令和6年12月13日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和5年(ネ)第64号原爆被爆二世国家賠償請求控訴事件(原審・広島地方裁判所平成29年(ワ)第170号(第1事件)、同年(ワ)第692号(第2事件)、令和元年(ワ)第1403号(第3事件))口頭弁論終結日令和6年7月26日判決当事者別紙当事者目録記載のとおり(省略) 主文 1 本件各控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、別紙控訴人目録1ないし3記載の各控訴人に対し、それぞれ10万円及びこれに対する同目録記載1の各控訴人に対しては平成29年3月15日から、同目録記載2の各控訴人に対しては同年6月26日から、同目録記載3の各控訴人に対しては令和元年12月23日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要(略称は、本判決で定めるほかは原判決書に従う。) 1 本件は、原爆により被爆した被爆者援護法1条所定の「被爆者」の子(被爆二世。親の被爆時に胎児であった者を除く。)である控訴人らが、原爆によって親が受けた放射線被害の遺伝的(継世代)影響が否定できず、これによって被爆二世が抱く健康不安について、被爆者援護法所定の被爆者等と同等の援護を受ける権利が憲法13条により保障され、また、被爆者等との差別的取扱いが憲法14条1項に違反することから、被控訴人は、被爆者援護法が制定された 平成6年までに、被爆者援護法1条に定める「被爆者」に被爆二世を加えるなどの被爆二世を援護対象とする法律の制定や改正を講ずる義務(本件立法義務)を負ってい は、被爆者援護法が制定された 平成6年までに、被爆者援護法1条に定める「被爆者」に被爆二世を加えるなどの被爆二世を援護対象とする法律の制定や改正を講ずる義務(本件立法義務)を負っていたにもかかわらず、これを怠ったと主張して、被控訴人に対し、国賠法1条1項に基づき、慰謝料各10万円及びこれに対する訴状送達の日から各支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審は、控訴人らの主張する権利が憲法13条により保障されているとはいえず、また、被爆者援護法所定の被爆者等と同等の措置を被爆二世に行う立法措置を講じないことが、合理的な理由のない不当な差別的取扱いとして憲法14条1項に違反するとは認められないから、被控訴人において本件立法義務を怠ったとはいえず、国賠法1条1項の違法はないと判断して、控訴人らの請求をいずれも棄却したところ、控訴人らがこれを不服として控訴を提起した。 2 関係法令の定め、前提事実並びに争点及びこれに関する当事者の主張は、次のとおり補正し、後記3のとおり当審における控訴人らの補充主張を加えるほか、原判決書の「事実及び理由」中「第2 事案の概要」の2ないし4に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決書4頁11行目の冒頭から15行目の末尾までを次のとおり改める。 「ウ被爆二世に対する援護措置被控訴人は、昭和54年度から、被爆二世に対する健康診断を各都道府県、広島市及び長崎市に委託して実施し、その後も毎年度、予算措置を講じて健康診断が実施されている。この健康診断には、被爆者に対する健康診断と異なり、胃がん、肺がん、乳がん、子宮がん及び大腸がん検診は含まれていない(甲C7、10)。なお、地方自治体の中には、被 を講じて健康診断が実施されている。この健康診断には、被爆者に対する健康診断と異なり、胃がん、肺がん、乳がん、子宮がん及び大腸がん検診は含まれていない(甲C7、10)。なお、地方自治体の中には、被爆二世に対し、がん検診を含む健康診断や医療助成等を実施しているところもある(甲C11から20)。また、ほとんどの市町村では健康増進法によるがん検診を公費負担で実施しているため、一部の自己負担でがん検診を受けることができ、平成 28年からは、被爆二世に対する健康診断に多発性骨髄腫の検査が追加された(甲A1、20、甲C10)。」⑵ 原判決書6頁10行目の「放射線の被爆」を「放射線の被曝」と、同頁24行目の「被爆の遺伝的影響」を「被曝の遺伝的影響」とそれぞれ改める。 3 当審における控訴人らの補充主張⑴ 放射線の遺伝的影響について原判決は、「ヒトに関する放射線被曝の遺伝的影響は未だ研究途上にあり、現在の科学的知見において、放射線被曝の遺伝的影響による健康被害の可能性が明確に否定されているとはいえないものの、ヒトに関する放射線被曝の遺伝的影響があることが通説的見解や有力な見解として一般的に認識されているとは認められない。」と判示するが、下記のとおりのヒトに関する放射線被曝の遺伝的影響を考えるうえで極めて重要な動物実験・研究の結果を無視しており、また、放影研の山田美智子らが行った研究報告(以下「山田論文」という。)の評価を誤っている。 ア以下のとおり、複数の動物実験・研究から、ヒトにおける放射線の遺伝的影響の存在が推測されてきた。 マラーが行ったショウジョウバエの研究結果は、国際放射線防護委員会(ICRP)の議論に影響を与え、ヒトの放射線防護に関する1950年勧告に「被曝を可能な最低レベルまで引き下げるあ 推測されてきた。 マラーが行ったショウジョウバエの研究結果は、国際放射線防護委員会(ICRP)の議論に影響を与え、ヒトの放射線防護に関する1950年勧告に「被曝を可能な最低レベルまで引き下げるあらゆる努力を払うべき」との文言が盛り込まれるに至った。また、UNSCEARは、ラッセルらが行ったメガ・マウス実験の結果を主たる根拠として、ヒトの放射線の遺伝的(継世代)影響を評価する場合の倍加線量を1グレイ(Gy)と推定して発表した。さらに、野村大成が行ったマウス研究の結果も、UNSCEARによるヒトにおける放射線被曝の遺伝リスクの推定に影響を及ぼした。UNSCEARは、これらの動物実験による、動物における放射線の遺伝的影響の証明から、ヒトにおける放射線の遺伝的影響の存在を推測し うると考え、動物実験の結果を根拠にしてヒトの放射線防護の基準を定めている。 イ原判決は、放影研の山田美智子らが、「令和3年、出生時に確認された先天性形成異常、7日以内の周産期死亡、14日以内の周産期死亡と親の被曝線量の関連性の3つの指標について再解析を実施した結果、親の被曝線量が増加するといずれの指標についてもリスクが増加する傾向を示したが、両親の合計線量と14日以内の周産期死亡以外については統計学的に有意なものではなかったと報告した。上記3つの指標は、貧困等の社会・経済的要因の影響を受けるが、上記の再解析ではそれらの調整はされていない。」とし、放影研の研究において親の被曝による子への遺伝的影響は確認されていないと判示する。しかし、山田論文の再解析においてはバイアスを最小限にするための調整が行われており、山田論文の再解析結果が統計的に優位な結果(とりわけ両親の被曝線量と14日以内の周産期死亡の場合、p値が0.03であること)を示していることからす はバイアスを最小限にするための調整が行われており、山田論文の再解析結果が統計的に優位な結果(とりわけ両親の被曝線量と14日以内の周産期死亡の場合、p値が0.03であること)を示していることからすると、上記判断は誤りである。 