の3〔14頁〕)。 エ平成19年報告書の内容(乙A5)「体系の妥当性」(現行の生活扶助基準が世帯構成を異にする受給世帯間の生活水準の較差を反映しているかどうか)及び「地域差の妥当性」(現行の生活扶助基準が異なる級地間の生活水準の較差を反映して いるかどうか)については、以下のとおり、現行の生活扶助基準額の展開の在り方が一般低所得世帯間の生活扶助相当支出額の較差(ばらつきの程度)とかい離しているため、問題がある。 a 年齢階級別の較差については、生活扶助基準額を単身世帯の第1~第3・五分位世帯における年齢階級別の生活扶助相当支出額と比較 出額の較差(ばらつきの程度)とかい離しているため、問題がある。 a 年齢階級別の較差については、生活扶助基準額を単身世帯の第1~第3・五分位世帯における年齢階級別の生活扶助相当支出額と比較 すると、20歳~39歳及び40歳~59歳の年齢階級では生活扶助基準額が生活扶助相当支出額よりも相対的にやや低めであるのに対し、70歳以上の年齢階級では生活扶助基準額が生活扶助相当支出額よりも相対的にやや高めであるなど、消費実態からややかい離している(乙A5〔7頁〕)。 b 世帯人員別の較差については、生活扶助基準額を第1・五分位世帯 - 22 -における世帯人員別の生活扶助相当支出額と比較すると、4人世帯及び5人世帯では生活扶助基準額が生活扶助相当支出額に比べて相対的にやや高めとなっており、世帯人員が4人以上の多人数世帯に有利であるのに対し、世帯人員が少ない世帯に不利となっている(乙A5〔6頁〕)。 c 級地別の較差については、現行の級地制度における地域差を設定した昭和59年当時の消費実態と、直近(平成16年)の消費実態を比較すると、地域間の消費水準の差は縮小してきている(乙A5〔9頁〕)。 個人的経費である第1類費相当の支出額についても世帯人員による スケールメリットがある一方で、世帯共通経費である第2類費相当の支出額についても世帯員の年齢階級別で差があることから、第1類費と第2類費に区分された基準額が一般低所得世帯の消費実態を反映しているとはいえない状況となっている。このため、世帯人員別のスケールメリットを消費実態に合わせて反映させるためには、必ずしも第1類費、第 2類費に区分する必要性はないと考えられる。(乙A5〔7頁〕)オ平成19年報告書を踏まえた生活扶助基準の改定厚労大臣は、上 を消費実態に合わせて反映させるためには、必ずしも第1類費、第 2類費に区分する必要性はないと考えられる。(乙A5〔7頁〕)オ平成19年報告書を踏まえた生活扶助基準の改定厚労大臣は、上記エの内容を踏まえて、年齢階級別、世帯人員別及び級地別の展開指数について見直しを行うことを検討したものの、平成20年度の予算が編成された平成19年12月当時、原油価格の高騰等が消 費に与える影響等の当時の社会経済情勢を見極める必要性等を勘案し、上記の見直しを見送った(乙A7の1、A43)。 カ平成25年報告書の内容(乙A6)平成21年全消調査の特別集計等のデータを用いて、国民の消費動向、特に一般低所得世帯(第1・十分位世帯)の生活実態を勘案しなが ら、生活扶助と一般低所得者世帯の消費実態との均衡が適切に図られて - 23 -いるか否か等について、年齢階級別、世帯人員別、級地別に基準額と消費実態のかい離を分析することとし、一般低所得世帯の平均消費支出のばらつきの程度を示す「一般低所得世帯の消費実態に基づいた指数」(平成25年検証展開指数)を算定し、これと生活扶助基準額における展開指数とを比較することにより、両者間のかい離の有無及び程度を検 証した(詳細は後記~のとおり)。なお、その際には、仮に第1・十分位世帯の全ての世帯が生活扶助を受給したとした場合の世帯当たりの平均受給額が不変となるようにした上で、年齢別、世帯人員別及び級地別の較差が各世帯の生活扶助基準額に影響する程度を評価する方法を採用した(乙A6〔1、3、24頁〕)。 検証に当たっては、受給世帯の比較対象となる一般低所得世帯のデータとして、第1・十分位世帯のデータを用いたところ、その理由は以下のとおりである(乙A6〔4~5、25~27頁〕、 頁〕)。 検証に当たっては、受給世帯の比較対象となる一般低所得世帯のデータとして、第1・十分位世帯のデータを用いたところ、その理由は以下のとおりである(乙A6〔4~5、25~27頁〕、A60)。 なお、水準の検証においては、比較対象の一般低所得世帯に生活保護受給世帯が含まれると生活扶助基準をそれ自体と比較するような状況と なってしまうため、生活保護受給世帯と考えられる世帯は除去するが、体系及び級地の検証においては、消費同士の相対比較であり生活保護受給かどうかは無関係であることから、生活保護受給世帯と考えられるサンプルは特段除去しないこととされた(乙A59〔2、9頁〕、A66〔2、9頁〕)。 a 過去の検証に倣い、受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態のデータを参照することが現実的であることb 第1・十分位世帯の平均消費水準は、中位所得階層の約6割に達していることc 国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財につい て、第1・十分位世帯に属する世帯における普及状況は、中位所得階 - 24 -層と比べておおむね遜色なく充足されていることd 全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位世帯の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向ではあるものの、特に第1・十分位世帯のみが減少しているわけではないことe 第1・十分位世帯の大部分は経済協力開発機構(OECD)の基準 では相対的貧困線以下にあることf 分散分析等の統計的手法によれば、各十分位世帯間のうち第1・十分位世帯と第2・十分位世帯の間において消費の動向が大きく異なると考えられること年齢階級別の生活扶助基準額(第1類費)の比率(指数)と比較す べき第1・十分位世帯の生活扶助相当支出額のうち第1類費に相 ・十分位世帯の間において消費の動向が大きく異なると考えられること年齢階級別の生活扶助基準額(第1類費)の比率(指数)と比較す べき第1・十分位世帯の生活扶助相当支出額のうち第1類費に相当するもの(以下「第1類費相当支出額」という。また、生活扶助相当支出額のうち第2類費に相当するものを「第2類費相当支出額」という。)の年齢階級別の比率(指数)を算定するに当たっては、以下の手法が用いられた(乙A6〔11~14頁〕)。 a 比較対象となる第1・十分位世帯のデータとして、①スケールメリットが最大となる「世帯の年間収入」に基づく第1・十分位世帯のデータ(以下「データ①」という。)と②スケールメリットが最小となる「世帯員一人当たりの年間収入」(世帯の年間収入を世帯人員数で除したもの)に基づく第1・十分位世帯のデータ(以下「データ ②」という。)の二つを用い、それぞれ後記bの方法により年齢階級別の第1類費相当支出額の理論値を算定した上で、各年齢階級間の理論値間の比率(指数)を算定し、データ①を用いて算定した比率(指数)とデータ②を用いて算定した比率(指数)の平均値をもって年齢階級別の「一般低所得世帯の消費実態に基づいた指数」(平成2 5年検証展開指数)を算定した。 - 25 -b 全消調査には10代以下の単身世帯のデータがほとんどなく、各年齢階級の単身低所得世帯の平均消費支出額のデータからは10代以下の世帯員の一人当たりの平均消費支出額のデータを得ることができないため、回帰分析(ある統計値(被説明変数)について、関連すると推定される指標(説明変数)を用いた数式によってその統計値の動 きを説明する統計手法(乙A59〔4頁〕))によって、様々な年代の世帯人員から成る世帯の消費データから年齢階級別の世帯 、関連すると推定される指標(説明変数)を用いた数式によってその統計値の動 きを説明する統計手法(乙A59〔4頁〕))によって、様々な年代の世帯人員から成る世帯の消費データから年齢階級別の世帯員一人当たりの第1類費相当支出額の理論値を推計した。 世帯人員別の生活扶助基準額(第1類費、第2類費別)の比率(指数)と比較すべき第1・十分位世帯の生活扶助相当支出額(第1類費相 当支出額、第2類費相当支出額別)の世帯人員別の比率(指数)を算定するに当たっては、以下の手法が用いられた(乙A6〔14~19頁〕)。 a まず、世帯人員別の世帯(単身世帯から5人世帯まで)の第1・十分位世帯のデータを用い、世帯人員別の世帯の消費支出の平均値(第 1類費相当支出額、第2類費相当支出額別)を算定した上で、同平均値についての世帯人員別の世帯間の比率(指数)を算定した。 b 次に、データ①及びデータ②を用いた回帰分析によって第1類費相当支出額、第2類費相当支出額のそれぞれの世帯人員別の平均値の理論値を推計した上で、これらの理論値の指数と上記aで算定した指数 を比較して、両者が整合しているかどうかを確認した。その結果、二人世帯以外の世帯における両指数は整合していたのに対し、二人世帯における両指数はかい離していたことから、第1類費相当支出額、第2類費相当支出額のそれぞれについて二人世帯以外のデータを用いて得られる指数の最良近似曲線の上に二人世帯の指数があるものとして、 二人世帯の第1類費相当支出額、第2類費相当支出額の各指数の理論 - 26 -値をそれぞれ修正したところ、上記かい離は解消した。 c 以上の過程を経て、前記aで算定した指数をもって世帯人員別の「一般低所得世帯の消費実態に基づいた指数」(平成25年検証展開指数 26 -値をそれぞれ修正したところ、上記かい離は解消した。 c 以上の過程を経て、前記aで算定した指数をもって世帯人員別の「一般低所得世帯の消費実態に基づいた指数」(平成25年検証展開指数)とした。 d なお、世帯人員別の世帯の第1類費相当支出額の平均値を算定する に当たっては、各サンプル世帯の第1類費相当支出額に修正率(世帯人員の数を前記で算定した各年齢階級に応じた第1類費相当支出額の指数(ただし、全年齢の平均値を指数1とする。)の世帯分合計で除した率)を乗ずることにより、世帯間の年齢構成の違いによる影響を除去している。 級地別の生活扶助基準額の比率(指数)と比較すべき第1・十分位世帯の生活扶助相当支出額の級地別の比率(指数)を算定するに当たっては、以下の手法が用いられた(乙A6〔19~22頁〕)。 a まず、上記の検証の過程で得られる第1類費相当支出額(ただし、上記dのとおり年齢構成による影響を除去したもの)と第2類費相 当支出額の世帯人員に応じた指数の合計によって世帯年収を除して得られる世帯員一人当たり実質年収に関する第1・十分位世帯のデータを用い、各級地に居住する世帯の生活扶助相当支出額の平均値を算定した上で、級地間の同平均値の比率(指数)を算定した。 b 次に、データ①及びデータ②を用いた回帰分析によって生活扶助相 当支出額の級地別の平均値の理論値を推計した上で、これらの理論値の指数と上記aで算定した指数を比較して、両者が整合しているかどうかを確認したところ、両者間に大きなかい離は認められなかった。 c 以上の過程を経て、前記aで算定した指数をもって級地別の「一般低所得世帯の消費実態に基づいた指数」(平成25年検証展開指数) とした。 - 27 -d なお、級地 れなかった。 c 以上の過程を経て、前記aで算定した指数をもって級地別の「一般低所得世帯の消費実態に基づいた指数」(平成25年検証展開指数) とした。 - 27 -d なお、級地別の世帯の生活扶助相当支出額の平均値を算定するに当たっては、前記aのとおり、各サンプル世帯の第1類費相当支出額について、世帯間の年齢構成の違いによる影響を除去したデータを用いていることに加え、各サンプル世帯の生活扶助相当支出額を前記で算定し世帯人員に応じた指数で除することにより、世帯間の世帯人員 の違いによる影響を除去している。 検証の結果、以下の表(乙A6〔8頁〕から抜粋)のとおり、年齢階級別、世帯人員別及び級地別のいずれにおいても、現行の生活扶助基準における指数の分布(以下の表における青線)と「一般低所得世帯の消費実態に基づいた指数」(平成25年検証展開指数)の分布(以下の 表における赤線)との間にはかい離が認められた。 これらのかい離については、以下のように解釈することができる。 a 年齢階級別の指数のかい離からは、第1類費相当支出額の年齢階級間の比率は生活扶助基準額が想定する比率よりもフラットに近い実態 がある(乙A6〔14頁〕)。 b 世帯人員別の指数のかい離からは、第1類費相当支出額の世帯人員 - 28 -間の比率には生活扶助基準額が想定するよりもスケールメリットが働いている実態がある一方で、第2類費相当支出額の世帯人員間の比率には生活扶助基準額が想定するよりもスケールメリットが働いていない実態がある(乙A6〔19頁〕)。 c 級地別の指数のかい離からは、生活扶助相当支出額の級地間の較差 は現行の生活扶助基準額が想定するほどに大きくない実態がある(乙A6〔22頁〕)。 上記で明ら る(乙A6〔19頁〕)。 c 級地別の指数のかい離からは、生活扶助相当支出額の級地間の較差 は現行の生活扶助基準額が想定するほどに大きくない実態がある(乙A6〔22頁〕)。 上記で明らかとなった「一般低所得世帯の消費実態に基づいた指数」(平成25年検証展開指数)に生活扶助基準の展開指数を完全に合致させた場合の生活扶助基準額(第1類費、第2類費のほか、冬季加算、 子どもがいる場合は児童養育加算、一人親世帯は母子加算を含む。)の増減率を一部例示すると、以下の表(ただし、子は18歳未満、高齢夫婦世帯は夫婦共に60歳以上の世帯、高齢単身世帯は60歳以上の世帯、若年単身世帯は20代から50代までの世帯、母子世帯は子一人の世帯にそれぞれ限っている。)のとおりとなるところ、各世帯への影響は、 世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の組合せによって様々であるといえる(乙A6〔7~8頁〕)。 世帯年齢による影響世帯人員による影響地域による影響合計夫婦子一人-2.9%-5.8%+0.1%-8.5%夫婦子二人-3.6%-11.2%+0.2%-14.2%高齢夫婦+2.7%-1.9%+0.7%+1.6%高齢単身+2.0%+2.7%-0.2%+4.5%若年単身-3.9%+2.8%-0.4%-1.7%母子世帯-4.3%-1.2%+0.3%-5.2%以上を踏まえ、検証の結果に関しては、以下の諸点に留意する必要がある(乙A6〔8~9頁〕)。 - 29 -a 生活扶助基準の見直しを検討する際には、平成25年報告書の評価・検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標等を総合的に勘案する場合には、それら ~9頁〕)。 - 29 -a 生活扶助基準の見直しを検討する際には、平成25年報告書の評価・検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標等を総合的に勘案する場合には、それらの根拠についても明確に示されたい。なお、その際には現在保護を受給している世帯及び一般低所得世帯への見直しが及ぼす影響についても慎重に配慮されたい。 b 展開指数を平成25年検証展開指数に完全に合致させたとしても、生活扶助基準額と一般低所得世帯の消費実態との間には、世帯構成によって様々に異なる差が生じ得る。こうした差は金銭的価値観や将来見込みなど、個々人や個々の世帯により異なり、かつ、消費に影響を及ぼす極めて多様な要因により生ずるものと考えられる。しかし、特 定の世帯構成等に限定して分析する際にサンプルが極めて少数となるといった統計上の限界があったことなどもあり、具体的にどのような要因がどの程度消費に影響を及ぼすかは現時点では明確に分析することはできなかった。 c 平成25年検証で採用した検証手法は、専門的議論の結果得られた 透明性の高い一つの妥当な手法であるが、これが唯一の手法ということでもない。今後、政府部内において具体的な保護基準の見直しを検討する際には、今回の検証結果を考慮しつつも、同時に検証方法について一定の限界があることに留意する必要がある。 d 全所得階層における年間収入総額に占める各所得五分位及び十分位 の年間収入総額の構成割合の推移をみると、第3・五分位及び第1・十分位の占める割合が共に減少傾向にあり、その動向に留意しつつ、これまで生活扶助基準検証の際参照されてきた一般低所得世帯の消費実態については、なお今後の検証が必要である。 取り分け第1・十分位の者にとっては、全所得階層における年間収 の動向に留意しつつ、これまで生活扶助基準検証の際参照されてきた一般低所得世帯の消費実態については、なお今後の検証が必要である。 取り分け第1・十分位の者にとっては、全所得階層における年間収 入総額に占める当該分位の年間収入総額の構成割合にわずかな減少が - 30 -あっても、その影響は相対的に大きいと考えられることに留意すべきである。 また、現実には第1・十分位の階層には生活保護基準以下の所得水準で生活している者も含まれることが想定される点についても留意が必要である。 e 生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、受給世帯及び一般低所得世帯、取り分け貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある。さらに、基準額の見直しによる影響の実態を把握し、今後の検証の際には参考にする必要がある。 ⑵ 本件改定に至るまでの生活扶助基準の水準に関する検証及び改定の概要ア水準均衡方式の採用水準均衡方式は、社福審が昭和58年12月23日付けで取りまとめた「生活扶助基準及び加算のあり方について(意見具申)」と題する厚労大臣への意見具申書において、当時の生活扶助基準が一般国民 の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達していると評価することができるとしたこと(乙A8〔1~2頁〕)を踏まえ、昭和59年以降採用されるに至った生活扶助基準の改定方式である(前記第2の4⑵ア)。 上記の評価において、一般国民の消費水準として参照されたのは、 第2.99・五十分位世帯の消費水準であったところ、これは、昭和54年家計調査の特別集計に基づく収入階級別の消費支出額によれば、「変曲点」に該当する所得水準が第2.99・五十分位にあると判断されたことに基づいている。すなわち 費水準であったところ、これは、昭和54年家計調査の特別集計に基づく収入階級別の消費支出額によれば、「変曲点」に該当する所得水準が第2.99・五十分位にあると判断されたことに基づいている。すなわち、ここでいう「変曲点」とは、それ以上所得が減った場合には、社会的に必要不可欠な消費水準すら 維持することができなくなり、急激に消費水準が低下するような所得 - 31 -水準を指すところ、変曲点以下の所得水準では最低生活を営むことが難しくなるとの考えに基づき、生活扶助基準と一般国民の消費水準との均衡を評価する上で、第2.99・五十分位世帯の消費水準が参照されたものである。(乙A32)なお、生活扶助基準の改定においては、生活扶助基準額が最低生活 の需要を満たすに足りる費用の額を示すものであり、その改定において物価変動の消費に対する影響を取り除くべきではないことから、水準均衡方式による改定において参照される民間最終消費支出としては、名目値(実際に市場で取引されている価格に基づく推計値であって、ある年からの物価の上昇・下落分を取り除かない値)が用いられている(甲A 12、弁論の全趣旨)。 イ水準均衡方式の採用後、平成12年度頃までの経過水準均衡方式が採用された昭和59年以降の我が国の社会経済情勢は、昭和61年12月から始まったいわゆるバブル景気が平成2年10月頃に終えんし、その後、複合不況といわれる長期間の景気低迷期 からなかなか脱却することができず、賃金、物価及び家計消費がいずれも継続的に下落するデフレ状況にあった(乙A11〔18、24~25頁〕参照)。 こうした社会経済情勢を受け、平成12年5月の社会福祉事業法等一部改正法案に対する衆議院及び参議院の附帯決議においては、生活保 護制度の在り方 た(乙A11〔18、24~25頁〕参照)。 こうした社会経済情勢を受け、平成12年5月の社会福祉事業法等一部改正法案に対する衆議院及び参議院の附帯決議においては、生活保 護制度の在り方について十分検討を行うこととされた(乙A12の2〔2枚目〕)。 他方で、厚労大臣は、水準均衡方式に基づき、一般国民の消費の動向(民間最終消費支出の伸びの予測値及び実績値)を踏まえながらも、その時々の社会経済情勢等を総合的に勘案の上、生活扶助基準について、 昭和59年度から平成12年度までは増額改定(ただし、平成2年度以 - 32 -降は改定率を暫時縮小)をしていた(乙A10)。 ウ平成13年度から平成16年度頃までの経過前記イの社会経済情勢を受け、平成15年6月の社会保障審議会意見及び財政制度等審議会建議において、生活保護制度の在り方の検討の必要性が指摘され(乙A12の2〔2~3枚目〕)、同月27日に閣 議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」においても、「生活保護においても、物価、賃金動向、社会経済情勢の変化、年金制度改革などとの関係を踏まえ、老齢加算等の扶助基準など制度、運営の両面にわたる見直しが必要である」とされた(乙A12の2〔2枚目〕)。 厚労大臣は、上記の指摘等を踏まえ、水準均衡方式の下、生活扶助基準について、平成13年度及び平成14年度は据え置き、平成15年度及び平成16年度は若干の減額改定をした(乙A10)。 エ平成15年中間取りまとめの内容(乙A13)生活保護の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられ るべき相対的なものであり、具体的には、第1・十分位世帯の消費水準に着目することが適当である。そして、生活扶助基準額の水準は、第1・十分 の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられ るべき相対的なものであり、具体的には、第1・十分位世帯の消費水準に着目することが適当である。そして、生活扶助基準額の水準は、第1・十分位世帯の勤労者三人世帯(夫婦子一人)の消費水準との比較において、以下のとおり評価することができる。(乙A13〔1頁〕)a 第1・十分位世帯の勤労者三人世帯(夫婦子一人)の消費水準と勤 労者三人世帯(夫婦子一人)の生活扶助基準額を比較すると、後者が高い。 b 第1・十分位世帯のうち、第1~第2・五十分位世帯の勤労者三人世帯(夫婦子一人)の消費水準と勤労者三人世帯(夫婦子一人)の生活扶助基準額を比較すると、後者が高い。 c 第1・十分位世帯のうち、残りの第3~第5・五十分位世帯の勤労 - 33 -者三人世帯(夫婦子一人)の消費水準と勤労控除額を除いた勤労者三人世帯(夫婦子一人)の生活扶助基準額を比較すると均衡が図られているが、被保護者世帯(受給世帯)の消費可能額である勤労控除額を含めた生活扶助基準額と比較すると、後者が高い。 d 生活扶助基準額及び勤労控除額の評価については、自立支援の在り 方等についての議論を踏まえて、専門委員会において引き続き議論することが必要である。 生活扶助基準の改定の在り方については、以下の点を指摘することができる(乙A13〔2頁〕)。 a 最近の経済情勢は水準均衡方式を採用した当時と異なることから、 例えば5年に一度の頻度で、生活扶助基準の水準について定期的に検証を行うことが必要である。 b 定期的な検証を行うまでの毎年の改定については、近年、民間最終消費支出の伸びの見通しがプラス、実績がマイナスとなるなど安定しておらず、また、実績の確定も遅いため、これによる受給世帯への影 。 b 定期的な検証を行うまでの毎年の改定については、近年、民間最終消費支出の伸びの見通しがプラス、実績がマイナスとなるなど安定しておらず、また、実績の確定も遅いため、これによる受給世帯への影 響が懸念されることから、改定の指標の在り方についても検討が必要である。 c 改定の指標については、国民にとって分かりやすいものとすることが必要なので、例えば、年金の改定と同じように消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることなども考えられる。 オ平成16年報告書の内容(乙A4)生活扶助基準の水準は、第1・十分位世帯の勤労三人世帯(夫婦子一人)の消費支出との比較において、基本的に妥当であると評価することができる。なお、生活扶助基準の検証に当たっては、平均的に見れば、勤労基礎控除も含めた生活扶助基準額が一般低所得世帯の生活 扶助相当支出額よりも高くなっていることなども考慮する必要がある。 - 34 -(乙A4〔3頁〕)今後、生活扶助基準額と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全消調査等のデータに基づき、5年に一度の頻度で検証を行う必要がある(同)。 また、これらの検証に際しては、地域別、世帯類型別等に分けると ともに、調査方法及び評価手法についても専門家の知見を踏まえることが妥当である。同時に、捕捉率(生活保護の受給要件を満たす世帯がどれだけ実際に生活保護を受けているか)についても検証を行う必要があるとの指摘があった。(同)カ平成16年報告書の内容を踏まえた生活扶助基準の改定 厚労大臣は、前記オを踏まえ、平成17年度の生活扶助基準を据え置き、また、その後の平成18年度及び平成19年度の生活扶助基準の各改定においても、当該年度 内容を踏まえた生活扶助基準の改定 厚労大臣は、前記オを踏まえ、平成17年度の生活扶助基準を据え置き、また、その後の平成18年度及び平成19年度の生活扶助基準の各改定においても、当該年度の民間最終消費支出の伸び率を基礎とし、前年度までの一般国民の消費水準との調整を行った結果、その水準を据え置いた(乙A40~A42)。 キ平成19年報告書の内容(乙A5)受給世帯のうち三人世帯の割合が5.5%(平成18年度平均)にすぎないことを踏まえ、夫婦子一人世帯だけではなく、受給世帯の74. 2%(同)を占める単身世帯にも着目して、生活扶助基準額と一般低所得世帯の消費水準(具体的には、直近に実施された平成16年全消調査 のデータに基づく一般低所得世帯の生活扶助相当支出額)を比較することにより、生活扶助基準の水準の検証を行った(乙A5〔4~5頁〕)。 平成19年検証においても、以下の理由から、比較対象とする一般低所得世帯を第1・十分位世帯とした(乙A5〔5頁〕)。 a 第1・十分位世帯の消費水準は平均的な世帯の消費水準に照らして 相当程度に達していること - 35 -b 第1・十分位世帯における必需的な耐久消費財の普及状況は平均的な世帯と比べて大差がないことc 第1・十分位世帯の必需的な消費品目の購入頻度は平均的な世帯と比較してもおおむね遜色ない状況にあること生活扶助基準の水準の妥当性を消費実態との比較により検証した結 果は、以下のとおりである(乙A5〔5頁〕)。 a 夫婦子一人(有業者あり)の第1・十分位世帯における生活扶助相当支出額は世帯当たり14万8781円であったのに対し、それらの世帯の生活扶助基準額は世帯当たり15万0408円であり、生活扶助基準額の方がやや高め(上記の第1・十分 ・十分位世帯における生活扶助相当支出額は世帯当たり14万8781円であったのに対し、それらの世帯の生活扶助基準額は世帯当たり15万0408円であり、生活扶助基準額の方がやや高め(上記の第1・十分位世帯の生活扶助相当支 出額よりも約1.1%高い。)であった。 b 単身(60歳以上の場合)の第1・十分位世帯における生活扶助相当支出額は世帯当たり6万2831円であったのに対し、それらの世帯の生活扶助基準額は世帯当たり7万1209円であり、生活扶助基準額の方が高め(上記の第1・十分位世帯の生活扶助相当支出額より も約13.4%高い。)であった。 ク平成19年報告書の内容を踏まえた生活扶助基準の改定厚労大臣は、平成20年度の予算が編成された平成19年12月当時、平成19年報告書の内容を基礎としつつ、現下の原油価格の高騰が消費に与える影響等を見極めるため、平成20年度の生活扶助基準の改定を行わ ず、これを据え置くこととした(乙A7の1、A43)。 ケ平成19年検証後、平成25年検証までの間の社会経済情勢等平成21年全消調査の結果によれば、平成16年から平成21年にかけて、夫婦子一人世帯を含む二人以上世帯における消費支出額が約6. 0%下落していた(乙A81〔1頁〕)。また、平成16年全消調査に おける夫婦子一人世帯(第1・十分位世帯)の生活扶助相当支出額は約 - 36 -14万8781円であったのに対し(乙A5〔5頁〕)、平成21年全消調査における夫婦子一人世帯(第1・十分位世帯)の生活扶助相当支出額は約13万1500円であり(乙A82)、平成16年から平成21年にかけて約11.6%下落していた。 平成20年9月のリーマン・ショックに端を発した「百年に一度」 とも評される世界金融危機は、我 13万1500円であり(乙A82)、平成16年から平成21年にかけて約11.6%下落していた。 平成20年9月のリーマン・ショックに端を発した「百年に一度」 とも評される世界金融危機は、我が国の実体経済にも大きな影響を与えた(乙A61)。上記の影響は、平成20年から平成23年までの完全失業率(乙A11〔8頁〕)、一般勤労世帯の賃金(事業者規模5人以上の調査産業計の一人平均月間現金給与総額。乙A11〔18頁〕)、消費者物価の変化率(乙A11〔24頁〕)及び全国勤労者世帯家計収 支のうちの家計消費支出の推移(乙A11〔25頁〕)における前年度比の割合にも表れており、以下の表のとおり、完全失業率が4%から5%程度で推移する中で、賃金、物価、家計消費がいずれも下落した。 完全失業率一般勤労世帯の賃金消費者物価上昇率家計消費支出の推移平成20年4.0%-0.3%+1.4%+0.5%平成21年5.1%-3.9%-1.4%-1.8%平成22年5.0%+0.5%-0.7%-0.2%平成23年4.6%-0.2%-0.3%-3.0%前記、のような社会経済情勢を受け、平成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法(平成24年法律第64号)附則2条1号に おいては、「生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化」が明記された(乙A6〔2頁〕)。 a 厚労大臣は、平成21年度の予算が編成された平成20年12月当時、同年2月以降の生活関連物資を中心とした物価上昇が国民の家計に大きな影響を与えていたことに加え、同年9月のリーマン・ - 37 -ショックに端を発した世界金融危機が実体経済へ深刻な影響を及ぼし、国民の将来不安が高まってい 物価上昇が国民の家計に大きな影響を与えていたことに加え、同年9月のリーマン・ - 37 -ショックに端を発した世界金融危機が実体経済へ深刻な影響を及ぼし、国民の将来不安が高まっている状況にあったことを踏まえて、平成21年度の生活扶助基準の改定を行わず、これを据え置くこととした(乙A44)。 b 厚労大臣は、平成22年度の生活扶助基準についても、完全失業率 が高水準で推移するなど、現下の厳しい経済・雇用状況を踏まえ、国民生活の安心が確保されるべき状況にあることに鑑み、改定を行わず、これを据え置くこととした(乙A45)。 c 厚労大臣は、平成23年度及び平成24年度の生活扶助基準についても、これまでの経緯を踏まえ、その時点での経済、雇用情勢等を総 合的に勘案した上で、改定を行わず、これを据え置くこととした(乙A46、A47)。 コ平成25年検証平成25年検証においては、平成21年全消調査の結果を基礎として、現行の生活扶助基準の展開指数を定量的に評価した上で、水準の妥当性に ついても検証を行うことが予定されていたものの(甲A41〔4頁〕、乙A59〔2頁〕)、結果的に、生活扶助基準の水準の妥当性については、検証を行うことができなかった。 サ平成29年報告書の内容(乙A89)本件改定による受給世帯への影響の把握(乙A89〔2~3頁〕) a 平成25年度被保護者調査(年次調査)に基づき、本件改定による生活扶助基準額の増減額及び増減割合を世帯類型別に推計したところ、後者については後記⑶エのとおりであり、母子世帯への減額の影響が大きく(「-6%以上~7%未満」が約4割を占めている。)、多人数の世帯についても減額の影響が大きい傾向が見受けられた。 b 社会保障生計調査及び家計調 おりであり、母子世帯への減額の影響が大きく(「-6%以上~7%未満」が約4割を占めている。)、多人数の世帯についても減額の影響が大きい傾向が見受けられた。 b 社会保障生計調査及び家計調査に基づき、平成24年度から平成2 - 38 -6年度までの各8月から3月までの期間の世帯当たりの支出項目別の平均消費支出月額を世帯類型別に比較したところ、後記⑶エのとおりであり、受給世帯と一般世帯との間及び受給世帯内の各世帯類型間において、支出項目別の支出割合に有意な差があることが認められた一方で、経年の消費割合の推移には有意な差は見られず、本件改定に よる家計への影響を評価するには至らなかった。 