平成16(行ウ)33 公文書部分開示決定処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成17年12月22日 津地方裁判所 情報公開
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判決文本文15,147 文字)

- 1 -主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1当事者の求める裁判 請求の趣旨(1)被告が原告に対して平成16年11月8日付けでした公文書部分開示決定(総務第01-98号)のうち,同年9月17日起案の「支出負担行為整理兼支出命令書」添付の旅費請求内訳書につき「用務先」欄の「施設名」及び「市区町村」,「宿泊先」欄の「市区町村」,並びに「摘要」欄及び「特別承認事項」欄の一部を非開示とした部分を取り消す。 (2)訴訟費用は被告の負担とする。 請求の趣旨に対する答弁主文同旨第2事案の概要本件は,原告が,被告に対し,原告が三重県情報公開条例に基づき平成16年10月27日行った公文書開示請求について,被告が同年11月8日付けでした公文書部分開示決定(総務第01-98号)につき,同条例及び同条例に基づく旅費,食糧費等に関する開示基準規則に違反し違法であるなどとして,その一部の取消しを求めた事案である。 前提となる事実甲1の⑤,2の⑤,3の⑤,4,9,乙1,10及び弁論の全趣旨によると,以下の事実を認めることができる。 (1)三重県情報公開条例(以下「本件条例」という。)は,次のとおり規定している。 (定義)- 2 -2条この条例において「実施機関」とは,知事,議会,教育委員会,公安委員会,警察本部長,・・・・をいう。 (公文書の開示義務)7条実施機関は,開示請求があったときは,開示請求に係る公文書に次の各号のいずれかに該当する情報(以下「非開示情報」という。)が記録されている場合を除き,開示請求者に対し,当該公文書を開示しなければならない。 4号公にすることにより,犯罪の予防,鎮圧又は捜査,公訴の維持,刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼす 録されている場合を除き,開示請求者に対し,当該公文書を開示しなければならない。 4号公にすることにより,犯罪の予防,鎮圧又は捜査,公訴の維持,刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報6号県,国,独立行政法人等又は県以外の地方公共団体が行う事務又は事業に関する情報であって,公にすることにより,次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるものイ監査,検査,取締り又は試験に係る事務に関し,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし,若しくはその発見を困難にするおそれ。 (開示請求に対する措置)12条実施機関は,開示請求に係る公文書の全部又は一部を開示するときは,その旨の決定をし,開示請求者に対し,その旨並びに開示をする日時及び場所を書面により通知しなければならない。ただし,・・・・ 実施機関は,開示請求に係る公文書の全部を開示しないとき(中略)は,開示をしない旨の決定をし,開示請求者に対し,その旨を書面により通知しなければならない。 (理由付記等)15条実施機関は,第12条各項の規定により開示請求に係る公文書の- 3 -全部又は一部を開示しないときは,開示請求者に対し,同条各項に規定する書面によりその理由を示さなければならない。この場合においては,開示しないこととする根拠規定を明らかにするとともに,当該規定を適用する根拠が当該書面の記載自体から理解され得るものでなければならない。 (委任)49条この条例に定めるもののほか,この条例の実施に関し必要な事項は,実施機関が別に定める。 (2)旅費,食糧費等に関する開示基準規則(三重県規則第57号,以下「本件旅 ばならない。 (委任)49条この条例に定めるもののほか,この条例の実施に関し必要な事項は,実施機関が別に定める。 (2)旅費,食糧費等に関する開示基準規則(三重県規則第57号,以下「本件旅費開示規則」ともいう。)は,次のとおり規定している。 (趣旨)1条この規則は,三重県情報公開条例第49条の規定に基づき,知事が管理する旅費,食糧費,消耗品費及び交際費(以下「旅費,食糧費等」という。)