平成26年11月28日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成26年(ワ)第767号商標権侵害差止請求事件口頭弁論終結日平成26年10月17日判決名古屋市中区<以下略>原告興和株式会社同訴訟代理人弁護士北原潤一同江幡奈同梶並彰一郎同訴訟代理人弁理士高野登志雄福井県あわら市<以下略>被告小林化工株式会社同訴訟代理人弁護士飯田秀郷同栗宇一樹同大友良浩同隈部泰正同和氣満美子同森山航洋同奥津啓太同清水紘武同補佐人弁理士水野勝文同岸田正行同和田光子同保明弘 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告は、別紙被告標章目録記載1ないし3の各標章を付した薬剤を販売してはならない。 2 被告は、前項記載の薬剤を廃棄せよ。 3 仮執行宣言第2 事案の概要 第1 請求 1 被告は, 別紙被告標章目録記載1ないし3の各標章を付した薬剤を販売してはならない。 2 被告は,前項記載の薬剤を廃棄せよ。 3 仮執行宣言第2 事案の概要 1 前提事実(証拠を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)(1) 当事者原告及び被告は,いずれも医薬品等の製造・販売等を業とする株式会社である。 (2) 原告の有する商標権原告は,別紙商標権目録記載の商標権(以下「本件商標権」といい,本件商標権に係る登録商標を「本件商標」という。)を有する。 (3) 被告の行為等ア被告は,以下の薬剤を販売している。 (ア) 別紙被告標章目録記載1の標章(以下「被告標章1」という。)を付した「ピタバスタチンCa錠1mg『MEEK』」という薬剤(以下「被告商品1」という。)。 (イ) 別紙被告標章目録記載2の標章(以下「被告標章2」という。)を付した「ピタバスタチンCa錠2mg『MEEK』」という薬剤(以下「被告商品2」という。)。 (ウ) 別紙被告標章目録記載3の標章(以下「被告標章3」といい,被告標章1ないし3を併せて「被告各標章」という。)を付した「ピタバスタチンCa錠4mg『MEEK』」という薬剤(以下「被告商品3」とい- 3 -い,被告商品1ないし3を併せて「被告各商品」という。)。 イ被告各商品は,いずれも,原告が「リバロ」という商標を付して販売しているピタバスタチンカルシウムを有効成分とするコレステロール低下薬(以下「原告商品」という。)の後発医薬品である。 2 本件は,原告が,被告各標章を付した被告各商品を販売する被告の行為は原告の有する本件商標権を侵害するものであると主張して,被告に対し,本件商標権に基づき,被告各標章を付した被告各商品の販売の差止め及び廃棄を 原告が,被告各標章を付した被告各商品を販売する被告の行為は原告の有する本件商標権を侵害するものであると主張して,被告に対し,本件商標権に基づき,被告各標章を付した被告各商品の販売の差止め及び廃棄を求めた事案である。 3 争点(1) 本件商標と被告各標章との類否(2) 被告各標章の表示が商標的使用に当たるか(3) 被告各標章の表示が普通名称の表示(商標法26条1項2号)に該当するか(4) 本件商標の商標登録は商標登録無効審判により無効にされるべきものかア本件商標が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」(商標法4条1項7号)に該当するかイ本件商標が「商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標」(商標法4条1項16号)に該当するか(5) 本件商標権に基づく請求は権利の濫用に当たるか第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)(本件商標と被告各標章との類否)について〔原告の主張〕本件商標は,標準文字「PITAVA」であり,欧文字「PITAVA」からなる外観を有し,「ピタバ」との称呼を生じるが,特段の観念は生じない。 被告各標章は,その外観が片仮名で「ピタバ」であり,その称呼も「ピタバ」であって,特段の観念が生じない。 - 4 -そうすると,本件商標と被告各標章は,外観こそ欧文字と片仮名で異なるが,称呼は同一であり,特定の観念を生じない点でも同一である。 したがって,被告各標章は,本件商標に類似する。 〔被告の主張〕本件商標と被告各標章が称呼において類似することは認めるが,被告各標章が「ピタバ」との称呼を生じ,特段の観念は生じないとの点は否認する。医薬品において,「ピタバ」からは「ピタバスタチン」あるいは「ピタバスタチンカルシウム(ピタバスタチンCa)」という観念を生じさせ,被告各標 バ」との称呼を生じ,特段の観念は生じないとの点は否認する。医薬品において,「ピタバ」からは「ピタバスタチン」あるいは「ピタバスタチンカルシウム(ピタバスタチンCa)」という観念を生じさせ,被告各標章についてもかかる観念が生じている。 2 争点(2)(被告各標章の表示が商標的使用に当たるか)について〔原告の主張〕(1) 被告各商品たる錠剤の「ピタバ」の表示は,商標的使用に該当する。 (2) 被告各商品のような医療用医薬品の場合,医師・薬剤師等の医療関係者のみならず,当該医薬品を服用し,またはその投与を受ける患者も,自らの意思と支出において当該医薬品を購入するものであるから,医師・薬剤師等の医療関係者のみならず,患者も当該医薬品の取引者・需要者に当たるというべきである。 (3) 「ピタバ」や「PITAVA」は,取引者・需要者,特に患者において,「pitavastatincalcium」・「ピタバスタチンカルシウム」の略称であるとは認識されておらず,被告が証拠として提出する文献等をみても,かかる認識がされていることは何ら示されていない。 (4) 被告各商品たる錠剤の「ピタバ」の表示は,患者等の目に触れるものであり,その表示は自他商品識別機能を奏している。 この点に関して被告は,あたかもPTPシートの表示において自他商品識別機能が奏されているから,錠剤の「ピタバ」の表示は自他商品識別機能を奏しないかのように主張する。 - 5 -しかし,そもそもパッケージの表示が自他商品識別機能を奏するからといって,錠剤の「ピタバ」の表示が自他商品識別機能を失うわけではない。 患者が被告各商品を購入する場合には,PTPシートに包装された状態で,あるいは,「一包化調剤」,すなわち,あるいはPTP包装から取り出された錠剤と被告各商品以外の 識別機能を失うわけではない。 患者が被告各商品を購入する場合には,PTPシートに包装された状態で,あるいは,「一包化調剤」,すなわち,あるいはPTP包装から取り出された錠剤と被告各商品以外の他の錠剤やカプセル剤とを一つの透明な袋にまとめた状態で交付される。一包化調剤の場合,患者は当然,錠剤の「ピタバ」の表示を視認することができ,PTPシートに包装された状態で交付される場合であっても,PTPシートの表面のプラスチックカバーが透明であることから,患者はPTPシートの中身である錠剤の「ピタバ」の表示を視認することができる。さらに,患者は,被告各商品の購入後,使用(服用)時においても,錠剤の「ピタバ」の表示を視認することになる。このように,被告各商品の「ピタバ」の表示は,患者等の目に触れるものであり,自他商品識別機能を奏するものである。 これに対して被告は,錠剤に「ピタバ」と印字あるいは刻印をしている理由として,服用者が服用する際に他の薬剤と間違えて誤飲することを防ぐためであると主張するが,その主張はまさに自他商品識別機能を奏するための表示を意味するものにほかならない。 (5) さらにいえば,患者が被告各商品の「ピタバ」の表示を有効成分の表示であると認識するとは考え難い。すなわち,患者は,自らの症状を治すために,薬剤の効果や副作用について興味は持つことはあるとしても,当該薬剤の有効成分についてその名称が何であるかということには興味も知識も持っていないのが通常である。また,医師・薬剤師も,患者に対して薬剤を処方等するに際し,薬剤の効果や副作用について説明することはあるとしても,当該薬剤の有効成分の名称が何であるかを説明することはほとんど皆無である。そうすると,患者は,被告各商品の有効成分の名称が何であるかといったことについて興味 作用について説明することはあるとしても,当該薬剤の有効成分の名称が何であるかを説明することはほとんど皆無である。そうすると,患者は,被告各商品の有効成分の名称が何であるかといったことについて興味も知識もないまま,被告各商品の「ピタバ」の表示に接したとき,それが薬剤- 6 -の有効成分を示すものであると認識するとは考えられず,むしろ,被告各商品の商品名に関する表示であると認識するのが自然である。 〔被告の主張〕(1) 被告各商品たる錠剤の「ピタバ」の表示は,商標的使用に該当しない。 (2) 「ピタバスタチン」(Pitavastatin)(あるいは「ピタバスタチンカルシウム」(pitavastatincalcium))は,医薬品の一般名称である。 「ピタバスタチン」(Pitavastatin)は,世界保険機構(WorldHealthOrganization。以下「WHO」という。)が定める医薬品の国際一般名(InternationalNonproprietaryNames,略称「INN」)として登録されており,また,「ピタバスタチンカルシウム」(pitavastatincalcium)は厚生労働省が定める医薬品一般的名称(JapaneseAcceptedNamesforPharmaceuticals,略称「JAN」)として定められている。 医薬品一般的名称(JAN)や国際一般名(INN)は,医薬品における非独占的・一般的な名称である。有効成分を含む医薬品,特に医療用後発医薬品においては,同一の有効成分を含むにもかかわらず数多くの異なる商品名で販売されるとすると,どのような有効成分を含む何のための医薬品であるかが不明となり混乱を招くことが多い。そこで,医療側の誤った処方や投与,患者側の誤飲等の医療事故を かかわらず数多くの異なる商品名で販売されるとすると,どのような有効成分を含む何のための医薬品であるかが不明となり混乱を招くことが多い。そこで,医療側の誤った処方や投与,患者側の誤飲等の医療事故を防止するために,一つの物質に指標となる標準的な名称を付して一般名称としている。そして,医療用後発医薬品においては,医薬品の販売名等の類似性に起因した医療事故を防止するために,販売名について,①含有する有効成分に係る一般的名称に剤型,含量,会社名(屋号等)を付し,②申請品目が日本薬局方に収載されている場合は,原則として,一般的名称は日本薬局方に収載されている名称を用いることとされているところ,「ピタバスタチンカルシウム」は,第十六改正日本薬局方の第二追補に収載されている。 