UNSCEARの報告において「先天性異常や癌の危険性の増大などの危険性は基本的にない。」とされているが、山田論文によって、少なくとも先天性異常の危険性があることは明らかであるから、上記報告は、被曝による遺伝的影響を否定する根拠とはならない。 ウさらに、近時、「エピジェネティクス」と呼ばれる、ゲノム配列とは無関係に遺伝子発現を調整する制御機構に関する研究が進められているところ、動物実験において、この「エピジェネティクス」が放射線の遺伝的影響にも関与していることを示唆する結果が報告されていることからすると、仮に、親の放射線被曝の遺伝的影響によるDNA塩基配列の有意な変異が被爆二世に観察されなかったとしても、「エピジェネティクス」による表現型の変化という形で被爆二世に放射線による遺伝的影響が生じる可能性を 否定することはできない。 ⑵ 憲法14条1項違反についてア放射線被害の特殊性原爆で被爆したことによる健康上の障害は、被爆から相当年数経過した後に白血病やガンを発症し、放射線による人体への影響は未解明の点が多いなど、他に例を見ない特異かつ深刻なものであり、一般の戦争被害とは根本的に異なる。前記⑴のとおり、放射線被曝の遺伝的影響による健康被害の可能性は、科学的に明確に根拠づけられている。また、原爆医療法及び被爆者援護法の根底に国家補償的配慮が存在することについては、最高裁判決においても繰り返し述べられているところであり、本件立法不作為の違法性判断は、このような観点から行われなければ 、原爆医療法及び被爆者援護法の根底に国家補償的配慮が存在することについては、最高裁判決においても繰り返し述べられているところであり、本件立法不作為の違法性判断は、このような観点から行われなければならない。 イ被爆者と被爆二世の取扱いの差異について被爆者援護法上の被爆者とは、「原爆放射線による健康被害の可能性が否定できない者」と解すべきであり、被爆二世については、放射線による健康被害の可能性が否定できないかどうかが重要な問題となる。 原判決は、「原子爆弾が投下された際又はその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」(被爆者援護法1条3号)とは、原爆の放射線に直接被曝したことにより健康被害が生ずる可能性がある事情の下に置かれていた者と解するのが相当であるとし、被爆二世は、原爆放射線の影響を直接受けた者からの遺伝的影響による健康被害の可能性が否定できない者であるが、その可能性の実質は、「放射線の遺伝的影響による健康被害の発生が科学的に承認も否定もされていないという意味での可能性」といえると判示する。 しかし、原爆医療法及びこれを引き継いだ被爆者援護法の制定の経緯や国会における論議を踏まえれば、被爆者とは「原爆放射線により健康被害が生ずる可能性のある者」という趣旨で定められたものであり、原爆放射 線による健康被害について何らかの科学的知見に裏付けられることが求められているものではなく、「直接被曝」を要件とする根拠は見出しえない。 被爆二世は、胎児以前の親の生殖細胞の段階で放射線の影響を受けた存在であり、そのような影響を受ける状況において、被爆者援護法1条3号や同4号の被爆者と質的に相違がない。 いわゆる黒い雨訴訟の控訴審判決は、被爆者援護法1条3号の意義を「原爆の放射能により健康被害が であり、そのような影響を受ける状況において、被爆者援護法1条3号や同4号の被爆者と質的に相違がない。 いわゆる黒い雨訴訟の控訴審判決は、被爆者援護法1条3号の意義を「原爆の放射能により健康被害が生ずることを否定することができない事情の下に置かれていた者と解される」と判示しているところ、放射線被曝の遺伝的影響を検討するにあたっても同様にいうことができ、被爆二世も「原爆の放射能により健康被害が生ずることを否定することができない」者として、援護の対象とされるべき「被爆者」として扱わないのは、法の下の平等に反する。 ウみなし被爆者と被爆二世の取扱いの差異について原子爆弾被爆者に対する被爆者援護法に関する法律施行令(以下「被爆者援護法施行令」という。)において、みなし被爆者とされる者の対象地域を指定するに当たっては、その地域にいた人々が放射線による健康被害を受けたことが「科学的に根拠づけられた」という経緯はない。みなし被爆者として被爆者援護法7条の健康診断を受けられる特例措置の対象とされた地域は、原爆による放射線の影響が及んだ可能性のある地域であって、そうであるからこそ健康への影響の有無を点検するために健康診断を実施し、その結果、放射線による健康被害の可能性のある疾病にり患した人については、被爆者援護法1条3号の被爆者として扱うとしたものである。 すなわち、みなし被爆者は、原爆放射線による健康被害についての科学的根拠に基づいたものではなく、放射線の健康への影響の可能性を根拠として定められたものであるから、同様に、放射線による遺伝的影響の可能性があり、これにより健康被害を生じる可能性がある者である被爆二世に ついて、みなし被爆者と差異を設けることは、法の下の平等に反する。 第3 当裁判所の判断当裁判所も 影響の可能性があり、これにより健康被害を生じる可能性がある者である被爆二世に ついて、みなし被爆者と差異を設けることは、法の下の平等に反する。 第3 当裁判所の判断当裁判所も、控訴人らの請求をいずれも棄却すべきであると判断する。その理由は、以下のとおりである。 1 認定事実については、次のとおり補正するほか、原判決書の「事実及び理由」中「第3 当裁判所の判断」の1に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決書14頁23行目及び15頁7行目の「内蔵」をいずれも「内臓」と改める。 ⑵ 原判決書18頁23行目の「などと説明した。」の次に以下を加える。 「また、政府委員は、八木一男委員による、4号の胎児は原爆投下当時に受胎した胎児に限られているのか、その後に受胎した胎児が含まれているのかとの問いに対し、『この第二条の第四号では、被爆した当時すでに受胎したもののみを含むということになっておりまして、その後に受胎したものは一応考えていないわけでございます。これは遺伝の問題ともからんで参りますので、遺伝学的に放射能の影響がどうあるかということについては、現在の学会でもいろいろ問題になっておりまして、国際遺伝学会も近く開かれてその問題が講ぜられるということを聞いているわけでございますが、今までのところは、むしろ第二代目については消極的な意見が割合よけい出ておりましたために、私どもはただいま…御指摘の被爆後に受胎したものについては、考えていないわけでございます。しかしこれは遺伝学的にいろいろ今後検討されまして、そういうものも当然考えなければならないということになって参りますれば、当然対象の中に入れていかなければならない。これは今後の学会、特に遺伝の専門家の方々の御意見の推移を見守っていきたいと考えております。』と回 当然考えなければならないということになって参りますれば、当然対象の中に入れていかなければならない。これは今後の学会、特に遺伝の専門家の方々の御意見の推移を見守っていきたいと考えております。』と回答した。」⑶ 原判決書21頁1行目末尾で改行し、以下を加える。 