モデル世帯についての生活扶助基準の水準の検証(乙A89〔7~10、12~17頁〕)a モデル世帯として、夫婦子一人世帯(ただし、親の年齢が65歳未満、子の年齢が18歳以下(18歳は高校生に限る。)であり、就労 世帯に限る。)と高齢夫婦世帯(ただし、65歳以上の高齢者二人から構成される世帯に限る。)を設定した上で、モデル世帯の生活扶助基準額の水準が一般国民の生活水準と均衡しているか否かを検討した。 その際には、まず、比較対象となる所得階層を設定し、次に、当該所得階層に属する一般世帯の生活扶助相当支出額とモデル世帯の生活扶 助基準額を比較した。 b 夫婦子一人世帯については、全消調査のデータに基づき、消費支出階級第11・五十分位と第12・五十分位の境界値(平均消費支出額は約19万8000円)において、固定的経費(消費支出の総額が変化する際に、それよりも小さな割合で消費支出額が変化する消費支出 費目)の支出割合が有意に上方に変化するとともに、年間収入階級第3・五十分位の値(消費支出額の理論値は約20万2000円) が変化する際に、それよりも小さな割合で消費支出額が変化する消費支出 費目)の支出割合が有意に上方に変化するとともに、年間収入階級第3・五十分位の値(消費支出額の理論値は約20万2000円)と第4・五十分位の間を境として消費支出額が有意に変化しており、両者の結果はほぼ近似しているところ、従前から生活扶助基準の水準の妥当性を検証する際に比較対象とされてきた年間収入階級第1・十分位 世帯の平均消費支出額(約20万2000円)がこれらと同等の水準 - 39 -となっていることから、比較対象となる所得階層を第1・十分位世帯とした。 その上で、本件改定後の生活扶助基準額と第1・十分位世帯の生活扶助相当支出額を比較すると、夫婦子一人世帯の生活扶助基準額の平均値13万6495円に対し、夫婦子一人世帯の第1・十分位世帯の 生活扶助相当支出額は、外れ値を±2σとした場合の平均値(全体の平均との差の絶対値が標準偏差の2倍よりも大きくなる値を除外した平均値)が13万4254円、外れ値を±3σとした場合の平均値(全体の平均との差の絶対値が標準偏差の3倍よりも大きくなる値を除外した平均値)が13万6638円となったことから、おおむね均 衡していると評価した。 c 他方で、高齢夫婦世帯については、消費支出階級第6・五十分位と第7・五十分位の境界値(平均消費支出額は約12万5000円)において、固定的経費の支出割合が有意に上方に変化し、年間収入階級第9・五十分位と第10・五十分位の境界値(平均消費支出額は約1 8万5000円)において消費支出額が有意に変化しているところ、これらの分析結果にはかい離が見られたことから、比較対象となる所得階層を特定することができなかった。このため、高齢夫婦世帯をモデル世帯とした分析におい において消費支出額が有意に変化しているところ、これらの分析結果にはかい離が見られたことから、比較対象となる所得階層を特定することができなかった。このため、高齢夫婦世帯をモデル世帯とした分析においては、生活扶助基準額が一般国民の消費水準と均衡しているか否かを検討することができなかった。 夫婦子一人世帯を起点とした展開後の生活扶助基準の水準の検証(乙A89〔7~11、17~24、27頁〕)a 夫婦子一人世帯を展開の起点として年齢階級別、世帯人員別及び級地別に展開した生活扶助基準額と第1・十分位に属する対応する世帯類型における平均的な消費支出額との比較を試みた。その際の展開指 数の算定に当たっては、年齢階級別及び級地別の展開指数については、 - 40 -回帰分析を用いて算定した第1・十分位世帯の消費支出額に基づく理論値を用い、世帯人員別の展開指数については、そうした理論値のほか、第1・十分位世帯の消費支出額の実データを用いた。 b しかし、世帯人員別の指数について、実データに基づく指数と回帰分析により算定した理論値に基づく指数との間でかい離があり、この かい離は回帰分析において用いた回帰式の立て方に起因するものと考えられたところ、その原因について十分に解明するには至らなかった。 そのため、夫婦子一人世帯については、生活扶助基準額と第1・十分位世帯の生活扶助相当支出額が均衡していることを確認することができたものの、そこから展開した様々な世帯類型における生活扶助基準 額の水準と一般低所得世帯の生活水準が均衡していることを確認することまではできなかった。 ⑶ 基準部会による生活扶助基準の検証の際に参照された各種統計数値及び当事者の主張において引用された各種統計数値等ア本件改定の前後における政府経済見通 ことを確認することまではできなかった。 ⑶ 基準部会による生活扶助基準の検証の際に参照された各種統計数値及び当事者の主張において引用された各種統計数値等ア本件改定の前後における政府経済見通しにおける消費動向の見通し等 水準均衡方式においては、生活扶助基準が適用される年度に想定される政府経済見通しにおける消費動向の「見通し」と、その前年度における消費動向の「見通し」と「実績見込み」の差、前々年度の消費動向の「実績見込み」と「実績」の差を調整した上で、改定の要否についての検討がされているところ(乙A65〔1頁〕)、本件改定前後におけるこれらの指 標の推移は、別表2「平成20年度から平成29年度までの政府経済見通しの推移等」(第34回基準部会資料4(乙A39〔2頁〕、A65〔2頁〕)から抜粋したもの)記載のとおりである。 イ本件改定前後における消費、物価、賃金の動向等本件改定前後における消費、物価、賃金の動向は、別表3「平成2 0年から平成28年までの消費、物価、賃金の動向」(第34回基準部 - 41 -会資料4(乙A48、A65〔10~11頁〕)から抜粋したもの)及び別表4「平成21年(9月~11月)と平成26年(9月~11月)の各3月平均の伸び率の比較」(第34回基準部会資料4(乙A65〔8頁〕)から抜粋したもの)記載のとおりである。 なお、全消調査の第1・十分位世帯(夫婦子一人世帯)の生活扶助 相当支出額の数値については、加藤勝信厚労大臣(当時)が、平成30年1月29日開催の第196回国会衆議院予算委員会において、平成21年の数値を「約13万1500円」、平成26年の数値を「約13万6600円」、平成26年の数値の方が平成21年の数値よりも約5100円高く、率にして3.9%増加 会衆議院予算委員会において、平成21年の数値を「約13万1500円」、平成26年の数値を「約13万6600円」、平成26年の数値の方が平成21年の数値よりも約5100円高く、率にして3.9%増加している旨の答弁をしている(乙A 82)。 平成16年と平成21年の全消調査の結果によれば、二人以上の世帯の9月から11月までの1か月平均消費支出額は、平成16年が32万0063円、平成21年が30万0936円であり、平成16年から平成21年にかけて、率にして6.0%減少している(乙A81〔1~ 2頁〕、弁論の全趣旨)。 デフレ調整の対象期間の前後における総務省CPIの総合指数の推移は、別表5「平成19年から平成23年までの間の総務省CPIの総合指数の推移」(乙A29、A35~A37から抜粋したもの又はこれを換算したもの)記載のとおりである。 ウ受給世帯の世帯類型別の数・構成割合等の推移本件改定前後における世帯類型別、世帯人員別の受給世帯の数及び構成割合は、別表6「受給世帯における世帯類型別の世帯数及び構成割合の推移」(第1回社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会資料4(甲A43〔5頁〕)から抜粋したもの)及び別表7「世帯類型・ 世帯人員別の受給世帯数の年次推移」(国立社会保障・人口問題研究所 - 42 -の公表資料(甲A79)から抜粋したもの)記載のとおりである。 エ世帯類型ごとの本件改定の影響本件改定による世帯類型別の生活扶助基準額への影響は、別表8「本件改定による世帯類型別の生活扶助基準額への影響」(第29回基準部会資料1(甲A11〔2~5頁〕)から抜粋したもの)記載のとお りである。 本件改定後の受給世帯の世帯類型別の消費支出の状況は、別表9「平成24年度から平 助基準額への影響」(第29回基準部会資料1(甲A11〔2~5頁〕)から抜粋したもの)記載のとお りである。 本件改定後の受給世帯の世帯類型別の消費支出の状況は、別表9「平成24年度から平成26年度までの各年度の8月~3月における世帯類型別・十大費目別の平均支出月額」(第29回生活保護基準部会資料1(甲A11〔7~8、10~11頁〕)から抜粋したもの)記載の とおりである。 オ平成22年総務省CPIの総合指数のウエイトに関する統計数値平成22年総務省CPIの総合指数のウエイトの基礎とされている平成22年家計調査(二人以上世帯)が集計対象とする世帯の年間収入階級別の数は、別表10「平成22年家計調査(二人以上世帯)年間収 入階級別の世帯数」(平成22年家計調査(二人以上世帯)の「第2-6表」「年間収入階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出」(甲A109)から抜粋したもの)記載のとおりである。 平成22年家計調査のうち二人以上世帯を対象としたものと単身世帯を調査対象としたもののそれぞれについての年間収入五分位階級別・ 十大費目別の消費支出の状況は、別表11「平成22年家計調査(二人以上世帯/単身世帯) 年間収入五分位階級別・十大費目別の消費支出の状況」(二人以上世帯については、平成22年家計調査の「第2表」「世帯主の年齢階級・年間収入五分位階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出(二人以上の世帯)」(甲A108の1)から抜粋したもの。 単身世帯については、平成22年家計調査の「第4表」「年間収入五分 - 43 -位階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出(単身世帯)」(甲A80の3)から抜粋したもの)記載のとおりである。 a 二人以上世帯を調査対象とした平成22年家計調査と平成22年社会保 - 43 -位階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出(単身世帯)」(甲A80の3)から抜粋したもの)記載のとおりである。 a 二人以上世帯を調査対象とした平成22年家計調査と平成22年社会保障生計調査の消費支出のデータを十大費目別の構成割合で比較対照した結果は、別表12「平成22年家計調査と平成22年社 会保障生計調査における世帯類型別・十大費目別の消費支出の割合」の「1 2人以上世帯」(平成22年家計調査の結果については、別表11の対応する数値から算定したもの。平成22年社会保障生計調査の結果については、平成22年社会保障生計調査の「表2-2(二人以上世帯)」「消費支出の状況(構成割合)」(甲A 106)から抜粋したもの)記載のとおりである。 b 単身世帯を調査対象とした平成22年家計調査と平成22年社会保障生計調査の消費支出のデータを十大費目別の構成割合で比較対照した結果は、別表12「平成22年家計調査と平成22年社会保障生計調査における世帯類型別・十大費目別の消費支出の割合」の「2 単 身世帯」(平成22年家計調査の結果については、別表11の対応する数値から算定したもの。平成22年社会保障生計調査の結果については、平成22年社会保障生計調査の「表2-4」「消費支出の状況(単身世帯)(構成割合)」(甲A107)から抜粋したもの)記載のとおりである。 平成22年総務省CPIの総合指数のウエイトを参照して、平成20年生活扶助相当CPIと平成23年生活扶助相当CPIを十大費目別に比較すると、別表13-1「平成22年総務省CPIウエイトを用いた十大費目別の平成20年生活扶助相当CPIと平成23年生活扶助相当CPIの比較(要約版)」(別表13-2を要約したもの)記載のと おりであり、その計算過程 成22年総務省CPIウエイトを用いた十大費目別の平成20年生活扶助相当CPIと平成23年生活扶助相当CPIの比較(要約版)」(別表13-2を要約したもの)記載のと おりであり、その計算過程については、別表13-2「平成22年総務 - 44 -省CPIウエイトを用いた十大費目別の平成20年生活扶助相当CPIと平成23年生活扶助相当CPIの比較(詳細版)」(乙A30の数値を基に計算した結果を表形式にまとめたもの)記載のとおりである。 カ特定の生活扶助相当品目の価格の下落率が本件下落率に寄与した程度等 総務省CPIの変化率の分析・評価においては、ある特定の品目又は類の指数の変動が総合指数の変化率にどの程度寄与したかの検討が行われており、そうした寄与の程度を示す尺度として「寄与度」という指標が用いられている。 特定の指数品目の価格指数の変化率の「寄与度」は、次の算式によ り求めることができ、全指数品目の寄与度の合計は、総合指数の変化率と一致する(乙A28〔28頁〕)。 (算式)特定の指数品目の寄与度=(その比較時における価格指数×ウエイト -その基準時における価格指数×ウエイト)÷総合ウエイト÷基準時の総合指数×100平成20年から平成23年までの間、教養娯楽用耐久財、特に、テレビ、ビデオレコーダー、パソコン1、パソコン2及びカメラ(これら の5品目を併せて、以下「テレビ等5品目」という。)について、価格指数の顕著な下落が見られる(甲A89、乙A30)。 そこで、平成20年から平成23年までの間におけるテレビ等5品目の価格の下落率の本件下落率(-4.78%)に対する寄与度を前記の算式を用いて計算すると、次の表のとおり、-3.28%となる (甲A89、乙A30 から平成23年までの間におけるテレビ等5品目の価格の下落率の本件下落率(-4.78%)に対する寄与度を前記の算式を用いて計算すると、次の表のとおり、-3.28%となる (甲A89、乙A30)。 - 45 -なお、以下の計算では、平成22年の指数品目の改定の結果、平成23年生活扶助相当品目に含まれ、かつ、平成20年生活扶助相当品目には含まれていない32品目については、価格の変動がないものとして扱っている。そのため、総合ウエイトについては、平成23年生活扶助相当品目のウエイト総数「6393」を用いる。また、基準時の総合指 数については、別紙6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」の第2の6⑵イ記載のとおり、「104.5」を用いる。 品目名H22ウエイト(①)価格指数(②)①×②寄与度%※2H22平均※1H23平均※1H22平均※1H23平均※1テレビ 205.869.119962.66702.7-1.98ビデオレコーダー 191.6 2490.8 -0.26パソコン1 237.260.12372 -0.27パソコン2 281.6 56321520-0.62カメラ 224.7 1572.9 -0.16小計 1140.9337.232030.310107.7-3.28※1 「価格指数(②)」の「H22平均」欄には、平成22年の年平均の価格指数が、「H23平均」欄には、平成23年の年平均の価格 指数がそれぞれ記 10107.7-3.28※1 「価格指数(②)」の「H22平均」欄には、平成22年の年平均の価格指数が、「H23平均」欄には、平成23年の年平均の価格 指数がそれぞれ記載されている。 また、「①×②」の「H22平均」欄には、平成22年の年平均価格指数を②として用いた場合の数値が、「H23平均」欄には、平成23年の年平均価格指数を②として用いた場合の数値が、それぞれ記載されている。 ※2 寄与度=(「H22平均」の「①×②」-「H23平均」の「①×②」)÷総合ウエイト(6393)÷基準時の総合指数 - 46 -(104.5)×100 2 争点1(本件改定の適法性)について⑴ 判断の枠組みについてア当裁判所の採用する判断の枠組み生活保護法3条によれば、同法により保障される最低生活は、健康 で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならないところ、同法8条2項によれば、保護基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低生活の需要を満たすに十分なものであるのみならず、これを超えないものでなければならないから、仮に、生活扶助基準額が最低生活の 需要を超えるものであれば、これを超えないように生活扶助基準の減額改定をすることは、同項の規定に基づく要請であるということができる。 もっとも、同項にいう最低生活は、抽象的かつ相対的な概念であって、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、これを保護基準 において具体化するに当たっては、国の財政事情を含めた多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づ 況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、これを保護基準 において具体化するに当たっては、国の財政事情を含めた多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とする(最高裁昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁参照)。 そうすると、最低生活の需要の減少を認識・測定し、現行の生活扶助 基準額がこれを超えるものであるとして、かかる需要の減少を生活扶助基準の減額改定(率)という形で具体化するに当たっては、厚労大臣に上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの広範な裁量権が認められるものというべきである。 また、現行の生活扶助基準額が最低生活の需要を超えるものである 場合であっても、生活扶助基準の減額改定をすることには、現に生活扶 - 47 -助を受けて日常生活を営んできた者(以下「被保護者」という。)にとって、生活扶助基準によって具体化されていた日常生活に係る期待的利益の喪失を来す側面があることは否定し得ない。 そうすると、上記のような場合においても、厚労大臣は、最低生活の需要の減少の程度、国の財政事情といった見地に基づく生活扶助基準 の減額改定の必要性を踏まえつつ、被保護者の上記期待的利益についても可及的に配慮するため、減額改定を具体的にどのように実施するかについて、激変緩和措置を講ずることなどを含め、上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの広範な裁量権を有しているものというべきである。 a これらのことからすると、本件改定は、①本件改定の時点において、改定前基準が最低生活の需要を満たすに足りる程度を超えるものであり、かつ、改定後基準が最低生活の需要を満たすに足りるものであるとした厚労大臣の ことからすると、本件改定は、①本件改定の時点において、改定前基準が最低生活の需要を満たすに足りる程度を超えるものであり、かつ、改定後基準が最低生活の需要を満たすに足りるものであるとした厚労大臣の判断に前記の見地からの裁量権の範囲の逸脱又はその濫用がある場合、又は②本件改定に際して激変緩和措置を採 るか否か及びこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした厚労大臣の判断に上記の見地からの裁量権の範囲の逸脱又はその濫用がある場合に限り、生活保護法8条2項に違反して違法となるものというべきである。 b そして、生活扶助基準額の減額改定の前提となる最低生活の需要の 認識・測定・具体化や減額改定の実施方法の策定が前記、のような専門技術的な考察に基づいた政策的判断である一方で、生活扶助基準の改定に当たっては、従前、各種の統計や専門家の作成した資料等に基づいて最低生活の需要に係る推計や一般国民の生活水準、消費実態との比較検討等がされてきた経緯があること(認定事実⑴、⑵参 照)に鑑みると、厚労大臣の上記a①の裁量判断の適否に係る裁判所 - 48 -の審理においては、主として最低生活の需要の認識・測定・具体化に係る判断の過程及び手続に過誤、欠落があるか否か等の観点から、本件改定に見合う最低生活の需要の減少を認識・測定し、これを本件改定の減額改定(率)という形で具体化したことについて、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性(客観的数値 との合理的関連性等)の有無等が審査されるべきであり、厚労大臣の上記a②の裁量判断の適否に係る裁判所の審理においては、本件改定が被保護者の前記のような期待的利益の喪失を通じてその生活に及ぼす影響の程度やそれが上記の激変緩和措置等によって緩和される程 労大臣の上記a②の裁量判断の適否に係る裁判所の審理においては、本件改定が被保護者の前記のような期待的利益の喪失を通じてその生活に及ぼす影響の程度やそれが上記の激変緩和措置等によって緩和される程度等に係る判断の過程及び手続に過誤、欠落があるか否か等の観点か ら、本件改定の具体的な実施方法の選択について、客観的数値との合理的関連性等の有無等が審査されるべきであると解される。 c また、上記bにおける客観的数値との合理的関連性等の審査は、飽くまで、前記、の厚労大臣の広範な裁量権の存在を前提としたものであることを踏まえると、本件改定に係る厚労大臣の判断過程に客 観的数値との合理的関連性等があること、すなわち、同判断過程において論拠とされた統計等の客観的な数値又は専門的知見等(客観的数値等)から本件改定に係る判断が導かれ得ることについては、原告らの主張をも踏まえながら、被告らの論証するところが一応納得し得るものといえるか否かという形で、同判断過程を追試的に検証すること によって審査されるべきものと解される。 (以上につき、最高裁平成22年(行ツ)第392号、同年(行ヒ)第416号同24年2月28日第三小法廷判決・民集66巻3号1240頁、最高裁平成22年(行ヒ)第367号同24年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁参照)。 イ判断枠組みについての当事者双方の主張について - 49 -厚労大臣の判断過程について被告らの論証するところが一応納得することができるか否かについては、飽くまで、厚労大臣の判断過程において現に用いられた客観的数値等のみに基づき審査されるべきであるとする被告らの主張についてa 本件改定に係る厚労大臣の判断過程について被告らの論証するとこ ろを追試的に 臣の判断過程において現に用いられた客観的数値等のみに基づき審査されるべきであるとする被告らの主張についてa 本件改定に係る厚労大臣の判断過程について被告らの論証するとこ ろを追試的に検証するという上記アの判断枠組みからすると、裁判所が多種多様な相対立する利益の中から法的裏付けのないまま優先的価値を有するものを自ら選び出した上で、これを一般的に重視して厚労大臣の判断過程を審査することは適切ではない。そのため、裁判所が、本件改定に係る厚労大臣の判断過程において現に用いられた客観的数 値等に代わるべき別の客観的数値等を提唱し、これに基づいてあるべき生活扶助基準の改定の内容を探求した上で、これと本件改定を比較検討するといった審査の手法は、厚労大臣の広範な裁量権の存在を弁えない判断代置的手法であって適切ではない。被告らの上記主張の意味するところがこのようなものであるならば、その限度で当裁判所の 採用する判断枠組みと整合するものといえる。 b 他方で、本件改定に係る厚労大臣の判断過程において現に用いられた客観的数値等を前提として、そこから本件改定に係る判断が導かれ得るか否かを追試的に検証するに当たっては、上記の客観的数値等が統計等の観点から何を意味し、そこから何が導き出されるのかについ て、原告らの主張をも踏まえる形で吟味する必要があるところ、そのためには、原告らの援用する他の客観的数値等も参照しつつ、それでもなお、上記の判断過程が一応納得し得るものであることが論証されなければならない。そのため、被告らの上記主張の意味するところが、上記の追試的な検証の際に、本件改定に係る厚労大臣の判断過程にお いて現に用いられたもの以外の客観的数値等をおよそ参照することが - 50 -できないというものであるなら するところが、上記の追試的な検証の際に、本件改定に係る厚労大臣の判断過程にお いて現に用いられたもの以外の客観的数値等をおよそ参照することが - 50 -できないというものであるならば、追試的な検証における司法審査の密度を過度に引き下げるものであって、採用することができない。 生活扶助基準の減額改定に係る厚労大臣の判断が司法審査において違法とされるのは、同判断の過程及び手続に、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等、憲法及び生活保護法の趣旨・目的 に反したと評価することができるほどの重大な過誤、欠落がある場合に限られるとする被告らの主張についてa 憲法25条の規定する福祉国家の理念は、生活保護法の規定によってはじめて具体化されるところ、同条1項にいう「健康で文化的な最低限度の生活」は、極めて抽象的・相対的な概念であって、その具体 的な内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、同条の規定の趣旨を現実の立法、保護基準として具体化するに当たっては、国の財政事情等も無視することができないものであることからすれば、生活扶助基準の減額改定が憲法2 5条の規定そのものに違反するとまでいえるのは、現実の生活条件を無視して著しく低い生活扶助基準を設定するなど憲法25条の趣旨・目的に反するものであることが明らかである場合に限られるというべきである。そのため、被告らの上記主張の意味するところが、生活扶助基準の減額改定に係る厚労大臣の判断が憲法25条の規定そのもの に違反する結果、生活保護法8条2項にも違反する場合について、上記のような場合に限定すべきであるというものであるならば、その限度で、首 減額改定に係る厚労大臣の判断が憲法25条の規定そのもの に違反する結果、生活保護法8条2項にも違反する場合について、上記のような場合に限定すべきであるというものであるならば、その限度で、首肯することができる。 b 他方で、生活保護法8条2項に基づく生活扶助基準の減額改定は、飽くまで、同項にいう最低生活の需要の減少に伴い、生活扶助基準が 最低生活の需要を超えるものとなったことを根拠としてされるもので - 51 -あるから、最低生活の需要の減少分の認識・測定・具体化に厚労大臣の広範な裁量権があることを前提としても、最低生活の需要の減少があり、かつ、減額改定が当該減少分に見合うものであるとした厚労大臣の判断過程について、客観的数値との合理的関連性等の観点から被告らの論証するところが一応納得することができるものですらない場 合には、同項に違反することになるといわざるを得ない。そのため、被告らの上記主張の意味するところが、生活扶助基準の減額改定が生活保護法8条2項に違反する場合一般について、減額改定に係る厚労大臣の判断の過程及び手続に現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等と評価することができるほどの重大な過誤、欠落があ る場合に限定すべきであるというものであるならば、採用することができない。 基準部会その他の専門的機関における審議・検討の過程を経ずにされた2分の1処理及びデフレ調整についての司法審査の密度は、そのような審議・検討の過程を経た上でされた改定についてのそれと比べ、 高いものでなければならないとする原告らの主張についてa 前記アのとおり、生活扶助基準の減額改定に係る厚労大臣の判断に対する司法審査は、同判断の過程に客観的数値との合理的関連性等があることについて、被告らの論証 らないとする原告らの主張についてa 前記アのとおり、生活扶助基準の減額改定に係る厚労大臣の判断に対する司法審査は、同判断の過程に客観的数値との合理的関連性等があることについて、被告らの論証するところが一応納得することができるものか否かという形で、同判断過程を追試的に検証することによ って行われるべきであるところ、当該減額改定が基準部会その他の専門的機関による審議・検討の過程を経ていない場合には、被告らとしては、厚労大臣の判断の直接の根拠となるような専門的機関による審議・検討の結果を援用することができないという意味において、そうした結果を容易に援用することができる場合と比べ、上記の論証をす ることが相対的に困難となり得る。そのため、原告らの上記主張の意 - 52 -味するところが、上記のようなことを指摘するものであるならば、その限度で、首肯することができる。 b 他方で、生活保護法は、生活扶助基準の改定に関する専門技術的見地からの検討やそのための専門的知見の収集について、専門家により構成される審議会その他の会議体に諮問すべきか否かなど、具体的な 手続については何ら規定していないし、そうした諮問等を経た場合であっても、厚労大臣がその意見に拘束されるものと解することはできない。そうすると、生活扶助基準の減額改定に当たり基準部会その他の専門的機関による審議・検討を経ていなかったとしても、同減額改定に係る厚労大臣の判断過程に客観的数値との合理的関連性等がある ことについて、被告らが基準部会その他の専門的機関の審議・検証の結果以外に独自の論拠を示すことができ、それによって被告らの論証するところが一応納得することができるものといえる場合には、そのような減額改定は、適法ということができる。そのため、原告ら 審議・検証の結果以外に独自の論拠を示すことができ、それによって被告らの論証するところが一応納得することができるものといえる場合には、そのような減額改定は、適法ということができる。そのため、原告らの上記主張の意味するところが、基準部会その他の専門的機関の審議・検 討の過程を経ていない生活扶助基準の減額改定の適法性の司法審査に当たっては、これらの審議・検討を経たものの適法性の司法審査とは質的に異なる厳格な手法を採用しなければならないというものであるならば、採用することができない。 本件改定は生活外的要素の考慮に基づくものであることから、客観 的数値との合理的関連性等がないことが推認されるべきであるとする原告らの主張について前記アのとおり、生活扶助基準の減額改定に係る厚労大臣の判断に対する司法審査は、同判断の過程に客観的数値との合理的関連性等があることについて、被告らの論証するところが一応納得することができるも のか否かという形で、同判断過程を追試的に検証することによって行わ - 53 -れるべきであるところ、同判断が生活外的要素の考慮に基づくものであることと上記の論証が一応納得することすらできないものであることは一応別個の問題であり、前者から後者を導くことができる一般的な経験則があるとまではいえない。また、被告らは、本件改定に係る厚労大臣の判断過程について、別紙6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程につ いての被告らの論証内容」記載のとおり、主として客観的数値との合理的関連性等を論拠として挙げており、生活外的要素のみによって同判断を正当化しているわけではないことからすると、本件改定の適法性の審査に当たっては、同別紙において論拠として挙げられている客観的数値等から本件改定に係る厚労大臣の判断が導か 外的要素のみによって同判断を正当化しているわけではないことからすると、本件改定の適法性の審査に当たっては、同別紙において論拠として挙げられている客観的数値等から本件改定に係る厚労大臣の判断が導かれ得ることについての被告 らの論証が一応納得することができるものか否かを端的に検討すれば足り、あえて、本件改定が生活外的要素の考慮に基づくものであるか否かを検討する必要はない。 したがって、原告らの上記主張は、採用することができない。 生活保護法8条1項、2項に違反する本件改定は、制度後退禁止原 則を定める社会権規約2条、9条及び11条1項に違反するとともに、制度後退禁止原則がその趣旨に読み込まれるべき憲法25条にも違反するとする原告らの主張について社会権規約2条、9条及び11条1項は、社会権規約の各規定が定める権利が各締約国の社会政策による保護に値するものであることを確認 し、各締約国がその実現に向けて積極的に社会政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明するものであると解するのが相当である。そのため、原告らの援用する社会権規約の諸規定が制度後退禁止原則を締約国の法的義務として定めたものと解することはできない。 