したがって,医療用後発医薬品においては,その販売名に自由な商標を付- 7 -することが許されていないのであり,「ピタバスタチンカルシウム」を有効成分とする医薬品は,一般名称である「ピタバスタチンカルシウム」を販売名に付さなければならないとされているのである。 (3) 医薬品において「PITAVA」・「ピタバ」は,「pitavastatincalcium」・「ピタバスタチンカルシウム」の略称である。 本件商標「PITAVA」は,医薬品の一般名称「ピタバスタチンカルシウム」の国際一般名「pitavastatin」からコレステロール値を下げる薬の総称の一つである「statin」)(スタチン)を除外した名称であるが,コレステロール低下薬として有名な「スタチン系」に属する「ピタバスタチン」においては,「ピタバ」が略称として使用されており,ほかに特許公開公報等や,その他の文献でも同様に「ピタバ」が略称として使用されている。 さらにいえば,原告が特許庁に対し,片仮名文 バスタチン」においては,「ピタバ」が略称として使用されており,ほかに特許公開公報等や,その他の文献でも同様に「ピタバ」が略称として使用されている。 さらにいえば,原告が特許庁に対し,片仮名文字「ピタバ」について商標登録願を提出したが,特許庁は,「ピタバ」の文字が「ピタバスタチンカルシウム」又は「ピタバスタチン」の略称として使用されているとして,拒絶理由を通知した。 また,原告が本件商標について商標使用許諾契約を締結したキョーリンリメディオ株式会社において,その製品パンフレットには,「Point3」として「一錠毎に成分名と含量を表示」と記載されているところ,同社の錠剤には「ピタバ」と表記されており,「ピタバ」が「ピタバスタチン」という成分名を指すものであることが明記されている。 (4) 錠剤に名称や略称を印刷若しくは刻印する方法は,製薬業界において一般的に行われている。 (5) 被告各商品はいずれも錠剤であり,そのパッケージには「ピタバスタチンCa錠 1mg 『MEEK』」,「ピタバスタチンCa錠 2mg 『MEEK』」,「ピタバスタチンCa錠 4mg 『MEEK』」と表示されているが,商標としての自他商品識別機能は,「MEEK」の部分にある。 - 8 -「ピタバ」と印字あるいは刻印をしているのは,服用者が服用する際に他の有効成分の薬剤と間違えて誤飲することを防ぐためであり,商標的機能,すなわち自他商品識別機能を奏するためではない。 (6) この点に関して原告は,医師・薬剤師等の医療関係者のみならず患者も取引者・需用者に当たると主張する。 しかし,医療用医薬品であり,処方せん医薬品に該当する被告各商品は,薬事法49条1項によって,病院,診療所,薬局等への販売(授与を含む。)する場合を除いては,医師等からの処方せんの交 と主張する。 しかし,医療用医薬品であり,処方せん医薬品に該当する被告各商品は,薬事法49条1項によって,病院,診療所,薬局等への販売(授与を含む。)する場合を除いては,医師等からの処方せんの交付を受けた者以外の者に対して,正当な理由なく販売を行ってはならないとされているから,被告各商品を任意に選択して購入することが可能なのは病院,診療所,薬局等が購入する場合に限られ,これらの者が取引者・需要者に該当するということができる。その一方で,患者は,医師の処方指示にしたがって,被告各商品を購入するにすぎない。したがって,本件商標の自他商品識別機能を検討するに際して,被告各商品に関しては,患者は取引者・需要者には該当しないというべきである。 また,被告各商品を購入する需用者・取引者に対しては,既に錠剤のパッケージ等の表示において自他商品識別機能を奏しているから,服用者がこれをパッケージから取り出して服用する際に錠剤に印字あるいは刻印された「ピタバ」を見たとしても,それは誤飲防止のために錠剤の医薬としての有効成分を確認する意味を有するにすぎない。 (7) 以上のとおり,被告は「ピタバ」を商標的に使用していないから,被告各標章を被告各商品に付して販売する行為は本件商標権を侵害するものではない。 3 争点(3)(被告各標章の表示が普通名称の表示(商標法26条1項2号)に該当するか)について〔被告の主張〕前記2〔被告の主張〕(2)ないし(4)の事実によれば,被告各商品における「ピ- 9 -タバ」の表示は,いずれも商品の品質,すなわち「ピタバスタチン」を有効成分とする医薬品であることを,普通に用いられる方法で表示するものであるから,商標法26条1項2号により,本件商標権の効力を及ぼすことはできない。 〔原告の主張〕被告各商品のよう タチン」を有効成分とする医薬品であることを,普通に用いられる方法で表示するものであるから,商標法26条1項2号により,本件商標権の効力を及ぼすことはできない。 〔原告の主張〕被告各商品のような医療用医薬品の場合,医師・薬剤師等の医療関係者のみならず,患者もその取引者・需要者に当たるというべきである。 そして,被告が提出するいずれの証拠を検討しても,「PITAVA」あるいは「ピタバ」は,需用者・取引者,とりわけ患者において,「pitavastatin」・「ピタバスタチン」(あるいは「pitavastatincalcium」・「ピタバスタチンカルシウム」)と認識されていることを示すものではないとはいえない。 したがって,「PITAVA」・「ピタバ」は「pitavastatin」・「ピタバスタチン」(あるいは「pitavastatincalcium」・「ピタバスタチンカルシウム」)の略称ではないから,被告の上記主張は失当である。 