「昭和41年以降、広島で「胎内被曝者・被爆二世を守る会」が結成され るなど被爆二世に対する医療援護措置に関する請願がされ、その後、自治体や被爆者団体による被爆二世の援護措置を求める要請等が繰り返された。昭和47年には「被爆二世問題対策連絡会」が結成され、その後、地方自治体による被爆二世健診が実施されていく中で、昭和54年7月、厚労省が被爆二世健診の実施を発表し、以降、単年度の予算措置がとられた。昭和63年12月には「全国被爆二世団体連絡協議会」が結成され、被爆二世・三世に関する実態調査、健康診断の実施、原爆二法による施策の適用等の要請がされた(甲A19、20)。 他方、原爆特別措置法の一部改正を巡り昭和44年から昭和52年までに行われた衆参両院の社会労働委員会における審議において、政府委員は、被爆二世における白血病等の疾病と被爆の遺伝的影響に因果関係があるとか、被爆二世に放射線の影響が及んでいるという研究成果は出ていないことから、現段階においては、具体的な援護策を講じることに消極的である旨回答していた。(甲A20、乙15、16)」⑷ 原判決書21頁12行目の「昭和53年判決」から18行目末尾までを次のとおり改める。 「最高裁判所は、昭和53年3月30日、外国人被爆者(不法入国者)の被爆者健康手帳交付申請を却下した処分の取消しを求める事案において、次のとおり判示した(昭和53年判決。甲A4)。 『原爆医療法は、被爆者の健康面に着目して公費によ 日、外国人被爆者(不法入国者)の被爆者健康手帳交付申請を却下した処分の取消しを求める事案において、次のとおり判示した(昭和53年判決。甲A4)。 『原爆医療法は、被爆者の健康面に着目して公費により必要な医療の給付をすることを中心とするものであって、その点からみると、いわゆる社会保障法としての他の公的医療給付立法と同様の性格をもつものであるということができる。しかしながら、被爆者のみを対象として特に右立法がされた所以を理解するについては、原子爆弾の被爆による健康上の障害がかつて例をみない特異かつ深刻なものであることと並んで、かかる障害が遡れば戦争という国の行為によってもたらされたものであり、しかも、被爆者の多くが今 なお生活上一般の戦争被害者よりも不安定な状態に置かれているという事実を見逃すことはできない。原爆医療法は、このような特殊の戦争被害について戦争遂行主体であつた国が自らの責任によりその救済をはかるという一面をも有するものであり、その点では実質的に国家補償的配慮が制度の根底にあることは、これを否定することができないのである。』昭和53年判決を契機として、被爆者援護策の基本理念を明確にすべきであるとの指摘が強まり、厚生大臣の私的諮問機関として設置された基本問題懇談会は、昭和55年12月11日、「原爆被爆者対策の基本理念及び基本的在り方について」と題する報告書を取りまとめ、厚生大臣に報告した(乙18、20)。同報告書では、原爆医療法の法的性格について、昭和53年判決が指摘するように、従来国がとってきた原爆被爆者対策は、原爆被害という特殊性の強い戦争損害に着目した一種の戦争損害救済制度と解すべきであり、これを単なる社会保障制度と考えるのは適当でないこと、原爆被爆者の犠牲が、その本質及び程度において他の一般の戦争損害 被害という特殊性の強い戦争損害に着目した一種の戦争損害救済制度と解すべきであり、これを単なる社会保障制度と考えるのは適当でないこと、原爆被爆者の犠牲が、その本質及び程度において他の一般の戦争損害とは一線を画すべき特殊性を有する「特別の犠牲」であることを考えれば、国は原爆被爆者に対し、広い意味における国家補償の見地に立って被害の実態に即応する適切妥当な措置対策を講ずべきであるとの考えが示されている。そして、原爆被爆者に対する対策の基本的在り方として、被爆者対策は国民の租税負担によって賄われることになるが、ほとんど全ての国民が何らかの戦争被害を受け戦争の惨禍に苦しめられてきたという実情の下においては、他の戦争被害者に対する対策に比し著しい不均衡が生ずるようであってはならず、国民的合意を得ることができる公正妥当な範囲に止まらなければならないこと、放射線被曝の程度には差があり、被曝による放射線障害の程度もまちまちであり、これに対する対策の必要性は、人によって著しく異なることから、今後の対策は、画一に流れることを避け、その必要性を確かめ、障害の実態に即した適切妥当な対策を重点的に実施するよう努めるべきである。「公平の原則」は絶えず 考慮しながらも、「必要の原則」を重視し、現実の必要に応じ手厚い行き届いた対策を講ずべきである。被爆地域の指定は、本来原爆投下による直接放射線量、残留放射能の調査結果など、十分な科学的根拠に基づいて行われるべきものである。これまでの被爆地域の指定は、従来の行政区画を基礎として行われたために、爆心地からの距離が比較的遠い場合でも被爆地域の指定を受けている地域があるが、上述のような科学的・合理的な根拠に基づくことなく、これまでの被爆地域との均衡を保つためという理由で被爆地域を拡大することは、新たに不公平 比較的遠い場合でも被爆地域の指定を受けている地域があるが、上述のような科学的・合理的な根拠に基づくことなく、これまでの被爆地域との均衡を保つためという理由で被爆地域を拡大することは、新たに不公平感を生み出す原因となり、徒らに拡大を招来するおそれがあるから、被爆地域の指定は、科学的・合理的な根拠のある場合に限定して行うべきである旨の意見が述べられている。」⑸ 原判決書22頁2行目から3行目にかけての「同年12月9日」を「同年12月16日」と改める。 ⑹ 原判決書22頁14行目の冒頭から24頁9行目末尾までを以下のとおり改める。 「カみなし被爆者に対する援護措置について(ア) 長崎県知事、長崎市長、長崎県西彼杵郡長与町及び同郡時津町は、昭和46年から昭和48年にかけて、数度にわたり、被控訴人に対し、被爆当時の長与村及び時津村の地理的状況や当時の風向き、住民の健康調査結果などを根拠に、同区域の全域を被爆地域として指定することを求めるよう要望した(乙37)。 この要望に対し、被爆地域の範囲は拡大されなかったものの、昭和49年、特別被爆者の廃止に伴う原爆医療法の改正の際に、同法制定附則3項として、健康診断の特例措置が設けられた(乙17)。すなわち、原子爆弾が投下された際、被爆地域(原爆医療法2条1号)に隣接する政令で定める区域内(以下「健康診断特例区域」という。)にあった者又はその当時その者の胎児であった者は、暫定的な特例措置として、健康診 断の実施を定めた原爆医療法4条の適用について被爆者とみなす旨が規定された。その上で、同じく改正された原爆医療法施行令附則2項により、健康診断特例区域として、長与村の一部及び時津村が指定された(昭和49年政令210号。乙38)。これは、長与村及び時津村にあった者について その上で、同じく改正された原爆医療法施行令附則2項により、健康診断特例区域として、長与村の一部及び時津村が指定された(昭和49年政令210号。乙38)。これは、長与村及び時津村にあった者について、調査により従来の一般被爆者とほぼ同様に原爆の放射能による影響があると認められたものの、従前、定期健康診断の対象とされず、これらの者に健康被害が生じていることが把握されていなかったことから、被爆者として扱うことに若干の疑問が残ったため、当面の間、原爆医療法の被爆者には含めない一方で、健康診断特例地域として指定することにより、被爆者と同様の援護を実施することにしたものである(甲A22)。 