主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告は,原告に対し,9億9870万4770円及びこれに対する平成20年12月16日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の要旨本件は,普通地方公共団体である原告が,信託業務を営む銀行である被告(当時の商号はA信託銀行株式会社)との間で,原告を委託者兼受益者,被告を受託者,原告が所有していた別紙物件目録(省略)記載の土地(以下「本件土地」という。)を信託財産として本件土地上に建物(以下「本件建物」という。)を建設し,これを賃貸することを目的として本件土地及び本件建物(以下「本件信託不動産」という。)を管理運営する旨の信託契約(以下「本件信託契約」という。)を締結し,甲駅周辺土地区画整理事業用地土地信託事業(以下「本件信託事業」という。)を実施したところ,被告の本件信託契約上の義務違反により損害を被ったと主張して,被告に対し,9億9870万4770円及びこれに対する被告が本件信託事業に関する最終計算書を作成した日の翌日である平成20年12月16日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原告は,被告の本件信託契約上の義務につき,被告は,要旨,(1)本件信託事業に関する事業計画が想定する事業予想を実現できるような内容の事業計画等を作成する義務(以下「本件作成義務」という。),(2)当該事業計画が想定する事業予想を実現すべく本件信託事業を遂行する義務(以下「本件遂行義務」という。)を負っていた旨主張し,被告が上記各義務に違反したことによって,原告に,Ⅰ本件建物にフィットネスクラブを入居させたことによる振動問題に起因する振動対策 る義務(以下「本件遂行義務」という。)を負っていた旨主張し,被告が上記各義務に違反したことによって,原告に,Ⅰ本件建物にフィットネスクラブを入居させたことによる振動問題に起因する振動対策調査,防振対策工事費等の損害5124万円(以下「第1損害」という。),Ⅱ本件建物の振動問題を原因として一部テナントについて,一定期間,賃料の減額を余儀なくされたことによるその減額分の損害3572万2650円(以下「第2損害」という。),Ⅲ開業当初のテナントリーシングに失敗して,事業計画で想定した入居率を達成できなかったことによる得べかりし賃料及び共益費の損害7億2469万2939円(以下「第3損害」という。),Ⅳ上記第1ないし第3損害の発生に伴って信託財産が負担しなければならなくなった借入金に対する借入利息相当額の損害1億8704万9181円(以下,第1損害,第2損害,第3損害に対応して,それぞれ,「損害Ⅰ」,「損害Ⅱ」,「損害Ⅲ」という。)の各損害が生じたとして,その賠償を求めている。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,掲記の各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者原告は,普通地方公共団体である。 被告は,信託業務及び銀行業務等を目的とする株式会社である(旧商号はA信託銀行株式会社。A信託銀行株式会社は,平成24年4月1日,B信託銀行株式会社及びC信託銀行株式会社を吸収合併し,商号変更によりD信託銀行株式会社となった。)。被告は,平成2年当時,大阪地区で57案件の不動産信託案件を受託済みであった。 (2) 本件信託契約の締結に至る経緯ア本件土地本件土地は,原告が昭和36年から施行している甲駅周辺土地区画整理事業により市有地が集合換地された面積4864㎡の土地で,甲駅の北西約500mに位置 件信託契約の締結に至る経緯ア本件土地本件土地は,原告が昭和36年から施行している甲駅周辺土地区画整理事業により市有地が集合換地された面積4864㎡の土地で,甲駅の北西約500mに位置する。 イ本件提案競技の実施(ア) 昭和61年法律第75号による地方自治法の改正により,地方公共団体における普通財産の公有地信託が可能になったところ,原告は,平成2年1月25日開催の甲駅周辺土地区画整理事業に関する事業用地有効利用専門委員会において,公有地信託制度を活用して本件土地の開発を進める方向性を決定した。原告は,平成2年6月,本件土地を信託し,第三者に主として賃貸することにより土地及び施設の管理・運営を行うことを信託の目的とすること及び信託の受託者の選定に当たりコンペ方式によることを決定し,甲駅周辺土地区画整理事業用地・土地信託事業計画提案競技審査委員会(以下「本件審査委員会」という。)を組織した。 (イ) 原告は,平成2年7月,「甲駅周辺土地区画整理事業用地土地信託事業計画提案競技募集要項」(甲1。以下「本件募集要項」という。)を公表し,甲駅周辺土地区画整理事業用地土地信託事業計画提案競技(以下「本件提案競技」という。)に対する提案を募集した。 本件募集要項では,提案競技の趣旨として,「甲駅前の土地を対象として,都心の形成・地域の振興発展に資する開発を目指して,資産の有効活用を図るために実施するものであ」ることが示され,「体育健康の増進と文化向上等を目的とする地域のシンボル的なものとなる開発」等5つの計画目標及び「信託期間中に事業に伴う借入金を完済すること」等の計画条件が設定され,事業の実施方法として,「最優秀提案の提案者には,提案競技の提案に基づき対象地を信託する。最優秀提案の提案者は,提案競技の提 び「信託期間中に事業に伴う借入金を完済すること」等の計画条件が設定され,事業の実施方法として,「最優秀提案の提案者には,提案競技の提案に基づき対象地を信託する。最優秀提案の提案者は,提案競技の提案に基づき信託土地の開発必要施設の建設および事業経営・管理を行わなければならない」と規定され,仮契約の締結について,原告は,「本提案競技終了後,最優秀提案の提案者を受託予定者と定めて,提案競技の提案に基づき,信託の基本事項について協議を行い,次の事項について平成3年7月をめどに仮契約を締結する。」と規定されていた。 (ウ) 本件募集要項は平成2年7月に配布され,同年11月に応募書類の受付を行ったところ,本件提案競技には,被告を含め5件の応募登録があった。 被告は,同年8月3日,「募集要項の内容を了承したうえ(略)申し込みます」と記載された登録申込書(甲30)を提出して,本件提案競技に参加を申込み,同年11月ころ,原告に対し,事業計画概要説明書(甲2。以下「本件概要説明書」という。),「施設計画書(設計図)」(甲33。以下「本件施設計画書」という。)及び「資金計画書・収支計画書・管理運営計画書」(甲34。以下,本件概要説明書及び本件施設計画書と併せて「本件概要説明書等」という。)を提出した。 (エ) 本件審査委員会は,建築計画,都市計画,建築意匠等の研究者らを委員として組織され,平成2年7月9日から平成3年3月11日まで,5回にわたり審査委員会を開催して本件提案競技に対する応募登録の審査を行ったが,審査においては,必要に応じて,都市計画・建築計画などの物的計画面及び収支計画・管理運営などの経営計画面の両面について,詳細な調査,検討を行った比較資料を作成し,また,ヒアリングにより提案者の意図を正確に把握した上で慎重に審議 都市計画・建築計画などの物的計画面及び収支計画・管理運営などの経営計画面の両面について,詳細な調査,検討を行った比較資料を作成し,また,ヒアリングにより提案者の意図を正確に把握した上で慎重に審議を行った。その結果,被告による応募登録第1号が最優秀提案に選ばれた。 (乙70,71の1~7)ウ本件事業計画の提出被告は,平成3年10月,「甲駅周辺土地区画整理事業用地・土地信託事業計画案事業計画書」(甲3。以下「本件事業計画」という。)を原告に提出した。本件事業計画の内容は,概ね,次のようなものであった。 (ア) 施設概要等a 本件土地上に信託財産として,賃貸することを目的とした本件建物を建設する。 b 工期平成4年7月1日から平成6年7月31日まで(延べ25か月)c 構造・規模地下2階,地上21階建,法定延床面積3万9847.12㎡d テナント構成オフィス(7~19階),飲食店(1~3,20階),フィットネスクラブ(4階),楽器,住宅設備等のショールーム(1,2階),コンサートホール(1階)等(甲3・8,9頁)(イ) 信託期間中の収支見積りa 収入の前提条件(賃料)一般オフィス以外の施設については建築工事竣工時までに全てのテナント確定を行うので初年度から100%の稼働率としている。 一般オフィスについては,若干の空室ロスを見込んだ98%の稼働率としている。 b 信託配当,市税収入の概要年平均信託配当 5億3088万2000円年平均市税収入を含む原告の収入 8億7512万7000円c 信託期間中(平成6年から平成33年までの28年間)の収支見積り累計943億8667万7000円の賃料等の収入により借入金を全額返済し,かつ,原告に対し,162億3178万円の信託配当を交付 信託期間中(平成6年から平成33年までの28年間)の収支見積り累計943億8667万7000円の賃料等の収入により借入金を全額返済し,かつ,原告に対し,162億3178万円の信託配当を交付する。 (甲3・12,14,17~22頁)(ウ) 資金の使途及び借入金の調達方法a 本件信託事業の本件建物竣工までの初期事業費204億6301万1000円b 初期事業費の調達被告からの借入金(長期プライムレート(平成2年11月1日現在8.0%)マイナス0.3%(変動)) 179億8729万9000円本件建物入居テナントからの敷金 23億2355万円本件建物入居テナントからの保証金 1億5216万3000円c 本件建物竣工後の資金調達被告からの借入金(長期プライムレート(平成2年11月1日現在8.0%)マイナス0.3%(変動)) 154億8729万9000円被告からの借入金(長期プライムレート(平成2年11月1日現在7.8%)マイナス0.5%(変動)) 25億円被告からの追加借入金(短期プライムレート(変動)) 2億0862万2000円d 本件建物竣工後,各テナントから収受する敷金(無利子)及び保証金(無利子)を全額借入金の返済に充当する。 (甲3・11~13頁)(エ) 事業工程表平成3年4月から同年5月までキーテナント誘致期間同年6月から同年11月までキーテナント調整期間平成4年7月着工(甲3・25頁)エ本件信託契約の締結原告は,平成3年7月29日,被告との間で,原告を委託者兼受益者,被告を受託者,本件土地を信託財産とする土地信託仮契約を締結し,同年11月1日,要旨以下の内容の本件信託契約を締結した(甲4)。原告は,同日付で,本件土地について, との間で,原告を委託者兼受益者,被告を受託者,本件土地を信託財産とする土地信託仮契約を締結し,同年11月1日,要旨以下の内容の本件信託契約を締結した(甲4)。原告は,同日付で,本件土地について,信託を登記原因として被告に対し,所有権移転及び信託の登記手続を行った。 (甲4)(ア) 信託の目的(2条)被告は,本件土地の上に本件建物を信託財産として建設し,これを賃貸することを目的として,本件信託不動産を管理運用するものとする。 (イ) 信託事業の目標(3条)被告は,被告の作成した本件事業計画に基づき,本件土地を有効に活用するとともに,本件土地を含む地域の振興,発展に資するための核として開発するものとする。 (ウ) 信託期間(4条)平成3年11月1日から平成33年10月31日までの30年間(エ) 本件建物の設計・監理及び施工(7条1,2,5項)a 被告は,本件建物の設計・監理を建築士事務所等に請け負わせることができる。(1項)b 被告は,本件建物の建設等を建設業者に請け負わせることができる。 (2項)c 被告は,本件建物の基本設計,実施設計の内容及び設計・監理契約,建設工事等請負契約に関する請負代金の額,支払方法,工期その他主な事項について,事前に原告と協議しなければならない。 (5項)(オ) 信託不動産の運用(13条1項1~3号) 被告は,本件信託不動産の賃貸にあたっては,次により行うものとする。 a 賃貸料その他の賃貸条件の設定にあたっては,近傍類似の賃貸建物の賃貸条件を参考とし,適正な賃貸条件の設定に努めなければならない。この場合,あらかじめ原告に賃貸条件を通知する。(1号)b 本件信託不動産の全部又は一部を適正な方法により,募集,選定した相手方に賃貸する。この場合, 正な賃貸条件の設定に努めなければならない。この場合,あらかじめ原告に賃貸条件を通知する。(1号)b 本件信託不動産の全部又は一部を適正な方法により,募集,選定した相手方に賃貸する。この場合,公有地の土地信託の事業目的に留意して選定するものとする。(2号)c 賃借人の募集,選定方法についてはあらかじめ原告に通知し,その選定結果についても速やかに原告に通知する。(3号)(カ) 苦情処理等(14条)被告は,本件信託事業の遂行にあたって,本件信託不動産の賃借人及び地域住民等からの苦情の申し出に対し,窓口を設置する等苦情相談体制の整備を行い,誠意をもって迅速かつ適切に対応,処理するものとする。 (キ) 善管注意義務(15条)被告は,本件建物の建設工事及び本件信託不動産の管理,運用その他信託事務について,善良なる管理者の注意をもって処理しなければならない。 (ク) 信託の元本(17条1~6号)この契約においては,次に掲げるものを信託の元本とする。 a 信託不動産b 信託不動産の賃貸に伴い受け入れた敷金等c 第27条の借入金d 信託不動産の代償として取得した財産 e 第27条の借入金の債務及び信託不動産の賃貸に係る敷金等の返還債務f その他前各号に準ずる資産及び債務(ケ) 信託の収益(18条1号)この契約においては,次に掲げるものを信託の収益とする。 信託不動産の賃貸から生ずる賃貸料(コ) 受益権の内容(19条)原告が受益者として有する受益権の内容は,第17条の信託の元本及び第18条の信託の収益その他この契約による信託の利益の一切を享受する権利とする。 (サ) 諸費用の負担(22条1項)被告は,信託財産に関する公租公課及び登記費用,設計・監理費用, 信託の元本及び第18条の信託の収益その他この契約による信託の利益の一切を享受する権利とする。 (サ) 諸費用の負担(22条1項)被告は,信託財産に関する公租公課及び登記費用,設計・監理費用,各種調査費用,建設工事等請負代金,電波障害対策費,借入金・敷金等の返済金及び利息,広告宣伝費用,信託不動産の修繕・保存・改良の費用,損害保険料その他信託事務の処理に必要な費用を信託財産から支弁する。 (シ) 諸費用の支払不足の措置(23条)被告は,信託財産に属する金銭が上記(サ)の諸費用等の支払に不足する場合においては,あらかじめその処理方法について原告と協議しなければならない。 (ス) 必要資金の借入れ及び担保提供(27条1項)被告は,本件建物の建設等その他信託の事務処理に必要な資金を,信託財産の負担において,金205億円を限度として借り入れることができる。この場合,被告を受託者とする他の信託財産からの借入れを含むものとする。 (セ) 報告事項及び報告期日(34条1,2項)a 被告は,第32条の信託の収支計算並びに信託財産の現況及び運営状況について,計算期日(第31条により毎年3月末日)の翌日から50日以内に原告に報告しなければならない。 b 被告は,計算期日までに翌計算期以降の事業計画を原告に報告しなければならない。 (ソ) 信託財産の引渡し(41条2項4号)被告は,信託終了時に敷金等の返還債務,借入金債務,その他の債務(信託終了時に支払を要する費用を含む。)が残存する場合には,この処理方法について原告と協議の上,これを処理する。 (タ) 損害賠償(45条1項)原告は,被告がこの契約に定める義務を履行しないため若しくは信託契約に反する行為を行ったため損害を受けたとき,又は管理の失当により 告と協議の上,これを処理する。 (タ) 損害賠償(45条1項)原告は,被告がこの契約に定める義務を履行しないため若しくは信託契約に反する行為を行ったため損害を受けたとき,又は管理の失当により信託財産に損害を生じさせたときは,その損害の賠償を被告に請求することができる。 (3) 本件信託事業の実施ア本件信託事業の開始被告は,本件建物を建設するため,平成4年4月23日,E・F・G建設共同企業体との間で請負契約を締結し,同年6月19日に起工式を行い,平成5年2月20日に高層棟鉄骨建方を開始し,本件建物は平成6年7月29日に竣工した。 本件建物は,平成6年9月6日,Hという名称で,オフィス施設,飲食施設などから成る複合機能ビルとして開業した。 (甲7の1)イ本件信託事業の状況(ア) テナントの入居率本件建物のテナントの入居率は,平成6年度は,オフィス施設は66. 68%,飲食施設は42.47%,ショールーム施設は63.05%,フィットネスクラブ施設は0%であり,平成7年度は,オフィス施設は74.01%,飲食施設は42.47%,ショールーム施設は71. 36%,フィットネスクラブ施設は100%であった。平成8年度は,オフィス施設は66.84%,飲食施設は42.47%,ショールーム施設は71.36%,フィットネスクラブ施設は100%であった。 (甲8,10)(イ) フィットネスクラブの振動問題a 被告は,平成8年3月1日,I株式会社(以下「I」という。)との間で,本件建物のフィットネスクラブ施設の賃貸借契約を締結し(乙73),同日,Iは,本件建物の4,5階においてフィットネスクラブを開業した。 被告は,同月,平成6年10月に本件建物の6階に入居したJ株式会社(以下「J」という。)が, 借契約を締結し(乙73),同日,Iは,本件建物の4,5階においてフィットネスクラブを開業した。 被告は,同月,平成6年10月に本件建物の6階に入居したJ株式会社(以下「J」という。)が,フィットネスクラブから騒音及び振動が発生している旨の苦情を述べているとの連絡を受けた(以下,この苦情を発端とする本件建物の振動問題を「本件第一次振動問題」という。)。 (甲7の1,8,36の2,乙73,89)b 被告は,平成14年2月20日,I,K株式会社(以下「K」という。)との間で,賃借人地位承継契約を締結し(甲38),Kは,同年3月31日,Iから本件建物のフィットネスクラブ施設の賃借人の地位を承継した。Kは,同年5月3日,同施設において営業を開始した。 被告は,平成16年11月には,同年10月に本件建物の6,7階に入居した株式会社L(以下「L」という。)から,平成17年5月には,平成15年10月に本件建物の8ないし11階に入居した株式会社M(以下「M」という。)から,それぞれ振動に関する苦情を受けた(以下,これらの苦情を発端とする振動問題を「本件第二次振動問題」という。)(甲13の2,16,38~40,乙55の1・2)(ウ) 収支状況本件信託事業の収支は,平成6年度ないし平成8年度は赤字であったが,平成9年度から毎年単年度黒字を計上するようになった。 被告は,平成7年1月,原告に対し,本件信託事業終了時に約92億円の債務が残存するおそれがあることを報告した。 平成18年1月25日に原告によって設置された土地信託事業検討会議は,平成19年4月,本件信託事業終了時には約92億円の負債が残存する見込みであることを報告し,本件信託事業については,被告において時期を失することなく適切な方法で,できるだけ高い価格で 検討会議は,平成19年4月,本件信託事業終了時には約92億円の負債が残存する見込みであることを報告し,本件信託事業については,被告において時期を失することなく適切な方法で,できるだけ高い価格で売却することが望ましい旨の抜本的施策の方向性を示した。 (甲5・29頁,18・11,12頁)(4) 本件信託事業の終了ア本件信託契約の変更原告は,被告との間で,本件信託契約を賃貸型から処分型へと変更することについて協議し,平成19年7月25日付で,本件信託契約の変更契約を締結した。(甲20)イ本件信託不動産の売却被告は,平成20年3月24日,N投資法人(以下「N」という。)を売却先候補者に選定し,Nとの間で,平成20年3月28日付けで本件信託不動産の売買契約を締結し,同年4月25日,代金195億8980万円(本件信託不動産192億5100万円,建物消費税3億3880万円)で売却して本件信託不動産を引き渡し,本件信託事業は終了した。 (甲23の1・2)ウ決算の不承認及び損害賠償請求本件信託事業は平成20年12月15日に終了し,被告は,同月16日,原告に対し,信託財産状況報告書及び決算報告書を提出した。被告は,原告に対し,残余財産の支払を了した。 これに対し,原告は,平成21年2月25日,被告には本件信託事業の処理に際し善管注意義務違反の事実が存し,この善管注意義務違反により信託財産が被った損害については本件信託契約45条に基づき被告から補填されるべきものであるにもかかわらず,信託財産状況報告書にはかかる補填又は損害賠償金の記載がないため上記信託財産状況報告書の内容を承認できない旨被告に対して通知した。 原告は,同年8月11日,被告の上記善管注意義務違反による損害を9億9870万477 かる補填又は損害賠償金の記載がないため上記信託財産状況報告書の内容を承認できない旨被告に対して通知した。 原告は,同年8月11日,被告の上記善管注意義務違反による損害を9億9870万4770円と査定し,被告に対し,同額及びこれに対する平成20年12月16日から支払済みまでの遅延損害金の賠償を求めたが,被告はこれを拒否した。 (甲23の1・2,25~27)(5) 本件信託事業の収支概況本件信託財産における平成19年度末日現在の負債残高は約149億円であり,本件信託不動産の売却により,原告は平成20年相続税路線価により算定した概算土地価格約31億円の本件土地を失ったものの,約41億円の売却益を得た。 本件信託事業において,原告に信託配当がなされたことは一度もなかった。 被告は,本件信託事業にかかる信託報酬として,6億0368万3000円を取得した。 3 争点(1) 本件建物の振動問題に係る被告の債務不履行の有無及び振動問題を原因とする損害(第1損害,第2損害)の発生の有無(2) 本件建物における初期テナントリーシングに係る被告の債務不履行の有無及び得べかりし賃料及び共益費の損害(第3損害)の発生の有無(3) 第1損害ないし第3損害に伴う不要な借入金に係る金利相当分の損害(損害ⅠないしⅢ)の発生の有無(4) 第3損害に係る損害賠償請求権の消滅時効の成否第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1) 本件建物の振動問題に係る被告の債務不履行の有無及び振動問題を原因とする損害(第1損害,第2損害)の発生の有無(原告の主張)(1) 被告が一般的に負う義務被告は,本件信託契約上,次のような本件作成義務及び本件遂行義務を負っていた。 ア本件作成義務被告は,(ア)本件提案競技に参加するに (原告の主張)(1) 被告が一般的に負う義務被告は,本件信託契約上,次のような本件作成義務及び本件遂行義務を負っていた。 ア本件作成義務被告は,(ア)本件提案競技に参加するに際しては,後日追加費用を負担することなく当該事業計画等に沿った信託事業の遂行を実現するように,十分に内容を吟味した上で事業計画概要説明書,資金計画書,収支計画書,管理運営計画書等を作成する義務を負い,(イ)本件信託契約を締結するに際しては,後日追加費用を負担することなく当該事業計画等に沿った信託事業の遂行を実現するように,十分に内容を吟味した上で土地信託事業計画等を作成する義務を負い,(ウ)本件信託事業を遂行するに際しては,やむなく土地信託事業計画等を変更する必要が生じた場合には,できる限り変更の範囲を限定し,しかも変更後に追加費用を負担することなく変更後の事業計画に沿った信託事業の遂行を実現するように,十分に内容を吟味した上で変更すべき義務を負う(本件提案競技を実施して本件信託契約締結に至る経緯,本件信託契約3条,信義則)。 本件作成義務は本件信託契約締結前の義務であるが,登録申込書の提出等本件信託契約締結に至る経緯を考慮すれば,原告被告間には契約締結前から法的関係が生じているといえる。 イ本件遂行義務被告は,信義則上,(ア)本件信託契約締結後は,土地信託事業計画等に沿った状況を実現できるように信託事業を遂行すべき義務を負い,(イ)本件信託事業遂行中に,土地信託事業計画等が実現困難な状況に至ったときには,当該状況,原因等,対処可能な対策を検討すべき義務を負う(本件提案競技を実施して本件信託契約締結に至る経緯,本件信託契約3条)。 ウ原告と被告との間には,事業執行型信託における情報力,交渉力の点で格差があるから,被告は 能な対策を検討すべき義務を負う(本件提案競技を実施して本件信託契約締結に至る経緯,本件信託契約3条)。 ウ原告と被告との間には,事業執行型信託における情報力,交渉力の点で格差があるから,被告は,上記各義務を履行するに当たって,管理者の注意の程度として,事業執行型信託の専門家として通常要求される程度の注意を必要とする(旧信託法(大正11年法律第62号。以下「旧信託法」という。)20条,本件信託契約15条及び金融機関の信託業務の兼営等に関する法律2条によって準用される信託業法(平成16年法律第154号)28条2項)。被告は,原告が都市計画,市街地開発事業を展開しており,不動産の開発,分譲,賃貸等に関しては専門家である旨主張し,確かに,原告は宅地開発,住宅地の環境整備,既存の市街地における商業,業務地の基盤整備等について一定の実績を有するが,本件で問題となる専門性は民間活力を活用しての土地の有効利用との観点に基づいた事業執行型信託についての専門性であって,これと原告の専門性は同列には論じられない。 (2) 第1損害,第2損害に関する被告の義務違反ア被告は,本件作成義務として,Ⅰ本件提案競技に応募してから最優秀案として選ばれる平成3年3月までの間及びⅡ平成3年10月に本件事業計画を原告に提出する際のそれぞれの時点において,設計事務所又は建設業者に対し,フィットネスクラブ導入を計画していることを説明して,日本建築学会の「建築物の振動に関する居住性能評価指針・同解説」(乙52。 同年4月出版。以下「本件指針」という。)やその出版以前に学会内部で検討されていた基準以上の振動障害が生じない建物を設計施工するように指示し,また,本件建物が上記のような振動障害が生じない建物であるかどうかを質問し,回答を得ておく義務を負っていた(以下 学会内部で検討されていた基準以上の振動障害が生じない建物を設計施工するように指示し,また,本件建物が上記のような振動障害が生じない建物であるかどうかを質問し,回答を得ておく義務を負っていた(以下,上記Ⅰの時点における義務を「本件作成義務Ⅰ」といい,上記Ⅱの時点における義務を「本件作成義務Ⅱ」という。)。しかるに被告はこれらの義務に違反し,本件指針における基準以上の振動障害が生じる鉄骨大スパン構造(鉄骨造の建築物において,梁やスラブ,柱の強度を強くして,長い梁を造り,柱と柱の距離を長くすることにより,空間等の有効活用を目的とした構造。)の建物を提案した。 イ被告は,本件遂行義務として,Ⅰ平成6年7月の本件建物竣工後テナント配置時点において,本件事業計画では上下階に影響の少ない高層棟と低層棟の接続階となる4階に配置することを予定していたフィットネスクラブの配置を4,5階の鉄骨大スパン構造部に変更し,かつ,大梁間を繋ぐ小梁を削除しているところ,構造評定の審議の中で,鉄骨大スパン構造は一般事務所利用としても振動上問題はないかという質疑がなされており,被告は鉄骨大スパン構造の振動上の不利を認識しているにもかかわらず,フィットネスクラブを鉄骨大スパン構造上に配置するのであれば,事前に,設計事務所又は建設業者に対し,本件指針における基準以上の振動障害が生じないかどうか質問し,回答を得ておくべき義務(以下「本件遂行義務Ⅰ」という。),Ⅱ平成8年3月の第1回目の振動に関するクレーム(本件第一次振動問題)を通じて,フィットネスクラブからの騒音・振動に係るクレームが申し立てられるリスクを認識し又は認識し得たのであるから,Iの退去後は5階にはフィットネスクラブを入居させないか,仮に入居させるとしても後継テナントに振動問題が生じた場合には直 るクレームが申し立てられるリスクを認識し又は認識し得たのであるから,Iの退去後は5階にはフィットネスクラブを入居させないか,仮に入居させるとしても後継テナントに振動問題が生じた場合には直ちにプログラムの中止を求めることができる等の対応策を賃貸借契約の中に盛り込むべき義務(以下「本件遂行義務Ⅱ」という。),Ⅲ本件第一次振動問題を通じて,フィットネスクラブからの振動に対するクレームが申し立てられるリスクを認識し又は認識し得たのであるから,建設業者に対し,振動対策工事を実施させる際,当該振動対策を本件指針における基準以上の振動障害を生じさせない内容のものとするように指示し,又は当該振動対策がそのような内容になっているかを質問し,回答を得ておくべき義務(以下「本件遂行義務Ⅲ」という。),Ⅳ本件第一次振動問題を通じて,フィットネスクラブからの振動に対するクレームが申し立てられるリスクを認識し又は認識し得たのであるから,建設業者が平成8年に実施した振動対策が本件指針における基準以上の振動障害を生じさせるものか否かを把握した上で,Iの退去後は5階にはフィットネスクラブを入居させないか,仮に入居させるとしても後継テナントに振動問題が生じた場合には直ちにプログラムの中止を求めることができる等の対応策を賃貸借契約の中に盛り込むべき義務(以下「本件遂行義務Ⅳ」という。)を負っていた。しかるに被告はこれらの義務に違反し,建設業者に質問することなくそのまま振動対策を実施させ,漫然とIの地位をKに承継する形式でフィットネスクラブを本件建物の5階に入居させた。 (3) 損害上記(2)の被告の義務違反により,原告は振動対策調査,防振対策工事費の負担を強いられ,別紙「防振対策工事及び調査経費負担の損失」のとおり,5124万円の損害を受け(第1損害) 。 (3) 損害上記(2)の被告の義務違反により,原告は振動対策調査,防振対策工事費の負担を強いられ,別紙「防振対策工事及び調査経費負担の損失」のとおり,5124万円の損害を受け(第1損害),また,フィットネスクラブの上部の階に入居するテナントとの間で,振動を理由に賃料の減額を余儀なくされ,原告は別紙「賃料の損失」のとおり,3572万2650円の損害を受けた(第2損害)。 (被告の主張)(1) 被告が一般的に負う義務について被告は,本件信託契約上,原告が主張するような義務はいずれも負わない。 ア本件作成義務について原告は,計画どおりの信託事業が遂行できるような内容の事業計画等を作成すべき義務がある旨主張する。しかし,本件信託契約締結以前のことは契約内容とは関係がなく,本件信託契約には契約以前のことを債務の内容とする旨の特約も存在しない以上,本件信託契約上の債務とはなり得ない。 イ本件遂行義務について原告は,被告に本件事業計画を実現すべき義務がある旨主張する。しかし,信託契約における事業計画は信託契約締結時点の景気や経済予測等一定の前提に基づいた予測であって,前提事実が異なれば,事業計画どおりに信託事務を遂行することができないことは明らかであるから,受託者は事業計画を実現すべく努力することを引き受けるのみであって,事業計画そのものの実現を債務として引き受けることはあり得ない。