また、最低生活に係る具体的な権利は、憲法25条の規定の趣旨を実 現するために制定された生活保護法によってはじめて具体化されるとこ - 54 -ろ、同条1項にいう「健康で文化的な最低限度の生活」は、極めて抽象的・相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、同条の規定の趣旨を現実の立法として具体化するに当たっては、国の財政事情等を 無視することができ ・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、同条の規定の趣旨を現実の立法として具体化するに当たっては、国の財政事情等を 無視することができないものであることからすれば、いったん立法により最低生活に係る権利が具体化された場合であっても、上記の諸事情やこれに対する評価の変更に伴い、当該具体的な権利の内容が権利者に不利益に変更される場合があることも、当然に予定されているというべきである。そのため、制度後退禁止原則が憲法25条の趣旨に読み込まれ るべきであると解することもできない。 したがって、原告らの上記主張は、採用することができない。 ⑵ ゆがみ調整に係る厚労大臣の裁量判断の適否について ア 「改定前基準の展開指数を一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態を踏まえたものに是正するため、これを平成25年検 証展開指数に合致させる方向で改定することとした厚労大臣の判断過程に客観的数値との合理的関連性等がある」とする被告らの論証は一応納得することができるものといえるか否かについて厚労大臣が「受給世帯間の較差を解消するため、改定前基準の展開指数を一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態 を踏まえたものに是正する必要がある」と判断した点について受給世帯間の公平が図られるように生活扶助基準を展開するに当たっては、展開指数が年齢階級別、世帯人員別、級地別に見た場合の最低生活の需要のばらつきを反映したものでなければならず、そうした最低生活の需要のばらつきについては、受給世帯とおおむね同じ消費支出の水 準にある一般低所得世帯間における消費支出のばらつきを参照すること - 55 -により、認識・測定され、これに応じた具 活の需要のばらつきについては、受給世帯とおおむね同じ消費支出の水 準にある一般低所得世帯間における消費支出のばらつきを参照すること - 55 -により、認識・測定され、これに応じた具体化(展開指数の設定・改定)が行われてきたものであるところ、被告らの論証するとおり(別紙6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」の「第1」の「1」)、本件改定の時点では、生活扶助基準の展開指数が一般低所得世帯間の消費支出のばらつきの程度を反映していないこと を理由として受給世帯間に較差が生じていることを指摘する旨の専門的知見(平成16年検証、平成19年検証及び平成25年検証)があったにもかかわらず、かかる較差を抜本的に解消するような展開指数の是正は行われていなかった(認定事実⑴)。 したがって、「受給世帯間の較差を解消するため、改定前基準の展開 指数を一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態を踏まえたものに是正する必要がある」と厚労大臣が判断した点について、客観的数値との合理的関連性等があるとする被告らの論証は、一応納得することができるものといえる。 厚労大臣が「上記の是正を図るためには、改定前基準の展開指数 を平成25年検証展開指数に合致させる方向で改定することが必要である」と判断した点についてa 平成25年検証展開指数は、基準部会において、平成21年全消調査の第1・十分位世帯の個票データに基づき(認定事実⑴カ)、参照すべき一般低所得世帯を第1・十分位世帯とした上で(同)、回 帰分析等の統計的手法を用いて、年齢階級別、世帯人員別、級地別に求めた第1・十分位世帯の生活扶助相当支出額の平均値の比率として算定されたものである(同~)。そのため、被告らの論 )、回 帰分析等の統計的手法を用いて、年齢階級別、世帯人員別、級地別に求めた第1・十分位世帯の生活扶助相当支出額の平均値の比率として算定されたものである(同~)。そのため、被告らの論証するとおり(別紙6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」の「第1」の「2⑴、⑶」)、一般低所得世帯の年齢階 級別、世帯人員別、級地別の消費支出のばらつきの程度を統計的に反 - 56 -映したものということができ、改定前基準の展開指数をこれに合致させる方向で改定することにより、改定前基準の展開指数を一般低所得世帯間の消費支出のばらつきの程度を踏まえたものに是正することができるといえる。 b なお、平成25年検証展開指数を算定するに当たり、参照すべき一 般低所得世帯を第1・十分位世帯としたこと及び第1・十分位世帯のサンプルデータから受給世帯に該当すると思われるデータを除外しなかったことについては、平成25年検証においても詳細な理由が付されているところであって(認定事実⑴カ)、被告らの論証するとおり(別紙6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの 論証内容」の「第1」の「2⑵」)、統計的な分析の手法として不合理なものとはいえない。 c したがって、「前記の是正を図るためには、改定前基準の展開指数を平成25年検証展開指数に合致させる方向で改定することが必要である」と厚労大臣が判断した点について、客観的数値との合理的関 連性等があるとする被告らの論証は、一応納得することができるものといえる。 小括このように、「改定前基準の展開指数を一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態を踏まえたものに是正するため、これを 平成25年検証展 いえる。 小括このように、「改定前基準の展開指数を一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態を踏まえたものに是正するため、これを 平成25年検証展開指数に合致させる方向で改定することとした厚労大臣の判断過程に客観的数値との合理的関連性等がある」とする被告らの論証は、一応納得することができるものといえる。 イ 「前記アの改定(ゆがみ調整)に際して一律に2分の1処理をした厚労大臣の判断過程に客観的数値との合理的関連性等がある」とする被 告らの論証は一応納得することができるものといえるか否かについて - 57 -厚労大臣が「ゆがみ調整に際して、改定前基準の展開指数を平成25年検証展開指数に合致させる程度(ここでは、同改定後の展開指数を平成25年検証展開指数で除した割合で表現することとし、以下、この割合を「ゆがみ調整改定度」という。)を、2分の1を上回らないようにする必要がある」と判断した点について a 平成25年報告書によれば、改定前基準の展開指数を平成25年検証展開指数に完全に合致させた場合(ゆがみ調整改定度を1とした場合)には、生活扶助基準額の増減率は、夫婦と18歳未満の子一人世帯では-8.5%となり、夫婦と18歳未満の子二人世帯では-14. 2%となり、母親と18歳未満の子一人の母子世帯では-5.2%と なるなど、特に子どものいる世帯の生活扶助費の減額幅が大きくなることが見込まれたところ(認定事実⑴カ)、平成25年報告書においては、平成25年検証の結果に基づき生活扶助基準の見直しを検討する際には、受給世帯及び一般低所得世帯への影響についても慎重に配慮すべきものとされ、取り分け、貧困の世代間連鎖を防止する観点 から、子どものいる世帯への影響にも配 生活扶助基準の見直しを検討する際には、受給世帯及び一般低所得世帯への影響についても慎重に配慮すべきものとされ、取り分け、貧困の世代間連鎖を防止する観点 から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある点に留意すべきものとされていた(同e)。 b これらのことからすれば、平成25年報告書の内容に照らしても、被告らの論証するとおり(別紙6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」の「第1」の「3⑴ア」)、厚労大 臣において、改定前基準の展開指数を平成25年検証展開指数に合致させた場合に生活扶助費が大きく減額され得る子どものいる受給世帯の期待的利益に着目し、これに可及的に配慮するための激変緩和措置として、ゆがみ調整改定度を、2分の1を上回らない程度にとどめる必要があると判断したことが不合理であるとはいえない。 c したがって、「ゆがみ調整改定度を、2分の1を上回らないように - 58 -する必要がある」と厚労大臣が判断した点について、客観的数値との合理的関連性等があるとする被告らの論証は、一応納得することができるものといえる。 厚労大臣が「平成25年検証展開指数は、改定前基準の展開指数を直ちに完全に合致させなければならないものとして算定されたもので はなく、改定前基準の展開指数を平成25年検証展開指数に直ちに完全に合致させなくても、最低生活の需要を満たすに足りる程度の生活水準を維持することができなくなるものでもないから、2分の1を上回らないようにゆがみ調整改定度を設定することが許容される」と判断した点について a 基準部会における審議・検討の結果は、厚労大臣が生活扶助基準を改定するに当たって重要な意義を有するとはいえ、厚労大臣の判断を法的に拘束するものではなく、厚 れる」と判断した点について a 基準部会における審議・検討の結果は、厚労大臣が生活扶助基準を改定するに当たって重要な意義を有するとはいえ、厚労大臣の判断を法的に拘束するものではなく、厚労大臣の判断における考慮要素の一つとして位置付けられるにとどまるから、平成25年検証の結果を改定前基準の展開指数に反映させる旨の改定を行う場合において、どの 範囲でどのように反映させるかについては、厚労大臣の専門技術的かつ政策的な見地からの裁量判断に委ねられているといえる。 b また、平成25年報告書によれば、平成25年検証展開指数の算定手法は専門的議論の結果に基づく透明性の高い合理的なものと評価することができる一方で、当該手法が唯一のものではなく、同算定手法 には、特定のサンプル世帯に限定して分析する際にサンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界もあることが指摘されていたし、生活扶助基準については基準部会による5年ごとの検証が行われているため、2分の1処理を行うことにより不当な影響が生じた場合には、将来の基準部会において是正する可能性もあったといえる。 c これらのことからすれば、被告らの論証するとおり(別紙6「本件 - 59 -改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」の「第1」の「3⑵ア」)、平成25年検証展開指数は、これに改定前基準の展開指数を直ちに完全に合致させるために算定されたものではないということができるし、全証拠に照らしても、改定前基準における生活扶助基準額が特定の世帯類型について最低生活の需要を満たすに足 りる程度を下回っていたとは認められないから、改定前基準の展開指数を平成25年検証展開指数に直ちに完全に合致させなければ、最低生活の需要を満たすに足りる程度の生活水準 低生活の需要を満たすに足 りる程度を下回っていたとは認められないから、改定前基準の展開指数を平成25年検証展開指数に直ちに完全に合致させなければ、最低生活の需要を満たすに足りる程度の生活水準を維持することができなくなるということもできない。 d したがって、「平成25年検証展開指数は、改定前基準の展開指数 を直ちに完全に合致させなければならないものとして算定されたものではなく、改定前基準の展開指数を平成25年検証展開指数に直ちに完全に合致させなくても、最低生活の需要を満たすに足りる程度の生活水準を維持することができなくなるものではないから、2分の1を上回らないようにゆがみ調整改定度を設定することが許容される」と 厚労大臣が判断した点について、客観的数値との合理的関連性等があるとする被告らの論証は、一応納得することができるものといえる。 2分の1処理は、改定前基準の展開指数を平成25年検証展開指数に合致させた場合に生活扶助費が増額されることとなる受給世帯との関係では激変緩和措置として位置付けることができないし、受給世帯 の中で最も大きな割合を占める高齢者世帯の増額幅を半減させる結果として、ゆがみ調整が是正の対象とした受給世帯間の較差を残存させることとなるため、ゆがみ調整の本質的部分を改変するものであり、基準部会その他の専門的機関の審議・検討を経ないまま行うことは許されないとする原告らの主張について a 2分の1処理は、改定前基準の展開指数を平成25年検証展開指数 - 60 -に合致させた場合に生活扶助費が増額されることとなる受給世帯との関係では激変緩和措置として位置付けることはできないものの、前記のとおり、子どものいる受給世帯との関係では合理的な激変緩和措置として位置付けることができる 活扶助費が増額されることとなる受給世帯との関係では激変緩和措置として位置付けることはできないものの、前記のとおり、子どものいる受給世帯との関係では合理的な激変緩和措置として位置付けることができるものである。そして、仮に、2分の1処理を行うとしても、激変緩和措置として位置付けることができる 後者との関係でしか行うことができず、前者との関係では2分の1処理を行うことができないとなれば、そのような部分的な2分の1処理を行うことにより受給世帯間に新たな較差を生ずることとなり、ゆがみ調整の趣旨に反する事態となってしまう。 b 他方で、2分の1処理をした場合であっても、改定前基準の展開指 数と平成25年検証展開指とのかい離の程度を2分の1の割合で解消し、その限度で受給世帯間の較差を解消することができるところ、前記のとおり、平成25年検証展開指数について、改定前基準の展開指数を直ちに完全に合致させなければならないものとして算定されたものとはいえないことも併せ考慮すれば、ゆがみ調整改定度を2分の 1にしたことにより、解消される上記かい離の程度が2分の1にとどまることになるからといって、そのことがゆがみ調整の本質的部分を改変することになるとまではいえない。 c これらのことからすると、改定前基準の展開指数を平成25年検証展開指数に合致させた場合に生活扶助費が増額されることとなる受給 世帯が大半を占めるという事情や2分の1処理に際して基準部会その他の専門的機関の審議・検討の過程が経られていないことなどを考慮してもなお、被告らの論証するとおり(別紙6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」の「第1」の「3⑴イ、⑵」)、2分の1処理を全世帯について一律に行うことは相当であっ たといえる。 らの論証するとおり(別紙6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」の「第1」の「3⑴イ、⑵」)、2分の1処理を全世帯について一律に行うことは相当であっ たといえる。 - 61 - 小括このように、原告らの上記主張を踏まえても、「ゆがみ調整に際して2分の1処理をした厚労大臣の判断過程に客観的数値との合理的関連性等がある」とする被告らの論証は、一応納得することができるものといえる。 ウゆがみ調整に係る厚労大臣の裁量判断についてのまとめ以上より、ゆがみ調整に係る厚労大臣の裁量判断、すなわち、ゆがみ調整に見合う最低生活の需要のばらつきを認識・測定し、これに2分の1処理をした上で、本件改定の一部として具体化した厚労大臣の裁量判断については、客観的数値との合理的関連性等の有無等という観点から、 その判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえない。 ⑶ デフレ調整に係る厚労大臣の裁量判断についてア厚労大臣が「本件改定の時点において、生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との間に不均衡が生じている兆候があるとし、そのような不均衡が実際に生じている場合には、これを是正するため、生活扶助基 準の減額改定をする必要がある」と判断した点について平成16年から平成21年にかけて、二人以上世帯の消費支出は、約6.0%下落し、夫婦子一人の一般低所得世帯(第1・十分位世帯)の生活扶助相当支出額は、約11.6%下落したところ(認定事実⑵ケ)、平成20年9月のリーマン・ショックに端を発する世界金融危機 の影響により、少なくとも平成23年頃までの間、完全失業率が4~5%で推移する中で、賃金、物価、家計消費等が一様に下落傾向を示すような状況が続いた(同、⑶イ ョックに端を発する世界金融危機 の影響により、少なくとも平成23年頃までの間、完全失業率が4~5%で推移する中で、賃金、物価、家計消費等が一様に下落傾向を示すような状況が続いた(同、⑶イ)。こうした各種の経済指標の低迷は、この間における一般国民の生活水準が下落したことをうかがわせる兆候であったといえる。 他方で、平成19年検証によれば、夫婦子一人世帯の生活扶助基準 - 62 -額(世帯当たり15万0408円)は、第1・十分位に属する夫婦子一人世帯における生活扶助相当支出額(世帯当たり14万8781円)より約1.1%高く、60歳以上の単身世帯の生活扶助基準額(世帯当たり7万1209円)は、第1・十分位に属する60歳以上の単身世帯における生活扶助相当支出額(世帯当たり6万2831円)より約13. 4%高いとされたが(認定事実⑵キ)、その後、本件改定に至るまで生活扶助基準の減額改定はされなかった(同ク、ケ、コ)。このように代表的な世帯類型における生活扶助基準額が第1・十分位世帯の生活扶助相当支出額よりも相対的に高いとされながら、その後も据え置かれたことは、この間における生活扶助基準の水準が最低生活の需要を上回 る状態で推移したことをうかがわせる兆候であったといえる。 これらのことからすると、被告らの論証するとおり(別紙6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」の「第2」の「1」)、本件改定の時点において、生活扶助基準の水準と一班国民の生活水準との間に不均衡が生じていることをうかがわせる兆候が あったといえ、そのような不均衡が実際に生じている場合には、これを是正するために生活扶助基準の減額改定をする必要があると判断したこと自体は、当時の社会経済情勢に照らして十分にあ わせる兆候が あったといえ、そのような不均衡が実際に生じている場合には、これを是正するために生活扶助基準の減額改定をする必要があると判断したこと自体は、当時の社会経済情勢に照らして十分にあり得るものであったといえる。 したがって、「本件改定の時点において、生活扶助基準の水準と一 般国民の生活水準との間に不均衡が生じている兆候があるとし、そのような不均衡が実際に生じている場合には、これを是正するため、生活扶助基準の減額改定をする必要がある」と厚労大臣が判断した点について、客観的数値との合理的関連性等があるとする被告らの論証は、一応納得することができるものといえる。 イ厚労大臣が「前記アの減額改定の要否及び程度の指標として、消費の - 63 -動向ではなく、物価変動率を選択する」と判断した点について物価変動率を指標として、デフレ状況下で生活扶助基準を据え置いたことにより生じた最低生活の需要の減少を認識・測定し、これに基づき生活扶助基準の減額改定をするという手法についてa 前記⑴アのとおり、最低生活の需要の減少を認識・測定し、現行 の生活扶助基準額がこれを超えるものである場合に、かかる需要の減少を減額改定という形で生活扶助基準において具体化するに当たっては、厚労大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの広範な裁量権が認められる。そのため、最低生活の需要の減少を認識・測定するためにいかなる指標を用いて何を認識・測定するかについても、それが最低 生活の需要の減少を把握する手法として客観的数値との合理的関連性等が認められるものである限り、厚労大臣の広範な裁量権の行使として是認されるというべきである。 b 我が国は、平成20年9月のリーマン・ショックから少なくとも平成23年頃までの間、デ 合理的関連性等が認められるものである限り、厚労大臣の広範な裁量権の行使として是認されるというべきである。 b 我が国は、平成20年9月のリーマン・ショックから少なくとも平成23年頃までの間、デフレ状況にあったところ(認定事実⑵ケ、 ⑶イ)、デフレ状況下では、従前と同じ量の貨幣で購入することができる財・サービスの量が増加するから、生活扶助基準額が据え置かれた場合には、生活扶助基準額の名目的な受給額は変わらなくとも、その実質的な購買力(受給世帯の可処分所得)は増加することになる。 このことを裏側から見れば、従前と同じ量の財・サービスの購入に必 要な貨幣の量は減少することになるから、貨幣ベースで見た場合の(従前の水準における)最低生活の需要(最低生活の需要を満たすに足りる貨幣の量)は、上記の受給世帯の可処分所得の実質的な増加分と同じ分だけ減少し、その分だけ、据え置かれた生活扶助基準額が最低生活の需要を超過した状態になるということができる。 c このことからすると、被告らの論証するとおり(別紙6「本件改定 - 64 -に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」の「第2」の「2⑴」)、物価変動率を指標として、デフレ状況下で生活扶助基準額が据え置かれたことによる受給世帯の可処分所得の実質的な増加及びこれと表裏の関係にある最低生活の需要の減少を認識・測定するという手法は、そのような局面における生活扶助基準の減額改定の手 法として、客観的数値との合理的関連性等が認められるものということができる。 d なお、ここでいう受給世帯の可処分所得の増加及びこれと表裏の関係にある最低生活の需要の減少という概念について、被告らは、受給世帯の生活水準の実質的な引上げという観点だけでなく、一般国民と の相対的 ここでいう受給世帯の可処分所得の増加及びこれと表裏の関係にある最低生活の需要の減少という概念について、被告らは、受給世帯の生活水準の実質的な引上げという観点だけでなく、一般国民と の相対的な比較において考慮されるべき「一般国民の生活水準の引下げ」という観点をも含むものであるとして、後者の観点からも生活扶助基準の減額改定が基礎付けられる旨主張する(別紙6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」の「第2」の「7⑵」)のに対し、原告らは、後者の観点のみを理由にして生活扶 助基準の減額改定を基礎付けることはデフレ調整の政策目的の範囲を超えるものであるし、物価変動率を減額改定の指標としていることとの論理的一貫性にも欠けるものである旨主張する。 (a)そこで検討するに、生活扶助基準の在るべき水準、すなわち、最低生活の需要を満たすに足り、かつ、これを超えない程度の水準に ついては、一般国民の生活水準との関係において相対的に捉えられるべきものであり、従前の生活扶助基準の水準の検証においても、そのように扱われてきたこと(認定事実⑵ア、エ、オ、キ)、平成20年9月のリーマン・ショックに端を発した世界金融危機による我が国の実体経済に対する種々の悪影響により一般国民の生活 水準が下落したことが本件改定の契機の一つになっていることは否 - 65 -定することができないこと(認定事実⑵ケ)からすれば、原告らの指摘する第183回国会・衆議院厚生労働委員会における政府答弁(甲A78)や国が作成した本件改定に関する説明資料(甲A10の「4.生活保護基準の見直しについて」)において、一般国民の生活水準の下落という観点が明確に打ち出されていなかったとし ても、そうした観点がデフレ調整の政策目的からあえ する説明資料(甲A10の「4.生活保護基準の見直しについて」)において、一般国民の生活水準の下落という観点が明確に打ち出されていなかったとし ても、そうした観点がデフレ調整の政策目的からあえて除外されていたと断ずることはできない。そのため、デフレ調整において認識・測定された受給世帯の可処分所得の実質的な増加及びこれと表裏の関係にある最低生活の需要の減少を生活扶助基準の減額改定という形で具体化するに当たり、この間の一般国民の生活水準の引下 げの程度を一切加味することができないということはない。 (b)他方で、前記のとおり、生活扶助基準の在るべき水準は、一般国民の生活水準との関係において相対的に捉えられるべきものであるところ、物価の下落それ自体は、消費支出額の減少をもたらし得る事情ではあるものの、一般国民の家計における収入がそれ以上の割 合で下落するなどしない限り、一般国民の生活水準を当然に引き下げるものではないから、物価変動率を指標として認識・測定される最低生活の需要の減少は、飽くまで、デフレ状況下において生活扶助基準額が据え置かれたことに起因する受給世帯の生活水準の実質的な引上げ分としてしか説明することができないものである。その ため、一般国民との相対的な比較の観点を強調したとしても、生活扶助の水準となるべき最低生活の需要の減少まで直ちに認識・測定することができるようになるわけではなく、一般国民においては収入額が一定とは限らず、このため必ずしも生じるとは限らない可処分所得の増加が受給世帯においては認識・測定され得るという意味 で、受給世帯の可処分所得が一般国民と比較して相対的に増加した - 66 -といい得る面があるというにとどまる(以下では、このような意味で、受給世帯の可処分所得の「相対的 るという意味 で、受給世帯の可処分所得が一般国民と比較して相対的に増加した - 66 -といい得る面があるというにとどまる(以下では、このような意味で、受給世帯の可処分所得の「相対的、実質的な増加」、生活水準の「相対的、実質的な引上げ」などの表現を用いる。)。 (c)そうすると、仮に、デフレ調整による減額改定の中で、「物価変動を指標として認識・測定された受給世帯の生活水準の(相対 的、)実質的な引上げ分」という説明だけでは十分に論証することができない部分がある場合に、当該部分について、別途、一般国民の生活水準の引下げの程度を加味した結果であるとして論証を補強するのであれば、被告らとしては、客観的数値との合理的関連性等の観点から、物価変動そのものとは異なる別個の論拠に基づき、そ うした加味をすることについて十分な論証をする必要があるというべきである。 水準均衡方式による改定とは別に、物価変動率を指標として生活扶助基準の改定を行うことは、①物価変動を二重に評価するものであるし、②物価変動率と同じ割合で減額改定をすることは消費の動向に着 目する水準均衡方式に基づく従前の改定の在り方と本質的に相容れないものであるとする原告らの主張についてa 原告らの主張①について(a)水準均衡方式による生活扶助基準の改定において参照される民間最終消費支出には、物価の変動分を除去していない名目値が用いら れているから(認定事実⑵ア)、水準均衡方式の下においても、物価の変動は、一般国民の消費実態の変動を通じて、生活扶助基準の改定に一定の影響を及ぼしているとはいえる。 (b)しかし、消費は、物価のほかにも、世帯員の年齢、世帯人員、地域、季節、社会経済情勢の変化等の様々な要素の影響を受けるから、 水準均衡 基準の改定に一定の影響を及ぼしているとはいえる。 (b)しかし、消費は、物価のほかにも、世帯員の年齢、世帯人員、地域、季節、社会経済情勢の変化等の様々な要素の影響を受けるから、 水準均衡方式による改定において改定の指標となる消費の動向は、 - 67 -それが一定の限度で物価の影響を受けることを考慮してもなお、物価とは異なる性質を有する別個の経済指標であるといえる。 (c)そうすると、水準均衡方式による改定とは別に物価変動率を指標として生活扶助基準の改定を行うことは、物価変動そのものを二重に評価するものとはいえず、原告らの主張①を踏まえても、物価変 動率を指標として最低生活の需要の減少を認識・測定する手法を採用することが否定されることにはならない。 b 原告らの主張②について(a)前記のとおり、最低生活の需要の減少を認識・測定するためにいかなる指標を用いて何を認識・測定するかについては、それが最 低生活の需要の減少を把握する手法として客観的数値との合理的関連性等が認められるものである限り、厚労大臣の広範な裁量権の行使として是認されるべきであるところ、物価変動率を指標として、デフレ状況下で生活扶助基準が据え置かれたことによる最低生活の需要の減少を認識・測定するという手法は、そのような局面におけ る生活扶助基準の減額改定の手法として、客観的数値との合理的関連性等が認められるものといえる。 (b)他方で、水準均衡方式による改定は、翌年度の政府経済見通しにおける個人消費の伸び率を基礎としつつ、これに前年度までの一般国民の消費実態の予測値と実績値との差を勘案した調整をした上で 改定率を算定する方式であるところ(前記第2の4⑵ア)、消費の動向には種々の要因が関わり、もとより、その予測を的確に行うこ 一般国民の消費実態の予測値と実績値との差を勘案した調整をした上で 改定率を算定する方式であるところ(前記第2の4⑵ア)、消費の動向には種々の要因が関わり、もとより、その予測を的確に行うことは困難であるし、実際に、別表2「平成20年度から平成29年度までの政府経済見通しの推移等」記載のとおり、近年の政府経済見通しにおいては、見通しと実績との間に相当のかい離もみられる ところである。そのため、水準均衡方式による改定だけでは時宜に - 68 -応じた生活扶助基準の改定がされるか不確実な面があるといわざるを得ず、現に、平成16年検証以降、水準均衡方式による改定だけでなく、5年ごとの検討が行われるようになった経緯があること(同⑶ア)を踏まえると、消費の動向に着目する水準均衡方式による改定と異なる新たな改定手法というだけで、物価変動率を指標 とする生活扶助基準の改定が否定されることにはならない。 (c)これらのことからすると、物価変動率を指標とする生活扶助基準の改定手法が水準均衡方式をはじめとする従前の生活扶助基準の改定方式とは異質なものであるとしても、最低生活の需要の減少を認識・測定する手法として客観的数値との合理的関連性等が認められ るものである以上、原告らの主張②を踏まえても、物価変動率を指標とする生活扶助基準の改定手法を採用することが否定されることにはならない。 小括したがって、「前記アの減額改定の要否及び程度の指標として、消 費の動向ではなく、物価変動率を選択する」と厚労大臣が判断した点について、客観的数値との合理的関連性等があるとする被告らの論証は、原告らの主張を踏まえても、一応納得することができるものといえる。 ウ厚労大臣が「改定指標としての物価変動率を算定する期間を平 ついて、客観的数値との合理的関連性等があるとする被告らの論証は、原告らの主張を踏まえても、一応納得することができるものといえる。 ウ厚労大臣が「改定指標としての物価変動率を算定する期間を平成20年から平成23年までとする」と判断した点について 厚労大臣が「改定指標としての物価変動率を算定する期間の始期を平成20年とする」と判断した点についてa 別表5「平成19年から平成23年までの間の総務省CPIの総合指数の推移」記載のとおり、総務省CPIの総合指数は、平成19年2月頃から上昇基調となり、平成20年8月及び同年9月に最も高い 値となり、同月から下降基調となっている。 - 69 -b このことからすると、この間の物価下落のみに着目し、当該物価下落の期間中、生活扶助基準額が据え置かれたことに起因する受給世帯の相対的、実質的な可処分所得の増加(及びこれと表裏の関係にある最低生活の需要の減少)を根拠に、生活扶助基準の減額改定を検討することを所与とすることができるならば、被告らの論証するとおり (別紙6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」の「第2」の「3⑴」)、指標となる物価変動率の算定始期を当該物価下落の始期である平成20年とした厚労大臣の判断過程には、客観的数値との合理的関連性等があるということができる。 c しかし、物価下落の期間中に受給世帯の可処分所得の相対的、実質 的な増加が生じたとしても、その増加分に見合うだけの減額改定を基礎付けることができるのは(換言すれば、当該物価下落の期間中、生活扶助基準額が最低生活の需要を上記の増加分に見合うだけ超過することになるといえるのは)、飽くまで、当該物価下落の始期において、生活扶助基準額が最低生活の需要を維持するに足りる 物価下落の期間中、生活扶助基準額が最低生活の需要を上記の増加分に見合うだけ超過することになるといえるのは)、飽くまで、当該物価下落の始期において、生活扶助基準額が最低生活の需要を維持するに足りる程度以上の水準 にある場合に限られるのであって、仮に、同時点における生活扶助基準額が上記の水準を下回っていたのであれば、当該物価下落の期間中、生活扶助基準が上記の水準以上に相対的、実質的に引き上げられた時点以降の期間に対応する増加分に見合う限度でしか減額改定を基礎付けることはできない。