また、昭和49年7月22日に厚生省公衆衛生局長が発出した「原子爆弾被爆者の医療等に関する法律及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律等の施行について」と題する通達(衛発第402号。以下「402号通達」という。)により、上記健康診断特例措置の対象者(みなし被爆者)に対し、健康診断の事後措置として、健康診断の結果、造血機能障害、肝臓機能障害、細胞増殖機能障害、内分泌腺機能障害、脳血管障害、循環器機能障害、腎臓機能障害、水晶体混濁による視機能障害、呼吸器機能障害、運動器機能障害があると診断された者については、原爆医療法2条3号に該当するものとして、被爆者健康手帳の交付を受けることができるとされた(乙40)。 (イ) その後の政令改正(昭和51年政令第243号)により、健康診断特例区域は、現行の被爆者援護法施行令別表三(後記(ウ)の第一種特例区域)と同様の区域に拡大され、広島県においても健康診断特例区域が指定された(乙41)。この区域は、「気象関係の広島原爆災害調査報告」(乙44)で報告されている「黒い雨」の降った状況や健康状況等につい )と同様の区域に拡大され、広島県においても健康診断特例区域が指定された(乙41)。この区域は、「気象関係の広島原爆災害調査報告」(乙44)で報告されている「黒い雨」の降った状況や健康状況等についての アンケート調査を踏まえ、特に1時間以上の降雨があったとされる降雨域を対象としたものであった。 (ウ) 平成6年、被爆者援護法の制定に伴い、健康診断特例区域について、原爆医療法附則3項が被爆者援護法附則17条に、原爆医療法施行令附則2項及び別表第三が被爆者援護法施行令附則2条及び別表第三(第一種特例区域)にそれぞれ引き継がれ、健康診断特例区域の範囲は原爆医療法において定める範囲が維持された。 平成14年4月、被爆者援護法施行令の改正により、同施行令別表第四記載の第二種特例区域(長崎の爆心地から12㎞以内の区域)が対象区域として追加された(乙49)。また、402号通達によるみなし被爆者に対する取扱いは、第一種特例区域のみなし被爆者に対してのみ適用するものとされた(乙50)。」⑺ 原判決書24頁11行目の末尾に以下を加える。 「なお、放射線が生殖細胞にDNA損傷(突然変異)を引き起こし、その損傷が次世代に受け継がれることがあることについて、このような影響は「継世代影響」と呼ばれている(乙57・参考文献第3章の6・154頁)。」⑻ 原判決書27頁26行目から28頁1行目にかけての「放射線被曝との明らかな関連性を特定していなかったところ、」から同頁8行目末尾までを以下のとおり改める。 「放射線被曝との明らかな関連性は特定されなかった。 放影研の山田美智子らは、ABCCによって1948年(昭和23年)から1954年(昭和29年)までの間に行われた原爆被爆者の子どもの出生時調査のうち7万1603人について再解析を行い、2 かった。 放影研の山田美智子らは、ABCCによって1948年(昭和23年)から1954年(昭和29年)までの間に行われた原爆被爆者の子どもの出生時調査のうち7万1603人について再解析を行い、2021年(令和3年)、「原爆被爆者の子供の先天性形成異常と周産期死亡:再評価」を報告した(山田論文。甲B57、58、乙86)。この再解析は、出生時の重い障害を①出生時に確認された先天性形成異常、②死産と出生から7日以内の新生児死亡、 ③死産と出生から14日以内の新生児の死亡という3つの指標として定義し、親の被曝線量(母親線量、父親線量、又は両親の合計線量)との関連性を合計9パターンで解析したものである。この再解析では、バイアスを最小限に抑えるため、過去のABCCの解析に用いられたデータを組み直し(出生時に見つかった異常のみを解析し、解剖の結果だけで先天性異常と診断された症例を含めない。出生時体重が不明な子どもも解析対象に含む。)、対象者全員に情報がある放射線以外のリスク因子(親の年齢や血族結婚など)を調整した。しかし、上記3指標に影響を与えうる経済状態などは、対象者の一部にしか情報がなく、これらを調整した再解析はなされていない。 山田論文の概要は、親の被曝線量は、主要な先天性形成異常(奇形)、及び周産期死亡のリスク増加と関連性が見られたが、推定値は放射線の直接効果として考えるには不正確であり、ほとんどの推定値は統計学的には有意ではなかった、しかし、父親被曝、母親被曝どちらの場合も、妊娠終結異常の推定値が総じて正の値を示したことはリスク推定に役立つ、母親線量、父親線量、および両親の合計線量が増加すると、3つの指標それぞれのリスクが増加する傾向を示したが、1パターン(両親の合計線量と14日以内の周産期死亡)を除いて統計的に有意で 推定に役立つ、母親線量、父親線量、および両親の合計線量が増加すると、3つの指標それぞれのリスクが増加する傾向を示したが、1パターン(両親の合計線量と14日以内の周産期死亡)を除いて統計的に有意ではなかった、先天性形成異常や周産期死亡は、戦後の貧困等の社会・経済的要因の影響を受けることが知られているが、原爆による社会・経済的影響、すなわち放射線以外の要因が及ぼした重大な影響(例えば線量の高い者は、低い者に比べて爆心地に近い場所にいたため、放射線だけでなく、熱線・爆風にさらされ、熱傷・外傷などにより、その後の回復に時間を要したり、回復しても職に就きづらいなどのより多くの困難があったと想定される。)は今回調整できていない、被曝線量が大きい者はそれ以外の要因の影響も大きいと考えられるため、解析手法上、放射線以外の影響も放射線の影響として捉えられる(放射線の関与が過大に推定された)可能性がある、そのため、今回観察された増加傾向をそのまま放射線の直接的 影響(遺伝的影響)によるものであると解釈することは困難である、というものである。 一方、山田論文は、今回解析の対象にした3つの指標のそれぞれでリスクの増加傾向を示していることから、被爆二世における放射線の直接的影響の有無をさらに研究することが必須となるとし、生命科学の分野による研究、例えば、原爆被爆者と被爆二世から提供された生体試料で全ゲノム配列解析等を行うことにより、親の放射線被ばくの遺伝的影響に関してより明確な結果が出るものと期待されると述べている。」⑼ 原判決書28頁24行目の「(イ)」の次に以下を加える。 「UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)は、電離放射線源とそれによる人の健康及び環境への影響に関する広範囲評価の実施を委任されており 目の「(イ)」の次に以下を加える。 「UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)は、電離放射線源とそれによる人の健康及び環境への影響に関する広範囲評価の実施を委任されており、世界的、地域的に放射線被曝を徹底的に審査し評価しているほか、被曝人口における放射線による健康への影響のエビデンスを評価し、放射能による人の健康やヒト以外の生物相に影響をもたらす生物学的メカニズムの理解を深めている。