本件信託契約において被告が負うのは善管注意義務であって,一定の結果の実現を目的とする義務ではない。本件信託契約においても,被告が事業計画を実現する義務を負うことを定める特約は存在せず,むしろ,本件信託契約3条が「信託事業の目標」の見出しのもとに「信託土地を含む地域の振興,発展に資するために開発する」として本件信託事業 告が事業計画を実現する義務を負うことを定める特約は存在せず,むしろ,本件信託契約3条が「信託事業の目標」の見出しのもとに「信託土地を含む地域の振興,発展に資するために開発する」として本件信託事業の目標を定めていること,本件信託契約には他にも被告が上記義務を負わないことを前提とした努力条項,原告による監視監督条項等が多数存在していることからすれば,被告が本件事業計画を実現すべき義務を負わないことは明らかである。本件で,被告は原告に都度協議願いを提出し,原告の了承を得て本件信託事業を遂行してきたのであり,被告に義務違反はない。 ウ原告は,本件信託について被告は専門家であって原告は素人であり理解能力が不足していたかのように主張するが,原告は,幅広く都市計画,市街地開発事業を展開し,不動産の開発,分譲,賃貸等に関しては専門家であるところ,本件でも,原告の担当部局である建設局が本件事業計画を見た上で,建設等各界の専門家からなる審査委員会が審査検討して本件信託契約の締結に至ったものであって,被告に比して原告は素人で理解能力が不足していたということはないから,原告と被告との間の格差が,被告が上記義務を負う根拠となるものではない。 (2) 第1損害,第2損害に関する被告の義務違反についてア原告は,被告は上記原告の主張(2)のような義務を負っていたのにこれに違反した旨主張する。しかし,被告は一流の設計事務所又は建設業者に業務発注しており,原告の主張する振動障害などの問題が生じないことは当然のこととして発注している。後記イのとおり,本件建物に振動障害が生じることは同設計事務所や建設業者においても予見不可能であったところ,同設計事務所又は建設業者において予見不可能なことまで被告において指示し,質問して回答を得ておくべき義務は存在しな に振動障害が生じることは同設計事務所や建設業者においても予見不可能であったところ,同設計事務所又は建設業者において予見不可能なことまで被告において指示し,質問して回答を得ておくべき義務は存在しない。 被告は,設計事務所及び建設業者と密接に交渉を重ね,詳細な説明を受けた上で,発注し,請負業務を遂行させており,振動問題のみならず設計・施工上のあらゆる問題について検討・協議を行いながら業務を遂行してきたものであって,被告に義務違反はない。 イ本件建物に振動が発生したことについて被告が何らかの責任を負うのは同振動が受忍限度を超えた場合に限られるところ,平成8年に生じた本件第一次振動問題は,株式会社E(以下「E」という。)による無償の防振対策工事によって,平成9年9月には業務上ほぼ支障のない状態となったことが確認されて解決され,その後振動は受忍限度の範囲に収まっていたし,平成16年以降に生じた本件第二次振動問題については,振動が受忍限度を超えるものであったかどうかは判明していない。本件建物の建築評定において,Rの委員らはフィットネスクラブの設置によって振動問題が発生する可能性について意識していなかったこと,フィットネスゾーンの内装設備工事を担当し,防振対策工事を実施したEも振動問題の発生を予見できなかった旨述べていたこと,振動に関するクレームを申し立てていたテナントが,振動対策工事実施後,当初契約上の改定基準額を上回る条件での賃料改定に応じたこと,Eによる防振対策工事実施後約8年の間,他のテナントから振動クレームはなかったこと,平成14年5月にKが開業してから再び振動クレームが申し立てられた平成16年11月までの間に,Kの会員数は約1200人から約1600人まで急激に増加したこと,平成16年以降の振動問題の原因は,調査の結果, 年5月にKが開業してから再び振動クレームが申し立てられた平成16年11月までの間に,Kの会員数は約1200人から約1600人まで急激に増加したこと,平成16年以降の振動問題の原因は,調査の結果,フィットネスの運動によって生じる水平振動により鉛直振動が誘発されたもので,会員数の増加や習熟度の向上等が影響していることが判明したこと等振動問題の経過に照らせば,平成8年7月に実施した防振対策工事は当時の状況の振動対策としては十分なものであり,仮に受忍限度を超えた振動が生じていたとしても,そのような振動問題が発生することは,Iの5階への入居が決定した平成7年の時点においても,IからKへの地位承継が決定した平成14年の時点においても,被告はもちろん,被告が発注した設計事務所又は建設業者においても,予見することは不可能であった。 ウ原告は,平成17年1月には既に本件信託不動産の売却を検討していたため,その売却時にはできるだけ高く売却できるように被告に要請していた。そのため,被告は,本件信託不動産の評価を高めておくため,営業政策的見地から,本件信託事業の運営でトラブルが起きているといった評判ができる限り生じないように配慮して穏便に振動問題を処理する必要に迫られ,原告とも協議しながら事態の収拾をすることとし,本件の振動の調査,対策工事,Kとのプログラム変更等についての粘り強い交渉及び賃料の減額等の対策を原告の了解の下で実施してきた。その結果,平成16年以降の振動問題は解消し,本件信託不動産は高値で売却することができたから,被告に義務違反はない。 (3) 損害について原告の主張は争う。上記(2)のとおり,第1損害として主張する費用はいずれも被告が原告の同意を得て実施した調査及び工事の費用であり,営業政策的見地からの振動問題の処 。 (3) 損害について原告の主張は争う。上記(2)のとおり,第1損害として主張する費用はいずれも被告が原告の同意を得て実施した調査及び工事の費用であり,営業政策的見地からの振動問題の処理のための費用であるから,その支出によって原告に損害は生じていない。第2損害についても,原告の公共的立場と本件建物の信用性からの営業的観点等総合的に判断し,原告と協議を続け,原告の了解の上で賃料減額をしたものである。 2 争点(2) 本件建物における初期テナントリーシングに係る被告の債務不履行の有無及び得べかりし賃料及び共益費の損害(第3損害)の発生の有無(原告の主張)(1) 第3損害に関する被告の義務違反ア被告は,本件遂行義務として,Ⅴ本件事業計画において,本件建物竣工時点で,一般オフィス以外の施設については100%の,一般オフィスについては98%の入居率を実現すべく表示したのであるから,竣工時には,一般オフィス以外については100%の,一般オフィスについては被告が設定した98%のあるべき入居率を実現すべき義務(以下「本件遂行義務Ⅴ」という。),Ⅵ本件事業計画において,本件建物竣工時点で,一般オフィス以外の施設については100%の,一般オフィスについては98%の入居率を実現すべく表示したのであるから,リーシング活動を行うに際しては,竣工時には,一般オフィス以外については100%の,一般オフィスについては被告が設定した98%のあるべき入居率を実現すべき義務(以下「本件遂行義務Ⅵ」という。),Ⅶ平成2年当時,大阪地区における受託済みの不動産信託案件として計57案件を扱う不動産管理信託の専門家であり,そこで培った事業実績を有していたのであるから,本件信託事業におけるテナントリーシングに関し,一般オフィス部門については, 動産信託案件として計57案件を扱う不動産管理信託の専門家であり,そこで培った事業実績を有していたのであるから,本件信託事業におけるテナントリーシングに関し,一般オフィス部門については,全国主要都市のオフィスビル・倉庫・店舗等の仲介及び企画コンサルタントを事業となすO株式会社が公表する甲地区年次データにおける平均入居率(平成6年度は78.22%,平成7年度は91.91%,平成8年度は94.27%であった。 ただし,平成6年度は新築ビルの平均入居率,平成7,8年度は既存ビルの平均入居率によっている。甲22)程度の入居率(以下「本件入居率」という。)を実現すべき義務(以下「本件遂行義務Ⅶ」という。)を負っていたにもかかわらず,これらの義務に違反し,平成6年度ないし平成8年度においてあるべき入居率及び本件入居率を実現しなかった(本件遂行義務Ⅴは結果の実現を目的とする結果債務であり,本件遂行義務Ⅵ及びⅦは結果を実現するために一定の注意義務を尽くすことを内容とする手段債務である)。 イ本件遂行義務Ⅵ及びⅦについて,具体的には,被告は,(ア)平成3年10月に本件信託契約を締結し,本件事業計画を提出する時点では,主要なフロアについては具体的なテナントとの入居契約(予約)を締結しておくべき義務を,(イ)本件建物竣工1年前までの時点では,本件建物が1フロアの大スパン構造で小規模テナント向きの小割りのできない構造である以上,フロアの相当部分については入居の確約を得ておくべき義務を,(ウ)本件建物の竣工時及び開業時までにはモデルルーム等を用いた内覧会を多数実施してリーシング活動を行うべき義務を,それぞれ負っていたが,被告はこれらの義務に違反し,機を逸した不十分なリーシング活動しか行わなかった。 (2) 損害上記(1)の被告の義務 覧会を多数実施してリーシング活動を行うべき義務を,それぞれ負っていたが,被告はこれらの義務に違反し,機を逸した不十分なリーシング活動しか行わなかった。 (2) 損害上記(1)の被告の義務違反により,本件建物における平成6年度から平成8年度のテナント入居率が低率にとどまり,原告は,得べかりし賃料及び共益費の損害として,別紙「第3損害計算書」のとおり,7億2469万2939円の損害を受けた。 (被告の主張)(1) 第3損害に関する被告の義務違反についてア被告は,本件信託契約上,原告が主張するような義務はいずれも負わない。 原告は,被告が本件事業計画に記載された入居率を実現する義務を負う旨主張するが,前記1のとおり,計画に過ぎない本件事業計画が債務の内容となることなどあり得ない。 本件遂行義務Ⅶについても,月額賃料の設定を度外視して,本件信託契約締結時に表示すらされていなかった本件入居率を実現する義務を被告が負うことなどあり得ない。しかも,本件入居率自体,甲駅周辺地域の正確な平均入居率のデータではないから,これが被告の義務違反の具体的指標になるものでもない。 原告が前記(1)イにおいて具体的行為義務として主張するものは,いずれも結果を実現すべきことを主張するものであり,信託契約における善管注意義務としての具体的な行為義務とはいえない。 イ被告が実施してきたリーシング活動にもかかわらず当初事業計画どおりの入居契約ができなかったのは,本件事業計画を策定した平成3年以降,経済企画庁や日銀及び民間の有力シンクタンクでも予測できなかった急激な経済状況の悪化が進行したこと及び阪神淡路大震災等のためであって,被告の善管注意義務違反によるものではない。 むしろ,本件建物のテナントリーシングは平成6年に竣工した甲駅周 予測できなかった急激な経済状況の悪化が進行したこと及び阪神淡路大震災等のためであって,被告の善管注意義務違反によるものではない。 むしろ,本件建物のテナントリーシングは平成6年に竣工した甲駅周辺地域の他のビルに比べて入居率が高かったこと,平成9年以降の本件建物の入居率は,甲駅周辺地域のみならず大阪ビジネス地区のビルの平均入居率をも上回る入居率で推移してきており,特定の年度のみを取り上げて義務違反というのは相当でないこと,本件建物の収益力が評価されて原告は本件信託不動産の売却により約41億円の高額な売却益を得たことなどに照らせば,被告に義務違反はない。 (2) 損害について原告の主張は争う。 3 争点(3) 第1損害ないし第3損害に伴う不要な借入金に係る金利相当分の損害(損害ⅠないしⅢ)の発生の有無(原告の主張)本件信託契約17条,22条及び27条によれば,本件信託事業遂行に必要な金銭は,被告が本件信託財産の負担において借り入れており,この借入金が信託の元本を構成することとされ,しかも,当該借入金の返済金,利息も信託財産で負担することとなっている。第1損害ないし第3損害に伴って信託財産から外部に流出した金額又は外部からの帰属不足に相当する金額は,結果的に借入金によって賄われ,かかる借入金に対する元金及びこれに対する金利相当分は,本来,被告が信託財産に前記1(3),2(2)のような損害を与えなければ,信託財産として負担の必要がなかった金員である。したがって,被告の前記1(2),2(1)の各義務違反行為と被告の借入れに伴う金利相当額の損害との間には因果関係があり,これも被告の義務違反によって生じた損害である(なお,借入金の元本については,第1損害ないし第3損害として評価済みである。)。 前記1(2),2 伴う金利相当額の損害との間には因果関係があり,これも被告の義務違反によって生じた損害である(なお,借入金の元本については,第1損害ないし第3損害として評価済みである。)。 前記1(2),2(1)の被告の各義務違反により,原告は信託財産の負担において借入れ,その金利相当の負担を余儀なくされ(本件信託契約17条3号,22条1項,27条1項),借入金の金利相当額の損害として,第1損害,第2損害,第3損害のそれぞれに対応して,別紙「損害Ⅰないし損害Ⅲ計算書」のとおり,損害Ⅰとして164万7794円,損害Ⅱとして77万0338円,損害Ⅲとして1億8463万1049円の損害を受けた。 (被告の主張)原告の主張は争う。 なお,本件信託事業にかかる借入金のほとんどが長期借入金であるが,長期借入金の契約は約定弁済以外の弁済方法は認められていないから,各年度に発生した損害を翌年度4月1日時点で全額借入の返済に充当することができたことを前提とする原告の主張には根拠がない。また,短期借入金は,長期プライムレートではなく短期プライムレートの適用のもと返済をしているから,この点でも原告の主張には根拠がない。 4 争点(4) 第3損害に係る損害賠償請求権の消滅時効の成否(被告の主張)仮に第3損害に係る損害賠償請求権が認められる場合であっても,原告の主張する債務不履行の時期及び第3損害を原告が知った時期から10年を経過しても原告は権利行使をしなかったのであるから,権利を行使することができる時から商法所定の5年又は民法所定の10年の時効期間を経過しており,上記請求権は時効により消滅している。 (原告の主張)本件には旧信託法が適用されるところ,旧信託法には受任者の任務違反行為に基づく損失填補責任について消滅時効を定めた規定はなく, 経過しており,上記請求権は時効により消滅している。 (原告の主張)本件には旧信託法が適用されるところ,旧信託法には受任者の任務違反行為に基づく損失填補責任について消滅時効を定めた規定はなく,期間制限はないと解されてきたこと,原告が被告の義務違反及びこれによる損害を算定できるのは被告から最終計算書を受領し,その内容を検討して以降になることからすれば,本件の損害賠償請求権について消滅時効は問題にならない。 第4 当裁判所の判断 1 本件建物の振動問題に関する認定事実前記前提事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 被告は,本件概要説明書(甲2)において,本件建物の構造計画について「高層棟の基準階中央部分にスパン約26mの無柱空間を実現するとともに建物全体の剛性を確保する。大スパン部分の変形・振動性状についても留意している。」