の支出に関する公文書の開示基準に関し,必要な事項を定めるものとする。 (適用する公文書)2条この規則は,旅費,食糧費等の支出に関する公文書で,次に掲げるものに適用する。 4号支出負担行為整理兼支出命令書(開示の基準)3条知事は,前条の公文書の開示請求があったときは,次の基準により,開示する旨又は開示しない旨の決定をしなければならない。 1号旅費支出に関する公文書(復命書を除く。)については,全面開示とする。 (事前協議)5条三重県事務決裁及び委任規則(平成14年三重県規則第36号)第- 4 -3条又は第5条の規定に基づく専決者は,次に掲げる場合には,生活部長に事前協議しなければならない。 1号条例第12条第1項の一部を開示する旨及び第2項の開示しない旨の決定をしようとする場合(3)原告は,平成16年10月27日,被告に対し,三重県情報公開条例に基づき,「総務局所属職員(本庁勤務のもの)の平成16年6月1日~7月31日までの出張命令書,復命書及び旅費等の支出に関するすべての文書」につき,開示請求した(甲1の⑤,以下「本件開示請求」という。)。 (4)被告は,開示にあたり,原告の本件開示請求対象文書を,(ア)総務室(総務局長,同総括室長を含む。)の平成16年6月1日から同年7月31日までの旅行命令書,復命書,(イ)総務局の旅費 う。)。 (4)被告は,開示にあたり,原告の本件開示請求対象文書を,(ア)総務室(総務局長,同総括室長を含む。)の平成16年6月1日から同年7月31日までの旅行命令書,復命書,(イ)総務局の旅費に係る支出負担行為兼支出命令書(管財室,営繕室を除く。)と特定した。被告は,同年11月8日,本件開示請求対象文書である上記(イ)のうち,①職員個人の住所(市町村以外),振込先及び自家用自動車の登録番号の部分を,条例7条2号の「個人情報」に該当すると判断し,また,②総務局税務調査プロジェクトに係る支出負担行為兼支出命令書の一部を,条例7条4号の「公共安全情報」及び条例7条6号の「事務事業情報」に該当すると判断して,それらの部分を非開示とする部分開示決定処分を行った(総務第01-98号,甲2の⑤。以下「本件決定」という。)。 (5)原告は,本件決定の通知を受け,平成16年11月15日,三重県生活部情報公開室で,三重県の担当者から情報開示を受けたが,被告は,同年9月17日起案の「支出負担行為整理兼支出命令書」(以下「本件文書」という。)添付の旅費請求内訳書(以下「本件旅費請求内訳書」という。)のうち「用務先」欄の「施設名」及び「市区町村」,「宿泊先」欄の「市区町村」,並びに「摘要」欄及び「特別承認事項」欄の一部(以下,これら非開示となった部分を「本件非開示部分」という。)について,本件条例7条4- 5 -号及び6号に該当するとの理由で非開示とした(甲3の⑤)。 (6)原告は,平成16年11月30日,本件訴えを当裁判所に提起した。 争点,及び争点に関する当事者の主張(1)被告が本件非開示部分を非開示とすることは,本件旅費開示規則に反し,違法か。 (原告の主張)ア本件旅費開示規則では,本件文書をその対象とすることが明示されているし,旅費 する当事者の主張(1)被告が本件非開示部分を非開示とすることは,本件旅費開示規則に反し,違法か。 (原告の主張)ア本件旅費開示規則では,本件文書をその対象とすることが明示されているし,旅費支出に関する公文書(復命書を除く)について全面開示とすることを定めている。また,本件旅費開示規則は,三重県における架空出張による旅費の不正請求などの違法行為の再発防止の改善策として制定されたものであり,旅費支出については特に透明性を高めるために,情報開示にあたり裁量の余地を残さないこととしたものである。 本件旅費開示規則は,本来条例をもって定めるべき事項を規定したものであるから,同規則が対象とする文書の開示に関する事柄においては,もとの条例である本件条例と同等の実質的効力を持つものと解される。そして,本件条例7条は,非開示情報の開示を禁止するものではなく,非開示情報に該当する情報については開示義務を免除し,開示非開示の処分決定は行政の裁量権行使に委ねる規定であるから,本件旅費開示規則のように,他に開示義務を課している規定があれば,それに従わなければならない。 このように解さなければ,本件旅費開示規則の制定の目的がおよそ無意味なものとなる。 したがって,被告が本件決定において本件文書の一部である本件非開示部分を開示しなかったことは,本件旅費開示規則に違反し違法である。 