そのため、平成20年を始期とする物価下落に 着目した生活扶助基準の減額改定をするには、平成20年時点の生活扶助基準額が最低生活の需要を維持するに足りる程度の水準を下回らないことが前提とされなければならない。 d そこで、上記cの前提が成立していたか否かについて検討すると、被告らの論証(別紙6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程について の被告らの論証内容」の「第2」の「3⑶」)において指摘されてい - 70 -る平成19年検証の結果は、平成16年全消調査の結果を用いたものであり、平成20年から4年前のデータに基づくものであること(認定事実⑵キ)、同結果によれば、標準世帯(夫婦子一人世帯)の生活扶助基準額が第1・十分位世帯における生活扶助相当支出額よりも「やや高め」となっているものの、その差は額にして1600円強、 率にして約1.1%にとどまっていたこと(同)、他方で、生活扶助基準は、平成17年度から平成19年度までは据え置かれており(同⑵カ)、また、別表5「平成19年から平成23年までの間の総務省CPIの総合指数の推移」記載のとおり、平成19年から平成20年にかけて総務省CPIが年平均で1.4%上昇していたところ、 物 同⑵カ)、また、別表5「平成19年から平成23年までの間の総務省CPIの総合指数の推移」記載のとおり、平成19年から平成20年にかけて総務省CPIが年平均で1.4%上昇していたところ、 物価上昇は、物価下落とは逆に、貨幣ベースで見た場合の最低生活の需要を増大させる効果があることからすると、平成20年の時点では、生活扶助基準額の水準が最低生活の需要を維持するに足りる程度を下回っていた可能性を否定することができない。 e この点に関し、被告らは、厚労大臣は、平成19年から平成20年 にかけての物価上昇を含む社会経済情勢等を総合的に勘案して、平成20年度の生活扶助基準を据え置いた旨論証しているところ(別紙6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」の「第2」の「3⑶」)、これは、上記dの物価上昇は平成20年時点の生活扶助基準に織り込み済みであるとして、同物価上昇を理由と して平成20年時点の生活扶助基準額が最低生活の需要を維持するに足りる程度を下回っていた可能性はない旨主張するものと解される。 しかし、被告らの指摘する平成20年の生活扶助基準の据置き(認定事実⑵ク)は、水準均衡方式の下で従前行われてきた改定率の算定(前記第2の4⑵ア、認定事実⑵カ参照)と同様のものとはにわかに 認め難い上、平成20年度の予算編成の都合上、平成20年度の生活 - 71 -扶助基準の据置きに当たって考慮することができたのは、せいぜい平成19年12月頃までの物価上昇にとどまるから、平成20年1月から同年9月までの間の物価上昇(別表5「平成19年から平成23年までの間の総務省CPIの総合指数の推移」参照)を平成20年度の生活扶助基準額の据置きの判断に反映させることはできなかったとい わざるを得ない。また、 物価上昇(別表5「平成19年から平成23年までの間の総務省CPIの総合指数の推移」参照)を平成20年度の生活扶助基準額の据置きの判断に反映させることはできなかったとい わざるを得ない。また、被告らの主張によっても、平成21年度以降、本件改定までの間、物価変動を反映させた形での生活扶助基準の据置きの判断はしていなかったというのであるから(認定事実⑵ケも参照)、結局のところ、平成20年1月から同年9月までの物価上昇が生活扶助基準額の据置きに反映された事実はないというほかない。そ のため、被告らの上記主張は、前記cの前提が成立していたことを十分に補強するものとはいえない。 f そうすると、平成20年時点における生活扶助基準額が最低生活の需要を維持するに足りる程度の水準を下回らないという前提が成り立つことについて、被告らの論証には論理の飛躍があるといわざるを得 ない。 g したがって、「改定指標としての物価変動率を算定する期間の始期を平成20年とする」と厚労大臣が判断した点について、客観的数値との合理的関連性等があるとする被告らの論証は、一応納得することができるものとはいえない。 厚労大臣が改定指標としての物価変動率を算定する期間の終期を平成23年とした点についてa 他方で、後記エのとおり、改定指標としての物価変動率については、総務省CPIのデータを基礎とする物価指数の変化率をもって算定することに合理性があるといえるところ、被告らの論証するとおり(別 紙6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内 - 72 -容」の「第2」の「3⑵」)、平成25年改定当時、最新の総務省CPIのデータは、平成23年のデータ(平成24年1月27日公表)であったから(乙A38)、上記の ての被告らの論証内 - 72 -容」の「第2」の「3⑵」)、平成25年改定当時、最新の総務省CPIのデータは、平成23年のデータ(平成24年1月27日公表)であったから(乙A38)、上記の物価指数の変化率を算定する場合の期間の終期を平成23年としたことは、利用し得る最新のデータに基づく物価変動率を算定する上で合理性があったといえる。 b したがって、「改定指標としての物価変動率を算定する期間の終期を平成23年とする」と厚労大臣が判断した点について、客観的数値との合理的関連性等があるとする被告らの論証は、一応納得することができるものといえる。 エ厚労大臣が「改定指標としての物価変動率として、総務省CPIの指 数品目のうち生活扶助相当品目のみを指数品目とし、総務省CPIにおける価格指数をもって個々の指数品目の価格指数とする物価指数の変化率を用いる」と判断した点について物価変動率を算定するには、物価指数を設定した上で、その変化率を算定する必要があるところ、そのためには、対象とする品目(指数品 目)の範囲を特定した上で、基準年と比較年における個々の品目の価格を指数化したデータ(価格指数)が必要となる。そして、被告らの論証するとおり(別紙6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」の「第2」の「4⑴」)、総務省CPIは、受給世帯が家計から支出し得る品目及びその価格指数を網羅した信頼性の高い客 観的なデータであるといえるから(乙A27、A28)、改定指標としての物価変動率の算定に際しては、総務省CPIの指数品目及びその価格指数のデータを用いることに合理性があるといえる。 他方で、改定指標としての物価変動率は、飽くまで、デフレ状況下において生活扶助基準額が据え置かれたことに起 は、総務省CPIの指数品目及びその価格指数のデータを用いることに合理性があるといえる。 他方で、改定指標としての物価変動率は、飽くまで、デフレ状況下において生活扶助基準額が据え置かれたことに起因する受給世帯の可処 分所得の相対的、実質的な増加を認識、測定するための指標であるから、 - 73 -ここで算定されるべき物価変動率からは、受給世帯の家計からの支出が基本的に想定されていない品目(除外品目)の価格変動の影響が除去されなければならないところ、総務省CPIの指数品目には、家賃、教育費、医療費、自動車関係費、NHK受信料等の除外品目が含まれている。 そのため、被告らの論証するとおり(別紙6「本件改定に係る厚労大臣 の判断過程についての被告らの論証内容」の「第2」の「4⑵」)、改定指標としての物価変動率の算定に際しては、総務省CPIの指数品目のうち、生活扶助相当品目のみを指数品目とした上で、その価格指数のデータのみを用いることに合理性があるといえる。 なお、指数品目を生活扶助相当品目に限定することにより、生活扶 助相当品目のうち価格の下落率が高い品目の物価下落率への寄与度は高くなるところ、原告らは、そのような品目として、家電製品を挙げた上で、受給世帯の家計から家電製品に支出される額は一般国民の家計のそれと比べて少ないにもかかわらず、家電製品の価格下落率の寄与度が高くなるような結果は不当であるとして、指数品目を生活扶助相当品目に 限定して物価変動率を算定することには問題がある旨指摘する。 しかし、原告らの指摘する上記問題点は、後記オで検討するウエイトの問題によるところが大きいということができるし、被告らの論証するとおり(別紙6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」の「第2」の する上記問題点は、後記オで検討するウエイトの問題によるところが大きいということができるし、被告らの論証するとおり(別紙6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」の「第2」の「4⑶」)、総務省CPIの指数品目のう ち生活扶助相当品目に指数品目を限定するという手法は、保護の要否及び程度を判断する手法として従前から行われてきたものであること(認定事実⑵キ、)を併せ考慮すれば、原告らの上記指摘を考慮しても、受給世帯の家計からの支出が基本的に想定されていない品目を指数品目から除外することの合理性が否定されることにはならないというべきで ある。 - 74 - したがって、「改定指標としての物価変動率として、総務省CPIの指数品目のうち生活扶助相当品目のみを指数品目とし、総務省CPIにおける価格指数をもって個々の指数品目の価格指数とする物価指数の変化率を用いる」と厚労大臣が判断した点について、客観的数値との合理的関連性等があるとする被告らの論証は、原告らの主張を踏まえても、 一応納得することができるものといえる。 オ厚労大臣が「改定指標としての物価下落率を算定するに当たり、平成22年総務省CPIの総合指数のウエイト(平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイト)を参照する」と判断した点について生活扶助基準の水準は一般国民の生活水準との関連において捉えら れるべき相対的なものであるから、改定指標としての物価変動率を算定する際に参照すべきウエイトは、一般国民の消費構造を反映したものとすべきであるとする被告らの論証部分(別紙6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」の「第2」の「5⑴」)について a 生活扶助基準の水準が一般国民の生活水準との関連におい であるとする被告らの論証部分(別紙6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」の「第2」の「5⑴」)について a 生活扶助基準の水準が一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるとしても、前記イのとおり、物価変動率を指標として認識・測定する対象は、飽くまで、デフレ状況下で生活扶助基準額が据え置かれたことによる受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加であり、そこでいう「相対的」の意味合いは、認 識・測定される受給世帯の可処分所得の増加が、収入額が一定とは限らない一般国民には必ずしも生じないものであるため、受給世帯の可処分所得が一般国民のそれと比較して相対的に増加したといえる面があるというにとどまる(前記イd(b))。換言すれば、ここでは、デフレ状況下において生活扶助基準額が据え置かれたことによる受給 世帯の可処分所得の(相対的、)実質的な増加とは区別された一般国 - 75 -民の生活水準の下落そのものが独立して認識・測定の対象とされているわけではない。 b そうすると、改定指標としての物価変動率を算定するに際しては、デフレ状況下において生活扶助基準額が据え置かれたことにより、従前と同じ貨幣量の生活扶助基準額を受給しながら、より多くの生活扶 助相当品目を購買することができるようになった受給世帯の家計に対する影響を正しく反映することができるようなウエイト、すなわち、受給世帯の消費構造を反映したウエイトが参照されるべきであり、それは、一般国民の消費構造を反映したウエイトと一致するとは限らない。むしろ、所得水準によって消費のウエイトが異なることは、経済 学的な常識であるなどの指摘があるところである(甲A86~88、A91。後記も参照)。 c し イトと一致するとは限らない。むしろ、所得水準によって消費のウエイトが異なることは、経済 学的な常識であるなどの指摘があるところである(甲A86~88、A91。後記も参照)。 c したがって、生活扶助基準の水準が一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるということからは、改定指標としての物価変動率を算定する際に参照すべきウエイトが一般国民 の消費構造を反映したものでなければならないことは導かれず、被告らの前記論証部分には論理の飛躍があるといわざるを得ない。 改定指標としての物価変動率を算定するに当たっては、標準世帯(夫婦子一人の世帯)を含む二人以上世帯の家計支出の平均値に基づくウエイトを参照するのが適切であるとする被告らの論証部分(別紙 6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」の「第2」の「5⑶」)についてa 前記のとおり、物価変動率を指標として認識・測定する対象は、飽くまで「デフレ状況下で生活扶助基準額が据え置かれたことによる受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加」と表裏の関係にある 最低生活の需要の減少であり、これを正しく認識・測定するためには、 - 76 -受給世帯の消費構造を反映したウエイトを参照しなければならない。 b しかし、受給世帯のうち75%以上は単身世帯であり、標準世帯を含む三人世帯は受給世帯の5%程度にすぎない上(別表7「世帯類型・世帯人員別の受給世帯数の年次推移」)、そもそも標準世帯は、その生活扶助基準額が展開の起点となる世帯であるというにとどまり (前記第2の4⑴ア、⑵イ)、その消費構造が受給世帯の標準的な消費構造を反映した世帯であることを意味するものではないから、標準世帯を含む二人以上世帯の家計支出の なる世帯であるというにとどまり (前記第2の4⑴ア、⑵イ)、その消費構造が受給世帯の標準的な消費構造を反映した世帯であることを意味するものではないから、標準世帯を含む二人以上世帯の家計支出の平均値に基づくウエイトを参照したからといって、受給世帯の消費構造を反映したウエイトを参照したことにはならない。 敷衍すると、標準世帯を参照することは、消費の動向を指標とした水準均衡方式の下での改定をするに当たり、展開の前提として、展開の起点となるべき生活扶助基準額が相当か否か(例えば、標準世帯の生活扶助基準額が一般国民又は一般低所得世帯の生活扶助相当支出額と均衡が取れたものであるといえるか否か)を検討する場面において は、合理的であるといえる。他方で、上記の改定とは別に、物価変動率を指標として「デフレ状況下で生活扶助基準額が据え置かれたことによる受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加」と表裏の関係にある最低生活の需要の減少を認識・測定し、これに即した改定率を全受給世帯に一律に乗ずる(各受給世帯のゆがみ調整後基準額に一律 に(1-0.0478)を乗ずる)改定をするに当たり、参照すべきウエイトの基礎とすべき受給世帯の標準的な消費構造(品目別、類別、十大費目別といった物価変動率を算定する際のウエイトの単位となるべきグループごとの消費支出額により構成される家計全体の構造)を検討する場面においては、そうした消費構造を有する世帯として標準 世帯が設定されているわけではなく、実際、後記のとおり、二人以 - 77 -上世帯の平均的な消費構造が受給世帯における標準的な消費構造を反映しているとはいい難い面があることからすれば、標準世帯を参照することは、合理的とはいえない。 c したがって、改定指標としての物価 世帯の平均的な消費構造が受給世帯における標準的な消費構造を反映しているとはいい難い面があることからすれば、標準世帯を参照することは、合理的とはいえない。 c したがって、改定指標としての物価変動率を算定するに当たり、標準世帯を含む世帯類型であるという理由で、二人以上世帯の家計支出 の平均値に基づくウエイトを参照するのが適切であるということはできず、被告らの前記論証部分には論理の飛躍がある。 改定指標としての物価変動率を算定するに当たっては、「恣意的な判断が介在しないという意味での合理性」や「国民に対する説明可能性」という観点から、生活扶助相当品目のうち特定の品目のウエイト のデータだけ除外するなどの個別的な調整を加えたりすることは相当でないとする被告らの論証部分(別紙6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」の「第2」の「5⑷」)についてa 前記のとおり、物価変動率を指標として認識・測定する対象は、 飽くまで「デフレ状況下で生活扶助基準額が据え置かれたことによる受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加」と表裏の関係にある最低生活の需要の減少であり、これを正しく認識・測定するためには、受給世帯の消費構造を反映したウエイトを参照しなければならない。 そして、そうである以上、「恣意的な判断が介在しないという意味で の合理性」や「国民に対する説明可能性」という観点をいかに強調したとしても、改定指標としての物価変動率を算定するに際して受給世帯の消費構造を反映しないウエイトを参照した場合には、デフレ調整に係る厚労大臣の判断過程は客観的数値との合理的関連性等を欠くことになるといわざるを得ない。 b 他方で、厚労大臣としては、生活扶助基準額の減額改定をするに当 - 78 デフレ調整に係る厚労大臣の判断過程は客観的数値との合理的関連性等を欠くことになるといわざるを得ない。 b 他方で、厚労大臣としては、生活扶助基準額の減額改定をするに当 - 78 -たり、「物価変動率」を指標として「デフレ状況下で生活扶助基準が据え置かれたことによる受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加」と表裏の関係にある最低生活の需要の減少を認識・測定しなければならないわけではなく、そのような改定手法に固執する必要もないのであるから、仮に、受給世帯の消費構造を反映したウエイトとする ためには特定の指数品目のウエイトについてのみ総務省CPIの総合指数のウエイトとは異なるものを参照することが必要であるにもかかわらず、そうすることが「恣意的な判断が介在しないという意味での合理性」や「国民に対する説明可能性」という観点から不可能又は著しく困難であると判断するのであれば、「物価変動率」以外の指標を 用いて最低生活の需要の減少を認識・測定し、生活扶助基準額の減額改定をすることを検討すればよいと考えられる。 c これらのことからすると、改定指標としての物価変動率を算定するに当たり、特定の指数品目についてのみ総務省CPIの総合指数のウエイトとは異なるウエイトを参照することは、そうすることが受給世 帯の消費構造を反映したウエイトとするために必要であり、かつ、不可能又は著しく困難ではないのであれば、相当でないとはいえないし、不可能又は著しく困難なのであれば、そもそも「物価変動率」を指標として「デフレ状況下で生活扶助基準が据え置かれたことによる受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加」と表裏の関係にある最低 生活の需要の減少を認識・測定すること自体を断念せざるを得ないのであるから、いずれにしても、 助基準が据え置かれたことによる受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加」と表裏の関係にある最低 生活の需要の減少を認識・測定すること自体を断念せざるを得ないのであるから、いずれにしても、被告らの前記論証部分には論理の飛躍があるといわざるを得ない。 平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイトは受給世帯の消費構造を反映したウエイトであるといえるか否かについて a 前記のとおり、物価変動率を指標として「デフレ状況下で生活扶 - 79 -助基準が据え置かれたことによる受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加」と表裏の関係にある最低生活の需要の減少を認識・測定するためには、受給世帯の消費構造を反映したウエイトを参照しなければならないから、参照すべきウエイトの選択に関する厚労大臣の判断過程に客観的数値との合理的関連性等があるというためには、結局 のところ、平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイト(平成22年の家計調査のうち、二人以上世帯の家計支出の平均値に基づくウエイト)が受給世帯の消費構造を反映したものとなっていることが被告らによって論証されなければならない。 b ここで、平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイトは、平成 22年家計調査(二人以上世帯)によって得られた世帯当たりの品目別消費支出の月額に基づくウエイトであるから、同品目別消費支出の月額が二人以上世帯における世帯当たりの総支出の月額に占める割合として表すことができる(前記第2の5⑴イ参照)。 これに対し、平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイトと比較 対照し得る受給世帯の消費構造のデータ、すなわち、受給世帯の世帯当たりの品目別消費支出の月額を集計した統計データとしては、平成22年社会保障生計調査のデータを挙げるこ 上世帯)ウエイトと比較 対照し得る受給世帯の消費構造のデータ、すなわち、受給世帯の世帯当たりの品目別消費支出の月額を集計した統計データとしては、平成22年社会保障生計調査のデータを挙げることができるものの、社会保障生計調査の対象とする品目は、家計調査の対象とする品目ほど詳細に分化していないため、これと一対一で対応するものではないし、 同一品目の中に生活扶助相当品目と除外品目とが混在しているものもあることから、そのままの形では両者を比較することはできない(前記第2の5⑵ウ参照)。 そこで、以下では、平成22年家計調査と平成22年社会保障生計調査とで一対一で対応する十大費目別のレベルで平成22年家計調査 の消費支出額のデータに基づくウエイト(以下「平成22年家計調 - 80 -査ウエイト」という。)と社会保障生計調査の消費支出額のデータに基づくウエイト(以下「平成22年社会保障生計調査ウエイト」という。)を検討することとし、かつ、その際には除外品目をも含めた形で十大費目別の支出割合を比較対照することとする。また、次の(a)、(b)のとおり、二人以上世帯の消費支出額以外の数値に基 づく消費支出の割合についても検討する。 (a)別表10「平成22年家計調査(二人以上世帯)年間収入階級別の世帯数」によれば、平成22年家計調査の対象世帯のうちほとんどの世帯が受給世帯よりも高い年間収入階級に属する世帯であることがうかがわれるところ、原告らが指摘するように、収入階級が異 なると消費構造も異なる可能性があること(なお、このこと自体は、経済学的な常識であるなどの指摘がある。前記b)を踏まえて、平成22年家計調査ウエイトについては、全収入階級別の平均値だけでなく、第1・五分位世帯の数値に基づく消費支出の割合に 、このこと自体は、経済学的な常識であるなどの指摘がある。前記b)を踏まえて、平成22年家計調査ウエイトについては、全収入階級別の平均値だけでなく、第1・五分位世帯の数値に基づく消費支出の割合についても検討する。 (b)別表6「受給世帯における世帯類型別の世帯数及び構成割合の推移」及び別表7「世帯類型・世帯人員別の受給世帯数の年次推移」によれば、受給世帯は一般国民世帯と比べ、全世帯類型に占める高齢者世帯(平成22年当時で約43%)及び単身世帯(平成22年当時で約76%)の割合が高いことがうかがわれるところ、原告ら の指摘するとおり、世帯類型別に消費構造が異なる可能性を踏まえ、平成22年社会保障生計調査ウエイトについては、全世帯の総数でみた場合の平均値のほかに、世帯類型別の数値に基づく消費支出の割合も検討することとし、平成22年家計調査ウエイト及び平成22年社会保障生計調査ウエイトのいずれについても、二人以上世帯 の数値のほかに、単身世帯の数値に基づく消費支出の割合について - 81 -も検討する。 c 以上を前提に、平成22年家計調査ウエイト及び平成22年社会保障生計調査ウエイトをみると、別表12「平成22年家計調査と平成22年社会保障生計調査における世帯類型別・十大費目別の消費支出の割合」記載のとおりとなる。 すなわち、平成22年家計調査によると、単身世帯においても二人以上世帯においても、平均値と比べ、第1・五分位では、「食料」、「住居」といった日常生活に不可避な費目の消費支出の割合が高く、「交通・通信」、「教育」、「教養娯楽」といった費目の消費支出の割合が低い。しかも、第1・五分位に属する単身世帯の数値と二人以 上世帯の平均値をみると、「食料」、「住居」の消費支出の割合は、前者 通・通信」、「教育」、「教養娯楽」といった費目の消費支出の割合が低い。しかも、第1・五分位に属する単身世帯の数値と二人以 上世帯の平均値をみると、「食料」、「住居」の消費支出の割合は、前者ではそれぞれ25.9%、16.4%であるのに対し、後者ではそれぞれ23.3%、6.3%となっており、また、「交通・通信」、「教育」、「教養娯楽」の消費支出割合は、前者ではそれぞれ9. 3%、0.0%、9.2%であるのに対し、後者では13.4%、4. 0%、11.0%となっており、有意な差がある。 また、平成22年社会保障生計調査によると、高齢者世帯につき、「食料」の支出割合は、単身世帯では平均値とほぼ同一であるが、二人以上世帯では平均値より有意に高く、「住居」の支出割合は、単身世帯か二人以上世帯かを問わず、平均値より有意に高い。これに対し、 「交通・通信」や「教養娯楽」の割合は、単身世帯か二人以上世帯かを問わず、平均値より有意に低い(具体的な数値については、同表の黄色マーカー部分のとおりであり、例えば、高齢者単身世帯では、「食料」29.2%、「住居」34.0%、「交通・通信」5.4%、「教育」0.0%、「教養娯楽」5.1%となっている。)。 d これらのことからすると、一般に、年間収入階級が下がるほど、ま - 82 -た、高齢者世帯(取り分け高齢者単身世帯)であるほど、「食料」、「住居」といった日常生活に不可避な費目の消費支出の割合が増加し、「交通通信」、「教育」、「教養娯楽」といった費目の消費支出の割合が減少するという傾向があることが強く推認され、受給世帯の消費構造、取り分け、その中で最も大きな割合を占める高齢者受給世帯、 高齢者単身受給世帯の消費構造は、厚労大臣が参照した平成22年家計調査(二人以上世帯) 向があることが強く推認され、受給世帯の消費構造、取り分け、その中で最も大きな割合を占める高齢者受給世帯、 高齢者単身受給世帯の消費構造は、厚労大臣が参照した平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイトと比べると、「食料」、「住居」の消費支出の割合が顕著に高く、「交通通信」、「教育」、「教養娯楽」の消費支出の割合が顕著に低いことが強く示唆されるということができる(なお、このような傾向は、平成22年のデータだけでなく、 平成29年検証において、本件改定の影響を把握するために参照された平成24年度から平成26年度の家計調査及び社会保障生計調査のデータ(別表9「平成24年度から平成26年度までの各年度の8月~3月における世帯類型別・十大費目別の平均支出月額」)においても読み取ることができる。認定事実⑵サbも参照)。 以上に加え、前記b(b)のとおり、受給世帯は一般国民世帯と比べ、全世帯類型に占める高齢者世帯(平成22年当時で約43%)及び単身世帯(平成22年当時で約76%)の割合が高いことを併せ考慮すると、平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイトは、受給世帯の消費構造を反映したものとはなっていないとの強い疑義があると いわざるを得ない。 e しかるに、被告らは、原告らから上記dと同趣旨の指摘がされているにもかかわらず、「恣意的な判断が介在しないという意味での合理性」や「国民に対する説明可能性」という観点から特定の指数品目についてのみ総務省CPIの総合指数のウエイトとは異なるウエイトを 参照することは相当ではないなどと主張するにとどまり、上記dの疑 - 83 -義を解消させるような説得的な論証の補強をしていない。 なお、被告らは、社会保障生計調査には調査対象世帯の選定方法や 当ではないなどと主張するにとどまり、上記dの疑 - 83 -義を解消させるような説得的な論証の補強をしていない。 なお、被告らは、社会保障生計調査には調査対象世帯の選定方法やサンプル数の点で精度に欠けるから、受給世帯全体の家計支出の状況を推測する資料として一定の限界があるとも主張する(別紙6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」の「第 2」の「5⑵イ」)。しかし、社会保障生計調査は、厚労省が実施する一般統計調査であり(前記第2の5⑵ウ)、現に、その結果は、平成29年検証においても本件改定による受給世帯への影響の把握のために参照されていること(認定事実⑵サb)からすれば、仮に、統計としての精度において家計調査のような基幹統計調査より劣る点 があるとしても、一定の信用性があるというべきであり、少なくとも、前記c及びdの分析が成り立たないとは認め難い。また、被告らの上記主張は、上記分析のうち平成22年家計調査ウエイトに関する部分の妥当性を何ら左右するものではない。 f また、被告らは、仮に、二人以上世帯の消費構造と受給世帯の多数 を占める単身世帯の消費構造との間に差異があったとしても、それは、生活扶助基準の水準の改定において考慮されるべき事柄ではなく、展開指数の改定において考慮されるべき事柄であるなどと主張するが、平成21年全消調査の特別集計等のデータを用いて行われた平成25年検証及び平成25年報告書の内容をみても(認定事実⑴カ)、また、 これを基にしたゆがみ調整の概要をみても(前記第2の4⑷イ)、前記dで分析した疑義がゆがみ調整(2分の1処理を含む。)を通じた展開の過程において解消されたことが説得的に論証されているとはいえない。 g したがって、平成22年家計 ても(前記第2の4⑷イ)、前記dで分析した疑義がゆがみ調整(2分の1処理を含む。)を通じた展開の過程において解消されたことが説得的に論証されているとはいえない。 g したがって、平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイトは、前 記dで分析した点において、受給世帯の消費構造を反映したものとな - 84 -っていないとの強い疑義がある。 小括以上より、「改定指標としての物価下落率を算定するに当たり、ウエイトとして平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイトを参照する」と厚労大臣が判断した点について客観的数値との合理的関連性等がある とする被告らの論証は、一応納得することができるものとはいえない。 カ改定指標としての物価下落率を算定するに当たり、平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイトを参照したことがデフレ調整による改定率(本件下落率)に与える影響の程度について 十大費目別にみた場合の影響 a 個々の生活扶助相当品目について、{(平成23年平均の価格指数-平成20年平均の価格指数)×平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイト}を計算し、これを十大費目別に集計し(以下、この集計値を「十大費目別の価格指数差×ウエイトの総和」といい、十大費目ごとに、「『食料』の価格指数差×ウエイトの総和」などとい う。)、その大小を比較することにより、平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイトを参照して平成20年から平成23年までの間の改定指標としての物価変動率を算定した場合における十大費目別の価格指数の変動分が本件下落率(-4.78%)に与える影響の度合いを比較対照することができる。 