と説明して鉄骨大スパン構造を提案し,本件施設計画書(甲33)において,本件建物の4階にフィットネスクラブを設置する旨提案した。(甲2,33)(2) 被告は,株式会社P(以下「P」という。)に本件建物の設計を発注した。被告本店開発事業部事業推進室第一課の課長代理Q及び同室建築課の職員2名は,本件信託事業の専任担当者として,Pとの間の本件建物の設計施工に関する打合せに全て出席し,振動については当時の技術水準に従って検討していた。Qは,平成3年から平成8年まで本件信託事業の専任担当者であり,Q及び同室建築課の職員は,全員が一級建築士の資格を有していた。 被告は,平成3年6月,原告に対し,本件建物の大スパン構造部の主要梁(大梁)に直交する小梁を一部削除することを含めて建築工事費を圧縮することを検討している旨説明し,原告の了解を得た。 (乙104・2頁,107 3年6月,原告に対し,本件建物の大スパン構造部の主要梁(大梁)に直交する小梁を一部削除することを含めて建築工事費を圧縮することを検討している旨説明し,原告の了解を得た。 (乙104・2頁,107,証人Q3頁)(3) 被告は,平成4年1月10日,評定を受けることが適当であると認める旨の原告の行政指導を受けて,本件建物につき建設大臣の認定を受けるため,財団法人R(以下「R」という。)に対し,評定申込書(乙14)を提出した。 被告が高層建築物構造評定委員会(以下「評定委員会」という。)に提出したP作成の高層建築物構造評定委員会資料「(仮称)S新築工事」3階柱壁4階梁床伏図,4階柱壁5階梁床伏図(甲59)は,本件建物の大スパン構造部の主要梁(大梁)に直交する小梁が存在することを前提にした内容であった。同月から同年2月にかけて,Rにおいて評定委員会が開かれたが,同年1月20日の評定委員会において,委員の一人から,スラブが非常に大きいが,振動周期やたわみはどれくらいかとの質問がされたところ,被告は,大スパン梁部は振動数4.2Hz,振幅16μm(訂正 4.7Hz,13μm)程度で,本件指針に照らし振動障害等の問題は生じないと考えている旨回答するとともに,本件指針に基づき,振動障害の有無について,加力は2人歩行を仮定し,6kgの荷重を高さ5cmから自由落下させた場合の算定式も提示した。Rは,同年3月16日,本件建物は構造耐力上支障ないものと評定し,被告に対し,評定書及び評定報告書(乙53の2)を交付した。 建設大臣は,同年4月23日,被告に対し,本件建物に用いる特殊な建築材料及び構造方法については建築基準法第38条の規定に基づき,同法施行令第3章の規定によるものと同等以上の効力を有するものと認め,構造計算については同法施行令第81 対し,本件建物に用いる特殊な建築材料及び構造方法については建築基準法第38条の規定に基づき,同法施行令第3章の規定によるものと同等以上の効力を有するものと認め,構造計算については同法施行令第81条の2の規定に基づき,構造耐力上安全であることを確かめることができるものと認める旨の認定書(乙53の1)を交付した。 (甲59,乙14,52,53の1・2)(4) 被告は,平成4年5月,原告に対し,評定委員会に提出した図面の大スパン構造部の主要梁(大梁)に直交する小梁を一部削除した図面をもって建築確認を申請し,同年6月,建築基準法59条の2第1項の規定による許可通知書を受理し,建築確認通知書を受理した。 被告は,同年7月,上記のとおり小梁を一部削除した内容の甲駅周辺土地区画整理事業用地・土地信託事業「(仮称)S新築工事」(原契約図・構造図)(甲60)をもとに,設計監理者をP,施工者をE・F・G建設共同企業体として,本件建物の仮設工事に着手した。同月における甲駅周辺土地区画整理事業用地・土地信託事業「(仮称)S新築工事」(スポーツセンター設計図)(甲61)には,フィットネスクラブの配置は本件建物の4階であることが記載されていた。 (甲60,61,弁論の全趣旨)(5)ア被告は,フィットネスクラブの誘致において,誘致先企業から本件建物の4階のみでは狭いとの意見があったことから,平成5年9月22日,原告に対し,フィットネスクラブの配置を本件建物の4,5階にすることを報告した。(乙6,104・8頁)イ被告は,平成6年4月から,本件建物のオフィス内装工事,テナントC工事,外構工事を施工し,諸官庁検査受検を経て,同年7月29日,本件建物の竣工及び引渡しを行った。そして,本件建物は同年9月6日に開業した。同年7月31日におけ 件建物のオフィス内装工事,テナントC工事,外構工事を施工し,諸官庁検査受検を経て,同年7月29日,本件建物の竣工及び引渡しを行った。そして,本件建物は同年9月6日に開業した。同年7月31日における「H新築工事竣工図(建築)」(甲62)には,フィットネスクラブの配置が4,5階であることが記載されていた。(前記前提事実(3)ア,甲7の1,62)(6)ア被告は,平成7年9月6日,原告に対し,協議願(乙54の2)を提出し,本件建物のフィットネス施設の賃借人について,選定方法を随意契約方式,選定先をIとすること等に関し協議を申し入れ,原告は,同日,協議確認書(乙54の1)をもって,異議なしの回答を通知した。 (乙54の1・2)イ被告は,平成7年11月15日,原告に対し,協議願(乙11)を提出し,本件建物の4・5階フィットネスゾーンに関わる内装設備工事発注について,発注先をEとすること等に関し協議を申し入れ,原告は,同月17日,協議確認書(乙12)をもって,異議なしの回答を通知した。上記協議願の添付書類である内装工事平面図,断面図には,4階にロッカー室等,5階にスタジオ,トレーニングジム等を配置する旨が記載されていた。被告は,同月20日から平成8年2月20日まで,Eの施工によりフィットネスゾーンの内装設備工事を実施した。Eは,上記施工に係る設計について,Pに対して建築法等法関係についてのみ相談して助言を受けたが,5階のスタジオの振動が上階に影響することは想定していなかった。(甲36の3,乙11,12)ウ被告は,平成8年3月1日,Iとの間で,本件建物の4,5階の賃貸借契約を締結し(乙73),Iは,同日,フィットネスクラブを開業した。上記賃貸借契約には,「Iは,本賃貸借部分内の使用・運営に関し,施設利用者及び第三者等 1日,Iとの間で,本件建物の4,5階の賃貸借契約を締結し(乙73),Iは,同日,フィットネスクラブを開業した。上記賃貸借契約には,「Iは,本賃貸借部分内の使用・運営に関し,施設利用者及び第三者等から苦情の申出,損害賠償の請求等があったときは,すべてIの責任と費用負担により誠意をもって解決にあたり,A信託(被告。以下同じ。)に迷惑,損害を及ぼしてはならない。なお,万一A信託が損害を被った場合には,Iはこれを賠償しなければならない。」旨の条項(16条2項)があった。(前記前提事実(3)イ(イ)a,乙73)(7)ア T株式会社は,平成8年3月22日,被告に対し,本件建物の6階に入居したJから,同月5日に,フィットネスクラブからの騒音及び振動が発生している旨の苦情があった旨の連絡をした。Eは,同月29日,振動に関する実情調査を行い,同年4月12日,フィットネスクラブにおける騒音,振動を測定したところ,「シェイプアップ」等6つのプログラム実施中に6階又は7階中央部に揺れがあったこと及び特に6階中央部の振動は72dbであったことが判明した。Eは,被告と対応策について協議し,Pにも報告した上で,同年6月から同年7月まで,振動対策工事を無償で実施した(以下,この工事を「本件第一次振動対策工事」という。)。(前記前提事実(3)イ(イ)a,乙89,証人U3~4頁)イ Eは,平成8年8月1日,被告に対し,「HV 振動・騒音対策報告書」(乙89。以下「本件振動報告書」という。)を提出し,フィットネスクラブでエアロビクスを実施している時の本件建物の6階における振動レベルは,振動対策工事実施前と実施後とを比較すると,大梁においては66dBから約57dB(3回の平均値)に,スラブにおいては72dBから約57dB(3回の平均値)に,それぞれ おける振動レベルは,振動対策工事実施前と実施後とを比較すると,大梁においては66dBから約57dB(3回の平均値)に,スラブにおいては72dBから約57dB(3回の平均値)に,それぞれ改善されたことを示した上で,全く無感のレベルではないが,工場や道路振動などの最も厳しい規制値(60dB)はクリヤしているとし,また,今回のことは過去に例のないことであるとしつつ,振動に関しては起振階の上階に発生するという,言わば盲点をつかれた形で発生したもので,我々建築技術者としては予見し得なかったことを残念に思うとともに深く反省するところである旨の報告をした。(甲36の2,乙89)ウ Pは,平成8年8月7日,被告に対し,「HV 振動・騒音対策報告書について」と題する書面(甲36の3。以下「本件意見書」という。)を提出し,設計時からの経緯として,フィットネスクラブのスタジオ・ジムは,上下階に影響の少ない高層棟と低層棟の接続箇所である本件建物の4階において設計を行っていたが,当初の計画に基づいたテナント誘致が困難となったため,完成後改めて場所を変更してテナント誘致が進められた旨,テナントの内装設計については,Eから建築法等法関係についてのみ相談を受け,助言を行ったものである旨,本件第一次振動対策工事は構造面も振動対策面も妥当であり,同工事によって,対策後の効果が顕著に表れている旨の報告をした。(甲36の3)エ被告は,平成8年8月28日,原告に対し,通知書(甲36の1),本件振動報告書及び本件意見書を提出し,フィットネスクラブの振動に関する苦情があったこと,Eはフィットネスクラブが5階に計画された際,Pに対して防振等の設計仕様について問い合わせをしていなかったが,今回実施した対策工事は妥当なものであり,これにより振動が低減されたこと 苦情があったこと,Eはフィットネスクラブが5階に計画された際,Pに対して防振等の設計仕様について問い合わせをしていなかったが,今回実施した対策工事は妥当なものであり,これにより振動が低減されたこと,ただし,上記工事完了後も振動を体感する旨の申入れがあったことから引き続きEにおいて調査対応し,被告も引き続き騒音・振動問題の解決に向け注力していくことを報告した。(甲36の1)(8) 被告は,平成9年9月1日,Jから,振動が業務上ほぼ支障のない状態に至ったとの確認を受けたため,Jとの間で,平成8年11月1日から平成9年10月31日までの賃料・共益費は現行のまま据え置き,同年11月1日から平成10年10月31日までの賃料・共益費を,当初契約上の改定基準額を上回る条件(賃料については,3933円/㎡を上回る4129円/㎡)で増額改定する旨の変更契約(甲37)を締結し,その旨原告に通知した。上記変更契約において,被告は,この騒音・床振動が再発した場合はフィットネスクラブとの調整を被告において行うことを確認した。なお,Jは,平成15年12月12日ころ,本件建物から退去した。 被告は,上記変更契約締結後平成16年11月に振動について苦情(後記(10))を受けるまでの間,本件建物のテナントからフィットネスクラブによる振動に関する苦情を受けたことはなかった。(甲37,乙13,105・2~3頁,証人U2頁)(9)ア被告は,平成14年2月18日,原告に対し,協議願(乙55の2)を提出し,I及びKとの間で賃借人地位承継契約書を締結することについて協議を申し入れ,原告は,同月20日,協議確認書(乙55の1)をもって,異議なしの回答を通知した。被告は,同日,I及びKとの間で,同年3月31日限りKが賃借人の地位を引き継ぐ旨の賃借人地位承継契約書 議を申し入れ,原告は,同月20日,協議確認書(乙55の1)をもって,異議なしの回答を通知した。被告は,同日,I及びKとの間で,同年3月31日限りKが賃借人の地位を引き継ぐ旨の賃借人地位承継契約書(甲38)を締結し,Kは,同年5月3日からフィットネスクラブの営業を開始した。なお,同契約書には,Kは被告とIとの間において締結した賃貸借契約及び各変更契約並びに覚書等の全てを了承する旨の条項があったが,Kが開講するフィットネスプログラムが原因で振動問題が生じた場合には被告が直ちにプログラムの中止を求めることができることその他何らかの措置を求めることができることを内容とする条項はなかった。(前記前提事実(3)イ(イ)b,甲38,39,乙55の1・2)イ Kの個人会員数は,平成14年5月末には1200人であったが,平成15年4月には1213人,平成16年4月には1400人,同年11月には1588人に増加した。(乙86の1~3)(10) 被告は,平成16年11月,本件建物の6,7階に入居したLから振動に関するクレームがあったとの連絡を受け,同月から,株式会社W(以下「W」という。)による本件建物の6階テナントの床防振対策測定調査を実施した。被告は,同年12月1日,原告に対し,上記クレームを受けてKのエクササイズによる振動について調査を実施し,対策等を検討中であることを報告し,調査等の費用が発生することを申し入れたところ,原告は,調査実施について了承する旨回答した。なお,同日ころ,原告においては本件信託不動産の売却が検討されていた。Wは,同月13日及び同月14日,本件建物の5,6階において振動調査を実施し,平成17年1月27日,被告に対し,「フィットネスクラブ振動測定報告書」(乙67)を提出し,フィットネスクラブにおけるエクササ 同月13日及び同月14日,本件建物の5,6階において振動調査を実施し,平成17年1月27日,被告に対し,「フィットネスクラブ振動測定報告書」(乙67)を提出し,フィットネスクラブにおけるエクササイズ実施中の6階床の振動加速度レベルは67dBであった旨,防振対策としてフィットネスステージの防振支持と6階床に動吸振器(TMD)を設置することが考えられる旨報告した。被告は,同年2月28日,上記調査費用として115万5000円を支出した。(甲13の2,14,乙57,67)(11)ア原告と被告は,平成17年1月13日,本件信託不動産の売却について協議する中で,被告が,Lからの振動に関する苦情について,フィットネスのスタジオ部分に免振の措置を施したいが,工事費は信託勘定から支弁することになること及びLの賃料についてフリーレントの期間延長を検討したいことを申し入れると,原告は,同年3月末までに本件建物をいつでも売却できる状況に持っていきたい旨,Lの賃料は50%減額とするか,フリーレントの期間を延長する場合は期間に区切りを付けてほしい旨述べ,Lからのクレーム対応については被告に任せる旨の意向を示した。(乙58,59)イ原告と被告は,平成17年2月3日,本件信託不動産の売却に関して協議を行う中で,被告が,本件建物の振動問題についてKのフィットネスフロアの工事を実施すること,工事の間スタジオが1か月間使用できず,その間賃料を取れないことを報告したところ,原告は,Kをなるべく休業させないよう,工事期間を1週間程度に短縮することを再検討するよう要請し,同月10日の協議においても,引き続き工事期間の短縮を要請した。 (乙60,61)ウ被告は,平成17年3月24日,原告に対し,協議願(甲13の2)を提出し,本件建物5階のK内フィット う要請し,同月10日の協議においても,引き続き工事期間の短縮を要請した。 (乙60,61)ウ被告は,平成17年3月24日,原告に対し,協議願(甲13の2)を提出し,本件建物5階のK内フィットネススタジオの床を解体後コイルスプリング・パネルを設置する防振対策工事を実施することについて協議を申し入れ,原告は,協議確認書(甲13の1)をもって,異議なしの回答を通知した。被告は,同月27日から4月4日まで,Eの施工により,防振対策工事を実施し,4305万円を支出した(以下,この工事を「本件第二次振動対策工事」という。)