イまた,本件旅費開示規則5条は,被告から情報公開に関わる業務の専決権限を受けた者は生活部長に事前協議することを義務付けている。そして,ここにいう協議とは,協議成立ということまでを含んだ意味で用いられて- 6 -いるのであり,ただ単に相談をもちかけただけではすまないと解するべきである。しかし,本件決定に際し,三重県総務局総務室長(本件決定における事務担当者)ないし三重県総務局税務 で用いられて- 6 -いるのであり,ただ単に相談をもちかけただけではすまないと解するべきである。しかし,本件決定に際し,三重県総務局総務室長(本件決定における事務担当者)ないし三重県総務局税務調査プロジェクト室長(本件決定に関わる業務の専決者)もしくはその他の誰も生活部長と事前協議を行っていない。したがって,この点においても本件決定は本件旅費開示規則に違反する。 ウ本件決定は,以上のとおり本件旅費開示規則に反するが,三重県は,不正支出撲滅を県民に約束するため,本件旅費開示規則を制定したのに,被告はこれを遵守しないのであるから,本件決定は,信義誠実の原則に反するもので,違法である。 (被告の主張)ア本件旅費開示規則は,本件条例49条の委任を受けて制定された,本件条例を施行するための細目的規定である。 条例の委任を受けて制定された規則の効力は条例の下にあり,条例の効力は規則に優先するから,規則を理解,解釈等するにあたっては,根拠法令である条例全体の内容に適合するよう,合理的に理解,解釈等を行う必要がある。本件条例7条は,公文書開示請求があった場合は原則開示とし,同条各号に該当する情報が記録されている場合は非開示とすると規定しているのであり,本件旅費開示規則が本件条例の委任規則である以上,同規則3条につき,本件条例7条各号に規定される非開示情報の該当性を無視してまでも,開示を義務づける趣旨の規定とは解釈できない。そして,本件旅費開示規則自体に本件条例7条を適用除外とする条文もない。 仮に,原告が主張するように本件旅費開示規則が条例と同レベルの法令であるとしても,競合的所管事項である場合は,条例の規定が優先的効力を有する。 イ被告の専決者は,本件決定をするにあたり,本件旅費開示規則5条に従- 7 -い,事前に,生活部情報公開室と の法令であるとしても,競合的所管事項である場合は,条例の規定が優先的効力を有する。 イ被告の専決者は,本件決定をするにあたり,本件旅費開示規則5条に従- 7 -い,事前に,生活部情報公開室と協議を行っている。 ウしたがって,本件旅費開示規則違反による違法をいう原告の主張は理由がなく,被告に信義誠実の原則に反する点もないから,一部非開示とした本件決定は適法である。 (2)本件非開示部分は,本件条例7条4号所定の公共安全情報又は同条6号所定の事務事業情報に当たり,被告が本件非開示部分を非開示とすることは適法か。 (被告の主張)ア本件文書の概要本件文書は,三重県総務局税務調査プロジェクト(以下「本件プロジェクト」という。)に関する旅費の支出負担行為整理兼支出命令書である。 本件プロジェクトは,不正軽油の製造(密造)による軽油引取税の脱税が全国的に問題となっていることから,関係機関等と連携して調査等を行い,事案に対応することを主な業務としている。一般的に地方公共団体の税務部署の通常の調査業務は,税金を賦課,徴収するために行うものであるが,本件プロジェクトが行っている犯則調査は,税金(軽油引取税)の賦課,徴収を第一目的としているものではなく,地方税法の罰則規定により処罰の対象とされる行為を調査して,租税犯罪を解明し,検察官に告発することにより,納税秩序の維持を図ることを目的としている。この調査は,地方税法700条の43において準用する国税犯則取締法に基づいて行い,同法2条において裁判官の発する許可状による臨検,捜索,差押えという強制処分も認められていることから,租税犯罪の調査という準刑事手続としての性格を有するものである。なお,軽油引取税の地方税法違反事件では,県知事等の告発がないと検察官は起訴できない。 イ本件非開示部分のうち 認められていることから,租税犯罪の調査という準刑事手続としての性格を有するものである。なお,軽油引取税の地方税法違反事件では,県知事等の告発がないと検察官は起訴できない。 イ本件非開示部分のうち,「用務先」欄の「施設名」及び「市区町村」,並びに「宿泊先」欄の「市区町村」は,非開示情報に該当する。 - 8 -(ア)本件プロジェクトの犯則調査は,違法行為であることを知りながら軽油の密造を行う者らを対象とすることから,特に内偵調査時における情報収集は,秘密裡に行うことによってその目的を達成し得るものである。