b 上記aの方法による比較対照の結果は、別表13―1「平成22年総務省CPIウエイトを用いた十大費目別の 動分が本件下落率(-4.78%)に与える影響の度合いを比較対照することができる。 b 上記aの方法による比較対照の結果は、別表13―1「平成22年総務省CPIウエイトを用いた十大費目別の平成20年生活扶助相当CPIと平成23年生活扶助相当CPIの比較(要約版)」記載のとおりであり、本件下落率に対応する十大費目別の価格指数差×ウエイトの総和の合計値「-10,654.8」に最も大きな影響を与えた のは、「教養娯楽」の価格指数差×ウエイトの総和「-17,414. - 85 -0」であり、次に大きな影響を与えたのは、「食料」の価格指数差×ウエイトの総和「+6,736.8」であって、プラス方向の影響かマイナス方向の影響かにかかわらず、他の十大費目別の価格指数差×ウエイトの総和の影響と比べて、上記の二つが突出しているということができる(同表の赤色マーカー部分参照)。 c しかし、前記オで検討したところによれば、受給世帯の消費構造を反映したウエイトであれば、平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイトよりも「食料」のウエイトが顕著に大きく、「教養娯楽」のウエイトが顕著に小さい可能性が強く示唆される。このことを踏まえれば、平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイトを参照して改定 指標としての物価変動率を算定したことにより、受給世帯の消費構造を反映したウエイトを参照した場合と比べ、上記bの「教養娯楽」の価格指数差×ウエイトの総和「-17,414.0」が明らかに過大に算定された一方で、「食料」の価格指数差×ウエイトの総和「+6,736.8」が明らかに過少に算定された可能性を否定することがで きない。 d そうすると、本件下落率の算定に当たって平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイトを参照したことにより、十 6,736.8」が明らかに過少に算定された可能性を否定することがで きない。 d そうすると、本件下落率の算定に当たって平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイトを参照したことにより、十大費目別にみた場合には、「教養娯楽」に属する生活扶助相当品目の価格下落が過大に評価され、「食料」に属する生活扶助相当品目の価格上昇が過少に評価 された結果、本件下落率の大半の部分が過大に算定された疑義があるといわざるを得ない。 個別の生活扶助相当品目についてみた場合の影響a 平成20年から平成23年にかけて価格下落率が最も大きかった生活扶助相当品目5つ(テレビ等5品目)の寄与度は合計で-3.2 8%であるから、本件下落率(-4.78%)は、その7割弱の部分 - 86 -がテレビ等5品目の価格の下落の影響によるものということができる(認定事実⑶カ)。 b しかし、テレビ等5品目はいずれも「教養娯楽」に属する指数品目であるから、平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイトを参照した場合には、受給世帯の消費構造を反映したウエイトを参照した場合 と比べ、その価格下落率が過大に算定されている可能性を否定することができない。 c また、総務省CPIの価格指数は基本的に新品の価格を用いて算出するところ(前記第2の5⑴ウ)、受給世帯が、平成22年中に、上記bの可能性を払拭する程度にテレビ等5品目の新品を購入してい たという事実は、全証拠を総合しても認めるに足りない。 d そうすると、個別の生活扶助相当品目についてみた場合にも、本件下落率の算定に当たって平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイトを参照したことにより、テレビ等5品目の価格下落が過大に評価された結果、本件下落率の大半の部分が過大に算定された疑義があると 、本件下落率の算定に当たって平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイトを参照したことにより、テレビ等5品目の価格下落が過大に評価された結果、本件下落率の大半の部分が過大に算定された疑義があると いわざるを得ない。 なお、平成20年から平成23年にかけて、総務省CPIの下落率が-2.35%であったのに対し(争いがない。)、同期間における生活扶助相当CPIの下落率(本件下落率)が-4.78%と高くなっているのも、上記のとおりテレビ等5品目の価格下落が過大に評価 された結果であると考えられる。 小括したがって、改定指標としての物価下落率を算定するに当たり、平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイトを参照したことにより、本件下落率(-4.78%)の大半の部分が過大に算定された疑義がある。 キデフレ調整に係る厚労大臣の判断過程についての検討のまとめ - 87 - 前記アからカまでの検討のとおり、デフレ調整に係る厚労大臣の判断過程のうち、①改定指標としての物価変動率の算定期間の始期を平成20年とした点及び②改定指標としての物価下落率を算定するに当たり、平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイトを参照することとした点について、客観的数値との合理的関連性等があるとする被告 らの論証は、一応納得することができるものとはいえず、その結果、本件下落率(-4.78%)の大半の部分が過大に算定されたとの疑義が生じているといえる。 したがって、その余の点を考慮するまでもなく、デフレ調整に係る厚労大臣の裁量判断、すなわち、物価変動率を指標として、デフレ状況 下で生活扶助基準額が据え置かれたことによる受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加と表裏の関係にある最低生活の需要の減少を認識し、これを 断、すなわち、物価変動率を指標として、デフレ状況 下で生活扶助基準額が据え置かれたことによる受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加と表裏の関係にある最低生活の需要の減少を認識し、これを「-4.78%」と測定した上で、生活扶助基準額をこれと同じ割合だけ減額改定することにより具体化した厚労大臣の裁量判断については、客観的数値との合理的関連性等の有無等という観点から、最 低生活の需要の認識・測定・具体化に係る判断の過程及び手続に過誤、欠落があるといわざるを得ない。 これに対し、被告らは、デフレ状況下において生活扶助基準額が据え置かれたことによる受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加を測定するための指標として、いかなる指標を用いるかについては、厚労 大臣の裁量に委ねられており、測定の正確性を他の考慮要素よりも優先しなければならないわけではない以上、平成20年から平成23年までの間の生活扶助相当CPIの下落率と同期間における受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加率との間に誤差があったとしても、これをもって、デフレ調整に係る厚労大臣の判断過程に過誤、欠落があったと 直ちに評価することはできないと主張する(別紙6「本件改定に係る厚 - 88 -労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」の「第2」の「7⑶」)。 しかし、前記⑶のとおり、デフレ調整に係る厚労大臣の裁量判断については、その改定幅(本件下落率)の大半の部分が過大に算定された疑義があるところ、これは、恣意的な判断が介在しないという意味での 合理性、国民に対する分かりやすさという意味での簡便さ等といった被告らの指摘する他の要素を最大限考慮したとしても、許容し得る誤差の範囲を超えたものといわざるを得ない。 そうすると、指標として 合理性、国民に対する分かりやすさという意味での簡便さ等といった被告らの指摘する他の要素を最大限考慮したとしても、許容し得る誤差の範囲を超えたものといわざるを得ない。 そうすると、指標としての物価変動率を選択するに当たり、測定の正確性以外にも考慮すべき要素があり、この点に関して厚労大臣に合理 的な裁量権があることを前提としても、デフレ調整に係る厚労大臣の判断の過程には過誤、欠落があるといわざるを得ない。 したがって、被告らの上記主張は、採用することができない。 ⑷ 本件改定の適法性等についてア本件改定に係る厚労大臣の裁量判断には、その裁量権の範囲の逸脱又 は濫用があることデフレ調整は本件改定の柱の一つとして位置付けられるものであり、また、本件改定による生活扶助基準額の改定幅は別表8「本件改定による世帯類型別の生活扶助基準額への影響」記載のとおりと見積もられており、それによれば、デフレ調整による改定幅(本件下落率)が本件改定 における改定幅全体に占める割合は大きなものであったといえる。 しかるに、上記⑶のとおり、デフレ調整に係る厚労大臣の裁量判断については、その改定幅(本件下落率)の大半の部分が過大に算定された疑義があり、客観的数値との合理的関連性等の有無等という観点から、最低生活の需要の認識・測定・具体化に係る判断の過程及び手続に過誤、 欠落があるといえる。 - 89 -このように、本件改定において質、量ともに重要な地位を占めるデフレ調整について、上記のとおり、厚労大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落がある以上、本件改定の時点において、本件改定による減額幅と同程度の最低生活の需要の減少があるとした厚労大臣の判断には、その裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるといわざるを得ない。 に過誤、欠落がある以上、本件改定の時点において、本件改定による減額幅と同程度の最低生活の需要の減少があるとした厚労大臣の判断には、その裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるといわざるを得ない。 イ被告らのその他の主張について被告らが指摘する経済指標等の変化についてa 被告らは、本件下落率分だけ生活扶助基準の減額改定をすることを正当化する根拠として、平成20年から平成23年までの間の生活扶助相当CPIの下落率が-4.78%と算定されたことのほか、リー マン・ショックに端を発する世界金融危機の影響により、一般勤労世帯の賃金が平成21年に3.9%の減少となり、平成22年には微増したものの、平成23年には再び減少に転じたこと、家計消費支出も平成21年から平成23年まで3年連続でマイナスとなったこと、平成19年検証において生活扶助基準額と一般低所得世帯の消費実態と の不均衡が指摘されていたこと、全消調査において、平成16年から平成21年にかけて二人以上世帯等の消費支出に大幅な下落があることが確認されたことなどを指摘する(別紙6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」の「第2」の「7⑵」)。 b しかし、前記⑶ウ、オからキのとおり、平成20年から平成23 年までの間の生活扶助相当CPIの下落率を算定しても、これによってデフレ状況下における最低生活の需要の減少を的確に把握することはできないのであり、この点についての厚労大臣の判断の過程及び手続の過誤、欠落の結果、本件下落率(-4.78%)の大半の部分が過大に算定されたとの疑義が生ずる事態となっているところである。 c また、物価変動とは異なる別個の論拠に基づき、一般国民の生活水 - 90 -準の下落を論証し、これを加味する 部分が過大に算定されたとの疑義が生ずる事態となっているところである。 c また、物価変動とは異なる別個の論拠に基づき、一般国民の生活水 - 90 -準の下落を論証し、これを加味することにより、本件下落率を正当化する余地があるとしても(前記⑶イd(c))、被告らの指摘する前記aの諸事情により、一般国民の生活水準の下落がどのように認識・測定され、その結果、本件下落率にどのように結び付くのかについて、客観的数値との合理的関連性等の観点から、十分な論証がされ ていないといわざるを得ない。 d そうすると、被告らが挙げる経済指標等の変化(前記a)を考慮したとしても、本件改定を適法と解することはできない。 平成29年検証の結果についてa 被告らは、本件下落率分だけ生活扶助基準の減額改定をすることを 正当化する根拠として、平成29年検証において、標準世帯について一般低所得世帯(第1・十分位世帯)の生活扶助相当支出額と生活扶助基準額とを比較したところ、おおむね均衡していることが確認された旨指摘する。 b しかし、生活扶助基準の減額改定に係る厚労大臣の判断の過程及び 手続に過誤、欠落があり、そのために同判断に裁量権の逸脱又はその濫用があるとされた以上、事後的に当該改定後の生活扶助基準額と一般低所得世帯の生活扶助相当支出額がおおむね均衡していることが確認されたとしても、そのことによって上記の過誤、欠落の瑕疵が治癒されることはなく、そのような過誤、欠落のある判断の過程及び手続 に基づいてされた生活扶助基準の減額改定である以上、これが違法であることに何ら変わりはないというべきである。 c この点を措くとしても、平成29年検証においては、標準世帯について生活扶助基準額と第1・十分位世帯の 準の減額改定である以上、これが違法であることに何ら変わりはないというべきである。 c この点を措くとしても、平成29年検証においては、標準世帯について生活扶助基準額と第1・十分位世帯の生活扶助相当支出額が均衡していることは確認されたものの、そのほかにモデル世帯として設定 された高齢夫婦世帯については世帯人員別の指数について実データに - 91 -よる場合と回帰分析による場合との結果が異なったため、上記の均衡の有無を確認することができず、その他の世帯類型については上記の検討自体されていないのであるから(認定事実⑵サ、)、結局、平成29年検証においては、受給世帯の約7割を占める単身世帯(別表6「受給世帯における世帯類型別の世帯数及び構成割合の推移」 及び別表7「世帯類型・世帯人員別の受給世帯数の年次推移」参照)をはじめ、受給世帯の大部分(約95%)について、本件改定の影響は明らかにされていない。このため、平成29年検証の結果は、本件下落率分だけ生活扶助基準の減額改定をすることを正当化する根拠として、十分なものではないといわざるを得ない。 d そうすると、平成29年検証の結果を考慮したとしても、本件改定を適法と解することはできない。 小括したがって、被告らの上記各主張は、理由がない。 ウ本件改定の適法性についての結論 以上によれば、本件改定は、その余の点について検討するまでもなく、厚労大臣の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして、生活保護法3条、8条2項の規定に違反し、違法である。 3 本件各取消請求との関係での結論の整理⑴ 本件各主位的取消請求について ア本件各取消請求対象決定は、生活保護法25条2項に基づき、これらの決定前の生活扶助 に違反し、違法である。 3 本件各取消請求との関係での結論の整理⑴ 本件各主位的取消請求について ア本件各取消請求対象決定は、生活保護法25条2項に基づき、これらの決定前の生活扶助費の額を、平成27年告示に基づく生活扶助費の額に変更するものであって、従前の生活扶助費の額を減額するものではないから、本件各主位的取消請求は、存在しない処分の取消しを求めるものというほかない。 イしたがって、本件訴えのうち本件各主位的取消請求に係る訴えは、不適 - 92 -法である。 ⑵ 本件各予備的取消請求についてア平成27年改定を含む本件改定が違法であることは前記2⑷のとおりであるところ、本件各取消請求対象決定は、平成27年改定に基づいてされたものであるから、その余の点を検討するまでもなく、いずれも違法 であって、取り消されるべきものである。 イなお、本件各予備的取消請求は、出訴期間経過後にされた訴えの変更により追加されたものである(前記第2の3⑶エ)。しかし、主位的取消請求1と予備的取消請求1、主位的請求2と予備的請求2は、いずれも本件各取消請求対象決定が違法であるとしてその効力を覆滅しようとす るものであり、その実質において共通していることなどからすると、予備的取消請求1に係る訴えについては、主位的取消請求1に係る訴えの提起時に、予備的取消請求2に係る訴えについては、主位的取消請求2に係る訴えの提起時に、それぞれ提起されたものと同視して出訴期間の遵守において欠けるところがないと解すべき特段の事情があるというべ きであるから、本件各予備的取消請求に係る訴えは、適法である(被告らも、出訴期間の点については特に争っていない。)。 ウしたがって、本件各予備的取消請求は、いずれも理由がある。 うべ きであるから、本件各予備的取消請求に係る訴えは、適法である(被告らも、出訴期間の点については特に争っていない。)。 ウしたがって、本件各予備的取消請求は、いずれも理由がある。 4 争点2(本件不支給の国賠法上の違法性及び故意又は過失の有無並びに損害の有無及び額)について ⑴ 原告らは、本件改定等によって最低生活の需要を満たすに足りる生活扶助費と本件改定後に原告らに実際に支給されている生活扶助費との差額分が不支給となっていること(本件不支給)により精神的苦痛を被ったとして、国賠法1条1項に基づき、慰謝料及びその遅延損害金の支払を求めている。 ⑵ しかし、原告らが本件不支給により被ったと主張する精神的損害は、本件 改定に基づき原告らに対してされた保護変更決定(本件各国賠請求対象決 - 93 -定)を取り消す旨の判決又は同判決の拘束力により回復されるべき性質のものであり、本件全証拠によっても、これらによっては回復できない損害を原告らが被ったとまでは認められない。なお、このことは、原告らが本件各国賠請求対象決定に対する取消訴訟を提起したか否かによって左右されるものではない。 ⑶ したがって、本件各国賠請求は、その余の点について検討するまでもなく、いずれも理由がない。 第5 結論よって、本件訴えのうち本件各主位的取消請求に係る部分は不適法であるからこれを却下し、原告らのその余の請求のうち本件各予備的取消請求はいずれ も理由があるからこれを認容し、本件各国賠請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官篠田賢治 裁判官依田吉人は差し支えのため、裁判官佐々木健 棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官篠田賢治 裁判官依田吉人は差し支えのため、裁判官佐々木健詞は転補のため、いずれも 署名押印することができない。 裁判長裁判官篠田賢治 (別紙1-2、1-4、別表1~13-2省略) - 94 -(別紙1-1)原告目録 以下では第1事件、第2事件又は第3事件において原告の地位にある者を単に「原告」といい、原告全員を「原告ら」と総称することがある。また、個別の原 告については、原告らの住所の前に付した番号(以下「原告番号」という。)によって、「原告番号1」などという。 (以下省略) - 95 -(別紙1-3)被告目録 以下では第1事件、第2事件又は第3事件の全部又は一部において被告の地位にある者を単に「被告」といい、被告の地位を有する者を併せて「被告ら」と総称 することがある。また、被告国以外の被告らを併せて「被告地方公共団体」という。 (以下省略) - 96 -(別紙2)処分一覧表 原告らのうち、「処分の名宛人」欄記載の原告を「取消請求の原告」といい、被告らのうち、「処分行政庁」欄記載の行政庁の所属する行政主体を「取消訴訟 の被告」という。また、取消請求の原告のうち、原告番号2から7、9及び10の原告を「取消請求の原告(第1事件)」といい、その余の原告を「取消請求の原告(第2事件)」という。 以下の各日付における年は、いずれも平成27年である。 処分の名宛人処分行政庁処分日審査請求日裁決日対応する事件原告番号 2α福祉事務所 事件)」という。 以下の各日付における年は、いずれも平成27年である。 処分の名宛人処分行政庁処分日審査請求日裁決日対応する事件原告番号 2α福祉事務所長3月17日5月10日12月22日第1事件原告番号 3α福祉事務所長3月13日5月10日12月22日原告番号 4α福祉事務所長3月13日5月10日12月22日原告番号 5β福祉事務所長3月16日5月26日8月21日原告番号 6γ福祉事務所長3月23日5月26日8月21日原告番号 7γ福祉事務所長3月23日5月26日8月21日原告番号 9δ福祉事務所長3月25日5月26日8月14日原告番号10δ福祉事務所長3月25日5月26日8月14日原告番号40δ福祉事務所長3月25日5月26日8月14日第2事件原告番号42ε福祉事務所長3月 9日5月26日8月21日原告番号44ε福祉事務所長3月 9日5月26日8月21日原告番号45ε福祉事務所長3月 9日5月26日8月21日原告番号47α福祉事務所長3月17日5月10日8月10日 - 97 -原告番号48α福祉事務所長3月17日5月 6日12月22日原告番号49α福祉事務所長3月14日5月10日12月22日以上 - 98 -(別紙3)訴訟費用負担目録 1 取消請求の原告にそれぞれ生じた費用については、各々20分し、その1を費用が生じた各原告の負担とし、その余を同原告に対応する取消 請求 - 98 -(別紙3)訴訟費用負担目録 1 取消請求の原告にそれぞれ生じた費用については、各々20分し、その1を費用が生じた各原告の負担とし、その余を同原告に対応する取消 請求の被告の負担とする。 2 その余の原告らにそれぞれ生じた費用については、その全部を費用が生じた各原告の負担とする。 3 被告国に生じた費用については、その全部を原告らの負担とする。 4 各取消訴訟の被告にそれぞれ生じた費用については、各々20分し、 その19を費用が生じた被告の負担とし、その余を同被告に対応する取消訴訟の原告の負担とする。 5 その余の被告らにそれぞれ生じた費用については、その全部を別紙4「国賠請求一覧」において費用が生じた各被告に対応する原告らの負担とする。 以上 - 99 -(別紙4)国賠請求一覧 なお、「起算日」欄の日付の年は、いずれも平成30年である。 また、「起算日」欄記載の日は、「対応する事件」欄記載の事件の訴状が対応す る被告に送達された日の翌日である。 原告被告起算日対応する事件原告番号 1国6月14日第1事件ζ原告番号 2国α原告番号 3国α原告番号 4国α原告番号 5国東京都原告番号 6国γ原告番号 7国γ原告番号 8国η - 100 -原告被告起算日対応する事件原告番号 9国6月14日第1事件δ原告番号10国δ原告番号11国ζ原告番号12国ζ原告番号13国ζ原告番号14国ζ原告番号15国ζ原告番号16国ζ原告番号17国ζ δ原告番号11国ζ原告番号12国ζ原告番号13国ζ原告番号14国ζ原告番号15国ζ原告番号16国ζ原告番号17国ζ原告番号18国ζ原告番号20国θ - 101 -原告被告起算日対応する事件原告番号21国6月14日第1事件ι原告番号23国α原告番号24国α原告番号25国α原告番号26国α原告番号28国α原告番号29国α原告番号30国α原告番号33国6月14日κ7月5日原告番号34国6月14日λ原告番号36国γ - 102 -原告被告起算日対応する事件原告番号37国6月14日第1事件γ原告番号38国μ原告番号39国ν原告番号40国7月7日第2事件δ原告番号41国δ原告番号42国ε原告番号44国ε原告番号45国ε原告番号47国α原告番号48国α原告番号49国α - 103 -原告被告起算日対応する事件原告番号50国7月7日第2事件α原告番号51国α原告番号52国α原告番号53国α原告番号54国α原告番号55国9月22日第3事件γ原告番号57国ξ 以上 - 104 -(別紙5)関係法令等の定め 第1 憲法の定め 1 憲法25条1項は、すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権 原告番号57国ξ 以上 - 104 -(別紙5)関係法令等の定め 第1 憲法の定め 1 憲法25条1項は、すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権 利を有する旨を定める。 2 憲法25条2項は、国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない旨を定める。 第2 生活保護法の定め 1 目的生活保護法1条は、生活保護法は、憲法25条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする旨を定める。 2 基本原理等⑴ 生活保護法3条は、生活保護法により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない旨を定める(以下、同条において生活保護法により保障されるべき最低限度の生活を「最低生活」という。)。 ⑵ア生活保護法8条1項は、保護は、厚労大臣の定める基準(保護基準)により測定した要保護者(同法による保護を必要とする者をいう。以下同じ。)の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする旨を定める。 イ生活保護法8条2項は、上記アの基準は、要保護者の年齢別、性別、世 帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最 - 105 -低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えないものでなければならない旨を定める。 ⑶ 生活保護法10条本文は、保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする旨を定める。 3 生活扶助 分なものであって、かつ、これを超えないものでなければならない旨を定める。 ⑶ 生活保護法10条本文は、保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする旨を定める。 3 生活扶助 生活保護法11条1項は、8種類の保護のうちの一つとして生活扶助を掲げ、同法12条は、生活扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対し、衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの(同条1号)及び移送(同条2号)の範囲内において行われる(同条柱書き。以下において「生活扶助」というときは、特に断りのない限り、居宅において保護を 受ける者に対して行われる同条1号の保護を指すものとする。)旨を定める。 第3 生活扶助基準の概要1⑴ 保護基準は、生活扶助は、要保護者に特別の事由があって、生活扶助基準により難いときを除き、保護基準別表第1に定めるところによる旨を定める。 ⑵ 生活扶助の基準額は、被保護者の居住地の地域の級地区分に応じて定められているところ、保護基準別表第9は、全国の市町村を、1級地-1、1級地-2、2級地-1、2級地-2、3級地-1及び3級地-2の六つの級地に区分する。 2 保護基準別表第1は、基準生活費に関する定め(第1章)と加算に関する 定め(第2章)から構成されており、居宅で生活する者の基準生活費(以下、基準生活費の額を「生活扶助基準額」という。)は、個人別に定められた第1類の表に規定する費用(飲食物費、被服費等の個人単位に消費される経費に対応するものであり、級地別に、年齢に応じて額が定められている。以下「第1類費」という。)と、世帯人員別に定められた第2類の表に規定する 費用(光熱水費、家具什器費等の世帯全体としてまとめて支出される経費に - 106 -対応する 定められている。以下「第1類費」という。)と、世帯人員別に定められた第2類の表に規定する 費用(光熱水費、家具什器費等の世帯全体としてまとめて支出される経費に - 106 -対応するものであり、級地別に、保護を受給する世帯(以下「受給世帯」という。)の人数に応じて基準となる額及び加算額が定められている。以下「第2類費」という。)から構成されている。 第4 社会保障に関する重要事項を調査審議のために厚生労働省(厚生労働省設 置法により厚生労働省が設置される前の厚生省と併せて以下「厚労省」という。)に設置される機関についての定め 1 社会保障審議会(以下「社保審」という。)並びにその分科会、部会及び委員会⑴ 厚生労働省設置法6条1項は、厚労省の本省に社保審を置く旨を定め、同 法7条1項1号、3号は、社保審の所掌事務として、厚労大臣の諮問に応じて社会保障に関する重要事項を調査審議することのほか、社会保障に関する重要事項に関して厚労大臣又は関係行政機関に意見を述べることを掲げる。 ⑵ 厚生労働省設置法7条2項による委任を受けて定められた社会保障審議会令2条1項は、社保審の委員は、学識経験のある者のうちから厚労大臣が任 命する旨を定め、同令6条1項は、社保審及びその分科会は、部会を置くことができる旨を定める。 ⑶ 社会保障審議会令11条に基づき定められた社会保障審議会運営規則2条は、会長は、必要があると認めるときは、社保審に諮って部会(分科会に置かれる部会を除く。)を設置することができる旨を定め、同規則8条は、分 科会長又は部会長は、必要があると認めるときは、それぞれの分科会又は部会に諮って委員会を設置することができる旨を定める。 2 厚生労働省設置法の施行前における機関⑴ 社会福祉事業法(平 科会長又は部会長は、必要があると認めるときは、それぞれの分科会又は部会に諮って委員会を設置することができる旨を定める。 2 厚生労働省設置法の施行前における機関⑴ 社会福祉事業法(平成12年法律第111号による改正後の題名は社会福祉法。以下、同改正の前後を通じて「社会福祉法」という。)6条1項は、 厚労省に、社会福祉事業の全分野における共通的基本事項その他重要な事項 - 107 -を調査審議するため中央社会福祉審議会(昭和38年法律第133号による同法の改正前は社会福祉審議会。以下、同改正の前後を通じて「社福審」という。)が置く旨を定めていた。 ⑵ 社会福祉法6条3項は、社福審は、厚労大臣の諮問に答え、又は関係行政庁に意見を具申するものとされ、社会福祉法10条1項は、社福審に、生活 保護法の施行に関する事項を調査審議するため、生活保護専門分科会を置く旨を定めていた。 ⑶ 社福審及び厚生省に置かれていたその他の審議会は、厚生労働省設置法の施行に伴い、社保審に統合された。 第5 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(以下「社会権規約」という。)の定め 1 社会権規約2条1項は、この規約の各締約国は、立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成するため、自国における利用可能な手段を最大限に用いることにより、個々 に又は国際的な援助及び協力、特に、経済上及び技術上の援助及び協力を通じて、行動をとることを約束する旨を定める。 2 社会権規約9条は、この規約の締約国は、社会保険その他の社会保障についての全ての者の権利を認める旨を定める。 3 社会権規約11条1項前段は、この規約の締約国は、自己及びその家族のた めの相当な食糧、 9条は、この規約の締約国は、社会保険その他の社会保障についての全ての者の権利を認める旨を定める。 3 社会権規約11条1項前段は、この規約の締約国は、自己及びその家族のた めの相当な食糧、衣類及び住居を内容とする相当な生活水準についての並びに生活条件の不断の改善についての全ての者の権利を認める旨を定め、同項後段は、締約国は、この権利の実現を確保するために適当な措置をとり、このためには、自由な合意に基づく国際協力が極めて重要であることを認める旨を定める。 以上 - 108 -(別紙6) 本件改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容 第1 ゆがみ調整に係る厚労大臣の判断過程について 1 厚労大臣は、以下の事情から、受給世帯間の較差を解消するため、一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態を踏まえたものに展開指数を是正する必要があると判断した。 ⑴ 平成16年検証においては、生活扶助基準の展開指数の見直しを検討する必要がある旨の指摘がされ、その後、所要の改定がされたものの、平成 19年検証においても、生活扶助基準の展開指数が一般低所得世帯間の消費支出のばらつきの程度を反映したものとなっていない旨の指摘がされた。 それにもかかわらず、その後、本件改定までの間、平成19年検証を踏まえた展開指数の改定が行われなかった。 ⑵ 平成25年検証においては、平成21年全消調査のデータに基づき、一 般低所得世帯間の消費支出のばらつきの程度を反映した年齢階級別、世帯人員別、級地別の理論上のあるべき指数が算定され、これと生活扶助基準の展開指数との比較が行われたところ、両者の間にはかい離がある旨の指摘がされた。 2 厚労 らつきの程度を反映した年齢階級別、世帯人員別、級地別の理論上のあるべき指数が算定され、これと生活扶助基準の展開指数との比較が行われたところ、両者の間にはかい離がある旨の指摘がされた。 2 厚労大臣は、以下の事情から、改定前基準の展開指数を、平成25年検証 において算定された第1・十分位世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の指数(平成25年検証展開指数)に合致させる方向で改定することが相当であると判断した。 ⑴ 平成25年検証は、保護基準の検証を行うために法令に基づいて設置された基準部会により行われたものであるところ、基準部会は、学識経験者に よって構成される専門機関であるから、平成25年検証の結果は、基本的に - 109 -信頼することができる。 ⑵ 展開指数の是正に当たり、参照すべき一般低所得世帯としては、受給世帯と消費実態が近い世帯とするのが相当であるところ、第1・十分位世帯の消費実態は受給世帯のそれと比較的近いものであるといえるから、平成25年検証において、第1・十分位世帯間の消費支出のばらつきの程度を反映した 年齢階級別、世帯人員別、級地別の指数を算定し、これと改定前基準の展開指数とを比較検討したことは、合理的な手法であるといえる。なお、展開指数の是正による受給世帯間の較差の是正は、受給世帯を含む一般低所得世帯の消費実態を展開指数に反映させることによって行うべきものであるから、平成25年検証において、参照すべき一般低所得世帯のサンプルから受給世 帯を除外していないことは、不合理なことではない。 ⑶ 平成25年検証においては、第1・十分位世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態の較差を表す指数を統計学的手法に基づき徹底的に相対比較して算定しているところ、このようにして算定された平成25年 平成25年検証においては、第1・十分位世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態の較差を表す指数を統計学的手法に基づき徹底的に相対比較して算定しているところ、このようにして算定された平成25年展開指数は一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費支出 のばらつきの程度を反映するものといえる。そのため、改定前基準の展開指数を平成25年検証展開指数に合致させる方向で改定することにより、改定前基準の展開指数を一般低所得世帯間の消費支出のばらつきの程度を踏まえたものに是正することができる。 3 厚労大臣は、以下の事情から、上記2の改定に際して、改定前基準額に、 平成25年検証展開指数を生活扶助基準の指数で除した割合を乗ずるのではなく、一律に、平成25年検証展開指数と生活扶助基準の指数との和を2で除したものをさらに生活扶助基準の指数で除した割合を乗ずること(2分の1処理)が相当であると判断した。 ⑴ 一律に2分の1処理をすることは、激変緩和措置として必要な措置であ ること - 110 -ア改定前基準の展開指数を平成25年検証展開指数に完全に合致させた場合には、世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の組合せによって生活扶助基準額が増額される世帯も減額される世帯も生ずることが見込まれていたものの、子どものいる世帯の生活扶助基準額への影響に着目すると、母親と子一人の母子世帯(子は18歳未満。以下同じ。)では- 5.2%、夫婦子一人世帯では-8.5%、夫婦子二人世帯では-14. 2%となり、大きな減額となることが予想された。しかし、平成25年報告書にも記載されているとおり、貧困の世代間連鎖を防止する観点からは、子どものいる世帯の生活扶助基準額を大幅に減額することがないように配慮しなければならない。そのた 予想された。しかし、平成25年報告書にも記載されているとおり、貧困の世代間連鎖を防止する観点からは、子どものいる世帯の生活扶助基準額を大幅に減額することがないように配慮しなければならない。そのため、子どものいる受給世帯の期 待的利益に可及的に配慮するための激変緩和措置として、2分の1処理をする必要があった。 イ仮に、改定前基準の展開指数を平成25年検証展開指数に合致させた場合に減額となる受給世帯のみ2分の1処理を行い、逆に増額となる受給世帯には2分の1処理をせずに両者の指数を完全に合致させることとした場 合には、これにより、かえって受給世帯間における不公平を生じさせることになってしまい、受給世帯間の公平を図るために生活扶助基準の展開指数を是正するというゆがみ調整の本質的部分に反する結果となる。そのため、2分の1処理をするに当たっては、一律にこれを行う必要があった。 ⑵ 2分の1処理をすることは、ゆがみ調整の本質的部分を改変するもので はないことア平成25年検証展開指数を算定するために採用された手法は、唯一絶対のものではなく、特定の世帯類型については、サンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界もあったため、修正の余地がない完全なものであるということはできないこと、平成25年検証の結果を前提 に、生活扶助基準額について更なる検証が予定されていたことなどから - 111 -すれば、平成25年検証展開指数は、これに改定前基準の展開指数を完全に合致させるために算定されたものではない。 イ 2分の1処理をした場合であっても、改定前基準の展開指数と平成25年検証展開指とのかい離の程度は一定の割合で解消されることになるのであるから、受給世帯間の公平を図るために展開指数を是正するという改定 の趣 をした場合であっても、改定前基準の展開指数と平成25年検証展開指とのかい離の程度は一定の割合で解消されることになるのであるから、受給世帯間の公平を図るために展開指数を是正するという改定 の趣旨に沿う結果を部分的に実現することができる。 第2 デフレ調整に係る厚労大臣の判断過程について厚労大臣は、①本件改定の時点において、生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との間に不均衡が生じている兆候があり、そのような不均衡が実 際に生じている場合には、これを是正するため、生活扶助基準の減額改定をする必要があると判断した上で、②上記の減額改定の指標として、消費の動向ではなく、物価変動率を選択し、③この物価変動率を算定する期間を平成20年から平成23年までとした上で、④この物価変動率の算定に当たり、総務省CPIの指数品目のうち生活扶助相当品目のみを指数品目とし、総務 省CPIにおける価格指数をもって個々の指数品目の価格指数とする物価指数の変化率を用いるとともに、⑤ウエイトとして、平成22年総務省CPIの総合指数のウエイト(平成22年の家計調査のうち、二人以上世帯を対象としたものの家計支出のデータに基づくウエイト)を参照することとして、⑥実際に、平成20年から平成23年までの当該物価変動率を算定したとこ ろ、-4.78%となったことから、⑦生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との間の不均衡を是正するためには、同じ分(-4.78%)だけ生活扶助基準を減額することが相当であると判断し、-4.78%分の生活扶助基準の減額改定(デフレ調整)をした。 1 厚労大臣は、以下の事情から、本件改定の時点において、生活扶助基準の 水準と一般国民の生活水準との間に不均衡が生じている兆候があるとし、そ - 112 -のような不 調整)をした。 1 厚労大臣は、以下の事情から、本件改定の時点において、生活扶助基準の 水準と一般国民の生活水準との間に不均衡が生じている兆候があるとし、そ - 112 -のような不均衡が実際に生じている場合には、これを是正するため、生活扶助基準の減額改定をする必要があると判断した。 ⑴ 生活扶助基準額は、平成19年検証の結果、一般低所得世帯(第1・十分位世帯)の家計支出額のうち生活扶助相当品目を対象とするもの(以下、生活扶助相当品目に対する家計支出額を「生活扶助相当支出額」とい う。)と比して高い(夫婦子一人世帯において約1.1%、単身高齢世帯において約13.3%)とされていた。それにもかかわらず、生活扶助基準は、本件改定に至るまで、減額改定されなかった。 ⑵ 平成21年の全消調査によれば、夫婦子一人の一般低所得世帯(第1・十分位世帯)の生活扶助相当支出額は、平成16年から平成21年にかけ て約11.6%も下落しており、生活扶助基準額を約12.6%下回るものとなっていたところ、当時の経済状況を踏まえれば、平成21年以降、生活扶助相当支出額が増加することは考えにくいところであった。また、平成16年から平成21年にかけて、夫婦子一人世帯を含む二人以上世帯の消費支出が約6.0%下落するなどしていた。 ⑶ 以下のことからすると、平成20年以降、生活扶助基準の生活水準と一般国民の生活水準との不均衡は、より一層顕著となっていた。 ア平成20年9月のリーマン・ショックに端を発する百年に一度とも評される世界金融危機によって、賃金、物価、家計消費等が落ち込み、一般国民の生活水準が下落した。 イその一方で、生活扶助基準額は、平成20年以降、本件改定に至るまでの間、据え置かれていたところ、この据置きは、 って、賃金、物価、家計消費等が落ち込み、一般国民の生活水準が下落した。 イその一方で、生活扶助基準額は、平成20年以降、本件改定に至るまでの間、据え置かれていたところ、この据置きは、消費や物価等の動向を基礎としない据置きであった。 ウその結果、平成20年以降、受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加し、生活扶助基準の水準が実質的に引き上げられたと評価するこ とができる状況となった。 - 113 -⑷ 他方で、平成25年検証においては、生活扶助基準の水準そのものの検証は行われなかった。 ⑸ 平成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法附則2条1号により、生活扶助基準の適正化を早急に行うことが明記されていた。 2 厚労大臣は、以下の事情から、前記1の減額改定の指標として、消費の動 向ではなく、物価変動率(以下「指標としての物価変動率」という。)を選択した。 ⑴ 以下のことからすると、本件改定の時点における生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との間の不均衡を是正するために、その原因となった従前のデフレ傾向による受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加に 着目した改定を行うことが直截的であった。 ア本件改定の時点において生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との不均衡が拡大していた主要な原因としては、デフレ状況にありながら生活扶助基準額が据え置かれてきたことにより、受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加していたと評価することができたことであった。 イ生活扶助基準は、受給世帯における購買力(可処分所得)として捉えることができるから、貨幣の購買力を示す客観的な経済指標の一つである物価変動率を指標にして生活扶助基準の水準の改定を行うことによって、物価変動率を算定する期間の始 ける購買力(可処分所得)として捉えることができるから、貨幣の購買力を示す客観的な経済指標の一つである物価変動率を指標にして生活扶助基準の水準の改定を行うことによって、物価変動率を算定する期間の始期における実質的な可処分所得を維持しつつ、その後のデフレ状況による可処分所得の相対的、実質的な増 加分を生活扶助基準の水準に反映させることができる。 ⑵ 以下のことからすれば、生活扶助基準の改定の指標として、消費の動向ではなく、物価変動率を用いることが許されないと解すべき根拠はない。 ア基準の改定に関する具体的な方法を定めた法令上の規定はなく、この点については、専門技術的かつ政策的な見地から、厚労大臣に広範な裁 量権が認められている。 - 114 -イ生活扶助基準の水準については、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方が一貫してとられてきたところ、このような考え方からしても、生活扶助基準の改定の指標として、消費が唯一かつ絶対的なものであるということはできない。 ウ平成15年中間取りまとめにおいては、最近の経済情勢を踏まえ、消 費の動向を指標とする改定の在り方についての課題等について検討する必要性が示されていたほか、消費者物価指数その他の経済指標を生活扶助基準の改定の指標とする可能性が言及されていた。 エ平成25年報告書に「厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮し、その上で他に合 理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。」と記載されていることからも明らかなとおり、平成25年検証は、厚労大臣が、生活扶助基準の改定に当たり、その合目的的裁量として、平成25年検 勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。」と記載されていることからも明らかなとおり、平成25年検証は、厚労大臣が、生活扶助基準の改定に当たり、その合目的的裁量として、平成25年検証の結果を踏まえつつ、平成25年検証の対象とされなかった他の合理的な経済指標等を総合的に 勘案することを否定するものではない。 オ以下のとおり、生活扶助基準の改定方式として採用されている水準均衡方式の下においても、財やサービスの価格(物価)の変動に着目した改定が行われた実績がある。 生活扶助のうち各種加算部分については、本件改定以前においても、 物価の伸び率を指標とした改定が行われてきた。 消費税が導入された平成元年度や、消費税率が引き上げられた平成9年度には、生活扶助基準の増額改定が行われているところ、これらの増額改定は、受給世帯における実質的な可処分所得を維持するために物価を考慮して生活扶助基準額を増額改定したものであった。 カ以下のとおり、前記1の減額改定は、消費の動向を指標とする水準均衡 - 115 -方式が用いられてきた場面とは全く異なる場面で行われたものであるから、前記1の減額改定として物価変動率を改定の指標とすることは、生活扶助基準の改定の方式として水準均衡方式が採用されてきたことと矛盾しない。 一般国民の消費支出の伸びに着目する水準均衡方式は、①我が国の経済が右肩上がりに成長を続けているという昭和58年当時の社会経済情 勢を背景として、一般国民の消費支出の増加に伴い、生活扶助基準の増額改定が見込まれる状況下において、②生活扶助基準が一般国民の生活水準との比較において妥当であるとの評価を前提に、妥当とされた生活扶助基準の水準を将来に向かって維持しよ 増加に伴い、生活扶助基準の増額改定が見込まれる状況下において、②生活扶助基準が一般国民の生活水準との比較において妥当であるとの評価を前提に、妥当とされた生活扶助基準の水準を将来に向かって維持しようとするものであって、③毎年度の生活扶助基準の改定において用いられてきたものである。 これに対し、前記1の減額改定は、①平成20年9月のリーマン・ショックに端を発する世界金融危機という百年に一度と評される社会経済情勢を背景として、賃金、物価、家計消費等が落ち込むという状況下において、②生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との間の不均衡が存在しているという前提でこれを是正するために行われたものであり、 ③5年に一度行われる専門機関による保護基準の検証(平成25年検証)に併せて実施されたものである。 キ水準均衡方式は、民間最終消費支出の伸び、すなわち消費の動向を改定の指標とするものであって、物価変動そのものを改定の指標とするものではない。また、水準均衡方式においては、消費の動向のみをもって改定率 が定められているわけでもなく、消費の動向以外の要素も含めた経済動向や社会経済情勢等が総合的に勘案されており、消費の動向が生活扶助基準の改定に反映されない場合もあるところ、デフレ調整の着目する平成20年から平成23年までの間の物価下落については、本件改定に至るまで、生活扶助基準に反映されていなかった。そのため、水準均衡方式による改 定とは別に、物価変動を理由とした改定を行ったとしても、生活扶助基準 - 116 -の改定において物価変動を二重に考慮することにはならない。 ⑶ 消費の動向は、物価や賃金の動向やこれらを踏まえた主観的な要素を含む将来の予測等の様々な要素にも影響されるものであるところ、平成20年 の改定において物価変動を二重に考慮することにはならない。 ⑶ 消費の動向は、物価や賃金の動向やこれらを踏まえた主観的な要素を含む将来の予測等の様々な要素にも影響されるものであるところ、平成20年以降の経済状況、特に百年に一度とも評される世界金融危機が実体経済へ深刻な影響を及ぼすとともに、国民の将来不安が高まっており、賃金、 物価、家計消費等が下落している状況下においては、収入の不安定さを勘案して消費を減らすことなどが考えられるから、消費の動向を指標として生活扶助基準を改定した場合には、減額幅が必要以上に大きくなることが想定された。前記1⑵のとおり、この間における我が国の消費支出は、実際に大きく減少していたものである。 3 厚労大臣は、以下の事情から、指標としての物価変動率を算定する期間を平成20年から平成23年までとした。 ⑴ 平成20年までの経済情勢については、平成20年以前の水準均衡方式による改定において生活扶助基準に適切に反映されていた一方で、平成20年以降のデフレについては、平成20年以降の水準均衡方式による改定 によっては生活扶助基準に適切に反映されていなかった。そのため、平成20年以降のデフレ傾向によって生じた生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との不均衡を是正するには、デフレ傾向の始まった平成20年を物価変動率の算定の始期とすることが合理的であった。 ⑵ 他方で、平成25年改定当時、最新の総務省CPIのデータが平成23 年のデータ(平成24年1月27日公表)であったことから、平成23年を物価変動率の算定の終期とした。 ⑶ なお、消費者物価指数は、平成19年から平成20年にかけて前年比1%を超える上昇をしていたが、既に平成19年検証において、生活扶助基準と一般低所得世帯との不均衡、すなわち の算定の終期とした。 ⑶ なお、消費者物価指数は、平成19年から平成20年にかけて前年比1%を超える上昇をしていたが、既に平成19年検証において、生活扶助基準と一般低所得世帯との不均衡、すなわち、夫婦子一人世帯においては 約1.1%、単身高齢世帯においては約13%の割合で、それぞれ生活扶 - 117 -助基準額の方が第1・十分位世帯の生活扶助相当支出額よりも高いことが確認されていたところであり、厚労大臣は、このような平成19年検証の結果を踏まえつつ、同年における物価上昇を含む社会経済情勢等を総合的に勘案して、平成20年度の生活扶助基準を据え置くという判断をしたものである。そのため、平成19年から平成20年にかけて消費者物価指数 が上昇していたことをもって、物価変動率を算定する期間の始期を平成20年としたことが不合理であるとはいえない。 4 厚労大臣は、以下の事情から、指標としての物価変動率として、総務省CPIの指数品目のうち生活扶助相当品目のみを指数品目とし、総務省CPIにおける価格指数をもって個々の指数品目の価格指数とする物価指数の変化 率を用いた。 ⑴ 指標としての物価変動率を算定するためには、そのための物価指数を設定する必要があるところ、物価指数は、指数品目を特定した上で、各指数品目の価格指数にそのウエイト(全体の消費支出に占める品目ごとの消費支出の割合)を乗じたものを加重平均することにより算定される。そして、 平成25年改定当時、受給世帯が家計から支出し得る品目、その価格指数及びウエイトを網羅した信頼性の高い客観的なデータとしては、総務省CPIが存在した一方で、他にこれと同程度以上に信頼性が担保された適切な統計データは見当たらなかった。 ⑵ 他方で、総務省CPIの指数品目には、家賃、教育費 頼性の高い客観的なデータとしては、総務省CPIが存在した一方で、他にこれと同程度以上に信頼性が担保された適切な統計データは見当たらなかった。 ⑵ 他方で、総務省CPIの指数品目には、家賃、教育費、医療費、自動車 関係費、NHK受信料等の生活扶助による支出がおよそ想定されない品目(除外品目)が多数含まれており、受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加の程度を正確に把握するためには、上記のような品目を含めて算定することは相当ではなかった。 ⑶ 生活扶助相当品目の範囲は、恣意性を排除した客観的かつ明確な基準に 従って画することができるものであるし、生活扶助基準の改定に際して検 - 118 -討の対象を生活扶助相当品目に限定する手法は、水準均衡方式による毎年度の改定のほか、平成16年検証、平成19年検証及び平成25年検証においても用いられている。 5 厚労大臣は、以下の事情から、指標としての物価変動率を算定するに当たり、平成22年総務省CPIの総合指数のウエイト(平成22年の家計調査 のうち、二人以上世帯を対象としたものの消費支出額の平均値のデータに基づくウエイト。以下「平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイト」ということがある。)を参照することとした。 ⑴ 以下のことからすると、指標としての物価変動率を算定するに当たっては、一般国民の消費実態を表すウエイトを参照することが合理的である。 ア生活扶助基準の改定は、生活扶助により保障される最低生活の水準が一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方に基づいて行われており、水準均衡方式の下におけるこれまでの生活扶助基準の改定においても、「一般国民」の消費水準が改定の指標とされてきたものである(「一般低所得世帯」の消 的なものであるという考え方に基づいて行われており、水準均衡方式の下におけるこれまでの生活扶助基準の改定においても、「一般国民」の消費水準が改定の指標とされてきたものである(「一般低所得世帯」の消費水準が改定 の指標とされてきたわけではない。)。 イ前記1でいう生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との不均衡は、賃金、物価、家計消費等が落ち込み、「一般国民」の生活水準が低下することに伴う相対的な意味での生活扶助基準の引上げを含むものであるから、前記2でいう受給世帯の可処分所得の実質的な増加分については、 飽くまで「一般国民」の生活水準の変化を通じた相対的なものとして把握されることになる。 ⑵ 以下のことからすると、総務省CPIの総合指数のウエイトの基礎となっている家計調査のデータは、一般国民の消費実態を反映した精度の高い家計支出のデータであるといえるから、指標としての物価変動率を算定す るに当たっては、総務省CPIの総合指数のウエイトを参照することが適 - 119 -切である。 ア以下のことからすると、家計調査のデータは、一般国民の消費実態を反映した精度の高い家計支出のデータであるといえる。 家計調査は、総務省統計局が、国民生活における家計収支の実態を把握するために、一般国民の家計上の支出、収入、貯蓄等を調査する 基幹統計の一つであり、実際に、一般国民の消費実態の分析等に広く用いられている。 家計調査は、詳細な品目別の支出額を調査の対象としているため、家計調査における家計支出のデータを基礎とすることにより、詳細な品目別のウエイトを把握することができる。 家計調査における調査対象世帯の選定は、居住地域等による偏りを避け、国民全体の支出等を推計することができるように統計上の配慮 ることにより、詳細な品目別のウエイトを把握することができる。 家計調査における調査対象世帯の選定は、居住地域等による偏りを避け、国民全体の支出等を推計することができるように統計上の配慮がされており、家計調査は、このように選定された約9000世帯を対象に調査票を配布してそれを回収、集計することによって行われているため、一般国民の家計支出の状況を推測するための統計資料とし て、精度が高い。 イこれに対し、以下のことからすると、指標としての物価変動率を算定するに当たり、社会保障生計調査のデータに基づくウエイトを参照することは適切でない。 社会保障生計調査は、被保護者の生活実態を明らかにし、生活基準 改定等の生活保護制度の企画運営等のために必要な基礎資料を得る目的で被保護者の家計収支の状況を調査する一般統計調査であり、受給世帯の詳細な支出先や支出額を把握するものではないから、その調査結果を分析しても、おおまかな品目グループ別のウエイトは把握することはできても、家計調査のように詳細な品目別のウエイトを把握す ることはできない。 - 120 -社会保障生計調査は、全国を10ブロックに分け、ブロックごとに都道府県、指定都市、中核市から1ないし3自治体を選定し、その選定された自治体から合計約1100世帯を抽出して調査対象世帯を選定しているところ、このように選定された調査世帯では地域等による偏りが生ずる可能性があることに加え、サンプル数が必ずしも多くな いことなどからすれば、その調査結果は、受給世帯全体の家計支出の状況を推測する統計資料として一定の限界がある。 ⑶ 以下のことからすると、指標としての物価変動率を算定するに当たっては、家計調査のうち、二人以上世帯を対象とする家計支出の平均値のデー 家計支出の状況を推測する統計資料として一定の限界がある。 ⑶ 以下のことからすると、指標としての物価変動率を算定するに当たっては、家計調査のうち、二人以上世帯を対象とする家計支出の平均値のデータに基づくウエイトを参照するのが適切である。 ア各受給世帯の生活扶助基準額は、標準世帯の最低生活費を起点として、各世帯に展開することによって定められるものであるから、指標としての物価変動率を算定するに当たっては、家計調査のうち、標準世帯(夫婦子一人世帯)を含む世帯類型である二人以上世帯を対象とする家計支出の平均値のデータに基づくウエイトを参照することが合理的である。 イ仮に、二人以上世帯の消費構造と受給世帯の多数を占める単身世帯の消費構造との間に差異があったとしても、それは、生活扶助基準の水準の改定において考慮されるべき事柄ではなく、展開指数の改定において考慮されるべき事柄であるし、単身世帯を対象とする家計調査におけるサンプル世帯数は、二人以上世帯を対象とするもののそれと比べて極め て少ないことを考慮すれば、指標としての物価変動率を算定するに当たって、家計調査のうち、単身世帯を対象とする家計支出のデータに基づくウエイトを参照することは適切ではない。 ウなお、家計調査には第1・十分位世帯の家計支出のデータもあるが、同データにはいくつかの品目をまとめた「類」レベルでのデータしか含 まれておらず、一つの「類」の中には生活扶助相当品目と除外品目とが - 121 -混在していることもあるため、同データからは、生活扶助相当品目の品目別の支出額を把握することはできない。そのため、指標としての物価変動率を算定するに当たって、家計調査のうち、第1・十分位世帯の家計支出のデータに基づくウエイトを参照することは適切でない 当品目の品目別の支出額を把握することはできない。そのため、指標としての物価変動率を算定するに当たって、家計調査のうち、第1・十分位世帯の家計支出のデータに基づくウエイトを参照することは適切でない。 ⑷ 以下のことからすると、総務省CPIの総合指数のウエイトを参照する に当たり、生活扶助相当品目のうち特定の品目のウエイトのデータだけ除外するなどの個別的な調整を加えることは相当でない。 アデフレ状況下において生活扶助基準額が据え置かれたことによる受給世帯の可処分所得の相対的、実質的増加を正確に測定することには統計上の一定の限界があること、生活扶助基準の改定のために用いる情報の 取捨選択や考慮する要素についても、厚労大臣の政策的判断に関する合目的的な裁量が認められるべきであることからすれば、指標としての物価変動率を算定する際に参照するウエイトの選択に当たっては、算定の正確性という点のみが唯一絶対の考慮要素となるわけではなく、恣意的な判断が介在しないという意味での合理性や、国民に対する説明可能性 (説明の分かり易さという意味での簡便さ)という点も重要な考慮要素となり得る。 イ総務省CPIは、客観性、信頼性が高く、社会に広く定着している経済指標であるから、総務省CPIの総合指数のウエイトをそのまま参照することは、恣意的な判断が介在しないという意味での合理性や、国民 に対する説明可能性(説明の分かり易さという意味での簡便さ)の観点からも、相当である。 ウこれに対し、生活扶助相当品目のうち特定の品目(例えば、原告らが特に問題視するテレビやパソコン等の教養娯楽用耐久財等)に限って総務省CPIの総合指数のウエイトのデータから除外するなどの個別的な 調整をすることは、恣意的な判断が介在しないという意味での合理 特に問題視するテレビやパソコン等の教養娯楽用耐久財等)に限って総務省CPIの総合指数のウエイトのデータから除外するなどの個別的な 調整をすることは、恣意的な判断が介在しないという意味での合理性や、 - 122 -国民に対する説明可能性の観点から、相当とはいえない。すなわち、受給世帯がテレビやパソコン等の教養娯楽用耐久財を購入することは制限されていないこと、受給世帯においては、これらの教養娯楽用耐久財が一般世帯と同様に普及していることからすれば、受給世帯が教養娯楽用耐久財を生活扶助費の中から購入することも十分想定される。そして、 これらの教養娯楽用耐久財の購入のために生活扶助費からどの程度の支出がされるかは受給世帯ごとの個別の事情によるといわざるを得ないところ、このような個別的な事情を考慮して指数品目の範囲を定めなければならないとなれば、生活扶助基準の改定の指標に恣意性が介入する余地が生じ、指標としての分かりやすさも失われるおそれがある。 ⑸ 以下のことからすると、本件改定の時点において、指標としての物価変動率を算定するに当たり、総務省CPIの総合指数のウエイトのうち、平成22年のウエイトを参照したことは相当である。 ア平成25年当時、総務省CPIの総合指数のウエイトとしては、平成17年以前のものと平成22年のものが存在したところ、国民の消費の内 容は時間と共に変化することを踏まえると、より物価指数の算定時点に近接した時点の消費構造を示すデータである後者を参照する方が、平成20年以降の経済情勢による生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との間の不均衡を是正するというデフレ調整の目的に整合する。 イ平成22年をウエイトの参照時点として平成20年及び平成23年の物 価指数を算定す 生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との間の不均衡を是正するというデフレ調整の目的に整合する。 イ平成22年をウエイトの参照時点として平成20年及び平成23年の物 価指数を算定することは、物価変動率を算定する期間の始期と終期の中間時点でのウエイトのデータを用いるものであるところ、このような方法は、CPIマニュアルにおいて「中間年指数」として紹介されている方法であり、この方法によるときは、パーシェ指数とラスパイレス指数のほぼ中間に当たるロウ指数が得られるところ、これは理想的な目標指 数に非常に近いものとされているから、厚労大臣がこのような算定方法 - 123 -を採用したことは、国際的な基準に沿うものであって、専門的知見に反するものとはいえない。 6 厚労大臣は、以下のとおり、総務省CPIのデータのうち所要のデータを用いて、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変動率を-4.78%と算定した。 ⑴ 算定方法ア平成20年生活扶助相当CPIの算定まず、平成22年指数品目のうち平成20年においても総務省CPIの指数品目とされていた品目から除外品目を除いた485品目(平成20年生活扶助相当品目)を指数品目とし、平成22年総務省CP Iの総合指数のウエイトをもって平成20年生活扶助相当品目のウエイトとする買い物かごを想定する。 