。(甲13の1・2)エ E及びWは,本件第二次振動対策工事による効果を確認するため,平成16年12月13日及び平成17年5月16日に振動測定調査を実施し,同月31日,被告に対し,「H床振動調査測定報告書」(乙68)を提出し,上記防振対策によって65dB(大半の人が振動を感じ始めるレベル)を超える回数は大きく減少し,体感的に振動を感じる時間は短くなったが,ピークについては体感振動が残っている旨報告した。(乙68)オ原告と被告は,平成17年4月26日,本件信託不動産の売却に関して協議を行う中で,被告が,振動対策工事が完了したが,振動が収まっておらず追加工事が必要になる旨説明したところ,原告は,振動対策工事に4000万円かけており,これ以上金を出せない,300~400万円の追加なら考えられるが,テナントを退去させる対応策も考えてほしい旨述べた。(乙97)(12) 被告は,平成17年5月,本件建物の8ないし11階に入居したMから振動に関する苦情があったとの連絡を受け,同月31日,Mから振動状況のヒアリングを行った。(前記前提事実(3)イ(イ)b,甲40)(13)ア Kでは,平成14年に日本に導入された「ボ 居したMから振動に関する苦情があったとの連絡を受け,同月31日,Mから振動状況のヒアリングを行った。(前記前提事実(3)イ(イ)b,甲40)(13)ア Kでは,平成14年に日本に導入された「ボディアタック」というフィットネスプログラムが実施されていたが,振動に関する苦情が生じたのは同プログラム実施の際が最も多かった。(乙99,100,弁論の全趣旨)イ E及びWは,平成17年6月6日に振動調査を実施し,同年11月,被告に対し,「H床振動測定調査報告書(8階~11階)」(乙69)を提出し,本件建物の8~11階の床振動は5階床で「ボディアタック」の運動により生じる水平振動によって,鉛直振動が誘発されていると考えられること,「ボディアタック」の運動のうち「飛び上がって,足を広げて着地し閉じて着地を繰り返す」特定のリズムの運動は,5階の床で2.8Hz前後の水平振動を誘発すること,クレーム発生の原因として,フィットネスの参加者が習熟し運動のリズムがそろったこと等が推測されることを報告した。(乙69)ウ原告と被告は,平成17年6月30日,振動問題等に関する協議を行い,原告は,Kに対しては,あるメニューの運動で特定の動き・周波数が問題であれば,インストラクターに当該具体的な動きを伝え,改善するようにお願いすれば良く,今後いかに金を掛けずに対策を行っていくかが重要である旨述べ,被告は,Kに対し振動の原因である運動プログラム変更を申し入れ了解を取り付けた旨説明した。(乙98)(14)ア被告は,平成17年8月,Lとの間で,同年6月から同年8月分の賃料について,平成16年11月の入居後に発生した床の振動問題が現時点において解決していないことから,本件建物の6,7階の賃貸借契約の賃料起算日は平成17年6月1日とする旨,賃料は,当面の間,本 の賃料について,平成16年11月の入居後に発生した床の振動問題が現時点において解決していないことから,本件建物の6,7階の賃貸借契約の賃料起算日は平成17年6月1日とする旨,賃料は,当面の間,本件建物の6階601号室は規定賃料の70%,同7階703号室は規定賃料の80%に減額する旨合意した。(甲15)イ被告は,平成18年1月,Mとの間で,本件建物の賃貸借契約の賃料について,平成17年5月に発生した床の振動問題が現時点において解決していないことから,同年7月分賃料より当面の間,月額873万2100円に減額する旨合意した。(甲16)(15) Kは,平成18年4月5日,被告との間で,フィットネスメニューの変更及び機器測定調査のスケジュールについて打合せを行い,同月12日から同月17日まで,「ボディアタック」,「オリジナルエアロ」等9つのプログラムについて,総じて,足の動きを少なくし,上半身や手の運動を多くするメニュー変更をすることとした。(乙93)(16) 被告は,平成18年4月7日,原告に対し,協議願(甲17の2)を提出し,本件第二次振動対策工事に関する機器測定調査の実施について,協議を申し入れ,原告は,同日,協議確認書(甲17の1)をもって,異議なしの回答を通知し,併せて,具体実施にあたっては,早急に振動問題の解決が図られるよう申し入れる旨の同年3月31日付けの通知(甲44)の趣旨を踏まえ,対応するよう申し添えた。被告は,同月9日から同月25日まで,Eの施工により,機器測定調査を実施し,703万5000円を支出した。(甲17の1・2,44)(17) 被告は,平成18年5月から同年6月まで,Kとの間で協議を行い,フィットネスプログラムの変更の合意に達した。Kは,同年7月1日,会員に対し,「ボディアタック」を (甲17の1・2,44)(17) 被告は,平成18年5月から同年6月まで,Kとの間で協議を行い,フィットネスプログラムの変更の合意に達した。Kは,同年7月1日,会員に対し,「ボディアタック」を廃止し,「オリジナルエアロ」を昼間から夜間に変更する等,振動に対する影響の大きいスタジオプログラムの一部を同年8月から改定することを通知した。(乙95,105・6頁,証人U5頁)(18) 被告は,平成19年4月24日,原告に対し,協議願(甲46の1)を提出し,Kとの間で,Kが既に平成18年8月から実施しているスタジオプログラムの取止め及び時間変更を継続すること,スタジオプログラムの実施にあたり,上層階テナントの床振動がスタジオプログラム実施の期間中にわたり,各階(6階~20階)上層階テナントの床中央部において,原則として65dB以下となるように運用すること等を内容とする覚書を締結することについて協議を申し入れ,原告は,同月25日,協議確認書(甲46の2)をもって,協議内容については,本件信託契約書14条の苦情処理等の範疇であると解するので,被告において適切に処理されたい旨,本覚書の締結だけでは過去の賃料減額を含めた振動問題の解決にはならないので,早急な解決を申し入れた同年3月29日付けの通知(甲45)のとおり早急な解決を図られたい旨通知した。被告は,本件建物の売却に備えて,同年5月10日,Kとの間で,上記内容の覚書(甲47。以下「本件覚書」という。)を締結した。(甲45,46の1・2,47,乙105・6頁)(19) 被告は,平成19年5月,Mとの間で,平成17年5月に発生した床の振動問題についてはKとの間で本件覚書が締結されたことから,同年6月分賃料より賃貸借契約記載金額とすることについて合意した。 被告は,平成19年5 9年5月,Mとの間で,平成17年5月に発生した床の振動問題についてはKとの間で本件覚書が締結されたことから,同年6月分賃料より賃貸借契約記載金額とすることについて合意した。 被告は,平成19年5月23日,Lに対し,上記(14)アのとおり減額された賃料を約定賃料に戻してほしい旨申し入れ,同年7月,Lとの間で,平成17年5月に発生した床の振動問題についてはKとの間で本件覚書が締結されたことから,同年9月分賃料より賃貸借契約記載金額とすることについて合意した。 (甲19,21)(20) 被告は,平成20年3月27日,Nに対し,本件信託不動産の売却に関する重要事項説明書(乙74)において,本件建物の現状について,平成8年に本件建物4,5階の入居テナントであるフィットネスクラブ(K)からの振動問題が発生したため,被告は調査・対策工事(間柱設置,防振床ダンパー工事)を実施し,さらにフィットネスメニューの変更等が行われ,現在は経過観察中であること,現在の本件建物の賃借人との賃貸状況につき特筆すべき事項として,被告は,L及びMとの間で本件建物の振動を原因とする賃料減額措置を講じていたが,平成19年5月及び同年9月には同措置は終了していることを説明した。被告は,同月28日付けで,Nとの間で,本件信託不動産の売買契約を締結して,同年4月25日に引き渡し,約41億円の売却益を上げた。(前記前提事実(4)イ,(5),乙74) 2 鑑定人X及び同Yによる鑑定意見(以下「本件鑑定意見」という。)(1) 本件建物5階の鉄骨大スパン構造部にフィットネスクラブを設ける場合,平成4年ないし平成8年当時の技術水準・知見に照らすと,上層部に,室内にいる人の多くが揺れを感じて苦情を申し立てる程度(70dB前後)の振動障害が生ずることを予測することは,日 クラブを設ける場合,平成4年ないし平成8年当時の技術水準・知見に照らすと,上層部に,室内にいる人の多くが揺れを感じて苦情を申し立てる程度(70dB前後)の振動障害が生ずることを予測することは,日本建築学会に所属する平均的な水準の建築技術者には困難であった。 (2) 本件建物の大スパン構造部の主要梁(大梁)に直交する小梁の一部の削除は,本件建物の上層部の室内に居る人の多くが揺れを感じて苦情を申し立てる程度(70dB前後)の振動障害が生ずることについて影響を与えるものではない。 (3) 本件第一次振動対策工事は,上層部において,室内にいる人の多くが揺れを感じて苦情を申し立てる程度(70dB前後)の振動が生ずることを防止する観点からみて,技術的に適切なものであった。 3 争点(1)(本件建物の振動問題に係る被告の債務不履行の有無及び振動問題を原因とする損害(第1損害,第2損害)の発生の有無)について(1) 本件作成義務(総論)についてア原告は,被告は,(ア)本件提案競技に参加するに際しては,後日追加費用を負担することなく当該事業計画等に沿った信託事業の遂行を実現するように,十分に内容を吟味した上で事業計画概要説明書,資金計画書,収支計画書,管理運営計画書等を作成する義務を負い,(イ)本件信託契約を締結するに際しては,後日追加費用を負担することなく当該事業計画等に沿った信託事業の遂行を実現するように,十分に内容を吟味した上で土地信託事業計画等を作成する義務を負い,(ウ)本件信託事業を遂行するに際しては,やむなく土地信託事業計画等を変更する必要が生じた場合には,できる限り変更の範囲を限定し,しかも変更後に追加費用を負担することなく変更後の事業計画に沿った信託事業の遂行を実現するように,十分に内容を吟味した上で変更すべき 等を変更する必要が生じた場合には,できる限り変更の範囲を限定し,しかも変更後に追加費用を負担することなく変更後の事業計画に沿った信託事業の遂行を実現するように,十分に内容を吟味した上で変更すべき義務を負う旨主張する。 イそこで,検討するに,前記前提事実によれば,本件信託契約の締結に至る経緯について,原告は,平成2年7月,本件募集要項を公表し,本件提案競技に対する提案を募集したこと,本件提案競技には,被告を含め5件の応募登録があったこと,被告は,同年11月ころ,原告に対し,「事業計画概要説明書」,「施設計画書」及び「資金計画書・収支計画書・管理運営計画書」(本件概要説明書等)を提出したこと,原告が組織した本件審査委員会は,平成3年3月まで,本件提案競技に対する応募登録の審査を行い,被告による応募登録が最優秀提案に選ばれたこと,被告は,同年10月,原告に対し,「甲駅周辺土地区画整理事業用地・土地信託事業計画案事業計画書」(本件事業計画)を提出したこと,原告と被告は,同年11月,本件信託契約を締結したことが認められる。 上記事実のとおり,被告は,原告に対し,本件概要説明書等を提出したが,上記の一連の経緯に照らすと,これらの書類の提出は,被告が原告の本件提案競技に対して行った提案であって,その時点における被告の企画の概要を示したものにとどまると認められる上,その後には原告が組織した本件審査委員会による審査が予定されていることに照らすと,被告が上記書類を提出しても,被告の提案が本件審査委員会によって必ずしも採用されるとは限らないのであるから,被告が,本件提案競技に参加する時点で,原告が前記(ア)のとおり主張するような本件概要説明書等の作成義務を負うと解することはできないというべきである。 ウまた,上記事実のとおり,被告は, るから,被告が,本件提案競技に参加する時点で,原告が前記(ア)のとおり主張するような本件概要説明書等の作成義務を負うと解することはできないというべきである。 ウまた,上記事実のとおり,被告は,本件信託契約の締結に先立ち,原告に対し,本件事業計画を提出したが,前記前提事実(2)ウで認められる本件事業計画の内容に照らすと,本件事業計画の提出は,その時点における経済情勢や景気動向等を前提として被告が信託期間中の収支予測を示したものであると認められ,上記の経済情勢や景気動向等が変化すれば上記収支予測も変更されるものと解されるのであるから,被告が,本件信託契約を締結する時点で,原告が前記(イ)のとおり主張するような本件事業計画の作成義務を負うと解することも困難というべきである。 エこのように,被告において本件信託契約の締結時点で原告が前記(イ)のとおり主張するような本件事業計画の作成義務を負うものと解することが困難である以上,本件事業計画の実現が本件信託契約の債務の内容となっていると解することもできないといわざるを得ない。そうすると,仮に本件信託事業を遂行するに際して本件事業計画を変更する必要が生じた場合であっても,本件事業計画の実現を前提とした上でその変更の範囲をできる限り限定しなければならないと解することも困難であり,被告が,本件信託事業を遂行する過程で,原告が前記(ウ)のとおり主張するような本件事業計画を変更すべき義務を負うものとは解されない。 オしたがって,原告の主張は採用することができない。 (2) 第1損害及び第2損害に係る具体的な本件作成義務Ⅰ及びⅡについて原告は,Ⅰ本件提案競技に応募してから最優秀案として選ばれる平成3年3月までの間及びⅡ平成3年10月に本件事業計画を原告に提出する際のそれぞれの時点において,設計 的な本件作成義務Ⅰ及びⅡについて原告は,Ⅰ本件提案競技に応募してから最優秀案として選ばれる平成3年3月までの間及びⅡ平成3年10月に本件事業計画を原告に提出する際のそれぞれの時点において,設計事務所又は建設業者に対し,本件建物が本件指針以上の振動障害が生じない建物であるかどうかを質問し,回答を得ておく義務を負っていた旨主張する。 本件信託契約(甲4)において,被告は,本件建物の設計・監理又は建設等を建築士事務所等又は建設業者に請け負わせることができるとされ(7条1,2項),実際に,Pに設計監理を,E・F・G建設共同企業体に本件建物の建築工事を請け負わせている。そして,本件概要説明書及び本件事業計画によれば,被告は,本件建物を鉄骨大スパン構造とすること及び本件建物の4階(上下階に影響の少ない高層棟と低層棟の接続箇所)にフィットネスクラブを設置することを想定し,提案をしていたものであり,そうすると,被告は,設計業者及び建築請負業者に対し,上記の想定された構造の下で,想定された利用形態に適した,支障のない建物の設計施工を依頼したものと考えるのが合理的である。 ところで,本件鑑定意見は,平成4年ないし平成8年当時の技術水準・知見に照らすと,本件建物5階の鉄骨大スパン構造部にフィットネスクラブを設ける場合に,本件建物の5階から上層部への振動の影響を予測することは,当時日本建築学会に所属する平均的な水準の建築技術者には困難であったというものであるところ,その理由として,平成3年4月時点における本件指針の内容は,Ⅰ建築物床の鉛直振動と,Ⅱ強風による建築物の水平振動,に大別されているが,本件指針からは,本件のような上層階への振動障害の影響に関する事項は出てこないこと,当時のいくつかの会社(2社名称省略)の技術研究報告を見ても,上層 強風による建築物の水平振動,に大別されているが,本件指針からは,本件のような上層階への振動障害の影響に関する事項は出てこないこと,当時のいくつかの会社(2社名称省略)の技術研究報告を見ても,上層階への振動の影響を報告した事例は見当たらず,当時出版されていた建築構造関係の専門図書によっても,振動源から上層階への振動の影響を記述したものは見当たらないこと,中高層建物における上下振動が明確に認識されたのは,平成7年兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)の時であるといわれていることなどが挙げられており,他にこれと異なる知見は証拠上うかがわれないことからすると,本件鑑定意見を採用するのが相当である。