そして,軽油を密造する施設等は,ある市町村においていくつも存在するものではないので,本件旅費請求内訳書の「用務先」欄の「施設名」及び「市区町村」,並びに「宿泊先」欄の「市区町村」を開示することとなれば,犯則事件にかかる調査先が推知されることになる。その結果,調査対象となっている者らによる隠ぺい工作等により,密造行為の潜在化,巧妙化等の防衛措置が講じられるおそれがある。また,逆に,調査の対象となっていない者らが,調査の対象となっていないことを契機として軽油の密造行為をさらに拡大したり,新たな行為が企図されたりするおそれもある。 (イ)本件条例7条4号に掲げる公共安全情報に租税の犯則調査に関する情報が含まれるかどうかについては,同条号と趣旨を同じくする行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条4号には含まれると解釈されていることから,肯定されるものと解される。そして,公共安全情報については実施機関の裁量が尊重されるところ,本件非開示部分のうち本件旅費請求内訳書の「用務先」欄の「施設名」及び「市区町村」,並びに「宿泊先」欄の「市区町村」の記載について,公共安全情報に該当するとした被告の判断に裁量権の逸脱はない。 また,当該部分を開示 ち本件旅費請求内訳書の「用務先」欄の「施設名」及び「市区町村」,並びに「宿泊先」欄の「市区町村」の記載について,公共安全情報に該当するとした被告の判断に裁量権の逸脱はない。 また,当該部分を開示すると,検査,取締りに係る事務に関し,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不正な行為を容易にし,若しくはその発見を困難にするおそれがあることから,本件条例7条6号に掲げる事務事業情報にも該当する。 ウ本件非開示部分のうち,「摘要」欄及び「特別承認事項」欄の一部は,非開示情報に該当する。 - 9 -本件旅費請求内訳書の「摘要」欄及び「特別承認事項」欄の一部には,本件プロジェクトにおける内偵調査等の手法,体制が記載されており,それが公になると,用務先の施設名及び市区町村並びに宿泊先の市区町村を公にした場合と同様に,密造行為を行っている者らによる隠ぺい工作等により,密造行為の潜在化,巧妙化等の防衛措置が講じられるおそれがある。 よって,本件非開示部分のうち本件旅費請求内訳書の「摘要」欄及び「特別承認事項」欄の一部についても,本件条例7条4号に掲げる公共安全情報及び同条6号に掲げる事務事業情報に該当する。 エ以上のとおり,被告は,本件文書を開示するに当たり合理的かつ必要最小限の範囲内で非開示部分を判断しているのであって,本件非開示部分については,本件条例7条4号の公共安全情報及び同条6号の事務事業情報に該当するものであるから,本件決定は適法である。 (原告の主張)ア本件非開示部分が本件条例7条4号の公共安全情報及び同条6号の事務事業情報に該当するとの被告の主張については争う。 イ社会通念,常識に照らせば,およそ,密造者は犯則行為がどのようにして調査・告発されるか熟知していると考えられ,それに対して,密造者なりの防衛措置は常に考慮 該当するとの被告の主張については争う。 イ社会通念,常識に照らせば,およそ,密造者は犯則行為がどのようにして調査・告発されるか熟知していると考えられ,それに対して,密造者なりの防衛措置は常に考慮しているとするのが合理的である。実際に密造者の所在する市町村に担当職員が出張したとの事実が公になったとしても,単に散発的に調査を行った事実が公になるだけで,このことで密造者の行動が左右されるということは考えられない。 (3)本件決定の際の理由付記に不備があり,本件非開示決定は違法か。 (原告の主張)ア原告が取消しを求める本件非開示部分につき,公文書部分開示決定通知書(甲2の⑤,以下「本件通知書」という。)では,「開示しない部分」として「支出負担行為整理兼支出命令書のうち,1職員個人の住所(市町- 10 -村以外),振込先及び自家用自動車の登録番号2総務局税務調査プロジェクトに係る支出負担行為整理兼支出命令書の一部」としているだけであり,特定が不十分で,その部分と開示をしない理由との対応関係が不明である。 イ被告は,本件旅費請求内訳書の「摘要」及び「特別承認事項」欄には,調査の手法,体制が記載されているとするが,原告にとってはどのような性質のものか把握することはできない。