次に、上記の買い物かごを購入するのに必要な貨幣量を評価するための価格指数として、平成22年の年平均価格を100とした場合の平成20年の年平均価格(以下「平成20年/平成22年価格指 数」という。)を用いる。 その上で、平成20年生活扶助相当品目の平成20年/平成22年価格指数を平成22年総務省CPIの総合指数のウエイトで加重平均することに 20年/平成22年価格指 数」という。)を用いる。 その上で、平成20年生活扶助相当品目の平成20年/平成22年価格指数を平成22年総務省CPIの総合指数のウエイトで加重平均することにより、換言すれば、平成20年生活扶助相当品目について、個々の品目ごとに平成20年/平成22年価格指数と平成22年総務 省CPIの総合指数のウエイトを乗じ、それらの値の合計を平成20年生活扶助相当品目全体の平成22年ウエイトの総和で除することにより、平成20年生活扶助相当CPIを算定する。 イ平成23年生活扶助相当CPIの算定まず、平成22年指数品目から除外品目を除いた517品目(平成 23年生活扶助相当品目)を指数品目とし(平成20年生活扶助相当 - 124 -品目と品目数が異なっているのは、平成22年の指数品目の改定により追加された32の生活扶助相当品目(以下「平成22年新規採用品目」という。)が平成23年生活扶助相当品目に含まれることになったことによる。)、平成22年総務省CPIの総合指数のウエイトをもって、平成23年生活扶助相当品目のウエイトとする買い物かごを 想定する。 次に、上記の買い物かごを購入するのに必要な貨幣量を評価するための価格指数として、平成22年の年平均価格を100とした場合の平成23年時点の年平均価格(以下「平成23年/平成22年価格指数」という。)を用いる。 その上で、平成23年生活扶助相当品目の平成23年/平成22年価格指数を平成22年総務省CPIの総合指数のウエイトで加重平均することにより、換言すれば、平成23年生活扶助相当品目について、個々の品目ごとに平成23年/平成22年価格指数と平成22年総務省CPIの総合指数のウエイトを乗じ、それらの値の合計を平成23 均することにより、換言すれば、平成23年生活扶助相当品目について、個々の品目ごとに平成23年/平成22年価格指数と平成22年総務省CPIの総合指数のウエイトを乗じ、それらの値の合計を平成23 年生活扶助相当品目全体の平成22年総務省CPIの総合指数のウエイトの総和で除することにより、平成23年生活扶助相当CPIを算定する。 ウ平成22年新規採用品目の価格指数の扱い平成22年新規採用品目の平成20年における価格指数のデータは 存在しないことから、平成20年生活扶助相当CPIの算定に当たっては、平成22年新規採用品目を除外した算定を行った。このように指数品目の一部の価格指数が欠落している場合において、当該品目を除外した算定を行うと、当該品目の価格指数は、結果的に、「品目」別指数から最下位「類」別指数を計算する過程において、同一類内の 他の品目の価格指数の平均値に代替されることになる。 - 125 -なお、総務省CPIにおいては、指数品目の一部の価格指数のデータが欠落している場合には、類似品目の価格動向によってこれを推測する方法が採られている。上記の方法は、これとは異なるが、同方法もILOマニュアルにおいて認められている方法であるし、平成22年新規採用品目は、32品目(ウエイトにして約3%)にとどまり、 その影響は限定的であるといえることから、上記の方法を採用したものである。 ⑵ 具体的な算定アデータの整理平成22年総務省CPIに係る年報の「第7表-1 品目別価格指 数(全国)」から、平成20年生活扶助相当品目についての平成22年総合ウエイト及び平成20年/平成22年価格指数のデータ並びに平成23年生活扶助相当品目についての平成22年総合ウエイト及び平成23年/平 国)」から、平成20年生活扶助相当品目についての平成22年総合ウエイト及び平成20年/平成22年価格指数のデータ並びに平成23年生活扶助相当品目についての平成22年総合ウエイト及び平成23年/平成22年価格指数のデータをそれぞれ抜き出し、表の形に整理すると、別表1(乙A30の写し)のとおりとなる。 別表1の「①左記ウエイト中生活扶助相当品目」の「H20年平均」欄には、平成20年生活扶助相当品目の平成22年総合ウエイトが、「H23年平均」欄には、平成23年生活扶助相当品目の平成22年総合ウエイトが、それぞれ記載されている。また、同表の「②CPI」の「H20年平均」欄には、平成20年生活扶助相当品目の平 成20年/平成22年価格指数が、「H23年平均」欄には、平成23年生活扶助相当品目の平成23年/平成22年価格指数が、それぞれ記載されている。 イ上記アのデータの前記⑴の算定方法へのあてはめ別表1の「①左記ウエイト中生活扶助相当品目」の「H20年平 均」欄記載の平成22年総合ウエイト(平成20年生活扶助相当品目 - 126 -の平成22年総合ウエイト)に「②CPI」の「H20年平均」欄記載の価格指数(平成20年/平成22年価格指数)を乗ずると、「①×②」の「H20年平均」欄記載の数値となり、同欄記載の数値の合計は、同表の18頁の欄外の水色塗りした箇所記載のとおり、「646627.9」となる。 平成20年生活扶助相当CPIは、この「646627.9」を同表の「①左記ウエイト中生活扶助相当品目」の「H20年平均」欄記載の平成22年総合ウエイト(平成20年生活扶助相当品目の平成22年総合ウエイト)の合計である「6189」で除することにより求められ、これを計算すると、「104.5」(小数点2桁 H20年平均」欄記載の平成22年総合ウエイト(平成20年生活扶助相当品目の平成22年総合ウエイト)の合計である「6189」で除することにより求められ、これを計算すると、「104.5」(小数点2桁以下四捨五 入)となる。 別表1の「①左記ウエイト中生活扶助相当品目」の「H23年平均」欄記載の平成22年総合ウエイト(平成23年生活扶助相当品目の平成22年総合ウエイト)に「②CPI」の「H23年平均」欄記載の価格指数(平成23年/平成22年価格指数)を乗ずると、「① ×②」の「H23年平均」欄記載の数値となり、同欄記載の数値の合計は、同表の18頁の欄外の水色塗りした箇所記載のとおり、「635973.1」となる。 平成23年生活扶助相当CPIは、この「635973.1」を同表の「①左記ウエイト中生活扶助相当品目」の「H23年平均」欄記 載の平成22年総合ウエイト(平成23年生活扶助相当品目の平成22年総合ウエイト)の合計である「6393」で除することにより求められ、これを計算すると、「99.5」(小数点2桁以下四捨五入)となる。 以上を踏まえ、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CP Iの変化率を計算すると、以下の計算式のとおり、-4.78%とな - 127 -る。 {(99.5-104.5)÷104.5}×100=-4.78% 7 厚労大臣は、以下の事情から、本件改定の時点において、平成20年以降のデフレ傾向によって生じていた受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な 増加を生活扶助基準に反映させて、生活扶助基準額の水準と一般国民の生活水準との不均衡を是正するためには、平成20年から平成23年までの間における生活扶助相当CPIの変動率(-4.78%)と同じ改定率をもって生活扶助基 反映させて、生活扶助基準額の水準と一般国民の生活水準との不均衡を是正するためには、平成20年から平成23年までの間における生活扶助相当CPIの変動率(-4.78%)と同じ改定率をもって生活扶助基準の減額改定をすることが相当であると判断した。 ⑴ 前記2から6までのとおり、平成20年以降のデフレ傾向により、同年か ら平成23年までの間、生活扶助相当CPIは、4.78%下落しているから、その間、生活扶助基準額が据え置かれたことにより、受給世帯の可処分所得は同じ分だけ相対的、実質的に増加したということができる。 ⑵ ここで、上記⑴の受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加には、一般国民の「賃金、物価及び家計消費がいずれも継続的に下落するデフレ状 況」において生活扶助基準額が据え置かれたことにより、一般国民との比較において生活保護受給世帯の可処分所得が相対的に増加したという観点を当然に含んでいる。そして、平成20年から平成23年までの間、リーマン・ショックの影響により、物価のみならず、賃金や消費等の経済指標も大きく下落していたこと(一般勤労世帯の賃金は、平成21年に3.9%の減少と なり、平成22年には微増したものの、平成23年には再び減少に転じ、家計消費支出も平成21年から平成23年まで3年連続でマイナスとなった。)、平成19年検証においては生活扶助基準額の水準と一般低所得世帯の生活水準との不均衡が、平成21年全消調査においては消費支出の下落がそれぞれ確認されていたこと(前記1⑴、⑵)からすれば、平成20年から 平成23年までの間、一般国民の賃金、物価及び家計消費の状況は、相当程 - 128 -度継続的に下落していたということができる。 ⑶ なお、上記⑴の受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加を測定す 3年までの間、一般国民の賃金、物価及び家計消費の状況は、相当程 - 128 -度継続的に下落していたということができる。 ⑶ なお、上記⑴の受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加を測定するための指標として、いかなる指標を用いるかについては、厚労大臣の裁量に委ねられており、当該指標による測定の正確性のほかにも、恣意的な判断が介在しないという意味での合理性、国民に対する分かりやすさという意味で の簡便さ等といった点も考慮要素となる。そして、生活保護法の規定からは、測定の正確性のみを殊更に重視すべきであるという解釈を導くことができない以上、仮に、厚労大臣が設定した指標としての物価変動率(平成20年から平成23年までの間の生活扶助相当CPIの下落率)と同期間における受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加率との間に誤差があったとして も、これをもって、デフレ調整に係る厚労大臣の判断過程に過誤、欠落があったと直ちに評価することはできないし、そのような評価をすることは、裁判所が自ら特定の衡量利益ないし考慮事項を選び出してこれを一般的に強調して司法審査をすることとなるから、判断過程審査の枠組みを逸脱するものとして、許されない。 ⑷ 本件改定においては、生活扶助基準額の減額幅の上限を10%とした上で、平成25年度から平成27年度にかけて3段階に分けて改定を実施するという激変緩和措置を講ずることとしたことも併せれば、本件改定後の生活扶助基準額が最低生活の維持に必要な生活水準を下回るものではない。 以上 - 129 -(別紙7)争点1(本件改定の適法性)に関する当事者の主張 (原告らの主張)第1 判断の枠組み 1 本件において原告らが主張する憲法及び生活保護法の違反⑴ 生活保護法8 -(別紙7)争点1(本件改定の適法性)に関する当事者の主張 (原告らの主張)第1 判断の枠組み 1 本件において原告らが主張する憲法及び生活保護法の違反⑴ 生活保護法8条1項は、保護基準の設定を厚労大臣に委任しているところ、保護基準の設定は、同条2項所定の最低生活の需要を満たすに十分なものであり、かつ、これを超えないものでなければならない。しかし、後記のとおり、本件改定は、最低生活の需要の測定・評価に係る厚労大臣の裁量権の範 囲を逸脱するものであるから、同条2項に違反するとともに、同条1項の委任の範囲を逸脱するものであって、同条1項にも違反する。 ⑵ 生活保護法8条1項、2項に違反する改定後の保護基準に基づく生活水準は、生活保護法3条が保障する最低生活の水準を下回ることになるため、本件改定は、生活保護法3条に違反する。 ⑶ 加えて、社会権規約2条、9条及び11条1項は、締約国に対し、社会権規約において認められる権利の完全な実現のために全ての選択肢を最大限慎重に検討した後に導入されたものであって、かつ、締約国の利用可能な最大限の資源の完全な利用に照らし、社会権規約に規定された権利全体との関連によって正当化されるものでない限り、社会保障制度の後退を禁ずる旨の法 的義務を課しており(以下、同法的義務を根拠として社会保障制度の後退を禁ずる旨の原則を「制度後退禁止原則」という。)、社会権規約の締約国である我が国の憲法25条にも制度後退禁止原則が読み込まれなければならないから、生活保護法8条1項、2項に違反する本件改定は、社会権規約2条、9条及び11条1項並びに憲法25条(以下、生活保護法3条、8条1 項、2項と併せて「生活保護法8条2項等」という。)にも違反する。 - 130 - に違反する本件改定は、社会権規約2条、9条及び11条1項並びに憲法25条(以下、生活保護法3条、8条1 項、2項と併せて「生活保護法8条2項等」という。)にも違反する。 - 130 - 2 生活扶助基準の改定が生活保護法8条2項に違反するか否かについての司法審査の在り方⑴ 基本的な考え方生活保護法8条2項所定の最低生活の需要の測定・評価を含む生活扶助基準の設定には専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断が必要であり、 厚労大臣にはそのような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権があるものの、生活扶助基準の改定の時点において、改定前の生活扶助基準が最低生活の需要を満たすに足りる程度を超えるものとなっており、かつ、改定後の生活扶助基準が最低生活の需要を満たすに足りる程度の生活水準を維持することができるものであるとした厚労大臣の判断の過程に過誤、欠落がある場 合には、そのような生活扶助基準の改定には厚労大臣の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるといわなければならず、当該改定は生活保護法8条2項の規定に違反する。そして、生活扶助基準の改定に当たっては、これまで長年にわたり、各種の統計や専門家の作成した資料等に基づく専門技術的な検討を踏まえてきた経緯があることに照らせば、裁判所が上記の裁量権の範囲 の逸脱又は濫用の有無を判断するに際しては、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性(以下併せて「客観的数値との合理的関連性等」といい、統計等の客観的数値等と専門的知見を併せて「客観的数値等」ということがある。)の有無等の観点から司法審査がされるべきである。 ⑵ 本件における司法審査の密度ア生活扶助基準の改定については、長年にわたり専門部会等の関与の下で、検証が行われ いうことがある。)の有無等の観点から司法審査がされるべきである。 ⑵ 本件における司法審査の密度ア生活扶助基準の改定については、長年にわたり専門部会等の関与の下で、検証が行われてきた経緯があるところ、これは、生活扶助基準の改定には専門技術的判断を必然的に伴うことから、そのような専門技術的判断をするには専門部会等における審議・検討が事実上不可欠であったことによる。 そうすると、事実上不可欠な専門部会等における審議・検討の過程を経ず - 131 -にされた生活扶助基準の改定の合理性については、被告らの側から十分な論証がされなければならない。このように解することは、生活保護法の立法過程における衆参両院での議論及び立法担当者の説明に示された立法者の意思とも整合する。 イ本件についてみると、本件改定の時点では、生活扶助基準の定期的な検 証を行うために社保審の常設部会として基準部会が設置されており、基準部会の知見こそが専門的知見のうちでも最も重要なものであったところ、2分の1処理及びデフレ調整は、いずれも基準部会その他の専門的機関における審議・検討の過程を経ずにされたものであるから、その合理性については、被告らから十分な論証がされなければならない。そうすると、本 件改定の適法性については、本来、審査密度が高い実質的考慮要素審査の手法を用いて審査すべきであり、仮に、それよりも審査密度の低い判断過程合理性審査の手法を用いて審査するとしても、厚労大臣の判断過程の追認に堕することのないよう審査密度の向上が図られなければならないから、その司法審査の密度は高いものでなければならない。 ⑶ 本件改定に係る厚労大臣の判断は、最低生活の需要そのものとは関係のない要素(以下「生活外的要素」という。)を考慮したも ばならないから、その司法審査の密度は高いものでなければならない。 ⑶ 本件改定に係る厚労大臣の判断は、最低生活の需要そのものとは関係のない要素(以下「生活外的要素」という。)を考慮したものであるから、客観的数値との合理的関連性等がないことが推認されることア生活扶助基準の改定に当たり、一部国民の感情や国の財政事情といった生活外的要素が考慮された場合には、そのこと自体が当該改定に係る厚労 大臣の判断に客観的数値との合理的関連性等がないことを推認させる事情になるというべきである。 イそして、①本件改定の当時、自由民主党が生活保護給付水準10%引き下げを公約として掲げていたこと(甲A15、A16)、②平成24年12月24日付で自民党と公明党が交わした連立政権合意書に生活保護費削 減が盛り込まれていたこと、③田村憲久厚労大臣(当時)が、平成25年 - 132 -報告書の取りまとめを待たずに生活扶助基準を引き下げる方針を明言したこと(甲A17~A19)、④平成24年12月26日から平成25年1月18日までの間に、自由民主党内で基準見直しによる財政効果等を検討していた「生活保護に関するプロジェクトチーム」の座長であった世耕弘成内閣官房副長官(当時)と厚労省幹部職員との間で2分の1処理及びデ フレ調整を行うことが秘密裏に協議されていたこと(甲A22の1~A22の3)、⑤平成31年3月18日付朝日新聞に、デフレ調整に関わった厚労省職員が「生活保護に厳しい自民党政権に代わり、さらに削減しないといけないとなった。そこで『デフレ』という考えが出てきた」と述べている記事が掲載されたこと(甲A24)からすれば、本件改定は、平成2 4年12月の衆議院選挙の結果、政権に復帰した自民党の選挙公約を実現しようとする政治的 フレ』という考えが出てきた」と述べている記事が掲載されたこと(甲A24)からすれば、本件改定は、平成2 4年12月の衆議院選挙の結果、政権に復帰した自民党の選挙公約を実現しようとする政治的意図に基づき、減額改定ありきで行われたものであったといえる。そして、現に、前記⑵イのとおり、基準部会その他の専門的機関における審議・検討の過程を経ずに強行されたものであることも併せると、本件改定に係る厚労大臣の判断が生活外的要素を考慮したものであ ることは明らかである。 ウしたがって、本件改定に係る厚労大臣の判断には客観的数値との合理的関連性等がないことが推認されるというべきである。 第2 2分の1処理が違憲、違法であること 1 司法審査の対象とされるべき厚労大臣の判断司法審査の対象とされるべき厚労大臣の判断は、「平成25年検証の結果が示すところの『受給世帯間の較差』を是正するために、改定前基準の展開指数を平成25年検証展開指数に完全に合致させた場合には生活扶助基準が引き上げられることになる世帯を含めて一律に2分の1処理を行ない、当該世帯の生 活扶助基準の増額幅を半分に抑制したとしても、最低生活の需要を満たすに足 - 133 -りる程度の生活水準を維持することができるとした厚労大臣の判断」(以下「2分の1処理に係る厚労大臣の判断」ということがある。)である。 2 2分の1処理に係る厚労大臣の判断の過程には客観的数値との合理的関連性等の観点から過誤、欠落があること⑴ 2分の1処理は、改定前基準の展開指数を平成25年検証展開指数に合 致させた場合に生活扶助費が増額されることとなる高齢者世帯等との関係でその増額幅を半減させ、受給世帯間の不公平を残存させるものであるから、ゆがみ調整の本質部分 指数を平成25年検証展開指数に合 致させた場合に生活扶助費が増額されることとなる高齢者世帯等との関係でその増額幅を半減させ、受給世帯間の不公平を残存させるものであるから、ゆがみ調整の本質部分を改変する処理であることア平成25年検証は、平成15年中間とりまとめにおいて老齢加算を廃止する方針が打ち出された際に、高齢者世帯の生活扶助基準額がその最低 生活の需要に足りる程度の生活水準を維持することができるように引き続き検討する必要があるとされたことを踏まえて行われたものである。 実際に、改定前基準の展開指数を平成25年検証展開指数に完全に合致させたならば、高齢単身世帯及び高齢夫婦世帯の生活扶助基準額は更に引き上げられるはずであった。 イしかし、2分の1処理をした場合には、受給世帯の中で最も大きな割合を占める高齢者世帯の生活扶助費の増額幅を半減させることとなることに加え、改定前基準の展開指数を平成25年検証展開指数に合致させた場合と比べて受給世帯間の不公平を残存させることとなるから、2分の1処理は、専門家の関与の下で行われた平成25年検証の結果の本質的部分を改 変する処理であるといえる。 ⑵ それにもかかわらず、厚労大臣は、2分の1処理に係る判断に当たって、専門家による高度の専門的知見に基づく検証を経なかったことア厚労大臣は、2分の1処理が上記⑴のような重大な影響を生ずるものであったにもかかわらず、2分の1処理に係る判断をするに際して、受給世 帯、取り分け、平成25年検証の結果増額すべきとされた高齢者世帯にい - 134 -かなる影響が生じるかなどの点について、専門的知見に基づく検証を行わなかった。 イそれどころか、厚労大臣は、前記第1の2⑶イのとおり、政治的意図に基づき、平成2 者世帯にい - 134 -かなる影響が生じるかなどの点について、専門的知見に基づく検証を行わなかった。 イそれどころか、厚労大臣は、前記第1の2⑶イのとおり、政治的意図に基づき、平成25年報告書が取りまとめられるのを待たずに、あえて基準部会に諮ることなく、2分の1処理を行うことを内部的に決定していたの であって、2分の1処理を行うことは、本件改定がなされるまで基準部会の委員らに対しても明らかにされていなかった。 ⑶ 2分の1処理は激変緩和措置ではないし、改定前基準の展開指数を平成25年検証展開指数に完全に合致させなければならない義務が厚労大臣にないことは基準部会その他の専門的機関における審議・検討の過程を経な いで2分の1処理を行ったことを正当化するものではないことア激変緩和措置とは、一般に、従前の取扱いを変更することによって不利益を受ける者がいることを前提に、不利益を受ける者の負担等に配慮して、その不利益を緩和することを目的とするものであるところ、前記⑴イのとおり、2分の1処理は受給世帯の大半を占める高齢者世帯の生活 扶助基準額の増額幅を半減させるものであるから、少なくとも、改定前基準の展開指数を平成25年検証展開指数に完全に合致させた場合に生活扶助基準額が増額となる世帯に対しては、激変緩和措置であるということはできない。 イ厚労大臣が平成25年検証の結果に従う義務がなく、改定前基準の展開 指数を平成25年検証展開指数に完全に合致させるように生活扶助基準の改定を行うことを義務付けられていないことを前提としても、そのことは、厚労大臣が基準部会その他の専門的機関における審議・検討の過程を経ることなく平成25年検証の結果の反映比率を自由に設定し、ゆがみ調整による改定の本質的部分 れていないことを前提としても、そのことは、厚労大臣が基準部会その他の専門的機関における審議・検討の過程を経ることなく平成25年検証の結果の反映比率を自由に設定し、ゆがみ調整による改定の本質的部分をも改変することができる極めて広範 な裁量権を有することを意味しないから、基準部会その他の専門的機関 - 135 -における審議・検討の過程を経ないで2分の1処理を行ったことを何ら正当化するものではない。 ⑷ 小括これらのことからすると、2分の1処理に係る厚労大臣の判断の過程には客観的数値との合理的関連性等の観点から過誤、欠落があるといえる。 3 2分の1処理に係る厚労大臣の判断の違法性についてのまとめしたがって、2分の1処理に係る厚労大臣の判断には、その裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるといえるから、2分の1処理は、生活保護法8条2項等に違反し、違憲、違法である。 第3 デフレ調整が違憲、違法であること 1 司法審査の対象とされるべき厚労大臣の判断司法審査の対象とされるべき厚労大臣の判断は、「①物価変動率を指標として受給世帯の可処分所得の実質的な増加分を測定し、これに応じた生活扶助基準の減額改定を行うこととし、②平成20年から平成23年までの生活 扶助CPIの変動率をもって上記の物価変動率とした上で、これを-4.78%と算定し、③当該変動率の分だけ同期間における受給世帯の可処分所得が実質的に増加したものと評価してこれと同じ分だけ生活扶助基準を減額することが相当であるとした厚労大臣の判断」(以下「デフレ調整に係る厚労大臣の判断」という。)である。 2 デフレ調整に係る厚労大臣の判断の過程における事実誤認等⑴ 「デフレ調整の目的は、平成20年以降の『一般国民の生活水準の下落 下「デフレ調整に係る厚労大臣の判断」という。)である。 2 デフレ調整に係る厚労大臣の判断の過程における事実誤認等⑴ 「デフレ調整の目的は、平成20年以降の『一般国民の生活水準の下落』を根拠に受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加したことから、これによって生じた一般国民の生活水準との間の相対的な不均衡の是正を図ることにあった」とする被告らの現在の主張は、デフレ調整に係る厚労 大臣の実際の判断過程とは異なること - 136 -アデフレ調整は、飽くまで、物価下落に伴う受給世帯の可処分所得の実質的増加分の限りで生活扶助基準の改定をするものであり、一般国民の生活水準の下落を理由として生活扶助基準の改定をするものではない。このことは、第183回国会・衆議院厚生労働委員会(平成25年6月5日)における政府参考人(厚生労働省社会・援護局長村木厚子)の答弁(甲A7 8)、平成25年1月27日時点で国が作成していた本件改定に関する説明資料(甲A10の「4.生活保護基準の見直しについて」)における記載からも明らかであるし、本件訴訟において、被告ら自身も当初、そのように主張していたところである。一般国民の生活水準の下落という点を強調して、受給世帯の可処分所得の実質的増加分を超えて生活扶助基準を引 き下げるということになれば、受給世帯の実質的な購買力を維持しつつ物価を勘案して基準額の見直しを行うというデフレ調整の政策目的にかえって反することになる。 イしかも、生活扶助相当CPIは、生活扶助相当品目の物価変動率を把握するために策定された指標であって、「一般国民の生活水準の下落」に よる受給世帯と一般国民との間の相対的な不均衡を測定するための指標ではないから、仮に、デフレ調整の目的が「一般国民の生活水 握するために策定された指標であって、「一般国民の生活水準の下落」に よる受給世帯と一般国民との間の相対的な不均衡を測定するための指標ではないから、仮に、デフレ調整の目的が「一般国民の生活水準の下落」による受給世帯と一般国民との間の相対的な不均衡を是正することにあるとすると、厚労大臣がデフレ調整の指標として生活扶助相当CPIの変化率を用いたことは、目的との間で論理的一貫性を欠くことにな る。 ウこれらのことからすれば、一般国民の生活水準との間の相対的な不均衡の是正というものは、デフレ調整の直接的な目的ではなく、デフレ調整によって受給世帯の可処分所得の実質的増加分だけ生活扶助基準を減額改定する結果として、生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準が従前よりも 均衡することとなることを意味するにとどまるというべきである。 - 137 -エしたがって、被告らの上記主張は、デフレ調整に係る厚労大臣の実際の判断過程とは異なるというべきである。 ⑵ 「平成20年以降における一般国民の生活水準が大幅に下落しており、消費を基礎として生活扶助基準の水準を検証した改定を行う場合には減額幅が必要以上に大きくなることが想定されたことから、物価変動を指標と して改定を行うこととした」とする被告らの主張は、事実誤認に基づくものであることア被告らが「一般国民の生活水準の下落」を根拠付けるために引用する以下の「経済指標」は、一般低所得世帯(第1・十分位世帯)の「二人以上世帯」の数値であり、受給世帯の70%超を占める「単身世帯」の数値で はない。 イそこで、一般低所得世帯の「単身世帯」について、平成20年から平成23年までの消費の動向を家計調査に基づいて計算すると、以下のとおり、その消費支出は減少しておらず、むし はない。 イそこで、一般低所得世帯の「単身世帯」について、平成20年から平成23年までの消費の動向を家計調査に基づいて計算すると、以下のとおり、その消費支出は減少しておらず、むしろ増加している(甲A80の1〜4、 A81の1〜4)。 ウこのように、「二人以上世帯の消費支出」あるいは「夫婦子一人世帯 - 138 -(第1・十分位世帯)の生活扶助相当支出額」が減少していたとしても、そのことだけから、消費の動向を基礎とする改定を行った場合には減額幅が必要以上に大きくなるわけではない。 エしたがって、被告らの上記主張は、事実誤認に基づくものである。 3 デフレ調整に係る厚労大臣の判断の過程には客観的数値との合理的関連性 等の観点から過誤、欠落があること⑴ 水準均衡方式による改定とは別に物価変動を指標とする改定を行うことについてア水準均衡方式による改定は、翌年度予算編成時に「政府経済見通し」として公表される「民間最終消費支出」をもって一般国民生活の消費水 準を把握し、「民間最終消費支出」の翌年度伸び率に準拠して改定率を定めることによって一般国民の消費水準と生活扶助基準の均衡を維持するものであるところ、上記の「民間最終消費支出」の伸び率は物価変動の影響を除去しない「名目値」として計算されているため、物価が変動すれば、これに応じて「民間最終消費支出」の伸び率も変動することに なる。そのため、物価の変動は適時に水準均衡方式における生活扶助基準の改定に反映される構造となっている。 そして、平成20年から平成23年までの期間においても、国民の消費動向や社会経済情勢等を総合的に勘案して改定するとの考え方に基づき、従前の経緯を踏まえて、現在の経済、雇用情勢等を総合的に勘案 。 そして、平成20年から平成23年までの期間においても、国民の消費動向や社会経済情勢等を総合的に勘案して改定するとの考え方に基づき、従前の経緯を踏まえて、現在の経済、雇用情勢等を総合的に勘案 した上で、生活扶助基準を据え置くこととされたというのであるから(乙A43~A46)、上記期間においても水準均衡方式による消費の動向を踏まえた生活扶助基準の改定は行われてきたといえるのであって、水準均衡方式に基づく改定が行われている限り、改定率が0(据置き)であったとしても、その間の物価変動は生活扶助基準の改定に反映 されているといえる。 - 139 -そうすると、平成20年から平成23年までの期間を含め、生活扶助基準には物価変動が適切に反映され、生活扶助基準が「一般国民の消費の実態との均衡上ほぼ妥当な水準」に維持されてきたことは明らかであるから、平成20年以降のデフレによる物価の下落について生活扶助基準に反映されていない状況にあったとするデフレ調整の前提自体がそ もそも事実誤認であり、これに重ねて物価変動のみを独立に生活扶助基準に反映させる改定(デフレ調整)を行うことは、そもそも必要でないばかりか、かえって、生活扶助基準が「一般国民の消費の実態との均衡上ほぼ妥当な水準」である状態を崩すことになる。 イまた、物価変動率の生活実態への影響は、自ずと世帯ごとに異なるから、 物価変動率そのものをもって最低生活の需要を把握することはできないといわざるを得ず、実際に、被告国が物価変動率をそのまま生活扶助基準の改定に用いたことは、昭和25年に現行の生活保護法が制定されて以降、本件改定におけるデフレ調整を除き、一度もない。この点からしても、一定期間における物価下落率と一致した割合で生活扶助基準の実質的な引き ことは、昭和25年に現行の生活保護法が制定されて以降、本件改定におけるデフレ調整を除き、一度もない。この点からしても、一定期間における物価下落率と一致した割合で生活扶助基準の実質的な引き 上げが生ずることはあり得ないのであり、これを当然に肯定するという考えは、水準均衡方式はもとより、従前の生活扶助基準の改定の在り方と本質的に相容れないものである。 