また,本件建物の内装設備工事を施工したEは,本件振動報告書において,起振階の上階に振動が生ずることを予見し得なかった,本件の振動問題は過去に例を見ないことであった旨の報告をしている。これらの点を総合すれば,平成4年ないし平成8年より前の時点であるⅠ本件提案競技に応募してから最優秀提案として選ばれる平成3年3月までの間及びⅡ平成3年10月に本件事業計画を原告に提出する際のいずれの時点においても,被告は(被告が設計監理又は建設を発注することが想定される建設業者においても),本件建物にフィットネスクラブを入居させた場合,本件指針における基準以上の振動障害が生ずることを予見することは困難であったといわざるを得ない。そうであるとすると,被告に,設計事務所又は建設業者に対し,本件指針以上の振動障害が生じない建物を設計施工するように指示し,また,本件建物が振動障害を生じない建物であるかどうかについて質問し,回答を得ておくべき義務があったと認めることは困難というほかない。 加えて,前記認定事実によれば,被告の一級建築士の資格を有する専任担当者は,設計監理を を生じない建物であるかどうかについて質問し,回答を得ておくべき義務があったと認めることは困難というほかない。 加えて,前記認定事実によれば,被告の一級建築士の資格を有する専任担当者は,設計監理を担当したPとの間の本件建物の設計施工に関する打合せに全て出席し,振動問題についても当時の技術水準に従って検討していたものと認められるから,被告は,5階にフィットネスクラブを設置することによって本件建物に振動問題が生じないかどうかについて,相応の検討を行っていたものというべきである。 したがって,被告が本件作成義務Ⅰ及びⅡを負い,これらの義務に違反した旨の原告の主張は採用することができない。 (3) 本件遂行義務(総論)についてア原告は,被告は,(ア)本件信託契約締結後は,土地信託事業計画等に沿った状況を実現できるように信託事業を遂行すべき義務を負い,(イ)本件信託事業遂行中に,土地信託事業計画等が実現困難な状況に至ったときには,当該状況,原因等,対処可能な対策を検討すべき義務を負うなどと主張する。 イそこで,検討するに,前記前提事実によれば,本件信託契約の内容について,本件信託契約における本件信託事業の目標は,被告が本件事業計画に基づき本件土地を有効に活用することなどとされていること,被告は,本件信託不動産の賃貸料その他の賃貸条件の設定に当たっては,近傍類似の賃貸建物の賃貸条件を参考とし,適正な賃貸条件の設定に努めなければならないとされていること,被告は,本件信託不動産の管理,運用その他信託事務について,善良なる管理者の注意をもって処理しなければならないとされていること,被告は,計算期日までに翌計算期以降の事業計画を原告に報告しなければならないとされていることが認められる。 このように,本件信託契約における本件信託事業 って処理しなければならないとされていること,被告は,計算期日までに翌計算期以降の事業計画を原告に報告しなければならないとされていることが認められる。 このように,本件信託契約における本件信託事業の目標は,被告が本件事業計画を実現することとされているものではない。また,本件信託契約書上,本件信託不動産の管理等の信託事務については,被告の善管注意義務が定められており,本件事業計画に記載された収益の実現を保証するような趣旨の条項はなく,被告は,本件信託不動産の運用について,適正な賃貸条件の設定に努めるべきとの努力義務を負うにとどまり,本件事業計画における賃料に入居率を乗じた収入の獲得義務が課せられているものではない。さらに,被告には,当該事業年度の事業計画を毎年提出することが義務づけられており,本件信託契約において事業計画が変更されることが予定されているものということができる。そうすると,本件信託契約が事業執行型の信託であり,被告が不動産信託について相応の専門家であることを考慮しても,本件信託契約が本件事業計画の実現を内容とするものであると認めることは困難であるから,被告が,原告が前記(ア)及び(イ)のとおり主張するような義務を負うものとは解されない。 ウしたがって,原告の主張は採用することができない。 (4) 第1損害及び第2損害に係る具体的な本件遂行義務ⅠないしⅣについてア本件遂行義務Ⅰについて原告は,フィットネスクラブの配置を4,5階の鉄骨大スパン構造部に変更し,かつ,小梁を削除したことをとらえて,本件遂行義務Ⅰを主張するが,本件鑑定意見は,被告が平成4年5月に本件建物の大スパン部の大梁に直交する小梁の一部を削除したことは,本件建物の振動障害が生ずることについて影響を与えるものではないとしている上(大梁が床 張するが,本件鑑定意見は,被告が平成4年5月に本件建物の大スパン部の大梁に直交する小梁の一部を削除したことは,本件建物の振動障害が生ずることについて影響を与えるものではないとしている上(大梁が床の鉛直方向の剛性を高めるための部材ではないこと及び床荷重はすべて大梁で受けていることを理由とするものであり,上記意見を採用するのが相当である。),平成4年ないし平成8年当時の技術水準・知見に照らし,被告はもとよりEにおいても,本件建物の5階の鉄骨大スパン構造部にフィットネスクラブを設ける場合,5階から上層部への振動の影響を予測することは困難であったというべきことは前記(2)で説示したとおりであるから,被告において,平成6年7月ころ,設計事務所又は建設業者に対し,フィットネスクラブの配置により本件指針における基準以上の振動障害が生じないかどうか質問し,回答を得ておくべき義務があったものとは解されない。仮に,被告が上記の点について設計事務所又は建築業者に対し質問していたとしても,Eが振動障害について予見することができない以上,防振対策等を立てることも期待することはできないのであるから,この点からも被告が上記義務を負うとはいえない。 また,前記認定事実によれば,構造評定の審議において,鉄骨大スパン構造が振動との関係で問題がないかを問われたのに対し,被告は,本件指針の算定式を示した上で問題がない旨回答し,審議の結果,認定書が交付されたというのであるから,被告は,鉄骨大スパン構造部における振動について,当時の知見及び技術水準の下で相応の検討を行っていたものということができ,被告に義務違反は認められない。 イ本件遂行義務Ⅱについて前記認定のとおり,被告はJとの間で,振動がほぼ業務上支障のない状態に至ったとの確認を受けて,当初契約上の ということができ,被告に義務違反は認められない。 イ本件遂行義務Ⅱについて前記認定のとおり,被告はJとの間で,振動がほぼ業務上支障のない状態に至ったとの確認を受けて,当初契約上の改定基準額を上回る条件で賃料を増額改定したこと,平成8年のJによる振動苦情の後,I及びKが継続してフィットネスクラブを開業していたにもかかわらず,被告は,約8年の間,本件建物の振動に関する苦情を受けていなかったこと,本件第二次振動問題が生じたのは,平成14年に日本に導入されたKの「ボディアタック」というプログラムの特定のリズムの動きやプログラム参加者の習熟,Kの会員数の増加等複合的な要因によるものと考えられることに加えて,本件鑑定意見においても,本件第一次振動対策工事は,上層部における振動障害を防止する観点からみて,技術的に適切なものであったとしていることに照らせば,被告が,本件第一次振動問題を通じて,フィットネスクラブからの騒音・振動に係るクレームが再度申し立てられるリスクを認識し,又は認識し得たものということはできず,この点を前提として被告が本件遂行義務Ⅱを負うものとは解されない。 また,前記認定事実のとおり,原告は,被告がI及びKとの間で,4,5階にフィットネスクラブを入居させること及び振動問題が生じた場合は直ちにプログラムの中止を求めることができることなどを内容とする条項のない賃借人地位承継契約を締結することについて,被告からの協議願を異議なく承認しているものであるから,この点に関し,被告には原告主張に係る義務違反があったとはいえない。 さらに,上記賃借人地位承継契約(乙73)においては,苦情の申出があったときはIの責任と費用負担により解決に当たらなければならない旨のIとの間の賃貸借契約の条項(16条2項)はKも承継することとさ さらに,上記賃借人地位承継契約(乙73)においては,苦情の申出があったときはIの責任と費用負担により解決に当たらなければならない旨のIとの間の賃貸借契約の条項(16条2項)はKも承継することとされており,被告は上記条項に則ってKに本件第二次振動問題の解決を求めることも可能であったが,前記認定事実によれば,本件第二次振動問題にかかる調査や本件第二次振動対策工事は,原告の了承の下,被告において費用を支出して実施され,一定の効果を上げたこと,原告と被告との間では,平成17年ころから本件信託不動産の売却に向けた協議が行われている中,被告は,できるだけ費用をかけない対策を求める原告の要請に応じ,Kとの間の「ボディアタック」の廃止を含むプログラムの変更に関する本件覚書の締結をもって本件第二次振動問題を収束させたこと,被告は,本件覚書を締結した平成19年5月中に,M及びLに対し賃料減額措置の終了について申し入れ,同年6月分及び同年9月分の賃料から約定金額とすることについて合意したこと,被告は,平成20年3月,Nに対し,重要事項説明書において振動問題の経過を説明した上で本件信託不動産を売却し,約41億円の売却益を上げたことが認められ,これらの事実に鑑みれば,被告は,原告の意向を尊重して相応の措置を執り,本件第二次振動問題の解決に当たったものというべきであり,被告に義務違反は認められない。 ウ本件遂行義務Ⅲについて上記イで説示したとおり,被告が,本件第一次振動問題を通じて,フィットネスクラブからの騒音・振動に係るクレームが再度申し立てられるリスクを認識し,又は認識し得たということはできないから,このことを前提として被告が本件遂行義務Ⅲを負うものということはできない。 また,本件第一次振動対策工事は,本件第一次振動問題を解決する れるリスクを認識し,又は認識し得たということはできないから,このことを前提として被告が本件遂行義務Ⅲを負うものということはできない。 また,本件第一次振動対策工事は,本件第一次振動問題を解決するために実施されたものであり,振動障害が生じないような内容の工事であることが前提となっていた上,上層部における振動障害を防止する観点からみて技術的に適切なものであったのであるから,それにもかかわらず,被告が重ねて,建設業者に対して,振動障害を生じさせないような内容の振動対策とするよう指示する義務や,そのような内容の振動対策であるかどうかを質問し,回答を得ておくべき義務があったとは解されない。 エ本件遂行義務Ⅳについて上記イで説示したとおり,被告が,本件第一次振動問題を通じて,フィットネスクラブからの騒音・振動に係るクレームが再度申し立てられるリスクを認識し,又は認識し得たということはできないから,このことを前提に被告が本件遂行義務Ⅳを負うものとは解されない。 また,上記イ及びウで説示したとおり,本件第一次振動対策工事は技術的に適切なものであった上,原告はI及びKとの間の賃借人承継契約の締結について異議なく承認しているほか,被告は,原告の意向も尊重しながら,必要な措置を執り,本件第二次振動問題の解決に当たったものというべきであるから,被告には原告主張に係る義務違反があったとはいえない。 (5) したがって,被告が,第1損害,第2損害に関して本件遂行義務ⅠないしⅣを負い,これらの義務に違反した旨の原告の主張は採用することができない。 4 本件建物における初期テナントリーシングに関する認定事実前記前提事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) 被告は,本件事業計画において,テナント構成の概 4 本件建物における初期テナントリーシングに関する認定事実前記前提事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) 被告は,本件事業計画において,テナント構成の概要を示し,フィットネスクラブとビジネススクールはZ,コンサートホールは株式会社a(以下「a」という。),音楽のプロムナードはb等が候補企業である旨記載していた。(甲3・9頁)(2)ア被告は,平成3年ころ,Zやa等,原告が要請していた体育健康関連と文化向上に向けてのキーテナント(スポーツセンター,フィットネス,コンサートホール,音楽系のショールーム等)候補企業に対し,本件提案競技実施時の出店意向を持続させるよう継続的に往訪活動を行っていた。(乙104・3頁,証人Q8頁)イ被告は,Zが,本件提案競技の前から,本件建物にフィットネスクラブ及びビジネススクールを開業して入居する意向を示していたことから,同年4月から同年9月まで,Zとの間で協議を重ね,同年10月には,Zが平成4年4月から開設準備室を開く予定である旨の連絡を受けた。被告は,原告に対し,テナントリーシングの状況その他本件信託事業の進展状況に関し,定期的に報告等を行う会議を行っており,上記協議内容についても報告をしていた。 被告は,同年6月28日,本件信託事業の基本計画中間報告会を行い,キーテナント誘致活動状況を含む事業推進活動状況を報告した。 (乙104・3~4頁,106,107,証人Q5,8頁)ウ原告は,そのころ,被告に対し,飲食テナントについては,雑居ビル化しないように,本件建物の1,2,3及び20階の全部の区画を同一テナントに一括貸しするよう要請した。(乙104・4頁,証人Q9頁)(3) 被告は,平成3年には,(10社名称省略)等30社以上の企業に対し ように,本件建物の1,2,3及び20階の全部の区画を同一テナントに一括貸しするよう要請した。(乙104・4頁,証人Q9頁)(3) 被告は,平成3年には,(10社名称省略)等30社以上の企業に対し,リーシング活動を行った。(乙104・3~4頁)(4) 被告は,平成4年4月から同年12月まで,Zとの間で,本件建物の入居に関する協議を続けた。 被告は,同年10月,原告に対し,「甲駅周辺地区の貸ビル市場動向について」と題する書面(乙25)を提出し,甲地区の新築ビルの空室率の伸びは大きく,賃料設定が高すぎるとテナントが決まらないケースが出てくると考えられる旨報告した。 被告は,同年,音楽のプロムナードの候補企業であるbやcに対して誘致活動を継続して行ったほか,同年10月,aとの間で入居に関する覚書を取り付けた。 (乙25,104・4~5頁)(5) 被告は,平成4年には,(10社名称省略)等70社以上の企業に対し,リーシング活動を行った。(乙104・6頁)(6)ア被告は,平成5年1月ころ,Zから,Zの経済環境が悪化してきたため,経済条件を緩和してほしいとの要請を受けるようになり,同年4月ころから,Zが入居しない場合に備えて,(3社名称省略)等,フィットネスクラブのテナント候補企業20社以上に対するリーシング活動を開始した。