4 争点(4)ア(本件商標が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」(商標法4条1項7号)に該当するか)について〔被告の主張〕医薬品一般的名称(JAN)や国際一般名(INN)は,医薬品における非独占的・一般的な名称である。その趣旨は,有効成分を含む医薬品,特に医療用後発医薬品においては数多くの異なる商品名で販売されると,有効成分を記載しなければ何のための医薬品であるのかについて混乱を招くことが多く,医療側の誤った処方や投与,患者側の誤飲等の医療事故を防止するため,一つの医薬に指標となる標準的な名称を付している。 そのため,国内の医療行政においても,医療用後発医薬品に関しては,医薬品の販売名等の類似性に起因した医療事故を防止するため,販売名について,①含有する有効成分に係る一般的名 名称を付している。 そのため,国内の医療行政においても,医療用後発医薬品に関しては,医薬品の販売名等の類似性に起因した医療事故を防止するため,販売名について,①含有する有効成分に係る一般的名称に剤型,含量,会社名(屋号等)を付すこと,②申請費目が日本薬局方に収載されている場合は,原則として,一般的- 10 -名称は日本薬局方に収載されている名称を用いることとされている。 したがって,医薬の有効成分の一般名称を商標登録して独占権を与えることは,国際的及び国内的な社会秩序に反するものであるから,かかる商標権は公序良俗に反するものである。 これを本件についてみると,本件商標は,これに接する需用者・取引者に普通名称である「pitavastatin」の略称であると容易に理解され,医薬品の国際一般名と同一視し得るから,公序良俗に反する商標であることが明らかであり,商標法4条1項7号違反の無効理由(同法46条1項5号)が存する。 〔原告の主張〕本件商標が,これに接する需要者・取引者にとって普通名称である「pitavastatin」の略称であると容易に理解されるとは認められず,これを医薬品の国際一般名と同一視することはできないから,本件商標は公序良俗に反する商標ではない。 5 争点(4)イ(本件商標が「商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標」(商標法4条1項16号)に該当するか)について〔被告の主張〕「pitavastatin」は国際一般名(INN)に登録されて,誰もが使用できる名称となっているものであるから,「pitavastatin」・「ピタバスタチン」(あるいは「pitavastatincalcium」・「ピタバスタチンカルシウム」)は,医薬品において自他商品識別力を有しない普通名称である。 そして, astatin」・「ピタバスタチン」(あるいは「pitavastatincalcium」・「ピタバスタチンカルシウム」)は,医薬品において自他商品識別力を有しない普通名称である。 そして,スタチン系の成分として,「スタチン」という用語を除外した部分を略称として使用することは一般的に行われており,「PITAVA」は普通名称である「pitavastatin」・「ピタバスタチン」あるいは「pitavastatincalcium」・「ピタバスタチンカルシウム」の略称である。 そうすると,本件商標である「PITAVA」を「pitavastatin」・「ピタバスタチン」(あるいは「pitavastatincalcium」・「ピタバスタチンカルシ- 11 -ウム」)以外の有効成分とする薬剤やそれ以外の医薬品に使用すれば,需用者・取引者において,「pitavastatin 」・「ピタバスタチン」(あるいは「pitavastatincalcium」・「ピタバスタチンカルシウム」)を有効成分である薬剤であると認識し,品質の誤認を生ずるおそれがあることは明らかである。 したがって,本件商標は,商標法4条1項16号違反の無効理由(同法46条1項5号)が存する。 〔原告の主張〕取引者・需要者において本件商標である「PITAVA」は「ピタバスタチン等」や「pitavastatin 等」の略称であるとは認識されていないのであるから,「ピタバスタチン等」または「pitavastatin 等」以外を有効成分とする薬剤に「PITAVA」を使用したとしても,「ピタバスタチン等」または「pitavastatin 等」を有効成分とする薬剤であると認識するとはいえない。 6 争点(5)(本件商標権に基づく請求は権利の濫用に当たるか)について たとしても,「ピタバスタチン等」または「pitavastatin 等」を有効成分とする薬剤であると認識するとはいえない。 6 争点(5)(本件商標権に基づく請求は権利の濫用に当たるか)について〔被告の主張〕(1) 本件商標には,次の二つの無効理由も存する。 ア原告は,ピタバスタチンカルシウムを有効成分とする医薬品として,2003年発売開始以来現在まで「リバロ」の商品名で販売を継続しており,それが既に原告商品の商品名として確立された名称となっているが,その一方で,原告は「PITAVA」若しくは「ピタバ」なる商品名で医薬品の販売をしておらず,使用している形跡もないし,また,その商品名に変更することも考えられない。 したがって,原告は,「PITAVA」を自己の業務に係る商品に使用しておらず,使用しないことも明らかであるから,本件商標は,商標法3条1項柱書違反の無効理由が存する。 