ウしたがって、水準均衡方式による改定とは別に物価変動を指標とする改定を行うこととした厚労大臣の判断の過程には、物価変動を二重に評価 するものである点及び従前の生活扶助基準の改定の在り方とは本質的に相容れない考え方を前提としているという点において、客観的数値との合理的関連性等の観点から過誤、欠落があるといえる。 ⑵ デフレ調整における改定の指標とした物価変動率を算定する始期を平成20年としたことについて ア前記⑴ア及びのとおり、平成20年度以降に水準均衡方式による改 - 140 -定を行っていないという事実は存在しないから、平成20年度以降の消費、物価等の経済動向が生活扶助基準に反映されていないという誤った事実を前提として、平成20年以降の物価変動に着目し、デフレ調整による生活扶助基準の水準の見直しを行うことはできない。 イ被告らの主張を前提とすれば、生活扶助基準が据え置かれた期間に生じ た物価変動は、デフレかインフレかを問わず、生活扶助基準に反映されていないから、これによって生じた受給世帯の可処分所得の実質的な増減を是正するために生活扶助基準の「見直し」を行わなければならないことになる。そして、その「見直し」を行う際の生活扶助基準の据置き期間に生じた物価変動の始点は、デフレかインフレかを問わず、「物価変動が生じ た時点」となるところ 直し」を行わなければならないことになる。そして、その「見直し」を行う際の生活扶助基準の据置き期間に生じた物価変動の始点は、デフレかインフレかを問わず、「物価変動が生じ た時点」となるところ、以下の図のとおり、年平均でみたときは、平成19年から平成20にかけて前年比1.4ポイントのインフレが生じており、これが平成19年度の生活扶助基準の改定に反映されていないことは明らかである。そのため、据置き期間に生じた物価変動を生活扶助基準に反映させるために物価変動率を算定するのであれば、その始点は、据置き期間 中に物価変動が生じた平成19年とすることが論理的な帰結であり、平成20年を起点とすることは、上記のインフレを無視することとなるため、明らかに誤っている。 - 141 -ウこれらのことからすると、平成19年から平成20年にかけての物価上昇を考慮せず、それ以降の物価下落の影響のみを殊更に取り上げて「デフレ調整」を行っても、生活保護法8条2項の要求する要保護者の最低生活の「需要」の減少(受給世帯の可処分所得の実質的な増加)を正しく測定することはできないといえる。 エしたがって、デフレ調整における改定の指標とした物価変動率を算定する始期を平成20年とした厚労大臣の判断の過程には、客観的数値との合理的関連性等の観点から過誤、欠落等があるといえる。 ⑶ デフレ調整における改定の指標とした物価変動率の算定において、平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイトを参照したことについて ア平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイトは受給世帯の消費構造から大きくかい離したものであることデフレ調整における改定の指標とした物価変動率を算定するに際しては、参照されるウエイト(消費支出額に占める各指数品目の支出額の割 エイトは受給世帯の消費構造から大きくかい離したものであることデフレ調整における改定の指標とした物価変動率を算定するに際しては、参照されるウエイト(消費支出額に占める各指数品目の支出額の割合)が受給世帯の消費構造から大きくかい離しないものでなければならない。仮 に、参照されたウエイトが受給世帯の消費構造と大きくかい離するものであれば、算定された物価の下落率は、受給世帯における可処分所得の実質 - 142 -的増加の有無、程度を正しく測定するものとはいえない。 しかし、デフレ調整における改定の指標とされた物価指数(生活扶助相当CPI)の下落率は、平成22年総務省CPIの総合指数のウエイト、すなわち、平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイトをそのまま参照して算定されているところ、以下のとおり、平成22年家計調査(二 人以上世帯)ウエイトは、受給世帯の消費構造と大きくかい離するものである。 まず、受給世帯とは所得階層が異なる世帯の消費構造を前提としたウエイトは、受給世帯の消費構造と大きくかい離する。所得階層ごとに大きく異なる物価変動率が算定されることは、計算結果(甲A91〔6 頁〕)に基づく以下のグラフからも明らかである。 ※ 上記グラフのうち、「生活保護(単身世帯)」及び「生活保護(2人以上世帯)」の数値は社会保障生計調査のデータを、「平均」、「五分位階級の各階級」、「第1・十分位」及び「第10・十分位」の数値は家計調査のデータを それぞれ用いている。 しかし、以下の表のとおり、家計調査のサンプルのうち年収250万 - 143 -円未満の世帯の割合は7.2%(2.8%+4.4%)にとどまっているのであり、このことからすれば、家計調査のウエイトは、受給世帯よりも圧倒 家計調査のサンプルのうち年収250万 - 143 -円未満の世帯の割合は7.2%(2.8%+4.4%)にとどまっているのであり、このことからすれば、家計調査のウエイトは、受給世帯よりも圧倒的に年収が高い世帯を対象の中心とした家計の支出に基づくウエイトであって、受給世帯の消費構造から大きくかい離するものといえる。 次に、家計の消費構造は世帯類型の相違によっても相当に異なるところ、受給世帯(高齢世帯が約半数、単身世帯が7割超)と平成22年家計調査(二人以上世帯)の対象とする世帯類型とでは相当に異なっているから、後者のウエイトは受給世帯の消費構造から大きくかい離した ものといえる。 具体的には、以下の表(甲A86中の「表4」)のとおり、①平成22年家計調査(二人以上世帯)の十大費目別の構成比と②受給世帯を対象とした平成22年社会保障生計調査の十大費目別の構成比を比較すると、家計支出の中で大きな割合を占める「食料」については、②のい ずれの世帯類型においても①の「食料」の支出割合を上回っているのに - 144 -対し、逆に、「教養娯楽」については、②の支出割合は小さく、世帯類型によっては①のデータと比較して2分の1以下である。 イ平成20年から平成22年までの物価変動率を平成22年のウエイトを参照して算定することは、物価変動率の算定方法として誤っており、 物価下落率を過大に算定するものであること厚労大臣は、平成20年から平成23年までの間の生活扶助相当CPIの下落率を算定するに当たり、平成22年をウエイトの参照年としているところ、これは、平成20年から平成22年までの物価変動率の算定にはパーシェ方式を用い、平成22年から平成23年までの物価変 動率の算定にはラスパイレス方式 22年をウエイトの参照年としているところ、これは、平成20年から平成22年までの物価変動率の算定にはパーシェ方式を用い、平成22年から平成23年までの物価変 動率の算定にはラスパイレス方式を用いて計算することを意味する。しかし、このように異なる計算方式を結合させて物価変動率を算定することは誤っている。 上記のとおり、生活扶助相当CPIの算定においては、平成20年から平成22年までの物価変動についてパーシェ方式が用いられてい - 145 -るところ、このことにより、平成20年から平成22年にかけての物価下落の影響が、ラスパイレス方式を用いた場合と比べ、物価下落率の算定に大きく反映されている。そのため、平成20年から平成22年までの物価変動率を平成22年のウエイトを参照して算定することは、ラスパイレス方式を用いる一般的な方法と比べ、物価下落率を過 大に算定するものといえる。 ウ実際に、平成22年家計調査(二人以上世帯)のウエイトを参照して算定された生活扶助相当CPIの下落率は、ラスパイレス方式に基づく一般的な方法により算定された物価下落率よりも過大であるし、受給世帯の消費構造からは説明することができないものとなっていること(甲 A87、A88)実際に、平成20年から平成22年までの物価変動率を平成22年のウエイトを参照して算定したことにより、生活扶助相当CPIの下落率が過大に算定されていること指数品目を生活扶助相当品目に限定した上で、①平成20年から平 成22年までの物価の変化率を、平成17年基準の品目別の価格指数とウエイトに基づいて算定するとともに、②平成22年から平成23年までの物価の変化率を、平成22年の品目別の価格指数とウエイトに基づいて算定する方法(以下の表で「一般 成17年基準の品目別の価格指数とウエイトに基づいて算定するとともに、②平成22年から平成23年までの物価の変化率を、平成22年の品目別の価格指数とウエイトに基づいて算定する方法(以下の表で「一般的な方法」と表記されているラスパイレス方式に基づく算定方法)で算定した場合には、-2.26%と なる。 そのため、生活扶助相当CPIの変化率(-4.78%)は、上記の方法で算定した場合の物価の下落率よりも約2.5ポイントも過大に算定されている。 - 146 - 実際に、生活扶助相当CPIの下落率への寄与度の大きい品目のうちの主要なものは、受給世帯における消費支出が基本的に想定し難い品目であり、これらの品目の価格下落は受給世帯が直面した消費支出とは関係のないものであること a 生活扶助相当CPIの下落率への寄与度の大きい品目(a) 総務省CPIの「中分類」ごとに平成20年から平成22年までの間の生活扶助相当CPIの下落率に対する寄与度を算出し、その数値が±0.2%以上のものを取り出すと、以下のとおり、「教養娯楽用耐久財」が最も大きく、-2.72%であった(なお、 「教養娯楽用耐久財」の寄与度自体も、生活扶助相当CPIの方が一般的な方法により算定された物価下落率より-2.35ポイント過大に算定されている。)。 (b)次いで、「教養娯楽耐久財」の中で、平成20年から平成22年 までの間の生活扶助相当CPIの下落率に対する寄与度が大きい品目についてみると、以下のとおり、テレビの寄与度の違いが顕著に - 147 -大きく、家電製品7項目(テレビ、ノートパソコン、デスクトップパソコン、ビデオレコーダー、電気冷蔵庫、冷暖房器具、カメラ)の寄与度の合計が-2.90%であった(なお、以下の表の「通常」 47 -大きく、家電製品7項目(テレビ、ノートパソコン、デスクトップパソコン、ビデオレコーダー、電気冷蔵庫、冷暖房器具、カメラ)の寄与度の合計が-2.90%であった(なお、以下の表の「通常」欄には、前記において「一般的な方法」とされた方法によった場合の数値が、「厚労省」欄には生活扶助相当CPIにおける数 値が、それぞれ記載されている。)。 - 148 -b 上記aの品目は、平成20年から平成23年までの受給世帯における消費支出が基本的に想定し難い品目であり、これらの品目の価格下落は受給世帯が直面した消費支出とは関係のないものであること(a)新品のパソコンやテレビは、受給世帯における消費支出が基本的に想定し難い品目であること 総務省CPI(及びこれを基礎に作成された生活扶助相当CPI)の指数品目は新品のものが想定されているところ、平成22年社会保障生計調査によれば、以下のとおり、平成22年の受給世帯のPC・AV機器への支出額は、月額にして737円、年間でも8844円にとどまっていることからすると、受給世帯が新品のテレ ビやパソコンを購入することは基本的に想定し難い。そのため、この時期のパソコンやテレビの価格下落は、受給世帯が直面した消費支出とは関係のないものである。 2010年消費支出(合計)¥173,620PC・AV機器¥737消費支出(合計)¥2,083,440PC・AV機器¥8,844項目社会保障生計調査月間支出額年間支出額 (b)平成20年から平成23年までのテレビの物価下落は受給世帯が 直面した消費支出とは関係のないものであることテレビについては、平成22年を中心として全国的に購入数量が急増しているところ、これは、平成23年7月か 3年までのテレビの物価下落は受給世帯が 直面した消費支出とは関係のないものであることテレビについては、平成22年を中心として全国的に購入数量が急増しているところ、これは、平成23年7月からの地デジ化や家電エコポイントの付与率の大幅な引下げを受け、テレビの買替え需要が高まったことによる。 しかし、受給世帯が家電エコポイント制度の影響を受けてテレビを買い替えることは基本的に想定し難いし、受給世帯には平成22年の地上デジタル放送への移行の際に無料チューナーが配布されていた。そのため、この時期のテレビの価格下落は、受給世帯が直面 - 149 -した消費支出とは関係のないものである。 (c)平成20年から平成23年までのパソコン、カメラの物価下落は受給世帯が直面した消費支出とは基本的に関係のないものであることパソコンやカメラは、平成17年から平成22年までの間、価格 指数が大幅に下落したものと擬制された。これは、この間、パソコンやカメラの性能向上が著しかったため、品質調整が強力に実施された結果、実際の店頭価格は大きくは変わっていないにもかかわらず、性能向上を反映させて価格指数が大幅に下落したものと擬制されたことによる。 しかし、品質調整は単なる計算上の擬制にすぎないため、この時期のパソコンやカメラの価格下落は、受給世帯が直面した消費支出とは関係のないものである。 エ小括したがって、デフレ調整の根拠とされた平成20年から平成23までの 間の生活扶助相当CPIの下落率(-4.78%)は、平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイトを参照したことから、計算の構造上も、実際上も、受給世帯の消費構造から説明することができない過大なものとなっており、上記の物価下落率は、上記の期間における 平成22年家計調査(二人以上世帯)ウエイトを参照したことから、計算の構造上も、実際上も、受給世帯の消費構造から説明することができない過大なものとなっており、上記の物価下落率は、上記の期間における受給世帯の可処分所得の実質的な増加の有無、程度を正しく測定したものとはいえない。 ⑷ 物価変動率の算定に関するその他の問題についてア指数品目を生活扶助相当品目に限定することは、受給世帯の消費支出とは関係のない電化製品の価格下落を過大に評価する原因となっており、不合理であること 生活扶助CPIに含まれる品目のうち平成20年から平成23年にか けての価格下落率が高い10個の品目は、以下のとおり、全て電化製品 - 150 -である。 生活扶助相当CPIの算定に当たっては、指数品目を生活扶助相当品目に限定しているところ、その結果、平成22年総務省CPIにおける電化製品のウエイトは2.68%(電化製品のウエイト合計268÷ 総ウエイト1万)にとどまるのに対し、生活扶助CPIにおける電化製品のウエイトは4.19%(電化製品のウエイト合計268÷平成23年の生活扶助相当品目のウエイト合計6393)になる。これは、電化製品への受給世帯の支出の方が一般世帯のそれの1.5倍超になるという受給世帯の消費実態から大きくかい離した状態を計算上想定している ことを意味する。 このように、生活扶助相当CPIの算定に当たり指数品目を生活扶助相当品目に限定することは、受給世帯の消費支出とは関係のない電化製品の価格下落を過大に評価する原因となっており、不合理である。 イ総務省CPIとの比較の観点からしても、生活扶助相当CPIの下落 率と同程度だけ受給世帯の可処分所得の実質的増加があったと評価することは不合理 に評価する原因となっており、不合理である。 イ総務省CPIとの比較の観点からしても、生活扶助相当CPIの下落 率と同程度だけ受給世帯の可処分所得の実質的増加があったと評価することは不合理であること生活扶助相当CPIの平成20年から平成23年までの間の下落率は4.78%であるところ、これは、総務省CPIの同期間の下落率2. - 151 -35%を大きく超えたものである。しかし、受給世帯の方が一般世帯よりもデフレの影響による可処分所得の実質的増加がより大きく生じていると考えるべき合理的な要因は想定し得ないから、生活扶助相当CPIの下落率と同程度だけ受給世帯の可処分所得の実質的増加があったと評価することは不合理である。 4 デフレ調整に係る厚労大臣の判断の違法性についてのまとめ⑴ このように、デフレ調整に係る厚労大臣の判断の過程には、①前提において事実誤認がある点(前記2)、②水準均衡方式による改定とは別に物価変動率を指標とする改定を行うものである点(前記3⑴)、③着目する物価変動の始期を平成20年とした点(前記3⑵)、④平成22年家計調査(二人 以上世帯)ウエイトを参照して算定した物価下落率をもって、平成20年から平成23年までの間における受給世帯の可処分所得の実質的な増加の有無、程度を測定している点(前記3⑶)等で、客観的数値との合理的関連性等の観点から過誤、欠落がある。 ⑵ したがって、デフレ調整に係る厚労大臣の判断には、その裁量権の範囲の 逸脱又は濫用があるといえるから、デフレ調整は、生活保護法8条2項等に違反し、違憲、違法である。 第4 争点1についての結論以上より、本件改定の主要部分を構成する2分の1処理及びデフレ調整は、 いずれも生活保護法8条2項等に反 保護法8条2項等に違反し、違憲、違法である。 第4 争点1についての結論以上より、本件改定の主要部分を構成する2分の1処理及びデフレ調整は、 いずれも生活保護法8条2項等に反し、違憲、違法であるから、本件改定は、生活保護法8条2項等に反し、違憲、違法である。 - 152 -(被告らの主張)第1 判断の枠組み 1 厚労大臣には保護基準の改定について専門技術的かつ政策的な見地からの広い裁量権が認められること⑴ 憲法25条、生活保護法3条、8条2項にいう最低生活は、抽象的かつ相 対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において決定されるべきものである。そして、これを保護基準において具体化するに当たっては、国の財政事情等の生活外的要素を無視することができず、多方面にわたる複雑多様かつ高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とする。 ⑵ そうすると、憲法25条及び同条の趣旨を実現するために制定された生活保護法は、保護基準における最低生活の具体化を、厚労大臣の高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断に委ねているというべきであり、保護基準の改定に当たり、いかなる事情を重視して、いかなる統計的な手法を用いるかなどについても、厚労大臣には専門技術的かつ政策的な見地からの 極めて広範な裁量権が認められているというべきである。 ⑶ なお、原告らの主張する制度後退禁止原則は、保護基準の減額改定に係る厚労大臣の裁量権を実質的に制約する根拠とはなり得ないものである。 2 保護基準の改定に係る厚労大臣の判断が違法となる場合及びそのような場合に該当するか否かについての司法審査の在り方 ⑴ 保護基準の改定に 実質的に制約する根拠とはなり得ないものである。 2 保護基準の改定に係る厚労大臣の判断が違法となる場合及びそのような場合に該当するか否かについての司法審査の在り方 ⑴ 保護基準の改定に係る厚労大臣の判断が違法となる場合ア上記1のとおり、保護基準の改定についての厚労大臣の裁量権の範囲が極めて広範であることからすると、保護基準の改定に係る厚労大臣の判断が生活保護法3条、8条2項の規定に反して違法となるのは、①当該改定後の保護基準の内容が最低生活を維持するに足りるものであり、かつ、こ れを超えないものであるとしたことに、最低生活の具体化に係る判断の過 - 153 -程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合又は②激変緩和等の措置を採るか否かについての方針及びこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとしたことに、受給世帯の生活への影響等の観点からみて、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に限られるというべ きである。 イもっとも、生活扶助基準額については、水準均衡方式による毎年度の改定のほか、基準部会等による定期的な検証も行われており、改定により前年度と比較して多寡が生ずることは生活保護法8条2項の規定から当然に予定されていること、保護に要する費用は、受給世帯が納付した保険料等 により賄われるものではなく、国民一般が納付する租税によって賄われるものであるため、保護として現に行なわれている給付が将来も存続することに対する信頼を保護すべき要請は基本的には高いものとはいえないことなどからすれば、生活扶助基準額を減額改定されない旨の被保護者の期待的利益を保護すべき必要性はそもそも高いものではない。そのため、前記 頼を保護すべき要請は基本的には高いものとはいえないことなどからすれば、生活扶助基準額を減額改定されない旨の被保護者の期待的利益を保護すべき必要性はそもそも高いものではない。そのため、前記 アの①、②のいずれの観点からしても、本件改定に係る厚労大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるといえる場合は、実際上極めて限られるというべきである。 ⑵ 保護基準の改定に係る厚労大臣の判断が違法となる場合に該当するか否かについての司法審査の在り方 ア前記1のとおり、保護基準の改定についての厚労大臣の裁量権の範囲が極めて広範であることからすると、保護基準の改定の適法性に関する司法審査の在り方としては、厚労大臣の裁量権行使の内容面に立ち入らずに、いわばその外側から適否を判断することができる判断の過程及び手続に過誤、欠落があるか否かという観点から審査すること(判断過程審査)が相 当であり、判断過程審査の名の下に、裁判所が自ら特定の衡量利益ないし - 154 -考慮事項を選び出してこれを一般的に強調して、厚労大臣の極めて広範な裁量権の行使に委ねられるべき最低生活の具体化そのものについて司法審査を及ぼすことは許されない。 イ判断過程審査においては、被告らが説明する論証過程を追試的に検証し、判断過程のうち原告から不合理であるとして指摘された点に関する被告ら の説明が一応納得することができるものか否かが審査されることになるところ、その際には、当該論証過程に統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性(客観的な数値との合理的関連性等)があるかという観点から審査が行われることになる。そして、客観的数値との合理的関連性等については、飽くまで、厚労大臣の判断の過程において現に 用いられた統計等の客観的 数値との合理的関連性等)があるかという観点から審査が行われることになる。そして、客観的数値との合理的関連性等については、飽くまで、厚労大臣の判断の過程において現に 用いられた統計等の客観的な数値等や専門的知見を前提に、これと上記論証過程との間に合理的関連性や整合性が欠けるところがないかという形で審査されるべきである。 ウなお、行政機関の判断過程の一部に瑕疵があると判明しても、その瑕疵が判断の結論に影響する可能性がない場合には、行政機関の判断を違法と することができないことからすると、判断過程審査において、基準の改定に係る厚労大臣の判断が違法であると判断することができるのは、厚労大臣の判断の過程及び手続に、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法及び生活保護法の趣旨・目的に反したと評価することができるほどの重大な過誤、欠落がある場合に限られるというべきである。 ⑶ 保護基準の改定に当たり基準部会等の専門機関による審議・検討を経ていないことが保護基準の改定に係る厚労大臣の裁量権の範囲の逸脱又は濫用を直ちに基礎付けるものではないことア厚労大臣が保護基準の改定に当たり基準部会等の専門機関による審議・検討を経なければならない旨の法令上の規定はない。これは、高度に専門 技術的かつ政策的な判断を要する基準の改定については、厚労大臣が高度 - 155 -の専門技術的知見を有することを前提に、厚労大臣の政策判断に委ねる趣旨であると解される。実際、厚労大臣は、専門技術的知見を背景に、専門機関に諮ることなく保護基準の改定を行ってきたし、専門機関による定期的な生活扶助基準の検証を経た場合であっても、検証の結果を保護基準にそのまま反映させるのではなく、その時々の社会経済情勢等を総合的に勘 案し なく保護基準の改定を行ってきたし、専門機関による定期的な生活扶助基準の検証を経た場合であっても、検証の結果を保護基準にそのまま反映させるのではなく、その時々の社会経済情勢等を総合的に勘 案した上で、専門技術的かつ政策的な見地から生活扶助基準の改定を行ってきたものである。 イ基準部会は、厚労大臣の諮問機関である社保審に置かれる常設の部会であるが、基準部会の設置の趣旨及び審議事項は、飽くまで、現在の保護基準の定期的な評価及び検証に限られるのであって、評価及び検証を踏まえ た保護基準の改定の在り方、ましてや、厚労大臣が行おうとする改定の当否等についての分析や検証は、基準部会の設置の趣旨及び審議事項に含まれない。 ウこれらのことからすると、基準部会等の専門機関の意見は、厚労大臣が保護基準を改定する際の考慮要素の一つにとどまり、厚労大臣は、保護基 準の改定に当たり、基準部会等の専門機関に対し審議・検討を依頼するか否か、依頼した場合における審議・検討の結果をどのように考慮するかについて、専門技術的かつ政策的裁量を有しているから、保護基準の改定に当たり基準部会等の専門機関による審議・検討の過程を経ていないことは、厚労大臣の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があることを直ちに基礎付け るものではない。 第2 本件改定に係る厚労大臣の判断過程には過誤、欠落がなく、同判断に厚労大臣の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえないこと 1 本件改定に係る厚労大臣の判断過程について被告らが論証するところは、別 紙6「本件改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」記載 - 156 -のとおりであり、いずれも一応納得することができるものであるから、本件改定に係る厚労大臣の判断の過程及び手続には過誤 改定に係る厚労大臣の判断過程についての被告らの論証内容」記載 - 156 -のとおりであり、いずれも一応納得することができるものであるから、本件改定に係る厚労大臣の判断の過程及び手続には過誤、欠落はない。 したがって、同判断には、厚労大臣の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえない。 2 なお、以下の事情からも、デフレ調整に係る厚労大臣の判断が合理的なもの であったことが基礎付けられる。 ⑴ 平成29年検証において参照された統計資料によれば、デフレ調整の対象期間(平成20年から平成23年までの間)における消費、物価、賃金の変化率は、下表のとおり、全てマイナスとなっており、同期間における収入及び生活維持に必要な金額は、実質的に減少しているといえる状況にあった。 経済指標変化率消費 二人以上世帯の消費支出(全体)-4.7%二人以上世帯の消費支出(第1・十分位世帯)-5.0%二人以上世帯の生活扶助相当支出(全体)-5.2%二人以上世帯の生活扶助相当支出(第1・十分位世帯)-5.2%物価 消費者物価指数-2.3%生活扶助相当CPI(ウエイト参照年は平成27年)-4.4%賃金 一般労働者(事業者規模5人以上)-2.6%パートタイム労働者(同上)-0.2%⑵ 平成29年検証においては、本件改定後の生活扶助基準の水準が一般低所得世帯(第1・十分位世帯)の消費実態とおおむね均衡することが確認された。 ⑶ 平成21年全消調査によれば、夫婦子一人世帯の一般低所得世帯(第1・十分位世帯)の生活扶助相当支出額は、平成16年から平成21年にかけて 約11.6%も下落しており、生活扶助基準額を約12.6%下回るものと - 157 - 世帯の一般低所得世帯(第1・十分位世帯)の生活扶助相当支出額は、平成16年から平成21年にかけて 約11.6%も下落しており、生活扶助基準額を約12.6%下回るものと - 157 -なっていた。また、本件改定後の平成26年全消調査においても、夫婦子一人世帯の一般低所得世帯(第1・十分位世帯)の生活扶助相当支出額は、平成16年に比べて約8.2%低下していた。 第3 争点1についての結論 1 このように、原告らの指摘を踏まえても、本件改定に係る厚労大臣の判断過程には客観的な統計数値との合理的関連性等に欠けるところがなく、その判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえないから、本件改定に係る厚労大臣の判断は一応納得することができるものであって、その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものであるとはいえない。 2 なお、厚労大臣の判断の結果に着目した場合でも、本件改定により設定された基準が現実の生活条件を無視して著しく低い基準に該当しないことは、平成29年検証の結果からも明らかである。 3 以上より、本件改定は、適法である。 以上 - 158 -(別紙8)争点2(本件改定等の国賠法上の違法性及び故意又は過失の有無並びに損害の有無及び額)に関する当事者の主張 (原告らの主張) 第1 本件改定等により、最低生活の需要を満たすに足りる生活扶助費を下回る生活扶助費しか支給されなくなり、その差額分が不支給となったこと(以下「本件不支給」という。)は、被告国と被告地方公共団体が共同で原告らの権利を違法に侵害する行為であり、被告らには少なくとも重大な過失があること 1 争点1において主張したとおり、本件改定等はいずれも生活保護法8条2項等に違反するものであって、その違憲性・ 権利を違法に侵害する行為であり、被告らには少なくとも重大な過失があること 1 争点1において主張したとおり、本件改定等はいずれも生活保護法8条2項等に違反するものであって、その違憲性・違法性は明らかであるところ、本件改定等により、最低生活の需要を満たすに足りる生活扶助費を下回る生活扶助費しか支給されなくなり、その差額分が不支給となったのであって(本件不支給)、国賠法1条1項の適用上、本件改定等が違法であることは明らかである。 2 生活扶助費の支給事務は被告地方公共団体が行っているものの、支給される保護費の基準は厚労大臣が定めることとなっており、生活保護費の大半は被告国が負担していることからすれば、本件不支給は、被告国と各処分行政庁が属する被告地方公共団体が共同して原告らの権利を違法に侵害する行為といえる。 3 2分の1処理は、厚労大臣において、平成25年報告書が取りまとめられる より前の段階から準備を進め、基準部会の検討を経ていないにもかかわらず、あたかも専門家によって構成されている基準部会の検討に従ったそのままの結果と受け取られるような発表や説明を行い、2分の1処理をしなければ生活扶助基準が引上げられるべき受給世帯との関係において是正されるべき不利益の一部をあえて放置したものである。また、デフレ調整は、厚労大臣において、 合理的な根拠もなく、平成20年2月以降のインフレを殊更に無視した上で、 - 159 -受給世帯の消費構造とかい離したウエイトを参照するなどして、受給世帯が直面していない生活扶助相当品目の物価下落率を-4.78%と算定した上で、その分をそのまま生活扶助費の減額改定に反映させたものである。これらのことからすると、本件改定という違憲、違法な生活扶助基準の改定が行われ、これに基づき本 の物価下落率を-4.78%と算定した上で、その分をそのまま生活扶助費の減額改定に反映させたものである。これらのことからすると、本件改定という違憲、違法な生活扶助基準の改定が行われ、これに基づき本件各国賠請求対象決定がされたことについて、被告らには、少な くとも重大な過失がある。 第2 本件不支給によって原告らには多大な精神的損害が生じていること 1 原告らは、本件不支給により、「健康で文化的」からは程遠く、個人の尊厳すら傷つけられる生活を長期期間にわたり強いられ、多大な精神的苦痛を受け た。 2 上記1の精神的苦痛をあえて金銭に評価すれば、原告ら一人当たり、少なくとも1万円を下らない。 3 なお、本件各国賠請求対象決定が取り消されたとしても、この間の生活を取り戻すことはできないから、原告らの被った前記1の精神的苦痛は、本件各国 賠請求対象決定の取消しにより、十分に慰謝されるものではない。 (被告らの主張)争う。 本件改定に係る厚労大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用がないこと は争点1において主張したとおりであり、本件不支給は存在しないし、本件改定等はいずれも適法であるから、本件改定等に関して、国賠法1条1項の適用上、違法性が認められる余地はない。 以上
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