これらの評価は、特に、電離放射線に対する一般大衆と作業員の保護のための国際基準を国連内の関連機構が策定する際の科学的根拠となっており、これらの基準は、同様に、重要な法的手段や規制手段へと繋がっている(乙26)。」⑽ 原判決書29頁26行目の「監察」を「観察」と改める。 ⑾ 原判決書31頁19行目末尾で改行し、以下を加える。 「(カ) 放影研は、要覧(2017年〔平成29年〕改訂)において、1985年(昭和60年)以降、実際の原爆被爆者及びその子を対象とするDNA調査を実施し、その結果について、次のとおり報告した(乙36、57)。 ヒトで特に多型の出現率が高い8か所のミニサテライト遺伝子座について、被曝群(平均被曝線量1.47Gy)の子ども61人、対照群の子ども58人とその両親を検査した結果、突然変異率は被曝群では2.6%、対照群で 2.8%であり、高線量急性被曝による有意な遺伝的影響は認められなかった。また、マイクロサテライト遺伝子座も高い自然突然変異率を示すが、40か所のマイクロサテライト遺伝子座について被曝群家族(平均被曝線量1. 56Gy)の子ども66人、対照群の子ども63人とその両親を検査した結果、突然変異率は被曝群では0.39%、対照群では0.35%であり、親の放射線被曝による遺伝的影響は示唆されなかった 被曝線量1. 56Gy)の子ども66人、対照群の子ども63人とその両親を検査した結果、突然変異率は被曝群では0.39%、対照群では0.35%であり、親の放射線被曝による遺伝的影響は示唆されなかった。 欠失型変異をゲノム全域について調べるためにDNA二次元電気泳動法を改良したスクリーニングを行ったところ、対照群50家族の子ども62人、被曝群50家族(平均被曝線量1.7Gy)の子ども66人とその両親の解析を行ったが、対照群で調べた5万6176遺伝子座に1例の欠失型突然変異を検出したのみで、被曝群で検査した5万9942遺伝子座では突然変異は検出されなかった。 これらの他に、2000年(平成12年)初期には、マイクロアレイを用いた比較ゲノムハイブリダイゼーション法によるゲノム中の遺伝子コピー数の変化の検索を行ったところ、被曝群の子ども40人と対照群の子ども40人の解析の結果、合計251個のコピー数変異が検出されたが、全てどちらかの親に存在したものであることが確認され、新規突然変異ではなかった。」⑿ 原判決書31頁20行目の「(カ)」を「(キ)」と改め、その後に以下を加える。 「蓬莱真喜子らは、平成30年(2018年)、原爆被爆者3名(爆心地から1、2km、1.0km、1.0kmでそれぞれ被曝)、その妻及びその子の組み合わせの3家族と対照群(非被曝者)の1家族について、父母及び子からDNAを抽出して全ゲノム解析を行ったところ、2018年(平成30年)、原爆被爆者の子供たちには62、81、42の新生多様体があったのに対し、対照群では48であったり、どのトリオにも大きな構造的多様体はみられず、これらの結果は、被爆二世に原爆放射線による有意な遺伝的影響を 認めなかったという、これまでに発表されている結果と一致していると発表し り、どのトリオにも大きな構造的多様体はみられず、これらの結果は、被爆二世に原爆放射線による有意な遺伝的影響を 認めなかったという、これまでに発表されている結果と一致していると発表した(甲B43、乙57)。また、」⒀ 原判決書32頁2行目の「(キ)」を「(ク)」と改める。 ⒁ 原判決書32頁7行目の「(ク)」を「(ケ)」と改める。 ⒂ 原判決書33頁9行目の末尾で改行し、以下を加える。 「エ中島裕夫らの意見(乙57、68、69)(ア) 遺伝子変異が次世代へ伝えられるためには、まず、放射線がDNAにヒットする必要がある上、放射線がDNAにヒットしたとしても、DNAのうち、最も重要なエクソン(情報として使われる部分)に放射線がヒットする確率は非常に低い。仮にヒットしてDNAが損傷した場合でも、塩基除去修復、ヌクレオチド除去修復等多様なDNA修復機構によってほとんど修復され、修復できないほど損傷が大きい場合は細胞死(アボトーシス)する。このように、ヒトにはDNAの損傷から生体、子孫を守る仕組みが重層的に備わっている。また、次世代に何ら影響がない突然変異も存在する。さらに、男性側あるいは女性側の生殖細胞の1つに遺伝子変異が起こったとしても、これが受精卵として成立する過程を踏まえるとかなり低い確率である上、その異常受精卵が育ち、その異常を発現するためには多くの関門(父母遺伝子の不調和、遺伝子発現のタイミング等)が存在する。したがって、遺伝子変異が次世代に伝えられる可能性は極めて低い。さらに、次世代影響には妊娠時の両親の年齢も大きく影響することも踏まえるべきである。 (イ) ショウジョウバエの実験で照射された放射線量は、ヒトの半致死線量4Gyを上回る5Gyから25Gyと極めて高く、DNA損傷や修復の 時の両親の年齢も大きく影響することも踏まえるべきである。 (イ) ショウジョウバエの実験で照射された放射線量は、ヒトの半致死線量4Gyを上回る5Gyから25Gyと極めて高く、DNA損傷や修復の仕組みもヒトとは違うため、その実験結果をヒトに当てはめて評価することは適切ではない。 メガ・マウス実験においても、照射された放射線量は3Gyから6、 7Gyと高かった上に、ヒトには、マウスと異なり、胎児奇形は流産しやすいなど異常のある子どもができにくくなる仕組みが備わっている。 ヒトは細胞数が多い分、マウスより発ガンしにくい機構を持っているなど様々な違いがあり、マウス実験の結果をそのままヒトには適用できない。また、異なる系統のマウスで同様の結果が出なかったことからすれば、マウス実験の結果はマウスにおいても一般化できない現象である。 なお、マウス毛色遺伝子は高感受性で突然変異が起きやすいこと、メガマウス実験は、経済的・規模的に大がかりであるために追試ができていないことも問題である。 野村大成が実験に使用したマウスは、近交系マウス(兄妹交配を20代以上繰り返したマウス)であり、ガンになりやすい系統である。これに対し、ヒトでは20代以上にわたって兄妹交配がされることはなく、マウスと同一に考えることはできない。 (ウ) 小児、青年期に放射線治療を受けたガン生存者の医療被曝とその子との遺伝性疾患(先天性奇形、染色体異常、死産、新生児死亡)の発生の関連の調査では、いずれも関連は認められなかったとの報告がされている。また、放射線治療を受けた小児がん患者の子どもにおける染色体異常、遺伝病、形態異常の割合は、当該患者の兄弟姉妹の子どもの割合より低く、卵巣や精巣に放射線被曝をした者の子に染色体異常等が増えているとの事実はなかったとの報告も 児がん患者の子どもにおける染色体異常、遺伝病、形態異常の割合は、当該患者の兄弟姉妹の子どもの割合より低く、卵巣や精巣に放射線被曝をした者の子に染色体異常等が増えているとの事実はなかったとの報告もされている。 さらに、疫学的調査研究(原爆被爆者の子どもに対する放影研の複数調査等)によって表現型を見ることに加えて、ゲノムレベルでの研究(近距離の原爆被爆者とその子、チェルノブイリ原発事故の被曝者とその子についての全ゲノム解析等)のいずれの結果においても、調べられた被曝条件においては、疾病が増加するなどの遺伝性影響が現実的に認知されることはもとより、ゲノムレベルですら有意な影響が認められていな い。 (エ) 結論として、放射線による自然発生率を超えるような影響を検出できておらず、放射線被曝による遺伝的影響の可能性を証明できていない。 