イ医療用後発医薬品の販売名は,自由に商標を付すことが許されておらず,「ピタバスタチンカルシウム」を有効成分とする医薬品の場合には,一般- 12 -的名称である「ピタバスタチンカルシウム」を販売名に付さなければならない。 そして,「PITAVA」は一般名称である「pitavastatin」・「ピタバスタチン」あるいは「pitavastatincalcium」・「ピタバスタチンカルシウム」の略称であり,需用者・取引者に「ピタバスタチンカルシウム」を容易に想起させる。 また,錠剤に名称又はその略称を印刷若しくは刻印する方法は,製薬業界において一般的に行われている。 したがって,本件商標は「pitavastatin」・「ピタバスタチン」(あるいは「pitavastatincalcium」・「ピタバスタチンカルシウム」)を有効成分 一般的に行われている。 したがって,本件商標は「pitavastatin」・「ピタバスタチン」(あるいは「pitavastatincalcium」・「ピタバスタチンカルシウム」)を有効成分とする医薬品の商標として使用する場合は,単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから,商標法3条1項3号違反の無効理由が存する。 (2) 上記(1)の無効理由はいずれも本件商標の登録から5年を経過しており,無効審判を請求することができない(商標法47条1項)が,明らかな無効理由がある商標権に基づく請求は,権利濫用として許されないというべきである。 (3) さらに,上記(1)の明らかな無効理由があることに加えて,①「ピタバスタチン」(pitavastatin)は医薬品の国際一般名(INN)として登録され,「ピタバスタチンカルシウム」(pitavastatincalcium)は厚生労働省が定める医薬品一般的名称(JAN)として定められていること,②医療用後発医薬品の販売名は,自由な商標を付すること自体が許されていないこと,③原告は,平成15年発売開始以来現在までピタバスタチンカルシウムを有効成分とする医薬品を「リバロ」なる商品名で販売を継続しており,それが既に原告商品の商品名として確立された名称となっている一方で,平成18年に本件商標登録がされて以降「PITAVA」若しくは「ピタバ」なる商品名で医薬品の販売をしていないこ- 13 -と,④超高齢化社会へ向けて医療財政の健全化及び患者の負担軽減は喫緊の課題であり,後発医薬品の普及はその一助となるにもかかわらず,これと逆行するものは厳格に取り扱われるべきであること,等の事情に鑑みれば,本件商標権に基づく請求は,権利濫用として許されないというべきである。 〔原告 医薬品の普及はその一助となるにもかかわらず,これと逆行するものは厳格に取り扱われるべきであること,等の事情に鑑みれば,本件商標権に基づく請求は,権利濫用として許されないというべきである。 〔原告の主張〕いずれも否認ないし争う。 被告は,本件商標に関し商標法3条1項柱書違反を主張するが,製薬会社である原告は,自ら本件商標を使用する意思をもって,指定商品を薬剤として,本件商標を出願して登録を受けたものであるから,被告の上記主張は理由がない。 また,被告は,「PITAVA」は一般的名称である「pitavastatin」・「ピタバスタチン」(あるいは「pitavastatincalcium」・「ピタバスタチンカルシウム」の略称であるという前提で,同法3条1項3号違反を主張するが,前提を誤った主張であって失当である。 さらに,被告は,同法47条の除斥期間の経過により無効審判請求をすることができない場合でも権利濫用の主張をすることができる旨主張するが,同法47条の除斥期間が,商標登録がされたことにより生じた既存の継続的な状態を保護するために,商標登録の有効性を争い得ないものとする趣旨で設けられたこと(最判平成17年7月11日判時1907号125頁),及び,同法39条が準用する特許法104条の3の抗弁は認められないが,権利濫用の抗弁は認められると解することは主張立証の仕方で結論が異なるということになり,いたずらに議論を複雑にするおそれがあることに鑑みれば,権利濫用の抗弁は認められないと解されるべきである。 第4 当裁判所の判断 1 本件事案に鑑み,まず争点(2)(被告各標章の表示が商標的使用に当たるか)について判断する。 - 14 -(1) 前記第2,1の前提事実並びに証拠(甲9ないし11,乙1ないし3,5,6ないし13,1 鑑み,まず争点(2)(被告各標章の表示が商標的使用に当たるか)について判断する。 - 14 -(1) 前記第2,1の前提事実並びに証拠(甲9ないし11,乙1ないし3,5,6ないし13,19,22,23ないし28)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア被告各商品は,ピタバスタチンカルシウムを有効成分とする,医療用後発医薬品である。 イ被告各標章は,別紙被告商品目録記載のとおり,片仮名の「ピタバ」をゴシック体で横書きしてなるものであるところ,被告商品1については,錠剤の片面の中央部に等間隔に配置され,その上下には含量を表す「1mg」及び欧文字の「MEEK」が表示されており,被告商品2及び3については,錠剤の片面の中央部に被告標章2ないし3が等間隔に配置され,その下に含量を示す「2」ないし「4」の数字が表示され,その裏面には中央部にある直線の溝を挟んでその上部に欧文字「MK」が,その下部に「76」ないし「77」の数字が表示されている。 