しかも,当該部分を非開示とする理由は,単に本件条例の条文を引き写しにしたにすぎないものであって,それでは当該理由が正当な事由によるものかは全く判断することができない。 ウ本件通知書には,被告が本件訴訟において非開示事由該当性として主張する理由が一切記載されていないから,理由付記において,判例法上取消事由となるべきとされる重大な不備が存在し,違法である。 被告が仮に生活部長との事前協議をしていたとしても,本件旅費開示規則では旅費支出に関する公文書(復命書を除く)につい 付記において,判例法上取消事由となるべきとされる重大な不備が存在し,違法である。 被告が仮に生活部長との事前協議をしていたとしても,本件旅費開示規則では旅費支出に関する公文書(復命書を除く)について全面開示とすることが定められているのであるから,事前協議の内容にまで言及して非開示理由を具体的に記載しなければならず,理由付記には不備があり,違法である。 (被告の主張)ア被告は,本件通知書の「開示しない部分」欄に,「2総務局税務調査プロジェクトに係る支出負担行為整理兼支出命令書の一部」と開示しない部分を示し,「上記部分を開示しない理由」欄に開示しない根拠規定を「2①三重県情報公開条例第7条4号(公共安全情報)に該当」,「2②三重県情報公開条例第7条6号に該当」と記載した。また,同欄に開示しない理由として,2①については「・・・開示することにより犯則事件の調査に支障を及ぼすおそれがある」とし,2②については「・・・開示するこ- 11 -とにより,検査,取締りに係る事務に関し,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし若しくはその発見を困難にするおそれがある」と記載した。 さらに,被告は,備考欄において「上段の「開示しない部分」の番号は「上記部分を開示しない理由」の番号と対応しています」と記載し,「2総務局税務調査プロジェクトに係る支出負担行為整理兼支出命令書の一部」が下段の2①及び2②に対応していることが理解できるようにした。 イまた,「2総務局税務調査プロジェクトに係る支出負担行為整理兼支出命令書の一部」の特定については,本件文書をみれば,本件旅費請求内訳書のうち,「用務先」欄の「施設名」及び「市区町村」,「宿泊先」欄の「市区町村」並びに「摘要」欄,「特別承認事項」欄の一部のみが非開示となっていること については,本件文書をみれば,本件旅費請求内訳書のうち,「用務先」欄の「施設名」及び「市区町村」,「宿泊先」欄の「市区町村」並びに「摘要」欄,「特別承認事項」欄の一部のみが非開示となっていることは,一見して明らかであるから,不十分ということはない。 ウ本件決定における理由付記は,開示しないこととする根拠規定が明らかにされ,当該規定を適用する根拠が当該書面の記載自体から理解され得るものであり,本件条例15条が定める要件を満たしている。本件条例15条は,原告が主張するような過大な要件までを課すものではない。 したがって,本件決定に理由付記の不備の違法はなく,適法である。 第3当裁判所の判断 争点(1)(本件旅費開示規則違反による違法性の有無)について(1)本件旅費開示規則3条との関係ア原告は,本件旅費開示規則3条では,旅費支出に関する公文書(復命書を除く)は全面開示とすることが定められているから,本件プロジェクトに係る旅費の支出負担行為整理兼支出命令書である本件文書の一部を非開示とした本件決定は,同規則に違反して違法であると主張する。 そこで検討するに,前提となる事実と甲4,5の①②③,11,12,- 12 -乙8及び弁論の全趣旨によると,本件旅費開示規則は,平成8年に三重県において旅費など不適正な予算執行が発覚したことを受けて,旅費,食料費等の支出の透明性を高めるために制定されたものであること,本件旅費開示規則は,本件条例とは同条例49条の委任に基づく細目的規定という関係にあることが認められる。 ところで,条例の委任を受けて制定された規則と条例との効力については,条例が優先的効力を有するものであり,規則の解釈に当たっては条例の内容に適合するよう合理的に行う必要がある。 本件旅費開示規則は3条において旅費支出に関する公文書(復 た規則と条例との効力については,条例が優先的効力を有するものであり,規則の解釈に当たっては条例の内容に適合するよう合理的に行う必要がある。 本件旅費開示規則は3条において旅費支出に関する公文書(復命書を除く)を全面開示とする旨を規定しているが,一方,本件条例7条では,非開示情報として同条各号の事由が定められている。