突然変異、健康影響(疾病)の発生頻度は、ともに一般人と被爆二世の間に差がない。」 2 立法不作為の国賠法上の違法性にかかる判断枠組みについて国会議員の立法行為又は立法不作為が国賠法1条1項の適用上違法となるかどうかは、国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかの問題であって、当該立法の内容又は立法不作為の違憲性の問題とは区別されるべきであり、仮に当該立法の内容又は立法不作為が憲法の規定に違反するものであるとしても、そのゆえに国会議員の立法行為又は立法不作為が直ちに違法の評価を受けるものではない。しかしながら、立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会 れている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けるものというべきである(最高裁判所平成13年(行ツ)第82号外平成17年9月14日大法廷判決参照)。 控訴人らは、本件不作為が憲法に違反し、かつ、国賠法上違法であると主張するので、以下において検討する。 3 憲法13条違反の主張について被爆二世である控訴人らが、放射線による遺伝的影響が否定できないことにより抱く健康不安に対する援護措置を被控訴人に求める権利が憲法13条により保障されているといえず、本件立法不作為が同条に違反しないことについては、原判決書の「事実及び理由」中「第3 当裁判所の判断」の3⑴に記載のと おりであるから、これを引用する。 4 憲法14条1項違反の主張について⑴ 控訴人らは、被爆二世と被爆者及びみなし被爆者とで援護の取扱いに区別が設けられていることが、憲法14条1項に違反すると主張するところ、この判断基準については、原判決書の「事実及び理由」中「第3 当裁判所の判断」の3⑵アに記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑵ 被爆者援護法上の被爆者及びみなし被爆者と被爆二世の取扱いの区別についてア控訴人らは、被爆者援護法が原爆放射線により健康被害が生ずる可能性のある者を被爆者として援護の対象とする趣旨であるとした上で、被爆二世についても、被爆者である親を介して原爆放射線の影響を受けており、放射能による健康被害が生ずることを否定できない点に 生ずる可能性のある者を被爆者として援護の対象とする趣旨であるとした上で、被爆二世についても、被爆者である親を介して原爆放射線の影響を受けており、放射能による健康被害が生ずることを否定できない点において、被爆者援護法の被爆者と何ら変わるところはないから、被爆者と被爆二世の取扱いの差異は合理的な理由のない不当な差別である旨主張する。 そこで検討するに、前記1で引用する原判決書の「事実及び理由」中「第 3 当裁判所の判断」の1⑵ア(イ)ないし(エ)のとおり、昭和32年3月に成立した原爆医療法は、原爆投下から十数年が経過しても、被爆者には医療措置を必要とする者が多数おり、一見健康と思われる者の中から突然発病し、死亡する者が生ずるなど、被爆者の置かれている特別な健康状態に鑑みて、医師による綿密な観察指導を必要とする現状であったこと、かつ、これらは当時予測もできなかった原爆に基づくものであることから、国が被爆者に対する健康診断等を行い、発病した場合には国において医療を行い、健康保持向上を図る必要があるとして制定されたものである。 そして、原爆医療法2条は、原爆投下時に爆心地から一定の距離の範囲にいた者や原爆投下後一定の期間内に爆心地に近い場所に立ち入った者については、高度の放射線に被曝し、健康被害が生じる可能性が高いことか ら、これらの類型的に原爆放射線による影響を受ける蓋然性が高い者を1号被爆者及び2号被爆者と定め、これらに該当しない者であっても、原爆放射線を浴びた遺体の処理に従事したなど高度の放射線に被曝することがあり得ることから、個別の事情を踏まえて、身体に原爆の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者を3号被爆者として定めたものと解される。さらに、原爆医療法2条は、1号ないし3号とは別に、これらの者が被爆した当時に 個別の事情を踏まえて、身体に原爆の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者を3号被爆者として定めたものと解される。さらに、原爆医療法2条は、1号ないし3号とは別に、これらの者が被爆した当時に受胎していた者を4号被爆者として定めるに留め、被爆後に受胎した者(被爆二世)は援護の対象としなかったが、これは、原爆医療法が制定された当時の医学的、科学的知見の状況等や、被爆後に受胎した者につき放射線の遺伝学的影響があるかどうかについては当時の遺伝学学会において消極的な意見が多く出されていたこと等を踏まえたものであると認められる。すなわち、原爆医療法は、原爆投下当時に生存し、又は胎児として存在し、その身体が放射線に直接被曝した者を被爆者と定めたということができる。 その後、被爆者団体や地方公共団体から、被爆二世に対する援護措置が繰り返し要請され、原爆特別措置法の制定及び改正や原爆医療法の改正過程においては、国会審議の場で、被爆二世に関する援護措置の策定についても議論が行われたものの、当時の医学的、科学的知見等においては白血病等の被曝二世に見られる疾病が放射線の遺伝的影響によるものであるとの研究成果は出ていないとして、被爆二世を援護対象とする立法は行われなかった。そして、原爆医療法及び原爆特別措置法を引き継いだ被爆者援護法(平成6年12月成立)においても、その当時、放射線による遺伝的な影響が医学的、科学的に認められていないことを踏まえ、被爆二世が被爆者として援護の対象に加えられることはなく、衆議院において、被爆者及びその子孫についての調査研究、対策に配慮し、被爆二世の健康診断の継続及び充実を図ることの実現に努めるべきである旨の付帯決議がされる に留まったことが認められる。 このような経緯を踏まえると、被爆者援護法は、原爆の放 に配慮し、被爆二世の健康診断の継続及び充実を図ることの実現に努めるべきである旨の付帯決議がされる に留まったことが認められる。 このような経緯を踏まえると、被爆者援護法は、原爆の放射線に何らかの形で直接被曝した可能性のある者を「被爆者」として援護の対象としたものと解され、同法が、放射線の遺伝的影響を受けた可能性のある者を含め、およそ原爆放射線により健康被害が生ずる可能性のある者を「被爆者」として援護の対象とする趣旨であるということはできない。 イ控訴人らは、健康診断特例区域が行政区画により定められ、その範囲が放射線による健康への影響についての科学的根拠が議論されないまま拡大されてきた経緯等に照らせば、みなし被爆者は、放射線が健康への影響を及ぼす可能性があることを根拠として定められたものであるから、これと同様に、放射線による遺伝的影響があり、これにより健康被害を生じる可能性がある被爆二世について、みなし被爆者の取扱いと差異を設けることは、不合理な差別に当たると主張する。 