(乙104・7~8頁)イ被告は,平成5年4月28日,原告に対し,テナント誘致活動状況について,コアーテナント(コンサートホール・ショールーム・フィットネス等の低層階テナント)は,押並べて各企業とも業績不芳であり,賃貸条件の下方修正,協議の暫時凍結の傾向である旨,Zは,生徒数減少に伴い予備校収入が減少しており,初期投資・ランニング面共に当初の水準維持が難しいため,賃料等の条件について緩和を求めて 芳であり,賃貸条件の下方修正,協議の暫時凍結の傾向である旨,Zは,生徒数減少に伴い予備校収入が減少しており,初期投資・ランニング面共に当初の水準維持が難しいため,賃料等の条件について緩和を求めている旨を報告した。(乙24,108)ウ被告は,平成5年5月,原告に対し,「甲駅周辺地区の貸ビル市場動向について」と題する書面(乙26)を提出し,甲地区の新築ビルの空室率の伸びは大きく,実際の契約賃料は今後下落していくものと思われる旨報告した。(乙26)(7) 被告は,平成5年には,(10社名称省略)等280社以上の企業に対し,リーシング活動を行った。(乙104・9~11頁)(8) 原告と被告は,平成5年7月16日,原告の建設局北部方面土地区画整理事務所長,被告の開発事業部長が参加する定例会議を開催した。その際,被告は,原告に対し,想定のテナント入居率(本件建物全体では,開業1年目は63.0%,2年目は86.2%,3年目は93.1%,オフィスでは,1年目は50%,2年目は80%,3年目は90%),賃料及び金利(長期プライムレート年7.3%)の下では,本件信託事業終了時に,配当が0円となり,借入債務が約42億円残存するおそれがある旨報告した。原告は,想定金利が当時の水準より高いので,これを当時の水準まで引き下げると収支はどのくらい改善されるのか質問したところ,被告は,長期プライムレートを年5.3%と想定すると,配当は約100億円になると考えられる旨説明した。 被告は,「中間見直し方策について」と題する書面(乙22)において,大阪市内全域の賃貸市況低迷に加え,甲地区新築ビル供給が顕著であること,大口テナント情報が希少な上,ビル間での競合が激化していることから,オフィスゾーンのリーシング率引上げが課題であること,コアテナントゾ 内全域の賃貸市況低迷に加え,甲地区新築ビル供給が顕著であること,大口テナント情報が希少な上,ビル間での競合が激化していることから,オフィスゾーンのリーシング率引上げが課題であること,コアテナントゾーン(音楽関係ショールーム,フィットネス,ビジネススクール等)は,不況の影響からテナント候補の出店意欲が減退しており,賃料の大幅引下げ,かつテナント工事部分のビル側負担を前提としたリーシングが必要になること,フィットネスゾーンについては,Zの事業化の結論が遅くなり,代替テナントリーシングを再開すること,飲食ゾーンについては,開業後の管理運営面を考えた時には,一括賃貸が好ましいが,20階スカイラウンジ,3階カフェテリアの出店評価は厳しく,一括貸しは困難であり,20階スカイラウンジの他用途(オフィス等)への転用を検討することが必要であることなどを報告し,特にフィットネスクラブは東京でも供給過剰であり撤退しているところも多く,Zは出店についてすぐに結論を出せない状況であり,今結論を迫るとすればNOといわざるを得ないとの回答である旨口頭で説明をした。 また,被告は,「中間見直し方策について」と題する書面(乙22)において,「全体スケジュール」として,平成6年9月に開業する前提で,オフィスは平成5年7月に公募し,直ちにテナントリーシングを実施し,平成6年1月に予約契約を締結する旨,飲食は同年2月からリーシングを実施し,同年6月に開業準備・賃貸借契約を締結する旨を記載した。 これに対し,原告は,スカイラウンジは本件信託事業における目玉であり,他用途への転用は難しく,残す方向で検討されたい旨,フィットネスクラブについては,原告から,プールを作ってほしいとの地元要望を考慮して,フィットネスクラブにおいてプールを実現したいという話があったところ,フ しく,残す方向で検討されたい旨,フィットネスクラブについては,原告から,プールを作ってほしいとの地元要望を考慮して,フィットネスクラブにおいてプールを実現したいという話があったところ,フィットネスクラブの誘致に苦戦しているようであり,他に転用するのか検討も必要なのではないか,供給過剰であれば転用について説得可能であると思う旨の意見を述べた。被告は,同年9月からプール製作を開始しなければならないことから,Zの代替テナントに対する誘致活動を強化する旨回答した。 (甲68,69,乙22,107,110,証人d4~10頁)(9) 被告は,平成5年7月27日,5大新聞紙の朝刊に,本件建物の賃貸オフィス募集(公募)を実施する旨掲載した。原告と被告との間には,テナントとの間の賃貸借契約の締結時期を公募の後とする旨の合意や契約締結手続を競争入札等に制限する旨の合意はなかった。(乙5,104・6頁,証人Q22~24頁)(10)ア被告は,平成5年8月26日,原告に対し,リーシング活動状況として,フィットネスクラブについては,Zの事業化促進と並行して,(3社名称省略)他7社に代替テナントリーシング活動中であるが,総じて新規出店に関し動きが鈍いこと等を報告した。(乙5)イ原告と被告は,平成5年9月22日,同年9月度の定例報告を開催した。 被告は,Z,(2社名称省略)等17社にフィットネスクラブのリーシング活動を行っていることを報告した。原告は,フィットネスクラブの候補先をできるだけ早く探すよう求め,候補先がない場合,eとfのように複数の候補先が組んでフィットネスクラブを出店できないかと述べたが,被告は,好況になるまでフィットネスゾーンを凍結する等抜本的な対応策を考えておく必要がある旨回答した。(乙6,113,証人d11頁,証人Q14 が組んでフィットネスクラブを出店できないかと述べたが,被告は,好況になるまでフィットネスゾーンを凍結する等抜本的な対応策を考えておく必要がある旨回答した。(乙6,113,証人d11頁,証人Q14頁)ウ被告は,平成5年10月28日ころまでZとの間で本件建物への入居について交渉を継続したが,新規事業について理事会決定ができない状態であるとのことであったため,Zとの交渉を中断した。(乙104・7頁)(11) 原告と被告は,平成5年10月28日,同年10月度の定例報告を開催した。被告は,フィットネスゾーンについて学校法人eと協議に入りたい旨報告した。被告は,テナントリーシング状況について,甲地区において平成6年から平成7年初めにかけて供給過剰のピークが来ることが見込まれる旨説明し,テナント獲得のためフリーレントを実施することを提案したが,原告は,公有地の場合,フリーレントというのは市議会に通らないとして,フリーレントを実施することに難色を示した。被告は,本件建物にテナントが入っていなければ意味がなく,一日も早く満室にしていくのが肝要である旨述べたが,原告は,優良なテナントを入居させて初めて良いビルになるもので,拙速なリーシング活動で優良でないテナントを入居させることは避けたい旨述べた。(乙7の1・2)(12) 被告は,Oから株式会社g(以下「g」という。)がオフィス移転計画を有する旨の情報を入手したことから,平成5年11月11日,原告に対し,gの誘致に当たり原告の協力を要請し,これに対し原告は,協力を至急検討する旨,フリーレントの実施は難しいが,段階賃料を導入することについてはやむを得ない旨述べた。gは,平成6年8月10日,被告との間で賃貸借契約を締結し,本件建物の15ないし18階に入居した。 被告は,原告に対し,原 トの実施は難しいが,段階賃料を導入することについてはやむを得ない旨述べた。gは,平成6年8月10日,被告との間で賃貸借契約を締結し,本件建物の15ないし18階に入居した。 被告は,原告に対し,原告の外郭団体である財団法人h及びi株式会社を本件建物のテナントとして紹介するよう依頼し,上記各団体は,同月26日,それぞれ,被告との間で賃貸借契約を締結し,本件建物に入居した。 (甲7の1,8,乙114,証人Q15~16頁)(13) 被告は,平成6年4月18日,原告に対し,平成5年度事業実績報告を行った。被告は,フィットネスについては,現状確たる候補先はなく,フィットネス事業者は甲の立地条件が悪いと判断している上,新規出店の意欲がほぼない旨報告した。原告は,フィットネスゾーンについては地元議員の関心が高く,なんとしても実現してほしい旨述べた。被告は,飲食テナントについては,原告の要請に基づき,20階,3階を核として1,2階の小区画とのまとめ貸しを基本にリーシング活動を行ってきたが,候補先が極めて少ない上,業態が少なく1,2階とのまとめ貸しは困難であり,候補先は3社しかないこと,株式会社j(以下「j」という。)は20階の単独借りを希望しており,20階については単独貸しの誘致活動が必要となってきている旨報告した。原告は,1,2,3及び20階の4区画の中で複数区画の合せ貸しなら検討の余地がある旨述べた。(乙9,10,27,証人Q9頁)(14) 被告は,平成6年4月25日,原告に対し,平成6年度事業計画書の補足資料として「テナント誘致方策」と題する書面(乙16の1)を提出し,フィットネスクラブについて,原告の従来からの地元説明の経緯を踏まえて事業の継続性第一に誘致に臨むこと,飲食テナントについて,3階カフェテリアと1階・2階各1区 と題する書面(乙16の1)を提出し,フィットネスクラブについて,原告の従来からの地元説明の経緯を踏まえて事業の継続性第一に誘致に臨むこと,飲食テナントについて,3階カフェテリアと1階・2階各1区画をまとめ貸しすることで事業の安定化を図ること,現在20階と3階の具体候補先は3社に絞られており,原告との個別協議に基づき,柔軟な経済条件と工事仕様をもって成約に努めていくこと等の方策を示した。(乙16の1,27)(15) 被告は,原告の意向を受けて,平成6年3月から,本件建物の20階に出店を希望していたjに対し,20階とともに1階にも出店することを要請したが難色を示されたため,原告との間で,同年4月以降,jについて1階との合せ貸しではなく20階単独で出店することができるよう交渉したが,原告は,20階のみの単独での賃貸は難しい旨回答した。被告は,原告の上記回答をjに伝えたところ,jが20階以外の飲食区画を借り増すことは不可能であると回答したため,再度,原告とjの20階単独出店について協議した。原告は,地元に対しては本件建物の飲食ゾーンは複数区画のまとめ貸しであるとして,単独出店の申出を断ってきている経緯があるため,jの20階単独出店を了解するかどうかは非常に難しい問題であるとして回答をしなかった。被告は,同年6月,jから,本件建物に出店することを辞退する旨の申入れを受けた。 被告は,同年3月,株式会社k(以下「k」という。)から,本件建物の2,3階に出店を検討することの了解が得られ,同年6月以降,原告から1,3階の合せ貸しでもよいとの了解を得て,同年8月,kの1,3階への出店が決まった。 (乙17~21,104・15頁,証人Q11~12頁)(16)ア被告は,平成6年8月,a,b及びcとの間で本件建物の賃貸借契約を締結し 了解を得て,同年8月,kの1,3階への出店が決まった。 (乙17~21,104・15頁,証人Q11~12頁)(16)ア被告は,平成6年8月,a,b及びcとの間で本件建物の賃貸借契約を締結した。(甲7の1,乙104・14頁)イ被告は,平成6年には,(10社名称省略)等延べ240社以上の企業に対し,リーシング活動を行った。(乙104・12~14頁)ウ被告は,本件建物が竣工した後の同年8月から同年12月まで,現地での内覧会を合計37回実施した。(乙104・14頁)(17) 原告は,平成7年ころから,被告に対し,オフィスのリーシングに当たってはできるだけワンフロア全体を賃貸するよう要請した。なお,本件建物は,大スパン構造でフロアに柱が少なく,フロア全体を使えることを特徴としていたが,ワンフロアを個別に区切って賃貸することにも支障はなかった。 被告は,同年3月31日,原告に対し,平成7年度事業計画書を提出し,テナントリーシングの現状として,オフィスの情報は面積が100坪を越えると情報件数は激減し,柔軟に小割対応をしている周辺ビルと比べて1フロア貸しに限定する場合オフィスの情報不足が発生すること,テナント交渉においてフリーレントが常態化しており,本件建物の段階賃料ではフリーレントを相応に対応している他案件に対抗できないこと等の課題があることを報告した。 原告と被告は,同年9月12日及び同月29日,協議を行ったが,原告は,テナント区画は1フロア貸しを原則とする旨,金融業者等は避けてじっくり絞りたい旨,飲食テナントについて,20階と1階又は20階と2階の合せ貸しを行うことを地元に対し明言してきた(地元の賃借希望を断ってきた。)ことから,1階又は2階のみの単独出店は絶対に不可である旨を確認した。 (甲8,乙111 ,20階と1階又は20階と2階の合せ貸しを行うことを地元に対し明言してきた(地元の賃借希望を断ってきた。)ことから,1階又は2階のみの単独出店は絶対に不可である旨を確認した。 (甲8,乙111,112,証人Q10,17,28~29,32頁)(18) 被告は,平成7年7月26日,Iから,フィットネスクラブとして入居する旨の内定を取り付け,同年9月8日には,賃貸借についての確約書を入手した。被告は,平成8年3月1日,Iとの間で本件建物の賃貸借契約を締結し,Iは,同日,フィットネスクラブを開業した。(前記前提事実(3)イ(イ),甲9の1・5頁,乙104・17頁)(19) 被告は,平成7年には,(10社名称省略)等延べ70社以上の企業に対し,リーシング活動を行った。被告は,同年1月から同年12月まで,現地での内覧会を合計48回実施した。(乙104・16~17頁)(20) 被告は,平成8年には,(10社名称省略)等延べ40社以上の企業に対し,リーシング活動を行った。被告は,同年1月から同年12月まで,現地での内覧会を合計43回実施した。(乙104・17~18頁)(21) 平成9年度から平成19年度までの本件建物の入居率は,本件建物全体でみると,平成9年度は95.42%,平成10年度は93.99%,平成11年度は92.62%,平成12年度は93.87%,平成13年度は100%,平成14年度は99.21%,平成15年度は89.33%,平成16年度は94.42%,平成17年度は94.72%,平成18年度は94.39%,平成19年度は97.06%であった。 これをオフィス部分でみると,平成9年度は100%,平成10年度は97.71%,平成11年度は95.53%,平成12年度は95.13%,平成13年度は100%,平成14年度は98.73 であった。 これをオフィス部分でみると,平成9年度は100%,平成10年度は97.71%,平成11年度は95.53%,平成12年度は95.13%,平成13年度は100%,平成14年度は98.73%,平成15年度は82.92%,平成16年度は91.06%,平成17年度は92.67%,平成18年度は93.41%,平成19年度は97.69%であった。 (乙41~51)(22) 甲地区の貸しビルの空室率の推移をみると,既存・新築ビル平均では,平成元年は0.67%,平成2年は0.38%であったが,平成3年には3.53%に上昇し,平成4年は8.70%,平成5年は13.23%,平成6年は13.29%,平成7年は10.66%であった。また,これを新築ビルでみると,平成元年は0.00%,平成2年は0.00%,平成3年は35.46%,平成4年は62.93%,平成5年は28.49%,平成6年は21.78%,平成7年は51.71%であった。 