そして,上記のとおり本件旅費開示規則は旅費,食料費等の支出の透明性を確保することを目的として制定されたものであるが,本件条例7条は,行政の透明性の確保とは別の保護されるべき利益を勘案して,各号に掲げる非開示情報を定めていて,特に本件非開示部分は犯則事件の調査に関わり,本件非開示部分を開示することにより,犯罪の予防,捜査の遂行という公共の安全と秩序の維持という極めて重大な利益に支障を及ぼすものである。そうだとすれば,非開示情報該当性の判断に際し本件旅費開示規則の内容を考慮することは別段として,本件のように極めて重大な利益に支障を及ぼす場合まで,本件旅費開示規則3条の規定について,本件条例7条所定の非開示情報に該当する場合でも一律に実施機関たる被告に開示を義務づけているものと解釈することは相当でない。 イこの点,原告は,本件条例7条は,非開示情報の開示を禁止するものではなく,非開示情報に該当する情報については開示義務を免除し,開示非開示の処分決定は行政の裁量権行使に委ねる規定であるから,本件旅費開示規則のように他に開示義務を課している規定があれば,それに従わなけ- 13 -ればならないと主張し,情報公開審査会委員の旅費に関しては被告が情報をすべて開示しているとして甲6の①②を提出する。しかし,本件条例7条は,前記のとおり保護されるべき利益を勘案して各非開示情報を定めているのであって,非開示情報に該当する情報の取扱いにつき 告が情報をすべて開示しているとして甲6の①②を提出する。しかし,本件条例7条は,前記のとおり保護されるべき利益を勘案して各非開示情報を定めているのであって,非開示情報に該当する情報の取扱いにつき,行政の自由裁量を認める趣旨の規定ではないから,原告の同主張はその前提を欠くし,情報公開審査会委員の旅費と本件とは事案を異にするから,原告の主張は理由がない。 また,原告は,本件条例7条を根拠に旅費,食料費等の支出に関する文書が非開示にできるのであれば,本件旅費開示規則の制定の目的がおよそ無意味なものになると主張するが,実施機関たる被告としては,本件旅費開示規則の内容を踏まえつつ,非開示情報該当性の判断をするものであり,そして,本件のように極めて重大な利益に支障を及ぼす場合に限り,一部不開示にすることができるというべきものであるから,同規則が無意味となることはなく,原告の同主張は採用できない。 ウそうすると,本件決定が,本件旅費開示規則の対象となる本件文書の一部を非開示としていることだけを理由として,直ちに本件旅費開示規則に違反するものとして違法ということはできない。そして,本件全証拠によっても,被告に,本件決定にあたり,信義誠実の原則に反する何らかの行為があったとの事実を認めることはできない。前示のとおり,甲4,5の①②③,11,12によると,三重県では,平成8年9月当時,従来の旅費などの不適切な予算執行を再発させないために,同年10月1日に旅費,食糧費等に関する開示基準規則(三重県規則第57号)を制定し,情報公開を拡大していく政策を採用した事実が認められるが,そのことにより,上記認定は左右されない。 以上によると,本件旅費開示規則に違反することを前提にする原告の信義誠実の原則違反の主張は理由がない。 - 14 -(2)本件旅費開示 実が認められるが,そのことにより,上記認定は左右されない。 以上によると,本件旅費開示規則に違反することを前提にする原告の信義誠実の原則違反の主張は理由がない。 - 14 -(2)本件旅費開示規則5条に定める事前協議原告は,本件決定に際し本件旅費開示規則5条に定める生活部長との事前協議は行われていないとし,そのため,本件決定は同条に違反して違法であると主張し,甲9,10でその旨陳述する。 そこで検討するに,甲2の⑤,4,乙9によると,三重県事務決裁及び委任規則は,本件条例11条及び12条の規定による決定の決裁権者は室長と規定しており,開示,非開示等の決定は実施機関の総務室長が専決者として行っているところ,本件旅費開示規則5条は,専決者は,部分開示決定ないし非開示決定をする際には生活部長と事前協議をしなければならない旨規定している。