この点について、前記1で補正の上で引用する原判決書の「事実及び理由」中「第3 当裁判所の判断」の1⑵カのとおり、みなし被爆者は、原爆投下により爆心地周辺が放射線汚染された当時において被爆地域の隣接区域(健康診断特例区域)に実在していた者又はその胎児であるところ、原爆の放射線による健康被害の実態を把握することができなかったことから、「被爆者」とはしないものの、その地理的要因や健康被害の訴え等からして、原爆投下当時に健康診断特例区域に在った者が原爆の放射線に直接被曝した可能性があることに鑑み、健康診断及びその結果一定の疾病に罹患した者については、被爆者とみなして健康管理手帳を交付するとしたものであって、立法政策上の裁量的判断として設 が原爆の放射線に直接被曝した可能性があることに鑑み、健康診断及びその結果一定の疾病に罹患した者については、被爆者とみなして健康管理手帳を交付するとしたものであって、立法政策上の裁量的判断として設けられたものといえる。 ウこのように、被爆者援護法の被爆者及びみなし被爆者は、原爆投下時に所在した場所が違うものの、いずれも原爆投下時点において生存し、あるいは胎児であった者であって、直接放射線に被曝した可能性がある者を対 象とするのに対し、被爆二世は、原爆投下当時に存在しておらず、直接被曝した可能性がないという点で、大きな差異がある。 エこれに対し、控訴人らは、動物実験やヒトに関する調査によって、親世代の放射線被曝による次世代への遺伝的影響を及ぼすとの結果が得られていることから、身体に直接の放射線を被曝していない被爆二世についても放射線による健康被害が生じる可能性が否定できない旨主張するので、以下において検討する。 (ア) 動物実験について前記1で補正の上で引用する原判決書の「事実及び理由」中「第3 当裁判所の判断」の1⑶アのとおり、動植物においては放射線による遺伝的影響があるものと一般的に理解されており(乙57)、UNSCEARの2001年(平成13年)の報告においては、「ヒトはこの点に関して例外ではないだろう」と指摘されたほか、放射線による遺伝的影響に関するショウジョウバエやマウス実験による種々の研究発表があり、ヒトに対する放射線のリスク推定等のためにその実験結果が利用されている。 しかし、ショウジョウバエの実験は、放射線照射による生殖細胞遺伝子の突然変異誘発等を示すものであるが、同実験で照射された放射線量は、ヒトの半致死線量4Gyを上回る5Gyから25Gyと極めて高く、ハエのDNA損傷や修復の仕組みもヒトと 射線照射による生殖細胞遺伝子の突然変異誘発等を示すものであるが、同実験で照射された放射線量は、ヒトの半致死線量4Gyを上回る5Gyから25Gyと極めて高く、ハエのDNA損傷や修復の仕組みもヒトとは違うため、実験結果をヒトに当てはめて評価できないことが指摘されている。また、前記1で補正の上で引用する原判決書の「事実及び理由」中「第3 当裁判所の判断」の1⑶エのとおり、マウスによる実験は、放射線照射による突然変異の誘発や腫瘍発生の誘発等を示すものであるが、ショウジョウバエと同様に照射された放射線が極めて高いものである上、その実験手法や結果の妥当性に疑義があるとする指摘や、発ガンのしやすさ等のマウスとヒトとの差異を踏まえると、ヒトへの適用については疑義があるとする見解 がある。 控訴人らは、ヒトについて動物と同様の実験を行うことは不可能であるから、動物実験の結果をもって放射線によるヒトの遺伝子への影響を推認・判断すべきであるし、UNSCEARが、メガ・マウス実験の結果を根拠に、放射線の遺伝的影響を評価する場合の倍加線量として1Gyを採用しているなど、動物実験の結果によってヒトにおける放射線の遺伝的影響の存在を十分に推測し得ると主張する。しかし、前記のとおり、ハエやマウスとヒトとでは、受精から出産に至るまでのDNAの修復機構や淘汰の仕組みが大きく異なる上、ヒトには染色体異常や先天性異常などの障害を持った子が生まれにくい仕組みが備わっているなどの少なからぬ違いがあることは公知の事実である。 倍加線量は、ヒトでも吸収線量あたりマウスと同じ頻度で放射線による突然変異が誘発されると便宜的に仮定した場合、次世代での自然突然変異率が2倍になる仮定上の線量をいうところ、ヒトでは放射線による突然変異率は検出されていないことから、防護用 と同じ頻度で放射線による突然変異が誘発されると便宜的に仮定した場合、次世代での自然突然変異率が2倍になる仮定上の線量をいうところ、ヒトでは放射線による突然変異率は検出されていないことから、防護用の便宜的な倍加線量として、0.82Gy/世代と定め、直接測定することが不可能なヒトの数値として予測し、これを基にICRPの勧告において倍加線量が1Gyと定められたものである(乙57)。要するに、次世代突然変異の増加が認められていないヒトについて、防護のための指標を決めるべく、仮の倍加線量としてマウスを基準として定めた仮値であって、生物的影響が発生する閾値ではないから、UNSCEARの上記見解をもって、ヒトの遺伝的影響の可能性が科学的根拠に裏付けられているということはできない。 野村大成の行ったマウス研究では、実験に使用されたマウスとヒトとでは発ガンのしやすさにおいて大きな差がある上に、マウスの精子と精細胞について行われた他の実験では、親の放射線被爆による次世代への 影響が観察されていなかったり(乙28・348頁、乙83)、野村大成と同様の実験に関する5編の論文では、いずれも親の放射線被曝による次世代の腫瘍頻度の増加が認められていない(乙27・1頁)。これらに照らすと、控訴人らが主張する動物実験・研究の結果をもって、ヒトにおいても放射線による遺伝的影響があることが十分に推測し得るということはできない。 (イ) 放影研の研究、その他ヒトの疫学的研究等による知見についてa 前記1⑻で補正の上で引用する原判決書の「事実及び理由」中「第 3 当裁判所の判断」の1⑶イ(ア)のとおり、放影研は、昭和22年頃から継続的に原爆被爆に関する遺伝的影響を調査研究しているが、被爆による子への遺伝的影響は確認されていない。 山田論文では、再解 3 当裁判所の判断」の1⑶イ(ア)のとおり、放影研は、昭和22年頃から継続的に原爆被爆に関する遺伝的影響を調査研究しているが、被爆による子への遺伝的影響は確認されていない。 山田論文では、再解析の結果、9パターン中1パターン(両親の合計線量と14日以内の周産期死亡)には統計上有意な関連性が認められたが、先天性形成異常や周産期死亡が戦後の貧困等の社会・経済的要因の影響を受けるにもかかわらず、上記解析に当たっては、原爆による社会・経済的影響(放射線以外の要因が及ぼした重大な影響)を調整できていないため、解析手法上、放射線の関与が過大に推定されている可能性があり、線量の増加傾向が放射線の直接的影響(遺伝的影響)によるものであると解釈することは困難であると自ら指摘している。 この点について、控訴人らは、山田論文(特に上記1パターンにおいて統計的に有意であることが初めて確認されたとする点)について、放射線の遺伝的影響の可能性を示唆する研究である旨主張する。しかし、山田論文は、解析結果について、親の被曝線量は、主要な先天性形成異常(奇形)、及び周産期死亡のリスク増加と関連性が見られるも、推定値は放射線の直接効果として考えるには不正確であり、ほとんど の推定値は統計学的には有意ではなかったと結論付けており、父親被曝、母親被曝どちらの場合も、妊娠終結異常の推定値が総じて正の値を示したことは、リスク推定に役立つと述べるに留まる。