甲地区の貸しビルの実質賃料の推移をみると,既存・新築ビル平均では,平成元年は3571円/㎡,平成2年は4533円/㎡,平成3年は5601円/㎡,平成4年は5557円/㎡,平成5年は5136円/㎡,平成6年は4888円/㎡,平成7年は4795円/㎡であった。また,これを新築ビルでみると,平成元年は3838円/㎡,平成2年は4553円/㎡,平成3年は6290円/㎡,平成4年は6822円/㎡,平成5年は5623円/㎡,平成6年は5531円/㎡,平成7年は5649円/㎡であった。 (乙26,39,40)(23) 日本の国内総生産の上昇率は,昭和62年は6.1%,昭和63年は6.4%,平成元年は4.6%,平成2年は6.2%であったが,平成3年は2.3%,平成4年は0.7%,平成5年は-0.5%,平成6年は 日本の国内総生産の上昇率は,昭和62年は6.1%,昭和63年は6.4%,平成元年は4.6%,平成2年は6.2%であったが,平成3年は2.3%,平成4年は0.7%,平成5年は-0.5%,平成6年は1.5%,平成7年は2.3%,平成8年は2.9%,平成9年は0%,平成10年は-1.5%であった。 経済企画庁は,平成2年8月の経済白書(乙78の1)において,「今回の景気上昇局面は長期拡大の様相を呈しているものといえよう」として,将来にわたって好況が継続するものと予測しており,平成4年の経済白書(乙78の2)においても,「日本経済は87年から,長期にわたり高い成長を続け,90年末頃より拡大テンポの減速がみられ,91年後半には低い成長へ減速し,調整過程に入ったと考える」,「『バブル』の崩壊自体は設備投資の回復を緩やかにする要因ではあるが,回復に深刻な悪影響を与えるものではない」と分析し,平成5年の経済白書(乙78の3)においても,日本経済は「93年後半からは回復への動きを示すものと考えられる」と予測し,日本銀行も,平成4年2月,日本銀行月報(乙79)において,「わが国経済は,目先長期調整局面が続くとしても,景気が失速するリスクは小さいとみられる」と分析していた。 (乙75,78の1~3,79) 5 争点(2)(本件建物における初期テナントリーシングに係る被告の債務不履行の有無及び得べかりし賃料及び共益費の損害(第3損害)の発生の有無)について(1) 第3損害に係る具体的な本件遂行義務Ⅴについて原告は,被告は本件遂行義務Ⅴ(本件事業計画において表示していた入居率を実現すべき義務・結果債務)を負い,これに違反した旨主張する。 しかしながら,本件信託契約における本件信託事業の目標は本件事業計画 は,被告は本件遂行義務Ⅴ(本件事業計画において表示していた入居率を実現すべき義務・結果債務)を負い,これに違反した旨主張する。 しかしながら,本件信託契約における本件信託事業の目標は本件事業計画に基づいて土地を有効活用することであり,本件信託契約が事業執行型の信託で,被告が不動産信託について相応の専門家であることを考慮しても,本件信託契約が本件事業計画の実現を内容とするものとは解されないことは前記3(3)で説示したとおりである。そうであるとすると,受託者である被告が結果債務として,本件事業計画どおりの入居率や収益を実現すべき債務を負うものとも解されない。仮に,原告が主張するように,本件信託契約によって,被告が本件事業計画どおりの稼働率,賃料収入を実現することを結果債務として負担するものとしたというのであれば,借入債務は完済されるはずであるところ,本件信託契約(甲4)においては,被告は借入金の返済金その他信託事務の処理に必要な費用を信託財産から支弁する(22条1項)こととされ,信託終了時に借入金債務その他の債務が残存する場合には被告はその処理方法について原告と協議の上処理する(41条2項4号)ものと定めており,借入債務等が残存することがあり得ることを想定しているものと考えられる。さらに,本件事業計画に記載された本件建物の稼働率は,前記前提事実(2)ウ(イ)のとおりであるところ,これは,平成3年当時の経済状況,不動産市況,特に貸しビルの稼働状況を前提として,その当時における経済見通しの下で実現可能であろうと考えられたものであり,前提となる経済状況等が急激にかつ長期に悪化した場合には,稼働率もその影響を受けることは当然である。その上,前記認定事実4(23)によれば平成3年ないし平成4年以降の経済状況の悪化は一般的に予測されてい なる経済状況等が急激にかつ長期に悪化した場合には,稼働率もその影響を受けることは当然である。その上,前記認定事実4(23)によれば平成3年ないし平成4年以降の経済状況の悪化は一般的に予測されていたとはいえないことも併せ考慮すれば,被告が本件事業計画において示した稼働率を実現すべき義務があると解することは不合理であるというべきである。したがって,本件信託契約においては,被告が,原告の主張するような結果債務として本件事業計画に記載した稼働率を実現する債務を負っていたものと解することはできない。 なお,前記認定事実によれば,被告は,平成5年に至って,本件建物の想定入居率を本件事業計画に記載された稼働率から下方修正した上で,想定される収支を原告に示し,テナントリーシングの方策を見直すことを提言していたものであるところ,本件事業計画が平成3年当時の不動産市況,経済見通しを前提とするものであることは上記説示のとおりであること,前記認定のような経済状況の悪化は一般的に予測されていたとはいえないこと,平成4年ないし平成5年当時のいわゆるバブル経済崩壊後の経済状況の見通しは総じて早期の回復予測をたてるなど悲観的なものではなかったことに照らせば,被告が平成5年7月16日に至るまで中間見直しを提案しなかったことをもって受託者としての義務に違反するとはいえない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (2) 第3損害に係る具体的な本件遂行義務Ⅵについて原告は,被告は本件遂行義務Ⅵ(本件事業計画において表示していた入居率を実現すべき義務・手段債務)に違反した旨主張する。以下,本件遂行義務Ⅵの具体的内容として原告が主張する3つの義務(第3の2(1)イの(ア)ないし(ウ))について検討する。 ア本件事業計画を提出した平成3年 義務・手段債務)に違反した旨主張する。以下,本件遂行義務Ⅵの具体的内容として原告が主張する3つの義務(第3の2(1)イの(ア)ないし(ウ))について検討する。 ア本件事業計画を提出した平成3年10月の時点で,主要なフロアについては具体的なテナントとの入居契約(予約)を締結しておくべき義務について前記認定事実4によれば,被告は,本件提案競技の時点で,本件概要説明書にテナント候補企業について記載するなどして,主要なフロアについては具体的な候補企業を想定し,本件事業計画の事業工程表においても,本件建物の着工の1年以上前からキーテナントとの交渉を予定していたこと,被告は平成3年から,キーテナント候補企業に対して,本件提案競技時の出店意向を持続させるように継続的に往訪活動を実施していたことが認められる。しかしながら,本件建物開業の約3年も前である平成3年10月の時点において,その後の経済情勢の見通しも定かではない中,テナント候補企業に入居契約(予約)を締結させることが一般的であることをうかがわせる事情は証拠上見当たらず,上記のような被告の交渉予定が示されていたことから直ちに,被告が原告主張の上記義務を負うものと解することは困難であるというべきである。なお,被告は,上記のとおり候補企業の出店意向を持続させるべく往訪活動を展開するなどして,その時点で行うことのできる相応のリーシング活動を実施していたものというべきであり,被告には上記義務違反も認められない。 イ本件建物が大スパン構造である以上,その竣工1年前までの時点で,フロアの相当部分について入居の確約を得ておくべき義務について(ア) 前記3(3)の認定説示のとおり,本件信託契約における本件信託事業の目標は,被告が本件事業計画に基づき本件土地を有効に活用することなどとされ 分について入居の確約を得ておくべき義務について(ア) 前記3(3)の認定説示のとおり,本件信託契約における本件信託事業の目標は,被告が本件事業計画に基づき本件土地を有効に活用することなどとされており,被告は,本件信託不動産の賃貸料その他の賃貸条件の設定に当たっては近傍類似の賃貸建物の賃貸条件を参考とし,適正な賃貸条件の設定に努めなければならないとされ,また,信託事業の遂行に当たり善管注意義務を負うにとどまることからすると,本件事業計画に示した入居率を実現することが本件信託契約の内容となっているものとは解されない。そうすると,受託者として,被告が原告主張の上記義務を負うものと解することも困難である。また,前記認定事実4(17)によれば,本件建物は,大スパン構造でフロアに柱が少なく,フロア全体を使えることを特徴としていたが,ワンフロアを個別に区切って賃貸することにも支障はなかったことが認められ,本件建物が小割りのできない構造であるともいえないことも考慮すれば,原告の上記主張は採用することができない。 (イ) 本件信託契約は事業執行型の信託であり,かつ,被告が不動産信託事業の経験豊かな信託銀行であることからすれば,信託事業の専門家として原告が信頼していたことは容易に推認されるが,一方で,原告も我が国有数の大規模な公共団体であり,普通財産たる土地の有効利用を目的とする土地信託に関する経験を有する(甲18)ところである。果たして,本件信託契約においては,賃貸条件,賃借人の募集,選定方法等について原告に対する通知を義務付けるほか,多くの事項について,被告が原告の方針を確認しながら適宜協議を申し出て,原告がそれを承認するというやり取りが繰り返されたことは前記第4の1及び4で認定したとおりである。 また,前記認定事実4のとおり,被告は,原 いて,被告が原告の方針を確認しながら適宜協議を申し出て,原告がそれを承認するというやり取りが繰り返されたことは前記第4の1及び4で認定したとおりである。 また,前記認定事実4のとおり,被告は,原告から,本件信託事業の目標達成にふさわしいテナントを入居させるよう求められ,その意向に沿ってテナントリーシングを行っていたものである。例えば,フィットネスクラブについては,地元の要望を考慮して原告が実現を強く希望していたものであるところ,平成5年7月の時点では確実な候補先がなく,原告もフィットネスクラブが供給過剰ならば転用の検討も必要ではないかという意見を述べた時期があったが,その後,原告が,フィットネスクラブは是非実現してほしい旨の意向を示したため,被告は,候補企業に対するリーシング活動を継続し,平成7年7月に至ってIから入居する旨の内定を取り付けた。また,飲食ゾーンについては,原告は,当初,雑居ビル化することを避けるため,本件建物の1,2,3及び20階の4つの区画を同一テナントに一括貸しすることを要請したことから,被告は上記要請に従ってリーシング活動を行っていたが,平成5年7月に至っても候補先がなく,20階単独での出店を検討していたjが20階単独出店を認められないことを理由に出店を辞退するに至り,その後,1,3階の合せ貸しでもよい旨の原告の了解を得て,平成6年8月にkが1,3階に出店することが決まった。オフィスゾーンについては,原告は,一貫してワンフロア貸しを強く要請したほか,被告が平成5年10月ころからテナント獲得のためフリーレントの実施を提案したが,原告は公有地信託であることを理由にこれを拒否し,フリーレントではなく,賃料の段階的な設定などで対応しなければならなかった。被告は,gが事務所移転を検討している旨の情報を入 ントの実施を提案したが,原告は公有地信託であることを理由にこれを拒否し,フリーレントではなく,賃料の段階的な設定などで対応しなければならなかった。被告は,gが事務所移転を検討している旨の情報を入手し,併せて原告の外郭団体の誘致も含めて原告に協力を要請して誘致に成功したこともあった。本件建物の平成9年度の入居率は,本件建物全体では95.42%,オフィス施設では100%に達し,平成10年度以降も,本件建物全体,オフィス施設ともに,平成15年度以外は全て90%以上を維持していたことは前記認定のとおりである。 このように,被告は,経済状況が悪化する中,原告の意向に沿いつつ,積極的にテナントリーシング活動を行ってきたところ,結果的に平成9年度以降は高い入居率を達成したものと認められるのであって,被告は,信託事業に係る専門家として通常要求される程度の注意義務を尽くしてリーシング活動を行ったものというべきであり,原告主張に係る前記義務違反も認められない。なお,原告は,被告が平成5年7月に示した改善方策(乙22)を実施しなかった旨主張するが,上記説示に照らし採用することができない。 ウ本件建物の竣工時及び開業時までに,モデルルーム等を用いた内覧会を多数実施してリーシング活動を行うべき義務について本件信託契約書上,被告が本件建物竣工後開業までに内覧会を多数実施する方法でテナントリーシング活動を行うべき義務を定めた条項はなく,被告は,適正な方法により募集選定した相手方に賃貸するものとされている(本件信託契約13条1項2号)のであって,原告主張の上記義務を負うものとは解されない。そして,前記認定事実によれば,被告は,本件建物の竣工後の平成6年から平成8年まで,内覧会を合計128回実施した上,上記イで説示したとおり,原告の意向に沿いつ 張の上記義務を負うものとは解されない。そして,前記認定事実によれば,被告は,本件建物の竣工後の平成6年から平成8年まで,内覧会を合計128回実施した上,上記イで説示したとおり,原告の意向に沿いつつテナントリーシング活動を行い,結果的に平成9年度以降は高い入居率を達成していたものであり,被告には原告主張に係る義務違反は認められない。 (3) 第3損害に係る具体的な本件遂行義務Ⅶについて原告は,被告は本件遂行義務Ⅶ(本件入居率を実現すべき義務・手段債務)を負い,これに違反した旨主張する。 しかしながら,本件入居率については本件事業計画ないし本件信託契約において明記されてはおらず,本件信託契約の受託者として被告が本件入居率を実現する義務を負っていたものと認めることは困難であるし,本件入居率を平成6年から平成8年までの甲地区の貸しビルの平均的入居率という意味に解したとしても,これが原告と被告との間で入居率に関する基準として認識されていたとも認められない。したがって,被告が平成2年当時,大阪地区における受託済みの不動産信託案件として合計57案件を扱う事業者であるとしても,そのことから直ちに原告主張の上記義務を負うものとは解されない。 また,本件遂行義務Ⅶの具体的内容として原告が主張する3つの義務違反(第3の2(1)イの(ア)ないし(ウ))についても,上記(2)で説示したとおり認めることはできない。 (4) したがって,被告が,第3損害に関して本件遂行義務ⅤないしⅦを負い,これらの義務に違反した旨の原告の主張は採用することができない。 6 以上によれば,被告には,原告主張に係る債務不履行は認められないから,それによる第1損害ないし第3損害の発生を前提とする金利相当分の損害賠償義務(争点(3))がないことも明らかである。 6 以上によれば,被告には,原告主張に係る債務不履行は認められないから,それによる第1損害ないし第3損害の発生を前提とする金利相当分の損害賠償義務(争点(3))がないことも明らかである。 7 よって,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第22民事部裁判長裁判官相澤眞木裁判官中川博文裁判官横井裕美
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