ウ被告各商品の販売名は,それぞれ前記第2,1(3)アのとおりである。 被告各商品のパッケージであるPTPシートには,その耳部分の表面に「ピタバスタチンCa」「1mg『MEEK』」などと2段に表示され,裏面に「PITAVASTATINCa」「1mg『MEEK』」などと表示されている。 「MEEK(標準文字)」は,指定商品を薬剤とする被告の登録商標である。 また,「MEEK」及び「MK」は,製薬業界において会社の区別を図るために日本製薬団体連合会に登録されている,被告の会社コードである。 会社コードは,日本薬学会薬剤部部長会からの要望で,錠剤等の誤使用を避けるために錠剤等を識別する方法として定められたものである。〔乙27の1及び2,28〕エ ている,被告の会社コードである。 会社コードは,日本薬学会薬剤部部長会からの要望で,錠剤等の誤使用を避けるために錠剤等を識別する方法として定められたものである。〔乙27の1及び2,28〕エ 「ピタバスタチン」(Pitavastatin)は,WHOが定める医薬品の国際- 15 -一般名(INN)として登録されており,また,「ピタバスタチンカルシウム」(pitavastatincalcium)は厚生労働省が定める医薬品一般的名称(JAN)として定められている。〔乙1ないし3〕オピタバスタチンカルシウムを有効成分とする医療用後発医薬品については,その販売名に,一般的名称である「ピタバスタチンカルシウム」ないし「ピタバスタチンCa」及び剤型,含量,会社名(屋号等)を付さなければならないとされている。その趣旨は,医薬品の販売名等の類似性に起因する調剤間違いや患者の誤飲等の医療事故を防止することにあるとされている。 また,錠剤に販売名等を印刷ないし刻印することは,製薬業界において一般的に行われている。〔乙3,5〕カ被告各商品は,コレステロール低下薬であり,処方せん医薬品に指定されている。処方せん医薬品は,病院,診療所,薬局等への販売(授与を含む。)する場合を除き,薬事法49条1項に基づき,医師等からの処方せんの交付を受けた者以外の者に対して,正当な理由なく,販売を行ってはならないものとされている。 なお,保険薬局において薬品を調剤する際,薬剤師は,処方せんの記載どおりに薬剤を調剤しなければならないが,患者の選択に基づき,処方せんに記載されている先発医薬品に代えて後発医薬品を調剤することができる場合がある。その場合には,薬剤師は,患者に対して,後発医薬品を選択した基準,例えば,当該後発医薬品の品質に関する情報開示 処方せんに記載されている先発医薬品に代えて後発医薬品を調剤することができる場合がある。その場合には,薬剤師は,患者に対して,後発医薬品を選択した基準,例えば,当該後発医薬品の品質に関する情報開示の状況,薬価,製造販売業者の製造,供給や情報提供等に係る体制等といった事項について説明することとされている。また,患者が医師に薬の変更や新しい薬の処方を依頼することがあるが,その理由の多くは十分な効果がない,あるいは副作用があったというものである。〔甲9ないし11,乙22,23〕- 16 -キ 「Pitavastatin」という表記のうち,「statin」はコレステロール低下薬の一分類であるHMG-CoA 還元酵素阻害薬の総称であるところ,その総称が付された有効成分には,ピタバスタチンのほかに,アトルバスタチン,ロスバスタチンなどがある。〔乙6,22〕クピタバスタチン,アトルバスタチン,ロスバスタチンといった「スタチン系」と称されるコレステロール低下薬についてはそれぞれ,日本循環器学会での発表(乙6)において,「ピタバ」,「アトルバ」,「ロスバ」と,「スタチン」を省略した略称が使用されていた。その際,それらの略称について定義付けがされたことはなく,同発表の記事にそれらの略称について注記が付されたこともない。同発表は,九州の51施設の医師が参加した研究結果の発表であり,世界で初めて上記3種類の薬剤を同時に比較する試みであったことが高く評価され,また,日本循環器学会の目玉として,優れた,わずかな臨床研究のみが選抜されて発表を許される「レートブレーキングクリニカルトライアル」での発表であり,多くのメディアや医師が注目したものであった。〔乙6〕ケまた,次のとおり特許公開公報等において,「スタチン系」の薬剤に略記として「st ートブレーキングクリニカルトライアル」での発表であり,多くのメディアや医師が注目したものであった。〔乙6〕ケまた,次のとおり特許公開公報等において,「スタチン系」の薬剤に略記として「statin」を省略する方法が使用されている。 (ア) 再公表特許(WO2008/026702。乙7)ピタバスタチンについて,図9,図11,図12,図13,図14及び図21に「Pitava」との略記がされている。 また,アトルバスタチンについて,表1,図2,図6及び図8に「Atorva」との略記がされている。 (イ) 公開特許公報(特開2012-21002。乙8)ピタバスタチンについて,図9,図11,図12,図13,図14及び図21に「Pitava」との略記がされている。 また,アトルバスタチンについて,表1,図2,図6及び図8に「Atorva」- 17 -との略記がされている。 (ウ) 公開特許公報(特開2012-67052。