そして,甲1の⑤,乙12,13及び弁論の全趣旨によると,平成16年10月27日原告から被告に対し本件開示請求が行われたので,総務局では,対象となる旅行命令の決裁をした税務調査プロジェクトが,当該出張内容に最も精通していることから,同月28日,三重県総務局税務調査プロジェクト主査のA及び同じくBが,生活部情報公開室において,生活部情報公開室の主査Cと,総務局税務調査プロジェクト保有の公文書について,本件条例7条4号の公共安全情報及び同条6号の事務事業情報の適用の可否,並びに適用した場合における本件条例15条の理由付記の方法について協議を行い,また,総務局税務調査プロジェクトの業務特性に鑑み,旅行命令書及び復命書を部分開示決定処分とする際,本件旅費開示規則の規定に抵触しないか否かについて協議を行ったこと,税務調査プロジェクトは同年11月1日,上記協議結果を総務局総務室に伝達し,その後の同月8日専決者である 部分開示決定処分とする際,本件旅費開示規則の規定に抵触しないか否かについて協議を行ったこと,税務調査プロジェクトは同年11月1日,上記協議結果を総務局総務室に伝達し,その後の同月8日専決者である総務室長が本件決定を行ったことが認められる。 以上によると,平成16年10月28日専決権者である総務室長が生活部の担当者と事前協議を行ったもので,被告が生活部長と事前協議を行ったと認めることができる。これに対し,原告は,乙12,13の信用性を否定し,甲8の①②を提出するが,原告の主張を裏付けるに足りる立証はないから,- 15 -本件旅費開示規則5条違反を理由に本件決定の違法をいう原告の主張は採用できない。 争点(2)(本件条例7条所定の非開示情報該当性の有無)について(1)前提となる事実と甲3の⑤,乙2ない6,11及び弁論の全趣旨によれば,本件文書は本件プロジェクトに関する旅費の支出負担行為整理兼支出命令書であり,本件非開示部分には,総務局税務調査プロジェクトに所属する職員の用務先である「施設名」及びその所在「市区町村」が,宿泊先の所在「市区町村」が,特別承認事項として同プロジェクトにおける内偵調査等の手法,体制がそれぞれ記載されていること,本件プロジェクトは,不正軽油の製造による軽油引取税の脱税を調査して,犯罪を解明し検察官に告発することにより納税秩序の維持を図ることを目的としていること,平成16年中に検挙された軽油密造に係る地方税法違反事件は,全国において7件であり,そのうち三重県は2件であることが認められる。 そして,乙3ないし6によると,軽油引取税に関する犯則事件については地方税法700条の43により国税犯則取締法の規定が準用され,その調査には,同法2条により裁判官の発する許可状による臨検,捜索,差押えという強制処分も認められ ,軽油引取税に関する犯則事件については地方税法700条の43により国税犯則取締法の規定が準用され,その調査には,同法2条により裁判官の発する許可状による臨検,捜索,差押えという強制処分も認められているから,本件プロジェクトに係る調査は,刑事司法手続に準ずるものとしての性格を有するものといえる。 (2)公共安全情報の該当性ア本件条例7条4号は,「公にすることにより,犯罪の予防,鎮圧又は捜査,公訴の維持,刑の執行,その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」については,公共の安全と秩序維持が行政に課せられた重要な責務であることから,これを非開示情報として定めるものである。 上記のとおり,本件プロジェクトに係る調査は,犯則事件の調査として,犯罪の予防・捜査と関連し刑事司法手続に準ずるものであるから,同調査- 16 -に関する情報であって公にすることにより公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるものは,同条号に定める公共安全情報に含まれるものと解される。 イ本件非開示部分には,上記2(1)のとおり,本件プロジェクトに係る調査対象先に関する情報及び内偵調査等の手法,体制が記載されているところ,軽油密造に係る地方税法違反事件の発生件数からして,不正軽油密造施設が三重県内に多数存在しているとはいえず,調査対象先の手がかりとなる市区町村等が公にされれば,調査対象者が犯則事実を隠ぺいしたり,調査対象とされていない者が逆にこれを奇貨として密造行為を拡大するおそれがあることや,内偵調査等の手法,体制が公にされることで調査に支障が及ぼされることは明らかである。 公共安全情報については,「実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」として定められていることからすると,実施機関の 等の手法,体制が公にされることで調査に支障が及ぼされることは明らかである。 公共安全情報については,「実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」として定められていることからすると,実施機関の第一次的判断が尊重される。