山田論文は、ヒトにおける放射線の遺伝的影響を肯定する有力な研究結果であると評価することはできない。 b また、前記1で引用する原判決書の「事実及び理由」中「第3 当裁判所の判断」の1⑶イ(ウ)ないし(オ)のとおり、ヒトに関する放射線被曝の遺伝的影響については、セラフィールド核施設にまつわる b また、前記1で引用する原判決書の「事実及び理由」中「第3 当裁判所の判断」の1⑶イ(ウ)ないし(オ)のとおり、ヒトに関する放射線被曝の遺伝的影響については、セラフィールド核施設にまつわる研究や、鎌田七男らによる被爆二世の白血病の発症頻度に関する研究など、遺伝的影響があることと整合する研究結果も報告されているが、前者については、その結論が極めて少数の症例に依っている上、その他の被曝した親における観察例とは相容れないとして、調査手法等の問題や放射性物質と疾病との因果関係を疑問視するUNSCEARの1993年報告書やCOMAREの報告書が存在するし、後者についても、被爆していない親の子を対照群とする調査は実施されておらず、一般人口との比較を加えた疫学的検討が今後の課題とされている(甲B11)。さらに、被爆二世について、成人期に発生する多因子疾患の有病率と親の放射線被曝との関連性についても否定的な研究結果が報告されている。 このような疫学的調査・研究のみならず、前記1で補正の上で引用する原判決書の「事実及び理由」中「第3 当裁判所の判断」の1⑶(カ)及び(キ)のとおり、被爆者及び被爆二世のDNA調査や全ゲノム解析においては、被爆二世に原爆放射線による有意な遺伝的影響を認めず、チェルノブイリ原子力発電所事故で放射線被曝した親とその子らについても調査対象とされた範囲では生殖細胞の突然変異が実質的に生ずる証拠はない旨の報告がされている。 c そして、前記1で引用する原判決書の「事実及び理由」中「第3 当裁判所の判断」の1⑶イ(イ)のとおり、UNSCEARの近時の報告(2013年〔平成25年〕)では、放射線被曝による人間における遺伝的影響として明白に確認されたものは(原爆被害の生存者の子孫の研究においては特に)ない イ(イ)のとおり、UNSCEARの近時の報告(2013年〔平成25年〕)では、放射線被曝による人間における遺伝的影響として明白に確認されたものは(原爆被害の生存者の子孫の研究においては特に)ないというのが一般的な結論であるとされ、放射線に被曝した者の子孫において、先天性異常や癌の危険性の増大などの危険性は基本的にはないと結論付けられている。 (ウ) 放影研の新たな調査及びエピジェネティクスに係る研究等についてa 控訴人らは、放影研が、親の放射線被曝が子供の健康に与える影響を調べることを目的として、令和6年度以降に広島と長崎の被爆者である親とその子のゲノム解析をする新たな調査を実施することは、放射線被曝の継世代影響の可能性があることの証左といえる旨主張する。 しかし、その主張は、放影研が新たな調査を始めたというに留まり、継世代影響について科学的知見が得られたというものではない。 また、控訴人らは、近時、ゲノム配列とは無関係に遺伝子発現を調整する制御機構である「エピジェネティクス」に関する研究が行われるようになっており、エピジェネティクスが放射線の遺伝的影響にも関与していることを示唆する結果が複数報告されている、エピジェネティクスと放射性の遺伝的影響に関する研究は、親の放射線被曝によって生殖細胞のDNA塩基配列の変異が誘発されなくても、表現型の変化という形で放射線による遺伝的影響が生じる可能性があることを示唆しているなどと主張する。しかし、控訴人らも認めるとおり、エピジェネティクスに関する研究が途上にあることは明らかであって、控訴人らの挙げる論文や研究結果の存在は、親の放射線被曝によって被爆二世の健康状態に影響が生じることを科学的に根拠づけるものとまではいえない。 b なお、被控訴人は、控訴人らによ 控訴人らの挙げる論文や研究結果の存在は、親の放射線被曝によって被爆二世の健康状態に影響が生じることを科学的に根拠づけるものとまではいえない。 b なお、被控訴人は、控訴人らによる上記各主張は時機に後れたものとして却下されるべきであると主張するが、上記各主張は本件訴訟の完結を遅延させるものとはいえない。 (エ) 以上のとおり、動物を用いた実験研究による知見やヒトの研究による知見を踏まえると、現在の医学的・科学的知見において、ヒトにおける放射線被曝の遺伝的影響による健康被害の生じる可能性は、これが明確に否定されているとまではいえないものの、放射線被曝の遺伝的(継世代)影響の存在は医学的・科学的に証明されておらず、このような知見が通説的・有力な見解として一般的に認識されているとも認められない。 振津かつみは、被爆者は、被爆によって体内の生殖細胞に放射線の影響を受けており、二世は変異した可能性のある遺伝情報を受け継いでいるから、その身体にも原爆放射線の影響を受けている可能性がある旨の意見を述べるが(甲B44、68、72、77)、上記見解は、一つの可能性を指摘したにすぎない上、国内外において、多数の研究者から支持されているものともいえず(乙57)、また、前記(ア)ないし(ウ)の判示に照らし、採用することはできない。 その他、控訴人らは、放射線被曝の遺伝的影響について縷々主張するが、いずれも採用することはできない。 オ以上によれば、原爆投下時に被爆地周辺に所在し、現実に放射線を直接浴びた可能性のある被爆者及びみなし被爆者と、被爆時には存在していなかった被爆二世とでは、原爆の放射能により健康被害が生じる可能性の前提となる、ヒトに対する放射線の影響(被爆二世については遺伝的影響)に関し、その基礎となる医学的・科学的 と、被爆時には存在していなかった被爆二世とでは、原爆の放射能により健康被害が生じる可能性の前提となる、ヒトに対する放射線の影響(被爆二世については遺伝的影響)に関し、その基礎となる医学的・科学的知見において顕著な差異があるというべきである。そして、被爆二世の訴える健康上の不安に対処すべく、被爆二世を援護の対象に加えるか否か、その援護の在り方については、総合的・政策的判断を要する立法府の合理的な裁量的判断に委ねられている というべきであり、被爆二世を被爆者援護法の被爆者に含めるなどして同法による援護の対象にしないことが、合理的理由のない差別的取扱いにあたるということはできない。 カよって、本件立法不作為が憲法14条1項に違反するということはできず、したがって、控訴人らに憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために控訴人ら主張の立法措置を執ることが必要不可欠であり、かつ、それが明白であるにも関わらず、国会が正当な理由なく長期にわたって当該措置を執ることを怠っていたとは認められない。 第4 結語以上によれば、控訴人らの本件請求にはいずれも理由はなく、これを棄却した原判決は相当である。 よって、本件各控訴をいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第2部 裁判長裁判官 髙宮健二 裁判官 財津陽子 裁判官 奥俊彦 子 裁判官 奥俊彦
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