乙9)ピタバスタチンについて,段落【0010】に「PITAVAはピタバスタチンを意味する。」との記載があり,図1において「PITAVA」との略記がされている。 (エ) 公開特許公報(特開2012-67057。乙10)ピタバスタチンについて,段落【0012】に「PITAVAはピタバスタチンを意味する。」との記載があり,図1において「PITAVA」との略記がされている。 (オ) 公開特許公報(特開2006-325582。乙11)アトルバスタチンについて,図11ないし図13及び図17に「Atorva」との略記がされている。 シンバスタチンについて,図11ないし図13及び図17に「Simva」との略記がされている。 プラバスタチンにつ ンについて,図11ないし図13及び図17に「Atorva」との略記がされている。 シンバスタチンについて,図11ないし図13及び図17に「Simva」との略記がされている。 プラバスタチンについて,図11ないし図13及び図17に「Prava」との略記がされている。 フルバスタチンについて,図11ないし図13及び図17に「Fluva」との略記がされている。 ローバスタチンについて,図11ないし図13及び図17に「Lova」との略記がされている。 (カ) 公開特許公報(特開2007-63284。乙12)アトルバスタチンについて,図11ないし図13及び図17に「Atorva」との略記がされている。 シンバスタチンについて,図11ないし図13及び図17に「Simva」との略記がされている。 プラバスタチンについて,図11ないし図13及び図17に「Prava」と- 18 -の略記がされている。 フルバスタチンについて,図11ないし図13及び図17に「Fluva」との略記がされている。 ローバスタチンについて,図11ないし図13及び図17に「Lova」との略記がされている。 (キ) 公開特許公報(特開2007-262067。乙13)アトルバスタチンについて,図11ないし図13及び図17に「Atorva」との略記がされている。 シンバスタチンについて,図11ないし図13及び図17に「Simva」との略記がされている。 プラバスタチンについて,図11ないし図13及び図17に「Prava」との略記がされている。 フルバスタチンについて,図11ないし図13及び図17に「Fluva」との略記がされている。 ローバスタチンについて,図11ないし図13及び図17に「Lova」との略記がされている。 れている。 フルバスタチンについて,図11ないし図13及び図17に「Fluva」との略記がされている。 ローバスタチンについて,図11ないし図13及び図17に「Lova」との略記がされている。 コ調剤薬局においても,スタチン系の薬剤を互いに区別するために,アトルバスタチンについて「アトルバ」との略称が,シンバスタチンについて「シンバ」との略称が,プラバスタチンについて「プラバ」との略称が,フルバスタチンについて「フルバ」との略称が,ロスバスタチンについて「ロスバ」との略称が使用されている。〔乙19〕サ原告は,平成25年10月17日付けで,「ピタバ(標準文字)」を登録商標とする商標登録出願をしたが,特許庁審査官は,平成26年3月4日付けで,「ピタバ」の文字は,指定商品を取り扱う業界において,「ピタバスタチンカルシウム」又は「ピタバスタチン」の略称として使用されているものであるから,これをその指定商品中「ピタバスタチンカルシウ- 19 -ムを有効成分とする薬剤」に使用したときは,「ピタバスタチンカルシウムを有効成分とする商品」等の意味合いを理解させるに止まり,単に商品の原材料,品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認められるとして拒絶理由を通知し,同年6月12日に拒絶査定をした。 〔乙24,26〕(2) 検討上記(1)の認定事実によれば,被告各商品の有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」という表記が医薬品の一般的名称として定められたものであり,これを有効成分とする医療用後発医薬品については,その販売名に,一般的名称及び剤型,含量,会社名(屋号等)を付さなければならないと定められていること,その理由は,薬剤師が調剤する際に処方された薬剤と類似する販売名の他の有効成分を含む薬剤とを混同して調 売名に,一般的名称及び剤型,含量,会社名(屋号等)を付さなければならないと定められていること,その理由は,薬剤師が調剤する際に処方された薬剤と類似する販売名の他の有効成分を含む薬剤とを混同して調剤を間違えたり,患者が誤飲したりといった,医薬品の販売名等が類似するがゆえに起きる医療事故を防止するためであること,被告は,その定めに従って被告各商品について販売名等を定めていること,医療業界においては,販売名等を錠剤に印刷ないし刻印することが一般的に行われていること,「ピタバスタチン」(Pitavastatin)の名称のうち,「スタチン」及び「statin」の部分は,コレステロール低下薬の一分類であるHMG-CoA 還元酵素阻害薬の総称を意味する用語であって,これに属する薬剤としては,本件で問題となっているピタバスタチンの他,アトルバスタチン,ロスバスタチンなどがあり,これらは「スタチン系」と称されていること,これらスタチン系の薬剤においては,薬剤を特定して表記する際に,「スタチン」及び「statin」の部分を省略して表記されることがあること,「ピタバ」という表記も,スタチン系の薬剤の一般的名称から「スタチン」を省略して称する方法によって,「ピタバスタチン」から「スタチン」を省略して称するものであり,実際,「ピタバ」の略称が重要な学会の発表の場で,特に定義付けや注記もなく使用されてい- 