そうすると,第3の1のとおり本件旅費開示規則では旅費の支出に関する公文書を全面開示とする旨規定されていることを勘案しても,上記に述べたところからすれば,本件非開示部分は公共安全情報に該当するものといえる。 (3)事務事業情報の該当性また,本件プロジェクトに係る調査対象先に関する情報及び内偵調査等の手法,体制に関する情報は,軽油引取税に関する犯則事件の調査内容に関するものであるから,これを開示すると,三重県が行う検査,取締りに係る事務に関し,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし,若しくはその発見を困難にするおそれがあるということができ,重大な利益に支障を及ぼすものといえる。 そうすると,第3の1のとおり本件旅費開示規則では旅費の支出に関する公文書を全面開示とする旨規定されていることを勘案しても,本件非開示部- 17 -分は,本件条例7条6号に定める事務事業情報にも該当する。 争点(3)(理由付記の不備の存否)について(1)本件条例15条は,公文書の全部又は一部を開示しない場合には,開示請求者に対し,その理由を示すことを定めており,その場合には,開示しないこととする根拠規定を明らかにするとともに,当該規定を適用する根拠がその記載自体から理解され得るものでなければならないとしている。このような同条の規定からすれば,理由付記としては,開示請求者において,非開示事由のどれに該当するのかをその根拠とともに了知し得るものでなければならないものである。 これを本件についてみると,甲2の⑤ ような同条の規定からすれば,理由付記としては,開示請求者において,非開示事由のどれに該当するのかをその根拠とともに了知し得るものでなければならないものである。 これを本件についてみると,甲2の⑤によれば,本件決定にあたり,被告は,本件通知書の「開示しない部分」欄に,「2総務局税務調査プロジェクトに係る支出負担行為兼支出命令書の一部」と開示しない部分を示し,「上記部分を開示しない理由」欄に,開示しない根拠規定として「2①三重県情報公開条例第7条第4号(公共安全情報)に該当」,「2②三重県情報公開条例第7条第6号に該当」と記載していること,開示しない理由として,2①については「・・・開示することにより,犯則事件の調査に支障を及ぼすおそれがある。」とし,2②については「・・・開示することにより,検査,取締りに係る事務に関し,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし,若しくはその発見を困難にするおそれがある。」と記載していること,備考欄において「上段の「開示しない部分」の番号は「上記部分を開示しない理由」の番号と対応しています。」と記載していることが認められる。 以上の記載からすれば,本件決定における非開示部分と開示しない理由との対応関係は付記された番号によって把握できるし,本件非開示部分の詳細については,本件旅費請求内訳書の体裁から,「用務先」欄の「施設名」及び「市区町村」,「宿泊先」欄の「市区町村」,並びに「摘要」欄及び「特- 18 -別承認事項」欄の一部のみが非開示とされていることが了知可能であるから,その理由付記に不備はないというべきである。 (2)これに対し,原告は,本件通知書では,本件訴訟における被告の主張内容や生活部長との事前協議の内容が記載されていないから,理由付記に不備があると主張し,甲 由付記に不備はないというべきである。 (2)これに対し,原告は,本件通知書では,本件訴訟における被告の主張内容や生活部長との事前協議の内容が記載されていないから,理由付記に不備があると主張し,甲9,10でその旨陳述し,甲11,12を提出する。しかしながら,本件条例15条は,開示請求者において非開示事由のどれに該当するのかがその根拠とともに了知し得ること以上に,部分開示決定や非開示決定の取消訴訟が提起された際に被告が主張するような詳細な理由や生活部長との事前協議内容までを記載することを求めるものではないから,原告の上記主張は採用できない。 結論 以上によると,本件決定は,原告の主張する違法事由が認められず,適法である。よって,原告の本件請求は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 津地方裁判所民事第1部裁判長裁判官水谷正俊裁判官本山賢太郎裁判官薄井真由子

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