20 -るほか,調剤薬局でもスタチン系の薬剤を区別するために,上記の方法によって略称されていること,ピタバスタチンカルシウムに関する複数の特許公開公報等においても「Pitava」等の略記が使用されていること,加えて,商標登録出願においても,「ピタバ」は指定商品を取り扱う業界においてピタバスタチンカルシウム又はピタバスタチンの略称として使用されていること ても「Pitava」等の略記が使用されていること,加えて,商標登録出願においても,「ピタバ」は指定商品を取り扱う業界においてピタバスタチンカルシウム又はピタバスタチンの略称として使用されていること,被告各商品においては,そのPTPシートのみならず,錠剤の表面にも,錠剤等の誤使用を避けるために錠剤等を識別する方法として日本製薬団体連合会に登録されている被告の会社コードであって,被告の登録商標でもある「MEEK」及びその略号である「MK」が被告各標章とともに記載されていること,以上が認められる。 そうすると,被告各商品である錠剤に付された「ピタバ」という被告各標章は,医薬品の販売名等の類似性に起因する調剤間違いや患者の誤飲等の医療事故を防止する目的で,被告各商品の有効成分がピタバスタチンカルシウムであることの注意を喚起するためにその略称を錠剤の表面に記載したものであると認められ,被告各商品のような医療用医薬品の主たる取引者,需用者である医師や薬剤師等の医療関係者及び患者が被告各商品に接したときにも,被告各商品に付された被告の会社コードでありかつ登録商標でもある「MEEK」等の表示と相まって,そのような表記として認識されると認めるのが相当である。 したがって,被告各商品に付された被告各標章は,商標としての自他商品識別機能若しくは出所表示機能を果たす態様で使用されているということはできず,本件商標の「使用」に該当すると認めることはできない。 (3) 原告の主張についてこれに対して原告は,取引者,需要者である患者が被告各商品を購入する場合には,PTPシートに包装された状態で,あるいは,「一包化調剤」の状態で交付されるが,一包化調剤の場合,患者は当然,錠剤の「ピタバ」の- 21 -表示を視認して,また,PTPシートに包装 る場合には,PTPシートに包装された状態で,あるいは,「一包化調剤」の状態で交付されるが,一包化調剤の場合,患者は当然,錠剤の「ピタバ」の- 21 -表示を視認して,また,PTPシートに包装された状態で交付される場合であっても,PTPシートの中身である錠剤の「ピタバ」の表示を視認して,被告各標章によって出所を識別するから,被告各商品に表示された被告各標章は出所識別能力を有する旨主張する。 しかし,被告各商品は処方せん医薬品に指定されており,原則として医師等からの処方せんなしに購入することができないから,患者が自ら錠剤の表示に基づいてその出所を識別して薬剤の処方を受けることは一般的ではないと考えられる。また,患者が処方される薬剤を選択する場面は,主に,保険薬局において薬品を調剤する際に処方せんに記載されている先発医薬品に代えて後発医薬品を調剤するか否かといった場合や,効き目や副作用の点から薬の変更や新しい薬の処方を依頼するといった場合であり,そのような場合に患者が薬剤の表面に付された表示に基づいてその出所を識別して薬剤の処方を受けることはほとんどないと考えられる。 また,原告は,被告が錠剤に「ピタバ」と印字あるいは刻印をしているのは,服用者が服用する際に他の薬剤と間違えて誤飲することを防ぐためであるというが,それは自他商品識別機能を奏するための表示にほかならないと主張する。 しかし,その表示の趣旨は主として,他の有効成分を含有する錠剤と誤って調剤することや,誤って服用することを防止することにあるから,それは自他商品の識別や出所の識別を果たすものではなく,あくまで薬剤の有効成分が何であるかを識別する機能を果たしているにすぎないというべきである。 したがって,原告の上記主張はいずれも採用することができない。 (4) 小 識別を果たすものではなく,あくまで薬剤の有効成分が何であるかを識別する機能を果たしているにすぎないというべきである。したがって,原告の上記主張はいずれも採用することができない。 主文 以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 理由 小括よって,本件における被告による被告各標章の表示は商標権者の登録商標を使用する権利(商標法25条)の侵害行為又は侵害とみなされる行為(同法36条1項,37条)には該当しない。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 実本滋 裁判官 足立拓人 (別紙)被告標章目録<以下略> (別紙)商標権目録 登録番号第4942833号出願日平成17年8月30日登録日平成18年4月7日登録商標PITAVA(標準文字)商品及び役務の区分第5類指定商品薬剤 (別紙)被告商品目録 被告商品1 被告商品2 被告商品3
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